JP2014116550A - 温度センサ及びその製造方法並びにリードフレームの接続方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 パターン電極とリードフレームとの高い接合強度が得られ高温環境下でも温度測定が可能な温度センサ及びその製造方法並びにリードフレームの接続方法を提供すること。
【解決手段】 絶縁性フィルム2と、絶縁性フィルムの表面にサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部3と、薄膜サーミスタ部の上に複数の櫛部を有して互いに対向して形成された一対の櫛型電極4と、一対の櫛型電極に接続され絶縁性フィルムの表面に形成された一対のパターン電極5と、絶縁性フィルムの裏面であって一対のパターン電極の反対側に配され該絶縁性フィルムに形成されたビアホールHを介して一対のパターン電極に接続された一対のリードフレーム6とを備え、一対のリードフレームが、ビアホールに埋め込まれた金属材料Mと溶接されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、高温環境での使用が可能になるフィルム型サーミスタ温度センサである温度センサ及びその製造方法並びにリードフレームの接続方法に関する。
温度センサ等に使用されるサーミスタ材料は、高精度、高感度のために、高いB定数が求められている。従来、このようなサーミスタ材料には、Mn,Co,Fe等の遷移金属酸化物が一般的である(特許文献1及び2参照)。また、これらのサーミスタ材料では、安定なサーミスタ特性を得るために、600℃以上の焼成が必要である。
また、上記のような金属酸化物からなるサーミスタ材料の他に、例えば特許文献3では、一般式:M(但し、MはTa,Nb,Cr,Ti及びZrの少なくとも1種、AはAl,Si及びBの少なくとも1種を示す。0.1≦x≦0.8、0<y≦0.6、0.1≦z≦0.8、x+y+z=1)で示される窒化物からなるサーミスタ用材料が提案されている。また、この特許文献3では、Ta−Al−N系材料で、0.5≦x≦0.8、0.1≦y≦0.5、0.2≦z≦0.7、x+y+z=1としたものだけが実施例として記載されている。このTa−Al−N系材料では、上記元素を含む材料をターゲットとして用い、窒素ガス含有雰囲気中でスパッタリングを行って作製されている。また、必要に応じて、得られた薄膜を350〜600℃で熱処理を行っている。さらに、このTa−Al−N系材料は、熱酸化膜付きシリコン、アルミナ、ガラス等の基材上に成膜される。
一方、例えば特許文献4には、フレキシブルプリント基板に構成部品を実装する際、構成部品のリードフレームとフレキシブルプリント基板の銅箔とに短波長である第二高調波のレーザ光を照射し、フレキシブルプリント基板を貫通させて銅箔とリードフレームとをレーザ溶接する方法が示されている。
特開2003−226573号公報 特開2006−324520号公報 特開2004−319737号公報 特開2009−94349号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
近年、樹脂フィルム上に薄膜状のサーミスタ材料を形成したフィルム型サーミスタセンサの開発が検討されており、フィルムに直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれている。すなわち、フィルムを用いることで、フレキシブルなサーミスタセンサが得られることが期待される。さらに、0.1mm程度の厚さを持つ非常に薄いサーミスタセンサの開発が望まれているが、従来はアルミナ等のセラミックス材料を用いた基板材料がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、フィルムを用いることで非常に薄いサーミスタセンサが得られることが期待される。
また、このようなフィルム型サーミスタセンサを作製する場合、樹脂フィルムに形成されたサーミスタ材料層とリードフレームとを接続するため、樹脂フィルム上にサーミスタ材料層と接続されたパターン電極をパターン形成し、このパターン電極とリードフレームとを接合する必要がある。しかしながら、従来のリードフレームの一般的な接続方法であるはんだ材での接合を行った場合、周囲温度が200℃を超える高温環境下で使用すると、はんだの融点に近いために接合に問題が生じる。
このため、近年、高温用との電子部品の接続方法として微細溶接が普及しており、その中でも特許文献4に記載のようなレーザ溶接を採用することも考えられる。このようなレーザ溶接は、被接合体の表面状態に影響され難いことや、接合強度が高いこと、さらに微小な領域を溶接できるなどのメリットがある。しかしながら、従来、上記レーザ溶接を行う場合、特許文献4のように比較的厚い銅箔を対象にレーザ溶接を行うが、0.5μm以下の非常に薄いパターン電極にレーザ光を照射して該パターン電極にリードフレームをレーザ溶接すると、パターン電極が溶接時に熱で蒸発してしまう不都合があった。なお、パターン電極を銅箔のように厚くすると、大きな段差になって平坦性が損なわれると共に、熱容量が大きくなってしまう問題がある。逆に、リードフレーム側からレーザ光を照射して溶接した場合、パターン電極が非常に薄いためにリードフレームが深く溶け込めずに十分な接合強度が得られない。さらに、リードフレーム上にオーバーモールド樹脂を塗布すると、大きな段差が形成されてしまう不都合があった。
一方、樹脂材料で構成されるフィルムは、一般的に耐熱温度が150℃以下と低く、比較的耐熱温度の高い材料として知られるポリイミドでも200℃程度の耐熱性しかないため、サーミスタ材料の形成工程において熱処理が加わる場合は、適用が困難であった。上記従来の酸化物サーミスタ材料では、所望のサーミスタ特性を実現するために600℃以上の焼成が必要であり、フィルムに直接成膜したフィルム型サーミスタセンサを実現できないという問題点があった。そのため、非焼成で直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれているが、上記特許文献3に記載のサーミスタ材料でも、所望のサーミスタ特性を得るために、必要に応じて、得られた薄膜を350〜600℃で熱処理する必要があった。また、このサーミスタ材料では、Ta−Al−N系材料の実施例において、B定数:500〜3000K程度の材料が得られているが、耐熱性に関する記述がなく、窒化物系材料の熱的信頼性が不明であった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、パターン電極とリードフレームとの高い接合強度が得られ高温環境下でも温度測定が可能な温度センサ及びその製造方法並びにリードフレームの接続方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムの表面にサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部と、前記薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に複数の櫛部を有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極と、前記一対の櫛型電極に接続され前記絶縁性フィルムの表面にパターン形成された一対のパターン電極と、前記絶縁性フィルムの裏面であって前記一対のパターン電極の反対側に配され該絶縁性フィルムに形成されたビアホールを介して前記一対のパターン電極に接続された一対のリードフレームとを備え、前記一対のリードフレームが、前記ビアホールに埋め込まれた金属材料と溶接されていることを特徴とする。
この温度センサでは、一対のリードフレームが、ビアホールに埋め込まれた金属材料と溶接されているので、ビアホール内の厚い金属材料がリードフレームと溶接され、パターン電極の厚さによらずに高い接合強度を得ることができる。また、溶接部がビアホール内であるため、測定面(薄膜サーミスタ部側の表面)の平坦性を損なうこともない。したがって、はんだ材よりも溶接状態で融点の高い金属材料を用いることで、はんだ接合よりも高い接合強度を得ることが可能で高温環境下での温度測定が可能になると共に、平坦な測定面が得られ、温度測定の精度が向上する。
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記絶縁性フィルムが帯状に形成され、前記リードフレームが、前記絶縁性フィルムの一端側で溶接されていると共に該溶接した部分よりも先端側が前記絶縁性フィルムの他端側まで前記絶縁性フィルムに沿って延在し、少なくとも前記リードフレームの前記溶接した部分から先端までが、前記絶縁性フィルムの裏面に接着された絶縁性の保護シートで覆われていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、少なくともリードフレームの溶接した部分から先端までが、絶縁性フィルムの裏面に接着された絶縁性の保護シートで覆われているので、リードフレームの先端側と保護シートとによって絶縁性フィルムの剛性を向上させることができる。また、リードフレームの接続部分を外部応力から保護するために該接続部分に形成するオーバーモールド樹脂が不要になる。
第3の発明に係る温度センサは、第1又は第2の発明において、前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする。
本発明者らは、窒化物材料の中でもAlN系に着目し、鋭意、研究を進めたところ、絶縁体であるAlNは、最適なサーミスタ特性(B定数:1000〜6000K程度)を得ることが難しいため、Alサイトを電気伝導を向上させる特定の金属元素で置換すると共に、特定の結晶構造とすることで、非焼成で良好なB定数と耐熱性とが得られることを見出した。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、薄膜サーミスタ部が、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。
なお、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.70未満であると、ウルツ鉱型の単相が得られず、NaCl型相との共存相又はNaCl型相のみの相となってしまい、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.95を超えると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.4未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
さらに、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.5を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の正しい化学量論比は、N/(Ti+Al+N)=0.5であることに起因する。
第4の発明に係る温度センサの製造方法は、第1から第3の発明のいずれかに係る温度センサを製造する方法であって、前記絶縁性フィルムの表面にサーミスタ材料で薄膜サーミスタ部をパターン形成する工程と、前記薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に複数の櫛部を有して互いに対向して一対の櫛型電極をパターン形成する工程と、前記一対の櫛型電極に接続され前記絶縁性フィルムの表面に一対のパターン電極をパターン形成する工程と、前記一対のパターン電極の直下の前記絶縁性フィルムに金属材料が埋め込まれたビアホールを形成する工程と、前記絶縁性フィルムの裏面であって前記ビアホールの直下に前記リードフレームを配した状態で、前記ビアホール内の金属材料に前記絶縁性フィルムの表面側から前記ビアホールの径よりも小さいスポット径でレーザ光を照射して前記リードフレームと前記金属材料とをレーザ溶接する工程とを有していることを特徴とする。
すなわち、この温度センサの製造方法では、ビアホール内の金属材料に絶縁性フィルムの表面側からビアホールの径よりも小さいスポット径でレーザ光を照射してリードフレームと金属材料とをレーザ溶接するので、ビアホール内でリードフレームと金属材料とがレーザ溶接されることで、高い接合強度が得られると共に接合部が表面に段差を形成せず、測定面の平坦性を確保することができる。また、リードフレームが厚くても直接裏面側からリードフレームにレーザ光を照射するよりも容易に溶接が可能になる。
第5の発明に係る温度センサの製造方法は、第4の発明において、前記レーザ溶接する工程の前に、一対の前記ビアホールの間の前記絶縁性フィルムにスリットを形成しておくことを特徴とする。
すなわち、この温度センサの製造方法では、レーザ溶接する工程の前に、一対のビアホールの間の絶縁性フィルムにスリットを形成しておくので、隣接する溶接部間をスリットが断熱することで、一方をレーザ溶接する際、その熱が他方の溶接部に影響を与えることを防ぐことができる。
第6の発明に係るリードフレームの接続方法は、絶縁性フィルムの表面にパターン形成されたパターン電極とリードフレームとを接続する方法であって、前記パターン電極の直下に金属材料が埋め込まれたビアホールを形成する工程と、前記絶縁性フィルムの裏面であって前記ビアホールの直下に前記リードフレームを配した状態で、前記ビアホール内の金属材料に前記絶縁性フィルムの表面側から前記ビアホールの径よりも小さいスポット径でレーザ光を照射して前記リードフレームと前記金属材料とをレーザ溶接する工程とを有していることを特徴とする。
すなわち、このリードフレームの接続方法では、ビアホール内の金属材料に絶縁性フィルムの表面側からビアホールの径よりも小さいスポット径でレーザ光を照射してリードフレームと金属材料とをレーザ溶接するので、ビアホール内でリードフレームと金属材料とが溶接されることで、高い接合強度を得ることが可能であると共に接合部が表面に段差を形成せず、平坦性を確保することができる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、一対のリードフレームが、ビアホールに埋め込まれた金属材料と溶接されているので、はんだ接合よりも高い接合強度を得ることが可能で高温環境下での温度測定が可能になると共に、平坦な測定面が得られ、温度測定の精度が向上する。
また、本発明に係る温度センサの製造方法及びリードフレームの接続方法によれば、ビアホール内の金属材料に絶縁性フィルムの表面側からビアホールの径よりも小さいスポット径でレーザ光を照射してリードフレームと金属材料とをレーザ溶接するので、ビアホール内でリードフレームと金属材料とが溶接されることで、高い接合強度を得ることが可能であると共に接合部が表面に段差を形成せず、平坦性を確保することができる。
さらに、薄膜サーミスタ部を、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である材料とすることで、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性が得られる。
したがって、本発明の温度センサは、測定環境が高温になる電子機器の温度、特に熱定着ローラの温度測定に好適である。
本発明に係る温度センサの第1実施形態を示す平面図(a)及び裏面図(b)である。 図1のA−A線断面図である。 第1実施形態において、サーミスタ用金属窒化物材料の組成範囲を示すTi−Al−N系3元系相図である。 第1実施形態において、薄膜サーミスタ部の形成工程を示す平面図である。 第1実施形態において、電極形成工程を示す平面図である。 第1実施形態において、保護膜形成工程を示す平面図である。 第1実施形態において、ビアホール金属埋込工程を示す平面図である。 第1実施形態において、切断工程を示す平面図である。 第1実施形態において、レーザ溶接工程を説明するための要部の拡大断面図である。 第1実施形態において、レーザ溶接工程を示す平面図である。 本発明に係る温度センサの第2実施形態を示す平面図(a)及び裏面図(b)である。 図11のB−B線断面図である。 本発明に係る温度センサの実施例において、サーミスタ用金属窒化物材料の膜評価用素子を示す正面図及び平面図である。 本発明に係る実施例及び比較例において、25℃抵抗率とB定数との関係を示すグラフである。 本発明に係る実施例及び比較例において、Al/(Ti+Al)比とB定数との関係を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Al/(Ti+Al)=0.84としたc軸配向が強い場合におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Al/(Ti+Al)=0.83としたa軸配向が強い場合におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る比較例において、Al/(Ti+Al)=0.60とした場合におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、a軸配向の強い実施例とc軸配向の強い実施例とを比較したAl/(Ti+Al)比とB定数との関係を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、c軸配向が強い実施例を示す断面SEM写真である。 本発明に係る実施例において、a軸配向が強い実施例を示す断面SEM写真である。
以下、本発明に係る温度センサにおける第1実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面の一部では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している。
本実施形態の温度センサ1は、フィルム型サーミスタセンサであって、図1及び図2に示すように、絶縁性フィルム2と、該絶縁性フィルム2の表面にサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部3と、薄膜サーミスタ部3の上に複数の櫛部4aを有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極4と、一対の櫛型電極4に接続され絶縁性フィルム2の表面にパターン形成された一対のパターン電極5と、絶縁性フィルム2の裏面であって一対のパターン電極5の反対側に配され該絶縁性フィルム2に形成されたビアホールHを介して一対のパターン電極5に接続された一対のリードフレーム6とを備えている。
上記一対のビアホールHを除いて少なくとも薄膜サーミスタ部3の表面には、保護膜7が形成されている。この保護膜7は、薄膜サーミスタ部3、櫛型電極4及びパターン電極5を覆って絶縁性フィルム2の表面に形成されている。
上記一対のリードフレーム6は、ビアホールHに埋め込まれた金属材料Mと溶接されている。すなわち、リードフレーム6の先端部は、ビアホールHに埋め込まれた金属材料Mとレーザ溶接により接合されている。
上記金属材料Mは、例えばニッケル等であり、電解めっきで形成されている。なお、無電解めっきにより、金属材料MをビアホールH内に埋め込んでも構わない。
さらに、この温度センサ1では、絶縁性フィルム2の裏面側にリードフレーム6の接合部分を覆ってオーバーモールド樹脂が塗布され、オーバーモールド樹脂部8が形成されている。このオーバーモールド樹脂部8は、リードフレーム6の接続部分を外部応力から保護するために形成している。
上記絶縁性フィルム2は、例えば厚さ7.5〜125μmのポリイミド樹脂シートで帯状に形成されている。なお、絶縁性フィルム2としては、他にPET:ポリエチレンテレフタレート,PEN:ポリエチレンナフタレート等でも構わない。
この絶縁性フィルム2の一端側にビアホールHが形成され、他端側に薄膜サーミスタ部3が形成されている。
また、前記絶縁性フィルム2には、一対のビアホールHの間にスリット2aが形成されている。
上記薄膜サーミスタ部3は、TiAlNのサーミスタ材料で形成されている。特に、薄膜サーミスタ部3は、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である。
上記パターン電極5及び櫛型電極4は、薄膜サーミスタ部3上に形成された膜厚5〜100nmのCr又はNiCrの接合層と、該接合層上にAu等の貴金属で膜厚50〜1000nmで形成された電極層とを有している。なお、薄膜サーミスタ部3の下に櫛型電極4を形成しても構わない。
一対の櫛型電極4は、互いに対向状態に配されて交互に櫛部4aが並んだ櫛型パターンとされている。
一対のパターン電極5は、櫛型電極4に先端部が接続され基端部が絶縁性フィルム2の一端部に形成されたビアホールHに達している。
上記保護膜7は、絶縁性樹脂膜等であり、例えば厚さ20μmのポリイミド膜が採用される。
上記薄膜サーミスタ部3は、上述したように、金属窒化物材料であって、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系の結晶系であってウルツ鉱型(空間群P6mc(No.186))の単相である。すなわち、この金属窒化物材料は、図3に示すように、Ti−Al−N系3元系相図における点A,B,C,Dで囲まれる領域内の組成を有し、結晶相がウルツ鉱型である金属窒化物である。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x、y、z)(原子%)は、A(15、35、50),B(2.5、47.5、50),C(3、57、40),D(18、42、40)である。
また、この薄膜サーミスタ部3は、例えば膜厚100〜1000nmの膜状に形成され、前記膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶である。さらに、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向していることが好ましい。
なお、膜の表面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べることで、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満であることで決定する。
この温度センサ1の製造方法について、図4から図11を参照して以下に説明する。
本実施形態の温度センサ1の製造方法は、絶縁性フィルム2上に薄膜サーミスタ部3をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程と、互いに対向した一対の櫛型電極4を薄膜サーミスタ部3上に配して絶縁性フィルム2上に一対のパターン電極5をパターン形成する電極形成工程と、絶縁性フィルム2上に薄膜サーミスタ部3、櫛型電極4及びパターン電極5を覆って保護膜7を形成する保護膜形成工程と、一対のパターン電極5の直下の絶縁性フィルム2に金属材料Mが埋め込まれたビアホールHを形成するビアホール形成工程と、各センサに切断すると共にスリット2aを形成するスリット切断工程と、金属材料Mにレーザ光Lを照射してリードフレーム6を溶接するレーザ溶接工程とを有している。
より具体的な製造方法の例としては、厚さ40μmのポリイミドフィルムの絶縁性フィルム2上に、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを用い、窒素含有雰囲気中で反応性スパッタ法にて、TiAl(x=9、y=43、z=48)のサーミスタ膜を膜厚200nmで形成する。その時のスパッタ条件は、到達真空度5×10−6Pa、スパッタガス圧0.4Pa、ターゲット投入電力(出力)200Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を20%で作製する。
成膜したサーミスタ膜の上にレジスト液をバーコーターで塗布した後、110℃で1分30秒のプリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、さらに150℃で5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要なTiAlのサーミスタ膜を市販のTiエッチャントでウェットエッチングを行い、図4に示すように、レジスト剥離にて300×400μmの薄膜サーミスタ部3にした。
なお、絶縁性フィルム2には、予めビアホール用の一対のフィルム貫通孔H0が一端側に形成されている。また、絶縁性フィルム2は、複数の温度センサ1を同時に作製するために、この時点では、大判シート状に形成されている。本実施形態では、2個の温度センサ1を同時作製する工程を示す。したがって、図4では、センサ2つ分の絶縁性フィルム2に、2つの薄膜サーミスタ部3と、2対のフィルム貫通孔H0とが形成されている。
次に、薄膜サーミスタ部3及び絶縁性フィルム2上に、スパッタ法にて、Cr膜の接合層を膜厚20nm形成する。さらに、この接合層上に、スパッタ法にてAu膜の電極層を膜厚200nm形成する。
次に、成膜した電極層の上にレジスト液をバーコーターで塗布した後、110℃で1分30秒のプリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント及びCrエッチャントの順番でウェットエッチングを行い、図5に示すように、レジスト剥離にて所望の櫛型電極4及びパターン電極5を形成する。
なお、パターン電極5の基端部は、対応するフィルム貫通孔H0まで達している。また、上記パターン電極5を形成する際に、2対のフィルム貫通孔H0を直列に接続する電解めっき用パターン5aも後述する電解めっき用に形成しておく。
次に、その上にポリイミドワニスを印刷法により塗布して、150℃で10分のキュアを行い、図6に示すように、20μm厚のポリイミド保護膜7を形成する。なお、この保護膜7にも、ビアホール用の保護膜貫通孔H1を予め形成しておき、保護膜貫通孔H1をフィルム貫通孔H0の直上に配して保護膜7を形成する。
次に、図7に示すように、保護膜貫通孔H1内に電解めっき用パターン5aを用いて電解めっきにより、Niの厚付けめっきを行ってNiの金属材料Mが埋め込まれたビアホールHを形成する。すなわち、ビアホールH内の金属材料Mは、パターン電極5に接続されていると共に、少なくとも絶縁性フィルム2の厚さ以上の厚さを有している。なお、ビアホールHに埋め込む金属材料Mとしては、レーザ溶接後にはんだ材よりも融点の高い溶接部を形成するものであれば、他の金属材料でも構わない。
さらに、図8に示すように、各温度センサに分けるため絶縁性フィルム2を切断して切り離しを行う。この際、一対のビアホールHの間でスリット2aも形成する。
次に、図9及び図10に示すように、厚さ0.15mmのリードフレーム6の先端部をビアホールHの直下に配して、ビアホールH側(保護膜7側)からレーザ光Lを照射してレーザ溶接を行う。この際のレーザ溶接の条件は、レーザ光Lの波長532nm、出力200W、パルス幅0.2msとする。また、レーザ光Lのスポット径は、ビアホールHの内径よりも小さく設定される。
レーザ溶接後に、溶接部分を覆うようにリードフレーム6の先端部と絶縁性フィルム2の一端側とにオーバーモールド樹脂を塗布し、150℃、10分のキュアを行い、オーバーモールド樹脂部8を形成する。これにより、図1及び図2に示すように、リードフレーム6が固定された温度センサ1が作製される。
このように本実施形態の温度センサ1では、一対のリードフレーム6が、ビアホールHに埋め込まれた金属材料Mと溶接されているので、ビアホールH内の厚い金属材料Mがリードフレーム6と溶接され、パターン電極5の厚さによらずに高い接合強度を得ることができる。また、溶接部がビアホールH内であるため、測定面(薄膜サーミスタ部3側の表面)の平坦性を損なうこともない。したがって、はんだ材よりも溶接状態で融点の高い金属材料Mを用いることで、はんだ接合よりも高い接合強度を得ることが可能で高温環境下での温度測定が可能になると共に、平坦な測定面が得られ、温度測定の精度が向上する。
また、ビアホールH内の金属材料Mに絶縁性フィルム2の表面側からビアホールHの径よりも小さいスポット径でレーザ光Lを照射してリードフレーム6と金属材料Mとをレーザ溶接するので、ビアホールH内でリードフレーム6と金属材料Mとが溶接されることで、高い接合強度が得られると共に接合部が表面に段差を形成せず、測定面の平坦性を確保することができる。また、リードフレーム6が厚くても直接裏面側からリードフレーム6にレーザ光Lを照射するよりも容易に溶接が可能になる。
さらに、レーザ溶接する工程の前に、一対のビアホールHの間の絶縁性フィルム2にスリット2aを形成しておくので、隣接する溶接部間をスリット2aが断熱することで、一方をレーザ溶接する際、その熱が他方の溶接部に影響を与えることを防ぐことができる。
また、薄膜サーミスタ部3が、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系の結晶系であってウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。
また、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
さらに、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸を強く配向させることで、a軸配向が強い場合に比べて高いB定数が得られる。
なお、本実施形態のサーミスタ材料層(薄膜サーミスタ部3)の製造方法では、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜するので、上記TiAlNからなる上記金属窒化物材料を非焼成で成膜することができる。
また、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、0.67Pa未満に設定することで、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向している金属窒化物材料の膜を形成することができる。
したがって、本実施形態の温度センサ1では、絶縁性フィルム2上に上記サーミスタ材料層で薄膜サーミスタ部3が形成されているので、非焼成で形成され高B定数で耐熱性の高い薄膜サーミスタ部3により、樹脂フィルム等の耐熱性の低い絶縁性フィルム2を用いることができると共に、良好なサーミスタ特性を有した薄型でフレキシブルなサーミスタセンサが得られる。
また、従来アルミナ等のセラミックスを用いた基板材料がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、本発明においてはフィルムを用いることができるので、上記のように、例えば厚さ0.1mmの非常に薄いフィルム型サーミスタセンサを得ることができる。
次に、本発明に係る温度センサ及びその製造方法の第2実施形態について、図11及び図12を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、リードフレーム6の先端部が絶縁性フィルム2の一端側に配されてレーザ溶接されているのに対し、第2実施形態の温度センサ21では、図11及び図12に示すように、リードフレーム6が、絶縁性フィルム2の一端側で溶接されていると共に該溶接した部分よりも先端側が絶縁性フィルム2の他端側まで絶縁性フィルム2に沿って延在している点である。
また、第2実施形態では、少なくともリードフレーム6の溶接した部分から先端までが、絶縁性フィルム2の裏面に接着された絶縁性の保護シート27で覆われている点でも第1実施形態と異なっている。すなわち、第2実施形態では、オーバーモールド樹脂部8を形成せず、絶縁性フィルム2の裏面全体を覆って保護シート27が貼り付けられている。この保護シート27は、接着層を有するポリイミドフィルムである。
このように第2実施形態の温度センサ21では、少なくともリードフレーム6の溶接した部分から先端までが、絶縁性フィルム2の裏面に接着された絶縁性の保護シート27で覆われているので、リードフレーム6の先端側と保護シート27とによって絶縁性フィルム2の剛性を向上させることができる。また、オーバーモールド樹脂による接合部分の保護が不要になる。
次に、本発明に係る温度センサについて、上記実施形態に基づいて作製した実施例により評価した結果を、図13から図21を参照して具体的に説明する。
<膜評価用素子の作製>
本発明のサーミスタ材料層(薄膜サーミスタ部3)の評価を行う実施例及び比較例として、図13に示す膜評価用素子121を次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、様々な組成比のTi−Al合金ターゲットを用いて、Si基板Sとなる熱酸化膜付きSiウエハ上に、厚さ500nmの表1に示す様々な組成比で形成された金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部3を形成した。その時のスパッタ条件は、到達真空度:5×10−6Pa、スパッタガス圧:0.1〜1Pa、ターゲット投入電力(出力):100〜500Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を10〜100%と変えて作製した。
次に、上記薄膜サーミスタ部3の上に、スパッタ法でCr膜を20nm形成し、さらにAu膜を100nm形成した。さらに、その上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒のプリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行った。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント及びCrエッチャントによりウェットエッチングを行い、レジスト剥離にて所望の櫛形電極部124aを有するパターン電極124を形成した。そして、これをチップ状にダイシングして、B定数評価及び耐熱性試験用の膜評価用素子121とした。
なお、比較としてTiAlの組成比が本発明の範囲外であって結晶系が異なる比較例についても同様に作製して評価を行った。
<膜の評価>
(1)組成分析
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部3について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。その結果を表1に示す。なお、以下の表中の組成比は「原子%」で示している。
なお、上記X線光電子分光法(XPS)は、X線源をMgKα(350W)とし、パスエネルギー:58.5eV、測定間隔:0.125eV、試料面に対する光電子取り出し角:45deg、分析エリアを約800μmφの条件下で定量分析を実施した。なお、定量精度について、N/(Ti+Al+N)の定量精度は±2%、Al/(Ti+Al)の定量精度は±1%ある。
(2)比抵抗測定
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部3について、4端子法にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
(3)B定数測定
膜評価用素子121の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表1に示す。
なお、本発明におけるB定数算出方法は、上述したように25℃と50℃とのそれぞれの抵抗値から以下の式によって求めている。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
これらの結果からわかるように、TiAlの組成比が図3に示す3元系の三角図において、点A,B,C,Dで囲まれる領域内、すなわち、「0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1」となる領域内の実施例全てで、抵抗率:100Ωcm以上、B定数:1500K以上のサーミスタ特性が達成されている。
上記結果から25℃での抵抗率とB定数との関係を示したグラフを、図14に示す。また、Al/(Ti+Al)比とB定数との関係を示したグラフを、図15に示す。これらのグラフから、Al/(Ti+Al)=0.7〜0.95、かつ、N/(Ti+Al+N)=0.4〜0.5の領域で、結晶系が六方晶のウルツ鉱型の単一相であるものは、25℃における比抵抗値が100Ωcm以上、B定数が1500K以上の高抵抗かつ高B定数の領域が実現できている。なお、図15のデータにおいて、同じAl/(Ti+Al)比に対して、B定数がばらついているのは、結晶中の窒素量が異なるためである。
表1に示す比較例3〜12は、Al/(Ti+Al)<0.7の領域であり、結晶系は立方晶のNaCl型となっている。また、比較例12(Al/(Ti+Al)=0.67)では、NaCl型とウルツ鉱型とが共存している。このように、Al/(Ti+Al)<0.7の領域では、25℃における比抵抗値が100Ωcm未満、B定数が1500K未満であり、低抵抗かつ低B定数の領域であった。
表1に示す比較例1,2は、N/(Ti+Al+N)が40%に満たない領域であり、金属が窒化不足の結晶状態になっている。この比較例1,2は、NaCl型でも、ウルツ鉱型でもない、非常に結晶性の劣る状態であった。また、これら比較例では、B定数及び抵抗値が共に非常に小さく、金属的振舞いに近いことがわかった。
(4)薄膜X線回折(結晶相の同定)
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部3を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=20〜130度の範囲で測定した。一部のサンプルについては、入射角を0度とし、2θ=20〜100度の範囲で測定した。
その結果、Al/(Ti+Al)≧0.7の領域においては、ウルツ鉱型相(六方晶、AlNと同じ相)であり、Al/(Ti+Al)<0.65の領域においては、NaCl型相(立方晶、TiNと同じ相)であった。また、0.65< Al/(Ti+Al)<0.7においては、ウルツ鉱型相とNaCl型相との共存する結晶相であった。
このようにTiAlN系においては、高抵抗かつ高B定数の領域は、Al/(Ti+Al)≧0.7のウルツ鉱型相に存在している。なお、本発明の実施例では、不純物相は確認されておらず、ウルツ鉱型の単一相である。
なお、表1に示す比較例1,2は、上述したように結晶相がウルツ鉱型相でもNaCl型相でもなく、本試験においては同定できなかった。また、これらの比較例は、XRDのピーク幅が非常に広いことから、非常に結晶性の劣る材料であった。これは、電気特性により金属的振舞いに近いことから、窒化不足の金属相になっていると考えられる。
次に、本発明の実施例は全てウルツ鉱型相の膜であり、配向性が強いことから、Si基板S上に垂直な方向(膜厚方向)の結晶軸においてa軸配向性が強いか、c軸配向性が強いかであるかについて、XRDを用いて調査した。この際、結晶軸の配向性を調べるために、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比を測定した。
その結果、スパッタガス圧が0.67Pa未満で成膜された実施例は、(100)よりも(002)の強度が非常に強く、a軸配向性よりc軸配向性が強い膜であった。一方、スパッタガス圧が0.67Pa以上で成膜された実施例は、(002)よりも(100)の強度が非常に強く、c軸配向よりa軸配向が強い材料であった。
なお、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、同様にウルツ鉱型相の単一相が形成されていることを確認している。また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、配向性は変わらないことを確認している。
c軸配向が強い実施例のXRDプロファイルの一例を、図16に示す。この実施例は、Al/(Ti+Al)=0.84(ウルツ鉱型、六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(100)よりも(002)の強度が非常に強くなっている。
また、a軸配向が強い実施例のXRDプロファイルの一例を、図17に示す。この実施例は、Al/(Ti+Al)=0.83(ウルツ鉱型、六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(002)よりも(100)の強度が非常に強くなっている。
さらに、この実施例について、入射角を0度として、対称反射測定を実施した。なお、グラフ中(*)は装置由来のピークであり、サンプル本体のピーク、もしくは、不純物相のピークではないことを確認している(なお、対称反射測定において、そのピークが消失していることからも装置由来のピークであることがわかる。)。
なお、比較例のXRDプロファイルの一例を、図18に示す。この比較例は、Al/(Ti+Al)=0.6(NaCl型、立方晶)であり、入射角を1度として測定した。ウルツ鉱型(空間群P6mc(No.186))として指数付けできるピークは検出されておらず、NaCl型単独相であることを確認した。
次に、ウルツ鉱型材料である本発明の実施例に関して、さらに結晶構造と電気特性との相関を詳細に比較した。
表2及び図19に示すように、Al/(Ti+Al)比がほぼ同じ比率のものに対し、基板面に垂直方向の配向度の強い結晶軸がc軸である材料(実施例5,7,8,9)とa軸である材料(実施例19,20,21)とがある。
これら両者を比較すると、Al/(Ti+Al)比が同じであると、a軸配向が強い材料よりもc軸配向が強い材料の方が、B定数が100K程度大きいことがわかる。また、N量(N/(Ti+Al+N))に着目すると、a軸配向が強い材料よりもc軸配向が強い材料の方が、窒素量がわずかに大きいことがわかる。理想的な化学量論比:N/(Ti+Al+N)=0.5であることから、c軸配向が強い材料のほうが、窒素欠陥量が少なく理想的な材料であることがわかる。
<結晶形態の評価>
次に、薄膜サーミスタ部3の断面における結晶形態を示す一例として、熱酸化膜付きSi基板S上に成膜された実施例(Al/(Ti+Al)=0.84,ウルツ鉱型、六方晶、c軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部3における断面SEM写真を、図20に示す。また、別の実施例(Al/(Ti+Al)=0.83,ウルツ鉱型六方晶、a軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部3における断面SEM写真を、図21に示す。
これら実施例のサンプルは、Si基板Sをへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
これらの写真からわかるように、いずれの実施例も高密度な柱状結晶で形成されている。すなわち、c軸配向が強い実施例及びa軸配向が強い実施例の共に基板面に垂直な方向に柱状の結晶が成長している様子が観測されている。なお、柱状結晶の破断は、Si基板Sをへき開破断した際に生じたものである。
<膜の耐熱試験評価>
表1に示す実施例及び比較例において、大気中,125℃,1000hの耐熱試験前後における抵抗値及びB定数を評価した。その結果を表3に示す。なお、比較として従来のTa−Al−N系材料による比較例も同様に評価した。
これらの結果からわかるように、Al濃度及び窒素濃度は異なるものの、Ta−Al−N系である比較例と同じB定数で比較したとき、耐熱試験前後における電気特性変化でみたときの耐熱性は、Ti−Al−N系のほうが優れている。なお、実施例5,8はc軸配向が強い材料であり、実施例21,24はa軸配向が強い材料である。両者を比較すると、c軸配向が強い実施例の方がa軸配向が強い実施例に比べて僅かに耐熱性が向上している。
なお、Ta−Al−N系材料では、Taのイオン半径がTiやAlに比べて非常に大きいため、高濃度Al領域でウルツ鉱型相を作製することができない。TaAlN系がウルツ鉱型相でないがゆえ、ウルツ鉱型相のTi−Al−N系の方が、耐熱性が良好であると考えられる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
1,21…温度センサ、2…絶縁性フィルム、3…薄膜サーミスタ部、4…櫛型電極、4a…櫛部、5…パターン電極、6…リードフレーム、27…保護シート、H…ビアホール、M…金属材料

Claims (6)

  1. 絶縁性フィルムと、
    該絶縁性フィルムの表面にサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部と、
    前記薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に複数の櫛部を有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極と、
    前記一対の櫛型電極に接続され前記絶縁性フィルムの表面にパターン形成された一対のパターン電極と、
    前記絶縁性フィルムの裏面であって前記一対のパターン電極の反対側に配され該絶縁性フィルムに形成されたビアホールを介して前記一対のパターン電極に接続された一対のリードフレームとを備え、
    前記一対のリードフレームが、前記ビアホールに埋め込まれた金属材料と溶接されていることを特徴とする温度センサ。
  2. 請求項1に記載の温度センサにおいて、
    前記絶縁性フィルムが帯状に形成され、
    前記リードフレームが、前記絶縁性フィルムの一端側で溶接されていると共に該溶接した部分よりも先端側が前記絶縁性フィルムの他端側まで前記絶縁性フィルムに沿って延在し、
    少なくとも前記リードフレームの前記溶接した部分から先端までが、前記絶縁性フィルムの裏面に接着された絶縁性の保護シートで覆われていることを特徴とする温度センサ。
  3. 請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
    前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする温度センサ。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の温度センサを製造する方法であって、
    前記絶縁性フィルムの表面にサーミスタ材料で薄膜サーミスタ部をパターン形成する工程と、
    前記薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に複数の櫛部を有して互いに対向して一対の櫛型電極をパターン形成する工程と、
    前記一対の櫛型電極に接続され前記絶縁性フィルムの表面に一対のパターン電極をパターン形成する工程と、
    前記一対のパターン電極の直下の前記絶縁性フィルムに金属材料が埋め込まれたビアホールを形成する工程と、
    前記絶縁性フィルムの裏面であって前記ビアホールの直下に前記リードフレームを配した状態で、前記ビアホール内の金属材料に前記絶縁性フィルムの表面側から前記ビアホールの径よりも小さいスポット径でレーザ光を照射して前記リードフレームと前記金属材料とをレーザ溶接する工程とを有していることを特徴とする温度センサの製造方法。
  5. 請求項4に記載の温度センサの製造方法において、
    前記レーザ溶接する工程の前に、一対の前記ビアホールの間の前記絶縁性フィルムにスリットを形成しておくことを特徴とする温度センサの製造方法。
  6. 絶縁性フィルムの表面にパターン形成されたパターン電極とリードフレームとを接続する方法であって、
    前記パターン電極の直下に金属材料が埋め込まれたビアホールを形成する工程と、
    前記絶縁性フィルムの裏面であって前記ビアホールの直下に前記リードフレームを配した状態で、前記ビアホール内の金属材料に前記絶縁性フィルムの表面側から前記ビアホールの径よりも小さいスポット径でレーザ光を照射して前記リードフレームと前記金属材料とをレーザ溶接する工程とを有していることを特徴とするリードフレームの接続方法。
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