JP2018026400A - 非水系リチウム型蓄電素子 - Google Patents

非水系リチウム型蓄電素子 Download PDF

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Keita Kusuzaka
啓太 楠坂
宣宏 岡田
Nobuhiro Okada
宣宏 岡田
酒向 謙太朗
Kentaro Sako
謙太朗 酒向
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Abstract

【課題】優れた入出力特性を有し、高温保存下での正極上での電解液分解によるガス発生、および内部抵抗の上昇を抑制する非水系リチウム型蓄電素子を提供する。【解決手段】非水系リチウム型蓄電素子の正極上に特定の積層状態で配置される正極活物質層が、下記式1〜3から選択される1種以上の化合物を正極物質層の単位質量当たり3.80×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する。【選択図】図1

Description

本発明は非水系リチウム型蓄電素子に関する。
近年、地球環境の保全及び省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)も高く、上記高出力が要求される分野で最適のデバイスと考えられてきた。しかし、そのエネルギー密度は1〜5Wh/L程度に過ぎない。そのため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
一方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、耐久性を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(蓄電素子の放電容量の何%を放電した状態かを示す値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかし、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)については、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性を持たせるためには、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲での使用となる。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、リチウムイオン電池の耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
そして、高エネルギー密度、高出力特性、及び耐久性を兼ね備えた蓄電素子として注目され、開発が盛んに行われているのが、リチウムイオンキャパシタである。リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系リチウム型蓄電素子)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。リチウムイオンキャパシタは、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応による充放電を行うことによって、優れた入出力特性と高いエネルギー密度との両立を狙う蓄電素子である。
さらに、例えば、特許文献1及び2では、リチウムイオン電池と電気二重層キャパシタとの構造を内蔵した蓄電素子として、電気二重層キャパシタとリチウムイオン電池とを並列に接続したもの、リチウムイオン電池の正極活物質(コバルト酸リチウム)と電気二重層キャパシタの正極活物質(活性炭)を混合したもの、又はリチウムイオン電池正極と電気二重層キャパシタ正極とを組み合わせたものが示されているが、これらの蓄電素子の主目的は、あくまで高負荷特性の向上であり、高温保存耐久性には改善の余地があった。
一方、上述のように、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタ等の非水系リチウム型蓄電素子の用途としては自動車等が挙げられるが、例えばハイブリッド電気自動車においては、内燃機関の運転などにより、蓄電システム周りが高温の環境に置かれてしまうため、高温下における電極又は電解液の劣化による性能低下の抑制が大きな課題となる。リチウムイオン電池の劣化抑制については、古くから研究が為されており、一般的には還元分解により負極上に良質な固体電解質を形成することができる添加剤を、電解質に加える方法が取られている。
例えば、特許文献3及び4には、電解液にビニレンカーボネートに代表される添加剤を加えることで、高温環境下で生じる電解液の分解を防ぐ試みが為されている。また、特許文献5には、電解液に3−プロパンスルトンを添加し、負極表面で反応させることで良質な固体電解質を形成し、高温保存時のガス発生を抑制し、サイクル特性を向上させることを達成している。
しかし、特許文献3〜5に記載の技術では高温保存時の特性劣化又はガスの発生を抑制することができているが、負極活物質に厚い固体電解質の層を形成してしまうため、抵抗が増大してしまう問題点があった。
特開2001−351688号公報 特開2009−141181号公報 特開2001−283906号公報 特開2000−306602号公報 特開2002−83632号公報
本発明は、以上の現状に鑑みて為されたものである。
従って、本発明が解決しようとする課題は、高入出力特性および耐久性に優れた非水系リチウム型蓄電素子を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた。その結果、正極にリチウムイオンを含む良質な被膜を形成することで、蓄電素子が良好な高入出力特性を備え、かつ高温保存による特性の劣化を抑制できることを見出した。
本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである:
[1]
正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を2つ以上有する電極体と、
リチウムイオンを含む非水系電解液と、
が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層又は第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層のどちらか一方の単一層とを有し、該正極集電体の両面に該第1又は第2正極活物質層を有する場合には該正極集電体の一方の面に該第1正極活物質層があり、他方の面に該第2正極活物質層があり、かつ
該正極の該第1又は第2正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を、該第1又は第2正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
該非水系リチウム型蓄電素子。
[2]
正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を2つ以上有する電極体と、
リチウムイオンを含む非水系電解液と、
が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層又は第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層のどちらか一方の単一層とを有し、該正極集電体の両面に該第1又は第2正極活物質層を有する場合には該正極集電体の両面に同一の正極活物質層があり、かつ
該正極の該第1又は第2正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を、該第1又は第2正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
該非水系リチウム型蓄電素子。
[3]
正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有する電極体と、
リチウムイオンを含む非水系電解液と
が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に、第1正極活物質としての炭素材料及び第2正極活物質としてのリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む正極活物質層を有し、かつ
該正極の該正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を、該正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
該非水系リチウム型蓄電素子。
[4]
正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有する電極体と、
リチウムイオンを含む非水系電解液と、
が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有し、該正極活物質層は、該正極集電体の片側同一面内に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層と、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層とが多層形成された構造であり、かつ
該正極の該第1又は第2正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を、該第1又は第2正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
該非水系リチウム型蓄電素子。
[5]
正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有する電極体と、
リチウムイオンを含む非水系電解液と、
が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有し、該正極活物質層は、該正極集電体の片側同一面内に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層を有する領域と、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層を有する領域とが混在する構造であり、かつ
該正極の該第1又は第2正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を、該第1又は第2正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
該非水系リチウム型蓄電素子。
[6]
前記正極の前記正極活物質層の少なくとも1つの、水銀圧入法による細孔分布を測定したとき、細孔径とLog微分細孔容積との関係を示す細孔分布曲線において、Log微分細孔容積0.1mL/g以上5.0mL/g以下のピーク値を有するピークが、細孔径0.3μm以上50μm以下の範囲で1つ以上存在する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[7]
前記正極に、前記リチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物とは異なるリチウム化合物が含まれる、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[8]
前記リチウム化合物が、炭酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムから選択される1種類以上である、[7]に記載の非水系チウム型蓄電素子。
[9]
前記リチウム化合物が炭酸リチウムである、[7]又は[8]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[10]
前記リチウム化合物の平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である、[7]〜[9]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[11]
前記第1正極活物質としての前記炭素材料が活性炭である、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[12]
前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、
BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下を示す、[11]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[13]
前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V1(cc/g)が0.8<V1≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V2(cc/g)が0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、
BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下を示す、[11]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[14]
前記負極活物質のリチウムイオンのドープ量が、単位質量当たり530mAh/g以上2,500mAh/g以下である、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[15]
前記負極活物質のBET比表面積が100m/g以上1,500m/g以下である、[1]〜[14]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[16]
前記負極活物質のリチウムイオンのドープ量が、単位質量当たり50mAh/g以上700mAh/g以下である、[1]〜[13]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[17]
前記負極活物質のBET比表面積が1m/g以上50m/g以下である、[1]〜[13]及び[16]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[18]
前記負極活物質の平均粒子径が1μm以上10μm以下である、[1]〜[13]、[16]及び[17]のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
本発明によれば、高入出力特性および耐久性に優れた非水系リチウム型蓄電素子を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子の平面方向の断面模式図である。 図2は、本発明の態様(b)に係る非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面模式図である。 図3は、本発明の態様(c)に係る非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面模式図である。 図4は、本発明の態様(d)に係る非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面模式図である。 図5は、本発明の態様(e)に係る非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面模式図である。 図6は、本発明の態様(f)に係る非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面模式図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
リチウム型蓄電素子は、一般に、正極、負極、セパレータ、電解液、及び外装体を主な構成要素とする。電解液としては、リチウム塩を溶解させた有機溶媒(以下、非水系電解液という。)を用いる。各構成要素について以下に説明する。
<正極>
本実施形態の正極は、正極集電体と、その片面又は両面に存在する正極活物質層とを有する。本実施形態において、非水系リチウム型蓄電素子内には2種以上の正極活物質が含有され、第1正極活物質として炭素材料、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物が存在し、1つの正極活物質層には第1正極活物質と第2正極活物質の少なくとも一方を含有する。第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層と、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる金属化合物を含む第2正極活物質層とが存在し、正極集電体の片面又は両面にはどちらか一方の単一層を有し、正極集電体の両面に正極活物質層を有する場合には一方の面が第1正極活物質層であり、他方の面が第2正極活物質層であってもよいし、両面が同一の正極活物質層であってもよい。また、正極集電体の片面又は両面において、片側同一面内に第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層と、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層が多層形成された構造であってもよいし、片側同一面内に第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層を有する領域と、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層を有する領域が混在する構造であってもよい。さらには、第1正極活物質層と第2正極活物質層とが各々存在せず、同一正極活物質層内で、第1正極活物質としての炭素材料及び第2正極活物質としてのリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含有する構造であってもよい。
また、本実施形態における前記正極は、蓄電素子組み立て前の正極前駆体として、リチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物及び後述される式(1)及び(2)で表される化合物以外のリチウム化合物を含むことが好ましい。
後述のように、本実施形態では蓄電素子組み立て工程内で、負極にリチウムイオンをプレドープすることが好ましいが、そのプレドープ方法としては、前記リチウム化合物を含む正極前駆体、負極、セパレータ、外装体、及び非水系電解液を用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。前記リチウム化合物は前記正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層に含有されることが好ましい。
ここで、リチウムドープ工程前における正極状態のことを「正極前駆体」、リチウムドープ工程後における正極状態のことを「正極」と定義する。また、第1正極活物質のみを含有する正極活物質層を「第1正極活物質層」、第2正極活物質のみを含有する正極活物質層を「第2正極活物質層」と定義し、単に「正極活物質層」とは、第1正極活物質層、第2正極活物質層、及び第1正極活物質と第2正極活物質を同一層内に含む活物質層等も包含した総称を指す。
[正極活物質層]
上述のように、本実施形態における正極活物質層には、炭素材料を含む第1正極活物質と、リチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質の少なくとも一方を含有する。正極活物質層は、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
また、正極前駆体の正極活物質層には、リチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物及び後述される式(1)及び(2)で表される化合物以外のリチウム化合物が含有されることが好ましい。
−第1正極活物質−
前記第1正極活物質としては、炭素材料を含む。この炭素材料としては、カーボンナノチューブ、導電性高分子、又は多孔性の炭素材料を使用することが好ましく、より好ましくは活性炭である。第1正極活物質には1種類以上の材料を混合して使用してもよく、炭素材料以外の材料(例えばリチウムと遷移金属との複合酸化物等)を含んでもよい。
好ましくは該第1正極活物質の総量に対する該炭素材料の含有率が50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。該炭素材料の含有率が100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。
活性炭を第1正極活物質として用いる場合、活性炭の種類及びその原料には特に制限はない。しかし、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、
(1)高い入出力特性のためには、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭1ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である活性炭(以下、活性炭2ともいう。)が好ましい。
以下、上記(1)活性炭1及び上記(2)活性炭2について、個別に順次説明していく。
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量V1は、蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。一方で、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。上記V1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましい。一方で、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。上記V2は、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
マイクロ孔量V2に対するメソ孔量V1の比(V1/V2)は、0.3≦V1/V2≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2が0.3以上であることが好ましくい。一方で、高出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2は0.9以下であることが好ましい。より好ましいV1/V2の範囲は0.4≦V1/V2≦0.7、更に好ましいV1/V2の範囲は0.55≦V1/V2≦0.7である。
活性炭1の平均細孔径は、得られる蓄電素子の出力を最大にする点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また容量を最大にする点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m/g以上3,000m/g以下であることが好ましく、1,500m/g以上2,500m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
上記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料を上記活性炭1とするための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(好ましくは450〜600℃)程度において、30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。このうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、上記炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間)かけて800〜1,000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
更に、上記炭化物の賦活処理に先立ち、予め上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が、好ましく採用できる。
上記炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において使用できる、上記の特徴を有する活性炭1を製造することができる。
活性炭1の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。
上記平均粒子径が2μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。ここで、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が2μm以上であればそのような欠点が生じ難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。上記平均粒子径は、より好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。
(活性炭2)
活性炭2のメソ孔量V1は、蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい一方、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。上記V1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは、1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
他方、活性炭2のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい一方、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cc/g以下であることが好ましい。上記V2は、より好ましくは1.0cc/gより大きく2.5cc/g以下、更に好ましくは1.5cc/g以上2.5cc/g以下である。
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値としては、2,300m/g以上4,000m/g以下であることが好ましい。BET比表面積の下限としては、3,000m/g以上であることがより好ましく、3,200m/g以上であることが更に好ましい。一方、BET比表面積の上限としては、3,800m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が2,300m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が4,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
上記のような特徴を有する活性炭2は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素源としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、或いは賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は400〜700℃(下限について、好ましくは450℃以上、更に好ましくは500℃以上。上限について、好ましくは650℃以下)程度で0.5〜10時間程度焼成することが好ましい。
上記炭化処理後の炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活法があるが、高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ金属賦活法が好ましい。
この賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600〜900℃(好ましくは650℃〜850℃)の範囲において、0.5〜5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
炭化物とアルカリ金属化合物の質量比(=炭化物:アルカリ金属化合物)は1:1以上が好ましいことを先記したが、アルカリ金属化合物の量が増えるほど、メソ孔量が増えるが、質量比1:3.5付近を境に急激に孔量が増える傾向があるので、質量比は1:3よりアルカリ金属化合物が増えることが好ましく、1:5.5以下であることが好ましい。質量比はアルカリ金属化合物が増えるほど孔量が大きくなるが、その後の洗浄等の処理効率を考慮すると上記範囲であることが好ましい。
なお、マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は2μm以上20μm以下であることが好ましい。より好ましくは3μm以上10μm以下である。
(活性炭の使用態様)
第1正極活物質に活性炭を使用する場合、活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって上記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
上記の活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
第1正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料(例えば、前記特定のV1及び/若しくはV2を有さない活性炭、又は活性炭以外の材料(例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物等))を含んでもよい。例示の態様において、活性炭1の含有量、又は活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量が、それぞれ、全第1正極活物質の50質量%より多いことが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
−第2正極活物質−
前記第2正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む。第2正極活物質として用いられる遷移金属酸化物には、特に制限はない。遷移金属酸化物としては、例えば、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、バナジウム、及びクロムから成る群より選ばれる少なくとも1種の元素含む酸化物が挙げられる。遷移金属酸化物として具体的には、例えば、LiCoO(式中、xは0≦x≦1を満たす)、LiNiO(式中、xは0≦x≦1を満たす)、LiNi(1−y)(式中、MはCo、Mn、Al、Fe、Mg、及びTiから成る群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、xは0≦x≦1を満たし、かつyは0.2<y<0.97を満たす。)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(式中、xは0≦x≦1を満たす)、LiMnO(式中、xは0≦x≦1を満たす)、α−LiFeO(式中、xは0≦x≦1を満たす)、LiVO(式中、xは0≦x≦1を満たす)、LiCrO(式中、xは0≦x≦1を満たす)、LiFePO(式中、xは0≦x≦1を満たす)等が挙げられる。
本実施形態では、遷移金属酸化物とは異なるリチウム化合物が正極前駆体に含まれている場合には、後述のリチウムドープ工程にてリチウム化合物がリチウムのドーパント源となり負極にリチウムドープができるため、遷移金属化合物にあらかじめリチウムが含まれていなくても(すなわち上記式においてx=0であっても)、非水系リチウム型蓄電素子として電気化学的な充放電をすることができる。
第1正極活物質層は基本的にはリチウムイオンキャパシタとして動作するため、2.0〜4.0Vの電圧で安定的に使用可能である。従って、本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子の使用電圧も2.0〜4.0Vが適切である。そのため、本実施形態における第2正極活物質としては、2.0〜4.0Vの間で安定的に動くものが好ましく、例えば3.5V程度にプラトー電圧を有するLiFePO(式中、xは0≦x≦1を満たす)等がより好ましい。
本実施形態における第2正極活物質としては、遷移金属酸化物のみを用いてもよいし、遷移金属酸化物とともにその他の活物質(例えば、活性炭等)を含んでもよい。その他の活物質を含む場合には、全第2正極活物質の15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。含有割合が15質量%以下の場合、非水系リチウム型蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
第2正極活物質の平均粒子径は、1〜20μmであることが好ましい。
上記平均粒子径が1μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。ここで、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が1μm以上であればそのような欠点が生じ難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。上記平均粒子径の上限については、より好ましくは15μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。
正極活物質層における第1正極活物質又は第2正極活物質、もしくは第1正極活物質及び第2正極活物質の合計の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、35質量%以上95質量%以下であることが好ましい。正極活物質の含有割合の上限としては、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。一方、正極活物質の含有割合の下限としては、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。この範囲の含有割合とすることにより、好適な充放電特性を発揮する。
−リチウム化合物−
正極前駆体の正極活物質層には、リチウム化合物が含有されることが好ましい。
前記リチウム化合物としては、後述のリチウムドープ工程において正極で分解し、リチウムイオンを放出することが可能である、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、シュウ化リチウム、ヨウ化リチウム、窒化リチウム、シュウ酸リチウム、及び酢酸リチウムから選択される1種以上が好適に用いられる。中でも、炭酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムがより好適であり、空気中での取り扱いが可能であり、吸湿性が低いという観点から炭酸リチウムがさらに好適に用いられる。このようなリチウム化合物は、電圧の印加によって分解し、負極へのリチウムドープのドーパント源として機能するとともに、正極活物質層において空孔を形成するから、電解液の保持性に優れ、イオン伝導性に優れる正極を形成することができる。
リチウム化合物は、粒子状であることが好ましい。正極前駆体に含有されるリチウム化合物の平均粒子径は0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。正極前駆体に含有されるリチウム化合物の平均粒子径の上限としては50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。他方、正極前駆体に含有されるリチウム化合物の平均粒子径の下限としては0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましい。リチウム化合物の平均粒子径が0.1μm以上であれば、正極におけるリチウム化合物の酸化反応後に残る空孔が電解液を保持するのに十分な容積を有することとなるため、高負荷充放電特性が向上する。リチウム化合物の平均粒子径が100μm以下であれば、リチウム化合物の表面積が過度に小さくはならないから、該リチウム化合物の酸化反応の速度を確保することができる。
リチウム化合物の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
正極前駆体の正極活物質層におけるリチウム化合物の含有割合は、第1正極活物質層においては、正極前駆体における正極活物質層に含有される第1正極活物質全質量を基準として、5質量%以上200質量%以下であることが好ましく、10質量%以上150質量%以下であることがより好ましい。一方、第2正極活物質層においては、正極前駆体における正極活物質層に含有される第2正極活物質全質量を基準として、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。第1正極活物質及び第2正極活物質を両方含有する正極活物質層におけるリチウム化合物の含有割合については、活物質の重量比に応じて、上記の含有割合の中間の値が好ましい。これらの範囲の含有割合とすることにより、負極へのドーパント源として好適な機能を発揮するとともに、正極に適当な程度の多孔性を付与することができ、両者相俟って高負荷充放電効率に優れる蓄電素子を与えることができ、好ましい。
−正極活物質層の任意成分−
本実施形態における正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びリチウム化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーとしては、特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等を用いることができる。導電性フィラーの使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下である。より好ましくは0質量部以上25質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上20質量部以下である。混合量が30質量部よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有割合が少なくなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下である。より好ましくは3質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上25質量部以下である。結着剤の量が1質量部以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で結着剤の量が30質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。分散安定剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下である。分散安定剤の量が10質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[正極集電体]
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施の形態の非水系リチウム型蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。
該金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
[正極集電体上の第1正極活物質層と第2正極活物質層の配置]
図1は、本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子の平面方向の断面模式図である。外装体3に収容された電極体4に正極端子1及び負極端子2が接続されており、かつ正極端子1及び負極端子2は、外装体3から突出している。
本実施形態に係る電極体において、正極は、正極集電体8上の正極活物質層の配置について下記a〜fの態様を採用してよい。
(態様a)
正極活物質層が、後述される式(1)〜(3)から選択される1種以上の化合物を含有するのであれば、正極活物質層は、正極集電体上に任意に配置されることができる(図示せず)。
(態様b)
図2に示されるように、非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面において、
電極体は、正極、セパレータ7及び負極がこの順に重ねられた構造体を2つ以上有し、
電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
正極は、正極集電体8と、正極集電体8の片面又は両面に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層9又は第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層10のどちらか一方の単一層とを有し、かつ
正極集電体8の両面に第1又は第2正極活物質層(9,10)を有する場合には、正極集電体8の一方の面に第1正極活物質層9があり、他方の面に第2正極活物質層10がある。
態様bは、後述される実施例で形成される構造Aと概ね対応する。
(態様c)
図3に示されるように、非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面において、
電極体は、正極、セパレータ7及び負極がこの順に重ねられた構造体を2つ以上有し、
電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
正極は、正極集電体8と、正極集電体8の片面又は両面に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層9又は第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層10のどちらか一方の単一層とを有し、かつ
正極集電体8の両面に第1又は第2正極活物質層(9,10)を有する場合には正極集電体8の両面に同一の正極活物質層がある。
態様cは、後述される実施例で形成される構造Bと概ね対応する。
(態様d)
図4に示されるように、非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面において、
電極体は、正極、セパレータ7及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有し、
電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、かつ
正極は、正極集電体8と、正極集電体8の片面又は両面に、第1正極活物質としての炭素材料及び第2正極活物質としてのリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む正極活物質層11を有する。
態様dは、後述される実施例で形成される構造Cと概ね対応する。
(態様e)
図5に示されるように、非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面において、
電極体は、正極、セパレータ7及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有し、
電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
正極は、正極集電体8と、正極集電体8の片面又は両面に正極活物質層とを有し、かつ
正極活物質層は、正極集電体8の片側同一面内に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層9と、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層10とが多層形成されている。
態様eは、後述される実施例で形成される構造Dと概ね対応する。
なお、第1正極活物質層9と第2正極活物質層10を積層する際に、少なくとも1つの第1正極活物質層9と少なくとも1つの第2正極活物質層10を積層するのであれば、各層の総数及び両層を積層する順序は任意でよい。
(態様f)
図6に示されるように、非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面において、
電極体は、正極、セパレータ7及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有し、
電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
正極は、正極集電体8と、正極集電体8の片面又は両面に正極活物質層とを有し、かつ
正極集電体8の片側同一面内に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層9を有する領域と、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層10を有する領域とが混在する。
態様fは、後述される実施例で形成される構造Eと概ね対応する。
なお、第1正極活物質層9を有する領域と第2正極活物質層10を有する領域について、各領域の総数及び各領域の配置方法は任意でよい。
また、第1正極活物質層9を有する領域と第2正極活物質層10を有する領域は、互いに接していても離間していてもよい。両領域が互いに離間している場合には、任意のスペ―サーにより両領域の間隙を埋めてもよいし、正極活物質層よりも上層又は下層(例えば、セパレータ7、正極集電体8等)の材料が両領域の間隙を満たすように押し出されていてもよい。
図2〜6は、非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の断面において、正極、セパレータ7及び負極がこの順に重ねられた構造体を2つ示しているが、態様b〜fが3つ以上の構造体を有することを排除する意図ではない。
態様a〜fは、下記項目[正極前駆体の製造]で説明されるように、正極前駆体の塗工液の塗工、正極集電体への正極活物質層の貼付等により形成されることができる。
[正極前駆体の製造]
本実施形態において、非水系リチウム型蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることが出来る。さらに、得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の厚み又は嵩密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
前記正極前駆体の塗工液は、正極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水又は有機溶媒、及び/又はそれらに結着剤や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加して調製してもよい。また、水又は有機溶媒に結着剤や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、正極活物質を含む各種材料粉末を追加して塗工液を調製してもよい。前記ドライブレンドする方法として、例えばボールミル等を使用して正極活物質及びリチウム化合物、並びに必要に応じて導電性フィラーを予備混合して、導電性の低いリチウム化合物に導電性フィラーをコーティングさせる予備混合をしてもよい。これにより、後述のリチウムドープ工程において正極前駆体でリチウム化合物が分解し易くなる。前記塗工液の溶媒に水を使用する場合には、リチウム化合物を加えることで塗工液がアルカリ性になることもあるため、必要に応じてpH調整剤を添加してもよい。
前記正極前駆体の塗工液の調製には、特に制限されるものではないが、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることが出来る。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速が1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。また、周速が50m/s以下であれば、分散による熱やせん断力により各種材料が破壊されることなく、再凝集が生じることがないため好ましい。
前記塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm以下では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒子径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり好ましくない。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジ発生等なく安定に塗工ができる。
前記正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)は、1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。また、粘度(ηb)が20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
また、該塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
前記正極前駆体の塗膜の形成は特に制限されるものではないが、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることが出来る。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工で形成してもよい。多層塗工の場合には、塗膜各層内のリチウム化合物の含有量が異なるように塗工液組成を調整してもよい。
また、正極集電体と正極活物質層の配置に関して上記で説明された態様b〜fを達成するように、第1正極活物質層と第2正極活物質層の塗り分け、第1正極活物質層と第2正極活物質層の多層塗工等を任意に選択してよい。
また、塗工速度は0.1m/分以上100m/分以下であることが好ましい。より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工出来る。他方、100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
前記正極前駆体の塗膜の乾燥には、特に制限されるものではないが、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることが出来る。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることが出来る。他方、乾燥温度が200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着剤の偏在、正極集電体や正極活物質層の酸化を抑制できる。
前記正極前駆体のプレスには、特に制限されるものではないが、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることが出来る。正極活物質層の厚み、嵩密度及び電極強度は、後述するプレス圧力、隙間、プレス部の表面温度により調整できる。
プレス圧力は0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましく、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓みやシワが生じることがなく、所望の正極活物質層厚みや嵩密度に調整できる。
また、プレスロール同士の隙間は所望の正極活物質層の厚みや嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体厚みに応じて任意の値を設定できる。さらに、プレス速度は正極前駆体に撓みやシワが生じない任意の速度に設定できる。
また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要によりプレス部を加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは融点マイナス30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着剤の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは融点プラス30℃以下、さらに好ましくは融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、プレス部の表面を90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、プレス部の表面を40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
また、プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
前記正極活物質層の厚みは、正極集電体の片面当たり20μm以上200μm以下であることが好ましい。前記正極活物質層の厚みは、より好ましくは片面当たり25μm以上100μm以下であり、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。この厚みが20μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、この厚みが200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、従ってエネルギー密度を高めることができる。なお、集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における正極活物質層の厚みとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚みの平均値をいう。
[正極の嵩密度]
後述のリチウムドープ工程後の正極における正極活物質層の嵩密度は、第1正極活物質層においては、0.30g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.35g/cm以上1.3g/cm以下の範囲である。一方、第2正極活物質層においては、1.0g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは1.2g/cm以上4.5g/cm以下の範囲である。第1正極活物質及び第2正極活物質を両方含有する正極活物質層の嵩密度、又は第1正極活物質層及び第2正極活物質層を両方含有する正極における正極活物質全体の嵩密度については、活物質又は活物質層の重量比に応じて、上記の嵩密度の中間の値が好ましい。
第1正極活物質層、第2正極活物質層の嵩密度が各々0.30g/cm以上、1.0g/cm以上であれば、高いエネルギー密度を発現でき、蓄電素子の小型化を達成できる。また、この嵩密度が各々1.3g/cm以下、4.5g/cm以下であれば、正極活物質層内の空孔における電解液の拡散が十分となり、高い出力特性が得られる。
[リチウムドープ後の正極活物質層]
本実施形態に係るリチウムドープ後の少なくとも1つの正極活物質層は、下記式(1)〜(3):
{式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
{式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
で表される化合物から選択される1種以上を、該正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する。
式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。
特に好ましい化合物は、LiOCOLi、LiOCOLi、LiOCOCOOLi、LiOCOOCOLi、LiOCOOCOCOOLi及びLiOCOOCOCOOLiで表される化合物である。
式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。
特に好ましい化合物は、LiOCOH、LiOCOH、LiOCOCOOH、LiOCOCOOH、LiOCOOCOCOOH、LiOCOOCOCOOH、LiOCOCH、LiOCOCH、LiOCOCOOCH、LiOCOCOOCH、LiOCOOCOCOOCH、LiOCOOCOCOOCH、LiOCOC、LiOCOC、LiOCOCOOC、LiOCOCOOC、LiOCOOCOCOOC、LiOCOOCOCOOCで表される化合物である。
式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。
特に好ましい化合物は、HOCOH、HOCOH、HOCOCOOH、HOCOCOOH、HOCOOCOCOOH、HOCOOCOCOOH、HOCOCH、HOCOCH、HOCOCOOCH、HOCOCOOCH、HOCOOCOCOOCH、HOCOOCOCOOCH、HOCOC、HOCOC、HOCOCOOC、HOCOCOOC、HOCOOCOCOOC、HOCOOCOCOOC、CHOCOCH、CHOCOCH、CHOCOCOOCH、CHOCOCOOCH、CHOCOOCOCOOCH、CHOCOOCOCOOCH、CHOCOC、CHOCOC、CHOCOCOOC、CHOCOCOOC、CHOCOOCOCOOC、CHOCOOCOCOOC、COCOC、COCOC、COCOCOOC、COCOCOOC、COCOOCOCOOC、COCOOCOCOOCで表される化合物である。
本実施形態における上記の前記化合物を正極活物質層内に含有させるための方法としては、例えば、
正極活物質層に前記化合物を混合する方法、
正極活物質層に前記化合物を吸着させる方法、
正極活物質層に前記化合物を電気化学的に析出させる方法
等が挙げられる。
中でも、非水系電解液中に、分解してこれらの前記化合物を生成し得る前駆体を含有させておき、蓄電素子を作製する工程における前記前駆体の分解反応を利用して、正極活物質層内に前記化合物を堆積させる方法が好ましい。
前記化合物を形成する前駆体としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートおよびフルオロエチレンカーボネートから選択される少なくとも1種の有機溶媒を使用することが好ましく、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネートを使用することがさらに好ましい。
ここで、前記化合物の総量は、第1正極活物質層においては、下限としては第1正極活物質層の単位質量当たり1.6×10−4mol/g以上であることが好ましく、5.0×10−4mol/g以上であることがより好ましく、上限としては3.0×10−2mol/g以下であることが好ましく、1.5×10−2mol/g以下であることがより好ましく、1.0×10−2mol/g以下であることが最も好ましい。一方、第2正極活物質層においては、下限としては第2正極活物質層の単位質量当たり、3.8×10−9mol/g以上であることが好ましく、2.0×10−8mol/g以上であることがより好ましく、上限としては3.0×10−2mol/g以下であることが好ましく、7.0×10−3mol/g以下であることがより好ましく、3.0×10−5mol/g以下であることが最も好ましい。第1正極活物質及び第2正極活物質を両方含有する正極活物質層における化合物の総量、又は第1正極活物質層及び第2正極活物質層を両方含有する正極における正極活物質全体における化合物の総量については、活物質又は活物質層の重量比に応じて、上記の化合物の総量の中間の値が好ましい。
第1正極活物質層、第2正極活物質層における化合物の総量が各々、正極活物質層の単位質量当たり1.6×10−4mol/g以上、3.8×10−9mol/g以上であれば非水系電解液が正極活物質に接することがなく、非水系電解液が酸化分解することを抑制できる。また、第1正極活物質層、第2正極活物質層における化合物の総量が各々、正極活物質層の単位質量当たり3.0×10−2mol/g以下、3.0×10−2mol/g以下であれば、Liイオンの拡散を阻害することがなく、高い入出力特性を発現することができる。
−正極活物質層の細孔分布−
本実施形態では、後述のリチウムドープ工程後の正極における正極活物質層は、水銀圧入法による細孔分布を測定したとき、細孔径とLog微分細孔容積との関係を示す細孔分布曲線において、細孔径0.3μm以上50μm以下の範囲で、Log微分細孔容積0.1mL/g以上5.0mL/g以下のピーク値を有するピークが1つ以上存在することが好ましい。より好ましくは、細孔径0.1μm以上50μm以下の範囲で、Log微分細孔容積0.1mL/g以上5.0mL/g以下のピーク値を有するピークが2つ以上存在する。正極における正極活物質層の細孔分布曲線において、Log微分細孔容積0.1mL/g以上5.0mL/g以下のピーク値を有するピークが1つ以上存在する細孔径範囲の上限としては、30μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましく、10μm以下が最も好ましく、細孔径範囲の下限としては、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上がさらに好ましい。細孔径範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
ここで、ピークが存在するとは、ピークトップ位置を上記細孔径範囲に有するピークが存在することを示す。本実施形態においては、正極における正極活物質層の細孔分布曲線におけるピークの由来は特に限定はされないが、正極活物質や導電性フィラー等の正極活物質層構成材料同士の間隙に由来するピークと、例えば正極前駆体の正極活物質層に含有したリチウム化合物がリチウムドープ工程で酸化分解した後に残る空孔に由来するピークとが存在することが好ましい。これらのピークはピークトップ位置の細孔径が重なり、1つのピークとして観察されてもよい。
正極における正極活物質層の細孔分布曲線において、Log微分細孔容積0.1mL/g以上5.0mL/g以下のピーク値を有するピークが1つ以上存在する細孔径範囲が0.3μm以上であれば、正極内部に電解液を保持できる良好な空孔が形成され、リチウムイオン伝導性が高いため、非水系リチウム型蓄電素子に組み込んだ時に高い入出力特性を示すと共に、充放電繰り返し時、特に高負荷充放電において、正極活物質近傍に形成された空孔内の電解液からイオンが随時供給されるため、高負荷充放電サイクル特性に優れる。
一方、正極における正極活物質層の細孔分布曲線において、Log微分細孔容積0.1mL/g以上5.0mL/g以下のピーク値を有するピークが1つ以上存在する細孔径範囲が50μm以下であれば、非水系リチウム型蓄電素子に組み込んだ時に高いエネルギー密度が得られる。
また、上記のように、正極における正極活物質層の細孔分布曲線において、細孔径0.3μm以上50μm以下の範囲で、Log微分細孔容積0.1mL/g以上5.0mL/g以下のピーク値を有するピークが1つ以上存在することが好ましいが、第1正極活物質層の細孔分布曲線においては、ピーク値の下限値としては、Log微分細孔容積0.5mL/g以上がより好ましく、0.8mL/g以上がさらに好ましく、1.0mL/g以上が最も好ましく、ピーク値の上限値としては、4.5mL/g以下がより好ましい。一方、第2正極活物質層の細孔分布曲線においては、ピーク値の下限値としては、Log微分細孔容積0.15mL/g以上がより好ましく、0.2mL/g以上がさらに好ましく、ピーク値の上限値としては、1.0mL/g以下がより好ましい。第1正極活物質及び第2正極活物質を両方含有する正極活物質層のピーク値、又は第1正極活物質層及び第2正極活物質層を両方含有する正極における正極活物質全体のピーク値については、活物質又は活物質層の重量比に応じて、上記のピーク値の中間の値が好ましい。ピーク値がLog微分細孔容積0.1mL/g以上であれば、電解液を保持できる空孔が十分に存在し、非水系リチウム型蓄電素子に組み込んだ時に高い入出力特性と優れた高負荷充放電サイクル特性が得られる。一方、ピーク値がLog微分細孔容積5.0mL/g以下であれば、非水系リチウム型蓄電素子に組み込んだ時に高いエネルギー密度が得られる。
そして、本実施形態では正極における正極活物質層の細孔分布曲線において、細孔径0.3μm以上50μm以下の範囲における総積算細孔容積をVpとした時、第1正極活物質層においては、Vpは0.7mL/g以上3.0mL/g以下が好ましく、0.75mL/g以上2.5mL/g以下がより好ましく、0.8mL/g以上2.0mL/g以下であることがさらに好ましい。一方、第2正極活物質層においては、Vpは0.03mL/g以上0.2mL/g以下が好ましく、Vpが0.05mL/g以上0.19mL/g以下がより好ましく、0.07mL/g以上0.18mL/g以下がさらに好ましい。
第1正極活物質及び第2正極活物質を両方含有する正極活物質層のVp、又は第1正極活物質層及び第2正極活物質層を両方含有する正極における正極活物質全体のVpについては、活物質又は活物質層の重量比に応じて、上記のVpの中間の値が好ましい。ここで、特に限定はされないが、Vpは上述の正極活物質や導電性フィラー等の正極活物質層構成材料同士の間隙と、例えば正極前駆体の正極活物質層に含有したリチウム化合物がリチウムドープ工程で酸化分解した後に残る空孔との容積の合計を示すと考えられる。
第1正極活物質層、第2正極活物質層の各々のVpが0.7mL/g以上、0.03mL/g以上であればリチウムイオンの拡散性が十分に確保され、高い入出力特性と優れた高負荷充放電サイクル特性が得られる。一方、第1正極活物質層、第2正極活物質層の各々のVpが3.0mL/g以下、0.2mL/g以下であれば、正極中の構成材料同士の結合が確保され、十分に高い正極強度が得られると共に、高いエネルギー密度も得られる。
−リチウム化合物の平均粒子径−
一般的に、非水系リチウム型蓄電素子は保存や使用などを重ねることで、電解液に含まれる電解質が分解し、フッ素イオンを発生させる。発生したフッ素イオンは主に負極でフッ化リチウムを形成し、非水系リチウム型蓄電素子の内部抵抗を増大させるため、好ましくない。一方でリチウム化合物はフッ素イオンを吸着することができるため、負極でのフッ化リチウムの形成を抑制できる。そのため、リチウム化合物を正極に存在させることで、非水系リチウム型蓄電素子の内部抵抗の増大を抑制することができるため、好ましい。
リチウム化合物の平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、更に好ましくは、0.5μm以上5μm以下である。平均粒子径が0.1μm以上の場合、高温保存により生成するフッ素イオンを効率的に吸着することにより高温保存による特性劣化とガス発生を抑制できる。平均粒子径が10μm以下の場合、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンの吸着を効率良く行うことができる。
リチウム化合物の平均粒子径の測定方法は特に限定されないが、正極断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による画像、及び走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)による画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB(Broad Ion Beam)加工を用いることができる。正極に炭酸リチウムを含有させる場合、正極断面のラマンイメージングを測定することで炭酸イオンの分布を求めることもできる。
−リチウム化合物の同定方法−
正極中に含まれるリチウム化合物の同定方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により同定することができる。リチウム化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
以下に記載するSEM−EDX、ラマン、XPSを測定する際には、アルゴンボックス中で非水系リチウム型蓄電素子を解体して正極を取り出し、正極表面に付着した電解質を洗浄した後に測定を行うことが好ましい。正極の洗浄方法については、正極表面に付着した電解質を洗い流せればよいため、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート溶媒が好適に利用できる。洗浄方法としては例えば、正極重量の50〜100倍のジエチルカーボネート溶媒に正極を10分間以上浸漬させ、その後溶媒を取り替えて再度正極を浸漬させる。その後正極をジエチルカーボネートから取り出し、真空乾燥(温度:0〜200℃、圧力:0〜20kPa、時間:1〜40時間の範囲で正極中のジエチルカーボネートの残存が1質量%以下になる条件とする。ジエチルカーボネートの残存量については、後述する蒸留水洗浄、液量調整後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。)させた後に、上記SEM−EDX、ラマン、XPSの解析を実施する。
後述するイオンクロマトグラフィーについては、正極を蒸留水で洗浄した後の水を解析することにより陰イオンを同定することができる。
上記解析手法にてリチウム化合物を同定できなかった場合、その他の解析手法として、Li−固体NMR、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、リチウム化合物を同定することもできる。
断面SEM観察によるリチウム化合物の同定方法を以下に例示する。リチウム化合物は、例えば炭酸リチウムの場合、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極断面のSEM−EDX画像による、炭素マッピングおよび酸素マッピングにて判別できる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた炭素マッピングと酸素マッピングそれぞれに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む領域を、それぞれ炭素領域および酸素領域とした時、これらの領域が重複する部分を炭酸リチウムと判別することができる。
−リチウム化合物の平均粒子径の算出方法−
リチウム化合物の平均粒子径は、上記正極断面のSEM−EDXと同視野にて測定し、得られた画像を、画像解析することで求めることができる。上記正極断面のSEM画像にて判別されたリチウム化合物の粒子全てについて断面積Sを求め、下記式(4)にて算出される粒子径dを求める。(円周率をπとする。)
d=2×(S/π)1/2 式(4)
リチウムイオンドープ処理後の正極の正極活物質層におけるリチウム化合物の含有割合は、正極集電体を除く正極の質量を基準として(例えば、正極活物質層の質量を基準として)、1質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは、1.5質量%以上20質量%以下である。リチウム化合物の含有割合が1質量%以上であれば、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着する十分な量のリチウム化合物が存在するため高負荷充放電サイクル特性が向上する。リチウム化合物の含有割合が25質量%以下であれば、非水系リチウム型蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
<負極>
本実施形態の負極は、負極集電体と、その片面又は両面に存在する負極活物質層と、を有する。本実施形態における負極は、非水系リチウム型蓄電素子内で組み合わせる正極活物質層における正極活物質の種類に応じて、例えば負極集電体の両面で異なる種類の負極活物質を含む負極活物質層を用いたり、負極集電体の片側同一面内に異なる負極活物質を含む負極活物質層領域を複数有したりしてもよい。
[負極活物質層]
負極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む。負極活物質層は、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
−負極活物質−
前記負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な物質を用いることができる。具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫及び錫化合物等が例示される。好ましくは該負極活物質の総量に対する該炭素材料の含有率が50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。該炭素材料の含有率が100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。
負極活物質には、リチウムイオンをドープすることが好ましい。本明細書において、負極活物質にドープされたリチウムイオンとしては、主に3つの形態が包含される。
第一の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子を作製する前に、負極活物質に設計値として予め吸蔵させるリチウムイオンである。
第二の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子を作製し、出荷する際の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
第三の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子をデバイスとして使用した後の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
負極活物質にリチウムイオンをドープしておくことにより、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及び作動電圧を良好に制御することが可能となる。
前記炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;カーボンナノ粒子;活性炭;人造黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等の炭素質材料前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。
これらの中でも負極の抵抗を下げる観点から、前記炭素材料1種以上(以下、基材ともいう。)と前記炭素質材料前駆体とを共存させた状態で熱処理を行い、該基材と該炭素質材料前駆体由来の炭素質材料とを複合させた複合炭素材料が好ましい。該炭素質材料前駆体としては、熱処理により該炭素質材料となるものであれば特に制限はないが、石油系のピッチ又は石炭系のピッチが特に好ましい。熱処理を行う前に、該炭素質材料前駆体の融点より高い温度において、該基材と該炭素質材料前駆体とを混合してもよい。熱処理温度は、使用する該炭素質材料前駆体が揮発又は熱分解して発生する成分が該炭素質材料となる温度であればよいが、好ましくは400℃以上2500℃以下、より好ましくは500℃以上2000℃以下、さらに好ましくは550℃以上1500℃以下である。熱処理を行う雰囲気は特に制限はないが、非酸化性雰囲気が好ましい。
前記複合炭素材料の好ましい例は、後述の複合炭素材料1及び2である。これらの内どちらかを選択して使用しても良く、又はこれらの双方を併用してもよい。
‐複合炭素材料1‐
複合炭素材料1は、BET比表面積が100m/g以上3000m/g以下の炭素材料1種以上を該基材として用いた該複合炭素材料である。該基材は、特に制限されるものではないが、活性炭やカーボンブラック、鋳型多孔質炭素、高比表面積黒鉛、カーボンナノ粒子等を好適に用いることができる。
複合炭素材料1のBET比表面積は、100m/g以上1,500m/g以下が好ましく、より好ましくは150m/g以上1,100m/g以下、さらに好ましくは180m/g以上550m/g以下である。このBET比表面積が100m/g以上であれば、細孔を適度に保持することができリチウムイオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことが出来る。他方、1,500m/g以下であることにより、リチウムイオンの充放電効率が向上するため、サイクル耐久性が損なわれることがない。
複合炭素材料1における該炭素質材料の該基材に対する質量比率は10質量%以上200質量%以下が好ましい。この質量比率は、好ましくは12質量%以上180質量%以下、より好ましくは15質量%以上160質量%以下、特に好ましくは18質量%以上150質量%以下である。炭素質材料の質量比率が10質量%以上であれば、該基材が有していたマイクロ孔を該炭素質材料で適度に埋めることができ、リチウムイオンの充放電効率が向上するため、良好なサイクル耐久性を示すことが出来る。また、炭素質材料の質量比率が200質量%以下であれば、細孔を適度に保持することができリチウムイオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことが出来る。
複合炭素材料1の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、530mAh/g以上2,500mAh/g以下であることが好ましく、より好ましくは620mAh/g以上2,100mAh/g以下、さらに好ましくは760mAh/g以上1,700mAh/g以下、特に好ましくは840mAh/g以上1,500mAh/g以下である。
リチウムイオンをドープすることにより、負極電位が低くなる。従って、リチウムイオンがドープされた複合炭素材料1を含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系リチウム型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
該ドープ量が530mAh/g以上であれば、複合炭素材料1におけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされ、更に所望のリチウム量に対する複合炭素材料1の量を低減することができる。そのため、負極厚みを薄くすることが可能となり、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
一方で、ドープ量が2,500mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生するおそれがない。
以下、複合炭素材料1の好ましい例として、該基材として活性炭を用いた複合炭素材料1aについて説明していく。
複合炭素材料1aは、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、0.010≦Vm1≦0.300、0.001≦Vm2≦0.650であることが好ましい。
メソ孔量Vm1は、より好ましくは0.010≦Vm1≦0.225、さらに好ましくは0.010≦Vm1≦0.200である。マイクロ孔量Vm2は、より好ましくは0.001≦Vm2≦0.200、更に好ましくは0.001≦Vm2≦0.150、特に好ましくは0.001≦Vm2≦0.100である。
メソ孔量Vm1が0.300cc/g以下であれば、BET比表面積を大きくすることができ、リチウムイオンのドープ量を高めることができることに加え、負極の嵩密度を高めることができる。その結果、負極を薄膜化することができる。また、マイクロ孔量Vm2が0.650cc/g以下であれば、リチウムイオンに対する高い充放電効率が維持できる。他方、メソ孔量Vm1及びマイクロ孔量Vm2が下限以上(0.010≦Vm1、0.001≦Vm2)であれば、高い入出力特性が得られる。
複合炭素材料1aのBET比表面積は、100m/g以上1,500m/g以下が好ましく、より好ましくは150m/g以上1,100m/g以下、さらに好ましくは180m/g以上550m/g以下である。このBET比表面積が100m/g以上であれば、細孔を適度に保持することができるため、リチウムイオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことが出来る。また、リチウムイオンのドープ量を高めることができるため、負極を薄膜化することができる。他方、1,500m/g以下であることにより、リチウムイオンの充放電効率が向上するので、サイクル耐久性が損なわれることがない。
複合炭素材料1aの平均細孔径は、高い入出力特性にする点から、20Å以上であることが好ましく、25Å以上であることがより好ましく、30Å以上であることがさらに好ましい。他方、高エネルギー密度にする点から、平均細孔径は、65Å以下であることが好ましく、60Å以下であることがより好ましい。
複合炭素材料1aの平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。下限については、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは2.5μm以上である。上限については、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは4μm以下である。平均粒子径が1μm以上10μm以下であれば良好な耐久性が保たれる。
複合炭素材料1aの水素原子/炭素原子の原子数比(H/C)は、0.05以上0.35以下であることが好ましく、0.05以上0.15以下であることが、より好ましい。H/Cが0.35以下である場合には、活性炭表面に被着している炭素質材料の構造(典型的には、多環芳香族系共役構造)が良好に発達して容量(エネルギー密度)及び充放電効率が高くなる。他方、H/Cが0.05以上である場合には、炭素化が過度に進行することはないため良好なエネルギー密度が得られる。なお、H/Cは元素分析装置により測定される。
複合炭素材料1aは、前記基材の活性炭に由来するアモルファス構造を有するが、同時に、主に被着した炭素質材料に由来する結晶構造を有する。X線広角回折法によると、該複合炭素材料1aは、(002)面の面間隔d002が3.60Å以上4.00Å以下であり、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが8.0Å以上20.0Å以下であるものが好ましく、d002が3.60Å以上3.75Å以下であり、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが11.0Å以上16.0Å以下であるものがより好ましい。
上記の複合炭素材料1aの該基材として用いる前記活性炭としては、得られる複合炭素材料1aが所望の特性を発揮する限り、特に制限はない。例えば石油系、石炭系、植物系、高分子系等の各種の原材料から得られた市販品を使用することができる。特に、平均粒子径が1μm以上15μm以下の活性炭粉末を用いることが好ましい。該平均粒子径は、より好ましくは2μm以上10μm以下である。
本実施形態において規定する細孔分布範囲を有する複合炭素材料1aを得るためには、該基材に用いる活性炭の細孔分布が重要である。
該活性炭においては、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)としたとき、0.050≦V1≦0.500、0.005≦V2≦1.000、かつ、0.2≦V1/V2≦20.0であることが好ましい。
メソ孔量V1については、0.050≦V1≦0.350がより好ましく、0.100≦V1≦0.300が更に好ましい。マイクロ孔量V2については、0.005≦V2≦0.850がより好ましく、0.100≦V2≦0.800が更に好ましい。メソ孔量/マイクロ孔量の比率については、0.22≦V1/V2≦15.0がより好ましく、0.25≦V1/V2≦10.0が更に好ましい。活性炭のメソ孔量V1が0.500以下である場合及びマイクロ孔量V2が1.000以下である場合、上記本実施形態における複合炭素材料1aの細孔構造を得るためには適量の炭素質材料を被着させれば足りるので、細孔構造を制御し易くなる。一方、活性炭のメソ孔量V1が0.050以上である場合及びマイクロ孔量V2が0.005以上である場合、V1/V2が0.2以上である場合、及びV1/V2が20.0以下である場合にも構造が容易に得られる。
上記の複合炭素材料1aの原料として用いる炭素質材料前駆体とは、熱処理することにより、活性炭に炭素質材料を被着させることができる、固体、液体、又は溶剤に溶解可能な有機材料である。この炭素質材料前駆体としては、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等を挙げることができる。これらの炭素質材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが、製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。石油系ピッチとしては、例えば原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。
上記ピッチを用いる場合、該ピッチを活性炭との共存下で熱処理し、活性炭の表面においてピッチの揮発成分又は熱分解成分を熱反応させて該活性炭に炭素質材料を被着させることにより、複合炭素材料1aが得られる。この場合、200〜500℃程度の温度において、ピッチの揮発成分又は熱分解成分の活性炭細孔内への被着が進行し、400℃以上で該被着成分が炭素質材料となる反応が進行する。熱処理時のピーク温度(最高到達温度)は、得られる複合炭素材料1aの特性、熱反応パターン、熱反応雰囲気等により適宜決定されるものであるが、400℃以上であることが好ましく、より好ましくは450℃〜1,000℃であり、さらに好ましくは500〜800℃程度である。また、熱処理時のピーク温度を維持する時間は、30分間〜10時間であることが好ましく、より好ましくは1時間〜7時間、更に好ましくは2時間〜5時間である。例えば、500〜800℃程度のピーク温度で2時間〜5時間に亘って熱処理する場合、活性炭表面に被着している炭素質材料は多環芳香族系炭化水素になっているものと考えられる。
また、用いるピッチの軟化点は、30℃以上250℃以下が好ましく、60℃以上130℃以下が更に好ましい。軟化点が30℃以上であるピッチはハンドリング性に支障がなく、精度よく仕込むことが可能である。軟化点が250℃以下であるピッチには比較的低分子の化合物を多く含有し、従って該ピッチを用いると、活性炭内の細かい細孔まで被着することが可能となる。
上記の複合炭素材料1aを製造するための具体的方法としては、例えば、炭素質材料前駆体から揮発した炭化水素ガスを含む不活性雰囲気中で活性炭を熱処理し、気相で炭素質材料を被着させる方法が挙げられる。また、活性炭と炭素質材料前駆体とを予め混合し熱処理する方法、又は溶媒に溶解させた炭素質材料前駆体を活性炭に塗布して乾燥させた後に熱処理する方法も可能である。
複合炭素材料1aにおける該炭素質材料の該活性炭に対する質量比率が10質量%以上100質量%以下であるものが好ましい。この質量比率は、好ましくは15質量%以上80質量%以下である。炭素質材料の質量比率が10質量%以上であれば、該活性炭が有していたマイクロ孔を該炭素質材料で適度に埋めることができ、リチウムイオンの充放電効率が向上するから、サイクル耐久性が損なわれることがない。また、炭素質材料の質量比率が100質量%以下であれば、複合炭素材料1aの細孔が適度に保持されて比表面積が大きいまま維持される。そのため、リチウムイオンのドープ量を高めることができる結果から、負極を薄膜化しても高出力密度かつ高耐久性を維持することができる。
‐複合炭素材料2‐
複合炭素材料2は、BET比表面積が0.5m/g以上80m/g以下の炭素材料1種以上を前記基材として用いた前記複合炭素材料である。該基材は、特に制限されるものではないが、天然黒鉛、人造黒鉛、低結晶黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック等を好適に用いることができる。
複合炭素材料2のBET比表面積は、1m/g以上50m/g以下が好ましく、より好ましくは1.5m/g以上40m/g以下、さらに好ましくは2m/g以上25m/g以下である。このBET比表面積が1m/g以上であれば、リチウムイオンとの反応場を十分に確保できるため、高い入出力特性を示すことが出来る。他方、50m/g以下であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上し、かつ充放電中の非水系電解液の分解反応が抑制されるため、高いサイクル耐久性を示すことが出来る。
複合炭素材料2の平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。この平均粒子径は、より好ましくは2μm以上8μm以下、さらに好ましくは3μm以上6μm以下である。平均粒子径が1μm以上であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高いサイクル耐久性を示すことが出来る。他方、10μm以下であれば、複合炭素材料2と非水系電解液との反応面積が増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料2における該炭素質材料の該基材に対する質量比率は1質量%以上30質量%以下が好ましい。この質量比率は、より好ましくは1.2質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上20質量%以下である。炭素質材料の質量比率が1質量%以上であれば、該炭素質材料によりリチウムイオンとの反応サイトを十分に増加でき、かつリチウムイオンの脱溶媒和も容易となるため、高い入出力特性を示すことが出来る。他方、炭素質材料の質量比率が20質量%以下であれば、該炭素質材料と該基材との間のリチウムイオンの固体内拡散を良好に保持できるため、高い入出力特性を示すことが出来る。また、リチウムイオンの充放電効率が向上出来るため、高いサイクル耐久性を示すことが出来る。
複合炭素材料2の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、50mAh/g以上700mAh/g以下であることが好ましく、より好ましくは70mAh/g以上650mAh/g以下、さらに好ましくは90mAh/g以上600mAh/g以下、特に好ましくは100mAh/g以上550mAh/g以下である。
リチウムイオンをドープすることにより、負極電位が低くなる。従って、リチウムイオンがドープされた複合炭素材料2を含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系リチウム型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
該ドープ量が50mAh/g以上であれば、複合炭素材料2におけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされるため、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
一方で、ドープ量が700mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生するおそれがない。
以下、複合炭素材料2の好ましい例として、該基材として黒鉛材料を用いた複合炭素材料2aについて説明していく。
複合炭素材料2aの平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。この平均粒子径は、より好ましくは2μm以上8μm以下、さらに好ましくは3μm以上6μm以下である。平均粒子径が1μm以上であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高いサイクル耐久性を示すことが出来る。他方、10μm以下であれば、複合炭素材料2aと非水系電解液との反応面積が増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料2aのBET比表面積は、1m/g以上20m/g以下であることが好ましく、より好ましくは1m/g以上15m/g以下である。このBET比表面積が1m/g以上であれば、リチウムイオンとの反応場を十分に確保できるため、高い入出力特性を示すことが出来る。他方、20m/g以下であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上し、かつ充放電中の非水系電解液の分解反応が抑制されるため、高いサイクル耐久性を示すことが出来る。
該基材として用いる前記黒鉛材料としては、得られる複合炭素材料2aが所望の特性を発揮する限り、特に制限はない。例えば人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン小球体、黒鉛ウイスカ等を使用することができる。該黒鉛材料の平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下である。
上記の複合炭素材料2aの原料として用いる炭素質材料前駆体とは、熱処理することにより、黒鉛材料に炭素質材料を複合させることができる、固体、液体、又は溶剤に溶解可能な有機材料である。この炭素質材料前駆体としては、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等を挙げることができる。これらの炭素質材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが、製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。石油系ピッチとしては、例えば原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。
複合炭素材料2aにおける該炭素質材料の該黒鉛材料に対する質量比率は1質量%以上10質量%以下が好ましい。この質量比率は、より好ましくは1.2質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上6質量%以下、特に好ましくは2質量%以上5質量%以下である。炭素質材料の質量比率が1質量%以上であれば、該炭素質材料によりリチウムイオンとの反応サイトを十分に増加でき、かつリチウムイオンの脱溶媒和も容易となるため、高い入出力特性を示すことが出来る。他方、炭素質材料の質量比率が20質量%以下であれば、該炭素質材料と該黒鉛材料との間のリチウムイオンの固体内拡散を良好に保持できるため、高い入出力特性を示すことが出来る。また、リチウムイオンの充放電効率が向上出来るため、高いサイクル耐久性を示すことが出来る。
−負極活物質層の任意成分−
本実施形態における負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーの種類は特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が例示される。導電性フィラーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下である。より好ましくは0質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは0質量部以上15質量部以下である。
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下である。より好ましくは2質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上25質量部以下である。結着剤の量が1質量部以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で結着剤の量が30質量部以下であれば、負極活物質へのリチウムイオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。分散安定剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下である。分散安定剤の量が10質量部以下であれば、負極活物質へのリチウムイオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[負極集電体]
本実施形態における負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化がおこらない金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施の形態の非水系リチウム型蓄電素子における負極集電体としては、銅箔が好ましい。
前記金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
[負極の製造]
負極は、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において負極活物質層は負極集電体に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより負極を得ることが出来る。さらに得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の厚み又は嵩密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、負極活物質を含む各種材料を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて負極集電体に貼り付ける方法も可能である。
塗工液は、負極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水又は有機溶媒、及び/又はそれらに結着剤や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加して調製してもよい。また、水又は有機溶媒に結着剤や分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、負極活物質を含む各種材料粉末を追加して塗工液を調製してもよい。前記塗工液の調製には、特に制限されるものではないが、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることが出来る。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。また、周速50m/s以下であれば、分散による熱やせん断力により各種材料が破壊されることなく、再凝集が生じることがないため好ましい。
前記塗工液の粘度(ηb)は、1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。また、粘度(ηb)が20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
また、前記塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましい。より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
前記塗膜の形成は特に制限されるものではないが、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることが出来る。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。また、塗工速度は0.1m/分以上100m/分以下であることが好ましく、より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工出来る。他方、塗工速度が100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
前記塗膜の乾燥は特に制限されるものではないが、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることが出来る。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましい。より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることが出来る。他方、乾燥温度が200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着剤の偏在、負極集電体や負極活物質層の酸化を抑制できる。
前記負極のプレスには、特に制限されるものではないが、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることが出来る。負極活物質層の厚み、嵩密度及び電極強度は、後述するプレス圧力、隙間、プレス部の表面温度により調整できる。
プレス圧力は0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましい。より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、プレス圧力が20kN/cm以下であれば、負極に撓みやシワが生じることがなく、所望の負極活物質層厚みや嵩密度に調整できる。
また、プレスロール同士の隙間は所望の負極活物質層の厚みや嵩密度となるように乾燥後の負極厚みに応じて任意の値を設定できる。さらに、プレス速度は負極に撓みやシワが生じない任意の速度に設定できる。
また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要によりプレス部を加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは融点マイナス30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着剤の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは融点プラス30℃以下、さらに好ましくは融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、プレス部の表面を90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、さらに好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、プレス部の表面を40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
また、プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
負極活物質層の厚みは、片面当たり、5μm以上100μm以下が好ましい。前記負極活物質層の厚みの下限は、さらに好ましくは7μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。前記負極活物質層の厚みの上限は、さらに好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下である。この厚みが5μm以上であれば、負極活物質層を塗工した際にスジ等が発生せず塗工性に優れる。他方、この厚みが100μm以下であれば、セル体積を縮小することによって高いエネルギー密度を発現できる。なお、集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における負極活物質層の厚みとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚みの平均値をいう。
負極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.30g/cm以上1.8g/cm以下であり、より好ましくは0.40g/cm以上1.5g/cm以下、さらに好ましくは0.45g/cm以上1.3g/cm以下である。嵩密度が0.30g/cm以上であれば、十分な強度を保つことができるとともに、負極活物質間の十分な導電性を発現することができる。また、1.8g/cm以下であれば、負極活物質層内でイオンが十分に拡散できる空孔が確保できる。
<セパレータ>
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体、負極及びセパレータを有する電極積層体又は電極捲回体が形成される。
本発明では、電極体とは電極積層体又は電極捲回体のことを指す。電極体は正極前駆体又は正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有する。
前記セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面または両面に、有機または無機の微粒子から成る膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機または無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、35μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
また、有機または無機の微粒子から成る膜の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、10μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
[ゲル電解質]
セパレータは、電解液の浸透により膨潤する有機ポリマーを含んでいてもよいし、セパレータの代替として単体で用いてもよい。有機ポリマーは、特に制限はないが、電解液との親和性がよく、電解液を浸透させ膨潤させることでゲル化するものが好ましい。例えば、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビリニデン、ポリメチルメタクリレートや、これらの混合物は、ゲル化したときに高いアルカリ土類金属イオン伝導性を発現できるため、好適に用いられる。
また有機ポリマーは、電解液を有機ポリマー内に包含することができる。そのため、外装体が傷ついた際、非水系リチウム型蓄電素子から電解液が外部に流出することを防ぐ効果があり、安全上好ましい。
<外装体>
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。
前記金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。
前記ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
<電解液>
本実施形態における電解液は非水系電解液である。すなわちこの電解液は、後述する非水溶媒を含む。前記非水系電解液は、前記非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のリチウム塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、リチウムイオンを電解質として含む。
本実施形態における非水系電解液は、リチウム塩として、例えば、(LiN(SOF))、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiN(SOCF)(SOH)、LiC(SOF)、LiC(SOCF、LiC(SO、LiCFSO、LiCSO、LiPF、LiBF等を単独で用いることができ、2種以上を混合して用いてもよい。高い伝導度を発現できることから、LiPF及び/又はLiN(SOF)を含むことが好ましい。
非水系電解液中のリチウム塩濃度は、0.5mol/L以上であることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲がより好ましい。リチウム塩濃度が0.5mol/L以上であれば、陰イオンが十分に存在するので蓄電素子の容量を十分高くできる。また、リチウム塩濃度が2.0mol/L以下である場合、未溶解のリチウム塩が非水系電解液中に析出すること、及び電解液の粘度が高くなり過ぎることを防止でき、伝導度が低下せず、出力特性も低下しないため好ましい。
本実施形態における非水系電解液は、非水溶媒として、好ましくは、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有する。非水系電解液が環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有することは、所望の濃度のリチウム塩を溶解させる点、及び高いリチウムイオン伝導度を発現する点で有利である。環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等に代表されるアルキレンカーボネート化合物が挙げられる。アルキレンカーボネート化合物は、典型的には非置換である。鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネート化合物が挙げられる。ジアルキルカーボネート化合物は典型的には非置換である。
環状カーボネート及び鎖状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の総量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。前記合計含有量が50質量%以上であれば、所望の濃度のリチウム塩を溶解させることが可能であり、高いリチウムイオン伝導度を発現することができる。前記合計濃度が95質量%以下であれば、電解液が、後述する添加剤をさらに含有することができる。
本実施形態における非水系電解液は、更に添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、特に制限されないが、例えば、スルトン化合物、環状ホスファゼン、非環状含フッ素エーテル、含フッ素環状カーボネート、環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、及び環状酸無水物等を単独で用いることができ、また2種以上を混合して用いてもよい。
前記スルトン化合物としては、例えば、下記一般式(5)〜(7)のそれぞれで表されるスルトン化合物を挙げることができる。これらのスルトン化合物は、単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
{式(5)中、R11〜R16は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく;そしてnは0〜3の整数である。}
{式(6)中、R11〜R14は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく;そしてnは0〜3の整数である。}
{式(7)中、R11〜R16は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。}
本実施形態では、抵抗への悪影響の少なさの観点、及び非水系電解液の高温における分解を抑制してガス発生を抑えるという観点から、式(5)で表されるスルトン化合物としては、1,3−プロパンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−ブタンスルトン又は2,4−ペンタンスルトンが好ましく、式(6)で表されるスルトン化合物としては、1,3−プロペンスルトン又は1,4−ブテンスルトンが好ましく、式(7)で表されるスルトン化合物としては、1,5,2,4−ジオキサジチエパン2,2,4,4−テトラオキシドが好ましく、その他のスルトン化合物としては、メチレンビス(ベンゼンスルホン酸)、メチレンビス(フェニルメタンスルホン酸)、メチレンビス(エタンスルホン酸)、メチレンビス(2,4,6,トリメチルベンゼンスルホン酸)、及びメチレンビス(2−トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸)を挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種以上を選択することが好ましい。
本実施形態における非水系リチウム型蓄電素子の非水系電解液中のスルトン化合物の総含有量は、非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%〜15質量%であることが好ましい。非水系電解液中のスルトン化合物の総含有量が0.5質量%以上であれば、高温における電解液の分解を抑制してガス発生を抑えることが可能となる。一方で、この総含有量が15質量%以下であれば、電解液のイオン伝導度の低下を抑えることができ、高い入出力特性を保持することができる。また、非水系リチウム型蓄電素子の非水系電解液に存在するスルトン化合物の含有量は、高い入出力特性と耐久性を両立する観点から、好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以上8質量%以下である。
前記環状ホスファゼンとしては、例えばエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、ジエトキシテトラフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上が好ましい。
非水系電解液における環状ホスファゼンの含有率は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%〜20質量%であることが好ましい。この値が0.5質量%以上であれば、高温における電解液の分解を抑制してガス発生を抑えることが可能となる。一方でこの値が20質量%以下であれば、電解液のイオン伝導度の低下を抑えることができ、高い入出力特性を保持することができる。以上の理由により、環状ホスファゼンの含有率は、好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以上12質量%以下である。
尚、これらの環状ホスファゼンは、単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
非環状含フッ素エーテルとしては、例えばHCFCFOCHCFCFH、CFCFHCFOCHCFCFH、HCFCFCHOCHCFCFH、CFCFHCFOCHCFCFHCF等が挙げられ、中でも、電気化学的安定性の観点から、HCFCFOCHCFCFHが好ましい。
非環状含フッ素エーテルの含有量は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。非環状含フッ素エーテルの含有量が0.5質量%以上であれば、非水系電解液の酸化分解に対する安定性が高まり、高温時耐久性が高い蓄電素子が得られる。一方、非環状含フッ素エーテルの含有量が15質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、上記の非環状含フッ素エーテルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
含フッ素環状カーボネートについては、他の非水溶媒との相溶性の観点から、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びジフルオロエチレンカーボネート(dFEC)から選択して使用されることが好ましい。
含フッ素環状カーボネートの含有量は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。含フッ素環状カーボネートの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における電解液の還元分解を抑制することによって、高温における耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、含フッ素環状カーボネートの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、上記の含フッ素環状カーボネートは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状炭酸エステルについては、ビニレンカーボネートが好ましい。
環状炭酸エステルの含有量は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。環状炭酸エステルの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での電解液の還元分解を抑制することにより、高温における耐久性が高い蓄電素子が得られる。一方、環状炭酸エステルの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
環状カルボン酸エステルとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。中でも、ガンマブチロラクトンが、リチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から、特に好ましい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。環状酸無水物の含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い蓄電素子が得られる。一方、環状カルボン酸エステルの含有量が5質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、上記の環状カルボン酸エステルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状酸無水物については、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、及び無水イタコン酸から選択される1種以上が好ましい。中でも工業的な入手のし易さによって電解液の製造コストが抑えられる点、非水系電解液中に溶解し易い点等から、無水コハク酸及び無水マレイン酸から選択することが好ましい。
環状酸無水物の含有量は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。環状酸無水物の含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い蓄電素子が得られる。一方、環状酸無水物の含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、上記の環状酸無水物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
<組立工程>
組立工程で得られる電極積層体は、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子および負極端子を接続したものである。また電極捲回体は、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して捲回して成る捲回体に正極端子及び負極端子を接続したものである。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定はしないが、抵抗溶接や超音波溶接などの方法を用いることができる。
端子を接続した電極積層体または電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法に限定はないが、真空乾燥などにより乾燥する。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の重量あたり、1.5%以下が好ましい。残存溶媒が1.5%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性を悪化させるため、好ましくない。
乾燥した電極積層体または電極捲回体は、好ましくは露点−40℃以下のドライ環境下にて、金属缶やラミネートフィルムに代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残した状態で封止することが好ましい。露点−40℃より高いと、電極積層体または電極捲回体に水分が付着してしまい、系内に水が残存し、自己放電特性を悪化させるため、好ましくない。外装体の封止方法は特に限定しないが、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いることができる。
<注液、含浸、封止工程>
組立工程の終了後に、外装体の中に収納された電極積層体または電極捲回体に、非水系電解液を注液する。注液工程の終了後に、更に、含浸を行い、正極前駆体、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極前駆体、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するリチウムドープ工程において、ドープが不均一に進むため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。前記含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の非水系リチウム型蓄電素子を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸工程終了後には、外装体が開口した状態の非水系リチウム型蓄電素子を減圧しながら封止することで密閉する。
<リチウムドープ工程>
リチウムドープ工程において、好ましい工程としては、前記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して前記リチウム化合物を分解することにより、正極前駆体中のリチウム化合物を分解してリチウムイオンを放出し、負極でリチウムイオンを還元することにより負極活物質層にリチウムイオンがプレドープされる。
第2正極活物質としてのリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を用いる場合には、リチウムイオンを含む正極活物質と、リチウム化合物が、負極活物質へのリチウムイオンのドーパント源として機能することが好ましい。
このリチウムドープ工程において、正極前駆体中のリチウム化合物の酸化分解に伴い、CO等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;前記外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;
等を挙げることができる。
<エージング工程>
リチウムドープ工程の終了後に、非水系リチウム型蓄電素子にエージングを行うことが好ましい。エージング工程において電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にリチウムイオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
前記エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
<ガス抜き工程>
エージング工程の終了後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
前記ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、前記外装体を開口した状態で非水系リチウム型蓄電素子を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。
<蓄電素子の特性評価>
(放電容量)
本明細書では、容量Q(Ah)とは、以下の方法によって得られる値である:
先ず、非水系リチウム型蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分行う。その後、2.0Vまで0.1Cの電流値で定電流放電を施した際の電気容量をQとする。
ここで電流のCレートとは、上限電圧から下限電圧まで定電流放電を行う際、1時間で放電が完了する電流値のことを1Cという。本明細書では、上限電圧4.0Vから下限電圧2.0Vまで定電流放電を行う際に1時間で放電が完了する電流値のことを1Cとする。
(常温内部抵抗)
本明細書では、常温内部抵抗Raとは、以下の方法によって得られる値である:
先ず、非水系リチウム型蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行う。続いて、5Cの電流値で2.0Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=4.0−Eo、及びRa=ΔE/(5C(電流値A))により算出される値がRaである。
(高温保存試験後のガス発生量及び内部抵抗)
本明細書では、高温保存試験時のガス発生量は、以下の方法によって測定する:
先ず、非水系リチウム型蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を30分間行う。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、前述の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存する。この工程を繰り返し行い、保存開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセル体積Vbをアルキメデス法によって測定する。Vb−Vaを、セル電圧4.0V及び環境温度60℃において2か月間保存した際に発生するガス量とする。
前記高温保存試験後のセルに対して、前記常温内部抵抗と同様の測定方法を用いて得られる抵抗値を高温保存試験後の内部抵抗をRbとする。高温保存試験の前後における内部抵抗の変化は、Rb/Raで表す。
<測定項>
[BET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径]
本実施形態におけるBET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E. P. Barrett, L. G. Joyner and P. Halenda, J. Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))。
また、MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45 (1968))。
また、平均細孔径とは、液体窒素温度下で、各相対圧力下における窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる、試料の質量あたりの全細孔容積を上記BET比表面積で除して求めたものを指す。
[平均粒子径]
本実施形態における活物質の平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定した際、全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径(すなわち、50%径(Median径))を指す。この平均粒子径は市販のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
[分散度]
本実施形態における分散度は、JIS K5600に規定された粒ゲージによる分散度評価試験により求められる値である。すなわち、粒のサイズに応じた所望の深さの溝を有する粒ゲージに対して、溝の深い方の先端に十分な量の試料を流し込み,溝から僅かに溢れさせる。次いで、スクレーパーの長辺がゲージの幅方向と平行になり、粒ゲージの溝の深い先端に刃先が接触するように置き、スクレーパーをゲージの表面になるように保持しながら、溝の長辺方向に対して直角に、ゲージの表面を均等な速度で、溝の深さ0まで1〜2秒間かけて引き、引き終わってから3秒以内に20°以上30°以下の角度で光を当てて観察し、粒ゲージの溝に粒が現れる深さを読み取る。
[粘度及びTI値]
本実施形態における粘度(ηb)及びTI値は、それぞれ以下の方法により求められる値である。まず、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度2s−1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度(ηa)を取得する。次いで、ずり速度を20s−1に変更した他は上記と同様の条件で測定した粘度(ηb)を取得する。上記で得た粘度の値を用いてTI値はTI値=ηa/ηbの式により算出される。ずり速度を2s−1から20s−1へ上昇させる際は、1段階で上昇させてもよいし、上記の範囲で多段的にずり速度を上昇させ、適宜そのずり速度における粘度を取得しながら上昇させてもよい。
[水銀圧入法による細孔分布測定]
本実施形態における水銀圧入法による総積算細孔容積、Log微分細孔容積はそれぞれ以下の方法によって求められる値である。試料の入った容器を真空排気した後に水銀を満たし、水銀に圧力を掛けて、掛けた圧力に対する水銀侵入量の測定を行う。掛けた圧力を下記式から細孔径に換算し、水銀侵入量を細孔容積に換算し、細孔分布を得る。
P×D=−4×σ×cosθ
{ここで、P;圧力、D;細孔径、σ;水銀の表面張力485mN/m、θ;水銀の接触角130°とする。}
横軸が細孔径(μm)、縦軸が積算細孔容積(mL/g)の積算細孔容積分布から、或る特定の細孔径の範囲、例えば0.3μm以上50μm以下の範囲の総積算細孔容積(Vp)が、下記式:
(細孔径0.3μmにおける積算細孔容積)−(細孔径50μmにおける積算細孔容積)
によって算出される。
また、測定ポイント間の細孔容積差分値dVを、測定ポイント間の細孔径差分値の対数d(logD)で割った値dV/d(logD)を、測定ポイント区間の平均細孔径に対するLog微分細孔容積とする。
なお、本実施形態における正極活物質層の総積算細孔容積(mL/g)及びLog微分細孔容積(mL/g)の単位重量(g)は、正極活物質層全体の重量と定義する。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を更に明確にする。しかしながら、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
<第1正極活物質の調製>
[活性炭1の調整]
破砕されたヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、500℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で前記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。その後、洗浄された活性炭を115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
この活性炭1について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒子径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2360m/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59であった。
[活性炭2の調整]
フェノール樹脂について、窒素雰囲気下、焼成炉中600℃において2時間の炭化処理を行った後、ボールミルにて粉砕し、分級を行って平均粒子径7.0μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃において1時間加熱して賦活化を行った。その後、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で賦活化物について1時間撹拌洗浄を行った後、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄した後に乾燥を行うことにより、活性炭2を得た。
この活性炭2について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒子径を測定した結果、7.1μmであった。ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が3627m/g、メソ孔量(V1)が1.50cc/g、マイクロ孔量(V2)が2.28cc/g、V1/V2=0.66であった。
<負極活物質の調製>
[負極1の調製]
平均粒子径3.0μm、BET比表面積が1,780m/gの市販のヤシ殻活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合炭素材料1を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて、複合炭素材料1を自然冷却により60℃まで冷却した後、得られた複合炭素材料1を炉から取り出した。
得られた複合炭素材料1について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は3.2μm、BET比表面積は262m/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料の活性炭に対する質量比率は78%であった。
次いで複合炭素材料1を負極活物質として用いて負極を製造した。
複合炭素材料1を85質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を5質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して負極塗工液を得た。得られた負極塗工液を厚み10μmの電解銅箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスして負極1を得た。得られた負極1における負極活物質層の厚みは片面あたり20μmであった。
[負極2の調製]
BET比表面積が3.1m/g、平均粒子径が4.8μmの市販の人造黒鉛150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)15gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合炭素材料2を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、1000℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法により行なった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料2を炉から取り出した。
得られた複合炭素材料2について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は4.9μm、BET比表面積は6.1m2/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料の人造黒鉛に対する質量比率は2%であった。
次いで複合炭素材料2を負極活物質として用いて負極を製造した。
複合炭素材料2を80質量部、アセチレンブラックを8質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を12質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して負極塗工液を得た。得られた負極塗工液を厚み10μmの電解銅箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスして負極2を得た。得られた負極2における負極活物質層の厚みは片面あたり25μmであった。
<電解液の調製>
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、全電解液に対してLiN(SOF)及びLiPFの濃度比が75:25(モル比)であり、かつLiN(SOF)及びLiPFの濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を溶解して得た溶液を非水系電解液として使用した。
ここで調製した電解液におけるLiN(SOF)及びLiPFの濃度は、それぞれ、0.3mol/L及び0.9mol/Lであった。
[実施例1]
<正極前駆体の製造>
[第1正極活物質塗工液の調整]
上記で得た活性炭2を第1正極活物質として用いて下記方法で第1正極活物質塗工液を調整した。
活性炭2を59.5質量部、リチウム化合物として平均粒子径3.2μmの炭酸リチウムを28.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して第1正極活物質塗工液1aを得た。
[第2正極活物質塗工液の調整]
第2正極活物質として平均粒子径2.2μmのLiFePO粉体を77.5質量部、リチウム化合物として平均粒子径3.2μmの炭酸リチウムを7.0重量部、アセチレンブラックを12質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を3.5質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して第2正極活物質塗工液1bを得た。
[正極前駆体(構造A)の調整]
上記で得られた第1正極活物質塗工液1aを厚み15μmのアルミニウム箔の一方の面に塗工し、第2正極活物質塗工液1bを他方の面に塗工し、乾燥し、プレスして両面正極前駆体1を得た。得られた両面正極前駆体1における第1正極活物質層、第2正極活物質層の厚みは片面あたり各々75μm、20μmであった。
また、第1正極活物質塗工液1a及び第2正極活物質塗工液1bを厚み15μmのアルミニウム箔の片面のみにそれぞれ塗工し、乾燥し、プレスして片面正極前駆体1a及び1bを得た。得られた片面正極前駆体1a及び1bにおける正極活物質層の厚みは片面あたり各々75μm、20μmであった。
<非水系リチウム型蓄電素子の作製>
[蓄電素子の組立、乾燥]
上記で得られた両面負極1および両面正極前駆体1を10cm×10cm(100cm)にカットした。最上面、最下面はそれぞれ片面正極前駆体1a及び1bを用い、更に両面負極1を21枚と両面正極前駆体1を20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体とした。この電極積層体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。乾燥した電極積層体を露点−45℃のドライ環境下にて、アルミラミネート包材から成る外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、シール圧1.0MPaの条件でヒートシールした。
[蓄電素子の注液、含浸、封止]
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入して、リチウムドープ処理前の非水系リチウム型蓄電素子を形成した。続いて、減圧チャンバーの中に前記非水系リチウム型蓄電素子を入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返したのち、蓄電素子を15分間静置した。さらに、常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した(それぞれ−95,−96,−97,−81,−97,−97,−97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、非水系リチウム型蓄電素子を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
[リチウムドープ工程]
得られた非水系リチウム型蓄電素子に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、40℃環境下、電流値0.5Aで電圧4.6Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.6V定電圧充電を6時間継続する手法により初期充電を行い、負極にリチウムドープを行った。
[エージング工程]
リチウムドープ後の非水系リチウム型蓄電素子を25℃環境下、0.5Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。続いて、非水系リチウム型蓄電素子を60℃の恒温槽に24時間保管した。
[ガス抜き工程]
エージング後の非水系リチウム型蓄電素子を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に前記非水系リチウム型蓄電素子を入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機に非水系リチウム型蓄電素子を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
以上の工程により、非水系リチウム型蓄電素子を少なくとも2つ完成させた。
<非水系リチウム型蓄電素子の評価>
上記で得た非水系リチウム型蓄電素子の内、1つは後述する放電容量、Raの測定及び高温保存試験を実施した。次いで、もう1つは後述する正極の化合物の定量、正極の水銀圧入法による細孔分布測定、及び正極断面SEM−EDX測定を実施した。
[放電容量の測定]
前記工程で得られた非水系リチウム型蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行った。その後、2.0Vまで0.1Cの電流値で定電流放電を施した際の放電容量Qを表1に示した。
[Raの算出]
前記工程で得られた非水系リチウム型蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、5Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行い、続いて、5Cの電流値で2.0Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとし、降下電圧ΔE=4.0−Eo、及びR=ΔE/(5C(電流値A))により常温内部抵抗Raを算出した。得られた結果を表1に示した。
[高温保存試験後のガス発生量]
前記工程で得られた非水系リチウム型蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置を用いて、0.1Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行った。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、同様の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存した。この工程を2か月間繰り返し実施し、保存試験開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセルの体積Vbをアルキメデス法によって測定した。Vb−Vaにより求めたガス発生量を、表1にまとめた。
[Rb/Raの算出]
前記高温保存試験後の蓄電素子に対して、前記[Raの算出]と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rbを算出した。
このRb(Ω)を、前記[Raの算出]で求めた高温保存試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rb/Raを表1にまとめた。
[正極活物質層に含まれる化合物の定量]
完成した複数の非水系リチウム型蓄電素子のうち、数点の素子を2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているArボックス内で解体して両面正極を取り出した。取り出した両面正極を、ジメチルカーボネート(DMC)で浸漬洗浄した後、大気非暴露を維持した状態下でサイドボックス中で真空乾燥させた。
乾燥後の両面正極を、大気非暴露を維持した状態でサイドボックスからArボックスに移し、重水で浸漬抽出して、正極抽出液を得た。抽出液の解析は、(1)イオンクロマトグラフィー(IC)及び(2)H−NMRにて行い、求めた正極抽出液中の各化合物の濃度A(mol/ml)、抽出に用いた重水の体積B(ml)、及び抽出に用いた正極活物質層の質量C(g)から、下記数式5:
単位質量当たりの存在量(mol/g)=A×B÷C ...(数式5)
により、正極に堆積する各化合物の、正極活物質層単位質量当たりの存在量(mol/g)を求めた。
なお、抽出に用いた正極活物質層の質量Cは、以下の方法によって求めた。
重水抽出後に残った正極電極体の集電体から合剤(正極活物質層)を剥がし取り、該剥がし取った合剤を、水洗した後、真空乾燥した。真空乾燥して得た合剤を、NMP又はDMFにより洗浄した。続いて、得られた正極活物質層を再度真空乾燥した後、秤量することにより、抽出に用いた正極活物質層の質量を調べた。
正極抽出液を3mmφNMRチューブ(株式会社シゲミ製PN−002)に入れ、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン入りの重水素化クロロホルムの入った5mmφNMRチューブ(日本精密科学株式会社製N−5)に挿し込み、二重管法にて、H NMR測定を行った。1,2,4,5−テトラフルオロベンゼンのシグナル7.1ppm(m,2H)で規格化して、観測された各化合物の積分値を求めた。
また、濃度が既知のジメチルスルホキシドの入った重水素化クロロホルムを3mmφNMRチューブ(株式会社シゲミ製PN−002)に入れ、上記と同一の1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン入りの重水素化クロロホルムの入った5mmφNMRチューブ(日本精密科学株式会社製N−5)に挿し込み、二重管法にて、H NMR測定を行った。上記と同様に、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼンのシグナル7.1ppm(m,2H)で規格化して、ジメチルスルホキシドのシグナル2.6ppm(s,6H)の積分値を求めた。用いたジメチルスルホキシドの濃度と積分値の関係から、正極抽出液中の各化合物の濃度Aを求めた。
H NMRスペクトルの帰属は、以下のとおりである。
[XOCHCHOXについて]
XOCHCHOXのCH:3.7ppm(s,4H)
CHOX:3.3ppm(s,3H)
CHCHOXのCH:1.2ppm(t,3H)
CHCHOXのCHO:3.7ppm(q,2H)
上記のように、XOCHCHOXのCHのシグナル(3.7ppm)はCHCHOXのCHOのシグナル(3.7ppm)と重なってしまうため、CHCHOXのCHのシグナル(1.2ppm)から算出されるCHCHOXのCHO相当分を除いて、XOCHCHOX量を算出する。
上記式XOCHCHOXにおいて、Xは、それぞれ、−(COO)Liまたは−(COO)(ここで、nは0又は1であり、かつRは、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基である。)である。
上記(1)及び(2)の解析により求めた各化合物の抽出液中の濃度、及び抽出に用いた重水の体積、抽出に用いた正極の活物質質量から、正極活物質層に含まれる化合物の存在量を、表1の項目[化合物量/mol/g]にまとめた。
[正極試料の調整]
得られた非水系リチウム型蓄電素子を露点温度−72℃のアルゴンボックス中で解体し、両面に正極活物質層が塗工された正極を10cm×5cmの大きさに切り出し、30gのジエチルカーボネート溶媒に浸し、時折ピンセットで正極を動かし、10分間洗浄した。続いて正極を取り出し、アルゴンボックス中で5分間風乾させ、新たに用意した30gのジエチルカーボネート溶媒に正極を浸し、前記と同様の方法にて10分間洗浄した。正極をアルゴンボックスから取り出し、真空乾燥機(ヤマト科学製、DP33)を用いて、温度25℃、圧力1kPaの条件にて20時間乾燥し、正極試料1を得た。
[リチウム化合物の平均粒子径の測定]
(SEM−EDXによるリチウム化合物の同定)
正極試料1から1cm×1cmの小片を切り出し、10Paの真空中にて金をスパッタリングにより表面にコーティングした。続いて以下に示す条件にて、大気暴露下で正極両面の表面のSEM、及びEDXを測定した。
(SEM−EDX測定条件)
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE−SEM S−4700
・加速電圧:10kV
・エミッション電流:1μA
・測定倍率:2000倍
・電子線入射角度:90°
・X線取出角度:30°
・デッドタイム:15%
・マッピング元素:C、O
・測定画素数:256×256ピクセル
・測定時間:60sec.
・積算回数:50回
・明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
得られた炭素マッピングと酸素マッピングの重複部分が、粒子状に点在して確認されたことから、炭酸リチウムが正極活物質層の中に、粒子状に点在していることが分かった。同視野のSEM画像において、炭酸リチウム粒子全てについて断面積Sを求め、先述の式(4)にて算出される平均粒子径dを求めた結果を、表1にまとめた。
[正極の水銀圧入法による細孔分布測定]
前記正極試料1から大きさ4cm×5cmの小片を切り出し、水銀ポロシメーター(マイクロメリティクス社製オートポアIV9510型)を使用し、細孔径400μm〜0.01μmの測定範囲にて、水銀圧入法による細孔分布測定を実施した。上述した方法により、Vpを算出し、得られた結果を表1に示した。また、細孔径0.1μm以上100μm以下の範囲に存在するピークを、細孔径が小さい方から順にP1、P2として、ピークトップ位置の細孔径及びLog微分細孔容積とともに表1に合わせて示した。
[実施例2〜15および比較例1〜2]
正極前駆体のリチウム化合物の種類及びその平均粒子径、負極、リチウムドープ工程の充電時間を、それぞれ表1に示す通りとした他は実施例1と同様にして実施例2〜15と比較例1〜2の非水系リチウム型蓄電素子をそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた非水系リチウム型蓄電素子の評価結果を表1に示した。
[実施例16]
<正極前駆体の製造>
[第1正極活物質塗工液の調整]
第1正極活物質として活性炭1を用いた他は実施例1と同様にして実施例16の第1正極活物質塗工液2aを調整した。
[正極前駆体(構造A)の調整]
上記の第1正極活物質塗工液2aを用いた他は実施例1と同様にして実施例16の両面正極前駆体2、片面正極前駆体2aを得た。得られた両面正極前駆体2における第1正極活物質層、第2正極活物質層の厚みは片面あたり各々60μm、20μmであった。得られた片面正極前駆体2aにおける正極活物質層の厚みは片面あたり60μmであった。
<非水系リチウム型蓄電素子の作製、評価>
上記で得た両面正極前駆体2及び片面正極前駆体2aを用いた他は実施例1と同様にして実施例16の非水系リチウム型蓄電素子を作製し、各種の評価を行った。得られた非水系リチウム型蓄電素子の評価結果を表1に示した。
[実施例17]
<正極前駆体の製造>
[正極前駆体(構造B)の調整]
上記で得られた第1正極活物質塗工液1aを厚み15μmのアルミニウム箔の両面に塗工し、乾燥し、プレスして両面正極前駆体3aを得た。得られた両面正極前駆体3aにおける第1正極活物質層の厚みは片面あたり75μmであった。
また、第2正極活物質塗工液1bを厚み15μmのアルミニウム箔の両面に塗工し、乾燥し、プレスして両面正極前駆体3bを得た。得られた両面正極前駆体3bにおける第2正極活物質層の厚みは片面あたり20μmであった。
<非水系リチウム型蓄電素子の作製、評価>
「両面正極前駆体1を20枚」の代わりに「両面正極前駆体3aを10枚、両面正極前駆体3bを10枚」用いた他は実施例1と同様にして実施例17の非水系リチウム型蓄電素子を作製し、各種の評価を行った。正極の化合物の定量、正極の水銀圧入法による細孔分布測定、正極断面SEM−EDX測定については両面正極前駆体3a及び3bのドープ後正極を等面積で含むように測定した。得られた非水系リチウム型蓄電素子の評価結果を表1に示した。
[実施例18〜19および比較例3〜4]
正極前駆体のリチウム化合物の平均粒子径、リチウムドープ工程の充電時間をそれぞれ表1に示す通りとした他は実施例17と同様にして実施例18〜19と比較例3〜4の非水系リチウム型蓄電素子をそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた非水系リチウム型蓄電素子の評価結果を表1に示した。
[実施例20]
<正極前駆体の製造>
[正極活物質塗工液の調整]
第1正極活物質として活性炭2を30.0質量部、第2正極活物質として平均粒子径2.2μmのLiFePO粉体を39.5質量部、リチウム化合物として平均粒子径3.2μmの炭酸リチウムを17.5質量部、ケッチェンブラックを1.5質量部、アセチレンブラックを5.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を5.5質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して正極活物質塗工液4を得た。
[正極前駆体(構造C)の調整]
上記で得られた正極活物質塗工液4を厚み15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗工し、乾燥し、プレスして片面正極前駆体4及び両面正極前駆体4を得た。得られた片面正極前駆体4及び両面正極前駆体4における正極活物質層の厚みは片面あたり50μmであった。
<非水系リチウム型蓄電素子の作製、評価>
上記で得た両面正極前駆体4及び片面正極前駆体4を用いた他は実施例1と同様にして実施例20の非水系リチウム型蓄電素子を作製し、各種の評価を行った。得られた非水系リチウム型蓄電素子の評価結果を表1に示した。
[実施例21]
<正極前駆体の製造>
[正極前駆体(構造D)の調整]
上記で得られた第1正極活物質塗工液1aを厚み15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗工し、乾燥し、第1正極活物質層を作製した。続いて、その第1正極活物質層の上に、第2正極活物質塗工液1bを塗工し、乾燥し、プレスして、第1正極活物質層と第2正極活物質層が多層塗りされた片面正極活物質5及び両面正極前駆体5を得た。得られた片面正極前駆体5及び両面正極前駆体5における正極活物質層の厚みは片面あたり50μmであった。
<非水系リチウム型蓄電素子の作製、評価>
上記で得た両面正極前駆体5及び片面正極前駆体5を用いた他は実施例1と同様にして実施例21の非水系リチウム型蓄電素子を作製し、各種の評価を行った。得られた非水系リチウム型蓄電素子の評価結果を表1に示した。
[実施例22]
<正極前駆体の製造>
[正極前駆体(構造E)の調整]
上記で得られた第1正極活物質塗工液1a及び第2正極活物質塗工液1bを等面積になるように、厚み15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗工し、乾燥し、プレスして、アルミニウム箔の同一面上に第1正極活物質層と第2正極活物質層が等面積で塗布された、片面正極活物質6及び両面正極前駆体6を得た。得られた片面正極前駆体6及び両面正極前駆体6における正極活物質層の厚みは片面あたり75μmであった。
<非水系リチウム型蓄電素子の作製、評価>
上記で得た両面正極前駆体6及び片面正極前駆体6を用いた他は実施例1と同様にして実施例22の非水系リチウム型蓄電素子を作製し、各種の評価を行った。正極の化合物の定量、正極の水銀圧入法による細孔分布測定、正極断面SEM−EDX測定については、両面正極における第1正極活物質層と第2正極活物質層を等面積で含むように測定した。得られた非水系リチウム型蓄電素子の評価結果を表1に示した。
[比較例5]
<正極前駆体の製造>
[第1正極活物質塗工液の調整]
第1正極活物質として活性炭2を87.5質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して第1正極活物質塗工液7aを得た。
[第2正極活物質塗工液の調整]
第2正極活物質として平均粒子径2.2μmのLiFePO粉体を84.5質量部、アセチレンブラックを12質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を3.5質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して第2正極活物質塗工液7bを得た。
[正極前駆体(構造A)の調整]
上記で得られた第1正極活物質塗工液7aを厚み15μmのアルミニウム箔の一方の面に塗工し、第2正極活物質塗工液7bを他方の面に塗工し、乾燥し、プレスして両面正極前駆体7を得た。得られた両面正極前駆体7における第1正極活物質層、第2正極活物質層の厚みは片面あたり各々75μm、20μmであった。
また、第1正極活物質塗工液7a及び第2正極活物質塗工液7bを厚み15μmのアルミニウム箔の片面のみにそれぞれ塗工し、乾燥し、プレスして片面正極前駆体7a及び7bを得た。得られた片面正極前駆体7a及び7bにおける正極活物質層の厚みは片面あたり各々75μm、20μmであった。
<非水系リチウム型蓄電素子の作製、評価>
上記で得た両面正極前駆体7、片面正極前駆体7a及び7b、並びに負極活物質単位質量当たり211mAh/gに相当する金属リチウム箔を負極2の負極活物質層表面に貼り付けた負極を用いた他は実施例1と同様にして非水系リチウム型蓄電素子の組立及び注液、含浸、封止工程を実施した。
次いで、リチウムドープ工程として、上記で得た非水系リチウム型蓄電素子を環境温度45℃の恒温槽の中で72時間保管し、金属リチウムをイオン化させて負極2にドープした。その後、得られた非水系リチウム型蓄電素子について、実施例1と同様にしてエージング工程、ガス抜き工程を実施して2つの非水系リチウム型蓄電素子を製造し、評価を行った。その結果を表1に示した。
[比較例6]
<正極前駆体の製造>
[正極前駆体(構造B)の調整]
上記で得られた第1正極活物質塗工液7aを厚み15μmのアルミニウム箔の両面に塗工し、乾燥し、プレスして両面正極前駆体8aを得た。得られた両面正極前駆体8aにおける第1正極活物質層の厚みは片面あたり75μmであった。
また、第2正極活物質塗工液7bを厚み15μmのアルミニウム箔の両面に塗工し、乾燥し、プレスして両面正極前駆体8bを得た。得られた両面正極前駆体8bにおける第2正極活物質層の厚みは片面あたり20μmであった。
<非水系リチウム型蓄電素子の作製、評価>
「両面正極前駆体7を20枚」の代わりに「両面正極前駆体8aを10枚、両面正極前駆体8bを10枚」用いた他は比較例5と同様にして比較例6の非水系リチウム型蓄電素子を作製し、各種の評価を行った。正極の化合物の定量、正極の水銀圧入法による細孔分布測定、正極断面SEM−EDX測定については両面正極前駆体8a及び8bのドープ後正極を等面積で含むように測定した。得られた非水系リチウム型蓄電素子の評価結果を表1に示した。
リチウム化合物を正極前駆体に添加しなかった比較例5及び6では、正極活物質層にほとんど堆積化合物が存在しないが、比較例5及び6以外はリチウムドープ工程での4.6V定電圧充電時間に応じ、化合物が存在することがわかる。
比較例5及び6を除き、正極前駆体を作製するときに添加したリチウム化合物の平均粒子径に比べ、リチウムイオン二次電池を作製した後では、リチウム化合物の平均粒子径が小さくなっていることがわかる。これはリチウム化合物がドーパント源として機能していることを意味している。
以上の結果を以下の表1にまとめて示した。
表1より、正極活物質層に含まれる化合物の存在量が、3.8×10−9mol/g以上3.0×10−2mol/g以下であれば、高い入出力特性(Raが小さい)と、優れた高温保存耐久性(Rb/Ra及びVb−Vaが小さい)を兼ね備えた非水系リチウム型蓄電素子となることが分かる。これらは、正極活物質層に含まれる化合物が、正極活物質の表面に被膜状に存在することで、良好なイオン伝導体として働くことで内部抵抗を低減させる役割を果たすとともに、正極活物質上の反応活性点を被覆することで、高温保存下における電解液の分解を防いでいるためと考えられる。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、例えば自動車のハイブリット駆動システムの分野において、内燃機関、燃料電池、又はモーターと組み合わせて使用することができる。
1 正極端子
2 負極端子
3 外装体
4 電極体
5 負極集電体
6 負極活物質層
7 セパレータ
8 正極集電体
9 第1正極活物質層
10 第2正極活物質層
11 第1正極活物質及び第2正極活物質層を含む正極活物質層

Claims (18)

  1. 正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を2つ以上有する電極体と、
    リチウムイオンを含む非水系電解液と、
    が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
    該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
    該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
    該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層又は第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層のどちらか一方の単一層とを有し、該正極集電体の両面に該第1又は第2正極活物質層を有する場合には該正極集電体の一方の面に該第1正極活物質層があり、他方の面に該第2正極活物質層があり、かつ
    該正極の該第1又は第2正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
    {式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    で表される化合物から選択される1種以上を、該第1又は第2正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
    該非水系リチウム型蓄電素子。
  2. 正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を2つ以上有する電極体と、
    リチウムイオンを含む非水系電解液と、
    が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
    該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
    該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
    該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層又は第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層のどちらか一方の単一層とを有し、該正極集電体の両面に該第1又は第2正極活物質層を有する場合には該正極集電体の両面に同一の正極活物質層があり、かつ
    該正極の該第1又は第2正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
    {式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    で表される化合物から選択される1種以上を、該第1又は第2正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
    該非水系リチウム型蓄電素子。
  3. 正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有する電極体と、
    リチウムイオンを含む非水系電解液と
    が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
    該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
    該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
    該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に、第1正極活物質としての炭素材料及び第2正極活物質としてのリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む正極活物質層を有し、かつ
    該正極の該正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
    {式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    で表される化合物から選択される1種以上を、該正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
    該非水系リチウム型蓄電素子。
  4. 正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有する電極体と、
    リチウムイオンを含む非水系電解液と、
    が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
    該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
    該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
    該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有し、該正極活物質層は、該正極集電体の片側同一面内に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層と、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層とが多層形成された構造であり、かつ
    該正極の該第1又は第2正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
    {式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    で表される化合物から選択される1種以上を、該第1又は第2正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
    該非水系リチウム型蓄電素子。
  5. 正極、セパレータ、及び負極がこの順に重ねられた構造体を1つ以上有する電極体と、
    リチウムイオンを含む非水系電解液と、
    が外装体に収容されて成る非水系リチウム型蓄電素子であって、
    該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面に、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
    該電極体は、2種以上の正極活物質を含有し、
    該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有し、該正極活物質層は、該正極集電体の片側同一面内に、第1正極活物質として炭素材料を含む第1正極活物質層を有する領域と、第2正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物を含む第2正極活物質層を有する領域とが混在する構造であり、かつ
    該正極の該第1又は第2正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
    {式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(2)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    {式(3)中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数1〜4のハロゲン化アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のモノ若しくはポリヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のモノ又はポリヒドロキシアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、又はアリール基であり、かつX及びXは、それぞれ独立に、−(COO)(ここで、nは0又は1である。)である。}
    で表される化合物から選択される1種以上を、該第1又は第2正極活物質層の単位質量当たり3.8×10−9mol/g〜3.0×10−2mol/g含有する、
    該非水系リチウム型蓄電素子。
  6. 前記正極の前記正極活物質層の少なくとも1つの、水銀圧入法による細孔分布を測定したとき、細孔径とLog微分細孔容積との関係を示す細孔分布曲線において、Log微分細孔容積0.1mL/g以上5.0mL/g以下のピーク値を有するピークが、細孔径0.3μm以上50μm以下の範囲で1つ以上存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  7. 前記正極に、前記リチウムイオンを吸蔵・放出できる遷移金属酸化物とは異なるリチウム化合物が含まれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  8. 前記リチウム化合物が、炭酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムから選択される1種類以上である、請求項7に記載の非水系チウム型蓄電素子。
  9. 前記リチウム化合物が炭酸リチウムである、請求項7又は8に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  10. 前記リチウム化合物の平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  11. 前記第1正極活物質としての前記炭素材料が活性炭である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  12. 前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、
    BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下を示す、請求項11に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  13. 前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V1(cc/g)が0.8<V1≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V2(cc/g)が0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、
    BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下を示す、請求項11に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  14. 前記負極活物質のリチウムイオンのドープ量が、単位質量当たり530mAh/g以上2,500mAh/g以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  15. 前記負極活物質のBET比表面積が100m/g以上1,500m/g以下である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  16. 前記負極活物質のリチウムイオンのドープ量が、単位質量当たり50mAh/g以上700mAh/g以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  17. 前記負極活物質のBET比表面積が1m/g以上50m/g以下である、請求項1〜13及び16のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  18. 前記負極活物質の平均粒子径が1μm以上10μm以下である、請求項1〜13、16及び17のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
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WO2023195434A1 (ja) * 2022-04-04 2023-10-12 株式会社Gsユアサ 蓄電素子及び蓄電装置
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