JP6108156B2 - 温度センサ - Google Patents
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Description
なお、上記特許文献1には、感熱素子として ビードサーミスタやチップサーミスタが採用されていると共に、特許文献2には、感熱素子として、アルミナ等の絶縁基板の一面に感熱膜が形成された薄膜サーミスタが採用されている。この薄膜サーミスタは、絶縁基板の一面に形成された感熱膜と、該感熱膜と一対のリード線とを接続する一対のリード部と、感熱膜を覆う保護膜とで構成されている。
すなわち、特許文献1に記載の技術では、感熱素子としてビードサーミスタ等を使用しているが、この場合、約1mm程度の球状或いは楕円状であるために、加熱ローラに点接触するために、正確な温度検知が難しい。また、感熱素子に比較的大きな体積があるため、応答性が悪いという不都合があった。さらに、点接触であるために、回転するローラ表面に傷を付けてしまうおそれもあった。
また、特許文献2に記載の技術では、感熱素子として薄膜サーミスタを使用しているので、加熱ローラには面接触することができるが、薄膜サーミスタを構成する絶縁基板やリード部を含めると、やはり体積があるために、応答性が悪いという問題があった。
すなわち、この温度センサでは、支持基板が、金属板であるので、薄く剛性の高いセンサ部が得られる。なお、金属板であっても絶縁性フィルムに接着されているため、薄膜サーミスタ部やパターン電極との電気的接続がないと共に、絶縁性フィルムの断熱性により金属板への熱伝導が抑制され、応答性が高くなる。
すなわち、この温度センサでは、支持基板に、複数の貫通孔が形成されているので、貫通孔によりセンサ部との間の断熱性を高めて応答性を向上させることができる。また、貫通孔の位置、大きさ又は個数などを変えることで、全体の剛性を調整することも可能である。
すなわち、この温度センサでは、貫通孔が、少なくとも薄膜サーミスタ部の周囲の保持部側に形成されているので、薄膜サーミスタ部の周囲で特に保持部側への伝熱を抑制する断熱効果が得られる。
従来、TiAlNからなる窒化物系サーミスタを形成した温度センサでは、フィルム上にTiAlNからなるサーミスタ材料層と電極とを積層して形成する場合、サーミスタ材料層上にAu等の電極層を成膜し、複数の櫛部を有した櫛型にパターニングしている。しかし、このサーミスタ材料層は、曲率半径が大きく緩やかに曲げられた場合には、クラックが生じ難く抵抗値等の電気特性に変化がないが、曲率半径が小さくきつく曲げた場合に、クラックが発生し易くなり、抵抗値等が大きく変化して電気特性の信頼性が低くなってしまう。特に、フィルムを櫛部の延在方向に直交する方向に小さい曲率半径できつく曲げた場合、櫛部の延在方向に曲げた場合に比べて櫛型電極とサーミスタ材料層との応力差により、電極エッジ付近にクラックが発生し易くなり、電気特性の信頼性が低下してしまう不都合があった。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.95をこえると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.4未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
さらに、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.5を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の正しい化学量論比は、N/(Ti+Al+N)=0.5であることに起因する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、絶縁性フィルムの裏面に接着された該絶縁性フィルムよりも高剛性の支持基板を備えているので、支持基板によって絶縁性フィルムが支持されて高い剛性を確保することができると共にセンサ部のねじれを抑制することができる。
さらに、薄膜サーミスタ部を、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である材料とすることで、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性が得られる。
したがって、本発明の温度センサによれば、高い剛性が確保されたセンサ部による安定した面接触が可能であると共に、高い応答性で正確に温度を測定することができ、複写機やプリンタ等の加熱ローラの温度用として好適である。
上記センサ部3は、絶縁性フィルム5と、該絶縁性フィルム5の表面にサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部6と、薄膜サーミスタ部6の上に複数の櫛部7aを有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極7と、一端が一対の櫛型電極7に接続されていると共に他端が一対のリード線2に接続され絶縁性フィルム5の表面にパターン形成された一対のパターン電極8と、絶縁性フィルム5の裏面に接着された該絶縁性フィルム5よりも高剛性の支持基板9とを備えている。
上記一対のリード線2は、銅系合金、鉄系合金又はステンレス等の合金で形成されており、樹脂製の保持部4によって互いに一定間隔を保持した状態で支持されている。なお、リード線2は、保持部4内でパターン電極8の接着用パッド部8aに接続されている。また、保持部4は、リード線2の接合部と共に絶縁性フィルム5の他端部と支持基板9の他端部とを共に覆って固定している。また、保持部4には、取付孔4aが形成されている。
上記絶縁性フィルム5は、略長方形状とされ、薄膜サーミスタ部6が、絶縁性フィルム5の一端近傍に配され、パターン電極8が、絶縁性フィルム5の他端近傍まで延在している。なお、パターン電極8は、絶縁性フィルム5の他端近傍に接着用パッド部8aが形成されている。
さらに、上述したように、一対のリード線2の先端部が、絶縁性フィルム5の他端近傍でパターン電極8に接続されている。すなわち、リード線2は、先端側が、絶縁性フィルム5上のパターン電極8の接着用パッド部8aにはんだで接着されている。
一対の櫛型電極7は、互いに対向状態に配されて交互に櫛部7aが並んだ櫛型パターンとされている。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x、y、z)(原子%)は、A(15、35、50),B(2.5、47.5、50),C(3、57、40),D(18、42、40)である。
なお、膜の表面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べることで、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満であることで決定する。
本実施形態の温度センサ1の製造方法は、絶縁性フィルム5上に薄膜サーミスタ部6をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程と、互いに対向した一対の櫛型電極7を薄膜サーミスタ部6上に配して絶縁性フィルム5上に一対のパターン電極8をパターン形成する電極形成工程と、絶縁性フィルム5の表面に保護膜10を形成する保護膜形成工程と、支持基板9を絶縁性フィルム5の裏面に接合する支持基板接合工程と、センサ部3にリード線2を取り付けるリード線取り付け工程と、リード線2の接合部を樹脂で覆って保持部4を形成する保持部形成工程とを有している。
次に、成膜した電極層の上にレジスト液をバーコーターで塗布した後、110℃で1分30秒のプリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント及びCrエッチャントの順番でウェットエッチングを行い、図4に示すように、レジスト剥離にて所望の櫛型電極7及びパターン電極8を形成する。
次に、図6に示すように、絶縁性フィルム5の裏面に同サイズのステンレス基板である支持基板9を樹脂接着剤で接合することで、センサ部3が作製される。
この状態で、リード線2の接合部を絶縁性フィルム5の他端部及び支持基板9の他端部と共に覆う形で樹脂により保持部4を形成することで、図1に示すように、温度センサ1が作製される。
また、絶縁性フィルム5に直接形成された薄膜サーミスタ部6により、全体の厚みが薄くなり、小さい体積によって優れた応答性を得ることができる。
なお、測定対象物に対する接触部分の平坦性が高く、面接触するために、正確な温度検知が可能であると共に回転する加熱ローラ等の測定対象物の表面を傷つけ難い。
また、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
さらに、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸を強く配向させることで、a軸配向が強い場合に比べて高いB定数が得られる。
また、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、0.67Pa未満に設定することで、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向している金属窒化物材料の膜を形成することができる。
また、従来アルミナ等のセラミックスを用いた基板材料がしばしば用いられ、薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、本発明においてはフィルムを用いることができるので、上記のように、薄いフィルム型サーミスタセンサ(センサ部3)を得ることができる。
本発明のサーミスタ材料層(薄膜サーミスタ部6)の評価を行う実施例及び比較例として、図11に示す膜評価用素子121を次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、様々な組成比のTi−Al合金ターゲットを用いて、Si基板Sとなる熱酸化膜付きSiウエハ上に、厚さ500nmの表1に示す様々な組成比で形成された金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部6を形成した。その時のスパッタ条件は、到達真空度:5×10−6Pa、スパッタガス圧:0.1〜1Pa、ターゲット投入電力(出力):100〜500Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を10〜100%と変えて作製した。
なお、比較としてTixAlyNzの組成比が本発明の範囲外であって結晶系が異なる比較例についても同様に作製して評価を行った。
(1)組成分析
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部6について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。その結果を表1に示す。なお、以下の表中の組成比は「原子%」で示している。
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部6について、4端子法にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
(3)B定数測定
膜評価用素子121の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表1に示す。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部6を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=20〜130度の範囲で測定した。
なお、表1に示す比較例1,2は、上述したように結晶相がウルツ鉱型相でもNaCl型相でもなく、本試験においては同定できなかった。また、これらの比較例は、XRDのピーク幅が非常に広いことから、非常に結晶性の劣る材料であった。これは、電気特性により金属的振舞いに近いことから、窒化不足の金属相になっていると考えられる。
なお、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、同様にウルツ鉱型相の単一相が形成されていることを確認している。また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、配向性は変わらないことを確認している。
また、a軸配向が強い実施例のXRDプロファイルの一例を、図15に示す。この実施例は、Al/(Ti+Al)=0.83(ウルツ鉱型、六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(002)よりも(100)の強度が非常に強くなっている。
表2及び図17に示すように、Al/(Ti+Al)比がほぼ同じ比率のものに対し、基板面に垂直方向の配向度の強い結晶軸がc軸である材料(実施例5,7,8,9)とa軸である材料(実施例19,20,21)とがある。
次に、薄膜サーミスタ部6の断面における結晶形態を示す一例として、熱酸化膜付きSi基板S上に成膜された実施例(Al/(Ti+Al)=0.84,ウルツ鉱型、六方晶、c軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部6における断面SEM写真を、図18に示す。また、別の実施例(Al/(Ti+Al)=0.83,ウルツ鉱型六方晶、a軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部6における断面SEM写真を、図19に示す。
これら実施例のサンプルは、Si基板Sをへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
表1に示す実施例及び比較例において、大気中,125℃,1000hの耐熱試験前後における抵抗値及びB定数を評価した。その結果を表3に示す。なお、比較として従来のTa−Al−N系材料による比較例も同様に評価した。
これらの結果からわかるように、Al濃度及び窒素濃度は異なるものの、Ta−Al−N系である比較例と同じB定数で比較したとき、耐熱試験前後における電気特性変化でみたときの耐熱性は、Ti−Al−N系のほうが優れている。なお、実施例5,8はc軸配向が強い材料であり、実施例21,24はa軸配向が強い材料である。両者を比較すると、c軸配向が強い実施例の方がa軸配向が強い実施例に比べて僅かに耐熱性が向上している。
例えば、上記各実施形態では、保護膜形成後に絶縁性フィルムに支持基板を接着しているが、予め絶縁性フィルムに支持基板を接着しておいても構わない。
Claims (5)
- 一対のリード線と、
前記一対のリード線に接続されたセンサ部と、
前記一対のリード線に固定されて前記リード線を保持する絶縁性の保持部とを備え、
前記センサ部が、絶縁性フィルムと、
該絶縁性フィルムの表面にサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部と、
前記薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に複数の櫛部を有して互いに対向してパターン形成された一対の櫛型電極と、
一端が前記一対の櫛型電極に接続されていると共に他端が前記一対のリード線に接続され前記絶縁性フィルムの表面にパターン形成された一対のパターン電極と、
前記絶縁性フィルムの裏面に接着された該絶縁性フィルムよりも高剛性の支持基板とを備え、
前記支持基板の端部が、前記パターン電極と前記リード線との接合部の直下まで配され、
前記保持部が、前記接合部と共に前記絶縁性フィルムの端部と前記支持基板の前記端部とを共に覆って固定していることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記支持基板が、金属板であることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記支持基板に、複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする温度センサ。 - 請求項3に記載の温度センサにおいて、
前記貫通孔が、少なくとも前記薄膜サーミスタ部の周囲の前記保持部側に形成されていることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の温度センサにおいて、
前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする温度センサ。
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