JP2013030389A - 集電体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】集電体の表面へ導電性導電性樹脂層をグラビア法で転移塗布する際に、ドクタースジ又は塗装ムラといった塗装表面の不具合が発生することを抑制する。
【解決手段】このグラビア印刷装置Aは、電池又はキャパシタ用の集電体の製造方法に用いるための装置である。非金属製の材質のドクター刃3が、そのグラビア版胴1の表面のうちそのセル11a内以外(例えばセル11aおよびセル11aの間に設けられている凸部11b)に付着している導電性塗料12bを掻き落とす。そして、長尺状の金属箔Sをグラビア版胴1に供給して、そのグラビア版胴1のセル11a内に保持した非金属製の導電性粒子を含む導電性塗料12aをその金属箔S上に転移塗布する。その後、その導電性塗料12aが塗布されたその金属箔Sを乾燥装置(不図示)で乾燥して導電性導電性樹脂層(帯状塗工面B1)を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電池又はキャパシタ用に好適な集電体の製造方法に関する。
近年、電池又はキャパシタ用の電極製造の際に、金属箔と活物質層との間にアンダーコート剤を用いるケースが増えてきている。例えば、特許文献1には、非プロトン性極性溶媒中にヒドロキシアルキルキトサンと有機酸および/またはその誘導体とを含む溶液に、導電物質を添加して混練してなることを特徴とする電極板を製造するためのアンダーコート剤が記載されている。また、この文献の実施例では、アルミニウム箔を基体として、該基体上の片面にコンマロールコーターにてアンダーコート剤を塗工している。
一方、特許文献2には、活物質を含み、任意成分として結着剤、導電剤などを含む電極合剤をシート状の電極芯材に塗布するために、グラビアロールおよびドクターブレードを用いることが記載されている。また、この文献には、グラビアロールは、表面に金属酸化物層が設けられるとともに、ドクターブレードは、樹脂材料から構成されていることが記載されている。
特開2008−60060号公報 特開2009−218053号公報
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第一に、特許文献1では、スチール製のコンマ型のブレードを用いてコンマロールコーターを行った場合、コンマ型のブレードが摩耗、変形し、スジや塗装ムラといった塗装表面の不具合が発生することがあり得る。このスジや塗装ムラは電流密度分布にムラを生じさせ、電池性能の劣化に影響を及ぼすため集電体の製造方法に適用する場合に改善の余地を残している。
第二に、特許文献2の比較例1でも、ブレードが摩耗、変形し、スジや塗装ムラといった塗装表面の不具合の発生が生じ得、集電体の製造方法としてただちに提供できないものである。また、従来公知の特許文献1の実施例では、円筒型のコンマ型ドクターブレードを用いてコンマロールコーターで塗布を行っているため、塗布液の供給が塗布液溜の上からなされることとなる。その結果、特許文献1の実施例では、塗布液溜の塗布液に乱流や気泡が発生しやすく、そのため集電体に供給される塗布液の量が一定せず、集電体上のアンダーコート層の膜厚が不均一になりやすいという問題があった。さらに、特許文献1の実施例では、塗布液の供給を上方から行うことによって、塗布液で外気を巻き込み気泡が生じ易く、集電体上のアンダーコート層にピンホールが発生し易いという問題もあった。
さらに、特許文献2の比較例1では、グラビア版にはドクター刃よりも硬度が硬く耐摩耗性を付与した表面を設けた版が用いられ、ドクター刃には掻き取り性や耐摩耗性に優れたスチール刃を用いてグラビア塗工する方法が用いられている。しかし一般的に用いられるスチール刃の場合、グラビア版との摩擦係数が高くドクター刃が摩耗、変形し、ドクタースジや塗装ムラといった塗装表面の不具合に影響を及ぼすことが多々ある。このドクタースジや塗装ムラは電流密度分布にムラを生じさせ、電池性能の劣化に影響を及ぼすことが分かっている。また、特許文献2では、酸化クロム溶射したグラビア版胴とPET、ポリエチレン、ポリプロピレンのドクターブレードの組合せだけが好ましいとされているため、グラビア版胴およびドクターブレードの組合せの自由度の面で問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、金属箔の表面へ導電性塗料をグラビア法で塗布する際に、ドクタースジ又は塗装ムラといった塗装表面の不具合が発生することを抑制し、リチウムイオン電池やキャパシタ用途として好適な優れた集電体を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、集電体の製造方法であって、金属箔をグラビア版胴に供給して、そのグラビア版胴のセル内に保持した導電性塗料をその金属箔上に塗布する工程と、その導電性塗料が塗布されたその金属箔を乾燥して導電性層を形成する工程と、を含む製造方法が提供される。そして、この塗布する工程の前に、非金属製の材質のドクター刃を用いて、そのグラビア版胴の表面に付着している不要な導電性塗料を掻き落として調整する工程を含む。
この方法によれば、非金属製の材質のドクター刃を用いて、グラビア版胴の表面のうちセル内以外に付着している不要な導電性塗料を掻き落として調整するため、金属箔の表面へ導電性塗料をグラビア法で塗布する際に、ドクター刃が摩耗又は変形することを抑制することができる。その結果、この方法によれば、ドクタースジ又は塗装ムラといった塗装表面の不具合が発生することを抑制することができる
本発明によれば、集電体の表面へ導電性アンダーコート層をグラビア法で転移塗布する際に、ドクタースジ又は塗装ムラといった塗装表面の不具合が発生することを抑制することができる。従って、本発明の製造方法によれば、優れた集電体を製造できるので、リチウムイオン電池やキャパシタ用途に好適に対応させることができる。
本発明の実施形態における集電体製造装置Aの構成を示した模式図である。 本発明の実施形態におけるグラビア版胴の表面に設けられたセルの形状を模式的に示した平面図(図2(a))および断面図(図2(b))である。 本発明の実施例における硬質アルミニウム箔Sの帯状塗工面B1、B1の構成を模式的に示した平面図である。 本発明の比較例における硬質アルミニウム箔Sの帯状塗工面B1、B1の表面に生じるドクタースジおよび電流密度ムラを模式的に示した平面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、本明細書において、A〜Bとは、A以上B以下を意味するものとする。
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態における集電体製造装置Aの構成を示した模式図である。また、図2は、本発明の実施形態におけるグラビア版胴の表面に設けられたセルの形状を模式的に示した平面図(図2(a))および断面図(図2(b))である。また、図3は、本発明の実施例における硬質アルミニウム箔Sの帯状塗工面B1、B1の構成を模式的に示した平面図である。
この集電体製造装置Aは、グラビア印刷法で電池又はキャパシタ用の集電体の製造方法に用いるための装置である。この集電体製造装置Aを用いて電池又はキャパシタ用の集電体を製造する際には、まず、グラビア版胴1は回転しながら導電性塗料21が貯められている塗工液パン2内に浸漬されて、その際にグラビア版胴1の表面に導電性塗料21が付着する。そして、非金属製の材質のドクター刃3が、そのグラビア版胴1の表面のうちそのセル11a内以外(例えばセル11aおよびセル11aの間に設けられている凸部11b)に付着している導電性塗料12bを掻き落とす。そして、長尺状の金属箔Sをグラビア版胴1に供給して、そのグラビア版胴1のセル11a内に保持した非金属製の導電性粒子を含む導電性塗料12aをその金属箔S上に転移塗布する。この転移塗布の際には、グラビア版胴1に対向するように設けられたバックアップロール4によって金属箔Sがグラビア版胴1に押し付けられることによって、グラビア版胴1の表面のうちそのセル11a内に付着している導電性塗料が金属箔Sに転移塗布される。その後、その導電性塗料12aが塗布されたその金属箔Sを乾燥装置(不図示)で乾燥して導電性アンダーコート層(帯状塗工面B1)を形成する。
この方法によれば、非金属製の材質のドクター刃3を用いて、グラビア版胴1の表面のうちセル11a内以外に付着している不要な導電性塗料を掻き落として調整するため、金属箔の表面へ導電性塗料(帯状塗工面B1)をグラビア法で転移塗布する際に、ドクター刃3が摩耗又は変形することを抑制することができる。その結果、この方法によれば、ドクタースジ又は塗装ムラといった導電性樹脂層表面塗料の不具合が発生することを抑制することができる。
一方、図4は、本発明の比較例における硬質アルミニウム箔Sの帯状塗工面B1、B1の表面に生じるドクタースジおよび電流密度ムラを模式的に示した平面図である。すなわち、非金属製の材質のドクター刃3の代わりに、一般的なスチール製のドクター刃3を用いた場合には、ドクター刃3が摩耗又は変形しやすいために、ドクタースジ又は塗装ムラといった導電性樹脂層表面の不具合が発生しやすい。そして、この場合には、ドクタースジの近傍にカーボンの占有率の偏り(存在ムラ)が発生することになって、電池又はキャパシタ用の集電体として用いた場合に電流が偏り電流密度分布にムラが生じやすく、十分な電池特性が得られない。また、このようにして発生した電流密度分布は、一般的に用いられる貫通抵抗測定方法では測定が難しいため、電池又はキャパシタ用の集電体の出荷前の品質検査で見落とされると重大な事故につながる可能性がある。
本実施形態では、グラビア版との摩擦が少ない非金属製(例えば、汎用プラスチックまたはエンジニアリングプラスチックである熱可塑性樹脂)の材質のドクター刃3を用いることによって、ドクター刃3の摩耗、変形を防ぎ、また電流密度分布に生じたムラを抑え、電池性能を安定させることが可能となる。さらに、本実施形態では、塗布液の供給を上方から行うことはないため、塗布液で外気を巻き込み気泡が生じにくく、集電体上の導電性樹脂層にピンホールが発生しにくいという利点もある。また、本実施形態では、非金属製の材質のドクター刃3であれば任意のドクター刃3を用いることができるため、グラビア版胴1およびドクター刃3の組合せの自由度が広いという利点もある。
なお、上記の転移塗布する工程は、特に運転速度を限定するものではなく任意の速度で運転をすることができるが、例えば、長尺状の金属箔Sを50〜100m/minの速度でグラビア版胴1に供給することが好ましい。この範囲内の運転速度であれば、電池又はキャパシタ用の集電体の製造効率を高めつつも、非金属製の材質のドクター刃3が変形または摩耗しすぎることを抑制でき、その結果、電流密度分布に生じたムラを抑え、電池性能を安定させることが可能となるからである。なお、この運転速度は、50、60、70、80、90、100m/minのうち任意の2つの数値範囲内であってもよい。
ここで、転移塗布する工程の後に乾燥装置で乾燥する工程を行う場合、通常、焼付温度は金属箔Sの到達温度として100〜250℃、焼付時間は10〜60秒が好ましい。100℃未満では導電性塗料が十分に硬化せず、250℃を超えると活物質層との密着性が低下する場合がある。また、焼付時間10秒未満で焼付けると硬化する前に導電性塗料中の溶剤だけが沸騰して導電性樹脂層に欠陥ができる場合があり、60秒を超えると温度によっては金属箔Sが軟化して集電体しての十分な強度が得られなくなる場合があるからである。
導電性樹脂層の厚さは電極の用途に応じて適宜調整することができ、0.1〜5μm、特に0.3〜3μmが好ましい。0.1μm未満では完全には被覆できない部分が発生して、十分な電池特性が得られない場合がある。5μmを超えると電池にする際、その分、活物質層を薄くせざるを得ないことから十分な容量密度が得られない、電池・キャパシタ等の各種小型化に対応できない場合がある。また、角型電池に用いる場合、電極構造体をセパレータと組み合わせて巻回した際、曲率半径が非常に小さい最内巻き部において、導電性樹脂層に亀裂が入り、活物質層と剥離する部分が発生する場合がある。なお、樹脂層の厚さは、フィルム厚み測定機 計太郎G(セイコーem製)を用いて、樹脂層形成部と未形成部(アルミ箔のみの部分)の厚みの差から算出可能である。
一方、従来公知の一般的なグラビア印刷法では、スチール製のドクター刃を用いているために、上記の運転速度が100m/minを超えることが多い。この場合、グラビア印刷の印刷効率は高まる。しかしながら、運転速度が100m/minを超える場合に非金属製の材質のドクター刃3を用いた場合には、ドクター刃3が変形または摩耗しすぎることになり、さらには塗料のすり抜け、半かぶりなどの現象が発生しやすくなり、グラビア印刷の品質を犠牲にすることになる傾向がある。そのため、従来公知の一般的なグラビア印刷法では、非金属製の材質のドクター刃3ではなく、スチール製のドクター刃が用いられてきた。また、特許文献2では、上記の運転速度が3〜50m/minが好ましいと記載されている。
これに対して、本実施形態では、長尺状の金属箔Sを50〜100m/minの速度でグラビア版胴1に供給することが好ましい。なぜなら、ドクター刃3の材質が、特定の特性を有する樹脂組成物である場合には、長尺状の金属箔Sを50〜100m/minの速度でグラビア版胴1に供給してもドクター刃3が変形または摩耗しすぎることを抑制でき、さらには塗料のすり抜け、半かぶりなどの現象が発生することも抑制できることを後述の実施例で示すように確認しているからである。
<ドクター刃の形状>
本実施形態で用いるドクター刃3の形状は、特に限定なく任意の形状のものを用いることができる。もっとも、円筒型のコンマ型ドクターブレードを用いてコンマロールコーターで塗布を行うと塗布液溜の塗布液に乱流や気泡が発生しやすく、集電体上の導電性樹脂層の膜厚が不均一になりやすいという問題があるため好ましくない。すなわち、本実施形態で用いるドクター刃3の形状としては、例えば、平行刃、三角刃、スクエア刃、傾斜刃、ステップ刃などの任意の形状のものを好適に用いることができる。
また、本実施形態でドクター刃3をグラビア版胴1に圧接させる際の方式は、特に限定するものではなく任意の方式を用いることができる。例えば、本実施形態では、リバースアングルブレード方式、チャンバーシステム方式、トレイリングブレード方式などを好適に用いることができる。
なお、ドクター刃3の長さは、特に限定するものではなく任意の長さのものを用いることができる。もっとも、ドクター刃3の長さが10〜100mmであれば、ドクター刃3が変形または摩耗しすぎることを抑制でき、さらには塗料のすり抜け、半かぶりなどの現象が発生することも抑制できるので好ましい。なお、ドクター刃3の長さは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mmのうち任意の2つの数値範囲内であってもよい。
また、ドクター刃3の厚さは、特に限定するものではなく任意の厚さのものを用いることができる。もっとも、ドクター刃3の厚さが0.1〜5mmであれば、ドクター刃3が変形または摩耗しすぎることを抑制でき、さらには塗料のすり抜け、半かぶりなどの現象が発生することも抑制できるので好ましい。なお、ドクター刃3の厚さは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0mmのうち任意の2つの数値範囲内であってもよい。
また、ドクター刃3の幅は、グラビア版胴1の幅および集電体表面に形成する導電性樹脂層の幅に応じて適宜設定すればよい。
<ドクター刃の材質>
本実施形態で用いるドクター刃3の材質は、非金属製であれば特に限定なく任意の材質のものを用いることができる。例えば、ドクター刃3の材質は樹脂組成物であることが好ましい。このようにドクター刃3が樹脂組成物製である場合には、ドクター刃3の摩耗、変形を防ぎ、また電流密度分布に生じたムラを抑え、電池性能を安定させることが可能となる。特に、ドクター刃3の材質が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートといった汎用プラスチック、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートといったエンジニアリングプラスチックの1種以上を含む樹脂組成物であることが、ドクター刃3の摩耗、変形を防ぐ上では好ましい。
また、本実施形態で用いるドクター刃3の曲げ弾性率(ASTM D790)が5000〜50000kgf/cmであることが好ましい。なぜなら、ドクター刃3の曲げ弾性率がこの範囲内であれば、ドクター刃3の摩耗、変形を防ぎ、また電流密度分布に生じたムラを抑え、電池性能を安定させることが可能となるからである。なお、このドクター刃3の曲げ弾性率は、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、20000、25000、30000、35000、40000、45000、50000kgf/cmのうち任意の2つの数値範囲内であってもよい。
<導電性塗料の組成>
本実施形態で用いる導電性塗料は、非金属製の導電性粒子と、バインダ樹脂と、を含むことが好ましい。ここで、バインダ樹脂としては、特に限定するものではなく、一般的なバインダ樹脂を用いることができるが、特に、硝化綿系樹脂、アクリル系樹脂、キトサン誘導体などを用いることが好ましい。これらの樹脂であれば、金属箔Sとの密着性に優れているためである。
本実施形態で用いる導電性粒子は、非金属製の導電性粒子であれば特に限定するものではなく任意のものを用いることができる。例えば、炭素粉末が好ましい。炭素粉末としてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブなどが使用可能である。導電性粒子の添加量は、導電性塗料に含まれる樹脂成分100質量%に対して20〜80質量%が好ましい。20質量%未満では導電性塗料の体積固有抵抗が高くなり、80質量%を超えると金属箔Sとの密着性が低下するからである。導電性粒子を樹脂成分液に分散するにはプラネタリミキサ、ボールミル、ホモジナイザ等を用いることによって分散することが可能である。
このように、非金属製の導電性粒子を用いることによって、電池又はキャパシタ用の集電体に金属異物が混入して重大な事故につながることを抑制することができる。また、カーボンブラックなどの炭素粒子は、金属製の導電性粒子に比べると入手容易性、加工性、コストなどの面でも優れているため好ましい。
なお、本実施形態で用いる導電性塗料は、乾燥工程後に得られる金属箔S上の導電性樹脂層の目付量に換算して、0.1〜5.0g/m2であることが好ましい。導電性樹脂層の目付量がこの範囲内であれば、導電性樹脂層として十分な機能を発揮できることにくわえて、金属箔Sを50〜100m/minの速度でグラビア版胴1に供給しても、塗料のすり抜け、半かぶりなどの現象が発生することを抑制できるからである。なお、この導電性樹脂層の目付量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0g/m2のうち任意の2つの数値範囲内であってもよい。
<グラビア版胴の表面>
本実施形態で用いるグラビア版胴1は、ドクター刃3の硬度より硬い表面を有することが好ましい。なぜなら、グラビア版胴1の表面がドクター刃3の硬度より硬い場合には、高速で長時間にわたってグラビア印刷を行ってもグラビア版胴1の表面が摩耗、変形することを抑制することができるからである。このようなグラビア版胴1の表面としては、例えば、金属メッキ、ダイヤモンドライクカーボンコーティングおよびセラミックコーティングからなる群から選ばれる1種以上の皮膜を有するものが好ましい。これらの皮膜は、樹脂組成物を材質とするドクター刃3よりも硬度が高いため、高速で長時間にわたってグラビア印刷を行ってもグラビア版胴1の表面が摩耗、変形することを好適に抑制することができるからである。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記実施の形態では金属箔を硬質アルミニウム箔としたが、特に硬質アルミニウム箔に限定する趣旨ではない。例えば、硬質アルミニウム箔以外にも各種金属箔が使用可能である。金属箔としては電極構造体用、非水電解質電池用、電気二重層キャパシタ用、リチウムイオンキャパシタ用、及び蓄電部品用電極として用いられる公知の金属箔を使用することができ、特に制限されるものではなく、例えば、アルミニウム箔以外にも、アルミニウム合金箔、負極用として銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔、負極活物質がチタン酸リチウム等の高電位タイプの場合はアルミニウム箔やアルミニウム合金箔などが使用可能である。その中でも導電性の高さとコストのバランスからアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔が好ましい。箔の厚さとしては用途に応じて適宜調整できるが、7〜100μm、特に10〜50μmが好ましい。厚さが薄すぎると箔の強度が不足して活物質層の塗工が困難になる場合がある。一方、厚すぎるとその分活物質層あるいは電極材層等の他の構成を薄くせざるを得ず、十分な容量が得られなくなる場合がある。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
キトサン誘導体をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させてなる溶液(大日精化工業社製 商品名「ダイキトサンコート」)に導電性微粒子としてアセチレンブラック(電気化学工業社製)をキトサン誘導体とアセチレンブラックとが重量比にして2:1となるようにディスパーにて8時間分散した後、固形分が10%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えて希釈して導電性塗料を作製した。
正極芯材として厚さ15μm、幅640mm、材質1085材の硬質アルミニウム箔を用意した。
幅900mm、円周628.3mmのグラビア版胴1を用意した。このグラビア版胴1の回転幅方向(長さ方向)の中央部には幅250mmの塗工部が2条形成されていると共に、塗工部におけるグラビア版胴1の回転軸方向の両幅全面、即ち、印刷部以外の残余部分の全面には、非塗工部が形成されていた。なお、グラビア版胴1の表面皮膜にはクロムメッキ(Cr)が設けられていた。
グラビア版胴1の塗工部には、図2に示したような平面矩形状の開口部を有し且つ深さ20μmのセル11a、11a・・・が、間に凸部11b、11b・・・を挟みながらグラビア版胴1の周方向及び回転方向(長さ方向)のそれぞれに45度の傾きで10μm間隔毎に碁盤目状に全面的に形成されていた。なお、印刷部の線数は250線/インチであった。
次に幅920mm、長さ50mm、厚さ1.0mmのポリアセタール製(POM)ドクター刃3を用意した。なお、このドクター刃3の刃先厚さは0.1mmであった。このポリアセタール製(POM)ドクター刃3の曲げ弾性率(ASTM D790)は、26500kgf/cmであった。
そして、図1に示したグラビア印刷装置Aを用い、塗工液パン2内に上記導電性塗料21を供給して、グラビア版胴1の下端部を導電性塗料21に漬かった状態とした。グラビア版胴1を図1において反時計回りに回転させると共に上記ドクター刃3をグラビア版胴1に接触させ余分な導電性塗料を掻き落としセル11a、11a・・・内に上記導電性塗料を充填した。次にバックアップロール4を図1において時計回りに回転させ、グラビア版胴1とバックアップロール4との間に上記硬質アルミニウム箔Sを図1において右側から左側に向かって連続的に50m/分の一定の速度で供給して、グラビア版胴1のセル11a、11b・・・内に充填した導電性塗料21を硬質アルミニウム箔Sの一面に連続的に転移、塗工して、硬質アルミニウム箔Sの一面に一定幅の帯状塗工面B1、B1・・・を形成した。なお、長さ方向の塗工数量は20000mとした。
しかる後、硬質アルミニウム箔Sの帯状塗工面B1、B1・・・を乾燥させてN−メチル−2−ピロリドンを蒸発させることによって、硬質アルミニウム箔Sの一面に、一定幅を有する導電性樹脂層が硬質アルミニウム箔Sの幅方向に所定間隔を存して2条、形成されてなる長尺状の集電体を得た。なお、導電性樹脂層の目付量は乾燥状態で0.6g/m2にて形成されていた。
(実施例2)
グラビア版胴1の表面皮膜をクロムメッキの代わりにダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いたこと以外は実施例1と同様にして長尺状の集電体を得た。なお、導電性樹脂層は目付量0.6g/m2にて形成されていた。
(実施例3)
ドクター刃3をポリアセタール製の代わりに幅920mm、長さ50mm、厚さ1.0mm、刃先厚さ0.1mmのポリエステル製(PET)ドクター刃3を用いたこと以外は実施例1と同様にして長尺状の集電体を得た。このポリエステル製(PET)ドクター刃3の曲げ弾性率(ASTM D790)は、12000〜14000kgf/cmであった。なお、導電性導電性樹脂層は目付量0.6g/m2にて形成されていた。
(実施例4)
ドクター刃3をポリアセタール製の代わりに幅920mm、長さ50mm、厚さ1.0mm、刃先厚さ0.1mmのポリエチレン製(PE)ドクター刃3を用いたこと以外は実施例1と同様にして長尺状の集電体を得た。このポリエチレン製(PE)ドクター刃3の曲げ弾性率(ASTM D790)は、8000〜10000kgf/cmであった。なお、導電性樹脂層は目付量0.6g/m2にて形成されていた。
(比較例1)
ドクター刃3をポリアセタール製の代わりに幅920mm、長さ50mm、厚さ1.0mm、刃先厚さ0.07mmのスチール製ドクター刃3を用いたこと以外は実施例1と同様にして長尺状の集電体を得た。このスチール製ドクター刃3の曲げ弾性率(ASTM D790)は、2142000kgf/cmであった。なお、導電性樹脂層は目付量0.6g/m2にて形成されていた。
(比較例2)
グラビア版胴1の表面皮膜をクロムメッキの代わりにダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いたこと以外は比較例1と同様にして長尺状の集電体を得た。なお、導電性樹脂層は目付量0.6g/m2にて形成されていた。
(比較例3)
ドクター刃3をポリアセタール製の代わりに幅920mm、長さ50mm、厚さ1.0mm、刃先厚さ0.07mmのセラミックコート膜で被覆されたスチール製ドクター刃3を用いたこと以外は実施例1と同様にして長尺状の集電体を得た。このセラミックコート膜で被覆されたスチール製ドクター刃3の曲げ弾性率(ASTM D790)は、2142000kgf/cmであった。なお、導電性樹脂層は目付量0.6g/m2にて形成されていた。
(試験方法)
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた集電体の導電性樹脂層表面を目視により観察し次の4段階で評価した。◎は表面平滑でムラが無い膜状態であり、○は表面平滑だが若干のムラがある状態であり、△は部分的に薄い筋が出ている状態あり、×は全体的に筋が出ている状態である。また、新品を取り付けたスタート時と20000m塗工後のドクター刃先長さを測定し、各材質の比重g/cmよりドクター刃の摩耗量mgを求めた。なお、金属異物の導電性樹脂層への混入量μg/mは金属製のドクター刃に限りドクター刃の摩耗量から計算値で求めた。以上の結果を表1に示す。
(評価結果)
表1に示すように、ドクター刃3の摩耗量は実施例2のポリアセタールが1.3gで最小となった。また、実施例2においてはスタート時から表面平滑でムラが無い良好な塗工表面が得られており、20000m塗工しても塗工表面の変化は見られなかった。実施例1においてもスタート時から表面平滑でムラが無い良好な塗工表面が得られており、20000m塗工しても塗工表面の変化は見られなかった。実施例1においては実施例2よりドクター刃の摩耗量が若干多くなっている。これはグラビア版胴の表面皮膜であるダイヤモンドライクカーボンとドクター刃の摩擦係数が低いことに起因していると考察される。
実施例3においてはドクター刃の摩耗量が4.7gとなった。また、実施例3においてはスタート時から表面平滑でムラが無い良好な塗工表面が得られており、20000m塗工しても塗工表面の変化は見られなかった。
実施例4においてはドクター刃の摩耗量が5.0gとなった。また、実施例4においてはスタート時に多少の塗工ムラはあるものの表面平滑な塗工面が得られているが、塗工が進むにつれて塗工表面が部分的な薄い筋に変化した。
比較例1においてはドクター刃の摩耗量が36.1gで最大となり、金属異物の混入量が3.6μg/m2となった。また、比較例1においてはスタート時に塗工表面に部分的な薄い筋が認められたが、塗工が進むにつれて薄い筋が消えて若干の塗工ムラが存在する平滑な塗工表面に変化した。比較例2においてもスタート時に塗工表面に部分的な薄い筋が認められたが、塗工が進むにつれて薄い筋が消えて若干の塗工ムラが認められた。比較例2においても実施例2と同様に比較例1よりドクター刃の摩耗量が18.1gと少なくなっている。これもグラビア版胴の表面皮膜であるダイヤモンドライクカーボンとドクター刃の摩擦係数が低いことに起因していると考察される。
比較例3においてはドクター刃の摩耗量が20.6gとなった。これはセラミックコート膜が消失しスチール部も摩耗している量であり、金属異物の混入量が2.0μg/m2となった。また、比較例3においてはスタート時に塗工表面に全体的な筋が認められたが、塗工が進むにつれて全体的な筋が部分的な薄い筋に変化した。
実施例1〜4で使用したプラスチック製ドクター刃3は曲げ弾性率(ASTM D790)が5000〜50000kgf/cmであり、そのドクター刃3を用いた塗工表面はドクタースジや塗装ムラが非常に少なく良好であった。このとき、評価した電池性能も良好であった。一方、比較例1〜3で使用したスチールドクター刃3やセラミックコート膜で被覆されたスチール製ドクター刃3は曲げ弾性率(ASTM D790)が50000kgf/cm超であり、そのドクター刃を用いた塗工表面は芳しく、電池性能も良好ではなかった。このように曲げ弾性率(ASTM D790)が5000〜50000kgf/cmのドクター刃を用いることによって、電池性能が安定することが判明した。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
たとえば、上記実施例では、バインダ樹脂としてキトサン誘導体を用いたが、硝化綿系樹脂、アクリル系樹脂などを用いても良い。これらの樹脂であっても、金属箔Sとの密着性に優れているためである。
A グラビア印刷装置
B1 帯状塗工面
S 金属箔
1 グラビア版胴
2 塗工液パン
3 ドクター刃
4 バックアップロール
11a セル
11b 凸部
12a 導電性塗料
12b 導電性塗料

Claims (9)

  1. 集電体の製造方法であって、
    金属箔をグラビア版胴に供給して、前記グラビア版胴のセル内に保持した導電性塗料を前記金属箔上に塗布する工程と、
    前記導電性塗料が塗布された前記金属箔を乾燥して導電性樹脂層を形成する工程と、
    を含み、
    前記塗布する工程の前に
    非金属製の材質のドクター刃を用いて、前記グラビア版胴の表面に付着している導電性塗料を調整する工程を含む、
    製造方法。
  2. 前記ドクター刃の形状が非コンマ型である、
    請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ドクター刃の材質が樹脂組成物である、
    請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記ドクター刃の材質がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタールおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選ばれる1種以上の樹脂を含む樹脂組成物である、
    請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記ドクター刃の曲げ弾性率(ASTM D790)が5000〜50000kgf/cmである、
    請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記非金属性の導電性粒子が炭素粒子である、
    請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記転移塗布する工程が、
    前記金属箔を50〜100m/minの速度で前記グラビア版胴に供給する工程を含む、
    請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記グラビア版胴が前記ドクター刃の硬度より硬い表面を有する、
    請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記グラビア版胴の表面が金属メッキ、ダイヤモンドライクカーボンコーティングおよびセラミックコーティングからなる群から選ばれる1種以上の皮膜を有する、
    請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
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