JP6698493B2 - 非水系リチウム蓄電素子 - Google Patents
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Description
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時に高い出力放電特性を発揮する蓄電システムが要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
一方、現在ハイブリッド電気自動車で一般に採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力特性をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(すなわち、蓄電素子の放電容量に対する放電量の割合(%))50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかしながら、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計である。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)は、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、そのようなリチウムイオン電池は、実用的な耐久性を持たせるために、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲で使用される。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(以下、「非水系リチウム蓄電素子」ともいう。)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着及び脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵及び放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高出力かつ高耐久性を有するが、エネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)を有するが、出力特性及び耐久性に課題がある。更に、ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10〜50%しか使用できない。
特許文献1には、正極中に炭酸リチウムを含有させた正極を用い、電池内圧の上昇に応じて作動する電流遮断機構を有するリチウムイオン二次電池が提案されている。特許文献2には、リチウムマンガン酸等のリチウム複合酸化物を正極に用い、正極に炭酸リチウムを含有させることでマンガンの溶出を抑制したリチウムイオン二次電池が提案されている。特許文献3には、正極で被酸化物としての各種リチウム化合物を酸化し、劣化した蓄電素子の容量を回復させる方法が提案されている。しかしながら、特許文献1〜3に記載の正極は、リチウムイオンキャパシタなどの非対称キャパシタへの適用について未だに改良の余地があり、扁平捲回電極における曲部の金属析出による内部短絡については全く検討されていない。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである:
[1]
活物質以外のリチウム化合物を含む少なくとも1つの正極と、少なくとも1つの負極と、少なくとも1つのセパレータとを含み、かつ前記正極と前記負極を前記セパレータを介して扁平型に捲回して成る扁平捲回電極体;及び
リチウムイオンを含む非水系電解液;
を含む非水系リチウム蓄電素子であって、
前記正極の正極集電体上に、前記活物質及び前記リチウム化合物から成る少なくとも1つの正極活物質層が塗布されており、
前記負極の負極集電体上に、前記リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質から成る少なくとも1つの負極活物質層が塗布されており、かつ
前記負極のうちで前記扁平捲回電極体の最外層に配置された負極において、前記正極活物質層と対向している負極活物質層の曲部におけるリチウムイオン濃度をAx1(質量%)とし、かつ該負極活物質層の扁平部におけるリチウムイオン濃度をAy1(質量%)とするとき、Ax1/Ay1が0.25以上0.95以下である、
前記非水系リチウム蓄電素子。
[2]
前記曲部における前記負極活物質層の厚みをTxとし、前記扁平部における前記負極活物質層の厚みをTyとするとき、Tx/Tyが0.86以上0.98以下である、[1]に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[3]
前記曲部における前記負極活物質の重量をAx2(g/m2)、前記扁平部における前記負極活物質の重量をAy2(g/m2)とするとき、Ax2/Ay2が0.85以上1.15以下である、[1]又は[2]に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[4]
前記リチウム化合物が、炭酸リチウム、又は酸化リチウム、又は水酸化リチウムであり、かつ
前記負極活物質層の前記曲部と対向する前記正極活物質層に含まれる前記リチウム化合物の量をCx1(g/m2)とし、前記負極活物質層の前記扁平部と対向する前記正極活物質層に含まれる前記リチウム化合物の量をCy1(g/m2)とするとき、Cx1及びCy1はそれぞれ0.1以上20以下であり、かつCy1/Cx1が0.25以上0.95以下である、
[1]〜[3]のいずれか1項に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[5]
前記正極集電体の片面上又は両面上に設けられた前記正極活物質層に含まれる正極活物質が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下を示す活性炭である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[6]
前記正極活物質層に含まれる正極活物質が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V1(cc/g)が0.8<V1≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V2(cc/g)が0.8<V2≦3.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下を示す活性炭である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[7]
前記負極活物質に対する前記リチウムイオンのドープ量が、前記負極活物質の単位質量当たり530mAh/g以上2,500mAh/g以下である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[8]
前記負極活物質のBET比表面積が100m2/g以上1,500m2/g以下である、[7]に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[9]
前記負極活物質に対する前記リチウムイオンのドープ量が、前記負極活物質の単位質量当たり50mAh/g以上700mAh/g以下である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[10]
前記負極活物質のBET比表面積が1m2/g以上50m2/g以下である、[9]に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[11]
前記負極活物質の平均粒子径が1μm以上10μm以下である、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の非水系リチウム蓄電素子。
本実施形態における正極は、正極集電体と、その片面又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する。正極は、正極集電体と、その片面、又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有する。
本実施形態における正極は、蓄電素子を組み立てる前の正極前駆体として、活物質以外のリチウム化合物を含むことが好ましい。後述のように、本実施形態では蓄電素子を組み立てる工程において、負極にリチウムイオンをプレドープすることが好ましい。本実施形態におけるプレドープ方法としては、リチウム化合物を含む正極前駆体と、負極と、セパレータと、非水系電解液とを用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。前記リチウム化合物は、正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層内に含有されていることが好ましい。
本願明細書では、リチウムドープ工程前における正極を「正極前駆体」、リチウムドープ工程後における正極を「正極」と定義する。
正極活物質層は正極活物質を含み、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、及び分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。正極活物質は、炭素材料を含むことが好ましい。
正極前駆体の正極活物質層は、リチウム化合物を含むことが好ましい。
正極活物質は、蓄電素子の充放電時にファラデー反応又は 非ファラデー反応に関与する物質であり、炭素材料を含むことが好ましい。炭素材料としては、好ましくはカーボンナノチューブ、導電性高分子、及び多孔性の炭素材料が挙げられ、さらに好ましくは活性炭である。正極活物質は、2種類以上の材料を混合して含んでもよく、炭素材料以外の材料、例えばリチウムと遷移金属との複合酸化物等を含んでもよい。
正極活物質の合計質量に対する炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率は100質量%であってもよいが、他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、好ましくは90質量%以下であり、80質量%以下であってもよい。
(1)高い入出力特性を得るためには、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である活性炭(以下、「活性炭1」ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である活性炭(以下、「活性炭2」ともいう。)が好ましい。
以下、(1)活性炭1及び(2)活性炭2について、個別に順次説明していく。
活性炭1のメソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。一方で、正極の嵩密度の低下を抑える点から、活性炭1のV1は0.8cc/g以下であることが好ましい。活性炭1のV1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
上記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。活性炭1の炭素源としては、例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。賦活ガスとして水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法がより好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h、好ましくは0.7〜2.0kg/hの割合で供給しながら、炭化物を3〜12時間、好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間かけて800〜1,000℃まで昇温して賦活することが好ましい。
更に、炭化物の賦活処理に先立ち、予め炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で炭素材料を焼成してガス賦活することが好ましい。
炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において好ましい、上記の特徴を有する活性炭1を製造することができる。
活性炭2のメソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい一方、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。活性炭2のV1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
活性炭2の原料として用いられる炭素質材料としては、活性炭原料として通常用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭2を作製するのに適しており特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、或いは賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は400〜700℃程度、炭化時間は0.5〜10時間程度で焼成する方法が一般的である。
炭化処理後の炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活方挙げられる。高比表面積の活性炭を作製するには、アルカリ金属賦活法が好ましい。
マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は、好ましくは2μm以上20μm以下、より好ましくは3μm以上10μm以下である。
活性炭1及び2は、それぞれ、単一の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって、混合物全体として上記の特徴を示すものであってもよい。
活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
正極活物質層における正極活物質の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、35質量%以上95質量%以下であることが好ましい。正極活物質の含有割合の下限としては、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。一方、正極活物質の含有割合の上限としては、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。正極活物質の含有割合をこの範囲にすることにより、好適な充放電特性を発揮する。
本明細書では、リチウム化合物は、リチウムを含有する物質を意味するが、蓄電素子の充放電時に電極中でファラデー反応又は非ファラデー反応に関与する活物質を除くものとする。
本実施形態におけるリチウム化合物としては、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、シュウ化リチウム、ヨウ化リチウム、窒化リチウム、シュウ酸リチウム、及び酢酸リチウムから選択される1種以上が好適に用いられる。中でも、炭酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムがより好適であり、空気中での取り扱いが可能であり、かつ吸湿性が低いという観点から炭酸リチウムがさらに好適に用いられる。このようなリチウム化合物は、電圧の印加によって分解し、負極へのリチウムドープのドーパント源として機能するとともに、正極活物質層において空孔を形成するから、電解液の保持性に優れ、イオン伝導性に優れる正極を形成することができる。前記リチウム化合物の他に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、及び炭酸セシウムから選択されるアルカリ金属炭酸塩を1種以上用いることもできる。非水系電解液として、後述するLiPF6等のリチウム塩を予め溶解させた電解液を用いる場合には、前記アルカリ金属炭酸塩を単独で用いることもできる。正極前駆体中に含まれるリチウム化合物は1種でもよく、2種以上のリチウム化合物を含んでいてもよく、リチウム化合物と他のアルカリ金属炭酸塩を混合して用いてもよい。
また、本実施形態の正極前駆体としては少なくとも1種のリチウム化合物を含んでいればよく、リチウム化合物の他に、下記式におけるMをNa、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上として、
M2O等の酸化物、
MOH等の水酸化物、
MFやMCl等のハロゲン化物、
M2(CO2)2等の蓚酸塩、及び
RCOOM(式中、RはH、アルキル基、又はアリール基である)等のカルボン酸塩
を1種以上含んでいてもよい。
また、正極前駆体は、BeCO3、MgCO3、CaCO3、SrCO3、又はBaCO3から選ばれるアルカリ土類金属炭酸塩、並びにアルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属シュウ酸塩、及びアルカリ土類金属カルボン酸塩を1種以上含んでいてもよい。
本実施形態における正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びリチウム化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
正極活物質層における導電性フィラーの混合量は、正極活物質100質量部に対して、0超〜20質量部が好ましく、1〜15質量部の範囲が更に好ましい。高入力の観点から、正極活物質層は導電性フィラーを含むことが好ましい。正極活物質層における導電性フィラーの混合量が20質量部以下であれば、正極活物質層における正極活物質の含有割合が多くなり、正極活物質層の体積当たりのエネルギー密度を確保できる。
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施の形態の非水系リチウム蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。
金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。なお、正極集電体が孔又は凹凸を有する場合には、孔又は凹凸の存在しない部分に基づいて正極集電体の厚みを測定するものとする。
本実施形態において、非水系リチウム蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を、水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体の片面又は両面上に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚や嵩密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
正極前駆体の塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。正極前駆体の塗工液のTI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓みやシワが生じ難く、正極活物質層膜の所望の膜厚や嵩密度に調整し易い。
プレスロール同士の隙間は、正極活物質層の所望の膜厚や嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体膜厚に応じて任意の値を設定できる。
プレス速度は、正極前駆体の撓みやシワを低減するよう任意の速度に設定できる。
プレス部の表面温度は、室温でもよいし、必要によりプレス部の表面を加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、好ましくは使用する結着剤の融点マイナス60℃以上、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは結着剤の融点プラス30℃以下、さらに好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、好ましくは90℃以上200℃以下、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下にプレス部の表面を加熱する。結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下にプレス部の表面を加温する。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
本実施形態における負極は、負極集電体と、その片面又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
[負極活物質]
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な物質を用いることができる。負極活物質としては、具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫、及び錫化合物等が挙げられる。炭素材料の含有率は、負極活物質の合計質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率は100質量%であってもよいが、他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。
炭素材料としては、特に制限されるものではないが、活性炭、カーボンブラック、鋳型多孔質炭素、高比表面積黒鉛、カーボンナノ粒子等を好適に用いることができる。
これらの中でも負極の抵抗を下げる観点から、炭素材料1種以上と、石油系のピッチ又は石炭系のピッチとを共存させた状態で熱処理をして得ることができる、ピッチ複合炭素材料が好ましい。熱処理を行う前に、ピッチの融点より高い温度において、炭素材料とピッチとを混合してもよい。熱処理温度は、使用するピッチが揮発又は熱分解して発生する成分が炭素質材料となる温度であればよい。熱処理を行う雰囲気としては、非酸化性雰囲気が好ましい。
ピッチ複合炭素材の好ましい例は、後述のピッチ複合炭素材料1及び2である。これらの内どちらか一方を使用してもよく、又はこれらの両方を併用してもよい。
一実施形態において、ピッチ複合炭素材料1のBET比表面積は、100m2/g以上1,500m2/g以下であることが好ましい。
一実施形態において、ピッチ複合炭素材料1の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、好ましくは530mAh/g以上2,500mAh/g以下、より好ましくは620mAh/g以上2,100mAh/g以下、さらに好ましくは760mAh/g以上1,700mAh/g以下、より更に好ましくは840mAh/g以上1,500mAh/g以下である。
リチウムイオンをドープすることにより、負極電位が低くなる。従って、リチウムイオンがドープされた負極活物質を含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系リチウム蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
ピッチ複合炭素材料1の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が530mAh/g以上であれば、複合炭素材料1におけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされ、更に所望のリチウムイオン量に対する負極活物質の量を低減することができる。そのため、負極膜厚を薄くすることが可能となり、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
ピッチ複合炭素材料1の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が2,500mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生し難くなる。
他の実施形態において、ピッチ複合炭素材料2のBET比表面積は、1m2/g以上50m2/g以下であることもまた好ましい。
他の実施形態において、負極活物質の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、好ましくは50mAh/g以上700mAh/g以下、より好ましくは70mAh/g以上650mAh/g以下、さらに好ましくは90mAh/g以上600mAh/g以下、より更に好ましくは100mAh/g以上550mAh/g以下である。
ピッチ複合炭素材料2の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が50mAh/g以上であれば、複合炭素材料2におけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされるため、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
ピッチ複合炭素材料2の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量が700mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生し難くなる。
ピッチ複合炭素材料1及び2の平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下であり、下限値は、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは2.5μm以上であり、上限値は、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは4μm以下である。負極活物質の平均粒子径が1μm以上10μm以下であれば、良好な耐久性が保たれる。
本実施形態における負極活物質層は、負極活物質の他に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
本実施形態における負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こり難い金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施の形態の非水系リチウム蓄電素子における負極集電体としては、銅箔が好ましい。
金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。なお、負極集電体が孔又は凹凸を有する場合には、孔又は凹凸の存在しない部分に基づいて負極集電体の厚みを測定するものとする。
負極は、負極集電体の片面又は両面上に負極活物質層を有する。典型的には、負極活物質層は負極集電体の片面又は両面上に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を、水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより負極を得ることができる。得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚や嵩密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、負極活物質を含む各種材料を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて負極集電体に貼り付ける方法も可能である。
負極の塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。負極の塗工液のTI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、負極に撓みやシワが生じ難く、負極活物質層膜の所望の膜厚や嵩密度に調整し易い。
プレスロール同士の隙間は、負極活物質層の所望の膜厚や嵩密度となるように乾燥後の負極膜厚に応じて任意の値を設定できる。
プレス速度は、負極の撓みやシワを低減するよう任意の速度に設定できる。
プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要によりプレス部の表面を加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、好ましくは使用する結着剤の融点マイナス60℃以上、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは結着剤の融点プラス30℃以下、さらに好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、好ましくは90℃以上200℃以下、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下にプレス部の表面を加熱する。結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下にプレス部の表面を加温する。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
BJH法とは、メソ孔の解析に一般的に用いられる計算方法で、Barrett,Joyner,Halendaらにより提唱されたものである(E.P.Barrett,L.G.Joyner and P.Halenda, J.Am.Chem.Soc.,73,373(1951))。
MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail,Brunauer,Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45(1968))。
正極前駆体及び負極は、一般に、セパレータを介して扁平状に捲回され、正極前駆体と、負極と、セパレータとを有する扁平捲回電極体を形成する。
セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面又は両面上に、有機又は無機の微粒子から構成される膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機又は無機の微粒子が含まれていてもよい。
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、例えば、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムの3層から構成されるラミネートフィルムが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
本実施形態における電解液は、リチウムイオンを含む非水系電解液である。非水系電解液は、後述する非水溶媒を含む。非水系電解液は、非水系電解液の合計体積を基準として、0.5mol/L以上のリチウム塩を含有することが好ましい。
[組立工程]
一実施形態の組立工程では、例えば、帯状にカットした正極前駆体及び負極を、帯状のセパレータを介して扁平状に捲回して成る扁平捲回体に、正極端子及び負極端子を接続して、扁平捲回電極体を作製する。扁平捲回電極体は例えば、平板状の板を軸に捲回する方法や、円柱状の巻芯を軸に捲回した後に扁平状に押しつぶす方法で作製できる。
図1では外装体(1)に含まれる扁平捲回電極体(2)の層構成を省略しているが、扁平捲回電極体(2)は、単数又は複数の負極に加えて、単数又は複数の正極と単数又は複数のセパレータを含むことができる。
本実施形態では、扁平部(3)の負極活物質層とは、単数又は複数の負極活物質層のうちで扁平捲回電極体(2)の最外層に配置された負極活物質層であって、前記負極活物質層は正極活物質層と対向しており、前記幅広部分の中心から投影部の長さが0.4X、つまり合計0.8Xの範囲の被投影部分を指し、曲部(4)の負極活物質層とは、単数又は複数の負極活物質層のうちで扁平捲回電極体(2)の最外層に配置された負極活物質層であって、前記負極活物質層は正極活物質層と対向しており、扁平部(3)以外の領域を指す。
組立工程後に、外装体の中に収納された扁平捲回電極体に、非水系電解液を注液する。注液後に、更に含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するリチウムドープ工程において、リチウムドープが不均一に進むため、得られる非水系リチウム蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の扁平捲回電極体を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後に、外装体が開口した状態の扁平捲回電極体を減圧しながら封止することで密閉することができる。
リチウムドープ工程では、正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のリチウム化合物を分解してリチウムイオンを放出し、負極でリチウムイオンを還元することにより負極活物質層にリチウムイオンをプレドープすることが好ましい。
リチウムドープ工程において、正極前駆体中のリチウム化合物の酸化分解に伴い、CO2等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
リチウムドープ工程後に、扁平捲回電極体にエージングを行うことが好ましい。エージング工程では、電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にリチウムイオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
エージング工程後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系リチウム蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、外装体を開口した状態で扁平捲回電極体を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。ガス抜き後、外装体をシールすることにより外装体を密閉し、非水系リチウム蓄電素子を作製することができる。
本実施形態に係る単数又は複数の負極のうちで扁平捲回電極体の最外層に配置された負極において、所望によりセパレータを介して、正極活物質層と対向している負極活物質層の曲部における負極活物質層中のリチウムイオン濃度をAx1(質量%)とし、かつ負極活物質層の扁平部における負極活物質層中のリチウムイオン濃度をAy1(質量%)とするとき、Ax1/Ay1が0.25以上0.95以下である。Ax1/Ay1が0.25以上であれば、曲部においても十分な量のリチウムイオンが充放電に寄与することができるためにエネルギー密度が高まり、高負荷充放電サイクルにおける抵抗上昇を抑制することができる。Ax1/Ay1が0.95以下であれば、高負荷充放電サイクルにおける曲部での金属リチウム析出を抑制でき、抵抗上昇及び内部短絡を抑制することができる。
本技術分野では、曲部は、R部、屈曲部、又は折曲部と呼ばれることもある。
負極活物質層の扁平部と曲部は、図1に基いて上記でされたとおりに画定されることができる。
[静電容量]
本明細書では、静電容量Fa(F)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系リチウム蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQ(C)とする。ここで得られたQ及び電圧変化ΔVx(V)を用いて、静電容量Fa=Q/ΔVx=Q/(3.8−2.2)により算出される値を、静電容量Fa(F)という。
ここで電流の放電レート(「Cレート」とも呼ばれる)とは、放電容量に対する放電時の電流の相対的な比率であり、一般に、上限電圧から下限電圧まで定電流放電を行う際、1時間で放電が完了する電流値のことを1Cという。本明細書では、上限電圧3.8Vから下限電圧2.2Vまで定電流放電を行う際に1時間で放電が完了する電流値のことを1Cとする。
本明細書では、内部抵抗Ra(Ω)とは、以下の方法によって得られる値である:
先ず、非水系リチウム蓄電素子を25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。続いて、サンプリング間隔を0.1秒とし、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=3.8−EoからRa=ΔE/(20Cの電流値)として算出される値である。
本明細書では、高負荷充放電サイクル試験後の抵抗変化率及びガス発生量は、以下の方法によって測定する。
(高負荷充放電サイクル後の抵抗変化率)
先ず、非水系リチウム蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、200Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて200Cの電流値で2.2Vに到達するまで定電流放電を行う。この高負荷充放電サイクルを60000回繰り返し、上記内部抵抗の測定方法に従い高負荷充放電サイクル後の内部抵抗Rbを測定する。Rb/Raを高負荷充放電サイクル後の抵抗変化率とする。
高負荷充放電サイクル終了後の非水系リチウム蓄電素子を25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で2時間行う。続いて、25℃に設定した恒温槽内に3週間静置し、その後電圧Vxを測定する。3週間後の電圧変化ΔV(ΔV=Vx−3.8である)を高負荷充放電サイクル後の自己放電とする。
正極中に含まれるリチウム化合物の同定方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により同定することができる。リチウム化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
以下に記載するSEM−EDX、ラマン、XPSを測定する際には、アルゴンボックス中で非水系リチウム蓄電素子を解体して正極を取り出し、正極表面に付着した電解質を洗浄した後に測定を行うことが好ましい。正極の洗浄方法については、正極表面に付着した電解質を洗い流せればよいため、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート溶媒が好適に利用できる。洗浄方法としては、例えば、正極重量の50〜100倍のジエチルカーボネート溶媒に正極を10分間以上浸漬させ、その後溶媒を取り替えて再度正極を浸漬させる。その後正極をジエチルカーボネートから取り出し、真空乾燥させた後に、SEM−EDX、ラマン分光法、及びXPSの解析を実施する。真空乾燥の条件は、温度:0〜200℃、圧力:0〜20kPa、時間:1〜40時間の範囲で正極中のジエチルカーボネートの残存が1質量%以下になる条件とする。ジエチルカーボネートの残存量については、後述する蒸留水洗浄、液量調整後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。
後述するイオンクロマトグラフィーでは、正極を蒸留水で洗浄した後の水を解析することにより陰イオンを同定することができる。
リチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極表面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定例としては、加速電圧を10kV、エミッション電流を1μA、測定画素数を256×256ピクセル、積算回数を50回として測定できる。試料の帯電を防止するために、金、白金、オスミウム等を真空蒸着やスパッタリング等の方法により表面処理することもできる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化したとき、明部を面積で50%以上含む粒子をリチウム化合物とする。
炭酸リチウム及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極前駆体表面の炭酸イオンのラマンイメージングにより判別できる。測定条件の例として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件にて測定することができる。測定したラマンスペクトルについて、1071〜1104cm−1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算するが、この時にノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
XPSにより電子状態を解析することによりリチウム化合物の結合状態を判別することができる。測定条件の例として、X線源を単色化AlKα、X線ビーム径を100μmφ(25W、15kV)、パスエネルギーをナロースキャン:58.70eV、帯電中和を有り、スイープ数をナロースキャン:10回(炭素、酸素)20回(フッ素)30回(リン)40回(リチウム元素)50回(ケイ素)、エネルギーステップをナロースキャン:0.25eVの条件にて測定できる。XPSの測定前に正極の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として例えば、加速電圧1.0kV、2mm×2mmの範囲を1分間(SiO2換算で1.25nm/min)の条件にて正極の表面をクリーニングすることができる。
Li1sの結合エネルギー50〜54eVのピークをLiO2またはLi−C結合;
55〜60eVのピークをLiF、Li2CO3、LixPOyFz(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である);
C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、286eVのピークをC−O結合、288eVのピークをCOO、290〜292eVのピークをCO3 2−、C−F結合;
O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO2−(Li2O)、531〜532eVのピークをCO、CO3、OH、POx(式中、xは1〜4の整数である)、SiOx(式中、xは1〜4の整数である)、533eVのピークをC−O、SiOx(式中、xは1〜4の整数である);
F1sの結合エネルギー685eVのピークをLiF、687eVのピークをC−F結合、LixPOyFz(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である)、PF6 −;
P2pの結合エネルギーについて、133eVのピークをPOx(式中、xは1〜4の整数である)、134〜136eVのピークをPFx(式中、xは1〜6の整数である);
Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、101〜107eVのピークをSixOy(式中、x及びyは、それぞれ任意の整数である)
として帰属することができる。
正極前駆体を蒸留水で洗浄し、洗浄した後の水をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出した炭酸イオンを同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、またはサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計や荷電化粒子検出器を検出器と組み合わせて測定することもできる。
サンプルの保持時間は、使用するカラムや溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが、イオン種の濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の標準液を予め測定しておくことでイオン種成分の定性と定量が可能となる。
負極活物質層中に含まれるリチウムイオン濃度の定量方法を以下に記載する。アルゴンボックス中で、電圧を2.9Vに調整した非水系リチウム蓄電素子を解体して扁平捲回電極体を取り出し、扁平捲回電極体から最外層に配置された負極を切り出して有機溶媒で洗浄する。有機溶媒としては、リチウムイオンと反応せず、負極表面に堆積した電解質等を除去できればよく、特に限定されないが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート溶媒が好適に用いられる。測定する正極の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から2cm2以上200cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは5cm2以上150cm2以下である。正極面積が2cm2以上あれば測定の再現性が確保される。正極面積が200cm2以下であればサンプルの取扱い性に優れる。
前記得られた測定試料について、濃硝酸、濃塩酸、王水等の強酸を用いて酸分解し、得られた溶液を2%〜3%の酸濃度になるように純水で希釈する。酸分解については、適宜加熱、加圧し分解することもできる。得られた希釈液をICP−MSにより解析するがこの際に内部標準として既知量の元素を加えておくことが好ましい。測定対象のリチウム元素が測定上限濃度以上になる場合には、希釈液の酸濃度を維持したまま更に希釈することが好ましい。得られた測定結果に対し、化学分析用の標準液を用いて予め作成した検量線を基に、リチウム元素を定量することができる。得られたリチウム元素の定量結果と、測定に要したサンプル重量を基に、リチウムイオン濃度を算出することができる。
曲部の負極活物質層の目付Ax2、及び扁平部の負極活物質層の目付Ay2は、下記(1)式にて算出できる。
Ax2=(M0x−M1x)/XA、及び
Ay2=(M0y−M1y)/YA ・・・(1)
前記非水系リチウム蓄電素子を解体して得られた扁平捲回電極体について、負極活物質層の曲部及び扁平部と対向する正極を切り取り、アルゴンボックスから取り出す。得られた正極のうち、負極活物質層の曲部及び扁平部と対向する正極活物質層を残すように、負極活物質層の曲部及び扁平部と対向していない正極活物質層をスパチュラ、ブラシ、刷毛等を用いて取り除く。得られた正極について、扁平部及び曲部に対向する部分を切り取り、曲部に対向する部分を正極Cx0とし、扁平部に対向する部分を正極Cy0とし、正極Cx0の及び正極Cy0を有機溶媒で洗浄する。このとき、有機溶媒としては、正極表面に堆積した電解液分解物を除去できればよく、特に限定されないが、リチウム化合物の溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることでリチウム化合物の溶出が抑制される。そのような有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、アセトン、酢酸メチル等の極性溶媒が好適に用いられる。測定する正極Cx0の及び正極Cy0の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から2cm2以上200cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは5cm2以上150cm2以下である。正極面積が2cm2以上あれば測定の再現性が確保される。正極面積が200cm2以下であればサンプルの取扱い性に優れる。
Cx1=(M0xc−M1xc)/XC、及び
Cy1=(M0yc−M1yc)/YC ・・・(2)
また、正極Cx0の正極活物質層の目付をCx2(g/m2)とし、正極Cy0の正極活物質層の目付をCy2(g/m2)とするとき、Cx2及びCy2は下記(3)式にて算出できる。
Cx2=(M1xc−M2xc)/XC、及び
Cy2=(M1yc−M2yc)/YC ・・・(3)
<正極活物質の調製>
[調製例1a]
破砕されたヤシ殻炭化物を小型炭化炉内へ入れ、窒素雰囲気下、500℃で3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、予熱炉で加温した水蒸気を1kg/hで賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた賦活された活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りし、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭1の平均粒子径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭1の細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2360m2/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59であった。
フェノール樹脂を、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲気下、600℃で2時間炭化処理を行った後、ボールミルで粉砕し、分級して平均粒子径7μmの炭化物を得た。得られた炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲下、800℃で1時間加熱して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄し、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄した後に乾燥することにより、活性炭2を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭2の平均粒子径を測定した結果、7.0μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭2の細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が3627m2/g、メソ孔量(V1)が1.50cc/g、マイクロ孔量(V2)が2.28cc/g、V1/V2=0.66であった。
活性炭2を正極活物質として用いて、正極前駆体を製造した。
活性炭2を50.0質量部、炭酸リチウム1を38.5質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を7.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17m/sの条件で分散して塗工液を得た。
得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,650mPa・s、TI値は4.1であった。また、得られた塗工液の分散度をヨシミツ精機社製の粒ゲージを用いて測定した。その結果、粒度は32μmであった。
塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度120℃で乾燥して正極前駆体1を得た。得られた正極前駆体1を、ロールプレス機を用いて圧力6kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。プレスされた正極前駆体1の全厚を、小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、正極前駆体1の任意の10か所で測定した。測定された全厚の平均値からアルミニウム箔の厚さを引いて、正極前駆体1の正極活物質層の膜厚を求めた。その結果、正極活物質層の膜厚は、片面あたり59μmであった。
市販の人造黒鉛のBET比表面積及び細孔分布を、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、上述した方法によって測定した。その結果、BET比表面積は3.1m2/g、平均粒子径は4.8μmであった。
この人造黒鉛300gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)30gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置した。人造黒鉛と石炭系ピッチを窒素雰囲気下、1000℃まで12時間で昇温し、同温度で5時間保持することにより熱反応させ、複合多孔質炭素材料2aを得た。得られた複合多孔質炭素材料2aを自然冷却により60℃まで冷却し、電気炉から取り出した。
得られた複合多孔質炭素材料2aについて、上記と同様の方法でBET比表面積及び細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積は6.1m2/g、平均粒子径は4.9μmであった。また、複合多孔質炭素材料2aにおける、石炭系ピッチ由来の炭素質材料の活性炭に対する質量比率は2.0%であった。
複合多孔質炭素材料2aを負極活物質として用いて負極を製造した。
複合多孔質炭素材料2aを84質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を6質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、その混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17m/sの条件で分散して塗工液1Aを得た。
得られた塗工液1Aの粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,520mPa・s、TI値は3.8であった。
東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗工液1Aを塗工速度2m/sの条件で塗工し、乾燥温度120℃で乾燥して負極1を得た。ロールプレス機を用いて圧力5kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。プレスされた負極1の全厚を、小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極1の任意の10か所で測定した。その後、負極1の内の一方の面の負極活物質層を取り除き、再度厚みを測定した。その後、負極集電体上に残った負極活物質層を全て取り除き、銅箔の厚みを測定した。得られた測定結果より、負極1の負極活物質層の膜厚を求めた。その結果、負極活物質層の膜厚は、片面あたり59μmであった。
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、全電解液に対してLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度比が75:25(モル比)であり、かつLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を溶解して非水系電解液1を得た。非水系電解液1におけるLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度は、それぞれ、0.9mol/L及び0.3mol/Lであった。
正極前駆体1を12.0cm×210.0cmの大きさに切断し(正極活物質層の大きさが10.0cm×210.0cm、正極集電体上に正極活物質層が塗工されていない正極未塗工部が2.0cm×210.0cmである。)、負極1を12.1×220.0cmの大きさに切断し(負極活物質層の大きさが10.1cm×220.0cm、負極集電体上に負極活物質層が塗工されていない負極未塗工部が2.0cm×220.0cmである。)、切り出された正極前駆体1及び負極1をポリエチレン製のセパレータ(旭化成株式会社製、厚み10μm)を介して扁平状に捲回し、扁平捲回電極体を作製した。得られた扁平捲回電極体に正極端子及び負極端子を超音波溶接し、アルミラミネート包材で形成された容器に入れ、電極端子部を含む3辺をヒートシールによりシールした。得られた扁平捲回電極体の大きさは、X=82mm、Y=10mmであった。
その後、非水系電解液1を含浸させた扁平捲回電極体を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
封止後に得られた扁平捲回電極体を、温度25℃、露点−60℃、酸素濃度1ppmのアルゴンボックス内に入れた。アルミラミネート包材の余剰部を切断して開封し、アルミラミネート上の扁平捲回電極体の扁平部を6cm×10cmのフィルムヒーターを用いて40℃に加温した。その後、松定プレシジョン社製の電源(P4LT18−0.2)を用いて、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を72時間継続する手法により初期充電を行い、負極にリチウムドープを行った。リチウムドープ終了後、富士インパルス社製のヒートシール機(FA−300)を用いてアルミラミネートを封止した。
リチウムドープ後の扁平捲回電極体をアルゴンボックスから取り出し、25℃環境下、100mAで電圧3.8Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.8V定電流放電を1時間行うことにより、電圧を3.8Vに調整した。続いて、扁平捲回電極体を60℃の恒温槽に48時間保管した。
エージング後の扁平捲回電極体を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に扁平捲回電極体を入れ、ダイヤフラムポンプ(KNF社製、N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機に扁平捲回電極体を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止し、非水系リチウム蓄電素子を作製した。以上の工程により、非水系リチウム蓄電素子を2個作製した。
[静電容量Faの測定]
得られた非水系リチウム蓄電素子の内の1個について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス福島株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、2Cの電流値(1.6A)で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行った。その後、2.2Vまで2Cの電流値(1.6A)で定電流放電を施した際の容量をQ[C]とし、F=Q/(3.8−2.2)により算出した静電容量Faは、1752Fであった。
前記非水系リチウム蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス福島株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、20Cの電流値(16A)で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行った。その後サンプリング時間を0.1秒とし、20Cの電流値(16A)で2.2Vまで定電流放電を行い、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとし、降下電圧ΔE=3.8−Eo、及びR=ΔE/(電流値20C)により内部抵抗Raを算出したところ、0.58mΩであった。
前記非水系リチウム蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス福島株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、200Cの電流値(160A)で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて200Cの電流値で2.2Vに到達するまで定電流放電を行う充放電工程を休止なしの条件で60000回繰り返した。サイクル終了後に内部抵抗Rbを測定したところ0.63mΩであり、Rb/Ra=1.09であった。また、高負荷充放電サイクル後に内部短絡評価を実施したところ、3週間後の電圧変化ΔVはΔV=−85mVであった。
得られた残りの非水系リチウム蓄電素子を電圧2.9Vに調整し、露点温度−72℃のアルゴンボックス中で解体して扁平捲回電極体を取り出し、扁平捲回電極体の最外層の負極及び最外層の負極と対向する正極を取り出した。その後、上述の方法に従い、式(1)、及び式(2)よりAx1、Ay1、Ax2、Ay2、Cx1、Cy1、Tx、Tyを算出した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.6Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.6V定電圧充電を72時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.6Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.6V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例4と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.6Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.6V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例4と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.3Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.3V定電圧充電を72時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.3Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.3V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例7と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.3Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.3V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例7と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、アルミラミネート上の扁平捲回電極体の扁平部を6cm×10cmのフィルムヒーターを用いて50℃に加温したこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例10と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例10と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、アルミラミネート上の扁平捲回電極体の扁平部を6cm×10cmのフィルムヒーターを用いて60℃に加温したこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例13と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例13と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、アルミラミネート上の扁平捲回電極体の扁平部を加温せず、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を72時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、アルミラミネート上の扁平捲回電極体の扁平部を加温せず、電流値100mAで電圧4.6Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.6V定電圧充電を72時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.6Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.6V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例4と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.6Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.6V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例4と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、アルミラミネート上の扁平捲回電極体の扁平部を加温せず、電流値100mAで電圧4.3Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.3V定電圧充電を72時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.3Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.3V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例7と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.3Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.3V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例7と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、設定温度0℃の恒温槽内で、アルミラミネート上の扁平捲回電極体の扁平部を6cm×10cmのフィルムヒーターを用いて80℃に加温したこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例10と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例10と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、設定温度0℃の恒温槽内で、アルミラミネート上の扁平捲回電極体の扁平部を6cm×10cmのフィルムヒーターを用いて85℃に加温したこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例13と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例13と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<正極前駆体の製造>
活性炭1を50.5質量部、炭酸リチウムを40.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を5.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合したこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体2を作製した。
市販のヤシ殻活性炭のBET比表面積及び細孔分布を、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、上述した方法によって測定した。その結果、BET比表面積は1,790m2/g、メソ孔量(V1)は0.199cc/g、マイクロ孔量(V2)は0.698cc/g、V1/V2=0.29、そして平均細孔径は20.1Åであった。
複合多孔質炭素材料1bを負極活物質として用いて負極を製造した。
複合多孔質炭素材料1bを84質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を6質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、その混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,789mPa・s、TI値は4.3であった。塗工液を、東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗工速度2m/sの条件で塗工し、乾燥温度120℃で乾燥して負極2を得た。得られた負極2を、ロールプレス機を用いて、圧力5kN/cm及びプレス部の表面温度25℃の条件下でプレスした。プレスされた負極2の全厚を、小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極2の任意の10か所で測定した。測定された全厚の平均値から銅箔の厚さを引いて、負極2の負極活物質層の膜厚を求めた。その結果、負極活物質層の膜厚は、片面あたり40μmであった。
得られた負極2を1.4cm×2.0cm(2.8cm2)の大きさに1枚切り出し、銅箔の両面に塗工された負極活物質層の片方の層をスパチュラ、ブラシ、又は刷毛を用いて除去して作用極とした。対極及び参照極としてそれぞれ金属リチウムを用い、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の体積比1:1混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させた非水系溶液を用いて、アルゴンボックス中で電気化学セルを作製した。
得られた電気化学セルについて、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、以下の手順で初期充電容量を測定した。
電気化学セルに対して、温度25℃において、電流値0.5mA/cm2で電圧値が0.01Vになるまで定電流充電を行った後、更に電流値が0.01mA/cm2になるまで定電圧充電を行った。この定電流充電及び定電圧充電の時の充電容量を初回充電容量として評価したところ、1.6mAhであり、負極2の単位質量当たりの容量(リチウムイオンのドープ量)は1460mAh/gであった。
正極前駆体2、及び負極2を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製し、評価した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例16と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例16と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、アルミラミネート上の扁平捲回電極体の扁平部を加温せず、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を72時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は実施例16と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を36時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例16と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウムドープ工程の非水系リチウム蓄電素子の初期充電において、電流値100mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を12時間継続することにより、負極にリチウムドープを行ったこと以外は比較例16と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウム化合物として酸化リチウムを用いたこと以外は実施例16と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウム化合物として水酸化リチウムを用いたこと以外は実施例16と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウム化合物として酸化リチウムを用いたこと以外は比較例16と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
リチウム化合物として水酸化リチウムを用いたこと以外は比較例16と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
本発明の非水系リチウム蓄電素子は、例えば、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池として適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されるため好ましい。
2 扁平捲回電極体
3 扁平部
4 曲部
5 扁平捲回電極体の最外層の負極活物質層の扁平部
6 負極集電体
7 負極活物質層
8 正極活物質層
9 正極集電体
10 セパレータ
Claims (4)
- 活物質以外のリチウム化合物を含む少なくとも1つの正極と、少なくとも1つの負極と、少なくとも1つのセパレータとを含み、かつ前記正極と前記負極を前記セパレータを介して扁平型に捲回して成る扁平捲回電極体;及び
リチウムイオンを含む非水系電解液;
を含む非水系リチウム蓄電素子であって、
前記正極の正極集電体上に、前記活物質及び前記リチウム化合物から成る少なくとも1つの正極活物質層が塗布されており、
前記負極の負極集電体上に、前記リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質から成る少なくとも1つの負極活物質層が塗布されており、かつ
前記負極のうちで前記扁平捲回電極体の最外層に配置された負極において、前記正極活物質層と対向している負極活物質層の曲部におけるリチウムイオン濃度をAx1(質量%)とし、かつ該負極活物質層の扁平部におけるリチウムイオン濃度をAy1(質量%)とするとき、Ax1/Ay1が0.25以上0.95以下である、
前記非水系リチウム蓄電素子。 - 前記曲部における前記負極活物質層の厚みをTxとし、前記扁平部における前記負極活物質層の厚みをTyとするとき、Tx/Tyが0.86以上0.98以下である、請求項1に記載の非水系リチウム蓄電素子。
- 前記曲部における前記負極活物質の重量をAx2(g/m2)、前記扁平部における前記負極活物質の重量をAy2(g/m2)とするとき、Ax2/Ay2が0.85以上1.15以下である、請求項1又は2に記載の非水系リチウム蓄電素子。
- 前記リチウム化合物が、炭酸リチウム、酸化リチウム、又は水酸化リチウムであり、かつ
前記負極活物質層の前記曲部と対向する前記正極活物質層に含まれる前記リチウム化合物の量をCx1(g/m2)とし、前記負極活物質層の前記扁平部と対向する前記正極活物質層に含まれる前記リチウム化合物の量をCy1(g/m2)とするとき、Cx1及びCy1はそれぞれ0.1以上20以下であり、かつCy1/Cx1が0.25以上0.95以下である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系リチウム蓄電素子。
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