JP5352834B2 - 溶射皮膜被覆高温用途用部材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)溶融ガラスとの摩擦係数が小さく、滑り性が良好であること。
(2)耐高温摩耗性に優れ、初期の性能を長期間維持できること。
(3)汚れが付着しにくく、また溶融ガラスを汚染しないこと。
(4)保守点検が容易で再生が可能であること。
(5)経済的であること。
(1)特許文献1〜5には、成形用プランジャー表面や高温ガラス塊搬送部材の表面に、自溶合金や炭化物(Cr3C2)、酸化物セラミック粒子を用いたサーメット溶射皮膜を被覆する方法、特許文献6〜7には、高温ガラス塊の供給用治具の表面に、窒化物や炭化物、酸化膜などを被覆形成する方法などが開示されている。
(2)また、特許文献8には、CVD法あるいはPVD法によるTiNやTiCN、TiB2、SiCなどの薄膜を被覆する技術が開示されている。
(3)特許文献9には、板ガラスの成形用ロールに耐熱、耐食性合金の皮膜を被覆する方法が開示されている。
(1)高温に曝される基材表面に直接被覆される溶射皮膜としては、成分組成が、Ni(残部)と0.5〜10mass%のWを必須成分として含有し、さらに必要に応じて、Crを20mass%未満、PおよびBをそれぞれ7mass%以下含むNi−W系耐熱合金を用いること、
(2)PおよびBのいずれか少なくとも一方を含むNi−W系耐熱合金の溶射皮膜については、皮膜を形成した後、電気炉中で300℃〜700℃の温度で、0.5〜5時間の熱処理を施し、皮膜を構成している粒子同志の相互の結合と、被覆合金の結晶化を促して、溶射皮膜全体の硬さを向上させたものであること、
(3)基材の表面に被覆形成された上記Ni−W系耐熱合金溶射皮膜は、その表面が、機械的な研削や研磨を施すことによって、粗さがRa:2μm以下、Rz:4μm以下の平滑面に仕上げられること、
(4)上記Ni−W系耐熱合金皮膜は、粒径:5〜60μmの溶射粉末材料を、大気プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法あるいは爆発溶射法などにより溶射して、基材の表面に直接、膜厚50〜1000μmの溶射皮膜を被覆形成すること、
が、より好ましい解決手段を提供する。
成膜用の溶射用粉末材料の組成とその特徴について説明する。本発明の溶射用粉末材料は、下記の化学成分の耐熱合金によって構成されているものである。
NiとWを必須成分とする耐熱合金からなる粉末材料で皮膜を成膜するには、溶射法が最も実用的である。例えば、大気プラズマ溶射法や減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、爆発溶射法などを適用することが好まく、また、溶射雰囲気ガスの温度を低く抑制したワームスプレ一、コールドスプレーによっても成膜することができる。これらの溶射法によれば、基材表面に直接、前記溶射皮膜を積層することができる。
高温用途用部材の表面に形成した前記Ni−W系耐熱合金、とくにNi−W−Cr−P/B合金の溶射皮膜は、成膜状態のままで、次工程で行われる表面研磨加工後、実用に供することができる。しかし、この溶射皮膜つき基材は、これを熱処理することによって、該溶射皮膜の硬さが一段と向上する。従って、このような性質と特徴を有利に使用することが好ましい。具体的には、成膜後の溶射皮膜を電気炉中(大気、真空、不活性ガス雰囲気のいずれでもよい)で、300℃〜700℃、0.5〜5時間の熱処理を行うと、めっき膜の初期硬さHv:500〜600が、Hv:700〜1000まで上昇し、耐摩耗性が向上する。このような効果は、従来技術による溶射皮膜には見られない特徴の一つである。なお、熱処理による皮膜硬さの向上効果は、めっき直後の共析合金膜は、アモルファス状を呈しているが、熱処理によって微細な硬質結晶を析出するためと考えている。
成膜後または成膜後熱処理を施したNi−W系耐熱合金溶射皮膜の表面は、機械的加工(研削、研磨など)によって、粗さがRa:2μm以下、Rz:4μm以下のより平滑化した表面に仕上げることが有効である。それは、基材の表面に形成された溶射皮膜表面の粗さは、製品(ガラス成形品)の表面に転写されるので、Ra値のみならず、Rz値についても所定値以下となるように十分な仕上げ管理を行うことが好ましい。
本発明の基材としては、鋳鉄や鋳鋼、炭素鋼、工具鋼、低合金鋼などの鋼鉄製のものが好適である。しかし、Alおよびその合金、Tiおよびその合金、Mg合金などの非鉄金属をはじめ、セラミック焼結体や焼結炭素なども用いることができる。
この実施例では、NiとWを必須成分として含むNi−W系耐熱合金を溶射して得られる溶射皮膜被覆の、鋼鉄製基材への密着性を、熱衝撃試験によって調べた。
(2)成膜用材料:溶射用材料として、マトリックス粒子としてNiおよびNi−20mass%Cr合金(粒径20〜40μm)を用い、その表面に無電解めっき法によって、Ni:80〜99mass%、W:0.5〜10mass%、P:5〜7mass%、B:2mass%の組成の膜を被覆した耐熱合金粒子(溶射粉末材料)を大気プラズマ溶射法によって基材の片面に150μmの厚さ形成した。
また、比較例として、硼化物粒子(W2B5、MoB2、TaB2、CrB2)のみの皮膜を基材上に大気プラズマ溶射して、150μm厚さの溶射皮膜を形成した。
(3)試験方法:上記試験片を、電気炉中で650℃×15分間加熱した後、これを炉外に取り出し、送風機の空気を流しながら、80℃以下の温度に冷却する操作を1サイクルとし、合計10サイクルの塗布試験を繰り返した。なお、1サイクルの試験毎に、溶射皮膜の表面を拡大鏡(×8)によって観察し、“ひび割れ”や局部剥離の有無を調べた。
(4)試験結果:試験結果を表2に示した。この表に示す結果から明らかなように、比較例である硼化物のみの溶射皮膜(No.9〜12)は、熱衝撃サイクル5〜8回の繰り返しによって、皮膜表面に割れや局部的な剥離部が発生した。これに対して、本発明に適合するNi−W系耐熱合金の溶射皮膜(No.1〜8)を施したものは、10サイクルの熱衝撃試験によっても、割れや剥離は認められず、良好な耐熱衝撃性を示して、基材との密着性が良好であることが判明した。
この実施例では、本発明に適合するNi−W系耐熱合金の金属成分の種類と溶融ガラス塊の密着性との関係を明らかにすることによって、その剥離性と耐熱衝撃性を定性的に求めた。
(2)供試皮膜:供試皮膜として、NiおよびNi−20mass%Cr合金粒子をマトリックスとして、その表面に下記成分のめっき膜を3μmの厚さに被覆した後、大気プラズマ溶射して、100μm厚さの溶射皮膜を形成した。
めっき膜の金属成分:Ni:81〜98mass%、W;0.5〜15mass%、P:0〜7mass%、B:0〜4mass%のNi−W系合金
なお、比較例として、硼化物(CrB2、ZrB2、MoB2、TaB2)にCr粉末を25〜75mass%含む硼化物サーメットをはじめ、自溶合金(JIS H8303のSFNi4)、現在汎用されている黒鉛塗布膜を用い、同条件で試験した。
(3)溶融ガラスとの密着性試験:供試皮膜の表面に1200℃の溶融ガラス塊を圧着した後、室温まで放冷し、皮膜表面に固着した溶融ガラス塊を木製のハンマーによって叩き落とすことによって、ガラス塊の密着性を定性的に調査した。
(4)熱衝撃試験:実施例1と同じ方法で評価した。
(5)試験結果:試験結果を表3に示した。この表に示す結果から明らかなように、Cr含有硼化物サーメットの溶射皮膜(No.2、5、8、11)では、優れた耐熱衝撃性を保持しているものの溶融ガラスとの濡れ(付着性)が大きく、例えば、溶融ガラス塊成形用金型などの被覆部材としては不適当であることが判明した。また、Crを70mass%を含むNi−Cr系合金(No.9、12)も溶融ガラス塊との剥離性が悪く、そして、自溶合金系の溶射皮膜(No.14)は良好な熱衝撃性を発揮したが、溶融ガラス塊との剥離性は良好ではなかった。また、MoB2の表面にNi−W−P−Bめっき膜を被覆しても、Cr粉末を25mass%混合させた皮膜(No.8)でも、溶融ガラス塊との剥離性は低下した。
この実施例では、図1に示すように、製壜用金型12の内表面に対し、本発明に係るNiとWを必須成分とするNi−W系合金の溶射皮膜13を被覆形成した後、実際の作業条件下における作業性を試験した。
(2)供試皮膜:本発明に係る皮膜として、Ni−20mass%Cr合金マトリックス粒子の表面に、Ni−Wを必須成分とするめっき膜(2μm)を被覆した耐熱合金溶射粉末を、大気プラズマ溶射法によって溶射して、溶射皮膜を200μmの厚さに形成した。また、比較例として、Wを含まないNi−50mass%Cr耐熱金属(合金)とWを2〜10%含むNi−20〜50mass%Cr合金を、溶射法で溶射して、200μmの厚さで施工したものと、Cr3C2−20mass%Ni−8mass%Crサーメット材料を、高速フレーム溶射法で溶射して、120μmの厚さに形成したものを準備した。なお、供試溶射皮膜の表面は、すべて機械研磨法によって表面粗さRa:0.2μm以下、Rz:4μm以下の平滑な面に仕上げた。
(3)試験項目:実際の製壜プラントにおける供試皮膜の試験項目は、溶融ガラス塊の金型内部への供給状況の観察と試験後の皮膜表面の観察(ひび割れ、剥離の有無)である。
(4)試験結果:試験結果を表4に示した。この表に示す結果から明らかなように、比較例のNi−Wを含むとともに、Crを多く(≧25mass%)含む耐熱合金皮膜(No.6〜8)は、溶融ガラス塊の金型内部への供給時に、入口付近で一時的にとどまる現象が認められ、ガラス塊との摩擦抵抗が大きいことが判明した。また、試験後の皮膜表面に、少量ながら6価クロム化合物の生成が認められたことから、作業環境を汚染する可能性が窺える。なお、炭化物サーメット溶射皮膜(No.9)は、溶融ガラス塊との接触抵抗が少ないものの、この皮膜の表面にも6価クロム化合物の生成が認められた。この皮膜表面の6価クロム化合物は、Cr3C2成分の酸化による可能性が大きい。
2 ガラス溶解炉
3 作業室
4 フィーダー
5 溶融ガラス塊
6 ガラス切断機
7 フアンネル
8 スクープ
9 トラフ
10 デフレクター
11 製壜用金型
12 成形した壜
13 溶射皮膜
Claims (9)
- 高温に曝される基材の表面に直接、Ni粒子またはCr含有量が20mass%以下のNi−Cr合金粒子の表面にNi−W系合金の無電解めっき膜が被覆された粉末材料を溶射して、Wの含有量が0.5〜10mass%であるNi−W系耐熱合金の溶射皮膜を被覆形成してなる溶射皮膜被覆高温用途用部材。
- 前記Ni−W系耐熱合金は、少なくともNiと0.5〜10mass%のWを必須成分として含むと共に、Crを20mass%未満、PおよびBの少なくともいずれか一方をそれぞれ7mass%以下含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の溶射皮膜被覆高温用途用部材。
- PおよびBの少なくともいずれか一方を含む前記Ni−W系耐熱合金の溶射皮膜は、電気炉中で300℃〜700℃、0.5〜5時間の熱処理を施した皮膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶射皮膜被覆高温用途用部材。
- 前記Ni−W系耐熱合金溶射皮膜は、皮膜表面の粗さがRa:2μm以下、Rz:4μm以下の平滑面に仕上げられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の溶射皮膜被覆高温用途用部材。
- 高温に曝される基材の表面に直接、Ni粒子またはCr含有量が20mass%以下のNi−Cr合金粒子の表面にNi−W系合金の無電解めっき膜が被覆された粒径が5〜60μmの、Niと0.5〜10mass%のWを含有するNi−W系耐熱合金溶射粉末材料を溶射して、膜厚50〜1000μmのNi−W系耐熱合金溶射皮膜を被覆形成することを特徴とする溶射皮膜被覆高温用途用部材の製造方法。
- 前記Ni−W系耐熱合金溶射皮膜は、少なくともNiと0.5〜10mass%のWを必須成分として含むと共に、Crを20mass%未満、PおよびBの少なくともいずれか一方をそれぞれ7mass%以下含有するものを用いることを特徴とする請求項5に記載の溶射皮膜被覆高温用途用部材の製造方法。
- PおよびBの少なくともいずれか一方を含む前記Ni−W系耐熱合金溶射皮膜は、電気炉中で300℃〜700℃、0.5〜5時間の熱処理を施すことを特徴とする請求項5または6に記載の溶射皮膜被覆高温用途用部材の製造方法。
- 前記Ni−W系耐熱合金溶射皮膜は、表面粗さがRa:2μm以下、Rz:4μm以下の平滑面に仕上げられることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1に記載の溶射皮膜被覆高温用途用部材の製造方法。
- 上記Ni−W系耐熱合金溶射皮膜は、粒径が5〜60μmの前記Ni−W系耐熱合金溶射粉末材料を、大気プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法あるいは爆発溶射法などで溶射して、基材の表面に直接、膜厚50〜1000μmの溶射皮膜として被覆形成することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1に記載の溶射皮膜被覆高温用途用部材の製造方法。
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