JP2014181348A - 溶射皮膜形成用複合粉末材料およびその製造方法、ならびに複合溶射皮膜 - Google Patents

溶射皮膜形成用複合粉末材料およびその製造方法、ならびに複合溶射皮膜 Download PDF

Info

Publication number
JP2014181348A
JP2014181348A JP2013054664A JP2013054664A JP2014181348A JP 2014181348 A JP2014181348 A JP 2014181348A JP 2013054664 A JP2013054664 A JP 2013054664A JP 2013054664 A JP2013054664 A JP 2013054664A JP 2014181348 A JP2014181348 A JP 2014181348A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
composite
powder
spray coating
boride
thermal spray
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013054664A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5843291B2 (ja
Inventor
Yoshio Harada
良夫 原田
Satoshi Harada
諭 原田
Shinya Kashiwabara
伸哉 柏原
Takanori Kimura
崇典 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tocalo Co Ltd
Original Assignee
Tocalo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tocalo Co Ltd filed Critical Tocalo Co Ltd
Priority to JP2013054664A priority Critical patent/JP5843291B2/ja
Publication of JP2014181348A publication Critical patent/JP2014181348A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5843291B2 publication Critical patent/JP5843291B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Coating By Spraying Or Casting (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)

Abstract

【課題】基材の表面に耐熱性や耐高温摩耗性などに優れた皮膜を形成するときに用いられる溶射皮膜形成用複合粉末材料とその製造方法、および多孔質複合溶射皮膜を提供する。
【解決手段】セラミック質の金属硼化物粉末、金属質の耐熱金属・合金粉末および有機高分子質の樹脂粉末との硼化物系サーメットの複合粒子からなることを特徴とする溶射皮膜形成用複合粉末材料とその製造方法、および該複合粉末材料を溶射して形成される複合溶射皮膜。前記金属硼化物粉末は粒径5〜60μmのTiB、ZrB、HfB、VB、TaB、NbB、W、NiB及びMoB等から選ばれる一種以上の粉末であり、前記耐熱金属・合金粉末は粒径5〜60μmのNi若しくはCr含有量が50質量%以下のNi−Cr合金であり、前記樹脂粉末は、粒径5〜60μmの熱硬化性樹脂若しくは、熱加塑性樹脂から選ばれる一種以上からなる。
【選択図】図2

Description

本発明は、溶射皮膜形成用複合粉末材料およびその製造方法、ならびに複合溶射皮膜に関し、特に、溶融ガラス塊成形用金型内表面被覆層などの形成に当たって有効な技術を提案する。以下、主として、本発明の代表的な適用分野である溶融ガラス塊成形用金型内表面に被覆層を形成する例に基づいて、本発明の構成について説明する。
図1は、一般的なガラスびん製造工程の概要を示したものである。ここで、図示の1は、溶融ガラス、2はガラス溶解炉、3は作業室、4はフィーダ一、5はオリフイス、7は溶融ガラス塊を示している。上記溶解炉2内の溶融ガラス1は、作業室3とフィーダー4において処理された後、切断機6によって適当な大きさのガラス塊7に切断される。その後、ファンネル8、スクープ9、トラフ10、デフレクター11と呼ばれる一連の樋形状の搬送部材を経て成形のための製びん用金型(溶融ガラス塊成形用金型)12に送り込まれ、所要のガラスびんが成形される。
ところで、前記溶融ガラス塊と接する成形用金型等の鋳鉄製基材の表面としては、次のような性質が求められる。
(1)溶融ガラスとの摩擦係数が小さく、滑り性が良好であること。
(2)耐高温摩耗性に優れ、初期の性能を長期間維持できること。
(3)汚れが付着しにくく、また溶融ガラスを汚染しないこと。
(4)保守点検が容易で再生が可能であること。
(5)経済的であること
特に、溶融ガラス塊の成形用金型については、摩擦抵抗が小さく、ガラス塊の該金型内への挿入が円滑にでき、かつ成形後のガラス塊の離型性に優れることが重要である。
このような要求に対し、従来、溶融ガラス塊と接する成形用金型の内表面や搬送部材には、黒鉛粉末(グラファイト粉末)と樹脂や乾性油からなる潤滑剤を塗布する方法で対処している。この従来方法は、操作が容易で、溶融ガラス塊の滑りも良好で、しかも、ガラスの品質にも悪影響を与えないなどの利点がある一方で、黒鉛粉末の消耗速度が大きく、頻繁に塗布する必要があるという欠点もある。さらに、この黒鉛粉末を含んだ潤滑剤は、短時間で油成分が焼失して飛散しやすい性質があることから、作業環境の悪化を招くのみならず、作業者に付着して不快感を与えるという欠点もあった。
この対策として、溶融ガラス塊と接する成形用金型(部材)をはじめ、搬送用部材やプランジャーなどの表面に、各種の表面処理膜を施工する提案がなされている。確かに、これらの提案は、無処理の基材に比較すると、かなり改善されている。例えば、
(1)特許文献1〜5には、成形用プランジャーの表面やガラス塊搬送部材の表面に、自溶合金、炭化物(Cr)や酸化物の粒子を用いたサーメット溶射皮膜を被覆する方法、特許文献6〜7には、溶融ガラス塊の供給用治具の表面に、窒化物や炭化物、酸化膜などを被覆形成する方法などが開示されている。
(2)また、特許文献8には、CVD法あるいはPVD法によるTiNやTiCN、TiB、SiCなどの薄膜を被覆する技術が開示されている。
(3)さらに、特許文献9には、板ガラスの成形用ロールに耐熱、耐食性合金の皮膜を被覆する方法が開示されている。
一方、発明者らも、溶融ガラス塊の樋状搬送部材の表面に炭化物サーメットの金属成分として、Mo、Ta、Wなどの炭化物生成自由エネルギーの小さい金属を添加した皮膜を提案(特許文献10)し、さらに、潤滑性に優れた黒鉛粒子の表面に、NiやW、Ti、Alなどの薄膜を被覆した粒子を用いた溶射皮膜被覆部材を提案(特許文献11)した。
また、溶融ガラス塊の成形用金型についても、その内表面に各種の表面処理皮膜を被覆する提案がある。例えば、特許文献12、13には、CuやAl、Crを主成分とし、残部がFeからなる金属質皮膜を金型内表面に被覆したものが開示され、特許文献14、15には、金型内表面にBNとコロイダルシリカを分散させた水溶液を塗布した後、これを乾燥して皮膜化する技術が開示され、さらに、特許文献16〜18では、金型内表面に炭化物や炭化物サーメット皮膜を被覆する技術が開示されている。
その後、発明者らは、溶融ガラス塊の成形用金型の内表面に被覆する離型性とその耐久性に優れた溶射皮膜として、金属硼化物と耐熱合金とからなるサーメット溶射皮膜を開発(特許文献19、20)した。
特開昭54−146818号公報 特開平2−111634号公報 特開平4−139032号公報 特開平3−290326号公報 特開平11−171562号公報 特開平2−102145号公報 特開昭63−297223号公報 特開平1−239029号公報 特開平3−137032号公報 特開2002−20126号公報 特開2002−20851号公報 特開平8−109460号公報 特開平8−120435号公報 特開2003−119049号公報 特開2003−119047号公報 特開昭62−158122号公報 特開平2−146133号公報 特開2002−178034号公報 特開2012−136395号公報 特開2012−136396号公報
前記従来技術のうち、例えば、金型内表面に黒鉛粉末を含有する潤滑剤を塗布したりする表面処理皮膜の場合、次のような問題があった。それは、黒鉛粉末を塗布した金型表面は、良好な潤滑性を示すと共に溶融ガラスと接触しても疵がつかないという利点がある一方で、潤滑剤が揮発しやすく、作業環境が汚染されやすいという欠点がある。しかも、塗布方法および塗布時期の判断などは、すべて熟練作業者の経験に頼っているため、作業の自動化、ロボット化などの無人化が難しいという問題もある。また、溶射法やCVD、PVDなどによる炭化物サーメット、酸化物、窒化物、耐熱合金などの従来の表面処理技術は、無処理の場合に比較すると、それなりの効果はみとめられるものの不十分であり、しばしば黒鉛粉末塗布技術との併用が必要になるという問題がある。
ところで、溶融ガラス塊の搬送用部材とガラス塊成形用金型とは、これらに求められる条件や特性が異なるため、本来は、それぞれの要求特性に合った表面処理を行なう必要があるところ、実際には、これらについての十分な検討は行なわれておらず、未解決のままである。
例えば、搬送用部材については、高温の溶融ガラス塊とその表面に形成されている表面処理皮膜との接触圧が小さくかつ接触時間も短いため、一般的には、皮膜の潤滑性能が重要な管理目標となる。
これに対し、成形用金型については、溶融ガラス塊との接触時間が長いために耐熱性や耐高温摩耗性が求められると共に、表面処理皮膜表面の微小な粗さや僅かな痕などがガラス表面に転写され易いため、皮膜表面の研削、研磨などの加工が容易な皮膜や素材を用いることが求められる。しかも、製びん処理のための成形用金型の入り口は狭く、ここを通過する溶融ガラス塊の潤滑性および成形後の製品の離型性も重要な調整因子であるが、これらの諸特性を備えた表面処理皮膜、特に、溶射皮膜は未だに開発されていないのが実情である。
なお、近年では、作業環境およびガラス成形品に対する安全意識が向上していることから有害物質の発生についての対策、検討も必要である。この点、従来の溶射皮膜は、クロム炭化物(Cr)やNi−Cr合金、自溶合金などの含Cr化合物やCr含有合金がよく使われているが、これらの皮膜成分は、高温環境下では酸化され、その一部が有害な6価クロムの化合物を生成する惧れがあるが、これらの課題についてもまた未解決のままである。
本発明の目的は、基材の表面に耐熱性や耐高温摩耗性などに優れた皮膜を形成するときに用いられる溶射皮膜形成用複合粉末材料とその製造方法、および該複合粉末材料を用いて形成できる複合溶射皮膜について提案することにある。
前記目的は、第1に、セラミック質の金属硼化物粉末、金属質の耐熱金属・合金粉末および有機高分子質のプラスチック粉末との硼化物系サーメットの複合粒子からなることを特徴とする溶射皮膜形成用複合粉末材料によって実現できる。
前記目的は、第2に、粒径:5〜60μmの金属硼化物粉末と粒径:5〜60μmの耐熱金属・合金粉末とをまず、造粒法または焼結粉砕法によってサーメット化させてなるサーメット混合体とし、その後、そのサーメット混合体に対して、粒径:1〜60μmのプラスチック粉末を添加して造粒することによって粒径10〜120μmの大きさで一体化した硼化物系サーメットの複合粒子とすることを特徴とする溶射皮膜形成用複合粉末材料の製造方法の採用によって実現できる。
前記目的は、第3に、請求項1〜7のいずれか1に記載の溶射皮膜形成用複合粉末材料を、大気プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、爆発溶射法のうちから選ばれるいずれか1の溶射法によって形成された、膜厚50〜1000μm、気孔率10〜45%の硼化物系サーメットの溶射皮膜からなることを特徴とする複合溶射皮膜の採用によって実現できる。
なお、本発明においては、前述の基本的な構成に加えて、さらに、
(1)前記金属硼化物粉末は、粒径5〜60μmのTiB、ZrB、HfB、VB、TaB、NbB、W、CrB、NiBおよびMoBら選ばれるいずれか一種以上からなること、
(2)前記耐熱金属・合金粉末は、粒径5〜60μmのNiもしくはCr含有量が50mass%以下のNi−Cr合金であること、
(3)前記プラスチック粉末は、粒径1〜60μmの熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂から選ばれる一種類以上からなること、
(4)前記複合粒子は、金属硼化物と耐熱金属・合金とが予め、金属硼化物:20〜90mass%、残部が耐熱金属・合金からなる混合比率のサーメット混合体を含むものであること、
(5)前記複合粒子は、金属硼化物と耐熱金属・合金とからなるサーメット混合体に対して、プラスチック粉末を容量で0.5〜10%の割合で添加して一体化させたものであること、
(6)一体化した前記複合粒子は、金属硼化物粉末と耐熱金属・合金粉末とを造粒法または焼結粉砕法によってサーメット化させてなるサーメット混合体に対して、プラスチック粉末を添加して造粒法によって粒径10〜120μmの大きさにて一体化した硼化物系サーメットの複合粒子であること、
(7)多孔質複合溶射皮膜は、該溶射皮膜の表面に対し、水、有機溶媒、オイルまたは粘稠な油脂類や流動性を有する高分子化合物から選ばれる1種以上の媒体に粒径lnm〜10μmのカーボン粒子を混合して得られるスラリーを吹き付け、浸漬あるいは塗布するなどして、まず、該多孔質複合溶射皮膜の開気孔部内にカーボン粒子を含浸処理し、その後、電気炉中で100℃〜550℃、1〜5時間の加熱処理を施こすることにより、カーボン質のみを該溶射皮膜の開気孔内部に充填すると同時に、必要に応じて該皮膜表面に残留させて膜状に被覆したものであること、
(9)Ni−Cr合金を含む前記硼化物系サーメットの多孔質溶射皮膜は、この皮膜の開気孔内のCrの少なくとも一部が炭化クロム化合物に変化していること、
などの構成にすることがより好ましい実施の形態になると考えられる。
本発明に係る溶射皮膜形成用複合粉末材料および複合溶射皮膜によれば、耐熱性や耐高温摩耗性に優れる他、溶融ガラス塊、成形用金型に適用した場合にはガラス塊との離型性に優れると共に金型寸法精度等の当初の金型特性を長期間にわたって維持できる他、品質の良いガラス成形製品の製造に大きく寄与する。
また、本発明に係るによれば、Ni−Cr合金を使用しても溶射皮膜成分からの有害な6価クロム化合物の発生がなく、安全かつ衛生的な作業環境を提供することができると共に、安全な製品を製造することができる。とくに、溶射皮膜の表面やその内部にプラスチック粉末が含まれることにより生成する空孔部や、プラスチック粉末の炭化物(燃焼残渣物)が適度な空孔の形成原因となるので、カーボン粒子の含浸−充填を容易に行なうことができる。従って、溶射皮膜の開気孔部にカーボン粒子を十分に含浸−充填することができ、前記6価クロム化合物の発生防止とともに、作業環境の改善に大きく寄与する。
溶融ガラス塊の搬送状況ならびに成形用金型への供給工程の概要を示すガラスびん製造工程の略線図である。 本発明の3成分含有溶射皮膜形成用複合粉末材料を製造するための工程とその粉末材料を用いて形成される多孔質複合溶射皮膜を被覆した金型の製造工程を示した図である。 開気孔部内にカーボン粒子を含浸処理する前後の硼化物系サーメットの粉末材料を溶射して形成した複合溶射皮膜の断面模式図である。(a)は含浸処理前、(b)は含浸処理後
従来技術が抱えている前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、発明者らは以下に説明する解決手段に想到したので、その構成の詳細について説明する。図2は、本発明の好適実施例として、例えば基材(溶融ガラス塊の成形用金型)の内表面に、3つの主要成分(金属硼化物、耐熱金属・合金、プラスチック)を含む硼化物系サーメットの複合粉末材料を溶射して形成した複合溶射皮膜を形成する工程を示したものである。
(1)溶射皮膜形成用複合粉末材料
本発明で用いる溶射皮膜形成用複合粉末材料は、セラミック質の金属硼化物粉末(A)、金属質の耐熱金属・合金の粉末(B)、有機高分子質のプラスチック粉末(C)の3成分によって構成される。
(A)金属硼化物粉(セラミック質):TiB、ZrB2、、HfB、VB、TaB、NbB、W、CrB、NiB、MoB(なお、硼化物の分子式は、製造条件によって変化するので絶対的なものではない。ここでは、市販品の表示に従ったものを記載した)
(B)耐熱金属・耐熱合金(金属質):
a.耐熱金属:金属Ni(単独または、Ni−Cr合金との混合使用も可)
b.耐熱合金:Crを50mass%未満含有するNi−Cr合金
(C)プラスチック(有機高分子質):
a.熱硬化性樹脂樹脂:フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂など
b.熱可塑性樹脂樹脂:ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネイトなど
溶射皮膜形成用複合粉末材料を構成している前記金属硼化物、耐熱金属・合金の粒径は、それぞれ5〜60μm、またプラスチックは1〜60μmの範囲のものが好適である。それは、金属硼化物、耐熱金属・合金の粒径が5μmより小さいと、溶射ガンへの供給が不連続となり、一方、60μmより大きい粒子では、3つの成分を混合して一体化した複合粒子に造粒した場合、粒径が大きくなり過ぎて、その取扱いが困難になるからである。因みに、複合粒子になった場合の好適な大きさは、粒径10〜120μm程度である。
(2)溶射皮膜形成用複合粉末材料の製造方法
そもそも前記の3成分(金属硼化物、耐熱金属・合金、プラスチック)は、それぞれの物理化学的性質だけでなく、溶射皮膜形成用複合粉末材料を製造するプロセスにおいて重要な役割を果す密度がかなり異なるものどうしである。従って、これらの異質な成分を単純に混合しただけでは、均一に混合した一体化した溶射皮膜形成用複合粉末材料とすることはできない。例えば、これらの各成分の代表的な密度を比較すると、下記のとおりであり、3成分間の種類はもとより、とくに金属硼化物においては、金属硼化物自体の種類によっても、密度に大きな相違が見られる。
(A)金属硼化物:TaB(12.38) W(11.0) ZrB(6.17) CrB(5.22)
(B)金属 :Cr(7.19) Ni(8.9)
(C)プラスチック:フェノール樹脂(1.21〜1.30) メラミン樹脂(1.48) エポキシ樹脂(1.10〜1.40) ポリイミド樹脂(1.43〜1.51) ポリエチレン樹脂(0.94〜0.96) アクリル樹脂(1.17〜1.20) ポリアミド樹脂(1.12〜1.14)
上記( )内の数字は密度(g/cm)を示す。
前記溶射皮膜形成用複合粉末材料の製造に当たっては、第一工程としてまず、金属硼化物と耐熱金属・合金からなる金属硼化物サーメット材料を製造する。次いで、第二工程として前記金属硼化物サーメット材料に対してプラスチック粉末を加えることによって、金属硼化物粉末−耐熱金属・合金粉末−プラスチックからなる3成分系の複合型の硼化物系サーメットからなる溶射粉末材料、即ち、溶射皮膜形成用複合粉末材料とする。
以下にその工程の詳細について説明する。
第一工程:所定の割合に調整した金属硼化物粉末と耐熱金属・合金粉末とをよく混合した後、高温の電気炉中(真空または不活性ガス中)で両者を900〜1200℃に加熱して焼結した後、これを取り出して冷却し、その後、粉砕して粒径5〜60μmの範囲になるように調整する。また、その他の方法としては、前記金属硼化物粉末と耐熱金属・合金粉末をビニル樹脂などの粘結剤を用い、両成分を粒径5〜60μmの範囲に調整する。本発明では、前者を焼結粉砕法、後者を造粒法と呼ぶ。
第二工程:第一工程で得られた金属硼化物と耐熱金属・合金とからなる金属硼化物サーメット材料に対して、ビニル樹脂などの粘結剤を用いて、粒径1〜60μmのプラスチック粉末を混合し、その混合物を100℃以上の温度で乾燥し、その後、粒径10〜120μmの範囲に調整し、3成分複合型が一体粒子となった硼化物系サーメットからなる溶射皮膜形成用複合粉末材料とする。
前記第一工程における金属硼化物と耐熱金属・合金との混合割合は、金属硼化物:20〜90mass%、耐熱金属・合金:80〜10mass%の範囲とする。これらの好ましい混合割合は、金属硼化物40〜60mass%、残部が耐熱金属・合金の場合である。本発明において、金属硼化物に着目し、上記の範囲に限定する理由は、この金属硼化物というのは硬くかつ耐高温摩耗性に優れる他、高温状態のガラス塊との反応性が小さいため融着現象を招くおそれが少ないこと、さらには、ガラス用金型に適用した場合に成形後のガラス製品との剥離性(離型性)に優れるものになるからである。
前記金属硼化物サーメット材料において、耐熱金属・合金の含有量が10mass%未満では、この耐熱金属・合金を添加する効果が十分でなく、一方、該金属硼化物の含有量が20mass%未満では、該金属硼化物が有する優れた耐熱性、高温安定性、耐高温摩耗性などの諸特性が十分に生かされなくなる。なお、溶射皮膜はサーメット化することにより、基材と該溶射皮膜との密着性が向上する。
次に、本発明において特徴的なプラスチック粉末の添加の作用効果について説明する。このプラスチック粉末の添加は、溶射熱源中における軟化、分解、燃焼反応に伴ってガスを発生して減容することに加え、とくに大きな粒子では溶射熱源中における被曝時間が非常に短い(1/500〜1/1000秒)こともあって、前記のような現象(軟化、分解、燃焼)が完全に終了しないままに溶射皮膜の一部となったり、プラスチックの状態を構成せずに炭化物の状態でサーメット溶射皮膜中に存在することになる。このようなプラスチック粉末の溶射熱源中や溶射皮膜中における挙動は、サーメット溶射粒子の相互融合現象を妨げることとなるので、粒子間融合の不足による空隙部の増加や、皮膜全体の空孔部の生成を増大させる。
発明者らの経験によると、金属硼化物サーメット材料にさらにプラスチック粉末を添加してなる本発明で用いる3成分含有溶射皮膜形成用複合粉末材料をプラズマ溶射して形成された溶射皮膜の気孔率は、2成分系の金属硼化物サーメット材料を溶射して形成した皮膜に比べて20〜60%程度多くなる。それは、粉末を利用して、多孔質な硼化物系サーメット溶射皮膜を形成し、その多孔質溶射皮膜内の空孔部に、後で述べるような方法によって、カーボン粒子を多量にかつ積極的に充填して、上述した特性を一段と向上させるとともに、その性能を長期間に亘って維持できるようにすることにある。
金属硼化物サーメット材料に添加されるプラスチック粉末は、1〜60μmの大きさのものを用いる。もし、この粉末の粒径が1μmより小さいと、溶射熱源中で完全に分解してガス化するため、プラスチック添加の作用と効果が減殺される。一方、この粉末が60μmより大きくなると、その大部分が溶射熱源中で不完全燃焼のまま溶射皮膜中に残留して、大きな空洞を多数生成し、皮膜全体の膜質、特に機械的強度を低下させるため好ましくない。また、このような性状の溶射皮膜の表面を研磨しても、平滑面を得ることは困難であり、溶融ガラス塊成形用金型の皮膜として適当でないからである。
金属硼化物サーメット材料に対し、粒径1〜60μmプラスチックの粉末を添加する場合、その量は容量(容積割合)で0.5〜10%の範囲がよく、特に3〜5%の範囲が好適である。その添加量が0.5%より少ないと、硼化物系サーメット溶射皮膜の気孔率が低く、一方、10%超添加すると気孔率が50%以上となって本発明の目的に使用できないし、溶射皮膜の機械的強度が低下する。従って、本発明では、3成分系の溶射皮膜形成用複合粉末材料を溶射して形成された硼化物系サーメットの多孔質溶射皮膜の気孔率は10〜45%の範囲とする。なお、この気孔率は、成膜後その断面部を研磨し、市販の画像解析装置によって空孔部の面積を求めて得られた値である。
(3)3成分からなる硼化系サーメットの溶射皮膜形成用複合粉末材料を用いて複合溶射皮膜を形成する方法
前述した硼化物系サーメットからなる複合溶射皮膜を被成する対象となる金型等の基材としては、鋳鉄や鋳鋼、炭素鋼、工具鋼、低合金鋼などの鋼鉄製のものが好適である。その他、Alおよびその合金、Tiおよびその合金、Mg合金などの非鉄金属をはじめ、セラミック焼結体や焼結炭素、粉末焼結材なども用いることができる
複合溶射皮膜を被成するための前記基材は、その表面を予めJIS H 9302に規定されたセラミック溶射皮膜作業標準に準拠して、脱脂や脱スケールによる清浄化処理を行ない、その後、A1やSiCなどの研削材粒子を吹き付けてブラスト粗面化処理を行なうことが好ましい。ブラスト処理後の表面粗さは、Ra:1〜10μm、Rz:5〜40μmの程度にすることが好ましい。
前記基材の表面には必要に応じてアンダーコートを形成する。そのアンダーコート形成用材料としては、基材との密着性と耐熱性を向上させる機能を優先して、Ni−AlやNi−Cr、Ni−Cr−Al、自溶合金(JISH8303)、M(NiまたはCo)−Cr−Al−X合金(ただし、Xは、Y、Ce、Laなどの希土類元素)などが好適である。アンダーコート層の膜厚としては50〜150μm程度の厚さにするのがよく、特に、50〜100μm程度の厚さにすることが好ましい。その理由は、膜厚が50μmより薄い場合はアンダーコートの機能が十分でなく、また、150μm以上の膜厚を形成しても、アンダーコートの効果が飽和して、生産コストの上昇を招くからである。
次に、前記基材の表面に、直接または前記アンダーコートを介して、トップコートとして本発明に係る3成分含有溶射皮膜形成用複合溶射皮膜を形成する。
即ち、基材の表面に、前記3成分含有硼化物系サーメットの溶射皮膜形成用複合粉末材料を溶射して硼化物系サーメットの多孔質な複合溶射皮膜を形成する。皮膜の形成方法としては、大気プラズマ溶射法や減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、爆発溶射法などを適用することできる。その他、溶射雰囲気ガスの温度を低くしたワームスプレー、コールドスプレーなどによっても成膜は可能である。これらの方法による棚化物系サーメットの多孔質な複合溶射皮膜は、基材内表面に直接形成してもよく、また、基材表面にアンダーコートを施工した後、トップコートとして前記硼化物系サーメットの多孔質複合溶射皮膜を被覆して積層してもよい。
硼化物系サーメットの複合溶射皮膜は、その厚さは、50〜1000μmの範囲がよく、特に100から300μmの厚さにすることが好ましい。その理由は、50μm未満の厚さでは、基材表面に均等な厚みで成膜することができないからであり、一方、1000μm超の厚さの溶射皮膜では、溶射時間が長くなるとともに、溶射材料使用量の増加に加え、カーボン粒子の含浸処理にも長時間がかかるなど、生産コストの上昇を招くからである。
なお、前記複合溶射皮膜は、金属・合金成分を10〜80mass%の割合で含ませているため、アンダーコートの施工は必須の条件ではないが、厚膜、例えば300μm以上の皮膜を形成する場合には、トップコートとの密着性を向上させることが望まれるので、できればアンダーコートを施工することが望ましい。
(4)硼化物系サーメットの多孔質複合溶射皮膜中へのカーボン粒子の含浸−充填処理
溶射法によって形成された上述した3成分からなる硼化物系サーメットの多孔質複合溶射皮膜には、通常、溶射皮膜特有の気孔が存在する。この溶射皮膜の気孔率は、溶射法や溶射条件によって変動するが、発明者らの知見によると、大体10〜45%(皮膜の断面を画像解析装置によって測定した面積率)程度である。
そこで、本発明では、硼化物系サーメットの多孔質な複合溶射皮膜中に存在する前記開気孔の割合が面積率にして10〜45%になるように形成し、その気孔内部に下記のカーボンの微粒子を含浸させて充填することにより、皮膜の品質の向上を図ることにした。
(5)多孔質複合溶射皮膜開気孔部中へのカーボン微粒子の含浸処理
硼化物系サーメットなどの多孔質複合溶射皮膜の開気孔部内へ注入するカーボン微粒子としては、次のような性状のものが推奨される。即ち、カーボンの種類としては、天然のグラファイト、石油や石炭などの化石燃料から得られるカーボン、植物油の燃焼、炭化処理によって得られる煤、高分子材料の焼成処理によって得られる炭素などが好適である。また、カーボンの微粒子の粒径としては、0.1nm〜10μm程度のものを用い、その微粉末を水スラリ、オイルスラリ状にして溶射皮膜に吹き付けたり、それらの中に溶射皮膜を浸漬することによって開気孔の内部へカーボンの粒子を供給して含浸させる。その他の供給方法としては、カーボンの粒子をグリースやワセリンなどの粘稠な油脂類中に混入し、これを多孔質複合溶射皮膜の表面に塗布することによっても含浸させることができる。なお、グリースやワセリンは含浸後の加熱工程において、それ自体が熱分解してカーボン源となってカーボン粒子の含浸効果を向上させる利点がある。
前記多孔質な複合溶射皮膜の開気孔中へのカーボン微粒子の含浸に際しては、環境を大気圧以下の減圧あるいは予め溶射皮膜を50〜150℃程度に加熱しておくと、グリースやワセリンの内部侵入が容易となるので好都合である。
次に、カーボンの微粒子を含浸させた複合溶射皮膜は、電気炉中で100℃〜550℃、1〜5時間程度加熱することによってスラリ中の水やオイルをはじめ有機溶媒などを蒸発・揮散させると共に、グリースやワセリンについては熱分解反応によって生じるカーボン成分のみが皮膜の開気孔部にカーボン微粒子と一緒に残留する。なお、1回の前記含浸(加熱)処理では該溶射皮膜の開気孔部にカーボン微粒子を十分に含浸充填できないこともあるので、このような場合は、前記カーボン微粒子の含浸と加熱操作を繰返し実施することによって、該カーボン微粒子の充填率を高めることができる。このような操作によって、カーボン微粒子は溶射皮膜の表面にも付着して残留することになるが、これらのカーボン微粒子も皮膜表面の平滑度を向上させると共に、溶融ガラス塊との摩擦抵抗を下げ、成形後のガラス製品の剥離を容易にするという重要な役割を担う。このような処理を終えた溶射皮膜を、以下、カーボン粒子充填構造の複合溶射皮膜(気孔率:約10〜45%)という。
なお、カーボン微粒子の含浸−充填処理をする時に100℃〜550℃に加熱する操作は、溶射熱源中で未完全燃焼の状態で溶射皮膜中に残留するプラスチック粉末を完全に分解・ガス化したり、炭化状態にしてプラスチック粉末の原形を消滅させ、その消滅部が気孔部となって、該カーボン微粒子を含浸させる基点をつくる効果がある。
図3は、開気孔部内にカーボン微粒子を含浸させて充填した後、加熱して焼成する前後の複合溶射皮膜の断面模式図を示したものである。図3(a)は、溶射直後の金属硼化物粉末−耐熱金属・合金粉末−プラスチック粉末の3つを構成成分とする多孔質複合溶射皮膜の断面を示したもので、基材31の表面に金属質のアンダーコート32を施工し、その上にトップコートとして金属硼化物と耐熱合金とプラスチックとからなる硼化物系サーメット溶射粉末材料を溶射して堆積させた積層状態の複合溶射皮膜33を形成した例を示している。
前記硼化物系サーメットの溶射皮膜形成用複合粉末材料の構成成分であるプラスチック粉末の大部分は、高温の溶射熱源中を通過する際に、分解してガス状物質となって気散するので、皮膜中に粉末として残留するものは非常に少ない。ただ、熱源の中心部から外れた粉末や比較的大きな粉末は、未完全な燃焼状態で皮膜中に丸い粒子形状の痕跡を残すようにして残留するものがある。しかし、これらの粉末は炭化状態で存在するので、カーボン微粒子の含浸処理時には、油脂類を吸着しやすく好適な状態で体積の比較的大きい気孔を形成する。一方、金属硼化物と耐熱合金などの粒子は、溶射熱源中で強熱されても軟化現象を示しつつ、アンダーコートの表面に衝突し、溶射皮膜の主成分として、恰も硼化物サーメット粒子のみを溶射したような状態で皮膜を形成することとなる。
ただ、硼化物は高融点のものが多く(例えばZrB 3250℃、CrB 2200℃)、その上、高温環境に被曝されても。金属のように軟化したり流動現象を示すことがないので、プラズマ熱源で溶射された場合でも、硼化物粒子は不完全溶融状態でアンダーコート面に吹き付けられるため、積層粒子同士の融合化が十分でなく、大小様μな空隙が形成され、これが皮膜の気孔源となっているがその形状は一般に細長い樹枝状であり、球状を示すことはない。なお、34は閉気孔、35は開気孔、36は貫通気孔部を模式的に示したものである。
一般に、金属硼化物は高融点のものが多く(例えば、ZrB:3250℃、CrB:2200℃)、その上、高温環境に被曝されても金属のように軟化したり流動現象を示すことがないので、プラズマ熱源で溶射された場合でも硼化物の粒子は不完全溶融状態でアンダーコート面または基材面に吹き付けることができる。従って、この場合、積層粒子同士の融合化が不十分になるため、どうしても大小様μな空隙が生成し、これがこの溶射皮膜の気孔源となっているが、その形状は一般に細長い樹脂状であり、球状を示すことはない。
一方、図3(b)はカーボン微粒子を含浸処理した後の複合溶射皮膜の断面模式図を示したものである。該溶射皮膜は、硼化物系サーメット粒子どうしの融合が十分でない部分が空隙部となって存在する開気孔35内および貫通孔36に、カーボン微粒子を含浸させて充填した部分36´(黒色部)、さらに、その充填部分の先端部は溶射皮膜の表面にまで露出して被覆したようなカーボン粒子層37の状態となっている。しかも、このカーボン微粒子は溶射皮膜表面にも堆積状態で形成されるので、溶射皮膜の全体にわたり、表面はもとより、皮膜内部の空隙部や気孔部は全てカーボンは溶射皮膜表面にも固着状態で形成されるので、カーボンの微粒子によって充填・被覆される。
従って、このようなカーボン微粒子の露出部は、皮膜表面の全体に斑点状もしくは膜状となって分布しているので、溶融ガラス塊の成形時、カーボン微粒子が露出した部分を有する硼化物系サーメット溶射皮膜の表面に溶融ガラスが接触すると、該溶融ガラスは金属硼化物−耐熱合金に加え、前記カーボン粒子露出部とも同時に接触し、溶融ガラスの流動性を高めると共に、成形後のガラス製品の離形を促進する作用を発揮する。なお、該カーボン微粒子の含浸処理時、溶射皮膜の表面に対してカーボン粒子が膜状となって形成(被覆)されるので、この膜状のカーボン微粒子堆積層38も溶融ガラス塊の成形に対し有用な働きを行う。
(6)溶射皮膜表面の研削・研磨方法
カーボン微粒子を含浸させた硼化物系サーメットの複合溶射皮膜は、その表面を機械加工によって研削・研磨加工を施すことが好ましい。カーボン微粒子を含浸させた溶射皮膜の表面は、Ra:5〜10μm程度、Rz:15〜25μm程度と非常に粗く、このままではガラスの成形面にその粗さがそのまま直接転写され、品質低下の原因となる。そこで本発明では、Ra:5μm未満程度、Rz:15μm未満程度の平滑面に仕上げることが好ましい。なお、溶射皮膜の表面を研削・研磨すると、前記カーボン微粒子の含浸処理時には閉気孔として存在していた気孔部が開気孔に変化するものがある。このため、研磨後の溶射皮膜は再度カーボン粒子の含浸充填処理を繰返すことが推奨される。
前記多孔質複合溶射皮膜の表面粗さをRa≦5μmにする理由は、溶融ガラス塊との接触抵抗を小さくするとともに、平滑なガラス成形面を確保するためであり、一方、Rz<15μmにする理由は、ガラス成形面に溶射皮膜の荒さが転写して、不良品発生の原因となる倶れがあるからである。
(7)カーボン粒子充填構造を有する硼化物系サーメットを用いた複合溶射皮膜の特徴
多孔質複合溶射皮膜の開気孔中にカーボン微粒子を含浸させて得られるカーボン粒子充填構造を有する複合溶射皮膜については、この皮膜表面に少なくともカーボンの一部が露出状態で存在しているため、例えば、成形用溶融ガラスと直接接触しても、優れた潤滑性と離型性とを発揮することになる。加えて、溶射皮膜の表面を被覆したり、開気孔内に充填されているカーボン微粒子と接触する皮膜成分の耐熱合金粒子(Cr)とが反応することで、カーボンと同等の潤滑性および離型性を有する無害なクロム炭化物を合金粒子の表面に生成させる効果もある。
即ち、溶射皮膜の開気孔内のカーボン微粒子は、含浸させるための加熱・焼成時および高温の溶融ガラス塊と接触する時、溶射皮膜内では、カーボン微粒子とサーメット成分として添加されているNi−Cr合金粒子のCr成分が互いに反応して、クロム炭化物(Cr、Cr23)を生成して合金粒子の表面を完全に被覆することとなる。そのため、溶融ガラスとの強い結合力を有する金属Cr成分の作用によって、頻発する狭い形状を有する成形用金型の入口部におけるガラス塊の通過障害を抑制し、ガラスと接触する溶射皮膜の表面では、潤滑性と離型性に優れる金属硼化物、クロム炭化物、カーボン粒子のみの皮膜となる。しかも、より特徴的なことは、本発明に係るカーボン粒子充填−被覆構造を有する硼化物系サーメット溶射皮膜を用いると、作業環境汚染物質となる6価クロムの発生を防止する上で有効な金型内表面処理を行なうことができる。
(実施例1)
この実施例では、金属硼化物と耐熱合金とからなる金属硼化物サーメット材料に添加するプラスチック粉末の添加量を変化させた溶射皮膜形成用複合粉末材料を用いて形成した多孔質複合溶射皮膜の気孔率とその気孔部にカーボン粒子を含浸させた複合溶射皮膜の溶融ガラス塊との剥離性を調査した。
(1)供試基材:供試基材としてSUS410鋼(寸法:幅50mm×長さ70mm×厚さ3.2mm)を試験片とした。
(2)供試皮膜:金属硼化物としてMoBを用いこれにNi−20mass%Cr耐熱合金粉末を質量で50%含むサーメット粉末材料にポリエチレン粉末を容量で0.5〜20%の割合いで変化させた三成分系の溶射皮膜形成用複合粉末材料を調整した後、大気プラズマ溶射法によって、基材の片面に150μm厚さの溶射皮膜を形成した。
(3)溶射皮膜の気孔率測定:供試皮膜の気孔率は皮膜の断面を平滑に研磨した後、任意の3カ所について、画像解析装置を用い、観察視野の面積に占める気孔部面積の割合を算出した。
(4)カーボン微粒子の含浸処理:すべての供試皮膜について、オイルスラリ状のカーボン粒子の含浸処理を5回繰返し実施した。
(5)溶融ガラス塊の圧着試験:溶融ガラスとの密着性試験方法:供試皮膜の表面に1200℃の溶融ガラス塊を圧着させた後、室温まで放冷し、皮膜表面に固着したガラス塊を木製のハンマーによって叩き落とすことによって、ガラス塊の密着性を定性的に調べた。
(6)試験結果:試験結果を表1に要約した。この結果から明らかなように溶射皮膜の気孔率はプラスチック粉末の添加率が多くなるほど高くなるとともに気孔そのものの寸法も大きくなる傾向が見られた。具体的にはプラスチック粉末を添加しない金属硼化物と耐熱合金から成る皮膜(No.l)の気孔率は8〜10%程度で、そのすべての気孔は、硼化物粒子と合金粒子との融合不良に伴う比較的幅の狭い隙間形状を示しているのに対し、プラスチック粉末を添加した皮膜(No.2〜7)では、隙間形状に加え、丸い形状の気孔部が増加して気孔率を向上させていることが確認された。その一方でプラスチック粉末を15〜20%添加した皮膜(No.6、7)では、気孔が過多となって、溶射皮膜を形成している硼化物粒子と合金粒子の相互結合力が十分でなく、皮膜としての強度も弱くなっている傾向が見られた。また、供試皮膜の溶融ガラス塊との離形性はすべて良好であったが、プラスチック粉末を多量に添加した皮膜(No.6、7)では、気孔部面積の過大による皮膜表面の平滑性の低下によって、ガラス塊の表面性状が悪くなっていることが認められ実用性に欠ける傾向が顕著であった。
Figure 2014181348
(実施例2)
この実施例では、金属硼化物、耐熱合金およびプラスチックの3成分からなるサーメット溶射皮膜の密着性を熱衝撃試験法により調査した。
(1)供試基材:供試基材として、SUS410鋼(寸法:幅50mm×長さ50mm×厚さ3.9mm)を用いた。
(2)溶射材料:金属硼化物として、CrB、MoB、ZrBを用い、それぞれの金属硼化物粒子に、NiまたはNi−20mass%Cr合金を50mass%配合してなる金属硼化物サーメット材料を準備し、このサーメット材料に粒径2〜10μmのポリエチレンを容量で3%の割合で添加した硼化物系サーメットの溶射皮膜形成用複合粉末材料を調整した。そして、この硼化物系サーメットの溶射皮膜形成用複合皮膜形成用複合粉末材料を大気プラズマ溶射法によって基材の片面に溶射して150μm厚さの溶射皮膜を形成した。また、比較例の溶射皮膜として、金属硼化物サーメット材料のみの溶射皮膜とNi−Cr合金のみの溶射皮膜を大気プラズマ溶射法によってそれぞれ150μm厚さに形成した。
(3)カーボン微粒子の含浸:すべての供試溶射皮膜に対し、本発明に係るオイルスラリ状のカーボン微粒子の含浸処理を行ない、含浸処理をしない供試皮膜との耐熱衝撃性を比較した。
(4)試験方法:上記溶射皮膜被覆試験片を、電気炉中で650℃×15分間加熱した後、これを炉外に取り出し、送風機の空気を流しながら、80℃以下の温度に冷却させる操作を1サイクルとし、合計10サイクルの試験を繰り返した。なお、1サイクルの試験毎に、溶射皮膜の表面を拡大鏡(×8)によって観察し、“ひび割れ”や局部剥離の有無を調べた。
(5)試験結果:試験結果を表2に示した。この試験結果から明らかなように、金属硼化物サーメット材料にプラスチック粉末を添加した本発明に適合す3成分系の硼化物系サーメット溶射皮膜形成用複合粉末材料を用いて形成した溶射皮膜(No.l、5、9)は、カーボン微粒子の含浸の有無に拘らず、優れた密着性を示した。即ち、一般的に広く利用されている比較例のサーメット溶射皮膜(No.2〜4、6〜8、10〜12)および金属皮膜(No.13、14)と比べると、同等の耐熱衝撃性を示し、昇温・降温が繰り返し行われる環境下において優れた密着性を発揮することが確認できた。
Figure 2014181348
(実施例3)
この実施例では、金属硼化物、Ni、Ni−Cr耐熱合金、プラスチックの3成分を含有する硼化物系サーメットの溶射皮膜形成用複合粉末材料のNi、Ni−Cr耐熱合金中のCr含有量の相違による6価クロム化合物生成の有無と溶融ガラス塊との密着性について調査した。
(1)供試基材:実施例1と同じ基材を用いた。
(2)溶射材料:金属硼化物としてMoBを用い、これに添加するNi−Cr耐熱合金中のCr含有量を5〜55.5mass%の範囲で変化させた合金を用いて、金属硼化物サーメット材料を調製した後、粒径10〜30μmのポリエチン粉末を容量で5%添加し3成分系の溶射皮膜形成用複合粉末材料をつくり、これを大気プラズマ溶射法によって、膜厚150μmの複合溶射皮膜とした。なお、金属硼化物と耐熱合金成分との割合は、50/50(mass%)とした。
(3)6価クロムの生成試験:この試験は、供試溶射皮膜を、電気炉中で980℃、100時間加熱した後、溶射皮膜表面に生成している金属酸化物を採取し、化学分析によって、酸化物中に含まれている6価クロム化合物の有無を定性的に調べた。
(4)溶融ガラスとの密着性試験方法:供試皮膜の表面に1200℃の溶融ガラス塊を圧着させた後、室温まで放冷し、皮膜表面に固着したガラス塊を木製のハンマーによって叩き落とすことによって、ガラス塊の密着性を定性的に調べた。
(5)試験結果:試験結果を表3に示した。この結果から明らかなように、Ni−Cr合金中のCr含有量が増加するほど、6価クロム化合物を生成する傾向が大きくなることが判明した。しかし、カーボン微粒子を含浸させたサーメット溶射皮膜では、Crを28mass%以上含むNi−Cr合金(No.7、9、11、13、15)でも、6価クロム化合物の生成は認められず環境汚染の原因とならないことが判明した。この原因はカーボン粒子を含浸させた溶射皮膜ではNi−Cr合金粒子の表面が、カーボン微粒子と反応して炭化クロム化合物(Cr、Cr23)を生成して、Ni−Cr合金と空気(酸素ガス)と接触を妨げ酸化反応より炭化反応が優先し、6価クロム酸化物の生成を抑制したものと推定される。さらに、N−Cr合金粒子の表面に膜状に生成する炭化クロム化合物は、耐高温環境性に優れるため、一旦合金の表面に生成をすると長時間にわたって耐高温酸化性を発揮して6価クロム化合物(例えばCrO)を生成を防止したものと考えられる。これらの結果からカーボン粒子の含浸処理は、環境汚染原因は6価クロム化合物の生成を抑制するのみならず、サーメット溶射皮膜の形成に必要な耐熱合金組成の選択範囲の拡大にも貢献することがうかがえる。
また、供試皮膜に対する溶融ガラス塊の密着性は、Ni−Cr合金中のCr含有量が多いほど強くなる傾向を示し、特に、Cr含有量を55.5mass%含む溶射皮膜(No.14、16)では、圧着したガラス塊の剥離が困難なほど強固であった。これに対してカーボン粒子を含浸させた供試溶射皮膜では、Ni−Cr合金中のCr量に関係なく、すべて良好な剥離性を示し、6価クロム化合物生成を抑制可能なクロム炭化物膜は、ガラス塊の剥離性にも大きな効果を有することが確認された。このように実施例2の実験においては、溶射皮膜形成用複合粉末材料に対するプラスチックの添加の有無よりカーボン粒子の含浸効果の方が大きいことが判明した。プラスチックを添加した粉末材料によって形成される溶射皮膜の気孔率は大きくカーボン粒子の含有量も多くなっていることから、溶融ガラス塊との良好な剥離性などの性質を長期間にわたって維持できる効果を保有していることが推定される。
Figure 2014181348
(実施例4)
この実施例では、プラスチック粉末を添加するための金属硼化物と耐熱合金とからなるサーメット材料における耐熱合金の含有量を変化させた際の溶射皮膜の密着性および溶融ガラス塊との剥離性に対するカーボン微粒子の含浸効果について調査した。
(1)供試基材:供試基材としてSUS410鋼(寸法:幅50mm×長さ70mm×厚さ3.2mm)を試験片とした。
(2)供試皮膜:金属硼化物としてMoBを用い、Ni−50mass%Cr合金粒子を質量添加率で10〜90%の割合で変化させた金属硼化物サーメット材料に粒径5〜30μmのポリエステル粉末を容量で3%添加した溶射皮膜形成用複合粉末材料を大気プラズマ溶射法によって、基材の片面に150〃mの厚さに形成させた。また、比較例の皮膜としては、カーボン微粒子の含浸処理をしていない皮膜を用いた。
(3)カーボン微粒子の含浸:オイルスラリ状のカーボン粒子を含浸(含浸・焼成サイクルをr3回繰り返し)させたサーメット複合溶射皮膜を発明例として調査した。
(4)試験方法‥皮膜の密着性は、実施例に開示した熱衝撃試験方法、溶融ガラス塊との剥離性は実施例2で採用した試験方法によって実施した。
(5)試験結果:試験結果を表4に示した。この試験結果から明らかなように、皮膜の密着性は、耐熱合金粒子の含有量が多いほど良好であり、MoBのみの皮膜(No.1、2)では、カーボン粒子含浸処理の有無に関係なく、皮膜にクラックが発生するとともに、皮膜の一部に剥離現象が認められた。また、耐熱合金粒子を10mass%以上含むサーメット溶射皮膜(No.3〜14)では、10サイクルの熱衝撃試験後でも、全く異常はなく良好な状態を維持しており、カーボン粒子の含浸処理は、溶射皮膜の密着性に影響を与えないことが確認された。
一方、溶融ガラス塊との圧着試験では、耐熱合金粉末の添加量10mass%以上の皮膜(No.4)でガラス塊の剥離性が悪くなり、20mass%以上のサーメット溶射皮膜(No.6、8、10、12、14)および耐熱合金のみの皮膜(No.16)を含めてガラス塊の剥離が困難なほど強固な結合性が確認された。これに対し、カーボン微粒子を含浸させた溶射皮膜では、カーボン粒子およびNi−Cr合金表面に生成する炭化クロム化合物の存在によって溶融ガラス塊とNi−Cr合金粒子との直接的な結合が妨げられるため、供試皮膜とガラス塊との剥離性は極めて良好であった(No.3、5、7、9、1、13、15)。
Figure 2014181348
(実施例5)
この実施例では、製びん用金型の表面に、本発明に適合する3成分含有硼化物系サーメットの複合粉末材料を用いて形成した多孔質複合溶射皮膜にカーボン粒子を含浸させた硼化物系サーメットの複合溶射皮膜を含む、各種の溶射皮膜や従来技術の黒鉛塗布などについて、実際の作業条件下における製びん作業性について調べた。
(1)供試金型:鋳鉄製のニッ割れ状の金型の表面に次に示す溶射皮膜を形成した。
本発明に適合する複合溶射皮膜として、MoB、Wに対して、Ni−40mass%Cr合金を50mass%混合した金属硼化物サーメット材料に、粒径1〜5μmのポリエチレン粉末を8%(容量)添加した複合粉末材料を大気プラズマ溶射法によって250〜300μmの厚さの多孔質複合溶射皮膜を形成した。
その後、得られた溶射皮膜の開気孔部に、カーボン粉末を含むオイルスラリーを使ってカーボン粒子の充填処理を施した。また、比較例の皮膜としてAl、ZrO2、8Yなどの酸化物に対し、Ni−20mass%Cr合金を50mass%混合した金属酸化物サーメット溶射皮膜を大気プラズマ溶射法によって250〜300μmの厚さに形成したものと、金属の表面に黒鉛粉末を直接塗布する方法を供試した。また、これらの供試皮膜の表面は機械加工によって、Ra:5μm以下、Rz:15μm以下の粗さに仕上げた。
(2)試験:実作業中の製びんプラントにおける供試皮膜の試験項目は、溶融ガラス塊の金型内部への挿入状況の観察と試験表面の観察(ひび割れ、局部剥離などの有無)である。
(3)試験結果:試験結果を表5に示した。この試験結果から明らかなように比較例のAlサーメット皮膜は(No.3)は溶融ガラス塊の金型内部への挿入抵抗が大きくたびたび黒鉛粉末の塗布作業が必要となった。また、試験終了後の溶射皮膜にはクラックが発生しており、耐熱衝撃性にも劣っていることが認められた。そこで、ZrO・8Yサーメット溶射皮膜は熱衝撃には強い抵抗力を発揮し、皮膜の表面には大きなクラックの発生は見られなかったが、溶融ガラス塊の金属内部への挿入抵抗が大きく実用性に乏しいことが判明した。
これに対し、硼化物系サーメットの複合溶射皮膜にカーボン微粒子を含浸させた皮膜(No.l、2)は180時間以上の連結作業を円滑に遂行できるとともに、成型後のガラスびんにも品質上の問題はなく、良好な製品が得られた。なお、比較例の金型に対する黒鉛塗布処理は、黒鉛による環境汚染に加え、熟練作業員を必要とするなどの問題点が多い。
Figure 2014181348
本発明の技術は、前述した溶融ガラス塊成型用金型などの基材表面に形成する溶射皮膜用複合粉末材料の他、溶融ガラス塊の搬送用部材をはじめ、大型のガラス成形品やガラス板材、自動車用ウインドガラス成形品の熱処理ロール、そのほかの高温用搬送用ロールなどの、表面処理技術としても有用である。
1 溶融ガラス
2 ガラス溶解炉
3 作業室
4 フィーダー
5 オリフイス
6 ガラス切断機
7 ガラス塊
8 フアンネル
9 スクープ
10 トラフ
11 デフレクター
12 製びん用金型
13 成形されたびん
14 溶射皮膜
31 基材
32 アンダーコート
33 複合溶射皮膜
34 閉気孔
35 開気孔
36 貫通気孔部
37 溶射皮膜表面を被覆したカーボン微粒子
38 カーボン微粒子堆積層

Claims (11)

  1. セラミック質の金属硼化物粉末、金属質の耐熱金属・合金粉末および有機高分子質のプラスチック粉末との硼化物系サーメットの複合粒子からなることを特徴とする溶射皮膜形成用複合粉末材料。
  2. 前記金属硼化物粉末は、粒径5〜60μmのTiB、ZrB、HfB、VB、TaB、NbB、W、CrB、NiBおよびMoBら選ばれるいずれか一種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の溶射皮膜形成用複合粉末材料。
    溶射皮膜形成用複合粉末材料。
  3. 前記耐熱金属・合金粉末は、粒径5〜60μmのNiもしくはCr含有量が50mass%以下のNi−Cr合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶射皮膜形成用複合粉末材料。
  4. 前記プラスチック粉末は、粒径1〜60μmの熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂から選ばれる一種類以上からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の溶射皮膜形成用複合粉末材料。
  5. 前記複合粒子は、金属硼化物と耐熱金属・合金とが予め、金属硼化物:20〜90mass%、残部が耐熱金属・合金からなる混合比率のサーメット混合体を含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の溶射皮膜形成用複合粉末材料。
  6. 前記複合粒子は、金属硼化物と耐熱金属・合金とからなるサーメット混合体に対して、プラスチック粉末を容量で0.5〜10%の割合で添加して一体化させたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の溶射皮膜形成用複合粉末材料。
  7. 一体化した前記複合粒子は、金属硼化物粉末と耐熱金属・合金粉末とを造粒法または焼結粉砕法によってサーメット化させてなるサーメット混合体に対して、プラスチック粉末を添加して造粒法によって粒径10〜120μmの大きさにて一体化した硼化物系サーメットの複合粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の溶射皮膜形成用複合粉末材料。
  8. 粒径:5〜60μmの金属硼化物粉末と粒径:5〜60μmの耐熱金属・合金粉末とをまず、造粒法または焼結粉砕法によってサーメット化させてなるサーメット混合体とし、その後、そのサーメット混合体に対して、粒径:1〜60μmのプラスチック粉末を添加して造粒法にすることよって粒径10〜120μmの大きさで一体化した硼化物系サーメットの複合粒子とすることを特徴とする溶射皮膜形成用複合粉末材料の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか1に記載の溶射皮膜形成用複合粉末材料を、大気プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、爆発溶射法のうちから選ばれるいずれか1の溶射法によって形成された、膜厚50〜1000μm、気孔率10〜45%の硼化物系サーメットの溶射皮膜からなることを特徴とする複合溶射皮膜。
  10. 前記溶射皮膜は、この皮膜の開気孔内にカーボン粒子を含侵させて充填してなるカーボン粒子充填構造の硼化物系サーメット溶射皮膜であることを特徴とする請求項9に記載の複合溶射皮膜。
  11. 前記多孔質溶射皮膜の開気孔内Crの少なくとも一部が炭化クロム化合物に変化していることを特徴とする請求項9または10に記載の複合溶射皮膜。
JP2013054664A 2013-03-18 2013-03-18 複合溶射皮膜 Active JP5843291B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013054664A JP5843291B2 (ja) 2013-03-18 2013-03-18 複合溶射皮膜

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013054664A JP5843291B2 (ja) 2013-03-18 2013-03-18 複合溶射皮膜

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014181348A true JP2014181348A (ja) 2014-09-29
JP5843291B2 JP5843291B2 (ja) 2016-01-13

Family

ID=51700366

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013054664A Active JP5843291B2 (ja) 2013-03-18 2013-03-18 複合溶射皮膜

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5843291B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016160446A (ja) * 2015-02-27 2016-09-05 日立造船株式会社 溶射材料およびその製造方法、溶射方法並びに溶射製品
JP2016216778A (ja) * 2015-05-19 2016-12-22 日本コーティング工業株式会社 皮膜および該皮膜の形成方法
JP2018061035A (ja) * 2016-10-05 2018-04-12 島根県 電磁波シールド材及びその製造方法
WO2021060005A1 (ja) * 2019-09-27 2021-04-01 株式会社フジミインコーポレーテッド 溶射用粉末材および溶射皮膜の製造方法
CN114129060A (zh) * 2021-12-17 2022-03-04 武汉苏泊尔炊具有限公司 炊具及其制造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08176782A (ja) * 1994-12-27 1996-07-09 Kawasaki Steel Corp 高温鋼材搬送用ロール
JPH11172233A (ja) * 1997-12-08 1999-06-29 Neos Co Ltd 溶射被膜の封孔処理剤及び封孔処理方法
JP2003105518A (ja) * 2001-09-25 2003-04-09 Nippon Steel Hardfacing Co Ltd 内燃機関用摺動部材およびその形成方法
JP2007064482A (ja) * 2005-08-29 2007-03-15 Man Turbo Ag 伝動装置エキスパンダまたは伝動装置コンプレッサのための軸密封構造、および軸密封構造を有する伝動装置エキスパンダまたは伝動装置コンプレッサ
JP2010121211A (ja) * 2008-11-19 2010-06-03 General Electric Co <Ge> アブレイダブル皮膜を形成する方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08176782A (ja) * 1994-12-27 1996-07-09 Kawasaki Steel Corp 高温鋼材搬送用ロール
JPH11172233A (ja) * 1997-12-08 1999-06-29 Neos Co Ltd 溶射被膜の封孔処理剤及び封孔処理方法
JP2003105518A (ja) * 2001-09-25 2003-04-09 Nippon Steel Hardfacing Co Ltd 内燃機関用摺動部材およびその形成方法
JP2007064482A (ja) * 2005-08-29 2007-03-15 Man Turbo Ag 伝動装置エキスパンダまたは伝動装置コンプレッサのための軸密封構造、および軸密封構造を有する伝動装置エキスパンダまたは伝動装置コンプレッサ
JP2010121211A (ja) * 2008-11-19 2010-06-03 General Electric Co <Ge> アブレイダブル皮膜を形成する方法

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016160446A (ja) * 2015-02-27 2016-09-05 日立造船株式会社 溶射材料およびその製造方法、溶射方法並びに溶射製品
JP2016216778A (ja) * 2015-05-19 2016-12-22 日本コーティング工業株式会社 皮膜および該皮膜の形成方法
JP2018061035A (ja) * 2016-10-05 2018-04-12 島根県 電磁波シールド材及びその製造方法
JP7162829B2 (ja) 2016-10-05 2022-10-31 島根県 電磁波シールド材及びその製造方法
WO2021060005A1 (ja) * 2019-09-27 2021-04-01 株式会社フジミインコーポレーテッド 溶射用粉末材および溶射皮膜の製造方法
CN114129060A (zh) * 2021-12-17 2022-03-04 武汉苏泊尔炊具有限公司 炊具及其制造方法
CN114129060B (zh) * 2021-12-17 2023-05-16 武汉苏泊尔炊具有限公司 炊具及其制造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5843291B2 (ja) 2016-01-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101345044B1 (ko) 내마모성 저마찰성 코팅 조성물, 코팅된 구성요소 및 그의 코팅 방법
Guilemany et al. Role of heat treatments in the improvement of the sliding wear properties of Cr3C2–NiCr coatings
JP5843291B2 (ja) 複合溶射皮膜
CN105377474A (zh) 新型粉末
KR101286842B1 (ko) 반용융 또는 반응고 상태의 철계 합금의 주조 방법 및 주조용 금형
JP2007211293A (ja) 溶射皮膜及び溶射用粉末
JP2004300555A (ja) 溶射用粉末及びそれを用いた溶射皮膜の形成方法
CN104911586A (zh) 一种在金属基材表面熔覆碳化钨覆层的方法
JP5292588B2 (ja) 高温用途材被覆用サーメット溶射粉末材料およびその製造方法
JP5719399B2 (ja) 溶融ガラス塊成形用金型およびその製造方法
US20090223756A1 (en) Method for producing friction surfaces or friction layers of a carbon-ceramic brake disk as well as a carbon-ceramic brake disk provided with such friction surfaces or friction layers
JP2005520052A (ja) 金属間化合物を含有するコーティングの製造方法及び該コーティング
JP5808060B2 (ja) 溶融ガラス塊成形用金型およびその製造方法
JP5853307B2 (ja) ブレーキ用ディスクロータとその製造方法
JP5326121B2 (ja) 溶融ガラス塊成形用金型およびその製造方法
JP2012112012A (ja) Hvaf溶射用粉末及び溶射皮膜の形成方法
JP4615099B2 (ja) 溶融ガラス塊の搬送用部材およびその製造方法
JP5303725B2 (ja) 溶融ガラス塊成形用金型およびその製造方法
JP2005531412A (ja) 溶融金属と共に用いる物品用の被膜
JPS58147552A (ja) 複合治工具材料およびその製造方法
JP6723681B2 (ja) 摺動用皮膜、摺動部品およびそれらの製造方法
JP5352835B2 (ja) 耐熱合金溶射粉末材料の製造方法
JP2002020126A (ja) 溶融ガラス塊の搬送用部材およびその製造方法
JP3749618B2 (ja) 潤滑油存在下での耐摩耗性に優れる摺動部材
JP5352834B2 (ja) 溶射皮膜被覆高温用途用部材およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150220

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150310

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150422

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150715

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150824

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151111

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151111

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5843291

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250