JP6786299B2 - アルカリ金属イオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明はアルカリ金属イオン二次電池に関する。
近年、地球環境の保全及び省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン二次電池の開発が精力的に進められている。リチウムイオン二次電池は100Wh/Lを超えるエネルギー密度を有しており、かつサイクル寿命などの耐久性に優れていることから、高容量化と高耐久性が求められる電気自動車又はモバイル機器などに最も適した蓄電素子として、現在広く普及している。
しかし、肝心のリチウムは地殻中の濃度が平均20ppm程度しかなく、しかも産出地が偏在しているという問題があり、今後リチウムイオン二次電池をさらに普及していくと、地球上のリチウム資源が枯渇してしまうという問題がある。そのため、これからは、より多く普遍的に存在する元素をリチウムの代替として使用していく必要があり、ナトリウム又はカリウムといったアルカリ金属を蓄電デバイスに用いる研究が精力的に進められている。
例えば、特許文献1には、正極にNaFeO、負極に黒鉛を用いたナトリウムイオン二次電池が考案されており、100サイクルを超える充放電が可能であることが示されている。しかしながら、その容量はリチウムイオン二次電池に比べ小さく、また充放電が可能なサイクル数も劣り、リチウムイオン二次電池の代替として用いることは難しいといえる。
このサイクル特性の悪化を抑制するため、例えば、特許文献2では、負極にハードカーボン(難黒鉛化性炭素材料)を用い、電解液の溶媒としてカーボネートを用いることで、充放電サイクルによる劣化を抑制できることを見出している。しかしながら、やはりリチウムイオン二次電池と比べ、そのサイクル耐久性は低く、また高温下での保存による劣化も懸念されるため、満足いくものではないといえる。これらの劣化の原因としては、サイクル又は高温下での保存により、電解液の分解により生じる不純物が、主に正極に用いられている材料に悪影響を与えるためと考えられる。
特開平11−40156号公報 国際公開第2010/109889号
本発明は、以上の現状に鑑みてなされたものである。
従って、本発明が解決しようとする課題は、高出力特性および耐久性に優れたアルカリ金属イオン二次電池を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた。その結果、正極に、充放電に関与する正極活物質とは別に、アルカリ金属化合物を含有させることによって、電解液中に発生する不純物をトラップすることで、アルカリ金属イオン二次電池が良好な高出力特性を備え、かつ高温保存による特性劣化を抑制できることを見出した。
本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである:
[1]
元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属イオンを吸蔵及び放出することが可能な遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極活物質層を有する正極;
負極;
セパレータ;及び
前記第3周期以降のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液;
を含むアルカリ金属イオン二次電池であって、
前記非水系電解液に含まれる前記第3周期以降のアルカリ金属イオンを陽イオンとして有するアルカリ金属化合物が、前記正極中に、前記正極活物質層の質量を基準として、0.5質量%以上50質量%以下含まれる、
前記アルカリ金属イオン二次電池。
[2]
前記第3周期以降のアルカリ金属化合物の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下である、[1]に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
[3]
前記アルカリ金属化合物が、炭酸塩、水酸化物、及び酸化物から選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
[4]
前記正極活物質層が、下記式(1)〜(3):

−ORO−X (1)

{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、X及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(式中、nは0又は1である。)であり、かつM及びMは、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}

−ORO−X (2)

{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(式中、nは0又は1である。)であり、かつMは、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}

−ORO−X (3)

{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(式中、nは0又は1である。)である。}

で表される化合物から選択される1種以上を、該正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
[5]
前記第3周期以降のアルカリ金属イオンがナトリウムイオンであり、かつ前記アルカリ金属化合物がナトリウム化合物である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
本発明によれば、高出力特性および耐久性に優れたアルカリ金属イオン二次電池を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池とは、いわゆるリチウムイオン二次電池は含まないものとする。すなわち、充放電により正負極活物質に挿入脱離する金属イオンとして、元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属イオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン)のうち、1種以上が選択される。以下、これらの第3周期以降のアルカリ金属イオンは、単にアルカリ金属イオンと呼び、第3周期以降のアルカリ金属についても、単にアルカリ金属と呼ぶ。
ナトリウムイオン二次電池に代表されるアルカリ金属イオン二次電池は、一般に正極、負極、セパレータ、電解液、及び外装体を主な構成要素とする。電解液としては、第3周期以降のアルカリ金属塩(以下、単にアルカリ金属塩と呼ぶ)を溶解させた有機溶媒(以下、非水系電解液という。)を用いる。例えば、ナトリウムイオン二次電池の場合、その電解液としてはナトリウム塩を溶解させた有機溶媒を用いる。
<正極>
本実施形態における正極は、正極集電体と、その片面又は両面に存在する正極活物質層とを有する。
また、本実施形態における前記正極は、蓄電素子組み立て前の正極前駆体として、元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属化合物(以下、単にアルカリ金属化合物と呼ぶ)を含むことが好ましい。正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属イオンは、非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンと同じものを用いる。
後述のように、本実施形態では蓄電素子組み立て工程内で、負極にアルカリ金属イオンをドープすることが好ましいが、そのアルカリ金属ドープ方法としては、前記アルカリ金属化合物を含む正極前駆体、負極、セパレータ、外装体、及び非水系電解液を用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。前記アルカリ金属化合物は前記正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層に含有されることが好ましい。
ここで、アルカリ金属ドープ工程前における正極状態のことを正極前駆体、アルカリ金属ドープ工程後における正極状態のことを正極と定義する。
[正極活物質層]
前記正極活物質層は、遷移金属酸化物を含む正極活物質を含有することが好ましく、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
また、正極前駆体の正極活物質層には、正極活物質並びに後述される式(1)及び(2)で表される化合物以外のアルカリ金属化合物が含有されることが好ましい。
−正極活物質−
前記正極活物質は、アルカリ金属(好ましくは、元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属イオン)を吸蔵及び放出することが可能な遷移金属酸化物を含むことが好ましい。正極活物質として用いられる遷移金属酸化物には、特に制限はない。遷移金属酸化物としては、例えば、
コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、バナジウム、及びクロムから成る群より選ばれる1種以上の元素
を含む酸化物が挙げられる。
具体的について例示すると、MNiO、MMnO、MCoO、MNi0.5Mn0.5、MFeO、M2/3Fe1/3Mn2/3、MNi1/3Co1/3Mn1/3、MNi0.5Ti0.5、MVO、MCrO、及びMFePO(式中、Mは、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれるアルカリ金属であり、xは0≦x≦1を満たす)等が挙げられる。
本実施形態では、アルカリ金属化合物が正極前駆体に含まれており、アルカリ金属ドープ工程にてアルカリ金属化合物がアルカリ金属のドーパント源となり負極にアルカリ金属ドープができるため、遷移金属化合物にあらかじめアルカリ金属が含まれていなくても(すなわち上記式においてx=0であっても)、アルカリ金属イオン二次電池として電気化学的な充放電をすることができる。
ナトリウム含有遷移金属酸化物として具体的について例示すると、NaNiO、NaMnO、NaCoO、NaNi0.5Mn0.5、及びNaFeO(式中、xは、それぞれ独立に、0≦x≦1を満たす)等が挙げられる。
本実施形態における正極活物質としては、遷移金属酸化物のみを用いてもよいし、遷移金属酸化物とともにその他の正極活物質を併用してもよい。ここで使用できるその他の正極活物質としては、例えば、活性炭を挙げることができる。活性炭には特に制限はないが、石油系、石炭系、植物系、又は高分子系等の各種原料から得られた市販品を使用することができる。活性炭の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、10質量%以下である。含有割合が15質量%以下の場合、アルカリ金属イオン二次電池のエネルギー密度を高めることができる。
正極活物質の平均粒子径は、1〜20μmであることが好ましい。
上記平均粒子径が1μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。ここで、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が1μm以上であればそのような欠点が生じ難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。上記平均粒子径は、より好ましくは1〜15μmであり、更に好ましくは1〜10μmである。上記平均粒子径の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
正極活物質層における正極活物質の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、35質量%以上95質量%以下であることが好ましい。正極活物質の含有割合の下限としては、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。一方、正極活物質の含有割合の上限としては、90質量%以下であることが更に好ましい。この範囲の含有割合とすることにより、好適な充放電特性を発揮する。この範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
(アルカリ金属化合物)
前記アルカリ金属化合物としては、後述のアルカリ金属ドープ工程において正極で分解し、アルカリ金属イオンを放出することが可能である化合物を用いる。例えば、炭酸塩、酸化物、水酸化物などが好適に用いられる。例えば、ナトリウムイオン二次電池に用いるナトリウム化合物の場合、炭酸ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、シュウ化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、窒化ナトリウム、硫化ナトリウム、リン化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムから選択される1種以上が用いられる。好ましくは炭酸ナトリウム、酸化ナトリウム、及び水酸化ナトリウムであり、更に好ましくは、空気中での取り扱いが可能であり、かつ吸湿性が低い炭酸ナトリウムである。このようなアルカリ金属化合物は、電圧の印加によって分解し、負極へのアルカリ金属ドープのドーパント源として機能するとともに、正極活物質層において空孔を形成するから、電解液の保持性に優れ、かつイオン伝導性に優れる正極を形成することができる。
アルカリ金属化合物は、粒子状であることが好ましい。粒子状のアルカリ金属化合物の平均粒子径は0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。アルカリ金属化合物の平均粒子径の上限としては50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。アルカリ金属化合物の平均粒子径が0.1μm以上であれば、正極におけるアルカリ金属化合物の酸化反応後に残る空孔が電解液を保持するのに十分な容積を有することとなるため、高負荷充放電特性が向上する。アルカリ金属化合物の平均粒子径が10μm以下であれば、アルカリ金属化合物の表面積が過度に小さくはならないから、該アルカリ金属化合物の酸化反応の速度を確保することができる。アルカリ金属化合物の平均粒子径が10μm以下であれば、アルカリ金属化合物の表面積が増え、酸化速度がより向上できるため、更に好ましい。上記平均粒子径の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
アルカリ金属化合物の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
正極活物質層におけるアルカリ金属化合物の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、0.5質量%以上54質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。この含有割合が0.5質量%以上であれば、負極に十分なアルカリ金属ドープをすることができるため、好ましい。この含有割合が54質量%以下であれば、アルカリ金属化合物が反応した後の正極密度を高くすることができ、正極の強度を保つことができるため、好ましい。上記含有割合の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
正極活物質層におけるアルカリ金属化合物の含有割合は、アルカリ金属イオンドープ後の正極における正極活物質層の全質量を基準として、0.5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。この含有割合が0.5質量%以上であれば、負極に十分なアルカリ金属ドープをすることができるため、好ましい。この含有割合が50質量%以下であれば、アルカリ金属化合物が反応した後の正極密度を高くすることができ、正極の強度を保つことができるため、好ましい。上記含有割合の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
−高負荷充放電特性−
アルカリ金属イオン二次電池を充放電する際、電解液中のアルカリ金属イオンが充放電に伴って移動し、活物質と反応する。ここで、活物質へのイオンの挿入反応及び脱離反応の活性化エネルギーは、それぞれ異なる。そのため、特に充放電の負荷が大きい場合、イオンは充放電の変化に追従できなくなる。その結果、バルク電解液中の電解質濃度が下がるため、アルカリ金属イオン二次電池の抵抗が上昇してしまう。
しかし、正極前駆体にアルカリ金属化合物を含有させると、該アルカリ金属化合物を酸化分解することにより、正極内部に電解液を保持できる良好な空孔が形成される。このような空孔を有する正極には、充放電中、活物質近傍に形成された空孔内の電解液からイオンが随時供給されるため、高負荷充放電サイクル特性が向上すると考えられる。
−任意成分−
本実施形態における正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びアルカリ金属化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーとしては、特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等を用いることができる。導電性フィラーの使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下である。より好ましくは0.01質量部以上25質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上20質量部以下である。導電性フィラーの使用量が30質量部よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有割合が少なくなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上15質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上10質量部以下である。結着剤の使用量が1質量%以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で結着剤の使用量が30質量%以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。結着剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは、0質量部又は0.1質量部以上、10質量部以下である。分散安定剤の使用量が10質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[正極集電体]
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池における正極集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。
該金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
<負極>
本実施形態の負極は、ファラデー反応又は非ファラデー反応に関与する物質を含み、好ましくは、負極集電体と、その片面又は両面に存在する負極活物質層と、を有する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む。これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散材安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
−負極活物質−
負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出することが可能な物質を用いることができる。具体的には、炭素材料、正極活物質に含まれるアルカリ金属イオンと同種のアルカリ金属の単体、アルカリ金属を含む合金が好適に用いられる。好ましくは該負極活物質の総量に対する該炭素材料の含有率が50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。該炭素材料の含有率が100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。上記炭素材料の含有率の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;カーボンナノ粒子;活性炭;人造黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等の炭素質材料前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。アルカリ金属としてナトリウムを選択したナトリウムイオン二次電池においては、この中でも、良好なドープ状態の達成や、高容量を発現できるという観点で、難黒鉛化性炭素材料が好適に用いられる。また、アルカリ金属としてカリウムを選択したカリウム二次電池においては、高容量を発現できるという観点で、黒鉛が好適に用いられる。
負極活物質の平均粒子径は1μm以上30μm以下であることが好ましい。下限については、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは2.5μm以上である。上限については、より好ましくは10μm以下であり、更に好ましくは5μm以下である。平均粒子径が1μm以上30μm以下であれば良好な耐久性が保たれる。上記負極活物質の平均粒子径の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
−任意成分−
本実施形態における負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、結着剤、分散材安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーの種類は特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が例示される。導電性フィラーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下、より好ましくは2質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上25質量部以下である。結着剤の使用量が1質量%以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で結着剤の使用量が30質量%以下であれば、負極活物質へのアルカリ金属イオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは、0質量部又は0.1質量部以上、10質量部以下である。分散安定剤の使用量が10質量部以下であれば、負極活物質へのアルカリ金属イオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[負極集電体]
本実施形態における負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化がおこらない金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池における負極集電体としては、銅箔が好ましい。
該金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
[正極前駆体および負極の製造]
正極前駆体および負極は、正極集電体の片面上又は両面上に正極活物質層、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において、正極活物質層は正極集電体に、負極活物質層は負極集電体に固着している。
正極前駆体および負極は、既知のアルカリ金属イオン二次電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質または負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体または負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより、正極前駆体または負極を得ることが出来る。さらに、得られた正極前駆体または負極にプレスを施して、正極活物質層または負極活物質層の膜厚又はかさ密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、正極活物質または負極活物質を含む各種材料を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体または負極集電体に貼り付ける方法も可能である。
塗工液は、正極活物質または負極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水若しくは有機溶媒、及び/又はそれらに結着剤若しくは分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加して調製してもよい。また、水又は有機溶媒に結着剤又は分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、正極活物質または負極活物質を含む各種材料粉末を追加して、塗工液を調製してもよい。
正極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドする方法として、例えばボールミル等を使用して正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて導電性フィラーを予備混合して、導電性の低いアルカリ金属化合物に導電材をコーティングさせる予備混合をしてもよい。これにより、後述のアルカリ金属ドープ工程において正極前駆体でアルカリ金属化合物が分解し易くなる。前記塗工液の溶媒に水を使用する場合には、アルカリ金属化合物を加えることで塗工液がアルカリ性になることもあるため、必要に応じてpH調整剤を添加してもよい。
前記塗工液の調製には、特に制限されるものではないが、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることが出来る。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速が1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。また、周速が50m/s以下であれば、分散による熱又はせん断力により各種材料が破壊されることなく、再凝集が生じることがないため好ましい。
前記塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm以下では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり、好ましくない。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジ発生等がなく、安定に塗工ができる。
前記塗工液の粘度(ηb)は、1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。また、粘度(ηb)が20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
また、該塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
前記塗膜の形成には、特に制限されるものではないが、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることが出来る。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工で形成してもよい。正極前駆体の多層塗工の場合には、塗膜各層内のアルカリ金属化合物の含有量が異なるように塗工液組成を調整してもよい。また、塗工速度は0.1m/分以上100m/分以下であることが好ましく、より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工出来る。他方、塗工速度が100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
前記塗膜の乾燥については、特に制限されるものではないが、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることが出来る。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて塗膜を乾燥させてもよい。乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることが出来る。他方、乾燥温度が200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着剤の偏在、正極集電体や負極集電体の酸化、及び正極活物質層や負極活物質層の酸化を抑制できる。
前記正極前駆体および負極のプレスには、特に制限されるものではないが、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることが出来る。正極活物質層および負極活物質層の膜厚、かさ密度及び電極強度は、後述するプレス圧力、隙間、及びプレス部の表面温度により調整できる。
プレス圧力は0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましく、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体および負極に撓みやシワが生じることがなく、所望の膜厚やかさ密度に調整できる。
また、プレスロール同士の隙間は、所望の膜厚やかさ密度となるように乾燥後の膜厚に応じて任意の値を設定できる。さらに、プレス速度は撓みやシワが生じない任意の速度に設定できる。
また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要によりプレス部を加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは融点マイナス30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着剤の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは融点プラス30℃以下、さらに好ましくは融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、プレス部の表面を90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、プレス部の表面を40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
また、プレス圧力、隙間、速度、及びプレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
前記正極活物質層の厚みは、片面当たり20μm以上200μm以下であることが好ましい。前記正極活物質層の厚さは、より好ましくは片面当たり25μm以上100μm以下であり、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。この厚さが20μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、この厚さが200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、従ってエネルギー密度を高めることができる。上記正極活物質層の厚さの範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。なお、集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における正極活物質層の厚さとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。
負極活物質層の厚みは、片面当たり、5μm以上100μm以下が好ましい。該負極活物質層の厚みの下限は、さらに好ましくは7μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。該負極活物質層の厚みの上限は、さらに好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下である。この厚さが5μm以上であれば、負極活物質層を塗工した際にスジ等が発生せず塗工性に優れる。他方、この厚さが100μm以下であれば、セル体積を縮小することによって高いエネルギー密度を発現できる。上記負極活物質層の厚さの範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。なお、集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における負極活物質層の厚さとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。
負極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.30g/cm以上1.8g/cm以下であり、より好ましくは0.40g/cm以上1.5g/cm以下、さらに好ましくは0.45g/cm以上1.3g/cm以下である。嵩密度が0.30g/cm以上であれば、十分な強度を保つことができるとともに、負極活物質間の十分な導電性を発現することができる。また、嵩密度が1.8g/cm以下であれば、負極活物質層内でイオンが十分に拡散できる空孔が確保できる。
[セパレータ]
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体、負極及びセパレータを有する電極積層体または電極捲回体が形成される。
前記セパレータとしては、アルカリ金属イオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面または両面に、有機または無機の微粒子から成る膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機または無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、35μm以下の厚みとすることにより、電池の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
また、有機または無機の微粒子から成る膜の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、10μm以下の厚みとすることにより、電池の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
[ゲル電解質]
セパレータは、非水系電解液の浸透により膨潤する有機ポリマーを含んでいてもよいし、セパレータの代替として単体で用いてもよい。有機ポリマーは、特に制限はないが、電解液との親和性がよく、電解液を浸透させ膨潤させることでゲル化するものが好ましい。例えば、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビリニデン、ポリメチルメタクリレート、又はこれらの混合物は、ゲル化したときに高いアルカリ金属イオン伝導性を発現できるため、好適に用いられる。
また有機ポリマーは、電解液を有機ポリマー内に包含することができる。そのため、外装体が傷ついた際、アルカリ金属イオン二次電池から電解液が外部に流出することを防ぐ効果があり、安全上好ましい。
[固体電解質層]
アルカリ金属にナトリウムを用いるナトリウムイオン二次電池においては、セパレータの代わりに、ナトリウムイオンを伝導することが可能な固体電解質層を用いてよい。固体電解質層は、固体電解質材料を含む層であるが、固体電解質材料は、ナトリウムイオンを伝導するものであれば特に限定されるものではない。固体電解質材料の例としては、酸化物や硫化物が挙げられる。例えば酸化物であれば、βアルミナが好適に用いられる。固体電解質層の厚みは、特に制限を受けるものではないが、ナトリウムイオン二次電池の高エネルギー密度化の観点から、1μm〜100μmであることが好ましい。
[組立]
セル組み立て工程で得られる電極積層体は、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子および負極端子を接続したものである。また電極捲回体は、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して捲回して成る捲回体に正極端子及び負極端子を接続したものである。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定はしないが、抵抗溶接や超音波溶接などの方法で行うことができる。
[外装体]
外装体としては、金属缶、ラミネート包材等を使用できる。
前記の金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。
前記のラミネート包材としては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
[外装体への収納]
乾燥した電極積層体または電極捲回体は、金属缶やラミネート包材に代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残した状態で封止することが好ましい。外装体の封止方法は特に限定しないが、ラミネート包材を用いる場合は、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いる。
[乾燥]
外装体へ収納した電極積層体または電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法に限定はないが、真空乾燥などにより乾燥することができる。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の重量を基準として、1.5質量%以下が好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性やサイクル特性を悪化させるため、好ましくない。
[電解液]
本実施形態における電解液は非水系電解液である。すなわち、この電解液は、後述する非水溶媒を含む。前記非水系電解液は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のアルカリ金属塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、アルカリ金属イオンを電解質として含む。
本実施形態における非水系電解液は、電解質としてアルカリ金属塩を用いる。例えば、MN(SOCF、MN(SOF)、MN(CSO、MCFSO、MC(CFSO、MPF、MBF、MClO、MAsF、MAlCl(式中、Mは、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれるアルカリ金属である。)等を単独で用いることができ、2種以上を混合して用いてもよい。例えばナトリウムイオン二次電池の場合、高い伝導度を発現できることから、NaClOや、NaPF及び/又はNaN(SOCFを含むことが好ましい。
非水系電解液中のアルカリ金属塩濃度は、0.5mol/L以上であることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲がより好ましい。アルカリ金属塩濃度が0.5mol/L以上であれば、陰イオンが十分に存在するので電池の容量を十分高くできる。また、アルカリ金属塩濃度が2.0mol/L以下である場合、未溶解のアルカリ金属塩が非水系電解液中に析出すること、及び電解液の粘度が高くなり過ぎることを防止でき、伝導度が低下せず、出力特性も低下しないため好ましい。
本実施形態における非水系電解液は、非水溶媒として、好ましくは、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有する。非水系電解液が環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有することは、所望の濃度のアルカリ金属塩を溶解させる点、及び高いアルカリ金属イオン伝導度を発現する点で有利である。環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等に代表されるアルキレンカーボネート化合物が挙げられる。アルキレンカーボネート化合物は、典型的には非置換である。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネート化合物が挙げられる。ジアルキルカーボネート化合物は典型的には非置換である。
環状カーボネート及び鎖状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の総量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。上記合計含有量が50質量%以上であれば、所望の濃度のアルカリ金属塩を溶解させることが可能であり、高いアルカリ金属イオン伝導度を発現することができる。上記合計濃度が95質量%以下であれば、電解液が、後述する添加剤をさらに含有することができる。上記合計濃度の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
本実施形態における非水系電解液は、更に添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、特に制限されないが、例えば、スルトン化合物、環状ホスファゼン、非環状含フッ素エーテル、含フッ素環状カーボネート、環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、及び環状酸無水物等を単独で用いることができ、また2種以上を混合して用いてもよい。
[注液、含浸、封止工程]
組立工程の終了後に、外装体の中に収納された電極積層体に、非水系電解液を注液する。注液工程の終了後に、更に、含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するアルカリ金属ドープ工程において、ドープが不均一に進むため、得られるアルカリ金属イオン二次電池の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。上記含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後に外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸工程終了後には、外装体が開口した状態で減圧しながら封止することで密閉する。
[アルカリ金属ドープ工程]
本実施形態では、アルカリ金属イオンを含む正極活物質と、アルカリ金属化合物とが、負極活物質へのアルカリ金属イオンのドーパント源として機能する。アルカリ金属ドープ工程として、好ましくは、前記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して前記アルカリ金属化合物を分解することにより、正極前駆体中のアルカリ金属化合物を分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極でアルカリ金属イオンを還元することにより負極活物質層にアルカリ金属イオンがプレドープされる。
このアルカリ金属ドープ工程において、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の酸化分解に伴い、CO等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、
外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;
前記外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;
等を挙げることができる。
[エージング工程]
アルカリ金属ドープ工程の終了後に、アルカリ金属イオン二次電池にエージングを行うことが好ましい。エージング工程において電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にアルカリ金属イオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
上記エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
[ガス抜き工程]
エージング工程の終了後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られるアルカリ金属イオン二次電池の抵抗が上昇してしまう。
上記ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、前記外装体を開口した状態でアルカリ金属イオン二次電池を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。
<アルカリ金属イオン二次電池>
以上の方法により、蓄電素子として、アルカリ金属イオン二次電池を製造することができる。
この蓄電素子は、
正極前駆体に含有されていたアルカリ金属化合物が分解されて散逸した跡である空孔を有する多孔性の正極活物質層を有する正極と、
上記アルカリ金属化合物をドーパント源としてドープされた負極活物質層を有する負極と、
を具備する。
本実施形態では、蓄電素子の正極に、アルカリ金属ドープ工程にて分解しなかったアルカリ金属化合物を含んでいてもよい。
[正極]
正極活物質層の嵩密度は、1.0g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは1.2g/cm以上4.5g/cm以下の範囲である。正極活物質層の嵩密度が1.0g/cm以上であれば、高いエネルギー密度を発現でき、蓄電素子の小型化を達成できる。また、この嵩密度が4.5g/cm以下であれば、正極活物質層内の空孔における電解液の拡散が十分となり、高い出力特性が得られる。
[アルカリ金属化合物の同定方法]
正極中に含まれるアルカリ金属化合物の同定方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により同定することができる。アルカリ金属化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
以下に記載する走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)、ラマン、X線光電子分光(XPS)を実行又は測定する際には、アルゴンボックス中でリチウムイオン二次電池を解体して正極を取り出し、正極表面に付着した電解質を洗浄した後に測定を行うことが好ましい。正極の洗浄方法については、正極表面に付着した電解質を洗い流せればよいため、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート溶媒が好適に利用できる。
洗浄方法としては例えば、正極重量の50〜100倍のジエチルカーボネート溶媒に正極を10分間以上浸漬させ、その後溶媒を取り替えて再度正極を浸漬させる。その後正極をジエチルカーボネートから取り出し、真空乾燥(温度:0〜200℃、圧力:0〜20kPa、時間:1〜40時間の範囲で正極中のジエチルカーボネートの残存が1質量%以下になる条件とする。ジエチルカーボネートの残存量については、後述する蒸留水洗浄、液量調整後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。)させた後に、上記SEM−EDX、ラマン、XPSの解析を実施する。
後述のイオンクロマトグラフィーを用いる場合、正極を蒸留水で洗浄した後の水を解析することにより陰イオンを同定することができる。
上記解析手法にてアルカリ金属化合物を同定できなかった場合、その他の解析手法としてXRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、アルカリ金属化合物を同定することもできる。
[イオンクロマトグラフィー]
正極の蒸留水洗浄液をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出したアニオン種を同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、またはサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計や荷電化粒子検出を検出器と組み合わせて測定することもできるため、SEM−EDX、ラマン、XPSの解析結果から同定されたアルカリ金属化合物に基づいて、適切なカラム、検出器等を組み合わせることが好ましい。
サンプルの保持時間は、使用するカラムや溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の標準液を予め測定しておくことでイオン種成分の定性と定量が可能となる。
<アルカリ金属化合物の定量方法>
正極中に含まれるアルカリ金属化合物の定量方法を以下に記載する。正極を有機溶媒で洗浄し、その後蒸留水で洗浄し、蒸留水での洗浄前後の正極重量変化からアルカリ金属化合物を定量することができる。測定する正極の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm以上200cm以下であることが好ましく、更に好ましくは25cm以上150cm以下である。面積が5cm以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm以下であればサンプルの取扱い性に優れる。この面積の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
有機溶媒による洗浄については正極表面に堆積した電解液分解物を除去できればよいため、有機溶媒は特に限定されないが、該アルカリ金属化合物の溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることでアルカリ金属化合物の溶出が抑制されるため好ましい。例えばメタノール、アセトン等の極性溶媒が好適に用いられる。
正極の洗浄方法は、正極の重量に対し50〜100倍のメタノール溶液に正極を3日間以上十分に浸漬させる。この時、メタノールが揮発しないよう容器に蓋をするなどの対策を施すことが好ましい。その後正極をメタノールから取り出し、真空乾燥(温度:100〜200℃、圧力:0〜10kPa、時間:5〜20時間の範囲で正極中のメタノールの残存が1質量%以下になる条件とする。メタノールの残存量については、後述する蒸留水洗浄後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。)し、その時の正極の重量をM[g]とする。続いて、正極の重量の100倍(100M[g])の蒸留水に正極を3日間以上十分に浸漬させる。この時、蒸留水が揮発しないよう容器に蓋をする等の対策を施すことが好ましい。3日間以上浸漬させた後、蒸留水から正極を取り出し(前述のイオンクロマトグラフィーを測定する場合は、蒸留水の量が100M[g]になるように液量を調整する。)、上記のメタノール洗浄と同様に真空乾燥する。この時の正極の重量をM[g]とし、続いて、得られた正極の集電体の重量を測定するため、スパチュラ、ブラシ、刷毛等を用いて集電体上の正極活物質層を取り除く。得られた正極集電体の重量をM[g]とすると、正極中に含まれるアルカリ金属化合物の質量%Xは、式(III)にて算出できる。
X=100×[1−(M−M)/(M−M)] (III)式
[アルカリ金属化合物の平均粒子径]
一般的に、アルカリ金属イオン二次電池は保存や使用などを重ねることで、電解液に含まれる電解質が分解し、フッ素イオンを発生させる。発生したフッ素イオンは主に負極でフッ化物を形成し、アルカリ金属イオン二次電池の内部抵抗を増大させるため、好ましくない。一方でアルカリ金属化合物はフッ素イオンを吸着することができるため、負極でのフッ化物の形成を抑制できる。そのため、アルカリ金属化合物を正極に存在させることで、アルカリ金属イオン二次電池の内部抵抗の増大を抑制することができるため、好ましい。
アルカリ金属化合物の平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、更に好ましくは、0.5μm以上5μm以下である。この平均粒子径が0.1μm以上の場合、高温保存により生成するフッ素イオンを効率的に吸着することにより高温保存による特性劣化とガス発生を抑制できる。この平均粒子径が10μm以下の場合、高温保存により生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンの吸着を効率良く行うことができる。上記平均粒子径の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
アルカリ金属化合物の平均粒子径の測定方法は特に限定されないが、正極断面のSEM画像、及びSEM−EDX画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができる。正極に炭酸塩を含有させる場合、正極断面のラマンイメージングを測定することで炭酸イオンの分布を求めることもできる。
断面SEM観察によるアルカリ金属化合物の同定方法を以下に例示する。アルカリ金属化合物は、例えば炭酸塩の場合、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極断面のSEM−EDX画像による炭素マッピングおよび酸素マッピングにて判別できる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた炭素マッピングと酸素マッピングそれぞれに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む領域を、それぞれ炭素領域および酸素領域とした時、これらの領域が重複する部分を炭酸塩と判別することができる。
[平均粒子径の算出方法]
アルカリ金属化合物の平均粒子径は、上記正極断面のSEM−EDXと同視野にて測定し、得られた画像を、画像解析することで求めることができる。上記正極断面のSEM画像にて判別されたアルカリ金属化合物の粒子全てについて断面積Sを求め、下記式(I)にて算出される粒子径dを求める。(円周率をπとする。)
d=2×(S/π)1/2 式(I)
[アルカリ金属ドープ後の正極活物質層]
本実施形態に係るアルカリ金属ドープ後の正極活物質層は、下記式(1)〜(3):

−ORO−X (1)

{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、X及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(式中、nは0又は1である。)であり、かつM及びMは、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}

−ORO−X (2)

{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(式中、nは0又は1である。)であり、かつMは、それぞれ、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}

−ORO−X (3)

{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(式中、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を該正極活物質の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有することが好ましい。
式(1)の化合物として特に好ましい化合物は、限定されないが、例えば下記式:
MOCOM、MOCOM、MOCOCOOM、MOCOOCOM、MOCOOCOCOOM及びMOCOOCOCOOM(式中、Mは、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれるアルカリ金属である。)で表される化合物である。
式(2)の化合物として特に好ましい化合物は、限定されないが、例えば下記式:
MOCOH、MOCOH、MOCOCOOH、MOCOCOOH、MOCOOCOCOOH、MOCOOCOCOOH、MOCOCH、MOCOCH、MOCOCOOCH、MOCOCOOCH、MOCOOCOCOOCH、MOCOOCOCOOCH、MOCOC、MOCOC、MOCOCOOC、MOCOCOOC、MOCOOCOCOOC、MOCOOCOCOOC(式中、Mは、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれるアルカリ金属である。)で表される化合物である。
式(3)の化合物として特に好ましい化合物は、限定されないが、例えば下記式:
HOCOH、HOCOH、HOCOCOOH、HOCOCOOH、HOCOOCOCOOH、HOCOOCOCOOH、HOCOCH、HOCOCH、HOCOCOOCH、HOCOCOOCH、HOCOOCOCOOCH、HOCOOCOCOOCH、HOCOC、HOCOC、HOCOCOOC、HOCOCOOC、HOCOOCOCOOC、HOCOOCOCOOC、CHOCOCH、CHOCOCH、CHOCOCOOCH、CHOCOCOOCH、CHOCOOCOCOOCH、CHOCOOCOCOOCH、CHOCOC、CHOCOC、CHOCOCOOC、CHOCOCOOC、CHOCOOCOCOOC、CHOCOOCOCOOC、COCOC、COCOC、COCOCOOC、COCOCOOC、COCOOCOCOOC、COCOOCOCOOC
のいずれかで表される化合物である。
本実施形態における上記化合物を正極活物質層内に含有させるための方法としては、例えば、
正極活物質層に前記化合物を混合する方法、
正極活物質層に前記化合物を吸着させる方法、
正極活物質層に前記化合物を電気化学的に析出させる方法
等が挙げられる。
中でも、非水系電解液中に、分解してこれらの前記化合物を生成し得る前駆体を含有させておき、蓄電素子を作製する工程における前記前駆体の分解反応を利用して、正極活物質層内に前記化合物を堆積させる方法が好ましい。
前記化合物を形成する前駆体としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートおよびフルオロエチレンカーボネートから選択される少なくとも1種の有機溶媒を使用することが好ましく、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネートを使用することがさらに好ましい。
ここで、前記化合物の総量は、前記正極活物質の単位質量当たり、3.8×10−9mol/g以上であることが好ましく、2.0×10−8mol/g以上であることが最も好ましい。前記化合物の総量が正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g以上であれば、非水系電解液が正極活物質に接することがなく、非水系電解液が酸化分解することを抑制できる。
また、前記化合物の総量は、前記正極活物質の単位質量当たり、3.0×10−2mol/g以下であり、7.0×10−3mol/g以下であることがより好ましく、3.0×10−5mol/g以下であることが最も好ましい。前記化合物の総量が正極活物質の単位質量当たり3.0×10−2mol/g以下であれば、アルカリ金属イオンの拡散を阻害することがなく、高い入出力特性を発現することができる。
なお、前記化合物の総量の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
[アルカリ金属イオン二次電池の特性評価]
アルカリ金属イオン二次電池の特性評価を以下に示すが、正極活物質によって作動電圧が変わるため、充放電の電圧についてはアルカリ金属イオン二次電池によって設定値を変更する必要がある。特性評価の代表例として、以下よりナトリウムイオン二次電池について例示するが、評価方法についてはこれに限定されることはない。
(放電容量)
本明細書では、容量Q(Ah)とは、以下の方法によって得られる値である:
先ず、アルカリ金属イオン二次電池と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分行う。その後、1.5Vまで0.1Cの電流値で定電流放電を施した際の電気容量をQとする。
(常温内部抵抗)
本明細書では、常温内部抵抗とは、それぞれ、以下の方法によって得られる値である:
先ず、アルカリ金属イオン二次電池と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行う。続いて、5Cの電流値で1.5Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=4.0−Eo、及びRa=ΔE/(5C(電流値A))により算出される値である。
[耐久性試験]
(高温保存試験後のガス発生量及び内部抵抗)
本明細書では、高温保存試験時のガス発生量は、以下の方法によって測定する:
先ず、アルカリ金属イオン二次電池と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行う。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、前述の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存する。この工程を繰り返し行い、保存開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセル体積Vbをアルキメデス法によって測定する。(Vb−Va)/Qを、セル電圧4.0V及び環境温度60℃において2か月間保存した際に発生するガス量とする。
前記高温保存試験後のセルに対して、前記常温内部抵抗と同様の測定方法を用いて得られる抵抗値を高温保存試験後の内部抵抗をRbとする。
セル電圧4.0V及び環境温度60℃においてセルを2か月間保存した際に発生するガス量(Vb−Va)を容量Qで除した値(Vb−Va)/Qは、発生したガスにより素子の特性を低下させないとの観点から、25℃において測定した値として、5.0cc/Ah以下であることが好ましく、更に好ましくは3.0cc/Ah以下である。上記の条件下で発生するガス量が上記の上限値以下であれば、デバイスが長期間高温に曝された場合であっても、ガス発生によってセルが膨張するおそれがない。そのため、十分な安全性及び耐久性を有する蓄電素子を得ることができる。
高温保存試験の前後における内部抵抗の変化は、Rb/Raで表す。Rb/Raは、高温環境下に長時間曝された場合に、大電流に対して十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以下であり、更に好ましくは1.5以下である。Rb/Raが上記の上限値以下であれば、長期間安定して優れた出力特性を得ることができるため、デバイスの長寿命化につながる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を更に明確にする。しかしながら、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1〜29、比較例1〜3>
[正極活物質の製造]
NaCOとFeをモル比でNa:Fe=1:1となるようにして秤量し、混合を行った。得られた混合物を空気雰囲気下750℃で10時間保持して焼成した後、粉砕することにより正極活物質であるNaFeOを得た。
[正極前駆体の製造]
得られたNaFeO粉体を86.5質量部、アセチレンブラックを5.0質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)5.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)の混合物に、アルカリ金属化合物として下記表1に記載した平均粒子径の炭酸ナトリウムを加え、混合した。この混合物中の炭酸ナトリウムの量は、正極活物質層に対する重量比として表1の通りになるように計算し混合した。また、炭酸ナトリウムの平均粒子径についても、表1に記載した。混合物の固形分濃度はすべて32質量%として、正極用スラリーを得た。得られた正極用スラリーを、正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面又は片面に塗布乾燥し、プレスすることにより、正極前駆体を得た。正極前駆体の正極活物質層の片面あたりの厚さは、炭酸ナトリウムの平均粒子径により多少の差はあるが、おおよそ80μmであった。
[負極前駆体の作製]
市販のハードカーボン(株式会社クレハ製)を85.4質量部、アセチレンブラックを8.3質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を6.3質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して負極用スラリーを得た。得られた負極用スラリーを、負極集電体となる厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスして負極を得た。得られた負極における負極活物質層の片面あたりの厚さは115μmであった。
[組立]
得られた両面負極および両面正極前駆体を10cm×10cm(100cm)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体を用い、更に両面負極21枚と両面正極前駆体20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体とした。この電極積層体を、アルミラミネート包材から成る外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、及びシール圧1.0MPaの条件下でヒートシールした。部分シール体を、温度80℃、圧力50Pa、及び乾燥時間60hrの条件下で真空乾燥した。
[電解液の調製]
有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)を用い、1.0mol/LとなるようにNaPFを溶解して得た溶液を、非水系電解液として使用した。
[注液、含浸、封止工程]
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入して、ナトリウムドープ前のナトリウムイオン二次電池を形成した。続いて、減圧チャンバーの中に前記ナトリウムイオン二次電池を入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返したのち、ナトリウムイオン二次電池を15分間静置した。さらに、常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した。(それぞれ−95,−96,−97,−81,−97,−97,−97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、ナトリウムイオン二次電池を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
[ナトリウムドープ工程]
得られたナトリウムイオン二次電池に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、45℃環境下、電流値0.5Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を任意の時間行うことで初期充電を行い、負極にナトリウムドープを行った。表1に、4.5V定電圧充電の時間をまとめて記載した。
[エージング工程]
ナトリウムドープ後のナトリウムイオン二次電池を25℃環境下、0.5Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。続いて、ナトリウムイオン二次電池を60℃の恒温槽に5時間保管した。
[ガス抜き工程]
温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下で、エージング後のナトリウムイオン二次電池のアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に前記ナトリウムイオン二次電池を入れ、大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機にナトリウムイオン二次電池を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止して、調整済みのナトリウムイオン二次電池を得た。
[ナトリウム化合物の定量]
得られたナトリウムイオン二次電池から正極を5cm×5cmの大きさに切り出し、20gのメタノールに浸し、容器に蓋をして25℃環境下、3日間静置した。その後正極を取り出し、120℃、5kPaの条件にて10時間真空乾燥し、正極重量Mを測定した。洗浄後のメタノール溶液について、予め検量線を作成した条件にてGC/MSを測定し、ジエチルカーボネートの存在量が1%未満であることを確認した。続いて、25.00gの蒸留水に正極を含浸させ、容器に蓋をして45℃環境下、3日間静置した。その後正極を取り出し、150℃、3kPaの条件にて12時間真空乾燥し、正極重量Mを測定した。洗浄後の蒸留水について、予め検量線を作成した条件にてGC/MSを測定し、メタノールの存在量が1%未満であることを確認した。その後、スパチュラ、ブラシ、刷毛を用いて正極集電体上の活物質層を取り除き、正極集電体の重量Mを測定した。上記(III)式に従い正極中の炭酸ナトリウム量を定量した値を、表1にまとめた。
[ナトリウム化合物の平均粒子径の測定]
得られたナトリウムイオン二次電池を露点温度−72℃のアルゴンボックス中で解体し、両面に正極活物質層が塗工された正極を10cm×5cmの大きさに切り出し、重量を測定したところ0.512gであった。得られた正極を30gのジエチルカーボネート溶媒に浸し、時折ピンセットで正極を動かし、10分間洗浄した。続いて正極を取り出し、アルゴンボックス中で5分間風乾させ、新たに用意した30gのジエチルカーボネート溶媒に正極を浸し、上記と同様の方法にて10分間洗浄した。正極をアルゴンボックスから取り出し、真空乾燥機(ヤマト科学製、DP33)を用いて、温度25℃、圧力1kPaの条件にて20時間乾燥し、正極試料1を得た。
[SEM−EDXによるアルカリ金属化合物の同定]
正極試料1から1cm×1cmの小片を切り出し、10Paの真空中にて、金をスパッタリングにより表面にコーティングした。続いて以下に示す条件にて、大気暴露下で正極表面のSEM、及びEDXを測定した。
[SEM−EDX測定条件]
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE−SEM S−4700
・加速電圧:10kV
・エミッション電流:1μA
・測定倍率:2000倍
・電子線入射角度:90°
・X線取出角度:30°
・デッドタイム:15%
・マッピング元素:O
・測定画素数:256×256ピクセル
・測定時間:60sec.
・積算回数:50回
・明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
得られた炭素マッピングと酸素マッピングの重複部分が、粒子状に点在して確認されたことから、炭酸ナトリウムが正極活物質層の中に、粒子状に点在していることが分かった。同視野のSEM画像において、炭酸ナトリウム粒子全てについて断面積Sを求め、先述の式(I)にて算出される粒子径dを求めた結果を、表1にまとめた。
比較例1を除き、正極前駆体を作製するときに添加した炭酸ナトリウムの平均粒子径に比べ、アルカリ金属イオン二次電池(ナトリウムイオン二次電池)を作製した後では、炭酸ナトリウムの平均粒子径が小さくなっていることがわかる。これは炭酸ナトリウムがドーパンド源として機能していることを意味している。
[正極活物質層に含まれる化合物の定量]
完成した複数のナトリウムイオン二次電池のうち、数点の素子を2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているArボックス内で解体して正極電極体を取り出した。取り出した正極電極体を、ジメチルカーボネート(DMC)で浸漬洗浄した後、大気非暴露を維持した状態下でサイドボックス中で真空乾燥させた。
乾燥後の正極電極体を、大気非暴露を維持した状態でサイドボックスからArボックスに移し、重水で浸漬抽出して、正極電極体抽出液を得た。抽出液の解析は、(1)イオンクロマトグラフィー(IC)及び(2)H−NMRにて行い、求めた正極電極体抽出液中の各化合物の濃度A(mol/ml)、抽出に用いた重水の体積B(ml)、及び抽出に用いた正極の活物質の質量C(g)から、下記数式IV:
単位質量当たりの存在量(mol/g)=A×B÷C ...(数式IV)
により、正極電極体に堆積する各化合物の、正極活物質単位質量当たりの存在量(mol/g)を求めた。
なお、抽出に用いた正極活物質層の質量は、以下の方法によって求めた。
重水抽出後に残った正極電極体の集電体から合剤(正極活物質層)を剥がし取り、該剥がし取った合剤を、水洗した後、真空乾燥した。真空乾燥して得た合剤を、NMP又はDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)により洗浄した。続いて、得られた正極活物質層を再度真空乾燥した後、秤量することにより、抽出に用いた正極活物質層の質量を調べた。
正極電極体抽出液を3mmφNMRチューブ(株式会社シゲミ製PN−002)に入れ、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン入りの重水素化クロロホルムの入った5mmφNMRチューブ(日本精密科学株式会社製N−5)に挿し込み、二重管法にて、H NMR測定を行った。1,2,4,5−テトラフルオロベンゼンのシグナル7.1ppm(m,2H)で規格化して、観測された各化合物の積分値を求めた。
また、濃度既知のジメチルスルホキシドの入った重水素化クロロホルムを3mmφNMRチューブ(株式会社シゲミ製PN−002)に入れ、上記と同一の1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン入りの重水素化クロロホルムの入った5mmφNMRチューブ(日本精密科学株式会社製N−5)に挿し込み、二重管法にて、H NMR測定を行った。
上記と同様に、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼンのシグナル7.1ppm(m,2H)で規格化して、ジメチルスルホキシドのシグナル2.6ppm(s,6H)の積分値を求めた。用いたジメチルスルホキシドの濃度と積分値の関係から、正極電極体抽出液中の各化合物の濃度Aを求めた。
H NMRスペクトルの帰属は、以下のとおりである。
[XOCHCHOXについて]
XOCHCHOXのCH:3.7ppm(s,4H)
CHOX:3.3ppm(s,3H)
CHCHOXのCH:1.2ppm(t,3H)
CHCHOXのCHO:3.7ppm(q,2H)
上記のように、XOCHCHOXのCHのシグナル(3.7ppm)はCHCHOXのCHOのシグナル(3.7ppm)と重なってしまうため、CHCHOXのCHのシグナル(1.2ppm)から算出されるCHCHOXのCHO相当分を除いて、XOCHCHOX量を算出する。
なお、上記式XOCHCHOXにおいて、Xは、それぞれ、−(COO)Naまたは−(COO)(式中、nは0又は1であり、かつRは、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基である。)である。
上記(1)及び(2)の解析により求めた各化合物の抽出液中の濃度、及び抽出に用いた重水の体積、抽出に用いた正極の活物質質量から、正極活物質層に含まれる化合物の存在量を算出し、表1にまとめた。炭酸ナトリウムを正極前駆体に添加しなかった比較例1では、正極活物質層にほとんど化合物が存在しないが、比較例1以外では、アルカリ金属ドープ工程での4.5Vの定電圧充電時間に応じ、化合物が存在することがわかる。
[放電容量の測定]
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行った。その後、1.5Vまで0.1Cの電流値で定電流放電を施した際の放電容量Qを、表1にまとめた。
[Raの算出]
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、5Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行い、続いて、5Cの電流値で1.5Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとし、降下電圧ΔE=4.0−Eo、及びR=ΔE/(5C(電流値A))により、常温内部抵抗Raを算出した。
25℃における内部抵抗Raを、表1にまとめた。
[高温保存試験後のガス発生量]
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行った。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、同様の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存した。この工程を2か月間繰り返し実施し、保存試験開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセルの体積Vbをアルキメデス法によって測定した。(Vb−Va)/Qにより求めたガス発生量を、表1にまとめた。
[Rb/Raの算出]
前記高温保存試験後の蓄電素子に対して、前記[Raの算出]と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rbを算出した。
このRb(Ω)を、前記[Raの算出]で求めた高温保存試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rb/Raを表1にまとめた。
<実施例30>
正極前駆体の製造において、ナトリウム化合物を酸化ナトリウムとし、正極前駆体の正極活物質層に対する酸化ナトリウムの重量比として12.9重量%、酸化ナトリウムの平均粒子径として2.79μmとしたこと以外は、実施例1〜29および比較例1〜3と同様の操作を行うことでナトリウムイオン二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表1に記載する。
<実施例31>
正極前駆体の製造において、ナトリウム化合物を水酸化ナトリウムとし、正極前駆体の正極活物質層に対する酸化ナトリウムの重量比として13.5重量%、酸化ナトリウムの平均粒子径として2.83μmとしたこと以外は、実施例1〜29および比較例1〜3と同様の操作を行うことでナトリウムイオン二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表1に記載する。
Figure 0006786299
表1の実施例1〜10と比較例1〜3の対比より、ナトリウムドープ後の正極活物質層に含まれる炭酸ナトリウムの量が、0.5質量%以上50質量%以下であれば、Qが大きくRaが小さいことから、高容量で内部抵抗が低いナトリウムイオン二次電池となることが分かった。これは、炭酸ナトリウム量が50質量%以下であれば、正極活物質層内での良好な電子伝導性が担保され、0.5質量%以上であれば、正極活物質層内への電解液の保液量が十分にあり、イオンの拡散抵抗が低下することを示唆している。
また、炭酸ナトリウムの量が0.5質量%以上50質量%以下の範囲であれば、(Vb−Va)/QおよびRb/Raも小さく、高温保存による耐久性が優れた特性を持つことが分かった。これは、炭酸ナトリウム量が50質量%以下であれば、炭酸ナトリウム自身が高電圧に曝されることで生じる分解が抑制され、ガス発生と抵抗上昇を生じ難くなり、0.5質量%以上であれば、電解液中に生じるフッ化物イオンを吸着することで、高温保存下での副反応が生じ難くなることを示唆している。
表1の実施例11〜21の対比より、ナトリウムドープ後の正極活物質層に含まれる炭酸ナトリウムの平均粒子径が、0.1μm以上10μm以下であれば、Qが大きくRaが小さいことから、高容量で内部抵抗が低いナトリウムイオン二次電池となることが分かった。これは、炭酸ナトリウムの平均粒子径が10μm以下であれば、正極活物質層内での良好な電子伝導性が担保され、0.1μm以上であれば、正極活物質層内への電解液の保液量が十分にあり、イオンの拡散抵抗が低下することを示唆している。
また、ナトリウムドープ後の正極活物質層に含まれる炭酸ナトリウムの平均粒子径が0.1μm以上10μm以下の範囲であれば、(Vb−Va)/QおよびRb/Raも小さく、高温保存による耐久性が優れた特性を持つことが分かった。これは、炭酸ナトリウムの平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であれば、炭酸ナトリウム粒子の表面積が十分に確保され、電解液中のフッ化物イオンを効率的に吸着して、高温保存下での副反応が生じ難くなっていることを示唆している。
表1の実施例22〜29の対比より、正極活物質層に含まれる化合物の存在量が、3.8×10−9mol/g以上3.0×10−2mol/g以下であれば、Raが小さく、内部抵抗が低いナトリウムイオン二次電池となることが分かった。また、その場合、(Vb−Va)/QおよびRb/Raも小さく、高温保存による耐久性が優れた特性を持つことが分かった。これらは、正極活物質層に含まれる化合物が、正極活物質の表面に被膜上に存在することで、良好なイオン伝導体として働き、内部抵抗を低減させる役割を果たすとともに、正極活物質上の反応活性点を被覆することで、高温保存下における電解液の分解を防いでいるためと考えられる。
表1の実施例30および31より、ナトリウムイオン二次電池に用いるナトリウム化合物として、酸化ナトリウムと水酸化ナトリウムもドーパント源として適応でき、良好な特性を発現できることを示唆している。
<実施例32>
[正極前駆体の製造]
KFeO粉体を86.5質量部、アセチレンブラックを5.0質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)5.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)の混合物に、アルカリ金属化合物として平均粒子径2.88μmの炭酸カリウムを加え混合した。この混合物中の炭酸カリウムの量は、正極活物質層に対して13.5質量%になるように計算し混合した。混合物の固形分濃度は35質量%として、正極用スラリーを得た。得られた正極用スラリーを、正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面又は片面に塗布乾燥し、プレスすることにより、正極前駆体を得た。正極前駆体の正極活物質層の片面あたりの厚さは92μmであった。
[負極前駆体の作製]
平均粒径5μmの黒鉛を85.4質量部、アセチレンブラックを8.3質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を6.3質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して負極用スラリーを得た。得られた負極用スラリーを、負極集電体となる厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスして負極を得た。得られた負極における負極活物質層の片面あたりの厚さは120μmであった。
[組立]
得られた両面負極および両面正極前駆体を10cm×10cm(100cm)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体を用い、更に両面負極21枚と両面正極前駆体20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体とした。この電極積層体を、アルミラミネート包材から成る外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、及びシール圧1.0MPaの条件でヒートシールした。シールされた電極積層体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。
[電解液の調製]
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を1:1で混合した有機溶媒を用い、1.0mol/LとなるようにKN(SOCFを溶解して得た溶液を、非水系電解液として使用した。
[注液、含浸、封止工程]
電極積層体を収納しているアルミラミネート包材の中に、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入して、カリウムドープ前のアルカリ金属イオン二次電池(カリウムイオン二次電池)を形成した。続いて、減圧チャンバーの中に前記アルカリ金属イオン二次電池を入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、電池を5分間静置した。その後、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返したのち、15分間静置した。さらに、常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した。(それぞれ−95,−96,−97,−81,−97,−97,−97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、カリウムイオン二次電池を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
[カリウムドープ工程]
得られたカリウムイオン二次電池に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、45℃環境下、電流値0.5Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を10時間行うことで初期充電を行い、負極にカリウムドープを行った。
[エージング工程]
カリウムドープ後のカリウムイオン二次電池を25℃環境下、0.5Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。続いて、カリウムイオン二次電池を60℃の恒温槽に5時間保管した。
[ガス抜き工程]
エージング後のカリウムイオン二次電池を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に前記カリウムイオン二次電池を入れ、大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機にカリウムイオン二次電池を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
[カリウム化合物の平均粒子径と量の測定]
カリウム化合物の平均粒子径およびその量については、実施例1〜31および比較例1〜3と同様の方法で実施した。正極に含まれるカリウム化合物の平均粒子径は2.30μmであり、その量は9.3質量%であった。
[正極活物質層に含まれる化合物の定量]
正極活物質層に含まれる化合物の定量については、実施例1〜31および比較例1〜3と同様の方法で実施した。正極活物質層に含まれる化合物の量は8.3×10−6mol/gであった。
[放電容量の測定]
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行った。その後、2.0Vまで0.1Cの電流値で定電流放電を施した際の放電容量Qは、3.5Ahであった。
[Raの算出]
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、5Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行い、続いて、5Cの電流値で2.0Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとし、降下電圧ΔE=4.0−Eo、及びR=ΔE/(5C(電流値A))により、常温内部抵抗Raを算出した。
25℃における内部抵抗Raは、103mΩであった。
[高温保存試験後のガス発生量]
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行った。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、同様の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存した。この工程を2か月間繰り返し実施し、保存試験開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセルの体積Vbをアルキメデス法によって測定した。(Vb−Va)/Qにより求めたガス発生量は、2.5cc/Ahであった。
[Rb/Raの算出]
前記高温保存試験後の蓄電素子に対して、前記[Raの算出]と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rbを算出した。
このRb(Ω)を、前記[Raの算出]で求めた高温保存試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rb/Raは、5.3であった。
実施例32より、アルカリ金属としてカリウムを用いたカリウムイオン二次電池においても、カリウムイオンを陽イオンとして備えるカリウム化合物を電極及び電池の製造に用いることで、良好な特性を発現できることがわかった。
本発明の非水系アルカリ金属イオン二次電池は、例えば、自動車のハイブリット駆動システム用途、瞬間電力ピークのアシスト用途等における蓄電素子として、好適に利用できる。

Claims (4)

  1. 元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属イオンを吸蔵及び放出することが可能な遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極活物質層を有する正極;
    負極;
    セパレータ;及び
    前記第3周期以降のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液;
    を含むアルカリ金属イオン二次電池であって、
    前記非水系電解液に含まれる前記第3周期以降のアルカリ金属イオンを陽イオンとして有するアルカリ金属化合物が、前記正極中に、前記正極活物質層の質量を基準として、0.5質量%以上50質量%以下含まれ、かつ前記アルカリ金属化合物が、炭酸塩、水酸化物、及び酸化物から選ばれる1種以上であるアルカリ金属イオン二次電池。
  2. 前記第3周期以降のアルカリ金属化合物の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下である、請求項1に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
  3. 前記正極活物質層が、下記式(1)〜(3):

    −ORO−X (1)

    {式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、X及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(式中、nは0又は1である。)であり、かつM及びMは、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}

    −ORO−X (2)

    {式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(式中、nは0又は1である。)であり、かつMは、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}

    −ORO−X (3)

    {式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(式中、nは0又は1である。)である。}

    で表される化合物から選択される1種以上を、該正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、請求項1又は2に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
  4. 前記第3周期以降のアルカリ金属イオンがナトリウムイオンであり、かつ前記アルカリ金属化合物がナトリウム化合物である、請求項1〜のいずれか1項に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
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