以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、「上」、「下」の語は、鉛直方向の上方、下方にそれぞれ対応するものである。
本実施形態では、仮設構造物を適用する構造物の例として、桁架設装置1を例示して説明する。まず、図1を参照して、桁架設装置1の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係る仮設構造物を適用可能な桁架設装置1を横方向(前後方向、すなわち橋軸方向に対して水平面内で垂直な方向)から見た概略構成図である。桁架設装置1は、先行して施工された橋脚2に対して、方向Aに向かって順次、桁材3を架設する装置である。以下の説明においては、方向Aにおける前方を「前」とし、後方を「後」として説明する。図1に示すように、桁架設装置1は、前部タワー4、後部タワー6、吊ガーダー7及び手延機8を含む本体部10と、走行ガーダー9と、を備えている。桁架設装置1のうち、吊ガーダー7、手延機8、及び走行ガーダー9は、前後方向に延びる部材を構成している。なお、本実施形態では、電車が走行するレールを敷設するための桁架設構造を例にして説明する。ただし、桁架設装置1は、電車のための桁架設構造以外にも適用可能である。また、走行ガーダー無しのタイプの桁架設装置に対しても適用可能である。
前部タワー4及び後部タワー6は、門型のフレーム体である。前部タワー4は、桁材3が架設される橋脚2のうち、前方の橋脚2上に設置される。前部タワー4は、前部タワー4と前後方向に対向するように、後方の橋脚2上に設置される。なお、前部タワー4は、横方向に互いに離間すると共に上下方向に延びる一対の脚部21A,21Bと、横方向に延在して脚部21Aの上端と脚部21Bの上端とを連結する横架材と、を備える(図5参照)。脚部21A,21Bの下端が本実施形態に係る仮設構造物100を介して橋脚2の横梁上に載置される(あるいは、下端が橋脚2から浮く場合もある)。後部タワー6も前部タワー4と同趣旨の構成を有している。
吊ガーダー7は、前後方向に延在すると共に、前部タワー4の内側領域及び後部タワー6の内側領域に配置されて、当該前部タワー4及び後部タワー6に架け渡されている。吊ガーダー7は、前部タワー4に前端側を支持され、後部タワー6に後端側を支持されて、上下方向に移動可能である。吊ガーダー7は、桁材3を吊り下げる機能を有している。吊ガーダーは、後部タワー6の横架材に設けられた油圧ジャッキと、前部タワー4の横架材に設けられた油圧ジャッキに支持され、当該油圧ジャッキによって上下移動がなされる。
手延機8は、前部タワー4から前方へ向かって橋脚2上に延在している。走行ガーダー9は、前後方向へ延在すると共に手延機8を介して橋脚2上を前後方向へ移動する。走行ガーダー9は、前部タワー4の内側領域、後部タワー6の内側領域及び手延機8の内側に配置されている。
次に、図2〜図4を参照して、桁架設装置1を用いて橋脚2に桁材3を架設する工程について説明する。図2〜図4は、桁架設装置1を用いて橋脚2に桁材3を架設するときの様子を示す概略構成図である。なお、ここでは、橋脚2Aと橋脚2Bとの間に桁材3Aを架設する場合を例にして説明する。
図2(a)に示すように、橋脚2Aより後方では、既に桁材3Bが架設されている。後部タワー6は橋脚2A上に設置され、前部タワー4は橋脚2B上に設置されている。走行ガーダー9は、少なくとも橋脚2Aと橋脚2Bとの間に設置されており、橋脚2Bより更に前方に延びている。後部タワー6よりも後方では、既設の桁材3B上で、新設する桁材3Aの運搬準備がなされる。すなわち、桁材3Aの後端は後部親子台車11上に設置され、前端は前部親子台車12上に設置される。後部親子台車11は、上側の子台車11aと下側の親台車11bに切り離し可能である。前部親子台車12は、上側の子台車12aと下側の親台車12bに切り離し可能である。親子台車11,12は、既設の桁材3B上に敷設されたレールに沿って移動することができる。
図2(b)に示すように、走行ガーダー9上に新設の桁材3Aを仮置きするスペースを確保するために、吊ガーダー7を上方へ移動する。親子台車11,12が前方へ移動することによって、新設の桁材3Aが前方へ運搬される。図2(c)に示すように、前部親子台車12が走行ガーダー9の後端まで至ると、子台車12aは、新設の桁材3Aを支持した状態のまま、既設の桁材3B上の親台車12bから離脱し、走行ガーダー9上に移動する。このとき、新設の桁材3Aは、後部タワー6の内側領域を通過して、後部タワー6と前部タワー4との間の領域に入り込む。新設の桁材3Aが更に前方へ移動すると、後部親子台車11が走行ガーダー9の後端まで至り、子台車11aは、新設の桁材3Aを支持した状態のまま、既設の桁材3B上の親台車11bから離脱し、走行ガーダー9上に移動する。これによって、新設の桁材3Aが走行ガーダー9上に仮置きされた状態となる(図3(a)に示す状態)。
図3(a)に示すように、新設の桁材3Aが走行ガーダー9上に仮置きされた状態となった後、当該桁材3Aと吊ガーダー7とが接続され、桁材3Aが吊ガーダー7に吊られた状態となる。当該接続が完了した後、新設の桁材3Aを吊った状態のまま吊ガーダー7を上方へ移動させる。新設の桁材3Aが吊り上げられた後、子台車11a,12aは、後退して走行ガーダー9から親台車11b上,12b上へ移動すると共に当該親台車11b,12bと連結される。
図3(b)に示すように、新設の桁材3Aが吊り上げられると共に子台車11a,12aが走行ガーダー9から降ろされた後、走行ガーダー9の引き抜きが行われる。走行ガーダー9は手延機8を介して前方へ移動し、橋脚2Aと橋脚2Bとの間の領域から引き抜かれる。図3(c)に示すように、橋脚2Aと橋脚2Bとの間の領域から走行ガーダー9が引き抜かれた後、吊ガーダー7が下方へ移動することによって、新設の桁材3Aが降ろされる。そして、図4(a)に示すように、桁材3Aの後端が橋脚2A上に設置され、前端が橋脚2B上に設置されることにより、橋脚2Aと橋脚2Bとの間に桁材3Aが架設される。桁材3Aの架設が完了すると、当該桁材3Aと吊ガーダー7との接続が解除される。
図4(b)に示すように、吊ガーダー7を上方へ移動し、当該吊ガーダー7の後端部を後端台車13で支持する。これによって、後部タワー6を吊ガーダー7で仮受けする。図4(c)に示すように、走行ガーダー9をガイドとして手延機8、前部タワー4及び後部タワー6を前方へ移動する。これによって、次の桁材3Aを架設する位置まで移動させる。ここでは、橋脚2Cと橋脚2Bとの間に次の桁材3Aを架設するものとし、前部タワー4を橋脚2C上に設置し、後部タワー6を橋脚2Bに設置する。
次に、本実施形態の仮設構造物100、敷桁30、及び受桁50について、図5〜図13を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係る仮設構造物100を前方から後方へ向かって見た図(正面図)である。図6は、本実施形態に係る仮設構造物100の概略構成を示す斜視図である。図7は、本実施形態に係る仮設構造物100を前方から後方へ向かって見たときの拡大図である。図8は、本実施形態に係る受桁50を並べた状態で上方から見た図である。以下の説明では、前部タワー4と後部タワー6とが対向する方向である前後方向(橋軸方向)を「前後方向D1」と称し、前後方向D1に対して水平面内で垂直な方向(橋軸直交方向)を「横方向D2」と称して説明する。なお、本実施形態では、前後方向D1が請求項における「第1の方向」に対応し、横方向D2が請求項における「第2の方向」に対応しているものとする。ただし、図15を用いて後述するように、当該対応関係が成り立たない場合もある。
仮設構造物100は、前部タワー4(構造物)の脚部21A,21Bを橋脚2の横梁101に仮固定するために、橋脚2の横梁101上に設けられるものである。このような仮設構造物100は、必要なタイミングで横梁101に仮設することが可能であると共に、不要な時には横梁101から撤去することが可能である。例えば、図4(b)に示す状態から図4(c)に示す状態となるときのように、前部タワー4及び後部タワー6を移動させるときは、橋脚2との固定を解除し、他の状態のように前部タワー4及び後部タワー6を橋脚2に固定しておく必要があるときは、仮設構造物100を介して前部タワー4及び後部タワー6を橋脚2に仮固定する。なお、以下の説明では、構造物として前部タワー4を例にして説明しているが、後部タワー6も同様に仮設構造物100を用いて橋脚2の横梁101に仮固定可能である。
図5及び図6に示すように、仮設構造物100は、橋脚2の横梁101上に固定される複数の敷桁30と、敷桁30同士の間に架け渡されて当該敷桁30に固定される複数の受桁50と、を備えている。本実施形態では、敷桁30は、前後方向D1に延びると共に、横方向D2に所定の間隔を空けて並設されており、横梁101上の横梁内の隔壁(ダイアフラム)102が位置する堅固な箇所に固定されている。受桁50は、敷桁30と敷桁30との間で横方向D2に延びるように架け渡されていると共に、前後方向D1に所定の間隔を空けて並設されている。受桁50の両端部は、各敷桁30上に固定されている。受桁50は、前後方向D1及び横方向D2の両方に複数配置されることにより、複数の受桁50の上面によって、前部タワー4の脚部21を受けるための受面が構成される。前部タワー4の脚部21は、当該受面に仮固定される。なお、受桁50及び敷桁30の更なる詳細な位置関係の説明については後述する。
まず、図9〜図12を参照して、受桁50の構成について説明する。なお、図9〜図12に示す受桁50は、仮設構造物100が有する複数の受桁50の中の代表的な一本を示しており、仮設構造物100内の場所によっては、異なる形状・大きさの受桁50が用いられる。以下の説明においては、受桁50に対してXYZ座標を設定して説明する。図9は、受桁50の斜視図である。なお、挿入孔62の構成を示すため、図9では、下方から見たときの斜視図が示されている。図10(a)は、受桁の平面図(Z軸負方向に向かって見た図)である。図10(b)は、受桁50の底面図(Z軸正方向に向かって見た図)である。図11(a)は、受桁50の正面図(Y軸正方向に向かって見た図)である。図11(b)は、受桁50の背面図(Y軸負方向に向かって見た図)である。図12(a)は、受桁50の左側面図(X軸正方向に向かって見た図)である。図12(b)は、受桁50の右側面図(X軸負方向に向かって見た図)である。なお、Z軸は上下方向(上方が正方向)に平行に延びる。X軸はZ軸と垂直に延びており、本実施形態では受桁50の長手方向であるものとする。Y軸はZ軸及びX軸と垂直に延びており、本実施形態では受桁50の幅方向であるものとする。
図9〜図12に示すように、受桁50は、上フランジ部51と、下フランジ部52と、ウェブ部53と、を有するH形鋼によって構成されている。上フランジ部51及び下フランジ部52は、互いに平行となるようにZ軸方向に対向すると共に、長手方向(X軸方向)に平行に延びる板状の部材である。Z軸方向から見たときに、上フランジ部51と下フランジ部52とは、同形状をなしている。ウェブ部53は、上フランジ部51及び下フランジ部52の幅方向(Y軸方向)における中央位置において、上下方向(Z軸方向)に平行に延びることで上フランジ部51と下フランジ部52とを連結している。また、ウェブ部53は、各フランジ部51,52の幅方向における中央位置において、長手方向(X軸方向)に平行に延びている。ウェブ部53の長手方向の両端部53a,53aは、上フランジ部51(下フランジ部52)の長手方向の両端部51a,51a(52a,52a)まで及んでいる。なお、上フランジ部51(下フランジ部52)の長手方向の両端部51a,51a(52a,52a)は、幅方向に平行に延びている。各部51,52,53の端部51a,52a,53aが、受桁50の長手方向における端部50aに該当する。
受桁50の長手方向における中央側の領域には幅広部54が形成され、受桁50の両端部50a,50a側には幅狭部56,56が形成される。幅狭部56は、幅方向における大きさが幅広部54よりも小さい。すなわち、幅広部54の幅方向の大きさをW1とし、幅狭部56の幅方向の大きさをW2とした場合、W1>W2の関係が成り立つ。また、幅狭部56,56と幅広部54との間には、当該幅狭部56,56と幅広部54とを接続し、幅狭部56,56から幅広部54へ向かって広がるように傾斜するテーパー部57,57が形成される。なお、幅狭部56,56及びテーパー部57,57の長手方向における大きさについては、敷桁30との位置関係と合わせて後述する。
本実施形態では、幅広部54においては、上フランジ部51(下フランジ部52)の幅方向の両端部51b,51b(52b,52b)が、互いに離間距離W1を空けて長手方向に平行に延びている。また、幅狭部56,56においては、上フランジ部51(下フランジ部52)の幅方向の両端部51c,51c(52c,52c)が、互いに離間距離W2を空けて長手方向に平行に延びている。幅狭部56,56における両端部51c,51c(52c,52c)は、幅広部54における両端部51b,51b(52b,52b)よりも幅方向における内側に配置されている。テーパー部57,57においては、上フランジ部51(下フランジ部52)の幅方向の両端部51d,51d(52d,52d)は、幅狭部56,56における両端部51c,51cから、幅広部54における両端部51b,51bへ向かって、ハ字状に広がるように延びている。なお、上フランジ部51の端部51b,51c,51d及び下フランジ部52の端部52b,52c,52dが、受桁50の幅方向における端部50bに該当する。また、上フランジ部51の上面51eが、前部タワー4の脚部を固定するための、受桁50の上面50cに該当する。また、下フランジ部52の下面52eが、敷桁30に載置されて固定される下面50dに該当する。
幅狭部56,56には、上下方向に延びると共に上フランジ部51と下フランジ部52とを接続し、ウェブ部53から幅方向の両側へ向かって平行に広がる板状の補強リブ61,61が設けられている。補強リブ61,61は、ウェブ部53に垂直に交差している。補強リブ61,61は、受桁50の長手方向の端部50aよりも、当該長手方向内側へ離間した位置に形成される。下フランジ部52には、ウェブ部53と補強リブ61,61とが交差する位置に、せん断キー(図7参照)を挿入するための挿入孔62,62が形成されている。当該挿入孔62,62からは、ウェブ部53及び補強リブ61,61の一部が露出している。なお、せん断キー及びその挿入孔62はタワー固定ボルト近傍の敷桁位置に設けることが耐力的に有効で、所要の耐力を満足するのであれば無い方が望ましい。その理由は、せん断キーがあると、敷桁30上において受桁50を横滑り移動させることが困難となり、さらにせん断キーを嵌合させる際には受桁50を位置合わせしてから上方より降ろす必要があることによる。また、挿入孔62の周囲には、受桁50を敷桁30に固定するためのボルトを挿通させるための複数(本実施形態では4つ)の貫通孔63が形成されている。貫通孔63は、ウェブ部53と補強リブ61とで区画される4つの領域にそれぞれ形成されている。
なお、受桁50は上述の構造に限定されず、各部位の長さや幅等は、適宜変更可能である。また、補強リブ61、挿入孔62及び貫通孔63の組は、幅狭部56のみに設けられているが、幅広部54の中途位置に設けてもよい。また、貫通孔63を、受桁50の長手方向(X軸方向)に延びる長孔とすることによって、敷桁30に対する受桁50の長手方向における固定位置を変更可能としてもよい。また、幅狭部56は、受桁50の両端側に形成されているが、一端側にのみ形成されていてもよい。長孔にしない場合は地震時の水平ズレを小さく留めることができるが、長孔構造は高耐力部位ではないタワー固定部以外の箇所に適用することで、タワー両脚間のボルト孔位置の誤差を吸収することができる。
次に、図13及び図14を参照して、敷桁30の構成について説明する。なお、図13及び図14に示す敷桁30は、仮設構造物100が有する複数の敷桁30の中の代表的な一本を示しており、仮設構造物100内の場所によっては、異なる形状・大きさの敷桁30が用いられる。以下の説明においては、敷桁30に対してXYZ座標を設定して説明する。図13(a)は、敷桁30の平面図(Z軸負方向に向かって見た図)である。図13(b)は、敷桁30の正面図(Y軸正方向に向かって見た図)である。図13(c)は、敷桁30の底面図(Z軸正方向に向かって見た図)である。図14は、敷桁30の右側面図(X軸負方向に向かって見た図)である。なお、Z軸は上下方向(上方が正方向)に平行に延びる。X軸はZ軸と垂直に延びており、本実施形態では敷桁30の長手方向であるものとする。Y軸はZ軸及びX軸と垂直に延びており、本実施形態では敷桁30の幅方向であるものとする。
図13及び図14に示すように、敷桁30は、上フランジ部31と、下フランジ部32と、ウェブ部33と、を有するH形鋼によって構成されている。上フランジ部31及び下フランジ部32は、互いに平行となるようにZ軸方向に対向すると共に、長手方向(X軸方向)に平行に延びる板状の部材である。敷桁30の下面30d側の幅方向(Y軸方向)における大きさは、敷桁30の上面30c側の幅方向の大きさに比して大きい。すなわち、下フランジ部32の幅方向における大きさは、上フランジ部31の幅方向における大きさよりも大きい。上方から見て、各フランジ部31,32の幅方向における中央位置は同一であるため、下フランジ部32の両端部32b,32bが、上フランジ部31の両端部31b,31bから幅方向の外側へ突出している。上フランジ部31の幅方向における両端部31b,31bは、長手方向に平行に延びている。下フランジ部32の幅方向における両端部32b,32bは、長手方向に平行に延びている。なお、各フランジ部31,32の長手方向における大きさは同一である。上フランジ部31の長手方向における両端部31a,31aは幅方向に平行に延びている。下フランジ部32の長手方向における両端部32a,32aは幅方向に平行に延びている。
ウェブ部33は、上フランジ部31及び下フランジ部32の幅方向(Y軸方向)における中央位置において、上下方向(Z軸方向)に平行に延びることで上フランジ部31と下フランジ部32とを連結している。また、ウェブ部33は、各フランジ部31,32の幅方向における中央位置において、長手方向に平行に延びている。ウェブ部33の長手方向の両端部33a,33aは、上フランジ部31(下フランジ部32)の長手方向の両端部31a,31a(32a,32a)まで及んでいる。各部31,32,33の端部31a,32a,33aが、敷桁30の長手方向における端部30aに該当する。各フランジ部31,32の端部31b,32bが、敷桁30の幅方向における端部30bに該当する。
敷桁30には、上下方向に延びると共に上フランジ部31と下フランジ部32とを接続し、ウェブ部33から幅方向の両側へ向かって平行に広がる板状の補強リブ34が設けられている。補強リブ34は、ウェブ部33に交差しており、長手方向に一定の間隔を空けて複数設けられている。補強リブ34は、長手方向から見たときに、上フランジ部31から下フランジ部32へ向けて幅方向にハ字状に広がるように形成されている。従って、長手方向から見たときの敷桁30は、全体として台形をなしている。なお、長手方向における最も端部30a側の補強リブ34は、当該端部30aよりも、長手方向内側へ離間した位置に形成される。上フランジ部31には、ウェブ部33と補強リブ34とが交差する位置に、せん断キー(図7参照)を挿入するための挿入孔36がそれぞれ形成されている。当該挿入孔36からは、ウェブ部33及び補強リブ34の一部が露出している。また、挿入孔36の周囲には、受桁50と敷桁30とを固定するためのボルトを挿通させるための複数(本実施形態では4つ)の貫通孔37が形成されている。貫通孔37は、ウェブ部33と補強リブ34とで区画される4つの領域にそれぞれ形成されている。なお、受桁50の幅狭部56の下面50dを敷桁30の上面30cに載置したとき、敷桁30の挿入孔36及び貫通孔37は、受桁50の挿入孔62及び貫通孔63と連通するような位置及び大きさに形成される。また、下フランジ部32には、ウェブ部33を挟んだ一対の貫通孔38,38が、長手方向に所定の間隔を空けて複数カ所(本実施形態では4カ所)形成されている。この貫通孔38は、敷桁30を橋脚2の横梁101に固定するための大きな横梁ボルト71(図7参照)を挿通させるためのものであり、敷桁30と受桁50とを固定するための受桁敷桁ボルト72用の貫通孔37,63より径が大きい。径を大きくすることで本数を少なくすることが可能である。このボルト位置は横梁101内の隔壁(ダイアフラム)102及びその溶接ビードに近すぎないようにする必要がある。それはボルトの座金が干渉するだけでなく、締結用または回転抑え用の工具が差し込めなくなるからである。また、ボルト位置が遠すぎてボルト径が大きすぎても好ましくない。それは、ボルトに上向きの引張力が生じる場合で、ボルト径を大きくして敷桁30の1本あたりのボルト本数を少なくしすぎると、1本あたりのボルト引張力が大きくなり、横梁101の上フランジの曲げ応力が耐力を上回り、曲げ変形(めくり上がり)が生じてしまうからである。以上、これらの部材配置・板厚・強度等をバランスよく設計する必要がある。
なお、敷桁30は上述の構造に限定されず、各部位の長さ関係や幅等は、適宜変更可能である。また、貫通孔37は、敷桁30の幅方向(Y軸方向)に延びる長孔とすることによって、敷桁30に対する受桁50の長手方向における固定位置を変更可能としてもよい。また、敷桁30の上面側と下面側とで幅方向の大きさを同じにしてもよい。長孔にしない場合は地震時の水平ズレを小さく留めることができるが、長孔構造は高耐力部位ではないタワー固定部以外の箇所にて実施するとよく、タワー両脚間のボルト孔位置の誤差を吸収することができる。
次に、橋脚2の横梁101、敷桁30、受桁50及び前部タワー4の脚部21の位置関係について図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8では、理解を容易とするために、一の脚部21の固定位置周辺の敷桁30及び受桁50のみを示しており、他の敷桁30及び受桁50を省略している。また、図7及び図8には3つの敷桁30が示されており、横方向D2に順番に敷桁30A、敷桁30B、敷桁30Cとする。敷桁30Aと敷桁30Bとの間に架け渡されている複数の受桁50を受桁50Aとし、敷桁30Bと敷桁30Cとの間に架け渡されている複数の受桁50を受桁50Bとする。なお、一方の受桁50Aが請求項における「第1の受桁」に対応し、他方の受桁50Bが請求項における「第2の受桁」に対応するものとする。この場合、受桁50Aの幅狭部56、幅広部54が請求項における「第1の幅狭部」、「第1の幅広部」に対応し、受桁50Bの幅狭部56、幅広部54が請求項における「第2の幅狭部」、「第2の幅広部」に対応する。ただし、一方の受桁50Aが請求項における「第2の受桁」に対応し、他方の受桁50Bが請求項における「第1の受桁」に対応するものとしてもよい。
敷桁30A,30B,30Cは、横梁101の上面に、下フランジ部32の下面30dを載置し、横梁ボルト71で締結することによって横梁101に固定される。敷桁30A,30B,30Cは、橋脚2の横梁101のうち、隔壁部(ダイアフラム)102に対応する位置において、前後方向D1に延びるように配置されると共に固定されている。
受桁50Aは、敷桁30Bの幅方向における一方(ここでは紙面左側)において横方向D2に延びると共に、一の端部50a側(請求項における「一端部側」に対応する)が敷桁30B上に固定され、他の端部50a側が敷桁30A上に固定される。受桁50Bは、敷桁30Bの幅方向における他方(ここでは紙面右側)において横方向D2に延びると共に、一の端部50a側(請求項における「一端部側」に対応する)が敷桁30B上に固定され、他の端部50a側が敷桁30C上に固定される。受桁50A,50Bは、敷桁30A,30B,30Cの上フランジ部31の上面30cに、下フランジ部52の下面50dを載置し、受桁敷桁ボルト72で締結することによって敷桁30A,30B,30Cに固定される。また、当該状態においては、受桁50Aの挿入孔62と敷桁30A,30Bの挿入孔36とは、互いに連通するような位置関係となる。また、受桁50Bの挿入孔62と敷桁30B,30Cの挿入孔36とは、互いに連通するような位置関係となる。従って、それぞれの挿入孔36及び挿入孔62で形成される(円筒状の)空間には、せん断キー86(図7参照)が挿入される。これによって、敷桁30A,30B,30Cと受桁50A,50Bとの各接合部には、せん断キー86が設けられる構成となる。なお、図7では、受桁50Bと敷桁30Cとの間に挿入されるせん断キー86のみが示されているが、他の部分にも挿入されている。せん断キー86は、直径が挿入孔36,62の内径と略同一(僅かに小さい方が挿入・嵌合しやすい)であって、上下方向の高さが少なくとも挿入孔36の深さよりも低い円柱状の部材である(高さは受桁50と敷桁30が嵌合した後の高さより僅かに低い方が製作誤差等を吸収できる)。
図8に示すように、受桁50A及び受桁50Bは、前後方向D1に沿って互い違いに複数並べられる。複数の受桁50Aは、一定間隔で互いに離間するように前後方向D1に並べられる。一方、複数の受桁50Bは、互いに隣り合う受桁50A,50A同士の間に一本の受桁50Bが配置されるように、一定間隔で互いに離間するように前後方向D1に並べられる。受桁50Aと受桁50Bとが固定される敷桁30B上では、各受桁50A,50Bの各端部50a側の部分が、互い違いに並べられている。敷桁30B上では、受桁50Aと受桁50Bとは、互いに接触するように配置されている。ただし、僅かに隙間を設けるように配置されているのがよい。
ここで、受桁50A,50Bの端部50a側には幅狭部56が形成されている。受桁50A,50Bは、幅狭部56の部分が敷桁30上に載置されて固定されている。幅狭部56の大きさは特に限定されないが、使用するボルト径と規定の余裕代を満足する拡大孔径、さらにボルト孔外縁からの規定の縁端距離以上を満足する必要があり、少なくとも敷桁30B上で、一の受桁50Aと、隣の受桁50Bとが接触(あるいは僅かに離間していてもよい)する部分は、少なくとも幅狭部56とされていることが好ましい。すなわち、前後方向D1から見て、受桁50Aと受桁50Bとが重なる領域は、少なくとも幅狭部56とされていることが好ましい。本実施形態では、受桁50Aの幅狭部56の基端部56a(幅狭部56とテーパー部57との境界位置)は、受桁50Bの幅狭部56の長手方向の端部50aよりも、敷桁30の幅方向における外側に配置されている。従って、受桁50Bの端部50aが受桁50Aのテーパー部57や幅広部54と干渉することが防止される。受桁50Bの幅狭部56の基端部56aは、受桁50Aの幅狭部56の長手方向の端部50aよりも、敷桁30の幅方向における外側に配置されている。従って、受桁50Aの端部50aが受桁50Bのテーパー部57や幅広部54と干渉することが防止される。さらにテーパー部57の位置には受桁50A,50Bを敷桁30に固定するボルトを締結する際に手を入れられるスペースを形成することができる。
一方、敷桁30Aと敷桁30Bとの間の横方向D2の略全域において、受桁50Aの幅広部54が形成されている。また、敷桁30Cと敷桁30Bとの間の横方向D2の略全域において、受桁50Bの幅広部54が形成されている。これによって、敷桁30A,30B,30C上において、一の受桁50A,50Bと隣の受桁50A,50Bとの間の隙間の大きさG1に比して、各敷桁30A,30B,30C間の領域における隙間の大きさG2を小さくすることができる。すなわち、当該領域での受桁50A,50Bの上面50cの面積を極力広くすることができ、前部タワー4の脚部21を固定可能な場所を広くすることができる。
図7及び図8に示すように、前部タワー4の脚部21の下端部における台座部23は、受桁50A,50Bのうち、上面50cの面積が広くされた幅広部54に対応する位置で、受桁50A,50Bに固定される。脚部21の台座部23は、受桁50A,50Bの上面50cに固定された取付鉄板81上に、タワー脚部ボルト83を介して固定されている。取付鉄板81は、横方向D2の両縁部に複数の貫通孔を有している(図8参照)。受桁50A,50Bと取付鉄板81とを固定する時は、取付鉄板81の複数の貫通孔の何れかで受桁50A,50Bのウェブに干渉しない位置でさらに受桁50A,50Bの上フランジ部51にあけた孔の縁端距離が確保される位置に取付鉄板ボルト82を挿通させて固定する。なお、受桁50A,50Bの上フランジ部51側の貫通孔は、予め選択可能なように前後方向D1に複数、横方向D2にピッチをずらして複数列設けておいてもよく、事前に孔あけをしておくよりは施工誤差を考慮し、必要なタイミングで必要な箇所に取付鉄板81の貫通孔をガイドに削孔機械で孔をあけてもよい。幅広部54によって取付鉄板ボルト82のための広い幅が確保されているため、確実な固定が可能となる。取付鉄板81及び台座部23の横方向D2における一端側は受桁50A側で固定され、他端側は受桁50B側で固定される。すなわち、取付鉄板81及び台座部23は、敷桁30Bに支持された状態で、受桁50A,50Bに固定される。これによって、前部タワー4の脚部21は、敷桁30Bを跨ぐと共に、敷桁30Bの幅方向(横方向D2)の両端側において、受桁50A,50B上でそれぞれ固定されるような構成となる。なお、タワーに鉛直上向きの力(浮き上がり力)が生じる場合には、取付鉄板81の取付鉄板ボルト82に引張力が生じることに伴い、取付鉄板81に曲げ応力が生じる。従ってこの際には、取付鉄板81を高強度あるいは厚肉にするか、取付鉄板81のボルト用の貫通孔をタワー下沓の固定部近くとすることによって取付鉄板ボルト82の引張力を低減させる。
図8に示すように、敷桁30B付近の領域では、一の受桁50A,50Bと隣の受桁50A,50Bとの間の隙間を広く確保することで空間部75が形成されている(図8中のEで示す領域を参照)。本実施形態では、受桁50Aの幅狭部56の基端部56aが、受桁50Bの長手方向の端部50a、及び敷桁30Bの上フランジ部31の幅方向における端部31bよりも外側に配置されている。従って、幅狭部56における幅方向の端部50bと、テーパー部57と、上フランジ部31の端部30b(あるいは、受桁50Aの端部50a)とで囲まれる部分に空間部75が形成される。また、受桁50Bの幅狭部56の基端部56aが、受桁50Aの長手方向の端部50a、及び敷桁30Bの上フランジ部31の幅方向における端部31bよりも外側に配置されている。従って、幅狭部56における幅方向の端部50bと、テーパー部57と、上フランジ部31の端部30b(あるいは、受桁50Bの端部50a)とで囲まれる部分に空間部75が形成される。なお、G2が十分広い場合や、受桁50と敷桁30を嵌め込み凹凸構造等とすることでボルト締結を不要にした場合には、幅狭部56の基端部56aが、敷桁30の上フランジ部31の端部30bよりも内側に配置されることで、空間部75が形成されていなくともよい。
以上のような構成により、前部タワー4からの押し込み力は、脚部21、取付鉄板81、受桁50、敷桁30、橋脚2の横梁101の隔壁部102の順で伝達される。受桁50には敷桁30を支点としたスパンで曲げとせん断力が発生する。また、引張力は、各ボルトを介して、脚部21、取付鉄板81、受桁50、敷桁30、橋脚2の横梁101の上フランジ、隔壁部102の順で伝達される。横梁101の上フランジには曲げとせん断力が発生する。
次に、本実施形態に係る仮設構造物100、固定方法、受桁50、及び敷桁30の作用・効果について説明する。
本実施形態に係る仮設構造物100は、敷桁30Bの幅方向における一方において横方向D2に延びると共に、一端部側が敷桁30B上に固定される受桁50Aと、敷桁30Bの幅方向における他方において横方向D2に延びると共に、一端部側が敷桁30B上に固定される受桁50Bと、を備えている。また、受桁50A,50Bは、敷桁30Bが延びる前後方向D1に沿って互い違いに複数並べられている。このような配置により、敷桁30Bの幅方向の両側には、各受桁50A,50Bが所定間隔で並べられることで、前部タワー4を受けるための受面が構成される。また、敷桁30A,30B,30Cで受桁50A,50Bを横梁101の上面から離間した位置で支持することにより、横梁101上の添接板等の障害物を回避することができる。ここで、受桁50Aの敷桁30B上に固定される一端部側には、横方向D2に延びる幅広部54に比して狭い幅を有する幅狭部56が形成される。また、受桁50Bの敷桁上に固定される一端部側には、横方向D2に沿って延びる幅広部54に比して狭い幅を有する幅狭部56が形成される。これによって、敷桁30B上では、各々の受桁50A,50Bの幅狭部56が隣り合うように配置される一方で、敷桁30Bの幅方向の両側の領域では、幅広部54によって各受桁50A,50Bの幅を広くすることによって、前部タワー4の脚部21に対して十分な広さの受面を確保することができる。これにより、前部タワー4を橋脚2に仮固定する際に、確実に固定を行うことができる。受面が広いことによって、固定用の太い径のボルト82を締結するための十分なスペースを確保できる。
これは、受桁50A,50Bのウェブ部53を除く片側の上フランジ部51の面積をより大きく確保することで、ボルト固定する際に施工誤差を考慮したボルト孔を削孔するスペースを提供するだけでなく、ボルト孔から上フランジ部51の外縁までの所要の強度を満足する縁端距離が得られるということを意味する。ここで、図16(a)に示すように、敷桁30上で受桁150A,150Bを固定する際に、突き合わせ固定をした場合、一の受桁150A,150Bの端部と敷桁30を固定するボルト72の本数は2本である一方、図16(b)に示すように、受桁250A,250Bを敷桁30に互い違いに配置して固定する構造とした場合、4本のボルト72で固定することが可能となり、より多くのボルト本数による固定を行うことで、高い耐震性を付与することができる。更に、図16(b)の受桁150A,150Bは一定幅で延びているため受桁間の隙間Gが大きくなり、無駄なスペースが増えることによりボルト82のためのボルト孔を空けるための受面が狭くなる。例えば、受桁250B,250B間の位置にはボルト82を固定することができず(例えば、図中PGで示す位置にはボルト82を固定できない)、このようなボルト82を固定できない領域が広くなる。一方、本実施形態に係る図16(c)の構造では、図16(b)の構造よりも受桁間の隙間Gが狭くなり、無駄なスペースが減ることによりボルト82のためのボルト孔を空けるための受面が広くなる。以上のように、受桁50A,50Bの敷桁固定部分を幅狭とし、他を幅広とすることで、突き合わせ固定としない欠点(ボルト孔をあけるための受面が狭くなること)を補い、且つ、受桁50A,50Bを敷桁30にボルト締結する際の手を入れるための最小限のスペース(空間部75)も確保できる。
また、本実施形態に係る仮設構造物100において、幅狭部56は、敷桁30Bの幅方向における端部30b(ここでは、上フランジ部31における端部31b)よりも外側まで延びている。これによって、敷桁30Bの幅方向における端部30bと、幅広部54との間には、空間部75が形成される。作業者は、当該空間部75を利用して、ボルト締め等の作業を容易に行うことが可能となる。
また、幅広部56を設けることで耐震性が向上する。これは、受桁50は鉛直方向の自重に対して強軸配置(上下フランジが相対する向き)されており、橋軸方向(D1方向)の水平力に対する受桁は弱軸配置となっているためである。タワー脚部のボルトについては、特に「桁仮設装置移動」や「桁架設機の方向転換(横取り回転)」の際に、時間に制約がある場合(鉄道工事では隣接電車が止まっている時間、道路工事では通行車両を止めている時間など)、少ない本数のボルトで固定することが有利であるため、タワー脚部が固定された1本の受桁に地震時の水平力が集中しやすい。そのため、このような少しでも高い耐震性を有する構造が有効となる。
また、本実施形態に係る仮設構造物100において、受桁50A,50Bは、幅狭部56と幅広部54とを接続し、幅狭部56から幅広部54へ向かって広がるように傾斜するテーパー部57を有している。これによって、受桁50を敷桁30にボルト締結する際の手を入れるためのスペースを確保している。上下フランジ部が幅狭部56から幅広部54に至る箇所は平面的に階段状(カギ形状)にしてもよい(ボルト締結の際に手を入れるスペースが若干大きくなる)が、そのようなカギ形状とせずにテーパー状とすることで、応力をスムーズに伝達させることができる。
また、本実施形態に係る仮設構造物100において、敷桁30Bの下面側の幅方向における大きさは、敷桁30Bの上面側の幅方向の大きさに比して大きい。敷桁30Bの上面側では、当該敷桁30Bと受桁50A,50Bとがボルト等によって固定される。一方、敷桁30Bの下面側では、当該敷桁30Bと横梁101とがボルト等によって固定される。敷桁30Bの下面側の幅方向における大きさが、上面側に比して大きいため、敷桁30Bと横梁101との間の固定を(例えば、ボルトを太くすることにより少ない本数で)確実に行うことができる。少ないボルト本数にできることは、被固定構造物上に形成される凹凸部(被固定構造物を構築する(組み立てる)際の添接板やボルト)が敷桁に干渉する場合に有効である。一方、敷桁30Bの上面側を小さくすることで、各受桁50A,50Bの幅狭部56の大きさを小さくすることができ、これにより、脚部21の受面となる幅広部54を大きくすることができる。
また、本実施形態に係る仮設構造物100において、敷桁30Bと受桁50A,50Bとの接合部には、せん断キー86が設けられている。これによって、敷桁30Bと受桁50A,50Bとの間で、ボルト耐力を補う形でせん断方向に作用する荷重を確実に支持することができる。また、これにより耐震性の向上が図られるだけでなく、所要の強度に対して、ボルト本数を少なくしたり、ボルト径を細くしたり、ボルト強度を低い安価なものにしたりすることも可能となる。
また、本実施形態に係る固定方法では、脚部21は敷桁30Bを跨ぐと共に、敷桁30Bの幅方向における両端側において、受桁50A上及び受桁50B上で固定されている。これによって、前部タワー4の脚部21を敷桁30Bで支持することができ、前部タワー4を確実に支持することが可能となる。なお、受桁50A,50Bの鉛直方向の強度にもよるが、タワーの1の脚部21の下は少なくとも2本の敷桁30、並びに敷桁30を支持する被固定構造物の堅固な隔壁(ダイアフラム)等があることが、強度上、望ましい。
また、本実施形態に係る仮設構造物100の受桁50A,50Bでは、横梁101上の敷桁30に固定される端部側には、横方向D2に延びる幅広部54に比して狭い幅を有する幅狭部56が形成される。このような受桁50を上述のような仮設構造物100に適用することで、前部タワー4に対して十分な広さの受面を確保することができる。これにより、前部タワー4を横梁101に仮固定する際に、確実に固定を行うことができる。
また、本実施形態に係る仮設構造物100の敷桁30Bでは、横梁101上に配置される下面側の幅方向における大きさは、受桁50A,50Bの端部側が配置される上面側の幅方向の大きさに比して大きい。このような敷桁30Bを上述のような仮設構造物100に適用することで、敷桁30Bの下面側の幅方向における大きさが、上面側に比して大きいため、敷桁30Bと横梁101との間の固定を(例えば、ボルトを太くすることにより)確実に行うことができる。一方、敷桁30Bの上面側を小さくすることで、各受桁50A,50Bの幅狭部56の大きさを小さくすることができ、これにより、前部タワー4の受面となる幅広部54を大きくすることができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、敷桁30が延びる方向(請求項における「第1の方向」)は、桁架設装置1の前後方向D1と平行であったが、当該前後方向D1に対して傾斜していてもよい。また、受桁50が延びる方向(請求項における「第2の方向」)は、桁架設装置1の横方向D2と平行であったが、当該横方向D2に対して傾斜していてもよい。例えば、図15(a)に示すように、敷桁30が、前後方向D1に対して傾斜する方向D3に延びていてよい。この際は、受桁50と敷桁30が直交しない。
また、橋脚2の横梁101は、複数の部材を組み合わせて構成される場合がある(図6参照)。従って、図15(b),(c)に示すように、横梁101上に部材同士を連結する連結部材92が配置される場合がある。すなわち、横梁101上に凹凸部が形成される場合がある。これに対して、敷桁30の下面側には、横梁101上に形成される凹凸部(ここでは連結部材92)を回避するように、切欠部91が形成されている。これによって、凹凸部が設けられているような箇所においても敷桁30を固定することができる。従って、横梁101上の凸凹部の制約を受けることを抑制し、脚部21の仮固定を確実に行える位置に敷桁30を配置することができる。
また、補強リブ34とウェブ部33は垂直をなしていなくともよい。例えば、図17に示す敷桁30の補強リブ34は、ウェブ部33に対して傾斜するように設けられている。なお、図17の敷桁30は、下フランジ部32の一部に切欠部91が設けられており、横梁101上の凸凹部を回避可能となっている。
また、受桁50は、長手方向の端部側に幅狭部56が形成され、他の部分(敷桁30間の位置)に幅広部54が形成されていればよく、どのような態様で幅広部54が広がっているかは特に限定されない。例えば、幅広部54が、幅方向における一方側のみに幅広となっていてよい。具体的には、幅方向における一方側では、フランジ部51,52の幅方向の端部51b,52b(幅広部54に対応する部分の端部)が、端部51c,52c(幅狭部56に対応する部分の端部)よりも外側に広がっており、幅方向における他方側では、端部51b,52bと端部51c,52cが直線状に延びていてよい(この場合、テーパー部57は設けられない)。
また、上述の実施形態では、構造物として前部タワー及び後部タワーを例示すると共に、被固定構造物として橋脚(の横梁)を例示したが、構造物及び被固定構造物はこれらに限定されない。例えば、被固定構造物である橋脚やビル屋上に対して、構造物としてタワークレーンやビル窓拭き用のゴンドラクレーン(吊り下げ装置)を仮固定する際に、当該仮設構造物を用いてもよい。
なお、構造物を仮固定するための仮設構造物については、その上部を歩道、道路、鉄道、水路、等に利用する際の本設(永久)構造物の一部として残置または利用してもよい。ただし、そのためには仮設年数以上の、所要の耐久性を有するための塗装やメッキ等の防錆処理が必要となる。