JP2008103229A - 固体電解質成形体の製造方法及びこれを用いる全固体電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】より簡便かつ効率的に、所望の形状に成形された固体電解質部材を製造する方法を提供する。
【解決手段】1種又は2種以上の固体電解質原料粉末と液状成分を含むスラリーを所望の形状を有する成形体とし、該成形体を熱処理する固体電解質成形体の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】1種又は2種以上の固体電解質原料粉末と液状成分を含むスラリーを所望の形状を有する成形体とし、該成形体を熱処理する固体電解質成形体の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、固体電解質成形体の製造方法及びそれを使用した全固体電池に関する。
近年、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いられる高性能リチウム電池等二次電池の需要が増加している。
使用される用途が広がるのに伴い、二次電池のさらなる安全性の向上及び高性能化が要求されている。
リチウム電池の安全性を確保する方法としては、有機溶媒電解質に代えて無機固体電解質を用いることが有効である。リチウムイオン伝導性固体電解質はイオン伝導度が高いことが知られており(例えば、特許文献1を参照)、全固体電池等に採用されている。
使用される用途が広がるのに伴い、二次電池のさらなる安全性の向上及び高性能化が要求されている。
リチウム電池の安全性を確保する方法としては、有機溶媒電解質に代えて無機固体電解質を用いることが有効である。リチウムイオン伝導性固体電解質はイオン伝導度が高いことが知られており(例えば、特許文献1を参照)、全固体電池等に採用されている。
二次電池で使用する固体電解質部材の製造方法は、粉末状の固体電解質を製造後、シート状等の形状物に成形するというものであった。この場合、固体電解質の製造工程と、それを所望の形状に成形する工程とが必要となる。このように、従来の固体電解質部材の製造は複雑であり、時間のかかるものであった(例えば、特許文献2を参照)。
即ち、従来、固体電解質部材を製造するためには、先ず、溶融急冷法、メカニカルミリング法(MM法)等によって硫化物ガラス(ガラス状固体電解質)粉末を製造する必要があった。
溶融急冷法では、P2S5とLi2Sとを所定量乳鉢にて混合し、ペレット状にしたものをカーボンコートした石英管中に入れ真空封入し、一定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、硫化物ガラス(ガラス状固体電解質)粉末を得る。MM法では、P2S5とLi2Sを所定の割合で混合し、Li2Sが完全に消失するまで反応させて硫化物ガラス(ガラス状固体電解質)粉末としなければならなかった。これらの方法では、固体電解質を得るだけでも時間と手間がかかっていた。
溶融急冷法では、P2S5とLi2Sとを所定量乳鉢にて混合し、ペレット状にしたものをカーボンコートした石英管中に入れ真空封入し、一定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、硫化物ガラス(ガラス状固体電解質)粉末を得る。MM法では、P2S5とLi2Sを所定の割合で混合し、Li2Sが完全に消失するまで反応させて硫化物ガラス(ガラス状固体電解質)粉末としなければならなかった。これらの方法では、固体電解質を得るだけでも時間と手間がかかっていた。
さらに、得られたガラス状固体電解質粉末、又はそれを熱処理して得た結晶成分を含有する固体電解質(ガラスセラミック)粉末をシート状等の所望の形状にするためには、固体電解質と溶媒やバインダー(結着材や高分子化合物等)を混合した溶液を塗布、塗工した後、溶媒を除去し成膜化したり、固体電解質自体や固体電解質とバインダー(結着材や高分子化合物等)や支持体(固体電解質層の強度を補強させたり、固体電解質自体の短絡を防ぐための材料や化合物等)を混合・組合せた電解質を加圧プレスすることで成膜していた。簡便な装置や室温条件下、固体電解質の状態を変化させない温度範囲で製膜できることから、ブラスト法やエアロゾルデポジション法が用いられていた。これらの製膜方法も煩雑であり、時間と手間のかかるものであった。
上記固体電解質部材の製造における問題点に鑑み、本発明は、より簡便かつ効率的に、所望の形状に成形された固体電解質部材を製造する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意研究を行い、電池部材或いは電池部材の原料を所望の形状を有する成形体に形成した後、この成形体を熱処理して固体電解質からなる電池部材(固体電解質成形体)とすれば、簡便かつ効率的に電池部材(固体電解質成形体)を製造できることを見出した。即ち、この方法によれば、固体電解質の製造と所望の形状を有する電池部材(固体電解質成形体)の製造を同一の場で行うことができ、効率的な製造が達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記の固体電解質成形体の製造方法及びそれを用いた全固体電池を提供する。
1.1種又は2種以上の固体電解質原料粉末と液状成分を含むスラリーを所望の形状を有する成形体とし、該成形体を熱処理する固体電解質成形体の製造方法。
2.前記液状成分を除去した後の成形体を、製造される成形体を構成する固体電解質のガラス転移点以上の温度で熱処理する上記1に記載の固体電解質成形体の製造方法。
3.前記成形体を構成する固体電解質のガラス転移点以上の温度で熱処理した後の成形体を、急冷する上記2に記載の固体電解質成形体の製造方法。
4.前記急冷後の成形体を、さらに固体電解質の結晶化温度以上の温度で熱処理する上記3に記載の固体電解質成形体の製造方法。
5.前記成形体の形状がシートである上記1〜4のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
6.前記固体電解質原料粉末が、Li2S粉末と、P2S5、B2S3、GeS2及びSiS2からなる群から選択される1種以上の粉末の混合物である上記1〜5のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
7.前記固体電解質原料粉末が、リチウム及び硫黄と、P、B、Ge及びSiからなる群から選択される1種以上の粉末の混合物である上記1〜5のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
8.上記1〜7のいずれかに記載の製造方法で製造した固体電解質成形体を電池部材として用いる全固体電池。
1.1種又は2種以上の固体電解質原料粉末と液状成分を含むスラリーを所望の形状を有する成形体とし、該成形体を熱処理する固体電解質成形体の製造方法。
2.前記液状成分を除去した後の成形体を、製造される成形体を構成する固体電解質のガラス転移点以上の温度で熱処理する上記1に記載の固体電解質成形体の製造方法。
3.前記成形体を構成する固体電解質のガラス転移点以上の温度で熱処理した後の成形体を、急冷する上記2に記載の固体電解質成形体の製造方法。
4.前記急冷後の成形体を、さらに固体電解質の結晶化温度以上の温度で熱処理する上記3に記載の固体電解質成形体の製造方法。
5.前記成形体の形状がシートである上記1〜4のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
6.前記固体電解質原料粉末が、Li2S粉末と、P2S5、B2S3、GeS2及びSiS2からなる群から選択される1種以上の粉末の混合物である上記1〜5のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
7.前記固体電解質原料粉末が、リチウム及び硫黄と、P、B、Ge及びSiからなる群から選択される1種以上の粉末の混合物である上記1〜5のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
8.上記1〜7のいずれかに記載の製造方法で製造した固体電解質成形体を電池部材として用いる全固体電池。
本発明によれば、簡便かつ効率的に電池部材(固体電解質成形体)を製造できる。即ち、本発明によれば、固体電解質の製造と所望の形状を有する電池部材(固体電解質成形体)の製造を同一の場で行うことができ、効率的な製造が達成できる。
本発明によれば、簡便かつ効率的に全固体電池を製造することが可能となる。
本発明によれば、簡便かつ効率的に全固体電池を製造することが可能となる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の固体電解質成形体の製造方法(以下、本発明の製造方法という)は、1種又は2種以上の固体電解質原料粉末を含むスラリーを所望の形状を有する成形体とし、該成形体から液状成分を除去した後、熱処理することを特徴とする。
上記のようにして固体電解質成形体を形成することにより、固体電解質を得る工程と、固体電解質成形体を得る工程とを同時に実施することができる。
本発明の固体電解質成形体の製造方法(以下、本発明の製造方法という)は、1種又は2種以上の固体電解質原料粉末を含むスラリーを所望の形状を有する成形体とし、該成形体から液状成分を除去した後、熱処理することを特徴とする。
上記のようにして固体電解質成形体を形成することにより、固体電解質を得る工程と、固体電解質成形体を得る工程とを同時に実施することができる。
本発明の製造方法で用いる固体電解質原料は、固体電解質原料として従来から用いられている原料物質の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
リチウムイオン伝導性固体電解質を構成するための原料物質は、特に限定されず、それぞれの元素の単体、有機化合物、無機化合物、あるいは有機・無機両化合物からなる材料を用いることができ、リチウムイオン電池分野で公知のものが使用できる。
特に、硫化物系の無機固体電解質は、イオン伝導度が他の無機化合物より高いことが知られており、特開平4−202024等に記載の無機固体電解質原料物質を使用できる。具体的には、Li2SとSiS2、GeS2、P2S5、B2S3の組合せから成る無機固体電解質原料又は、Li及びSとSi、Ge、P、Bの組合せから成る無機固体電解質原料に、適宜、Li3PO4やハロゲン、ハロゲン化合物を添加した無機固体電解質原料を用いることができる。
リチウムイオン伝導性固体電解質を構成するための原料物質は、特に限定されず、それぞれの元素の単体、有機化合物、無機化合物、あるいは有機・無機両化合物からなる材料を用いることができ、リチウムイオン電池分野で公知のものが使用できる。
特に、硫化物系の無機固体電解質は、イオン伝導度が他の無機化合物より高いことが知られており、特開平4−202024等に記載の無機固体電解質原料物質を使用できる。具体的には、Li2SとSiS2、GeS2、P2S5、B2S3の組合せから成る無機固体電解質原料又は、Li及びSとSi、Ge、P、Bの組合せから成る無機固体電解質原料に、適宜、Li3PO4やハロゲン、ハロゲン化合物を添加した無機固体電解質原料を用いることができる。
また、リチウムイオン伝導性が高いことから、Li2SとP2S5、又はLi2Sと単体燐及び単体硫黄、さらにはLi2S、P2S5、単体燐及び/又は単体硫黄からなるリチウムイオン伝導性無機固体電解質原料を使用することが好ましい。
本発明で用いる固体電解質原料物質は、具体的には、Li2Sと、P2S5、B2S3、GeS2、SiS2等からなる群から選択される1種以上とを用いることが好ましい。
また、固体電解質原料粉末が、リチウム及び硫黄と、P、B、Ge及びSiからなる群から選択される1種以上の粉末の混合物であることが好ましい。
本発明で用いる固体電解質原料物質は、具体的には、Li2Sと、P2S5、B2S3、GeS2、SiS2等からなる群から選択される1種以上とを用いることが好ましい。
また、固体電解質原料粉末が、リチウム及び硫黄と、P、B、Ge及びSiからなる群から選択される1種以上の粉末の混合物であることが好ましい。
リチウムイオン伝導性無機固体電解質を製造するためのLi2Sは、特に制限なく工業的に入手可能なものが使用できるが、高純度のものが好ましい。
好ましくは、Li2Sは、少なくとも硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり、かつN−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下であると、溶融急冷法やメカニカルミリング法で得られる固体電解質は、ガラス状電解質(完全非晶質)となる。即ち、硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%を越えると、得られる電解質は、最初から結晶化物のおそれがあり、この結晶化物のイオン伝導度は低い。さらに、この結晶化物について熱処理を施しても結晶化物には変化がなく、高イオン伝導度のリチウムイオン伝導性無機固体電解質を得ることはできない。
好ましくは、Li2Sは、少なくとも硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり、かつN−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%以下であると、溶融急冷法やメカニカルミリング法で得られる固体電解質は、ガラス状電解質(完全非晶質)となる。即ち、硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が0.15質量%を越えると、得られる電解質は、最初から結晶化物のおそれがあり、この結晶化物のイオン伝導度は低い。さらに、この結晶化物について熱処理を施しても結晶化物には変化がなく、高イオン伝導度のリチウムイオン伝導性無機固体電解質を得ることはできない。
P2S5は、工業的に製造され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。尚、P2S5に代えて、相当するモル比の単体リン(P)及び単体硫黄(S)を用いることもできる。単体リン(P)及び単体硫黄(S)は、工業的に生産され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。
固体電解質原料物質として、Li2Sと、P2S5、B2S3、GeS2及びSiS2からなる群から選択される1種以上の混合物を用いる場合、これらの混合モル比は、通常50:50〜80:20、好ましくは60:40〜75:25である。
Li2SとP2S5の混合物を用いる場合、特に好ましくは、Li2S:P2S5=68:32〜74:26(モル比)程度である。
Li2SとP2S5の混合物を用いる場合、特に好ましくは、Li2S:P2S5=68:32〜74:26(モル比)程度である。
これらの固体電解質原料の粉末をスラリーとするためには、これらの粉末の混合物に、溶媒、分散剤、バインダー等の液状成分等を添加し、混合均一化する。尚、固体電解質原料粉末には、液状の分散剤、バインダー等の他、粉末状の分散剤、バインダー等の固形成分を添加することもできる。このような固形成分は、後述する熱処理工程において揮発し、消失するため、固体電解質成形体中から除去される。
各固体電解質原料粉末は、溶媒等を添加する前に、予め個別に又は混合した後、ボールミル等で粉砕し、混合しておくことが好ましい。予め粉砕することにより、混合と微細化により焼成段階での原料間の反応促進の効果が得られる。例えば、厚さ10μm〜1mmのシート状の固体電解質成形体を得る場合には、予め原料粉末を微粉状にしておく必要がある。ここで、原料粉末の平均粒径は、通常10nm〜50μm、好ましくは30nm〜20μm、より好ましくは100nm〜10μmの範囲である。
各固体電解質原料粉末は、溶媒等を添加する前に、予め個別に又は混合した後、ボールミル等で粉砕し、混合しておくことが好ましい。予め粉砕することにより、混合と微細化により焼成段階での原料間の反応促進の効果が得られる。例えば、厚さ10μm〜1mmのシート状の固体電解質成形体を得る場合には、予め原料粉末を微粉状にしておく必要がある。ここで、原料粉末の平均粒径は、通常10nm〜50μm、好ましくは30nm〜20μm、より好ましくは100nm〜10μmの範囲である。
用いる溶媒は、固体電解質原料と反応しないものであれば特に限定されないが、例えば、脱水された炭化水素系溶媒が好ましい。溶媒の具体例としては、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン等が挙げられる。
分散剤は、固体電解質原料粉末を均一に分散させるために必要に応じて添加する。分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸、カルボン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられ、ポリカルボン酸が好ましい。その他、用いる添加剤としては、例えば、可塑剤として、フタル酸エステル、ステアリン酸エステル、アビエチン酸エステル、リン酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられ、フタル酸エステル、リン酸エステルが好ましい。
バインダーは、固体電解質原料粉末のスラリーをシート等の所望の形状に保持するために添加する。用いるバインダーとしては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸nブチル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸シクロヘキシル等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステル、ニトロセルロース、ポリエチレン、ポリブチラール、ポリビニルアルコール等が挙げられ、ポリアクリル酸エステルが好ましい。
分散剤は、固体電解質原料粉末を均一に分散させるために必要に応じて添加する。分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸、カルボン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられ、ポリカルボン酸が好ましい。その他、用いる添加剤としては、例えば、可塑剤として、フタル酸エステル、ステアリン酸エステル、アビエチン酸エステル、リン酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられ、フタル酸エステル、リン酸エステルが好ましい。
バインダーは、固体電解質原料粉末のスラリーをシート等の所望の形状に保持するために添加する。用いるバインダーとしては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸nブチル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸シクロヘキシル等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステル、ニトロセルロース、ポリエチレン、ポリブチラール、ポリビニルアルコール等が挙げられ、ポリアクリル酸エステルが好ましい。
上記のようにして得られたスラリーを用いて、目的とする電池部材に応じて所望の形状を有する成形体を得る。成形体の形状としては、ペレット状、シート状等が挙げられる。成形体の形状は、電池部材として加工せずに組み込める形状、或いは切断のみで組み込める形状が好ましい。
スラリーからシート状成形体を形成する方法としては、例えば、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳込み成型等を用いることができ、ドクターブレード法が好ましい。成形体がシート状である場合の厚さは目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、厚さを10μm〜1mmとすることができる。
スラリーからシート状成形体を形成する方法としては、例えば、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳込み成型等を用いることができ、ドクターブレード法が好ましい。成形体がシート状である場合の厚さは目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、厚さを10μm〜1mmとすることができる。
次に、上記スラリーの成形物からスラリーを製造するために用いた溶媒や添加剤を除去する。具体的には、例えば、ガス又は空気雰囲気下の炉内で徐々に昇温し、添加剤等を除去する。好ましくは、固体電解質成形体を露点−30℃の不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)中から徐々に温度を上げて、スラリー中の溶媒、添加剤等の液状成分等を除去する。これにより、固体電解質のイオン伝導性を低下させるおそれのある添加剤を除去することができる。
このときの熱処理は、製造される固体電解質のガラス転移点以下の温度で行う。熱処理する時間は、通常5分〜200時間、好ましくは1〜100時間、より好ましくは1〜50時間である。
このときの熱処理は、製造される固体電解質のガラス転移点以下の温度で行う。熱処理する時間は、通常5分〜200時間、好ましくは1〜100時間、より好ましくは1〜50時間である。
添加剤等の除去に続き、固体電解質原料の成形体を熱処理・急冷してガラス状固体電解質とする。このときの熱処理は、製造される成形体を構成する固体電解質のガラス転移点以上の温度で行うことが好ましい。ガラス転移点以上の温度で熱処理する時間は、通常0〜200時間、好ましくは0〜50時間、より好ましくは1分〜10時間である。
本発明の製造方法においては、上記添加剤等が除去された、固体電解質原料の成形体を、上記固体電解質のガラス転移点以上の温度で熱処理した後、急冷することが好ましい。具体的には、ガラス転移点以上の温度で一定時間熱処理された固体電解質成形体を、ガラス転移点以下の温度の、露点−30℃以下の、ガス又は空気、好ましくは露点−30℃以下の不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)を吹き付ける、又は水冷等によって冷却したロールに接触させることでガラス転移点以下まで急冷することにより、硫化物ガラス(ガラスシート)を得る。その冷却速度は通常0.1〜100000K/sec程度、好ましくは1〜1000K/secである。
このようにして得られたガラス状固体電解質のイオン伝導度は、通常1.0×10−5〜8.0×10−4(S/cm)程度である。
このようにして得られたガラス状固体電解質のイオン伝導度は、通常1.0×10−5〜8.0×10−4(S/cm)程度である。
本発明の製造方法においては、さらに、上記で急冷したガラス状固体電解質(硫化物ガラス)成形体を、再度熱処理し、結晶成分を含有する固体電解質(ガラスセラミック)成形体としてもよい。これにより、さらにイオン伝導度の向上効果が得られる。
本発明の製造方法においては、ガラス状固体電解質成形体の熱処理は、固体電解質の結晶化温度以上の温度、例えば、300℃、2時間程度が好ましいが、一般に次のような条件で行うことができる。
結晶成分を含有する固体電解質(ガラスセラミック)成形体を生成させる熱処理温度は、好ましくは190℃〜340℃、より好ましくは195℃〜335℃、特に好ましくは200℃〜330℃である。190℃より低いと高イオン伝導性の結晶が得られにくい場合があり、340℃より高いとイオン伝導性の低い結晶が生じるおそれがある。
熱処理時間は、190℃以上220℃以下の温度の場合は、3〜240時間が好ましく、特に4〜230時間が好ましい。また、220℃より高く340℃以下の温度の場合は、0.1〜240時間が好ましく、特に0.2〜235時間が好ましく、さらに0.3〜230時間が好ましい。熱処理時間が0.1時間より短いと、高イオン伝導性の結晶が得られにくい場合があり、240時間より長いと、イオン伝導性の低い結晶が生じるおそれがある。
結晶成分を含有する固体電解質(ガラスセラミック)成形体を生成させる熱処理温度は、好ましくは190℃〜340℃、より好ましくは195℃〜335℃、特に好ましくは200℃〜330℃である。190℃より低いと高イオン伝導性の結晶が得られにくい場合があり、340℃より高いとイオン伝導性の低い結晶が生じるおそれがある。
熱処理時間は、190℃以上220℃以下の温度の場合は、3〜240時間が好ましく、特に4〜230時間が好ましい。また、220℃より高く340℃以下の温度の場合は、0.1〜240時間が好ましく、特に0.2〜235時間が好ましく、さらに0.3〜230時間が好ましい。熱処理時間が0.1時間より短いと、高イオン伝導性の結晶が得られにくい場合があり、240時間より長いと、イオン伝導性の低い結晶が生じるおそれがある。
このようにして得られた、結晶成分を含有する固体電解質(ガラスセラミック)は、通常、イオン伝導度は、7.0×10−4〜5.0×10−3(S/cm)程度である。
この結晶成分を含有する固体電解質(ガラスセラミック)は、X線回折(CuKα:λ=1.5418Å)において、2θ=17.8±0.3deg,18.2±0.3deg,19.8±0.3deg,21.8±0.3deg,23.8±0.3deg,25.9±0.3deg,29.5±0.3deg,30.0±0.3degに回折ピークを有することが好ましい。このような結晶構造を有する固体電解質が、極めて高いリチウムイオン伝導性を有する。
この結晶成分を含有する固体電解質(ガラスセラミック)は、X線回折(CuKα:λ=1.5418Å)において、2θ=17.8±0.3deg,18.2±0.3deg,19.8±0.3deg,21.8±0.3deg,23.8±0.3deg,25.9±0.3deg,29.5±0.3deg,30.0±0.3degに回折ピークを有することが好ましい。このような結晶構造を有する固体電解質が、極めて高いリチウムイオン伝導性を有する。
本発明の全固体電池は、上記本発明の製造方法で製造された固体電解質成形体を電池部材として用いることを特徴とする。上記本発明の製造方法で製造された固体電解質成形体を電池部材として用いることにより、簡便かつ効率的に全固体電池を製造することができる。
上記本発明の製造方法で製造された固体電解質成形体をそのまま電池部材として使用することもできるし、例えば、シート状の固体電解質成形体の場合には、所望のサイズに切断したものを電池部材として使用することもできる。
全固体電池の基本的な構成を図1に示す、全固体電池1は、少なくとも固体電解質層20、正極10、負極30、集電体40,42から構成される。以下、各構成要素及び全固体電池の製造方法について説明する。
(i)固体電解質層の製造方法
本発明の全固体電池においては、本発明の製造方法で製造されたシート状の固体電解質成形体を固体電解質層用の電池部材として用いることができる。
本発明の全固体電池においては、本発明の製造方法で製造されたシート状の固体電解質成形体を固体電解質層用の電池部材として用いることができる。
(ii)集電体
本発明の全固体電池に用いられる集電体の材料は特に制限されず、電池分野において集電体材料として使用されているものが使用できる。具体的には、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又はこれらの合金等からなる板状体や箔状体等が挙げられる。
本発明の全固体電池に用いられる集電体の材料は特に制限されず、電池分野において集電体材料として使用されているものが使用できる。具体的には、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又はこれらの合金等からなる板状体や箔状体等が挙げられる。
(iii)正極材
本発明の全固体電池に用いられる正極材は特に制限されず、電池分野において正極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、硫化物系の正極活物質としては、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni3S2)等が挙げられ、TiS2が好ましい。
また、酸化物系の正極活物質としては、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)等が挙げられる。尚、これらを混合して用いることも可能である。これらのうち、コバルト酸リチウムが好ましい。また、上記の他、セレン化ニオブ(NbSe3)等も使用できる。
本発明の全固体電池に用いられる正極材は特に制限されず、電池分野において正極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、硫化物系の正極活物質としては、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni3S2)等が挙げられ、TiS2が好ましい。
また、酸化物系の正極活物質としては、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)等が挙げられる。尚、これらを混合して用いることも可能である。これらのうち、コバルト酸リチウムが好ましい。また、上記の他、セレン化ニオブ(NbSe3)等も使用できる。
(iv)負極材
本発明の全固体電池に用いられる負極材は特に制限されず、電池分野において負極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、炭素材料が挙げられ、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。又は、それらの混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合わせた合金を、負極材として用いることができる。
本発明の全固体電池に用いられる負極材は特に制限されず、電池分野において負極活物質として使用されているものが使用できる。例えば、炭素材料が挙げられ、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。又は、それらの混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合わせた合金を、負極材として用いることができる。
(v)イオン伝導活物質
全固体電池の部材である固体状の上記電極材料(極材)においては、電子伝導性に加えてイオン伝導度を向上させるため、極材の粒子同士が密着し、粒子間の接合点や面を多く存在させ、イオン伝導パスをより多く確保することが重要である。そのため、電解質等のイオン伝導活物質を混合し、極材とする方法が用いられる。電解質として固体電解質層の形成に使用する固体電解質を使用することができる。この場合、混合される固体電解質は、例えば、特開2004−348972号に記載された実施例1に従って製造した固体電解質粉末を用いることが好ましい。また、極材粒子間の隙間に生じる空間(単位体積における空間体積と極材粒子の体積の割合:空隙率)が少ない程、極材層が密に詰まっており、イオン伝導度は高くなる。
全固体電池の部材である固体状の上記電極材料(極材)においては、電子伝導性に加えてイオン伝導度を向上させるため、極材の粒子同士が密着し、粒子間の接合点や面を多く存在させ、イオン伝導パスをより多く確保することが重要である。そのため、電解質等のイオン伝導活物質を混合し、極材とする方法が用いられる。電解質として固体電解質層の形成に使用する固体電解質を使用することができる。この場合、混合される固体電解質は、例えば、特開2004−348972号に記載された実施例1に従って製造した固体電解質粉末を用いることが好ましい。また、極材粒子間の隙間に生じる空間(単位体積における空間体積と極材粒子の体積の割合:空隙率)が少ない程、極材層が密に詰まっており、イオン伝導度は高くなる。
(vi)導電助剤
正極には、導電助剤として、電子が正極活物質内で円滑に移動するようにするために、電気的に導電性を有す物質を適宜添加してもよい。電気的に導電性を有する物質としては特に制限はなく、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブのような導電性物質又はポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロールのような導電性高分子を単独又は混合して用いることができる。
正極には、導電助剤として、電子が正極活物質内で円滑に移動するようにするために、電気的に導電性を有す物質を適宜添加してもよい。電気的に導電性を有する物質としては特に制限はなく、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブのような導電性物質又はポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロールのような導電性高分子を単独又は混合して用いることができる。
(vii)電極層の製造方法
電極は、上記極材(正極材又は負極材)を集電体の少なくとも一部に膜状に形成することで作製できる。製膜方法としては、例えば、ブラスト法、エアロゾルデポジション法、コールドスプレー法、スパッタリング法、気相成長法又は溶射法等が挙げられる。このような方法により製膜することで、極材層の空隙率をより小さくすることができ、イオン伝導度を向上させることができる。
簡便な装置や室温条件下、電解質の結晶状態を変化させない温度範囲で製膜できることから、ブラスト法やエアロゾルデポジション法が好ましい。
電極は、上記極材(正極材又は負極材)を集電体の少なくとも一部に膜状に形成することで作製できる。製膜方法としては、例えば、ブラスト法、エアロゾルデポジション法、コールドスプレー法、スパッタリング法、気相成長法又は溶射法等が挙げられる。このような方法により製膜することで、極材層の空隙率をより小さくすることができ、イオン伝導度を向上させることができる。
簡便な装置や室温条件下、電解質の結晶状態を変化させない温度範囲で製膜できることから、ブラスト法やエアロゾルデポジション法が好ましい。
(viii)全固体電池の製造方法
全固体電池は、上述した電池用部材を貼り合せ、接合することで製造できる。接合する方法としては、各部材を積層し、加圧・圧着する方法や、2つのロール間を通して加圧する方法(roll to roll)等がある。
また、接合面にイオン伝導性を有する活物質や、イオン伝導性を阻害しない接着物質を介して接合してもよい。
接合においては、固体電解質の結晶構造が変化しない範囲で加熱融着してもよい。
全固体電池は、上述した電池用部材を貼り合せ、接合することで製造できる。接合する方法としては、各部材を積層し、加圧・圧着する方法や、2つのロール間を通して加圧する方法(roll to roll)等がある。
また、接合面にイオン伝導性を有する活物質や、イオン伝導性を阻害しない接着物質を介して接合してもよい。
接合においては、固体電解質の結晶構造が変化しない範囲で加熱融着してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
[製造例1]
(1)硫化リチウム(Li2S)の製造
撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。続いてこの反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した硫化水素の一部を脱硫化水素化した。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。脱硫化水素反応が終了後(約80分)反応を終了し、Li2Sを得た。
[製造例1]
(1)硫化リチウム(Li2S)の製造
撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。続いてこの反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した硫化水素の一部を脱硫化水素化した。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。脱硫化水素反応が終了後(約80分)反応を終了し、Li2Sを得た。
(2)硫化リチウムの精製
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP 100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP 100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP 100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP 100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
尚、亜硫酸リチウム(Li2SO3)、硫酸リチウム(Li2SO4)並びにチオ硫酸リチウム(Li2S2O3)の各硫黄酸化物、及びN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)の含有量は、イオンクロマトグラフ法により定量した。その結果、硫黄酸化物の総含有量は0.13質量%であり、LMABは0.07質量%であった。
実施例1:固体電解質成形体の製造
(1)スラリーの調製
Li2S 32.16g、P2S5 66.67gをジブチルベンジルフタレート 5gを加えたトルエン100mLとともにボールミルに仕込み、46時間混合した。さらに、バインダーとしてポリアクリル酸n−ブチルとポリアクリル酸イソブチルの混合物であるポリアクリル酸エステル30gを加え、さらに24時間混合した。
このスラリーに脱泡処理を行い、ドクターブレードによってPETフィルム上に厚さ500μmのシートを成形した。このシートを真空下80℃で12時間かけて乾燥させた。
(1)スラリーの調製
Li2S 32.16g、P2S5 66.67gをジブチルベンジルフタレート 5gを加えたトルエン100mLとともにボールミルに仕込み、46時間混合した。さらに、バインダーとしてポリアクリル酸n−ブチルとポリアクリル酸イソブチルの混合物であるポリアクリル酸エステル30gを加え、さらに24時間混合した。
このスラリーに脱泡処理を行い、ドクターブレードによってPETフィルム上に厚さ500μmのシートを成形した。このシートを真空下80℃で12時間かけて乾燥させた。
(2)添加剤等の除去
このシートを50mm角に切断し、表面をカーボンコートした石英板上に置き、露点−50℃以下の窒素雰囲気下で20℃/hで400℃まで昇温し、10時間保持して熱処理を行い、バインダーや添加剤を除去した。
このシートを50mm角に切断し、表面をカーボンコートした石英板上に置き、露点−50℃以下の窒素雰囲気下で20℃/hで400℃まで昇温し、10時間保持して熱処理を行い、バインダーや添加剤を除去した。
(3)ガラス状固体電解質成形体の製造
次に30分で880℃まで昇温し、5分間保持した後、室温の露点−50℃以下の窒素を吹きかけることで急冷した。焼成したシートは厚さ124μmで、X線回折測定の結果から非晶質であることがわかった。
次に30分で880℃まで昇温し、5分間保持した後、室温の露点−50℃以下の窒素を吹きかけることで急冷した。焼成したシートは厚さ124μmで、X線回折測定の結果から非晶質であることがわかった。
(4)結晶成分を含有する固体電解質成形体の製造
さらに、このシートを、再度表面をカーボンコートした石英板上に置き、露点−50℃以下の窒素雰囲気下で300℃で1時間熱処理を行った。熱処理したシートのX線回折測定の結果から結晶化が起きていることがわかった。
これらのシートにカーボン電極を付け、交流インピーダンス法により電気伝導度測定を行ったところ、室温でのイオン伝導度は、(3)で製造した非晶質のシートで1.1×10−4S/cm、(4)で製造した結晶化したシートで2.1×10−3S/cmであった。
さらに、このシートを、再度表面をカーボンコートした石英板上に置き、露点−50℃以下の窒素雰囲気下で300℃で1時間熱処理を行った。熱処理したシートのX線回折測定の結果から結晶化が起きていることがわかった。
これらのシートにカーボン電極を付け、交流インピーダンス法により電気伝導度測定を行ったところ、室温でのイオン伝導度は、(3)で製造した非晶質のシートで1.1×10−4S/cm、(4)で製造した結晶化したシートで2.1×10−3S/cmであった。
実施例2:全固体電池の製造
(1)正極/固体電解質層/負極ペレットの製造
負極を構成する負極材を、カーボングラファイト(TIMCAL製、SFG−15)と特開2004−348972号に記載された実施例1に従って製造した固体電解質粉末(ガラス状)とを質量比1:1で混合して製造した。正極を構成する正極材を、コバルト酸リチウムと特開2004−348972号に記載された実施例1に従って製造した固体電解質粉末(ガラス状)とを質量比が8:5で混合して製造した。そして、市販のペレット成形機を用い、負極材(10mg)、固体電解質である実施例1で得られたシート状ガラスセラミック(直径10mm)、正極材(20mg)を順次ペレット成形機の中に入れ、順次20t/cm2の圧力を掛け、正極、固体電解質層及び負極の三層のペレットを製造した。
(1)正極/固体電解質層/負極ペレットの製造
負極を構成する負極材を、カーボングラファイト(TIMCAL製、SFG−15)と特開2004−348972号に記載された実施例1に従って製造した固体電解質粉末(ガラス状)とを質量比1:1で混合して製造した。正極を構成する正極材を、コバルト酸リチウムと特開2004−348972号に記載された実施例1に従って製造した固体電解質粉末(ガラス状)とを質量比が8:5で混合して製造した。そして、市販のペレット成形機を用い、負極材(10mg)、固体電解質である実施例1で得られたシート状ガラスセラミック(直径10mm)、正極材(20mg)を順次ペレット成形機の中に入れ、順次20t/cm2の圧力を掛け、正極、固体電解質層及び負極の三層のペレットを製造した。
(2)全固体電池の製造
上記(1)で製造したペレットにステンレス製の集電体を取り付け、50μAの定電流で充放電させることにより、電池特性を調べたところ、初期充放電効率は87.5%であった。
上記(1)で製造したペレットにステンレス製の集電体を取り付け、50μAの定電流で充放電させることにより、電池特性を調べたところ、初期充放電効率は87.5%であった。
本発明によれば、固体電解質の製造と成形とを同時に行うことができるため、極めて簡便かつ効率的に電池部材を製造することができる。
本発明によれば、工業上有利に全固体電池を製造することができる。
本発明によれば、工業上有利に全固体電池を製造することができる。
1 全固体電池
10 正極
20 固体電解質層
30 負極
40,42 集電体
10 正極
20 固体電解質層
30 負極
40,42 集電体
Claims (8)
- 1種又は2種以上の固体電解質原料粉末と液状成分を含むスラリーを所望の形状を有する成形体とし、該成形体を熱処理する固体電解質成形体の製造方法。
- 前記液状成分を除去した後の成形体を、製造される成形体を構成する固体電解質のガラス転移点以上の温度で熱処理する請求項1に記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記成形体を構成する固体電解質のガラス転移点以上の温度で熱処理した後の成形体を、急冷する請求項2に記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記急冷後の成形体を、さらに固体電解質の結晶化温度以上の温度で熱処理する請求項3に記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記成形体の形状がシートである請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記固体電解質原料粉末が、Li2S粉末と、P2S5、B2S3、GeS2及びSiS2からなる群から選択される1種以上の粉末の混合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記固体電解質原料粉末が、リチウム及び硫黄と、P、B、Ge及びSiからなる群から選択される1種以上の粉末の混合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で製造した固体電解質成形体を電池部材として用いる全固体電池。
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