JP2014155878A - 有床義歯の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】旧義歯の撮像データに基づいて旧義歯の三次元画像を表示し、仮想空間上で、旧義歯の三次元画像から再配列が必要な人工歯を取り除く。人工歯が取り除かれた旧義歯の三次元画像と人工歯の三次元画像とによって表示された三次元画像において、仮想空間上で、咬合平面の高さ及び咬合関係が適切な状態となるようにシミュレーションを行い、人工歯配列及び粘膜面の形態が最適化された新義歯の三次元画像を表示する。表示された新義歯の三次元画像において人工歯を取り除き、新義歯の義歯床の三次元形状情報を取得する。新義歯の義歯床の三次元形状情報に基づいて、切削加工して所定形状のレジン床を形成する。レジン床の表面に形成され表面改質された凹部にレジン歯を接着する。
【選択図】図10
Description
義歯床と前記義歯床に配列された人工歯とを備えた有床義歯を製造する有床義歯の製造方法であって、
旧義歯の撮影を行い、旧義歯の撮像データを取得する工程と、
旧義歯の撮像データに基づいて旧義歯の三次元画像を表示し、仮想空間上で、旧義歯の三次元画像から再配列が必要な人工歯を取り除く工程と、
人工歯のみのデータに基づいて人工歯の三次元画像を表示して、再配列が必要な人工歯が取り除かれた旧義歯の三次元画像と人工歯の三次元画像とによって表示された三次元画像において、仮想空間上で、咬合平面の高さ及び咬合関係が適切な状態となるようにシミュレーションを行いながら、人工歯配列及び粘膜面の形態の最適化を行い、新義歯の三次元画像を表示する工程と、
表示された新義歯の三次元画像において新義歯から人工歯を取り除き、人工歯が取り除かれた跡に人工歯配列用の凹部が形成された新義歯の義歯床の三次元画像に基づいて新義歯の義歯床の三次元形状情報を取得する工程と、
新義歯の義歯床の三次元形状情報に基づいて、切削加工して所定形状のレジン床を形成する工程と、
前記レジン床の表面に形成された人工歯配列用の凹部を、新しい人工歯となるレジン歯と接着可能に表面改質する工程と、
表面改質された前記凹部に前記レジン歯を接着する工程と、
を備えた有床義歯の製造方法である。
(1)義歯床の三次元形状情報に基づいて、超高分子量ポリエチレンの成形物を切削加工して義歯床を所定形状に形成する工程と、前記義歯床の表面に形成された人工歯配列用の凹部をアクリル樹脂と接着可能に表面改質する工程と、表面改質された前記凹部に人工歯を接着する工程と、を備えた他の有床義歯の製造方法である。
(総義歯の概略構成)
図1は総義歯の外観を示す斜視図である。図2Aは上顎義歯を咬合面側から見た平面図であり、図2Bは上顎義歯を粘膜面側から見た平面図である。図1に示すように、上下無歯顎の患者に適用される総義歯10は、上顎義歯12と下顎義歯14とが、相互に咬合するように構成されている。上顎義歯12は、義歯床16と、義歯床16の咬合面側に植立された複数の人工歯18と、を備えている。下顎義歯14は、義歯床20と、義歯床20の咬合面側に植立された複数の人工歯22と、を備えている。
図3は総義歯の装着状態を示す部分断面図である。上顎義歯12及び下顎義歯14からなる総義歯10は、患者の口腔内において、上顎の顎堤24と下顎の顎堤30との間に装着される。上顎の顎堤24は、上顎骨26と上顎骨26を覆う歯肉28とで構成されている。上顎義歯12の義歯床16の粘膜面16Bは、口腔粘膜である歯肉28と密着するように装着される。同様に、下顎の顎堤30は、下顎骨32と下顎骨32を覆う歯肉34とで構成されている。下顎義歯14の義歯床20の粘膜面20Bは、口腔粘膜である歯肉34と密着するように装着される。なお、顎堤は、歯槽堤とも称される。
義歯床16及び義歯床20は、超高分子量ポリエチレンの成形物を切削加工して形成されたレジン床である。超高分子量ポリエチレンとは、一般に、熱可塑性樹脂に分類され、重量平均分子量が約100万〜約800万と極めて大きい高密度ポリエチレンのことをいう。Ultra High Molecular Weight Polyethyleneを省略して、UHPE、UHMWPE又はPE−UHMWと称される。以下では「PE−UHMW」と略称する。
ここで、汎用の床用レジンであるポリメタクリル酸メチル(PMMA)と、本発明の床用レジンである超高分子量ポリエチレン(PE−UHMW)とを、床用レジンとして重要視される種々の項目について比較した。結果を下記表1に示す。なお、PE−UHMWとしては、重量平均分子量が500万以上の医療用PE−UHMWを用いている。
人工歯18及び人工歯22は、PE−UHMW製のレジン床の咬合面側の凸部に植立される。人工歯の種類としては、レジン歯、陶歯、金属歯がある。従来、PMMA等のアクリル樹脂からなるレジン床が汎用されていたため、レジン床との接着性の良さ、適度な硬度から、総義歯にはPMMA等のアクリル樹脂からなるレジン歯が使用されている。PMMA製のレジン歯は、高圧重合法により製造されており、PMMA製のレジン床より硬度が高く、吸水率が低い。
図4は人工歯が義歯床に接着された状態を示す断面図である。下顎義歯14を例として説明すると、義歯床20の咬合面20Aはその表面が改質されて、咬合面20Aの近傍には表面改質部分20Cが形成されている。人工歯22は、接着剤36を介して、義歯床20の表面改質部分20Cに接着されている。接着剤36としては、4−META/MMA−TBBレジン等の歯科用の接着性レジンセメントを用いることができる。
含浸処理とは、PE−UHMWに対し親和性を有する化合物を、PE−UHMWの軟化点以下の温度でPE−UHMWの表面に接触させて、上記化合物をPE−UHMWの表面から含浸させる処理である。含浸させる化合物を含浸剤と呼ぶ。含浸剤は、溶液又は分散液の状態で用いてもよい。PE−UHMWに対する含浸剤としては、トルエン、キシレン、α-クロロナフタレン、ジクロロベンゼン、デカヒドロナフタレン等の有機溶剤を用いることができる。また、オルトヒドロキシビフェニール(室温で固体)をメタノール等の有機溶剤に溶解した溶液を、含浸剤として用いることができる。
活性化処理とは、PE−UHMWの表面にカルボニル基等の親水性基を導入するための処理である。親水基はカルボニル基に限られない。カルボニル基以外に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の酸素あるいは窒素などを含む官能基または不飽和結合等を導入してもよい。活性化処理の好適な方法としては、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、高圧放電処理等の各種処理を挙げることができる。表面全体を活性化処理する場合には、電磁波の照射を伴わないオゾン処理が好適である。
グラフト化は、前処理(含浸処理及び活性化処理)をしたPE−UHMWの表面において、親水性モノマー(単量体)をグラフト重合する処理である。親水性モノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸を用いることができる。モノマー及び重合開始剤を含む溶液、又はモノマー蒸気を反応容器に満たす。重合開始剤としては、硝酸二セリウムアンモニウム(IV)、過硫酸カリウム等の水溶性の重合開始剤が好適に用いられる。
次に、上記の本発明に係る有床義歯の製造方法の一実施の形態について説明する。
ここで、従来の総義歯治療の基本的な流れを簡単に説明する。
(1)患者が適合しなくなった旧義歯を持って来院すると、歯科医師は患者の症状を問診し、口腔検査、X線検査、機能検査等を行い、旧義歯の問題点を診断する。(2)次に、患者の上下顎の概形印象を採取し、概形印象から患者にあった個人トレーを作製する。(3)次に、個人トレーを用いて精密な印象を採取する。
本実施の形態では、上記で説明した構造の総義歯10を、CAD/CAM技術を応用して作製する方法について説明する。また、PMMA製の義歯床を備えた旧総義歯から、PE−UHMW製の義歯床を備えた新総義歯10を作製する場合について説明する。新総義歯10が本発明に係る総義歯に相当する。新総義歯10については、図1〜図5と同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。以下では、本実施の形態に係る製造方法を7工程に分けて説明する。
まず、患者が現在使用している義歯(旧義歯)の診査を行う。診査の結果、必要に応じて旧総義歯を修正する。旧総義歯の修正は、上下義歯床の粘膜面の形態修正により行う。PMMA製の義歯床の粘膜面の形態修正(ティッシュコンディショニング)は、ティッシュコンディショナーと称される粘膜調整材を用いて行うことができる。粘膜調整材を用いて、不足部分にPMMA樹脂を追加し、余剰部分のPMMA樹脂を研磨等で除去する。これにより咬合高さも修正される。なお、粘膜調整材を用いるのではなく、義歯床の改床によって粘膜面の形態及び咬合高さを修正することもできる。また、例えば旧義歯が割れてしまったために新義歯が必要になる場合には、割れた旧義歯を単に接着すれば足りるので、粘膜面の形態や咬合高さを修正しなくても良い。
次に、X線不透過物質を含む粘膜調整材を用いて修正された旧総義歯を、X線CT装置の撮像位置に固定配置してCT撮影を行い、修正された旧総義歯のCT撮像データを取得する。CTはコンピュータ断層撮影(computed tomography)の略である。X線CT装置は、X線を用いてCT撮影を行う撮像装置と、撮像装置の各部を制御すると共にCT撮影で得られたX線吸収値等の分布データを画像化してCT撮像データを得るコンピュータシステムと、で構成されている。
次に、新総義歯10に使用する予定の人工歯18及び人工歯22を、X線CT装置の撮像位置に固定配置してCT撮影を行い、人工歯のみのCT撮像データを取得する。図8は人工歯の写真画像(二次元画像)である。人工歯18及び人工歯22は、PMMAアクリル樹脂からなるレジン歯である。人工歯18及び人工歯22は、前歯用と臼歯用とに分けて市販されている。図8Aは前歯用人工歯の写真画像であり、図8Bは臼歯用人工歯の写真画像である。なお、人工歯の三次元画像を表示できるデータがすでにあれば、撮像データを取得する必要はない。
次に、三次元CADソフトウエアを用いて、修正された旧総義歯及び人工歯のCT撮像データを計測データとして、新総義歯10の三次元形状モデルを設計する。得られた新総義歯10の三次元形状モデルの形状データ(マスターデータ)を取得する。
次に、三次元CADソフトウエアを用いて、新総義歯10の三次元形状モデルから、義歯床の形状データを取得する。図12は新総義歯の義歯床の三次元形状モデルの画像48を示す図である。三次元CADソフトウエアを用いて、新総義歯10の三次元形状モデルから人工歯を取り除き、義歯床の三次元形状モデル48Aを設計する。義歯床の三次元形状モデル48Aは、咬合面48B側に配列されていた人工歯が取り除かれ、人工歯が取り除かれた跡には複数の凹部48Cが形成されている。この義歯床の三次元形状モデル48Aの形状データは、マスターデータと関連付けてメモリに記憶される。
次に、三次元CAMソフトウエアを用いて、義歯床の三次元形状モデル48Aの形状データから、切削工具が移動する経路(ツールパス)の計算を行い、計算値をNC工作機械を制御するための制御情報(NCデータ)に変換する。CAMとは、コンピュータ支援製造(Computer Aided Manufacturing)の略称である。三次元CAMソフトウエアとしては、CNCソフトウエア社製の「マスターカム(Mastercam)」等を使用することができる。そして、三次元CAMソフトウエアで生成されたNCデータを、マシニングセンタに送信する。
図14A及び図14Bは義歯床に人工歯が取り付けられる様子を示す図である。図14Bは図14Aの部分拡大図である。最後に、無着色の義歯床16Tに人工歯18を取り付ける。これにより、無着色の義歯床16Tを備えた上顎義歯12Tが得られる。上顎義歯12Tの義歯床16Tを歯肉色に着色して、新総義歯10の一部である上顎義歯12が完成する。
本実施の形態では、CAD/CAM技術を応用して総義歯を作製することで、従来の作製方法に比べて、総義歯の作製工程を大幅に簡略化でき、短期間で総義歯を作製することができる。また、従来の作製方法に比べて、患者の来院回数を減らすことができ、歯科医師及び患者の双方の負担を軽減することができる。
本発明の有床義歯の床用レジンとして使用する超高分子量ポリエチレン(PE−UHMW)について、5mm×10mm×2mmの直方体の試験片を用意した。試験片は、クオドランド・イーピーピー(EPP)・ジャパン社製の商品名「チルレン」成形品から切り出したものである。PE−UHMWの重量平均分子量は約500万であり、試験片は圧縮成形にて成形されたものである。用意した試験片を用いて、後述する方法で防汚性能の評価を行った。結果を図15に示す。
従来の有床義歯の床用レジンとして使用されているポリメタクリル酸メチル(PMMA)について、5mm×10mm×2mmの板状の試験片を用意した。試験片は、ジーシー(GC)社製の商品名「アクロン」を用い射出成形により作製した。用意した試験片を用いて、後述する方法で防汚性能の評価を行った。結果を図15に示す。
各試験片の防汚性能の評価は、カレー溶液浸漬による着色試験により行った。浸漬液には、蒸留水50mlに対してカレー粉10gを溶解させたカレー溶液を用いた。カレー粉としては、ヱスビー食品株式会社製の「S&B spicy curry powder」を用いた。
図15は各試験片の防汚性能の評価結果を示すグラフである。
カレー溶液浸漬後に流水洗浄を行った場合には、比較例1に係るPMMA製の試験片では、ΔE=18.3660012であるのに対し、実施例1に係るPE−UHMW製の試験片では、ΔE=10.48236615であった。実施例1に係る試験片では、比較例1に係る試験片に比べ、ΔEの値が小さくなり、着色度合いが比較例の約6割と顕著に低下していることが分かる。即ち、実施例1に係る試験片は、汚れが水洗で簡単に除去でき、汚れ自体が付きにくいことが分かる。
12 上顎義歯
14 下顎義歯
16 義歯床
16A 咬合面
16B 粘膜面
16Tα 凹部
18 人工歯
20 義歯床
20A 咬合面
20B 粘膜面
20C 表面改質部分
22 人工歯
24 顎堤
26 上顎骨
28 歯肉
30 顎堤
32 下顎骨
34 歯肉
36 接着剤
36A 接着剤
38 画像
38A 骨格
38B 上顎義歯
38C 下顎義歯
38D 断面
40 画像
40A 上顎義歯
40B 義歯床
40C 人工歯
42A 画像
42B 画像
44 画像
44A 旧総義歯
44B 義歯床
44C 人工歯
46 画像
46A 三次元形状モデル
46B 三次元形状モデル
46C 三次元形状モデル
48 画像
48A 三次元形状モデル
48B 咬合面
48C 凹部
50 ブロック
Claims (1)
- 義歯床と前記義歯床に配列された人工歯とを備えた有床義歯を製造する有床義歯の製造方法であって、
旧義歯の撮影を行い、旧義歯の撮像データを取得する工程と、
旧義歯の撮像データに基づいて旧義歯の三次元画像を表示し、仮想空間上で、旧義歯の三次元画像から再配列が必要な人工歯を取り除く工程と、
人工歯のみのデータに基づいて人工歯の三次元画像を表示して、再配列が必要な人工歯が取り除かれた旧義歯の三次元画像と人工歯の三次元画像とによって表示された三次元画像において、仮想空間上で、咬合平面の高さ及び咬合関係が適切な状態となるようにシミュレーションを行いながら、人工歯配列及び粘膜面の形態の最適化を行い、新義歯の三次元画像を表示する工程と、
表示された新義歯の三次元画像において新義歯から人工歯を取り除き、人工歯が取り除かれた跡に人工歯配列用の凹部が形成された新義歯の義歯床の三次元画像に基づいて新義歯の義歯床の三次元形状情報を取得する工程と、
新義歯の義歯床の三次元形状情報に基づいて、切削加工して所定形状のレジン床を形成する工程と、
前記レジン床の表面に形成された人工歯配列用の凹部を、新しい人工歯となるレジン歯と接着可能に表面改質する工程と、
表面改質された前記凹部に前記レジン歯を接着する工程と、
を備えた有床義歯の製造方法。
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