JP2014198775A - 硬化性組成物、硬化性組成物セット、及び画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、組成物に重合性化合物や重合開始剤を含ませて硬化性組成物とし、この硬化性組成物を硬化させることにより、擦り傷など擦過耐性(以下、「耐擦性」ともいう)の高い画像を形成する技術が検討されている。
また、特に、印刷本紙、上質紙、普通紙等のいわゆる低吸収及び吸収性メディアに対する印刷に適した、十分な硬化性を有し且つ高速印刷が可能な紫外線硬化型のインクジェット用硬化性組成物として、色材と、水と、光重合性開始剤と、紫外線硬化性樹脂と、水溶性有機溶剤とを含み、前記水溶性有機溶剤が、3〜10員環の複素環式化合物であって環構造中に特定の構造を含む複素環式化合物を含み、前記光重合性開始剤が、380nm未満の波長領域に吸収をもつ第一の光重合開始剤と、380nm以上の波長領域に吸収をもつ第二の光重合開始剤の少なくとも二種からなるインクジェット用硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、帯電防止性を有すると共に、ハードコートとして十分な耐擦傷性、透明性を備え、防水性にも応える耐久性に優れた光硬化性のコーティング用組成物として、分子中に4級アンモニウム塩基を有する帯電防止性共重合体(A)、3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)、水への溶解性が0.2g/L以下の光重合開始剤(c−1)及び水への溶解性が1.0g/L以上の光重合開始剤(c−2)を含む光重合開始剤(C)、アルコール(d−1)を含む溶剤(D)を含む帯電防止用コーティング組成物が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、水系ではなく溶剤系の組成物に関する技術であるが、吐出安定性に優れ、かつ、印刷物の耐摩耗性、耐スクラッチ性等の印刷被膜性能に優れる紫外線硬化型インクジェット記録用硬化性組成物として、紫外線硬化性化合物、光重合開始剤、およびメチルフェニルシリコーンオイルを含有する紫外線硬化型インクジェット記録用硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献4参照)。
ここで、低温環境下には、低温環境での保存時、低温環境での運搬時、低温環境での使用時等が含まれる。
<1> 水と、水溶性溶剤と、重合性化合物と、重合開始剤Iaとして1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンと、重合開始剤Ibとして2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンと、を含有し、前記重合開始剤Iaと前記重合開始剤Ibとの合計含有量が硬化性組成物全量に対して0.8質量%〜10.0質量%であり、前記重合開始剤Iaに対する前記重合開始剤Ibの含有量比が質量基準で0.2倍〜1.5倍である硬化性組成物である。
<2> 前記合計含有量が、1.0質量%〜7.0質量%である<1>に記載の硬化性組成物である。
<3> 前記含有量比が、質量基準で0.3倍〜0.9倍である<1>又は<2>に記載の硬化性組成物である。
<4> 更に、色材を含有する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物である。
<5> インクジェット用硬化性組成物である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物である。
<6> 前記水溶性溶剤が、下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物である。
一般式(B)中、Wは、該一般式(B)中の炭素原子及び窒素原子とともに複素環を形成する2価の連結基を表す。〕
<8> 前記水溶性溶剤が、2−ピロリドンを含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載の硬化性組成物である。
〔一般式(2)中、R10は水素原子又はメチル基を表し、R11は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R12は置換又は無置換のアルキル基を表す。R11とR12は互いに結合して5〜8員環を形成してもよく、当該5〜8員環はさらに−O−、−S−、及び−NRb−から選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。Rbは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。〕
<12> <1>〜<11>のいずれか1つに記載の硬化性組成物と、前記硬化性組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含む処理液と、を有する硬化性組成物セットである。
<13> <12>に記載の硬化性組成物セットが用いられ、前記処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程と、前記硬化性組成物をインクジェット法によって記録媒体に付与して画像を形成する画像形成工程と、を有する画像形成方法である。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明の硬化性組成物は、水と、水溶性溶剤と、重合性化合物と、重合開始剤Iaとして1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンと、重合開始剤Ibとして2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンと、を含有し、前記重合開始剤Ia及び前記重合開始剤Ibの合計含有量が硬化性組成物全量に対して0.8質量%〜10.0質量%であり、前記重合開始剤Iaに対する前記重合開始剤Ibの含有量比が質量基準で0.2倍〜1.5倍である。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じその他の成分を含有していてもよい。
また、重合開始剤Iaに対する重合開始剤Ibの含有量比が質量基準でX倍であることを、「質量比〔重合開始剤Ib/重合開始剤Ia〕がXである。」ということがある。
しかしながら、この重合開始剤Iaを含有し、溶媒として水を含有する硬化性組成物(水系の硬化性組成物)では、低温環境下で、重合開始剤Iaに起因する析出物(重合開始剤Ia自体である析出物を含む)が発生する場合がある。上記水系の硬化性組成物に、更に水溶性溶剤を含有させても、依然として、低温環境下で析出物が発生する場合がある。
一方、重合性化合物及び重合開始剤を含有する水系の硬化性組成物を用いて画像を形成する場合には、画像の耐擦性を高く維持することが求められる。
質量比〔重合開始剤Ib/重合開始剤Ia〕が0.2未満であると、低温環境下で析出物が発生する。
一方、質量比〔重合開始剤Ib/重合開始剤Ia〕が1.5を超えると、画像の耐擦性が低下する。
本発明において、低温環境下での析出物の発生抑制と、画像の耐擦性向上と、をより高いレベルで両立させる観点から、質量比〔重合開始剤Ib/重合開始剤Ia〕は、0.3〜1.2が好ましく、0.3〜0.9がより好ましく、0.4〜0.9が特に好ましい。
一方、重合開始剤Ia及び重合開始剤Ibの合計含有量が10.0質量%を超えると、低温環境下で析出物が発生する。更に、この合計含有量が10.0質量%を超えると、不揮発分の総量が多くなることにより、画像の耐擦性が低下する。
本発明において、低温環境下での析出物の発生抑制と、画像の耐擦性向上と、をより高いレベルで両立させる観点から、重合開始剤Ia及び重合開始剤Ibの合計含有量は、1.0質量%〜7.0質量%が好ましく、1.0質量%〜5.0質量%がより好ましく、1.5質量%〜4.5質量%が特に好ましい。
画像形成の特に好ましい形態は、本発明の硬化性組成物をインクジェット法によって記録媒体上に付与して画像を形成する形態である。この形態の画像形成に用いられる硬化性組成物を、以下、「インクジェット用硬化性組成物」や「インク」ということがある。
インクジェット用硬化性組成物(インク)には、インクジェットノズルからの優れた吐出性(以下、「吐出安定性」ともいう)が要求されることがある。
以下の説明中において、単に、「吐出性」(又は「吐出安定性」)というときは、インクジェットノズルからの吐出性(又は吐出安定性)を指す。
本発明の硬化性組成物は、重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(重合開始剤Ia)、及び、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(重合開始剤Ib)を含有する。
重合開始剤Iaの市販品としては、上述したとおり、イルガキュア2959(商品名)(BASFジャパン(株)製)が挙げられる。
重合開始剤Ibの市販品としては、ダロキュア1173(商品名)(BASFジャパン(株)製)が挙げられる。
質量比〔重合開始剤Ib/重合開始剤Ia〕、並びに、重合開始剤Ia及び重合開始剤Ibの合計含有量については前述のとおりである。
しかし、以下の観点から、重合開始剤Iaの含有量は、硬化性組成物全量に対し、0.6質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましく、1.5質量%以上が特に好ましい。
重合開始剤Iaの含有量が0.6質量%以上であると、画像の耐擦性がより向上する。また、一般的には、重合開始剤Iaの含有量が増えるに従い、低温環境下での析出物が発生し易い傾向となる場合があるが、本発明の硬化性組成物では、前述のとおりこの析出物の発生を抑制できる。
一方、重合開始剤Iaの含有量は、低温環境下での析出物の発生を抑制する観点から、6.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましい。
その他の重合開始剤としては、基本的には、活性エネルギー線により重合反応を開始し得る化合物から適宜選択すればよく、例えば、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する重合開始剤(例えば光重合開始剤等)を用いることができる。
その他の重合開始剤の例としては、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、アミノアルキルフェノン系開始剤、キサントン系開始剤、オキシム系開始剤等が挙げられる。
例えば、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤の例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、特開2000−186242号に記載の化合物例(29)〜(33)等が挙げられる。
アセトフェノン系開始剤の例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン等が挙げられる。
ベンゾフェノン系開始剤の例としては、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン等が挙げられる。
ベンゾイン系開始剤及びベンゾインエーテル系開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等が挙げられる。
但し、本発明の効果をより効果的に奏する観点からは、重合開始剤Ia及び重合開始剤Ibの合計含有量が、硬化性組成物中に含まれる重合開始剤全量に対し、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、97質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であること(即ち、硬化性組成物が、重合開始剤Ia及び重合開始剤Ib以外のその他の重合開始剤を含まないこと)が最も好ましい。
上記総含有量が0.8質量%以上であると、画像の耐擦性がより向上する。
上記総含有量が10.0質量%以下であると、低温環境下での析出物の発生をより抑制できる。更に、不揮発分の総量を低くすることができ、これにより、画像の耐擦性がより向上する。
本発明の硬化性組成物は、水を含有する。
硬化性組成物中の水の含有量には特に制限されないが、この含有量は、50質量%以上とすることができる。
水の含有量が50質量%以上である硬化性組成物では、重合開始剤Iaに起因する析出物が発生し易い傾向となる。
しかしながら、本発明の硬化性組成物は、前述のとおり、低温環境下であっても析出物の発生を抑制できる。
従って、本発明の硬化性組成物は、水を50質量%以上含有することができる。
硬化性組成物中の水の好ましい含有量は、硬化性組成物の全量に対して、50質量%〜80質量%が好ましく、より好ましくは50質量%〜75質量%であり、更に好ましくは60質量%〜70質量%である。
本発明の硬化性組成物は、水溶性溶剤を少なくとも一種含有する。
水溶性溶剤としては公知のものを特に制限なく用いることができる。
上記水溶性溶剤は、低温環境下での析出物の発生をより抑制する観点から、下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
一般式(B)中、Wは、該一般式(B)中の炭素原子及び窒素原子とともに複素環を形成する原子団を表す。
以下、水溶性溶剤の例である、一般式(A)で表される化合物について説明する。
一般式(A)で表される化合物は、上記構造のとおり、β−アルコキシプロピオンアミド化合物である。
一般式(A)で表される化合物は、硬化性組成物中において、重合開始剤の溶解性を維持しつつ、かつ、重合開始剤と水との相溶性を高めることができる。
このため、硬化性組成物が一般式(A)で表される化合物を含有する場合には、硬化性組成物が低温環境下に置かれても、重合開始剤が析出し難くなる。また、この化合物は、環境に対する負荷が小さく、臭気も少ないため、硬化性組成物が取り扱い易くなる。
一般式(A)において、RA2およびRA3で表される炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
RA2またはRA3で表されるアルキル基の炭素原子数は1〜3が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
A−2:3−n−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド
A−3:3−エトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド
A−4:3−メトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド
A−5:3−メトキシ−N,N−モノメチルモノエチルプロピオンアミド
A−6:3−メトキシ−N,N−ジ−n−プロピルプロピオンアミド
A−7:3−メトキシ−N,N−ジ−n−ブチルプロピオンアミド
A−8:3−メトキシ−N,N−ジ−n−ブチルプロピオンアミド
A−9:3−エトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド
A−10:3−エトキシ−N,N−モノメチルモノエチルプロピオンアミド
A−11:3−エトキシ−N,N−ジ−n−プロピルプロピオンアミド
A−12:3−エトキシ−N,N−ジ−n−ブチルプロピオンアミド
A−13:3−n−ブトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド
A−14:3−n−ブトキシ−N,N−モノメチルモノエチルプロピオンアミド
A−15:3−n−ブトキシ−N,N−ジ−n−プロピルプロピオンアミド
A−16:3−n−ブトキシ−N,N−ジ−n−ブチルプロピオンアミド
A−17:3−n−プロポキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド
A−18:3−n−プロポキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド
A−19:3−n−プロポキシ−N,N−モノメチルモノエチルプロピオンアミド
A−20:3−n−プロポキシ−N,N−ジ−n−プロピルプロピオンアミド
A−21:3−n−プロポキシ−N,N−ジ−n−ブチルプロピオンアミド
A−22:3−iso−プロポキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド
A−23:3−iso−プロポキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド
A−24:3−1so−プロポキシ−N,N−モノメチルモノエチルプロピオンアミド
A−25:3−iso−プロポキシ−N,N−ジ−n−プロピルプロピオンアミド
A−26:3−iso−プロポキシ−N,N−ジ−n−ブチルプロピオンアミド
A−27:3−tert−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド
A−28:3−tert−ブトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド
A−29:3−tert−ブトキシ−N,N−モノメチルモノエチルプロピオンアミド
A−30:3−tert−ブトキシ−N,N−ジ−n−プロピルプロピオンアミド
A−31:3−tert−ブトキシ−N,N−ジ−n−ブチルプロピオンアミド
A−32:3−ヘキシルオキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド
A−33:3−ヘキシルオキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド
一般式(A)で表される化合物の具体的な製造方法は、例えば、特開2009−185079号公報や国際公開第2008/102615号等に記載の合成方法に基づき、製造することができる。また、一般式(A)で表される化合物は、市販品を用いてもよく、例えば、出光興産社製の「エクアミド」として入手できる。
次に、水溶性溶剤の例である、一般式(B)で表される化合物について説明する。
一般式(B)で表される化合物は、上記構造のとおり、複素環式化合物である。
一般式(B)で表される化合物も、硬化性組成物中において、重合開始剤の溶解性を維持しつつ、かつ、重合開始剤と水との相溶性を高めることができる。
Wとしてはアルキレン基が好ましい。
このアルキレン基は、無置換であっても、置換基によって置換されていてもよい。この置換基としては、アルキル基(好ましくは、炭素原子数1〜6の鎖状、分岐、又は環状のアルキル基)、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基)が好ましい。
アルキレン基の炭素原子数(置換基を有する場合には置換基の炭素原子数も含む)の好ましい範囲は1〜10である。
また、一般式(B)における複素環の員数は、好ましくは3〜6である。
一般式(B)で表される化合物の具体例としては、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−プロピル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ペンチル−2−ピロリドン、1−ヘキシル−2−ピロリドン、1−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン等が挙げられ、特に重合開始剤の溶解性の点で、2−ピロリドンが好ましい。
一般式(A)で表される化合物及び一般式(B)で表される化合物の総含有量は、硬化性組成物の全量に対し、2質量%〜20質量%であることが好ましい。
上記総含有量が2質量%以上であることで、重合開始剤の硬化性組成物への溶解性をより高めることができる。
また、上記総含有量が20質量%以下であることで、重合性化合物を硬化性組成物に、十分に含有することができるため、硬化性組成物の硬化性を高めることができる。
上記総含有量は、硬化性組成物の全量に対し、3質量%〜18質量%であることがより好ましく、5質量%〜15質量%であることがさらに好ましく、8質量%〜12質量%であることが特に好ましい。
また、水溶性溶剤として、一般式(A)で表される化合物及び一般式(B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種と、その他の水溶性溶剤と、を併用することもできる。
また、その他の水溶性溶剤としては、例えば、特開2011−46872号公報の段落0176〜0179に記載されている水溶性溶剤や、特開2013−18846号公報の段落0063〜0074に記載されている水溶性溶剤の中から、適宜選択することもできる。
上記総含有量が2質量%以上であることで、重合開始剤の硬化性組成物への溶解性をより高めることができる。
また、上記総含有量が20質量%以下であることで、重合性化合物を硬化性組成物に、十分に含有することができるため、硬化性組成物の硬化性を高めることができる。
上記総含有量は、硬化性組成物の全量に対し、3質量%〜18質量%であることがより好ましく、5質量%〜15質量%であることがさらに好ましく、8質量%〜12質量%であることが特に好ましい。
本発明の硬化性組成物は、重合性化合物を少なくとも一種含有する。
本発明の硬化性組成物は、記録媒体上に付与された際、硬化性組成物に含まれる重合性化合物が重合することにより硬化する。これにより、本発明の硬化性組成物を用いて形成された画像が強化される。
ここで、「水溶性」とは、水に一定濃度以上溶解できることをいう。具体的には25℃の水に対する溶解度が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また水溶性の重合性化合物は、水性の硬化性組成物中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであることが好ましい。また後述する水溶性溶剤を添加することにより溶解度が上昇して硬化性組成物中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。
多官能の重合性化合物は、活性エネルギー線照射により画像を硬化させる際の重合性、重合効率が高く、形成画像の耐擦性や耐傷性が高められる点で好ましい。
なお、「(メタ)アクリルアミド化合物」とは、メタクリルアミド化合物及びアクリルアミド化合物の少なくとも一方を意味する。(メタ)アクリルアミド化合物は、分子内に(メタ)アクリルアミド構造を有し、活性エネルギー線が照射されることで重合する化合物である。
多官能の(メタ)アクリルアミド化合物の中でも、高い重合能及び硬化能を備える点で、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリルアミド化合物(以下、単に「一般式(1)で表される化合物」ともいう)が特に好ましい。
この化合物は、分子内に重合性基として4つのアクリルアミド基又はメタクリルアミド基を有している。また、この化合物は、例えば、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線等の活性エネルギー線や熱等のエネルギーの付与による重合反応に基づく硬化性を示す。一般式(1)で表される化合物は、水溶性を示し、水やアルコール等の水溶性溶剤に良好に溶解する。
本発明の硬化性組成物では、上述のとおり、重合性化合物の少なくとも一種が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリルアミド化合物であることが好ましい。
但し、R2において、R2の両端に結合する酸素原子と窒素原子とがR2の同一の炭素原子に結合した構造をとることはない。R2は酸素原子と(メタ)アクリルアミド基の窒素原子とを連結する直鎖又は分岐のアルキレン基であり、当該アルキレン基が分岐構造をとる場合、両端の酸素原子と(メタ)アクリルアミド基の窒素原子とがアルキレン基中の同一の炭素原子に結合した、−O−C−N−構造(ヘミアミナール構造)をとることも考えられる。しかし、一般式(1)で表される化合物には、このような構造の化合物は含まれない。これにより、−O−C−N−構造の炭素原子に位置での分解が抑制され、硬化性組成物の保存安定性をより向上させることができる。
R3のアルキレン基中にはさらに−O−、−S−、及び−NRa−から選ばれる少なくとも一種が含まれていてもよく、−O−が含まれるアルキレン基の例としては、−C2H4−O−C2H4−、−C3H6−O−C3H6−等が挙げられる。
R3のアルキレン基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としてはアリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
R3のアリーレン基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としてはアルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物が上述した一般式(1)で表される化合物を含有する場合、一般式(1)で表される化合物の含有量は、硬化性組成物の全量に対して、0.1〜45質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。一般式(1)で表される化合物の含有量が上記範囲内であると、硬化性組成物の硬化性及び保存安定性がより向上する。
本発明の硬化性組成物では、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリルアミド化合物(以下、「一般式(2)で表される化合物」ともいう)の少ないとも一種を含有することができる。これにより、画像の柔軟性をより向上させることができる。
本発明の硬化性組成物では、例えば、上述した一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを併用することも好ましい。
R11は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、水素原子、メチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
R12は置換又は無置換のアルキル基を表す。R12のアルキル基としては、直鎖又は分岐の炭素原子数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)が好ましく、炭素原子数2〜4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数2又は3のアルキル基が特に好ましい。
R12が置換基として3級アミノ基を有する場合、当該3級アミノ基は、−NR''2(R''は置換基)で表される。R''としては、直鎖又は分岐の炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基が特に好ましい。2つのR''は、互いに同じであっても異なっていてもよい。当該3級アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が挙げられる。
R12が置換基として4級アンモニウム基を有する場合、当該4級アンモニウム基は、−N+R'''3(R'''は置換基)で表される。R'''としては、直鎖又は分岐の炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基が特に好ましい。3つのR'''は、互いに同じであっても異なっていてもよい。当該4級アンモニウム基の具体例としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基が挙げられる。また、当該4級アンモニウム基の対アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハライドイオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
R12が置換基としてスルホ基を有する場合、当該スルホ基は、スルホ基(−SO3H)及びその塩(−SO3 −X+)を包含する。塩の場合、カチオン(X+)としては、Li+、Na+、K+、アンモニウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン等が挙
げられる。
R11とR12が互いに結合して形成する環構造は、5〜6員環であることが好ましい。R11とR12が互いに結合して形成する環には、さらに−O−、−S−、及び−NRb−から選ばれる少なくとも一種が含まれていることが好ましく、−O−を含むことがより好ましい。
Rbは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基である
ことが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
(C−1):ジアセトンアクリルアミド(日本化成社製)
(C−2):ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製)
(C−3):ヒドロキシプロピルアクリルアミド(Fluka社製)
(C−4):N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロペンアミド(aldrich社製)
(C−5):N−(2−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド(aldrich社製)
(C−6):ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人社製)
(C−7):2−(アクリロイルオキシ)−N,N,N−トリメチルエタンアミニウムクロリド(興人社製)
(C−8):(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(興人社製)
(C−9):2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亜合成社製)
(C−10):N−[1,1−ジメチル−2−(ソジオオキシスルホニル)エチル]アクリルアミド(aldrich社製)
(C−11):N,N−ジメチルアクリルアミド(興人社製)
(C−12):N,N−ジエチルアクリルアミド(興人社製)
(C−13):4−アクリロイルモルホリン(興人社製)
本発明の硬化性組成物が上述した一般式(2)で表される化合物を含有する場合、一般式(2)で表される化合物の含有量の好ましい範囲は、上述した一般式(1)で表される化合物の含有量の好ましい範囲と同様である。
この場合、両者の含有比率(質量比〔一般式(1)で表される化合物:一般式(2)で表される化合物〕)は、10:90〜90:10が好ましく、30:70〜70:30がより好ましく、40:60〜60:40が特に好ましい。
両者の含有比率が上記範囲内であると、硬化性組成物の硬化性、保存安定性、吐出回復性、画像の柔軟性のすべてにおいて優れた性能を発現することができ好ましい。
また、本発明では、上述した一般式(1)で表される化合物(及び、必要に応じ一般式(2)で表される化合物)と、その他の重合性化合物と、を併用してもよいことはもちろんである。
その他の重合性化合物としては、例えば、特開2011−46872号方法の段落0149〜0169に記載されている、ノニオン性の重合性モノマーやカチオン性の重合性モノマーが挙げられる。
この形態では、低温環境下での析出物の発生がより抑制され、かつ、画像の耐擦性がより向上する。
本発明の硬化性組成物は、色材を少なくとも一種を含有してもよい。
色材としては特に制限されず、顔料であっても染料であってもよい。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、着色性の点で好ましい。
本発明の硬化性組成物が色材を含有する場合には、更に、分散剤の少なくとも一種を含有することができる。
例えば、本発明の硬化性組成物において顔料を用いる場合、顔料は分散剤によって分散されていることが好ましい。
顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
更に、合成系の親水性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
なお、ポリマー分散剤の重量平均分子量は、後述するポリマー粒子を構成するポリマーの重量平均分子量と同様にして測定される。
更に、硬化性組成物は、顔料表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆されたポリマー被覆顔料を含有することが好ましい。更には、硬化性組成物は、顔料表面の少なくとも一部がカルボキシル基を有するポリマー分散剤で被覆されたポリマー被覆顔料を含むことが特に好ましい。更には、硬化性組成物は、凝集性の観点から、顔料表面の少なくとも一部がカルボキシル基を有するポリマー分散剤で被覆された、水不溶性のポリマー被覆顔料を含有することが特に好ましい。
なお、分散状態での顔料の平均粒子径は、後述のポリマー粒子の平均粒子径及び粒径分布と同様にして求められるものである。
顔料の硬化性組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、硬化性組成物に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、2質量%〜10質量%がより好ましい。
染料としては公知の染料を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報等に記載の染料を本発明においても好適に用いることができる。
また、染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを用いてもよい。染料を保持した担体(水不溶性着色粒子)は、分散剤を用いて水系分散物として用いることができる。担体としては、水に不溶または水に難溶であれば特に制限なく、無機材料、有機材料及びこれらの複合材料を用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、特開2007−169418号公報等に記載の担体を本発明においても好適に用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、画像の耐擦性をより向上させる観点から、ポリマー粒子を少なくとも一種含有することが好ましい。
ポリマー粒子は、後述するポリマー分散剤(顔料の少なくとも一部を被覆するポリマー分散剤)とは異なり、顔料とは別に存在している、ポリマーからなる粒子である。
例えば、硬化性組成物を後述する処理液とともに記録媒体上に付与して画像を形成する場合には、ポリマー粒子は、該処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に、硬化性組成物中において分散不安定化して凝集し、増粘することにより硬化性組成物を固定化する機能を有する。これにより、画像の耐擦性がより向上する。更に、硬化性組成物の記録媒体への密着性がより向上する。
しかし本発明の硬化性組成物では、質量比〔重合開始剤Ib/重合開始剤Ia〕、及び、重合開始剤Iaと重合開始剤Ibとの総含有量を特定したことにより、ポリマー粒子を含む場合であっても、低温環境下での析出物の発生を抑制できる。
ポリマー粒子のガラス転移温度が90℃以上であることにより、画像の耐擦性がより向上する。
ガラス転移温度は、100℃以上であることがより好ましい。
また、ポリマー粒子のガラス転移温度は250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。ポリマー粒子のガラス転移温度が250℃以下であると、ポリマー粒子が乾燥過程で融着し、画像強度及び耐擦性がより向上する。
具体的には、測定Tgとしては、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて通常の測定条件で測定された値を意味する。但し、ポリマーの分解等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは下記の式(1)で計算されるものである。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi) ・・・(1)
ここで、計算対象となるポリマーはi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。但し、Σはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook (3rd Edition) (J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用する。
ここで、自己分散性ポリマーとは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーをいう。
ここで、分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
また、「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部以下であることを指す。
これにより、形成された画像の強度をより向上(例えば耐傷性や耐ブロッキング性)させることができる。
なお、本明細書中では、特定ポリマーに含まれる構造単位を、「構成成分」ということがある。
前記芳香族基を有する構造単位としては、フェニル基を有する構造単位、ベンジル基を有する構造単位、フェノキシ基を有する構造単位、フェネチル基を有する構造単位等が挙げられるが、中でも、ベンジル基を有する構造単位、フェノキシ基を有する構造単位(好ましくはフェノキシエチル基を有する構造単位)が好ましい。
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。前記芳香族基含有モノマーは、一種単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
前記脂環族基を有する構造単位は、脂環族基を有するモノマー(以下、「脂環族基含有モノマー」ともいう)に由来する構造単位であることが好ましい。
前記脂環族基含有モノマーは、脂環族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、脂環族基を有する(メタ)アクリレート(以下、「脂環式(メタ)アクリレート」ともいう)がより好ましい。
脂環式(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸に由来する構造部位と、アルコールに由来する構造部位とを含み、アルコールに由来する構造部位に、無置換又は置換された脂環式炭化水素基を少なくとも1つ含む構造を有しているものである。尚、前記脂環式炭化水素基は、アルコールに由来する構造部位そのものであっても、連結基を介してアルコールに由来する構造部位に結合していてもよい。
前記脂環式炭化水素基は、更に置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキル又はアリールカルボニル基、及びシアノ基等が挙げられる。また、脂環式炭化水素基は、さらに縮合環を形成していてもよい。本発明における脂環式炭化水素基としては、粘度や溶解性の観点から、脂環式炭化水素基部分の炭素原子数が5〜20であることが好ましい。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素原子数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
この形態であると、前記特定ポリマー粒子のガラス転移温度を90℃以上に調整することがより容易となる。
前記特定ポリマー粒子を構成するポリマーは、硬化性組成物中での分散性(自己分散性ポリマー粒子である場合には自己分散性)の観点から、親水性の構成単位を含むことが好ましい。
前記親水性の構成単位は、親水性基を有するモノマー(以下、「親水性基含有モノマー」ともいう)に由来する構造単位であることが好ましい。
この場合、前記親水性の構成単位は、一種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、二種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。
前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離性基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、硬化性組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
前記解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
前記不飽和スルホン酸モノマーとして、具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。
前記不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
前記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
前記特定ポリマー粒子を構成するポリマーは、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基を有する構造単位を含むことが好ましい。
アルキル基を有する構造単位におけるアルキル基の炭素原子数は、1〜4が好ましい。
アルキル基を有する構造単位は、アルキル基を有するモノマー(以下、「アルキル基含有モノマー」ともいう)に由来する構造単位であることが好ましい。
中でも、アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素原子数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートが更に好ましく、メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
即ち、上記観点からみた好ましい形態は、特定ポリマー粒子を構成するポリマーが、前記芳香族基(好ましくは、ベンジル基、フェノキシ基)を有する構造単位を共重合比率として3質量%〜45質量%(より好ましくは3〜40質量%、特に好ましくは5〜30質量%)と、親水性の構造単位を共重合比率として2質量%〜30質量(より好ましくは5質量%〜20質量%、特に好ましくは5質量%〜15質量%)と、アルキル基を有する構造単位を共重合比率として5質量%〜90質量%(より好ましくは30質量%〜90質量%、更に好ましくは50質量%〜90質量%、特に好ましくは60質量%〜85質量%)と、を含む形態である。
前記特定ポリマー粒子の更に好ましい形態は、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位またはフェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の少なくとも一方を共重合比率として3質量%〜45質量%(より好ましくは3〜40質量%、特に好ましくは5〜30質量%)と、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を共重合比率として2質量%〜30質量(より好ましくは5質量%〜20質量%、特に好ましくは5質量%〜15質量%)と、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を共重合比率として40質量%〜90質量%(より好ましくは50質量%〜90質量%、特に好ましくは60質量%〜85質量%)と、を含む形態である。
なお、特定ポリマー粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
上記含有量が0.1質量%以上であると、画像の耐擦性をより向上させることができる。
上記含有量が10.0質量%以下であると、低温環境下での析出物の発生をより抑制できる。また、硬化性組成物の吐出性をより向上させることができる。
本発明における硬化性組成物は、ワックス粒子の少なくとも一種を含有することができる。これにより、耐擦性をより向上させることができる。
ワックス粒子は、一種単独であるいは複数種を混合して用いることができる。
本発明における硬化性組成物は、必要に応じて、界面活性剤の少なくとも一種を含むことができる。界面活性剤は、例えば表面張力調整剤として用いることができる。
前記界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。更に、上記の水溶性ポリマー(高分子分散剤)を界面活性剤としても用いてもよい。
前記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができ、これから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの化合物の市販品としては例えば、日信化学工業社のオルフィンE1010などのEシリーズを挙げることができる。
本発明における硬化性組成物は、必要に応じて、水溶性高分子化合物を少なくとも一種含むことが好ましい。水溶性高分子化合物としては特に限定はなく、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の公知の水溶性高分子化合物を用いることができる。
また、水溶性高分子化合物としては、後述する処理液に含まれることがある特定高分子化合物や、特開2013−001854号公報の段落0026〜0080に記載された水溶性高分子化合物も好適である。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じ、消泡剤を少なくとも一種含有していてもよい。
消泡剤としては、例えばシリコーン系化合物(シリコーン系消泡剤)、プルロニック系化合物(プルロニック系消泡剤)等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン系消泡剤が好ましい。
シリコーン系消泡剤としては、ポリシロキサン構造を有するシリコーン系消泡剤が好ましい。
市販品としては、BYK−012、017、021、022、024、025、038、094(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KS−537、KS−604、KM−72F(以上、信越化学工業(株)製)、TSA−739(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、オルフィンAF104(日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
中でも、シリコーン系消泡剤である、BYK−017、021、022、024、025、094、KS−537、KS−604、KM−72F、TSA−739が好ましく、中でも、硬化性組成物の吐出安定性の点でBYK−024が最も好ましい。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じ、コロイダルシリカを含有していてもよい。
これにより、硬化性組成物の連続吐出時の安定性をより向上させることができる。
コロイダルシリカは、平均粒子径が数100nm以下のケイ素を含む無機酸化物の微粒子からなるコロイドである。 コロイダルシリカは、主成分として二酸化ケイ素(その水和物を含む)を含み、少量成分としてアルミン酸塩(アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなど)を含んでいてもよい。
またコロイダルシリカには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の無機塩類やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩類が含まれていてもよい。これらの無機塩類および有機塩類は、例えば、コロイドの安定化剤として作用する。
コロイダルシリカについては、例えば、特開2011−202117号公報の段落0043〜0050の記載を適宜参照することができる。
また、本発明の硬化性組成物は、必要に応じ、コロイダルシリカに代えて、または、コロイダルシリカに加えて、ケイ酸アルカリ金属塩を含有してもよい。ケイ酸アルカリ金属塩については、特開2011−202117号公報の段落0052〜0056の記載を適宜参照することができる。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、pH調整剤を少なくとも一種を含有していてもよい。
pH調整剤としては、調合される硬化性組成物に悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物など)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
本発明の硬化性組成物がpH調整剤を含有する場合、pH調整剤の含有量は、硬化性組成物のpHが5〜10(より好ましくは8.0〜9.5)となる量が好ましい。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
具体的には、硬化性組成物の液性(pH)はpH5〜pH10であることが好ましい。また、硬化性組成物は、pH8.0〜pH9.5であることがより好ましい。さらには、
画像形成に用いる部材への負荷抑制の観点からは、硬化性組成物は、pH9.5未満であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物セットは、既述の本発明の硬化性組成物(好ましくはインクジェット用硬化性組成物。以下同じ。)と、硬化性組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含む処理液と、を有する。
本発明の硬化性組成物セットは、本発明の硬化性組成物が用いられるので、低温環境下での析出物の発生を抑制でき、かつ、耐擦性に優れた画像を形成できる。
特に、本発明の硬化性組成物セットは、処理液を有することにより、画像の耐擦性がより向上する。
以下、処理液について詳述する。
記録媒体に付与された処理液は、硬化性組成物と接触したときに、硬化性組成物中の分散粒子(顔料及びポリマー粒子など)を凝集させ、記録媒体上に画像を固定化する。処理液は、硬化性組成物中の成分を凝集させる凝集成分を少なくとも含有し、更に重合開始剤を含んでもよく、必要に応じて、更に他の成分を用いて構成することができる。また、硬化性組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
処理液は、凝集成分を少なくとも一種含有する。
凝集成分としては、硬化性組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類などの4級もしくは3級アミンを有するカチオン性ポリマーであってもよい。本発明においては、硬化性組成物の凝集性の観点から、硬化性組成物のpHを変化させることができる化合物が好ましく、硬化性組成物のpHを低下させ得る化合物がより好ましい。
酸性物質としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。
酸性物質は、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
中でも、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、硬化性組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、処理液のpH(25℃)が0.5〜4である場合が好ましい。
硬化性組成物を凝集させる凝集成分の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは5〜40質量%の範囲である。
処理液は、水溶性高分子化合物を少なくとも一種含むことが好ましい。
水溶性高分子化合物としては特に限定はなく、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の公知の水溶性高分子化合物を用いることができる。
また、水溶性高分子化合物としては、後述する特定高分子化合物や、特開2013−001854号公報の段落0026〜0080に記載された水溶性高分子化合物も好適である。
前記含有量が0.1質量%以上であれば、インク滴の広がりをより促進でき、前記含有量が10質量%以下であれば、処理液の増粘をより抑制できる。また、前記含有量が10質量%以下であれば、処理液中の泡に起因する処理液の塗布ムラをより抑制できる。
特定高分子化合物におけるイオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、アンモニウム基、又はこれらの塩等が挙げられる。中でも、好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、又はこれらの塩であり、より好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基、又はこれらの塩であり、更に好ましくは、スルホン酸基又はその塩である。
イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位としては、イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構造単位が好ましい。
水溶性高分子化合物中におけるイオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位の含有量としては、水溶性高分子化合物の全質量中、例えば10〜100質量%とすることができ、10〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましく、20〜40質量%であることが特に好ましい。
疎水性の構造単位としては、(メタ)アクリル酸エステル(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜4のアルキルエステル)に由来する構造単位が好ましい。
処理液は、水を含んで構成することができる。
水の含有量には特に制限はないが、10〜99質量%の範囲が好ましく、より好ましくは50〜90質量%であり、更に好ましくは60〜80質量%である。
処理液は、有機溶剤から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
前記有機溶剤としては、前記硬化性組成物に含まれる水溶性溶剤と同様のものを用いることができる。中でも、カール抑制の観点から、ポリアルキレングリコールまたはその誘導体であることが好ましく、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。
有機溶剤の処理液中における含有率としては、特に制限はされないが、カール抑制の観点から、処理液全体に対して1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
処理液は、必要に応じ、消泡剤を少なくとも一種含有していてもよい。
処理液に含有させることができる消泡剤としては、硬化性組成物に含有させることができる消泡剤と同様のものが挙げられる。
処理液が消泡剤を含有する場合、消泡剤の含有量は、処理液の全量に対し、0.0001質量%〜1質量%が好ましく、0.001質量%〜0.1質量%がより好ましい。
処理液には、前述の硬化性組成物に含有すると共に、活性エネルギー線により硬化性組成物中の重合性化合物の重合を開始する重合開始剤の少なくとも一種を含有することができる。重合開始剤は、一種単独で又は二種以上を混合して、あるいは増感剤と共に使用することができる。
処理液に用いられる重合開始剤は、硬化性組成物と同様に、活性エネルギー線により重合性化合物の重合反応を開始し得る化合物から適宜選択することができる。重合開始剤の例としては、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する重合開始剤(例えば光重合開始剤等)が挙げられる。
重合開始剤等の詳細については、硬化性組成物の項で説明した通りである。
本発明の画像形成方法は、既述の本発明の硬化性組成物をインクジェット法により記録媒体に付与し、画像を形成する付与工程を有する。
本発明の画像形成方法は、本発明の硬化性組成物が用いられるので、低温環境をはじめ種々の温度環境下において、耐擦性が良好で精細な画像が形成される。
付与工程は、既述の本発明の硬化性組成物を記録媒体にインクジェット法で付与する工程である。本工程では、記録媒体上に選択的に硬化性組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。なお、硬化性組成物の詳細及び好ましい態様など硬化性組成物の詳細については、硬化性組成物に関する説明で既述した通りである。
尚、インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
本発明の画像形成方法では、更に、硬化性組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有することが好ましい。
これにより、画像の耐擦性がより向上し、画像ムラがより低減される。
具体的には、記録媒体上に、硬化性組成物を付与する前に、予め硬化性組成物中の成分(上述の分散粒子)を凝集させるため処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するように硬化性組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
本発明の画像形成方法は、記録媒体に上に画像を記録するものである。記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明の画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
本発明の画像形成方法に用いることができる画像形成装置には、特に制限はなく、特開2010−83021号公報、特開2009−234221号公報、特開平10−175315号公報等に記載の公知の画像形成装置を用いることができる。
画像形成装置は、活性エネルギー線(例えば紫外線)照射手段を備えることが好ましい。活性エネルギー線照射手段をはじめとするその他の手段の構成については、例えば、特開2011−184628号公報等に記載の公知の構成を適宜参照することができる。
次に、本発明の画像形成方法を実施するのに好適なインクジェット記録装置の一例を図1を参照して具体的に説明する。図1は、インクジェット記録装置全体の構成例を示す概略構成図である。
以下の説明では、硬化性組成物をインクと称する。
また、溶媒除去ローラ等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の前後のいずれに設置されていてもよく、インク乾燥ゾーン15の前後両方に設置してもよい。
また、以下の実施例では、硬化性組成物としてインクを作製し、各種の評価を行った。
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)4部、ブレンマーPP−500(日油(株)製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、及びメチルエチルケトン24部を加え、混合溶液を調液した。一方、滴下ロートに、スチレン14部、ステアリルメタクリレート24部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)9部、ブレンマーPP−500(日油(株)製)9部、メタクリル酸10部、2−メルカプトエタノール0.13部、メチルエチルケトン56部、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を加え、混合溶液を調液した。
その後、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後これに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部をメチルエチルケトン12部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー分散剤1溶液を得た。
得られたポリマー分散剤1溶液を固形分換算で5.0g、マゼンタ顔料(Pigment Red 122、大日精化(株)製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L(リットル;以下同様)の水酸化ナトリウム8.0g 及びイオン交換水82.0gを、0.1mmジルコニアビーズ300gと共にベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス社製)を用いて1000rpmで6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが充分に留去できるまで減圧濃縮し、さらに顔料濃度が10%になるまで濃縮して、ポリマー被覆マゼンタ顔料の顔料分散液Mを調製した。
得られた顔料分散液Mの体積平均粒子径(二次粒子)を、Micorotrac粒度分布測定装置(商品名Version 10.1.2−211BH、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により測定したところ、84nmであった。
顔料分散液Mの調製において、顔料として用いたPigment Red 122に代えてIrgalite Yellow GS(ピグメント・イエロー74、BASF・ジャパン社製)を用いたこと以外は、顔料分散液Mの調製と同様にして、ポリマー被覆イエロー顔料の顔料分散液Yを得た。顔料分散液Mと同様にして測定した顔料分散液Yの体積平均粒子径(二次粒子)は、75nmであった。
顔料分散液Mの調製において、顔料として用いたPigment Red 122に代えてカーボンブラックMA−100(三菱化学(株)製;ブラック顔料)を用いたこと以外は、顔料分散液Mの調製と同様にして、ポリマー被覆ブラック顔料の顔料分散液Kを得た。顔料分散液Mと同様にして測定した顔料分散液Kの体積平均粒子径(二次粒子)は、80nmであった。
顔料分散液Cとして、CABO−JET250C(Pigment Blue 15:4(PB15:4);CABOT(株)製のシアン顔料分散液)を用意した。顔料分散液Cは、PB15:4がポリマーで被覆されたポリマー被覆シアン顔料の顔料分散液である。顔料分散液Cの、顔料分散液Mと同様に測定した体積平均粒子径(二次粒子)は、110nmであった。
一般式(1)で表される(メタ)アクリルアミド化合物の例示化合物である、重合性化合物aを合成した。
この合成は、特開2013−18846号公報の段落0123〜0128に記載の方法に従って行った。
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。その後、フラスコ内温度を75℃に保ちながら、ベンジルメタクリレート151.2g、メチルメタクリレート172.8g、メタクリル酸36.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、これに「V−601」0.72g及びメチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g及びイソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した。その後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続け、ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸(=42/48/10[質量比])共重合体のポリマー溶液を得た。
得られた共重合体の、上記同様に測定した重量平均分子量(Mw)は、58000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出)であり、酸価は32.6mgKOH/gであった。
また、構成成分A、構成成分B、および構成成分Cの質量比〔構成成分Aの質量/構成成分Bの質量/構成成分Cの質量〕を、以下では、構成成分の質量比〔A/B/C〕ともいう。
−ガラス転移温度(Tg)の測定−
固形分で0.5gの自己分散性ポリマー粒子の水分散物を50℃で4時間、減圧乾燥させ、ポリマー固形分を得た。得られたポリマー固形分を用い、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220によりTgを測定した。 測定条件は、サンプル量5mgをアルミパンに密閉し、窒素雰囲気下、以下の温度プロファイルで2回目の昇温時の測定データのDSCのピークトップの値をTgとした。
30℃→−50℃ (50℃/分で冷却)
−50℃→120℃(20℃/分で昇温)
120℃→−50℃(50℃/分で冷却)
−50℃→120℃(20℃/分で昇温)
上記自己分散性ポリマー粒子P−1の合成において、構成成分Aの種類、各構成成分の質量比〔構成成分A/構成成分B/構成成分C〕)を後述の表5に示すように変更したこと以外は上記自己分散性ポリマー粒子P−1と同様にして、インク51〜57に用いる自己分散性ポリマー粒子をそれぞれ合成した。
処理液中の成分として用いる水溶性高分子化合物(水溶性ポリマー1)を合成した。この合成は、特開2013−001854の段落0200〜0204及び0229に従って行った。
水溶性ポリマー1の構造を下記に示す。
なお、下記に示した水溶性ポリマー1において、各構成単位の右下の数字は質量比(質量%)を表し、Mwは重量平均分子量を表す。
実験例1として、インク(硬化性組成物)中における、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(重合開始剤Ia)と、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(重合開始剤Ib)と、の含有量比(質量比〔重合開始剤Ib/重合開始剤Ia〕)に関する実験を行った。
以下、表1中のインク5に関する実験を中心に、その詳細を説明する。
(インク5の調製)
下記組成の成分を混合し、メンブレンフィルタ(孔径0.5μm)を通して粗大粒子を除去し、ブラックインクであるインク5(硬化性組成物)を得た。
作製されたインク5のpHは8.8であった。
−インク5の組成−
・顔料分散液K … 20.0質量%
・顔料分散液M … 4.2質量%
・顔料分散液C … 4.2質量%
・ヒドロキシエチルアクリルアミド(輿人社製)(一般式(2)で表される化合物の具体例) … 7.0質量%
・重合性化合物a(一般式(1)で表される化合物の具体例) … 8.0質量%
・重合開始剤Ia(BASFジャパン(製)「イルガキュア2959」)
… 2.0質量%
・重合開始剤Ib(BASFジャパン(製)「ダロキュア1173」)
… 1.0質量%
・3−n−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(一般式(A)で表される化合物の例示化合物A−2) … 5.0質量%
・2−ピロリドン(一般式(B)で表される化合物の具体例) … 2.0質量%
・グリセリン … 1.0質量%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.0質量%
・自己分散性ポリマー粒子P−1 … 1.2質量%
・スノーテックスXS(日産化学(株)製、コロイダルシリカ) … 0.3質量%
・BYK−024(ビックケミー・ジャパン(株)製、消泡剤) … 0.01質量%
・トリエタノールアミン … 0.2質量%
・イオン交換水 … 全体で100質量%としたときの残量
インク5を200mlポリビンに100ml入れ、低温条件下で7日間保管した(低温保管)。この低温保管後のポリビンの底部を目視で観察し、下記評価基準に従って、低温保管後の析出物(インクを低温で保管した後の析出物)の評価を行った。
この評価は、+5℃及び−5℃の2つの低温条件について、それぞれ行った。
評価結果を下記表1に示す。
A:低温条件下で7日間保管した後においても、全く析出物が見られない。
B:低温条件下で7日間保管した後において、析出物が僅かに見られるのみである(インクを全量ミクロフィルターでろ過し、フィルター上及びポリビンの壁面の少なくともどちらかに僅かに析出物が有ることが確認できるレベルである)。
C:低温条件下で7日間保管した後において、粉状の析出物が多く見られる。
D:低温条件下で7日間保管した後において、大きな結晶状の析出物が多く見られる。
(株)リコー製GELJET GX5000プリンターヘッドを用意した。
このプリンターヘッドは、96本のノズルが並ぶラインヘッドである。
このプリンターヘッドを、前述の図1に示すインクジェット記録装置と同様の構成のインクジェット記録装置に固定配置した。
このときの配置は、インクジェット装置のステージの移動方向と同一平面上で直交する方向に対し、96本のノズルが並ぶ方向が75.7°傾斜する配置とした。
上記プリンターヘッドに繋がる貯留タンクに、−5℃下で7日間保管したインク5の上澄み液を充填した。
−処理液の組成−
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル … 5.0質量%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル … 5.0質量%
・マロン酸 … 8.0質量%
・リンゴ酸 … 8.0質量%
・リン酸85% … 5.0質量%
・前述の水溶性ポリマー1 … 0.5質量%
・消泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSA−739(15%);エマルジョン型シリコーン消泡剤)
… シリコーンオイルの量として0.01質量%
・イオン交換水 ・・・合計で100質量%となる残量
記録媒体として、OKトップコート(王子製紙(株)製)を準備し、下記の処理液付与工程、乾燥工程、付与工程を順次行い、記録媒体上に画像を形成した。
OKトップコートを、直線方向に500mm/秒で移動可能なステージ上に固定し、これに上記で得た処理液のそれぞれをワイヤーバーコーターで約1.7g/m2となるように塗布した。
−乾燥工程−
処理液の付与が終了した箇所において、当該箇所への処理液の付与終了時から1.5秒後に、ドライヤーを用いて50℃の条件で記録媒体の乾燥を開始し、当該箇所への処理液の付与終了時から3.5秒後に乾燥を終了した。このときの乾燥時間は2秒となる。
−付与工程−
上記乾燥工程後、2秒以内に、下記の方式でインク打滴を開始した。
記録媒体を上記ステージの移動方向に定速移動させながら、上記プリンターヘッドからインク5を、インク液滴量3.5pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×1200dpi、ステージ速度50mm/sの吐出条件にてライン方式で吐出し、ベタ画像を印画した。インク5としては、脱気フィルターを通して脱気し、30℃に温調したものを用いた。
印画直後のベタ画像を60℃で3秒間乾燥させ、乾燥後のベタ画像に、UV(紫外線)を照射してベタ画像を硬化させた。
記録媒体上に約6mm幅の100%ベタ画像を記録した直後、記録されたベタ画像(以下、「記録画像」ともいう)上に、記録していない記録媒体(記録に用いたものと同じ記録媒体)を重ねて荷重150kg/m2をかけて10往復擦る操作を行った。この操作の後、記録画像についた傷と、上記記録していない記録媒体へのインクの転写度合いを目視で観察し、下記の評価基準に従って、画像の耐擦性を評価した。
評価結果を下記表1に示す。
A:記録していない記録媒体へのインクの転写は全くなかった。
B:記録画像に傷がほとんど認められないが、記録していない記録媒体へのインクの転写が僅かではあるが認められる。
C:記録画像の傷が僅かではあるが認められ、かつ、記録していない記録媒体へのインクの転写も見られる。
D:記録画像の傷が顕著であり、かつ、記録していない記録媒体へのインクの転写も顕著である。
自己分散性ポリマー粒子の種類及び重合開始剤の種類を、下記表1に示すように変更したこと以外はインク5の調製と同様にして、インク1〜4及び6〜16をそれぞれ調整し、これらのインクについて、それぞれインク5と同様の評価を行った。
評価結果を下記表1に示す。
・イルガキュア2959は、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(重合開始剤Ia)である。
・ダロキュア1173は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(重合開始剤Ib)である。
・「イルガキュア2959に対するダロキュア1173の質量比」は、重合開始剤Iaに対する重合開始剤Ibの質量基準での含有量比(前述の質量比〔重合開始剤Ib/重合開始剤Ia〕)に相当する。
一方、この質量比が0.2未満であるインク1及び2(いずれも比較例)では、低温保管後の析出物の発生が顕著であった。これらのインクでは、画像の耐擦性も顕著に低下した。この理由は、画像の耐擦性の評価において、−5℃の条件下で7日間保管したインクの上澄み液を用いて画像形成を行ったことが原因と考えられる。即ち、この保管によって重合開始剤が析出したことにより、画像形成に用いたインク(上澄み液)中の実質的な重合開始剤の含有量が少なくなり、これにより画像の硬化性が低下したことが原因と考えられる。
また、この質量比が1.5を超えるインク10及び11(いずれも比較例)では、画像の耐擦性が顕著に低下した。この理由は、重合開始剤Ibの比率が増えると、溶剤を増やした場合と同様に、この重合開始剤Ibが画像部に残り、その結果、膜強度が低下したためと考えられる。
実験例2として、重合開始剤の種類に関する実験を行った。
詳細には、実験例1のインク5において、重合開始剤の種類を下記表2に示すように変更したこと以外はインク5と同様にしてインクを調製し、インク5と同様の評価を行った。
評価結果を下記表2に示す。
・イルガキュア184: BASFジャパン(株)製のアルキルフェノン系の重合開始剤(化合物名:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)
・イルガキュア819: BASFジャパン(株)製のアシルフォスフィンオキサイド系の重合開始剤(化合物名:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)
・イルガキュア127: BASFジャパン(株)製のアルキルフェノン系の重合開始剤(化合物名:2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)
・イルガキュア907: BASFジャパン(株)製のアルキルフェノン系の重合開始剤(化合物名:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)
・ダロキュアTPO: BASFジャパン(株)製のアシルフォスフィンオキサイド系の重合開始剤(化合物名:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)
実験例3として、水溶性溶剤の種類に関する実験を行った。
詳細には、実験例1のインク5において、水溶性溶剤の種類を下記表3に示すように変更したこと以外はインク5と同様にしてインクを調製し、インク5と同様の評価を行った。
評価結果を下記表3に示す。
なお、下記表3では、インク5中の3−n−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミドを「溶剤種1」とし、インク5中の2−ピロリドンを「溶剤種2」とした。
溶剤種1及び溶剤種2の各含有量は、インク31及び32を除き、各インクに共通である。インク31及び32では、溶剤種1の量を、インク5における溶剤種1及び溶剤種2の合計量とした。
・S−1: 3−n−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(一般式(A)で表される化合物の例示化合物A−2)
・S−2: 3−n−プロポキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(一般式(A)で表される化合物の例示化合物A−17)
・S−3: 3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(一般式(A)で表される化合物の例示化合物A−1)
・S−4: 2−ピロリドン(一般式(B)で表される化合物の具体例)
・S−5: 1−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン(一般式(B)で表される化合物の具体例)
・S−6: 1−エチル−2−ピロリドン(一般式(B)で表される化合物の具体例)
・S−7: 1−シクロヘキシル−2−ピロリドン(一般式(B)で表される化合物の具体例)
・S−8: サンニックスGP250(三洋化成工業(株)製; ポリオキシプロピル化グリセリン系の水溶性溶剤)
・S−9: ジプロピレングリコール
実験例4として、インク中における、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(重合開始剤Ia)と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(重合開始剤Ib)との総含有量に関する実験を行った。
詳細には、実験例1のインク5において、「イルガキュア2959に対するダロキュア1173の質量比」を0.5に固定したまま、これらの合計量を下記表4に示すように変更したこと以外はインク5と同様にしてインクを調製し、インク5と同様の評価を行った。
評価結果を下記表4に示す。
一方、合計量が0.8質量%未満であるインク43(比較例)では、画像の耐擦性が低下した。
また、合計量が10.0質量%を超えるインク47(比較例)では、低温保管後の析出物の発生が顕著であった。
実験例5として、インク中に含有されるポリマー粒子のガラス転移温度に関する実験を行った。
詳細には、実験例1のインク5において、自己分散性ポリマー粒子の種類を下記表5に示すように変更したこと以外はインク5と同様にしてインクを調製し、インク5と同様の評価を行った。
評価結果を下記表5に示す。
以下のインクを調製し、調製されたインクについて実験例1のインク5と同様の評価を行ったところ、インク5と同様に、低温保管後の析出物の発生が抑制され、画像の耐擦性に優れていた。
・顔料分散液K … 20.0質量%
・顔料分散液M … 4.2質量%
・顔料分散液C … 4.2質量%
・ジアセトンアクリルアミド(日本化成社製)(一般式(2)で表される化合物の具体例) … 7.0質量%
・重合性化合物a(一般式(1)で表される化合物の具体例) … 8.0質量%
・重合開始剤Ia(BASFジャパン(製)「イルガキュア2959」)
… 1.5質量%
・重合開始剤Ib(BASFジャパン(製)「ダロキュア1173」)
… 1.0質量%
・下記化合物X(重合開始剤) … 0.5質量%
・2−ピロリドン(一般式(B)で表される化合物の具体例) … 8.0質量%
・グリセリン … 2.0質量%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤) … 1.0質量%
・自己分散性ポリマー粒子P−1 … 1.2質量%
・スノーテックスXS(日産化学(株)製、コロイダルシリカ) … 0.3質量%
・イオン交換水 … 全体で100質量%としたときの残量
実験例7として、下記のマゼンタインク、シアンインク、イエローインクをそれぞれ調製し、これらのインクを用いて実験例1と同様の実験を行った。
ここで、マゼンタインクは、顔料分散液として顔料分散液Mのみを用いたこと以外はインク5と同様にして調製した。
また、シアンインクは、顔料分散液として顔料分散液Cのみを用いたこと以外はインク5と同様にして調製した。
また、イエローインクは、顔料分散液として顔料分散液Yのみを用いたこと以外はインク5と同様にして調製した。
その結果、いずれのインクにおいても、低温保管後の析出物の発生抑制、及び、画像の耐擦性向上に関し、実験例1におけるインク5と同等の効果が得られた。
12S・・・処理液吐出用ヘッド
13・・・処理液乾燥ゾーン
14・・・インク吐出部
15・・・インク乾燥ゾーン
16・・・紫外線照射部
16S・・・紫外線照射ランプ
30K、30C、30M、30Y・・・インク吐出用ヘッド
Claims (13)
- 水と、水溶性溶剤と、重合性化合物と、重合開始剤Iaとして1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンと、重合開始剤Ibとして2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンと、を含有し、
前記重合開始剤Iaと前記重合開始剤Ibとの合計含有量が硬化性組成物全量に対して0.8質量%〜10.0質量%であり、
前記重合開始剤Iaに対する前記重合開始剤Ibの含有量比が質量基準で0.2倍〜1.5倍である硬化性組成物。 - 前記合計含有量が、1.0質量%〜7.0質量%である請求項1に記載の硬化性組成物。
- 前記含有量比が、質量基準で0.3倍〜0.9倍である請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
- 更に、色材を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- インクジェット用硬化性組成物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 前記水溶性溶剤が、下記一般式(A)で表される化合物及び下記一般式(B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
〔一般式(A)中、RA1は、炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。RA2及びRA3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。
一般式(B)中、Wは、該一般式(B)中の炭素原子及び窒素原子とともに複素環を形成する2価の連結基を表す。〕 - 前記水溶性溶剤が、3−n−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミドを含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 前記水溶性溶剤が、2−ピロリドンを含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 前記重合性化合物の少なくとも一種が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリルアミド化合物である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
〔一般式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。R2は、炭素原子数2〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。但し、R2において、R2の両端に結合する酸素原子と窒素原子とがR2の同一の炭素原子に結合した構造をとることはない。R3は2価の連結基を表す。kは2又は3を表す。x、y、zは各々独立に0〜6の整数を表し、x+y+zは0〜18を満たす。〕 - 更に、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリルアミド化合物を含む請求項9に記載の硬化性組成物。
〔一般式(2)中、R10は水素原子又はメチル基を表し、R11は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、R12は置換又は無置換のアルキル基を表す。R11とR12は互いに結合して5〜8員環を形成してもよく、当該5〜8員環はさらに−O−、−S−、及び−NRb−から選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。Rbは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。〕 - 更に、ガラス転移温度が90℃以上であるポリマー粒子を含有する請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の硬化性組成物と、
前記硬化性組成物と接触したときに凝集体を形成する凝集成分を含む処理液と、
を有する硬化性組成物セット。 - 請求項12に記載の硬化性組成物セットが用いられ、
前記処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程と、
前記硬化性組成物をインクジェット法によって記録媒体に付与して画像を形成する付与工程と、
を有する画像形成方法。
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