JP2014218602A - 蓄熱材 - Google Patents

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恵介 突廻
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公彦 吉井
良彰 高橋
Yoshiaki Takahashi
良彰 高橋
洋成 持田
Hiroshige Mochida
洋成 持田
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Abstract

【課題】 工業的に有用な潜熱量を保ちつつ、難燃性を有する蓄熱材を提供する。【解決手段】 上記課題は、蓄熱物質を含む連続油相(A)と、前記(A)相と相溶しない相(B)とを含む蓄熱材により解決される。前記(B)相は、共連続相または分散相のうち少なくとも一つの相であることが好ましい。また前記蓄熱材は、さらに、界面活性剤を含むことが好ましく、油中水型エマルジョンであることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、相変化に伴って発生する潜熱を利用して蓄熱を行う潜熱蓄熱方式に用いられる蓄熱材に関する。
蓄熱材とは、物質の相変化に伴うエネルギー(潜熱)または単一の相における温度変化に必要なエネルギー(顕熱)の大きい物質を含有する材料であり、該物質に蓄えた熱を必要に応じて取り出すことができる材料のことである。
蓄熱材は、例えばオフィスビルや家屋等の施設における温調用途;自動車等のキャニスター用途;ICチップ等の電子部品における昇温防止用途;衣類の繊維における保温用途;生鮮食品、臓器、抗体等の輸送における保温用途;橋梁等のコンクリート材料における保温用途;カーブミラー等の表面防曇用途;路面の凍結防止用途;等の種々の分野において利用されている。
蓄熱材としては、水の融解−凝固に伴う状態変化における潜熱を用いたものがよく知られている。潜熱型の蓄熱材は、顕熱型の蓄熱材と比較して一般的に蓄熱量が大きいという利点があるが、潜熱型の蓄熱材として代表的な水の融点は大気圧下でほぼ0℃であるため、0℃付近の温度帯にしか使用できない、すなわち各蓄熱物質固有の相変化温度領域に使用が制限されるという問題がある。
潜熱を使用できる化合物としては、安価で入手性が高く、かつ炭素数に応じた融点をもつパラフィン化合物も知られている。所望の温度領域に合った炭素数を有するパラフィン化合物を蓄熱物質として用いることで、多様な温度領域で用いることができる。しかしながら、パラフィン化合物は液体では危険物に分類されるため、難燃性を付与したいという要請がある。
難燃性を付与する構成としては、潜熱蓄熱材中にリン系化合物等の難燃剤を混入するもの(例えば、特許文献1参照)、水を連続相としてパラフィン化合物を分散相とした水中油型エマルジョン(以下、「O/Wエマルジョン」とも称する)(例えば、特許文献2参照)がある。
しかしながら、難燃剤を混入する場合、蓄熱材の材料コストが上昇する、蓄熱材と難燃剤の比重の違いなどにより、蓄熱材が相変化を繰り返すと難燃剤が沈降、偏在するという問題があり、O/Wエマルジョンは水を連続相とするために蓄熱材としての伝熱性が損なわれるうえ、工業的に有用な潜熱量を得ることが困難であるという問題があった。
特開平6−49441号公報 特開2000−336350号公報
本発明においては、工業的に有用な潜熱量を保ちつつ、難燃性を有する蓄熱材及びこれを用いた蓄熱用装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、下記構成によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 蓄熱物質を含む連続油相(A)と、前記(A)相と相溶しない相(B)とを含む蓄熱材。
[2] 前記(B)相は、共連続相または分散相のうち少なくとも一つである、前記[1]に記載の蓄熱材。
[3] 前記(A)相と、前記(B)相との質量比が、97:3〜50:50である、前記[1]または[2]に記載の蓄熱材。
[4] 前記分散相成分の平均粒子径が0.1〜100μmである、前記[2]または[3]に記載の蓄熱材。
[5] 前記(B)相が水を50質量%以上含む、前記[1]〜[4]のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
[6] さらに、界面活性剤を含む、前記[1]〜[5]のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
[7] 前記界面活性剤は、下式によって定められる親水親油バランス(HLB値)が2〜8である、前記[6]に記載の蓄熱材。
HLB値=[(界面活性剤中の親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)]×20
[8] 前記界面活性剤が、エーテル系界面活性剤、アルキルフェノール系界面活性剤、エステル系界面活性剤、ソルビタンエステル系界面活性剤、ソルビタンエステルエーテル系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一つである、前記[7]に記載の蓄熱材。
[9] 前記蓄熱物質が、パラフィン化合物、脂肪酸のエステル化合物、脂肪族エーテル類、脂肪族ケトン類、脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種である、前記[1]〜[8]のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
[10] 前記(A)相が、エラストマーおよび脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも一つをさらに含む、前記[1]〜[9]のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
[11] 前記エラストマーおよび脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも一つが、前記(A)相中1〜33質量%含まれる、前記[10]に記載の蓄熱材。
[12] 油中水型エマルジョンである、前記[1]〜[11]のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
[13] 包装材料または容器中に、前記[1]〜[12]のうちいずれか一つに記載の蓄熱材を有してなる、蓄熱材。
本発明によれば、安価で工業的に有用な潜熱量を保ち、難燃性を有する蓄熱材を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
[1.蓄熱材]
本発明の蓄熱材は、蓄熱物質を含む連続油相(A)と、前記(A)相中に、前記(A)相と相溶しない相(B)とからなる。本発明の蓄熱材は界面活性剤をさらに含むことが好ましく、前記(B)相は水を50質量%以上含むことが好ましい。また、前記(A)相は、エラストマーおよび脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも一つをさらに含むことが好ましい。
本発明の蓄熱材は、前記(A)相中に、前記(A)相と相溶しない相(B)が含まれていればよく、例えば(B)相の一部が(A)相中に存在し、残りの一部は遊離する構成であってもよい。蓄熱材に難燃性を付与する加点からは、前記(B)相は、共連続相または分散相のうち少なくとも一つの相であることが好ましい。長期間の蓄熱材の使用においても各相の存在状態を安定させる観点からは、(A)相中に(B)相が分散相として存在する油中水型エマルジョン(以下、「W/Oエマルジョン」とも称する)であることがとくに好ましい。
なお、本明細書においては、蓄熱物質と、必要に応じて用いられるエラストマーおよび脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも一つとを併せて「連続油相」あるいは「(A)相」と称し、前記(A)相と相溶しない相を「共連続相または分散相」もしくは「(B)相」と称し、エラストマーおよび脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも一つを「エラストマー等」と称する場合がある。
<(A)連続油相>
本発明の蓄熱材は、連続油相として蓄熱物質を含む。ここで、蓄熱材にエラストマー等が含まれる場合、エラストマー等は、蓄熱物質を包接するような状態で蓄熱物質とともに連続油相を形成する。
蓄熱物質としては、パラフィン化合物、脂肪酸のエステル化合物、脂肪族エーテル類、脂肪族ケトン類、および脂肪族アルコール類からなる群より選ばれた少なくとも一種が好ましく用いられる。蓄熱材が相変化を繰り返しても共連続相または分散相が安定して存在するために、エラストマー等を加えることが好ましい。なお、蓄熱物質及びエラストマー等の詳細については後述する。
本発明の蓄熱材において、(A)相の含有量は、蓄熱材中、50〜99質量%が好ましく、特に好ましくは60〜90質量%である。含有量が前記範囲にあると、(B)相の形状の安定性を保ちつつ、工業上有用な蓄熱量を得る観点から好ましい。
(A)相にエラストマー等が含まれる場合、エラストマー等の含有量は、(A)相中、1〜33質量%が好ましく、1〜20質量%がさらに好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。(B)相の形状の安定性を保つ観点からは、前記下限値以上であることが好ましく、また、充分な潜熱量及び蓄熱効果を得る観点からは、前記上限値以下であることが好ましい。
<(B)共連続相または分散相>
本発明の蓄熱材は、(B)相として、前記(A)相と相溶しない成分を含む。(B)相は、(A)相中で共連続相または分散相のうち少なくとも一つの相を形成する。このような構成により、蓄熱材に難燃性を付与することが可能となる。ここで、「相溶しない」とは、互いの成分が同化せず、互いに独立して存在することをいう。
(B)相としては水が好ましい。水としては、工業用水でも問題ないが、イオン交換水あるいは蒸留水であると他の成分に影響を与えにくいため好ましい。(B)相中の水の含有量は、50質量%を超えて含まれていることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。水以外に含まれる成分しては、炭素数1〜7の低級脂肪族アルコール等の極性溶媒が例示される。
本発明の蓄熱材において、(B)相の含有量は、蓄熱材中、1〜50質量%が好ましく、特に好ましくは5〜40質量%である。含有量が前記範囲にあると、(B)相の安定性を保ちつつ、工業上有用な蓄熱量を得る観点から好ましい。
前記(A)相と(B)相の質量比は、相変化を繰り返しても各相の形状が安定な蓄熱材を得る観点から、97:3〜50:50であることが好ましく、95:5〜70:30であることが特に好ましい。
蓄熱材中、(B)相が分散相となる場合、分散相の平均粒子径は、0.1〜100μmであり、0.1〜30μmであることが好ましく、0.1〜25μmがさらに好ましく、0.3〜20μmが特に好ましい。蓄熱材の難燃性を得る観点からは、前記下限値以上であることが好ましく、また、蓄熱材の凝固時に(B)相同士の合着を防止し、形状の安定性を維持する観点からは、前記上限値以下であることが好ましい。
ここで、「分散相の平均粒子径」とは、蓄熱材中に存在する分散相のレーザー回折・散乱法により測定された体積平均粒子径を意味する。体積平均粒子径は、得られた蓄熱材を、レーザー回折・散乱式粒度分析計にて測定することにより、MV値(Mean Volume Diameter:体積平均値)として求めることができる。
<界面活性剤>
本発明においては、界面活性剤を用いると(A)相と(B)相とを混合撹拌し、(A)相中に(B)相を均一に混合分散させることができるため好ましい。界面活性剤は、(A)相中にて(B)相同士の凝集や合一を防止して(B)相を分散、安定した状態で存在させるという作用があるため、蓄熱材をW/Oエマルジョンとする場合とくに好ましい。
界面活性剤としては、常温で液状であることが好ましい。また、前記界面活性剤の親水親油バランス(HLB値)が8以下であることが好ましく、特に好ましくは7以下である。また、下限値は2であることが好ましく、特に好ましくは3である。このような値のものを用いることで、(A)相中で(B)相が安定して存在する蓄熱材を得ることができる。
なお、本発明における親水親油バランス(HLB値)は、グリフィン法に基づき、下式により算出したものである。
界面活性剤のHLB値=[(界面活性剤中の親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)]×20
界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等を用いることができる。(B)相の安定性の観点からは、非イオン系界面活性剤が好ましく用いられる。具体的には、エーテル系、アルキルフェノール系、エステル系、ソルビタンエステル系、ソルビタンエステルエーテル系の界面活性剤が挙げられる。ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、が例示され、とくにポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノオレエートが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の蓄熱材において、界面活性剤の添加量は、蓄熱材中、0.1〜20質量%であることが好ましく、充分な蓄熱量を得る観点からは、0.1〜10質量%であることがさらに好ましい。
<蓄熱材の製造方法>
本発明の蓄熱材を得る方法としては特に限定されるものではないが、各成分を攪拌機、ホモジナイザー、コロイドミル等を用いて、所望の形状に合わせた撹拌条件で混合する方法が例示される。
特に、蓄熱材をW/Oエマルジョンとしたい場合、攪拌機、ホモジナイザー、コロイドミル等を用いて強制的に水相を破砕し分散相とする方法(分散法)や、界面活性剤を(A)相に溶解、分散させて、そこに(A)相を加える方法(Agent−in−Oil法)が例示される。この場合、界面活性剤は上述のHLB値のものであることが好ましい。
本発明では、(A)相を構成する成分から予め撹拌を行い、その後、(B)相を構成する成分とともに混合撹拌してW/Oエマルジョンを得ることが好ましい。この場合混合撹拌条件は特に限定されるものではないが、蓄熱材に適したW/Oエマルジョンを得る観点からは、撹拌速度1000〜100000rpmが好ましく、1500〜70000rpmがより好ましく、2000〜50000rpmが特に好ましい。撹拌時間は1分〜1時間の条件下にて混合撹拌されることが好ましい。
[2.蓄熱物質]
本発明の蓄熱材で用いられる蓄熱物質について、以下に説明する。蓄熱物質としては、蓄熱容量の観点から、潜熱蓄熱物質が好ましく、パラフィン化合物、脂肪酸、脂肪酸のエステル化合物、脂肪族エーテル類、脂肪族ケトン類、及び脂肪族アルコール類からなる群より選ばれた少なくとも一種が挙げられる。これらの中でも、化学的、物理的に安定な化合物であり、且つ高い蓄熱容量を有するため、パラフィン化合物、脂肪族アルコール類、脂肪酸のエステル化合物が好ましく、パラフィン化合物がより好ましい。なお、本発明における蓄熱物質は、顕熱蓄熱による蓄熱効果を排除するものではない。
蓄熱物質は、蓄熱材を広範な分野にて活用する観点から、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融点が−30〜130℃の範囲にあることが好ましく、0℃〜100℃の範囲にあることがより好ましい。
また、蓄熱物質の示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解熱量は、その相変化による潜熱を種々の分野で利用するという観点から、100kJ/kg以上あることが望ましい。
本明細書における蓄熱物質の融点とは、JIS K−7121に準拠して測定した際のTimに相当する。なお、複数の融解ピークを有する蓄熱物質の融点は、より融解熱量の大きな融解ピークの補外融解開始温度とし、またその潜熱量はその融解ピークの融解熱量とした。多峰性ピークを有し個々の融解ピークの区別が付かない場合は、それらを一つの融解ピークとみなして処理したものとする。なお、蓄熱物質は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<パラフィン化合物>
パラフィン化合物としては、例えば、炭素数8〜100のパラフィン化合物が挙げられる。なお、パラフィン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。炭素数の異なるパラフィン化合物を組み合わせて用いることにより、蓄熱材の融点あるいは凝固点を所望の値に設定することができる。
パラフィン化合物としては、炭素数10〜30のアルキレン基を有する化合物がより好ましい。具体的には、n−ドデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−イコサン等の直鎖状のパラフィンや、分岐状のパラフィンが挙げられる。
パラフィン化合物は、潜熱量をより大きくする観点から、直鎖状のパラフィン、すなわちn−パラフィンであることが好ましい。n−パラフィンは、パラフィン化合物全体に対して70質量%以上含有されていることが好ましく、より好ましくは90質量%以上含有されていることが好ましく、特に好ましくは99質量%以上含有されていることが好ましい。
また、炭素数8〜100のパラフィン化合物の一態様として、石油ワックスを用いることもできる。石油ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス(石油又は天然ガスを原料として、減圧蒸留留出油から分離精製することにより製造される、常温において固形のワックス)、マイクロクリスタリンワックス(石油を原料として、減圧蒸留残渣油又は重質留出油から分離精製することにより製造される、常温において固形のワックス)等の脂肪族炭化水素が挙げられる。
パラフィンワックスとしては、炭素数20〜40程度のものが、マイクロクリスタリンワックスとしては、炭素数30〜60程度のものが、融解熱量及び入手性の面で好ましい。パラフィンワックスの製品としては、例えば、「HNP−9」、「FNP−0090」、「FT115」〔いずれも日本精蝋(株)製〕が挙げられる。
パラフィン化合物は、生活温度領域や高温領域の熱の有効利用という観点から、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融点が−30〜130℃の範囲にあることが好ましく、0〜100℃の範囲にあることがより好ましい。また、パラフィン化合物の示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解熱量は、その相変化による潜熱を種々の分野で利用するという観点から、100kJ/kg以上あることが望ましい。なお、本明細書におけるパラフィン化合物の融点とは、JIS K−7121に準拠して測定した際のTimに相当する。
なお、上述したパラフィン化合物に対応する融点及び融解熱量を以下に丸括弧内に示す。n−ウンデカン(−27℃、160kJ/kg)、n−ドデカン(−10℃、185kJ/kg)、n−トリデカン(−7℃、150kJ/kg)、n−テトラデカン(6℃、230kJ/kg)、n−ペンタデカン(9℃、165kJ/kg)、n−ヘキサデカン(18℃、230kJ/kg)、n−ヘプタデカン(21℃、170kJ/kg)、n−オクタデカン(28℃、240kJ/kg)、n−ノナデカン(32℃、170kJ/kg)、n−イコサン(37℃、250kJ/kg)、HNP−9(73℃、215kJ/kg)、FNP−0090(80℃、230kJ/kg)、FT115(93℃、245kJ/kg)。
<脂肪酸のエステル化合物>
脂肪酸のエステル化合物としては、例えば、炭素数8〜30の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ステアリン酸ビニル、セバシン酸ジメチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸プロピル、ミリスチン酸ミリスチルが挙げられる。
脂肪酸のエステル化合物の中では、入手性の観点から、炭素数10〜18の直鎖飽和脂肪酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、テトラデシルエステルが好ましく用いられる。
なお、上述した蓄熱物質に対応する融点を以下に丸括弧内に示す。ステアリン酸ビニル(28℃)、セバシン酸ジメチル(21℃)、ステアリン酸ブチル(19℃)、ステアリン酸イソプロピル(16℃)、パルミチン酸イソプロピル(11℃)、パルミチン酸プロピル(10℃)、ミリスチン酸ミリスチル(40℃)。
<脂肪族エーテル類>
脂肪族エーテル類としては、例えば、炭素数14〜60の脂肪族エーテルを用いることができ、具体的には、ヘプチルエーテル、オクチルエーテル、テトラデシルエーテル、ヘキサデシルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、高い潜熱量を有し、合成も容易であるという観点から、酸素原子数が一つであり、対称構造を持つエーテル化合物(対称型エーテル化合物)が好ましく用いられる。
なお、上述した蓄熱物質に対応する融点を以下に丸括弧内に示す。ヘプチルエーテル(−24℃)、オクチルエーテル(−7℃)、テトラデシルエーテル(45℃)、ヘキサデシルエーテル(55℃)。
<脂肪族ケトン類>
脂肪族ケトン類としては、例えば、炭素数8〜30の脂肪族ケトンを用いることができ、具体的には、2−ノナノン、トリデカナール、2−ペンタデカノン、3−ヘキサデカノン、8−ペンタデカノン、4,4−ビシクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、産業上の利用に適した潜熱量を有し、合成も容易であるという観点から、酸素原子数が一つである脂肪族ケトンが好ましく用いられる。
なお、上述した蓄熱物質に対応する融点を以下に丸括弧内に示す。2−ノナノン(−9℃)、トリデカナール(14℃)、2−ペンタデカノン(40℃)、3−ヘキサデカノン(43℃)、8−ペンタデカノン(43℃)、4,4−ビシクロヘキサノン(118℃)。
<脂肪族アルコール類>
脂肪族アルコール類としては、例えば、炭素数8〜60の脂肪族アルコールを用いることができ、具体的には、2−ドデカノール、1−テトラデカノール、7−テトラデカノール、1−オクタデカノール、1−エイコサノール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、産業上の利用に適した潜熱量を得るという観点から、水酸基が分子末端に存在するアルコール化合物(末端アルコール化合物)が好ましく用いられる。
なお、上述した蓄熱物質に対応する融点を以下に丸括弧内に示す。2−ドデカノール(19℃)、1−テトラデカノール(39℃)、7−テトラデカノール(42℃)、1−オクタデカノール(59℃)、1−エイコサノール(65℃)、1,10−デカンジオール(73℃)。
[3.エラストマー等]
本発明の蓄熱材では、蓄熱物質が相変化を繰り返しても安定した共連続相または分散相の形状を安定に保つ、蓄熱材に適当な柔軟性を付与することを目的として、エラストマーおよび脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも一つが用いられる。
エラストマーとしては、例えば、共役ジエン系ゴム(ただし、水添共役ジエン系(共)重合体を除く。以下同じ。)、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、水添共役ジエン系(共)重合体が挙げられ、その他、エチレン・酢酸ビニル共重合体等を挙げることもできる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
エラストマーは、ゴム弾性を有し、蓄熱物質を良好に包接するバインダー成分として働くため、(B)相の形状安定性の維持に好ましい。とくに、熱可塑性エラストマーは、製造時において成型加工を繰り返し行うことが可能であるため好ましく、相分離や蓄熱物質のブリード(染出し)防止、及び長期耐久性の観点から、水添共役ジエン系(共)重合体がより好ましい。
エラストマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下「Mw」ともいう。)が1万〜70万であることが好ましく、10万〜50万であることがより好ましく、20万〜50万であることが特に好ましい。蓄熱材が所要の力学的性質を得るために、また相分離や蓄熱物質のブリードを防ぐためには、Mwが20万以上であることが好ましく、蓄熱材を成形加工するための流動性を確保するためには、Mwが70万以下であることが好ましい。
<共役ジエン系ゴム>
共役ジエン系ゴム(ただし、水添共役ジエン系(共)重合体を除く。)としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等の合成ゴムが挙げられる。
<エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム>
エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとしては、例えば、エチレンとα−オレフィンとの二元共重合体ゴム(例:エチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPM))、エチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとの三元共重合体ゴム(例:エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム(EPDM))が挙げられる。
上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−オクテン等の炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜8のα−オレフィンが挙げられる。α−オレフィンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記非共役ジエンとしては、例えば、エチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。非共役ジエンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<水添共役ジエン系(共)重合体>
水添共役ジエン系(共)重合体としては、例えば、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック(共)重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック(共)重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレンブロック(共)重合体(SEB)、スチレン−エチレン/プロピレンブロック(共)重合体(SEP)等のアルケニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物のブロック(共)重合体の水素添加物;スチレン−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック(共)重合体(SEBC)等のアルケニル芳香族化合物−オレフィン結晶系ブロック(共)重合体、オレフィン結晶−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロック(共)重合体(CEBC)等のオレフィン結晶系ブロック(共)重合体などのオレフィン系エラストマーが挙げられる。
水添共役ジエン系(共)重合体は、共役ジエン化合物に由来する構成単位(a−1)(以下「構成単位(a−1)」ともいう。)を含み、ビニル結合含量が30モル%未満の重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構成単位(b−1)(以下「構成単位(b−1)」ともいう。)を含み、ビニル結合含量が30〜95モル%の重合体ブロック(B)と、アルケニル芳香族化合物に由来する構成単位(c−1)(以下「構成単位(c−1)」ともいう。)を、50質量%を超えて含む重合体ブロック(C)とからなる群より選ばれた少なくとも一種の重合体ブロックを有するブロック(共)重合体を水素添加して得られる重合体であることが好ましい。なお、本明細書において「化合物に由来する構成単位」とは、通常、当該化合物の重合性二重結合部分の反応に基づく構成単位を意味する。
<ブロック(共)重合体>
(1)重合体ブロック(A)
重合体ブロック(A)は、共役ジエン化合物に由来する構成単位(a−1)を含む重合体ブロックである。共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンが挙げられる。これらの中でも、入手性、また物性の優れた蓄熱材を得る観点から、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンが更に好ましい。なお、共役ジエン化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
構成単位(a−1)は、1,3−ブタジエンに由来する構成単位を95〜100質量%含む構成単位であることが好ましく、1,3−ブタジエンに由来する構成単位のみからなる構成単位であることが特に好ましい。
重合体ブロック(A)における構成単位(a−1)の含有割合は、蓄熱材の成形加工時の流動性を保つ観点から、重合体ブロック(A)に対して95質量%以上が好ましく、重合体ブロック(A)が構成単位(a−1)のみからなることがより好ましい。
重合体ブロック(A)中のビニル結合含量は、蓄熱材を形成した際の形状保持性を保つ観点より、30モル%未満であり、好ましくは20モル%未満であり、より好ましくは18モル%以下である。重合体ブロック(A)中のビニル結合含量の下限値は特に限定されるものではない。
なお、本明細書において、ビニル結合含量とは、水添前の重合体ブロック中に1,2−結合、3,4−結合及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン化合物のうち、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれているものの合計割合(モル%基準)である。
(2)重合体ブロック(B)
重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物に由来する構成単位(b−1)を含む重合体ブロックであり、蓄熱材への軟質化の付与の効果を得る、或いは重合体ブロック(B)の結晶化を防止するという観点からは、アルケニル芳香族化合物に由来する構成単位(以下「構成単位(b−2)」ともいう。)を更に含む重合体ブロックであってもよい。
この共役ジエン化合物としては、例えば、構成単位(a−1)にて列挙した共役ジエン化合物と同様の化合物を使用することができ、好ましい化合物も同様である。構成単位(a−1)、(b−1)における共役ジエン化合物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
構成単位(b−1)は、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンに由来する構成単位を合計で95〜100質量%含む構成単位であることが好ましく、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンに由来する構成単位のみからなる構成単位であることがさらに好ましい。
重合体ブロック(B)における構成単位(b−1)の含有割合は、重合体ブロック(B)に対して50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
重合体ブロック(B)が構成単位(b−2)を更に含む場合、構成単位(b−2)の含有割合は、蓄熱材の成形加工時の流動性を保つ観点から、重合体ブロック(B)に対して50質量%以下であることが好ましい。
重合体ブロック(B)における構成単位(b−1)/構成単位(b−2)の質量比は、好ましくは100/0〜50/50、より好ましくは100/0〜70/30、さらに好ましくは100/0〜80/20である。
アルケニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジエチル−p−アミノスチレン、ビニルピリジンが挙げられる。これらの中でも、入手性、重合容易性の観点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
なお、重合体ブロック(B)が、構成単位(b−1)と構成単位(b−2)とを含む共重合ブロックである場合、構成単位(b−1)の分布は、ランダム、テーパー(分子鎖に沿って構成単位(b−1)が増加又は減少するもの)、一部ブロック状、又はこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
重合体ブロック(B)中のビニル結合含量は、30〜95モル%であり、好ましくは30〜85モル%であり、更に好ましくは40〜75モル%である。蓄熱材を形成した際に蓄熱物質のブリードを防ぐ観点から、重合体ブロック(B)中のビニル結合含量は30モル%以上であることが好ましい。
(3)重合体ブロック(C)
重合体ブロック(C)は、アルケニル芳香族化合物に由来する構成単位(c−1)を、50質量%を超えて含む重合体ブロックであり、好ましくは構成単位(c−1)のみからなる重合体ブロックである。構成単位(c−1)におけるアルケニル芳香族化合物としては、構成単位(b−2)におけるアルケニル芳香族化合物と同様の化合物が挙げられ、好ましい化合物もまた同様である。
(4)ブロック構成
ブロック(共)重合体が重合体ブロック(C)を有さない場合、ブロック(共)重合体において、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量換算の比率((A)/(B))は、通常5/95〜50/50であり、好ましくは10/90〜40/60である。蓄熱材を形成した際に形状保持性を確保する観点からは、重合体ブロック(A)の比率が5以上、重合体ブロック(B)の比率が95以下であることが好ましい。一方、蓄熱材を形成した際に蓄熱物質のブリードを防ぐ観点からは、重合体ブロック(A)の比率が50以下、重合体ブロック(B)の比率が50以上であることが好ましい。
次に、ブロック(共)重合体が、重合体ブロック(C)を有し、かつ両末端に重合体ブロック(C)を有しない場合、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)との質量換算の比率({(A)+(B)}/(C))は、通常80/20〜99/1であり、好ましくは85/15〜95/5である。重合体ブロック(C)の比率は、溶融時の加工性(成形加工時の流動性)を保つ観点から20以下であることが好ましい。
さらに、ブロック(共)重合体が重合体ブロック(C)を両末端に有する場合、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)と重合体ブロック(C)との質量換算の比率(A)/(B)/(C)は、通常0/80/20〜49.5/49.5/1である。重合体ブロック(C)の比率は、溶融時の加工性(成形加工時の流動性)を保つ観点から20質量%以下であることが好ましい。
ブロック(共)重合体において、アルケニル芳香族化合物に由来する構成単位の含有割合は、蓄熱材の成形加工時の流動性を保つ観点から、ブロック(共)重合体に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。ここでアルケニル芳香族化合物に由来する構成単位の含有割合は、例えば、重合体ブロック(B)中の構成単位(b−2)及び重合体ブロック(C)中の構成単位(c−1)の合計の含有割合を指す(もちろん、いずれかが含まれない場合もある)。
水添共役ジエン系(共)重合体におけるブロック(共)重合体の構造は、上記要件を満たすものであればいかなるものでもよく、例えば、下記構造式(1)〜(8)で表される構造が挙げられる。
構造式(1): (A−B)n1
構造式(2): (A−B)n2−A
構造式(3): (B−A)n3−B
構造式(4): (A−B−C)n4
構造式(5): A−(B−C)n5
構造式(6): (A−B)n6−C
構造式(7): (C−B−C)n7
構造式(8): (C−B)n8
構造式(1)〜(8)中、Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Cは重合体ブロック(C)を示し、n1〜n8は1以上の整数を示す。
ここで、上記構造式(1)〜(8)で表されるブロック(共)重合体中、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)の少なくともいずれかが2以上存在する場合、それぞれの重合体ブロックは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、ブロック(共)重合体の構造は、例えば、下記構造式(9)〜(15)で表される構造のように、カップリング剤残基を介して(共)重合体ブロックが延長又は分岐されたものであってもよい。
構造式(9): (A−B)mX
構造式(10): (B−A)mX
構造式(11): (A−B−A)mX
構造式(12): (B−A−B)mX
構造式(13): (A−B−C)mX
構造式(14): (A−B−C)X(C−B)
構造式(15): (C−B)mX
構造式(9)〜(15)中、Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Cは重合体ブロック(C)を示し、mは2以上の整数を示し、Xはカップリング剤残基を示す。
ブロック(共)重合体の構造は、上記構造式(1)〜(15)で表される構造の中でも、構造式(1)、(2)、(3)、(4)又は(9)で表される構造が好ましい。
ブロック(共)重合体におけるカップリング率は、加工性や蓄熱物質のブリード性を考慮すると、50〜90%であることが好ましい。なお、カップリング剤を介して分子が連結される割合を、カップリング率とする。
カップリング剤としては、例えば、1,2−ジブロモエタン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、トリレンジイソシアナート、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化アマニ油、テトラクロロゲルマニウム、テトラクロロスズ、ブチルトリクロロスズ、ブチルトリクロロシラン、ジメチルクロロシラン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタンが挙げられる。
ブロック(共)重合体としては、上記のようなブロック(共)重合体を1種単独で用いることもできるが、2種以上のブロック(共)重合体を混合して用いることもできる。ブロック(共)重合体の組合せとしては、例えば、A−B−A/A−B、(A−B)2−X/A−B、(A−B)4−X/A−B、(A−B)4−X/(A−B)2−X/A−B、(A−B)4−X/(A−B)3−X/(A−B)2−X/A−B、A−B−C/A−B、(A−B−C)2/A−B、(A−B−C)2−X/A−B、C−B−C/A−B(ただし、Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Cは重合体ブロック(C)を示し、Xはカップリング剤残基を示す。)が挙げられる。
なお、ブロック(共)重合体は、例えば特許第3134504号、特許第3360411号記載の方法により製造することができる。
<水添共役ジエン系(共)重合体の物性>
水添共役ジエン系(共)重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下「Mw」ともいう。)が1万〜70万であることが好ましく、10万〜50万であることが更に好ましく、20万〜50万であることが特に好ましい。所要の力学的性質を得るためには、Mwが前記下限値以上であることが好ましく、加工時の流動性を確保するためには、Mwが前記上限値以下であることが好ましい。
水添共役ジエン系(共)重合体は、示差走査式熱量測定法(DSC法)により測定される融点が70〜140℃の範囲にあることが好ましく、80〜120℃の範囲にあることがより好ましい。なお、本明細書における水添共役ジエン系(共)重合体の融点とは、JIS K−7121に準拠して測定した際のTimに相当する。
水添共役ジエン系(共)重合体のメルトフローレート(以下「MFR」ともいう。)の値は特に限定されるものではないが、一般に0.01〜100g/10minであることが好ましい。なお、本明細書において、水添共役ジエン系(共)重合体のMFRは、JIS K−7210に準拠して、230℃、10kgの荷重で測定した値である。
水添共役ジエン系(共)重合体は、1種単独で用いることもできるが、2種以上の水添共役ジエン系(共)重合体を混合して用いることもできる。水添共役ジエン系(共)重合体の組合せとしては、例えば、A−B−Aの水添物/A−Bの水添物、(A−B)2−Xの水添物/A−Bの水添物、(A−B)4−Xの水添物/A−Bの水添物、(A−B)4−Xの水添物/(A−B)2−Xの水添物/A−Bの水添物、(A−B)4−Xの水添物/(A−B)3−Xの水添物/(A−B)2−Xの水添物/A−Bの水添物、A−B−Cの水添物/A−Bの水添物、(A−B−C)2の水添物/A−Bの水添物、(A−B−C)2−Xの水添物/A−Bの水添物、C−B−Cの水添物/A−Bの水添物(ただし、Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Cは重合体ブロック(C)を示し、Xはカップリング剤残基を示す。)が挙げられる。
上述したように、ブロック(共)重合体の構造は、構造式(1)、(2)、(3)、(4)又は(9)で表される構造が好ましい。重合体ブロック(A)は、ビニル結合含量が30モル%未満の重合体ブロックであるので、水素添加により、ポリエチレンに類似の構造となり、結晶性のよい重合体ブロックとなる。重合体ブロック(B)は、ビニル結合含量が30〜95モル%の重合体ブロックであるので、重合体ブロック(B)は、水素添加により、例えば、構成単位(b−1)における共役ジエン化合物が1,3−ブタジエンの場合、ゴム状であるエチレン−ブチレン(共)重合体と類似の構造となり、柔らかい重合体ブロックとなる。このような観点から、ブロック(共)重合体は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを少なくとも有し、少なくとも一方の末端が重合体ブロック(A)である構成であることが好ましく、重合体ブロック(A)が両末端に、重合体ブロック(B)が中間に存在する構成であることがより好ましい。
また、構成単位(a−1)、(b−1)における共役ジエン化合物が1,3−ブタジエンの場合、オレフィン結晶−エチレン/ブチレン−オレフィン結晶ブロックポリマー構造に類似した構造を有する。このような構造の水添共役ジエン系(共)重合体を用いることで、蓄熱物質との親和性が良く、蓄熱材が相変化を繰り返しても、共連続相または分散相が安定した形状を保つ蓄熱材を得ることができる。
<水添共役ジエン系(共)重合体の製造方法>
水添共役ジエン系(共)重合体の製造方法は特に限定されるものではなく、ブロック(共)重合体を調製した後、調製したブロック(共)重合体を水素添加することで製造することができる。ブロック(共)重合体は、例えば、不活性有機溶媒中、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として構成単位(a−1)における共役ジエン化合物をリビングアニオン重合した後、構成単位(b−1)における共役ジエン化合物及び必要に応じてアルケニル芳香族化合物を更に加えてリビングアニオン重合を行うことで、調製することができる。
不活性有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。
なお、ブロック(共)重合体にカップリング剤残基を導入する場合、構成単位(b−1)における共役ジエン化合物をリビングアニオン重合した後、単離等の操作を行うことなくカップリング剤を加えて反応させることで簡単に導入することができる。
リビングアニオン重合において、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)のビニル結合含量は、エーテル化合物、3級アミン、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)のアルコキシド、フェノキシド、スルホン酸塩等を併用し、その種類、使用量等を適宜選択することによって容易に制御することができる。
このブロック(共)重合体を水素添加することにより、水添共役ジエン系(共)重合体を容易に調製することができる。ブロック(共)重合体の水素添加方法、反応条件については特に限定はなく、通常は、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で行われる。この場合、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、又は反応時間等を変えることにより任意に選定することができる。
水添触媒としては、例えば、特開平1−275605号公報、特開平5−271326号公報、特開平5−271325号公報、特開平5−222115号公報、特開平11−292924号公報、特開2000−37632号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭62−218403号公報、特開平7−90017号公報、特公昭43−19960号公報、特公昭47−40473号公報に記載の水添触媒が挙げられる。なお、上記水添触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
水添共役ジエン系(共)重合体における共役ジエン化合物(構成単位(a−1)、(b−1)における共役ジエン化合物を含む)に由来する二重結合の水素添加率は、形状保持性や力学的性質を満たすためには、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
水添後は、必要に応じて触媒の残渣を除去し、又はフェノール系若しくはアミン系の老化防止剤を添加し、その後、水添共役ジエン系(共)重合体溶液から水添共役ジエン系(共)重合体を単離する。水添共役ジエン系(共)重合体の単離は、例えば、水添共役ジエン系(共)重合体溶液にアセトン又はアルコール等を加えて沈殿させる方法、水添共役ジエン系(共)重合体溶液を熱湯中に撹拌下投入し、溶媒を蒸留除去する方法、蓄熱物質を予め適当量混合した水添共役ジエン系(共)重合体溶液を熱湯中に撹拌下投入し、溶媒を蒸留除去する方法等により行うことができる。
<脂肪酸金属塩>
脂肪酸金属塩は、脂肪族カルボン酸(以下、「脂肪酸」とも称する)の金属塩である。
脂肪酸金属塩は、蓄熱物質を増粘し、蓄熱材から蓄熱物質が染み出すことを防止する観点からは、脂肪酸と併用されることが好ましい。この脂肪酸金属塩と脂肪酸との混合物には、前記共役ジエン系(共)重合体のように、蓄熱物質と混合するために加熱して融解する工程が不要であるため、蓄熱材の製造が容易となるという利点がある。
脂肪酸金属塩を構成する金属種としては、例えば、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉛等の各種の二価以上の金属塩やアルカリ土類塩を挙げることができる。これらの中でもアルミニウム塩が好ましく使用できる。
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、例えば、炭素数4〜24、好ましくは炭素数6〜10程度の脂肪酸であることが望ましく、例えば、オクチル酸(2−エチルヘキサン酸)、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。2−エチルヘキサン酸が特に好ましい。脂肪族金属塩としては、2−エチルヘキサン酸アルミニウムが特に好適に使用できる。
脂肪酸金属塩と併用する脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、等の長鎖飽和脂肪酸類、又は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の長鎖不飽和脂肪酸類が仕様でき、オレイン酸が特に好ましい。これらの脂肪酸金属塩および脂肪酸は、それぞれ1種単独で含有してもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
脂肪酸金属塩と脂肪酸とを併用する場合、脂肪酸金属塩と脂肪酸の比率は、蓄熱物質の増粘作用を得る観点から、100/5〜100/100が好ましく、100/20〜100/80がより好ましく、100/25〜100/75が特に好ましい。
上記2−エチルヘキサン酸アルミニウムとしては、市販品では、オクトープアルミA(ホープ製薬株式会社製)が例示される。上記オレイン酸としては、ゲル化補助剤Nsp(ホープ製薬株式会社製)が例示される。
[4.その他の成分]
本発明の蓄熱材は、用途に応じた機能を付与する目的で、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃化剤、防菌・防カビ剤、分散剤、着色防止剤、防錆剤、増粘剤、重金属不活性化剤、比重調整剤等のその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
本発明の蓄熱材は、蓄熱物質の相変化を起こりやすくする目的で、更に結晶核剤(発核剤)を含有することができる。より好ましい形態としては、蓄熱物質に発核剤を含有させることであり、蓄熱物質に発核剤を添加して溶解混合しておくことが好ましい。
発核剤は、蓄熱物質が凝固する際に結晶核となり得る物質であればよいが、蓄熱物質と結晶構造の似た物質であることが好ましく、また、蓄熱物質より融点が高く、早い段階から凝固が起こる物質であることが好ましい。発核剤は、更に、蓄熱物質の融点よりも10〜100℃高い相変化温度を有する物質であることがより好ましい。
結晶核剤の添加量としては、蓄熱物質100質量部に対して、0.5質量部〜20質量部であることが好ましく、1質量部〜10質量部が更に好ましい。蓄熱物質を充分に凝固させる観点からは前記下限値以上が好ましく、潜熱による蓄熱温度領域を明確にする観点からは前記上限値以下であることが好ましい。
本発明の蓄熱材は、(B)相の融点(凝固点)を降下させる目的で、更に過冷却防止剤を含有することができる。過冷却防止剤として親水性物質を用いる場合は、界面活性剤等と反応して蓄熱材を不安定化させないものであれば、いずれも使用することができる。親水性物質としては、非電解質系、電解質系のものを用いることができる。
過冷却防止剤の添加量は、特に限定されるものではないが、水添加時の融点が、−2℃〜−15℃になるように添加されることが好ましい。過冷却防止剤を用いることで、工業的に有用な温度領域である0℃〜室温領域において、(B)相が(A)相よりも低い凝固点をもつ蓄熱材とすることができるため、難燃性が向上した蓄熱材や、保冷性が向上した蓄熱材を得ることができる。
非電解質系親水性物質としては、例えば、尿素が挙げられる。
電解質系親水性物質としては、一般的な電解質塩類で代表される寒剤が使用でき、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸アンモニウムが挙げられる。特にイオン性の界面活性剤との反応性が低い非電解質系が好ましい。
本発明の蓄熱材は界面活性剤を用いているため、使用時に泡が発生しやすくなる場合がある。この場合、蓄熱材に消泡剤を添加することが好ましい。消泡剤としては、公知の材料を用いることができる。消泡剤の添加量は、消泡剤を除く蓄熱材100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部である。
[5.包装材料または容器]
本発明の蓄熱材の使用形態は必要な用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、ペレット状、シート(板)状、フィルム状、ブロック状、粉体状の形態が例示される。その場合、2本ロール、押出機、2軸混練押出機、撹拌式混合機等の通常の混合・撹拌機を使用して加工すればよい。
また、生産性、安全性の観点からは、包装材料または容器中に蓄熱材が封入された構成とすることが好ましい。
包装材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなるフィルム(ポリオレフィン樹脂フィルム)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂からなるフィルム(ポリエステル樹脂フィルム)、延伸ナイロン(ONy)、ポリアミド(PA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)等からなるフィルム等の、包装材料として公知の基材フィルム;アルミニウム箔等の、均熱化のための金属箔;これらの基材フィルム・金属箔を公知のラミネート法により積層してなる積層フィルムが挙げられる。蓄熱物質の揮発を防止する観点からは、包装材料は、PA、ONy、EVOH等からなる極性層を少なくとも一層有することが好ましい。
蓄熱材を包装材料中に封入する方法としては、例えば、上記基材フィルムのうち、熱融着性(ヒートシール性)を有する基材フィルムを最内層として含む包装材料中に、公知の充填装置により蓄熱材用組成物を充填し、これをヒートシールバーにてヒートシールし、密封する方法(ヒートシール法)が生産性の面で好ましい。基材フィルムとしては、熱融着性を有するポリオレフィン樹脂フィルムが好ましく、特にPEフィルム、PPフィルムが好ましい。
これらの包装材料は、例えば、国際公開WO2011/078340パンフレットに記載の構成のものを挙げることができる。
容器としては、例えば合成樹脂をブロー成形して得たブロー容器、金属容器等を挙げることができる。これらのうち、容器形状の自由度の高さおよび取扱いの容易性から、ブロー容器を使用することが好ましい。
ブロー容器を構成する材料としては、蓄熱物質の揮発を防止する観点から、少なくとも、ポリオレフィン等からなる非極性層と、エチレン・ビニルアルコール共重合体等からなる極性層と、両者間に配置され両者を結合する接着層と、を有する多層ブロー容器を使用することが好ましい。ここで使用されるポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンを挙げることができる。また、ブロー容器は必要に応じて表面処理を行ってもよい。
上記の包装材料または容器中に蓄熱材を封入する方法は特に限定されない。液化させた蓄熱材を充填した後固化する、ペレット状とした蓄熱材を直接封入する方法等が挙げられる。
包装材料または容器中に封入された蓄熱材は、断熱材と共に用いることが好ましい。断熱材としては、グラスウール、ウレタンフォーム、発泡ポリスチレン、真空断熱部材等が例示される。
このようにして得られた蓄熱材は、特に難燃性に優れるため、空調用途、電子部品の昇温防止用途、対象物品の保温用途等の種々の分野に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
各種物性の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
<水添共役ジエン系(共)重合体等のポリマーの物性>
[重合体ブロック(A)〜(C)の比率(%)]
ブロック(共)重合体を調製する際に使用した原料の仕込み量から、重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)の合計質量に対する各重合体ブロックの質量を比率で算出した。
[重合体ブロック(A)及び(B)のビニル結合含量(モル%)]
赤外分析法を用い、ハンプトン法により重合体ブロック(A)及び(B)のビニル結合含量(モル%)を算出した。
[重量平均分子量]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、商品名:HLC−8120GPC、東ソー・ファインケム社製、カラム:東ソー社製、GMH−XL)を用いて、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
[カップリング率(%)]
上述のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定で得られた波形を波形分離し、波形の面積比からカップリング率を算出した。
[水素添加率(%)]
四塩化炭素溶液を用い、270MHz、1H−NMRスペクトルから水素添加率(%)を算出した。
[MFR(g/10min)]
JIS K−7210に準拠して、230℃、10kg荷重でMFR(g/10min)を測定した。
[融点(℃)]
JIS K−7121に準拠して、示差走査熱量測定計(DSC)を用いてサンプルを200℃で10分保持した後、−80℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−80℃で10分間保持した後、10℃/分の速度で昇温したときの結晶融解ピークにおける補外融解開始温度(Tim)を、融点(℃)とした。
<蓄熱材の物性及び諸特性>
[蓄熱材の融点(℃)、凝固点(℃)、潜熱量(kJ/kg)の測定]
蓄熱材の融点、凝固点、潜熱量は、示差走査熱量測定計(DSC)を用いて測定した。測定は、サンプルを40℃に10分間保持した後、−20℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−20℃に10分間保持した後、50℃まで10℃/分の速度で昇温する方法で行った。JIS K−7121に準拠して、配合されたパラフィン化合物に相当する融解ピークの補外融解開始温度を蓄熱材の融点とし、配合されたパラフィン化合物に相当する結晶化ピークの補外結晶化開始温度を蓄熱材の凝固点とした。融解熱量を蓄熱材の潜熱量とした。ただし、水の融解ピークがパラフィン化合物の融解ピークと重なる場合は、パラフィン化合物に相当する結晶化ピークの凝固熱量を蓄熱材の潜熱量とした。
なお、複数の融解ピークを有する蓄熱材の融点は、より融解熱量の大きな融解ピークの補外融解開始温度とし、またその潜熱量はその融解ピークの融解熱量とした。多峰性ピークを有し個々の融解ピークの区別が付かない場合は、それらを一つの融解ピークとみなして処理した。
[水滴の平均粒子径の評価]
デジタルマイクロスコープVHX−900(株式会社キーエンス製)にて、倍率1000倍で蓄熱材中の水滴の粒子径を観察した。水滴が球形に分散したものを100個選定し、これらの平均粒子径を寸法計測機能より評価し、安定性の評価を行った。
[蓄熱材の安定性評価]
試験管内に高さ50mmになるように各蓄熱材を充填した後、密栓し30℃に保持されたインキュベーター内に1か月放置し、変化を調べた。なお、蓄熱材の安定性は以下の基準で評価した。
・AA…目視で分離が確認できないもの
・BB…目視で微量の分離が確認できるもの
・CC…目視で明らかに分離が確認できるもの
[蓄熱材の燃焼性評価]
下記で示す国連勧告試験クラス4の燃焼速度試験に準じ燃焼性評価を行った;
大気圧下、室温の空気中において、底辺20mm×高さ10mm×長さ250mmの三角柱型の試料堆積物を水平面に寝かせ、試料の一端にガスバーナーで点火し、一端からの距離が80mmから180mmまでの区間が燃焼する時間を計測する。
〔合成例1〕水添共役ジエン系(共)重合体(H−1)の調製
窒素置換された内容積50Lの反応容器に、シクロヘキサン24000g、テトラヒドロフラン1.3g、1,3−ブタジエン570g、及びn−ブチルリチウム2.4gを加え、重合開始温度70℃にて重合した。反応完結後、温度を35℃としてテトラヒドロフラン210gを添加し、次いで1,3−ブタジエン3230gを逐次添加しながら断熱重合した。その後、系内にメチルジクロロシラン1.5gを添加して30分間反応させることによりブロック(共)重合体を調製した。
上記ブロック(共)重合体は、1,3−ブタジエンに由来する構成単位を含み、ビニル結合含量が16モル%の重合体ブロック(A)と、1,3−ブタジエンに由来する構成単位を含み、ビニル結合含量が58モル%の重合体ブロック(B)とを有するブロック(共)重合体であった。また、上記ブロック(共)重合体において、重量平均分子量は38万であり、カップリング率は75%であった。
引き続き、上記ブロック(共)重合体を含む反応液を80℃にし、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド2.5g、及びn−ブチルリチウム1.2gを加え、水素圧1.0MPaを保つように2時間反応させた。
反応後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、水中に攪拌投入して溶媒を水蒸気蒸留で除去することによって、目的とする水添共役ジエン系(共)重合体(H−1)を得た。水添共役ジエン系(共)重合体(H−1)の水素添加率は98%であり、MFRは2.3g/10minであり、融点は82.0℃であった。
〔合成例2〕水添共役ジエン系(共)重合体(H−2)の調製
合成例1において、重合体ブロック(A)及び(B)の重合反応に使用した1,3−ブタジエンの量を900g及び2100gに、n−ブチルリチウムの量を5.0gに、重合体ブロック(B)の重合反応に使用したテトラヒドロフランの量を140gに変更し、並びにメチルジクロロメタンの代わりにテトラクロロシランを使用したこと以外は、合成例1と同様にして、ブロック(共)重合体を調製した。
上記ブロック(共)重合体は、1,3−ブタジエンに由来する構成単位を含み、ビニル結合含量が15モル%の重合体ブロック(A)と、1,3−ブタジエンに由来する構成単位を含み、ビニル結合含量が51モル%の重合体ブロック(B)とを有するブロック(共)重合体であった。また、上記ブロック(共)重合体において、重量平均分子量は32万であり、カップリング率は79%であった。
引き続き、合成例1と同様に水素添加反応を行い、目的とする水添共役ジエン系(共)重合体(H−2)を得た。水添共役ジエン系(共)重合体(H−2)の水素添加率は98%であり、MFRは0.7g/10minであり、融点は83.8℃であった。
〔実施例1〕
合成例1で調製した水添共役ジエン系(共)重合体(H−1)8.8gと、n−ヘキサデカン(P−1)79.2gと、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(S−1)2gとをガラス製のフラスコ内にて120℃に加熱し、2時間混合した。溶液の温度を80℃まで低下させた後、80℃に加熱した10gの水を加え、油層側よりホモジナイザーにて緩やかに撹拌を開始した後4000rpmで5分間攪拌し、白色の蓄熱材を作成した。得られた蓄熱材を室温まで冷却した後、白色固体ゲルとした。蓄熱材の各成分の組成比を表1に示した。
この蓄熱材を光学顕微鏡にて観察した結果、水添共役ジエン系(共)重合体(H−1)とn−ヘキサデカン(P−1)とからなる連続油相中に、分散相の水滴が球形で均一に分散していることが確認できた。前記水滴の平均粒子径は4.3μmであった。
〔実施例2〜13、比較例1〕
各成分の組成および撹拌条件を表1に示した値として、実施例1と同様の方法により、表1に示す組成比の蓄熱材を作成した。
使用した蓄熱物質、エラストマー又は脂肪族金属塩(以下では「ポリマー等」として示した。)、界面活性剤、添加剤の種類について以下に記載する。
[蓄熱物質]
P−1…n−ヘキサデカン
P−2…n−テトラデカン
P−3…n−オクタデカン
[ポリマー]
H−1…合成例1で作成した重合体
H−2…合成例2で作成した重合体
H−3…SEBS:クレイトンG1651(クレイトンポリマージャパン(株)製)
H−4…EPDM:JSR EP103AF(JSR(株)製)
H−5…オクトープアルミA(ホープ製薬株式会社製)と、ゲル化補助剤Nsp(ホープ製薬株式会社製)を質量比2:1で混合したもの
[界面活性剤]
S−1…ポリオキシエチレンステアリルエーテル(エマルゲン102KG 花王株式会社製;HLB値:6.3)
S−2…ソルビタンモノオレエート(レオドールAO−10V 花王株式会社製;HLB値:4.3)
製造した蓄熱材の測定結果及び評価結果を併せて表1に示す。
Figure 2014218602

Claims (13)

  1. 蓄熱物質を含む連続油相(A)と、前記(A)相と相溶しない相(B)とを含む蓄熱材。
  2. 前記(B)相は、共連続相または分散相のうち少なくとも一つである、請求項1記載の蓄熱材。
  3. 前記(A)相と、前記(B)相との質量比が、97:3〜50:50である、請求項1または2に記載の蓄熱材。
  4. 前記分散相成分の平均粒子径が0.1〜100μmである、請求項2または3に記載の蓄熱材。
  5. 前記(B)相が水を50質量%以上含む、請求項1〜4のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
  6. さらに、界面活性剤を含む、請求項1〜5のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
  7. 前記界面活性剤は、下式によって定められる親水親油バランス(HLB値)が2〜8である、請求項6に記載の蓄熱材。
    HLB値=[(界面活性剤中の親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)]×20
  8. 前記界面活性剤が、エーテル系界面活性剤、アルキルフェノール系界面活性剤、エステル系界面活性剤、ソルビタンエステル系界面活性剤、ソルビタンエステルエーテル系界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項7に記載の蓄熱材。
  9. 前記蓄熱物質が、パラフィン化合物、脂肪酸のエステル化合物、脂肪族エーテル類、脂肪族ケトン類、脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜8のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
  10. 前記(A)相が、エラストマーおよび脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも一つをさらに含む、請求項1〜9のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
  11. 前記エラストマーおよび脂肪酸金属塩から選ばれる少なくとも一つが、前記(A)相中1〜33質量%含まれる、請求項10に記載の蓄熱材。
  12. 油中水型エマルジョンである、請求項1〜11のうちいずれか一つに記載の蓄熱材。
  13. 包装材料または容器中に、請求項1〜12のうちいずれか一つに記載の蓄熱材を有してなる、蓄熱材。
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