JP2010146823A - 固体電解質シート用組成物、固体電解質シート及び固体二次電池 - Google Patents

固体電解質シート用組成物、固体電解質シート及び固体二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】
優れた安全性と加工性を兼ね備え、かつ、均一で緻密な性状をもつ高性能な固体電解質シート用組成物、この組成物から得られる固体電解質シート、及びこのシートか得られる固体二次電池を提供する。
【解決手段】
固体電解質及び結着材を、フッ素系溶剤を含有する分散媒中に分散させてなる固体電解質シート用組成物、この固体電解質シート用組成物をシート基材上に塗工し、熱処理して得られる固体電解質シート、及び、正極と、負極と、前記正極及び負極間に挟持された固体電解質層とを有し、前記固体電解質層が、前記固体電解質シートから製造されたものである固体二次電池。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、高い安全性と加工性を兼ね備え、かつ高性能な固体電解質シートが得られる固体電解質シート用組成物、固体電解質シート、及びこれを用いる固体二次電池に関する。
近年、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いられる高性能リチウムイオン電池等の二次電池の需要が増加している。
リチウムイオン電池の安全性を確保する方法としては、有機溶媒電解質に代えて無機固体電解質を用いることが有効である。
また、この無機固体電解質をリチウムイオン電池に適用する場合、加工性のよいシートとすることが必要である。
従来、無機固体電解質をリチウムイオン電池に適用した例として、特許文献1には、固体電解質粉末を加圧成形した後、熱処理を施してリチウムイオン伝導性固体電解質シートを作製する方法が開示されている。
また、特許文献2には、固体電解質粉末及び結着材を分散媒中に分散させてなるスラリーからリチウムイオン伝導性固体電解質シートを作製する方法が開示されている。
しかしながら、近年におけるリチウムイオン電池等の二次電池の用途拡大に伴い、リチウムイオン電池等の二次電池のさらなる安全性の向上及び高性能化が要求されており、これに用いる固体電解質シートにも、より安全で優れた加工性を備え、より高性能なものの開発が要望されている。
特開2008−124011号公報 特開2008−21416号公報
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであって、より優れた安全性と加工性を兼ね備え、かつ、均一で緻密な性状をもつ高性能な固体電解質シート用組成物、この組成物から得られる固体電解質シート、及びこのシートから得られる固体二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決すべく、固体電解質粉末及び結着材を分散媒中に分散させてなるスラリーを用いて固体電解質シートを製造する方法について鋭意研究した。その結果、分散媒として、フッ素系溶剤を用いると、より優れた安全性と加工性を兼ね備え、かつ、均一で緻密な性状をもつ高性能な固体電解質シートを作製することができる固体電解質シート用組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(5)の固体電解質シート用組成物が提供される。
(1)固体電解質及び結着材を、フッ素系溶剤を含有する分散媒中に分散させてなる固体電解質シート用組成物。
(2)前記フッ素系溶剤が、沸点が70℃以上100℃以下のフッ素系溶剤である(1)に記載の固体電解質シート用組成物。
(3)前記フッ素系溶剤が、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンまたは1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロシクロペンタンである(1)に記載の固体電解質シート用組成物。
(4)前記結着材が、含フッ素化合物である(1)〜(3)のいずれかに記載の固体電解質シート用組成物。
(5)前記固体電解質の配合量が、固形分全体に対して、通常80〜99重量%、前記結着材の配合量が、固形分全体に対して、通常1〜20重量%である(1)〜(4)のいずれかに記載の固体電解質シート用組成物。
本発明の第2によれば、下記(6)の固体電解質シートが提供される。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の固体電解質シート用組成物をシート基材上に塗工し、熱処理して得られる固体電解質シート。
本発明の第3によれば、下記(7)の固体二次電池が提供される。
(7)正極と、負極と、前記正極及び負極間に挟持された固体電解質層とを有し、前記固体電解質層が、前記(6)に記載の固体電解質シートから製造されたものである固体二次電池。
本発明によれば、安全性と加工性を兼ね備え、かつ、均一で緻密な性状をもつ高性能な固体電解質シートを作製することができる固体電解質シート用組成物、この組成物から得られる固体電解質シート、及びこのシートから得られる固体二次電池が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
1)固体電解質シート用組成物
本発明の固体電解質シート用組成物は、固体電解質及び結着材を、フッ素系溶剤を含有する分散媒中に分散させてなるものである。
本発明において、固体電解質シート用組成物における固体電解質の配合量は、固形分全体に対して、通常80〜99重量%、好ましくは90〜98重量%である。また、結着材の配合量は、固形分全体に対して、通常1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%である。
無機固体電解質の配合量が80重量%未満では、シートに占める無機固体電解質の量が不足するため、シートのイオン伝導性が低くなる。一方、99重量%を越えると、結着材によるシートの柔軟性付与効果が十分ではなく、得られるシートが硬くて脆い状態となるおそれがある。
(1)分散媒
本発明の固体電解質シート用組成物は、分散媒として、フッ素系溶剤を含有するものを用いる。分散媒として、フッ素系溶剤を用いることにより、優れた安全性と加工性を兼ね備え、かつ、均一で緻密な性状をもつ高性能な固体電解質シートを作製することができる固体電解質シート用組成物を得ることができる。
分散媒中におけるフッ素系溶剤の含有量は、分散媒全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
用いるフッ素系溶剤は、フッ素原子を含有し、室温付近(0℃〜30℃)で液状の化合物である。
本発明で用いるフッ素系溶剤としては、炭素数4〜8の鎖状又は脂環式フッ素化合物が好ましい。
例えば、1,1,1,2,4,4,4−ヘプタフルオロ−n−ブタン、1,1,1,2,2,3,5,5,5−ノナフルオロ−n−ペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,6,6,6−ウンデカフルオロ−n−ヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,7,7,7−トリデカフルオロ−n−ヘプタン等の鎖状ハイドロフルオロカーボン;1,1,2,2,3−ペンタフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,4,5−ノナフルオロシクロヘキサン等の環状ハイドロフルオロカーボン;ヘプタフルオロプロピル−メチルエーテル、1,2,2,2−テトラフルオロエチルヘプタフルオロプロピルエーテル、エチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、ノナフルオロブチル−メチルエーテル、ノナフルオロブチル−エチルエーテル、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヘプタフルオロプロポキシ−3−(1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ)−1−プロパン等のハイドロフルオロエーテル;などが挙げられる。これらは一種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、これらの中でも、操作性及び作業性の観点から、沸点が70℃以上100℃以下のものが好ましく、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(沸点:82.5)または1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロシクロペンタン(沸点:79)が特に好ましい。
他の溶媒
本発明に用いる分散媒には、上記フッ素系溶剤に加えて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、他の溶剤を含有していてもよい。
用いる他の溶剤としては、乾燥ヘプタン、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート等の、通常の電解液に用いられる溶媒が挙げられる。
分散媒の使用量は、固形分100重量部に対して40〜250重量部が好ましく、スラリー粘度を調節する為に任意に選択できる。
(2)固体電解質
本発明に用いる固体電解質を構成する物質としては、特に限定されず、有機化合物、無機化合物、あるいは有機・無機両化合物からなる材料を用いることができ、リチウムイオン電池分野で公知のものが使用できる。
特に、硫化物系の無機固体電解質は、イオン伝導度が他の無機化合物より高いことが知られており、特開平4−202024号公報、特開2008−21416号公報、特開2008−124011号公報等に記載の無機固体電解質を使用できる。
具体的には、LiSと、SiS、GeS、P又はBとの組合せから成る無機固体電解質に、適宜、LiPOやハロゲン、ハロゲン化合物を添加した無機固体電解質を用いることができる。
本発明に用いるガラス状の固体電解質としては、リチウムイオン伝導性が高いことから、リチウム・リン硫化物系電解質を用いることが好ましい。
リチウム・リン硫化物系電解質は、硫化リチウムと五硫化二リン(P)、又は硫化リチウムと単体リン及び単体硫黄、さらには硫化リチウム、五硫化二リン、単体リン及び/又は単体硫黄から製造できる。
上記のリチウム・リン硫化物系電解質を製造するための硫化リチウムは、特に制限なく工業的に入手可能なものが使用できるが、高純度のものが好ましい。不純物が低減された硫化リチウムを用いると、高イオン伝導性電解質が得られるので好ましい。
好ましい硫化リチウムとしては、硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり、かつN−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下のものである。
硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下であると、溶融急冷法やメカニカルミリング法で得られる固体電解質は、ガラス状電解質(完全非晶質)となる。即ち、硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%を越えると、得られる電解質は、最初から結晶化物の恐れがあり、この結晶化物のイオン伝導度は低い。さらに、この結晶化物について熱処理を施しても結晶化物には変化がなく、高イオン伝導度のリチウムイオン伝導性無機固体電解質を得ることはできないおそれがある。また、N−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下であると、N−メチルアミノ酪酸リチウムの劣化物がリチウム電池のサイクル性能を低下させることがない。
前記硫化リチウムの製造法としては、少なくとも上記不純物を低減できる方法であれば特に制限はない。
例えば、以下の方法で製造された硫化リチウムを精製することにより得ることができる。
a.非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを0〜150℃で反応させて水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を150〜200℃で脱硫化水素化する方法(特開平7−330312号公報)。
b.非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを150〜200℃で反応させ、直接硫化リチウムを生成する方法(特開平7−330312号公報)。
c.水酸化リチウムとガス状硫黄源を130〜445℃の温度で反応させる方法(特開平9−283156号公報)。
これらの製造法の中では、特にa又はbの方法が好ましい。
硫化リチウムの精製方法としては、特に制限されない。好ましい精製法としては、例えば、国際公開WO2005/40039号等に記載の方法が挙げられる。
具体的には、硫化リチウムを100℃以上の温度にて有機溶媒で洗浄する。洗浄に用いる有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒であることが好ましい。さらに、硫化リチウムの製造に使用する非プロトン性有機溶媒と洗浄に用いる非プロトン性極性有機溶媒とが同一であることがより好ましい。
洗浄に好ましく用いられる非プロトン性極性有機溶媒としては、例えば、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機硫黄化合物、環式有機リン化合物等の非プロトン性の極性有機化合物が挙げられ、単独溶媒、又は混合溶媒として好適に使用することができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)は、良好な溶媒として選択される。
洗浄に用いる有機溶媒の量は特に限定されず、また、洗浄の回数も特に限定されないが、2回以上であることが好ましい。また、洗浄は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
洗浄された硫化リチウムを、洗浄に使用した有機溶媒の沸点以上の温度で、窒素等の不活性ガス気流下、常圧又は減圧下で、5分以上、好ましくは約2〜3時間以上乾燥することにより、好適に用いられる硫化リチウムを得ることができる。
用いるPは、工業的に製造され、販売されているものであれば、特に限定されない。尚、Pに代えて、相当するモル比の単体リン(P)及び単体硫黄(S)を用いることもできる。単体リン(P)及び単体硫黄(S)は、工業的に生産され、販売されているものであれば、特に限定なく使用できる。
硫化リチウムと、五硫化二リン、及び/又は、単体リン及び単体硫黄の混合モル比は、通常50:50〜80:20、好ましくは60:40〜75:25、特に好ましくは、LiS:P=68:32〜74:26(モル比)である。
ガラス状の固体電解質を製造する方法としては、例えば、溶融急冷法やメカニカルミリング法(MM法)が挙げられる。
溶融急冷法による場合、PとLiSを所定量乳鉢にて混合し、ペレット状にしたものをカーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。一定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、硫化物ガラスが得られる。
この際の反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃、より好ましくは700℃〜900℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは1〜12時間である。上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は通常1〜10000K/sec程度、好ましくは1〜1000K/secである。
MM法による場合、PとLiSを所定量乳鉢にて混合し、一定時間反応させることにより、硫化物ガラスが得られる。
上記原料を用いたMM法は、室温で反応を行うことができる。MM法によれば、室温でガラス状電解質を製造できるため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成のガラス状電解質を得ることができるという利点がある。また、MM法では、ガラス状電解質の製造と同時に、ガラス状電解質を微粉末化できるという利点もある。
MM法は種々の形式の粉砕法を用いることができるが、遊星型ボールミルを使用するのが特に好ましい。遊星型ボールミルは、ポットが自転回転しながら、台盤が公転回転し、非常に高い衝撃エネルギーを効率良く発生させることができる。
MM法の回転速度及び回転時間は特に限定されないが、回転速度が速いほど、ガラス状電解質の生成速度は速くなり、回転時間が長いほどガラス質状電解質ヘの原料の転化率は高くなる。例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
以上、溶融急冷法及びMM法による硫化物ガラスの具体例を説明したが、温度条件や処理時間等の製造条件は、使用設備等に合わせて適宜調整することができる。
硫化物ガラスシートを熱処理して得られる結晶性硫化物ガラスセラミックス(リチウムイオン伝導性固体電解質)は、X線回折(CuKα:λ=1.5418Å)において、2θ=17.8±0.3deg,18.2±0.3deg,19.8±0.3deg,21.8±0.3deg,23.8±0.3deg,25.9±0.3deg,29.5±0.3deg,30.0±0.3degに回折ピークを有することが好ましい。このような結晶構造を有する固体電解質が、極めて高いリチウムイオン伝導性を有する。
また、硫化物ガラスシートを熱処理して得られる結晶性硫化物ガラスセラミックスは、下記(a)及び(b)の条件を満たすことが好ましい。
(a)固体電解質の固体31P−NMRスペクトルが、90.9±0.4ppm及び86.5±0.4ppmに、結晶に起因するピークを有する。
(b)固体電解質に占める(a)のピークを生じる結晶の比率(xc)が60mol%〜100mol%である。
条件(a)の2つのピークは、高イオン伝導性結晶成分が固体電解質に存在する場合に観測されるものである。具体的には、結晶中のP 4−とPS 3−に起因するピークである。
条件(b)は、固体電解質中に占める上記結晶の比率xcを規定するものである。固体電解質中において高イオン伝導性の結晶成分が所定量以上、具体的には60mol%以上存在すると、リチウムイオンが高イオン伝導性の結晶を主に移動するようになる。従って、固体電解質中の非結晶部分(ガラス部分)や、高イオン伝導性を示さない結晶格子(例えば、P 4−)を移動する場合に比べて、リチウムイオン伝導度が向上する。
比率xcは65mol%〜100mol%であることが好ましい。上記結晶の比率xcは、原料である硫化物ガラスの熱処理時間及び温度を調整することにより制御できる。
尚、固体31P−NMRスペクトルの測定は、例えば、日本電子株式会社製のJNM−CMXP302NMR装置を使用して、観測核を31P、観測周波数を121.339MHz、測定温度を室温、測定法をMAS法として行なうことができる。
比率xcは、固体31P−NMRスペクトルについて、70〜120ppmに観測される共鳴線を、非線形最小二乗法を用いてガウス曲線に分離し、各曲線の面積比から算出することができる。
ガラス状のリチウムイオン伝導性固体電解質をシートに成形する際においては、バインダー(結着材や高分子化合物等)を混合したり、支持体(固体電解質層の強度を補強したり、固体電解質自体の短絡を防ぐための材料や化合物等)を接合させて成形することもできる。
(3)結着材
本発明で使用する結着材としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用できる。例えば、ポリシロキサンなどのケイ素化合物;ポリアルキレングリコール等のグリコール類;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン類;エチレン−アクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体;エチレン−メタクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体;フッ素系化合物;などが挙げられる。
これらの中でも、Liイオン伝導性の高い固体電解質シートが得られる観点から、フッ素系化合物が好ましい。
フッ素系化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)が好ましい。
尚、本発明の固体電解質シートには、固体電解質粉末及び結着材の他に、イオン性液体等のリチウムイオン伝導性を有する添加剤を配合してもよい。
本発明の固体電解質シート用組成物は、所定量の固体電解質粉末、結着材及び分散媒を混合し、公知の方法により攪拌することにより調製することができる。
得られる組成物中における固体電解質の平均粒径は、シート内における分散を考慮すると、0.001μm〜50μmとすることが好ましい。
2)固体電解質シート
本発明の固体電解質シートは、上述した本発明の固体電解質シート用組成物をシート基材上に塗工し、熱処理して得られるものである。
用いるシート基材としては、本発明の固体電解質シート用組成物を担持できるものであれば、特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることができる。シート基材の厚さは、通常10〜200μmである。
固体電解質シート用組成物をシート基材上に塗工する方法としては、ドクターブレード、スピンコート、スライドダイコート、コンマダイコート、コンマリバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、スクリーン印刷等を用いることができる。
固体電解質シート用組成物をシート基材上に塗工した後、塗膜の乾燥を行う。乾燥には、熱風、ヒーター、高周波等による乾燥装置を用いることができる。乾燥は、固体電解質シートの両面から行ってもよいし、片面から行ってもよい。このとき、組成物中の溶媒の取り除きが不十分にならないように、例えば熱風の場合、温度と風量を最適に調整する必要がある。乾燥温度は、用いる溶媒の種類にもよるが、通常50〜100℃である。乾燥時間は、通常数分から数時間である。
乾燥した後、熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は通常150℃〜360℃である。150℃未満では、硫化物系ガラスの場合は、ガラス転移点以下の温度であるため結晶化が進行しにくい。一方、360℃を超えると、後述する特有の結晶構造を有する結晶ガラスが生成されないおそれがある。熱処理温度は200℃〜350℃がより好ましく、250℃〜300℃が特に好ましい。熱処理時間は、結晶が生成する条件であれば特に限定はなく、瞬時であっても長時間であっても構わない。また、熱処理温度までの昇温パターンについても特に限定はない。
また、熱処理を行う際に、さらに加圧して強度を高くすることもできる。加圧には、シートプレスやロールプレス等を用いることができる。
加圧時の圧力が低過ぎると固体電解質層の厚さが不均一になるおそれがあり、高過ぎると固体電解質とガラス繊維織物を含めて破損するおそれがある。また、圧密化と同時に熱処理できる熱プレスや熱ロールプレスを用いることもできる。
以上のようにして得られる固体電解質シートの厚みは、特に限定されないが、5〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、10〜50μmであることが更に好ましい。5μm未満では、電池を形成した際に電極間の短絡を生じるおそれがあり、一方、500μmを超えると、固体電解質シートの抵抗が大きくなり、電池の性能が低下するおそれがある。
以上のようにして得られる本発明の固体電解質シートでは、イオン伝導度が10−4S/cm以上であることが好ましく、10−3S/cm以上であることが特に好ましい。このようなイオン伝導度を有することにより、リチウム二次電池を形成した際の効率低下を抑制できる。
本発明の固体電解質シートは、分解電圧が高いため、作動電圧が4V級の電池に使用しても還元されることはない。また、無機固体電解質を主として含むため不燃性であり、リチウムイオン輸率が1であるという特性も保持している。従って、リチウムイオン電池の固体電解質用の材料として、極めて適している。
尚、作動電圧が4V級の電池に使用するためには、例えば、作動電圧3.5Vにおける初期充放電効率が70%以上であることが望ましい。
3)固体二次電池
本発明の固体二次電池は、正極と、負極と、前記正極及び負極間に挟持された固体電解質を有し、前記固体電解質層が本発明の固体電解質シートから製造されたものである。
図1は本発明に係る固体二次電池の一実施形態を示す概略断面図である。固体二次電池1は、正極10及び負極30からなる一対の電極間に固体電解質層20が挟持されている。正極10及び負極30にはそれぞれ集電体40及び42が設けられている。
正極10に使用する正極材としては、電池分野において正極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、硫化物系では、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni)等が使用できる。好ましくは、TiSが使用できる。
また、酸化物系では、酸化ビスマス(Bi)、鉛酸ビスマス(BiPb)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V13)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)等が使用できる。尚、これらを混合して用いることも可能である。好ましくは、コバルト酸リチウムが使用できる。
尚、上記の他にはセレン化ニオブ(NbSe)が使用できる。
負極30に使用する負極材としては、電池分野において負極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。またはその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミニウム、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合わせた合金を、負極材として用いることができる。
全固体電池の部材である固体状の電極材料(極材)においては、電子伝導性に加えてイオン伝導度を向上させるため、極材の粒子同士が密着し、粒子間の接合点や面を多く存在させ、イオン伝導パスをより多く確保することが重要である。そのため、電解質等のイオン伝導活物質を混合し、極材とする方法が用いられる。電解質として固体電解質層で使用する固体電解質を使用できる。この場合の固体電解質としては、ガラス状の固体電解質、結晶性の固体電解質の両者共使用できる。また、極材粒子間の隙間に生じる空間(単位体積における空間体積と極材粒子の体積の割合:空隙率)が少ない程、極材層が密に詰まっており、イオン伝導度は高くなる。
導電助剤として、電子が正極活物質内で円滑に移動するようにするために、電気的に導電性を有する物質を適宜添加してもよい。電気的に導電性を有する物質としては特に限定しないが、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブのような導電性物質又はポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロールのような導電性高分子を単独又は混合して用いることができる。
集電体40,42として、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又はこれらの合金等からなる板状体や箔状体等が使用できる。
電極は、上記極材(正極材又は負極材)を集電体の少なくとも一部に膜状に形成することで作製できる。製膜方法としては、例えば、ブラスト法、エアロゾルデポジション法、コールドスプレー法、スパッタリング法、気相成長法、溶射法、熱プレス、熱ロールプレス等が挙げられる。
固体二次電池は、上述した電池用部材を貼り合せ、接合することで製造できる。接合する方法としては、各部材を積層し、加圧、熱融着、圧着する方法や、2つのロール間を通して加圧、熱成形する方法(roll to roll)等がある。
また、接合面にイオン伝導性を有する活物質や、イオン伝導性を阻害しない接着物質を介して接合してもよい。
接合においては、固体電解質の結晶構造が変化しない範囲で加熱融着してもよい。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。
(製造例1)無機固体電解質の製造
無機固体電解質は、特開2008−21416号公報の方法に従って製造した。高純度硫化リチウム(LiS)0.2903g(0.00632モル)、三硫化二硼素(B)0.3204g(0.00272モル)、リン酸リチウム(LiPO)0.0787g(0.00068モル)を乳鉢でよく混合した後、ペレット化し、カーボンコートを施した石英ガラス管中に入れ、真空封入した。次に、縦型反応炉に入れ、4時間かけて800℃に昇温して、この温度で2時間溶融反応を行った。反応終了後、石英管を氷水中に投入し急冷した。石英管を開管し、得られた溶融反応物(硫化物系ガラス)の粉末試料についてX線回折を行ったところ、明瞭な回折線は観測されず、試料がガラス化していることが確認された。
(実施例1〜6、比較例1〜3)固体電解質シートの作製
上記製造例1で製造した無機固体電解質粉末9.5gと、下記表1に示す結着材0.5gに、下記表1に示す分散媒10gを加え、よく混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法によりポリテトラフルオロエチレン製の板上に塗膜(厚み)を形成した(塗布シートの作製)。
次いで、これを80℃にて30分間加熱し、分散媒を除去し、さらに300℃で2時間熱処理して、厚さ0.2mmの固体電解質シートを作製した。
表1中、分散媒としては次のものを用いた。
(分散媒)
フッ素系溶剤1:1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン
フッ素系溶剤2:C13OCH(商品名:ノベックHFE7300、住友スリーエム社製)
フッ素系溶剤3:COC(商品名:ノベックHFE7200、住友スリーエム社製)
フッ素系溶剤4:CFCFCHFCHFCF(商品名:Vertrel−XY、三井・デュポンフロロケミカル社製)
表1中、結着材としては、次のものを用いた。
(結着材)
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
ETFE:エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体
<塗布性及び塗布シートの均一性の評価>
実施例1〜6、比較例1〜3で調製したスラリーの塗膜の性状及び得られた塗布シートの性状を目視観察し、下記の評価基準で固体電解質用組成物の塗布性、及び塗布シートの均一性を評価した。評価結果を表1に示す。
◎:スラリーは均一で流動性もよく、塗膜に均一性が保たれ、塗布シートも均一性が保たれている。
○:スラリーは一見均一に見えるが、塗膜形成時に分散物の広がりに一部偏りが見られ、塗布シートの均一性にやや劣る。
△:スラリーは一部不均一で、塗膜にも均一性がなく、塗布シートの均一に劣っている。
<固体電解質シートの緻密性>
実施例1〜6、比較例1〜3で製造した固体電解質シートの緻密性を目視観察し、下記の評価基準で固体電解質シートの緻密性を評価した。評価結果を表1に示す。
◎:表面の緻密さが優れており、シート全体が均質であり、割れ等はない。
○:表面の緻密さが一様で、シート全体が均質であり、割れ等はない。
△:割れはないが、表面の緻密さの様子が一部不均一である。
×:一部に割れが見られる。
Figure 2010146823
表1より、分散媒としてフッ素系溶剤を用いた実施例1〜6の固体電解質シート用組成物(スラリー)は均一で流動性に優れ、得られる塗膜も均一性に優れていた(塗布性に優れている)。また、実施例1〜6の固体電解質シート用組成物(スラリー)から得られる塗布シートも均一性に優れていた。さらに、塗布シートを加熱処理して得られる電解質シートは緻密性に優れていた。
一方、分散媒としてTHFを使用した場合(比較例1)、n−ヘプタンを使用した場合(比較例2)及び塩化メチレンを使用した場合(比較例3)は、実施例1〜6のものに比して、塗布性、塗布シートの均一性、及び固体電解質シートの緻密性のいずれも劣っていた。
本発明の固体電解質シート用組成物は均一性に優れるので、これを用いることにより、均一で加工性に優れる固体電解質シートを効率よく得ることができる。得られる本発明の固体電解質シートは、携帯電話、パソコン、自動車用の二次電池の固体電解質として使用することができる。特に、高容量、高出力を要求される自動車用二次電池の固体電解質として有用である。
本発明の固体二次電池の層構成断面図である。
符号の説明
1・・・固体二次電池
10・・・正極
20・・・固体電解質層
30・・・負極
40、42・・・集電体

Claims (7)

  1. 固体電解質及び結着材を、フッ素系溶剤を含有する分散媒中に分散させてなる固体電解質シート用組成物。
  2. 前記フッ素系溶剤が、沸点が70℃以上100℃以下のフッ素系溶剤である請求項1に記載の固体電解質シート用組成物。
  3. 前記フッ素系溶剤が、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンまたは1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロシクロペンタンである請求項1に記載の固体電解質シート用組成物。
  4. 前記結着材が、含フッ素化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質シート用組成物。
  5. 前記固体電解質の配合量が、固形分全体に対して、通常80〜99重量%、前記結着材の配合量が、固形分全体に対して、通常1〜20重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の固体電解質シート用組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の固体電解質シート用組成物をシート基材上に塗工し、熱処理して得られる固体電解質シート。
  7. 正極と、負極と、前記正極及び負極間に挟持された固体電解質層とを有し、前記固体電解質層が請求項6に記載の固体電解質シートから製造されたものである固体二次電池。
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