JP2014222582A - 正極活物質およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガスの発生が抑制され、安全性に関わる外装容器の膨れが防止され、特性が向上したリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】正極活物質の単位質量(g)当たり2mAの定電流で4.6Vまで充電する初回充電によって発生する水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンの合計量が、前記正極活物質に対して50mL/g以下である正極活物質を提供する。【選択図】図2
Description
本発明は、正極活物質、およびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度の高い電池として、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器に多用されているだけでなく、電力貯蔵設備やハイブリッド自動車等の車載用動力としての期待が高まっている。
このようなリチウムイオン二次電池では、小型高容量化、すなわち体積エネルギー密度の飛躍的な増大に伴い、高電位充電や過充電の防止や内部短絡の防止等が大きな課題となっている。さらに、充電時の酸素等のガス発生により、外装容器(例えば、缶など)に膨れ等が生じるおそれがあった。特に、加工のし易さ等から、外装容器の材料として軟質アルミニウム等を用いた場合には、充電時のガス発生により前記外装容器に顕著な膨れが生じることがあった。
高電位や過充電時のリチウムイオン二次電池における酸素の発生は、リチウムイオン二次電池を構成する正極活物質に起因するものが大きいと考えられる。すなわち、リチウムおよび/またはリチウムイオンを吸蔵・放出する正極活物質は、充電の際にリチウムの脱離によって熱的に不安定になり、酸素を放出する。そして、放出された酸素は、非水電解質(電解液)の溶媒等と発熱分解反応を起こして、二酸化炭素等のガスや水を発生する。さらに、発生した水が負極のリチウム箔や電解液の溶媒と反応して水素を発生させる。このようなガスの発生の結果、電池内が高温になるばかりでなく、電池の破損や発火に至るおそれがある。また、このような酸素や水素、その他のガスが発生すると、前記電池の外装の膨れだけでなく、非水電解質の分解反応による電極表面の特性変化や、非水電解質の物性や量の変化が生じ、電池の出力特性や寿命特性を悪化させる原因ともなる。
従来、中・大型のリチウムイオン二次電池において、ガス発生による外装容器の膨れ等を緩和する方法として、電池内の空隙部(デッドスペース)を大きく設けることが考えられるが、このような設計は、リチウムイオン二次電池が有する高エネルギー密度という特徴に反するものであり好ましくなかった。
非特許文献1には、充電時のガス発生を抑制するため、正極をVOxで表面処理する技術が提示されている。すなわち、Li2MnO3とLiNi0.4Co0.2Mn0.4O2の固溶体(1/1モル比)からなる正極活物質と、導電材とバインダから成る正極(Al集電体)の表面に、イソプロポキシバナジウム溶液を滴下し空気雰囲気で加水分解することで、正極表面とその細孔をVOx層で完全に被覆する方法が提示されている。このようなリチウムイオン二次電池においては、充電時の酸化反応により放出される酸素が劇的に低減することから、VOxが正極表面を保護することで、酸素と考えられる放出ガスがトラップされていることがわかる。
しかしながら、非特許文献1の方法では、VOxによる被覆が正極の表面近傍に限られ、正極活物質の粒子表面に均一な被覆がなされていないと推測され、正極活物質からのガス発生を抑制する効果が不十分であった。
また、特許文献1には、初回充電時等の電池作動時でのガス発生に伴う外装缶等の膨れを抑制するために、定電流で4.0Vに達するまでの充電を行う初回充電での水素発生量を指標とし、その水素発生量が単位容積当たりで15μL以下になるように、水分量を抑えた電極群を用いることが記載されている。そして、電極群中の水分を低減する方法として、水溶性で低沸点の有機溶剤により水分を共沸状態として蒸発させる方法が提示されている。
しかしながら、特許文献1では、電極群に残存する水分だけが除去されているため、充電時に正極活物質から発生する酸素を抑制できず、リチウムイオン二次電池全体のガス発生を十分に抑制することはできていない。
Chem. Commun., 2010, Vol. 46, p. 4190-4192
本発明は、リチウムイオン二次電池において、初回充電等の電池作動時のガスの発生が抑制され、サイクル特性等の電池性能の向上とともに、安全性に関わる外装容器(缶など)の膨れ等の防止が可能な正極活物質を提供することを目的とする。
本発明の正極活物質は、正極活物質の単位質量(g)当り2mAの定電流で4.6Vまで充電する初回充電によって発生する水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンの合計量が、前記正極活物質に対して50mL/g以下であることを特徴とする。
本発明の正極活物質において、前記水素の発生量は、前記正極活物質に対して48mL/g以下であることが好ましい。また、正極活物質は、下記式(1)で表わされるリチウム含有複合酸化物であることが好ましい。
Li1+aNibCocMndM´eO2+f …………(1)
(式中M´は、Mg、Ca、Sr、BaおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。また、a〜eはそれぞれ、0.1≦a≦0.6、0.01≦b≦0.5、0≦c≦0.3、0.2≦d≦0.9、0.90≦b+c+d≦1.05、0≦e≦0.05を満足させる数であり、fは、このリチウム含有複合酸化物が電気的に中性になるように、Li、Ni、Co、MnおよびM´の価数によって決定される数である。)
Li1+aNibCocMndM´eO2+f …………(1)
(式中M´は、Mg、Ca、Sr、BaおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。また、a〜eはそれぞれ、0.1≦a≦0.6、0.01≦b≦0.5、0≦c≦0.3、0.2≦d≦0.9、0.90≦b+c+d≦1.05、0≦e≦0.05を満足させる数であり、fは、このリチウム含有複合酸化物が電気的に中性になるように、Li、Ni、Co、MnおよびM´の価数によって決定される数である。)
さらに、正極活物質の比表面積は、1m2/g以上が好ましい。また、正極活物質は、前記リチウム含有複合酸化物の表面に、充放電過程において安定でかつ酸素を捕捉可能な化合物(Y)が存在することができる。そして、前記化合物(Y)は、Al2O3、ZrO2、TiO2、SnO2、およびVOxからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、正極活物質は、オゾン処理されたものを含むことができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記した本発明の正極活物質を有する正極と、リチウムまたはリチウムを吸蔵、放出できる物質を負極活物質として有する負極と、セパレータ、および非水電解質を備えている。
本発明の正極活物質によれば、電池内での発生が予想される、水素ガスをはじめとする各種のガスの発生量の合計が、正極活物質の単位質量当たり所定量以下に抑制できる。そして、本発明の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池によれば、放電容量やサイクル特性等の電池特性に優れているうえに、外装容器の膨れ等が防止され、安全性が高く寿命も延長される。
<正極活物質>
本発明の正極活物質は、該正極活物質の単位質量(g)当たり2mAの定電流で4.6Vまで充電する初回充電(以下、単に「初回充電」という。)によって発生する水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンの合計量が、正極活物質に対して50mL/g以下である。
ここで、「 /g」は、正極活物質の単位質量(g)当たりの量を示す。
本発明の正極活物質は、該正極活物質の単位質量(g)当たり2mAの定電流で4.6Vまで充電する初回充電(以下、単に「初回充電」という。)によって発生する水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンの合計量が、正極活物質に対して50mL/g以下である。
ここで、「 /g」は、正極活物質の単位質量(g)当たりの量を示す。
発生する水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンの合計量は、本発明の正極活物質を有する正極と、リチウムを有する負極と、セパレータ、およびLiPF6をエチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒に溶解させた電解液を備えるリチウムイオン二次電池において、初回充電を行った際に発生する量である。より具体的には、実施例に記載のリチウムイオン二次電池での条件である。
なお、初回充電とは、本発明の正極活物質を備えたリチウムイオン二次電池に対して初めて充放電を行った場合をいう。
なお、初回充電とは、本発明の正極活物質を備えたリチウムイオン二次電池に対して初めて充放電を行った場合をいう。
前記ガスの発生量の合計は、40mL/g以下がより好ましく、30mL/g以下が特に好ましい。なお、本発明において、各種のガス発生量およびその合計量は25℃における値である。また、前記ガスの発生量は、充電時における電池セルの内圧変化量と、ガスクロマトグラフによる生成ガス種の分析によって評価することができる。具体的には、実施例に記載の方法で評価される。
水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンの発生量の合計が、50mL/g以下であれば、リチウムイオン二次電池において、放電容量やサイクル特性等の電池特性に優れ、外装容器の膨れ等が抑制でき、安全性に優れる。
水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンの発生量の合計が、50mL/g以下であれば、リチウムイオン二次電池において、放電容量やサイクル特性等の電池特性に優れ、外装容器の膨れ等が抑制でき、安全性に優れる。
本発明の正極活物質において、リチウムイオン二次電池の充電によって生じる水素の発生量は、水素がガス発生量の大半を占めることから、48mL/g以下であることが好ましい。水素の発生量は、38mL/g以下がより好ましく、28mL/g以下が特に好ましい。
このように、初回充電によって発生する水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンの合計量が、50mL/g以下に抑制されたリチウムイオン二次電池は、例えば、以下の正極活物質を用いることで実現することができる。
正極活物質(1):リチウム含有複合酸化物の表面に、充放電過程において安定でありかつ酸素を捕捉可能な化合物(Y)を存在させた正極活物質。
正極活物質(2):リチウム含有複合酸化物をオゾン処理した正極活物質。
正極活物質(1):リチウム含有複合酸化物の表面に、充放電過程において安定でありかつ酸素を捕捉可能な化合物(Y)を存在させた正極活物質。
正極活物質(2):リチウム含有複合酸化物をオゾン処理した正極活物質。
<正極活物質(1)>
(リチウム含有複合酸化物)
リチウム含有複合酸化物としては、例えば、以下の式(1)で表される、Li元素のモル量がNi、Co、Mnおよび後述するM´の総モル量に対して1.1倍以上の化合物(i)を挙げることができる。なお、下記式(1)は、充放電および活性化の処理を行う前の式である。活性化とは、酸化リチウム(Li2O)、またはリチウムおよび酸化リチウムを、正極活物質から取り除くことを意味する。活性化の方法としては、例えば、4.4V(Li+/Liの酸化還元電位との電位差として表される値である。)より大きな電圧で充電する電気化学的活性化法が挙げられる。その他、硫酸、塩酸または硝酸等の酸を用いた化学反応を行うことにより、化学的に活性化を行うこともできる。
(リチウム含有複合酸化物)
リチウム含有複合酸化物としては、例えば、以下の式(1)で表される、Li元素のモル量がNi、Co、Mnおよび後述するM´の総モル量に対して1.1倍以上の化合物(i)を挙げることができる。なお、下記式(1)は、充放電および活性化の処理を行う前の式である。活性化とは、酸化リチウム(Li2O)、またはリチウムおよび酸化リチウムを、正極活物質から取り除くことを意味する。活性化の方法としては、例えば、4.4V(Li+/Liの酸化還元電位との電位差として表される値である。)より大きな電圧で充電する電気化学的活性化法が挙げられる。その他、硫酸、塩酸または硝酸等の酸を用いた化学反応を行うことにより、化学的に活性化を行うこともできる。
Li1+aNibCocMndM´eO2+f …………(1)
式(1)において、M´は、Mg、Ca、Sr、BaおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。初期放電容量およびサイクル特性に優れる正極活物質が得られることから、これらの中でも、MgおよびAlが特に好ましい。
式(1)において、M´は、Mg、Ca、Sr、BaおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。初期放電容量およびサイクル特性に優れる正極活物質が得られることから、これらの中でも、MgおよびAlが特に好ましい。
また、式(1)において、a〜eはそれぞれ、
0.1≦a≦0.6、
0.01≦b≦0.5、
0≦c≦0.3、
0.2≦d≦0.9、
0.90≦b+c+d≦1.05、
0≦e≦0.05を満足させる数である。a〜eの値が前記の範囲であれば、4.6V以上の高い充電電圧を印加した場合に、単位質量あたりの放電容量が高い正極活物質が得られる。
0.1≦a≦0.6、
0.01≦b≦0.5、
0≦c≦0.3、
0.2≦d≦0.9、
0.90≦b+c+d≦1.05、
0≦e≦0.05を満足させる数である。a〜eの値が前記の範囲であれば、4.6V以上の高い充電電圧を印加した場合に、単位質量あたりの放電容量が高い正極活物質が得られる。
式(1)におけるaは、初期放電容量および初期放電電圧が高い正極活物質が得られることから、0.1≦a≦0.4の範囲がより好ましい。同様の理由で、式(1)におけるbは、0.15≦b≦0.45の範囲がより好ましく、0.2≦b≦0.45の範囲が特に好ましい。また、式(1)におけるcおよびdは、それぞれ同様の理由で、0≦c≦0.2および0.35≦d≦0.85の範囲がより好ましく、0≦c≦0.15および0.4≦d≦0.8の範囲が特に好ましい。さらに、初期放電容量とサイクル特性に優れる正極活物質が得られることから、式(1)におけるeは、0.001≦e≦0.05の範囲がより好ましく、0.001≦e≦0.02の範囲が特に好ましい。
さらに、式(1)におけるfは、このリチウム含有複合酸化物が電気的に中性の化合物になるように、Li、Ni、Co、MnおよびM´の価数に応じて決まる、−0.1≦f≦0.6の範囲の数である。
リチウム含有複合酸化物として、具体的には、以下の式で表される化合物が挙げられる。
Li1.45(Ni0.20Co0.15Mn0.65)O2
Li1.28Ni0.33Co0.04Mn0.63O2.28
Li1.26Ni0.33Co0.04Mn0.63O2.26
Li1.24Ni0.33Co0.04Mn0.63O2.24
これらの中でも、式:Li1.45(Ni0.20Co0.15Mn0.65)O2で表される化合物が特に好ましい。これらのリチウム含有複合酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Li1.45(Ni0.20Co0.15Mn0.65)O2
Li1.28Ni0.33Co0.04Mn0.63O2.28
Li1.26Ni0.33Co0.04Mn0.63O2.26
Li1.24Ni0.33Co0.04Mn0.63O2.24
これらの中でも、式:Li1.45(Ni0.20Co0.15Mn0.65)O2で表される化合物が特に好ましい。これらのリチウム含有複合酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
リチウム含有複合酸化物は、粒子状を有する。粒子の形状は、球状、針状、板状等であり、特に限定されないが、充填性を高くできることから球状がより好ましい。また、これらの粒子が複数凝集した二次粒子を形成してもよく、この場合も、充填性を高くできる球状の二次粒子が好ましい。粒子の平均粒子径(D50)は4〜25μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。なお、この平均粒子径(D50)は、体積基準で粒度分布を求め、全体積を100%とした累積カーブにおいて、50%となる点の粒子径である体積基準累積50%径を意味する。粒度分布は、レーザー散乱粒度分布測定装置で測定した頻度分布、および累積体積分布曲線として求められる。粒子径の測定は、粉末を水媒体中に超音波処理等で充分に分散させ、例えば、HORIBA社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(装置名;Partica LA−950VII)を使用して粒度分布を測定することにより行なわれる。
リチウム含有複合酸化物の比表面積は、1〜10m2/gが好ましく、2〜8m2/gがより好ましく、3〜6m2/gが特に好ましい。リチウム含有複合酸化物の比表面積が下限値以上であれば、放電容量などの電池特性に優れ、上限値以下であれば、リチウム含有複合酸化物表面に付着する残存水分を低減でき、かつ高電位の充電においても酸素の発生を抑制しやすい。
なお、比表面積は、BET(Brunauer,Emmett,Teller)法を用いて測定した値である。
なお、比表面積は、BET(Brunauer,Emmett,Teller)法を用いて測定した値である。
このようなリチウム含有複合酸化物の製造方法としては、例えば共沈法により得られたリチウム含有複合酸化物の前駆体化合物(共沈組成物)とリチウム化合物を混合して焼成する方法、水熱合成法、ゾルゲル法、乾式混合法(固相法)、イオン交換法、ガラス結晶化法等を適宜用いることができる。リチウム含有複合酸化物中に遷移金属元素が均一に含有されると、放電容量が向上するため、共沈法により得られたリチウム含有複合酸化物の前駆体化合物とリチウム化合物とを混合して焼成する方法を用いることが好ましい。
共沈法では、前駆体化合物の組成に合わせて、ニッケル化合物、コバルト化合物、マンガン化合物、および前記式(1)においてM´で表されるその他の金属元素(以下、単にM´と示す。)化合物等を混合して調製する。ニッケル化合物、コバルト化合物、マンガン化合物、およびM´化合物として、具体的には、それぞれの元素の水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物等を用いることができる。また、ニッケル、コバルト、マンガン、M´の各元素を任意の組み合わせで共沈させた、共沈水酸化物、共沈酸化物、共沈オキシ水酸化物等を用いることができる。
次いで、こうして得られた前駆体化合物と、リチウム化合物とを混合し焼成することにより前記リチウム含有複合酸化物が得られる。リチウム化合物としては、炭酸リチウム、水酸化リチウムおよび硝酸リチウムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、炭酸リチウムがより好ましい。リチウム化合物の平均粒径は、2〜25μmが好ましい。また、前駆体化合物とリチウム化合物との混合物に対して、必要に応じて水を混合してもよい。
前記リチウム化合物を使用した場合、焼成する方法は、800℃より低い温度で焼成する仮焼成と、800℃以上で焼成する本焼成を行うことが好ましい。仮焼成の温度としては、800℃より低い温度であって、かつ該リチウム化合物の溶融温度を超える温度で加熱して仮焼成することが好ましく、300〜600℃がより好ましい。仮焼成を行うことで、リチウム化合物が溶融するため、リチウムイオンの固体内拡散がより促進される結果、リチウム占有率が高く、高結晶で導電性に優れたリチウム含有複合酸化物を得ることができる。本焼成の温度としては、結晶性が高く目的とする結晶相を得やすいことから、800〜1000℃が好ましく、800〜900℃がより好ましい。
(安定かつ酸素を捕捉可能な化合物(Y))
充放電過程において安定でありかつ酸素を捕捉可能な化合物(以下、単に「化合物(Y)」という。)としては、Al2O3、ZrO2、TiO2、SnO2、およびVOxからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。電気化学的に安定であり、かつ酸素の捕捉能力に優れることから、これらの中でもAl2O3およびVOxの使用が好ましい。
充放電過程において安定でありかつ酸素を捕捉可能な化合物(以下、単に「化合物(Y)」という。)としては、Al2O3、ZrO2、TiO2、SnO2、およびVOxからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。電気化学的に安定であり、かつ酸素の捕捉能力に優れることから、これらの中でもAl2O3およびVOxの使用が好ましい。
正極活物質(1)において、化合物(Y)は、リチウム含有複合酸化物の表面の少なくとも一部に存在していればよく、表面全体に存在していてもよい。さらに、化合物(Y)は、リチウム含有複合酸化物の表面に被膜を形成していてもよい。
化合物(Y)は、微粒子としてリチウム含有複合酸化物の表面に存在することが好ましい。化合物(Y)の平均粒子径は、0.1〜100nmが好ましく、0.1〜50nmがより好ましい。ここで、平均粒子径は、リチウム含有複合酸化物粒子の表面に存在する微粒子の直径の平均値として表される。被覆の形状および微粒子の平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)のような電子顕微鏡により測定・評価することができる。
化合物(Y)の量は、初回充電時のガスの発生を抑制できることから、リチウム含有複合酸化物に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、1〜3質量%が特に好ましい。
化合物(Y)は、微粒子としてリチウム含有複合酸化物の表面に存在することが好ましい。化合物(Y)の平均粒子径は、0.1〜100nmが好ましく、0.1〜50nmがより好ましい。ここで、平均粒子径は、リチウム含有複合酸化物粒子の表面に存在する微粒子の直径の平均値として表される。被覆の形状および微粒子の平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)のような電子顕微鏡により測定・評価することができる。
化合物(Y)の量は、初回充電時のガスの発生を抑制できることから、リチウム含有複合酸化物に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、1〜3質量%が特に好ましい。
このように、リチウム含有複合酸化物の表面に、充放電過程において安定でかつ酸素を捕捉可能な前記化合物(Y)を含む被覆を設けたものを、正極活物質として使用することで、充放電の際にリチウム含有複合酸化物から発生する酸素が非水電解質(電解液)の溶媒等と発熱分解反応を起こして、二酸化炭素や水素等のガスを発生するのを防止することができると考えられる。そのため、電池内での水素ガスをはじめとするガスの発生を抑制することができるので、外装容器の膨れや電池特性の低下を防止し、安全性が高く長寿命のリチウムイオン二次電池を得ることができると考えられる。
リチウム含有複合酸化物の表面に前記化合物(Y)を存在させるには、例えば、以下に示すようにして化合物(Y)を含む被覆を形成する方法を採ることができる。すなわち、リチウム含有複合酸化物と、化合物(Y)を構成するAl、Zr、Ti、Sn、Vから選ばれる少なくとも1種の金属元素を有する陽イオンを含む水溶液とを接触させた(接触工程)後、得られたリチウム含有複合酸化物を250〜700℃に加熱する(加熱工程)。
接触工程における水溶液に含まれる陽イオンとしては、Al3+、Zr4+、Ti4+、Sn2+、Sn4+、V4+、V5+であっても、前記金属元素を有する錯イオンであってもよいが、前記金属元素のイオンであることが好ましい。陽イオンとしては、Al3+、V4+、V5+が好ましく、安定な被膜を形成できるうえに、陽イオンの分子量が小さく、後述する非水電解質二次電池の単位質量あたりの放電容量、レート特性、サイクル特性に優れることから、Al3+がより好ましい。
陽イオンを含む水溶液は、前記金属元素を含む水溶性化合物を水性溶媒に溶解させた水溶液である。前記金属元素を含む水溶性化合物としては、前記金属元素と、加熱によって分解、蒸散する陰イオンとを組み合せた化合物が好ましく、前記金属元素の硝酸塩、硫酸塩、塩化物等の無機塩、酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩または有機錯体、アンミン錯体等が挙げられる。これらの中でも、溶媒への溶解性が高く、かつ陰イオンが熱により分解しやすいことから、硝酸塩、有機酸塩、有機錯体、アンミン錯体が特に好ましい。具体的には、前記水溶性化合物として、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム、マレイン酸アルミニウムが好ましい。
この水溶液は、前記金属元素を有する陽イオンの他に、H+、NH4 +などの、加熱により分解、蒸散する陽イオンを含んでいてもよい。また、この水溶液は、このような陽イオンの他に、OH−、NO3 −、CO3 2−などの、加熱によって分解、蒸散する陰イオンを含んでいてもよい。なお、本明細書において、「加熱により分解、蒸散する」とは、後述する加熱工程で250〜700℃に加熱された場合に、分解して蒸散し、被覆に残留しないことをいう。
被覆に含有される前記金属元素の量(モル量)は、母材であるリチウム含有複合酸化物のモル量に対して、0.001〜0.03が好ましい。被覆中の前記金属元素の量をこの範囲に制御するため、前記水溶液中に含有される前記金属元素を有する陽イオンの量(モル量)は、前記リチウム含有複合酸化物の量(モル量)に対して、0.001〜0.03が好ましい。前記リチウム含有複合酸化物に対する前記陽イオンの量(モル量)は、0.005〜0.02がより好ましく、0.01〜0.015が特に好ましい。なお、水溶液中に含有される陽イオンの量(モル量)は、ICP(高周波誘導結合プラズマ)などで測定することができる。
水性溶媒としては、蒸留水のような水を用いればよいが、水溶性化合物の溶解性を損なわない程度に、水に加えて水溶性アルコールやポリオールを添加してもよい。水溶性アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールが挙げられる。ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、グリセリンが挙げられる。安全面、環境面、取り扱い性、コストの点で優れているため、溶媒は水のみであることが好ましい。
さらに、接触工程で用いる水溶液には、水溶性化合物の溶解度を調整するために、pH調整剤が含まれていてもよい。pH調整剤としては、加熱時に揮発または分解するものが好ましい。具体的には、酢酸、クエン酸、乳酸、ギ酸、マレイン酸、シュウ酸などの有機酸やアンモニアが好ましい。このような揮発または分解するpH調整剤を用いると、不純物が残留しにくいため、良好な電池特性が得られやすい。水溶液のpHは、2〜12が好ましく、3〜11がより好ましく、4〜10が特に好ましい。pHが前記範囲にあれば、リチウム含有複合酸化物とこれらの水溶液とを接触させたときに、リチウム含有複合酸化物からのリチウムや遷移金属の溶出が少なく、またpH調整剤等の添加による不純物を少なくできるため、良好な電池特性が得られやすい。
水溶液における前記水溶性化合物の濃度は、後工程で加熱により溶媒を除去する必要があることから、高濃度の方が好ましい。しかし、濃度が高すぎると粘度が高くなり、リチウム含有複合酸化物と水溶液との均一混合性が低下するため、水溶液に含まれる水溶性化合物の濃度は、元素濃度換算で0.5〜30質量%が好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。
リチウム含有複合酸化物と前記水溶液との接触方法としては、リチウム含有複合酸化物の粉末に前記水溶液を添加して撹拌・混合する方法や、リチウム含有複合酸化物の粉末に水溶液を噴霧しスプレーコートする方法等がある。後工程として、ろ過や洗浄工程が不要で生産性に優れ、かつリチウム含有複合酸化物粒子の表面に化合物(Y)の被覆を均一に形成することができるので、水溶液をスプレーコートする方法がより好ましい。
接触工程においては、リチウム含有複合酸化物の粉末を水溶液と接触させた後乾燥する。接触させる方法としてスプレーコートを行う場合、スプレーコートと乾燥は交互に行ってもよく、スプレーコートを行いながら同時に乾燥を行ってもよい。乾燥温度は40〜200℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。スプレーコート法における水溶液の噴霧量は、リチウム含有複合酸化物1gに対して0.005〜0.1g/分が好ましい。
こうして接触工程を行った後、得られたリチウム含有複合酸化物を加熱する加熱工程を有する。加熱により、目的とする正極活物質を得るとともに、水や有機成分等の揮発性の不純物を除去できる。加熱は、酸素含有雰囲気下で行うことが好ましい。また、加熱温度は、250〜700℃が好ましく、350〜600℃がより好ましい。加熱温度が250℃以上であれば、Al2O3、ZrO2、TiO2、SnO2、およびVOxからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む被覆を形成させやすい。さらに、残留水分のような揮発性の不純物が少なくなることから、サイクル特性の低下が抑制できる。また、加熱温度が700℃以下であれば、リチウム含有複合酸化物の内部に前記金属元素が拡散するのを防止できる。
リチウム含有複合酸化物粒子の表面に被覆を非晶質として形成する場合、加熱温度は250℃〜550℃が好ましく、350〜500℃がより好ましい。加熱温度が550℃以下であれば、被覆が結晶化しにくくなる。
リチウム含有複合酸化物粒子の表面に被覆を非晶質として形成する場合、加熱温度は250℃〜550℃が好ましく、350〜500℃がより好ましい。加熱温度が550℃以下であれば、被覆が結晶化しにくくなる。
加熱時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜18時間がより好ましく、1〜12時間が特に好ましい。加熱時間を前記範囲とすることで、リチウム含有複合酸化物粒子の表面に前記被覆を効率よく形成できる。加熱時の圧力は特に限定されず、常圧または加圧が好ましく、常圧が特に好ましい。
<正極活物質(2)>
リチウム含有複合酸化物としては、正極活物質(2)に記載のリチウム含有複合酸化物を同様に用いることができる。
リチウム含有複合酸化物としては、正極活物質(2)に記載のリチウム含有複合酸化物を同様に用いることができる。
(オゾン処理方法)
リチウム含有複合酸化物の表面をオゾン処理する方法としては、気相でオゾン処理を行う方法と、液相でオゾン処理を行う方法とを適宜用いることができる。気相でオゾン処理を行う方法としては、前記リチウム含有複合酸化物の粉体に、オゾン発生器により発生させたオゾンをガスとして供給する方法や、リチウム含有複合酸化物を、高温空気により酸化処理した後に低温のオゾンガスを供給する方法等を適用することができる。
液相でオゾン処理を行う方法としては、前記リチウム含有複合酸化物を水中で撹拌しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンガスを水中に導入する方法等が挙げられる。
リチウム含有複合酸化物の表面をオゾン処理する方法としては、気相でオゾン処理を行う方法と、液相でオゾン処理を行う方法とを適宜用いることができる。気相でオゾン処理を行う方法としては、前記リチウム含有複合酸化物の粉体に、オゾン発生器により発生させたオゾンをガスとして供給する方法や、リチウム含有複合酸化物を、高温空気により酸化処理した後に低温のオゾンガスを供給する方法等を適用することができる。
液相でオゾン処理を行う方法としては、前記リチウム含有複合酸化物を水中で撹拌しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンガスを水中に導入する方法等が挙げられる。
オゾンの発生方式には、紫外線方式、電気分解方式、放電方式等がある。工業的には、効率よくオゾンを発生させるために、放電方式が用いられる。オゾンガスを水中に導入して液相(水中)でオゾン処理を効率的に行うには、処理対象物(被処理物)であるリチウム含有複合酸化物に、オゾンを接触させることが重要である。液相(水中)でオゾンを接触させる方式としては、散気管式(ディフューザ式)、エゼクター式、下向管注入型等がある。
一般に、オゾンの吸収速度は、気泡径を小さくするかまたは気体体積率を大きくして、総括物質移動容量係数を高めるか、もしくはガス中のオゾン分圧を高めることによって、上げる(速くする)ことができる。オゾン処理に必要な接触時間は、処理対象物によって異なるが、実施形態においては、より確実にオゾン処理の効果を得るために、20〜300分程度とすることが好ましい。
簡便なオゾン処理方法としては、市販されている紫外線(UV)オゾン処理装置等を用い、気相で処理を行うことが好ましい。UVオゾン処理装置としては、バッチ方式でオゾン処理を行う卓上タイプの装置や、連続的にオゾン処理を行うことができるコンベアタイプの装置等があるが特に限定されない。UVオゾン処理装置に用いられる低圧水銀灯の性能が高ければ、安定したオゾンの生成が可能となるため、オゾン処理の効果も安定して得られる。
気相でのオゾン処理では、オゾンによって腐食されない材料、例えばガラス、PTFE等からなる容器に、リチウム含有複合酸化物を入れた後、耐腐食性の管を通してオゾンガスを流通してもよい。
オゾン処理を行う場合のオゾンの濃度は、5〜1000ppmが好ましく、30〜300ppmがより好ましい。オゾン濃度が、5ppm以上であれば、オゾン処理による効果を得ることができ、電池からのガス発生を充分に抑制できる。オゾン濃度が1000ppm以下であれば、急激に反応が進行するのを防止でき、電池の充放電特性の低下を抑制でき好ましい。
このような濃度範囲から外れたオゾン濃度で処理を行う場合には、処理時間を調整することにより、適切なオゾン処理を行うことができる。
このような濃度範囲から外れたオゾン濃度で処理を行う場合には、処理時間を調整することにより、適切なオゾン処理を行うことができる。
例えば、オゾンの濃度を5〜1000ppmの範囲で一定とし、処理時間を変えることにより、処理対象物(被処理物)に対するオゾン処理の程度を調整することができる。オゾン処理時間は、前記したように20〜300分が好ましく、30〜120分がより好ましい。
なお、このようなオゾン処理時間は、処理対象物であるリチウム含有複合酸化物を容器内にできるだけ均一に敷き詰め、オゾンガスを供給してオゾン処理を行った場合のものであり、処理対象物であるリチウム含有複合酸化物の量が多い場合には、オゾン処理時間を長くすることにより、より適切な処理を行うことができる。また、オゾン処理をできるだけ均一に行うためには、処理対象物を撹拌しながら行うことが好ましく、それにより電池の性能のばらつきが低減される。
さらに、オゾン処理を行う場合の処理温度は、25〜120℃が好ましい。処理温度が25℃以上であれば、リチウム含有複合酸化物に対するオゾンの反応性が確保でき、反応時間が非常に長くなることを抑制し、生産性の点から好ましい。処理温度が120℃以下であれば、オゾン処理装置への負荷を低減でき好ましい。なお、処理温度が高すぎる場合には、装置を冷却水により冷却することで、適切な処理温度範囲として装置の破損を防止することができる。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極活物質を有する正極、リチウムまたはリチウムを吸蔵、放出できる物質を負極活物質として有する負極と、セパレータ、および非水電解質を備える。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極活物質を有する正極、リチウムまたはリチウムを吸蔵、放出できる物質を負極活物質として有する負極と、セパレータ、および非水電解質を備える。
(正極)
正極活物質を有する正極とは、前記正極活物質を含む正極活物質層と、正極集電体とを有する。正極活物質層は、前記正極活物質以外に導電材と、バインダとを含み、必要に応じて増粘剤等の他の成分が含まれていてもよい。
正極活物質を有する正極とは、前記正極活物質を含む正極活物質層と、正極集電体とを有する。正極活物質層は、前記正極活物質以外に導電材と、バインダとを含み、必要に応じて増粘剤等の他の成分が含まれていてもよい。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、黒鉛、ケッチェンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。導電材は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
バインダとしては、例えば、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等。)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等。)、不飽和結合を有する重合体および共重合体(スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等。)、アクリル酸系重合体および共重合体(アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体等。)等が挙げられる。バインダは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
増粘剤としては、例えば、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、ガゼイン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。増粘剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
正極集電体としては、例えば、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。
バインダとしては、例えば、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等。)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等。)、不飽和結合を有する重合体および共重合体(スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等。)、アクリル酸系重合体および共重合体(アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体等。)等が挙げられる。バインダは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
増粘剤としては、例えば、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、ガゼイン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。増粘剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
正極集電体としては、例えば、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。
本発明における正極の製造方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、本発明における正極活物質と、導電材およびバインダとを、N−メチルピロリドン等の媒体に溶解もしくは分散させてスラリを得る、または本発明における正極活物質と、導電材およびバインダとを、N−メチルピロリドン等の媒体と混練して混錬物を得る。次いで、得られたスラリまたは混錬物を、正極集電体上に塗布するなどの方法で担持させることにより製造することができる。
(負極)
負極は、負極集電体上に、負極活物質を含む負極活物質層が形成されて構成される。
負極集電体としては、例えば、ニッケル箔、銅箔等の金属箔が挙げられる。
負極活物質としては、リチウムまたはリチウムを吸蔵、放出できる物質である。リチウムを吸蔵、放出できる物質としては、例えば、リチウム合金、リチウム化合物、炭素材料、周期表14、15族の金属を主体とする酸化物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等が挙げられる。リチウム合金およびリチウム化合物としては、リチウムと、リチウムと合金あるいは化合物を形成可能な金属とにより構成される合金および化合物が挙げられる。また、負極活物質としては、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、およびその他の窒化物等を使用してもよい。
負極は、負極集電体上に、負極活物質を含む負極活物質層が形成されて構成される。
負極集電体としては、例えば、ニッケル箔、銅箔等の金属箔が挙げられる。
負極活物質としては、リチウムまたはリチウムを吸蔵、放出できる物質である。リチウムを吸蔵、放出できる物質としては、例えば、リチウム合金、リチウム化合物、炭素材料、周期表14、15族の金属を主体とする酸化物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等が挙げられる。リチウム合金およびリチウム化合物としては、リチウムと、リチウムと合金あるいは化合物を形成可能な金属とにより構成される合金および化合物が挙げられる。また、負極活物質としては、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、およびその他の窒化物等を使用してもよい。
負極活物質の炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等。)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物(フェノール樹脂、フラン樹脂等。)を適当な温度で焼成して炭素化した有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック類等が挙げられる。周期表14族の金属としては、例えば、Si、Sn等が挙げられる。なかでも、Siが好ましい。周期表15族の金属としては、例えば、Sb、Bi等が挙げられる。
リチウムイオン二次電池用負極は、例えば、負極活物質を有機溶媒と混合することによってスラリを調製し、調製したスラリを負極集電体に塗布、乾燥、プレスすることによって得られる。
(セパレータ)
セパレータとしては、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンを代表とする微多孔性ポリオレフィンフイルム、やポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレン共重合体‘PVDF/HFP)が挙げられる。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンを代表とする微多孔性ポリオレフィンフイルム、やポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレン共重合体‘PVDF/HFP)が挙げられる。
(非水電解質)
非水電解質としては、例えば、有機溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解液、電解質塩を含有させた固体電解質、高分子電解質、高分子化合物等に電解質塩を混合または溶解させた固体状もしくはゲル状電解質等が挙げられる。
非水電解質としては、例えば、有機溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解液、電解質塩を含有させた固体電解質、高分子電解質、高分子化合物等に電解質塩を混合または溶解させた固体状もしくはゲル状電解質等が挙げられる。
有機溶媒としては、非水電解液用の有機溶媒として公知のものを採用でき、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。なかでも、電圧安定性の点からは、有機溶媒としては、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類が好ましい。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
固体電解質としては、リチウムイオン伝導性を有する材料であればよく、無機固体電解質および高分子固体電解質のいずれを使用してもよい。
無機固体電解質としては、例えば、窒化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられる。
高分子固体電解質としては、電解質塩と該電解質塩を溶解する高分子化合物を含む電解質が挙げられる。電解質塩を溶解する高分子化合物としては、エーテル系高分子化合物(ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンオキサイド)の架橋体等。)、ポリ(メタクリレート)エステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物等が挙げられる。
無機固体電解質としては、例えば、窒化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられる。
高分子固体電解質としては、電解質塩と該電解質塩を溶解する高分子化合物を含む電解質が挙げられる。電解質塩を溶解する高分子化合物としては、エーテル系高分子化合物(ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンオキサイド)の架橋体等。)、ポリ(メタクリレート)エステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物等が挙げられる。
ゲル状電解質のマトリックスとしては、前記非水電解液を吸収してゲル化するものであればよく、種々の高分子化合物を使用できる。前記高分子化合物としては、例えば、フッ素系高分子化合物(ポリ(ビニリデンフルオロライド)、ポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)等。)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルの共重合体、エーテル系高分子化合物(ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドの共重合体、ならびに該共重合体の架橋体等。)等が挙げられる。ポリエチレンオキサイドに共重合させるモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
ゲル状電解質のマトリックスとしては、酸化還元反応に対する安定性の点から、前記高分子化合物のうち、特にフッ素系高分子化合物が好ましい。
電解質塩は、リチウムイオン二次電池に使用されている公知のものが使用でき、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、CF3SO3Li等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
硫酸ニッケル水和物と硫酸コバルト水和物と硫酸マンガン水和物、および炭酸ナトリウムを用いて、以下の手順により、ニッケル、コバルト、マンガンをそれぞれ含む前駆体化合物を合成した。
すなわち、硫酸ニッケル(II)六水和物(NiSO4・6H2O)と、硫酸コバルト(II)七水和物(CoSO4・7H2O)と、硫酸マンガン(II)五水和物(MnSO4・5H2O)を、Ni、CoおよびMnのモル比が、Ni:Co:Mn=20:15:65になり、かつ硫酸塩の合計量が1.5モル/Lになるように調合し、蒸留水に溶解させて、硫酸塩水溶液2kgを調製した。また、炭酸ナトリウム(Na2CO3)を蒸留水に溶解させ、炭酸ナトリウムの濃度が1.5モル/Lの炭酸塩水溶液(pH調整液)を調製した。
硫酸ニッケル水和物と硫酸コバルト水和物と硫酸マンガン水和物、および炭酸ナトリウムを用いて、以下の手順により、ニッケル、コバルト、マンガンをそれぞれ含む前駆体化合物を合成した。
すなわち、硫酸ニッケル(II)六水和物(NiSO4・6H2O)と、硫酸コバルト(II)七水和物(CoSO4・7H2O)と、硫酸マンガン(II)五水和物(MnSO4・5H2O)を、Ni、CoおよびMnのモル比が、Ni:Co:Mn=20:15:65になり、かつ硫酸塩の合計量が1.5モル/Lになるように調合し、蒸留水に溶解させて、硫酸塩水溶液2kgを調製した。また、炭酸ナトリウム(Na2CO3)を蒸留水に溶解させ、炭酸ナトリウムの濃度が1.5モル/Lの炭酸塩水溶液(pH調整液)を調製した。
次いで、2Lのバッフル付きガラス製反応槽に蒸留水を入れ、マントルヒータで50℃に加熱し、パドル型の撹拌翼で撹拌しながら、前記硫酸塩水溶液を5.0g/分の速度で6時間添加し、Ni、CoおよびMnを含む共沈化合物を析出させた。なお、前記硫酸塩水溶液の添加中は、pH調整液を添加・混合して、反応槽内のpHを8.0に保つようにした。また、析出反応中は、反応槽内の液量が2Lを超えないように、ろ布を用いて連続的に液の抜き出しを行った。
こうして得られた共沈化合物から遊離アルカリ等の不純物イオンを取り除くために、遠心分離と蒸留水への分散を繰り返し、共沈化合物の洗浄を行った。上澄液の電気伝導度が20mS/mとなった時点で洗浄を終了し、120℃で15時間乾燥させて前駆体化合物を得た。得られた前駆体化合物におけるNi、CoおよびMnの各含有量をICP測定により求めたところ、Ni:Co:Mn=20:15:65のモル比であった。
次に、得られた前駆体化合物と炭酸リチウム(Li2CO3)とを、この前駆体化合物に含まれる遷移金属元素(X)の合計量に対する、炭酸リチウムに含まれるLiのモル比(Li/X)が1.45となるように混合した。そして、この混合物を、電気炉(ヤマト科学社製、装置名;FO510)を使用し、炉の内容積1Lあたり1.5L/分の割合で大気を導入しながら600℃で5時間仮焼成し、次いで850℃で16時間本焼成して、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(Li1.45Ni0.20Co0.15Mn0.65O2)の粉末を得た。
こうして得られたリチウム含有複合酸化物(Li1.45Ni0.20Co0.15Mn0.65O2)の粉末(比表面積3.6m2/g)に、塩基性乳酸アルミニウムをAl2O3換算で8.5質量%となるように蒸留水に溶解した水溶液を、スプレーコートした。スプレーコートによる塗布量は、Al2O3換算で2モル%の担持量になるようにした。次いで、得られた混合物を90℃で2時間乾燥した後、酸素含有雰囲気下、450℃で8時間加熱し、リチウム含有複合酸化物の表面にAl2O3を含む被覆を形成し、正極活物質(A)を得た。
実施例2
実施例1と同じリチウム含有複合酸化物(Li1.45Ni0.20Co0.15Mn0.65O2)の粉末(比表面積3.6m2/g)の10gを、石英ガラス製のシャーレ内に均一に敷き詰めた後、このシャーレを紫外線(UV)オゾン処理装置(セン特殊光源社製、装置名;PL28−200P、UVE−200L)内に設置した。そして、装置内のオゾン濃度200ppmとして、UVオゾン処理を120分間行い、正極活物質(B)を得た。
実施例1と同じリチウム含有複合酸化物(Li1.45Ni0.20Co0.15Mn0.65O2)の粉末(比表面積3.6m2/g)の10gを、石英ガラス製のシャーレ内に均一に敷き詰めた後、このシャーレを紫外線(UV)オゾン処理装置(セン特殊光源社製、装置名;PL28−200P、UVE−200L)内に設置した。そして、装置内のオゾン濃度200ppmとして、UVオゾン処理を120分間行い、正極活物質(B)を得た。
比較例
実施例1と同様にして、リチウム含有複合酸化物(Li1.45Ni0.20Co0.15Mn0.65O2)(比表面積3.8m2/g)を製造した。このリチウム含有複合酸化物を正極活物質(C)とした。
実施例1と同様にして、リチウム含有複合酸化物(Li1.45Ni0.20Co0.15Mn0.65O2)(比表面積3.8m2/g)を製造した。このリチウム含有複合酸化物を正極活物質(C)とした。
実施例1,2および比較例でそれぞれ得られた正極活物質(A)〜(C)の2gと、導電材であるアセチレンブラック(AB)0.25gと、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN−メチルピロリドン(NMP)に溶解した溶液2.07gと、溶媒であるNMP4.07gとを、質量比で正極活物質:AB:PVDF=80:10:10となるように混合して、正極形成用ペーストを調製した。
次いで、この正極形成用ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)上に塗布して、正極電極シートを作製した。次いで、この正極電極シートを40μmのギャップを有するロールプレスに2回かけて圧延した後、直径18mmの円盤状に打ち抜き、さらに180℃で真空乾燥させて、正極(密度2.2g/cm3)を得た。
次に、Arグローブボックス内で、図1に示す、圧力センサー1とガス採取ポート2付きの評価用セル20(EL-CELL社製、商品名;ECC-Press、デッドスペース3.5cc)を組み立てた。すなわち、セル本体3内の底部に、前記真空乾燥させて得られた正極4と、セパレータ5(EL-CELL社製、商品名;ガラスファイバーECC1-01-0012-C、直径18mm、1550mm厚)と、負極6としてのLi箔(直径18mm、300μm厚)とを、この順に積層して取り付けた後、電解液(図示を省略。)として、1モル%LiPF6/(EC+DEC)(1:1)溶液を入れて、リチウムイオン二次電池の評価用セル20を作製した。なお、LiPF6/(EC+DEC)(1:1)溶液は、LiPF6を溶質とし、EC(エチレンカーボネート)とDEC(ジエチルカーボネート)との、EC:DECが1:1(体積比)の混合溶液である。また、図1において、符号7は標準極(Ref極)、符号8は締め付けねじ、符号9は押し付けバネ、符号10はガスシールをそれぞれ示す。なお、押し付けバネ9が装着されたセル本体3内部の空隙部が、電池内のデッドスペースであり、デッドスペースのガスが、ガス採取ポート2から採取される。
次いで、こうして組み立てられた評価用セル20を、電解液を正極4、セパレータ5および負極6に含浸させるため、25℃で一晩以上放置した後、ポテンショスタット(Biologic社製、装置名;SP−150)により、2mA/gの定電流(正極活物質1gにつき2mAの負荷電流)で4.6Vまで充電を行った。
このとき、圧力センサー1の端子の信号をデータロガーに入力させて、充電中のセル内圧を測定した。実施例1で得られた正極活物質(A)を有するリチウムイオン二次電池の評価用セルにおいて、初回の充電時に得られた電位とセル内圧の経時変化を、図2に示す。また、比較例で得られた正極活物質(C)を有するリチウムイオン二次電池の評価用セルにおいて、電位とセル内圧の経時変化を、図3に示す。
図2および図3のグラフから以下に示すことがわかる。
すなわち、リチウム含有複合酸化物(Li1.45Ni0.20Co0.15Mn0.65O2)を正極活物質(C)として用いた比較例のリチウムイオン二次電池では、4V〜4.3V間に、ガス発生によるセル内圧の急激な上昇が見られ、それ以上の高電位(4.3V〜4.6V)間に、傾きの異なるセル内圧の上昇が見られる。前者に発生したガスの発生は、正極活物質に僅かに残存している水分の水素への電気分解反応(酸化反応)によるものと考えられる。一方、4.3V〜4.6V間に見られたセル内圧の上昇は、正極活物質からの酸素ガスの放出によるものと考えられる。
すなわち、リチウム含有複合酸化物(Li1.45Ni0.20Co0.15Mn0.65O2)を正極活物質(C)として用いた比較例のリチウムイオン二次電池では、4V〜4.3V間に、ガス発生によるセル内圧の急激な上昇が見られ、それ以上の高電位(4.3V〜4.6V)間に、傾きの異なるセル内圧の上昇が見られる。前者に発生したガスの発生は、正極活物質に僅かに残存している水分の水素への電気分解反応(酸化反応)によるものと考えられる。一方、4.3V〜4.6V間に見られたセル内圧の上昇は、正極活物質からの酸素ガスの放出によるものと考えられる。
それに対して、前記リチウム含有複合酸化物の表面に、安定でかつ酸素を捕捉可能な化合物であるAl2O3を含む被覆を形成した正極活物質(A)を用いた実施例1のリチウムイオン二次電池では、4V〜4.6Vの領域においてセル内圧の上昇がほとんど見られず、酸素や水素をはじめとするガスの発生が極めて少ないことがわかる。
次に、こうして実施例1,2および比較例の評価用セルに充電を行った後、セル内のガスを同定するとともに、定量分析(ガス量の測定)を行った。セル内のガスの同定およびガス量の測定方法を、以下に示す。
[ガスの同定およびガス量の測定]
ガス採取ポートからガスシリンジを用いて前記セル内のガス0.15ccを採取し、ガスクロマトグラフィ(GC)分析装置(アジレントテクノロジー社製、型番:7890GC)を用いてガスの同定および定量分析(ガス量の測定)を行った。定量分析では、ヘリウムガスをキャリヤーガスとして、H2、O2、CO2、CO、CH4およびArについての検量線を、標準ガスを用いて求めた。
ガス採取ポートからガスシリンジを用いて前記セル内のガス0.15ccを採取し、ガスクロマトグラフィ(GC)分析装置(アジレントテクノロジー社製、型番:7890GC)を用いてガスの同定および定量分析(ガス量の測定)を行った。定量分析では、ヘリウムガスをキャリヤーガスとして、H2、O2、CO2、CO、CH4およびArについての検量線を、標準ガスを用いて求めた。
測定に当たっては、カラム温度を−20℃とし、GCのガス注入口に採取されたガスの入ったシリンジを挿入し、ガスをカラムに注入すると同時にガスの同定および定量分析を開始した。そして、カラム温度を、所定の温度プロファイルに従って150℃になるまで昇温させた。なお、検出は、TCD(熱伝導率)型検出器を用いて行った。
採取ガスは、まずPorabondQ充填剤が入っているカラム1に入って、CO2とCH4を除いた有機ガスが分離された後、プログラム化されたDeans Switchを用いてMolSieve5A充填剤の入ったカラム2にガスの流れ方向を変え、ガス中のH2、O2、CO、CH4、Arの各ガスがそれぞれ分離された。そして、カラム1で定量されたガスと併せて、Arガスを基準にして各ガスのGCピーク面積を規格化し、各ガスの組成比率を求めた。
なお、H2については、キャリヤーガスであるヘリウムとの熱伝導率が近く、正確に定量することができないため、窒素をキャリヤーガスとして、前記と同条件の測定を行い、H2の正確な比率を求めた。
このような定量分析の結果から、H2、O2、CO2、CO、CH4を合計した体積中に占める各ガスの体積比率を求めた。そして、電池のデッドスペースとその内圧から電池内の全ガス量を計算し、正極活物質の重量1g当たりのH2、O2、CO2、CO、CH4の合計生成量、および正極活物質の重量1g当たりのH2の生成量を求めた。これらの結果を、表1に示す。
次に、実施例1,2および比較例の評価用セルについて、電池特性(初期放電容量、初期充放電効率、初回放電容量および50サイクル後の放電維持率)を測定した。
「電池特性の測定」
実施例1,2および比較例の評価用セルに対して、前記の通りセル内のガスの定量分析を行った後、25℃で4.6Vを上限に2mA/gの電流で、定電流・定電圧モードで再充電を100時間行った後、20mA/gの定電流で2.0Vまで放電を行い、初期の放電容量(電池容量)を求めた。また、この放電容量と充電容量の測定値から、充放電効率(放電容量/充電容量)を算出した。次に、200mA/gの定電流で4.6V−2.0Vの繰返し充放電を50回行い、初回の放電容量と、50サイクル後の放電容量をそれぞれ求めた。そして、50サイクル後の放電容量の初回放電容量に対する割合を算出し、放電容量の維持率(放電維持率)とした。これらの結果を、表2に示す。
実施例1,2および比較例の評価用セルに対して、前記の通りセル内のガスの定量分析を行った後、25℃で4.6Vを上限に2mA/gの電流で、定電流・定電圧モードで再充電を100時間行った後、20mA/gの定電流で2.0Vまで放電を行い、初期の放電容量(電池容量)を求めた。また、この放電容量と充電容量の測定値から、充放電効率(放電容量/充電容量)を算出した。次に、200mA/gの定電流で4.6V−2.0Vの繰返し充放電を50回行い、初回の放電容量と、50サイクル後の放電容量をそれぞれ求めた。そして、50サイクル後の放電容量の初回放電容量に対する割合を算出し、放電容量の維持率(放電維持率)とした。これらの結果を、表2に示す。
なお、表2中、1Cおよび0.1Cは放電のレートを表わす。1Cレートの放電は、1時間で満放電(電池容量まで放電)する電流値での放電を示し、0.1Cレートの放電は、10時間で満放電する電流値での放電を示す。
表1および表2から、リチウム含有複合酸化物の表面にAl2O3を含む被覆が形成された正極活物質を用いた実施例1のリチウムイオン二次電池、およびオゾン処理がなされたリチウム含有複合酸化物を正極活物質として用いた実施例2のリチウムイオン二次電池では、充電によって発生するH2、O2、CO2、CO、CH4の合計生成量が50mL/g以下になっていることがわかる。これに対して、被覆形成もオゾン処理もいずれも行わなかったリチウム含有複合酸化物を正極活物質として用いた比較例のリチウムイオン二次電池では、H2、O2、CO2、CO、CH4の合計生成量が50mL/gを大きく超えていることがわかる。そして、そのような実施例1および実施例2のリチウムイオン二次電池では、比較例のリチウムイオン二次電池に比べて、初期放電容量(電池容量)、初期充放電効率、初回放電容量、および50サイクル後の放電維持率がいずれも高くなっており、電池特性に優れていることがわかる。
本発明によれば、小・中・大型等あらゆるサイズで大容量のリチウムイオン二次電池において、ガス発生による膨れ等の影響を緩和し、安全性を高めることができるため、電力貯蔵設備や車載用動力を含む多くの用途に使用することができる。
1…圧力センサー、2…ガス採取ポート、3…セル本体、4…正極、5…セパレータ、6…負極、7…Ref極、9…押し付けバネ、10…ガスシール、20…評価用セル。
Claims (8)
- 正極活物質の単位質量(g)当たり2mAの定電流で4.6Vまで充電する初回充電によって発生する水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素およびメタンの合計量が、前記正極活物質に対して50mL/g以下であることを特徴とする正極活物質。
- 前記水素の発生量が、前記正極活物質に対して48mL/g以下である、請求項1に記載の正極活物質。
- 正極活物質が、下記式(1)で表わされるリチウム含有複合酸化物である、請求項1または2に記載の正極活物質。
Li1+aNibCocMndM´eO2+f …………(1)
(式中M´は、Mg、Ca、Sr、BaおよびAlからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。また、a〜eはそれぞれ、0.1≦a≦0.6、0.01≦b≦0.5、0≦c≦0.3、0.2≦d≦0.9、0.90≦b+c+d≦1.05、0≦e≦0.05を満足させる数であり、fは、このリチウム含有複合酸化物が電気的に中性になるように、Li、Ni、Co、MnおよびM´の価数によって決定される数である。) - 比表面積が1m2/g以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極活物質。
- 正極活物質は、前記リチウム含有複合酸化物の表面に、充放電過程において安定でかつ酸素を捕捉可能な化合物(Y)が存在する、請求項3または4に記載の正極活物質。
- 前記化合物(Y)が、Al2O3、ZrO2、TiO2、SnO2、およびVOxからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項5に記載の正極活物質。
- 正極活物質がオゾン処理されたものを含む、請求項3または4に記載の正極活物質。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の正極活物質を有する正極と、リチウムまたはリチウムを吸蔵、放出できる物質を負極活物質として有する負極と、セパレータ、および非水電解質を備えたリチウムイオン二次電池。
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