JP2014151632A - ガスバリアコーティングを有するプラスチックボトル用プリフォーム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチックボトルの開口となる口部と、円筒状胴部と、該円筒状胴部を閉塞する底部とからなり、ガスバリアコーティングを有する、ブロー成形によりプラスチックボトルに成形されるプリフォームであって、該円筒状胴部の外表面上に、ポリビニルアルコール(PVA)コーティングを、該PVAコーティング上にさらにポリビニルブチラール(PVB)コーティングを有し、ここで、該PVBコーティングは、該PVAコーティングが露出しないように該PVAコーティング上に被覆され、かつ、該円筒状胴部内に専ら存在するか又は該円筒状胴部と該底部に存在することを特徴とする前記プリフォーム。
【選択図】なし
Description
また、浸漬コーティングにより、プリフォーム底部にPVAが、該PVAの上にPVBが塗布されていると、PETボトルをコンベアで搬送する時の擦れに因り、PVBにクラックが発生した場合、販売時や消費者による使用時等に結露や水への浸漬によって該底部に存在するPVAが再溶解してしまうという問題がある。
前記した従来技術の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ガスバリアコーティングの膜厚が薄く均一であるために膜形成における乾燥時間が短く、過加熱部位が発生せず、さらにクラックに因る底部PVAの再溶解という問題が発生しない、ガスバリアコーティングを有するプラスチックボトル用プリフォーム、及び該プリフォームの製造方法を提供することである。
[1]プラスチックボトルの開口となる口部と、円筒状胴部と、該円筒状胴部を閉塞する底部とからなり、ガスバリアコーティングを有する、ブロー成形によりプラスチックボトルに成形されるプリフォームであって、該円筒状胴部の外表面上に、ポリビニルアルコール(PVA)コーティングを、該PVAコーティング上にさらにポリビニルブチラール(PVB)コーティングを有し、ここで、該PVBコーティングは、該PVAコーティングが露出しないように該PVAコーティング上に被覆され、かつ、該円筒状胴部内に専ら存在するか又は該円筒状胴部と該底部に存在することを特徴とする前記プリフォーム。
(a)プラスチックボトルの開口となる口部と、円筒状胴部と、該円筒状胴部を閉塞する底部とからなるプリフォームを用意し;
(b)該筒状胴部を水平に回転させながら、該筒状胴部にポリビニルアルコール(PVA)の水溶液をコーティングし;
(c)これを乾燥させて、該円筒状胴部にPVAコーティングを形成し;そして
(d)該筒状胴部を水平に回転させながら、該PVAコーティングが露出しないように、該PVAコーティング上にポリビニルブチラール(PVB)のエタノール溶液をコーティングし;
(e)これを乾燥させて、該円筒状胴部にPVBコーティングを形成する;あるいは、上記(d)及び(e)工程に代えて、以下の工程(d’)及び(e’):
(d’)該PVAコーティングが露出しないように、該PVAコーティング上にポリビニルブチラール(PVB)のエタノール溶液をコーティングし;
(e’)これを乾燥させて、該円筒状胴部及び該底部にPVBコーティングを形成する;
を含む、ガスバリアコーティングを有する、ブロー成形によりプラスチックボトルに成形されるプリフォームの製造方法。
本明細書中、用語「プラスチックボトル」とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレン(PE)製のボトルを包含し、PETボトルに限定されない。
図1(a)に、PETボトル用プリフォームの一例を示す。本発明に係るプリフォームは、プラスチックボトル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのキャップと嵌合するねじ部を有する口部(a)と、円筒状胴部(b)と、該円筒状胴部を閉塞する底部(c)とからなり、ガスバリアコーティングを有する、ブロー成形によりPETボトルに成形されるプリフォームである。かかるプリフォームは、図3に示すようなブロー成形により、図1(b)に示すPETボトルに成形され、その内部に飲料等が充填され、その後、キャップが閉められ、流通、保管、消費される。
(a)プラスチックボトルの開口となる口部と、円筒状胴部と、該円筒状胴部を閉塞する底部とからなるプリフォームを用意し;
(b)該筒状胴部を水平に回転させながら、該筒状胴部にポリビニルアルコール(PVA)の水溶液をコーティングし;
(c)これを乾燥させて、該円筒状胴部にPVAコーティングを形成し;そして
(d)該筒状胴部を水平に回転させながら、該PVAコーティングが露出しないように、該PVAコーティング上にポリビニルブチラール(PVB)のエタノール溶液をコーティングし;
(e)これを乾燥させて、該円筒状胴部にPVBコーティングを形成する;あるいは、上記(d)及び(e)工程に代えて、以下の工程(d’)及び(e’):
(d’)該PVAコーティングが露出しないように、該PVAコーティング上にポリビニルブチラール(PVB)のエタノール溶液をコーティングし;
(e’)これを乾燥させて、該円筒状胴部及び該底部にPVBコーティングを形成する;
を含む、ガスバリアコーティングを有する、ブロー成形によりプラスチックボトルに成形されるプリフォームの製造方法により製造され得る。
従来、PVAやPVBのコーティング方法としては、図2(e)に示すブロー方式や図2(f)に示すディッピング(浸漬)方式が使用されている。かかる方式でPVAとPVBをコーティングした場合を、図2(a)と図2(b)に示す。この場合には、底部に行く程、膜厚が大きくなり、円筒状胴部に比較して底部の乾燥時間を長く要することになる。すなわち、底部を十分に乾燥させると、円筒状胴部、特に円筒状胴部の上部が過加熱となり、プリフォーム基材の白化が発生してしまう場合がある。また、PVAが底部まで塗布されているため、PETボトルの搬送中の擦れでPVBにクラックが生じた場合、販売時や消費者の使用時等に結露や水への浸漬によって、PVBコーティング内部の底部に存在するPVAが水に再溶解してしまうとう問題もある。
形成されるPVAの膜厚は、例えば、PETボトルに要求されるガスバリア性能に依存する。例えば、PVAの膜厚は、湿度依存性があるため、湿度何%でどの程度のバリアを要求するかにより決定される。また、塗布されるPVA水溶液の濃度は5〜25重量%が好ましい。濃度が25重量%を超えると粘度が高すぎて塗布における作業性が悪く、またPVA原体が水に溶解し難い。また、使用するコーターの溝の深さは0.01〜1mm(10〜1000μm)であることが好ましい。プリフォームにおけるPVAコーティングの膜厚は、ブロー成形後のPETボトルにおける膜厚0.01〜5μmを基準に、PETボトルへの延伸倍率5倍〜15倍から逆算して計算される。例えば、延伸倍率が15倍であれば、プリフォームにおける膜厚は0.15〜75μmと計算される。膜厚が薄いと、ガスバリア性が低く、他方、膜厚が厚いと、コスト高となり、また、乾燥時間も長くなる。開く前記したように、PVA水溶液の濃度が変わると粘度も変わるため、コーターの溝の深さを調整する必要がある。例えば、PVA水溶液の粘度が低いと、溝が深いコーターを使用した場合、PVA水溶液が掻き取られる前に下に垂れてしまうため、溝が浅いコーターを使用する必要がある。
PVA水溶液の乾燥温度は、常温〜80℃であることが好ましい。100℃以上では溶液沸騰のおそれがあり、また、80℃を超えると過加熱により基材が白化したり変形したりするおそれがある。
前記したように、PVBエタノール溶液の場合には、過加熱等の問題は、PVA水溶液に比較して発生し難いため、本発明においては、PVBコーティングは、少なくとも円筒状胴部に、該PVAコーティングが露出しないように、存在する必要があるが、底部に存在してもよい(図2(i)参照)。ここで、PVBコーティングを円筒状胴部に専ら存在させる場合(図2(d)参照)には、PVAと同様にコーター方式等を使用することができる。あるいは、PVBコーティングを円筒状胴部だけでなく底部にも存在させる場合には、浸漬方式を使用しても構わない。但し、PETボトルのリサイクルにおいては、PET(基材)/PVAコーティング/PVBコーティングの部分は、アルカリ洗浄により、まずPVAが溶解し、これによりPVBコーティングが剥がれ、PETと、PVA及びPVBコーティングの分離を行うが、PET(基材)/PVBコーティングの部分では、PVBコーティングがPETから分離しないので、最終的に、PETボトル底部からのPETの分離回収率が低下することになる。したがって、リサイクル適性の観点からは、本発明においては、PVBコーティングも、PVAコーティングと同様、円筒状胴部に専ら存在することが好ましい(図2(d)参照)。
塗布されるPVBエタノール溶液の濃度は1〜25重量%が好ましい。使用するコーターの溝の深さは0.01〜1mm(10〜1000μm)であることが好ましい。プリフォームにおけるPVBコーティングの膜厚は、ブロー成形後のPETボトルにおける膜厚0.01〜5μmを基準に、PETボトルへの延伸倍率5倍〜15倍から逆算して計算される。例えば、延伸倍率が15倍であれば、プリフォームにおける膜厚は0.15〜75μmと計算される。膜厚が薄いと、耐水保護性が低く、他方、膜厚が厚いと、リサイクル性が低下し、コスト高となり、また、乾燥時間も長くなる。開く前記したように、PVBエタノール溶液の濃度が変わると粘度も変わるため、コーターの溝の深さを調整する必要がある。例えば、PVBエタノール溶液の粘度が低いと、溝が深いコーターを使用した場合、PVBエタノール溶液が掻き取られる前に下に垂れてしまうため、溝が浅いコーターを使用する必要がある。
加熱装置及び撹拌機を備えたピーカーにPVA粉末(株式会社クラレ製、エクセバール(登録商標)HR-3010)を入れ、濃度15質量%となるように常温の水を入れ、撹拌しながら溶液温度95℃まで加熱し、PVAが完全に溶解するまで撹拌を継続して、PVA水溶液を調製した。
プリフォーム外表面に(少なくともPVAを塗布する胴部が処理可能なように)、プラズマ照射(ウエッジ株式会社製、大気中プラズマ照射表面改質装置 PS-1200AW)にてプラズマ処理をした。
得られたPVA水溶液(濃度15質量%)のプリフォームへの塗布には、図2(g)に示すプリフォーム水平回転装置(コーター)を使用した。500mlのPET製のボトルのためのプリフォーム(未処理)の円筒状胴部に、PVA水溶液を塗布した。該コーターにおいては、プリフォームの円筒状胴部に相当する部分に溝を設け、該溝の深さは0.25mmとした。コーターをプリフォームに接触させ、プリフォームとコーターの間に、常温のPVA水溶液を垂らし、プリフォームを回転させ、余分なPVA水溶液を掻き取り、溝部分にのみPVA水溶液を残存させた。
コーターをプリフォームから離し、PVA水溶液が垂れないように、プリフォームを水平に回転させながら、PVA水溶液が塗布された部分に、PVA水溶液が80℃になるように熱風を吹きかけて、乾燥させた。このとき、ヒーターによる加熱を併用した。乾燥後に得られたPVAコーティングの膜厚は0.03mm(30μm)であった。
加熱装置及び撹拌機を備えたピーカーにPVB粉末(株式会社クラレ製、モビタール(登録商標)B-30HH、ガラス転移温度63℃)を入れ、濃度15質量%となるように常温のエタノール(99.5%)を入れ、常温で撹拌しながら、PVBが完全に溶解するまで撹拌を継続して、PVBエタノール溶液を調製した。
得られたPVBエタノール溶液(濃度15質量%)の、実施例1で得たプリフォームのPVAコーティング上への塗布には、図2(g)に示すプリフォーム水平回転装置(コーター)を使用した。プリフォームの円筒状胴部に形成されたPVAコーティング上にさらにPVBコーティングを形成し、ここで、該PVBコーティングは、該PVAコーティングが露出しないように該PVAコーティング上に被覆され、かつ、該円筒状胴部内に専ら存在するように、PVBエタノール溶液を塗布した。該コーターにおいては、プリフォームの円筒状胴部に相当し、かつ、PVBコーティングがPVAコーティングが露出しないように形成されるために十分な幅の溝を設け、該溝の深さは0.15mmとした。コーターをプリフォーム上のPVAコーティングに接触させ、プリフォーム上のPVAコーティングとコーターの間に、常温のPVBエタノール溶液を垂らし、プリフォームを25rpmで回転させ、余分なPVBエタノール溶液を掻き取り、溝部分にのみPVBエタノール溶液を残存させた。
コーターをプリフォームから離し、PVB溶液が垂れないように、プリフォームを水平に回転させながら、PVBエタノール溶液が塗布された部分に、常温の送風を行い、乾燥させた。このとき、ヒーターによる加熱を併用した。乾燥後に得られたPVBコーティングの膜厚は0.02mm(20μm)であった。
実施例2と同様に、PVBエタノール溶液を調製した。
得られたPVBエタノール溶液(濃度15質量%)の、実施例1で得たプリフォームのPVAコーティング上への塗布には、図2(f)に示す浸漬方式を使用した。プリフォームの円筒状胴部に形成されたPVAコーティング上にさらにPVBコーティングを形成し、ここで、該PVBコーティングは、該PVAコーティングが露出しないように該PVAコーティング上に被覆され、かつ、該円筒状胴部及び底部に存在するように、PVBエタノール溶液を塗布した。実施例1で得たPVAコーティングを円筒状胴部に有するプリフォームを、垂直に保ちながら、常温の上記PVBエタノール溶液に、口部が浸からないように、浸漬した。該プリフォームを垂直に保ちながら、PVBエタノール溶液から引き上げ、常温で静置して乾燥させた。この時、余分なPVBエタノール溶液は、重力によりプリフォーム底部先端から垂れ落ちた。乾燥後に得られたPVBコーティングの膜厚は、該円筒状胴部の上部で0.017mm(17μm)、該底部の先端付近の下部で0.023mm(23μm)であった。
実施例2と3で得られたPVA及びPVBコーティングを有するプリフォームを、通常の延伸ブロー成形機にて、慣用の条件で延伸ブロー成形した。得られたPETボトルでは、PETボトル本体、PVAコーティング、及びPVBコーティングの間で、クラックや離層は観察されなかった。
a 口部
b 円筒状胴部
c 底部
2 PETボトル
Claims (6)
- プラスチックボトルの開口となる口部と、円筒状胴部と、該円筒状胴部を閉塞する底部とからなり、ガスバリアコーティングを有する、ブロー成形によりプラスチックボトルに成形されるプリフォームであって、該円筒状胴部の外表面上に、ポリビニルアルコール(PVA)コーティングを、該PVAコーティング上にさらにポリビニルブチラール(PVB)コーティングを有し、ここで、該PVBコーティングは、該PVAコーティングが露出しないように該PVAコーティング上に被覆され、かつ、該円筒状胴部内に専ら存在するか又は該円筒状胴部と該底部に存在することを特徴とする前記プリフォーム。
- 以下の工程:
(a)プラスチックボトルの開口となる口部と、円筒状胴部と、該円筒状胴部を閉塞する底部とからなるプリフォームを用意し;
(b)該筒状胴部を水平に回転させながら、該円筒状胴部にポリビニルアルコール(PVA)の水溶液をコーティングし;
(c)これを乾燥させて、該円筒状胴部にPVAコーティングを形成し;そして
(d)該筒状胴部を水平に回転させながら、該PVAコーティングが露出しないように、該PVAコーティング上にポリビニルブチラール(PVB)のエタノール溶液をコーティングし;
(e)これを乾燥させて、該円筒状胴部にPVBコーティングを形成する;あるいは、上記(d)及び(e)工程に代えて、以下の工程(d’)及び(e’):
(d’)該PVAコーティングが露出しないように、該PVAコーティング上にポリビニルブチラール(PVB)のエタノール溶液をコーティングし;
(e’)これを乾燥させて、該円筒状胴部及び該底部にPVBコーティングを形成する;
を含む、ガスバリアコーティングを有する、ブロー成形によりプラスチックボトルに成形されるプリフォームの製造方法。 - 工程(b)に先立って、前記プリフォームの円筒状胴部表面をプラズマ、コロナ又は電子線処理する、請求項2に記載の方法。
- 工程(c)における乾燥は、ヒーター及び/又は送風(常温又は熱風)により実施される、請求項2又は3に記載の方法。
- 請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法により製造されたプリフォーム。
- 請求項1又は5に記載のプリフォームをブロー成形して得られたプラスチックボトル。
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