JP2018026393A - 非水系リチウム型蓄電素子 - Google Patents
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Abstract
Description
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)も高く、前記高出力が要求される分野で最適のデバイスと考えられてきた。しかしながら、そのエネルギー密度は1〜5Wh/L程度に過ぎない。そのため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高出力かつ高耐久性を有するがエネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
以下の特許文献1には、貫通孔を有する銅箔からなる負極集電体を用いた負極の活物質層に金属リチウム箔を圧着し、プレドープする方法が提案されている。
また、以下の特許文献2には、正極集電体及び負極集電体に貫通孔を備え、正極又は負極に対向するリチウム金属との電気化学的接触により負極にプレドープする方法が提案されている。しかしながら、これらの方法において、負極に均一にリチウムイオンをプレドープすることが可能であるが、負極集電体に貫通孔を設けることにより集電体の金属抵抗が上昇するという問題や、リチウム金属が析出しやすいという問題がある。
すなわち、本発明は、下記のとおりのものである。
該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、該負極活物質はリチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含有し、
該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、1質量%以上50質量%以下の炭酸リチウム粒子を含有し、
該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上40%以下であり、
前記炭酸リチウム粒子の数平均粒子径をX1とするとき、1μm≦X1≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をY1とするとき、3μm≦Y1≦20μmであり、かつ、X1<Y1である、前記非水系リチウム型蓄電素子。
[2]前記正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、2%以上20%以下である、前記[1]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[3]前記正極に含有される炭酸リチウムの量が、該正極活物質層の全質量を基準として、2.5質量%以上30質量%以下である、前記[1]又は[2]に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[4]前記正極の表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率が30%以上99%以下である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[5]前記正極をBIB加工した断面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率が10%以上65%以下である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[6]前記正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
[7]前記正極活物質層に含まれる正極活物質が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下を示す活性炭である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[8]前記正極活物質層に含まれる正極活物質が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V1(cc/g)が0.8<V1≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V2(cc/g)が0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下を示す活性炭である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[9]前記負極活物質のリチウムイオンのドープ量が、単位質量当たり530mAh/g以上2,500mAh/g以下である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[10]前記負極活物質のBET比表面積が100m2/g以上1,500m2/g以下である、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[12]前記負極活物質のBET比表面積が1m2/g以上50m2/g以下である、前記[1]〜[8]、及び[11]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[13]前記負極活物質の平均粒子径が1μm以上10μm以下である、前記[1]〜[8]、[11]、及び[12]のいずれかに記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[14]正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオンを含む非水系電解液を備える非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、1質量%以上50質量%以下の炭酸リチウム粒子を含有し、
該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上40%以下であり、
前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をX1とするとき、1μm≦X1≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をY1とするとき、3μm≦Y1≦20μmであり、かつ、X1<Y1であり、そして
該非水系リチウム型蓄電素子において、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、静電容量をF(F)、電力量をE(Wh)、蓄電素子の体積をV(L)としたとき、以下の:
(a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である;
(b)E/Vが15以上50以下である;
を同時に満たすことを特徴とする、前記非水系リチウム蓄電素子。
[15]正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオンを含む非水系電解液を備える非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、1質量%以上50質量%以下の炭酸リチウム粒子を含有し、
該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上40%以下であり、
前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をX1とするとき、1μm≦X1≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をY1とするとき、3μm≦Y1≦20μmであり、かつ、X1<Y1であり、そして
該非水系リチウム型蓄電素子において、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した後の、セル電圧4Vでの内部抵抗をRb(Ω)、環境温度25℃にて、セル電圧を2.2Vから3.8Vまで、300Cのレートでの充放電サイクルを60,000回行った後の内部抵抗をRc(Ω)としたとき、以下の:
(c)Rb/Raが3.0以下である;
(d)セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した時に発生するガス量が、25℃において25×10−3cc/F以下である;
(e)Rc/Raが0.9以上2.0以下である;
を同時に満たすことを特徴とする、前記非水系リチウム型蓄電素子。
[蓄電素子]
本実施形態に係る蓄電素子は、正極、負極、セパレータ、リチウムイオンを含む非水系電解液を備える。該負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有する。該正極は、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有する。
[正極]
正極は、正極集電体と、その片面又は両面に存在する正極活物質層とを有する。また、正極は、蓄電素子組み立て前の正極前駆体として、炭酸リチウムを含む。後述のように、本実施形態では、蓄電素子組み立て工程内で、負極にリチウムイオンをプレドープすることが好ましいが、そのプレドープ方法としては、前記炭酸リチウムを含む正極前駆体、負極、セパレータ、外装体、及び非水系電解液を用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。前記炭酸リチウムは前記正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層に含有されることが好ましい。
本明細書中、リチウムドープ工程前における正極状態のことを正極前駆体、リチウムドープ工程後における正極状態のことを正極と定義する。
前記正極活物質層は、活性炭を含む正極活物質を含有する。これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
また、正極前駆体の正極活物質層には、炭酸リチウムが含有される。
正極活物質は、活性炭を含む。正極活物質としては、活性炭のみを使用してもよく、又は活性炭に加えて、後述するような他の炭素材料を併用してもよい。この炭素材料としては、カーボンナノチューブ、導電性高分子、又は多孔性の炭素材料を使用することがより好ましい。正極活物質には活性炭を含む1種類以上の炭素材料を混合して使用してもよく、炭素材料以外の材料(例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物等)を含んでもよい。
正極活物質の総量に対する該炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。該炭素材料の含有率は100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。
(1)高い入出力特性のためには、0.3<V1≦0.8、0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下である活性炭(以下、活性炭1ともいう。)が好ましく、また
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下である活性炭(以下、活性炭2ともいう。)が好ましい。
[活性炭1]
活性炭1のメソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。上記V1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
活性炭1のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましい。他方、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。V2は、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m2/g以上3,000m2/g以下であることが好ましく、1,500m2/g以上2,500m2/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m2/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m2/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(好ましくは450〜600℃)程度において、30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、上記炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間)かけて800〜1,000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
更に、上記炭化物の賦活処理に先立ち、予め上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が、好ましく採用できる。
上記炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において使用できる、上記の特徴を有する活性炭1を製造することができる。
上記平均粒子径が3μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。ここで、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が3μm以上であればそのような欠点が生じ難い。他方、平均粒子径が15μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。上記平均粒子径は、より好ましくは4〜15μmであり、更に好ましくは4〜10μmである。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
活性炭2のメソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。V1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは、1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
活性炭2の原料として用いられる炭素源としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており特に好ましい。
この賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600〜900℃(好ましくは650℃〜850℃)の範囲において、0.5〜5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
尚、マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は3μm以上20μm以下であることが好ましい。より好ましくは4μm以上15μm以下、更に好ましくは4μm以上10μm以下である。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって上記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
上記の活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料(例えば、前記特定のV1及び/若しくはV2を有さない活性炭、又は活性炭以外の材料(例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物等))を含んでもよい。例示の態様において、活性炭1の含有量、又は活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量が、それぞれ、全正極活物質の50質量%より多いことが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%であることがより更に好ましい。
正極前駆体は、炭酸リチウムを含有することが好ましく、正極前駆体の正極活物質層が、炭酸リチウムを含有することが、より好ましい。炭酸リチウムはリチウムドープ工程において正極で分解し、リチウムイオンを放出することが可能であり、吸湿性が低く、空気中での取り扱いが可能である。
炭酸リチウムは、粒子状であることが好ましい。炭酸リチウムの微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
正極前駆体のリチウム化合物の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。この範囲の含有割合とすることにより、負極へのドーパント源として好適な機能を発揮するとともに、正極に適当な程度の多孔性を付与することができ、両者相俟って高負荷充放電効率に優れる蓄電素子を与えることができ、好ましい。
正極中に含まれる炭酸リチウムの同定方法は特に限定されないが、例えば、下記の方法により同定することができる。炭酸リチウムの同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
以下に記載するSEM−EDX、ラマン、XPSを測定する際には、アルゴンボックス中で非水系リチウム型蓄電素子を解体して正極を取り出し、正極表面に付着した電解質を洗浄した後に測定を行うことが好ましい。正極の洗浄方法については、正極表面に付着した電解質を洗い流せればよいため、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート溶媒が好適に利用できる。洗浄方法としては、例えば、正極重量の50〜100倍のジエチルカーボネート溶媒に正極を10分間以上浸漬させ、その後溶媒を取り替えて再度正極を浸漬させる。その後正極をジエチルカーボネートから取り出し、真空乾燥(温度:0〜200℃、圧力:0〜20kPa、時間:1〜40時間の範囲で正極中のジエチルカーボネートの残存が1質量%以下になる条件とする。ジエチルカーボネートの残存量については、後述する蒸留水洗浄、液量調整後の水のGC/MSを測定し、予め作成した検量線を基に定量することができる。)させた後に、上記SEM−EDX、ラマン、XPSの解析を実施する。
後述するイオンクロマトグラフィーについては、正極を蒸留水で洗浄した後の水を解析することにより炭酸イオンを同定することができる。
上記解析手法にて炭酸リチウムを同定できなかった場合、その他の解析手法として、7Li−固体NMR、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、炭酸リチウムを同定することもできる。
炭酸リチウム及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極表面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定例として、加速電圧を10kV、エミッション電流を1μA、測定画素数を256×256ピクセル、積算回数を50回として測定できる。試料の帯電を防止するために、金、白金、オスミウム等を真空蒸着やスパッタリング等の方法により表面処理することもできる。SEM−EDX画像の測定方法については、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子を炭酸リチウムとする。
炭酸リチウム及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極表面のラマンイメージングにより判別できる。測定条件の例として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件にて測定することができる。測定したラマンスペクトルについて、1071〜1104cm−1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算するが、この時にノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を上記炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
リチウムの電子状態をXPSにより解析することによりリチウムの結合状態を判別することができる。測定条件の例として、X線源を単色化AlKα、X線ビーム径を100μmφ(25W、15kV)、パスエネルギーをナロースキャン:58.70eV、帯電中和を有り、スイープ数をナロースキャン:10回(炭素、酸素)20回(フッ素)30回(リン)40回(リチウム)50回(ケイ素)、エネルギーステップをナロースキャン:0.25eVの条件にて測定できる。XPSの測定前に正極の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として例えば、加速電圧1.0kV、2mm×2mmの範囲を1分間(SiO2換算で1.25nm/min)の条件にて正極の表面をクリーニングすることができる。得られたXPSスペクトルについて、Li1sの結合エネルギー50〜54eVのピークをLiO2又はLi−C結合、55〜60eVのピークをLiF、Li2CO3、LixPOyFz(x、y、zは1〜6の整数)、C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、286eVのピークをC−O結合、288eVのピークをCOO、290〜292eVのピークをCO3 2−、C−F結合、O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO2−(Li2O)、531〜532eVのピークをCO、CO3、OH、POx(xは1〜4の整数)、SiOx(xは1〜4の整数)、533eVのピークをC−O、SiOx(xは1〜4の整数)、F1sの結合エネルギー685eVのピークをLiF、687eVのピークをC−F結合、LixPOyFz(x、y、zは1〜6の整数)、PF6 −、P2pの結合エネルギーについて、133eVのピークをPOx(xは1〜4の整数)、134〜136eVのピークをPFx(xは1〜6の整数)、Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、101〜107eVのピークをSixOy(x、yは任意の整数)として帰属することができる。得られたスペクトルについて、ピークが重なる場合には、ガウス関数又はローレンツ関数を仮定してピーク分離し、スペクトルを帰属することが好ましい。上記で得られた電子状態の測定結果及び存在元素比の結果から、存在するリチウム化合物が炭酸リチウムであるか判定することができる。
正極の蒸留水洗浄液をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出したアニオン種を同定することができるため、炭酸イオンを検出できる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、サプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計や荷電化粒子検出を検出器と組み合わせて測定することもできる。
サンプルの保持時間は、使用するカラムや溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の炭酸イオン標準液を予め測定しておくことで炭酸イオン種成分の定量が可能となる。
正極における炭酸リチウムの含有割合は、正極中に含まれる炭酸リチウム重量を正極活物質層重量で除することによって求められる。正極に含有される炭酸リチウムの具体的な定量方法を以下に記載する。正極を有機溶媒で洗浄し、その後蒸留水で洗浄し、蒸留水での洗浄前後の正極重量変化から炭酸リチウムを定量することができる。測定する正極の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm2以上200cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは25cm2以上150cm2以下である。面積が5cm2以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm2以下であればサンプルの取扱い性に優れる。有機溶媒による洗浄については正極表面に堆積した電解液分解物を除去できれば良いため、有機溶媒は特に限定されないが、炭酸リチウムの溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることで炭酸リチウムの溶出が抑制されるため好ましい。例えばメタノール、アセトン等の極性溶媒が好適に用いられる。
Z=100×[1−(M1−M2)/(M0−M2)] ...式(4)
正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及び炭酸リチウムの他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーとしては、特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等を用いることができる。導電性フィラーの使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下である。より好ましくは0質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上15質量部以下である。混合量が30質量部よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有割合が少なくなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施の形態の非水系リチウム型蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。
該金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
非水系リチウム型蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及び炭酸リチウム、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることが出来る。さらに得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚や、かさ密度を調整してもよい。溶剤を使用せずに、正極活物質及び炭酸リチウム、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm以下では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり好ましくない。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジ発生等なく安定に塗工ができる。
また、該塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましい。より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
また、プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E. P. Barrett, L. G. Joyner and P. Halenda, J. Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))。
また、MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、M.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45 (1968))。
また、平均細孔径とは、液体窒素温度下で、各相対圧力下における窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる、試料の質量あたりの全細孔容積を上記BET比表面積で除して求めたものを指す。
本実施形態に係る正極活物質層は、炭酸リチウムを含有し、正極断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上40%以下であることを特徴とする。炭酸イオンマッピングの面積比率は、より好ましくは2%以上20%以下である。炭酸イオンマッピングの面積比率が1%以上であると、高温保存耐久性、高負荷充放電サイクル特性が向上する。理由は定かではないが、高温保存時やサイクル試験時に生成する水素イオンを炭酸イオンがトラップすることによって、電解液の副反応を抑制していると推察される。炭酸イオンマッピングの面積比率が40%以下であると、炭酸リチウムが正極活物質間の導電パスを妨げることがないため、高い入出力特性が得られる。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
炭酸リチウムおよび正極活物質については、炭酸リチウムの数平均粒子径をX1、正極活物質の平均粒子径をY1とするとき、1μm≦X1≦5μmであり、3μm≦Y1≦20μmであり、X1<Y1であることを特徴とする。X1について更に好ましくは、2μm≦X1≦4μmである。Y1について更に好ましくは、4μm≦Y1≦15μmであり、特に好ましくは、4μm≦Y1≦10μmである。X1が1μm以上の場合、リチウムドープ後の正極中に炭酸リチウムを残存させることができるため、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着することにより高負荷充放電サイクル特性が向上する。X1が5μm以下の場合、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンの吸着を効率良く行うことができる。Y1が3μm以上の場合、正極活物質間の電子伝導性を確保できる。Y1が20μm以下の場合、電解質イオンとの反応面積が増加するために高い出力特性を発現できる。X1<Y1である場合、正極活物質間に生じる隙間に炭酸リチウムが充填されるため、正極活物質間の電子伝導性を確保しつつ、エネルギー密度を高めることができる。尚、下限と上限は任意の組み合わせであることができる。
X1は、例えば、以下の方法で算出できる。正極断面の顕微ラマン画像の各測定点のラマンスペクトルについて、炭酸イオンのラマンピーク波長周辺で直線のベースラインを設定し、ベースラインより高い部分の面積を正に、低い部分の面積を負として、面積(a)を算出し、マッピング化する。面積(a)について度数分布表を作成し、ヒストグラム化する。最大度数を与える面積値以下の部分ノイズ成分としてガウス型関数で近似し、ヒストグラムから差し引く。ノイズ成分を差し引いたヒストグラムで最大頻度となる面積以上を示している、スペクトルの測定位置をマッピング化し、これをアルカリ金属炭酸塩粒子とする。測定範囲において、すべてのアルカリ金属炭酸塩粒子長径の平均を算出することで求められる。
Y1は、例えば、以下の方法で算出できる。前記顕微ラマンを測定したのと同じ視野で、測定した光学顕微鏡画像と前記炭酸イオンマッピングデータとを重ね合わせ、光学顕微鏡像で確認される粒子から、炭酸塩粒子を除いたものを正極活物質粒子とし、視野内に確認されるすべての活物質粒子の長径の平均を算出することで求められる。
正極中に含有された炭酸リチウムは、副反応により、分解してガス化してしまうと、抵抗上昇の原因や高温保存時のガス発生の要因となってしまう。そのため、炭酸リチウムの表面には、フッ素含有化合物からなる被膜を形成し、炭酸リチウムの前記分解反応を抑制することが好ましい。
フッ素含有化合物の被膜の形成方法は特に限定されないが、フッ素含有化合物を電解液中に含有させ、非水系リチウム型蓄電素子に前記フッ素含有化合物の分解電位以上の高電圧を印加する方法や、分解温度以上の温度をかける方法等が挙げられる。
炭酸リチウム表面に被覆するフッ素化合物の被覆率(正極表面SEM−EDX画像における酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率A1)は30%以上99%以下であることが好ましい。A1が40%以上であれば、炭酸リチウムの分解を抑制することができる。A1が99%以下であれば正極近傍を塩基性に保つことができるため、高負荷サイクル特性に優れる。
被覆率の測定方法としては、正極表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対してフッ素マッピングの面積重複率を算出することで求められる。
SEM−EDXの元素マッピングの測定条件は特に限定されないが、画素数は128×128ピクセル〜512×512ピクセルの範囲であることが好ましく、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。
正極断面のSEM−EDXにより得られた元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率A2が10%以上65%以下であることが好ましい。A2が10%以上であれば、炭酸リチウムの分解を抑制することができる。A2が65%以下であれば、炭酸リチウムの内部までフッ素化されていない状態であるため、正極近傍を塩基性に保つことができ、高負荷サイクル特性に優れる。
正極活物質層は、下記式(1)乃至(3)からなる群から選択される1種以上の化合物を該正極物質の単位質量当たり1.60×10−4mol/g〜300×10−4mol/g含有することが好ましい。
特に好ましい化合物は、LiOC2H4OLi、LiOC3H6OLi、LiOC2H4OCOOLi、LiOCOOC3H6OLi、LiOCOOC2H4OCOOLi及びLiOCOOC3H6OCOOLiで表される化合物である。
特に好ましい化合物は、LiOC2H4OH、LiOC3H6OH、LiOC2H4OCOOH、LiOC3H6OCOOH、LiOCOOC2H4OCOOH、LiOCOOC3H6OCOOH、LiOC2H4OCH3、LiOC3H6OCH3、LiOC2H4OCOOCH3、LiOC3H6OCOOCH3、LiOCOOC2H4OCOOCH3、LiOCOOC3H6OCOOCH3、LiOC2H4OC2H5、LiOC3H6OC2H5、LiOC2H4OCOOC2H5、LiOC3H6OCOOC2H5、LiOCOOC2H4OCOOC2H5、LiOCOOC3H6OCOOC2H5で表される化合物である。
特に好ましい化合物は、HOC2H4OH、HOC3H6OH、HOC2H4OCOOH、HOC3H6OCOOH、HOCOOC2H4OCOOH、HOCOOC3H6OCOOH、HOC2H4OCH3、HOC3H6OCH3、HOC2H4OCOOCH3、HOC3H6OCOOCH3、HOCOOC2H4OCOOCH3、HOCOOC3H6OCOOCH3、HOC2H4OC2H5、HOC3H6OC2H5、HOC2H4OCOOC2H5、HOC3H6OCOOC2H5、HOCOOC2H4OCOOC2H5、HOCOOC3H6OCOOC2H5、CH3OC2H4OCH3、CH3OC3H6OCH3、CH3OC2H4OCOOCH3、CH3OC3H6OCOOCH3、CH3OCOOC2H4OCOOCH3、CH3OCOOC3H6OCOOCH3、CH3OC2H4OC2H5、CH3OC3H6OC2H5、CH3OC2H4OCOOC2H5、CH3OC3H6OCOOC2H5、CH3OCOOC2H4OCOOC2H5、CH3OCOOC3H6OCOOC2H5、C2H5OC2H4OC2H5、C2H5OC3H6OC2H5、C2H5OC2H4OCOOC2H5、C2H5OC3H6OCOOC2H5、C2H5OCOOC2H4OCOOC2H5、C2H5OCOOC3H6OCOOC2H5
で表される化合物である。
中でも、非水系電解液中に、分解してこれらの前記化合物を生成し得る前駆体を含有させておき、蓄電素子を作製する工程における前記前駆体の分解反応を利用して、正極活物質層内に前記化合物を堆積させる方法が好ましい。
また、前記化合物の総量は、前記正極活物質の単位質量当たり、300×10−4mol/g以下であり、150×10−4mol/g以下であることがより好ましく、100×10−4mol/g以下であることが更に好ましい。前記化合物の総量が正極活物質の単位質量当たり300×10−4mol/g以下であれば、Liイオンの拡散を阻害することがなく、高い入出力特性を発現することができる。尚、下限と上限は、任意の組み合わせであることができる。
負極は、負極集電体と、その片面又は両面に存在する負極活物質層とを有する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む。これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散材安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な物質を用いることができる。具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫及び錫化合物等が例示される。該負極活物質の総量に対する該炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。該炭素材料の含有率が100質量%であることができるが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。
第一の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子を作製する前に、負極活物質に設計値として予め吸蔵させるリチウムイオンである。
第二の形態としては、非水系リチウム蓄電素子を作製し、出荷する際の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
第三の形態としては、非水系リチウム蓄電素子をデバイスとして使用した後の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
負極活物質にリチウムイオンをドープしておくことにより、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及び作動電圧を良好に制御することが可能となる。
[複合炭素材料1]
複合炭素材料1は、BET比表面積が100m2/g以上3000m2/g以下の炭素材料1種以上を該基材として用いた該複合炭素材料である。該基材は、特に制限されるものではないが、活性炭やカーボンブラック、鋳型多孔質炭素、高比表面積黒鉛、カーボンナノ粒子等を好適に用いることができる。
リチウムイオンをドープすることにより、負極電位が低くなる。従って、リチウムイオンがドープされた複合炭素材料1を含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系リチウム型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
該ドープ量が530mAh/g以上であれば、複合炭素材料1におけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされ、更に所望のリチウム量に対する複合炭素材料1を低減することができる。そのため、負極膜厚を薄くすることが可能となり、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。他方、ドープ量が2,500mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生するおそれがない。
複合炭素材料1aは、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、0.010≦Vm1≦0.300、0.001≦Vm2≦0.650であることが好ましい。
メソ孔量Vm1は、より好ましくは0.010≦Vm1≦0.225、さらに好ましくは0.010≦Vm1≦0.200である。マイクロ孔量Vm2は、より好ましくは0.001≦Vm2≦0.200、更に好ましくは0.001≦Vm2≦0.150、特に好ましくは0.001≦Vm2≦0.100である。
該活性炭においては、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)としたとき、0.050≦V1≦0.500、0.005≦V2≦1.000、かつ、0.2≦V1/V2≦20.0であることが好ましい。
複合炭素材料1aを製造するための具体的方法としては、例えば、炭素質材料前駆体から揮発した炭化水素ガスを含む不活性雰囲気中で活性炭を熱処理し、気相で炭素質材料を被着させる方法が挙げられる。また、活性炭と炭素質材料前駆体とを予め混合し熱処理する方法、又は溶媒に溶解させた炭素質材料前駆体を活性炭に塗布して乾燥させた後に熱処理する方法も可能である。
複合炭素材料2は、BET比表面積が0.5m2/g以上80m2/g以下の炭素材料1種以上を前記基材として用いた前記複合炭素材料である。該基材は、特に制限されるものではないが、天然黒鉛、人造黒鉛、低結晶黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック等を好適に用いることができる。
リチウムイオンをドープすることにより、負極電位が低くなるため、リチウムイオンがドープされた複合炭素材料2を含む負極を正極と組み合わせた場合、非水系リチウム型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
該ドープ量が50mAh/g以上であれば、複合炭素材料2におけるリチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされるため、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
他方、ドープ量が700mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生するおそれがない。
複合炭素材料2aの平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上8μm以下、さらに好ましくは3μm以上6μm以下である。平均粒子径が1μm以上であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。他方、10μm以下であれば、複合炭素材料2aと非水系電解液との反応面積が増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、結着剤、分散材安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーの種類は特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が例示される。導電性フィラーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは0質量部以上15質量部以下である。
負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化がおこらない金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子における負極集電体としては、銅箔が好ましい。
該金属箔は凹凸や貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
負極は、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有する。典型的な態様において負極活物質層は負極集電体に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより負極を得ることができる。さらに得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚や、かさ密度を調整してもよい。溶剤を使用せずに、負極活物質を含む各種材料を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて負極集電体に貼り付ける方法も可能である。
該塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
また、プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
先ず、本実施形態における負極活物質層をエチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネートで洗浄し風乾した後、メタノール及びイソプロパノールから成る混合溶媒により抽出した抽出液と、抽出後の負極活物質層とを得る。この抽出は、典型的にはArボックス内にて、環境温度23℃で行われる。
このようにして得られた抽出液と、抽出後の負極活物質層と、に含まれるリチウム量を、それぞれ、例えば、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等を用いて定量し、その合計を求めることによって、負極活物質におけるリチウムイオンのドープ量を知ることができる。得られた値を抽出に供した負極活物質量で割り付けて、上記単位の数値を算出すればよい。
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体、負極及びセパレータを有する電極積層体または電極捲回体が形成される。
前記セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面または両面に、有機または無機の微粒子からなる膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機または無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、35μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
また、有機または無機の微粒子からなる膜は、1μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、10μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
セル組み立て工程で得られる電極積層体は、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子と負極端子を接続したものである。また電極捲回体は、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して捲回して成る捲回体に正極端子と負極端子を接続したものである。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定はしないが、抵抗溶接や超音波溶接などの方法で行う。
外装体としては、金属缶、ラミネート包材等を使用できる。
金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。ラミネート包材としては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
正極端子及び負極端子を接続した電極積層体又は電極捲回体は、金属缶やラミネート包材に代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残した状態で封止することが好ましい。外装体の封止方法は特に限定しないが、ラミネート包材を用いる場合は、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いる。
電極積層体又は電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法に限定はないが、真空乾燥などにより乾燥する。乾燥工程は、電極積層体又は電極捲回体に正極端子及び負極端子を接続する前に行ってもよいし、接続後に行ってもよい。また、電極積層体又は電極捲回体を外装材の中に収納する前に行ってもよいし、収納する後に行ってもよい。残存溶媒は、正極活物質層又は負極活物質層の重量あたり、1.5wt.%以下が好ましい。残存溶媒が1.5wt.%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性やサイクル特性を悪化させるため、好ましくない。
本実施形態に係る電解液は非水系電解液である。すなわちこの電解液は、後述する非水溶媒を含む。前記非水系電解液は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のリチウム塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、リチウムイオンを電解質として含む。
非水系電解液中のリチウム塩濃度は、0.5mol/L以上であることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲がより好ましい。リチウム塩濃度が0.5mol/L以上であれば、陰イオンが十分に存在するので蓄電素子の容量を十分高くできる。また、リチウム塩濃度が2.0mol/L以下である場合、未溶解のリチウム塩が非水系電解液中に析出すること、及び電解液の粘度が高くなり過ぎることを防止でき、伝導度が低下せず、出力特性も低下しないため好ましい。
環状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の総量基準で、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。上記合計含有量が15質量%以上であれば、所望の濃度のリチウム塩を溶解させることが可能となり、高いリチウムイオン伝導度を発現することができる。さらに正極活物質層にリチウム化合物を適量堆積させることが可能となり、電解液の酸化分解を抑制することができる。
鎖状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の総量基準で、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。上記鎖状カーボネートの含有量が30質量%以上であれば、電解液の低粘度化が可能であり、高いリチウムイオン伝導度を発現することができる。上記合計濃度が95質量%以下であれば、電解液が、後述する添加剤をさらに含有することができる。
尚、これらの環状ホスファゼンは、単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
尚、上記の非環状含フッ素エーテルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
フッ素原子を含有する環状カーボネートの含有量は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。フッ素原子を含有する環状カーボネートの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における電解液の還元分解を抑制することによって、高温における耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、フッ素原子を含有する環状カーボネートの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、上記のフッ素原子を含有する環状カーボネートは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
環状炭酸エステルの含有量は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。環状炭酸エステルの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での電解液の還元分解を抑制することにより、高温における耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、環状炭酸エステルの含有量が10質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。
尚、上記の環状カルボン酸エステルは、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
尚、上記の環状酸無水物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
組立工程の終了後に、外装材の中に収納された電極積層体に、非水系電解液を注液する。注液工程の終了後に、更に、含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するリチウムドープ工程において、ドープが不均一に進むため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。上記含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の非水系リチウム型蓄電素子を、外装材が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸工程終了後には、外装材が開口した状態の非水系リチウム型蓄電素子を減圧しながら封止することで密閉する。
リチウムドープ工程において、好ましい工程としては、前記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して前記炭酸リチウムを分解することにより、正極前駆体中の炭酸リチウムを分解してリチウムイオンを放出し、負極でリチウムイオンを還元することにより負極活物質層にリオチウムイオンがプレドープされる。
このリチウムドープ工程において、正極前駆体中の炭酸リチウムの酸化分解に伴い、CO2等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;前記外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;
等を挙げることができる。
リチウムドープ工程の終了後に、非水系リチウム型蓄電素子にエージングを行うことが好ましい。エージング工程において電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にリチウムイオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
上記エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば、高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
エージング工程の終了後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
上記ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、前記外装体を開口した状態で非水系リチウム型蓄電素子を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。
[静電容量]
本明細書中、静電容量F(F)とは、以下の方法によって得られる値である:
先ず、非水系リチウム型蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、次いで、3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとする。ここで得られたQを用いて、F=Q/(3.8−2.2)により算出される値をいう。
ここで、電流のCレートとは、上限電圧から下限電圧まで定電流放電を行う際、1時間で放電が完了する電流値のことを1Cという。本明細書では、上限電圧3.8Vから下限電圧2.2Vまで定電流放電を行う際に1時間で放電が完了する電流値のことを1Cとする。
本明細書中、内部抵抗とは、それぞれ、以下の方法によって得られる値である:
先ず、非水系リチウム型蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、次いで、3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。その後、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=3.8−Eo、及びR=ΔE/(20C(電流値A))により算出される値である。
本明細書中、電力量E(Wh)とは、以下の方法によって得られる値である:
先に述べた方法で算出された静電容量F(F)を用いて、F×(3.82−2.22)/7200により算出される値をいう。
蓄電素子の体積は、特に指定はないが、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が積重された領域が、外装材によって収納された部分の体積を指す。
例えば、ラミネートフィルムによって収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が存在する領域が、カップ成形されたラミネートフィルムの中に収納されるが、この蓄電素子の体積(V1)は、このカップ成形部分の外寸長さ(l1)と外寸幅(w1)、およびラミネートフィルムを含めた蓄電素子の厚み(t1)により、V1=l1×w1×t1で計算される。
角型の金属缶に収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、蓄電素子の体積としては、単にその金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この蓄電素子の体積(V2)は、角型の金属缶の外寸長さ(l2)と外寸幅(w2)、外寸厚み(t2)により、V2=l2×w2×t2で計算される。
また、円筒型の金属缶に収納された電極捲回体の場合においても、蓄電素子の体積としては、その金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この蓄電素子の体積(V3)は、円筒型の金属缶の底面または上面の外寸半径(r)、外寸長さ(l3)により、V3=3.14×r×r×l3で計算される。
本明細書中、高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率は、以下の方法によって測定する:
先ず、非水系リチウム型蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、300Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、次いで、300Cの電流値で2.2Vに到達するまで定電流放電を行う。前記充放電工程を60000回繰り返し、試験開始前と、試験終了後に内部抵抗測定を行い、試験開始前の内部抵抗をRa(Ω)、試験終了後の内部抵抗をRc(Ω)としたとき、試験開始前に対する高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率はRc/Raにより算出される。
(a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である;
(b)E/Vが15以上50以下である;
を同時に満たすものであることが好ましい。
(c)Rb/Raが3.0以下である;
(d)セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した時に発生するガス量が、25℃において30×10−3cc/F以下である;
(e)Rc/Raが0.9以上2.0以下である;
を同時に満たすことが好ましい。
(a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である;
(b)E/Vが15以上50以下である;
(e)Rc/Raが0.9以上2.0以下である;
の全てを満たすものであることが好ましい。
[炭酸リチウムの粉砕]
平均粒子径53μmの炭酸リチウム200gを、アイメックス社製の粉砕機(液体窒素ビーズミルLNM)を用い、液体窒素で−196℃に冷却化した後、ドライアイスビーズを用い、周速10.0m/sにて10分間粉砕した。−196℃で熱変性を防止し、脆性破壊することにより得られた炭酸リチウム1について平均粒子径を測定することで仕込みの炭酸リチウム粒子径を求めたところ、4.7μmであった。
[活性炭1の調製]
破砕されたヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、500℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で前記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。その後、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。この活性炭1について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2360m2/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59であった。
フェノール樹脂について、窒素雰囲気下、焼成炉中600℃において2時間の炭化処理を行った後、ボールミルにて粉砕し、分級を行って平均粒径7μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃において1時間加熱して賦活化を行った。その後濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄を行った後、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄した後に乾燥を行うことにより、活性炭2を得た。この活性炭2について、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が3627m2/g、メソ孔量(V1)が1.50cc/g、マイクロ孔量(V2)が2.28cc/g、V1/V2=0.66であった。
正極活物質として上記で得た活性炭1又は2を、仕込みの炭酸リチウムとして上記で得た炭酸リチウムを用いて下記方法で正極塗工液(組成a)を製造した。
活性炭1又は2を34.5質量部、炭酸リチウムを56.0質量部、ケッチェンブラックを2.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を6.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15.0m/sの条件で分散して塗工液(組成a)を得た。
正極活物質として上記で得た活性炭1又は2を、仕込みの炭酸リチウムとして上記で得た炭酸リチウムを用いて下記方法で正極塗工液(組成b)を製造した。
活性炭1又は2を59.5質量部、炭酸リチウムを28.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15.0m/sの条件で分散して塗工液(組成b)を得た。
上記で得た塗工液(組成a)又は塗工液(組成b)を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗工速度2m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥して正極前駆体を得た。得られた正極前駆体についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。
平均粒子径3.0μm、BET比表面積が1,780m2/gの市販のヤシ殻活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合炭素材料1aを得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。次いで、自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料1を炉から取り出した。
得られた複合炭素材料1について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は3.2μm、BET比表面積は262m2/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料の活性炭に対する質量比率は78%であった。
複合炭素材料1を85質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を5質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。粘度(ηb)は2,789mPa・s、TI値は4.3であった。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して負極1を得た。得られた負極1についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。上記で得られた負極1の負極活物質層の膜厚を小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極1の任意の10か所で測定した厚さの平均値から、銅箔の厚さを引いて求めた。負極1の負極活物質層の膜厚は片面あたりの厚さは40μmであった。
BET比表面積が3.1m2/g、平均粒子径が4.8μmの市販の人造黒鉛150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)15gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合炭素材料2を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、1000℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料2を炉から取り出した。
得られた複合炭素材料2について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は4.9μm、BET比表面積は6.1m2/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料の人造黒鉛に対する質量比率は2%であった。
複合炭素材料2を80質量部、アセチレンブラックを8質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を12質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、それをPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。粘度(ηb)は2,798mPa・s、TI値は2.7であった。上記塗工液を東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して負極2を得た。得られた負極2についてロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施した。上記で得られた負極2の負極活物質層の膜厚を小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極2の任意の10か所で測定した厚さの平均値から、銅箔の厚さを引いて求めた。負極1の負極活物質層の膜厚は片面あたりの厚さは25μmであった。
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、全電解液に対してLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度比が75:25(モル比)であり、かつ、LiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を溶解して得た溶液を非水系電解液として使用した。
ここで調製した電解液におけるLiN(SO2F)2及びLiPF6の濃度は、それぞれ、0.3mol/L及び0.9mol/Lであった。
[蓄電素子の調製]
[蓄電素子の組立、乾燥]
得られた両面負極1、正極活物質として活性炭1、仕込み炭酸リチウムとして平均粒径4.7μmの炭酸リチウムを用いて、作製した塗工液組成(a)より得られた両面正極前駆体を10cm×10cm(100cm2)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体を用い、更に両面負極1を21枚と両面正極前駆体を20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体とした。この電極積層体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。乾燥した電極積層体を露点−45℃のドライ環境下にて、アルミラミネート包材からなる外装体内に収納し、電極端子部とボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、シール圧1.0MPaの条件でヒートシールした。
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入した。次いで、減圧チャンバーの中に前記非水系リチウム型蓄電素子を入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。次いで、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返した後、15分間静置した。さらに、常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した。(それぞれ、−95,96,97,81,97,97,97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、非水系リチウム型蓄電素子を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
得られた非水系リチウム型蓄電素子に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、25℃環境下、電流値1.0Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を72時間継続する手法により初期充電を行い、負極にリチウムドープを行った。
リチウムドープ後の非水系リチウム型蓄電素子を25℃環境下、1.0Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。その後、非水系リチウム型蓄電素子を60℃の恒温槽に60時間保管した。
エージング後の非水系リチウム型蓄電素子を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。次いで、減圧チャンバーの中に前記非水系リチウム型蓄電素子を入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機に非水系リチウム型蓄電素子を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
以上の工程により、蓄電素子が完成した。
[静電容量の測定]
前記工程で得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行った。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとし、F=Q/(3.8−2.2)により算出した静電容量Fは、1000Fであった。
得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行い、その後、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとし、降下電圧ΔE=3.8−Eo、及びR=ΔE/(20C(電流値A))により常温内部抵抗Raを算出した。
静電容量Fと25℃における内部抵抗Raとの積Ra・Fは1.05ΩFであった。
E/Vは、前記方法で得られた静電容量Fの値、および蓄電素子のラミネートフィルムのカップ成形部分の外寸長さ(l1)と外寸幅(w1)、及びラミネートフィルムを含めた蓄電素子の厚み(t1)により、求められるV1=l1×w1×t1を用いて、E/V=F×(3.82−2.22)/7200/V1より18.5Wh/Lと算出された。
得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、100Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で10分間行った。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、同様の充電工程にてセル電圧を4.0Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存した。この工程を2か月間繰り返し実施し、保存試験開始前のセル体積Va、保存試験2か月後のセルの体積Vbをアルキメデス法によって測定した。Vb−Vaにより求めたガス発生量は10.3×10−3cc/Fであった。
前記高温保存試験後の蓄電素子に対して、前記[Ra・Fの算出]と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rbを算出した。
このRb(Ω)を、前記[Ra・Fの算出]で求めた高温保存試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rb/Raは1.38であった。
得られた蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、300Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて300Cの電流値で2.2Vに到達するまで定電流放電を行う充放電工程を60000回繰り返した。高負荷充放電サイクル試験後に前記[Ra・Fの算出]と同様にして高温保存試験後の常温内部抵抗Rcを算出した。このRc(Ω)を、前記[Ra・Fの算出]で求めた高負荷充放電サイクル試験前の内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rc/Raは1.17であった。
完成した複数の非水系リチウム型蓄電素子のうち、数点の素子を2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているArボックス内で解体して正極電極体を取り出した。取り出した正極電極体を、ジメチルカーボネート(DMC)で浸漬洗浄した後、大気非暴露を維持した状態下サイドボックス中で真空乾燥させた。
乾燥後の正極電極体を、大気非暴露を維持した状態でサイドボックスからArボックスに移した。上記正極電極体を、大気非暴露を維持した状態で断面加工装置に搬送し、断面作製を実施した。Arボックスから断面加工装置までの電極体の搬送の際は、大気非暴露が維持できる密封容器を使用した。断面加工装置は、試料にイオンビームを照射することによるエッチング加工を特徴としており、例えば、日本電子製のSM−09020CPなどが用いられる。断面加工条件は特に制限されないが、試料への加工ダメージが抑制される条件であることが好ましい。上記手法により作製された断面を有する正極電極体を、大気非暴露を維持した状態で断面加工装置からArボックスに搬送し、顕微ラマン測定に対応した大気非暴露セル、例えば、ナノフォトン社製LIBcellに移し替えて、顕微ラマン測定用試料とした。
炭酸イオンマッピングの面積比率は以下のように算出できる。各測定位置で得られた2700点のラマンスペクトルにおいて1071、1104cm−1の位置で直線のベースラインを設定し、ベースラインよりも高い部分の面積を正に、低い部分の面積を負とし、面積(a)とした。この面積(a)のマッピングデータを作成する。さらに、面積(a)の最大値から最小値を100個の区間数に分割し、ヒストグラムAを作成する。次に、ヒストグラムAにおいて、最大度数を与える面積値より負側の部分について、ガウス関数を用いて、最小二乗法でフィッティングすることで、ノイズ成分をガウス関数Bで近似した。元のヒストグラムAからこのフィッティングしたガウス関数Bを引いた差分が、CO3 2−のピーク面積のヒストグラムCとなる。このヒストグラムCにおいて、最大頻度を与える面積(b)以上の累積頻度をCO3 2−イオンのマッピング度数を求めたところ、462であった。これを全体の度数2700で除することによって、炭酸イオンマッピングの面積比率を算出したところ、5.1%と求められた。
炭酸リチウムの数平均粒子径X1の算出方法としては、前記方法で得られたヒストグラムCで最大頻度を与えた面積(b)以上を与えた測定位置をマッピングし、これを炭酸リチウム粒子のマッピングデータとした。このデータより、炭酸リチウム粒子の個数n、粒子長径Xi(i=1,2,3,…,n)を求めた。さらに、数平均粒子径X1を下記式(8)により算出したところ、X1は2.0μmと求められた。
正極活物質粒子の数平均粒子径Y1は前記顕微ラマンを測定したのと同じ視野で、測定した光学顕微鏡画像と前記炭酸イオンマッピングデータとを重ね合わせた。これにより、光学顕微鏡像で確認される粒子から、炭酸塩粒子を除いたものを正極活物質粒子とし、視野内に確認される活物質粒子の個数m、粒子長径Yi(i=1,2,3,…,m)を求めた。さらに、数平均粒子径Y1を下記式(9)にて算出したところ、Y1は12.3μmと求められた。
正極試料1を5cm×5cmの大きさ(重量0.256g)に切り出し、20gのメタノールに浸し、容器に蓋をして25℃環境下、3日間静置した。その後正極を取り出し、120℃、5kPaの条件にて10時間真空乾燥した。この時の正極重量M0は0.250gであり、洗浄後のメタノール溶液について、予め検量線を作成した条件にてGC/MSを測定し、ジエチルカーボネートの存在量が1%未満であることを確認した。次いで、25.00gの蒸留水に正極を含浸させ、容器に蓋をして45℃環境下、3日間静置した。3日間静置後の蒸留水の重量は24.65gであったため、蒸留水を0.35g追加した。その後正極を取り出し、150℃、3kPaの条件にて12時間真空乾燥した。この時の正極重量M1は0.223gであり、洗浄後の蒸留水について、予め検量線を作成した条件にてGC/MSを測定し、メタノールの存在量が1%未満であることを確認した。その後、スパチュラ、ブラシ、刷毛を用いて正極集電体上の活物質層を取り除き、正極集電体の重量M2を測定したところ0.099gであった。前記式(4)により正極中の炭酸リチウムを定量したところ6.0質量%であった。
[正極試料の調製]
得られた残りの非水系リチウム型蓄電素子を露点温度−72℃のアルゴンボックス中で解体し、両面に正極活物質層が塗工された正極を10cm×5cmの大きさに切り出し、30gのジエチルカーボネート溶媒に浸し、時折ピンセットで正極を動かし、10分間洗浄した。続いて正極を取り出し、アルゴンボックス中で5分間風乾させ、新たに用意した30gのジエチルカーボネート溶媒に正極を浸し、前記と同様の方法にて10分間洗浄した。正極をアルゴンボックスから取り出し、真空乾燥機(ヤマト科学製、DP33)を用いて、温度25℃、圧力1kPaの条件にて20時間乾燥し、正極試料1を得た。
正極試料1から1cm×1cmの小片を切り出し、10Paの真空中にて金をスパッタリングにより表面にコーティングした。次いで、以下に示す条件にて、大気暴露下で正極表面のSEM、及びEDXを測定した。
[SEM−EDX測定条件]
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE−SEM S−4700
・加速電圧:10kV
・エミッション電流:1μA
・測定倍率:2000倍
・電子線入射角度:90°
・X線取出角度:30°
・デッドタイム:15%
・マッピング元素:C,O,F
・測定画素数:256×256ピクセル
・測定時間:60sec.
・積算回数:50回
・明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
得られた酸素マッピング及びフッ素マッピングに対し、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて明るさの平均値を基準に二値化した。この時の酸素マッピングの面積は全画像に対して15.1%であり、フッ素マッピングの面積は31.5%であった。前記二値化して得た酸素マッピングとフッ素マッピングの重複する面積は全画像に対して14.0%であり、酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率をA1[%]とすると、A1=100×11.7/15.1より77.5%と算出できた。
正極試料1から1cm×1cmの小片を切り出し、日本電子製のSM−09020CPを用い、アルゴンガスを使用し、加速電圧4kV、ビーム径500μmの条件にて正極試料1の面方向に垂直な断面を作製した。その後、上述の方法により正極断面SEM及びEDXを測定した。
得られた正極断面のSEM−EDXについて、前記と同様に酸素マッピング及びフッ素マッピングを二値化し、酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率A2を算出したところ32.6%であった。
完成した複数の非水系リチウム型蓄電素子のうち、数点の素子を2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているArボックス内で解体して正極電極体を取り出した。取り出した正極電極体を、ジメチルカーボネート(DMC)で浸漬洗浄した後、大気非暴露を維持した状態下サイドボックス内で真空乾燥させた。
乾燥後の正極電極体を、大気非暴露を維持した状態でサイドボックスからArボックスに移し、重水で浸漬抽出して、正極電極体抽出液を得た。抽出液の解析は、(1)IC及び(2)1H−NMRにて行い、求めた正極電極体抽出液中の各化合物の濃度A(mol/ml)、抽出に用いた重水の体積B(ml)、及び抽出に用いた正極の活物質の質量C(g)から、下記式(10):
単位質量当たりの存在量(mol/g)=A×B÷C ...式(10)
により、正極電極体に堆積する各化合物の、正極活物質単位質量当たりの存在量(mol/g)を求めた。
尚、抽出に用いた正極活物質層の質量は、以下の方法によって求めた。
重水抽出後に残った正極電極体の集電体から合剤(正極活物質層)を剥がし取り、該剥がし取った合剤を、水洗した後、真空乾燥した。真空乾燥して得た合剤を、NMP又はDMFにより洗浄した。続いて、得られた正極活物質層を再度真空乾燥した後、秤量することにより、抽出に用いた正極活物質層の質量を調べた。
また、濃度既知のジメチルスルホキシドの入った重水素化クロロホルムを3mmφNMRチューブ(株式会社シゲミ製PN−002)に入れ、上記と同一の1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン入りの重水素化クロロホルムの入った5mmφNMRチューブ(日本精密科学株式会社製N−5)に挿し込み、二重管法にて、1H NMR測定を行った。上記と同様に、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼンのシグナル7.1ppm(m,2H)で規格化して、ジメチルスルホキシドのシグナル2.6ppm(s,6H)の積分値を求めた。用いたジメチルスルホキシドの濃度と積分値の関係から、正極電極体抽出液中の各化合物の濃度Aを求めた。
[XOCH2CH2OXについて]
XOCH2CH2OXのCH2:3.7ppm(s,4H)
CH3OX:3.3ppm(s,3H)
CH3CH2OXのCH3:1.2ppm(t,3H)
CH3CH2OXのCH2O:3.7ppm(q,2H)上記のように、XOCH2CH2OXのCH2のシグナル(3.7ppm)は、CH3CH2OXのCH2Oのシグナル(3.7ppm)と重なってしまうため、CH3CH2OXのCH3のシグナル(1.2ppm)から算出されるCH3CH2OXのCH2O相当分を除いて、XOCH2CH2OX量を算出する。
尚、上記において、Xは、それぞれ、−(COO)nLi又は−(COO)nR1(ここで、nは0又は1、R1は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基である。)である。
正極前駆体の正極活物質、正極前駆体に仕込む炭酸リチウムの粒径、塗工液組成、フィルミクスの周速、負極、リチウムドープ工程の電圧と時間を、それぞれ、以下の表1に示す通りとした他は、実施例1と同様にして、実施例2〜44と比較例1〜5の非水系リチウム型蓄電素子をそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた非水系リチウム型蓄電素子の評価結果を以下の表2に示す。
Claims (15)
- 正極、負極、セパレータ、リチウムイオンを含む非水系電解液を備える非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、該負極活物質はリチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含有し、
該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、1質量%以上50質量%以下の炭酸リチウム粒子を含有し、
該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上40%以下であり、
前記炭酸リチウム粒子の数平均粒子径をX1とするとき、1μm≦X1≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をY1とするとき、3μm≦Y1≦20μmであり、かつ、X1<Y1である、前記非水系リチウム型蓄電素子。 - 前記正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、2%以上20%以下である、請求項1に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 前記正極に含有される炭酸リチウムの量が、前記正極活物質層の全質量を基準として、2.5質量%以上30質量%以下である、請求項1又は2に記載の非水系リチウム蓄電素子。
- 前記正極の表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率が30%以上99%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 前記正極をBIB加工した断面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率が10%以上65%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 前記正極活物質層が、下記式(1)〜(3):
- 前記正極活物質層に含まれる正極活物質が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m2/g以上3,000m2/g以下を示す活性炭である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 前記正極活物質層に含まれる正極活物質が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V1(cc/g)が0.8<V1≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V2(cc/g)が0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m2/g以上4,000m2/g以下を示す活性炭である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 前記負極活物質のリチウムイオンのドープ量が、単位質量当たり530mAh/g以上2,500mAh/g以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 前記負極活物質のBET比表面積が100m2/g以上1,500m2/g以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 前記負極活物質のリチウムイオンのドープ量が、単位質量当たり50mAh/g以上700mAh/g以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 前記負極活物質のBET比表面積が1m2/g以上50m2/g以下である、請求項1〜8、及び11のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 前記負極活物質の平均粒子径が1μm以上10μm以下である、請求項1〜8、11、及び12のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオンを含む非水系電解液を備える非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、1質量%以上50質量%以下の炭酸リチウム粒子を含有し、
該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上40%以下であり、
前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をX1とするとき、1μm≦X1≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をY1とするとき、3μm≦Y1≦20μmであり、かつ、X1<Y1であり、そして
該非水系リチウム型蓄電素子において、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、静電容量をF(F)、電力量をE(Wh)、蓄電素子の体積をV(L)としたとき、以下の:
(a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である;
(b)E/Vが15以上50以下である;
を同時に満たすことを特徴とする、前記非水系リチウム蓄電素子。 - 正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオンを含む非水系電解液を備える非水系リチウム型蓄電素子であって、
該負極が、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
該正極が、正極集電体と、該正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、活性炭からなる正極活物質を含む正極活物質層とを有し、
該正極が、該正極活物質層の全質量を基準として、1質量%以上50質量%以下の炭酸リチウム粒子を含有し、
該正極の断面の顕微ラマン分光測定により得られるイメージング画像において、断面積に占める炭酸イオンマッピングの面積比率が、1%以上40%以下であり、
前記炭酸塩粒子の数平均粒子径をX1とするとき、1μm≦X1≦5μmであり、前記正極活物質の数平均粒子径をY1とするとき、3μm≦Y1≦20μmであり、かつ、X1<Y1であり、そして
該非水系リチウム型蓄電素子において、セル電圧4Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した後の、セル電圧4Vでの内部抵抗をRb(Ω)、環境温度25℃にて、セル電圧を2.2Vから3.8Vまで、300Cのレートでの充放電サイクルを60,000回行った後の内部抵抗をRc(Ω)としたとき、以下の:
(c)Rb/Raが3.0以下である;
(d)セル電圧4V及び環境温度60℃において2か月間保存した時に発生するガス量が、25℃において25×10−3cc/F以下である;
(e)Rc/Raが0.9以上2.0以下である;
を同時に満たすことを特徴とする、前記非水系リチウム型蓄電素子。
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