JP5796720B2 - 温度センサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
従来、TiAlNからなる窒化物系サーミスタを形成した温度センサでは、基材上に電極とTiAlNからなるサーミスタ材料層とを積層して形成する場合、基材と電極材料のAu等の貴金属との接合性が低いため、基材上に、CrやNiCrの接合層を成膜し、その上にAu等の貴金属を成膜し、櫛型等にパターニングしている。そして、さらにサーミスタ材料層を成膜し、所定形状にパターニングしている。しかしながら、上記電極構造の温度センサでは、TiAlNからなるサーミスタ材料層は電極のある箇所とない箇所との境界の段差によりクラックが発生しやすく、電気特性が劣化する場合があるという不都合があった。
すなわち、この温度センサでは、第1サーミスタ層の膜密度が、第2サーミスタ層の膜密度の80〜89%であるので、クラックの発生を抑制すると共に耐熱性の劣化を抑制することができる。
上記第1サーミスタ層の膜密度を上記範囲内に設定した理由は、80%未満であると、耐熱性が劣化してしまうためであり、89%を超えると、クラック発生の抑制効果が低下してしまうためである。
また、樹脂材料で構成されるフィルムは、一般的に耐熱温度が150℃以下と低く、比較的耐熱温度の高い材料として知られるポリイミドでも200℃程度の耐熱性しかないため、サーミスタ材料の形成工程において熱処理が加わる場合は、適用が困難であった。上記従来の酸化物サーミスタ材料では、所望のサーミスタ特性を実現するために600℃以上の焼成が必要であり、フィルムに直接成膜したフィルム型サーミスタセンサを実現できないという問題点があった。そのため、非焼成で直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれているが、上記特許文献3に記載のサーミスタ材料でも、所望のサーミスタ特性を得るために、必要に応じて、得られた薄膜を350〜600℃で熱処理する必要があった。また、このサーミスタ材料では、Ta−Al−N系材料の実施例において、B定数:500〜3000K程度の材料が得られているが、耐熱性に関する記述がなく、窒化物系材料の熱的信頼性が不明であった。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.95をこえると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.4未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
さらに、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.5を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の正しい化学量論比は、N/(Ti+Al+N)=0.5であることに起因する。
すなわち、この温度センサの製造方法では、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、第2サーミスタ層を成膜する際に、第1サーミスタ層を成膜する際よりも低く設定することで、第1サーミスタ層よりも膜密度が高いTiAlNからなる第2サーミスタ層を形成することができる。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、薄膜サーミスタ部が、対向電極部の膜厚以上の膜厚であるTiAlNの第1サーミスタ層と、該第1サーミスタ層上に積層され第1サーミスタ層よりも膜密度の高いTiAlNの第2サーミスタ層とを有しているので、対向電極部のある箇所とない箇所との境界の段差に生じやすいクラックを抑制することができる。また、本発明に係る温度センサの製造方法によれば、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、第2サーミスタ層を成膜する際に、第1サーミスタ層を成膜する際よりも低く設定することで、第1サーミスタ層よりも膜密度が高いTiAlNの第2サーミスタ層を容易に形成することができる。
さらに、薄膜サーミスタ部を、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である材料とすることで、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性が得られる。
したがって、本発明の温度センサによれば、薄膜サーミスタ部にクラックが生じ難く高い信頼性を有しており、産業機器等の温度を測定する温度センサとして好適である。
上記薄膜サーミスタ部4は、TiAlNのサーミスタ材料で形成されている。特に、薄膜サーミスタ部4は、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である。
膜密度=(成膜後重量−成膜前重量)/(成膜面積×膜厚)
一対のパターン電極3は、互いに対向状態に配した櫛形パターンの一対の櫛形電極部である上記対向電極部3aと、これら対向電極部3aに先端部が接続され基端部が絶縁性基材2の端部に配されて延在した一対の直線延在部3bとを有している。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x、y、z)(原子%)は、A(15、35、50),B(2.5、47.5、50),C(3、57、40),D(18、42、40)である。
なお、膜の表面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べることで、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満であることで決定する。
本実施形態の温度センサ1の製造方法は、絶縁性基材2上に一対のパターン電極3をパターン形成する電極形成工程と、絶縁性基材2上に一対の対向電極部3aを覆って薄膜サーミスタ部4をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程とを有している。
なお、電極形成工程において、薄膜サーミスタ部形成工程と同様に、電極になる部分にレジストをパターン形成するレジスト工程と、レジストで覆われていない電極層をAu及びCrエッチャントでウェットエッチングすることで電極部を形成するエッチング工程と、該エッチング工程後にレジストを除去する工程とを有している。
さらに、この成膜工程では、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、第2サーミスタ層4Bを成膜する際に、第1サーミスタ層4Aを成膜する際よりも低く設定する。
次に、成膜した電極層6の上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒プリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント、Crエッチャントの順番でウェットエッチングを行い、図4の(b)に示すように、レジスト剥離にて所望のパターン電極3を形成する。
なお、この2層構造の薄膜サーミスタ部4では、第1サーミスタ層4aがa軸配向の強いサーミスタ材料層であり、第2サーミスタ層4bがc軸配向の強いサーミスタ材料層となっている。
なお、複数の温度センサ1を同時に作製する場合、絶縁性基材2となる熱酸化膜付きSiウエハに複数の薄膜サーミスタ部4及びパターン電極3を上述のように形成した後に、Siウエハから各温度センサ1に切断する。
また、第1サーミスタ層4Aの膜密度が、第2サーミスタ層4Bの膜密度の80〜89%であるので、クラックの発生を抑制すると共に耐熱性の劣化を抑制することができる。
また、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
さらに、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸を強く配向させることで、a軸配向が強い場合に比べて高いB定数が得られる。
また、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、第2サーミスタ層4Bを成膜する際に、第1サーミスタ層4Aを成膜する際よりも低く設定することで、第1サーミスタ層4Aよりも膜密度が高いTiAlNからなる第2サーミスタ層4Bを形成することができる。
まず、膜密度評価用の実施例及び比較例を作製するために、予め基板の重量を測定した厚さ500umの熱酸化膜Si基板上にスパッタ条件を変えてサーミスタ材料層を成膜した複数の実施例を作製した。これらの実施例について、成膜後の重量を測定して、膜厚前後の重量の差を膜の面積に厚みを掛けたもので割って膜密度を算出した。
この膜密度の測定は、第1サーミスタ層4Aと第2サーミスタ層4Bとを個々に成膜して、個々に膜密度を算出している。
すなわち、第1サーミスタ層4Aについては、反応性スパッタ法にて、TixAlyNz(x=8、y=44、z=48)のサーミスタ材料層を次の条件で成膜した。この成膜のスパッタ条件は、到達真空度5×10−6Pa、スパッタガス圧0.67〜0.93Pa、ターゲット投入電力(出力)300Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を20%で作製した。
なお、第2サーミスタ層4Bの膜密度は、3.41g/cm3である。また、代表的に、表1に示す比較例A,実施例A及びBの断面SEM写真を、図6から図8に示す。
本発明のサーミスタ材料層(第1サーミスタ層4A又は第2サーミスタ層4Bの単層)の評価を行う実施例及び比較例として、図9に示す膜評価用素子121を次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、様々な組成比のTi−Al合金ターゲットを用いて、Si基板Sとなる熱酸化膜付きSiウエハ上に、厚さ500nmの表2に示す様々な組成比で形成された金属窒化物材料のサーミスタ材料層を形成した。その時のスパッタ条件は、到達真空度:5×10−6Pa、スパッタガス圧:0.1〜1Pa、ターゲット投入電力(出力):100〜500Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を10〜100%と変えて作製した。
なお、比較としてTixAlyNzの組成比が本発明の範囲外であって結晶系が異なる比較例についても同様に作製して評価を行った。
(1)組成分析
反応性スパッタ法にて得られたサーミスタ材料層について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。その結果を表2に示す。なお、以下の表中の組成比は「原子%」で示している。
反応性スパッタ法にて得られたサーミスタ材料層について、4端子法にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
(3)B定数測定
膜評価用素子121の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表2に示す。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
反応性スパッタ法にて得られたサーミスタ材料層を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=20〜130度の範囲で測定した。一部のサンプルについては、入射角を0度とし、2θ=20〜100度の範囲で測定した。
なお、表2に示す比較例1,2は、上述したように結晶相がウルツ鉱型相でもNaCl型相でもなく、本試験においては同定できなかった。また、これらの比較例は、XRDのピーク幅が非常に広いことから、非常に結晶性の劣る材料であった。これは、電気特性により金属的振舞いに近いことから、窒化不足の金属相になっていると考えられる。
なお、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、同様にウルツ鉱型相の単一相が形成されていることを確認している。また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、配向性は変わらないことを確認している。
また、a軸配向が強い実施例のXRDプロファイルの一例を、図13に示す。この実施例は、Al/(Ti+Al)=0.83(ウルツ鉱型、六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(002)よりも(100)の強度が非常に強くなっている。
表3及び図15に示すように、Al/(Ti+Al)比がほぼ同じ比率のものに対し、基板面に垂直方向の配向度の強い結晶軸がc軸である材料(実施例5,7,8,9)とa軸である材料(実施例19,20,21)とがある。
次に、サーミスタ材料層の断面における結晶形態を示す一例として、熱酸化膜付きSi基板S上に成膜された実施例(Al/(Ti+Al)=0.84,ウルツ鉱型、六方晶、c軸配向性が強い)のサーミスタ材料層における断面SEM写真を、図16に示す。また、別の実施例(Al/(Ti+Al)=0.83,ウルツ鉱型六方晶、a軸配向性が強い)のサーミスタ材料層における断面SEM写真を、図17に示す。
これら実施例のサンプルは、Si基板Sをへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
表4に示す実施例及び比較例において、大気中,125℃,1000hの耐熱試験前後における抵抗値及びB定数を評価した。その結果を表4に示す。なお、比較として従来のTa−Al−N系材料による比較例も同様に評価した。
これらの結果からわかるように、Al濃度及び窒素濃度は異なるものの、Ta−Al−N系である比較例と同じB定数で比較したとき、耐熱試験前後における電気特性変化でみたときの耐熱性は、Ti−Al−N系のほうが優れている。なお、実施例5,8はc軸配向が強い材料であり、実施例21,24はa軸配向が強い材料である。両者を比較すると、c軸配向が強い実施例の方がa軸配向が強い実施例に比べて僅かに耐熱性が向上している。
Claims (4)
- 絶縁性基材と、
該絶縁性基材上に互いに対向した一対の対向電極部を有して形成された一対のパターン電極と、
前記絶縁性基材上に一対の前記対向電極部を覆って形成された薄膜サーミスタ部とを備え、
該薄膜サーミスタ部が、前記対向電極部の膜厚以上の膜厚であると共にTiAlNのサーミスタ材料で形成された第1サーミスタ層と、該第1サーミスタ層上に積層され前記第1サーミスタ層よりも膜密度の高いTiAlNのサーミスタ材料で形成された第2サーミスタ層とを有していることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記第1サーミスタ層の膜密度が、前記第2サーミスタ層の膜密度の80〜89%であることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TixAlyNz(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする温度センサ。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の温度センサを製造する方法であって、
前記絶縁性基材上に一対の前記パターン電極をパターン形成する電極形成工程と、
前記絶縁性基材上に一対の前記対向電極部を覆って前記薄膜サーミスタ部をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程とを有し、
該薄膜サーミスタ部形成工程が、前記絶縁性基材上にTi−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って前記第1サーミスタ層及び前記第2サーミスタ層を積層して成膜する成膜工程を有し、
前記反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、前記第2サーミスタ層を成膜する際に、前記第1サーミスタ層を成膜する際よりも低く設定することを特徴とする温度センサの製造方法。
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