JP2014191917A - 全固体電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイクル特性に優れた全固体電池を提供する。
【解決手段】正極層、固体電解質層、及び負極層をこの順に含み、前記正極層と前記固体電解質層の境界、及び前記固体電解質層と前記負極層の境界のうち少なくとも1つが微粒子を含む全固体電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、全固体電池及びその製造方法に関する。
近年、携帯電話、PDA、ノートパソコン等の高機能化に伴い、長時間使用が可能であり、かつ小型・軽量で、安全性の高い二次電池が強く要望されている。しかし、従来から使用されてきた可燃性の有機溶媒を含むリチウム二次電池は過充電時や濫用時に液漏れや発火の危険性がある。そのため、電池の高エネルギー密度化に伴い、安全性の確保が重要な課題とされてきた。
このような課題を解決する電池として、有機電解液に比べて化学的に安定で、かつ漏液や発火の問題のない無機固体電解質を電解質として用いた全固体リチウムイオン二次電池の研究開発が鋭意行われている。
しかし、無機固体電解質を用いた固体電池は、充放電を繰り返していくうちに各層間の抵抗が上昇する等して電池容量が低下するサイクル特性の問題がある。
特許文献1には、電子伝導体層とイオン伝導体層の界面が凹凸状に接触することにより、界面表面積が広く、界面で電子移動・イオン移動性に優れた積層体(固体電解質)が開示されている。
特許文献2には、負極層と固体電解質層の間に特定の中間層を設け、さらに中間層と固体電解質層の間にメッシュを配置し、メッシュに電解質を充填することによってサイクル劣化を抑えた電池素子が開示されている。
特許文献3には、電極と固体電解質層の間に固体電解質と電極活物質とから構成される反応界面を含む中間層を設けることによって、サイクル特性に優れた固体電解質電池が開示されている。
しかし、サイクル特性はさらに改善の余地がある。
特開平5−109429号公報 特開2005−353309号公報 特開2000−164252号公報
本発明の目的は、サイクル特性に優れた全固体電池を提供することである。
本発明によれば、以下の全固体電池等が提供される。
1.正極層、固体電解質層、及び負極層をこの順に含み、
前記正極層と前記固体電解質層の境界、及び前記固体電解質層と前記負極層の境界のうち少なくとも1つが微粒子を含む全固体電池。
2.前記微粒子が固体電解質を含む1に記載の全固体電池。
3.前記微粒子が硫化物系固体電解質を含む1又は2に記載の全固体電池。
4.前記微粒子がLi、P及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質である1〜3のいずれかに記載の全固体電池。
5.前記微粒子の平均粒径が0.1〜100μmである1〜4のいずれかに記載の全固体電池。
6.前記正極層が正極活物質と固体電解質を含む1〜5のいずれかに記載の全固体電池。
7.前記負極層が負極活物質と固体電解質を含む1〜6のいずれかに記載の全固体電池。
8.前記固体電解質層が硫化物系固体電解質を含む1〜7のいずれかに記載の全固体電池。
9.前記固体電解質層がLi、P及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質を含む1〜8のいずれかに記載の全固体電池。
10.固体電解質層の表面に微粒子を散布する工程、及び前記微粒子を散布した面に、正極層もしくは負極層を積層する工程を含む、又は
正極層もしくは負極層の表面に微粒子を散布する工程、及び前記微粒子を散布した面に、固体電解質層を積層する工程を含む、
全固体電池の製造方法。
11.前記微粒子がLi、P及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質であり、
前記固体電解質層がLi、P及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質からなり、
前記正極層が正極活物質及び固体電解質を含み、
前記負極層が負極活物質及び固体電解質を含む、
10に記載の全固体電池の製造方法。
本発明によれば、サイクル特性に優れた全固体電池が提供できる。
本発明の一実施形態を示す概略図である。 実施例2と比較例1における放電容量維持率の変化を示す図である。
本発明の全固体電池は、正極層、固体電解質層及び負極層をこの順に含み、正極層と固体電解質層の境界、及び固体電解質層と負極層の境界のうち少なくとも1つが微粒子を含む。
「A層とB層の境界が微粒子を含む」とは、A層とB層の境界面に微粒子が略均一に分散し点在していることをいう。A層とB層は微粒子を介して接しているが、微粒子を介さずに直接接している部分も存在する。
微粒子を含むのは、正極層と固体電解質層の境界及び固体電解質層と負極層の境界の両方であってもよいし、いずれか一方であってもよい。
一般に、全固体電池は、特に電池動作時に型締め等による加圧をしない場合、充放電に伴う活物質の膨張収縮により電極層と固体電解質層間の抵抗増大や剥離が生じてサイクル特性が劣化してしまう。特に高容量な活物質であるSiやSn等を用いた場合、充放電時の体積変化が大きいため電極層と固体電解質層の剥離が起こりやすい。また、剥離が生じると充電時(特に低温環境下や急速充電時)にリチウムの析出が起こり、容量低下や微小短絡が生じる恐れがある。
剥離を抑制するために型締め治具を使用すると、電池全体の重量が大きくなってしまう。また、固体電解質層にガラス状固体電解質を用いて固体電解質層と電極層を熱融着する場合、ガラスセラミック化のために長時間のエージングが必要となってしまう。
また、電極シートや固体電解質シートを塗布により形成した場合、そのままでは空隙率が大きいのでこれらシートを積層した後にプレス等の圧密化を行うことがあるが、変形が大きくなるため、電極や固体電解質が割れたり、剥がれたり、短絡したりする問題がある。そのため、これらシートを積層前に予めプレスする場合があるが、層間が結着しにくくなるという問題がある。
本発明の全固体電池は、電極層と固体電解質層の境界に微粒子を介在させることで、微粒子のアンカー効果(投錨効果)により層間剥離を抑制でき、特に加圧なしで充放電した際の層間剥離を抑制できる。また、加圧なしで充電した場合に充電量過多になりにくい(短絡しにくい)。その結果、加圧をしない場合であってもサイクル特性に優れる。
本発明の一実施形態の概略図を図1に示す。本実施形態では、固体電解質層と負極層の境界に微粒子を含む。
全固体電池1において、基板10上に負極層20が設けられ、負極層20上に固体電解質層30が設けられている。負極層20と固体電解質層30の境界面に微粒子22が略均一に分散している。また、固体電解質層30の上に正極層40、さらにその上に基板50が設けられている。
尚、図1は概略図であり、微粒子の粒径や各層の厚さ等は必ずしも正確ではない。
上記の微粒子は特に限定されず、有機物でも無機物でもよいが、無機物が好ましい。
微粒子の粒径(平均粒径)は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜70μm、さらに好ましくは10〜70μmである。界面に用いる微粒子が小さすぎるとアンカー効果が発揮しにくくなるおそれがあり、大きすぎると短絡しやすくなるおそれがある。
粒径の測定方法は実施例に記載の通りである。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置(「Malvern Instruments Ltd社製マスターサイザー2000)を使用し、装置の分散槽に脱水処理されたトルエン(和光純薬製、製品名:特級)110mlを入れ、さらに分散剤として脱水処理されたターシャリーブチルアルコール(和光純薬製、特級)を6%添加し、上記混合物を十分混合した後、電解質粒子を添加して粒子径を測定するものとする。
また、微粒子を固体電解質層と負極層の境界に用いる場合、微粒子として、負極層に用いる負極活物質より高い電位でリチウムを挿入可能な負極活物質を含むものを用いることが好ましい。このようにすることで、充電時のリチウム析出が起こりにくくなる。
この場合、微粒子として用いる負極活物質のリチウム挿入電位は、好ましくは負極層に用いる負極活物質より0.5V以上大きい。リチウム挿入電位は、リチウム金属を対極としたサイクリックボルタンメトリーにて測定する。
電極としてSi等の体積変化の大きい活物質を含むものを用いる場合、電極層より活物質含量の低い電極合材を微粒子として用いると好ましい。このような電極合材を用いることで、電極の充放電時の体積変化による層間剥離をより抑えることができる。
電極合材としては、後述するものを用いることができる。
また、電極としてSi等の体積変化の大きい活物質を含むものを用いる場合、体積変化を吸収して変形に追随しやすい材料を含む微粒子を用いると好ましい。このような微粒子を用いることで、充放電時の電極の体積変化による層間剥離をより抑えることができる。
変形に追随しやすい材料としては、例えばポリマー、ゴム、カーボンブラック、活性炭、中空粒子等が挙げられる。
また、上記微粒子としては、イオン伝導性を有する粒子、即ち固体電解質粒子が好ましい。固体電解質としては、例えば酸化物系固体電解質又は硫化物系固体電解質が挙げられる。以下、これらについて説明する。
(1)酸化物系固体電解質
酸化物系固体電解質には、LiN、LISICON類、Thio−LISICON類、La0.55Li0.35TiO等のペロブスカイト構造を有する結晶;NASICON型構造を有するLiTi12;これらを結晶化した電解質等が挙げられる。
(2)硫化物系固体電解質
硫化物系固体電解質は、好ましくはLi、P、及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質であり、より好ましくは下記式(I)に示す組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質である。
Li・・・(I)
式(I)において、MはB、Zn、Si、Cu、Ga又はGeから選択される元素を示す。
a〜dは各元素の組成比を示し、a:b:c:dは1〜12:0〜0.2:1:2〜9を満たす。
好ましくは、bは0であり、より好ましくは、a、c及びdの比(a:c:d)がa:c:d=1〜9:1:3〜7、さらに好ましくは、a:c:d=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。
各元素の組成比は、下記するように、硫化物系固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
硫化物系固体電解質は、非晶質(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス)していてもよく、一部のみ結晶化していてもよい。
ここで、結晶化させると非晶質よりもイオン伝導度が高くなる場合があり、その場合には結晶化させることが好ましい。
硫化物系固体電解質の結晶構造として、例えば、特開2002−109955に開示されているLiPS構造、Li構造、LiPS構造、LiSiS構造、LiSiS構造、特開2005−228570及びWO2007/066539に開示されているLi11構造が好ましく、これら結晶構造であれば、非晶体よりイオン伝導度を高めることができる。
ここで、硫化物系固体電解質の結晶化された部分は、1つの結晶構造のみからなっていてもよく、複数の結晶構造を有していてもよい。
イオン伝導度が高いため、硫化物系固体電解質の結晶構造はLi11が最も好ましい。
Li11構造は、X線回折(CuKα:λ=1.5418Å)において、2θ=17.8±0.3deg,18.2±0.3deg,19.8±0.3deg,21.8±0.3deg,23.8±0.3deg,25.9±0.3deg,29.5±0.3deg,30.0±0.3degに回折ピークを有する。
硫化物系固体電解質の結晶化度(非晶体よりイオン伝導度が高い結晶構造の結晶化度)は、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。
硫化物系固体電解質の結晶化度が50%未満の場合は、結晶化によってイオン伝導度を高くするという効果が少なくなるためである。
上記結晶化度は、NMRスペクトル装置を用いることにより測定できる。具体的には、硫化物系固体電解質の固体31P−NMRスペクトルを測定し、得られたスペクトルについて、70−120ppmに観測される共鳴線を、非線形最少二乗法を用いたガウス曲線に分離し、各曲線の面積比を求めることにより測定できる。
硫化物系固体電解質は、以下の方法により製造することができる。
硫化物系固体電解質の原料は、LiS(硫化リチウム)、P(三硫化二リン)、P(五硫化二リン)、SiS(硫化珪素)、LiSiO(オルト珪酸リチウム)、Al(硫化アルミニウム)、単体リン(P)、単体の硫黄(S)、シリコン(Si)、GeS(硫化ゲルマニウム)、B(三硫化二砒素)、LiPO(燐酸リチウム)、LiGeO(ゲルマン酸リチウム)、LiBO(メタホウ酸リチウム)、LiAlO(リチウムアルミネート)等を用いることができる。
好ましい硫化物系固体電解質の原料は、LiS(硫化リチウム)、P(五硫化二リン)である。
以下、硫化物系固体電解質の原料として、LiS(硫化リチウム)、P(五硫化二リン)を用いた硫化物系固体電解質について説明する。
硫化リチウムは、例えば、特開平7−330312号公報、特開平9−283156号公報、特開2010−163356号公報、特開2011−084438号公報に記載の方法により製造することができる。
特開2010−163356号公報では、炭化水素系有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを70℃〜300℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成する。また、特開2011−084438号公報では、水溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを10℃〜100℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成する。
硫化物系固体電解質の製造に用いる硫化リチウムは、特に制限ないが、高純度のものが好ましい。
硫化リチウムは、硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下であり、かつN−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下である。
硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下であると、溶融急冷法やメカニカルミリング法で得られる硫化物系固体電解質は、ガラス状の硫化物系固体電解質(完全非晶質)となる。一方、硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%を越えると、得られる電解質は、最初から結晶化物となるおそれがあり、この結晶化物のイオン伝導度は低い。さらに、この結晶化物について熱処理を施しても結晶化物には変化がなく、高イオン伝導度の硫化物系固体電解質を得ることができないおそれがある。また、N−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下であると、N−メチルアミノ酪酸リチウムの劣化物がリチウムイオン電池のサイクル性能を低下させることがない。
このように不純物が低減された硫化リチウムを用いると、高いイオン伝導度を有する硫化物系固体電解質が得られる。
特開平7−330312号及び特開平9−283156号に記載の硫化リチウムは、硫黄酸化物のリチウム塩等を含むため、精製することが好ましい。
硫化リチウムを精製する場合、好ましい精製法としては、例えば国際公開第2005/40039号パンフレットに記載された精製法等が挙げられる。具体的には、上記のようにして得られた硫化リチウムを、有機溶媒を用い、100℃以上の温度で洗浄することで精製する。
尚、特開第2010−163356号公報に記載の硫化リチウムの製法で製造した硫化リチウムは、硫黄酸化物のリチウム塩等の含有量が非常に少ないため、精製せずに硫化物系固体電解質の製造に用いることができる。
硫化物系固体電解質の製造に用いる五硫化二リン(P)は、工業的に製造され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。
硫化リチウムと五硫化二リンを用いて硫化物系固体電解質を製造する場合、硫化リチウムと五硫化二リンの割合(モル比)は、通常、LiS:P=50:50〜80:20であり、好ましくは60:40〜80:20であり、さらに好ましくは65:35〜78:22であり、最も好ましくは68:32〜76:24である。
硫化リチウム(LiS)と五硫化二リン(P)を用いたガラス状の硫化物系固体電解質の製造方法としては、溶融急冷法、メカニカルミリング法(MM法)、有機溶媒中で原料を反応させるスラリー法等がある。
(a)溶融急冷法
溶融急冷法は、例えば、特開平6−279049号公報、国際公開第2005/119706号パンフレットに記載されている。具体的には、PとLiSを所定量乳鉢にて混合しペレット状にしたものを、カーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。所定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、ガラス状の硫化物系固体電解質が得られる。
反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃、より好ましくは、800℃〜900℃である。
反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは、1〜12時間である。
上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は、通常1〜10000K/sec程度、好ましくは10〜10000K/secである。
(b)メカニカルミリング法
メカニカルミリング法は、例えば、特開平11−134937号公報、特開2004−348972号公報、及び特開2004−348973号公報に記載されている。
例えば、PとLiSを所定量乳鉢にて混合し、各種ボールミル等を使用して所定時間反応させることにより、ガラス状の硫化物系固体電解質が得られる。
上記原料を用いたメカニカルミリング法は、室温で反応を行うことができる。メカニカルミリング法によれば、室温でガラス状の硫化物系固体電解質を製造できるため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成のガラス状の硫化物系固体電解質を得ることができるという利点がある。また、メカニカルミリング法では、ガラス状の硫化物系固体電解質の製造と同時に、ガラス状の硫化物系固体電解質を微粉末化できるという利点もある。
メカニカルミリング法は回転ボールミル、転動ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル等種々の形式を用いることができる。尚、特開2010−90003号公報に記載されているように、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。
メカニカルミリング法の条件としては、例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。この際、原料が60℃以上160℃以下になるようにすることが好ましい。
特開2009−110920号公報及び特開2009−211950号公報に記載されているように、原料に有機溶媒を添加してスラリー状にし、このスラリーをメカニカルミリング処理してもよい。また、特開2010−30889号公報に記載のようにメカニカルミリング処理の際のミル内の温度を調整してもよい。
(c)スラリー法
スラリー法は、例えば国際公開第2004/093099号パンフレット及び国際公開第2009/047977号パンフレットに記載されている。
具体的には、所定量の五硫化二燐(P)粒子と硫化リチウム(LiS)粒子を有機溶媒中で所定時間反応させることにより、ガラス状の硫化物系固体電解質が得られる。
ここで、特開2010−140893号公報に記載されているように、反応を進行させるため、原料を含むスラリーをビーズミルと反応容器との間で循環させながら反応させてもよい。また、国際公開第2009/047977号パンフレットに記載されているように、原料の硫化リチウムを予め粉砕しておくと効率的に反応を進行させることができる。この他、特開2011−136899号公報に記載されているように、原料の硫化リチウムの比表面積を大きくするために溶解パラメーターが9.0以上の極性溶媒(例えば、メタノール、ジエチルカーネート、アセトニトリル)に所定時間浸漬してもよい。
スラリー法に用いる有機溶媒としては特に制限はないが、非プロトン性有機溶媒が特に好ましい。
非プロトン性有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒(例えば、炭化水素系有機溶媒)、非プロトン性極性有機化合物(例えばアミド化合物,ラクタム化合物,尿素化合物,有機イオウ化合物,環式有機リン化合物等)を含み、単独溶媒として、又は混合溶媒として、好適に使用することができる。
非プロトン性有機溶媒である炭化水素系有機溶媒としては、飽和炭化水素溶媒、不飽和炭化水素溶媒又は芳香族炭化水素溶媒が使用でき、飽和炭化水素溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられ;不飽和炭化水素溶媒しては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられ;芳香族炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。これらのうち炭化水素系溶媒のうち、特にトルエン、キシレンが好ましい。
炭化水素系溶媒は、あらかじめ脱水されていることが好ましい。具体的には、水分含有量として100重量ppm以下が好ましく、特に30重量ppm以下であることが好ましい。
尚、必要に応じて炭化水素系溶媒に他の溶媒を添加してもよい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類等、ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
原料の有機溶媒への添加量は、原料である硫化リチウムと五硫化二燐が、溶液又はスラリー状になる程度であることが好ましい。通常、有機溶媒1リットルに対する原料(合計量)の添加量は、0.001kg以上1kg以下程度であり、好ましくは0.005kg以上0.5kg以下であり、より好ましくは0.01kg以上〜0.3kgである。
スラリー法において、反応温度は、好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは、20℃以上60℃以下である。また、反応時間は、好ましくは1時間以上16時間以下、より好ましくは2時間以上14時間以下である。
上記溶融急冷法、メカニカルミリング法及びスラリー法の温度条件、処理時間、仕込み料等の製造条件は、使用設備等に合わせて適宜調整することができる。
結晶性の硫化物系固体電解質の製造方法は、特開2005−228570号公報、国際公開第2007/066539号パンフレット、特開2002−109955号公報に開示されている。
具体的には、上述の方法で得られたガラス状硫化物系固体電解質を所定の温度で熱処理することで、結晶性硫化物系固体電解質が得られる。
ガラス状硫化物系固体電解質の加熱は、露点−40℃以下の環境下で行うことが好ましく、より好ましくは露点−60℃以下の環境下で行うことが好ましい。
加熱時の圧力は、常圧であっても減圧下であってもよく、加熱時の雰囲気は、空気であってもよく、不活性雰囲気下であってもよい。さらに特開2010−186744号公報に記載されているように溶媒中で加熱してもよい。
Li11結晶構造を有する硫化物系固体電解質を製造する場合の加熱条件としては、以下が挙げられる。
熱処理温度は、好ましくは180℃以上330℃以下、より好ましくは200℃以上320℃以下、特に好ましくは210℃以上310℃以下である。180℃より低いと結晶化度の高い硫化物系固体電解質が得られにくい場合があり、330℃より高いとイオン伝導度の低い結晶構造を有する硫化物系固体電解質が生じるおそれがある。
熱処理時間は、熱処理温度が180℃以上210℃以下の場合は、3時間以上240時間以下が好ましく、特に4時間以上230時間以下が好ましい。また、熱処理温度が210℃より高く330℃以下の場合は、0.1時間以上240時間以下が好ましく、0.2時間以上235時間以下がより好ましく、0.3時間以上230時間以下がさらに好ましい。
熱処理時間が0.1時間より短いと、結晶化度の高い硫化物系固体電解質が得られにくい場合があり、240時間より長いと、結晶化度の低い硫化物系固体電解質が生じるおそれがある。
LiPS結晶構造、Li結晶構造、LiPS結晶構造、LiSiS結晶構造、又はLiSiS結晶構造を有する硫化物系固体電解質を製造する場合、これら結晶構造を有する硫化物系固体電解質は公知の方法で製造することができ、例えば特開2002−109955号公報に開示されている方法が挙げられる。
次に、全固体電池の各層について説明する。
(1)正極層
正極層は、正極活物質を含む層である。
正極活物質は、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質であり、電池分野において正極活部質として公知のものが使用できる。
正極活物質としては、例えばV、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、Li(NiCoMn)O(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCo、LiCo1−YMn、LiNi1−YMn(ここで、0≦Y<1)、Li(NiCoMn)O(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNi、LiMn2−ZCoZO(ここで、0<Z<2)、LiCoPO、LiFePOが挙げられる。
硫化物系正極活物質では、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni)等が使用でき、好ましくは、TiSである。
酸化物系正極活物質では、酸化ビスマス(Bi)、鉛酸ビスマス(BiPb)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V13)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)等が使用できる。尚、これらを混合して用いることも可能である。好ましくは、コバルト酸リチウムが使用できる。
また、LiCoO,LiNiO,LiMn,LiFePO,LiCoPO,LiMn1/3Ni1/3Co1/3,LiMn1.5Ni0.5等も使用できる(Xは0.1〜0.9である。)
上記の他、セレン化ニオブ(NbSe)、以下に示す有機ジスルフィド化合物、以下に示すカーボンスルフィド化合物、硫黄、硫化リチウム、金属インジウム等を正極活物質として使用できる。
Figure 2014191917
Figure 2014191917
(式(A)〜(C)において、Xはそれぞれ置換基であり、n及びmはそれぞれ独立に1〜2の整数であり、p及びqはそれぞれ独立に1〜4の整数である。
式(D)において、Zはそれぞれ−S−又は−NH−であり、nは繰返数2〜300の整数である。)
Figure 2014191917
(式中、n、mは、それぞれ1以上の整数である。)
正極層は、さらに固体電解質及び/又は導電助剤を含んでいてもよい。
固体電解質は、上記と同様のものが挙げられる。
導電助剤は、導電性を有していればよく、その電子伝導度は、好ましくは1×10S/cm以上であり、より好ましくは1×10S/cm以上である。導電助剤としては、炭素材料、金属粉末及び金属化合物から選択される物質、及びこれらの混合物が挙げられる。
導電助剤の具体例としては、好ましくは炭素材料、ニッケル、銅、アルミニウム、インジウム、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、クロム、金、ルテニウム、白金、ベリリウム、イリジウム、モリブデン、ニオブ、オスニウム、ロジウム、タングステン及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む物質であり、より好ましくは導電性が高い炭素単体、炭素単体以外の炭素材料;ニッケル、銅、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、ルテニウム、金、白金、ニオブ、オスニウム又はロジウムを含む金属単体、混合物又は化合物である。
尚、炭素材料の具体例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック;黒鉛、炭素繊維、活性炭等が挙げられ、これらは単独でも2種以上でも併用可能である。なかでも、電子伝導性が高いアセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラックが好適である。
正極層は、上記成分の他にバインダーを含んでもよい。バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂;エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
正極の厚さは、0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。
(2)負極層
負極層は、負極活物質を含む層である。
負極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において負極活物質として公知のものが使用できる。
例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。又はその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合せた合金を、負極材として用いることができる。
負極層は、他の成分として固体電解質、導電助剤及び/又はバインダーを含んでいてもよい。固体電解質、導電助剤、バインダーとしては上記と同じものが使用できる。
負極層の厚さは、0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。
(3)電解質層
電解質層は、固体電解質を含む層である。
電解質層を構成する固体電解質としては、上述した酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質の他に、ポリマー系固体電解質が挙げられる。
ポリマー系固体電解質としては、例えば特開2010−262860号公報に開示されているように、フッ素樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、及びこれらの誘導体並びに共重合体等の、ポリマー電解質として用いられる材料が挙げられる。
ポリマー系固体電解質であるフッ素樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)や、これらの誘導体等を構成単位として含むポリマーが挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のホモポリマー;、VdFとHFPの共重合体(以下、この共重合体を「P(VdF−HFP)」と示す場合がある。)等の2元共重合体や3元共重合体が挙げられる。
電解質層は、固体電解質のみからなってもよく、さらにバインダーを含んでもよい。バインダーとしては、上記のバインダーと同じものが使用できる。
電解質層の厚さは、0.001mm以上1mm以下であることが好ましい。
電解質層の固体電解質は、融着していていることが好ましい。融着とは、固体電解質粒子の一部が溶解し、溶解した部分が他の固体電解質粒子と一体化することを意味する。また、電解質層は、固体電解質の板状体であってもよく、当該板状体は、固体電解質粒子の一部又は全部が溶解し、板状体になっている場合も含む。
(4)集電体
本発明のリチウムイオン電池は集電体をさらに備えてもよく、当該集電体は、公知の集電体を用いることができる。
集電体は、例えばAu、Pt、Al、Cu等のように硫化物系固体電解質と反応する金属からなる層を、さらにAu,導電性カーボン等で被覆した層である。
本発明の全固体電池の第1の製造方法は、固体電解質層の表面に微粒子を散布する工程、及び前記微粒子を散布した面に正極層もしくは負極層を積層する工程を含む。
微粒子を散布する方法としては、篩等により粉体を散布する方法、気流により吹き付ける方法、静電力を利用する方法、溶剤に分散させた粒子をスプレーする方法等が挙げられる。
また、微粒子としてガラス状固体電解質を用い、そのガラス転移点以上の温度で処理することにより微粒子とその周囲の物質を融着させることが好ましい。このようにすることで、層間剥離を抑制し、放電容量の低下を抑制できる効果がより高まる。
全固体電池の各層(正極層、負極層、固体電解質層)の形成方法は、公知の方法により製造することができ、例えば、塗布法、静電法エアロゾルデポジション法、スクリーン印刷法、コールドスプレー法等により製造することができる。
微粒子を散布した上に層を形成する際は、微粒子の分布状態により影響を与えないという観点から、塗布法、スクリーン印刷法が好ましい。
また、全固体電池の各層(正極層、負極層、固体電解質層)は、予め圧密化したものを用いることが好ましい。このようにすることで、積層したシートをプレスする際の歪みを小さくできるため短絡しにくく、かつ層間がはがれにくくなる。
圧密化は、例えばロールプレスや面プレスを用いることができ、その際に加熱をしてもよい。
本発明の全固体電池の第2の製造方法は、正極層もしくは負極層の表面に微粒子を散布する工程、及び前記微粒子を散布した面に、固体電解質層を積層する工程を含む。
微粒子を散布する方法、電池各層の形成方法等は第1の製造方法と同様である。
製造例1
[硫化リチウム(LiS)の製造]
硫化リチウムの製造及び精製は、国際公開第2005/040039号パンフレットの実施例と同様に行った。具体的には下記の通りである。
(1)硫化リチウムの製造
撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。
続いて、この反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した硫化水素の一部を脱硫化水素化した。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。脱硫化水素反応が終了後(約80分)反応を終了し、硫化リチウムを得た。
(2)硫化リチウムの精製
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
尚、亜硫酸リチウム(LiSO)、硫酸リチウム(LiSO)並びにチオ硫酸リチウム(Li)の各硫黄酸化物、及びN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)の含有量は、イオンクロマトグラフ法により定量した。その結果、硫黄酸化物の総含有量は0.13質量%であり、LMABは0.07質量%であった。
製造例2
[固体電解質粒子1の製造]
製造例1で製造した硫化リチウムを用いて、国際公開第07/066539号パンフレットの実施例1と同様の方法で固体電解質の製造及び結晶化を行った。
具体的には、下記のように行った。
製造例1で製造した硫化リチウム0.6508g(0.01417mol)と五硫化二燐(アルドリッチ社製)を1.3492g(0.00607mol)をよく混合した。そして、この混合した粉末と直径10mmのジルコニア製ボール10ケと遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)アルミナ製ポットに投入し完全密閉するとともにこのアルミナ製ポット内に窒素を充填し、窒素雰囲気にした。
そして、はじめの数分間は、遊星型ボールミルの回転を低速回転(85rpm)にして硫化リチウムと五硫化二燐を十分混合した。その後、徐々に遊星型ボールミルの回転数を上げ370rpmまで回転数を上げた。遊星型ボールミルの回転数を370rpmで20時間メカニカルミリングを行った。このメカニカルミリング処理をした白黄色の粉体をX線測定により評価した結果、ガラス化(硫化物ガラス)していることが確認できた。この硫化物ガラスのガラス転移温度をDSC(示差走査熱量測定)により測定したところ、220℃であった。
この硫化物ガラスを窒素雰囲気下、300℃で2時間加熱し、硫化物ガラスセラミックスとし、固体電解質粒子1を得た。
得られた固体電解質粒子1について、X線回折測定したところ、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
固体電解質粒子1の平均粒径を測定したところ、8.8μmであり、イオン伝導度を測定したところ、6.36E−4S/cmであった。
製造例3
[固体電解質粒子2の製造]
製造例1で製造した高純度硫化リチウムの添加量を0.766g(0.0166モル)とし、五硫化二燐(アルドリッチ社製)の添加量を1.22g(0.0055モル)とし、300℃、2時間の加熱を行わなかった他は製造例2と同様にして固体電解質粒子2を製造した。
得られた固体電解質粒子2について、X線測定してガラス化していることを確認した。固体電解質2の平均粒径は、67.8μmであった。また、イオン伝導度は1.22E−4S/cmであった。
固体電解質粒子1及び固体電解質粒子2の平均粒径及びイオン伝導度は、下記方法により測定した。
(1)電解質粒子のイオン伝導度
電解質粒子を0.3g秤量し、容器内に入れ、電解質粒子に対して185MPaで加圧した。加圧後、試料の上下に、TIMCAl社製SFGを1.0mgずつ入れ、再度、185MPaで加圧し、容器の上下に電極を形成した。得られた試料を東陽テクニカ製インピーダンス装置にて、25℃、AC振幅変調10mV、周波数10M〜10Hzの条件で伝導度を測定した。
(2)電解質粒子の平均粒径
レーザー回折式粒度分布測定装置(「Malvern Instruments Ltd社製マスターサイザー2000)を使用し、装置の分散槽に脱水処理されたトルエン(和光純薬製、製品名:特級)110mlを入れ、さらに分散剤として脱水処理されたターシャリーブチルアルコール(和光純薬製、特級)を6%添加した。
上記混合物を十分混合した後、電解質粒子を添加して粒子径を測定した。電解質粒子の添加量は、マスターサイザー2000で規定されている操作画面で、粒子濃度に対応するレーザー散乱強度が規定の範囲内(10〜20%)に収まるように加減して加えた(電解質粒子の添加量は、その種類等により最適量は異なるが、概ね0.01g〜0.05g程度である)。
製造例4
[正極合材の製造]
製造例1の硫化リチウム4.36gと、デンカブラック(電気化学工業製)1.30g、固体電解質粒子2 4.34gを、遊星型ボールミル(伊藤製作所製:型番:LP−4)に入れ、100rpmで30分間撹拌混合し、その後さらに220rpmで20時間混合して正極合材を得た。
得られた正極合材15.0gをハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製、型式:NHS−O型)に入れ、10000rpm1時間の条件で造粒処理を行ない、造粒正極合材である正極合材を得た。
製造例5
[正極シート、負極シート及び固体電解質シートの製造]
製造例4で作製した正極合材11.88gを、バインダー0.12gとともに基板に塗布して正極シートを作製した。
シリコン(平均径5μmのSi粉末(高純度化学研究所製,純度99.9%))9.01gと、製造例2で製造したガラスセラミック状態の硫化物系固体電解質3.86gをバインダー0.13gとともに基板に塗布して負極シートを作製した。
また、製造例2で製造したガラスセラミック状態の硫化物系固体電解質52.25gを、バインダー2.75gとともに剥離フィルム上に塗布して固体電解質シートを作製した。
実施例1
製造例5で作製した約30mm四方の固体電解質シート上に、製造例3で製造したガラス状態の硫化物系固体電解質の微粒子を目開き150μmの篩から散布した。この際、粒子の隙間から固体電解質シートを目視することができた。
その上に、製造例5で作製した25mm四方の負極シートを積層し、加圧して、ガラス状態の硫化物系固体電解質粒子を介在させた状態で、負極シート上に固体電解質シートを転写した。
さらに、固体電解質シート上に製造例5で作製した20mm四方の正極シートを積層し、110℃にて100MPaで仮固定し、その後、110℃にて500MPaで圧密化した。さらに厚さ50μmのアルミ箔で挟み、真空状態で周囲を熱シールすることにより、ラミネートセルを作製した。
作製したラミネートセルは、55℃においてフォーメーションのための充放電を1サイクル実施したのち、25℃において加圧無しの状態で充放電を繰り返し、サイクル特性を評価した。充放電条件は、4mAにて2.8Vまで定電流定電圧充電を行い、1時間休止後、4mAにて0.5Vまで定電流放電を行った。
実施例2
実施例1において、固体電解質シート上に正極シートを積層した後、110℃100MPaで仮固定した後に、厚さ50μmのアルミ袋内に真空状態で封入し、300℃に加熱した鉄板に挟んで10分間加熱した後、110℃にて500MPaで圧密化した他は、実施例1と同様にしてラミネートセルを作製し、サイクル特性評価を行った。
比較例1
固体電解質シートと負極シートの間にガラス状態の硫化物系固体電解質の粒子を介在させなかった他は、実施例1と同様にしてラミネートセルを作製し、サイクル特性評価を行った。
実施例1及び比較例1について、サイクル特性の評価結果(放電量、充電量及びこれらの比率)を表1に示す。
また、実施例2と比較例1について、サイクル特性評価における1サイクル目の放電容量を100%とした時の放電容量維持率の変化を図2に示す。
Figure 2014191917
実施例1では、充電量が前回サイクルにおける放電量とほぼ等量であり、サイクル特性に優れる。
一方、比較例1では前回サイクルの放電量より大幅に多い充電量となっている。即ち、正常に動作していない。原因は明らかではないが、負極層と固体電解質層の間の抵抗増大や剥離により、負極活物質に充電されにくい状態となっていること、また、リチウム金属が析出して微小短絡を起こし、充電電流がリークしていることが考えられる。このような状態では、充放電においてエネルギーをロスするとともに、リチウム金属析出による容量低下や安全性の低下が懸念される。
実施例1は比較例1よりも放電容量の維持率が高い。即ち、加圧無しの状態において充放電を繰り返した際の抵抗増大や剥離を抑制していることが分かる。
本発明の全固体電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを電力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電池として使用することができる。
1 全固体電池
10 基板
20 負極層
22 微粒子
30 固体電解質層
40 正極層
50 基板

Claims (11)

  1. 正極層、固体電解質層、及び負極層をこの順に含み、
    前記正極層と前記固体電解質層の境界、及び前記固体電解質層と前記負極層の境界のうち少なくとも1つが微粒子を含む全固体電池。
  2. 前記微粒子が固体電解質を含む請求項1に記載の全固体電池。
  3. 前記微粒子が硫化物系固体電解質を含む請求項1又は2に記載の全固体電池。
  4. 前記微粒子がLi、P及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質である請求項1〜3のいずれかに記載の全固体電池。
  5. 前記微粒子の平均粒径が0.1〜100μmである請求項1〜4のいずれかに記載の全固体電池。
  6. 前記正極層が正極活物質と固体電解質を含む請求項1〜5のいずれかに記載の全固体電池。
  7. 前記負極層が負極活物質と固体電解質を含む請求項1〜6のいずれかに記載の全固体電池。
  8. 前記固体電解質層が硫化物系固体電解質を含む請求項1〜7のいずれかに記載の全固体電池。
  9. 前記固体電解質層がLi、P及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質を含む請求項1〜8のいずれかに記載の全固体電池。
  10. 固体電解質層の表面に微粒子を散布する工程、及び前記微粒子を散布した面に、正極層もしくは負極層を積層する工程を含む、又は
    正極層もしくは負極層の表面に微粒子を散布する工程、及び前記微粒子を散布した面に、固体電解質層を積層する工程を含む、
    全固体電池の製造方法。
  11. 前記微粒子がLi、P及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質であり、
    前記固体電解質層がLi、P及びSを含むリチウムイオン伝導性無機固体電解質からなり、
    前記正極層が正極活物質及び固体電解質を含み、
    前記負極層が負極活物質及び固体電解質を含む、
    請求項10に記載の全固体電池の製造方法。
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