JP5719399B2 - 溶融ガラス塊成形用金型およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)溶融ガラスとの摩擦係数が小さく、滑り性が良好であること。
(2)耐高温磨耗性に優れ、初期の性能を長期間維持できること。
(3)汚れが付着しにくく、また溶融ガラスを汚染しないこと。
(4)保守点検が容易で再生が可能であること。
(5)経済的であること
(1)特許文献1〜5には、成形用プランジャーの表面やガラス塊搬送部材の表面に、自溶合金、炭化物(Cr3C2)や酸化物の粒子を用いたサーメット溶射皮膜を被覆する方法、特許文献6〜7には、溶融ガラス塊の供給用治具の表面に、窒化物や炭化物、酸化膜などを被覆形成する方法などが開示されている。
(2)また、特許文献8には、CVD法あるいはPVD法によるTiNやTiCN、TiB2、SiCなどの薄膜を被覆する技術が開示されている。
(3)さらに、特許文献9には、板ガラスの成形用ロールに耐熱、耐食性合金の皮膜を被覆する方法が開示されている。
(1)前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、TiB2、ZrB2、、HfB2、VB、TaB、NbB、W2B5、CrB2、NiB及びMoBから選ばれるいずれか一種以上の金属硼化物を20〜90mass%含有し、残部がNiもしくはCr含有量が50mass%未満のNi−Cr合金を含有する金属硼化物サーメット溶射粉末材料に対し、容量で0.5〜10%のプラスチックを混合してなる3成分含有溶射粉末材料を溶射して形成した皮膜であること、
(2)Ni−Cr合金を含む前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、Crの少なくとも一部が炭化クロム化合物に変化していること、
(3)前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、開気孔率が10〜45%の皮膜であること、
(4)前記硼化物系サーメット溶射皮膜の開気孔部内に含浸によって充填されるカーボン粒子は、粒子径が1nm〜10μmの大きさであること、
(5)前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、表面粗さRaが5μm以下、Rzが15μm以下の平滑面を有すること、
(6)前記アンダーコートは、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−Cr−Al、自溶合金、MCrAlX合金(但し、MはCoおよび/またはNi、Xは希土類元素から選ばれるいずれか1種以上の合金)の溶射皮膜であって、膜厚が50〜150μmであること、
(7)カーボン粒子充填−被覆構造の硼化物系サーメット溶射皮膜は、溶射皮膜の表面に対し、水、有機溶媒、オイルまたは粘稠な油脂類や流動性を有する高分子化合物から選ばれる1種以上の媒体に粒径0.1nm〜10μmのカーボン粒子を混合して得られるスラリーを吹き付け、浸漬あるいは塗布するなどして、まず、該硼化物系サーメット溶射皮膜の開気孔部内にカーボン粒子を含浸処理し、その後、電気炉中で100℃〜550℃、1〜5時間の加熱処理を施こすることにより、カーボン質のみを該溶射皮膜の内部に充填すると同時に該皮膜表面に残留させて膜状に被覆したものであること、
などの構成がより好ましい実施の形態となると考えられる。
また、本発明のカーボン粒子充填型溶射皮膜を長期間使用して、その作用機能が低下した場合があっても、従来技術に係る黒鉛塗布作業を行なうと、一回の処理で多量のカーボン粒子を含浸させることができ、再度長期間使用することができる利点がある。
前述した硼化物系サーメット溶射皮膜を形成するための塊成形用金型の基材としては、鋳鉄や鋳鋼、炭素鋼、工具鋼、低合金鋼などの鋼鉄製のものが好適である。その他、Alおよびその合金、Ti及びその合金、Mg合金などの非鉄金属をはじめ、セラミック焼結体や焼結炭素、粉末焼結材なども用いることができる。
前記サーメット溶射皮膜を形成するための基材は、その表面を予めJIS H 9302に規定されたセラミック溶射皮膜作業標準に準拠して、脱脂や脱スケールによる清浄化処理を行ない、その後、A12O3やSiCなどの研削材粒子を吹き付けてブラスト粗面化処理を行なうことが好ましい。ブラスト処理後の表面粗さは、Ra:1〜10μm、Rz:5〜40μmの程度にすることが好ましい。
前記金型基材の表面には必要に応じてアンダーコートを形成する。そのアンダーコート形成用材料としては、基材との密着性と耐熱性を向上させる機能を優先して、Ni−AlやNi−Cr、Ni−Cr−Al、自溶合金(JISH8303)、M(NiまたはCo)−Cr−Al−X合金(ただし、Xは、Y、Ce、Laなどの希土類元素)などが好適である。アンダーコート層の膜厚としては50〜150μm程度の厚さにするのがよく、特に、50〜100μm程度の厚さにすることが好ましい。その理由は、膜厚が50μmより薄い場合はアンダーコートの機能が十分でなく、また、150μm以上の膜厚を形成しても、アンダーコートの効果が飽和して、生産コストの上昇を招くからである。
前記金型基材の表面には、直接または前記アンダーコートを介して、トップコートとして硼化物系サーメット溶射皮膜を形成する。以下、その硼化物系サーメット溶射皮膜およびその溶射皮膜を形成するために用いられる硼化物サーメット溶射粉末材料について説明する。
(A)金属硼化物:TiB2、ZrB2、、HfB2、VB、TaB、NbB、W2B5、CrB2、NiB、MoB(なお、硼化物の分子式は、製造条件によって変化するので絶対的なものではない。ここでは、市販品の表示に従ったものを記載した)
(B)耐熱金属・耐熱合金:
a.耐熱金属:金属Ni(単独または、Ni−Cr合金との混合使用も可)
b.耐熱合金:Crを50mass%未満含有するNi−Cr合金
(C)プラスチック:
a.熱硬化性樹脂:フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂など
b.熱可塑性樹脂:ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネイトなど
金型基材の表面に、前記3成分系からなる硼化物系サーメット溶射粉末材料を溶射して硼化物系サーメット溶射皮膜を形成する方法としては、大気プラズマ溶射法や減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、爆発溶射法などを適用することできる。その他、溶射雰囲気ガスの温度を低くしたワームスプレー、コールドスプレーなどによっても成膜は可能である。これらの方法による棚化物系サーメット溶射皮膜は、金型(基材)内表面に直接形成してもよく、また、基材表面にアンダーコートを施工した後、トップコートとして前記硼化物系サーメットの溶射皮膜を被覆して積層してもよい。
溶射法によって形成された3成分含有硼化物系サーメット溶射皮膜には、通常、溶射皮膜特有の気孔が存在する。この溶射皮膜の気孔率は、溶射法や溶射条件によって変動するが、発明者らの知見によると、大体10〜45%(皮膜の断面を画像解析装置によって測定した面積率)程度であり、また、これらの気孔は存在形態によって、次のように分類される。
(i)密閉気孔:皮膜の内部に閉ざされている気孔(閉気孔ともいう)
(ii)開口気孔:皮膜の外部へ通じている気孔(開気孔ともいう)
(iii)貫通気孔:皮膜の表面から基材まで繋がっている気孔
(iv)連通気孔:皮膜の外部へ通じている気孔が皮膜の内部で複数の気孔同士が互いに連結している気孔
(7)硼化物系サーメット溶射皮膜開気孔部中へのカーボン微粒子の含浸方法
硼化物系サーメット溶射皮膜の開気孔部へ注入するカーボン粒子としては、次のような性状のものが推奨される。即ち、カーボンの種類としては、天然のグラファイト、石油や石炭などの化石燃料から得られるカーボン、植物油の燃焼、炭化処理によって得られる煤、高分子材料の焼成処理によって得られる炭素などが好適である。また、カーボンの微粒子の粒径としては、0.1nm〜10μm程度のものを用い、その微粉末を水スラリ、オイルスラリ状にして溶射皮膜に吹き付けたり、それらの中に溶射皮膜を浸漬することによって開気孔の内部へカーボンの粒子を供給して含浸させる。その他の供給方法としては、カーボンの粒子をグリースやワセリンなどの粘稠な油脂類中に混入し、これを溶射皮膜の表面に塗布することによっても含浸させることができる。なお、グリースやワセリンは含浸後の加熱工程において、それ自体が熱分解してカーボン源となってカーボン粒子の含浸効果を向上させる利点がある。
カーボン粒子充填−被覆構造を有する硼化物系サーメット溶射皮膜は、その表面を機械加工によって研削・研磨加工を施すことが好ましい。カーボン微粒子を含浸させた溶射皮膜の表面は、Ra:5〜10μm程度、Rz:15〜25μm程度と非常に粗く、このままではガラスの成形面にその粗さがそのまま直接転写され、品質低下の原因となる。そこで本発明では、Ra:5μm未満程度、Rz:15μm未満程度の平滑面に仕上げることが好ましい。なお、溶射皮膜の表面を研削・研磨すると、前記カーボン微粒子の含浸処理時には閉気孔として存在していた気孔部が開気孔に変化するものがある。このため、研磨後の溶射皮膜は再度カーボン粒子の含浸充填処理を繰返すことが推奨される。
溶射皮膜にカーボン微粒子を含浸させて得られるカーボン粒子充填−被覆構造を有する硼化物系サーメット溶射皮膜については、この皮膜表面に少なくともカーボンの一部が露出状態で存在しているため、成形用溶融ガラスと直接接触することになり、このことが優れた潤滑性と離型性とを発揮することになる。加えて、溶射皮膜の表面を被覆したり、開気孔内に充填されているカーボン微粒子と接触する皮膜成分の耐熱合金粒子(Cr)とが反応することで、カーボンと同等の潤滑性および離型性を有するクロム炭化物を合金粒子の表面に生成させる効果もある。
この実施例では、金属硼化物、耐熱合金およびプラスチックの3成分からなるサーメット溶射皮膜の密着性を熱衝撃試験法により調査した。
(2)溶射材料:金属硼化物として、CrB2、MoB、ZrB2を用い、それぞれの金属硼化物粒子に、NiまたはNi−20mass%Cr合金を50mass%配合してなる金属硼化物サーメット溶射粉末材料を準備し、この溶射粉末材料に粒径10〜30μmのポリエチレンを容量で3%の割合で添加した硼化物系サーメット溶射粉末材料を調整した。そして、この硼化物系サーメット溶射粉末材料を大気プラズマ溶射法によって基材の片面に溶射して150μm厚さの溶射皮膜を形成した。また、比較例の溶射皮膜として、金属硼化物サーメット粒子のみの皮膜とNi−Cr合金のみの皮膜を大気プラズマ溶射法によってそれぞれ150μm厚さに形成した。
(3)カーボン粒子の含浸:すべての供試溶射皮膜に対し、本発明に係るオイルスラリ状のカーボン粒子の含浸処理を行ない、含浸処理をしない供試皮膜との耐熱衝撃性を比較した。
(4)試験方法:上記溶射皮膜被覆試験片を、電気炉中で650℃×15分間加熱した後、これを炉外に取り出し、送風機の空気を流しながら、80℃以下の温度に冷却させる操作を1サイクルとし、合計10サイクルの試験を繰り返した。なお、1サイクルの試験毎に、溶射皮膜の表面を拡大鏡(×8)によって観察し、“ひび割れ”や局部剥離の有無を調べた。
(5)試験結果:試験結果を表1に示した。この試験結果から明らかなように、金属硼化物サーメットにプラスチック粉末を添加した本発明に適合す三成分系の硼化物系サーメット溶射材料を用いて形成した溶射皮膜(No.l、5、9)は、カーボン粒子の含浸の有無に拘らず、優れた密着性を示した。即ち、一般的に広く利用されている比較例のサーメット溶射皮膜(No.2〜4、6〜8、10〜12)及び金属皮膜(No.13、14)と比べると、同等の耐熱衝撃性を示し、昇温・降温が繰り返し行われる環境下において優れた密着性を発揮することが確認できた。
この実施例では、金属硼化物、Ni、Ni−Cr耐熱合金、プラスチックの3成分を含有する硼化物系サーメット溶射材料のNi、Ni−Cr耐熱合金中のCr含有量の相違による6価クロム化合物生成の有無と溶融ガラス塊との密着性について調査した。
(2)溶射材料:金属硼化物としてMoBを用い、これに添加するNi−Cr耐熱合金中のCr含有量を5〜55.5mass%の範囲で変化させた合金を用いて、金属硼化物サーメットを調製した後、粒径10〜30μmのポリエチン粉末を容量で5%添加し3成分系の溶射粉末材料をつくり、これを大気プラズマ溶射法によって、膜厚150μmの溶射皮膜とした。なお、金属硼化物と耐熱合金成分との割合は、50/50(mass%)とした。
(3)6価クロムの生成試験:この試験は、供試溶射皮膜を、電気炉中で980℃、100時間加熱した後、溶射皮膜表面に生成している金属酸化物を採取し、化学分析によって、酸化物中に含まれている6価クロム化合物の有無を定性的に調べた。
(4)溶融ガラスとの密着性試験方法:供試皮膜の表面に1200℃の溶融ガラス塊を圧着させた後、室温まで放冷し、皮膜表面に固着したガラス塊を木製のハンマーによって叩き落とすことによって、ガラス塊の密着性を定性的に調べた。
(5)試験結果:試験結果を表2に示した。この結果から明らかなように、Ni−Cr合金中のCr含有量が増加するほど、6価クロム化合物を生成する傾向が大きくなることが判明した。しかし、カーボン粒子を含浸させたサーメット溶射皮膜では、Cr含有量が28mass%以上含むNi−Cr合金(No、7、9、11、13、15)でも、6価クロム化合物の生成は認められず環境汚染の原因とならないことが判明した。この原因はカーボン粒子を含浸させた溶射皮膜ではNi−Cr合金粒子の表面が、カーボン粒子と反応して炭化クロム化合物(Cr3C2、Cr23C6)を生成して、Ni−Cr合金と空気(酸素ガス)と接触を妨げ酸化反応より炭化反応が優先し、6価クロム酸化物の生成を抑制したものと推定される。さらに、N−Cr合金粒子の表面に膜状に生成する炭化クロム化合物は、耐高温環境性に優れるため、一旦合金の表面に生成をすると長時間にわたって耐高温酸化性を発揮して6価クロム化合物(例えばCrO3)を生成を防止したものと考えられる。これらの結果からカーボン粒子の含浸処理は、環境汚染原因は6価クロム化合物の生成を抑制するのみならず、サーメット溶射皮膜の形成に必要な耐熱合金組成の選択範囲の拡大にも貢献することがうかがえる。
この実施例では、プラスチック粉末を添加するための金属硼化物と耐熱合金からなるサーメット材料における耐熱合金の含有量を変化させた際の溶射皮膜の密着性及び溶融ガ
ラス塊との剥離性に対するカーボン粒子の含浸効果について調査した。
(2)供試溶射皮膜:金属硼化物としてMoBを用い、Ni−50mass%Cr合金粒子を質量添加率で10〜90%の割合で変化させた金属硼化物サーメット材料に粒径5〜30μmのポリエステル粉末を容量で3%添加したものを大気プラズマ溶射法によって、基材の片面に150μmの厚さに形成した。また、比較例の溶射皮膜としては、カーボン粒子の含浸処理をしていない溶射皮膜を用いた。
(3)カーボン粒子含浸:オイルスラリ状のカーボン粒子を含浸(含浸・焼成サイクルをr3回繰り返し)したサーメット溶射皮膜を発明例として調査した。
(4)試験方法‥皮膜の密着性は、実施例1に開示した熱衝撃試験方法、溶融ガラス塊との剥離性は実施例2で採用した試験方法によって実施した。
(5)試験結果:試験結果を表3に示した。この試験結果から明らかなように、皮膜の密着性は、耐熱合金粒子の含有量が多いほど良好であり、MoBのみの皮膜(No.1、2)では、カーボン粒子含浸処理の有無に関係なく、皮膜にクラックが発生するとともに、皮膜の一部に剥離現象が認められた。また、耐熱合金粒子を10mass%以上含むサーメット溶射皮膜(No.3〜14)では、10サイクルの熱衝撃試験後でも、全く異常はなく良好な状態を維持しており、カーボン粒子の含浸処理は、溶射皮膜の密着性に影響を与えないことが確認された。
この実施例では、金属硼化物と耐熱合金からなる金属硼化物サーメット溶射粉末材料に添加するプラスチック(粉末)の添加量を変化させて形成した溶射皮膜の溶融ガラス塊との剥離性を調査した。
(2)供試溶射皮膜:金属硼化物としてMoBを用い、これにNi−20mass%Cr耐熱合金粉末を質量で50%含むサーメット溶射粉末材料に粒径1〜5μmのポリエチレン粉末を容量で0.5〜20%の割合で変化させた3成分含有硼化物系サーメット溶射粉末材料を調整し、その後、これらを大気プラズマ溶射法によって、基材の片面に150μm厚さに形成した(3)カーボン粒子の含浸:実施例3と同じ条件にて処理
(4)溶融ガラス塊の圧着試験は実施例3と同じ条件で実施した。
(5)試験結果:試験結果を表4に示した。この試験結果から明らかなように、カーボン粒子を含浸させた溶射皮膜は溶融ガラス塊との剥離性が良好であった。ただ、試験片No.6、7のようにプラスチック粉末を15〜20%(容量%)添加した粉末材料で形成した溶射皮膜では、溶融ガラスの圧着面に凹凸部が比較的多く発生している傾向が見られた。この原因は、プラスチック粉末を多く含む粉末材料で形成された溶射皮膜では気孔の発生率が高くなり、皮膜表面に大きな凹部を形成したためと考えられる。このようなことから、本願発明ではプラスチック粉末の添加量は0.5〜10%(容量%)の範囲が好適と判断した。
この実施例では、製びん用金型の表面に、本発明に適合する3成分含有硼化物系サーメット溶射粉末材料を用いて形成した溶射皮膜にカーボン粒子を含浸させた硼化物系サーメット溶射皮膜を含む、各種の溶射皮膜や従来技術の黒鉛塗布などについて、実際の作業条件下における製びん作業性について調べた。
本発明に適合する溶射皮膜として、MoB、W2B5に対して、Ni−40mass%Cr合金を50mass%混合した金属硼化物サーメット材料に、粒径1〜5μmのポリエチレン粉末を8%(容量)添加した材料を大気プラズマ溶射法によって250〜300μmの厚さの溶射皮膜を形成した。
その後、得られた溶射皮膜の開気孔部に、カーボン粉末を含むオイルスラリーを使ってカーボン粒子の充填処理を施した。また、比較例の皮膜としてAl2O3、ZrO2・8Y2O3などの酸化物に対し、Ni−20mass%Cr合金を50mass%混合した金属酸化物サーメット溶射皮膜を大気プラズマ溶射法によって250〜300μmの厚さに形成したものと、金属の表面に黒鉛粉末を直接塗布する方法を供試した。また、これらの供試皮膜の表面は機械加工によって、Ra:5μm以下、Rz:15μm以下の粗さに仕上げた。
(2)試験:実作業中の製びんプラントにおける供試皮膜の試験項目は、溶融ガラス塊の金型内部への挿入状況の観察と試験表面の観察(ひび割れ、局部剥離などの有無)である。
(3)試験結果:試験結果を表4に示した。この試験結果から明らかなように比較例のAl2O3サーメット皮膜は(No.3)は溶融ガラス塊の金型内部への挿入抵抗が大きくたびたび黒鉛粉末の塗布作業が必要となった。また、試験終了後の溶射皮膜にはクラックが発生しており、耐熱衝撃性にも劣っていることが認められた。そこで、ZrO2・8Y2O3サーメット溶射皮膜は熱衝撃には強い抵抗力を発揮し、皮膜の表面には大きなクラックの発生は見られなかったが、溶融ガラス塊の金属内部への挿入抵抗が大きく実用性に乏しいことが判明した。
2 ガラス溶解炉
3 作業室
4 フィーダー
5 オリフイス
6 ガラス切断機
7 カラス塊
8 フアンネル
9 スクープ
10 トラフ
11 デフレクター
12 製びん用金型
13 成形されたびん
14 溶射皮膜
31 基材
32 アンダーコート
33 硼化物系サーメット溶射皮膜
34 閉気孔
35 開気孔
36 貫通気孔部
36´ 開気孔部内に充填されたカーボン微粒子
37 溶射皮膜表面を被覆したカーボン微粒子
38 カーボン微粒子堆積層
Claims (14)
- 溶融ガラス塊と接触する金型内表面に、直接またはアンダーコートを介し、金属硼化物、耐熱金属・合金およびプラスチックからなる硼化物系サーメット溶射皮膜が被覆されたものであって、該硼化物系サーメット溶射皮膜は、この皮膜の開気孔部内にカーボン粒子が含浸処理によって充填されていると共に、該皮膜表面にもカーボン粒子が被覆されているカーボン粒子充填−被覆構造を有することを特徴とする溶融ガラス塊成形用金型。
- 前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、TiB2、ZrB2、、HfB2、VB、TaB、NbB、W2B5、CrB2、NiB及びMoBから選ばれるいずれか一種以上の金属硼化物を20〜90mass%含有し、残部がNiもしくはCr含有量が50mass%未満のNi−Cr合金を含有する金属硼化物サーメット溶射粉末材料に対し、容量で0.5〜10%のプラスチックを混合してなる3成分含有溶射粉末材料を溶射して形成した皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- Ni−Cr合金を含む前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、Crの少なくとも一部が炭化クロム化合物に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- 前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、開気孔率が10〜45%の皮膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- 前記硼化物系サーメット溶射皮膜の開気孔部内に含浸によって充填されるカーボン粒子は、粒子径が0.1nm〜10μmの大きさであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- 前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、表面粗さRaが5μm以下、Rzが15μm以下の平滑面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- 前記アンダーコートは、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−Cr−Al、自溶合金、MCrAlX合金(但し、MはCoおよび/またはNi、Xは希土類元素から選ばれるいずれか1種以上の合金)の溶射皮膜であって、膜厚が50〜150μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- 溶融ガラス塊と接触する金型内表面に、直接またはアンダーコートを介し、金属硼化物、耐熱金属・合金およびプラスチックからなる金属硼化物系サーメット溶射粉末材料を大気プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、爆発溶射法のうちから選ばれるいずれかの溶射法によって溶射することにより、膜厚50〜1000μmの硼化物系サーメット溶射皮膜を被覆形成し、その後、その溶射皮膜表面の開気孔部からカーボン粒子を含浸させて充填すると同時に表面にも被覆し、その後、焼成することによって、カーボン粒子充填−被覆構造の硼化物系サーメット溶射皮膜にすることを特徴とする溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- カーボン粒子充填−被覆構造の硼化物系サーメット溶射皮膜は、溶射皮膜の表面に対し、水、有機溶媒、オイルまたは粘稠な油脂類や流動性を有する高分子化合物から選ばれる1種以上の媒体に粒径0.1nm〜10μmのカーボン粒子を混合して得られるスラリーを吹き付け、浸漬あるいは塗布するなどして、まず、該硼化物系サーメット溶射皮膜の開気孔部内にカーボン粒子を含浸処理し、その後、電気炉中で100℃〜550℃、1〜5時間の加熱処理を施こすることにより、カーボン質のみを該溶射皮膜の内部に充填すると同時に該皮膜表面に残留させて膜状に被覆したものであることを特徴とする請求項8に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- 前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、TiB2、ZrB2、、HfB2、VB、TaB、NbB、W2B5、CrB2、NiB及びMoBから選ばれるいずれか一種以上の金属硼化物を20〜90mass%含有し、残部がNiもしくはCr含有量が50mass%未満のNi−Cr合金を含有する金属硼化物サーメット粉材料に対し、容量で0.5〜10%のプラスチックを混合してなる3成分含有溶射粉末材料を溶射して形成した皮膜であることを特徴とする請求項8または9に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- Ni−Cr合金を含む前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、Crの少なくとも一部が炭化クロム化合物に変化していることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- 前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、開気孔率が10〜45%の皮膜であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- 前記アンダーコートは、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−Cr−Al、自溶合金、MCrAlX合金(但し、MはCoおよび/またはNi、Xは希土類元素から選ばれるいずれか1種以上の合金)の溶射皮膜であって、膜厚が50〜150μmであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- 前記硼化物系サーメット溶射皮膜は、表面粗さRaが5μm以下、Rzが15μm以下の平滑面を有することを特徴とする請求項8〜13のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
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