JP6786299B2 - アルカリ金属イオン二次電池 - Google Patents
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Description
このサイクル特性の悪化を抑制するため、例えば、特許文献2では、負極にハードカーボン(難黒鉛化性炭素材料)を用い、電解液の溶媒としてカーボネートを用いることで、充放電サイクルによる劣化を抑制できることを見出している。しかしながら、やはりリチウムイオン二次電池と比べ、そのサイクル耐久性は低く、また高温下での保存による劣化も懸念されるため、満足いくものではないといえる。これらの劣化の原因としては、サイクル又は高温下での保存により、電解液の分解により生じる不純物が、主に正極に用いられている材料に悪影響を与えるためと考えられる。
従って、本発明が解決しようとする課題は、高出力特性および耐久性に優れたアルカリ金属イオン二次電池を提供することである。
本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである:
[1]
元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属イオンを吸蔵及び放出することが可能な遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極活物質層を有する正極;
負極;
セパレータ;及び
前記第3周期以降のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液;
を含むアルカリ金属イオン二次電池であって、
前記非水系電解液に含まれる前記第3周期以降のアルカリ金属イオンを陽イオンとして有するアルカリ金属化合物が、前記正極中に、前記正極活物質層の質量を基準として、0.5質量%以上50質量%以下含まれる、
前記アルカリ金属イオン二次電池。
[2]
前記第3周期以降のアルカリ金属化合物の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下である、[1]に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
[3]
前記アルカリ金属化合物が、炭酸塩、水酸化物、及び酸化物から選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
[4]
前記正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
M1X1−OR1O−X2M2 (1)
{式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、X1及びX2は、それぞれ独立に、−(COO)n(式中、nは0又は1である。)であり、かつM1及びM2は、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}
M1X1−OR1O−X2R2 (2)
{式(2)中、R1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R2は、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X1及びX2は、それぞれ独立に、−(COO)n(式中、nは0又は1である。)であり、かつM1は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}
R3X1−OR1O−X2R2 (3)
{式(3)中、R1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX1及びX2は、それぞれ独立に、−(COO)n(式中、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を、該正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
[5]
前記第3周期以降のアルカリ金属イオンがナトリウムイオンであり、かつ前記アルカリ金属化合物がナトリウム化合物である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池とは、いわゆるリチウムイオン二次電池は含まないものとする。すなわち、充放電により正負極活物質に挿入脱離する金属イオンとして、元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属イオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン)のうち、1種以上が選択される。以下、これらの第3周期以降のアルカリ金属イオンは、単にアルカリ金属イオンと呼び、第3周期以降のアルカリ金属についても、単にアルカリ金属と呼ぶ。
ナトリウムイオン二次電池に代表されるアルカリ金属イオン二次電池は、一般に正極、負極、セパレータ、電解液、及び外装体を主な構成要素とする。電解液としては、第3周期以降のアルカリ金属塩(以下、単にアルカリ金属塩と呼ぶ)を溶解させた有機溶媒(以下、非水系電解液という。)を用いる。例えば、ナトリウムイオン二次電池の場合、その電解液としてはナトリウム塩を溶解させた有機溶媒を用いる。
本実施形態における正極は、正極集電体と、その片面又は両面に存在する正極活物質層とを有する。
また、本実施形態における前記正極は、蓄電素子組み立て前の正極前駆体として、元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属化合物(以下、単にアルカリ金属化合物と呼ぶ)を含むことが好ましい。正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属イオンは、非水系電解液に含まれるアルカリ金属イオンと同じものを用いる。
後述のように、本実施形態では蓄電素子組み立て工程内で、負極にアルカリ金属イオンをドープすることが好ましいが、そのアルカリ金属ドープ方法としては、前記アルカリ金属化合物を含む正極前駆体、負極、セパレータ、外装体、及び非水系電解液を用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。前記アルカリ金属化合物は前記正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層に含有されることが好ましい。
ここで、アルカリ金属ドープ工程前における正極状態のことを正極前駆体、アルカリ金属ドープ工程後における正極状態のことを正極と定義する。
前記正極活物質層は、遷移金属酸化物を含む正極活物質を含有することが好ましく、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
また、正極前駆体の正極活物質層には、正極活物質並びに後述される式(1)及び(2)で表される化合物以外のアルカリ金属化合物が含有されることが好ましい。
前記正極活物質は、アルカリ金属(好ましくは、元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属イオン)を吸蔵及び放出することが可能な遷移金属酸化物を含むことが好ましい。正極活物質として用いられる遷移金属酸化物には、特に制限はない。遷移金属酸化物としては、例えば、
コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、バナジウム、及びクロムから成る群より選ばれる1種以上の元素
を含む酸化物が挙げられる。
本実施形態では、アルカリ金属化合物が正極前駆体に含まれており、アルカリ金属ドープ工程にてアルカリ金属化合物がアルカリ金属のドーパント源となり負極にアルカリ金属ドープができるため、遷移金属化合物にあらかじめアルカリ金属が含まれていなくても(すなわち上記式においてx=0であっても)、アルカリ金属イオン二次電池として電気化学的な充放電をすることができる。
ナトリウム含有遷移金属酸化物として具体的について例示すると、NaxNiO2、NaxMnO2、NaxCoO2、NaxNi0.5Mn0.5O2、及びNaxFeO2(式中、xは、それぞれ独立に、0≦x≦1を満たす)等が挙げられる。
上記平均粒子径が1μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。ここで、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が1μm以上であればそのような欠点が生じ難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。上記平均粒子径は、より好ましくは1〜15μmであり、更に好ましくは1〜10μmである。上記平均粒子径の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
前記アルカリ金属化合物としては、後述のアルカリ金属ドープ工程において正極で分解し、アルカリ金属イオンを放出することが可能である化合物を用いる。例えば、炭酸塩、酸化物、水酸化物などが好適に用いられる。例えば、ナトリウムイオン二次電池に用いるナトリウム化合物の場合、炭酸ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、シュウ化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、窒化ナトリウム、硫化ナトリウム、リン化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムから選択される1種以上が用いられる。好ましくは炭酸ナトリウム、酸化ナトリウム、及び水酸化ナトリウムであり、更に好ましくは、空気中での取り扱いが可能であり、かつ吸湿性が低い炭酸ナトリウムである。このようなアルカリ金属化合物は、電圧の印加によって分解し、負極へのアルカリ金属ドープのドーパント源として機能するとともに、正極活物質層において空孔を形成するから、電解液の保持性に優れ、かつイオン伝導性に優れる正極を形成することができる。
アルカリ金属化合物の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
アルカリ金属イオン二次電池を充放電する際、電解液中のアルカリ金属イオンが充放電に伴って移動し、活物質と反応する。ここで、活物質へのイオンの挿入反応及び脱離反応の活性化エネルギーは、それぞれ異なる。そのため、特に充放電の負荷が大きい場合、イオンは充放電の変化に追従できなくなる。その結果、バルク電解液中の電解質濃度が下がるため、アルカリ金属イオン二次電池の抵抗が上昇してしまう。
しかし、正極前駆体にアルカリ金属化合物を含有させると、該アルカリ金属化合物を酸化分解することにより、正極内部に電解液を保持できる良好な空孔が形成される。このような空孔を有する正極には、充放電中、活物質近傍に形成された空孔内の電解液からイオンが随時供給されるため、高負荷充放電サイクル特性が向上すると考えられる。
本実施形態における正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びアルカリ金属化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーとしては、特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等を用いることができる。導電性フィラーの使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下である。より好ましくは0.01質量部以上25質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上20質量部以下である。導電性フィラーの使用量が30質量部よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有割合が少なくなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池における正極集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。
該金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
本実施形態の負極は、ファラデー反応又は非ファラデー反応に関与する物質を含み、好ましくは、負極集電体と、その片面又は両面に存在する負極活物質層と、を有する。
負極活物質層は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む。これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散材安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出することが可能な物質を用いることができる。具体的には、炭素材料、正極活物質に含まれるアルカリ金属イオンと同種のアルカリ金属の単体、アルカリ金属を含む合金が好適に用いられる。好ましくは該負極活物質の総量に対する該炭素材料の含有率が50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。該炭素材料の含有率が100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。上記炭素材料の含有率の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
本実施形態における負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、結着剤、分散材安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーの種類は特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が例示される。導電性フィラーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。
本実施形態における負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化がおこらない金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態に係るアルカリ金属イオン二次電池における負極集電体としては、銅箔が好ましい。
該金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
正極前駆体および負極は、正極集電体の片面上又は両面上に正極活物質層、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において、正極活物質層は正極集電体に、負極活物質層は負極集電体に固着している。
正極前駆体および負極は、既知のアルカリ金属イオン二次電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質または負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体または負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより、正極前駆体または負極を得ることが出来る。さらに、得られた正極前駆体または負極にプレスを施して、正極活物質層または負極活物質層の膜厚又はかさ密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、正極活物質または負極活物質を含む各種材料を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体または負極集電体に貼り付ける方法も可能である。
前記塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm以下では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり、好ましくない。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジ発生等がなく、安定に塗工ができる。
また、該塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
プレス圧力は0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましく、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体および負極に撓みやシワが生じることがなく、所望の膜厚やかさ密度に調整できる。
また、プレスロール同士の隙間は、所望の膜厚やかさ密度となるように乾燥後の膜厚に応じて任意の値を設定できる。さらに、プレス速度は撓みやシワが生じない任意の速度に設定できる。
また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要によりプレス部を加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは融点マイナス30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着剤の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは融点プラス30℃以下、さらに好ましくは融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、プレス部の表面を90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、プレス部の表面を40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
また、プレス圧力、隙間、速度、及びプレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体、負極及びセパレータを有する電極積層体または電極捲回体が形成される。
前記セパレータとしては、アルカリ金属イオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面または両面に、有機または無機の微粒子から成る膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機または無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、35μm以下の厚みとすることにより、電池の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
また、有機または無機の微粒子から成る膜の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、10μm以下の厚みとすることにより、電池の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
セパレータは、非水系電解液の浸透により膨潤する有機ポリマーを含んでいてもよいし、セパレータの代替として単体で用いてもよい。有機ポリマーは、特に制限はないが、電解液との親和性がよく、電解液を浸透させ膨潤させることでゲル化するものが好ましい。例えば、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビリニデン、ポリメチルメタクリレート、又はこれらの混合物は、ゲル化したときに高いアルカリ金属イオン伝導性を発現できるため、好適に用いられる。
また有機ポリマーは、電解液を有機ポリマー内に包含することができる。そのため、外装体が傷ついた際、アルカリ金属イオン二次電池から電解液が外部に流出することを防ぐ効果があり、安全上好ましい。
アルカリ金属にナトリウムを用いるナトリウムイオン二次電池においては、セパレータの代わりに、ナトリウムイオンを伝導することが可能な固体電解質層を用いてよい。固体電解質層は、固体電解質材料を含む層であるが、固体電解質材料は、ナトリウムイオンを伝導するものであれば特に限定されるものではない。固体電解質材料の例としては、酸化物や硫化物が挙げられる。例えば酸化物であれば、βアルミナが好適に用いられる。固体電解質層の厚みは、特に制限を受けるものではないが、ナトリウムイオン二次電池の高エネルギー密度化の観点から、1μm〜100μmであることが好ましい。
セル組み立て工程で得られる電極積層体は、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子および負極端子を接続したものである。また電極捲回体は、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して捲回して成る捲回体に正極端子及び負極端子を接続したものである。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定はしないが、抵抗溶接や超音波溶接などの方法で行うことができる。
外装体としては、金属缶、ラミネート包材等を使用できる。
前記の金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。
前記のラミネート包材としては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
乾燥した電極積層体または電極捲回体は、金属缶やラミネート包材に代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残した状態で封止することが好ましい。外装体の封止方法は特に限定しないが、ラミネート包材を用いる場合は、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いる。
外装体へ収納した電極積層体または電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法に限定はないが、真空乾燥などにより乾燥することができる。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の重量を基準として、1.5質量%以下が好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性やサイクル特性を悪化させるため、好ましくない。
本実施形態における電解液は非水系電解液である。すなわち、この電解液は、後述する非水溶媒を含む。前記非水系電解液は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のアルカリ金属塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、アルカリ金属イオンを電解質として含む。
非水系電解液中のアルカリ金属塩濃度は、0.5mol/L以上であることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲がより好ましい。アルカリ金属塩濃度が0.5mol/L以上であれば、陰イオンが十分に存在するので電池の容量を十分高くできる。また、アルカリ金属塩濃度が2.0mol/L以下である場合、未溶解のアルカリ金属塩が非水系電解液中に析出すること、及び電解液の粘度が高くなり過ぎることを防止でき、伝導度が低下せず、出力特性も低下しないため好ましい。
環状カーボネート及び鎖状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の総量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。上記合計含有量が50質量%以上であれば、所望の濃度のアルカリ金属塩を溶解させることが可能であり、高いアルカリ金属イオン伝導度を発現することができる。上記合計濃度が95質量%以下であれば、電解液が、後述する添加剤をさらに含有することができる。上記合計濃度の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
組立工程の終了後に、外装体の中に収納された電極積層体に、非水系電解液を注液する。注液工程の終了後に、更に、含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するアルカリ金属ドープ工程において、ドープが不均一に進むため、得られるアルカリ金属イオン二次電池の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。上記含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後に外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸工程終了後には、外装体が開口した状態で減圧しながら封止することで密閉する。
本実施形態では、アルカリ金属イオンを含む正極活物質と、アルカリ金属化合物とが、負極活物質へのアルカリ金属イオンのドーパント源として機能する。アルカリ金属ドープ工程として、好ましくは、前記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して前記アルカリ金属化合物を分解することにより、正極前駆体中のアルカリ金属化合物を分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極でアルカリ金属イオンを還元することにより負極活物質層にアルカリ金属イオンがプレドープされる。
このアルカリ金属ドープ工程において、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の酸化分解に伴い、CO2等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、
外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;
前記外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;
等を挙げることができる。
アルカリ金属ドープ工程の終了後に、アルカリ金属イオン二次電池にエージングを行うことが好ましい。エージング工程において電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にアルカリ金属イオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
上記エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
エージング工程の終了後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られるアルカリ金属イオン二次電池の抵抗が上昇してしまう。
上記ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、前記外装体を開口した状態でアルカリ金属イオン二次電池を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。
以上の方法により、蓄電素子として、アルカリ金属イオン二次電池を製造することができる。
この蓄電素子は、
正極前駆体に含有されていたアルカリ金属化合物が分解されて散逸した跡である空孔を有する多孔性の正極活物質層を有する正極と、
上記アルカリ金属化合物をドーパント源としてドープされた負極活物質層を有する負極と、
を具備する。
本実施形態では、蓄電素子の正極に、アルカリ金属ドープ工程にて分解しなかったアルカリ金属化合物を含んでいてもよい。
正極活物質層の嵩密度は、1.0g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは1.2g/cm3以上4.5g/cm3以下の範囲である。正極活物質層の嵩密度が1.0g/cm3以上であれば、高いエネルギー密度を発現でき、蓄電素子の小型化を達成できる。また、この嵩密度が4.5g/cm3以下であれば、正極活物質層内の空孔における電解液の拡散が十分となり、高い出力特性が得られる。
正極中に含まれるアルカリ金属化合物の同定方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により同定することができる。アルカリ金属化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
以下に記載する走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)、ラマン、X線光電子分光(XPS)を実行又は測定する際には、アルゴンボックス中でリチウムイオン二次電池を解体して正極を取り出し、正極表面に付着した電解質を洗浄した後に測定を行うことが好ましい。正極の洗浄方法については、正極表面に付着した電解質を洗い流せればよいため、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート溶媒が好適に利用できる。
洗浄方法としては例えば、正極重量の50〜100倍のジエチルカーボネート溶媒に正極を10分間以上浸漬させ、その後溶媒を取り替えて再度正極を浸漬させる。その後正極をジエチルカーボネートから取り出し、真空乾燥(温度:0〜200℃、圧力:0〜20kPa、時間:1〜40時間の範囲で正極中のジエチルカーボネートの残存が1質量%以下になる条件とする。ジエチルカーボネートの残存量については、後述する蒸留水洗浄、液量調整後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。)させた後に、上記SEM−EDX、ラマン、XPSの解析を実施する。
後述のイオンクロマトグラフィーを用いる場合、正極を蒸留水で洗浄した後の水を解析することにより陰イオンを同定することができる。
上記解析手法にてアルカリ金属化合物を同定できなかった場合、その他の解析手法としてXRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、アルカリ金属化合物を同定することもできる。
正極の蒸留水洗浄液をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出したアニオン種を同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、またはサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計や荷電化粒子検出を検出器と組み合わせて測定することもできるため、SEM−EDX、ラマン、XPSの解析結果から同定されたアルカリ金属化合物に基づいて、適切なカラム、検出器等を組み合わせることが好ましい。
サンプルの保持時間は、使用するカラムや溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の標準液を予め測定しておくことでイオン種成分の定性と定量が可能となる。
正極中に含まれるアルカリ金属化合物の定量方法を以下に記載する。正極を有機溶媒で洗浄し、その後蒸留水で洗浄し、蒸留水での洗浄前後の正極重量変化からアルカリ金属化合物を定量することができる。測定する正極の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm2以上200cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは25cm2以上150cm2以下である。面積が5cm2以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm2以下であればサンプルの取扱い性に優れる。この面積の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
有機溶媒による洗浄については正極表面に堆積した電解液分解物を除去できればよいため、有機溶媒は特に限定されないが、該アルカリ金属化合物の溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることでアルカリ金属化合物の溶出が抑制されるため好ましい。例えばメタノール、アセトン等の極性溶媒が好適に用いられる。
X=100×[1−(M1−M2)/(M0−M2)] (III)式
一般的に、アルカリ金属イオン二次電池は保存や使用などを重ねることで、電解液に含まれる電解質が分解し、フッ素イオンを発生させる。発生したフッ素イオンは主に負極でフッ化物を形成し、アルカリ金属イオン二次電池の内部抵抗を増大させるため、好ましくない。一方でアルカリ金属化合物はフッ素イオンを吸着することができるため、負極でのフッ化物の形成を抑制できる。そのため、アルカリ金属化合物を正極に存在させることで、アルカリ金属イオン二次電池の内部抵抗の増大を抑制することができるため、好ましい。
アルカリ金属化合物の平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、更に好ましくは、0.5μm以上5μm以下である。この平均粒子径が0.1μm以上の場合、高温保存により生成するフッ素イオンを効率的に吸着することにより高温保存による特性劣化とガス発生を抑制できる。この平均粒子径が10μm以下の場合、高温保存により生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンの吸着を効率良く行うことができる。上記平均粒子径の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
アルカリ金属化合物の平均粒子径は、上記正極断面のSEM−EDXと同視野にて測定し、得られた画像を、画像解析することで求めることができる。上記正極断面のSEM画像にて判別されたアルカリ金属化合物の粒子全てについて断面積Sを求め、下記式(I)にて算出される粒子径dを求める。(円周率をπとする。)
d=2×(S/π)1/2 式(I)
本実施形態に係るアルカリ金属ドープ後の正極活物質層は、下記式(1)〜(3):
M1X1−OR1O−X2M2 (1)
{式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、X1及びX2は、それぞれ独立に、−(COO)n(式中、nは0又は1である。)であり、かつM1及びM2は、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}
M1X1−OR1O−X2R2 (2)
{式(2)中、R1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R2は、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X1及びX2は、それぞれ独立に、−(COO)n(式中、nは0又は1である。)であり、かつM1は、それぞれ、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}
R2X1−OR1O−X2R3 (3)
{式(3)中、R1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X1及びX2は、それぞれ独立に、−(COO)n(式中、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を該正極活物質の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有することが好ましい。
MOC2H4OM、MOC3H6OM、MOC2H4OCOOM、MOCOOC3H6OM、MOCOOC2H4OCOOM及びMOCOOC3H6OCOOM(式中、Mは、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれるアルカリ金属である。)で表される化合物である。
MOC2H4OH、MOC3H6OH、MOC2H4OCOOH、MOC3H6OCOOH、MOCOOC2H4OCOOH、MOCOOC3H6OCOOH、MOC2H4OCH3、MOC3H6OCH3、MOC2H4OCOOCH3、MOC3H6OCOOCH3、MOCOOC2H4OCOOCH3、MOCOOC3H6OCOOCH3、MOC2H4OC2H5、MOC3H6OC2H5、MOC2H4OCOOC2H5、MOC3H6OCOOC2H5、MOCOOC2H4OCOOC2H5、MOCOOC3H6OCOOC2H5(式中、Mは、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれるアルカリ金属である。)で表される化合物である。
HOC2H4OH、HOC3H6OH、HOC2H4OCOOH、HOC3H6OCOOH、HOCOOC2H4OCOOH、HOCOOC3H6OCOOH、HOC2H4OCH3、HOC3H6OCH3、HOC2H4OCOOCH3、HOC3H6OCOOCH3、HOCOOC2H4OCOOCH3、HOCOOC3H6OCOOCH3、HOC2H4OC2H5、HOC3H6OC2H5、HOC2H4OCOOC2H5、HOC3H6OCOOC2H5、HOCOOC2H4OCOOC2H5、HOCOOC3H6OCOOC2H5、CH3OC2H4OCH3、CH3OC3H6OCH3、CH3OC2H4OCOOCH3、CH3OC3H6OCOOCH3、CH3OCOOC2H4OCOOCH3、CH3OCOOC3H6OCOOCH3、CH3OC2H4OC2H5、CH3OC3H6OC2H5、CH3OC2H4OCOOC2H5、CH3OC3H6OCOOC2H5、CH3OCOOC2H4OCOOC2H5、CH3OCOOC3H6OCOOC2H5、C2H5OC2H4OC2H5、C2H5OC3H6OC2H5、C2H5OC2H4OCOOC2H5、C2H5OC3H6OCOOC2H5、C2H5OCOOC2H4OCOOC2H5、C2H5OCOOC3H6OCOOC2H5
のいずれかで表される化合物である。
正極活物質層に前記化合物を混合する方法、
正極活物質層に前記化合物を吸着させる方法、
正極活物質層に前記化合物を電気化学的に析出させる方法
等が挙げられる。
中でも、非水系電解液中に、分解してこれらの前記化合物を生成し得る前駆体を含有させておき、蓄電素子を作製する工程における前記前駆体の分解反応を利用して、正極活物質層内に前記化合物を堆積させる方法が好ましい。
また、前記化合物の総量は、前記正極活物質の単位質量当たり、3.0×10−2mol/g以下であり、7.0×10−3mol/g以下であることがより好ましく、3.0×10−5mol/g以下であることが最も好ましい。前記化合物の総量が正極活物質の単位質量当たり3.0×10−2mol/g以下であれば、アルカリ金属イオンの拡散を阻害することがなく、高い入出力特性を発現することができる。
なお、前記化合物の総量の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
アルカリ金属イオン二次電池の特性評価を以下に示すが、正極活物質によって作動電圧が変わるため、充放電の電圧についてはアルカリ金属イオン二次電池によって設定値を変更する必要がある。特性評価の代表例として、以下よりナトリウムイオン二次電池について例示するが、評価方法についてはこれに限定されることはない。
本明細書では、容量Q(Ah)とは、以下の方法によって得られる値である:
先ず、アルカリ金属イオン二次電池と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分行う。その後、1.5Vまで0.1Cの電流値で定電流放電を施した際の電気容量をQとする。
本明細書では、常温内部抵抗とは、それぞれ、以下の方法によって得られる値である:
先ず、アルカリ金属イオン二次電池と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行う。続いて、5Cの電流値で1.5Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=4.0−Eo、及びRa=ΔE/(5C(電流値A))により算出される値である。
(高温保存試験後のガス発生量及び内部抵抗)
本明細書では、高温保存試験時のガス発生量は、以下の方法によって測定する:
先ず、アルカリ金属イオン二次電池と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行う。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、前述の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存する。この工程を繰り返し行い、保存開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセル体積Vbをアルキメデス法によって測定する。(Vb−Va)/Qを、セル電圧4.0V及び環境温度60℃において2か月間保存した際に発生するガス量とする。
前記高温保存試験後のセルに対して、前記常温内部抵抗と同様の測定方法を用いて得られる抵抗値を高温保存試験後の内部抵抗をRbとする。
[正極活物質の製造]
Na2CO3とFe3O4をモル比でNa:Fe=1:1となるようにして秤量し、混合を行った。得られた混合物を空気雰囲気下750℃で10時間保持して焼成した後、粉砕することにより正極活物質であるNaFeO2を得た。
得られたNaFeO2粉体を86.5質量部、アセチレンブラックを5.0質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)5.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)の混合物に、アルカリ金属化合物として下記表1に記載した平均粒子径の炭酸ナトリウムを加え、混合した。この混合物中の炭酸ナトリウムの量は、正極活物質層に対する重量比として表1の通りになるように計算し混合した。また、炭酸ナトリウムの平均粒子径についても、表1に記載した。混合物の固形分濃度はすべて32質量%として、正極用スラリーを得た。得られた正極用スラリーを、正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面又は片面に塗布乾燥し、プレスすることにより、正極前駆体を得た。正極前駆体の正極活物質層の片面あたりの厚さは、炭酸ナトリウムの平均粒子径により多少の差はあるが、おおよそ80μmであった。
市販のハードカーボン(株式会社クレハ製)を85.4質量部、アセチレンブラックを8.3質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を6.3質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して負極用スラリーを得た。得られた負極用スラリーを、負極集電体となる厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスして負極を得た。得られた負極における負極活物質層の片面あたりの厚さは115μmであった。
得られた両面負極および両面正極前駆体を10cm×10cm(100cm2)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体を用い、更に両面負極21枚と両面正極前駆体20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体とした。この電極積層体を、アルミラミネート包材から成る外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、及びシール圧1.0MPaの条件下でヒートシールした。部分シール体を、温度80℃、圧力50Pa、及び乾燥時間60hrの条件下で真空乾燥した。
有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)を用い、1.0mol/LとなるようにNaPF6を溶解して得た溶液を、非水系電解液として使用した。
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入して、ナトリウムドープ前のナトリウムイオン二次電池を形成した。続いて、減圧チャンバーの中に前記ナトリウムイオン二次電池を入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返したのち、ナトリウムイオン二次電池を15分間静置した。さらに、常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した。(それぞれ−95,−96,−97,−81,−97,−97,−97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、ナトリウムイオン二次電池を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
得られたナトリウムイオン二次電池に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、45℃環境下、電流値0.5Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を任意の時間行うことで初期充電を行い、負極にナトリウムドープを行った。表1に、4.5V定電圧充電の時間をまとめて記載した。
ナトリウムドープ後のナトリウムイオン二次電池を25℃環境下、0.5Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。続いて、ナトリウムイオン二次電池を60℃の恒温槽に5時間保管した。
温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下で、エージング後のナトリウムイオン二次電池のアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に前記ナトリウムイオン二次電池を入れ、大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機にナトリウムイオン二次電池を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止して、調整済みのナトリウムイオン二次電池を得た。
得られたナトリウムイオン二次電池から正極を5cm×5cmの大きさに切り出し、20gのメタノールに浸し、容器に蓋をして25℃環境下、3日間静置した。その後正極を取り出し、120℃、5kPaの条件にて10時間真空乾燥し、正極重量M0を測定した。洗浄後のメタノール溶液について、予め検量線を作成した条件にてGC/MSを測定し、ジエチルカーボネートの存在量が1%未満であることを確認した。続いて、25.00gの蒸留水に正極を含浸させ、容器に蓋をして45℃環境下、3日間静置した。その後正極を取り出し、150℃、3kPaの条件にて12時間真空乾燥し、正極重量M1を測定した。洗浄後の蒸留水について、予め検量線を作成した条件にてGC/MSを測定し、メタノールの存在量が1%未満であることを確認した。その後、スパチュラ、ブラシ、刷毛を用いて正極集電体上の活物質層を取り除き、正極集電体の重量M2を測定した。上記(III)式に従い正極中の炭酸ナトリウム量を定量した値を、表1にまとめた。
得られたナトリウムイオン二次電池を露点温度−72℃のアルゴンボックス中で解体し、両面に正極活物質層が塗工された正極を10cm×5cmの大きさに切り出し、重量を測定したところ0.512gであった。得られた正極を30gのジエチルカーボネート溶媒に浸し、時折ピンセットで正極を動かし、10分間洗浄した。続いて正極を取り出し、アルゴンボックス中で5分間風乾させ、新たに用意した30gのジエチルカーボネート溶媒に正極を浸し、上記と同様の方法にて10分間洗浄した。正極をアルゴンボックスから取り出し、真空乾燥機(ヤマト科学製、DP33)を用いて、温度25℃、圧力1kPaの条件にて20時間乾燥し、正極試料1を得た。
正極試料1から1cm×1cmの小片を切り出し、10Paの真空中にて、金をスパッタリングにより表面にコーティングした。続いて以下に示す条件にて、大気暴露下で正極表面のSEM、及びEDXを測定した。
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE−SEM S−4700
・加速電圧:10kV
・エミッション電流:1μA
・測定倍率:2000倍
・電子線入射角度:90°
・X線取出角度:30°
・デッドタイム:15%
・マッピング元素:O
・測定画素数:256×256ピクセル
・測定時間:60sec.
・積算回数:50回
・明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
比較例1を除き、正極前駆体を作製するときに添加した炭酸ナトリウムの平均粒子径に比べ、アルカリ金属イオン二次電池(ナトリウムイオン二次電池)を作製した後では、炭酸ナトリウムの平均粒子径が小さくなっていることがわかる。これは炭酸ナトリウムがドーパンド源として機能していることを意味している。
完成した複数のナトリウムイオン二次電池のうち、数点の素子を2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているArボックス内で解体して正極電極体を取り出した。取り出した正極電極体を、ジメチルカーボネート(DMC)で浸漬洗浄した後、大気非暴露を維持した状態下でサイドボックス中で真空乾燥させた。
乾燥後の正極電極体を、大気非暴露を維持した状態でサイドボックスからArボックスに移し、重水で浸漬抽出して、正極電極体抽出液を得た。抽出液の解析は、(1)イオンクロマトグラフィー(IC)及び(2)1H−NMRにて行い、求めた正極電極体抽出液中の各化合物の濃度A(mol/ml)、抽出に用いた重水の体積B(ml)、及び抽出に用いた正極の活物質の質量C(g)から、下記数式IV:
単位質量当たりの存在量(mol/g)=A×B÷C ...(数式IV)
により、正極電極体に堆積する各化合物の、正極活物質単位質量当たりの存在量(mol/g)を求めた。
なお、抽出に用いた正極活物質層の質量は、以下の方法によって求めた。
重水抽出後に残った正極電極体の集電体から合剤(正極活物質層)を剥がし取り、該剥がし取った合剤を、水洗した後、真空乾燥した。真空乾燥して得た合剤を、NMP又はDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)により洗浄した。続いて、得られた正極活物質層を再度真空乾燥した後、秤量することにより、抽出に用いた正極活物質層の質量を調べた。
また、濃度既知のジメチルスルホキシドの入った重水素化クロロホルムを3mmφNMRチューブ(株式会社シゲミ製PN−002)に入れ、上記と同一の1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン入りの重水素化クロロホルムの入った5mmφNMRチューブ(日本精密科学株式会社製N−5)に挿し込み、二重管法にて、1H NMR測定を行った。
上記と同様に、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼンのシグナル7.1ppm(m,2H)で規格化して、ジメチルスルホキシドのシグナル2.6ppm(s,6H)の積分値を求めた。用いたジメチルスルホキシドの濃度と積分値の関係から、正極電極体抽出液中の各化合物の濃度Aを求めた。
[XOCH2CH2OXについて]
XOCH2CH2OXのCH2:3.7ppm(s,4H)
CH3OX:3.3ppm(s,3H)
CH3CH2OXのCH3:1.2ppm(t,3H)
CH3CH2OXのCH2O:3.7ppm(q,2H)
上記のように、XOCH2CH2OXのCH2のシグナル(3.7ppm)は、CH3CH2OXのCH2Oのシグナル(3.7ppm)と重なってしまうため、CH3CH2OXのCH3のシグナル(1.2ppm)から算出されるCH3CH2OXのCH2O相当分を除いて、XOCH2CH2OX量を算出する。
なお、上記式XOCH2CH2OXにおいて、Xは、それぞれ、−(COO)nNaまたは−(COO)nR1(式中、nは0又は1であり、かつR1は、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基である。)である。
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行った。その後、1.5Vまで0.1Cの電流値で定電流放電を施した際の放電容量Qを、表1にまとめた。
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、5Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行い、続いて、5Cの電流値で1.5Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとし、降下電圧ΔE=4.0−Eo、及びR=ΔE/(5C(電流値A))により、常温内部抵抗Raを算出した。
25℃における内部抵抗Raを、表1にまとめた。
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行った。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、同様の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存した。この工程を2か月間繰り返し実施し、保存試験開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセルの体積Vbをアルキメデス法によって測定した。(Vb−Va)/Qにより求めたガス発生量を、表1にまとめた。
前記高温保存試験後の蓄電素子に対して、前記[Raの算出]と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rbを算出した。
このRb(Ω)を、前記[Raの算出]で求めた高温保存試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rb/Raを表1にまとめた。
正極前駆体の製造において、ナトリウム化合物を酸化ナトリウムとし、正極前駆体の正極活物質層に対する酸化ナトリウムの重量比として12.9重量%、酸化ナトリウムの平均粒子径として2.79μmとしたこと以外は、実施例1〜29および比較例1〜3と同様の操作を行うことでナトリウムイオン二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表1に記載する。
正極前駆体の製造において、ナトリウム化合物を水酸化ナトリウムとし、正極前駆体の正極活物質層に対する酸化ナトリウムの重量比として13.5重量%、酸化ナトリウムの平均粒子径として2.83μmとしたこと以外は、実施例1〜29および比較例1〜3と同様の操作を行うことでナトリウムイオン二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表1に記載する。
また、炭酸ナトリウムの量が0.5質量%以上50質量%以下の範囲であれば、(Vb−Va)/QおよびRb/Raも小さく、高温保存による耐久性が優れた特性を持つことが分かった。これは、炭酸ナトリウム量が50質量%以下であれば、炭酸ナトリウム自身が高電圧に曝されることで生じる分解が抑制され、ガス発生と抵抗上昇を生じ難くなり、0.5質量%以上であれば、電解液中に生じるフッ化物イオンを吸着することで、高温保存下での副反応が生じ難くなることを示唆している。
また、ナトリウムドープ後の正極活物質層に含まれる炭酸ナトリウムの平均粒子径が0.1μm以上10μm以下の範囲であれば、(Vb−Va)/QおよびRb/Raも小さく、高温保存による耐久性が優れた特性を持つことが分かった。これは、炭酸ナトリウムの平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であれば、炭酸ナトリウム粒子の表面積が十分に確保され、電解液中のフッ化物イオンを効率的に吸着して、高温保存下での副反応が生じ難くなっていることを示唆している。
[正極前駆体の製造]
KFeO2粉体を86.5質量部、アセチレンブラックを5.0質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)5.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)の混合物に、アルカリ金属化合物として平均粒子径2.88μmの炭酸カリウムを加え混合した。この混合物中の炭酸カリウムの量は、正極活物質層に対して13.5質量%になるように計算し混合した。混合物の固形分濃度は35質量%として、正極用スラリーを得た。得られた正極用スラリーを、正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面又は片面に塗布乾燥し、プレスすることにより、正極前駆体を得た。正極前駆体の正極活物質層の片面あたりの厚さは92μmであった。
平均粒径5μmの黒鉛を85.4質量部、アセチレンブラックを8.3質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を6.3質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して負極用スラリーを得た。得られた負極用スラリーを、負極集電体となる厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスして負極を得た。得られた負極における負極活物質層の片面あたりの厚さは120μmであった。
得られた両面負極および両面正極前駆体を10cm×10cm(100cm2)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体を用い、更に両面負極21枚と両面正極前駆体20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体とした。この電極積層体を、アルミラミネート包材から成る外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、及びシール圧1.0MPaの条件でヒートシールした。シールされた電極積層体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を1:1で混合した有機溶媒を用い、1.0mol/LとなるようにKN(SO2CF3)2を溶解して得た溶液を、非水系電解液として使用した。
電極積層体を収納しているアルミラミネート包材の中に、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入して、カリウムドープ前のアルカリ金属イオン二次電池(カリウムイオン二次電池)を形成した。続いて、減圧チャンバーの中に前記アルカリ金属イオン二次電池を入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、電池を5分間静置した。その後、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返したのち、15分間静置した。さらに、常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した。(それぞれ−95,−96,−97,−81,−97,−97,−97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、カリウムイオン二次電池を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
得られたカリウムイオン二次電池に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、45℃環境下、電流値0.5Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を10時間行うことで初期充電を行い、負極にカリウムドープを行った。
カリウムドープ後のカリウムイオン二次電池を25℃環境下、0.5Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。続いて、カリウムイオン二次電池を60℃の恒温槽に5時間保管した。
エージング後のカリウムイオン二次電池を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に前記カリウムイオン二次電池を入れ、大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機にカリウムイオン二次電池を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
カリウム化合物の平均粒子径およびその量については、実施例1〜31および比較例1〜3と同様の方法で実施した。正極に含まれるカリウム化合物の平均粒子径は2.30μmであり、その量は9.3質量%であった。
正極活物質層に含まれる化合物の定量については、実施例1〜31および比較例1〜3と同様の方法で実施した。正極活物質層に含まれる化合物の量は8.3×10−6mol/gであった。
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行った。その後、2.0Vまで0.1Cの電流値で定電流放電を施した際の放電容量Qは、3.5Ahであった。
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、5Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行い、続いて、5Cの電流値で2.0Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとし、降下電圧ΔE=4.0−Eo、及びR=ΔE/(5C(電流値A))により、常温内部抵抗Raを算出した。
25℃における内部抵抗Raは、103mΩであった。
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行った。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、同様の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存した。この工程を2か月間繰り返し実施し、保存試験開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセルの体積Vbをアルキメデス法によって測定した。(Vb−Va)/Qにより求めたガス発生量は、2.5cc/Ahであった。
前記高温保存試験後の蓄電素子に対して、前記[Raの算出]と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rbを算出した。
このRb(Ω)を、前記[Raの算出]で求めた高温保存試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rb/Raは、5.3であった。
Claims (4)
- 元素周期表の第3周期以降のアルカリ金属イオンを吸蔵及び放出することが可能な遷移金属酸化物を含む正極活物質を含む正極活物質層を有する正極;
負極;
セパレータ;及び
前記第3周期以降のアルカリ金属イオンを含む非水系電解液;
を含むアルカリ金属イオン二次電池であって、
前記非水系電解液に含まれる前記第3周期以降のアルカリ金属イオンを陽イオンとして有するアルカリ金属化合物が、前記正極中に、前記正極活物質層の質量を基準として、0.5質量%以上50質量%以下含まれ、かつ前記アルカリ金属化合物が、炭酸塩、水酸化物、及び酸化物から選ばれる1種以上であるアルカリ金属イオン二次電池。 - 前記第3周期以降のアルカリ金属化合物の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下である、請求項1に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
- 前記正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
M1X1−OR1O−X2M2 (1)
{式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、X1及びX2は、それぞれ独立に、−(COO)n(式中、nは0又は1である。)であり、かつM1及びM2は、それぞれ独立に、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}
M1X1−OR1O−X2R2 (2)
{式(2)中、R1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R2は、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、X1及びX2は、それぞれ独立に、−(COO)n(式中、nは0又は1である。)であり、かつM1は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる。}
R3X1−OR1O−X2R2 (3)
{式(3)中、R1は、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX1及びX2は、それぞれ独立に、−(COO)n(式中、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を、該正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、請求項1又は2に記載のアルカリ金属イオン二次電池。 - 前記第3周期以降のアルカリ金属イオンがナトリウムイオンであり、かつ前記アルカリ金属化合物がナトリウム化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ金属イオン二次電池。
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