JP4518125B2 - 正極活物質およびリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
まず、本発明のフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法について、以下詳細に説明する。
本発明のフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法は、正極活物質をフッ素処理し、正極活物質表面にフッ素系被膜を形成するフッ素処理工程、および、上記フッ素処理工程で得られた上記フッ素系被膜を酸素雰囲気下で焼成することにより、正極活物質表面にフッ素と酸素とを含むフッ素−酸素含有活物質層を形成する酸化焼成処理工程、を有することを特徴とするものである。
以下、本発明のフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法における各工程について詳細に説明する。
まず、本発明におけるフッ素処理工程について説明する。本発明におけるフッ素処理工程とは、酸素含有正極活物質をフッ素処理して正極活物質表面にフッ素系被膜が形成されたフッ素被覆正極活物質を得る工程である。
また、フッ素処理後の上記正極活物質1表面のフッ素系被膜2にはF以外にも、フッ素処理で置換できなかったOH−が残存する場合がある。
また、上記フッ素ガスとして、フッ素/アルゴン混合ガス等の混合ガスを用いてもよく、減圧状態で所定量の純フッ素ガスを注入する方法を用いてもよい。
上記フッ素処理の程度は、処理ガスのガス分圧、処理温度、処理時間を調整することにより、任意に制御することができる。
次に、本発明における酸化焼成処理工程について説明する。本発明における酸化焼成処理工程とは、上述したフッ素処理工程で得られたフッ素系被膜を酸素雰囲気下で焼成することにより、酸素含有正極活物質表面部分の非晶質構造内部にフッ素と酸素とが導入されてフッ素−酸素含有活物質層が形成されたフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質を得る工程である。
また、酸化焼成処理後の上記正極活物質1表面のフッ素−酸素含有活物質層4には、フッ素が上記正極活物質1表面に付着した上記フッ素系被膜が残存する場合がある。
また、本工程においては、上記酸化性ガスを用いる場合、密閉容器中に酸化性ガスを循環させて、酸化焼成処理することが好ましい。上記フッ素系被膜中に残存したOH−を除去するとともに、酸素雰囲気中の酸素と、上記フッ素系被膜中の正極活物質表面に付着しただけのフッ素との置換を促進して、より速やかに酸化焼成処理を進行させ完結させることができるからである。
上記酸化焼成処理の程度は、処理ガスのガス分圧、焼成温度、焼成時間を調整することにより、任意に制御することができる。
本発明により得られるフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム二次電池に用いられる正極活物質等として、用いることができる。中でも自動車用のリチウム二次電池に用いられる正極活物質として用いることが好ましい。
次に、本発明のリチウム二次電池の製造方法について、以下詳細に説明する。
本発明のリチウム二次電池の製造方法は、上記の「A.フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法」により得られたフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質を用いて正極電極体を作製する正極電極体作製工程を有することを特徴とするものである。例えば、次のような工程を経ることにより、リチウム二次電池を得ることができる。
まず、上記「A.フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法」により得られたフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質を用いて、正極層を正極集電体上に作製し、上記正極層と上記正極集電体とからなる正極電極体を作製する正極電極体作製工程を行う。
次に、負極層を負極集電体上に作製し、上記負極層と上記負極集電体とからなる負極電極体を作製する負極電極体作製工程を行う。
その後、所定のセパレータを上記正極層と上記負極層とにより挟持するように上記正極電極体と上記負極電極体とを設置する。さらに、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータに所定の電解質を充填した後、上記セパレータが上記正極電極体と上記負極電極体とにより挟持させたものを電池ケース等に挿入して電池とする電池組立工程を行うことにより、上述した所望のリチウム二次電池を得ることができる。
なお、上記正極電極体作製工程、上記負極電極体作製工程は、同時に行ってもよく、上記負極電極体作製工程を行った後、上記正極電極体作製工程を行ってもよい。
次に、本発明により得られるリチウム二次電池について、図面を用いて説明する。図7は、本発明により得られるリチウム二次電池の一例を模式的に示す概略断面図である。図7に示されるリチウム二次電池は、正極集電体6、およびフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質(図示せず)を含有する正極層7、からなる正極電極体8と、負極集電体9、および負極活物質(図示せず)を含有する負極層10、からなる負極電極体11と、正極電極体8および負極電極体11の間に配置されたセパレータ12と、正極層7、負極層10、およびセパレータ12に充填されたリチウム塩を含有する電解質(図示せず)とを有するものである。
以下、本発明のリチウム二次電池の製造方法について、各工程について、詳細に説明する。
本発明における正極電極体作製工程とは、上述した「A.フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法」にて得られたフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質を用いて、正極層を正極集電体上に作製し、上記正極層と上記正極集電体とからなる正極電極体を作製する工程である。具体的な方法としては、上述した「A.フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法」にて得られたフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質を有する正極層が正極集電体上に作製された正極電極体を作製できる方法であれば、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法を用いることができる。
例えば、所定の結着材を所定の溶剤に溶解して溶液を得た後、上記溶液中に、「A.フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法」にて得られたフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質と所定の導電化剤とを導入し、均一に混錬して正極層用ペーストを作製する。上記正極層用ペーストを所定の正極集電体上に片面塗布し、その後乾燥し、プレス等した後、所定の大きさに切り出すなどして正極電極体を作製する。これを、後述するセパレータの一方に設置する等の方法を挙げることができる。
上記フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質については、上述した「A.フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
本発明のリチウム二次電池の製造方法は、少なくとも上記正極電極体作製工程を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常、上記正極電極体作製工程の他に、負極層と負極集電体とからなる負極電極体を作製する負極電極体作製工程、および所定のセパレータを上記正極層と上記負極層とにより挟持するように、上記正極電極体と上記負極電極体とを設置し、上記正極層、上記負極層、および上記セパレータに所定の電解質を充填した後、上記セパレータが上記正極電極体と上記負極電極体とで挟持されたものを電池ケース等に挿入して電池とする電池組立工程を有する。これらの工程については、一般的なリチウム二次電池における工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる上記負極電極体は、少なくとも負極集電体と、負極活物質を含有する負極層と電解質とからなるものである。
上記負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、およびグラファイト等の炭素系材料を挙げることができる。中でもグラファイトが好ましい。
上記セパレータの材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロースおよびポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でもポリプロピレンが好ましい。また、上記セパレータは、単層構造であっても良く、複層構造であってもよい。複層構造のセパレータとしては、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ、PP/PE/PPの3層構造のセパレータ等を挙げることができる。さらに、本発明においては、上記セパレータが、多孔膜、樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等であっても良い。
上記電解質は、具体的には、液状であっても良く、ゲル状であっても良く、所望の電池の種類に応じて適宜選択することができるが、中でも液状が好ましい。リチウムイオン伝導性が、より良好となるからである。
上記電解質が液状の場合は、非水電解液が好ましい。リチウムイオン伝導性が、より良好となるからである。上記非水電解液は、通常、リチウム塩および非水溶媒を有する。上記リチウム塩としては、一般的なリチウム二次電池に用いられるリチウム塩であれば特に限定されるものではないが、例えばLiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3およびLiClO4等を挙げることができる。一方、上記非水溶媒としては、上記リチウム塩を溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。本発明においては、これらの非水溶媒を一種のみ用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。また、上記非水電解液として、常温溶融塩を用いることもできる。
本発明により得られるリチウム二次電池の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車用のリチウム二次電池等として、用いることができる。
(フッ素被覆正極活物質作製)
正極活物質(LiCoO2)を密閉容器に封入して脱気した後、フッ素(F2)ガス(フッ素ガス分圧5%)を注入し、1分間保持して、正極活物質(LiCoO2)表面にフッ素系被膜を形成するフッ素処理を行い、フッ素被覆LiCoO2を得た。
(フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質作製)
フッ素被覆正極活物質作製で得られたフッ素被覆正極活物質を密閉容器に封入して脱気した後、大気雰囲気にて、760℃で、12時間保持して焼成し、正極活物質表面にフッ素と酸素とを含むフッ素−酸素含有活物質層を形成する酸化焼成処理を行い、フッ素−酸素含有活物質層被覆LiCoO2を得た。
(圧粉抵抗評価サンプル作製)
フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質作製で得られたフッ素−酸素含有活物質層被覆LiCoO2と導電助剤(アセチレンブラック、電気化学工業社製)との質量比が85:15となるように混合し、めのう乳鉢を用いて混扮して圧粉抵抗評価サンプルを得た。
結着材であるPVdfを12.8wt%溶解させた溶剤NMP溶液300mL中に、(フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質作製)で得られたフッ素−酸素含有活物質層被覆LiCoO2粉末286gと、導電化材であるアセチレンブラック33gとを添加し、均一に混合するまで混錬し正極層用ペーストを作製した。
正極層用ペーストを厚さ15μmのAl集電体上に片面塗布し、その後乾燥することで正極電極体を作製した。電極目付量は13mg/cm2であった。
この正極電極体をプレスし、正極層用ペースト厚さ74μm、正極層用ペースト密度2.45g/cm3とした。
その後、この正極電極体をΦ16mmとなるように切り出して正極電極体を得た。
LiメタルをΦ19mmとなるように切り出して、負極電極体を得た。
上記正極および負極、セパレータとしてPE製セパレータを用いて、CR2032型コインセルを作製した。電解液は、EC、DMCを体積比率で、3:7で混合したものに、支持塩としてLiPF6を濃度1mol/L溶解させたものを用いた。
正極活物質として、フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の代わりに、フッ素処理、酸化焼成処理を行っていないLiCoO2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧粉抵抗評価サンプル、およびコインセルを作製した。
正極活物質として、フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の代わりに、フッ素処理のみ行った、酸化焼成処理を行う前のフッ素被覆正極活物質作製で得られたフッ素被覆LiCoO2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして圧粉抵抗評価サンプル、およびコインセルを作製した。
(圧粉抵抗測定)
実施例、比較例1、および比較例2で得られた圧粉抵抗評価サンプルをそれぞれ0.5g秤量し、これを圧粉抵抗測定セル中に設置した。次に、ハンドプレスを用いて250kgf/cm2でプレスして、その時の抵抗を、テスターによりそれぞれ3回ずつ測定した。得られた結果を表1に示す。
(サイクル試験)
実施例、比較例1、および比較例2で得られたコインセルを用いて、サイクル特性について試験を行った。サイクル特性は、3.1〜4.2V、25℃-1/2Cで10サイクルのサイクル試験を実施した。初期放電容量を1として、100サイクル後の放電容量維持率を算出した。得られた結果を図8に示す。
2 … フッ素系被膜
3 … フッ素被覆正極活物質
4 … フッ素−酸素含有活物質層
5 … フッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質
6 … 正極集電体
7 … 本発明により得られたフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質を含有する正極層
8 … 正極電極体
9 … 負極集電体
10 … 負極層
11 … 負極電極体
12 … セパレータ
Claims (2)
- 少なくとも酸素が含有された正極活物質をフッ素処理し、正極活物質表面にフッ素系被膜を形成するフッ素処理工程、および、
前記フッ素処理工程で得られた前記フッ素系被膜を酸素雰囲気下で焼成することにより、正極活物質表面にフッ素と酸素とを含むフッ素−酸素含有活物質層を形成する酸化焼成処理工程を有し、
前記フッ素処理工程が、前記正極活物質をフッ素ガスにより処理する工程であり、前記フッ素処理工程におけるフッ素ガスの分圧は、処理ガスの全圧に対して3%〜7%の範囲内であり、さらに処理時間が0.5分から5分の範囲内であることを特徴とするフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法。 - 請求項1に記載のフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質の製造方法により得られたフッ素−酸素含有活物質層被覆正極活物質を用いて正極電極体を作製する正極電極体作製工程を有することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
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