JP2018056443A - 正極前駆体 - Google Patents

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啓太 楠坂
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剛 白鳥
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Abstract

【課題】正極活物質層の剥離強度が高く、負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高エネルギー密度かつ高入出力な非水系ハイブリッドキャパシタを製造することができる正極前駆体を提供することである。
【解決手段】正極活物質以外のアルカリ金属化合物と、正極集電体と、上記正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有し、上記正極活物質層は、炭素材料を含む正極活物質と、結着剤とを含有する、正極前駆体であって、上記正極集電体を除く上記正極前駆体の質量を基準として、上記アルカリ金属化合物の重量比をX質量%とするとき、5≦X≦50であり、上記結着剤はフッ素含有物を含み、上記結着剤の重量平均分子量が50万以上180万以下である、正極前駆体。
【選択図】なし

Description

本発明は正極前駆体に関する。
近年、地球環境の保全及び省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)も高く、上記高出力が要求される分野で最適のデバイスと考えられてきた。しかし、そのエネルギー密度は1〜5Wh/L程度に過ぎない。そのため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
一方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、耐久性を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(蓄電素子の放電容量の何%を放電した状態かを示す値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかし、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)については、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性を持たせるためには、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲での使用となる。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、リチウムイオン電池の耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
上記のように、高エネルギー密度、高出力特性、及び耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。しかし、上述した既存の蓄電素子には、それぞれ一長一短がある。そのため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
キャパシタのエネルギーは1/2・C・V(式中、Cは静電容量であり、かつVは電圧である)で表される。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系ハイブリッドキャパシタ)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着及び脱着による非ファラデー反応によって;負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵及び放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
上述の電極材料とその特徴をまとめると、電極に活性炭等の材料を用い、活性炭表面のイオンの吸着及び脱離(非ファラデー反応)により充放電を行う場合は、高出力かつ高耐久性を実現するが、エネルギー密度が低くなる(例えば1倍とする。)。電極に酸化物や炭素材料を用い、ファラデー反応により充放電を行う場合は、エネルギー密度が高くなる(例えば活性炭を用いた非ファラデー反応の10倍とする。)が、耐久性及び出力特性に課題がある。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高出力かつ高耐久性を有するが、エネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)だが、出力特性及び耐久性に課題がある。ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10〜50%しか使用できない。
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭(エネルギー密度1倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオン二次電池の特徴を兼ね備えた新規の非対称キャパシタである。リチウムイオンキャパシタは、高出力かつ高耐久性でありながら、高エネルギー密度(正極1倍×負極10倍=10)を有し、リチウムイオン二次電池の様に放電深度を制限する必要がないことが特徴である。
上記で説明した蓄電素子(特にリチウムイオン二次電池)の正極について様々な検討が行われている。
例えば、特許文献1には、正極中に炭酸リチウムを含有させた正極を用い、電池内圧の上昇に応じて作動する電流遮断機構を有するリチウムイオン二次電池が提案されている。特許文献2には、リチウムマンガン酸等のリチウム複合酸化物を正極に用い、正極に炭酸リチウムを含有させることでマンガンの溶出を抑制したリチウムイオン二次電池が提案されている。特許文献3には、正極で被酸化物としての各種リチウム化合物を酸化し、劣化した蓄電素子の容量を回復させる方法が提案されている。特許文献4には、制酸剤として炭酸塩、水酸化物、又はケイ酸塩を活性炭正極に含有させる方法が提案されている。
特開平7−328278号公報 特開2001−167767号公報 特開2012−174437号公報 特開2006−261516号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載の方法では、非水系ハイブリッドキャパシタにおける負極へのプレドープについては全く考慮されておらず、プレドープの効率化及び非水系ハイブリッドキャパシタの高エネルギー密度化、低抵抗化、並びに正極における正極活物質層の剥離強度について更なる改善の余地があった。
本発明が解決しようとする課題のひとつは、正極活物質層の剥離強度が高く、負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高エネルギー密度かつ高入出力な非水系ハイブリッドキャパシタを製造することができる正極前駆体を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた。
その結果、正極前駆体が正極活物質以外のアルカリ金属化合物を特定量含有し、かつ特定の結着剤を含有することで、正極前駆体を非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときにアルカリ金属化合物の分解を促進することが可能になり、負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高エネルギー密度かつ高入出力が得られると共に、正極前駆体及び正極における正極活物質層の剥離強度を高くすることができることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
〔1〕
正極活物質以外のアルカリ金属化合物と、正極集電体と、上記正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有し、上記正極活物質層は、炭素材料を含む正極活物質と、結着剤とを含有する、正極前駆体であって、
上記正極集電体を除く上記正極前駆体の質量を基準として、上記アルカリ金属化合物の重量比をX質量%とするとき、5≦X≦50であり、
上記結着剤はフッ素含有物を含み、上記結着剤の重量平均分子量が50万以上180万以下である、正極前駆体。
〔2〕
上記フッ素含有物はポリフッ化ビニリデンを含む、項目1に記載の正極前駆体。
〔3〕
上記正極活物質層の示差走査熱量測定において、上記結着剤の融解開始温度が140℃以上165℃以下である、項目1又は2に記載の正極前駆体。
〔4〕
上記正極前駆体表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対する炭素マッピングの面積重複率をA%とするとき、30≦A≦90である、項目1〜3のいずれか1項に記載の正極前駆体。
〔5〕
上記正極前駆体表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率をA%とするとき、1≦A≦50である、項目1〜4のいずれか1項に記載の正極前駆体。
〔6〕
BIB加工した上記正極前駆体断面のSEM−EDXにより得られる酸素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をA%とするとき、5≦A≦60であり、かつ0.5≦A/X≦2.0である、項目1〜5のいずれか1項に記載の正極前駆体。
〔7〕
上記アルカリ金属化合物が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、及び炭酸セシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、項目1〜6のいずれか1項に記載の正極前駆体。
〔8〕
上記アルカリ金属化合物は、アルカリ金属化合物の総質量を基準として10質量%以上の炭酸リチウムを含む、項目1〜7のいずれか1項に記載の正極前駆体。
〔9〕
上記アルカリ金属化合物の平均粒子径が、0.1μm以上10μm以下である、項目1〜8のいずれか1項に記載の正極前駆体。
〔10〕
上記正極活物質は、上記炭素材料として活性炭を含有する、項目1〜9のいずれか1項に記載の正極前駆体。
〔11〕
上記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cc/g)とするとき、0.3<V≦0.8、及び0.5≦V≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下を示す、項目10に記載の正極前駆体。
〔12〕
上記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V(cc/g)が0.8<V≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V(cc/g)が0.8<V≦3.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下を示す、項目10に記載の正極前駆体。
本発明によれば、正極活物質層の剥離強度が高く、負極へのプレドープを短時間で行うことができ、高エネルギー密度かつ高入出力な非水系ハイブリッドキャパシタを製造することができる正極前駆体を提供することができる。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の各数値範囲における上限値及び下限値は任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
《非水系ハイブリッドキャパシタ》
非水系ハイブリッドキャパシタは一般に、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素として有する。電解液としては、アルカリ金属塩等の電解質を溶解させた有機溶媒(以下「非水系電解液」という。)を用いる。
本願明細書において、プレドープ前における正極状態のことを「正極前駆体」、プレドープ後における正極状態のことを「正極」と定義する。
<正極前駆体>
本実施形態における正極前駆体は、正極活物質以外のアルカリ金属化合物と、正極集電体と、上記正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有し、上記正極活物質層は、炭素材料を含む正極活物質と、結着剤とを含有し、上記正極集電体を除く上記正極前駆体の質量を基準として、上記アルカリ金属化合物の重量比をX質量%とするとき、5≦X≦50であり、上記結着剤はフッ素含有物を含み、上記結着剤の重量平均分子量が50万以上180万以下である。本実施形態に係る正極前駆体は、非水系ハイブリッドキャパシタの所望の構成に応じて、単に、プレドープ前の電極、プレドープ前の片側電極、ハーフセル、塗工電極、乾燥電極等と呼ばれることがある。
本実施形態の正極前駆体は、正極活物質以外のアルカリ金属化合物を含む。本実施形態では蓄電素子を組み立てる際に、負極にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましい。プレドープ方法としては、上記アルカリ金属化合物を含む正極前駆体と、負極と、セパレータと、非水系電解液とを用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。上記アルカリ金属化合物は上記正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層に含有されることが好ましい。
[正極活物質層]
正極前駆体に含まれる正極活物質層は、炭素材料を含む正極活物質と、結着剤とを含有する。正極活物質層は、正極活物質及び結着剤以外に、必要に応じて、導電性フィラー、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
正極前駆体の正極活物質層は、正極活物質以外のアルカリ金属化合物を含有することが好ましい。
−正極活物質−
上記正極活物質は炭素材料を含む。炭素材料としては、好ましくは活性炭、カーボンナノチューブ、導電性高分子、及び多孔性の炭素材料等が挙げられ、より好ましくは活性炭である。正極活物質としては、1種の炭素材料を単独で使用してもよく、2種類以上の炭素材料を混合して使用してもよく、炭素材料以外の材料(例えばアルカリ金属と遷移金属との複合酸化物等)を含んでもよい。
正極活物質の総質量に対する炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、又は100質量%であってもよい。他の材料との併用による効果を良好に得る観点から、例えば、炭素材料の含有率は、正極活物質の総質量に対して、好ましくは90質量%以下であり、又は80質量%以下であってもよい。
活性炭を正極活物質として用いる場合、活性炭の種類及びその原料は特に制限されない。しかし、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cc/g)とするとき、
(1)高い入出力特性を得るためには、0.3<V≦0.8、及び0.5≦V≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である活性炭(以下「活性炭1」ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V≦2.5、及び0.8<V≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である活性炭(以下「活性炭2」ともいう。)が好ましい。
以下、上記(1)活性炭1及び上記(2)活性炭2について、個別に順次説明する。
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量Vは、蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。一方で、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましい。一方で、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量Vに対するメソ孔量Vの比(V/V)は、0.3≦V/V≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら入出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、V/Vが0.3以上であることが好ましい。一方で、高入出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、V/Vは、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.4≦V/V≦0.7、更に好ましくは0.55≦V/V≦0.7である。
活性炭1のV、V及びV/Vについては、それぞれ上記で説明された好適な範囲の上限と下限を、任意に組み合わせることができる。
活性炭1の平均細孔径は、得られる蓄電素子の入出力を高くする点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが更に好ましい。容量を高くする点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m/g以上3,000m/g以下であることが好ましく、1,500m/g以上2,500m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。上記BET比表面積の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
上記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料から上記活性炭1を得るための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃、好ましくは450〜600℃において、30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。このうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを好ましくは0.5〜3.0kg/h、より好ましくは0.7〜2.0kg/hの割合で供給しながら、上記炭化物を、好ましくは3〜12時間、より好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間かけて800〜1,000℃まで昇温して賦活することが好ましい。
上記炭化物の賦活処理に先立ち、予め上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が好ましい。
上記炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、上記の特徴を有する活性炭1を製造することができる。
活性炭1の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。上記平均粒子径が2μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。平均粒子径が2μm以上であれば、耐久性が低くなり難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、非水系ハイブリッドキャパシタの高速充放電に適合し易くなる傾向がある。上記平均粒子径は、より好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。上記平均粒子径の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
(活性炭2)
活性炭2のメソ孔量Vは、蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。Vは、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは1.0cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは、1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
他方、活性炭2のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。Vは、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cc/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは1.0cc/gより大きく2.5cc/g以下、更に好ましくは1.5cc/g以上2.5cc/g以下である。
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値としては、2,300m/g以上4,000m/g以下であることが好ましい。BET比表面積の下限としては、3,000m/g以上であることがより好ましく、3,200m/g以上であることが更に好ましい。BET比表面積の上限としては、3,800m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が2,300m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が4,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
活性炭2のV、V及びBET比表面積については、それぞれ上記で説明された好適な範囲の上限と下限を、任意に組み合わせることができる。
上記のような特徴を有する活性炭2は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素源としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、或いは賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は好ましくは400〜700℃、下限は、好ましくは450℃以上、更に好ましくは500℃以上、上限は、好ましくは650℃以下であり、焼成時間は好ましくは0.5〜10時間程度である。
上記炭化処理後の炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活法がある。高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ金属賦活法が好ましい。
この賦活方法では、炭化物と水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で好ましくは600〜900℃、より好ましくは650℃〜850℃の範囲において、0.5〜5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
炭化物とアルカリ金属化合物との質量比(=炭化物:アルカリ金属化合物)は好ましくは1:1以上であり、アルカリ金属化合物の量が増えるほどメソ孔量が増え、質量比1:3.5付近を境に急激に細孔量が増える傾向があるので、炭化物とアルカリ金属化合物との質量比は1:3以上であることが好ましい。炭化物とアルカリ金属化合物との質量比は、アルカリ金属化合物が増えるほど細孔量が大きくなるが、その後の洗浄等の処理効率を考慮すると、1:5.5以下であることが好ましい。
マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は2μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上10μm以下である。
(活性炭の使用態様)
正極活物質に活性炭を使用する場合、活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって上記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
上記の活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料(例えば、上記特定のV及び/若しくはVを有さない活性炭、又は活性炭以外の材料(例えば、アルカリ金属と遷移金属との複合酸化物等))を含んでもよい。活性炭1の含有量、又は活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量は、それぞれ、全正極活物質の50質量%より多いことが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%であることがより更に好ましい。
正極活物質層における正極活物質の含有割合は、正極前駆体における正極活物質層の全質量を基準として、35質量%以上95質量%以下であることが好ましい。正極活物質の含有割合の上限としては、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。正極活物質の含有割合の下限としては、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。この範囲の含有割合とすることにより、好適な充放電特性を発揮する。
−アルカリ金属化合物−
本実施形態におけるアルカリ金属化合物としては、正極前駆体中で分解して、アルカリ金属イオンを放出することが可能である化合物を用いる。アルカリ金属イオンを陽イオンとする炭酸塩、酸化物、水酸化物、フッ化物、塩化物、シュウ化物、ヨウ化物、窒化物、硫化物、リン化物、硝酸化物、硫酸化物、リン酸化物、シュウ酸化物、ギ酸化物及び酢酸化物からなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。中でも、炭酸塩、酸化物、及び水酸化物がより好適であり、空気中での取り扱いが可能であり、吸湿性が低いという観点からアルカリ金属炭酸塩がさらに好適に用いられる。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、及び炭酸セシウムからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられ、中でも、単位重量当たりの容量が高いという観点から炭酸リチウムがさらに好適に用いられる。アルカリ金属化合物は、正極前駆体に含有されるアルカリ金属化合物の総質量を基準として、炭酸リチウムを10質量%以上含むことが好ましい。正極前駆体中に含まれるアルカリ金属化合物は1種でもよく、2種以上を含んでいてもよい。
本実施形態の正極前駆体は、アルカリ金属化合物の他に、アルカリ土類金属炭酸塩、例えばBeCO、MgCO、CaCO、SrCO、及びBaCOからなる群から選択される少なくとも一つ、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属シュウ酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩を1種以上含んでいてもよい。
本実施形態において、正極集電体を除く正極前駆体の質量を基準として、正極前駆体におけるアルカリ金属化合物の重量比をX質量%とするとき、5≦X≦50であり、好ましくは10≦X≦45、より好ましくは15≦X≦40である。
Xが5以上であれば、負極へプレドープするアルカリ金属イオンが十分に確保されると共に、正極に適当な程度の多孔性を付与することができ、非水系ハイブリッドキャパシタの入出力特性が高まる。Xが50以下であれば、正極前駆体中の電子伝導性が高まるためにアルカリ金属化合物の分解が促進されることでプレドープが短時間で終了すると共に、高エネルギー密度な非水系ハイブリッドキャパシタが得られる。
正極前駆体が、アルカリ金属化合物の他に上記アルカリ土類金属化合物を含む場合は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の総質量が、正極集電体を除く正極前駆体の質量を基準として5質量%以上50質量%以下の割合で含まれるように正極前駆体を作製することが好ましい。
上記アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属の定量は、ICP−AES、原子吸光分析法、蛍光X線分析法、中性子放射化分析法、ICP−MS等により算出できる。
(正極前駆体の元素マッピング)
正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物は、非水系ハイブリッドキャパシタを形成したときに高電圧を印加することで酸化分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極で還元することでプレドープが進行する。そのため、酸化反応を促進させることでプレドープを短時間で行うことができる。酸化反応を促進させるためには、絶縁物であるアルカリ金属化合物を正極活物質及び/又は導電性フィラー等の導電部材と接触させて電子伝導性を確保することと、反応して放出される陽イオンを電解液中に拡散させることが重要である。
本実施形態では、正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対する炭素マッピングの面積重複率をA%とするとき、好ましくは30≦A≦90であり、より好ましくは35≦A≦85、さらに好ましくは40≦A≦80である。
SEM−EDXでの元素マッピングにおける酸素はアルカリ金属化合物に主に由来し、炭素は正極活物質である炭素材料及び/又は導電性フィラーに主に由来すると推定される。
が30%以上であれば、アルカリ金属化合物と正極活物質及び/又は導電性フィラー等の導電部材との電子伝導性が確保されるためにプレドープが促進されると共に、正極に多孔性が付与されることで高入出力な非水系ハイブリッドキャパシタが得られる。Aが90%以下であれば電解液中のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープが促進される。
正極前駆体表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率をA%とするとき、好ましくは1≦A≦50、より好ましくは1.5≦A≦40、さらに好ましくは2≦A≦30である。
SEM−EDXでの元素マッピングにおけるフッ素は結着剤に主に由来すると考えられる。
が1%以上であれば、正極前駆体内でアルカリ金属化合物が十分に固定される。Aが50%以下であれば、アルカリ金属化合物は絶縁物である結着剤に阻害されることなく、電子伝導性が確保されるためにプレドープが促進される。
ブロードイオンビーム(BIB)加工した正極前駆体断面のSEM−EDXにより得られる酸素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をA%とするとき、好ましくは、5≦A≦60であり、かつ0.5≦A/X≦2.0である。
が5%以上であればアルカリ金属化合物と正極活物質及び/又は導電性フィラー等の導電部材との電子伝導性が確保されるためにプレドープが促進される。Aが60%以下であれば電解液中のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープが促進される。A/Xが0.5以上であれば正極前駆体中の電解液の拡散が促進されるためにプレドープが促進される。A/Xが2.0以下であればアルカリ金属化合物と正極活物質及び/又は導電性フィラー等の導電部材との電子伝導性が確保されるためにプレドープが促進される。
、A、及びAの測定方法としては、正極前駆体表面及び正極前駆体断面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピング、炭素マッピング、及びフッ素マッピングの面積を求めることで算出される。正極前駆体断面の形成方法については、正極前駆体上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができる。
SEM−EDXの元素マッピングの測定条件は、特に限定されないが、画素数は128×128ピクセル〜512×512ピクセルの範囲であることが好ましく、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。
(アルカリ金属化合物の態様)
アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物は粒子状であることが好ましい。正極前駆体に含有されるアルカリ金属化合物の平均粒子径は0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。アルカリ金属化合物の平均粒子径の下限としては、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。
アルカリ金属化合物の平均粒子径が0.1μm以上であれば正極前駆体中での分散性に優れる。アルカリ金属化合物の平均粒子径が10μm以下であれば、アルカリ金属化合物の表面積が増えるために分解反応が効率よく進行する。
正極前駆体中におけるアルカリ金属化合物の平均粒子径の測定方法については特に限定されないが、正極前駆体断面のSEM画像、及びSEM−EDX画像から算出することができる。
アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
(アルカリ金属化合物と正極活物質の判別方法)
アルカリ金属化合物及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極前駆体断面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。上記SEM−EDXで得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をアルカリ金属化合物と判別できる。
(アルカリ金属化合物の平均粒子径の算出方法)
アルカリ金属化合物の平均粒子径は、上記正極前駆体断面SEMと同視野にて測定した断面SEM−EDXから得られた画像を、画像解析することで求めることができる。上記正極前駆体断面のSEM画像にて判別されたアルカリ金属化合物の粒子全てについて、断面積Sを求め、下記式(1)にて算出される粒子径dを求める。(円周率をπとする。)
d=2×(S/π)1/2 式(1)
得られた粒子径dを用いて、下記式(2)において体積平均粒子径Xを求める。
=Σ[4/3π×(d/2)]×d]/Σ[4/3π×(d/2)]] 式(2)
正極前駆体断面の視野を変えて5ヶ所以上測定し、それぞれのXの平均値をもってアルカリ金属化合物の平均粒子径を算出することができる。
−正極活物質層の結着剤−
本実施形態における正極前駆体の正極活物質層に含まれる結着剤は、フッ素含有物を含み、上記結着剤の重量平均分子量は50万以上180万以下である。
本実施形態における正極前駆体に含有されるアルカリ金属化合物は非水系ハイブリッドキャパシタを形成したときにプレドープで酸化分解するため、プレドープ後の正極にはアルカリ金属化合物が抜けた後に残る空孔が多数形成される。従って、プレドープ後の正極は剥離強度が低くなり易いため、正極前駆体での正極活物質層の剥離強度と共に、プレドープ後の正極でも正極活物質層の剥離強度が十分に確保できるように結着剤の選定と使用量を制御することが重要である。
上記フッ素含有物としては、耐酸化性と高剥離強度の観点から、好ましくは、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が挙げられ、正極活物質層の薄膜化が容易であり、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときの高入出力の観点から、より好ましくはPVdF(ポリフッ化ビニリデン)である。正極活物質層に含まれる結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記正極前駆体に含まれる結着剤の重量平均分子量の上限としては、160万以下が好ましく、145万以下がより好ましく、130万以下がさらに好ましく、下限としては、60万以上が好ましく、70万以上がより好ましく、80万以上がさらに好ましい。
本実施形態における正極前駆体はアルカリ金属化合物を含有するため、後述の正極前駆体の製造方法において、水又は有機溶媒を用いた塗工液を調製する場合には、アルカリ金属化合物に由来して塗工液がアルカリ性を示すことがある。塗工液がアルカリ性を示すと、結着剤が架橋、ゲル化等を起こし結着剤の分子量が低下することがある。したがって、本願明細書において、正極前駆体中の結着剤の重量平均分子量は、製造された正極前駆体に含まれる結着剤の重量平均分子量を意味する。結着剤としては、アルカリ耐性が強い、つまりアルカリ性溶液に加えても変性しない(例えば、分子量が低下しない)ことが好ましい。
正極前駆体に含まれる結着剤の重量平均分子量が50万以上であれば、正極活物質層の正極活物質の細孔内に結着剤が入り込み難いため、正極活物質層に添加した結着剤が効率的に正極活物質層の構成部材同士を繋ぎ止めることができる。また、プレドープ後にアルカリ金属化合物が抜けた後に残る空孔が形成されても、結着剤の分子鎖が長いため、高剥離強度を確保できる。結着剤の重量平均分子量が180万以下であれば、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときに、絶縁性である結着剤が正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。また、プレドープ時にアルカリ金属化合物の酸化分解由来のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープが促進される。
本実施形態では、正極前駆体の正極活物質層の示差走査熱量測定において、結着剤の融解開始温度が140℃以上165℃以下であることが好ましい。結着剤の融解開始温度の上限としては、162.5℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましく、下限としては、142.5℃以上がより好ましく、145℃以上がさらに好ましい。
結着剤の融解開始温度が140℃以上であれば、結着剤にPVdFを含む場合、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときに、結着剤が電解液で膨潤し難いため、正極活物質層内の導電パスを阻害せず、高い入出力特性が得られる。結着剤の融解開始温度が165℃以下であれば、結着剤にPVdFを含む場合、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときに、充放電により正極活物質層が膨張及び収縮しても、結着剤がそれに追従するのに十分な柔軟性を保持できる。
正極前駆体の正極活物質層における結着剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下、より好ましくは3質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上25質量部以下である。結着剤の使用量が1質量部以上であれば、十分な電極強度が発現される。結着剤の使用量が30質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現されると共に、プレドープ時にアルカリ金属化合物の酸化分解由来のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープが促進される。
(結着剤の同定方法)
正極前駆体の正極活物質層に含まれる結着剤の同定方法は特に限定されず、例えば、正極活物質層そのもの、又は溶媒抽出物から測定が可能である。溶媒から抽出する場合には、抽出溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)やDMF(ジメチルホルムアミド)等が用いられる。
フッ素含有物の同定方法として、例えば、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光法)測定が挙げられる。得られたIRスペクトルのC−F吸収等を観ることで、フッ素含有物の同定が可能である。その他の解析手法として、19F−固体NMR、19F−溶液NMR等を用いることにより、結着剤を同定することもできる。結着剤の同定には、複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
(結着剤の定量方法)
正極前駆体の正極活物質層に含まれる結着剤の定量方法は特に限定されず、例えば、TG(熱重量測定)で測定可能である。
TGを使用する場合の結着剤の定量方法を例示する。正極前駆体から正極活物質層のみを白金パンに掻き取り、大気雰囲気下で2〜10℃/分で昇温して重量低下量から正極活物質層含まれる結着剤の定量が可能である。PVdFの場合、大気雰囲気中400〜500℃以下までの領域で分解する重量低下量で判断できる。
フッ素含有物の定量方法であれば、正極活物質層に対して管状燃焼法による燃焼イオンクロマトグラフィーでフッ素化物イオン量から定量できる。PVdFの場合、測定したフッ素化物イオン量×64(CHCF)/38(2F)からPVdF量を算出できる。
−正極活物質層の任意成分−
本実施形態における正極前駆体の正極活物質層は、正極活物質、アルカリ金属化合物及び結着剤の他に、必要に応じて、導電性フィラー、及び分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーとしては、特に制限されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等を用いることができる。正極前駆体の正極活物質層における導電性フィラーの使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部超30質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上15質量部以下である。導電性フィラーは、上述のように、アルカリ金属化合物と接触させることでプレドープ時の酸化分解を促進し、さらに高入出力特性の観点から、正極活物質層は導電性フィラーを含有することが好ましい。導電性フィラーの使用量が30質量部以下であれば、正極活物質層における正極活物質の含有割合が多くなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度を確保することができる。
分散安定剤としては、特に制限されず、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。分散安定剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは、0質量部又は0.1質量部以上、10質量部以下である。分散安定剤の使用量が10質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[正極集電体]
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こりにくい材料であれば特に制限されず、金属箔が好ましい。正極集電体としての金属箔は、アルミニウム箔が特に好ましい。
正極集電体は凹凸や貫通孔を持たない金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
その中でも、正極集電体は貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限されず、例えば、1〜100μmが好ましい。
[正極前駆体の製造]
本実施形態において、非水系ハイブリッドキャパシタの正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質、アルカリ金属化合物及び結着剤、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を、水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。得られた正極前駆体をプレスして、正極活物質層の厚み又は嵩密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、正極活物質、アルカリ金属化合物及び結着剤、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型して正極シートを作成した後、導電性接着剤(「導電性ペースト」ともいう)を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
上記正極前駆体の塗工液は、正極活物質を含む各種材料粉末の一部若しくは全部をドライブレンドし、次いで水若しくは有機溶媒を追加してもよく、及び/又はそれらに結着剤若しくは分散安定剤が溶解若しくは分散した液状若しくはスラリー状の物質を追加して調製してもよい。水又は有機溶媒に結着剤又は分散安定剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、正極活物質を含む各種材料粉末を追加して、塗工液を調製してもよい。ドライブレンドする方法として、例えばボールミル等を使用して正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて導電性フィラーを予備混合して、導電性の低いアルカリ金属化合物に導電性フィラーをコーティングさせる予備混合をしてもよい。予備混合により、後述のプレドープにおいて正極前駆体でアルカリ金属化合物が分解し易くなる。上記塗工液の溶媒に水を使用する場合には、アルカリ金属化合物を加えることで塗工液がアルカリ性になることもあるため、必要に応じてpH調整剤を添加してもよい。
上記正極前駆体の塗工液の分散方法としては、特に制限されず、好適にはホモディスパーや多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることができる。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速が1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。周速が50m/s以下であれば、分散による熱又はせん断力により各種材料が破壊されるにくく、再凝集が生じにくくなるため好ましい。
上記塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、さらに好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm未満では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒子径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり好ましくない。粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジ発生等が少なく、安定に塗工ができる。
上記正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)は、好ましくは1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。粘度(ηb)が20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。
塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みが良好に制御できる。
上記正極前駆体の塗膜の形成方法は特に制限されず、好適にはダイコーターやコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることができる。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工で形成してもよい。多層塗工の場合には、塗膜各層内のアルカリ金属化合物の含有量が異なるように塗工液組成を調整してもよい。塗工速度は、好ましくは0.1m/分以上100m/分以下、より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、さらに好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工できる。塗工速度が100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
上記正極前駆体の塗膜の乾燥方法は、特に制限されず、好適には熱風乾燥や赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。複数の乾燥方法を組み合わせて塗膜を乾燥させてもよい。乾燥温度は、好ましくは25℃以上200℃以下、より好ましくは40℃以上180℃以下、さらに好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることができる。乾燥温度が200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れやマイグレーションによる結着剤の偏在、及び正極集電体や正極活物質層の酸化を抑制できる。
上記正極前駆体のプレス方法としては、特に制限されず、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることができる。正極活物質層の厚み、嵩密度及び電極強度は、後述するプレス圧力、隙間、及びプレス部の表面温度により調整できる。
プレス圧力は、好ましくは0.5kN/cm以上20kN/cm以下、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、さらに好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓みやシワが生じることがなく、所望の正極活物質層厚みや嵩密度に調整できる。
当業者であれば、プレスロール同士の隙間は、所望の正極活物質層の厚みや嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体厚みに応じて任意の値を設定できる。当業者であれば、プレス速度は、正極前駆体に撓みやシワが生じにくい任意の速度に設定できる。
プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要によりプレス部を加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは融点マイナス45℃以上、さらに好ましくは融点マイナス30℃以上である。加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、好ましくは使用する結着剤の融点プラス50℃以下、より好ましくは融点プラス30℃以下、さらに好ましくは融点プラス20℃以下である。
プレス圧力、隙間、速度、及びプレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
上記正極活物質層の厚みは、正極集電体の片面当たり、好ましくは20μm以上200μm以下、より好ましくは片面当たり25μm以上100μm以下、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。正極活物質層の厚みが20μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。正極活物質層の厚みが200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な入出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、従ってエネルギー密度を高めることができる。上記正極活物質層の厚みの範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。本明細書において、集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における正極活物質層の厚みとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚みの平均値をいう。
<負極>
負極は、一般的に、負極集電体と、前記負極集電体の片面又は両面に存在する負極活物質層と、を有する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出できる負極活物質を含むことが好ましい。負極活物質層は、負極活物質以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
−負極活物質−
上記負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出することが可能な物質を用いることができる。負極活物質としては、具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫及び錫化合物等が例示される。負極活物質の総質量に対する炭素材料の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、又は100質量%であってもよい。他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、炭素材料の含有率は、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であってもよい。上記炭素材料の含有率の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
上記炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;カーボンナノ粒子;活性炭;人造黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;炭素質材料前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。上記炭素質材料前駆体としては、熱処理により炭素質材料となるものであれば特に制限されず、例えば、石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、並びに合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)が挙げられる。
−負極活物質層の任意成分−
負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
導電性フィラーの種類は特に制限されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が例示される。導電性フィラーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部超30質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。
結着剤としては、特に制限されず、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下、より好ましくは2質量部以上27質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上25質量部以下である。結着剤の使用量が1質量部以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で結着剤の使用量が30質量部以下であれば、負極活物質へのアルカリ金属イオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。分散安定剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは、0質量部超又は0.1質量部以上、10質量部以下である。分散安定剤の使用量が10質量部以下であれば、負極活物質へのアルカリ金属イオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[負極集電体]
負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化がおこりにくい金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。非水系ハイブリッドキャパシタにおける負極集電体としては、銅箔が好ましい。
その中でも、負極集電体は貫通孔を持たない金属箔が好ましい。貫通孔を持たない方が、製造コストが安価であり、薄膜化が容易であるため高エネルギー密度化にも寄与でき、集電抵抗も低くできるため高入出力特性が得られる。
上記金属箔は凹凸や貫通孔を持たない金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
[負極の製造]
負極は、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において負極活物質層は負極集電体に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより負極を得ることができる。さらに得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚や嵩密度を調整してもよい。
負極活物質層の厚みは、片面当たり、5μm以上100μm以下が好ましい。この厚みが5μm以上であれば、負極活物質層を塗工した際にスジ等が発生せず塗工性に優れる。この厚みが100μm以下であれば、セル体積を縮小することによって高いエネルギー密度を発現できる。負極活物質層の厚みの範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。集電体が貫通孔や凹凸を有する場合における負極活物質層の厚みとは、集電体の貫通孔や凹凸を有していない部分の片面当たりの厚みの平均値をいう。
負極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.30g/cm以上1.8g/cm以下である。嵩密度が0.30g/cm以上であれば、十分な強度を保つことができるとともに、負極活物質間の十分な導電性を発現することができる。嵩密度が1.8g/cm以下であれば、負極活物質層内でイオンが十分に拡散できる空孔が確保できる。
<セパレータ>
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層され、又は積層及び捲回され、正極前駆体、セパレータ、及び負極を有する電極積層体又は電極捲回体を形成することができる。
上記セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面または両面に、有機または無機の微粒子から構成される膜が積層されていてもよい。セパレータの内部に有機または無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。35μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の入出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
有機または無機の微粒子から構成される膜の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。10μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の入出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
<外装体>
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムから構成される3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
<非水系電解液>
非水系ハイブリッドキャパシタに用いる電解液は非水系電解液が好ましい。すなわち電解液は、非水溶媒を含む。上記非水系電解液は、上記非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のアルカリ金属塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、アルカリ金属塩を電解質として含む。非水系電解液に含まれる非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表される環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等に代表される鎖状カーボネートが挙げられる。
《非水系ハイブリッドキャパシタの製造方法》
<組立>
典型的には、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して電極積層体を得て、電極積層体に正極端子および負極端子を接続する。あるいは、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回して電極捲回体を得て、電極捲回体に正極端子及び負極端子を接続する。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定されず、抵抗溶接や超音波溶接などの方法を用いることができる。
端子を接続した電極積層体または電極捲回体は、乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法に限定されず、真空乾燥などにより乾燥する。残存溶媒は、正極活物質層または負極活物質層の重量あたり、1.5質量%以下が好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性を悪化させるため、好ましくない。
乾燥した電極積層体または電極捲回体は、好ましくは露点−40℃以下のドライ環境下にて、金属缶やラミネートフィルムに代表される外装体の中に収納し、開口部を1方だけ残した状態で封止することが好ましい。露点−40℃より高いと、電極積層体または電極捲回体に水分が付着してしまい、系内に水が残存し、自己放電特性を悪化させることがある。外装体の封止方法は特に限定されず、ヒートシールやインパルスシールなどの方法を用いることができる。
<注液、含浸、封止>
組立の後に、外装体の中に収納された電極積層体または電極捲回体に、非水系電解液を注液する。注液した後に、正極前駆体、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に含浸することが望ましい。正極前駆体、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するプレドープにおいて、ドープが不均一に進むため、得られる非水系ハイブリッドキャパシタの抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。上記含浸の方法としては、特に制限されず、例えば、注液後の非水系ハイブリッドキャパシタを、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後には、外装体が開口した状態の非水系ハイブリッドキャパシタを減圧しながら封止することで密閉する。
<プレドープ>
好ましいプレドープ方法としては、上記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のアルカリ金属化合物を分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極でアルカリ金属イオンを還元することにより負極活物質層にアルカリ金属イオンをプレドープする方法が挙げられる。
プレドープにおいて、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の酸化分解に伴い、CO等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
<エージング>
プレドープの終了後に、非水系ハイブリッドキャパシタにエージングを行うことが好ましい。エージングにおいて電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にアルカリ金蔵イオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
上記エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
<ガス抜き>
エージングの終了後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系ハイブリッドキャパシタの抵抗が上昇してしまう。
上記ガス抜きの方法としては、特に制限されず、例えば、上記外装体を開口した状態で非水系ハイブリッドキャパシタを減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。
<蓄電素子の特性評価>
(静電容量)
本明細書では、静電容量F(F)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系ハイブリッドキャパシタと対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとする。ここで得られたQを用いて、F=Q/(3.8−2.2)により算出される値をいう。
ここで電流のCレートとは、上限電圧から下限電圧まで定電流放電を行う際、1時間で放電が完了する電流値のことを1Cという。本明細書では、上限電圧3.8Vから下限電圧2.2Vまで定電流放電を行う際に1時間で放電が完了する電流値のことを1Cとする。
(内部抵抗)
本明細書では、内部抵抗Ra(Ω)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系ハイブリッドキャパシタを25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて3.8Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。続いて、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をVoとしたときに、降下電圧ΔV=3.8−Vo、及びRa=ΔV/(20Cの電流値)により算出される値である。
(電力量)
本明細書では、電力量E(Wh)とは、以下の方法によって得られる値である。
先に述べた方法で算出された静電容量F(F)を用いて、
F×(3.8−2.2)/2/3600により算出される値をいう。
(体積)
蓄電素子の体積V(L)は、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が積重された領域が、外装体によって収納された部分の体積を指す。
例えば、ラミネートフィルムによって収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、電極積層体又は電極捲回体のうち、正極活物質層および負極活物質層が存在する領域が、カップ成形されたラミネートフィルムの中に収納されるが、この蓄電素子の体積(V)は、このカップ成形部分の外寸長さ(l)と外寸幅(w)、およびラミネートフィルムを含めた蓄電素子の厚み(t)により、V=l×w×tで計算される。
角型の金属缶に収納された電極積層体又は電極捲回体の場合は、蓄電素子の体積としては、単にその金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この蓄電素子の体積(V)は、角型の金属缶の外寸長さ(l)と外寸幅(w)、外寸厚み(t)により、V=l×w×tで計算される。
円筒型の金属缶に収納された電極捲回体の場合においても、蓄電素子の体積としては、その金属缶の外寸での体積を用いる。すなわち、この蓄電素子の体積(V)は、円筒型の金属缶の底面または上面の外寸半径(r)、外寸長さ(l)により、V=3.14×r×r×lで計算される。
《測定方法》
<BET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径>
本実施形態におけるBET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、及び平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E. P. Barrett, L. G. Joyner and P. Halenda, J. Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))。
MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45 (1968))。
平均細孔径とは、液体窒素温度下で、各相対圧力下における窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる、試料の質量あたりの全細孔容積を上記BET比表面積で除して求めたものを指す。
<平均粒子径>
本実施形態における活物質の平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定した際、全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径(すなわち、50%径(Median径))を指す。この平均粒子径は市販のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
<分散度>
本実施形態における分散度は、JIS K5600に規定された粒ゲージによる分散度評価試験により求められる値である。すなわち、粒のサイズに応じた所望の深さの溝を有する粒ゲージに対して、溝の深い方の先端に十分な量の試料を流し込み、溝から僅かに溢れさせる。スクレーパーの長辺がゲージの幅方向と平行になり、粒ゲージの溝の深い先端に刃先が接触するように置き、スクレーパーをゲージの表面になるように保持しながら、溝の長辺方向に対して直角に、ゲージの表面を均等な速度で、溝の深さ0まで1〜2秒間かけて引き、引き終わってから3秒以内に20°以上30°以下の角度で光を当てて観察し、粒ゲージの溝に粒が現れる深さを読み取る。
<粘度及びTI値>
本実施形態における粘度(ηb)及びTI値は、それぞれ以下の方法により求められる値である。まず、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度2s−1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度(ηa)を取得する。ずり速度を20s−1に変更した他は上記と同様の条件で測定した粘度(ηb)を取得する。上記で得た粘度の値を用いて、TI値は、TI値=ηa/ηbの式により、算出される。ずり速度を2s−1から20s−1へ上昇させる際は、1段階で上昇させてもよいし、上記の範囲で多段的にずり速度を上昇させ、適宜そのずり速度における粘度を取得しながら上昇させてもよい。
<電極中のアルカリ金属化合物の同定方法>
正極前駆体中に含まれるアルカリ金属化合物の同定方法は特に限定されず、例えば下記のSEM−EDX、ラマン、及びX線光電子分光(XPS)により同定することができる。アルカリ金属化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
イオンクロマトグラフィーでは、正極前駆体を蒸留水で洗浄した後の水を解析することにより陰イオンを同定することができる。
上記解析手法にてアルカリ金属化合物を同定できなかった場合、その他の解析手法として、Li−固体NMR、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量測定)等を用いることにより、アルカリ金属化合物を同定することもできる。
(SEM−EDX)
アルカリ金属化合物及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極前駆体表面のSEM−EDX画像による酸素マッピングにより判別できる。SEM−EDX画像の測定例として、加速電圧を10kV、エミッション電流を1μA、測定画素数を256×256ピクセル、積算回数を50回として測定できる。試料の帯電を防止するために、真空蒸着やスパッタリング等の方法により金、白金、オスミウム等を表面処理することもできる。SEM−EDX画像の測定条件としては、明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。得られた酸素マッピングに対し、明るさの平均値を基準に二値化した明部を面積50%以上含む粒子をアルカリ金属化合物とする。
(ラマン)
炭酸イオンから構成されるアルカリ金属化合物及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極前駆体表面の炭酸イオンのラマンイメージングにより判別できる。測定条件の例として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件にて測定することができる。測定したラマンスペクトルについて、1071〜1104cm−1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算するが、この時にノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を上記炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
(XPS)
正極前駆体の電子状態をXPSにより解析することにより、正極前駆体中に含まれる化合物の結合状態を判別することができる。
測定条件の例として、X線源を単色化AlKα、X線ビーム径を100μmφ(25W、15kV)、パスエネルギーをナロースキャン:58.70eV、帯電中和を有り、スイープ数をナロースキャン:10回(炭素、酸素)20回(フッ素)30回(リン)40回(アルカリ金属)50回(ケイ素)、エネルギーステップをナロースキャン:0.25eVの条件にて測定できる。
XPSの測定前に正極前駆体の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として、例えば、加速電圧1.0kV、2mm×2mmの範囲を1分間(SiO換算で1.25nm/min)の条件にて正極前駆体の表面をクリーニングすることができる。
得られたXPSスペクトルについて、
Li1sの結合エネルギー50〜54eVのピークをLiOまたはLi−C結合、
55〜60eVのピークをLiF、LiCO
LiPO(式中、x、y、zは1〜6の整数である)、
C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、
286eVのピークをC−O結合、
288eVのピークをCOO、
290〜292eVのピークをCO 2−、C−F結合、
O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO2−(LiO)、
531〜532eVのピークをCO、CO、OH、PO(式中、xは1〜4の整数である)、SiO(式中、xは1〜4の整数である)、
533eVのピークをC−O、SiO(式中、xは1〜4の整数である)、
F1sの結合エネルギー685eVのピークをLiF、
687eVのピークをC−F結合、LiPO(式中、x、y、zは1〜6の整数である)、PF
さらにP2pの結合エネルギーについて、
133eVのピークをPO(式中、xは1〜4の整数である)、
134〜136eVのピークをPF(式中、xは1〜6の整数である)、
Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、
101〜107eVのピークをSi(式中、x、yは任意の整数である)
として帰属することができる。
得られたスペクトルについて、ピークが重なる場合には、ガウス関数又はローレンツ関数を仮定してピーク分離し、スペクトルを帰属することが好ましい。上記で得られた電子状態の測定結果及び存在元素比の結果から、存在するアルカリ金属化合物を同定することができる。
(イオンクロマトグラフィー)
正極前駆体の蒸留水洗浄液をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出したアニオン種を同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、またはサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。質量分析計や荷電化粒子検出を検出器と組み合わせて測定することもできる。
サンプルの保持時間は、使用するカラムや溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の標準液を予め測定しておくことでイオン種成分の定性と定量が可能となる。
<アルカリ金属化合物の定量方法 Xの算出>
正極前駆体中に含まれるアルカリ金属化合物の定量方法を以下に記載する。正極前駆体を蒸留水で洗浄し、蒸留水による洗浄前後の正極重量変化からアルカリ金属化合物を定量することができる。測定する正極前駆体の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm以上200cm以下であることが好ましく、更に好ましくは25cm以上150cm以下である。面積が5cm以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm以下であればサンプルの取扱い性に優れる。測定する正極前駆体の面積範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
以下、正極前駆体の正極活物質層中におけるアルカリ金属化合物の定量方法を記載する。切断した正極前駆体について重量を測定しM[g]とする。続いて、25℃環境下、正極前駆体の重量の100倍(100M[g])の蒸留水に正極を3日間以上十分に浸漬させ、アルカリ金属化合物を水中に溶出させる。この時、蒸留水が揮発しないよう容器に蓋をする等の対策を施すことが好ましい。3日間以上浸漬させた後、蒸留水から正極前駆体を取り出し(上記イオンクロマトグラフィーを測定する場合は、蒸留水の量が100M[g]になるように液量を調整する。)、真空乾燥する。真空乾燥の条件としては、例えば、温度:100〜200℃、圧力:0〜10kPa、時間:5〜20時間の範囲で正極前駆体中の残存水分量が1質量%以下になる条件が好ましい。水分の残存量については、カールフィッシャー法により定量することができる。真空乾燥後の正極前駆体の重量をM[g]とし、続いて、得られた正極前駆体の集電体の重量を測定するため、スパチュラ、ブラシ、刷毛等を用いて集電体上の正極活物質層を取り除く。得られた正極集電体の重量をM[g]とすると、正極前駆体の活物質層中に含まれるアルカリ金属化合物の重量比X[質量%]は、式(3)にて算出できる。
X=100×(M−M)/(M−M) 式(3)
<アルカリ金属元素の定量方法 ICP−MS>
正極前駆体について、濃硝酸、濃塩酸、王水等の強酸を用いて酸分解し、得られた溶液を2%〜3%の酸濃度になるように純水で希釈する。酸分解については、適宜加熱、加圧し分解することもできる。得られた希釈液をICP−MSにより解析するがこの際に内部標準として既知量の元素を加えておくことが好ましい。測定対象のアルカリ金属元素が測定上限濃度以上になる場合には、上記希釈液を酸濃度を維持したまま更に希釈することが好ましい。得られた測定結果に対し、化学分析用の標準液を用いて予め作成した検量線を基に、各元素を定量することができる。
<結着剤の重量平均分子量>
本実施形態における正極前駆体の正極活物質層に含まれる結着剤の重量平均分子量Yは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって求められる値である。
正極活物質層から結着剤をNMP(N−メチルピロリドン)やDMF(ジメチルホルムアミド)等の溶媒で抽出し、得られた溶液をDMF等の溶離液でポリマー濃度が約1mg/mlになるように調整し、続いてフィルターでろ過し、ろ液をGPC測定試料とする。必要に応じて、結着剤の溶解を促進するために加熱、加圧してもよい。
GPC測定の際に使用するカラムしては、サンプル成分を効率的に分離できれば、特に限定されない。検出器としてはサンプルの分子量が感度高く測定できれば、特に限定されないが、RI(示差屈折計)検出器を用いて、溶質成分の変化に伴う屈折率変化を検出することで、含有するポリマーの平均分子量や分子量分布に関する情報を得ることができる。装置でデータ処理することで結着剤であるポリマーの重量平均分子量Yが算出される。
正極活物質層には結着剤以外にも分散安定剤等の別のポリマーが混在することがある。GPC測定データにおいて結着剤と分離して検出されればよいが、結着剤との分離が難しい場合でも、正極前駆体の正極活物質層内で結着剤と分散安定剤を合わせた重量平均分子量が上述の値になることが好ましい。
<結着剤の融解開始温度>
本実施形態における正極前駆体の正極活物質層に含まれる結着剤の融解開始温度Zは、DSC(示差走査熱量測定)によって求められる値である。
DSCによる測定方法の例としては、正極前駆体から正極活物質層のみを掻き取り、アルミニウムパンに採取する。測定に使用するサンプル量は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5〜20mg程度であることが好ましい。採取したサンプルを窒素雰囲気下で2〜10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における融解ピークを得る。得られた融解ピークに対して、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、融解ピークの低温側の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度から、正極前駆体の正極活物質層に含まれる結着剤の融解開始温度Zが算出される。
<電極の剥離強度>
本実施形態における電極の剥離強度(N/cm)は、エー・アンド・デー社製の引張試験機(STB−1225S)を用いて測定した値である。
測定に用いる電極を2.5cm×10cmの大きさに切り出し、ニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)(品番「CT405AP−24」、24mm×35m)を貼り付ける。貼り付けたテープの端の5mm程度を剥がし、テープ側を引張試験機の上側(引張側)に、電極側を引張試験機の下側(固定側)にそれぞれ装着し、電極に対して180°方向に50mm/minの速度で100mm引っ張った時の強度曲線における歪み25mm〜65mmの部分の積分平均荷重を採用して、引張強度のデータとする。試験は25℃の一般環境下において実施することが好ましい。
以下、実施例及び比較例を示して本発明の実施形態を具体的に説明するが、しかしながら、本発明は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
<正極活物質の調製>
[活性炭1の調製]
破砕したヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、500℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で上記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
この活性炭1について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒子径を測定した結果、4.2μmであった。ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2360m/g、メソ孔量(V)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V)が0.88cc/g、V/V=0.59であった。
[活性炭2の調製]
フェノール樹脂を、窒素雰囲気下、焼成炉中580℃において2時間炭化処理した後、ボールミルにて粉砕し、分級を行って平均粒子径6.8μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃において1時間加熱して賦活化を行い、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄した後、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄し、乾燥を行うことにより、活性炭2を得た。
この活性炭2について、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒子径を測定した結果、6.7μmであった。ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が3328m/g、メソ孔量(V)が1.55cc/g、マイクロ孔量(V)が2.01cc/g、V/V=0.77であった。
<正極前駆体の製造>
[正極前駆体(組成a)の製造]
上記で得た活性炭1〜2のいずれか1つを正極活物質として用いて、下記方法で正極前駆体(組成a)を製造した。
活性炭1〜2のいずれか1つを55.5質量部、アルカリ金属化合物として、表1に示す平均粒子径を有する炭酸リチウム等を32.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)をFritsch社製の遊星型ボールミルで予備混合した。その混合物に、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)1〜3のいずれか(PVdF1:原材料単体における重量平均分子量192万、PVdF2:原材料単体における重量平均分子量118万、PVdF3:原材料単体における重量平均分子量85万)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を加え、PRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17.0m/sの条件で分散して塗工液を得た。上記塗工液を、東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚み15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥して正極前駆体(組成a)を得た。得られた正極前駆体を、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施して、正極前駆体(組成a)を得た。
[正極前駆体(組成b)の製造]
活性炭1〜2のいずれか1つを64.4質量部、炭酸リチウムを21.1質量部、ケッチェンブラックを3.5質量部、PVPを1.7質量部、及びPVdF1〜3のいずれかを9.3質量部とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成b)を得た。
[正極前駆体(組成c)の製造]
活性炭1〜2のいずれか1つを71.7質量部、炭酸リチウムを12.2質量部、ケッチェンブラックを3.9質量部、PVPを1.9質量部、及びPVdF1又は2を10.3質量部とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成c)を得た。
[正極前駆体(組成d)の製造]
活性炭1〜2のいずれか1つを74.4質量部、炭酸リチウムを8.9質量部、ケッチェンブラックを4.0質量部、PVPを2.0質量部、及びPVdF1〜3のいずれかを10.7質量部とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成d)を得た。
[正極前駆体(組成e)の製造]
活性炭1〜2のいずれか1つを76.5質量部、炭酸リチウムを6.3質量部、ケッチェンブラックを4.1質量部、PVPを2.1質量部、及びPVdF1又は2を11.0質量部とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成e)を得た。
[正極前駆体(組成f)の製造]
活性炭1〜2のいずれか1つを43.1質量部、炭酸リチウムを47.2質量部、ケッチェンブラックを2.3質量部、PVPを1.2質量部、及びPVdF1又は2を6.2質量部とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成f)を得た。
[正極前駆体(組成g)の製造]
活性炭1〜2のいずれか1つを78.5質量部、炭酸リチウムを3.9質量部、ケッチェンブラックを4.2質量部、PVPを2.1質量部、及びPVdF1又は2を11.3質量部とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成g)を得た。
[正極前駆体(組成h)の製造]
活性炭1を30.8質量部、炭酸リチウムを62.3質量部、ケッチェンブラックを1.7質量部、PVPを0.8質量部、及びPVdF2を4.4質量部とした以外は、正極前駆体(組成a)と同様の方法で、正極前駆体(組成h)を得た。
《実施例1》
<正極前駆体の製造>
活性炭2を用い、上記の組成aにて、両面正極前駆体1及び片面正極前駆体1を得た。得られた両面及び片面正極前駆体1の正極活物質層の厚みを小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、両面及び片面正極前駆体1の任意の10か所で測定した厚みの平均値から、アルミニウム箔の厚みを引いて求めた。その結果、両面及び片面正極前駆体1の正極活物質層の厚みは、片面あたり60μmであった。
<Xの算出>
上記両面正極前駆体1を10cm×5cmの大きさに切断して試料1とし、重量Mを測定した。試料1を31.0gの蒸留水に含浸させ、25℃環境下3日間経過するまで維持することで、試料1中の炭酸リチウムを蒸留水中に溶出させた。試料1を取り出し、150℃、3kPaの条件にて12時間真空乾燥した。この時の重量Mを測定した。スパチュラ、ブラシ、刷毛を用いて正極集電体上の活物質層を取り除き、正極集電体の重量Mを測定した。以上のM、M及びMから上記式(3)に従いXを算出した。得られた結果を表1に示す。
<結着剤の重量平均分子量の算出>
上記両面正極前駆体1を10cm×5cmの大きさに切断して、NMP(N−メチルピロリドン)に含浸させ、50℃環境下3日間経過するまで維持することで、正極前駆体の正極活物質層に含まれるPVdFをNMP中に溶出させ、フィルターでろ過し、ろ液を得た。得られた溶液に、さらに溶離液としてDMF(5mmol/L LiBr)を加えて、ポリマー濃度が1mg/mlになるように調整し、50℃で7時間加熱後に一晩静置し、続いて0.2μmフィルターでろ過し、ろ液を試料とした。
得られた試料についてGPC測定をした。測定条件を以下に記す。
(GPC測定条件)
・測定装置:東ソー製 HLC−8220GPC(データ処理:GPC−8020)
・カラム:Shodex KF−606M,KF−601
・検出器:RI
・試料試料:50μl
・オーブン温度:40℃
・較正曲線:PMMA
上記測定で得られたデータから重量平均分子量Yを算出した。その結果を表1に示す。
<結着剤の融解開始温度の算出>
上記両面正極前駆体1から正極活物質層のみを掻き取り、測定容器に採取し、以下の条件でDSC測定を行った。
(DSC測定条件)
・測定装置:TAインスツルメント社製 DSC Q2000
・雰囲気:窒素(流量50ml/分)
・測定温度域:25℃〜250℃
・昇温速度:10℃/分
・サンプル量:約8mg
・測定容器:アルミニウム製パン
上記測定で得られたデータから上述した方法で融解開始温度Zを算出した。その結果を表1に示す。
<A、A及びAの算出>
[試料の調製]
上記両面正極前駆体1から1cm×1cmの小片を切り出し、10Paの真空中にてスパッタリングにより表面に金をコーティングした。
[表面SEM及びEDX測定]
上記作製した試料について、大気暴露下で正極前駆体表面のSEM、及びEDXを測定した。測定条件を以下に記す。
(SEM−EDX測定条件)
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE−SEM S−4700
・加速電圧:10kV
・エミッション電流:1μA
・測定倍率:2000倍
・電子線入射角度:90°
・X線取出角度:30°
・デッドタイム:15%
・マッピング元素:C,O,F
・測定画素数:256×256ピクセル
・測定時間:60sec.
・積算回数:50回
・明るさは最大輝度に達する画素がなく、明るさの平均値が輝度40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
(SEM−EDXの解析)
上記測定した表面SEM及びEDXから得られた画像を、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて上述した方法で画像解析することでA及びAを算出した。その結果を表1に示す。
[断面SEM及びEDX測定]
上記両面正極前駆体1から1cm×1cmの小片を切り出し、日本電子製のSM−09020CPを用い、アルゴンガスを使用し、加速電圧4kV、ビーム径500μmの条件にて片面正極前駆体1の面方向に垂直な断面を作製した。上述の方法により断面SEM及びEDXを測定した。
測定した断面SEM及びEDXから得られた画像を、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて上述した方法で画像解析することでA及びA/Xを算出した。その結果を表1に示す。
<正極前駆体の剥離強度測定>
両面正極前駆体1の剥離強度をエー・アンド・デー社製の引張試験機(STB−1225S)を用いて測定した。
先ず、両面正極前駆体1を2.5cm×10cmの大きさに切り出し、正極活物質層表面にニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)(幅24mm、長さ100mm)を貼り付けた。テープを貼り付けた後、端の5mm程度を剥がし、テープ側を引張試験機の上側(引張側)に、電極側を引張試験機の下側(固定側)に装着し、電極に対して180°方向に50mm/minの速度で100mm引張した。得られた強度の25mm〜65mmの積分平均荷重を採用してデータを取得した。表面及び裏面の剥離強度をそれぞれN=3で測定し、全部の平均値から正極前駆体1の剥離強度Sを算出した。その結果を表1に示す。
<負極活物質の調製>
BET比表面積が3.1m/g、平均粒子径が4.8μmの市販の人造黒鉛150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)15gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置した。窒素雰囲気下、1000℃まで8時間かけて昇温し、同温度で4時間保持することにより、両者を熱反応させ、複合炭素材料1を得た。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料1を炉から取り出した。
得られた複合炭素材料1について、上記と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は4.9μm、BET比表面積は6.1m/gであった。石炭系ピッチ由来の炭素質材料の人造黒鉛に対する質量比率は2%であった。
<負極の製造>
次いで複合炭素材料1を負極活物質として用いて、以下のように負極1を製造した。
複合炭素材料1を80質量部、アセチレンブラックを8質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を12質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、その混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,798mPa・s、TI値は2.7であった。上記塗工液を、東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚み10μmの電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥して負極1を得た。得られた負極1を、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。上記で得られた負極1の負極活物質層の厚みを小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極1の任意の10か所で測定した厚みの平均値から、銅箔の厚みを引いて求めた。その結果、負極1の負極活物質層の厚みは、片面あたり30μmであった。
<非水系電解液の調製>
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、得られる非水系電解液に対してLiN(SOF)及びLiPFの濃度比が75:25(モル比)であり、かつLiN(SOF)及びLiPFの濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を混合溶媒中に溶解して、非水系電解液を得た。
得られた非水系電解液におけるLiN(SOF)及びLiPFの濃度は、それぞれ、0.9mol/L及び0.3mol/Lであった。
<非水系ハイブリッドキャパシタの作製>
[蓄電素子の組立、乾燥]
得られた両面正極前駆体1、両面負極1、及び片面正極前駆体1を10cm×10cm(100cm)にカットした。最上面と最下面は片面正極前駆体1を用い、更に両面負極1を21枚と両面正極前駆体1を20枚とを用い、負極と正極前駆体との間に、厚み15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。負極と正極前駆体とに、それぞれ負極端子と正極端子を超音波溶接にて接続して電極積層体を得た。この電極積層体を、温度80℃、圧力50Paで、乾燥時間60hrの条件で真空乾燥した。乾燥した電極積層体を露点−45℃のドライ環境下にて、アルミラミネート包材から構成される外装体内に収納し、電極端子部およびボトム部の外装体3方を、温度180℃、シール時間20sec、シール圧1.0MPaの条件でヒートシールした。
[蓄電素子の注液、含浸、封止]
アルミラミネート包材の中に収納された電極積層体に、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、上記非水系電解液約80gを大気圧下で注入して、プレドープ処理前の非水系ハイブリッドキャパシタを形成した。続いて、減圧チャンバーの中に上記非水系ハイブリッドキャパシタを入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す操作を4回繰り返したのち、蓄電素子を15分間静置した。常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す操作を合計7回繰り返した。(常圧から、それぞれ−95、−96、−97、−81、−97、−97、及び−97kPaまで減圧した)。以上の手順により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
非水系電解液を含浸させた電極積層体が収納された外装体を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止し、非水系ハイブリッドキャパシタを得た。
[プレドープ]
得られた非水系ハイブリッドキャパシタに対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、25℃環境下、電流値0.5Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を2時間継続する手法により初期充電を行い、負極にプレドープを行った。
[エージング]
プレドープ後の非水系ハイブリッドキャパシタを25℃環境下、0.5Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.0V定電流放電を1時間行うことにより電圧を3.0Vに調整した。続いて、非水系ハイブリッドキャパシタを60℃の恒温槽に12時間保管した。
[ガス抜き]
温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下で、エージング後の非水系ハイブリッドキャパシタのアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に上記非水系ハイブリッドキャパシタを入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す操作を合計3回繰り返した。減圧シール機に非水系ハイブリッドキャパシタを入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
以上の手順により、少なくとも2つの非水系ハイブリッドキャパシタを完成させた。
<非水系ハイブリッドキャパシタの評価>
上記で得た非水系ハイブリッドキャパシタの内、1つは後述する静電容量、Ra・Fの測定を実施した。もう1つは後述する正極の剥離強度測定を実施した。
[静電容量、Ra・Fの測定]
得られた非水系ハイブリッドキャパシタについて、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、上述した方法により、静電容量Fと25℃における内部抵抗Raを算出し、Ra・Fとエネルギー密度E/Vとを得た。得られた結果を表1に示す。
[正極試料の調製]
得られた非水系ハイブリッドキャパシタを露点温度−72℃のアルゴンボックス中で解体し、両面に正極活物質層が塗工された正極を10cm×5cmの大きさに切り出し、30gのジエチルカーボネート溶媒に浸し、時折ピンセットで正極を動かし、10分間洗浄した。続いて正極を取り出し、アルゴンボックス中で5分間風乾させ、新たに用意した30gのジエチルカーボネート溶媒に正極を浸し、上記と同様の方法にて10分間洗浄した。正極をアルゴンボックスから取り出し、真空乾燥機(ヤマト科学製、DP33)を用いて、温度25℃、圧力1kPaの条件にて20時間乾燥し、正極試料を得た。
[正極の剥離強度測定]
上記正極試料を用いて、上述の正極前駆体の剥離強度と同様の方法で、正極の剥離強度Sを算出した。その結果を表1に示す。
《実施例2〜29および比較例1〜6》
正極前駆体の正極活物質、アルカリ金属化合物の種類、配合比及びその平均粒子径、結着剤(PVdF1:原材料単体における重量平均分子量192万、PVdF2:原材料単体における重量平均分子量118万、原材料単体におけるPVdF3:重量平均分子量85万)、組成、予備混合の有無を、それぞれ表1に示すとおりとした他は実施例1と同様にして実施例2〜29と比較例1〜6の正極前駆体及び非水系ハイブリッドキャパシタをそれぞれ作製し、各種の評価を行った。得られた評価結果を表1に示す。
《比較例7》
<正極前駆体(組成i)の製造>
活性炭1を87.5質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)2を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合し、その混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17m/sの条件で分散して塗工液を得た。上記塗工液を、東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、厚み15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥して正極前駆体(組成i)を得た。得られた正極前駆体を、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。得られた正極前駆体(組成i)について、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を表1に示す。
<非水系ハイブリッドキャパシタの製造、評価>
得られた正極前駆体(組成i)と負極活物質単位質量当たり211mAh/gに相当する金属リチウム箔を負極1の負極活物質層表面に貼り付けた負極を用いた他は実施例1と同様にして非水系ハイブリッドキャパシタの組立及び注液、含浸、及び封止を実施した。
次いで、プレドープとして、上記で得た非水系ハイブリッドキャパシタを環境温度45℃の恒温槽の中で72時間保管し、金属リチウムをイオン化させて負極1にドープした。得られた非水系ハイブリッドキャパシタについて、実施例1と同様にしてエージング、ガス抜きを実施して非水系ハイブリッドキャパシタを製造し、評価を行った。その結果を表1に示す。
《比較例8》
結着剤をPVdF3とした他は比較例7と同様にして比較例8の正極前駆体及び非水系ハイブリッドキャパシタを作製し、各種の評価を行った。その結果を表1に示す。
《比較例9》
正極活物質を活性炭2、結着剤をPVdF1とした他は比較例7と同様にして比較例9の正極前駆体及び非水系ハイブリッドキャパシタを作製し、各種の評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2018056443
上記で説明したとおり、正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物が分解し、充放電に関与できるアルカリ金属イオンが負極にプレドープされること、または電解液中に放出されることで、非水系ハイブリッドキャパシタの充放電が進行するようになる。
実施例1〜29及び比較例1〜9の対比から分かるように、正極前駆体のアルカリ金属化合物の重量比X[質量%]が5≦X≦50であり、結着剤の重量平均分子量が50万以上180万以下であれば、正極前駆体を非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだときにRa・Fが小さく(内部抵抗が低い、すなわち入出力特性が高い)、かつエネルギー密度E/Vが高く、さらに正極前駆体及び非水系ハイブリッドキャパシタ組み込み後の正極での正極活物質層の剥離強度が高いという特性を兼ね備えられることが分かる。
理論に限定されないが、これらは、Xが5以上であれば、正極前駆体を非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだ時に充放電に関与できるアルカリ金属イオンが十分に確保されるために静電容量Fが高く、高いエネルギー密度を示す非水系ハイブリッドキャパシタが得られると考えられる。また、アルカリ金属化合物が酸化分解した後に残る適度な空孔が正極中に形成されることで、高い入出力特性を示す非水系ハイブリッドキャパシタが得られると考えられる。Xが50以下であれば、正極前駆体中の電子伝導性が高まるためにアルカリ金属化合物の分解が促進されることでプレドープが十分に進行すると共に、正極中の正極活物質比率を十分に確保できるため、高エネルギー密度な非水系ハイブリッドキャパシタが得られると考えられる。
また、正極活物質層内の結着剤の重量平均分子量が50万以上であれば、正極活物質の細孔内に入り込み難いため、正極前駆体において添加した結着剤が効率的に正極活物質層の構成部材同士を繋ぎ止めることができる共に、プレドープ後にアルカリ金属化合物が抜けた後に残る空孔が形成されても分子鎖が長いため、非水系ハイブリッドキャパシタ組み込み後の正極においても高剥離強度を確保できると考えられる。結着剤の重量平均分子量が180万以下であれば、非水系ハイブリッドキャパシタに組み込んだ時に絶縁性である結着剤が正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現されると共に、プレドープ時にアルカリ金属化合物の酸化分解由来のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープが促進されると推測される。
本発明の正極前駆体は、例えば、自動車のハイブリット駆動システムの分野、瞬間電力ピークのアシスト用途等における非水系ハイブリッドキャパシタの正極前駆体として好適に利用できる。本発明の非水系ハイブリッドキャパシタは、リチウムイオンキャパシタとして適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されるため好ましい。

Claims (12)

  1. 正極活物質以外のアルカリ金属化合物と、正極集電体と、前記正極集電体の片面又は両面に正極活物質層とを有し、前記正極活物質層は、炭素材料を含む正極活物質と、結着剤とを含有する、正極前駆体であって、
    前記正極集電体を除く前記正極前駆体の質量を基準として、前記アルカリ金属化合物の重量比をX質量%とするとき、5≦X≦50であり、
    前記結着剤はフッ素含有物を含み、前記結着剤の重量平均分子量が50万以上180万以下である、正極前駆体。
  2. 前記フッ素含有物はポリフッ化ビニリデンを含む、請求項1に記載の正極前駆体。
  3. 前記正極活物質層の示差走査熱量測定において、前記結着剤の融解開始温度が140℃以上165℃以下である、請求項1又は2に記載の正極前駆体。
  4. 前記正極前駆体表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対する炭素マッピングの面積重複率をA%とするとき、30≦A≦90である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極前駆体。
  5. 前記正極前駆体表面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングに対するフッ素マッピングの面積重複率をA%とするとき、1≦A≦50である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の正極前駆体。
  6. BIB加工した前記正極前駆体断面のSEM−EDXにより得られる酸素マッピングにおいて、明るさの平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をA%とするとき、5≦A≦60であり、かつ0.5≦A/X≦2.0である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の正極前駆体。
  7. 前記アルカリ金属化合物が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、及び炭酸セシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の正極前駆体。
  8. 前記アルカリ金属化合物は、アルカリ金属化合物の総質量を基準として10質量%以上の炭酸リチウムを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の正極前駆体。
  9. 前記アルカリ金属化合物の平均粒子径が、0.1μm以上10μm以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の正極前駆体。
  10. 前記正極活物質は、前記炭素材料として活性炭を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の正極前駆体。
  11. 前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cc/g)とするとき、0.3<V≦0.8、及び0.5≦V≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下を示す、請求項10に記載の正極前駆体。
  12. 前記活性炭は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V(cc/g)が0.8<V≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V(cc/g)が0.8<V≦3.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下を示す、請求項10に記載の正極前駆体。
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