JP5796719B2 - 温度センサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
近年、樹脂フィルム上にサーミスタ材料を形成したフィルム型サーミスタセンサの開発が検討されており、フィルムに直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれている。すなわち、フィルムを用いることで、フレキシブルなサーミスタセンサが得られることが期待される。さらに、0.1mm程度の厚さを持つ非常に薄いサーミスタセンサの開発が望まれているが、従来はアルミナ等のセラミックス材料を用いた基板材料がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、フィルムを用いることで非常に薄いサーミスタセンサが得られることが期待される。
従来、TiAlNからなる窒化物系サーミスタを形成した温度センサでは、フィルム上に電極とTiAlNからなるサーミスタ材料層とを積層して形成する場合、フィルムと電極材料のAu等の貴金属との接合性が低いため、フィルム上に、CrやNiCrの接合層を成膜し、その上にAu等の貴金属を成膜し、櫛型等にパターニングしている。そして、さらにサーミスタ材料層を成膜し、所定形状にパターニングしている。しかしながら、上記電極構造の温度センサでは、高B定数のサーミスタ特性を得るためにTiAlNのTiの組成比を少なくしているため(すなわち、Alリッチ)、Au等の貴金属と前記TiAlNとの接合性が低いという問題があった。このため、フィルムを曲げたときなど、Au等の貴金属の電極層とサーミスタ材料層との剥離により、電気特性が劣化する場合があった。
また、樹脂材料で構成されるフィルムは、一般的に耐熱温度が150℃以下と低く、比較的耐熱温度の高い材料として知られるポリイミドでも200℃程度の耐熱性しかないため、サーミスタ材料の形成工程において熱処理が加わる場合は、適用が困難であった。上記従来の酸化物サーミスタ材料では、所望のサーミスタ特性を実現するために600℃以上の焼成が必要であり、フィルムに直接成膜したフィルム型サーミスタセンサを実現できないという問題点があった。そのため、非焼成で直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれているが、上記特許文献3に記載のサーミスタ材料でも、所望のサーミスタ特性を得るために、必要に応じて、得られた薄膜を350〜600℃で熱処理する必要があった。また、このサーミスタ材料では、Ta−Al−N系材料の実施例において、B定数:500〜3000K程度の材料が得られているが、耐熱性に関する記述がなく、窒化物系材料の熱的信頼性が不明であった。
すなわち、この温度センサでは、絶縁性基材が、絶縁性フィルムであるので、薄型で全体がフィルム状の温度センサとなり、フレキシブルで凹凸が小さく、設置自由度を大幅に向上させることができる。また、絶縁性フィルムの曲げに対しても、薄膜サーミスタ部の剥離が生じ難く、曲面等への設置も可能になる。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.95をこえると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.4未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
さらに、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.5を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の正しい化学量論比は、N/(Ti+Al+N)=0.5であることに起因する。
すなわち、この温度センサの製造方法では、絶縁性基材上にメタルマスクを用いたスパッタ法にてTiAlNの薄膜サーミスタ部をパターン形成するので、エッチング工程を用いずに容易にTiAiNの薄膜サーミスタ部をTiNの第2接合層上にパターン形成することができる。
すなわち、本発明に係る温度センサ及びその製造方法によれば、パターン電極の少なくとも対向電極部が、絶縁性基材上に形成されたCr又はNiCrの第1接合層と、該第1接合層上に貴金属で形成された電極層と、該電極層上に直接又はTi層を介して形成されたTiNの第2接合層とを有しているので、同じ窒化物であるTiAlNの薄膜サーミスタ部とTiNの第2接合層とが高い接合性を有することで、界面等での隔離を防ぐことができ、高い信頼性が得られる。
さらに、薄膜サーミスタ部を、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である材料とすることで、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性が得られる。
したがって、本発明の温度センサによれば、絶縁性基材を絶縁性フィルムとすることで、フレキシブルで凹凸が少なく、非接触給電装置やバッテリー等の狭い隙間に挿入して設置することや、曲面に設置することも可能になる。
上記薄膜サーミスタ部4は、TiAlNのサーミスタ材料で形成されている。特に、薄膜サーミスタ部4は、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である。
一対のパターン電極3は、互いに対向状態に配した櫛形パターンの一対の櫛形電極部である上記対向電極部3aと、これら対向電極部3aに先端部が接続され基端部が絶縁性基材2の端部に配されて延在した一対の直線延在部3bとを有している。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x、y、z)(原子%)は、A(15、35、50),B(2.5、47.5、50),C(3、57、40),D(18、42、40)である。
なお、膜の表面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べることで、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満であることで決定する。
本実施形態の温度センサ1の製造方法は、絶縁性基材2上に一対のパターン電極3をパターン形成する電極形成工程と、絶縁性基材2上に一対の対向電極部3aを覆って薄膜サーミスタ部4をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程とを有している。
上記薄膜サーミスタ部形成工程は、絶縁性基材2上にメタルマスクを用いたスパッタ法にてTiAlNの薄膜サーミスタ部4をパターン形成する。
これにより、図4の(c)に示すように、所望の薄膜サーミスタ部4を形成する。
なお、複数の温度センサ1を同時に作製する場合、絶縁性基材2の大判シートに複数の薄膜サーミスタ部4及びパターン電極3を上述のように形成した後に、大判シートから各温度センサ1に切断する。
このようにして、例えばサイズを25×3.6mmとし、厚さを0.1mmとした薄いフィルム型サーミスタセンサの温度センサ1が得られる。
また、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
さらに、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸を強く配向させることで、a軸配向が強い場合に比べて高いB定数が得られる。
また、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、0.67Pa未満に設定することで、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向している金属窒化物材料の膜を形成することができる。
また、従来アルミナ等のセラミックスを用いた基板材料がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、本発明においてはフィルムを用いることができるので、例えば、厚さ0.1mmの非常に薄いフィルム型サーミスタセンサを得ることができる。
上記実施形態に基づいて作製した実施例について、屈曲試験を行った際の抵抗値変化率及びB定数変化率について調べた。すなわち、作製した実施例の温度センサについて、薄膜サーミスタ部を直径20mmの曲率で凹と凸とに交互に100回ずつ屈曲試験を行い、試験前後における電気特性変化(抵抗値変化率、B定数変化率)を評価した。なお、比較のためTiNの第2接合層のない温度センサも比較例として作製し、同様に上記評価を行った。
このように、本発明の実施例は、薄膜サーミスタ部の剥離に起因する電気特性変化が小さく、曲げ性に対して優れていることが分かる。
本発明のサーミスタ材料層(薄膜サーミスタ部4)の評価を行う実施例及び比較例として、図5に示す膜評価用素子21を次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、様々な組成比のTi−Al合金ターゲットを用いて、Si基板Sとなる熱酸化膜付きSiウエハ上に、厚さ500nmの表1に示す様々な組成比で形成された金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部4を形成した。その時のスパッタ条件は、到達真空度:5×10−6Pa、スパッタガス圧:0.1〜1Pa、ターゲット投入電力(出力):100〜500Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を10〜100%と変えて作製した。
なお、比較としてTixAlyNzの組成比が本発明の範囲外であって結晶系が異なる比較例についても同様に作製して評価を行った。
(1)組成分析
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部4について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。その結果を表1に示す。なお、以下の表中の組成比は「原子%」で示している。
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部4について、4端子法にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
(3)B定数測定
膜評価用素子21の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表1に示す。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
反応性スパッタ法にて得られた薄膜サーミスタ部4を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=20〜130度の範囲で測定した。一部のサンプルについては、入射角を0度とし、2θ=20〜100度の範囲で測定した。
なお、表1に示す比較例1,2は、上述したように結晶相がウルツ鉱型相でもNaCl型相でもなく、本試験においては同定できなかった。また、これらの比較例は、XRDのピーク幅が非常に広いことから、非常に結晶性の劣る材料であった。これは、電気特性により金属的振舞いに近いことから、窒化不足の金属相になっていると考えられる。
なお、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、同様にウルツ鉱型相の単一相が形成されていることを確認している。また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、配向性は変わらないことを確認している。
また、a軸配向が強い実施例のXRDプロファイルの一例を、図9に示す。この実施例は、Al/(Ti+Al)=0.83(ウルツ鉱型、六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(002)よりも(100)の強度が非常に強くなっている。
表2及び図11に示すように、Al/(Ti+Al)比がほぼ同じ比率のものに対し、基板面に垂直方向の配向度の強い結晶軸がc軸である材料(実施例5,7,8,9)とa軸である材料(実施例19,20,21)とがある。
次に、薄膜サーミスタ部4の断面における結晶形態を示す一例として、熱酸化膜付きSi基板S上に成膜された実施例(Al/(Ti+Al)=0.84,ウルツ鉱型、六方晶、c軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部4における断面SEM写真を、図12に示す。また、別の実施例(Al/(Ti+Al)=0.83,ウルツ鉱型六方晶、a軸配向性が強い)の薄膜サーミスタ部4における断面SEM写真を、図13に示す。
これら実施例のサンプルは、Si基板Sをへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
表3に示す実施例及び比較例において、大気中,125℃,1000hの耐熱試験前後における抵抗値及びB定数を評価した。その結果を表3に示す。なお、比較として従来のTa−Al−N系材料による比較例も同様に評価した。
これらの結果からわかるように、Al濃度及び窒素濃度は異なるものの、Ta−Al−N系である比較例と同じB定数で比較したとき、耐熱試験前後における電気特性変化でみたときの耐熱性は、Ti−Al−N系のほうが優れている。なお、実施例5,8はc軸配向が強い材料であり、実施例21,24はa軸配向が強い材料である。両者を比較すると、c軸配向が強い実施例の方がa軸配向が強い実施例に比べて僅かに耐熱性が向上している。
Claims (4)
- 絶縁性基材と、
該絶縁性基材上に互いに対向した一対の対向電極部を有して形成された一対のパターン電極と、
前記絶縁性基材上に一対の前記対向電極部を覆って形成された薄膜サーミスタ部とを備え、
該薄膜サーミスタ部が、TiAlNのサーミスタ材料で形成され、
前記パターン電極の少なくとも前記対向電極部が、前記絶縁性基材上に形成されたCr又はNiCrの第1接合層と、
該第1接合層上に貴金属で形成された電極層と、
該電極層上に直接又はTi層を介して形成されたTiNの第2接合層とを有していることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記絶縁性基材が、絶縁性フィルムであることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の温度センサを製造する方法であって、
前記絶縁性基材上に一対の前記パターン電極をパターン形成する電極形成工程と、
前記絶縁性基材上に一対の前記対向電極部を覆って前記薄膜サーミスタ部をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程とを有し、
該薄膜サーミスタ部形成工程が、前記絶縁性基材上にメタルマスクを用いたスパッタ法にてTiAlNの薄膜サーミスタ部をパターン形成することを特徴とする温度センサの製造方法。
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