JP2014122320A - 蓄熱材 - Google Patents

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英雄 中西
Takashi Imamura
孝 今村
Susumu Komiyama
晋 小宮山
Akihiko Morikawa
明彦 森川
Kentaro Kanae
健太郎 鼎
Tadao Morita
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Abstract

【課題】蓄熱材として十分な潜熱量を維持しつつ、蓄熱物質のブリードを防止した蓄熱材を提供する。
【解決手段】蓄熱物質(A)と、共役ジエン系(共)重合体と脂肪酸金属塩とから選ばれる少なくとも一つ(B)と、極性樹脂と結晶性ポリオレフィンとから選ばれる少なくとも一つ(C)とを含む組成物の成形体からなる、蓄熱材。(A)成分が、パラフィン化合物、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【選択図】なし

Description

本発明は、相変化に伴って発生する潜熱を利用して蓄熱を行う潜熱蓄熱方式に用いられる蓄熱材に関する。
蓄熱材とは、物質の相変化に伴うエネルギー(潜熱)または単一の相における温度変化に必要なエネルギー(顕熱)の大きい物質を含有する材料であり、該物質に蓄えた熱を必要に応じて取り出すことができる材料のことである。
蓄熱材は、例えばオフィスビルや家屋等の施設における温調用途;自動車等のキャニスター用途;ICチップ等の電子部品における昇温防止用途;衣類の繊維における保温用途;生鮮食品、臓器、抗体等の輸送における保温用途;橋梁等のコンクリート材料における保温用途;カーブミラー等の防曇用途;路面の凍結防止用途;等の種々の分野において利用されている。
潜熱蓄熱物質は相変化する際に液化するため、使用時において漏洩、飛散するという問題がある。これを防止する手段として、エラストマーのようなバインダー成分を使用して潜熱蓄熱物質を固定化する技術がある(たとえば、特許文献1、2参照)。
上記の固定化以外の方法としては、容器中に潜熱蓄熱物質を充填する方法があるが、容器を介することで熱伝導性が悪化し蓄熱性能が低下することや、形状の自由度がないことから、容器を介さない形態(バルク)で潜熱蓄熱物質を使用したいという要望がある。このような潜熱蓄熱物質のバルク使用の形態の一つとしてペレット形状がある。ペレット形状には、媒体との接触面積を大きくすることができる、比較的狭い空間に密に充填できるといったメリットがある(例えば、特許文献3参照)。
だが、特許文献3に開示された蓄熱材では、バインダー成分に相当する高分子担持材としてエチレン−α−オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンを用いている。これらの高分子担持材は、蓄熱物質としてパラフィン化合物を用いた場合、これに溶解するため、蓄熱物質を保持することができず、蓄熱材から蓄熱物質が染み出す(以下、「ブリード」とも称する)という問題があった。
特開平3−66788号公報 国際公開WO2011/078340パンフレット 特開平07−48561号公報
蓄熱材として十分な潜熱量を維持しつつ、蓄熱物質のブリードを防止した蓄熱材を提供する。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、下記の構成によって上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す蓄熱材が提供される。
[1]蓄熱物質(A)と、共役ジエン系(共)重合体と脂肪酸金属塩とから選ばれる少なくとも一つ(B)と、
極性樹脂と結晶性ポリオレフィンとから選ばれる少なくとも一つ(C)とを含む組成物の成形体からなる、
蓄熱材。
[2]前記(A)成分が10〜70質量%、(B)成分が10〜80質量%、(C)成分が10〜60質量%含まれる、前記[1]に記載の蓄熱材。
[3]前記(A)成分が、パラフィン化合物、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルよりなる群から選ばれる少なくとも一種である、前記[1]または[2]に記載の蓄熱材。
[4]前記極性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体、ブタンジオール−ビニルアルコール共重合体、熱可塑性ポリウレタンよりなる群から選ばれる少なくとも一つである、前記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の蓄熱材。
[5]さらに、下記官能基群Xから選ばれる少なくとも1つの官能基を有する水添ジエン系(共)重合体、及び下記官能基群Xから選ばれる少なくとも1つの官能基を有するオレフィン系重合体のうち少なくとも一つ(D)を含む、前記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の蓄熱材。
[官能基群X]:カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基及びオキサゾリン基
[6]ペレット状である、前記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の蓄熱材。
本発明によれば、蓄熱材として十分な潜熱量を維持しつつ蓄熱物質のブリードを防止した蓄熱材を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
I.蓄熱材用組成物
本発明の蓄熱材は、蓄熱物質(A)と、共役ジエン系(共)重合体と、脂肪酸金属塩とから選ばれる少なくとも一つ(B)と、極性樹脂あるいは結晶性ポリオレフィンとから選ばれる少なくとも一つ(C)とを含む組成物の成形体からなる。また、必要に応じて、官能基を有する水添ジエン系(共)重合体、及び官能基を有するオレフィン系重合体のうち少なくとも一つ(D)およびその他の成分を含んでいてもよい。以下、これらの成分の混合物を総称して「蓄熱材用組成物」とも称する。
この蓄熱材用組成物を各種の形状に成形することで、本発明の蓄熱材を得る。この成形方法の一つとして、連続混練装置などからひも状の組成物(以下、「ストランド」と称する)を成形し、それをストランドカッターにていったん冷却して切断するコールドカット方法、ストランドが熱いうちにカットするホットカット法がある。いずれの方法においても、対象のストランドをカッターに搬送する、あるいは、ストランドカッターに巻きつかず安定にカットするためには、組成物に十分な溶融張力と組成物の冷却時における適当な硬さが求められる。この蓄熱材用組成物は、十分な溶融張力と組成物の冷却時における適当な硬さを有するため、容易にストランドを成形し種々の方法でカットすることができるという点で好ましい。
1.(A)成分
蓄熱材用組成物は、パラフィン化合物、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルよりなる群から選択される少なくとも1種からなる蓄熱物質(「(A)成分」とも称する)を含む。
上記パラフィン化合物は、例えば直鎖状および分岐状のアルカンのいずれであってもよいが、蓄熱材の蓄熱量をより大きくする観点から、直鎖のパラフィン、すなわちn−パラフィンであることが好ましい。パラフィン化合物のうちの大部分が直鎖のパラフィンであれば、少量のイソパラフィンを含有していてもよい。n−パラフィンは、パラフィン化合物全体に対して70質量%以上含有されていることが好ましく、90質量%以上含有されていることがより好ましく、99質量%以上含有されていることがとくに好ましい。
パラフィン化合物の炭素数は、好ましくは7〜24であり、より好ましくは11〜20である。この炭素数の値は、上記の範囲から、所望の相変化温度に応じて適宜に選択される。パラフィン化合物は、本発明が適用される環境温度領域における熱を有効利用するとの観点から、示差走査熱量計(DSC)によって測定した場合に−20〜50℃程度に融点を有するものを選択して使用することが好ましい。好ましいパラフィン化合物をその融点とともに例示すると、以下のとおりである。
n−ヘプタン(−91℃)、n−ノナン(−51℃)、n−オクタン(−57℃)、n−デカン(−30℃)、n−ウンデカン(−21℃)、n−ドデカン(−12℃)、n−トリデカン(−5℃)、n−テトラデカン(6℃)、n−ペンタデカン(9℃)、n−ヘキサデカン(18℃)、n−ヘプタデカン(21℃)、n−オクタデカン(28℃)、n−ノナデカン(32℃)、n−イコサン(37℃)、n−ヘンイコサン(41℃)およびn−ドコサン(46℃)。
なお、本明細書における蓄熱物質の融点とは、JIS K−7121に準拠して測定した際の結晶融解ピークにおける補外融解開始温度(Tim)に相当する。
パラフィン化合物の一態様として、石油ワックスを用いることもできる。石油ワックスとしては、例えば、石油又は天然ガスを原料として、減圧蒸留留出油から分離精製することにより製造される、常温において固形のパラフィンワックス、石油を原料として、減圧蒸留残渣油又は重質留出油から分離精製することにより製造される、常温において固形のマイクロクリスタリンワックス等の脂肪族炭化水素が挙げられる。
パラフィンワックスとしては、炭素数20〜40程度のものが、マイクロクリスタリンワックスとしては、炭素数30〜60程度のものが、融解熱量及び入手の容易性で好ましい。パラフィンワックスの製品としては、例えば、「HNP−9」、「HNP−51」「FNP−0090」、「FT115」(いずれも日本精蝋(株)製)が挙げられる。
上記脂肪酸エステルとしては、例えば乳酸ブチル、乳酸エチル、オレイン酸メチル、コハク酸ジエチル、デカン酸エチル、デカン酸メチル、ドデカン酸ブチル、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。
上記脂肪族ケトンとしては、入手の容易性の観点から、炭素数が10〜18の直鎖飽和脂肪酸のメチル、エチル、プロピル、ブチルエステルが好ましく用いられ、例えば2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、シクロヘプタノン等が挙げられる。
上記脂肪族アルコールとしては、例えば、炭素数8〜60の脂肪族アルコールを用いることができ、具体的には、2−ドデカノール、1−テトラデカノール、7−テトラデカノール、1−オクタデカノール、1−エイコサノール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。これら中でも、産業上の利用に適した潜熱量を得るという観点から、水酸基が分子末端に存在するアルコール化合物等が好ましい。
上記脂肪族エーテル類としては、例えば、炭素数14〜60の脂肪酸エーテルを用いることができ、具体的には、ヘプチルエーテル、オクチルエーテル、テトラデシルエーテル、ヘキサデシルエーテル等が挙げられる。これら中でも、高い潜熱量を有し、合成も容易であるという観点から、酸素原子数が一つであり、対称構造を持つエーテル化合物が好ましく用いられる。
これらの蓄熱物質は1種単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
2.(B)成分
本発明の蓄熱材は、共役ジエン系(共)重合体、脂肪酸金属塩とから選ばれる少なくとも一種(「(B)成分」とも称する)を含む。(B)成分は、蓄熱物質を良好に包接するため、本発明の蓄熱材用組成物から形成された蓄熱材は、蓄熱物質のブリードが防止され、また、その使用時において形状保持性に優れる。
共役ジエン系(共)重合体としては、共役ジエン系ゴム(ただし、水添共役ジエン系(共)重合体を除く)、水添共役ジエン系(共)重合体が挙げられる。(B)成分のなかでも、蓄熱材の製造を容易にするという観点から水添共役ジエン系(共)重合体、脂肪酸金属塩が好ましく、相分離や蓄熱物質のブリード、及び長期耐久性の観点から、水添共役ジエン系(共)重合体が特に好ましい。
(B)成分が融点を持つ場合、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融点が70〜140℃の範囲にあることが好ましく、80〜120℃の範囲にあることがより好ましい。なお、本明細書における融点とは、JIS K−7121に準拠して測定した際の補外融解開始温度(Tim)に相当する。
共役ジエン系(共)重合体
《共役ジエン系ゴム》
共役ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。
共役ジエン系ゴムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下「Mw」ともいう。)が20万〜200万であることが好ましく、20万〜150万であることが更に好ましく、25万〜100万であることが特に好ましい。所要の力学的性質を得るために、また相分離や蓄熱物質のブリードを防ぐためには、Mwが20万以上であることが好ましく、蓄熱材を成形加工するための流動性を確保するためには、Mwが200万以下であることが好ましい。
共役ジエン系ゴムのメルトフローレート(以下「MFR」ともいう。)の値は、0.01〜100g/10minであることが好ましい。なお、(B)成分のMFRは、JIS K−7210に準拠して、230℃、10kgの荷重で測定した値である。
《水添共役ジエン系(共)重合体》
水添共役ジエン系(共)重合体としては、例えば、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)等のアルケニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素添加物;スチレン−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)等のアルケニル芳香族化合物−オレフィン結晶系ブロック共重合体、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、オレフィン結晶−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(CEBC)等のオレフィン結晶系ブロック共重合体などのオレフィン系エラストマーが挙げられる。
特に本発明では、成形加工時の流動性、ストランドへの成形およびカットのし易さの観点から、水添共役ジエン系(共)重合体としてオレフィン結晶系ブロック共重合体、あるいは、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体が好ましく用いられ、以下の構成を有する水添共役ジエン系(共)重合体が特に好ましく用いられる。
本発明で特に好ましく用いられる水添共役ジエン系(共)重合体は、第一の共役ジエン化合物に由来する構成単位(a−1)(以下、単に「構成単位(a−1)」ともいう。)を含み、ビニル結合含量が30モル%未満の重合体ブロック(A)と、第二の共役ジエン化合物に由来する構成単位(b−1)(以下、単に「構成単位(b−1)」ともいう。)を含み、ビニル結合含量が30〜95モル%の重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を、水素添加して得られる重合体である。なお、本明細書において「化合物に由来する構成単位」とは、通常、当該化合物の重合性二重結合部分の反応に基づく構成単位を意味する。
上記構成を有する水添共役ジエン系(共)重合体は、共役ジエン系ゴムと比較して、蓄熱材を成形加工する際の流動性にも優れる。
〈水添共役ジエン系(共)重合体の前駆体であるブロック共重合体〉
(1)重合体ブロック(A)
第一の共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンが挙げられる。これらの中でも、工業的に利用でき、また物性の優れた蓄熱材用組成物を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンが更に好ましい。なお、第一の共役ジエン化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
構成単位(a−1)は、1,3−ブタジエンに由来する構成単位を95〜100質量%含む構成単位であることが好ましく、1,3−ブタジエンに由来する構成単位のみからなる構成単位であることが特に好ましい。
重合体ブロック(A)における構成単位(a−1)の含有割合は、蓄熱材の成形加工時の流動性を保つ観点から、重合体ブロック(A)に対して95質量%以上が好ましく、重合体ブロック(A)が構成単位(a−1)のみからなることがより好ましい。
重合体ブロック(A)中のビニル結合含量は、蓄熱材用組成物からなる蓄熱材の常温(例:10〜40℃)における形状保持性を保つ観点より、30モル%未満であり、好ましくは20モル%未満であり、より好ましくは18モル%以下である。重合体ブロック(A)中のビニル結合含量の下限値は特に限定されるものではない。
なお、本明細書において、ビニル結合含量とは、水添前の重合体ブロック中に1,2−結合、3,4−結合及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン化合物のうち、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれているものの合計割合(モル%基準)である。
(2)重合体ブロック(B)
第二の共役ジエン化合物としては、例えば、上述の第一の共役ジエン化合物と同様の化合物を使用することができ、好ましい化合物も同様である。なお、第二の共役ジエン化合物と第一の共役ジエン化合物とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
重合体ブロック(B)は、第二の共役ジエン化合物に由来する構成単位(b−1)を含む重合体ブロックである。蓄熱材用組成物への軟質化の付与の効果を得る、或いは重合体ブロック(B)の結晶化を防止するという観点からは、アルケニル芳香族化合物に由来する構成単位(以下「構成単位(b−2)」ともいう。)を更に含む重合体ブロックであってもよい。
構成単位(b−1)は、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンに由来する構成単位を合計で95〜100質量%含む構成単位であることが好ましく、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンに由来する構成単位のみからなる構成単位であることがさらに好ましい。
重合体ブロック(B)における構成単位(b−1)の含有割合は、重合体ブロック(B)に対して50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
重合体ブロック(B)が構成単位(b−2)を更に含む場合、構成単位(b−2)の含有割合は、蓄熱材の成形加工時の流動性を保つ観点から、重合体ブロック(B)に対して50質量%以下であることが好ましい。
重合体ブロック(B)における構成単位(b−1)/構成単位(b−2)の質量比は、好ましくは100/0〜50/50、より好ましくは100/0〜70/30、さらに好ましくは100/0〜80/20である。
アルケニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジエチル−p−アミノスチレン、ビニルピリジンが挙げられる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。なお、重合体ブロック(B)が、構成単位(b−1)と構成単位(b−2)とを含む共重合ブロックである場合、構成単位(b−1)の分布は、ランダム、テーパー(分子鎖に沿って構成単位(b−1)が増加又は減少するもの)、一部ブロック状、又はこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
重合体ブロック(B)中のビニル結合含量は、30〜95モル%であり、好ましくは50〜75モル%であり、更に好ましくは55〜65モル%である。蓄熱材用組成物を用いて蓄熱材を形成した際に蓄熱物質のブリードを防ぐ観点から、重合体ブロック(B)中のビニル結合含量は30モル%以上であることが好ましい。
(3)重合体ブロック(C)
ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)に加えて、更にアルケニル芳香族化合物に由来する構成単位(以下「構成単位(c−1)」ともいう。)を50質量%を超えて含む重合体ブロック(C)、好ましくは構成単位(c−1)のみからなる重合体ブロック(C)を有してもよい。この場合、ブロック共重合体としては、重合体ブロック(A)―重合体ブロック(B)−重合体ブロック(C)のブロック構成が好ましい。
構成単位(c−1)におけるアルケニル芳香族化合物としては、構成単位(b−2)におけるアルケニル芳香族化合物と同様の化合物が挙げられ、好ましい化合物もまた同様である。
(4)ブロック構成
ブロック共重合体において、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量換算の比率((A)/(B))は、通常5/95〜50/50であり、好ましくは10/90〜40/60である。蓄熱材用組成物からなる蓄熱材における形状保持性を確保する観点からは、重合体ブロック(A)の比率が5以上、重合体ブロック(B)の比率が95以下であることが好ましい。一方、蓄熱材用組成物を用いて蓄熱材を形成した際にパラフィン化合物のブリードを防ぐ観点からは、重合体ブロック(A)の比率が50以下、重合体ブロック(B)の比率が50以上であることが好ましい。
ブロック共重合体が重合体ブロック(C)を更に有する場合、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)との質量換算の比率({(A)+(B)}/(C))は、通常80/20〜99/1であり、好ましくは85/15〜95/5である。重合体ブロック(C)の比率が20を超える場合、溶融時の加工性(成形加工時の流動性)が損なわれる可能性がある。
ブロック共重合体において、アルケニル芳香族化合物に由来する構成単位の含有割合は、蓄熱材の成形加工時の流動性を保つ観点から、ブロック共重合体に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。ここでアルケニル芳香族化合物に由来する構成単位の含有割合は、例えば、重合体ブロック(B)中の構成単位(b−2)及び重合体ブロック(C)中の構成単位(c−1)の合計の含有割合を指す。なお、これらのうちいずれかが含まれない場合もある。
水添共役ジエン系(共)重合体におけるブロック共重合体の構造は、上記要件を満たすものであればいかなるものでもよい。例えば、国際公開WO2011/078340パンフレットに記載のブロック構造をとることができる。
ブロック共重合体におけるカップリング率は、蓄熱材の加工性や蓄熱物質のブリード性を考慮すると、50〜90%であることが好ましい。なお、カップリング剤を介して分子が連結される割合を、カップリング率とする。なお、カップリング剤としては、例えば国際公開WO2011/078340パンフレットに記載のものを用いることができる。
ブロック共重合体は、例えば特許第3134504号、特許第3360411号記載の方法により製造することができる。
ブロック共重合体としては、上記のようなブロック共重合体を1種単独で用いることもできるが、2種以上のブロック共重合体を混合して用いることもできる。
水添共役ジエン系(共)重合体は、1種単独で用いることもできるが、2種以上の水添共役ジエン系(共)重合体を混合して用いることもできる。
重合体ブロック(A)は、ビニル結合含量が30モル%未満の重合体ブロックであるので、水素添加により、ポリエチレンに類似の構造となり、結晶性のよい重合体ブロックとなる。重合体ブロック(B)は、ビニル結合含量が30〜95モル%の重合体ブロックであるので、水素添加により、例えば、第二の共役ジエン化合物が1,3−ブタジエンの場合、ゴム状であるエチレン/ブチレン共重合体と類似の構造となり、柔らかい重合体ブロックとなる。そのため、水添共役ジエン系(共)重合体は、例えば、第一及び第二の共役ジエン化合物が1,3−ブタジエンの場合、オレフィン結晶−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体構造を有する。
このような構造の水添共役ジエン系(共)重合体を用いることで、蓄熱材用組成物を加温して溶融状態とした際にも、成形加工する際の流動性に優れる蓄熱材用組成物を提供することができる。
〈水添共役ジエン系(共)重合体の製造方法〉
水添共役ジエン系(共)重合体の製造方法は特に限定されるものではなく、ブロック共重合体を調製した後、調製したブロック共重合体を水素添加することで製造することができる。ブロック共重合体は、例えば、不活性有機溶媒中、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として第一の共役ジエン化合物をリビングアニオン重合した後、第二の共役ジエン化合物及び必要に応じてアルケニル芳香族化合物を更に加えてリビングアニオン重合を行うことで、調製することができる。
不活性有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。
なお、ブロック共重合体にカップリング剤残基を導入する場合、第二の共役ジエン化合物をリビングアニオン重合した後、単離等の操作を行うことなくカップリング剤を加えて反応させることで簡単に導入することができる。
リビングアニオン重合において、重合体ブロック(B)のビニル結合含量は、エーテル化合物、3級アミン、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)のアルコキシド、フェノキシド、スルホン酸塩等を併用し、その種類、使用量等を適宜選択することによって容易に制御することができる。
このブロック共重合体を水素添加することにより、水添共役ジエン系(共)重合体を容易に調製することができる。ブロック共重合体の水素添加方法、反応条件については特に限定はなく、通常は、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で行われる。この場合、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、又は反応時間等を変えることにより任意に選定することができる。
水添触媒としては、例えば、特開平1−275605号公報、特開平5−271326号公報、特開平5−271325号公報、特開平5−222115号公報、特開平11−292924号公報、特開2000−37632号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭62−218403号公報、特開平7−90017号公報、特公昭43−19960号公報、特公昭47−40473号公報に記載の水添触媒が挙げられる。なお、上記水添触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
水添共役ジエン系(共)重合体における共役ジエン化合物(第一の共役ジエン化合物及び第二の共役ジエン化合物を含む)に由来する二重結合の水素添加率は、形状保持性や力学的性質を満たすためには、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
水添後は、必要に応じて触媒の残渣を除去し、又はフェノール系若しくはアミン系の老化防止剤を添加した後、水添共役ジエン系(共)重合体を単離する。水添共役ジエン系(共)重合体の単離は、例えば、水添共役ジエン系(共)重合体溶液にアセトン又はアルコール等を加えて沈殿させる方法、水添共役ジエン系(共)重合体溶液を熱湯中に撹拌下投入し、溶媒を蒸留除去する方法、等により行うことができる。
水添共役ジエン系(共)重合体のMwは、20万〜200万であることが好ましく、20万〜150万であることが更に好ましく、25万〜100万であることが特に好ましい。所要の力学的性質を得るために、また相分離や蓄熱物質のブリードを防ぐためには、Mwが20万以上であることが好ましく、蓄熱材を成形加工するための流動性を確保するためには、Mwが200万以下であることが好ましい。
水添共役ジエン系(共)重合体のメルトフローレート(以下「MFR」とも称する)の値は、0.01〜100g/10minであることが好ましい。なお、(B)成分のMFRは、JIS K−7210に準拠して、230℃、10kgの荷重で測定した値である。
脂肪酸金属塩
脂肪酸金属塩は、脂肪族カルボン酸(以下、「脂肪酸」とも称する)の金属塩である。脂肪酸金属塩は、蓄熱物質を増粘し、蓄熱物質のブリードを防止する観点からは、脂肪酸と併用されることが好ましい。この脂肪酸金属塩と脂肪酸との混合物には、前記共役ジエン系(共)重合体のように、蓄熱物質と混合するために加熱して融解する工程が不要であるため、蓄熱材の製造が容易となるという利点がある。
脂肪酸金属塩を構成する金属種としては、例えば、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉛等の各種の二価以上の金属塩やアルカリ土類塩を挙げることができる。これらの中でもアルミニウム塩が好ましく使用できる。
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、例えば、炭素数4〜24、好ましくは炭素数6〜10程度の脂肪酸であることが望ましく、例えば、オクチル酸(2−エチルヘキサン酸)、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。2−エチルヘキサン酸が特に好ましい。脂肪族金属塩としては、2−エチルヘキサン酸アルミニウムが特に好適に使用できる。
脂肪酸金属塩と併用する脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、等の長鎖飽和脂肪酸類、又は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の長鎖不飽和脂肪酸類が仕様でき、オレイン酸が特に好ましい。これらの脂肪酸金属塩および脂肪酸は、それぞれ1種単独で含有してもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
脂肪酸金属塩と脂肪酸とを併用する場合、脂肪酸金属塩と脂肪酸の比率は、蓄熱物質の増粘作用を得る観点から、100/5〜100/100が好ましく、100/20〜100/80がより好ましく、100/25〜100/75が特に好ましい。
上記2−エチルヘキサン酸アルミニウムとしては、市販品では、オクトープ アルミA(ホープ製薬株式会社 製)が例示される。上記オレイン酸としては、ゲル化補助剤Nsp(ホープ製薬株式会社 製)が例示される。
3.(C)成分
本発明の蓄熱材用組成物は、極性樹脂あるいは結晶性ポリオレフィン(「(C)成分」とも称する)を含有する。極性樹脂あるいは結晶性ポリオレフィンを含有することで、蓄熱物質の耐ブリード性、ストランドの成形性および搬送性、ストランドカットの安定性を付与することができる。
極性樹脂
極性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ブタンジオール−ビニルアルコール共重合体、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体を挙げることができる。これらのうち、蓄熱物質の耐ブリード性及び靱性の観点から、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ブタンジオール−ビニルアルコール共重合体、熱可塑性ポリウレタンを使用することが好ましい。
極性樹脂は、以下のような基準を満たすものを用いることが蓄熱物質の耐ブリード性を得る観点から好ましい;極性樹脂を20mm×20mm×1mmのシート状にプレス成形した試験片を40℃で68時間、n−オクタデカンに浸漬し、浸漬前後での試験片の重量変化率が1%以下のもの。
なお、「極性樹脂」とは、分子内にヘテロ原子を有する樹脂を指し、(D)成分は含まないものとする。
結晶性ポリオレフィン
結晶性ポリオレフィンの原料であるオレフィンとしては、α−オレフィンを使用することが好ましく、炭素数2〜12のα−オレフィンを使用することがより好ましく、具体的には、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン等から選択される1種以上を使用することが好ましい。
結晶性ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができる。これらのうち、汎用性の観点から、結晶性ポリエチレンまたは結晶性ポリプロピレンを用いることが好ましく、結晶性ポリプロピレンを用いることが特に好ましい。この結晶性ポリプロピレンは、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体あるいはランダム重合体、プロピレン−エチレン−ジエン化合物共重合体等のポリプロピレン類であることができるほか、生物由来の原料から得られるバイオポリプロピレンであっても良い。また、結晶性ポリオレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
極性樹脂及び結晶性ポリオレフィンの示差走査熱量測定(DSC法)によって測定される融点は、好ましくは80〜180℃、より好ましくは90〜160℃であり、さらに100〜140℃であることが好ましい。特に、使用する蓄熱物質の融点以上の融点を有する結晶性ポリプロピレンが好ましく、蓄熱物質の融点よりも20℃以上高い融点を有するものを使用することがより好ましい。
また、結晶性ポリオレフィンの示差走査熱量測定法(DSC法)によって測定される融解潜熱量は、蓄熱物質の漏洩防止性、ストランド安定引き取り性、ストランドカット安定性の観点から、50kJ/kg以上であることが好ましく、60kJ/kg以上であることがより好ましい。また、X線回折法により測定される結晶化度は25%以上であることが好ましく、28%以上であることがより好ましく、特に30%以上であることが好ましい。
結晶性ポリオレフィンの、JIS K−7210に準拠した、温度190℃、荷重2.16kg下におけるMFRは、ストランドの成形性および搬送性、ストランドカットの安定性を付与する観点から、0.1〜100g/10min、より好ましくは0.1〜50g/10minであることが好ましい。
4.(D)成分
本発明の蓄熱材用組成物が(C)成分として極性樹脂を含む場合、上記(A)〜(C)成分の相溶性を向上するために、下記官能基群Xから選ばれる少なくとも1つの官能基を有する水添ジエン系(共)重合体(以下、「官能基含有水添共役ジエン系(共)重合体」とも称する)、及び下記官能基群Xから選ばれる少なくとも1つの官能基を有するオレフィン系重合体(以下、「官能基含有オレフィン系重合体」とも称する)のうち少なくとも一つ(以下、「相溶化剤」とも称する)を含有してもよい。
[官能基群X]:カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基及びオキサゾリン基
官能基含有水添共役ジエン系(共)重合体とは、(B)成分として例示した水添共役ジエン系(共)重合体を、上記の官能基によって変性したポリマーを意味する。特に本発明では、水添共役ジエン系(共)重合体として、アミノ基によって変性したスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、アミノ基によって変性したスチレン−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)が好ましく用いられる。
官能基含有オレフィン系重合体とは、オレフィン系樹脂又はオレフィン系ゴムを、上記官能基によって変性したものを意味する。オレフィン系樹脂又はオレフィン系ゴムは、α−オレフィンを主体として重合された樹脂又はゴムである。α−オレフィンとしては、(C)成分で例示したものが挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレンである。これらのα−オレフィンは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、オレフィン系ゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ポリエン共重合体が挙げられる。
官能基は上記に示した官能基群Xから選ばれる少なくとも一つであり、変性に用いられる官能基含有化合物の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸などであり、好ましくは無水マレイン酸である
官能基含有オレフィン系重合体の具体例としては、例えば、エチレン・グリシジルメタアクリレート、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の不飽和エポキシド等でグラフト変性した官能基含有オレフィン系重合体、無水マレイン酸変性LDPE(低密度ポリエチレン)、無水マレイン酸変性HDPE(高密度ポリエチレン)、無水マレイン酸変性LLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)、無水マレイン酸変性EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、無水マレイン酸変性PP(ポリプロピレン)などであり、好ましくは無水マレイン酸変性LLDPEが挙げられる。
(D)成分は、他成分との相溶性と、蓄熱材用組成物の流動性や加工性とのバランスをとる観点からは、前記官能基を平均0.01〜500(個/1分子)有している重合体であることが好ましく、平均0.1〜100(個/1分子)有している重合体であることが更に好ましい。
また、(D)成分の分子量は、組成物の加工性と流動性とのバランスをとる観点から、重量平均分子量が3万〜200万であることが好ましく4万〜100万であることが更に好ましく、5万〜50万であることが特に好ましい。なお、ここにいう「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味するものとする。
(D)成分は、例えば、国際公開WO2008/023758パンフレットに記載の方法によって得ることができる。
5.その他の成分
本発明の蓄熱材用組成物は、ストランド成形性及びその他必要な機能を付与するために、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。ここで、その他の成分とは、前記(A)〜(D)成分以外のものを指す。
その他の成分としては、フィラーが挙げられる。フィラーとしては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤、フェライト等の金属粉末、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維、窒化アルミ、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ、膨張黒鉛等の伝熱性付与剤、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、グラスファイバー、アスベスト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー等の無機ウィスカー、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、モンモリロナイト、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂等の充填剤が挙げられる。増粘によるストランド成形性向上の観点からはシリカが望ましく、伝熱性の観点からは炭素繊維、膨張黒鉛が好ましい。フィラーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
細孔を有するシリカや膨張黒鉛などの化合物は、蓄熱材用組成物の含有成分が前記細孔内部まで入り込み、少ない充填量で目的の機能を付与することができるという観点から、フィラーとして好ましい。
細孔を有するシリカとしては、例えば、従来公知の発泡シリカが挙げられる。
細孔を有する膨張黒鉛は公知の方法により製造することができる。例えば、黒鉛材料として天然黒鉛、熱分解黒鉛或いはキッシュ黒鉛を濃硫酸等の強酸と過塩素酸水溶液や硝酸等の強酸化剤との混酸中に浸漬し、層間化合物を形成せしめ、これを通常100℃以上、好ましくは500℃以上の温度で熱処理することにより得ることができる。膨張黒鉛の嵩密度は酸処理条件或いは酸処理後の熱処理条件により調整し得るが、予め高嵩密度のものを得て、これを圧縮あるいは解砕等の機械的操作により所望の嵩密度に調整することも可能である。
上記フィラー以外に、その他の成分として、酸化防止剤、重金属不活性化剤、帯電防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、難燃化剤、加硫剤、加硫助剤、防菌・防カビ剤、分散剤、着色防止剤、発泡剤、防錆剤などが挙げられる。
各組成の含有量
蓄熱材用組成物中の(A)成分の含有量は、蓄熱材用組成物中、10〜70質量%であり、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜70質量%である。工業的に有用な蓄熱量を得る観点からは10質量%以上が好ましく、ストランドの成形性や搬送性、また、ストランドカットの安定性を付与する観点からは含有量が70質量%以下が好ましい。
蓄熱材用組成物中の(B)成分の含有量は、蓄熱材用組成物中、10〜80質量%であり、20〜70質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることが更に好ましい。蓄熱物質を良好に包接するためには10質量%以上が好ましく、工業的に有用な蓄熱量を得る観点からは80質量%以下であることが好ましい。
蓄熱材用組成物中の(C)成分の含有量は、蓄熱材用組成物中、10〜60質量%であり、20〜60質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることがとくに好ましい。結晶性ポリオレフィンの含有量が前記範囲にあると、蓄熱物質の漏洩防止性、ストランドの成形性や搬送性、ストランドカットの安定性を付与する観点から好ましい。
蓄熱材用組成物が(D)成分を含有する場合、(D)成分の含有量は、蓄熱材用組成物中、1〜10質量%であり、好ましくは2〜8質量%、より好ましく2〜6質量%である。(D)成分の含有量が前記範囲にあると、前記(A)〜(C)成分が良く混合し、組成均一性に優れた蓄熱材用組成物が得られる。
蓄熱材用組成物がその他の成分を含有する場合、その他の成分の含有量は、目的の機能を付与するためにその種類により区々であるが、蓄熱材用組成物のストランドの成形性や搬送性を保持するという観点からは、蓄熱材用組成物の溶融張力を維持できる含有量であることが好ましい。
その他の成分が、フィラーである場合、フィラーの含有量は、蓄熱材用組成物に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜40質量%であることが更に好ましく、1〜30質量%が特に好ましい。蓄熱材用組成物に対してストランド成形性及びその他目的の機能を付与する観点からは、1質量%以上が特に好ましく、蓄熱材用組成物の溶融張力を維持するという観点からは、30質量%以下が特に好ましい。
蓄熱材用組成物の、JIS K7210に準拠して180℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレートは、0.1〜100g/10minであり、0.1〜50g/10minであることがより好ましく、0.1〜30g/10minであることが更に好ましい。このような値とすることで、蓄熱材用組成物のストランドの成形性、搬送性を得ることができる。
蓄熱材用組成物は、2本ロール、押出機、2軸混練押出機、撹拌式混合機等の通常の混合・撹拌機を使用して(A)成分と、(B)成分と、(C)成分との中で最も融点の高いものの融点以上で溶融混合されることで得ることができる。溶融混合において、添加温度は(B)成分及び(C)成分の融点以上であることが好ましく、通常100〜200℃である。
このような方法で蓄熱材用組成物を製造することで、十分な溶融張力と適度な硬さをもちストランドの成形性や搬送性、ストランドカットの安定性をもつ蓄熱材用組成物を得ることができる。
II.蓄熱材
上記蓄熱材用組成物を成形して得られた蓄熱材は、(C)成分が連続相(以下、「極性樹脂マトリックス」、「結晶性ポリオレフィンマトリックス」とも称する)を形成し、当該連続相中に、(A)成分と(B)成分とを含む混合物が分散相を形成するモルフォロジーとなる。なお、蓄熱材用組成物が(C)成分として極性樹脂を含み、さらに(D)成分を含む場合、(D)成分は連続相と分散相の境界に少なくとも存在して、(A)〜(C)の各成分の相溶性を向上させることができる。
なお、(C)成分が連続相を形成し、当該連続相中に、(A)成分と(B)成分とを含む混合物が分散相を形成するためには、[(A)成分、(B)成分、(D)成分、およびその他の成分との溶融混合物のMFR]/[(C)成分のMFR]の値が0.01〜30であることが好ましく、0.01〜20であることがより好ましく、0.01〜10であることが更に好ましい。
蓄熱材中、極性樹脂マトリックスは、おもに蓄熱物質に対するバリア性によって、また、結晶性ポリオレフィンマトリックスは、おもに結晶性によって蓄熱材からの(A)成分のブリードを防止する効果がある。また、(B)成分は、(A)成分を良好に包接するため、蓄熱材の形状保持性を良好にすることができる。蓄熱材の形状は特に限定されず、必要な用途に応じて適宜選択すればよく、例えばペレット状、シート(板)状、フィルム状、ブロック状の形状が挙げられる。
ペレット状の形状は、蓄熱材の表面積を増やして蓄熱効果を高める観点、各種媒体に混入させて用いることができる等の蓄熱材の取扱性を向上させる観点から好ましい。ペレット状の形状としては特に限定されず、円柱形、球形、だるま形、直方体、立方体、錐形、これらが一部歪んだ形状、あるいはこれらの組み合わせ等の形状が例示される。大きさとしては特に限定されないが、長径のとりうる範囲として、1mm〜30mm、好ましくは5mm〜10mmが例示される。
シート状またはフィルム状の形状は、狭い空間にも蓄熱材を設置できる点、広い面積にわたり均一な蓄熱効果を得る観点から好ましい。この形状の厚みは特に限定されず、1mm〜15mm、好ましくは3mm〜10mmが例示される。
蓄熱材の作成方法は特に限定されないが、例えば2本ロール、押出機、2軸混練押出機、撹拌式混合機等の通常の混合・撹拌機を使用して蓄熱材組成物を溶融混合して得ることができる。各成分を投入する順も特に限定されず、例えば、(A)成分と(B)成分を先に溶融混合し、次いで(C)成分を加えて溶融混合してもよい。添加前に(B)成分をペレット状、粒状又は粉末状に加工しておくと作業性が向上する。
溶融状態となった蓄熱材用組成物を冷却して成形することで蓄熱材を得ることができる。押出機を使用する場合は、ストランドダイ、Tダイなどを取り付け、紐状、ペレット状、フィルム状、シート状、板状などに成形することができる。ペレット形状の蓄熱材を得る場合、押出機から出てきたストランドを、一旦冷却して常温で切断するコールドカット方式と、ストランドが熱い間に切断するホットカット方式がある。コールドカット方式としては、シートカット法とストランドカット法が挙げられる。ホットカット方式としては、ホットエアカット法とアンダーウォーターカット法が挙げられる。本発明の蓄熱材の成形にあたっては、これらの製造法を適宜採用すればよい。
得られたペレット状の蓄熱材は、射出成型機を用いることでより複雑な形状の蓄熱材とすることもできる。また、蓄熱材用組成物は蓄熱物質の融点以下になると硬い固形となるため、得られた固形の蓄熱材などを切断することでより複雑な形状の蓄熱材とすることもできる。
撹拌式混合機を使用する場合は、溶融状態となった蓄熱材用組成物を型に流し込むことで所望の形状とすることができる。また、フィルム、布、繊維などの上に付着、塗布、或いは含浸させることで他材との複合材とすることもできる。さらに、ポリエチレン等の袋にパック詰めにして冷却過程でシート状、板状、棒状とすることもできる。
また、溶融状態の蓄熱材用組成物を、例えば、板、好ましくは冷却し得る、ステンレスなどの熱交換板に、液滴状に噴霧或いは滴下する方法も採ることができる。前記液滴状に噴霧或いは滴下する方法は、具体的には、前記溶融工程で得られた溶融物を滴下管から滴下する方法、例えば、ロールドロップ式造粒機、ロートフォーム式造粒機等に充填したのちに滴下するものである。
ロールドロップ式造粒機とは、通常、突起を有する回転ドラムを有しており、溶融物は該突起の先端部に掻き取られ、該回転ドラムが回転して得られる遠心力及び/又は重力の作用にて板上に該溶解物が滴下する機構を有する造粒機である。
ロートフォーム式造粒機とは、通常、円筒部を有しており、該円筒部は孔を有し、該円筒部の内部に溶融物を受け入れる構造を有しており、該孔から板上に該溶解物が滴下する機構を有する造粒機である。特にロートフォーム式造粒機による滴下が好ましい。
これらの造粒機による蓄熱材の製造は、特開平5−98246号、特開2010−111860号に記載の方法によって、行うことができる。粒径の調節は、例えば、押出機を用いる場合、押出機によって棒状に成形した蓄熱材を細かく切断する際に切断条件を適宜設定すればよく、ロートフォーム式造粒機による滴下の場合、前記円筒部の孔の径を適宜調整すればよい。
本発明の蓄熱材は、そのまま使用することが可能であるが、生産性、安全性の観点から、蓄熱材を包装材料または容器中に封入してなる構成とすることも可能である。
包装材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなるフィルム(ポリオレフィン樹脂フィルム)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂からなるフィルム(ポリエステル樹脂フィルム)、延伸ナイロン(ONy)、ポリアミド(PA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)等からなるフィルム等の、包装材料として公知の基材フィルム;アルミニウム箔等の、均熱化のための金属箔;これらの基材フィルム・金属箔を公知のラミネート法により積層してなる積層フィルムが挙げられる。
蓄熱材を包装材料中に封入する方法としては、例えば、上記基材フィルムのうち、熱融着性(ヒートシール性)を有する基材フィルムを最内層として含む包装材料中に、公知の充填装置により蓄熱材用組成物を充填し、これをヒートシールバーにてヒートシールし、密封する方法(ヒートシール法)が生産性の面で好ましい。基材フィルムとしては、熱融着性を有するポリオレフィン樹脂フィルムが好ましく、特にPEフィルム、PPフィルムが好ましい。
これらの包装材料は、例えば、国際公開WO2011/078340パンフレットに記載の構成のものを挙げることができる。
容器としては、例えば合成樹脂をブロー成形して得たブロー容器、金属容器等を挙げることができる。これらのうち、容器形状の自由度の高さおよび取扱いの容易性から、ブロー容器を使用することが好ましい。
ブロー容器を構成する材料としては、蓄熱物質の揮発を防止する観点から、少なくとも、ポリオレフィン等からなる非極性層と、エチレン/ビニルアルコール共重合体等からなる極性層と、両者間に配置され両者を結合する接着層と、を有する多層ブロー容器を使用することが好ましい。ここで使用されるポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンを挙げることができる。
また、ブロー容器は必要に応じて表面処理を行ってもよい。
本発明の蓄熱材は、各種エラストマー、合成樹脂、コンクリート、漆喰、モルタル、グラスウールマット、多孔質板、発泡体等とともに用いてもよい。この場合、前記各材料とともに混合、前記各材料中に埋設、あるいは、ボード状に加工した前記各材料の表面に接着して用いる等の使用形態を挙げることができる。このようにして得られたものは、例えば建材、輸送容器の調温材として好適に用いることができる。
また、本発明の蓄熱材は、液体あるいはゲル中に混入させて用いることもできる。液体中あるいはゲルに混入させた場合、そのままパイプ等で循環させて例えば空調用ブラインとして、あるいは、上述の包装材あるいは容器中に封入して用いることができる。このような構成での蓄熱材の形状は、ペレット状が好ましい。
前記液体としては、水が好ましい。水は、融解潜熱が大きいため、蓄熱成分の相変化温度領域を水の凝固点近傍で設定した場合、すなわち蓄冷材として用いた場合、良好な蓄熱効果が得られる。また、蓄熱成分の相変化温度領域を例えば室温以上で設定した場合、水の熱容量により蓄熱効果が持続するという効果もある。水の量は、液体中、30質量%以上であり、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がとくに好ましい。また、100質量%であってもよい。
前記液体は、さらに、アルコールを含むことができる。アルコールとしては、メチルアルコール,エチルアルコール等のモノアルコール、またはプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。前記アルコールは、寒剤としての効果もあるので、前記蓄熱材の望む融点に合わせて選択される。前記アルコールの中でも、特に、プロピレングリコールは、安全性の面で好ましい。また、液体の凝固点を降下させるため、蓄熱材の使用可能な温度領域を拡大させる点でも好ましい。
前記アルコールの量は、液体中、5〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがとくに好ましい。
前記ゲルは、蓄熱材に柔軟性を付与できる、対象への凹凸追随性を付与できる点で好ましい。ゲルにするためのゲル化剤としては、公知のカルボキシメチルセルロース,ポリビニルアルコール,ポリアクリル酸ナトリウム,ポリアクリルアミド等の親水性ポリマーを架橋とすることにより水不溶性とした高吸水性ポリマー、天然多糖類であるデンプン,ゼラチン,グアガム等を使用することができる。特にカルボキシメチルセルロースは、安全性や入手のし易さ等から好ましい。
ゲル化剤の量は、液体中、0.3〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがとくに好ましい。ゲルの形状維持性の観点からは、0.3質量%以上が好ましく、ゲルの流動性、対象への凹凸追随性の観点からは20質量%以下であることが好ましい。なお、ゲルの硬度は、アスカーC硬度計で50以下かつ針入度200以下の範囲であることが好ましい。このような範囲にあると、蓄熱材同士が偏在することなく、適度に分散することができる。
前記液体をゲル化するに際しては、ゲル化剤とともに金属塩を加えることができる。金属塩としては、水溶性無機塩が好ましく、具体的には、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリミョウバン等のアルミニウム塩;水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩; 水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム塩等を挙げることができる。これらの中でも、人体への安全性、入手の容易性の観点から、カリミョウバンが好ましい。
金属塩の量は、液体中、0.01〜2質量%であることが好ましく、0.1〜1.5質量%であることがとくに好ましい。液体の形状維持性の観点からは金属塩が0.01質量%以上が好ましく、ゲル化剤の離水を防ぎ適度な硬さのゲルを得る観点からは、1.5質量%以下が好ましい。
また、液体またはゲルには、蓄熱材の長期使用において液体またはゲルの腐敗を防ぐ目的で防腐剤を加えることができる。防腐剤としては公知のものを用いることができ、例えば、人体への安全性の観点から安息香酸ナトリウムを用いることができる。防腐剤の量は適宜用いれば良いが、例として、液体中、0.1〜5質量%の範囲である。その他、蓄熱材が金属等に接する場合防錆剤や、液体に伝熱性を付与するため無機フィラー等を含有することができる。これらの含有量は付与したい機能に応じて決定すればよいが、例として液体中、0.1〜5質量%の範囲である。
本発明の蓄熱材は、公共施設や家屋の空調用途に用いることができる。また、自動車等のキャニスター用途、ICチップ等の電子部品の昇温防止用途、衣類の繊維、臓器輸送用途、カーブミラー等の防曇用途、等の種々の分野において利用することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔合成例1〕:水添共役ジエン共重合体1(H−1)の調製
窒素置換された内容積50Lの反応容器に、シクロヘキサン24000g、テトラヒドロフラン1.3g、1,3−ブタジエン570g、及びn−ブチルリチウム2.4gを加え、重合開始温度70℃にて重合した。反応完結後、温度を35℃としてテトラヒドロフラン210gを添加し、次いで1,3−ブタジエン3230gを逐次添加しながら断熱重合した。その後、系内にメチルジクロロシラン1.5gを添加して30分間反応させることによりブロック共重合体を調製した。
上記ブロック共重合体は、1,3−ブタジエンに由来する構成単位を含み、ビニル結合含量が16モル%の重合体ブロック(A)と、1,3−ブタジエンに由来する構成単位を含み、ビニル結合含量が58モル%の重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体であった。また、上記ブロック共重合体において、重量平均分子量は38万であり、カップリング率は75%であった。
引き続き、上記ブロック共重合体を含む反応液を80℃にし、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド2.5g、及びn−ブチルリチウム1.2gを加え、水素圧1.0MPaを保つように2時間反応させた。
反応後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、水中に攪拌投入して溶媒を水蒸気蒸留で除去することによって、目的とする水添共役ジエン共重合体(H−1)を得た。水添共役ジエン共重合体(H−1)の水素添加率は98%であり、MFRは2.3g/10minであり、融点は82.0℃であった。
水添共役ジエン共重合体の物性は以下に示す方法にて求めた。
[重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)の比率(%)]:ブロック共重合体を調製する際に使用した原料の仕込み量から、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)の合計質量に対する各重合体ブロックの質量を比率で算出した。
[重合体ブロック(A)及び(B)のビニル結合含量(モル%)]:赤外分析法を用い、ハンプトン法により重合体ブロック(A)及び(B)のビニル結合含量(モル%)を算出した。
[重量平均分子量]:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、商品名:HLC−8120GPC、東ソー・ファインケム社製、カラム:東ソー社製、GMH−XL)を用いて、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
[カップリング率(%)]:上述のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定で得られた波形を波形分離し、波形の面積比からカップリング率を算出した。
[水素添加率(%)]:四塩化炭素溶液を用い、270MHz、1H−NMRスペクトルから水素添加率(%)を算出した。
[MFR(g/10min)]:JIS K−7210に準拠して、230℃、10kg荷重でMFR(g/10min)を測定した。
[融点(℃)]:JIS K−7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を用いてサンプルを200℃で10分間保持した後、−80℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−80℃で10分間保持した後、10℃/分の速度で昇温したときの結晶融解ピークにおける補外融解開始温度(Tim)を、融点(℃)とした。
[実施例1]
表1に記載の各成分を、一括して加圧ニーダー混練り機に配合して溶融混練りした。その後、フィーダールーダーにてストランドを作成し、ストランドカッターにてペレット化した。この際、ストランドの状態およびストランドカット性を、下記の方法により観察・評価した。また、得られたペレットについて融点(℃)及び潜熱量(kJ/kg)の測定、MFR(g/10min)、ブリード性を下記の方法により評価した。結果を併せて表1に記載する。
[ストランドの状態、およびストランドカット性]:フィーダールーダーより蓄熱材用組成物のストランドを成形し、水槽を介してストランドカッターに投入した。ストランドの状態を評価するにあたり、問題なくストランドをストランドカッターまで搬送できた場合を「A」、時折ストランドが切れるといった不具合が生じた場合を「B」、溶融張力が足りずストランドをストランドカッターに搬送できなかった場合を「C」とした。また、ストランドカット性を評価するにあたり、問題なくほぼ同一形状のペレットが得られる場合を「A」、時折長さの異なるペレットが排出される場合を「B」、ストランドがカッターに巻き付きペレット化できない場合を「C」とした。なお、ストランドがストランドカッターに搬送できなかった場合は、ストランドカット性の評価は行わなかった。
[蓄熱材用組成物の融点(℃)及び潜熱量(kJ/kg)の測定]:蓄熱材用組成物の融点及び潜熱量は、示差走査熱量測定計(DSC)を用いて測定した。測定は、サンプルを170℃に10分間保持した後、−30℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−30℃に10分間保持した後、100℃まで10℃/分の速度で昇温する方法で行った。JIS K−7121に準拠して、配合した蓄熱物質に相当する融解ピークの補外融解開始温度を蓄熱材用組成物の融点とし、融解熱量を蓄熱材用組成物の潜熱量とした。なお、複数の融解ピークを有する蓄熱材用組成物の融点は、より融解熱量の大きな融解ピークの補外融解開始温度とし、またその潜熱量はその融解ピークの融解熱量とした。多峰性ピークを有し個々の融解ピークの区別が付かない場合は、それらを一つの融解ピークとみなして処理した。
[MFR(g/10min)]:JIS K7210に準拠して、180℃、2.16kg荷重でMFR(g/10min)を測定した。
[ブリード性]:得られたペレット約10gをポリエチレンフィルム(内層)とポリアミドフィルム(外層)とからなる積層フィルムにて包装して試験サンプルとした。60℃30分、−20℃30分を100回繰り返すように設定した恒温槽にサンプルを投入して静置し試験を開始した。上記温度変化を100回繰り返した後にサンプルを取り出して充分冷却し、蓄熱物質が分離しているかを目視確認した。ほぼ蓄熱物質の分離が認められない場合を「A」、若干量の蓄熱物質の分離が確認される場合を「B」、明らかに蓄熱物質の分離が確認される場合を「C」とした。なお、ストランドがストランドカッターに搬送できずペレットが得られなかった場合は、ブリード性の評価は行わなかった。
[実施例2〜11、比較例1〜5]
実施例1において、配分組成を表1および2に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜11及び比較例1〜5の蓄熱材用組成物を製造した。
実施例及び比較例で用いた各成分は以下のとおりである。
蓄熱物質(A)
・PCM1…n−オクタデカン
・PCM2…ステアリン酸ブチル
ポリマー化合物等(B)
・H−1…水添共役ジエン共重合体1(合成例1)、(MFR:2.3g/10min;230℃、10kg)
・H−2…SEEPS セプトン4077(株式会社クラレ 製) (重量平均分子量:約35万)、(MFR:流動せず;230℃、2.16kg)
・H−3…EP103AF(JSR株式会社製) (重量平均分子量:約50万)、(MFR:流動せず、230℃;2.16kg)
・H−4…オクトープ アルミA(ホープ製薬株式会社製)
・H−5…ゲル化補助剤Nsp(ホープ製薬株式会社 製)
極性樹脂あるいは結晶性ポリオレフィン(C)
・C−1…エチレン−ビニルアルコール共重合体 エバールG156B (株式会社クラレ 製)、(MFR:3g/10min;180℃、2.16kg)
・C−2…熱可塑性ポリウレタン、(MFR:15g/10min、180℃、2.16kg)
・C−3…ポリプロピレン WFX4(日本ポリプロ株式会社製)、(MFR:3g/10min;180℃、2.16kg)
相溶化剤(D)
・D−1…アミン変性SEBS タフテックMP10(旭化成ケミカルズ株式会社 製)、(MFR:4g/10min;230℃、2.16kg)
その他添加物
・AD1…フュームドシリカ AEROSIL380(日本アエロジル株式会社 製)
・AD2…膨張黒鉛 CMX−40(日本黒鉛工業株式会社 製)
老化防止剤
・AO−60…ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](株式会社ADEKA 製)
製造した蓄熱材用組成物の測定結果及び評価結果を併せて表1〜3に記す。
Figure 2014122320

Figure 2014122320
Figure 2014122320

Claims (6)

  1. 蓄熱物質(A)と、
    共役ジエン系(共)重合体と脂肪酸金属塩とから選ばれる少なくとも一つ(B)と、
    極性樹脂と結晶性ポリオレフィンとから選ばれる少なくとも一つ(C)とを含む組成物の成形体からなる、
    蓄熱材。
  2. 前記(A)成分が10〜70質量%、(B)成分が10〜80質量%、(C)成分が10〜60質量%含まれる、
    請求項1に記載の蓄熱材。
  3. 前記(A)成分が、パラフィン化合物、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコールおよび脂肪族エーテルよりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載の蓄熱材。
  4. 前記極性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体、ブタンジオール−ビニルアルコール共重合体、熱可塑性ポリウレタンよりなる群から選ばれる少なくとも一つである、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄熱材。
  5. さらに、下記官能基群Xから選ばれる少なくとも1つの官能基を有する水添ジエン系(共)重合体、及び下記官能基群Xから選ばれる少なくとも1つの官能基を有するオレフィン系重合体のうち少なくとも一つ(D)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄熱材。
    [官能基群X]:カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基及びオキサゾリン基
  6. ペレット状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄熱材。

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