JP2014209454A - 非水電解質空気電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイクル特性に優れた非水電解質空気電池を提供する。【解決手段】非水電解質空気電池は、正極3と、セパレータ2と、負極4と、正極に酸素を供給するための空気孔5を備える外装材1を具備し、正極3は酸素を活性化する触媒と導電材料と結着剤とを有している。結着剤の熱分解開始温度がT1℃であり、熱分解終了温度がT2℃であるとき、T1℃以上T2℃以下の範囲において、結着剤の熱分解質量分析に質量数81、100、132と200のいずれかのシグナルが存在し、T1℃のピーク面積をXとし、T2℃のピーク面積をYとした場合、2X≧Yの条件を満たすフッ素を含有する高分子である。分解開始温度とは、重量減少過程における重量減少分の5%が減少する温度であり、熱分解終了温度とは、重量減少過程における重量減少分の95%が減少する温度である。【選択図】図1

Description

実施形態は、非水電解質空気電池に関する。
近年、携帯電話や電子メール端末などの携帯型情報機器の市場は急速に拡大しつつある。これらの機器の小型軽量化が進むにつれて、電源にも小型かつ軽量であることが求められている。現在、これらの携帯機器には高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池が多用されているが、さらに高容量が得られる電池が求められている。
空気中の酸素を正極活物質に用いる空気電池は、正極活物質を電池に内蔵する必要がないため、高容量化が期待できる。特に負極にリチウムを用いる非水電解質空気電池は、理論エネルギー密度が高く、盛んに研究されている。
Journal of The Electrochemical Society, 149(9) A1190−A1195(July 29, 2002)
実施形態は、サイクル特性の優れた非水電解質空気電池を提供する。
実施形態の非水電解質空気電池は、正極と、負極と、正極及び負極に挟持されたセパレータと、正極に酸素を供給するための空気孔を備える外装材とを具備し、正極は少なくとも酸素を活性化する触媒と導電材料と結着剤とを有しており、結着剤の熱分解開始温度がT1℃であり、熱分解終了温度がT2℃であるとき、T1℃以上T2℃以下の範囲において、結着剤の熱分解質量分析に質量数81、100、132と200のいずれかのシグナルが存在し、T1℃におけるピーク面積をXとし、T2℃におけるピーク面積をYとし、XとYは、2X≧Yの条件を満たし、結着剤はフッ素を含有する高分子であり、結着剤の分解開始温度とは、結着剤を熱重量分析装置にて分析した際、主となる重量減少過程において、重量減少過程における重量減少分の5%が減少する温度であり、結着剤の熱分解終了温度とは、結着剤を熱重量分析装置にて分析した際、主となる重量減少過程において、重量減少過程における重量減少分の95%が減少する温度であり、マススペクトルシグナル面積とは、結着剤単体のマススペクトルにおいて、質量数81、100、132と200より選ばれる複数のシグナルのうち、T1℃以上T2℃以下までのマススペクトルシグナル面積が最大の面積の質量数のシグナル面積である。
図1は、実施形態の非水電解質空気電池の断面概念図である。 図2は、実施形態の正極の断面概念図である。 図3は、PVdFの熱質量変化グラフである。 図4は、PVdFの熱分解ガスクロマトグラムのイオンクロマトグラムである。 図5は、実施形態の正極触媒層の熱分解ガスクロマトグラムのイオンクロマトグラムである。
従来の非水電解質空気電池においては、放電時に電池内に取り込まれた酸素は正極に担持された触媒で活性化され、非水電解質に溶解しているリチウムイオンと反応し、リチウム酸化物を生成する。一方、充電時はリチウム酸化物が還元され、リチウムイオンと酸素が放出される。反応は可逆であり、本来の寿命は無現であるが、実際は劣化していく。非水電解質空気電池においては、充放電時の反応機構が知られている。例えば、充電時にはリチウム酸化物からのリチウムイオン、酸素の放出反応に加え、非水電解質の分解による二酸化炭素の発生が生じる。従って、充放電により非水電解質を消費するためにサイクル寿命が短くなってしまう。
一方発明者らは、前記課題に対して鋭意研究した結果、正極を加熱した際に発生する結着剤由来のガスが、非水電解質空気電池のサイクル寿命と相関があることを見出した。
前記のように、正極における酸素の還元反応は正極に担持される触媒表面で生じるものであり、触媒を導電材料に固定する結着剤としては、耐酸化性に優れたフッ素樹脂が用いられる。前述したように、充電時にはリチウム酸化物から酸素が放出されるが、その過程で、活性な酸素と非水電解質が接触することにより、非水電解質が分解するものと考えられる。すなわち、正極触媒と非水電解質との接触を最小限にすることで、活性酸素と非水電解質との反応を抑制し、サイクル寿命を改善することができる。
活性酸素と非水電解質との反応は、実際に電池を組み立てて動作させないと測定できないが、発明者らは、正極を昇温した際に放出されるガス成分の温度依存性に着目することにより、活性酸素と非水電解質との反応を予測し、サイクル特性が改善できることを見出した。
以下、実施形態の非水電解質空気電池を詳細に説明する。実施形態の非水電解質空気電池は、正極と、負極と、正極及び負極に挟持されたセパレータとを有し、非水電解質を含浸させ、これらを収納し、かつ正極に酸素を供給するための空気孔を備える外装材とを有するものである。
図1に実施形態の非水電解質空気電池の概念図を示す。図1の非水電解質空気電池は、外装材1、セパレータ2、正極3、負極4、空気孔5、正極触媒層6、正極集電体7、正極端子8、空気拡散層9、負極活物質含有層10、負極集電体11、負極端子12、シールテープ13とで構成されている。
非水電解質空気電池は、例えば、後述する内面が熱可塑性樹脂層から形成されたラミネートフィルム製の外装材1を備える。外装材1は、例えば、内面同士が重ね合わされた三辺をヒートシールにより封止したラミネートフィルムからなる。セパレータ2は、外装材1内に配置されており、端部は外装材1のヒートシール部分の間に挟まれていてもよい。セパレータ2を挟んで、上側には正極3が収納され、下側には負極4が収納され、空気孔5は、外装材1の壁面の正極側に開口されている。空気孔7は、正極3に酸素を供給するためのものである。
正極3は、セパレータ2の一方の面と接する正極触媒層6と、正極触媒層6が担持され、例えば多孔性導電性基板からなる正極集電体7とを含む。図2に正極3の断面概念図を示す。図2の正極触媒層6は、正極触媒61と結着剤62と、導電材料63とで構成される。正極端子8は、一端が正極集電体7と電気的に接続され、かつ他端が外装材1のヒートシール部(ラミネートフィルム間が熱融着された部分)を通して外部に延出されている。空気拡散層9は、正極集電体7上に配置されている。空気拡散層9は、空気孔5から取り入れられた空気を正極3に供給できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、あるいはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂を含む多孔質フィルムや、ポリプロピレンやPTFEなどの合成樹脂製不織布、ガラス繊維不織布等を挙げることができる。
負極5は、セパレータ2の反対側の面と接する負極活物質含有層10と、負極活物質含有層10が担持され、例えば多孔性導電性基板からなる負極集電体11とを含む。負極端子12は、一端が負極集電体11と電気的に接続され、かつ他端が外装材1のヒートシール部(ラミネートフィルム間が熱融着された部分)を通して外部に延出されている。負極端子12の延出方向は、正極端子8の延出方向と反対向きになっている。
外装材1の外表面には、空気孔5を閉塞するシールテープ13が着脱可能に配置されている。電池使用時に、このシールテープ13を外すことで正極触媒層6に空気を供給することができる。
外装材は、例えば、金属板、樹脂層を有するラミネートフィルム製のシート等から形成することができる。
金属板は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムから形成することができる。
シートは、金属層と、金属層を被覆する樹脂層とを含むことが好ましい。金属層は、アルミニウム箔から形成することが好ましい。一方、樹脂層は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂から形成することができる。樹脂層は、単層もしくは多層構造にすることができる。
(正極)
実施形態の正極は、以下のように作成することができる。正極の最小限の構成要素は、触媒と、導電材料と、結着剤と、集電体である。この場合、まず導電材料と結着剤を混練し、結着剤で被覆した導電材料を作成する。一方、触媒と導電材料を混練し、表面に触媒が担持された導電材料を作成する。次いで、結着剤で被覆した導電材料と、触媒を担持した導電材料を混合し、シート状に成形するとともに、集電体に接着させることにより、実施形態の正極を作成することができる。
正極に用いる結着剤は、フッ素を含有する高分子を用いることができる。フッ素を含有する高分子としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、エチレン、テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー、およびポリテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペンコポリマーのうちのいずれかを含むものが好ましい。
さらに、フッ素を含有する高分子の原料として、少なくともビニリデンジフルオライド、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、エチレン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペンコポリマーより選ばれる1種以上の化合物を含有することが望ましい。
正極に用いる導電材料は、導電性を有するものであればとくに限定することなく使用可能であり、非水電解質に溶解せず、酸素で酸化されにくいものが好ましい。具体的には、炭素質物、導電性セラミクス、金属などを挙げることができる。炭素質物としては、天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、ファーネスブラック、活性炭、活性炭素繊維、木炭類等を挙げることができる。導電性セラミクスとしては、In、Snなどの金属酸化物、SiCなどの炭化物などを挙げることができる。金属としては、Al、Tiなどの金属や、SUSなどの合金を挙げることができる。
正極に用いる触媒は、従来、空気電池用の正極触媒、あるいは燃料電池用の空気極触媒として用いられている、金属、金属酸化物、錯体などから選択することができる。前記金属そしては、Au、Pt、Pd、Agより選ばれる少なくとも一種類の金属が好ましい。金属酸化物としては、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Sn、Co、Rh、Ir、Ni、Cu、Ag、In、Sn、La、Ceより選ばれる少なくとも一種類の金属を含む酸化物が好ましい。金属酸化物として具体的には、Fe、Fe、Co、NiO、CuO、CoFe、La0.8Sr0.2MnOを挙げることができる。錯体としては、中心金属にFe,Ni,Coから選ばれる金属を有し、かつフタロシアニン、ポルフィリン、サレンなど平面4座配位子を有する錯体が好ましい。錯体として具体的には、コバルトフタロシアニン、鉄フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、コバルトテトラフェニルポルフィリン、鉄テトラフェニルポルフィリン、ニッケルテトラフェニルポルフィリンを挙げることができる。
触媒と結着剤と少量の導電材料の混練は、乾燥状態ないし溶媒中で行うことができる。乾燥状態で混練する場合、まず固体の触媒と導電材料を混練機に投入して混練、さらに結着剤を投入して攪拌することにより実施される。溶媒中で行う場合、結着剤を溶媒に溶解し、この溶液と触媒と導電材料を混練機に投入して攪拌、さらに混練機から取り出した後に溶媒を除去することにより実施される。溶媒としては、結着剤を溶解する溶媒が好ましく、例えば水、N−メチルピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン(MEK)などを用いることができる。
結着剤で被覆され、かつ少量の導電材料を含む触媒、および導電材料との混練は、乾燥状態で行うことが好ましく、両者を同時に混練機に投入し、攪拌することにより実施される。攪拌の際の投入エネルギーは、結着剤と導電材料の混練、および触媒と導電材料の混練での投入エネルギーよりも小さいことが好ましい。
集電体は、酸素の拡散を速やかに行わせるため、例えばメッシュ、パンチドメタル、エクスパンディドメタル等の貫通孔を有する導電性基板を用いることができる。導電性基板の材質は、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタンなどを挙げることができる。なお、集電体の表面は、酸化を抑制するために耐酸化性の金属または合金で被覆しても良い。
結着剤で被覆した導電材料、および触媒を担持した導電材料の混合物の、集電体への担持は、乾燥状態ないし溶媒中で行うことができる。乾燥状態での担持は、固体の混合物を集電体上に敷き詰め、プレスすることにより実施される。溶媒状態での担持は、固体の混合物を溶媒に投入し、集電体に塗布、乾燥することにより実施される。
正極中の触媒、導電材料、結着剤の含有率は、触媒で1質量%以上20質量%以下、導電材料で1質量%以上90質量%以下、結着剤で1質量%以上30質量%以下である。また、集電体を除いた正極の厚さは、2μm以上600μm以下の範囲であることが好ましい。
前記製造方法により、少なくとも酸素を活性化する触媒と導電材料と結着剤とを有しており、結着剤の熱分解開始温度がT1℃であり、熱分解終了温度がT2℃であるとき、熱分解温度(T1+T2)/2℃における熱分解ガスクロマトグラフ質量分析において、少なくとも81、100、132、200より選ばれる質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、T1℃におけるピーク面積をXとし、T2℃におけるピーク面積をYとし、XとYは、2X≧Yの条件を満たす正極を作成することができる。
ここで、結着剤の熱分解開始温度は、結着剤を熱重量分析法にて分析した際、主となる重量減少過程において、重量減少過程における重量減少分の5%が減少する温度であり、結着剤の熱分解終了温度とは、結着剤を熱重量分析装置にて分析した際、主となる重量減少過程において、重量減少過程における重量減少分の95%が減少する温度であり、ピーク面積とは、結着剤単体の熱分解温度(T1+T2)/2℃における熱分解ガスクロマトグラフ質量分析において、質量数81、100、132、200で抽出したイオンクロマトグラフのうち、最大の面積を与える質量数のピーク面積である。
熱分解温度は、熱重量分析と発生したガスの質量分析を同時に行う熱重量質量分析装置(TG−MS)により測定することができる。測定時の雰囲気は、非酸化雰囲気下であれば特に限定するものではなく、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素などの不活性ガスを用いることができる。
熱分解温度算出時に除外する重量減少過程は、結着剤保管時に吸着した水分や二酸化炭素などを放出する低温側の重量減少過程であり、TG−MS装置あるいはEGA−MS装置により判別することができる。熱分解終了温度算出時に除外する残存重量とは、結着剤が熱分解して生成した炭素やタール成分、あるいは製造工程で混入あるいは添加したセラミクス材料など、不活性ガス雰囲気下で重量減少がほとんど観察されない物質に由来するものであり、TG、TG−MS、EGA−MS測定時に、主となる重量減少過程が大きいピークとして観察されるのに対し、前記ピークと独立してブロードなピーク、あるいはスロープとして判別することができる。また、低温側と高温側で除外する重量減少過程以外の主とならない重量減少過程が小さいピークは、測定試料の5重量%未満の変化量のピークあるいはスロープである。
まず、基準とする熱分解温度について図3の活物質を含まないPVdF単体の熱重量変化グラフを参照して説明する。TG−MSにおいて、熱分解開始および終了の温度は、室温(25℃)から1000℃まで昇温した際の結着剤の重量減少量を観察して定める。PVdFは、室温(25℃)から200℃の範囲で2%の重量減少を示し、200℃から400℃の範囲では重量減少が観察されなかった。その後、400℃から450℃で3.5%、450℃から500℃で63%、500℃から520℃で3.5%の重量減少を示し、その後は徐々に重量が減少した。すなわち、PVdFの熱重量分析における主となる重量減少過程は400℃から520℃の範囲であり、熱分解温度T1は450℃、熱分解終了T2は500℃である。
ここから、触媒の保護に関与しない結着剤は、T1(450℃)以上T2(500℃)以下で熱分解し、触媒の保護に関与する結着剤はT1(450℃)未満で熱分解するとする。熱分解ガスクロマトグラフ質量分析における熱分解時間は、1秒以上60秒以下であることが好ましい。60秒を超えて加熱すると、触媒保護に寄与しない結着剤も拡散により触媒近傍まで移動するため、好ましくない。図4に、(T1+T2)/2に相当する475℃で30秒間加熱した熱分解ガスクロマトグラフ質量分析における、質量数132および200のイオンクロマトグラムを示す。図4では、質量数132、200のイオンクロマトグラムにピークが存在し、質量数132のピーク面積が質量数200のピーク面積よりも大きいことを確認した。
次に、図5に示す実施形態の触媒と結着剤と導電材料を含む正極の熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法におけるイオンクロマトグラムを参照し、触媒保護に寄与する結着剤の量と、触媒保護に寄与しない結着剤の量の比率の求め方を説明する。フッ素を含む結着剤は熱分解質量分析を行うと、その結着剤を構成する化合物にもよるが、質量数81、100、132、200のうち少なくともいずれか1つの質量数のシグナルを有する。面積計算には、前記熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置で、フッ素を含む結着剤に特異的な質量数81、100、132、200のシグナルを抽出したイオンクロマトグラムを用いる。イオンクロマトグラムから、触媒保護に寄与する結着剤の量と、触媒保護に寄与しない結着剤の量の面積を計算する。面積計算には、結着剤の熱分解開始温度がT1℃であり、熱分解終了温度がT2℃であるとき、熱分解温度(T1+T2)/2℃における熱分解ガスクロマトグラフ質量分析において、質量81、100、132、200より選ばれる質量数のイオンクロマトグラムのピークのうち、シグナル面積が最大の面積である質量数のシグナルを用いる。実施形態におけるPVdF単体のイオンクロマトグラフでは、質量数132のシグナル面積が最も大きいことから、正極の測定でも質量数が132のシグナル面積を求めることとする。熱分解開始温度T1℃における質量数132のイオンクロマトグラフのピーク面積をXとし、熱分解温度T2℃における質量数132のイオンクロマトグラフのピーク面積をYとする。なお、説明に用いた図4では結着剤にPVdFを採用しているため質量数132のシグナルの面積を求めているが、結着剤がPTFEなどの場合には、質量数81等の質量数のシグナル面積からXとYを求めることができる場合がある。
上記の方法で求めたXとYが、2X≧Yとなるように触媒と結着剤の配置が調整された正極は、触媒保護に寄与する結着剤の量が、触媒保護に寄与しない結着剤の量よりも多いことを表している。2X≧Yである場合、前述のようにサイクル特性が改善される機構は必ずしも明確ではないが、以下のように推測している。充電時には、リチウム酸化物から酸素が放出されるが、活性酸素となる遷移状態での反応活性が最も高いため、近傍に非水電解質が存在すると、活性酸素が分子として放出されずに非水電解質を反応して二酸化炭素を放出するため、サイクル寿命が低下する可能性がある。この場合、触媒保護に寄与する結着剤を増やすことで、活性酸素に接触する非水電解質を排除し、サイクル寿命を向上するものと推測される。また、触媒周囲をすべて結着剤で覆うと導電性が失われるため、結着剤と混練する際に少量の導電材料を添加し、導電性を確保することが好ましい。
(負極)
負極は、負極集電体と、負極集電体に担持される負極活物質含有層とを含む。
負極活物質は、例えば、リチウムイオンを吸蔵放出する材料を用いることができる。
リチウムイオンを吸蔵放出する材料は、特に限定されるものではなく、リチウムイオン電池またはリチウム電池に使用可能な材料を使用することができる。中でも、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、リチウム金属、リチウム合金、リチウム複合酸化物、またはリチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物よりなる群から選択される少なくとも1種類の材料を、負極活物質として使用することが好ましい。
リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物は、例えば、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料、熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体などに500℃以上3000℃以下で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料または炭素質材料を挙げることができる。
金属酸化物は、例えば、スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物などを挙げることができる。
金属硫化物は、例えば、スズ硫化物、チタン硫化物などを挙げることができる。
金属窒化物は、例えば、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物などを挙げることができる。
リチウム合金は、例えば、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金などを挙げることができる。
負極集電体は、例えば、貫通孔を有する導電性基板、あるいは無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、銅、ステンレス、またはニッケルから形成することができる。多孔質構造の導電性基板には、メッシュ、パンチドメタル、エクスパンディドメタル等を用いたり、あるいは金属箔に負極活物質含有層を担持させた後、前記金属箔に孔を開けたものを多孔質構造の導電性基板として用いたりすることができる。
炭素質物のような負極活物質を含む負極は、例えば、負極活物質と結着剤とを溶媒の存在下で混練し、得られた懸濁物を集電体に塗布し、乾燥した後、所望の圧力で1回プレスもしくは2〜5回多段階プレスすることにより作製することができる。
結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。
炭素質物および結着剤の配合割合は、炭素質物80質量%以上98質量%以下、結着剤2質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましい。
また、負極活物質として、リチウム金属やリチウム合金などの金属材料を使用すれば、これらの金属材料は単独でもシート形状に加工することが可能なため、結着剤を使用せずに負極活物質含有層を形成することができる。また、これらの金属材料で形成された負極活物質含有層は直接負極端子に接続することもできる。
(非水電解質)
非水電解質は、リチウムイオン二次電池に用いることが可能であれば、特に限定されるものではない。
例えば、有機溶媒と、有機溶媒に溶解される支持電解質とを含むことができる。有機溶媒は、エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、および前記の各化合物(エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、ニトリル類)に置換基を導入した化合物よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが望ましい。好ましいのは、エステル類、炭酸エステル類より選ばれるものである。エステル類の中では、環状構造のエステル類が好ましく、特に5員環のγブチロラクトン(γBL)が好ましい。炭酸エステル類は環状、鎖状構造いずれも用いることができる。環状炭酸エステル類は、5員環構造の炭酸エステル類が好ましく、特にエチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)が好ましい。鎖状炭酸エステル類は、炭素数7以下の炭酸エステル類が好ましく、特にジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が好ましい。
エーテル類は環状、鎖状構造いずれも用いることができる。環状エーテル類としては、5員環、および6員環構造のエーテル類が好ましく、中でも二重結合を含まないものが好ましい。鎖状エーテル類としては、炭素原子を5つ以上含むものが好ましい。例えば、テトラヒドロピラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ブチルエーテル、イソペンチルエーテル等を挙げることができる。
ニトリル類は、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等を挙げることができる。
有機溶媒は単独で用いてもよいが、複数種を混合して用いた方が好ましい。特に炭酸エステル類を含むことが好ましく、中でも5員環構造の炭酸エステル類を含むことが好ましく、特にECあるいはPCを含むことが好ましい。
有機溶媒の好ましい組み合わせは、EC/PC、EC/γBL、EC/EMC、EC/PC/EMC、EC/EMC/DEC、EC/PC/γBLである。
また、非水電解質としては、イオン液体に支持電解質を溶解したものを用いることができる。イオン液体は、正の電荷を有するカチオンと、負の電荷を有するアニオンとを有し、不揮発性である。そのため、イオン液体を第1の非水電解質に用いることにより、空気孔からの非水電解質の揮発量を低減することができる。
また、疎水性のイオン液体を選択することで、空気孔からの水分の侵入を抑制することができる。そのため、疎水性のイオン液体を用いることにより、空気電池の寿命をさらに向上することができる。
カチオンは、例えば、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオン、および、前記の各イオン(アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオン)に置換基を導入したカチオンよりなる群から選ばれる1種以上を挙げることができる。具体的には、N−ブチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、N−ブチル−N−エチル−N,N−ジメチルアンモニウムイオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、N−プロピル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオン、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
アニオンは、例えば、PF 、BF 、CFSO 、CSO 、[B(OOC−COO)、[(CN)N]、[(CFSON]、[(CSON]、BF(CFおよび前記の各イオン(PF 、BF 、CFSO 、CSO 、[B(OOC−COO)、[(CN)N]、[(CFSON]、[(CSON]、BF(CF)に置換基を導入したアニオンよりなる群から選ばれる1種以上を挙げる事ができる。アニオンとして、BF(CF、スルホニルイミド構造を有する[(CFSON]あるいは[(CSON]を用いた場合、イオン液体が疎水性となるために、より好ましい。特に好ましいのは[(CFSON]であり、より低粘度のイオン液体を実現することができる。
有機溶媒あるいはイオン液体に溶解する支持電解質は、リチウムイオン二次電池に用いることが可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、LiPF、LiBF、Li(CFSO)、Li(CSO)、Li[B(OOC−COO)]、Li[(CN)N]、Li[(CFSON]、Li[(CSON]、および、前記の各化合物(LiPF、LiBF、Li(CFSO)、Li(CSO)、Li[B(OOC−COO)]、Li[(CN)N]、Li[(CFSON]、Li[(CSON])に置換基を導入した化合物などを挙げることができる。使用する支持電解質の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
(セパレータ)
セパレータは、正極と負極の間に配置され、電気的な絶縁を保持するともに、リチウムイオンの導電パスを確保する。セパレータとしては、多孔質フィルムや固体電解質を用いることができる。
多孔質フィルムとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
セパレータの厚さは、30μm以下にすることが好ましい。厚さが30μmを越えると、正負極間の距離が大きくなって内部抵抗が大きくなる恐れがある。また、厚さの下限値は、5μmにすることが好ましい。厚さを5μm未満にすると、セパレータの強度が著しく低下して内部ショートが生じやすくなる恐れがある。厚さの上限値は、25μmにすることがより好ましく、また、下限値は1.0μmにすることがより好ましい。
セパレータは、120℃の条件で1時間置いたときの熱収縮率が20%以下であることが好ましい。熱収縮率が20%を超えると、加熱により短絡が起こる可能性が大きくなる。熱収縮率は、15%以下にすることがより好ましい。
セパレータは、多孔度が30%以上70%以下の範囲であることが好ましい。これは次のような理由によるものである。多孔度を30%未満にすると、セパレータにおいて高い電解質保持性を得ることが困難になる恐れがある。一方、多孔度が70%を超えると十分なセパレータ強度を得られなくなる恐れがある。多孔度のより好ましい範囲は、30%以上60%以下である。
セパレータは、空気透過率が500秒/100cm以下であると好ましい。空気透過率が500秒/100cmを超えると、セパレータ204において高いリチウムイオン移動度を得ることが困難になる恐れがある。また、空気透過率の下限値は、30秒/100cmである。空気透過率を30秒/100cm未満にすると、十分なセパレータ強度を得られなくなる恐れがあるからである。
空気透過率の上限値は300秒/100cmにすることがより好ましく、また、下限値は50秒/100cmにするとより好ましい。
固体電解質としては、非水電解質に溶解及び膨潤しないリチウムイオン伝導性を有する材料から構成されるものであり、無孔性で、リチウムイオンを選択的に透過するものであることが望ましい。
リチウムイオン伝導性を有する材料は、有機高分子、酸化物及び硫化物よりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。いずれの材料も固体状態でリチウムイオン伝導性を示すため、無孔性でリチウムイオンを選択的に透過する固体電解質層を実現することができる。
有機高分子は、支持電解質と共に使用する。有機高分子は、具体的には、ポリエチレンオキサイド含有高分子や、ポリビニル含有高分子を挙げることができる。ポリエチレンオキサイド含有高分子は、ポリエチレンオキサイドを主鎖として含み、一部が分岐していてもよい。ポリエチレンオキサイドの末端は、水酸基がエーテルやエステル結合で保護されていることが好ましい。ポリビニル含有高分子は、ポリビニル鎖を主鎖として含み、主鎖から分岐した側鎖にはエステル結合や炭酸エステル結合を含む官能基を含有することが好ましい。特に、ポリエチレンオキサイド含有高分子が、リチウムイオンのホッピング伝導性に優れるため、望ましい。有機高分子には、ジブチルフタレートなど少量の柔軟剤を含んでいてもよい。
有機高分子と共に使用する支持電解質は、リチウムイオン二次電池に用いることが可能であれば、特に限定されない。例えば、第1の非水電解質で説明したのと同様な種類のものを使用することができる。特に好ましいのは、LiPF、LiBF、Li(CFSO)、Li[(CFSON]、及び前記の各化合物に置換基を導入したリチウム塩である。
酸化物は、例えば、酸化物ガラス、酸化物結晶をあげることができる。いずれも構成元素にリチウムを含むものであり、有機高分子を含む固体電解質層と異なり支持電解質を必要としない。酸化物ガラスは、B,Si及びPよりなる群から選択される1種以上の元素とLiとを含む酸化物を挙げることができ、具体的にはLiSiO−LiBO系酸化物を挙げる事ができる。また、酸化物結晶は、Al,Ti,P,La,N,Si,In及びNbよりなる群から選択される1種以上の元素とLiとを含む酸化物をあげる事ができる。具体的には、NaZrSiPO12や、LiTi(PO、LiAlTi(PO、LiLaZr12、La0.5Li0.5TiOなどを挙げる事ができる。
硫化物は、例えば、硫化物ガラス、硫化物結晶をあげることができる。いずれも構成元素にリチウムを含むものであり、有機高分子を含む固体電解質層と異なり支持電解質を必要としない。具体的にはLiPS,LiSiS,LiGeS−LiPS、LiS−SiS系、SiS−P系、LiS−B系、LiS−SiS−LiSiO系などを挙げる事ができる。なかでも、LiS−P,Li3.25Ge0.250.75などが、導電率が高く、好ましい。
固体電解質層に含まれる酸化物及び/または硫化物が耐還元性に劣る場合、固体電解質層と負極との間に多孔質膜、不織布あるいは金属酸化物層を配置することが好ましい。固体電解質層と負極との間に多孔質膜、不織布あるいは金属酸化物層を配置することにより、固体電解質層が負極と接触しなくなるため、固体電解質層に含まれる酸化物及び/または硫化物が負極との接触により還元分解されて固体電解質層が劣化するのを回避することができる。多孔質膜あるいは不織布としては、ポリエチレン製多孔質膜、ポリプロピレン製多孔質膜、セルロース製不織布など、従来のリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いることが可能なものを使用することができる。前記金属酸化物層としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛など負極側の非水電解質に不溶の金属酸化物であれば特に限定されるものではない。また、固体電解質層に含まれる酸化物及び/または硫化物が耐還元性に優れている場合は、体積エネルギー密度を向上することができるので多孔質膜、不織布あるいは金属酸化物層を省略することが好ましい。
セパレータに固体電解質を用いる場合、正極側と負極側で異なる非水電解質を用いることができる。例えば、正極側には不揮発性のイオン液体に支持電解質を溶解した非水電解質を配置し、負極側には耐還元性に優れた有機溶媒に支持電解質を溶解した非水電解質を配置することで、サイクル特性に優れた非水電解質空気電池を実現することができる。
(実施例1)
結着剤としてPVdFを用いた。熱重量分析装置により測定した結果、熱分解温度T1は450℃、熱分解終了温度T2は500℃であった。475℃における熱分解ガスクロマトグラフ質量分析では、質量数132と200のフラグメントが存在した。正極触媒にMnO、結着剤にPVdF、導電材料にケッチェンブラックを用い、組成比を質量比で60:20:20として正極を作成した。
まず、結着剤で被覆され、かつ少量の導電材料を含む触媒は、次のような手法により得た。60質量部のMnOと1質量部のケッチェンブラックを2枚の攪拌羽を具備する攪拌容器に投入、30分間攪拌した。20質量部のPVdFをNMPに溶解し10質量%溶液としたものを、ジルコニア製ビーズとともに前記攪拌機に投入し、さらに30分間攪拌した。作成した溶液は、ろ過によりジルコニア製ビーズを除いた後に水中に投入、ろ過により沈殿物を回収し、乾燥することで、結着剤で被覆され、かつ少量の導電材料を含む触媒を作成した。
前記で作成した結着剤で被覆され、かつ少量の導電材料を含む触媒81質量部と、ケッチェンブラック19質量部を2枚の攪拌羽を具備する攪拌容器に投入、10分間攪拌した。作成した触媒と導電材料と結着剤の粉末は、ステンレス製メッシュ上に均一に広げ、ロールプレスにより圧延、さらに120℃で真空乾燥することで正極を作成した。
作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=40:60であり、2X≧Yの関係にあった。
得られた正極と、リチウムからなる負極と、ポリプロピレン製不織布からなるセパレータと、ECとPCの1:1混合溶媒に1.0M/Lの割合でLiClO4を溶解した非水電解液と、正極側に空気孔を配置したラミネート製外装材を用い、非水電解質空気電池を作成、乾燥空気中、25℃、0.1mA/cmの電流値で、放電終止2.0V(vsLi/Li)、充電終止放4.0V(vsLi/Li)―CV終止電流0.01mAの条件で充放電サイクル試験を実施し、サイクル寿命を確認した。ここで、サイクル寿命とは、初回放電容量に対して90%となるまで容量が低下したサイクル回数である。結果、サイクル寿命は450サイクルであった。
(実施例2)
正極触媒としてCo3O4を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により正極を作成した。作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=50:50であり、2X≧Yの関係にあった。得られた正極を用い、実施例1と同様の手順により非水電解質空気電池を作成、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は420サイクルであった。
(実施例3)
正極触媒としてFeを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により正極を作成した。作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=40:60であり、2X≧Yの関係にあった。得られた正極を用い、実施例1と同様の手順により非水電解質空気電池を作成、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は410サイクルであった。
(実施例4)
正極触媒としてCuOを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により正極を作成した。作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=40:60であり、2X≧Yの関係にあった。得られた正極を用い、実施例1と同様の手順により非水電解質空気電池を作成、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は400サイクルであった。
(実施例5)
正極触媒としてNiOを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により正極を作成した。作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=40:60であり、2X≧Yの関係にあった。得られた正極を用い、実施例1と同様の手順により非水電解質空気電池を作成、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は420サイクルであった。
(実施例6)
非水電解質として、カチオンにN−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、アニオンに[(CFSON]−を有するイオン液体に、0.5M/Lの割合でLi[(CFSON]を、溶解した非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作成し、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は500サイクルであった。
(実施例7)
セパレータとしてLiS−SiS−LiPOからなる硫化物ガラスを100μm厚に成型したす固体電解質用い、負極側の非水電解質にECとMECの1:1混合溶媒に1.0M/Lの割合でLiPF6を溶解した非水電解質を用い、カチオンにN−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、アニオンに[(CFSON]−を有するイオン液体に、0.5M/Lの割合でLi[(CFSON]を溶解した非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作成し、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は600サイクルであった。
(比較例1)
結着剤としてPVdFを用いた。熱重量分析装置により測定した結果、熱分解温度T1は450℃、熱分解終了温度T2は500℃であった。475℃における熱分解ガスクロマトグラフ質量分析では、質量数132と200のフラグメントが存在した。正極触媒にMnO、結着剤にPVdF、導電材料にケッチェンブラックを用い、組成比を質量比で60:20:20として正極を作成した。
まず、PVdF20質量部をNMPに溶解し、10質量%溶液を作成した。作成したPVdFのNMP溶液を、60質量部のMnOとケッチェンブック20質量部、およびジルコニア製ビーズとともに2枚の攪拌羽を具備する攪拌容器に投入、30分間攪拌した。作成した溶液は、ろ過によりジルコニア製ビーズを除いた後に水中に投入、ろ過により沈殿物を回収し、乾燥することで、触媒と導電材料と結着剤の混合物を粉体として得た。作成した触媒と導電材料と結着剤の粉末は、ステンレス製メッシュ上に均一に広げ、ロールプレスにより圧延、さらに120℃で真空乾燥することで正極を作成した。
作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=30:70であり、2X<Yの関係にあった。
得られた正極を用い、実施例1と同様の手順により非水電解質空気電池を作成、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は300回であった。
上記のように、実施形態の非水電解質空気電池用正極はサイクル特性に優れる。
(比較例2)
正極触媒としてCoを用いたこと以外は、比較例1と同様の手法により正極を作成した。作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=30:70であり、2X<Yの関係にあった。得られた正極を用い、実施例1と同様の手順により非水電解質空気電池を作成、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は280サイクルであった。
(比較例3)
正極触媒としてFeを用いたこと以外は、比較例1と同様の手法により正極を作成した。作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=30:70であり、2X<Yの関係にあった。得られた正極を用い、実施例1と同様の手順により非水電解質空気電池を作成、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は270サイクルであった。
(比較例4)
正極触媒としてCuOを用いたこと以外は、比較例1と同様の手法により正極を作成した。作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=30:70であり、2X<Yの関係にあった。得られた正極を用い、実施例1と同様の手順により非水電解質空気電池を作成、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は200サイクルであった。
(比較例5)
正極触媒としてNiOを用いたこと以外は、比較例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作成した。作成した正極の触媒層を削りとり、熱分解質ガスクロマトグラフ質量分析装置により分析した結果、熱分解温度475℃において132および200の質量数のイオンクロマトグラムにピークが存在し、かつ質量数132のピークが最も大きい面積を与えた。当該ピークの、熱分解温度450℃におけるピーク面積をX、熱分解温度500℃におけるピーク面積をYとしたとき、X:Y=25:75であり、2X<Yの関係にあった。得られた正極を用い、実施例1と同様の手順により非水電解質空気電池を作成、サイクル特性を評価した。結果、サイクル寿命は210サイクルであった。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限られず、特許請求の範囲に記載の発明の要旨の範疇において様々に変更可能である。また、本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
1…外装材、2…セパレータ、3…正極、4…負極、5…空気孔、6…正極触媒層、7…正極集電体、8…正極端子、9…空気拡散層、10…負極活物質含有層、11…負極集電体、12…負極端子、13…シールテープ

Claims (3)

  1. 正極と、セパレータと、負極と、前記正極に酸素を供給するための空気孔を備える外装材とを具備した非水電解質空気電池であって、
    前記正極は少なくとも酸素を活性化する触媒と導電材料と結着剤とを有しており、
    前記結着剤の熱分解開始温度がT1℃であり、熱分解終了温度がT2℃であるとき、
    前記T1℃以上T2℃以下の範囲において、前記結着剤の熱分解質量分析に質量数81、100、132と200のいずれかのシグナルが存在し、
    前記T1℃におけるピーク面積をXとし、
    前記T2℃におけるピーク面積をYとし、
    前記XとYは、2X≧Yの条件を満たし、
    前記結着剤はフッ素を含有する高分子であり、
    前記結着剤の分解開始温度とは、結着剤を熱重量分析装置にて分析した際、主となる重量減少過程において、前記重量減少過程における重量減少分の5%が減少する温度であり、
    前記結着剤の熱分解終了温度とは、結着剤を熱重量分析装置にて分析した際、主となる重量減少過程において、前記重量減少過程における重量減少分の95%が減少する温度であり、
    前記マススペクトルシグナル面積とは、結着剤単体のマススペクトルにおいて、質量数81、100、132と200より選ばれる複数のシグナルのうち、前記T1℃以上T2℃以下までのマススペクトルシグナル面積が最大の面積の質量数のシグナル面積である。
  2. 前記フッ素を含有する高分子の原料が、少なくともビニリデンジフルオライド、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、エチレン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペンコポリマーより選ばれる1種以上の化合物を含有する請求項1に記載の非水電解質空気電池。
  3. 前記フッ素を含有する高分子は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、エチレン、テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー、およびポリテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペンコポリマーのうちのいずれかを含む請求項1又は2に記載の非水電解質空気電池。
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