JP6674315B2 - リチウム含有複合酸化物の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、リチウムイオン二次電池が、様々な用途に用いられるようになっているため、リチウム含有複合酸化物の需要も高まっている。そのため、リチウム含有複合酸化物の量産性の向上も望まれている。
そのため、従来の製造技術では、リチウム含有複合酸化物の性能を維持したまま、量産性を向上させる方法が困難であった。
前記二酸化炭素濃度は、例えば、二酸化炭素検知管を用い、焼成炉の点検口から内部雰囲気を採取して測定する。
前記複合化合物に含まれる金属元素の含有比は、製造するリチウム含有複合酸化物に含まれる金属成分の比に応じて調整される。
焼成時間は、特に限定されないが、生産性向上の観点から、短い方が好ましい。その一方、焼成時間が極端に短いと焼成反応が完了せず、未反応原料が残り、電池特性が悪化する傾向がある。生産性向上とリチウム含有複合酸化物の特性向上の双方の観点から、焼成時間は、3〜15時間が好ましく、3〜12時間がより好ましく、3〜8時間が特に好ましい。
前記焼成容器は、低面と壁面を有し蓋面を有さない形態が好ましい。焼成容器の壁面高さは低いものが好ましい。具体的には、0〜30mmがより好ましく、0〜20mmがさらに好ましく、0〜10mmが特に好ましい。これにより、焼成中に、調合物から二酸化炭素が発生しても、調合物の周辺で二酸化炭素を効率よく対流を起こすことができる。その結果、得られたリチウム含有複合酸化物に含まれる遊離アルカリ量をより効率よく低減できる。
焼成容器の材質としては、耐久性やコストの観点から、ムライト、スピネル、アルミナ及び炭化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ムライトであることがより好ましい。
リチウム含有複合酸化物の平均粒径D50は、3〜10μmが好ましく、3.5〜8μmがより好ましい。本発明において、リチウム含有複合酸化物の平均粒径D50は、レーザー散乱粒度分布測定装置(例えば、日機装社製マイクロトラックHRA X−100などを用いる)により得られた体積粒度分布の累積50%の値をいう。
リチウム含有複合酸化物の表面に被覆物を形成する場合、リチウム含有複合酸化物を得た後に、次の工程を有することが好ましい。
すなわち、粉体混合法、気相法、スプレーコート法またが浸漬法により、リチウム含有複合酸化物に被覆物を形成する工程である。
粉体混合法は、リチウム含有複合酸化物とAl化合物とを混合した後に加熱する方法である。気相法は、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート等のAlを含む有機化合物を気化し、該有機化合物をリチウム含有複合酸化物の表面に接触させ、反応させる方法である。スプレーコート法は、リチウム含有複合酸化物にAlを含む溶液を噴霧した後、加熱する方法である。浸漬法は、Alを含む溶液にリチウム含有複合酸化物を浸漬した後、それを取り出して加熱する方法である。
Alを含む溶液としては、Alの水溶性化合物(酢酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等)を水に溶解した水溶液が挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法(以下、本正極の製造方法ともいう。)は、本製造方法で得られたリチウム含有複合酸化物、導電材及びバインダを含む正極活物質層を正極集電体上に形成する工程を有する。
バインダとしては、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、不飽和結合を有する重合体又は共重合体(スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等)、アクリル酸系重合体又は共重合体(アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体等)等が挙げられる。
正極集電体としては、アルミニウム箔、ステンレススチール箔等が挙げられる。
本正極の製造方法において、必要に応じて、正極活物質層を形成した後に、ロールプレス等で圧延してもよい。
本発明で得られたリチウム含有複合酸化物または本正極の製造方法で得られた正極は、リチウムイオン二次電池の製造に好適に使用できる。
前記リチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータ及び非水電解質を含むものである。
負極活物質は、比較的低い電位でリチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料であればよい。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、リチウム化合物、炭素材料、周期表14族の金属を主体とする酸化物、周期表15族の金属を主体とする酸化物、炭素化合物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等が挙げられる。
負極活物質に使用する周期表14族の金属としては、Si、Snが挙げられ、Siが好ましい。
他の負極活物質としては、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、その他の窒化物等が挙げられる。
負極集電体としては、ニッケル箔、銅箔等の金属箔が挙げられる。
負極活物質、導電材及びバインダを、媒体に溶解又は分散させてスラリーを得る。得られたスラリーを負極集電体に塗布、乾燥、プレスすること等によって媒体を除去し、負極を得る。
有機溶媒としては、非水電解液用の有機溶媒として公知のものが挙げられる。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。電圧安定性の点からは、環状カーボネート類(プロピレンカーボネート等)、鎖状カーボネート類(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)が好ましい。有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
固体状高分子電解質に用いられる高分子としては、エーテル系高分子化合物(ポリエチレンオキサイド、その架橋体等)、ポリメタクリレートエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物等が挙げられる。該高分子化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
該高分子化合物としては、酸化還元反応に対する安定性の点から、フッ素系高分子化合物が好ましい。
電解質塩は、リチウムイオン二次電池に用いられるものであればよい。電解質塩としては、LiClO4、LiPF6、LiBF4、CH3SO3Li等が挙げられる。
リチウムイオン二次電池の形状としては、コイン型、シート状(フィルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒型、ボタン型等が挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。
遊離アルカリ量は、下記の各例で製造したリチウム含有複合酸化物の粉末1gを、10gの純水中に分散し、30分間撹拌した後、濾過して得られたろ液を0.02mol%/リットルの塩酸水溶液で電位差滴定して、pHが4.0になるまでに使用した塩酸水溶液の体積から算出した。
オキシ水酸化物の金属成分のモル比の分析及びリチウム含有複合酸化物の組成分析は、誘導結合プラズマ(ICP)を用いた分析法により行った。
Ni、Co及びMnのモル比(Ni:Co:Mn)が0.5:0.2:0.3であるオキシ水酸化物と、酸化ジルコニウムと、炭酸リチウムを準備した。オキシ水酸化物に含まれる金属の合計モル量(Me)に対する炭酸リチウムのモル量(Li/Me)が1.07となる比でこれらの化合物を混合し、調合物とした。
得られた調合物を、焼成容器(ムライト製の板状のサヤ、矩形状で4辺の壁面高さ0mm)に乗せて、ローラーハースキルンの焼成炉内を搬送させて、調合物を900℃で5時間焼成した。その後に粉砕して、Li1.034(Ni0.5Co0.2Mn0.3)0.963Zr0.003O2の組成を有するリチウム含有複合酸化物を製造した。
焼成中は、ローラーハースキルンの出口側から内部に向けて、板状のサヤの搬送方向とは逆向きに空気を流した。
焼成は、焼成炉内の二酸化炭素濃度が400ppmであり、調合物の周辺は二酸化炭素が対流する雰囲気で行った。結果を表2に示す。
焼成容器、焼成炉内の二酸化炭素濃度および雰囲気を表1に記載のとおりとしたこと以外は、例1と同様にして、リチウム含有複合酸化物を製造した。結果を表2に示す。
焼成容器および焼成炉内の二酸化炭素濃度を表1に記載のとおりとし、焼成炉であるローラーハースキルンの内部に空気を流さず調合物の周辺で二酸化炭素が対流しない雰囲気で行ったこと以外は、例1と同様にして、リチウム含有複合酸化物を製造した。結果を表2に示す。
Ni、Co及びMnのモル比(Ni:Co:Mn)が0.45:0.3:0.25であるオキシ水酸化物を使用し、酸化ジルコニウムを使用せずに、Li1.035(Ni0.45Co0.3Mn0.25)0.965O2の組成を有するリチウム含有複合酸化物を製造したこと以外は、例1と同様にして、リチウム含有複合酸化物を製造した。
焼成は、焼成炉内の二酸化炭素濃度が400ppmであり、調合物の周辺は二酸化炭素が対流する雰囲気で行った。結果を表2に示す。
焼成容器として、ムライト製で、矩形状で4辺の壁面高さが70mmの匣鉢を使用したこと以外は、例12と同様にして、リチウム含有複合酸化物を製造した。
焼成は、焼成炉内の二酸化炭素濃度が400ppmであり、調合物の周辺は二酸化炭素が対流しない雰囲気で行った。結果を表2に示す。
Ni、Co及びMnのモル比(Ni:Co:Mn)が0.6:0.2:0.2であるオキシ水酸化物を使用して、酸化ジルコニウムを使用せずに、オキシ水酸化物に含まれる金属の合計モル量(Me)に対する炭酸リチウムのモル量(Li/Me)が1.03となる比で混合し、調製した調合物を使用し、かつ焼成温度を880℃として、Li1.015(Ni0.6Co0.2Mn0.2)0.985O2の組成を有するリチウム含有複合酸化物を製造したこと以外は、例1と同様にして、リチウム含有複合酸化物を製造した。
焼成は、焼成炉内の二酸化炭素濃度が400ppmであり、調合物の周辺は二酸化炭素が対流する雰囲気で行った。結果を表2に示す。
焼成容器として、ムライト製で、矩形状で4辺の壁面高さ70mmの匣鉢を使用したこと以外は、例14と同様にして、リチウム含有複合酸化物を製造した。
焼成は、焼成炉内の二酸化炭素濃度が400ppmであり、調合物の周辺は二酸化炭素が対流しない雰囲気で行った。結果を表2に示す。
ステンレス板に厚さ500μmの金属リチウム箔を乗せて負極とした。
厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンをセパレータとした。
濃度1MのLiPF6(溶媒はエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積比1:1の混合液)を電解液とした。
これらを用いて、ステンレス製簡易密閉セル型リチウム二次電池をアルゴングローブボックス内で組み立てた。
そして、表3に示すように、調合物の周辺で二酸化炭素が対流している雰囲気で焼成したリチウム含有複合酸化物を正極活物質として使用したリチウム二次電池は、初期放電容量及びサイクル特性が高くなることが分かる。
Claims (7)
- Ni及びCoを含む複合化合物と、リチウム化合物とを、混合して調合物を得て、
得られた調合物を、少なくとも一部の壁面高さが0mmである焼成用の容器に入れて、焼成炉内で二酸化炭素濃度が500ppm以下でかつ調合物の周辺で二酸化炭素が対流する雰囲気で、800〜950℃の温度で焼成し、一般式LipNixCoyMnzMqO(2−0.5a)Fa(ただし、Mは、Ni、Co及びMn以外の金属元素であり、p、x、y、z、q及びaが、それぞれ、0.9≦p≦1.5、0.1≦x≦0.8、0.1≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦q≦0.1、0≦a≦0.1、p+x+y+z+q=2を満足する。)で表されるリチウム含有複合酸化物を得る、リチウム含有複合酸化物の製造方法。 - 前記一般式LipNixCoyMnzMqO(2−0.5a)Faにおいて、p、x、y、z、q及びaが、それぞれ、0.9≦p≦1.2、0.1≦x≦0.6、0.1≦y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦q≦0.1、0≦a≦0.1である請求項1に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
- 焼成炉の外部から焼成炉の内部へ空気を流すことにより、焼成炉内の二酸化炭素濃度を500ppm以下とし、かつ調合物の周辺で二酸化炭素が対流する雰囲気にする、請求項1又は2に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
- 前記調合物を焼成炉内に搬入しながら、
前記焼成炉内に流す空気の向きを、前記調合物を搬入する向きと逆向きとして焼成する、請求項3に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。 - 前記焼成用の容器は、前記調合物を搬入する向きと略垂直な方向に壁面を有し、略平行な方向に壁面を有さない請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
- 前記焼成用の容器の材質が、ムライト、スピネル、アルミナ及び炭化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
- 前記焼成炉がローラーハースキルンである請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウム含有複合酸化物の製造方法。
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