JP6128379B2 - 非接触温度センサ - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、レーザプリンタの加熱ローラの温度を測定する赤外線センサにレンズを用いている技術が提案されている。
従来の非接触温度センサでは、受光面となる検出部が平面であり、検出エリアは検出部側前方の180°の範囲であり、測定対象物以外の影響を避けるために導光路等の部材を使用して視野角の制限を行っている。しかしながら、導光路等の部材を用いると、赤外線受光面積が減少して感度が低下してしまう問題があった。特に、検出距離(作動距離)を大きくする場合、より長い導光路が必要となり、さらに感度が低下する原因となってしまう。この感度低下を抑制するために、赤外線を透過、屈折する物質(ポリエチレン、ゲルマニウム結晶等)によりレンズを作り、集光する技術も知られているが、このような集光系は構造が複雑化してしまう不都合がある。また、導光路では長さを変えることにより視野角が容易に調整可能であるが、レンズでは焦点距離を変える必要があり、多くの種類のレンズが必要になってしまう。また、ゲルマニウム結晶は熱画像観察装置等には使用されているが、高価でかつレンズ加工も困難で、より一層の高価格化の原因となり、通常の温度センサ用としては不適であった。
また、赤外線反射膜が形成された第2の感熱素子側の領域をリファレンスとして機能させ、第1の感熱素子側の領域を測定用とすることで、正確な温度測定が可能になる。
すなわち、この非接触温度センサでは、第1の感熱素子と第2の感熱素子とが絶縁性フィルムの曲率を有する方向に並んで設置されているので、測定対象物の表面が曲率を有する方向で温度の変化が小さい場合に、測定対象物の曲面に沿った状態で湾曲したセンサ部を対向配置することで、正確な温度検出が可能になる。
すなわち、この非接触温度センサでは、第1の感熱素子と第2の感熱素子とが絶縁性フィルムの曲率を有する方向に直交する方向に並んで設置されているので、測定対象物の表面が曲率を有する方向に直交する方向で温度の変化が小さい場合に、測定対象物の曲面に沿った状態で湾曲したセンサ部を対向配置することで、正確な温度検出が可能になる。
すなわち、この非接触温度センサでは、第1の感熱素子と第2の感熱素子とが、絶縁性フィルムにサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部を備えているので、絶縁性フィルムを湾曲させ易いと共に、全体の厚みが薄くなり、小さい体積によって優れた応答性を得ることができる。
従来、TiAlNからなる窒化物系サーミスタを形成した非接触温度センサでは、フィルム上にTiAlNからなるサーミスタ材料層と電極とを積層して形成する場合、サーミスタ材料層上にAu等の電極層を成膜し、複数の櫛部を有した櫛型にパターニングしている。しかし、このサーミスタ材料層は、曲率半径が大きく緩やかに曲げられた場合には、クラックが生じ難く抵抗値等の電気特性に変化がないが、曲率半径が小さくきつく曲げた場合に、クラックが発生し易くなり、抵抗値等が大きく変化して電気特性の信頼性が低くなってしまう。特に、フィルムを櫛部の延在方向に直交する方向に小さい曲率半径できつく曲げた場合、櫛部の延在方向に曲げた場合に比べて櫛型電極とサーミスタ材料層との応力差により、電極エッジ付近にクラックが発生し易くなり、電気特性の信頼性が低下してしまう不都合があった。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.95をこえると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.4未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
さらに、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.5を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の正しい化学量論比は、N/(Ti+Al+N)=0.5であることに起因する。
すなわち、本発明に係る非接触温度センサによれば、支持部材が、絶縁性フィルムの上面を凹曲面にして湾曲させた状態で絶縁性フィルムを支持しているフィルム支持部を備えているので、センサ部が湾曲状態で測定対象物に対向配置されることで、簡易な構成で、感度を低下させずに視野角の制限が可能であると共に、検出距離(作動距離)も大きくすることができる。
また、赤外線反射膜が形成された第2の感熱素子側の領域をリファレンスとして機能させ、第1の感熱素子側の領域を測定用とすることで、正確な温度測定が可能になる。
さらに、薄膜サーミスタ部を、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である材料とすることで、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性が得られる。
したがって、本発明の非接触温度センサによれば、高精度な温度測定が可能になり、特に複写機やプリンタ等に搭載されている円筒状の加熱ローラの温度用として好適である。
第1の感熱素子4Aと第2の感熱素子4Bとは、絶縁性フィルム6の曲率を有する方向(絶縁性フィルム6の延在方向)に並んで設置されている。
上記接続端子11は、リード線やリードフレーム等の金属製の棒状部材であり、基端側がベース部13に埋め込まれて支持されており、基端部がベース部13の側方に突出して表面実装可能な実装用端子11aとなっている。
なお、本実施形態では、薄膜サーミスタ部7の上に櫛型電極8を形成しているが、薄膜サーミスタ部7の下に櫛型電極を形成しても構わない。
また、絶縁性フィルム6としては、他にPET:ポリエチレンテレフタレート,PEN:ポリエチレンナフタレート等でも作製できるが、加熱ローラの温度測定用としては、最高使用温度が180℃と高いためポリイミドフィルムが望ましい。
一対の櫛型電極8は、互いに対向状態に配されて交互に櫛部8aが並んだ櫛型パターンとされている。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x、y、z)(原子%)は、A(15、35、50),B(2.5、47.5、50),C(3、57、40),D(18、42、40)である。
なお、膜の表面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べることで、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満であることで決定する。
本実施形態の非接触温度センサ1の製造方法は、絶縁性フィルム6上に薄膜サーミスタ部7をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程と、互いに対向した一対の櫛型電極8を薄膜サーミスタ部7上に配して絶縁性フィルム6上に第1の配線膜9A,第2の配線膜9Bをパターン形成する電極形成工程と、絶縁性フィルム6の表面に保護膜10を形成する保護膜形成工程と、センサ部2を支持部材3に取り付けるセンサ部取り付け工程とを有している。
次に、成膜した電極層の上にレジスト液をバーコーターで塗布した後、110℃で1分30秒のプリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント及びCrエッチャントの順番でウェットエッチングを行い、図5に示すように、レジスト剥離にて所望の櫛型電極8及び第1の配線膜9A,第2の配線膜9Bを形成する。
また、絶縁性フィルム6の上面で第2の感熱素子4B側の領域に、Auメッキ等で赤外線反射膜5を形成する。このようにしてフィルム型サーミスタであるセンサ部2が作製される。
さらに、第1の感熱素子4Aと第2の感熱素子4Bとが絶縁性フィルム6の曲率を有する方向に並んで設置されているので、測定対象物Rの表面が曲率を有する方向で温度の変化が小さい場合に、測定対象物Rの曲面に沿った状態で湾曲したセンサ部2を対向配置することで、正確な温度検出が可能になる。
また、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
さらに、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸を強く配向させることで、a軸配向が強い場合に比べて高いB定数が得られる。
また、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、0.67Pa未満に設定することで、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向している金属窒化物材料の膜を形成することができる。
また、従来アルミナ等のセラミックスを用いた基板材料がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、本発明においてはフィルムを用いることができるので、上記のように、例えば厚さ0.1mmの非常に薄いフィルム型サーミスタセンサ(センサ部2)を得ることができる。
このように第2実施形態では、第1の感熱素子4Aと第2の感熱素子4Bとが絶縁性フィルム6の曲率を有する方向に直交する方向に並んで設置されているので、測定対象物Rの表面が曲率を有する方向に直交する方向で温度の変化が小さい場合に、測定対象物Rの曲面に沿った状態で湾曲したセンサ部22を対向配置することで、正確な温度検出が可能になる。
また、定着ローラの中央部の測温を行うため、第2実施形態の非接触温度センサ21を、定着ローラの中央部に対向状態にして設置した。このとき、湾曲したセンサ部22が定着ローラの円周方向に沿うように配し、当該円周方向に直交する方向(定着ローラの軸方向)に第1の感熱素子4Aと第2の感熱素子4Bとが並ぶように設置した。なお、定着ローラの直径は30mm、検出距離(作動距離)を5mmとし、センサ部22の曲率半径を20mmとした。また、図9では、分かり易くするために、定着ローラである測定対象物Rに対して対向配置される第1実施形態のセンサ部2及び第2実施形態のセンサ部22のみを簡易的に図示している。
本発明のサーミスタ材料層(薄膜サーミスタ部7)の評価を行う実施例及び比較例として、図10に示す膜評価用素子121を次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、様々な組成比のTi−Al合金ターゲットを用いて、Si基板Sとなる熱酸化膜付きSiウエハ上に、厚さ500nmの表1に示す様々な組成比で形成された金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部7を形成した。その時のスパッタ条件は、到達真空度:5×10−6Pa、スパッタガス圧:0.1〜1Pa、ターゲット投入電力(出力):100〜500Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を10〜100%と変えて作製した。
なお、比較としてTixAlyNzの組成比が本発明の範囲外であって結晶系が異なる比較例についても同様に作製して評価を行った。
(1)組成分析
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部7について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。その結果を表1に示す。なお、以下の表中の組成比は「原子%」で示している。
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部7について、4端子法にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
(3)B定数測定
膜評価用素子121の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表1に示す。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部7を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=20〜130度の範囲で測定した。
なお、表1に示す比較例1,2は、上述したように結晶相がウルツ鉱型相でもNaCl型相でもなく、本試験においては同定できなかった。また、これらの比較例は、XRDのピーク幅が非常に広いことから、非常に結晶性の劣る材料であった。これは、電気特性により金属的振舞いに近いことから、窒化不足の金属相になっていると考えられる。
なお、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、同様にウルツ鉱型相の単一相が形成されていることを確認している。また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、配向性は変わらないことを確認している。
また、a軸配向が強い実施例のXRDプロファイルの一例を、図14に示す。この実施例は、Al/(Ti+Al)=0.83(ウルツ鉱型、六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(002)よりも(100)の強度が非常に強くなっている。
表2及び図16に示すように、Al/(Ti+Al)比がほぼ同じ比率のものに対し、基板面に垂直方向の配向度の強い結晶軸がc軸である材料(実施例5,7,8,9)とa軸である材料(実施例19,20,21)とがある。
次に、薄膜サーミスタ部7の断面における結晶形態を示す一例として、熱酸化膜付きSi基板S上に成膜された実施例(Al/(Ti+Al)=0.84,ウルツ鉱型、六方晶、c軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部7における断面SEM写真を、図17に示す。また、別の実施例(Al/(Ti+Al)=0.83,ウルツ鉱型六方晶、a軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部7における断面SEM写真を、図18に示す。
これら実施例のサンプルは、Si基板Sをへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
表1に示す実施例及び比較例において、大気中,125℃,1000hの耐熱試験前後における抵抗値及びB定数を評価した。その結果を表3に示す。なお、比較として従来のTa−Al−N系材料による比較例も同様に評価した。
これらの結果からわかるように、Al濃度及び窒素濃度は異なるものの、Ta−Al−N系である比較例と同じB定数で比較したとき、耐熱試験前後における電気特性変化でみたときの耐熱性は、Ti−Al−N系のほうが優れている。なお、実施例5,8はc軸配向が強い材料であり、実施例21,24はa軸配向が強い材料である。両者を比較すると、c軸配向が強い実施例の方がa軸配向が強い実施例に比べて僅かに耐熱性が向上している。
また、本発明は、複写機等の定着ローラを温度の測定対象物とする場合に好適であるが、本発明では検出距離(作動距離)を大きく設定可能であるため、より高温の検出物として自動車の排気マフラーやエキゾーストパイプ等の温度検出に用いても構わない。特に、本発明は、表面が凸曲面である円筒状や楕円状の形態を有したものを測定対象物とすることに適している。
Claims (5)
- 赤外線を受光するセンサ部と、
前記センサ部を支持する支持部材とを備え、
前記センサ部が、受光面を上面に有する帯状の絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの下面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、前記絶縁性フィルムの下面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの上面に設けられた赤外線反射膜と、前記絶縁性フィルムの下面に形成され対応する前記第1の配線膜及び前記第2の配線膜に接続された複数の端子電極とを備え、
前記支持部材が、対応する前記複数の端子電極に先端が接続された複数の接続端子と、前記絶縁性フィルムの上面を凹曲面にして湾曲させた状態で前記絶縁性フィルムを支持しているフィルム支持部と、前記接続端子及び前記フィルム支持部とを保持するベース部とを備え、
一対の前記フィルム支持部の先端部に、前記絶縁性フィルムの端部を挟んで保持する又は嵌め込んで保持するフック部が形成されていることを特徴とする非接触温度センサ。 - 請求項1に記載の非接触温度センサにおいて、
前記第1の感熱素子と前記第2の感熱素子とが、前記絶縁性フィルムの曲率を有する方向に並んで設置されていることを特徴とする非接触温度センサ。 - 請求項1に記載の非接触温度センサにおいて、
前記第1の感熱素子と前記第2の感熱素子とが、前記絶縁性フィルムの曲率を有する方向に直交する方向に並んで設置されていることを特徴とする非接触温度センサ。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の非接触温度センサにおいて、
前記第1の感熱素子と前記第2の感熱素子とが、前記絶縁性フィルムにサーミスタ材料でパターン形成された薄膜サーミスタ部と、前記薄膜サーミスタ部の上及び下の少なくとも一方に複数の櫛部を有して互いに対向してパターン形成され対応する前記第1の配線膜又は前記第2の配線膜に接続された一対の櫛型電極とを備えていることを特徴とする非接触温度センサ。 - 請求項4に記載の非接触温度センサにおいて、
前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする非接触温度センサ。
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