JP2020191384A - 正極前駆体および非水系リチウム蓄電素子 - Google Patents

正極前駆体および非水系リチウム蓄電素子 Download PDF

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祐介 山端
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裕之 新井
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Abstract

【課題】炭素材料とリチウム化合物を含む正極活物質層とアルミニウム箔との間にアンカー層を有する正極前駆体において、リール状に正極前駆体を巻いたときにしわ及びゲージバンドの発生を抑制できる正極前駆体を提供する。
【解決手段】長尺状の正極集電体と、正極集電体上に配置されたアンカー層と、アンカー層上に配置された正極活物質層とを有する正極前駆体であって、正極活物質層は、炭素材料およびリチウム化合物を含み、正極活物質層におけるリチウム化合物の含有量は10重量%以上50重量%以下であって、正極活物質層のTD方向の塗工幅W1の、アンカー層のTD方向の塗工幅W2に対するはみ出し量が−5%以上+5%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、正極前駆体および非水系リチウム蓄電素子に関する。
近年、地球環境の保全及び省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時に高い出力放電特性を発揮する蓄電システムが要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、出力特性が高いだけでなく、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)もまた高く、上記の高出力が要求される分野で最適のデバイスであると考えられてきた。しかしながら、そのエネルギー密度は1〜5Wh/L程度に過ぎないため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
他方、現在ハイブリッド電気自動車で一般に採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力特性をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(すなわち、蓄電素子の放電容量に対する放電量の割合(%))50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかしながら、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計である。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)は、電気二重層キャパシタに比べ劣るため、そのようなリチウムイオン電池は、実用的な耐久性を持たせるために、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲で使用される。実際に使用できるリチウムイオン電池の容量は更に小さくなるので、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
上記のように、高エネルギー密度、高出力特性、及び高耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。しかしながら、上述した既存の蓄電素子には、それぞれ一長一短があるため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(以下、「非水系リチウム蓄電素子」ともいう。)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着及び脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵及び放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
上記の蓄電素子に一般的に用いられる電極材料とその特徴をまとめると、一般的に、電極に活性炭等の材料を用い、活性炭表面のイオンの吸着及び脱離(非ファラデー反応)により充放電を行う場合は、高出力かつ高耐久性が得られるが、エネルギー密度が低くなる(例えば1倍とする。)。他方、電極に酸化物又は炭素材料を用い、ファラデー反応により充放電を行う場合は、エネルギー密度が高くなる(例えば、活性炭を用いた非ファラデー反応の10倍とする。)が、耐久性及び出力特性に課題がある。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高出力かつ高耐久性を有するが、エネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)を有するが、出力特性及び耐久性に課題がある。更に、ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10〜50%しか使用できない。
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭(エネルギー密度1倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、したがって、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオン二次電池の特徴を兼ね備えた非対称キャパシタである。リチウムイオンキャパシタは高出力かつ高耐久性でありながら、高エネルギー密度(正極1倍×負極10倍=10)を有し、リチウムイオン二次電池の様に放電深度を制限する必要がないことが特徴である。
上記リチウムイオンキャパシタの更なる高エネルギー密度化については、様々な検討が行われている(特許文献1)。
特許文献1には、正極前駆体に含まれるリチウム化合物の分解を促進し、負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高容量な非水系ハイブリッドキャパシタ用である正極前駆体が開示されている。
国際公開第2017/126687号
このように、電極の電気性能の向上についてはこれまでも検討されているが、その一方で、電極を大量に製造するための量産性の検討はほとんど行われていない。特に、電極を長尺状態で保管し、運送する為の検討は行われていない。
例えば、特許文献1には正極前駆体をリール状に巻く際のしわや、ゲージバンド(製品の厚み斑に起因して、リール幅方向の特定部分に発生した凸状の部分)については全く考慮されていない。
以上の現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、炭素材料とリチウム化合物を含む正極活物質層とアルミニウム箔との間にアンカー層を有する正極前駆体において、リール状に正極前駆体を巻いたときにしわ及びゲージバンドの発生を抑制できる正極前駆体、およびそれを用いた非水系リチウム蓄電素子を提供することである。本発明では、電極、特にリチウム化合物を粒子状で含有する正極電極前駆体を長尺でしわの発生無く保管・輸送可能な状態とするための条件を提供する。
上記課題は以下の技術的手段により解決される。すなわち、本発明は、以下のとおりのものである:
[1]
長尺状の正極集電体と、前記正極集電体上に配置されたアンカー層と、前記アンカー層上に配置された正極活物質層とを有する正極前駆体であって、
前記正極活物質層は、炭素材料およびリチウム化合物を含み、
前記正極活物質層における前記リチウム化合物の含有量は10重量%以上50重量%以下であって、
前記正極活物質層のTD方向の塗工幅W1の、前記アンカー層のTD方向の塗工幅W2に対するはみ出し量Sが−5%以上+5%以下であることを特徴とする正極前駆体。
[2]
前記アンカー層の片面の目付量が1g/m以上8g/m以下である、[1]に記載の正極前駆体。
[3]
前記正極集電体の厚みが12μm以上25μm以下である、[1]または[2]に記載の正極前駆体。
[4]
前記正極集電体上の、前記アンカー層または前記正極活物質層のいずれも塗工されなかった未塗工部の片側のTD方向の幅の、前記アンカー層または前記正極活物質層のいずれか広い方の塗工幅に対する比率が4%以上6%以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の正極前駆体。
[5]
前記正極前駆体の長さが1m以上500m以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の正極前駆体。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の正極前駆体を備えた非水系リチウム蓄電素子。
本発明によれば、炭素材料とリチウム化合物を含む正極活物質層とアルミニウム箔との間にアンカー層を有する正極前駆体において、リール状に正極前駆体を巻いたときにしわ及びゲージバンドの発生を抑制できる正極前駆体、およびそれを用いた非水系リチウム蓄電素子を提供することができる。
本発明に係る正極前駆体の一構成例を模式的に示す斜視図である。 本発明に係る正極前駆体の他の一構成例を模式的に示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の各数値範囲における上限値及び下限値は任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
一般に、非水系リチウム蓄電素子は、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素とする。電解液としては、アルカリ金属イオンを含む有機溶媒(以下、「非水系電解液」ともいう。)を用いる。
図1および図2は、本発明に係る正極前駆体の一構成例を模式的に示す斜視図である。図1は、正極活物質層の塗工幅W1がアンカー層の塗工幅W2よりも大きい場合(W1>W2)を示し、図2は、正極活物質層の塗工幅W1がアンカー層の塗工幅W2よりも小さい場合(W1<W2)を示している。
<正極前駆体>
本実施形態における正極前駆体1は、長尺状の正極集電体10と、その上に配置された、より詳細には、その片面又は両面上に設けられた、アンカー層20と、更にアンカー層20上に配された、正極活物質を含む正極活物質層30とを有する。本実施形態に係る正極活物質層30は、炭素材料及びリチウム化合物を含むことを特徴とする。前記正極活物質層30にはリチウム遷移金属酸化物が含まれていてもよい。リチウム化合物は、正極前駆体中にいかなる態様で含まれていてもよい。例えば、リチウム化合物は、アンカー層と正極活物質層との間に存在してよく、正極活物質層30の表面上に存在してよい。リチウム化合物は正極前駆体1の正極集電体10上に形成された正極活物質層30に含有されることが好ましい。正極活物質層中のリチウム化合物の含有量は10重量%以上50重量%以下である。
本明細書では、アルカリ金属ドープ工程前における正極を「正極前駆体」、アルカリ金属ドープ工程後における正極を「正極」と定義する。
本発明の正極前駆体1は、長尺状の正極集電体10上に配置されたアンカー層20のTD方向(Transverse Direction)の塗工幅(W2)と、アンカー層20上に配置された正極活物質層30のTD方向の塗工幅(W1)との間に特定の関係を有するものとした。この関係を満たすことによって、正極前駆体をリール状に巻く際のしわの発生を抑制し、ゲージバンドによる箔切れを抑制することが可能となる。
具体的に、本発明の正極前駆体1は、正極活物質層30のTD方向(Transverse Direction)の塗工幅W1の、アンカー層20のTD方向の塗工幅W2に対するはみ出し量Sが−5%以上+5%以下であることを特徴とする。
なお、本明細書において、TD方向は長尺状の正極集電体10の幅方向に相当し、MD方向(Machine Direction)は、正極集電体10の長手方向に相当する。
ここで、正極活物質層30のアンカー層20に対する「はみ出し量がマイナス(−)」とは、下地層となるアンカー層20の塗工幅W2より正極活物質層30の塗工幅W1が狭く(W1<W2)、積層体を上面側から見るとアンカー層20がTD方向で見える状態である(図2参照)。一方、「はみ出し量がプラス(+)」とは、下地層となるアンカー層20の塗工幅W2より正極活物質層30の塗工幅W1が広い状態であり(W1>W2)、アンカー層20が上面側からTD方向で見えない状態である(図1参照)。
なお、アンカー層20の塗工幅W2に対する正極活物質層30の塗工幅W1のはみだし量(S)は、塗工領域のTD方向片側においての値である。すなわち、塗工領域のTD方向の一方の側での、アンカー層20の塗工幅に対する正極活物質層30の塗工幅のはみだし量(S)になる。
なお、本明細書において、はみだし量Sおよび未塗工部の幅Tは、いずれも正極前駆体1のTD方向の一方の側についての値である。他方の側においては塗工部でスリットするため、正極活物質層30のはみだしは想定していない。両側においてはみだしや未塗工部がある場合には、両側それぞれについて、関係を満たす必要がある。
例えば、塗工領域のTD方向において両側共にはみだしや未塗工部が存在する場合は、両端共にいずれも正極活物質層30の塗工幅W1の、アンカー層20の塗工幅W1に対するはみ出し量S(%)が−5%以上+5%以下であるならば、本発明の範囲に入るものとする。
本明細書において、正極活物質層30の塗工幅をW1、アンカー層20の塗工幅をW2、アンカー層20からはみだした塗工部の幅をW3としたとき、塗工領域のTD方向片側においての、アンカー層20の塗工幅W2に対する正極活物質層30のはみ出した塗工幅W3のはみだし量S(%)は、「正極活物質層の塗工幅W1」に対する「正極活物質層のはみだし量W3」の割合として、以下の式で表される。
はみだし量S(%)=W3/W1 ×100
=(W1−W2)/W1 ×100
アンカー層20の塗工幅(W2)と、正極活物質層30のTD方向の塗工幅(W1)との関係を上記のようにすることで、正極前駆体1をリール状に巻く際のしわの発生を抑制し、ゲージバンドによる箔切れを抑制することが可能となる。はみだし量Sが−5%より小さかったり、+5%よりも大きかったりすると、アンカー層20と正極活物質層30の塗工幅の差が大きくなり、それに起因して厚み斑も大きくなり、リール状に正極前駆体を巻いたときにしわ及びゲージバンドが発生するおそれがある。
アンカー層20の塗工幅W2に対する正極活物質層30の塗工幅W1のはみだし量S(%)は、−3%以上+3%以下であることが好ましい。
なお、塗工はMD方向(Machine Direction)に向かって行われるが必ずしも塗工幅の精度が100%一致はしない。TD方向に部分的に塗工が蛇行してしまい正極活物質層30とアンカー層20との重なり部分が場所によって異なるケースも考えられからである。このような場合、本発明では、原反から切り出した短冊状のシートの両側各々の最低3か所の状態を測定した平均として示すこととする。
本発明では、正極集電体10上のアンカー層20あるいは正極活物質層30のいずれも塗工されなかった未塗工部のTD方向の幅Tと、アンカー層20、あるいは正極活物質層30のいずれか広い方の塗工幅(W1またはW2)との関係が、未塗工部の幅Tの割合で4%以上が好ましく、より好ましくは5%以上であり、上限は、8%以下が好ましく、より好ましくは6%以下である。
本発明では、正極活物質層30のTD方向の塗工幅W1は、40mm以上195mm以下が好ましく、80mm以上130mm以下がより好ましい。
[正極集電体]
本実施形態に係る正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔がより好ましい。
金属箔は凹凸又は貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
後述されるプロドープ処理の観点からは、無孔状のアルミニウム箔が更に好ましく、アルミニウム箔の表面が粗面化されていることが特に好ましい。
本実施形態に係る正極集電体のTD方向の幅は、50mm以上200mm以下が好ましく、85mm以上135mm以下がより好ましい。しかし、本発明は、上述したはみだし幅の関係を維持する限りにおいて、正極集電体の幅が1m程度の場合にも対応可能である。
また、本実施形態に係る正極集電体の厚みは、12μm以上25μm以下であることが好ましい。これにより、リール巻取時の装置内での蛇行による集電体の破断を防止することができ、更に巻取長を増やすことができるので効率的な生産が可能となる。
[アンカー層]
また前記正極集電体の表面に、アンカー層が設けられている。
本実施形態に係るアンカー層を構成する材料としては、例えば黒鉛、鱗片状黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維等の導電性材料を含むことが好ましい。アンカー層を設けることで正極集電体と正極活物質層間の電気伝導が向上し、低抵抗化できる。
本実施形態の正極前駆体において、アンカー層の片面の目付量が1g/m以上10g/m以下であることが好ましく、2g/m以上8g/m以下であることがより好ましい。これにより、リール巻取時の装置内での蛇行による集電体の破断を防止することができ、アンカー層と基材との密着性が向上するので、装置内でのハンドリング性が向上し、効率的な生産が可能となる。
[正極活物質層]
正極活物質層は、炭素材料を含む正極活物質を含有することが好ましく、これ以外に、必要に応じて、リチウム遷移金属酸化物、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤、pH調整剤等の任意成分を含んでいてもよい。
また、正極活物質層は、正極前駆体の正極活物質層中または正極活物質層表面に、リチウム化合物が含有されることが好ましい。
[正極活物質]
正極活物質は、炭素材料及を含むことが好ましい。この炭素材料としては、カーボンナノチューブ、導電性高分子、又は多孔性の炭素材料を使用することが好ましく、より好ましくは活性炭である。正極活物質には1種類以上の炭素材料を混合して使用してもよい。
リチウム遷移金属酸化物としては、リチウムイオン電池で使用される既知の材料を使用することができる。正極活物質には1種類以上のリチウム遷移金属酸化物を混合して使用してもよい。
活性炭を正極活物質として用いる場合、活性炭の種類及びその原料には特に制限はないが、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cc/g)とするとき、
(1)高い入出力特性のためには、0.3<V≦0.8、及び0.5≦V≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭1ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V≦2.5、及び0.8<V≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭2ともいう。)が好ましい。
本実施形態における活物質のBET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett,Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E.P.Barrett,L.G.Joyner and P.Halenda,J.Am.Chem.Soc.,73,373(1951))。
また、MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail, Brunauer,Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45(1968))。
また、平均細孔径とは、液体窒素温度下で、各相対圧力下における窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる、試料の質量あたりの全細孔容積を上記BET比表面積で除して求めたものを指す。
尚、上記のVが上限値でVが下限値である場合のほか、それぞれの上限値と下限値の組み合わせるは任意である。
以下、前記(1)活性炭1及び前記(2)活性炭2について、個別に順次説明する。
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量Vは、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。Vは、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。Vは、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましい。Vは、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。Vは、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
マイクロ孔量Vに対するメソ孔量Vの比(V/V)は、0.3≦V/V≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、V/Vが0.3以上であることが好ましい。一方で、高出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、V/Vは0.9以下であることが好ましい。より好ましいV/Vの範囲は0.4≦V/V≦0.7、更に好ましいV/Vの範囲は0.55≦V/V≦0.7である。
活性炭1の平均細孔径は、得られる蓄電素子の出力を最大にする点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また容量を最大にする点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m/g以上3,000m/g以下であることが好ましく、1,500m/g以上2,500m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
前記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料を前記活性炭1とするための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(好ましくは450〜600℃)程度において、30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記で説明された炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。これらのうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、得られた炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間)掛けて800〜1,000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
更に、上記で説明された炭化物の賦活処理に先立ち、予め炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が、好ましく採用できる。
上記で説明された炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において使用できる活性炭1を製造することができる。
活性炭1の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が2μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。なお、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が2μm以上であればそのような欠点が生じ難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。活性炭1の平均粒子径は、より好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。
(活性炭2)
活性炭2のメソ孔量Vは、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。Vは、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。Vは、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは、1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
活性炭2のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。Vは、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cc/g以下であることが好ましい。Vは、より好ましくは1.0cc/gより大きく2.5cc/g以下、更に好ましくは1.5cc/g以上2.5cc/g以下である。
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値は、2,300m/g以上4,000m/g以下であることが好ましく、3,000m/g以上4,000m/g以下であることがより好ましく、3,200m/g以上3,800m/g以下であることがさらに好ましい。BET比表面積が2,300m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、BET比表面積が4,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
前記のような特徴を有する活性炭2は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素質材料としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、或いは賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は400〜700℃程度で0.5〜10時間程度焼成する方法が一般的である。
炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活法があるが、高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ金属賦活法が好ましい。
この賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600〜900℃の範囲において、0.5〜5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は2μm以上20μm以下であることが好ましい。より好ましくは3μm以上10μm以下である。
(活性炭の使用)
活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって前記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
前記の活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料(例えば、上記で説明された特定のV及び/若しくはVを有さない活性炭、又は活性炭以外の材料(例えば、導電性高分子等))を含んでもよい。例示の態様において、正極活物質層中の活性炭1の含有量、活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量、つまり正極活物質層中の炭素材料の質量割合をAとするとき、また、正極前駆体中に導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等が含まれる場合には、炭素材料とこれらの材料の合計量をAとするとき、Aが15質量%以上65質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは20質量%以上50質量%以下である。Aが15質量%以上であれば、電気伝導度の高い炭素材料とアルカリ金属化合物の接触面積が増えるため、プレドープ工程においてリチウム化合物の酸化反応が促進し、短時間でプレドープをすることができる。Aが65質量%以下であれば、正極活物質層の嵩密度が高まり高容量化できる。
(リチウム化合物)
本発明におけるリチウム化合物としては、電解液中のフッ素イオンを吸着することが可能である、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウムから選択される1種以上が好適に用いられる。中でも、空気中での取り扱いが可能であり、吸湿性が低いという観点から炭酸リチウムが好適に用いられる。
リチウム化合物の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
正極中に含まれるリチウム化合物の量は1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。更に好ましくは、2質量%以上20質量%以下である。リチウム化合物の量が1質量%以上であれば、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着する十分な量の炭酸リチウムが存在するため高負荷充放電サイクル特性が向上する。リチウム化合物の量が50質量%以下であれば、非水系リチウム型蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
正極活物質層におけるリチウム化合物の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。この範囲の含有割合とすることにより、負極へのドーパント源として好適な機能を発揮するとともに、正極に適当な程度の多孔性を付与することができ、両者相俟って高負荷充放電効率に優れる蓄電素子を与えることができ、好ましい。
本実施形態では、正極活物質層の膜厚に対する、リチウム化合物の最大粒子径サイズは、4%以上50%以下が好ましく、5%以上40%以下がより好ましい。
[リチウム化合物及び正極活物質の平均粒子径]
リチウム化合物の平均粒子径をXとするとき、0.1μm≦X≦10μmであり、正極活物質の平均粒子径をYとするとき、2μm≦Y≦20μmであり、X<Yであることが好ましい。更に好ましくは、0.5μm≦X≦5μmであり、3μm≦Y≦10μmである。Xが0.1μm以上の場合、リチウムプレドープ後の正極中に炭酸リチウムを残存させることができるため、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着することにより高負荷充放電サイクル特性が向上する。Xが10μm以下の場合、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンの吸着を効率良く行うことができる。Yが2μm以上の場合、正極活物質間の電子伝導性を確保できる。Yが20μm以下の場合、電解質イオンとの反応面積が増加するために高い出力特性を発現できる。X<Yである場合、正極活物質間に生じる隙間に炭酸リチウムが充填されるため、正極活物質間の電子伝導性を確保しつつ、エネルギー密度を高めることができる。
及びYの測定方法は特に限定されないが、正極断面のSEM画像、及びSEM−EDX画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができる。正極に炭酸リチウムを含有させる場合、正極断面のラマンイメージングを測定することで炭酸イオンの分布を求めることもできる。
尚、上記のVの上限値と下限値、及びVの上限値と下限値については、それぞれ任意の組み合わせをすることができる。本明細書中、そのほかの構成要件同士の上限値と下限値の組み合わせについても同様である。
[リチウム化合物と正極活物質の判別方法]
リチウム化合物及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極断面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をリチウム化合物とする。
[X及びYの算出方法]
及びYは、前記正極断面SEMと同視野にて測定した正極断面SEM−EDXから得られた画像を、画像解析することで求めることができる。前記正極断面のSEM画像にて判別されたリチウム化合物の粒子X、及びそれ以外の粒子を正極活物質の粒子Yとし、断面SEM画像中に観察されるX、Yそれぞれの粒子全てについて、断面積Sを求め、下記式(1)にて算出される粒子径dを求める。(円周率をπとする。)
Figure 2020191384
得られた粒子径dを用いて、下記式(2)において体積平均粒子径X及びYを求める。
Figure 2020191384
正極断面の視野を変えて5ヶ所以上測定し、それぞれのX及びYの平均値をもって平均粒子径X及びYとする。
正極中に含有されたリチウム化合物は、約4.0V以上の高い電位に曝されると徐々に分解してガス化してしまい、発生したガスが電解液中のイオンの拡散を阻害するために抵抗上昇の原因になってしまう。そのため、リチウム化合物の表面にフッ素含有化合物からなる被膜を形成し、前記リチウム化合物の反応を抑制することが好ましい。
フッ素含有化合物の被膜の形成方法は特に限定されないが、高電位で分解するフッ素含有化合物を電解液中に含有させ、非水系リチウム型蓄電素子に前記フッ素含有化合物の分解電位以上の高電圧を印加する方法や、分解温度以上の温度をかける方法等が挙げられる。
リチウム化合物表面に被覆するフッ素化合物の被覆率(正極表面SEM−EDX画像における酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率A)は40%以上99%以下であることが好ましい。被覆率が40%以上であれば、リチウム化合物の分解を抑制することができる。被覆率が99%以下であれば正極近傍を塩基性に保つことができるため、高負荷サイクル特性に優れる。
被覆率の測定方法としては、正極表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対してフッ素マッピングの面積重複率を算出することで求められる。
SEM−EDXの元素マッピングの測定条件は特に限定されないが、画素数は128×128ピクセル〜512×512ピクセルの範囲であることが好ましく、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。
正極断面のSEM−EDXにより得られた元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率Aが10%以上60%以下であることが好ましい。Aが10%以上であれば、リチウム化合物の分解を抑制することができる。Aが60%以下であれば、リチウム化合物の内部までフッ素化されていない状態であるため、正極近傍を塩基性に保つことができ、高負荷サイクル特性に優れる。
(正極活物質層のその他の成分)
本発明における正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びリチウム化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
前記導電性フィラーとしては、正極活物質よりも導電性の高い導電性炭素質材料を挙げることができる。このような導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等が好ましい。
正極活物質層における導電性フィラーの混合量は、正極活物質100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、1〜15質量部の範囲が更に好ましい。導電性フィラーは高入力の観点からは混合する方が好ましい。しかし、混合量が20質量部よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有割合が少なくなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着材の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下である。より好ましくは3質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上25質量部以下である。結着材の量が1質量%以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で結着材の量が30質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。結着材の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは10質量部以下である。分散安定剤の量が10質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[正極前駆体の製造]
本発明において、非水系リチウム型蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることが出来る。さらに得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚や嵩密度を調整してもよい。或いは、溶剤を使用せずに、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
なお、本発明の正極前駆体では、正極活物質層用塗工液を正極集電体上に塗工するに先立って、正極集電体の表面に、導電性材料を含むアンカー層用塗工液を塗布、乾燥することによって、アンカー層を形成する。アンカー層を設けることで正極集電体と正極活物質層間の電気伝導が向上し、低抵抗化できる。
そして特に、本発明の正極前駆体の製造において、正極活物質層のTD方向の塗工幅W1を、アンカー層のTD方向の塗工幅W2に対するはみ出し量が−5%以上+5%以下となるように、アンカー層用塗工液および正極活物質層用塗工液の塗工幅を調整することによって、製造された正極前駆体をリール状に巻く際のしわの発生を抑制し、ゲージバンドによる箔切れを抑制することが可能となる。
このような本発明に係る長尺状の正極前駆体の長さは、1m以上500m以下であることが好ましい。これにより、上述したような本発明の効果がより好適に発揮される。
前記正極前駆体の塗工液の調整は、正極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水又は有機溶媒、及び/又はそれらに結着材や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加して調整してもよい。また、水又は有機溶媒に結着材や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、正極活物質を含む各種材料粉末を追加して調整してもよい。前記ドライブレンドする方法として、例えばボールミル等を使用して正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて導電性フィラーを予備混合して、導電性の低いリチウム化合物に導電材をコーティングさせる予備混合をしてもよい。これにより、後述のリチウムドープ工程において正極前駆体でリチウム化合物が分解し易くなる。前記塗工液の溶媒に水を使用する場合には、リチウム化合物を加えることで塗工液がアルカリ性になることもあるため、必要に応じてpH調整剤を添加してもよい。
前記正極前駆体の塗工液の調整は特に制限されるものではないが、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることが出来る。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。また、50m/s以下であれば、分散による熱やせん断力により各種材料が破壊されることなく、再凝集が生じることがないため好ましい。
前記塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm以下では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり好ましくない。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジ発生等なく安定に塗工ができる。
前記正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)は、1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましい。より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。また、20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
また、前記塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましい。より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
前記正極前駆体の塗膜の形成は特に制限されるものではないが、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることが出来る。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。多層塗工の場合には、塗膜各層内のリチウム化合物の含有量が異なるように塗工液組成を調整してもよい。また、塗工速度は0.1m/分以上100m/分以下であることが好ましい。より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工出来る。他方、100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
前記正極前駆体の塗膜の乾燥は特に制限されるものではないが、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることが出来る。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させても良いし、多段的に温度を変えて乾燥させても良い。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましい。より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることが出来る。他方、200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着材の偏在、正極集電体や正極活物質層の酸化を抑制できる。
前記正極前駆体のプレスは特に制限されるものではないが、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることが出来る。正極活物質層の膜厚、嵩密度及び電極強度は後述するプレス圧力、隙間、プレス部の表面温度により調整できる。プレス圧力は0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましい。より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓みやシワが生じることがなく、所望の正極活物質層膜厚や嵩密度に調整できる。また、プレスロール同士の隙間は所望の正極活物質層の膜厚や嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体膜厚に応じて任意の値を設定できる。さらに、プレス速度は正極前駆体に撓みやシワが生じない任意の速度に設定できる。また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要により加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着材の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着材の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。例えば、結着材にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、90℃以上200℃以下に加温することが好ましい。より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、結着材にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、40℃以上150℃以下に加温することが好ましい。より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
結着材の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
また、プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
また、本実施形態では、正極活物質層の片面目付は、20g/m以上70g/m以下が好ましく、より好ましくは30g/m以上60g/m以下がより好ましい。
前記正極活物質層の厚みは、正極集電体の片面当たり30μm以上300μm以下であることが好ましい。前記正極活物質層の厚さは、より好ましくは片面当たり100μm以上250μm以下であり、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。この厚さが30μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、この厚さが300μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、従ってエネルギー密度を高めることができる。なお、正極集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における正極活物質層の厚さとは、正極集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。
以上、本発明の長尺状の正極前駆体について説明した。
本発明の正極前駆体は、適当な規格に切り出され、セパレータ、負極と組み合わせて、捲回あるいは積層して電極を配置することで電極体とすることが可能であり、さらに、外装体に電解液とともに密閉することで非水系リチウム蓄電素子の前駆体とすることができる。さらに、ドープ・エージングといったコンディショニングを施すことにより非水系リチウム蓄電素子として利用することができる。
このような本発明の正極前駆体を用いて構成された非水系リチウム蓄電素子は、以下の用途:例えば、蓄電モジュール、電力回生アシストシステム、電力負荷平準化システム、無停電電源システム、非接触給電システム、エナジーハーベストシステム、さらに、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池又は燃料電池を直列又は並列に接続した蓄電システム、太陽光発電蓄電システム、電動パワーステアリングシステム、非常用電源システム、インホイールモーターシステム、アイドリングストップシステム、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電動バイク、急速充電システム、スマートグリッドシステムなどに用いることが可能である。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の特徴とするところを更に明確にする。しかしながら本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
<正極活物質の調製>
破砕されたヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、500℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で前記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を12時間通水洗浄した後に水切りした。その後、125℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
この活性炭1について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒子径を測定した結果、12.7μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2330m/g、メソ孔量(V)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V)が0.88cc/g、V/V=0.59であった。
<炭酸リチウムの粉砕>
平均粒子径53μmの炭酸リチウム200gを、アイメックス社製の粉砕機(液体窒素ビーズミルLNM)を用い、液体窒素で−196℃に冷却化した後、ドライアイスビーズを用い、周速10.0m/sにて20分間粉砕した。−196℃で熱変性を防止し、脆性破壊することにより得られた炭酸リチウム1について平均粒子径を測定したところ1.8μmであった。
<アンカー層の製造>
アセチレンブラックを90質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を10質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,789mPa・s、TI値は4.3であった。前記塗工液を東レエンジニアリング社製のグラビアコーターを用いて厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、TD方向における塗工幅を100mm、片面目付4g/m で塗工速度10m/sの条件で塗工し、乾燥温度120℃で乾燥してアンカー層を得た。
<正極前駆体の製造>
前記活性炭1を正極活物質として用い、前記炭酸リチウム1をリチウム化合物として正極前駆体を製造した。
活性炭2を27.5質量部、炭酸リチウム1を50.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,300mPa・s、TI値は3.2であった。また、得られた塗工液の分散度をヨシミツ精機社製の粒ゲージを用いて測定した。その結果、粒度は32μmであった。
前記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて片面目付4g/mの前記アンカー層1を有するのアルミニウム箔を用いて片面又は両面に塗工速度1m/sの条件で片面目付60g/mで塗工した。このときTD方向の片側においてアンカー層より塗工部が3mmはみ出した状態で塗工した。このときの正極活物質層のはみだし量は、+3%である。これを乾燥温度120℃で乾燥して正極前駆体1(片面)及び正極前駆体1(両面)を得た。
得られた正極前駆体1(片面)及び正極前駆体1(両面)についてロールプレス機を用いて圧力6kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。前記で得られた正極前駆体1(片面)及び正極前駆体1(両面)の正極活物質層の膜厚を小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、正極前駆体1の任意の10か所で測定した厚さの平均値から、アルミニウム箔の厚さを引いて求めた。その結果、正極活物質層の膜厚は片面あたりの厚さは100μmであった。
前記正極前駆体を塗工幅100mm、未塗工幅5mmの状態に東レエンジニアリング製のスリッターを用いて5m/分の速度でスリットを実施した。このときの張力設定は基材幅100mmに対して20Nの比率とした。この条件で500mを巻き取った。
[しわの確認]
スリットで巻き取った500mリールを分解し、塗工部または未塗工部にしわ痕が残っているものをしわとした。しわが発生したものを×とし、しわの発生が見られないものを〇として評価した。
[ゲージバンドの確認]
スリットで巻き取った500mリールを定盤に置き、ミツトヨ製シックネスゲージを用いて塗工部エッジ部と左右それぞれ10mm付近の高さの差が100μm以上あるものをゲージバンドがあるものとした。50μm未満の場合を◎、50um以上100um未満の場合を〇、100μm以上の場合を×として評価した。
[正極断面SEM及びEDX測定]
正極試料1から1cm×1cmの小片を切り出し、日本電子製のSM−09020CPを用い、アルゴンガスを使用し、加速電圧4kV、ビーム径500μmの条件にて正極試料1の面方向に垂直な断面を作製した。その後、上述の方法により正極断面SEM及びEDXを測定した。
前記測定した正極断面SEM及びEDXから得られた画像を、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて画像解析することでX及びYを算出した。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をリチウム化合物の粒子X、及びそれ以外の粒子を正極活物質の粒子Yとし、断面SEM画像中に観察されるX、Yそれぞれの粒子全てについて、断面積Sを求め、下記式(1)にて算出される粒子径dを求めた。(円周率をπとする。)
Figure 2020191384
得られた粒子径dを用いて、下記式(2)において体積平均粒子径X及びYを求めた。
Figure 2020191384
正極断面の視野を変えて合計5ヶ所測定し、それぞれのX及びYの平均値である平均粒子径Xは5.7μm、Yは10.2μmであった。このときX、Yの大きい値を平均粒子径とした。
<実施例2>
活性炭1を67.5質量部、炭酸リチウム1を10.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部の組成以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例3>
正極活物質層のTD方向におけるアンカー層からの塗工部はみ出し量を−5mm(−5%)としたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例4>
正極活物質層のTD方向におけるアンカー層からの塗工部はみ出し量を−1mm(−1%)としたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例5>
アンカー層からの塗工部はみ出し量を+3mm(+3%)としたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例6>
片面目付を30g/mとし、嵩密度が実施例と同じになるように両面膜厚を100μmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例7>
片面目付を20g/m、両面膜厚を60μmとし、炭酸リチウムの粉砕時間を4分間としたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例8>
片面目付を60g/m、両面膜厚を250μmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例9>
アンカー層の片面目付を1g/mとしたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例10>
アンカー層の片面目付を8g/mとしたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例11>
正極集電体であるアルミニウム箔の厚みを12μmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例12>
正極集電体であるアルミニウム箔の厚みを25μmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例13>
正極活物質層の塗工幅を80mmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<実施例14>
正極活物質層の塗工幅を130mmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<比較例1>
活性炭1を67.5質量部、炭酸リチウム1を10.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部の組成とし、アンカー層を有さないアルミニウム箔厚み12μmを使用した以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<比較例2>
活性炭1を67.5質量部、炭酸リチウム1を10.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部の組成とし、アンカー層を有さないアルミニウム箔厚み25μmを使用した以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<比較例3>
活性炭1を7.5質量部、炭酸リチウム1を70.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部の組成以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<比較例4>
正極活物質層のTD方向におけるアンカー層からの塗工部はみ出し量を+7mm(+7%)としたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
<比較例5>
正極活物質層のTD方向におけるアンカー層からの塗工部はみ出し量を−7mm(−7%)としたこと以外は実施例1と同様の方法で正極前駆体を作製した。
実施例1〜14と比較例1〜5の評価結果を表1に示す。
Figure 2020191384
表1より、炭酸リチウム含有量が増えるとしわが発生しやすくなるが、アンカー層があることでアンカー層の固さによりしわが抑制できるものと考えられる。
更に、正極活物質層について、TD方向でのアンカー層からの塗工部はみ出し量が増えるとゲージバンドが発生しやすくなるが、アンカー部からのはみ出し量と塗工幅の比率が−5%以上+3%以下では、それが抑えられ、アンカー部と塗工部の固さの差によるものと考えられる。
また、正極活物質層のはみだし幅については、アンカー層から正極活物質層がはみ出ており(はみ出し量:+)、かつ、+3%以下であると、しわの発生が抑制されかつゲージバンドによる箔切れも抑制できることが分かった。この理由は定かではないが、アンカー層全体を活物質層が覆い、かつ、アンカー層の塗工幅から少しだけ(〜3%)正極活物質層がはみ出すことでリール状に巻き取った場合にアンカー層、正極活物質層のエッジ部分の形状がうまく嵌合することでゲージバンドの発生を抑制できるのではないかと推定している。
本発明の正極前駆体を用いて構成される非水系リチウム蓄電素子は、例えば、自動車のハイブリット駆動システムの、瞬間電力ピークのアシスト用途等における蓄電素子として好適に利用できる。
本発明の正極前駆体を用いて構成される非水系リチウム蓄電素子は、例えば、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池として適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されるため好ましい。
1 :正極前駆体
10:正極集電体
20:アンカー層
30:正極活物質層
W1:正極活物質層の塗工幅
W2:アンカー層の塗工幅

Claims (6)

  1. 長尺状の正極集電体と、前記正極集電体上に配置されたアンカー層と、前記アンカー層上に配置された正極活物質層とを有する正極前駆体であって、
    前記正極活物質層は、炭素材料およびリチウム化合物を含み、
    前記正極活物質層における前記リチウム化合物の含有量は10重量%以上50重量%以下であって、
    前記正極活物質層のTD方向(Transverse Direction)の塗工幅W1の、前記アンカー層のTD方向の塗工幅W2に対するはみ出し量Sが−5%以上+5%以下であることを特徴とする正極前駆体。
  2. 前記アンカー層の片面の目付量が2g/m以上8g/m以下である、請求項1に記載の正極前駆体。
  3. 前記正極集電体の厚みが12μm以上25μm以下である、請求項1または2に記載の正極前駆体。
  4. 前記正極集電体上の、前記アンカー層または前記正極活物質層のいずれも塗工されなかった未塗工部の片側のTD方向の幅の、前記アンカー層または前記正極活物質層のいずれか広い方の塗工幅に対する比率が4%以上6%以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の正極前駆体。
  5. 前記正極前駆体の長さが1m以上500m以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の正極前駆体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の正極前駆体を備えた非水系リチウム蓄電素子。
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