JP5352835B2 - 耐熱合金溶射粉末材料の製造方法 - Google Patents

耐熱合金溶射粉末材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高温用途材、例えば、溶融ガラス塊の成形用金型の内表面などに、溶射皮膜を被覆形成するときに用いられる、耐熱合金溶射粉末材料の製造方法に関する。
一般に、ガラス壜などは、次のような工程を経て製造されている。例えば、ソーダ灰や石灰石、ガラス屑などの主原料と、芒硝(NaSO)や各種着色剤、消色剤などの副原料とからなる原料を1500〜1600℃程度の温度に加熱して溶解し、その後、気泡などを除去した上で、壜の重量や形状などに応じた1100℃〜1200℃程度の温度に調整し、フィーダーを介して溶融ガラス塊(軟化状態にある高温の塊状ガラス)として最終的に製壜機、即ち成形用金型に供給している。
ところで、前記溶融ガラス塊と接するガラス壜成形用金型等の鋳鉄製基材の表面としては、次のような性質が求められる。
(1)溶融ガラスとの摩擦係数が小さく、滑り性が良好であること。
(2)耐高温摩耗性に優れ、初期の性能を長期間維持できること。
(3)汚れが付着しにくく、また溶融ガラスを汚染しないこと。
(4)保守点検が容易で再生が可能であること。
(5)経済的であること。
特に、溶融ガラス塊成形用金型については、摩擦抵抗が小さく、ガラス塊の該金型内への挿入が円滑にでき、かつ成形後のガラス壜の離型性に優れていることが重要である。
このような要求に対し、従来、溶融ガラス塊と接するガラス壜成形用金型の内表面や搬送部材に対しては、黒鉛粉末(グラファイト粉末)と、樹脂や乾性油からなる潤滑剤を塗布する方法で対処していた。この従来方法は、操作が容易で、溶融ガラス塊の滑りも良好で、しかも、ガラスの品質にも悪影響を与えないなどの利点がある一方で、黒鉛粉末の消耗速度が大きく、頻繁に塗布する必要があるという問題があった。さらに、この黒鉛粉末を含んだ潤滑剤というのは、飛散しやすい性質があることから、作業環境の悪化を招くのみならず、作業者に付着して不快感を与えるという問題点があった。
これらの問題点に対する対策として、溶融ガラス塊と接する成形用金型(部材)をはじめ、搬送用部材、プランジャーなどの表面に、各種の表面処理膜を施工する提案がなされ、無処理の基材に比較すると、かなり改善されてきた。例えば、
(1)特許文献1〜5には、成形用プランジャー表面やガラス塊搬送部材の表面に、自溶合金や炭化物(Cr)、酸化物セラミック粒子を用いたサーメット溶射皮膜を被覆する方法、特許文献6〜7には、溶融ガラス塊の供給用治具の表面に、窒化物や炭化物、酸化膜などを被覆形成する方法などが開示されている。
(2)また、特許文献8には、CVD法あるいはPVD法によるTiNやTiCN、TiB、SiCなどの薄膜を被覆する技術が開示されている。
一方、発明者らも、溶融ガラス塊の樋状搬送部材の表面に炭化物サーメットの金属成分として、Mo、Ta、Wなどの炭化物生成自由エネルギーの小さい金属を添加した炭化クロムサーメット溶射皮膜を提案(特許文献9)し、さらに、潤滑性に優れた黒鉛粒子の表面に、NiやW、Ti、Alなどの薄膜を被覆した溶射粉末材料を用いた溶射皮膜被覆部材の提案(特許文献10)を行った。
特開昭54−146818号公報 特開平2−111634号公報 特開平4−139032号公報 特開平3−290326号公報 特開平11−171562号公報 特開平2−102145号公報 特開昭63−297223号公報 特開平1−239029号公報 特開2002−20126号公報 特開2002−20851号公報
前記した従来技術のうち、例えば、金型表面に黒鉛粉末を含有する潤滑剤を塗布したり、各種の表面処理皮膜の場合、次のような問題があった。それは、黒鉛粉末を塗布した金型表面は、良好な潤滑性を有すると共に、溶融ガラスと接触しても疵がつかないという利点がある一方で、黒鉛の粉末が飛散しやすく、作業環境を汚染しやすいということである。しかも、塗布方法および塗布時期の判断などは、すべて熟練作業者の経験に頼っているため、作業の自動化、ロボット化などの無人化が難しいという問題がある。
また、溶射法やCVD、PVDなどによる炭化物サーメット、酸化物、窒化物、耐熱合金などの従来の表面処理技術は、無処理の場合に比較すると、それなりの効果は認められるものの不十分であり、しばしば黒鉛粉末塗布技術との併用が必要になるという問題がある。
ところで、溶融ガラス塊の成形用金型と搬送用部材は、本体、これらに求められる条件や特性が異なるため、本来はそれぞれの要求特性に応じた表面処理を行う必要があるところ、実際には、これらについての十分な検討は行われておらず、未解決のままである。例えば、搬送用部材については、高温の溶融ガラス塊とその表面に形成されている表面処理皮膜との接触圧が小さくかつ接触時間も短いため、一般には皮膜の潤滑性能が重要な管理目標となる。これに対し、成形用金型の場合には、溶融ガラス塊との接触時間が長いため、耐熱性や耐高温摩耗性が求められると共に、表面処理皮膜表面の微小な粗さや僅かな疵などがガラス表面に転写され易いため、皮膜表面の研削、研磨などの加工が容易な皮膜や素材を用いることが求められる。しかも、製壜のための成形用金型の入口は、一般に狭く、ここを通過する溶融ガラス塊の潤滑性および成形後のガラス製品の離型性も重要な特性因子となるが、これらの諸特性を備えた好適な表面処理皮膜、特に溶射皮膜およびそのための耐熱合金溶射粉末材料は未だに開発されていないのが実状である。
なお、近年では、作業環境およびガラス成形品に対する安全意識が向上していることから、有害物質の発生についての対策、検討も必要である。この点、従来の溶射粉末材料は、クロム炭化物(Cr)やNi−Cr合金粉末、自溶合金などの含Cr化合物やCr含有合金粉末がよく使われているが、これらは高温環境下では酸化され、その一部が有害な6価クロムの化合物を生成する倶れがあるところ、これらの課題についてもまた未解決のままである。
本発明の目的は、従来技術が抱えている上述した問題点を解決すること、特に、高温用途材の表面に耐熱性や耐高温摩耗性に優れる溶射皮膜を形成するときに有効な、耐熱合金からなる溶射粉末材料の製造方法を提案することにある。
従来技術が抱えている上述した課題を解決し、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、発明者らは、0.5〜10mass%のW、20mass%以下のCrを含有し、残部がNiであるNi−W−Cr耐熱合金からなり、かつ粒径:6〜70μmの大きさに調整されたもの、およびNiと0.5〜10mass%のW必須成分として含み、その他、20mass%以下のCr、PおよびBのいずれか少なくとも一方をそれぞれ7mass%以下含有するNi−W系耐熱合金からなり、かつ、粒径:6〜70μmの大きさに調整された高温用途材被覆用耐熱合金溶射粉末材料が有効であることを突き止め、それの新らたな製造方法を開発した。
本発明において、上記の耐熱合金溶射粉末材料は、下記の方法によって製造する。
(1)粒径が5〜60μmの、Ni粒子またはCr含有量が20mass%以下のNi−Cr合金粒子を、NiおよびWを含む金属塩の他、ヒドラジン(NH・NH)を還元剤として含むめっき液中に浸漬し無電解めっき処理を施して、それらの表面にNiとWとを析出させて被覆することにより、粒径が6〜70μmの、Ni−W耐熱合金粒子またはNi−W−Cr耐熱合金粒子を得る方法。
(2)粒径が5〜60μmの、Ni粒子またはCr含有量が20mass%以下で残部NiからなるNi−Cr合金粒子を、NiおよびWを含む金属塩の他、次亜リン酸ナトリウム、ジエチル・アミン・ボラン化合物または水素化硼素化合物から選ばれるいずれか1種以上の還元剤を含むめっき液中に浸漬して無電解めっき処理を行うことにより、それぞれの粒子の表面にNi−W−P合金、Ni−W−B合金またはNi−W−P−B合金膜を析出させて被覆し、粒径が6〜70μmの、Ni−W−P、Ni−W−B、Ni−W−P/BまたはNi−W−Cr−(Pおよび/またはB)耐熱合金粒子を得る方法。
発明方法の適用によって製造される耐熱合金溶射粉末材料によれば、高温用途材の表面に、緻密で耐高温性に優れる溶射皮膜を形成することができる。従って、このような耐熱合金溶射粉末材料によって被覆形成された高温用途材、例えば、ガラス壜成形用金型は、耐熱性や耐摩耗性が向上すると共に、ガラスとの剥離性に優れたものとなり、初期の金型寸法精度を長期間にわたって維持できるだけでなく、ガラス成形製品の品質向上に大きく貢献することができる。
また、本発明方法の適用によって製造される耐熱合金溶射粉末材料の場合、これを用いて被成した溶射皮膜からは6価クロム化合物が発生するようなことのない安全性の高い高温用途材、とくにガラス成形用金型や溶融ガラス塊の搬送部材、高温用ガラス板などを提供できるようになると共に、これらの部材に対する定期的な黒鉛粉末塗布作業を省略もしくはその塗布頻度を著しく削減することができ、作業環境の改善にも寄与できる。
無電解めっき法によって、Ni−W−B合金膜が被覆形成されたNi−Cr系耐熱合金粒子の外観と断面状況を示す電子顕微鏡写真である。(A)は粒子(Ni−W−Cr−B合金)全体の断面、(B)はNi−Cr合金粒子表面に被覆形成されたNi−W−B合金膜の拡大写真である。
前記耐熱合金溶射粉末材料を用いて溶射する方法、即ちガラス壜成形用金型の表面に、この耐熱合金溶射粉末材料を溶射被覆する例について、特に、その金型内表面に、NiとWを必須成分として含むNi−W−Cr耐熱合金粒子もしくはNi−W−Cr―(Pおよび/またはB)耐熱合金粒子を溶射する例を述べる、本発明はもちろんこのような部材のみに適用されるものではない。以下、具体的に説明する。
(1)耐熱合金溶射粉末材料の組成とその特徴
本発明の耐熱合金溶射粉末材料は、下記の溶融ガラスとの剥離性に優れたNiとWなどの化学成分を含む耐熱合金から構成されている。
(イ)0.5〜10mass%W、20mass%未満のCr、残部NiからなるNi−W−Cr耐熱合金、
(ロ)0.5〜10mass%W、20mass%未満のCr、Pおよび/またはBをそれぞれ7mass%以下、残部NiからなるNi−W−Cr―(Pおよび/またはB)耐熱合金、
上記(イ)、(ロ)に示す耐熱合金は、Ni、またはCr含有量が20mass%未満のNi−Cr合金をマトリックスとし、このマトリックス合金にWを0.5〜10mass%を含有させるか、さらに、PおよびBのいずれか一方または両方をそれぞれ7mass%以下、好ましくはそれぞれ1〜7mass%含有させてなものである。
ここで、耐熱合金溶射粉末材料中のNi−Cr合金に含まれるCr含有量を20mass%未満に規制したのは、Crが多く含まれるほど耐熱性、耐酸化性は向上するものの、その一方で、Crまたは3価Crの酸化物(Cr)は、溶融ガラス塊との剥離性に劣るほか、高温環境下において有害な6価クロム化合物(NaCr、CrOなど)を生成するおそれがあるためである。
本発明の耐熱合金溶射粉末材料である前記耐熱合金(イ)、(ロ)の粒子は、冶金的に溶製して製造することができる他、本発明において特有の、加温する無電解めっき法によって製造することができる。
(a)冶金的製造方法:Ni−W合金の一般的な製造方法は、まず、真空溶解炉を使ってWの含有量が0.5〜10mass%の範囲内になるように溶製し、次に、その溶製後のNi−W合金を粉砕したり溶融状態のままで小さいノズルから噴霧する方法によって、粒径5〜60μm(ただし、60μmを含まない)程度の球形粒子にする。なお、Wは、合金およびこれを溶射皮膜化したときに、溶融ガラスとの剥離性に優れるほか硬度を向上させるため、耐摩耗性に優れた溶射皮膜を形成できるようになる。このWの含有量が0.5mass%未満ではW含有の効果が薄く、一方、10mass%超含有するものでは皮膜化したときに割れやすくなる。なお、工業用のNiやWは、溶製する場合、それぞれ不可避的に微量のC、Cu、Fe、Mn、Si、Sなどを含んでいるが、これらの成分については特に制約されるものではない。
(b)無電解めっき法(化学めっき法):Ni粒子またはCrを20mass%未満含むNi−Cr合金粒子(いずれも粒径5〜60μm未満)を、少なくともNiおよびWを含む金属塩および還元剤を含むめっき液中で、これらの間で起る化学反応の自己触媒作用によって、Ni、W、さらにはPやBを共析させる無電解めっき処理を行うことによって、該粒子表面に、NiやW、Pおよび/またはBを被覆することにより、Ni−W−Crからなる溶射用耐熱合金粒子またはNi−W−Cr−(Pおよび/またはB)からなる溶射用耐熱合金粒子(粒径:6〜70μm)を製造する方法である。
この方法において、特徴的なことは、NiやWのイオンを金属として、Ni粒子やNi−Cr合金粒子の表面に析出させるために、少なくとも、下記の還元剤を使うことにある。
(イ)次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)の使用:この場合、NiやWの析出とともに、1〜13mass%程度のPが共析する。
(ロ)ジエチル・アミン・ボラン化合物((CH)NHBH)または、水素化硼素化合物(NaHB)の使用:この場合、NiやWの析出とともに1〜8mass%程度のBが共析する。
(ハ)ヒドラジン(NH・NH)の使用:この場合、NiとWのみの析出となり、PやBは含まれない。
そして、上述した(イ)のようにして、Ni−W−P合金めっき層を形成した後、さらに、上記(ロ)のNi−W−Bが析出する無電解めっき処理を施せば、PとBの両方を含むNi−W−P−B合金めっき層が得られる。
図1は、Ni−20mass%Cr合金粒子の外周面に、無電解めっき法によって、Ni−W−B合金を析出させて被覆した後のNi−W−Cr−B耐熱合金の耐熱合金溶射粉末材料の断面状況を示す顕微鏡写真である。この図1に示すように、Ni−Crマトリックス合金粒子の表面にNi−W−B合金の無電解めっき膜が緻密かつ均等に形成されている様子が観察される。
発明者らの知見によると、PもしくはBを1〜7mass%の範囲で含有する耐熱合金溶射粉末材料であれば、高温用途材の表面に被覆する耐熱合金溶射皮膜として、耐熱性、耐摩耗性、剥離性とも問題がなかったので、それぞれの許容含有量として7mass%以下の範囲とした。PまたはB含有量は主として、それぞれの還元剤成分の添加量を調節することによって制御することができる。
なお、下記の表1は、Ni−W−P系およびNi−W−B系合金の無電解めっき膜を形成するために好適に用いられる無電解めっき液の組成と温度条件の例を示したものである。
Figure 0005352835
前記耐熱合金溶射粉末材料において、前述のNiとWを必須成分として含有するNi−W−Cr―(Pおよび/またはB)耐熱合金の粒子は、粒径が6〜70μm範囲の大きさの粒子とする。その理由は、6μm未満の粒径では、溶射ガンへの連続的な供給が困難な場合があり、一方、70μm超の粒径では、溶射熱源中での溶融・軟化現象が困難となる。
なお、Ni−20mass%Cr合金粒子の表面に、NiとWを必須成分とするための無電解めっき処理をしてNiとWを析出させると、Ni−Cr合金中のCr含有量が相対的に低下して、20mass%未満の粒子となる。一方、めっき膜を被覆したNi−Cr合金粒子中のW含有量は、めっき膜中の含有量に比較して低下することとなる。その対策としては、無電解めっき膜中のW含有量を増加したり、また、めっき膜の厚さを大きくすることによって、耐熱合金溶射粉末材料全体のW量を0.5〜10mass%の範囲となるように調製することが望ましい。
(2)上記耐熱合金溶射粉末材料を用いて溶射皮膜を形成する方法
高温用途材の表面に、前記Ni−W−Cr―(Pおよび/またはB)耐熱合金を成膜にするに当たっては、大気プラズマ溶射法や減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、爆発溶射法などがよく適用することができる。また、溶射雰囲気ガスの温度(600℃〜1800℃)を低く抑制したワームスプレー、コールドスプレーによっても成膜することができる。
また、本発明の前記耐熱合金溶射粉末材料を利用(溶射)して、ガラス壜成形用金型などの高温用途材の表面にNi−W系耐熱合金の溶射皮膜を形成する場合、基材の表面に、この耐熱合金溶射粉末材料を直接、溶射して積層することができる。この場合、得られる耐熱合金溶射皮膜の厚さは50〜1000μmの範囲にすること、特に100〜300μmの範囲にすることが好ましい。それは本発明の耐熱合金溶射粉末材料の粒径が6〜70μmであることから、50μm未満の厚さでは基材表面に均等な厚みで成膜することができず、一方で、1000μm超の厚さに形成すると、皮膜表面の気孔が多くなるからである。
(3)基材
本発明の耐熱合金溶射粉末材料を溶射する対象となる基材としては、鋳鉄、鋳鋼、炭素鋼、工具鋼、低合金鋼などの鉄鋼製機材が好適である。その他、Alおよびその合金、Tiおよびその合金、Mg合金などの非鉄金属をはじめ、セラミック焼結耐、焼結炭素などへの施工も可能である。
[実施例1]
この実施例では、被処理金属粉末としてNiとNi−Cr合金を用い、その粉末の表面に析出するめっき膜の化学成分と還元剤の種類との関係を明らかにするとともに、めっき膜被覆後の溶射用粉末材料としての化学成分の表示方法について整理した。
(1)供試金属粉末:供試金属粉末として粒径10〜50μmのNiとNi−20mass%Cr合金を用いた。
(2)無電解めっき液:表1記載の無電解めっき液を用いたが、ヒドラジンを還元剤とするめっき液は、表1のNi−W−P液の次亜リン酸ナトリウムに代えて、ヒドラジンを5〜10ml/L添加した。めっき液の温度は60℃〜95℃であり、時間は最高10時間としたが、この間、金属の析出反応が低下するときには還元剤のみを適宜追加した。
(3)調査項目:被処理金属粉末へのめっき膜の付着状況と、そのめっき膜の主要成分の確認および被処理金属粉末の化学成分を含めた、溶射用粉末材料としての化学成分的表示の確認
(4)試験結果:試験結果を表2に要約した。この結果から明らかなように、被処理金属粉末の種類(Ni、Ni−Cr合金)に関係なく、めっき膜は均等に付着し、これらの膜はすべて鈍いながらも金属光沢を呈していた。また、金属粉末の表面に析出するめっき膜の成分は、ヒドラジン還元剤の液からは、NiとW、次亜リン酸ナトリウムの液からはNi、WとともにPが1〜13mass%の合金膜、また、ボロン化合物(ジメチル、アミン、ボラン化合物)の場合は、Ni、Wに加え、Bを1〜8mass%の合金膜が析出し、被処理金属粉末の表面に多少の凸部を示すものの、ほぼ全面に付着した。
前記PおよびBの含有量は、耐熱性の用途に使用する場合には、いずれの成分も7mass%を超えると皮膜として“ひび割れ”現象が発生したり、Pは輝散する現象が見られることから、本発明ではそれぞれの含有量を1〜7mass%の範囲としている。
また、めっき膜中のPおよびB含有量は、めっき液中の次亜リン酸ナトリウムやボロン化合物量を低下させることによって制御することができる。
さらに、めっき膜中のW含有量もめっき液中の金属成分濃度を変化させることによって制御できることが確認された。
さて、上述したように、被処理金属粉末の表面に析出しためっき膜の化学成分と、金属粉末の化学成分を含めた溶射用粉末材料としての総合的な表示は、ヒトラジン還元剤の使用膜では、粉末の化学成分にWのみの追記、次亜リン酸ナトリウムでは、WとPの追記、ボロン化合物の場合はWとBの追記として表示することとした。
Figure 0005352835
[実施例2]
この実施例では、実施例1で製造したNiとWを必須成分とする耐熱合金からなる溶射粉末材料を用いて、基材表面に、一般に広く採用されている3種類の溶射法によって溶射皮膜を成膜し、皮膜の表面仕上げに大きな影響を与える溶射皮膜の気孔率を調査した。
(1)供試基材:供試基材として、FC200(寸法:幅30mm×長さ50mm×厚さ9mm)を用いた。
(2)供試材料:本発明に係る耐熱合金溶射粉末材料として、粒径10〜50μmのNiおよびNi−20mass%Cr合金粉末の表面に対して、実施例1と同じ無電解めっき法(ただし、還元剤として、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、ボロン化合物を使用)によって製造した粒径16〜56μmのNi:93〜90mass%、W:0.5〜10mass%、P:2〜7mass%、B:4〜7mass%、Cr:19mass%を含む耐熱合金粒子(耐熱合金溶射粉末材料)を準備した。また、比較用の溶射粉末材料として、市販の冶金的手法によって製造されたNi:80−Cr:20mass%、Ni:50mass%〜Cr:50mass%の耐熱合金粒子を用いた。
(3)溶射法と膜厚:溶射法として、上記耐熱合金溶射粉末材料を大気プラズマ溶射法(APS)、減圧プラズマ溶射法(LPS)、高速フレーム溶射法(HVOF)を用い、それぞれの方法で厚さ150μmの皮膜を形成させた。
(4)調査項目:供試皮膜の断面を切断・研磨した後、光学顕微鏡で観察するとともに、画像解析装置によって5カ所の気孔率を測定した。
(5)試験結果:試験結果を表3に要約した。この結果から明らかなように、本発明に適合する耐熱合金溶射粉末材を用いて溶射して得られた溶射皮膜の気孔率(No.1〜5)は、APS:3〜8%、LPS:0.3〜1.2%、HVOF:1〜4%の範囲内にあり、LPSの気孔率が最も少なく、次いでHVOF、APS皮膜の順であることが判明した。一方、比較例の溶射粉末材料を用いた溶射皮膜(No.6、9)の気孔率も同様な傾向と気孔率を示していることから、本発明の耐熱合金溶射粉末材料を用いた皮膜の場合、従来の皮膜と同様な方法によって、皮膜表面の仕上げ加工が可能であることが認められた。
Figure 0005352835
[実施例3]
この実施例では、NiとWを必須成分として含む耐熱合金からなる本発明に適合する溶射粉末材料を用いて形成した溶射皮膜の鋼鉄製基材への密着性を熱衝撃試験によって調査した。
(1)供試基材:供試基材として、SUS410鋼(寸法:幅50mm×長さ50mm×厚さ3.2mm)の試験片を用いた。
(2)成膜用材料:耐熱合金溶射粉末材料として、Niマトリックス粒子(粒径10〜40μm)の表面に対して、無電解めっき法(ただし、還元剤として、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウムと水素化硼素化合物のいずれか1以上を使用)を、適用してめっき膜を被覆したNiを80〜99mass%、Wを0.5〜10mass%、Pを5〜7mass%、Bを2mass%に調製した耐熱合金粒子を、大気プラズマ溶射法によって、基材の片面に直接、150μm厚さに形成した。
また、比較例として、Niマトリックス粒子のみ、及び硼化物粒子(W、MoB、TaB、CrB)のみの溶射皮膜を、基材上に大気プラズマ溶射法によって150μm厚さに形成した。
(3)試験方法:上記、溶射皮膜試験片を電気炉中で650℃×15分間加熱した後、これを炉外に取り出し、送風機の空気を流しながら、80℃以下の温度に冷却させる操作を1サイクルとし、計10サイクルの試験を繰り返した。なお、1サイクルの試験毎に、溶射皮膜の表面を拡大鏡(×8)によって観察し、“ひび割れ”や局部剥離の有無を調査した。
(4)試験結果:試験結果を表4に要約した。この結果から明らかなように、比較例のNiのみの皮膜(No.9)および硼化物粒子のみを用いた溶射皮膜(No.10〜12)は、熱衝撃サイクル5〜8回の繰り返しによって、皮膜表面に割れや局部的な剥離部が発生した。これに対して、本発明に係る耐熱合金溶射粉末材料を用いて溶射して形成された溶射皮膜(No.1〜8)は、10サイクルの熱衝撃試験によっても、割れや剥離などは認められず、良好な耐熱衝撃性を示し、基材との密着性が良好であることが判明した。
Figure 0005352835
[実施例4]
この実施例では、ガラス壜成形用用金型の表面に対して、無電解めっき法(ただし、還元剤:ヒドラジン)によって製造した本発明に係るNiとWを必須成分とする耐熱合金溶射粉末材料を用いて、実際の作業条件下における作業性を試験した。
(1)供試金型:FC200製の二つ割り状の金型の表面に、次に示す溶射皮膜を形成した。
(2)供試皮膜:本発明に適合する溶射皮膜として、Ni−20mass%Cr合金マトリックス粒子の表面にNiとWを必須成分とするめっき膜(2μm)を被覆した耐熱合金溶射粉末材料を大気プラズマ溶射法によって、200μmの厚さに形成した。また、比較例として、Wを含まないNi−50mass%Cr耐熱金属(合金)とWを2〜10mass%含むNi−25〜50mass%Cr合金の皮膜を大気プラズマ溶射法で200μmの厚さに施工したものと、Cr−20mass%Ni−8mass%Crサーメットを高速フレーム溶射法で120μmの厚さに形成したものを準備した。なお、供試溶射皮膜の表面は、すべて機械的研磨法によって表面粗さRa:0.2μm以下、Rz:4μm以下の平滑な面に仕上げた。
(3)試験項目:実際の製壜プラントにおける供試皮膜の試験項目は、溶融ガラス塊の金型内部への供給状況の観察と試験後の皮膜表面の観察(ひび割れ、剥離の有無)である。
(4)試験結果:試験結果を表5に要約した。この結果から明らかなように、比較例のNiとWを含むとともに、Crを多く含む溶射粉末材料を溶射して得た耐熱合金皮膜(No.6〜8)は、溶融ガラス塊の金型内部への供給時に、入口付近で一時的に、とどまる現象が認められ、ガラス塊との摩擦抵抗が大きいことが判明した。また、試験後の皮膜表面に、少量ながら6価クロム化合物の生成が認められたことから、作業環境を汚染する可能性が懸念された。なお、炭化物サーメット皮膜(No.9)は、溶融ガラス塊との接触抵抗が少ないものの、この皮膜の表面にも6価クロム化合物の生成が認められた。この皮膜表面の6価クロム化合物は、Cr成分の酸化による可能性が大きい。
以上の結果に対して、本発明に係るNiとWを必須成分として含むとともに、マトリックス粒子に20mass%のCrが含まれるものの、その表面に被覆しためっき膜によって保護された耐熱合金溶射粉末材料を溶射して得た溶射皮膜(No.1〜5)は、溶融ガラス塊の金型内部への供給が順調に行われ、また150時間の使用後の皮膜表面には、ひび割れや剥離現象はなく、健全な状態を維持していた。
Figure 0005352835
本発明の耐熱合金溶射粉末材料に関する技術は、前述した溶融ガラス塊成形用金型の他、ガラス壜製造工程における溶融ガラス塊の搬送用部材をはじめ、大型のガラス成形品やガラス板材、自動車用ウインドガラス成形品の熱処理ロール、その他、高温用搬送用ロールの表面に溶射皮膜を形成する材料として広い分野で利用可能である。

Claims (2)

  1. 粒径が5〜60μmの、Ni粒子またはCr含有量が20mass%以下のNi−Cr合金粒子を、NiおよびWを含む金属塩の他、ヒドラジン(NH・NH)を還元剤として含むめっき液中に浸漬し無電解めっき処理を施して、それらの表面にNiとWとを析出させて被覆することにより、粒径が6〜70μmの、Ni−W耐熱合金粒子またはNi−W−Cr耐熱合金粒子を得ることを特徴とする高温用途材被覆用耐熱合金溶射粉末材料の製造方法。
  2. 粒径が5〜60μmの、Ni粒子またはCr含有量が20mass%以下で残部NiからなるNi−Cr合金粒子を、NiおよびWを含む金属塩の他、次亜リン酸ナトリウム、ジエチル・アミン・ボラン化合物または水素化硼素化合物から選ばれるいずれか1種以上の還元剤を含むめっき液中に浸漬して無電解めっき処理を行うことにより、それぞれの粒子の表面にNi−W−P合金、Ni−W−B合金またはNi−W−P−B合金膜を析出させて被覆し、粒径が6〜70μmの、Ni−W−P、Ni−W−B、Ni−W−P/BまたはNi−W−Cr−(Pおよび/またはB)耐熱合金粒子を得ることを特徴とする高温用途材被覆用耐熱合金溶射粉末材料の製造方法。
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