JP5796720B2 - 温度センサ及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、薄型のサーミスタ温度センサに好適な温度センサ及びその製造方法に関する。
温度センサ等に使用されるサーミスタ材料は、高精度、高感度のために、高いB定数が求められている。従来、このようなサーミスタ材料には、Mn,Co,Fe等の遷移金属酸化物が一般的である(特許文献1及び2参照)。また、これらのサーミスタ材料では、安定なサーミスタ特性を得るために、600℃以上の焼成が必要である。
また、上記のような金属酸化物からなるサーミスタ材料の他に、例えば特許文献3では、一般式:M(但し、MはTa,Nb,Cr,Ti及びZrの少なくとも1種、AはAl,Si及びBの少なくとも1種を示す。0.1≦x≦0.8、0<y≦0.6、0.1≦z≦0.8、x+y+z=1)で示される窒化物からなるサーミスタ用材料が提案されている。また、この特許文献3では、Ta−Al−N系材料で、0.5≦x≦0.8、0.1≦y≦0.5、0.2≦z≦0.7、x+y+z=1としたものだけが実施例として記載されている。このTa−Al−N系材料では、上記元素を含む材料をターゲットとして用い、窒素ガス含有雰囲気中でスパッタリングを行って作製されている。また、必要に応じて、得られた薄膜を350〜600℃で熱処理を行っている。
特開2003−226573号公報 特開2006−324520号公報 特開2004−319737号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来、TiAlNからなる窒化物系サーミスタを形成した温度センサでは、基材上に電極とTiAlNからなるサーミスタ材料層とを積層して形成する場合、基材と電極材料のAu等の貴金属との接合性が低いため、基材上に、CrやNiCrの接合層を成膜し、その上にAu等の貴金属を成膜し、櫛型等にパターニングしている。そして、さらにサーミスタ材料層を成膜し、所定形状にパターニングしている。しかしながら、上記電極構造の温度センサでは、TiAlNからなるサーミスタ材料層は電極のある箇所とない箇所との境界の段差によりクラックが発生しやすく、電気特性が劣化する場合があるという不都合があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、TiAlNのサーミスタ材料層を電極上に形成しても電極の段差におけるクラックの発生を抑制可能である温度センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、絶縁性基材と、該絶縁性基材上に互いに対向した一対の対向電極部を有して形成された一対のパターン電極と、前記絶縁性基材上に一対の前記対向電極部を覆って形成された薄膜サーミスタ部とを備え、該薄膜サーミスタ部が、前記対向電極部の膜厚以上の膜厚であると共にTiAlNのサーミスタ材料で形成された第1サーミスタ層と、該第1サーミスタ層上に積層され前記第1サーミスタ層よりも膜密度の高いTiAlNのサーミスタ材料で形成された第2サーミスタ層とを有していることを特徴とする。
この温度センサでは、薄膜サーミスタ部が、対向電極部の膜厚以上の膜厚であると共にTiAlNのサーミスタ材料で形成された第1サーミスタ層と、該第1サーミスタ層上に積層され第1サーミスタ層よりも膜密度の高いTiAlNのサーミスタ材料で形成された第2サーミスタ層とを有しているので、膜密度の低い第1サーミスタ層が段差を埋めると共に緩和層的な役割をして、対向電極部のある箇所とない箇所との境界の段差に生じやすいクラックを抑制することができる。
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記第1サーミスタ層の膜密度が、前記第2サーミスタ層の膜密度の80〜89%であることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、第1サーミスタ層の膜密度が、第2サーミスタ層の膜密度の80〜89%であるので、クラックの発生を抑制すると共に耐熱性の劣化を抑制することができる。
上記第1サーミスタ層の膜密度を上記範囲内に設定した理由は、80%未満であると、耐熱性が劣化してしまうためであり、89%を超えると、クラック発生の抑制効果が低下してしまうためである。
第3の発明に係る温度センサは、第1又は第2の発明において、前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする。
近年、樹脂フィルム上にサーミスタ材料を形成したフィルム型サーミスタセンサの開発が検討されており、フィルムに直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれている。すなわち、フィルムを用いることで、フレキシブルなサーミスタセンサが得られることが期待される。さらに、0.1mm程度の厚さを持つ非常に薄いサーミスタセンサの開発が望まれているが、従来はアルミナ等のセラミックス材料を用いた基板材料がしばしば用いられ、例えば、厚さ0.1mmへと薄くすると非常に脆く壊れやすい等の問題があったが、フィルムを用いることで非常に薄いサーミスタセンサが得られることが期待される。
また、樹脂材料で構成されるフィルムは、一般的に耐熱温度が150℃以下と低く、比較的耐熱温度の高い材料として知られるポリイミドでも200℃程度の耐熱性しかないため、サーミスタ材料の形成工程において熱処理が加わる場合は、適用が困難であった。上記従来の酸化物サーミスタ材料では、所望のサーミスタ特性を実現するために600℃以上の焼成が必要であり、フィルムに直接成膜したフィルム型サーミスタセンサを実現できないという問題点があった。そのため、非焼成で直接成膜できるサーミスタ材料の開発が望まれているが、上記特許文献3に記載のサーミスタ材料でも、所望のサーミスタ特性を得るために、必要に応じて、得られた薄膜を350〜600℃で熱処理する必要があった。また、このサーミスタ材料では、Ta−Al−N系材料の実施例において、B定数:500〜3000K程度の材料が得られているが、耐熱性に関する記述がなく、窒化物系材料の熱的信頼性が不明であった。
本発明者らは、窒化物材料の中でもAlN系に着目し、鋭意、研究を進めたところ、絶縁体であるAlNは、最適なサーミスタ特性(B定数:1000〜6000K程度)を得ることが難しいため、Alサイトを電気伝導を向上させる特定の金属元素で置換すると共に、特定の結晶構造とすることで、非焼成で良好なB定数と耐熱性とが得られることを見出した。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、薄膜サーミスタ部が、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。
なお、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.70未満であると、ウルツ鉱型の単相が得られず、NaCl型相との共存相又はNaCl型相のみの相となってしまい、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、Al/(Ti+Al))が0.95をこえると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.4未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
さらに、上記「z」(すなわち、N/(Ti+Al+N))が0.5を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の正しい化学量論比は、N/(Ti+Al+N)=0.5であることに起因する。
第4の発明に係る温度センサの製造方法は、第1から第3の発明のいずれかの温度センサを製造する方法であって、前記絶縁性基材上に一対の前記パターン電極をパターン形成する電極形成工程と、前記絶縁性基材上に一対の前記対向電極部を覆って前記薄膜サーミスタ部をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程とを有し、該薄膜サーミスタ部形成工程が、前記絶縁性基材上にTi−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って前記第1サーミスタ層及び前記第2サーミスタ層を積層して成膜する成膜工程を有し、前記反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、前記第2サーミスタ層を成膜する際に、前記第1サーミスタ層を成膜する際よりも低く設定することを特徴とする。
すなわち、この温度センサの製造方法では、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、第2サーミスタ層を成膜する際に、第1サーミスタ層を成膜する際よりも低く設定することで、第1サーミスタ層よりも膜密度が高いTiAlNからなる第2サーミスタ層を形成することができる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、薄膜サーミスタ部が、対向電極部の膜厚以上の膜厚であるTiAlNの第1サーミスタ層と、該第1サーミスタ層上に積層され第1サーミスタ層よりも膜密度の高いTiAlNの第2サーミスタ層とを有しているので、対向電極部のある箇所とない箇所との境界の段差に生じやすいクラックを抑制することができる。また、本発明に係る温度センサの製造方法によれば、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、第2サーミスタ層を成膜する際に、第1サーミスタ層を成膜する際よりも低く設定することで、第1サーミスタ層よりも膜密度が高いTiAlNの第2サーミスタ層を容易に形成することができる。
さらに、薄膜サーミスタ部を、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である材料とすることで、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性が得られる。
したがって、本発明の温度センサによれば、薄膜サーミスタ部にクラックが生じ難く高い信頼性を有しており、産業機器等の温度を測定する温度センサとして好適である。
本発明に係る温度センサ及びその製造方法の一実施形態において、温度センサを示すパターン電極に沿った断面図である。 本実施形態において、温度センサを示す斜視図である。 本実施形態において、サーミスタ用金属窒化物材料の組成範囲を示すTi−Al−N系3元系相図である。 本実施形態において、温度センサの製造方法を工程順に示す斜視図である。 本発明に係る温度センサ及びその製造方法において、クラック評価用の実施例・比較例を示す断面図である。 膜密度評価用の比較例Aを示す断面SEM写真である。 膜密度評価用の実施例Aを示す断面SEM写真である。 膜密度評価用の実施例Bを示す断面SEM写真である。 本発明に係る温度センサ及びその製造方法の実施例において、サーミスタ用金属窒化物材料の膜評価用素子を示す正面図及び平面図である。 本発明に係る実施例及び比較例において、25℃抵抗率とB定数との関係を示すグラフである。 本発明に係る実施例及び比較例において、Al/(Ti+Al)比とB定数との関係を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Al/(Ti+Al)=0.84としたc軸配向が強い場合におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Al/(Ti+Al)=0.83としたa軸配向が強い場合におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る比較例において、Al/(Ti+Al)=0.60とした場合におけるX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、a軸配向の強い実施例とc軸配向の強い実施例とを比較したAl/(Ti+Al)比とB定数との関係を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、c軸配向が強い実施例を示す断面SEM写真である。 本発明に係る実施例において、a軸配向が強い実施例を示す断面SEM写真である。
以下、本発明に係る温度センサ及びその製造方法における一実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面の一部では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している。
本実施形態の温度センサ1は、図1及び図2に示すように、絶縁性基材2と、該絶縁性基材2上に互いに対向した一対の対向電極部3aを有して形成された一対のパターン電極3と、絶縁性基材2上に一対の対向電極部3aを覆って形成された薄膜サーミスタ部4とを備えている。
上記絶縁性基材2は、表面に熱酸化膜が形成されたSi基板である。なお、絶縁性基材としては、上記Si基板の他に、例えばポリイミド樹脂シート等の絶縁性フィルムを採用しても構わない。この絶縁性フィルムとしては、ポリイミド樹脂シートの他にPET:ポリエチレンテレフタレート,PEN:ポリエチレンナフタレート等が採用可能である。
上記薄膜サーミスタ部4は、TiAlNのサーミスタ材料で形成されている。特に、薄膜サーミスタ部4は、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である。
また、薄膜サーミスタ部4は、対向電極部3aの膜厚以上の膜厚であると共にTiAlNのサーミスタ材料で形成された第1サーミスタ層4Aと、該第1サーミスタ層4A上に積層され第1サーミスタ層4Aよりも膜密度の高いTiAlNのサーミスタ材料で形成された第2サーミスタ層4Bとを有している。特に、第1サーミスタ層4Aの膜密度が、第2サーミスタ層4Bの膜密度の80〜89%であることが好ましい。
上記膜密度は、成膜前後の重量差分を成膜面積に膜厚をかけたもので割って算出したものである。すなわち、以下の式で求められる。
膜密度=(成膜後重量−成膜前重量)/(成膜面積×膜厚)
上記パターン電極3の少なくとも対向電極部3aは、絶縁性基材2上に形成されたCr又はNiCrの接合層5と、該接合層5上にAu等の貴金属で形成された電極層6とを有している。
一対のパターン電極3は、互いに対向状態に配した櫛形パターンの一対の櫛形電極部である上記対向電極部3aと、これら対向電極部3aに先端部が接続され基端部が絶縁性基材2の端部に配されて延在した一対の直線延在部3bとを有している。
また、一対の直線延在部3bの基端部上には、リード線の引き出し部としてAuめっき等のめっき部3cが形成されている。このめっき部3cには、リード線の一端が半田材等で接合される。さらに、めっき部3cを含む絶縁性基材2の端部を除いて該絶縁性基材2上にポリイミドカバーレイフィルム8が加圧接着されている。なお、ポリイミドカバーレイフィルム8の代わりに、ポリイミドやエポキシ系の樹脂材料を印刷で絶縁性基材2上に形成しても構わない。
上記薄膜サーミスタ部4(第1サーミスタ層4A及び第2サーミスタ層4B)は、上述したように、金属窒化物材料であって、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系の結晶系であってウルツ鉱型(空間群P6mc(No.186))の単相である。すなわち、この金属窒化物材料は、図3に示すように、Ti−Al−N系3元系相図における点A,B,C,Dで囲まれる領域内の組成を有し、結晶相がウルツ鉱型である金属窒化物である。
なお、上記点A,B,C,Dの各組成比(x、y、z)(原子%)は、A(15、35、50),B(2.5、47.5、50),C(3、57、40),D(18、42、40)である。
また、この薄膜サーミスタ部4は、膜状に形成され、前記膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶である。さらに、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向していることが好ましい。
なお、膜の表面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べることで、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満であることで決定する。
この温度センサ1の製造方法について、図4を参照して以下に説明する。
本実施形態の温度センサ1の製造方法は、絶縁性基材2上に一対のパターン電極3をパターン形成する電極形成工程と、絶縁性基材2上に一対の対向電極部3aを覆って薄膜サーミスタ部4をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程とを有している。
上記薄膜サーミスタ部形成工程は、絶縁性基材2上にTiAlNのサーミスタ材料層を成膜する成膜工程と、サーミスタ材料層上に薄膜サーミスタ部4となる部分にレジストをパターン形成するレジスト工程と、レジストで覆われていないサーミスタ材料層だけをTiエッチャントでウェットエッチングすることで薄膜サーミスタ部4を形成するエッチング工程と、該エッチング工程後にレジストを除去する工程とを有している。
なお、電極形成工程において、薄膜サーミスタ部形成工程と同様に、電極になる部分にレジストをパターン形成するレジスト工程と、レジストで覆われていない電極層をAu及びCrエッチャントでウェットエッチングすることで電極部を形成するエッチング工程と、該エッチング工程後にレジストを除去する工程とを有している。
また、上記成膜工程では、絶縁性基材2上にTi−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って第1サーミスタ層4A及び第2サーミスタ層4Bを積層して成膜する。
さらに、この成膜工程では、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、第2サーミスタ層4Bを成膜する際に、第1サーミスタ層4Aを成膜する際よりも低く設定する。
より具体的な製造方法の例としては、図4の(a)に示す厚さ500μmの熱酸化膜付きSi基板の絶縁性基材2上に、スパッタ法にて、Cr膜の接合層5を膜厚20nm形成し、さらにAu膜の電極層6を膜厚100nm形成する。
次に、成膜した電極層6の上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒プリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント、Crエッチャントの順番でウェットエッチングを行い、図4の(b)に示すように、レジスト剥離にて所望のパターン電極3を形成する。
次に、パターン電極3が成膜された絶縁性基材2の上に、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタ法にて、TiAl(x=8、y=44、z=48)の第1サーミスタ層4Aを120nm成膜する。そのときのスパッタ条件は、到達真空度5×10−6Pa、スパッタガス圧0.67〜0.93Pa、ターゲット投入電力(出力)300Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を20%で作製する。
さらに、第1サーミスタ層4Aの上に、TiAl(x=8、y=44、z=48)の第2サーミスタ層4Bを、第1サーミスタ層4Aと第2サーミスタ層4Bとの合計膜厚が500nmになるように成膜する。そのときのスパッタ条件は、到達真空度5×10−6Pa、スパッタガス圧0.4Pa、ターゲット投入電力(出力)300Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を20%で作製する。すなわち、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、第2サーミスタ層4Bを成膜する際に、第1サーミスタ層4Aを成膜する際よりも低く設定する。また、第1サーミスタ層4Aの膜密度が、第2サーミスタ層4Bの膜密度の80〜89%となるように設定する。
次に、第2サーミスタ層4Bの上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒プリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な第1サーミスタ層4A及び第2サーミスタ層4Bを市販のTiエッチャントでウェットエッチングを行い、図4の(c)に示すように、レジスト剥離にて所望の薄膜サーミスタ部4にする。
なお、この2層構造の薄膜サーミスタ部4では、第1サーミスタ層4aがa軸配向の強いサーミスタ材料層であり、第2サーミスタ層4bがc軸配向の強いサーミスタ材料層となっている。
次に、図4の(d)に示すように、例えば厚さ20μmの接着剤付きのポリイミドカバーレイフィルム8を絶縁性基材2上に載せ、プレス機にて150℃,2MPaで10min加圧し接着させる。さらに、図4の(e)に示すように、直線延在部3bの端部を、例えばAuめっき液によりAu薄膜を2μm形成してめっき部3cを形成する。これによって、温度センサ1が得られる。
なお、複数の温度センサ1を同時に作製する場合、絶縁性基材2となる熱酸化膜付きSiウエハに複数の薄膜サーミスタ部4及びパターン電極3を上述のように形成した後に、Siウエハから各温度センサ1に切断する。
このように本実施形態の温度センサ1では、薄膜サーミスタ部4が、対向電極部3aの膜厚以上の膜厚であると共にTiAlNのサーミスタ材料で形成された第1サーミスタ層4Aと、該第1サーミスタ層4A上に積層され第1サーミスタ層4Aよりも膜密度の高いTiAlNのサーミスタ材料で形成された第2サーミスタ層4Bとを有しているので、膜密度の低い第1サーミスタ層4Aが段差を埋めると共に緩和層的な役割をして、対向電極部3aのある箇所とない箇所との境界の段差に生じやすいクラックを抑制することができる。
また、第1サーミスタ層4Aの膜密度が、第2サーミスタ層4Bの膜密度の80〜89%であるので、クラックの発生を抑制すると共に耐熱性の劣化を抑制することができる。
なお、絶縁性基材2を絶縁性フィルムとすれば、薄型で全体がフィルム状の温度センサとなり、フレキシブルで凹凸が小さく、設置自由度を大幅に向上させることができる。
また、薄膜サーミスタ部4が、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系の結晶系であってウルツ鉱型の単相であるので、非焼成で良好なB定数が得られると共に高い耐熱性を有している。
また、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
さらに、この金属窒化物材料では、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸を強く配向させることで、a軸配向が強い場合に比べて高いB定数が得られる。
なお、本実施形態のサーミスタ材料層(第1サーミスタ層4A及び第2サーミスタ層4B)の製造方法では、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜するので、上記TiAlNからなる上記金属窒化物材料を非焼成で成膜することができる。
また、反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、第2サーミスタ層4Bを成膜する際に、第1サーミスタ層4Aを成膜する際よりも低く設定することで、第1サーミスタ層4Aよりも膜密度が高いTiAlNからなる第2サーミスタ層4Bを形成することができる。
したがって、本実施形態の温度センサ1では、絶縁性基材2上に上記サーミスタ材料層で薄膜サーミスタ部4が形成されているので、非焼成で形成され高B定数で耐熱性の高い薄膜サーミスタ部4により、Si基板だけでなく、樹脂フィルム等の耐熱性の低い絶縁性基材を採用することも可能になる。
次に、本発明に係る温度センサ及びその製造方法について、上記実施形態に基づいて作製した実施例により評価した結果を、図5から図17を参照して具体的に説明する。
<膜密度評価>
まず、膜密度評価用の実施例及び比較例を作製するために、予め基板の重量を測定した厚さ500umの熱酸化膜Si基板上にスパッタ条件を変えてサーミスタ材料層を成膜した複数の実施例を作製した。これらの実施例について、成膜後の重量を測定して、膜厚前後の重量の差を膜の面積に厚みを掛けたもので割って膜密度を算出した。
この膜密度の測定は、第1サーミスタ層4Aと第2サーミスタ層4Bとを個々に成膜して、個々に膜密度を算出している。
なお、これら実施例及び比較例におけるスパッタリングは、以下のようにして行った。
すなわち、第1サーミスタ層4Aについては、反応性スパッタ法にて、TiAl(x=8、y=44、z=48)のサーミスタ材料層を次の条件で成膜した。この成膜のスパッタ条件は、到達真空度5×10−6Pa、スパッタガス圧0.67〜0.93Pa、ターゲット投入電力(出力)300Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を20%で作製した。
また、第2サーミスタ層4Bについては、TiAl(x=8、y=44、z=48)のサーミスタ材料層を次の条件で成膜した。この成膜のスパッタ条件は、到達真空度5×10−6Pa、スパッタガス圧0.4Pa、ターゲット投入電力(出力)300Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を20%で作製した。
これら実施例及び比較例における第1サーミスタ層4A及び第2サーミスタ層4Bの膜厚、第1サーミスタ層4Aの膜密度、第1サーミスタ層4Aと第2サーミスタ層4Bとの膜密度比について、表1に示す。
次に、クラック評価用の実施例を作製するために、図5に示すように、絶縁性基材となる厚さ500μmの熱酸化膜付きSi基板S上にスパッタ法にてCr膜の接合層を20nm形成し、さらにAu膜の電極層を100nm形成した。その上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒プリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃5分のポストベークにてパターニングを行った。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント、Crエッチャントの順番でウェットエッチングを行い、レジスト剥離にて所望の対向電極部3aを有するパターン電極3にした。
その上に、反応性スパッタ法にて、TiAl(x=8、y=44、z=48)の第1サーミスタ層4Aを80〜160nm成膜した。そのときのスパッタ条件は、到達真空度5×10−6Pa、スパッタガス圧0.67〜0.93Pa、ターゲット投入電力(出力)300Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を20%で作製した。
また、上記第1サーミスタ層4Aの上に、TiAl(x=8、y=44、z=48)の第2サーミスタ層4Bを第1サーミスタ層4Aと第2サーミスタ層4Bとの合計膜厚が500nmになるように成膜した。そのときのスパッタ条件は、到達真空度5×10−6Pa、スパッタガス圧0.4Pa、ターゲット投入電力(出力)300Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を20%で作製した。
次に、第2サーミスタ層4Bの上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒プリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃5分のポストベークにてパターニングを行った。その後、不要なTiAlの第2サーミスタ層4B及び第1サーミスタ層4Aを市販のTiエッチャントでウェットエッチングを行い、レジスト剥離にて所望の薄膜サーミスタ部4にした。
次に、上記薄膜サーミスタ部4が成膜されたSi基板Sをチップ状にダイシングし、各チップの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。これら実施例及び比較例におけるクラックの有無について、表1に示す。この表1では、膜密度評価用とクラック評価用とで、同じスパッタ条件のものは同じ実施例及び比較例として表示している。
なお、第2サーミスタ層4Bの膜密度は、3.41g/cmである。また、代表的に、表1に示す比較例A,実施例A及びBの断面SEM写真を、図6から図8に示す。
上記評価の結果、第1サーミスタ層4Aの膜密度が第2サーミスタ層4Bの膜密度の96%以上でクラックが発生がしていると共に、89%以下でクラックが生じていないことが確認された。また、第1サーミスタ層4Aの膜厚が対向電極部3aの膜厚よりも小さいと、クラックが発生していると共に、同等以上だとクラックが生じていないことが確認された。なお、実施例Aでは、クラックが発生しているものの、サーミスタ層が一層の比較例Aに比べてクラックの発生箇所が少なく、クラックの発生が抑制されていた。
さらに、クラックの無い実施例について、大気中で125℃、1000hの耐熱試験を行い試験前後の抵抗値変化とB定数変化とを評価した。その結果を表1に示す。この結果から、第1サーミスタ層4Aの膜密度が第2サーミスタ層4Bの膜密度の80%以上では、耐熱性は比較例とほぼ同等であると共に、79%以下では耐熱性が劣化したことが確認された。
<単層の膜評価用素子の作製>
本発明のサーミスタ材料層(第1サーミスタ層4A又は第2サーミスタ層4Bの単層)の評価を行う実施例及び比較例として、図9に示す膜評価用素子121を次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、様々な組成比のTi−Al合金ターゲットを用いて、Si基板Sとなる熱酸化膜付きSiウエハ上に、厚さ500nmの表2に示す様々な組成比で形成された金属窒化物材料のサーミスタ材料層を形成した。その時のスパッタ条件は、到達真空度:5×10−6Pa、スパッタガス圧:0.1〜1Pa、ターゲット投入電力(出力):100〜500Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を10〜100%と変えて作製した。
次に、上記サーミスタ材料層の上に、スパッタ法でCr膜を20nm形成し、さらにAu膜を100nm形成した。さらに、その上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒プリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行った。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント及びCrエッチャントによりウェットエッチングを行い、レジスト剥離にて所望の櫛形電極部123aを有するパターン電極123を形成した。そして、これをチップ状にダイシングして、B定数評価及び耐熱性試験用の膜評価用素子121とした。
なお、比較としてTiAlの組成比が本発明の範囲外であって結晶系が異なる比較例についても同様に作製して評価を行った。
<膜の評価>
(1)組成分析
反応性スパッタ法にて得られたサーミスタ材料層について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。その結果を表2に示す。なお、以下の表中の組成比は「原子%」で示している。
なお、上記X線光電子分光法(XPS)は、X線源をMgKα(350W)とし、パスエネルギー:58.5eV、測定間隔:0.125eV、試料面に対する光電子取り出し角:45deg、分析エリアを約800μmφの条件下で定量分析を実施した。なお、定量精度について、N/(Ti+Al+N)の定量精度は±2%、Al/(Ti+Al)の定量精度は±1%ある。
(2)比抵抗測定
反応性スパッタ法にて得られたサーミスタ材料層について、4端子法にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
(3)B定数測定
膜評価用素子121の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表2に示す。
なお、本発明におけるB定数算出方法は、上述したように25℃と50℃とのそれぞれの抵抗値から以下の式によって求めている。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
これらの結果からわかるように、TiAlの組成比が図3に示す3元系の三角図において、点A,B,C,Dで囲まれる領域内、すなわち、「0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1」となる領域内の実施例全てで、抵抗率:100Ωcm以上、B定数:1500K以上のサーミスタ特性が達成されている。
上記結果から25℃での抵抗率とB定数との関係を示したグラフを、図10に示す。また、Al/(Ti+Al)比とB定数との関係を示したグラフを、図11に示す。これらのグラフから、Al/(Ti+Al)=0.7〜0.95、かつ、N/(Ti+Al+N)=0.4〜0.5の領域で、結晶系が六方晶のウルツ鉱型の単一相であるものは、25℃における比抵抗値が100Ωcm以上、B定数が1500K以上の高抵抗かつ高B定数の領域が実現できている。なお、図11のデータにおいて、同じAl/(Ti+Al)比に対して、B定数がばらついているのは、結晶中の窒素量が異なるためである。
表2に示す比較例3〜12は、Al/(Ti+Al)<0.7の領域であり、結晶系は立方晶のNaCl型となっている。また、比較例12(Al/(Ti+Al)=0.67)では、NaCl型とウルツ鉱型とが共存している。このように、Al/(Ti+Al)<0.7の領域では、25℃における比抵抗値が100Ωcm未満、B定数が1500K未満であり、低抵抗かつ低B定数の領域であった。
表2に示す比較例1,2は、N/(Ti+Al+N)が40%に満たない領域であり、金属が窒化不足の結晶状態になっている。この比較例1,2は、NaCl型でも、ウルツ鉱型でもない、非常に結晶性の劣る状態であった。また、これら比較例では、B定数及び抵抗値が共に非常に小さく、金属的振舞いに近いことがわかった。
(4)薄膜X線回折(結晶相の同定)
反応性スパッタ法にて得られたサーミスタ材料層を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=20〜130度の範囲で測定した。一部のサンプルについては、入射角を0度とし、2θ=20〜100度の範囲で測定した。
その結果、Al/(Ti+Al)≧0.7の領域においては、ウルツ鉱型相(六方晶、AlNと同じ相)であり、Al/(Ti+Al)<0.65の領域においては、NaCl型相(立方晶、TiNと同じ相)であった。また、0.65< Al/(Ti+Al)<0.7においては、ウルツ鉱型相とNaCl型相との共存する結晶相であった。
このようにTiAlN系においては、高抵抗かつ高B定数の領域は、Al/(Ti+Al)≧0.7のウルツ鉱型相に存在している。なお、本発明の実施例では、不純物相は確認されておらず、ウルツ鉱型の単一相である。
なお、表2に示す比較例1,2は、上述したように結晶相がウルツ鉱型相でもNaCl型相でもなく、本試験においては同定できなかった。また、これらの比較例は、XRDのピーク幅が非常に広いことから、非常に結晶性の劣る材料であった。これは、電気特性により金属的振舞いに近いことから、窒化不足の金属相になっていると考えられる。
次に、本発明の実施例は全てウルツ鉱型相の膜であり、配向性が強いことから、Si基板S上に垂直な方向(膜厚方向)の結晶軸においてa軸配向性が強いか、c軸配向性が強いかであるかについて、XRDを用いて調査した。この際、結晶軸の配向性を調べるために、(100)(a軸配向を示すミラー指数)と(002)(c軸配向を示すミラー指数)とのピーク強度比を測定した。
その結果、スパッタガス圧が0.67Pa未満で成膜された実施例は、(100)よりも(002)の強度が非常に強く、a軸配向性よりc軸配向性が強い膜であった。一方、スパッタガス圧が0.67Pa以上で成膜された実施例は、(002)よりも(100)の強度が非常に強く、c軸配向よりa軸配向が強い材料であった。
なお、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、同様にウルツ鉱型相の単一相が形成されていることを確認している。また、同じ成膜条件でポリイミドフィルムに成膜しても、配向性は変わらないことを確認している。
c軸配向が強い実施例のXRDプロファイルの一例を、図12に示す。この実施例は、Al/(Ti+Al)=0.84(ウルツ鉱型、六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(100)よりも(002)の強度が非常に強くなっている。
また、a軸配向が強い実施例のXRDプロファイルの一例を、図13に示す。この実施例は、Al/(Ti+Al)=0.83(ウルツ鉱型、六方晶)であり、入射角を1度として測定した。この結果からわかるように、この実施例では、(002)よりも(100)の強度が非常に強くなっている。
さらに、この実施例について、入射角を0度として、対称反射測定を実施した。この場合も、やはり(002)よりも(100)の強度が非常に強く、基板面に対して垂直な方向(膜厚方向)に対して、c軸配向よりもa軸配向が強かった。なお、グラフ中(*)は装置由来のピークであり、サンプル本体のピーク、もしくは、不純物相のピークではないことを確認している(なお、対称反射測定において、そのピークが消失していることからも装置由来のピークであることがわかる。)。
なお、比較例のXRDプロファイルの一例を、図14に示す。この比較例は、Al/(Ti+Al)=0.6(NaCl型、立方晶)であり、入射角を1度として測定した。ウルツ鉱型(空間群P6mc(No.186))として指数付けできるピークは検出されておらず、NaCl型単独相であることを確認した。
次に、ウルツ鉱型材料である本発明の実施例に関して、さらに結晶構造と電気特性との相関を詳細に比較した。
表3及び図15に示すように、Al/(Ti+Al)比がほぼ同じ比率のものに対し、基板面に垂直方向の配向度の強い結晶軸がc軸である材料(実施例5,7,8,9)とa軸である材料(実施例19,20,21)とがある。
これら両者を比較すると、Al/(Ti+Al)比が同じであると、a軸配向が強い材料よりもc軸配向が強い材料の方が、B定数が100K程度大きいことがわかる。また、N量(N/(Ti+Al+N))に着目すると、a軸配向が強い材料よりもc軸配向が強い材料の方が、窒素量がわずかに大きいことがわかる。理想的な化学量論比:N/(Ti+Al+N)=0.5であることから、c軸配向が強い材料のほうが、窒素欠陥量が少なく理想的な材料であることがわかる。
<結晶形態の評価>
次に、サーミスタ材料層の断面における結晶形態を示す一例として、熱酸化膜付きSi基板S上に成膜された実施例(Al/(Ti+Al)=0.84,ウルツ鉱型、六方晶、c軸配向性が強い)のサーミスタ材料層における断面SEM写真を、図16に示す。また、別の実施例(Al/(Ti+Al)=0.83,ウルツ鉱型六方晶、a軸配向性が強い)のサーミスタ材料層における断面SEM写真を、図17に示す。
これら実施例のサンプルは、Si基板Sをへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
これらの写真からわかるように、いずれの実施例も高密度な柱状結晶で形成されている。すなわち、c軸配向が強い実施例及びa軸配向が強い実施例の共に基板面に垂直な方向に柱状の結晶が成長している様子が観測されている。なお、柱状結晶の破断は、Si基板Sをへき開破断した際に生じたものである。
<耐熱試験評価>
表4に示す実施例及び比較例において、大気中,125℃,1000hの耐熱試験前後における抵抗値及びB定数を評価した。その結果を表4に示す。なお、比較として従来のTa−Al−N系材料による比較例も同様に評価した。
これらの結果からわかるように、Al濃度及び窒素濃度は異なるものの、Ta−Al−N系である比較例と同じB定数で比較したとき、耐熱試験前後における電気特性変化でみたときの耐熱性は、Ti−Al−N系のほうが優れている。なお、実施例5,8はc軸配向が強い材料であり、実施例21,24はa軸配向が強い材料である。両者を比較すると、c軸配向が強い実施例の方がa軸配向が強い実施例に比べて僅かに耐熱性が向上している。
なお、Ta−Al−N系材料では、Taのイオン半径がTiやAlに比べて非常に大きいため、高濃度Al領域でウルツ鉱型相を作製することができない。TaAlN系がウルツ鉱型相でないがゆえ、ウルツ鉱型相のTi−Al−N系の方が、耐熱性が良好であると考えられる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
1…温度センサ、2…絶縁性基材、3…パターン電極、3a…対向電極部、4…薄膜サーミスタ部、4A…第1サーミスタ層、4B…第2サーミスタ層、5…接合層、6…電極層、S…Si基板(絶縁性基材)

Claims (4)

  1. 絶縁性基材と、
    該絶縁性基材上に互いに対向した一対の対向電極部を有して形成された一対のパターン電極と、
    前記絶縁性基材上に一対の前記対向電極部を覆って形成された薄膜サーミスタ部とを備え、
    該薄膜サーミスタ部が、前記対向電極部の膜厚以上の膜厚であると共にTiAlNのサーミスタ材料で形成された第1サーミスタ層と、該第1サーミスタ層上に積層され前記第1サーミスタ層よりも膜密度の高いTiAlNのサーミスタ材料で形成された第2サーミスタ層とを有していることを特徴とする温度センサ。
  2. 請求項1に記載の温度センサにおいて、
    前記第1サーミスタ層の膜密度が、前記第2サーミスタ層の膜密度の80〜89%であることを特徴とする温度センサ。
  3. 請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
    前記薄膜サーミスタ部が、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする温度センサ。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の温度センサを製造する方法であって、
    前記絶縁性基材上に一対の前記パターン電極をパターン形成する電極形成工程と、
    前記絶縁性基材上に一対の前記対向電極部を覆って前記薄膜サーミスタ部をパターン形成する薄膜サーミスタ部形成工程とを有し、
    該薄膜サーミスタ部形成工程が、前記絶縁性基材上にTi−Al合金スパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って前記第1サーミスタ層及び前記第2サーミスタ層を積層して成膜する成膜工程を有し、
    前記反応性スパッタにおけるスパッタガス圧を、前記第2サーミスタ層を成膜する際に、前記第1サーミスタ層を成膜する際よりも低く設定することを特徴とする温度センサの製造方法。
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