JP2014177591A - モールドトランス用エポキシ樹脂組成物、モールドトランスおよびモールドトランスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)ムライト粒子、(C)酸無水物および(D)硬化促進剤を必須成分として含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記(B)のムライト粒子を30〜85質量%含むことを特徴とするモールドトランス用エポキシ樹脂組成物、同樹脂組成物によって注形し、硬化させてなることを特徴とするモールドトランス、ならびにコイル本体を注形用金型内に配置した後、金型内に同樹脂組成物を真空下で注形し、硬化させることを特徴とするモールドトランスの製造方法である。
【選択図】なし
Description
また、Ni−Zn系フェライト粉末、平均粒径1.5ミクロンの鉄粉、Mg系フェライト粉末、Mn−Zn系フェライト粉末のような磁性材料粉末を含有するエポキシ樹脂ペーストにより注形し、硬化させたモールドトランスが開示されている(特許文献4)。
さらに、リグニン系化合物や無機充填剤、繊維状補強材を添加した、モータやトランスのようなモールド成形体が開示されている(特許文献5)。
また、高熱伝導樹脂としては、結晶シリカをエポキシ樹脂に高充填したパワートランジスタ用エポキシ樹脂組成物(特許文献6)や熱伝導性材料を熱硬化性樹脂中に高充填し、各粒子間距離を7μm以下にした熱伝導性樹脂組成物(特許文献7)が開示されている。
本発明者らは上記の目的を達成しようと鋭意研究を進めた結果、後述の組成物を用いることによって、機械的強度に優れており、初期だけでなく通電状態での絶縁破壊電圧も高く維持することができ、かつコイルへの含浸性に優れたモールドトランス用エポキシ樹脂組成物及びこのエポキシ樹脂組成物を用いて注形し、硬化させてなるモールドトランスを提供しようとするものである。
(1)(A)エポキシ樹脂、(B)ムライト粒子、(C)酸無水物および(D)硬化促進剤を必須成分として含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記(B)のムライト粒子を30〜85質量%含むことを特徴とするモールドトランス用エポキシ樹脂組成物、
(2)前記(B)ムライト粒子を65〜85質量%含む上記(1)に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物、
(3)前記(B)のムライト粒子が数平均粒径5〜10μmの破砕ムライト(B−1)と数平均粒径20〜70μmの破砕ムライト(B−2)からなり、それらの質量比〔(B−1):(B−2)〕が30:70〜70:30である上記(1)または(2)に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物、
(4)(A)エポキシ樹脂と(B)ムライト粒子とを含有する主剤成分と、(C)酸無水物と(D)硬化促進剤とを配合してなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物、
(5)前記(C)酸無水物がメチルヘキサヒロド無水フタル酸及び/又はメチルテトラヒロド無水フタル酸を含む上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物、
(6)前記(B)ムライト粒子がカップリング剤で表面処理されている上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物、
(7)トランスを上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物によって注形し、硬化させてなることを特徴とするモールドトランス、
(8)最外部にケースを具備しない上記(7)に記載のモールドトランスおよび
(9)コイル本体を注形用金型内に配置した後、前記金型内に上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物を真空下で注形し、硬化させることを特徴とするモールドトランスの製造方法を提供する。
また、コイル本体を注形用金型内に配置した後、前記金型内に本発明のエポキシ樹脂組成物を注入してコイル本体に含浸させることにより機械強度及び絶縁信頼性に優れたモールドコイルとすることができ、動作信頼性の高いモールドトランスを提供することができる。
(A)エポキシ樹脂
本発明に用いる成分(A)のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば分子構造および分子量など特に制限はなく、汎用エポキシ樹脂、一般に電子部品封止用材料として使用されるエポキシ樹脂等、特に制限なく使用すること出来る。たとえば、フェノールノボラック型またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、ビフェニル型等芳香族系のエポキシ樹脂やシクロヘキサン誘導体、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のような脂環式エポキシ等が挙げられ、これらは単独または2種以上混合して使用することが出来る。また、これらのほかに必要に応じて液状のエポキシ樹脂等を使用することが出来る。液状のエポキシ樹脂を併用することによりエポキシ樹脂組成物の硬化性を調整することができ、粘度を低下させることにより充填性が向上する。
液状の脂環式エポキシ樹脂としては、3,4,3',4'−ジエポキシビシクロヘキシル化合物、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等が挙げられる。
本発明で用いる成分(B)のムライト粒子は酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との化合物で、3Al2O3・2SiO2〜2Al2O3・SiO2またはAl6O13Si2という化学式で表される〔フリー百科事典「ウィキペディア」(2009/08/08、UTC版)〕。
本発明で用いる成分(B)のムライト粒子はエポキシ樹脂組成物中30〜85質量%配合される。好ましくは65〜85質量%である。そして、ムライト粒子は数平均粒径5〜10μmの破砕ムライト(B−1)と数平均粒径20〜70μmの破砕ムライト(B−2)が質量比〔(B−1):(B−2)〕で30:70〜70:30で混合されていることが好ましい。なお、ムライト粒子の数平均粒径はレーザー回折法による測定値である。
このような質量比であることによって、高熱伝導性、低誘電率化による電気特性に対する安定性、絶縁性ガスに対する耐久性の要求を満たすことができる。しかも、金型からの離型時、モールドのクラック発生による歩留まり悪化を低減させることが可能である。また、通電状態で低誘電率であるために電気的安定と絶縁破壊電圧の低下を防ぐことができる。しかしながら(B−1)が質量比70を超えると、1次硬化時に離型する場合、離型時の強度が極端に悪くなり、欠ける危険性が発生するものである。また、トランス注形及び作業性、機械的強度及び絶縁破壊電圧も低下する。
一方、(B−2)がムライト粒子全体中、質量比70を超えると、ムライト粒子の沈降により信頼性の悪化が懸念される。
また、この成分(B)のムライト粒子は、樹脂組成物中へのカップリング剤の添加処理により、その表面改質を施すことで、さらに優れた硬化物の絶縁信頼性、機械強度を得ることができる。ここで用いることができる。カップリング剤について、あらかじめ、フィラーに添加してブレンダーにて混合若しくは樹脂製造時にエポキシ樹脂、添加剤とともに直接仕込む。添加量はエポキシ樹脂に対し重量%で0.1から0.5部が望ましい。
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられ、耐湿性などの特性向上に優れていることから、特にシランカップリング剤及びアミノシラン系カップリング剤が好ましい。
これらシランカップリング剤及びアミノシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−〔4−(3−アミノプロポキシ)ブトキシ〕プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独でも2種類以上併用してもよい。
本発明において硬化剤として用いる成分(C)の酸無水物としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されるものであればよく、特に制限されるものではないが脂環式酸無水物が好ましく、ヘキサヒロド無水フタル酸、メチルヘキサヒロド無水フタル酸、メチルテトラヒロド無水フタル酸、テトラヒロド無水フタル酸がより好ましい。
本発明に用いる成分(D)の硬化促進剤は、一般的に用いられるもの、例えば、第3級アミン、イミダゾール類、有機ホスフィン、ルイス酸触媒等が挙げられる。
第3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等、イミダゾール類としては、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等、有機ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボレート、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等が挙げられる。ルイス酸触媒としては、具体的には、例えば、三フッ化ホウ素アミン錯体、三塩化ホウ素アミン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体などのルイス酸触媒などが挙げられる。
さらに、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4級アンモニウム塩系の硬化促進剤も用いられる。4級アンモニウム塩系の硬化促進剤としてはU-CAT2313〔サンアプロ社、商品名〕、M2−100〔日本油脂(株)製、商品名〕が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を混合して使用することができる。
この成分(D)の硬化促進剤の配合量は、成分(C)の酸無水物の100質量部に対して、0.3〜5質量部の範囲であることが好ましく、配合量が0.3質量部未満であると、硬化時間が長く硬化特性が十分に向上できないおそれがあり、5質量部を超えると、反応が速く、ポットライフが短くなるため好ましくない。
さらに、本発明の目的に反しない範囲において、ムライト粒子(破砕ムライト)以外の無機質充填剤、消泡剤、その他の成分を添加配合することができる。無機質充填剤としては、アルミナ、結晶シリカ、タルク、炭酸カルシウム等が上げられ、これらは単独または、2種以上混合して使用することができる。
本発明のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物は、常法により上述した各成分、すなわち(A)エポキシ樹脂および(B)ムライト粒子(破砕ムライト)を含む主剤成分を調製し、別途調製した(C)硬化剤および(D)硬化促進剤を含む硬化剤成分と混合し、さらに必要に応じてその他の成分を加えて、十分に混合、撹拌して製造することができる。なお、硬化剤成分に前記無機充填剤を配合してもよい。こうして得られた本発明のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物は、重電用モールドトランスや、最外部にケースを具備しない一般または高速モールドトランスの注形用または含浸用として使用することができる。ケースを具備しない一般または高速モールドトランスの場合、エポキシ樹脂組成物の硬化物の外周部がケースの替わりとなる。
また、このようなモールドトランスは、ケイ素鋼またはアモルファスの鉄心とからなるコイル本体を注形用金型内に配置した後、真空下で上記モールドトランス用エポキシ樹脂組成物を、通常、50〜70℃で注型し、100〜120℃で、30〜120分程度で一次硬化させて離型後さらに140〜150℃で、180〜300分程度加熱して後硬化させることにより製造することができる。
成分(A)として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂〔商品名:EP4100、旭電化工業(株)製〕100部、消泡剤〔商品名:TSA720、モメンティブジャパン(株)製、ポリアルキルシロキサントルエンを95%含む溶液型シリコーン消泡剤〕0.1部、アミノシランカップリング剤〔日本ユニカー(株)製、商品名:A187〕0.5部、成分(B)として、数平均粒径8μmの破砕ムライト〔太平洋ランダム(株)製、商品名:70M−325F〕177部、平均粒径50μmの破砕ムライト〔太平洋ランダム社製、商品名:70M−100S)177部を混合し主剤成分とした。
これとは別に、硬化剤である成分(C)の酸無水物としてメチルテトラヒロド無水フタル酸〔日立化成(株)製、商品名:HN2000〕85部、成分(D)として4級アンモニウム塩系の硬化促進剤〔日本油脂(株)製、商品名:M2−100〕2部を混合して硬化剤成分とした。主剤成分と硬化剤成分は混合してモールドトランス用エポキシ樹脂組成物として使用できる。
なお、ムライト粒子の数平均粒径はレーザー回折法により測定した。
表1に示した配合組成によって実施例1と同様にモールドトランス用エポキシ樹脂組成物およびモールドトランスを製造した。
実施例2〜5および比較例1〜3で製造したモールドトランス用エポキシ樹脂組成物を用いて加熱硬化させて硬化物を製造した。エポキシ樹脂組成物の粘度、比重、および充填性を下記の方法で測定してそれらの結果を表1に示した。
粘度:B型粘度計、ロータNo.4、回転数6rpm、温度25℃
比重:JIS K7232に基づくエポキシ樹脂および硬化剤の比重試験方法、
ケーリュサック形比重瓶、測定温度25℃
充填性の測定法と評価基準は下記のとおりである。
50μmの電線をアルミナ製ボビンに10000から20000回巻きつけたものについて、樹脂の充填性を下記の基準で評価した。
○:巻き線部分に樹脂が50〜100%浸透した場合を良好とした。
×:同50%未満を不良とした。
硬化物については、ガラス転移点、熱膨張率、熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ伸び、体積抵抗率、比誘電率、および誘電正接を下記の方法で測定してそれらの結果を表1に示した。
ガラス転移点:TMA法
熱膨張率:TMA法α1、TMA法α2
熱伝導率:プローブ法
曲げ試験(曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ伸び):JIS C2105、試験片100mm(長さ)×10mm(幅)×4mm(厚さ)、試験速度2.5mm/分、スパン:60mm
体積抵抗率:JIS C2105、測定電圧DC500V
比誘電率:JIS C2105、測定周波数50Hz、測定温度25℃
誘電正接:JIS C2105、測定周波数50Hz、測定温度25℃
体積抵抗率等の測定には試験片厚さ2mmのもの、主電極として60φのものを用いた。
図1によれば、実施例3における体積抵抗率は比較例1、2におけるそれより高く、絶縁特性に優れていることが示されている。
本発明のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物の方が優れており、本発明の効果を確認することが出来た。
なお、比較例3においては、比較例1で用いたRD-8(溶融シリカ)125部と比較例2で用いたLA1200(酸化アルミニウム)224部とを併用し、その他は実施例1と同じ配合組成で調製したが、凝集、沈降等があり均質なエポキシ樹脂組成物および硬化物の作製が困難であった。そのため、表1に示されている各種特性は不均質な状態で測定した値である。
Claims (9)
- (A)エポキシ樹脂、(B)ムライト粒子、(C)酸無水物および(D)硬化促進剤を必須成分として含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記(B)のムライト粒子を30〜85質量%含むことを特徴とするモールドトランス用エポキシ樹脂組成物。
- 前記(B)ムライト粒子を65〜85質量%含む請求項1に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物。
- 前記(B)のムライト粒子が数平均粒径5〜10μmの破砕ムライト(B−1)と数平均粒径20〜70μmの破砕ムライト(B−2)からなり、それらの質量比〔(B−1):(B−2)〕が30:70〜70:30である請求項1または2に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物。
- (A)エポキシ樹脂と(B)ムライト粒子とを含有する主剤成分と、(C)酸無水物と(D)硬化促進剤とを含有する硬化剤成分を配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物。
- 前記(C)酸無水物がメチルヘキサヒロド無水フタル酸及び/又はメチルテトラヒロド無水フタル酸を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物。
- 前記(B)ムライト粒子がカップリング剤で表面処理されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物。
- トランスを請求項1〜6のいずれか1項に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物によって注形し、硬化させてなることを特徴とするモールドトランス。
- 最外部にケースを具備しない請求項7に記載のモールドトランス。
- コイル本体を注形用金型内に配置した後、前記金型内に請求項1〜6のいずれか1項に記載のモールドトランス用エポキシ樹脂組成物を真空下で注形し、硬化させることを特徴とするモールドトランスの製造方法。
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