JP5808060B2 - 溶融ガラス塊成形用金型およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)溶融ガラスとの摩擦係数が小さく、滑り性が良好であること。
(2)耐高温磨耗性に優れ、初期の性能を長期期間維持できること。
(3)汚れが付着しにくく、また溶融ガラスを汚染しないこと。
(4)保守点検が容易で再生が可能であること。
(5)経済的であること
(1)特許文献1〜5には、成形用プランジャーの表面やガラス塊搬送部材の表面に、自溶合金、炭化物(Cr3C2)や酸化物の粒子を用いたサーメット溶射皮膜を被覆する方法、特許文献6〜7には、溶融ガラス塊の供給用治具の表面に、窒化物や炭化物、酸化膜などを被覆形成する方法などが開示されている。
(2)また、特許文献8には、CVD法あるいはPVD法によるTiNやTiCN、TiB2、SiCなどの薄膜を被覆する技術が開示されている。
(3)さらに、特許文献9には、板ガラスの成形用ロールに耐熱、耐食性合金の皮膜を被覆する方法が開示されている。
ところで、従来、溶融ガラス塊の搬送用部材と、本発明対象である「ガラス塊成形用金型」とは、これらに求められる条件や特性が異なるため、本来はそれぞれの要求特性に応じた表面処理を行う必要があるところ、実際には、これらについての十分な検討は行なわれておらず、未解決のままである。
(1)前記金属硼化物サーメット溶射材料は、TiB2、ZrB2、、HfB2、VB、TaB、NbB、W2B5、CrB2、NiB及びMoBから選ばれるいずれか一種以上の金属硼化物を20〜90mass%含有し、残部がNiもしくはCr含有量が50mass%未満のNi−Cr合金を含有するものからなること、
(2)前記金属硼化物サーメット溶射皮膜の開気孔部内に含浸によって充填されるカーボン粒子の粒子径が1nm〜10μmの大きさであること、
(3)前記アンダーコートは、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−Cr−Al、自溶合金、MCrAlX合金(但し、MはCoおよび/またはNi、Xは希土類元素から選ばれるいずれか1種以上の合金)の溶射皮膜であって膜厚が50〜150μmであること、
(4)前記金属硼化物サーメット溶射皮膜は、その表面粗さRaが5μm以下、Rzが15μm以下の平滑面を有すること、
(5)カーボン粒子充填−被覆構造の金属硼化物サーメット溶射皮膜は、溶射皮膜の表面に対し、水、有機溶媒、オイルまたは粘稠な油脂類や流動性を有する高分子化合物から選ばれる1種以上の媒体に粒径lnm〜10μmのカーボン粒子を混合して得られるスラリーを吹き付け、浸漬あるいは塗布するなどして、まず、皮膜開気孔部内にカーボン粒子を含浸処理した後、電気炉中で100℃〜550℃、1〜5時間の加熱処理を施こすることにより、カーボン質のみを該溶射皮膜の気孔内部に残留させる操作によって充填すると同時に該皮膜表面に残留させて被覆すること、
という構成にすることがより好ましい実施の形態となると考えられる。
本発明において金属硼化物サーメット溶射皮膜を形成するための塊成形用金型の基材としては、鋳鉄や鋳鋼、炭素鋼、工具鋼、低合金鋼などの鋼鉄製のものが好適である。その他、Alおよびその合金、Ti及びその合金、Mg合金などの非鉄金属をはじめ、セラミック焼結体や焼結炭素、粉末焼結材なども用いることができる。
前記サーメット溶射皮膜を形成するための基材は、その表面を予めJIS H 9302に規定されたセラミック溶射皮膜作業標準に準拠して、脱脂や脱スケールによる清浄化処理を行ない、その後、A12O3やSiCなどの研削材粒子を吹き付けてブラスト粗面化処理を行なうことが好ましい。ブラスト処理後の表面粗さは、Ra:1〜10μm、Rz:5〜40μmの程度にすることが好ましい。
本発明では、金型基材の表面には必要に応じてアンダーコートを形成する。そのアンダーコート形成用材料としては、基材との密着性と耐熱性を向上させる機能を優先して、Ni−AlやNi−Cr、Ni−Cr−Al、自溶合金(JISH8303)、M(NiまたはCo)−Cr−Al−X合金(ただし、Xは、Y、Ce、Laなどの希土類元素)などが好適である。アンダーコート層の膜厚としては50〜150μm程度の厚さがよく、特に、50〜100μm程度の厚さにすることが好ましい。その理由は、膜厚が50μmより薄い場合は、アンダーコートの機能が十分でなく、また、150μm以上の膜厚を形成しても、アンダーコートの効果が飽和して、生産コストの上昇を招くからである。
前記金型基材の表面には、直接または前記アンダーコートを介して、トップコートとして金属硼化物サーメット溶射皮膜を形成する。以下、その金属硼化物サーメット溶射皮膜および金属硼化物サーメット溶射粉末材料について説明する。
本発明で用いる金属硼化物サーメット溶射粉末材料は、下記の金属硼化物と耐熱合金にて構成されるものである。
(A)硼化物:TiB2、ZrB2、、HfB2、VB、TaB、NbB、W2B5、CrB2、NiB、MoB(なお、硼化物の分子式は、製造条件によって変化するので絶対的なものではない。ここでは、市販品の表示に従ったものを記載した)
(B)耐熱合金;
耐熱合金:Crを28mass%以上50mass%未満含有するNi−Cr合金
金型基材の表面に金属硼化物サーメット溶射粉末材料を溶射して溶射皮膜を形成する方法としては、大気プラズマ溶射法や減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、爆発溶射法などを適用することできる。その他、溶射雰囲気ガスの温度を低く抑制したワームスプレー、コールドスプレーによっても成膜は可能である。これらの方法による金属棚化物サーメット溶射皮膜は、金型(基材)内表面に直接形成してもよく、また、まず基材表面にアンダーコートを施工した後、トップコートとして該金属硼化物サーメットの溶射皮膜を被覆して積層してもよい。
溶射法によって形成された金属硼化物サーメット溶射皮膜には、通常、溶射皮膜特有の気孔が存在する。この溶射皮膜の気孔率は、溶射法や溶射条件によって変動するが、発明者らの知見によると、大気プラズマ溶射法5〜16%、減圧プラズマ溶射法0.8〜4%、高速フレーム溶射法5〜15%(それぞれの皮膜の断面を画像解析装置によって測定した面積率)程度であり、また、これらの気孔は存在形態によって、次のように分類されている。
(i)密閉気孔:皮膜の内部に閉ざされている気孔(閉気孔ともいう)
(ii)開口気孔:皮膜の外部へ通じている気孔(開気孔ともいう)
(iii)貫通気孔:皮膜の表面から基材まで繋がっている気孔
(iv)連通気孔:皮膜の外部へ通じている気孔が皮膜の内部で複数の気孔同士が互いに連結している気孔
(i)カーボンとしては、天然のグラファイト、石油や石炭などの化石燃料から得られるカーボン、植物油の燃焼、炭化処理によって得られる煤、高分子材料の焼成処理によって得られる炭素などが好適である。
(ii)カーボン粒子は、粒径:1nm〜10μm程度の微粉末を水スラリ、オイルスラリ状にして溶射皮膜に吹き付けたり、それらの中に溶射皮膜を浸漬することによって開気孔の内部へカーボンの粒子を供給して含浸させる。
(iii)他の供給方法として、カーボンの粒子をグリースやワセリンなどの粘稠な油脂類中に混入し、これを溶射皮膜の表面に塗布することによっても含浸させることができる。グリースやワセリンは含浸後の加熱工程において、それ自体が熱分解してカーボン源となってカーボン粒子の含浸効果を向上させる利点がある。
カーボン粒子充填−被覆構造を有する金属硼化物サーメット溶射皮膜は、その表面を機械加工によって研削・研磨加工を施すことが好ましい。カーボン粒子を含浸させた溶射皮膜表面は、Ra:5〜10μm程度、Rz:15〜25μm程度と非常に粗く、このままではガラスの成形面にその粗さがそのまま直接転写され、品質低下の原因となる。そこで本発明では、Ra:5μm未満程度、Rz:15μm未満程度の平滑面に仕上げることが好ましい。なお、溶射皮膜の表面を研削・研磨すると、前記カーボン粒子の含浸処理時には閉気孔として存在していた気孔部が開気孔に変化するものもある。このため、研磨後の溶射皮膜は再度カーボン粒子の含浸充填処理を繰返すことが推奨される。
溶射皮膜にカーボン粒子を含浸させて得られるカーボン粒子充填−被覆構造を有する金属硼化物サーメット溶射皮膜については、この皮膜表面に少なくともカーボンの一部が露出状態で存在しているため、成形用溶融ガラスと直接接触することになり、このことが優れた潤滑性と離型性とを発揮することになる。加えて、溶射皮膜の表面を被覆したり、開気孔内に充填されているカーボン粒子と接触する皮膜成分の耐熱合金粒子(Cr)とが反応することで、カーボンと同等の潤滑性および離型性を有するクロム炭化物を合金粒子の表面に生成させる効果もある。
この実施例では、金属硼化物と耐熱合金とからなるサーメット溶射皮膜の密着性を熱衝撃試験法により調査した。
(2)成膜用材料:金属硼化物として、CrB2、MoB、ZrB2、W2B5を用い、それぞれの金属硼化物粒子にNiまたは(Ni−20mass%Cr)のNi−Cr合金を50mass%配合してなるサーメット溶射粉末を準備した。そして、このサーメット溶射粉末を大気プラズマ溶射法によって基材の片面に150μm厚さの皮膜を形成した。また、比較例として、前記硼化物粒子のみとNi−Cr合金のみの皮膜を大気プラズマ溶射法によってそれぞれ150μm厚さの皮膜を形成した。
(3)カーボン粒子の含浸:すべての供試皮膜に対して本発明に係るオイルスラリ状のカーボン粒子の含浸処理を行い、含浸処理をしない供試皮膜との耐熱衝撃性を比較した。
(4)試験方法:上記溶射皮膜被覆試験片を、電気炉中で650℃×15分間加熱した後、これを炉外に取り出し、送風機の空気を流しながら、80℃以下の温度に冷却させる操作を1サイクルとし、合計10サイクルの試験を繰り返した。なお、1サイクルの試験毎に、溶射皮膜の表面を拡大鏡(×8)によって観察し、“ひび割れ”や局部剥離の有無を調べた。
(5)試験結果:試験結果を表1に示した。この結果から明らかなように比較例の硼化物のみの溶射皮膜(No.7〜14)は、熱衝撃サイクル5〜7回の繰り返しによって、皮膜の表面に割れや局部的な剥離部が発生した。これに対し、本発明に適合する金属硼化物サーメット溶射皮膜(No.l〜6)は10サイクルの熱衝撃試験によっても、割れや剥離は認められず、比較例のNi−Cr合金のみの溶射皮膜(No.16)と同等の密着性を発揮することが確認できた。また、本発明に従って、皮膜開気孔中にカーボン粒子を含浸充填させた溶射皮膜の場合、耐熱衝撃性には影響を与えず優れた密着性を示した(No.l、3、5、7)。
この実施例では、基材に対し、金属硼化物に添加するNi−Cr合金中のCr含有量を変化させてなる金属硼化物サーメット溶射粉末を溶射するとともに、得られたその金属硼化物サーメット溶射皮膜を空気中で加熱した場合に生成する6価クロム化合物の有無と溶融ガラスとの密着性について調べた。
(2)成膜材料:硼化物としてMoBを用い、これに添加するNi−Cr合金中のCr含有量を5〜55mass%の範囲で変化させた合金を用いて、サーメット溶射粉末材料を調製し、大気プラズマ溶射法によって、膜厚150μmの金属硼化物サーメット溶射皮膜を形成した。なお、金属硼化物と耐熱合金との割合は、50:50とした。また、比較例として、Cr:100mass%の溶射皮膜も準備した。
(3)6価クロムの生成試験:この試験は、供試皮膜を、電気炉中で980℃、100時間加熱した後、皮膜表面に生成している金属酸化物を採取し、化学分析によって、酸化物中に含まれている6価クロム化合物の有無を定性的に調べた。
(4)溶融ガラスとの密着性試験方法:供試皮膜の表面に1200℃の溶融ガラス塊を圧着させた後、室温まで放冷し、皮膜表面に固着したガラス塊を木製ハンマーによって叩き落とすことによって、ガラス塊の密着性を定性的に調べた。
(5)試験結果:試験結果を表2に示した。この結果から明らかなように、Ni−Cr合金中のCr含有量が増加するほど、6価クロム化合物を生成する傾向が大きくなることが判明した。しかし、カーボン粒子を含浸させたサーメット溶射皮膜では、Cr含有量が28mass%以上含むNi−Cr合金(No.7、9、11、13)でも、6価クロム化合物の生成は認められず、環境汚染の原因とならないことが判明した。このことは、カーボン粒子を含浸させた溶射皮膜ではNi−Cr合金粒子の表面が、カーボン粒子と反応して炭化クロム化合物(Cr3C2、Cr23C6)を生成して、Ni−Cr合金と空気(酸素ガス)との接触を妨げ、酸化反応よりも炭化反応が優先して、6価クロム酸化物の生成を抑制したものと推定される。さらに、Ni−Cr合金粒子の表面に膜状に生成する炭化クロム化合物は、耐高温環境性に優れるため、ひとたび合金の表面に生成をすると長時間にわたって耐高温酸化性を発揮して6価クロム化合物(例えばCrO3)の生成を防止したものと考えられる。これらの結果から、カーボン粒子の含浸処理は、環境汚染原因は6価クロム化合物の生成を抑制するのみならず、サーメット溶射皮膜の形成に必要な耐熱合金組成の選択範囲の拡大にも貢献することがうかがえる。
この実施例では、金属硼化物に添加する耐熱合金成分の割合を変化させて得たサーメット溶射皮膜の密着性及び溶融ガラス塊との剥離性に対するカーボン粒子の含浸効果について調査した。
を試験片とした。
(2)供試皮膜:金属硼化物としてMoBを用い、Ni−50mass%Cr合金粒子を重量添加率が10〜90%の割合で変化させたサーメット溶射皮膜を大気プラズマ溶射法によって、基材の片面に150μmの厚さに形成した。また、比較例の皮膜として、MoB皮膜、Ni−Cr合金がそれぞれ100%の皮膜をそれぞれ、大気プラズマ溶射法によって膜厚150μmに形成した。
(3)カーボン粒子含浸:オイルスラリ状のカーボン粒子を含浸(含浸・焼成サイクルを3回繰り返し)したサーメット溶射皮膜を発明例として調査した。
(4)試験方法:皮膜の密着性は、実施例1に開示した熱衝撃試験方法、溶融ガラス塊との剥離性は実施例2で採用した試験方法によって実施した。
(5)試験結果:試験結果を表3に示した。この表に示す結果から明らかなように、皮膜の密着性は、耐熱合金粒子の含有量が多いほど良好であり、MoBのみの皮膜(No.1、2)では、カーボン粒子含浸処理の有無に関係なく、皮膜には6サイクルでクラックが発生するとともに、皮膜の一部に剥離現象が認められた。耐熱合金粒子を10mass%以上含むサーメット溶射皮膜(No.3〜14)では、10サイクルの熱衝撃試験後でも、異常は全くなく良好な状態を維持しており、カーボン粒子の含浸処理は、溶射皮膜の密着性に影響を与えないことが確認された。
一方、溶融ガラス塊との圧着試験では、耐熱合金粒子の添加量10mass%以上の皮膜(No.4)でガラス塊の剥離性がやや悪くなり、20mass%以上のサーメット溶射皮膜(No.6、8、10、12、14)及び耐熱合金のみの皮膜(No.16)を含めてガラス塊の剥離が困難なほど強固な結合性が確認された。
これに対し、カーボン粒子を含浸させた溶射皮膜では、カーボン粒子及びNi−Cr合金表面に生成する炭化クロム化合物の存在によって溶融ガラス塊とNi−Cr合金粒子との直接的な結合が妨げられるため、供試皮膜とガラス塊との剥離性は極めて良好であった(No.3、5、7、9、11、13、15)。
この実施例では、製びん用金型の表面に、カーボン粒子を含浸させた本発明に適合する硼化物サーメット溶射皮膜を含む、各種の溶射皮膜や従来技術の黒鉛塗布などについて、実際の作業条件下における製びん作業性について調べた。
本発明に適合する溶射皮膜として、MoB、W2B5に対して、Ni−40mass%Cr合金を50mass%混合した金属硼化物サーメット溶射皮膜を大気プラズマ溶射法によって250〜300μmの厚さに形成した。その後、この溶射皮膜をカーボン粉末を含むオイルスラリによる開気孔部へのカーボン粒子の充填処理を行なった。また、比較例の溶射皮膜としてA12O3、ZrO2・8Y2O3などの酸化物に対し、Ni−20mass%Cr合金を50mass%混合した金属酸化物サーメット溶射皮膜を大気プラズマ溶射法によって250〜300μmの厚さに形成したものと金属の表面に黒鉛粉末を直接塗布する方法を供試した。さらに、これらの供試皮膜の表面を機械加工によって、Ra:5μm以下、Rz:15μm以下の粗さに仕上げた。
(2)試験:実作業中の製びんプラントにおける供試皮膜の試験項目は、溶融ガラス塊の金型内部への挿入状況の観察と試験表面の観察(ひび割れ、局部剥離などの有無)である。
(3)試験結果:試験結果を表4に示した。この表に示す結果から明らかなように、比較例のA12O3サーメット皮膜は(No.3)は溶融ガラス塊の金型内部への挿入抵抗が大きくたびたび黒鉛粉末の塗布作業が必要となった。また、試験終了後の皮膜にはクラックが発生しており、耐熱衝撃性にも劣っていることが認められた。また、ZrO2・8Y2O3サーメット溶射皮膜は熱衝撃には強い抵抗力を発揮し、皮膜の表面には大きなクラックの発生は見られなかったが、溶融ガラス塊の金属内部への挿入抵抗が大きく実用性に乏しいことが判明した。
これに対し、金属硼化物サーメット溶射皮膜にカーボン粒子を含浸させた皮膜(No.l、2)は150時間以上の連結作業を円滑に遂行できるとともに、成型後のガラスびんにも品質上の問題はなく、良好な製品が得られた。なお、比較例の金型に対する黒鉛塗布処理は、黒鉛による環境汚染に加え、熟練作業員を必要とするなどの問題点が多い。
の実施例では、耐熱合金(Ni−Cr)を一定とし、各種の金属硼化物と混合した場合のサーメット溶射皮膜に対するカーボン粒子の含浸処理の効果を溶融ガラス塊との密着性試験により判定した。
(2)成膜用材料:金属硼化物として、CrB2、ZrB2、MoB、TaB、W2B5を用い、それぞれの金属硼化物に対し、Ni−50mass%Cr合金を50mass%添加したサーメット溶射皮膜を大気プラズマ溶射法によって200μmの厚さに形成した。また、比較例として、黒鉛塗布及びNi系自溶合金(JISH8303規定のSFNi4種)を溶射したものを準備した。
(3)カーボン粒子の含浸:実施例3と同じ方法により実施した。
(4)試験方法:実施例2に記載の方法によって溶融ガラス塊との剥離性を調査した。
(5)試験結果:試験結果を表5に示した。この表に示す結果から明らかなように、従来の汎用的な黒鉛塗布処理(No.ll)では溶融ガラス塊の剥離性は極めて良好であったが、その一方で、環境が黒鉛粉末によって著しく汚染されることも確認された。また、自溶合金皮膜(No.12)では、溶融ガラス塊と剥離性が悪く、実用的でないことが判明した。これに対し各種の金属硼化物サーメット溶射皮膜では、皮膜状態で使用すると溶融ガラス塊との剥離性は十分でない(No.2、4、6、8、10、)が、カーボン粒子を含浸させることによって良好な剥離性を示した。これらの結果から金属硼化物を適用しても耐熱合金中のCr含有量が多いNi−Cr合金を用いたサーメット溶射皮膜では、Ni−Cr合金粒子の表面に生成する3価クロム化合物(Cr2O3)の存在によって溶融ガラス塊との結合力が発生し剥離性が妨げられることが認められた。
2 ガラス溶解炉
3 作業室
4 フィーダー
5 オリフイス
6 ガラス切断機
7 カラス塊
8 フアンネル
9 スクープ
10 トラフ
11 デフレクター
12 製びん用金型
13 成形されたびん
14 溶射皮膜
31 基材
32 アンダーコート
33 金属硼化物サーメット溶射粒子の堆積層(溶射皮膜)
34 閉気孔
35 開気孔
36 開気孔部内に充填されたカーボン粒子
37 溶射皮膜表面を被覆したカーボン粒子
Claims (10)
- 溶融ガラス塊と接触する金型内表面に、直接またはアンダーコートを介し、金属硼化物とCr含有量が28mass%以上のNi−Cr耐熱合金とからなる金属硼化物サーメット溶射皮膜が被覆されたものであって、該金属硼化物サーメット溶射皮膜は、その開気孔部内にカーボン粒子が含浸によって充填されていると共に、皮膜表面にもカーボン粒子が被覆されているカーボン粒子充填−被覆構造を有し、かつ上記Ni−Cr耐熱合金中のCrは炭化クロム化合物に変化していることを特徴とする溶融ガラス塊成形用金型。
- 前記金属硼化物サーメット溶射材料は、TiB2、ZrB2、、HfB2、VB、TaB、NbB、W2B5、CrB2、NiB及びMoBから選ばれるいずれか一種以上の金属硼化物を20〜90mass%含有し、残部がNiもしくはCr含有量が50mass%未満のNi−Cr合金を含有するものからなることを特徴とする請求項1に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- 前記金属硼化物サーメット溶射皮膜の開気孔部内に含浸によって充填されるカーボン粒子の粒子径が1nm〜10μmの大きさであることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- 前記アンダーコートは、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−Cr−Al、自溶合金、MCrAlX合金(但し、MはCoおよび/またはNi、Xは希土類元素から選ばれるいずれか1種以上の合金)の溶射皮膜であって膜厚が50〜150μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- 前記金属硼化物サーメット溶射皮膜は、その表面粗さRaが5μm以下、Rzが15μm以下の平滑面を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型。
- 溶融ガラス塊と接触する成形用金型内表面に、直接またはアンダーコートを介し、金属硼化物とCr含有量が28mass%以上のNi−Cr耐熱合金とからなる金属硼化物サーメット溶射材料を大気プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、爆発溶射法のうちから選ばれるいずれかの溶射法によって溶射することにより、膜厚50〜1000μmの金属硼化物サーメット溶射皮膜を被覆形成し、その後、その溶射皮膜表面の開気孔部からカーボン粒子を含浸させて充填すると同時に表面被覆し、その後、焼成することによって、上記Ni−Cr耐熱合金中のCrを炭化クロム化合物に変化させてなる、カーボン粒子充填−被覆構造の金属硼化物サーメット溶射皮膜とすることを特徴とする溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- カーボン粒子充填−被覆構造の金属硼化物サーメット溶射皮膜は、溶射皮膜の表面に対し、水、有機溶媒、オイルまたは粘稠な油脂類や流動性を有する高分子化合物から選ばれる1種以上の媒体に粒径lnm〜10μmのカーボン粒子を混合して得られるスラリーを吹き付け、浸漬あるいは塗布するなどして、まず、皮膜開気孔部内にカーボン粒子を含浸処理した後、電気炉中で100℃〜550℃、1〜5時間の加熱処理を施こすることにより、カーボン質のみを該溶射皮膜の内部に充填すると同時に該皮膜表面に残留させて被覆することを特徴とする請求項6に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- 前記、金属硼化物サーメット溶射材料は、金属硼化物として、TiB2、ZrB2、、HfB2、VB、TaB、NbB、W2B5、CrB2、NiB及びMoBから選ばれるいずれか一種以上の金属硼化物を20〜90mass%含有し、残部がNiもしくはCr含有量が50mass%未満のNi−Cr合金であることを特徴とする請求項6または7に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- 前記アンダーコートは、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−Cr−Al、自溶合金、MCrAlX合金(但し、MはCoおよび/またはNi、Xは希土類元素から選ばれるいずれか1種以上の合金)の溶射皮膜であって膜厚が50〜150μmであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
- 前記カーボン粒子充填−被覆構造の金属硼化物サーメット溶射皮膜の表面を、機械加してRa:5μm以下、Rz:15μm以下の平滑面に仕上げられていることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1に記載の溶融ガラス塊成形用金型の製造方法。
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