JP2014147934A - ホウ素除去剤及びホウ素含有水の処理方法 - Google Patents
ホウ素除去剤及びホウ素含有水の処理方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】ホウ素含有水からホウ素を除去するホウ素除去剤であって、カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩と、炭酸塩とを含有するホウ素除去剤である。
【選択図】なし
Description
ホウ素はガラス工業をはじめ、染料などの原料、合金や半導体材料の成分、電気メッキなどの種々の工業用途で利用され、これらの製造工程などから生じる廃水はホウ素を含有している。また、発電所から発生する廃水やゴミ焼却場における洗煙廃水、埋立処分場浸出廃水などにもホウ素が含まれることが多い。また温泉を営む旅館業の廃水中にもホウ素が含まれることがある。このようにホウ素は種々の廃水に含有されている。
<1> 下記(A)及び(B)の少なくともいずれかを含有することを特徴とする水処理剤である。
(A)カルシウムスルホアルミネート水和物、及び/又は、カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質
(B)カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩との混合物
<2> (A)カルシウムスルホアルミネート水和物、及び/又は、カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質を含有する水処理剤であって、更に、(C)カルシウムアルミネート、及び/又は、カルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質を含有する前記<1>に記載の水処理剤である。
<3> 更に、(D)炭酸塩を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の水処理剤である。
<4> 更に、(E)アルミニウム化合物を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の水処理剤である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の水処理剤を用いて水処理を行った後に回収される、水に不溶な物質を加熱処理することによって得られる物質を含有することを特徴とする水処理剤である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の水処理剤を用いることを特徴とする水処理方法である。
本発明の水処理剤は、(A)カルシウムスルホアルミネート水和物、及び/又は、カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質、並びに、(B)カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩との混合物、の少なくともいずれかを含有してなることを特徴とする。また、前記水処理剤は、好ましくは更に、(C)カルシウムアルミネート、及び/又は、カルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質、(D)炭酸塩、並びに、(E)アルミニウム化合物、の少なくともいずれかを含有してなり、必要に応じて更にその他の成分を含有してなる。
なお、前記「(A)カルシウムスルホアルミネート水和物、及び/又は、カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質」、前記「(B)カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩との混合物」、前記「(C)カルシウムアルミネート、及び/又は、カルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質」、前記「(D)炭酸塩」、及び、前記「(E)アルミニウム化合物」は、本明細書中において、それぞれ単に「(A)成分」、「(B)成分」、「(C)成分」、「(D)成分」、及び、「(E)成分」と称することがある。
前記(A)成分は、カルシウムスルホアルミネート水和物、及び/又は、カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質(本明細書中において、単に「カルシウムスルホアルミネート水和物加熱処理物」と称することがある)である。
前記カルシウムスルホアルミネート水和物としては、特に制限はなく、例えば、トリサルフェート型、モノサルフェート型があり、これらの中でも、トリサルフェート型のカルシウムスルホアルミネート水和物を用いることが好ましい。前記トリサルフェート型のカルシウムスルホアルミネート水和物としては、例えば、エトリンガイト等が挙げられる。また、前記カルシウムスルホアルミネート水和物は、合成して得たものを用いてもよいし、天然に存在するものを用いてもよい。
前記カルシウムスルホアルミネート水和物は、例えば、合成により得ることができ、前記合成は、特に制限はなく、公知の方法によって行うことができる。例えば、水中でカルシウム化合物、アルミニウム化合物、硫酸化合物を混合することにより合成することもできるし、カルシウム化合物、アルミニウム化合物、硫酸化合物を混合して焼成し、水和させて合成する(固相法)こともできる。前記焼成処理に用いる装置としても、特に制限はなく、例えば公知の熱風乾燥機、電気炉、恒温器、流動層乾燥機、真空乾燥機、スプレードライヤー、ロータリーキルン等を用いて行うことができる。
このときのカルシウム化合物は、カルシウムを含有するものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム等やこれらの水和物等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。アルミニウム化合物は、アルミニウムを含有するものであれば特に制限はなく、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、炭酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等やこれらの水和物等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。硫酸化合物は、硫酸を含有するものであれば特に制限はなく、例えば、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸マグネシウム、硫酸等やこれらの水和物等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの原料は純品だけでなくアルミスラッジ等の不純物を含むものであっても使用することができる。
前記カルシウムスルホアルミネート水和物の合成反応において、pHは9以上とすることが好ましく、11以上とすることがより好ましい。pHの調整が必要なときには、一般的なpH調整剤を使用することができる。pH調整剤は、特に制限はなく、例えば、炭酸ガス、硫酸、塩酸、硝酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、アンモニア等のアルカリ剤を、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
また、前記カルシウムスルホアルミネート水和物の合成反応においては、pH調整後、撹拌を実施してもよいし、しなくてもよい。撹拌は常温で実施しても、加温しながら実施してもよい。また、撹拌後は、熟成してもよいし、しなくてもよい。
前記カルシウムスルホアルミネート水和物加熱処理物は、前記カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することにより得ることができる。カルシウムスルホアルミネート水和物の加熱処理は、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上の温度で、10分間以上行うことが好ましく、30分間以上行うことがより好ましい。前記加熱温度の上限としては、特に制限はないが、1600℃以下が好ましい。また、前記加熱時間の上限としても、特に制限はないが、24時間以内が好ましい。
この加熱処理では、前記カルシウムスルホアルミネート水和物の水和水の脱水による重量減少が起こる。例えば、前記加熱処理により、重量減少率が15%以上になることが好ましく、20%以上になることがより好ましく、30%以上になることが更に好ましい。なお、前記重量減少率とは、カルシウムスルホアルミネート水和物の初期重量に対する加熱処理後の重量減少分の割合(%)とする。
前記加熱処理は、大気圧環境下で実施してもよいし、減圧しながら実施してもよい。また、合成したカルシウムスルホアルミネート水和物を乾燥した後に加熱処理を実施してもよいし、乾燥せずに加熱処理を実施してもよい。またカルシウムスルホアルミネート水和物を前記したような固相法により合成する場合は、混合して焼成したものを、前記カルシウムスルホアルミネート水和物加熱処理物として使用することができる。前記加熱処理に用いる装置としても、特に制限はなく、例えば公知の熱風乾燥機、電気炉、恒温器、流動層乾燥機、真空乾燥機、スプレードライヤー、ロータリーキルン等を用いて行うことができる。
前記カルシウムスルホアルミネート水和物、及び、前記カルシウムスルホアルミネート水和物加熱処理物は、いずれかを単独で前記(A)成分として使用してもよいし、両者を併用して前記(A)成分として使用してもよい。両者を併用する場合の、前記カルシウムスルホアルミネート水和物と前記カルシウムスルホアルミネート水和物加熱処理物との使用量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記カルシウムスルホアルミネート水和物と前記カルシウムスルホアルミネート水和物加熱処理物とでは、前記カルシウムスルホアルミネート水和物加熱処理物の方が、より高い有害物質除去力を有する。そのため、有害物質除去力を向上させる観点からは、前記(A)成分としては、前記カルシウムスルホアルミネート水和物加熱処理物を多く使用することが好ましく、前記カルシウムスルホアルミネート水和物加熱処理物を単独で使用することがより好ましい。
前記(B)成分は、カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質(本明細書中において、単に「カルシウムアルミネート加熱処理物」と称することがある)と、硫酸塩との混合物である。
前記カルシウムアルミネートとは、CaOとAl2O3を主体とする化合物の総称であり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CaAl2O4、CaAl4O7、CaAl12O19、Ca3Al2O6、Ca12Al14O33、Ca5Al6O14、Ca9Al10O24、Ca2Al2O5等や、これらの混合物、これらの水和物等が挙げられる。これらの中でも、前記カルシウムアルミネートとしては、有害物質除去力を向上させることができる点で、Ca12Al14O33、Ca3Al2O6や、これらの混合物が好ましい。前記カルシウムアルミネートは、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
また、前記カルシウムアルミネートには不純物が含まれることがあるが、その種類及び含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば特に制限はなく、具体例としては、例えば、Fe2O3、SiO2、MgO、TiO2、P2O5、Cl等が挙げられる。また、前記カルシウムアルミネートは、結晶性の化合物であってもよいし、非結晶性の化合物であってもよく、また、合成品であってもよいし、天然に産出されるものであってもよい。また、その粒子径も特に制限はなく、例えば、取り扱い上の点から0.1μm以上が好ましい。
前記カルシウムアルミネートは、例えば、合成により得ることができ、前記合成は、特に制限はなく、公知の方法によって行うことができる。例えば、水中でカルシウム化合物とアルミニウム化合物とを混合することにより合成することができるし、アルミニウム化合物とカルシウム化合物とを混合して1000℃以上、好ましくは1300℃以上の温度で高温焼成することにより合成する(固相法)こともできる。前記焼成処理に用いる装置としても、特に制限はなく、例えば公知の熱風乾燥機、電気炉、恒温器、流動層乾燥機、真空乾燥機、スプレードライヤー、ロータリーキルン等を用いて行うことができる。このときのカルシウム化合物は、カルシウムを含有するものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム等やこれらの水和物等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。アルミニウム化合物は、アルミニウムを含有するものであれば特に制限はなく、例えば、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、炭酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等やこれらの水和物等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの原料は純品だけでなくアルミスラッジ等の不純物を含むものであっても使用することができる。
前記カルシウムアルミネートの合成反応において、pHは9以上とすることが好ましい。pHの調整が必要なときには、一般的なpH調整剤を使用することができる。pH調整剤は、特に制限はなく、例えば、炭酸ガス、塩酸、硝酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、アンモニア等のアルカリ剤を、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
また前記カルシウムアルミネートの合成反応においては、pH調整後、撹拌を実施してもよいし、しなくてもよい。撹拌は常温で実施しても、加温しながら実施してもよい。また、撹拌後は、熟成してもよいし、しなくてもよい。
前記カルシウムアルミネート加熱処理物は、前記カルシウムアルミネートを加熱処理することにより得ることができる。カルシウムアルミネートの加熱処理は、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上の温度で、10分間以上行うことが好ましく、30分間以上行うことがより好ましい。前記加熱温度の上限としては、特に制限はないが、1600℃以下が好ましい。また、前記加熱時間の上限としても、特に制限はないが、24時間以内が好ましい。
前記加熱処理は、大気圧環境下で実施してもよいし、減圧しながら実施してもよい。また合成したカルシウムアルミネートを乾燥した後に加熱処理を実施してもよいし、乾燥せずに加熱処理を実施してもよい。前記加熱処理に用いる装置としても、特に制限はなく、例えば公知の熱風乾燥機、電気炉、恒温器、流動層乾燥機、真空乾燥機、スプレードライヤー、ロータリーキルン等を用いて行うことができる。
前記硫酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸銀、硫酸カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸銅、硫酸マンガン、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム等が挙げられる。また、前記硫酸塩としては、これらの水和物であってもよい。
これらの中でも、前記硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、及び、硫酸アルミニウムから選択される1種以上が好ましく、中でも硫酸カルシウムが特に好ましい。前記硫酸塩として、少なくとも硫酸カルシウムを含有する水処理剤は、有害物質除去力に加えて、処理後の水中の硫酸イオン濃度の低さにも優れ、そのため、少ない薬剤量で効率よく有害物質を除去できるとともに、硫酸イオンによる二次汚染をも少なくできる点で、有利である。前記硫酸カルシウムとしては、例えば、硫酸カルシウム(無水)、硫酸カルシウム・2水和物、硫酸カルシウム・0.5水和物などが挙げられ、これらの有害物質除去力の強さは、硫酸カルシウム(無水)>硫酸カルシウム・2水和物≒硫酸カルシウム・0.5水和物の順となる。更に、前記硫酸塩として硫酸カルシウムを用いる場合、水溶性の高い硫酸ナトリウムや硫酸アルミニウムを併せて用いると、有害物質除去力を向上させることができる点で、有利である。前記硫酸塩は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
前記カルシウムアルミネート及び/又はその加熱処理物と、前記硫酸塩とは、両者を併用して、前記(B)成分として使用する。なお、前記「カルシウムアルミネート及び/又はその加熱処理物と、硫酸塩との混合物」としては、必ずしも前記カルシウムアルミネート及び/又はその加熱処理物と、前記硫酸塩とを予め混合した状態で使用する必要はなく、前記カルシウムアルミネート及び/又はその加熱処理物と、前記硫酸塩とを、水中に別々に添加して使用するものであってもよい。なお、前記カルシウムアルミネート及び/又はその加熱処理物と、前記硫酸塩とを水中に別々に添加して使用する場合には、先に前記硫酸塩を添加し、後に前記カルシウムアルミネート及び/又はその加熱処理物を添加して用いる態様が、より有害物質除去力を向上させることができる点で、有利である。
前記カルシウムアルミネート及び/又はその加熱処理物と、前記硫酸塩との使用量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、質量比で、カルシウムアルミネート及び/又はその加熱処理物:硫酸塩=20:80〜90:10が好ましく、25:75〜75:25がより好ましく、30:70〜70:30が更に好ましい。前記使用量比が、前記好ましい範囲内であると、有害物質除去力を向上させることができ、かつ、有害物質処理後の汚泥の発生を抑制することができる点で、有利である。
前記水処理剤には、前記(A)成分、及び、前記(B)成分の少なくともいずれかが含有されていればよく、即ち、前記(A)成分と前記(B)成分との組み合わせとしては、以下の(1)〜(7)の態様が挙げられる。
(1)カルシウムスルホアルミネート水和物((A)成分)を含有する水処理剤。
(2)カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質((A)成分)を含有する水処理剤。
(3)カルシウムスルホアルミネート水和物、及び、カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質((A)成分)を含有する水処理剤。
(4)カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩との混合物((B)成分)を含有する水処理剤。
(5)カルシウムスルホアルミネート水和物((A)成分)、並びに、カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩との混合物((B)成分)を含有する水処理剤。
(6)カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質((A)成分)、並びに、カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩との混合物((B)成分)を含有する水処理剤。
(7)カルシウムスルホアルミネート水和物、及び、カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質((A)成分)、並びに、カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩との混合物((B)成分)を含有する水処理剤。
これらの中でも、少なくとも前記(B)成分を含有する前記(4)〜(7)の態様の水処理剤は、有害物質除去力に加えて、水処理剤の凝集性(沈降性)にも優れ、そのため、有害物質処理後に水処理剤を回収するために、高価な凝集剤を添加したり、凝集(沈降)するまで長時間静置させたりする必要が無く、有害物質処理後の処理水と水処理剤とを容易に分離することができる点で、有利である。さらに、前記(B)成分の硫酸塩として、少なくとも硫酸カルシウムやその水和物を含有する水処理剤は、有害物質除去力、優れた凝集性(沈降性)に加えて、処理後の水中の硫酸イオン濃度の低さにも優れ、そのため、少ない薬剤量で効率よく有害物質を除去できるとともに、硫酸イオンによる二次汚染をも少なくできる点で、有利である。
前記(C)成分は、カルシウムアルミネート、及び/又は、カルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質(本明細書中において、単に「カルシウムアルミネート加熱処理物」と称することがある)である。
前記(1)〜(3)の態様(前記(A)成分と前記(B)成分のうち、前記(A)成分のみを含有する態様)の水処理剤においては、更に、前記(C)成分として、カルシウムアルミネート、及び/又は、カルシウムアルミネート加熱処理物を含有することが好ましい。前記(A)成分に加えて、前記(C)成分を含有する水処理剤は、有害物質除去力に加えて、処理後の水中の硫酸イオン濃度の低さにも優れ、そのため、少ない薬剤量で効率よく有害物質を除去できるとともに、硫酸イオンによる二次汚染をも少なくできる点で、有利である。
前記(C)成分としてのカルシウムアルミネートの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(B)成分の項目で挙げられたカルシウムアルミネートと同様なカルシウムアルミネート(例えば、CaAl2O4、CaAl4O7、CaAl12O19、Ca3Al2O6、Ca12Al14O33、Ca5Al6O14、Ca9Al10O24、Ca2Al2O5等や、これらの混合物、これらの水和物等)を好適に使用することができる。また、前記カルシウムアルミネートの入手方法としても、特に制限はなく、例えば、前記(B)成分の項目に記載された合成方法と同様な方法により合成することができる。
また、前記(C)成分としてのカルシウムアルミネート加熱処理物としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(B)成分の項目で挙げられたカルシウムアルミネート加熱処理物と同様に、前記カルシウムアルミネートを加熱処理することにより得ることができる。前記カルシウムアルミネートの加熱処理方法としても、特に制限はなく、例えば、前記(B)成分の項目に記載されたカルシウムアルミネートの加熱処理方法と同様な方法により行うことができる。
前記カルシウムアルミネート、及び、前記カルシウムアルミネート加熱処理物は、いずれかを単独で前記(C)成分として使用してもよいし、両者を併用して前記(C)成分として使用してもよい。両者を併用する場合の、前記カルシウムアルミネートと前記カルシウムアルミネート加熱処理物との使用量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記の通り、前記(C)成分は、少なくとも前記(A)成分と併用される。前記(A)成分と前記(C)成分との使用量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、質量比で、(A)成分:(C)成分=35:65〜95:5が好ましく、45:55〜85:15がより好ましい。前記使用量比が、前記好ましい範囲内であると、有害物質除去力に加えて、処理後の水中の硫酸イオン濃度の低さにも優れ、そのため、少ない薬剤量で効率よく有害物質を除去できるとともに、硫酸イオンによる二次汚染をも少なくできる点で、有利である。
また、前記(A)成分及び前記(C)成分としては、例えば、前記(A)成分の一種であるカルシウムスルホアルミネート水和物と、前記(C)成分の一種であるカルシウムアルミネートとの共存体(本明細書中において、単に「共存体」と称することがある)を使用してもよい。ここで、前記共存体とは、広角X線回折測定にて、カルシウムスルホアルミネート水和物、及びカルシウムアルミネートの両方のピークを観察できた構造体とする。なお、参考として、カルシウムスルホアルミネート水和物の一種であるエトリンガイトのX線回折チャートを図3に、カルシウムアルミネートのX線回折チャートを図4に、エトリンガイトとカルシウムアルミネートとの共存体のX線回折チャートを図5に示す。なお、広角X線回折測定はX線回折装置((株)リガク製、RINT2100)を用い、光源Cu−K−ALPHA1/40kV/20mA、走査速度4.0°/minで測定した。
カルシウムスルホアルミネート水和物を調製する際に、理論量より少ないモル数の硫酸化合物を添加することで、前記共存体を合成することができる。ここで、硫酸化合物の添加量は、硫酸化合物が添加されていれば、特に制限はないが、理論量の2割以上8割以下が好ましい。
また、前記(A)成分及び前記(C)成分としては、前記共存体を加熱処理することによって得られる物質(本明細書中において、単に「共存体加熱処理物」と称することがある)を使用してもよい。前記共存体の加熱処理は、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上の温度で、10分間以上行うことが好ましく、30分間以上行うことがより好ましい。前記加熱温度の上限としては、特に制限はないが、1600℃以下が好ましい。また、前記加熱時間の上限としても、特に制限はないが、24時間以内が好ましい。
前記加熱処理は、大気圧環境下で実施してもよいし、減圧しながら実施してもよい。また合成した共存体を乾燥した後に加熱処理を実施してもよいし、乾燥せずに加熱処理を実施してもよい。加熱処理に用いる装置としても、特に制限はなく、例えば公知の熱風乾燥機、電気炉、恒温器、流動層乾燥機、真空乾燥機、スプレードライヤー、ロータリーキルン等を用いて行うことができる。
前記(D)成分は、炭酸塩である。
前記水処理剤は、更に、前記(D)成分として、炭酸塩を含有することが好ましい。前記炭酸塩を含有する水処理剤は、より有害物質除去力を向上させることができる点で、有利である。
前記(E)成分は、アルミニウム化合物である。
前記水処理剤は、更に、前記(E)成分として、アルミニウム化合物を含有することが好ましい。前記アルミニウム化合物を含有する水処理剤は、より有害物質除去力を向上させることができる点で、有利である。
前記アルミニウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムなどが挙げられる。なお、前記(B)成分を含有する前記(4)〜(7)の態様の水処理剤については、前記アルミニウム化合物としては、前記(B)成分における硫酸塩に含まれるもの(硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム等)は除くものとする。前記アルミニウム化合物は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
また、本発明の水処理剤は、前記(A)成分、及び、前記(B)成分の少なくともいずれか、好ましくは更に、前記(C)成分、前記(D)成分、及び、前記(E)成分の少なくともいずれかのみからなるものであってもよいし、更に適宜その他の成分を含有してなるものであってもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、原料として用いたカルシウム化合物や、酸やアルカリ等のpH調整剤、水溶性アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
前記その他の成分の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、前記水溶性アルカリ土類金属塩は、いずれの態様の水処理剤に含有されていてもよいが、中でも、前記(1)〜(3)の態様(前記(A)成分と前記(B)成分のうち、前記(A)成分のみを含有する態様)の水処理剤に含有されることが好ましい。
前記水溶性アルカリ土類金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、硫化バリウム、水酸化バリウム、酢酸バリウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、亜硝酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化ラジウム、硝酸ラジウム、水酸化ラジウム、臭化ラジウム等、硫酸イオンと結合性を有し、硫酸イオンと結合することで溶解度の低い沈殿を形成することができる物質を好適に使用することができる。前記水溶性アルカリ土類金属塩は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。ここで、水溶性とは20℃の水100gに対する溶解度が1g以上であることとする。
本発明の水処理剤は、例えば、前記(A)成分、及び、前記(B)成分の少なくともいずれか、好ましくは更に、前記(C)成分、前記(D)成分、及び、前記(E)成分の少なくともいずれか、並びに、必要に応じてその他の成分を混合することにより、製造することができる。また、前記水処理剤は、塊状、粒状、粉状等、いずれの状態でも使用することができる。粒状、粉状の水処理剤は、例えば、粉砕することにより製造することができる。粉砕方法は特に制限はなく、公知の装置を用いて行うことができ、前記(A)成分、及び、前記(B)成分の少なくともいずれか、好ましくは更に、前記(C)成分、前記(D)成分、及び、前記(E)成分の少なくともいずれか、並びに、必要に応じてその他の成分のそれぞれを、混合する前に粉砕してもよいし、前記(A)成分、及び、前記(B)成分の少なくともいずれか、好ましくは更に、前記(C)成分、前記(D)成分、及び、前記(E)成分の少なくともいずれか、並びに、必要に応じてその他の成分を、混合した後に粉砕してもよい。
本発明の水処理剤によれば、有害物質含有水中から有害物質を簡便かつ効率的に除去することができる。そのため、本発明の水処理剤は、例えば後述する本発明の水処理方法に、好適に利用可能である。
本発明の水処理方法は、前記した本発明の水処理剤を用いて行うことを特徴とする。
本発明の水処理方法において処理対象となる水(処理対象水)としては、何らかの有害物質を含有する水であれば、特に制限はなく、例えば、様々な製品の製造工程や、燃焼ガスの洗煙工程、汚染土壌の浄化工程等から生じる産業廃水等が挙げられる。処理対象となる有害物質としても、特に制限はなく、例えば、セレン、銅、クロム、モリブデン、アンチモン、鉛、ヒ素、亜鉛、カドミウム、ニッケル、マンガン、鉄、スズ、コバルト等の重金属類や、ホウ素、フッ素、リン等が挙げられる。特に、本発明の水処理方法は、ホウ素を含有する水に適している。ホウ素含有水は、通常オルトホウ酸(H3BO4)の形でホウ素を含有するが、ホウ酸塩やその他の形でホウ素を含むものであってもよく、このようなホウ素含有水としては、例えば、ガラス工業や電気メッキ業等の廃水が挙げられる。また、本発明の水処理剤は、処理対象水のpHが2〜14の範囲で使用することができ、塩化物イオン等の他のイオンが共存しても使用することができる。なお、前記水処理剤がアルカリ性であるため、通常は、処理時の有害物質含有水は弱アルカリ性になる。有害物質含有水が強酸性溶液である場合には、必要に応じて、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムを添加して、弱アルカリ性にすることができる。
本発明の水処理方法は、当該水処理剤が、有害物質含有水と接触することができればよく、その方法に特に制限はない。例えば、有害物質含有水中に所定量の当該水処理剤を添加して有害物質を除去した後、当該水処理剤を固液分離により分離する方法(添加法)や、当該水処理剤を充填した充填塔へ水を通水させることによって有害物質を除去する方法(充填法)等が挙げられる。いずれの方法においても、効率的に有害物質を除去することが可能である。また、有害物質含有水が水処理剤と接触する前に、pH調整工程等、前処理工程を設けてもよい。
添加法における水処理剤の添加量は、特に制限はなく、有害物質含有水の有害物質濃度に応じて適宜決定される。
添加法における水処理剤の添加方法としては、特に制限はなく、例えば、水処理設備の配管などの流路や貯水槽に添加する方法などが挙げられる。
添加法における処理時間は、特に制限はなく、例えば10分間以上、好ましくは30分間以上とすることができる。また処理中に撹拌しても、しなくてもよい。撹拌するとき、装置、操作などは特に制限されず、従来公知である装置、操作を用いることができる。
添加法における有害物質処理後の固液分離は、デカンテーション、濾過、遠心分離などの手段により通常の装置を用いて実施することができる。本発明の水処理剤は、例えば、少なくとも前記(B)成分を含有する前記(4)〜(7)の態様において、凝集性(沈降性)に優れるため、凝集剤を添加しなくとも容易に固液分離を行うことができるが、必要に応じて、更に凝集剤を添加してもよい。用いる凝集剤は、特に制限はなく、従来公知の物質を用いることができ、例えば、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、両性系高分子凝集剤、無機凝集剤などが挙げられる。
前記固液分離を行うことにより、水処理後の水処理剤を容易に回収することができ、回収された水処理剤は、例えば、適切な処理を施した後、再び有害物質含有水の有害物質除去に用いることができる。具体的には、水処理後に回収される、水に不溶の物質(水処理剤)に加熱処理を施すことによって、得られた加熱処理物を再び有害物質含有水の有害物質除去に用いることができる。この加熱処理物は、飽和有害物質吸着量に至るまでは、好適に有害物質含有水の有害物質除去への再利用が可能である。
前記水処理後に回収される、水に不溶の物質(水処理剤)の加熱処理は、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上の温度で、10分間以上行うことが好ましく、30分間以上行うことがより好ましい。前記加熱温度の上限としては、特に制限はないが、1600℃以下が好ましい。また、前記加熱時間の上限としても、特に制限はないが、24時間以内が好ましい。
この加熱処理では重量減少が起こる。例えば、前記加熱処理により、重量減少率が15%以上になることが好ましく、20%以上になることがより好ましく、25%以上になることが更に好ましい。なお、前記重量減少率とは、回収された水に不溶の物質の乾燥重量に対する加熱処理後の重量減少分の割合(%)とする。
前記加熱処理は、大気圧環境下で実施してもよいし、減圧しながら実施してもよい。また、回収された物質を乾燥した後に加熱処理を実施してもよいし、乾燥せずに加熱処理を実施してもよい。前記加熱処理に用いる装置としても、特に制限はなく、例えば公知の熱風乾燥機、電気炉、恒温器、流動層乾燥機、真空乾燥機、スプレードライヤー、ロータリーキルン等を用いて行うことができる。
充填法における充填塔への水処理剤の充填量は、特に制限はなく、充填塔の大きさや、有害物質含有水の通水速度などに応じて適宜決定される。
充填法における充填塔は、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、またその数も特に制限はなく、例えば、充填塔1基のみを使用することもできるし、複数基の充填塔を直列につなぎ使用することもできる。
充填法における水処理剤の充填層への流入は上向流でも下向流でもよく、空間速度(SV)にも特に制限はないが、例えば1〜120hr−1、好ましくは5〜50hr−1とすることができる。
また充填塔から回収された水処理剤も、適切な処理を施した後、再び有害物質含有水の有害物質除去に用いることができる。
本発明の水処理方法によれば、簡単な装置及び操作により、少ない薬剤量(水処理剤量)で効率よく有害物質を除去することができる。そのため、本発明の水処理方法は、例えば、各種産業廃水における有害物質の除去に、好適に利用可能である。
下記表1〜13に示す各成分を混合することにより、実施例1〜62、比較例1〜12の各水処理剤を製造した。なお、表1〜13中、「添加濃度」とは、処理対象水に対する各成分の濃度(質量%)を示す。また、表1〜13中、「A−1」〜「A−5」、「B−1」〜「B−7」、「b−1」〜「b−6」、「C−1」〜「C−7」、「D−1」〜「D−3」、「E−1」〜「E−2」の各成分の詳細は、表14に示す通りである。
得られた実施例1〜62、比較例1〜12の水処理剤について、下記表1〜13に示す条件で有害物質含有水(処理対象水)を処理したときの有害物質除去率を算出することにより、有害物質除去力を評価した。具体的には、75mLの市販のマヨネーズ瓶に、有害物質含有水(処理対象水)50.0gと、所定量の水処理剤を添加し、所定の時間激しく撹拌した後、10分間静置した。処理液を濾過し、必要に応じて純水で希釈した後、ICP発光分析装置((株)パーキンエルマージャパン製、optima5300DV)、又は、イオン電極(サーモエレクトロン(株)製、Orion370)を用いて有害物質濃度を測定した。有害物質濃度は、ホウ素、リン酸、カドミウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、鉄、鉛に関しては、前記ICP発光分析装置を用いて測定した。フッ素に関しては、前記イオン電極を用いて測定した。有害物質除去率は下記式(1)により算出した。なお、前記有害物質除去率は100%に近い方が、有害物質除去力が高いことを示す。本発明では、50%以上を有害物質除去率の合格レベルとした。結果を表1〜13に示す。
[式]
有害物質除去率(%)=(1−C1/C0)×100 ・・・式(1)
C1:処理後の有害物質濃度(mg/L)
C0:処理前の初期有害物質濃度(mg/L)
また、実施例1〜62、比較例1〜12の水処理剤について、前記(1)と同様に水処理を行い、処理液を濾過し、必要に応じて純水で希釈した後、ICP発光分析装置((株)パーキンエルマージャパン製、optima5300DV)を用いて、処理後の水中の硫酸イオン濃度を測定した。結果を表1〜13に示す。なお、表中の「ND」は検出下限値未満であることを示す。
また、実施例1〜62、比較例1〜12の水処理剤について、有害物質除去後の凝集性(沈降性)を、以下のようにして評価した。75mLの市販のマヨネーズ瓶に、有害物質含有水(処理対象水)50.0gと、所定量の水処理剤を添加し、所定の時間激しく撹拌した後、静置した。10分後、気液界面の高さと固液界面の高さを測定し、下記式(2)により凝集率(沈降率)を算出した(図1参照)。なお、凝集率は100%に近い方が、凝集性が良好であることを示すが、凝集率が100%の場合は、水処理剤が処理対象水に溶解したことを示し、凝集性に優れることの指標とはならない(比較例8、9、11)。結果を表1〜13に示す。
[式]
凝集率(%)=(1−b/a)×100 ・・・式(2)
a:気液界面の高さ(mm)
b:固液界面の高さ(mm)
水1L中に硫酸アルミニウム6.3gと、水酸化カルシウム8.9gとを混合し、水酸化ナトリウムでpHを12に調整した後、室温で1時間撹拌、24時間熟成し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で減圧乾燥し、不溶性固体を得た。この固体を広角X線回折測定により分析し、エトリンガイトであることを確認した。このエトリンガイト15.0gを高温電気炉(ヤマト科学(株)製、FP41)を用いて500℃で5時間加熱処理し、A−1を8.6g得た。なお、加熱処理による重量減少率は42.4%であった。
水1L中に硫酸アルミニウム6.3gと、水酸化カルシウム8.9gとを混合し、水酸化ナトリウムでpHを12に調整した後、室温で1時間撹拌、24時間熟成し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で減圧乾燥し、不溶性固体を得た。この固体を広角X線回折測定により分析し、エトリンガイトであることを確認した。このエトリンガイト15.0gを高温電気炉(ヤマト科学(株)製、FP41)を用いて200℃で5時間加熱処理し、A−2を10.0g得た。なお、加熱処理による重量減少率は33.2%であった。
水1L中に硫酸アルミニウム6.3gと、水酸化カルシウム8.9gとを混合し、水酸化ナトリウムでpHを12に調整した後、室温で1時間撹拌、24時間熟成し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で減圧乾燥し、不溶性固体を得た。この固体を広角X線回折測定により分析し、エトリンガイトであることを確認した。このエトリンガイト15.0gを高温電気炉(ヤマト科学(株)製、FP41)を用いて150℃で5時間加熱処理し、A−3を10.8g得た。なお、加熱処理による重量減少率は28.0%であった。
水1L中に硫酸アルミニウム6.3gと、水酸化カルシウム8.9gとを混合し、水酸化ナトリウムでpHを12に調整した後、室温で1時間撹拌、24時間熟成し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で減圧乾燥し、不溶性固体を得た。この固体を広角X線回折測定により分析し、エトリンガイトであることを確認した。このエトリンガイト15.0gを高温電気炉(ヤマト科学(株)製、FP41)を用いて100℃で5時間加熱処理し、A−4を12.2g得た。なお、加熱処理による重量減少率は18.6%であった。
水1L中に硫酸アルミニウム6.3gと、水酸化カルシウム8.9gとを混合し、水酸化ナトリウムでpHを12に調整した後、室温で1時間撹拌、24時間熟成し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で減圧乾燥し、不溶性固体(A−5)を得た。この固体A−5を広角X線回折測定により分析し、エトリンガイトであることを確認した。
水1L中に水酸化アルミニウム41.2gと水酸化カルシウム58.8gとを混合し、100℃で12時間撹拌、24時間熟成し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で乾燥し、不溶性固体(B−6)81.7gを得た。この固体B−6を500℃で3時間焼成して固体(B−1)59.5gを得た。それぞれの生成物を広角X線回折測定により分析し、固体B−6がCa3Al2O6・6H2O、固体B−1がCa12Al14O33であることを確認した。
水酸化アルミニウム4.1gと水酸化カルシウム5.9gを混合し、るつぼの中に入れ、焼成炉((株)モトヤマ製、SUPER BURN)を用いて1400℃で7時間加熱し、固体(B−2)を7.0g得た。この固体B−2を広角X線回折測定により分析し、Ca3Al2O6であることを確認した。
水酸化アルミニウム4.1gと水酸化カルシウム5.9gを混合し、るつぼの中に入れ、焼成炉((株)モトヤマ製、SUPER BURN)を用いて1380℃で5時間加熱し、固体(B−3)を7.1g得た。この固体B−3を広角X線回折測定により分析し、Ca3Al2O6/Ca12Al14O33の混合物であることを確認した。
水1L中に硝酸アルミニウム・9水和物14.1gと、硝酸カルシウム・4水和物26.6gとを混合し、水酸化ナトリウムでpHを12に調整した後、室温で1時間撹拌し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で乾燥し、不溶性固体(B−5)10.9gを得た。この固体B−5を広角X線回折測定により分析し、Ca2Al2O5・6H2Oであることを確認した。この固体B−5を500℃で3時間焼成して固体(B−7)7.8gを得た。
中でも、(B)カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩との混合物、を含有する実施例7〜23の水処理剤は、有害物質除去率が高いことに加え、凝集率も高く、そのため、これらの水処理剤は、少ない薬剤量で効率よく有害物質を除去できるとともに、処理後に水処理剤を回収するために、高価な凝集剤を添加したり、凝集(沈降)するまで長時間静置させたりする必要が無く、処理後の処理水と水処理剤とを容易に分離できる点で有利であることがわかった。(なお、実施例7の水処理剤の水処理後の凝集の様子を、図2左に示す。)中でも特に、(B)カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩との混合物であって、前記硫酸塩として硫酸カルシウムやその水和物を使用した実施例7〜12、及び17〜23の水処理剤は、有害物質除去率、及び凝集率が高いことに加え、更に処理後の水中の硫酸イオン濃度も低く、そのため、これらの水処理剤は、少ない薬剤量で効率よく有害物質を除去でき、有害物質処理後の処理水と水処理剤とを分離する際にも有利であるとともに、硫酸イオンによる二次汚染をも少なくできることがわかった。
また、(A)カルシウムスルホアルミネート水和物、及び/又は、カルシウムスルホアルミネート水和物を加熱処理することによって得られる物質と、(C)カルシウムアルミネート、及び/又は、カルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質とを含有する実施例24〜34の水処理剤は、有害物質除去率が高いことに加え、処理後の水中の硫酸イオン濃度も低く、そのため、これらの水処理剤は、少ない薬剤量で効率よく有害物質を除去できるとともに、硫酸イオンによる二次汚染をも少なくできることがわかった。
また、実施例1〜62の水処理剤はいずれも、市販のキレート樹脂より非常に安価に製造することができ、経済性の観点からも、非常に効率よく有害物質を除去することができる点で、有利である。
水1L中に硝酸アルミニウム9水和物14.1gと、硝酸カルシウム4水和物26.6gと、硫酸ナトリウム4.0gとを混合し、pHを12に調整した後、1時間撹拌、24時間熟成し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で乾燥し、不溶性固体を得た。その固体を広角X線回折測定により分析し、カルシウムスルホアルミネート水和物の一種であるエトリンガイトとカルシウムアルミネート(Ca2Al2O5・6H2O)との共存体であることを確認した。なお、エトリンガイトとカルシウムアルミネートとの共存体のX線回折チャートを図5に示す。なお、広角X線回折測定はX線回折装置((株)リガク製、RINT2100)を用い、光源Cu−K−ALPHA1/40kV/20mA、走査速度4.0°/minで測定した。
その固体を初期pH12のホウ素含有水(ホウ素濃度112mg/L)に1質量%添加して、5時間撹拌し、水処理を実施したところ、有害物質であるホウ素の除去率は55.2%、処理後の水中の硫酸イオン濃度は検出下限値未満であり、少ない薬剤量で効率よく、かつ二次汚染を少なくホウ素を除去できることがわかった。このときの凝集率は、10%であった。
実施例63で得た固体を500℃で5時間加熱処理した後、初期pH12のホウ素含有水(ホウ素濃度112mg/L)に1質量%添加して、5時間撹拌し、水処理を実施したところ、有害物質であるホウ素の除去率は98.5%、処理後の水中の硫酸イオン濃度は6mg/Lであり、少ない薬剤量で効率よく、かつ二次汚染を少なくホウ素を除去できることがわかった。このときの凝集率は、5%であった。
水1L中に硝酸アルミニウム9水和物14.1gと、硝酸カルシウム4水和物26.6gと、硫酸ナトリウム5.6gとを混合し、pHを12に調整した後、1時間撹拌、24時間熟成し、反応させた。反応終了後、沈殿物を濾過、室温で乾燥し、不溶性固体を得た。その固体を広角X線回折測定により分析し、カルシウムスルホアルミネート水和物の一種であるエトリンガイトとカルシウムアルミネート(Ca2Al2O5・6H2O)との共存体であることを確認した。
その固体を500℃で5時間加熱処理した後、初期pH12のホウ素含有水(ホウ素濃度112mg/L)に1質量%添加して5時間撹拌し、水処理を実施したところ、有害物質であるホウ素の除去率は97.1%、処理後の水中の硫酸イオン濃度は19mg/Lであり、少ない薬剤量で効率よく、かつ二次汚染を少なくホウ素を除去できることがわかった。このときの凝集率は6%であった。
ホウ素含有水(ホウ素濃度102mg/L、pH9)にb−1(硫酸カルシウム・2水和物)0.4質量%を添加し、30分撹拌した後、B−1(Ca12Al14O33)0.4質量%を添加した。その後、5時間撹拌し、ホウ素処理を実施した。この時のホウ素除去率は、87.1%であり、両成分を同時に添加した場合(実施例7)に比べホウ素除去力が向上した。また、処理後の水中の硫酸イオン濃度は18mg/Lであり、二次汚染が少なく、凝集率は、72%であり、凝集性も良好であった。
ホウ素除去用として市販されているキレート樹脂ダイヤイオンCRB05(三菱化学(株)製)をホウ素含有水(ホウ素濃度101mg/L、pH9)に1質量%添加して、5時間撹拌し、水処理を実施したところ、ホウ素除去率は39.1%であり、ホウ素濃度はやや低減され、処理後の水中の硫酸イオン濃度も検出下限値未満であったが、市販のキレート樹脂は非常に高価であり、経済性を考慮すると効率よくホウ素を除去することができない。この時の凝集率は、95%であった。
ホウ素除去用として市販されているキレート樹脂ダイヤイオンCRB05(三菱化学(株)製)をホウ素含有水(ホウ素濃度106mg/L、pH12)に1質量%添加して、5時間撹拌し、水処理を実施したところ、ホウ素除去率は38.9%であり、ホウ素濃度はやや低減され、処理後の水中の硫酸イオン濃度も検出下限値未満であったが、市販のキレート樹脂は非常に高価であり、経済性を考慮すると効率よくホウ素を除去することができない。この時の凝集率は、95%であった。
硫酸アルミニウム18水和物0.5質量%、及び水酸化カルシウム0.5質量%をホウ素含有水(ホウ素濃度114mg/L、pH9)に添加して、5時間撹拌し、水処理を実施したところ、ホウ素除去率は20.0%であり、水中のホウ素濃度はやや低減されたが、その効果は低く、また硫酸イオン濃度も1406mg/Lであり、二次汚染の可能性があった。さらに凝集率も39%であり、凝集性も十分でなかった。
アルミン酸ナトリウム0.5質量%と水酸化カルシウム0.5質量%、硫酸カルシウム・2水和物0.5質量%をホウ素含有水(ホウ素濃度105mg/L、pH9)に同時に添加して、5時間撹拌し、ホウ素処理を実施した。ホウ素除去率は20.1%であり、ホウ素濃度はやや低減されたが、その効果は低かった。また、処理後の水中の硫酸イオン濃度は1428mg/Lであり、二次汚染の可能性があった。この時の凝集率は、72%であった。
実施例1に示す条件でホウ素含有水を処理した後、ろ過を行い、ホウ素濃度が十分に低下した水と水に不溶の水処理剤を分離した。ろ過で回収した物質を室温で2日間真空乾燥した後、150℃で5時間加熱乾燥した。この時の重量減少率は、27.1%であった。この加熱乾燥によって得られた物質0.8質量%をホウ素含有水(ホウ素濃度106mg/L、pH12)に添加し、5時間撹拌し、水処理を実施した。この時のホウ素除去率は76.4%であり、ホウ素濃度は低減され、その効果は非常に高かった。また、硫酸イオン濃度は656mg/Lであり、凝集率は45%であった。
実施例7に示す条件でホウ素含有水を処理した後、ろ過を行い、ホウ素濃度が十分に低下した水と水に不溶の水処理剤を分離した。ろ過で回収した物質を室温で2日間真空乾燥した後、200℃で1時間加熱乾燥した。この時の重量減少率は、25.3%であった。この加熱乾燥によって得られた物質0.8質量%をホウ素含有水(ホウ素濃度104mg/L、pH12)に添加し、5時間撹拌し、水処理を実施した。この時のホウ素除去率は72.9%であり、ホウ素濃度は低減され、その効果は非常に高かった。また、硫酸イオン濃度は29mg/Lであり、二次汚染が少なく、凝集率は83%であり、凝集性も良好であった。
表14に示す成分からなる初期pH7.2の温泉水(ホウ素濃度76mg/L)に実施例1で用いた水処理剤を1質量%添加して、5時間撹拌し、水処理を実施した。このときのホウ素除去率は95.0%であり、ホウ素濃度は低減され、その効果は非常に高かった。また、硫酸イオン濃度は1250mg/L、凝集率は2%であった。
表14に示す成分からなる初期pH7.2の温泉水(ホウ素濃度76mg/L)に実施例7で用いた水処理剤を添加して、5時間撹拌し、水処理を実施した。このときのホウ素除去率は95.1%であり、ホウ素濃度は低減され、その効果は非常に高かった。また硫酸イオン濃度は25mg/Lであり、二次汚染も少なく、凝集率は70%であり、凝集性も良好であった。
表14に示す成分からなる初期pH7.2の温泉水(ホウ素濃度76mg/L)に実施例24で用いた水処理剤を添加して、5時間撹拌し、水処理を実施した。このときのホウ素除去率は96.0%であり、硫酸イオン濃度は13mg/Lであり、少ない薬剤量で効率よく、かつ二次汚染も少なくホウ素を除去できることがわかった。また凝集率は5%であった。
ホウ素含有水(ホウ素濃度118mg/L、pH12)に、実施例1で用いた水処理剤を1質量%添加して、5時間撹拌し、水処理を実施した後、アニオン系高分子凝集剤を添加し、1時間撹拌した。撹拌後静置すると、水処理剤が沈降し、その上澄み液のホウ素、硫酸イオン濃度を測定すると、ホウ素除去率は85.0%であり、簡単な装置及び操作により、少ない薬剤量で効率よくホウ素を除去できることがわかった。また処理後の水中の硫酸イオン濃度は1204mg/Lであった。
ホウ素含有水(ホウ素濃度116mg/L、pH10)に、実施例24で用いた水処理剤を1質量%添加して、5時間撹拌し、水処理を実施した後、アニオン系高分子凝集剤を添加し、1時間撹拌した。撹拌後静置すると、水処理剤が沈降し、その上澄み液のホウ素、硫酸イオン濃度を測定すると、ホウ素除去率は97.8%、処理後の水中の硫酸イオン濃度は10mg/Lであり、簡単な装置及び操作により、少ない薬剤量で効率よく、かつ二次汚染も少なくホウ素を除去できることがわかった。
実施例1で用いた水処理剤を15g充填し、ホウ素含有水(ホウ素濃度112mg/L、pH12)をSV15hr−1の条件で100mL流入させると、そのホウ素除去率は87.5%であり、簡単な装置及び操作により、少ない薬剤量で効率よくホウ素を除去できることがわかった。また処理後の水中の硫酸イオン濃度は1159mg/Lであった。
実施例24で用いた水処理剤を15g充填し、ホウ素含有水(ホウ素濃度112mg/L、pH12)をSV15hr−1の条件で100mL流入させると、そのホウ素除去率は97.5%、処理後の水中の硫酸イオン濃度は検出下限値以下未満であり、簡単な装置及び操作により、少ない薬剤量で効率よく、かつ二次汚染も少なくホウ素を除去できることがわかった。
A−1(Ca6Al2(SO4)3(OH)12・26H2Oを加熱処理することによって得られる物質)と塩化バリウム2水和物とを質量比80:20で混合した水処理剤を、初期pH12のホウ素含有水(ホウ素濃度104mg/L)に1質量%添加して5時間撹拌し、水処理を実施したところ、ホウ素除去率は92.1%、処理後の水中の硫酸イオン濃度は検出下限値未満であり、少ない薬剤量で効率よく、かつ二次汚染を少なくホウ素を除去できることがわかった。このときの凝集率は、6%であった。
Claims (6)
- ホウ素含有水からホウ素を除去するホウ素除去剤であって、
カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と、硫酸塩と、炭酸塩とを含有することを特徴とするホウ素除去剤。 - カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質(a)と、硫酸塩(b)との質量比(a:b)が、25:75〜75:25である請求項1に記載のホウ素除去剤。
- 炭酸塩の含有量が、カルシウムアルミネート及び/又はカルシウムアルミネートを加熱処理することによって得られる物質と硫酸塩との合計量に対して、1質量%〜50質量%である請求項1から2のいずれかに記載のホウ素除去剤。
- 更に、アルミニウム化合物を含有する請求項1から3のいずれかに記載のホウ素除去剤。
- ホウ素含有水の初期ホウ素濃度が、76mg/L〜127mg/Lである請求項1から4のいずれかに記載のホウ素除去剤。
- ホウ素含有水に対して、請求項1から5のいずれかに記載のホウ素除去剤を添加することを特徴とするホウ素含有水の処理方法。
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