JP2007139530A - 薄型熱電対及びその製造方法 - Google Patents

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憲宗 織本
Yutaka Yagi
裕 八木
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Abstract

【課題】薄膜タイプでありながらも、全体の厚みが一定で、熱電対膜が保護された形態になる薄型熱電対を提供すること。
【解決手段】フィルム状基材1の両面にそれぞれ熱電対膜4,5がエッチングによりパターニングされるとともに、一方の熱電対膜4の端部4aが露出する状態で窓1aが設けられ、その露出した端部4aが窓1aを通して折り返されてもう一方の熱電対膜5の端部と重なり、その重なった部分で端部同士が溶接で接続されており、熱電対膜4,5を覆うようにしてフィルム状基材1の両面にそれぞれ保護層2,3が積層されている。薄型であってかつ全体の厚みが一定なものとなる。また、フィルム状基材1上にパターニングされた熱電対膜4,5が保護層2,3でカバーされた形態になる。
【選択図】図2

Description

本発明は、温度を測定する素子としての熱電対の技術分野に属し、詳しくは、薄膜化を図ったタイプの薄型熱電対及びその製造方法に関するものである。
一般に、温度測定用に作られた2種の金属の組合せからなる素子のことを熱電対と呼んでいる。すなわち、異なる金属材料からなる2本の導線で閉回路を作り、一方の接続点を熱すると閉回路に電流が流れるが、この接続点に生ずる起電力を熱起電力、流れる電流を熱電流と言っており、この起電力が両接続点の温度差に比例するので、熱電対はこれを利用して温度を測定するようにしたものである。
この熱電対としては、線状の導電体を用いたものが一般的であったが、最近では、薄い金属箔を重ね合わせて薄膜化を図ったタイプの薄型熱電対が種々知られている。この薄型熱電対は、熱容量が小さいために測定対象の温度分布を大きく乱すことなく測定することができ、また時間応答性が優れている等の利点を有している。
このような薄型熱電対として特許文献1,2に挙げたようなものが提案されている。このうち特許文献1に記載のものは、ポリイミドフィルム等からなる基板上に金属や合金の薄膜層を設けて熱電対を形成しており、使い方として基板を被温度計測体の一部とすることが記載されている。また、特許文献2に記載のものは、ガラスやセラミックなどの絶縁性基板上に、熱電対を形成する一方の金属薄膜をパターン状に成膜し、もう一方の金属薄膜をパターン形成した後、この薄型熱電対の素子部の保護のためにダイヤモンド薄膜を成膜している。
特開平7−258149号公報 特開平7−218348号公報
上記した特許文献1,2に記載の薄型熱電対は、いずれも薄膜の形成手段としてスパッタリング法、蒸着法等を用いているが、このような薄膜形成プロセスはコストが高いという問題点がある。また、特許文献2に記載のものでは、悪環境下での使用を想定して、熱電対膜の上にダイヤモンド薄膜又は立方晶窒化硼素薄膜からなる表面保護層を設けており、このように、悪環境下でも長時間安定して使用するためには、熱電対膜の形成後に別工程で保護層を形成する必要がある。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄膜タイプでありながらも、全体の厚みが一定で、熱電対膜が保護された形態になる薄型熱電対を提供し、併せてその製造方法を提供することにある。
請求項1に記載の発明である薄型熱電対は、フィルム状基材の両面にそれぞれ熱電対膜がエッチングによりパターニングされるとともに、一方の熱電対膜の端部が露出する状態で窓が設けられ、その露出した端部が窓を通して折り返されてもう一方の熱電対膜の端部と重なり、その重なった部分で端部同士が溶接で接続されており、熱電対膜を覆うようにしてフィルム状基材の両面にそれぞれ保護層が積層されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明である薄型熱電対の製造方法は、請求項1に記載の薄型熱電対を製造する方法であって、フィルム状基材の両面に異なる金属層を積層してなる3層構造の積層体を準備し、その積層体における両面の金属層をエッチングによりそれぞれパターニングしてフィルム状基材の両面に熱電対膜を形成し、そのうちの一方の熱電対膜の端部が露出する状態でフィルム状基材に窓を形成し、次いで、その一方の熱電対膜の露出した端部を窓を通して折り返すことでもう一方の熱電対膜の端部に重ね合わせ、その重なった部分で端部同士を溶接で接続した後、熱電対膜を覆うようにしてフィルム状基材の両面にそれぞれ保護層を積層することを特徴としている。
請求項1に記載の発明である薄型熱電対は、フィルム状基材の両面にそれぞれエッチングによりパターニングされた熱電対膜が設けられ、その熱電対膜を覆うようにしてフィルム状基材の両面にそれぞれ保護層が積層されているので、薄型であってかつ全体の厚みが一定なものとなり、スタックしたり積層したりしても平坦性を保つことができ、これによって使用分野の拡大を図ることが可能となる。また、フィルム状基材上にパターニングされた熱電対膜が保護層でカバーされた形態になるので、使用時において外部環境の影響を受けることがなく、安定した状態で使用することができる。
請求項2に記載の発明である薄型熱電対の製造方法は、フィルム状基材の両面にある金属層をエッチングによりパターニングして熱電対膜を形成し、一方の熱電対膜の端部を折り返してもう一方の熱電対膜の端部に重ね合わせて溶接するだけなので、熱電対膜の形成にスパッタリング法、蒸着法等の薄膜プロセスを使用する方法に比べると、安価に製造することができる。
図1は本発明に係る薄型熱電対の一例を示す斜視図、図2は図1の薄型熱電対を分解状態で示す斜視図である。
図1の薄型熱電対Aは、図2に示すように、ポリイミドフィルムからなるフィルム状基材1とその両面に同じくポリイミドフィルムからなる保護層2,3を積層したもので、平面的には図1の如く細長の短冊状をしている。なお、フィルム状基材1と保護層2,3は電気的に絶縁性であって測定する温度で十分な耐熱性を有し、しかも加工性のよいことが好ましく、ここではこの要求を満たすものとして前述のようにポリイミドフィルムの他にエポキシ系樹脂フィルムを用いることができる。
中央に位置するフィルム状基材1には、その両面にそれぞれコンスタンタンからなる一方の熱電対膜4と銅からなるもう一方の熱電対膜5とがエッチングによりパターニングされている。そして、フィルム状基材1には、一方の熱電対膜4の端部4aが露出する状態で窓1aが設けられており、その露出した端部4aが窓1aを通して折り返されてもう一方の熱電対膜5の端部と重ね合わせられ、その重なった部分で端部同士が溶接で接続されている。この接続部分6が薄型熱電対Aの温度検知部となるところである。
また、これらの熱電対膜4,5は、接続部分6と反対側では逆向きのクランク状にパターニングされ、それらの端部が互いに離れたところに位置しており、フィルム基材1にはこれら熱電対膜4,5における反対側の端部付近がそれぞれ露出する状態で窓1b,1cが設けられている。
そして、溶接で端部同士が接続された熱電対膜4,5を覆うようにしてフィルム基材1の両面にそれぞれ保護層2,3が積層されている。これらの保護層2,3には、温度検知部となる接続部分6を露出させるために、フィルム基材の窓1aと同じ位置にそれぞれ窓2a,3aが設けられている。特に窓3aは接続部分6を露出するための切欠部3a’を有している。さらに、熱電対膜4,5の外部接続部分を設けるために、フィルム基材1の窓1b,1cと同じ位置にそれぞれ窓2b,2cと窓3b,3cとが設けられている。なお、温度検知部分を保護するため、保護層2,3の窓2a,3a(3a’)を設けず、接続部分6を被覆する形態も採りえる。
このように図1の薄型熱電対Aは、ポリイミドフィルムの両面にエッチングによりパターニングされた熱電対膜4,5があり、さらに保護層のポリイミドフィルムで挟まれた構造になっているので、薄くかつ強靱な機械強度を有することができ、例えば燃料電池のスタック等の隙間に差し込んでの測定に好適である。
次に、この薄型熱電対の製造手順について図3,4を参照しながら説明する。なお、図3,4では一つの薄型熱電対の製造工程を図示しているが、実際には多面付けで製造した後、個々の薄型熱電対に切断するものである。
まず、図3(a)に示すように、フィルム状基材11の両面に異なる金属層12,13を積層してなる3層構造の積層体10を準備する。具体的には、ポリイミドフィルムの両面にそれぞれ銅箔(表面側)とコンスタンタン箔(裏面側)をラミネートした積層体を準備する。なお、異なる金属の組合せとしては、従来より熱電対として用いられているものを使用できる。例えば、銅−コンスタンタンの他に、クロメル−アンメル、鉄−コンスタンタン、クロメル−コンスタンタン、ナイクロシル−ナイシル、Pt−RhPt等が挙げられる。
そして、積層体10における両面の金属層12,13をエッチングによりそれぞれパターニングすることにより、図3(b)に示すように、フィルム状基材11の両面にそれぞれ熱電対膜14,15を形成する。このエッチングによるパターニングには通常フォトエッチングが用いられ、具体的には、積層体10の両面にフォトレジストを塗布し、形成すべき熱電対膜の部分を残した形状で両面のフォトレジストをそれぞれパターニングした後、両面の不要部分をそれぞれのエッチング液で除去することで熱電対膜14,15をパターニングする。エッチングによるパターニングの他の方法としては、フォトレジストに代えてレジストをスクリーン印刷した後、エッチングする方法もある。
次に、図3(c)に示すように、一方の熱電対膜14の端部14aが露出する状態でフィルム状基材11に窓11aを形成するとともに、両方の熱電対膜14,15における反対側の端部付近がそれぞれ露出する状態で窓11b,11cを形成する。ここでは、フィルム状基材11にポリイミドフィルムを用いているため、所定部分をプラズマエッチング又はウェットエッチングにより除去することで窓11a,11b,11cを形成することができる。ウェットエッチングとしては、エタノールアミン、KOH、NaOHなどのアルカリ水溶液が用いられる。
次いで、図3(d)に示すように、熱電対膜14の露出した端部14aを窓11aを通して折り返すことでもう一方の熱電対膜15の端部に重ね合わせ、その重なった部分で端部同士を溶接で接続することで、温度検知部となる接続部分16を形成する。溶接は電気スポット溶接、レーザースポット溶接を用いることができる。
続いて、図4(a)に示すように、熱電対膜14,15を覆うようにしてフィルム状基材11の両面にそれぞれ保護層17,18を積層する。これらの保護層17,18には、温度検知部となる接続部分16と熱電対膜14,15の外部接続部分となる部位とを露出させるため、予めフィルム基材11の窓11a,11b,11cと同じ位置にそれぞれ窓17a,17b,17cと窓18a,18b,18cとを開けておく。特に窓18aは温度検知部となる接続部分16を露出するための切欠部18a’を有している。これらの窓の形成手段は前記したのと同じである。以上の手順により図4(b)に示す薄型熱電対(図1と同じもの)が作製される。
なお、上記の例では、保護層17,18に窓17a,18aを設け、熱電対の温度検知部分を露出させたが、このような窓は必ずしも必要ではない。つまり、温度検知部分を保護するため、窓17a,18a(18a’)を設けずに被覆するようにしてもよい。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による薄型熱電対及びその製造方法は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
本発明に係る薄型熱電対の一例を示す平面図である。 図1の薄型熱電対を分解状態で示す斜視図である。 図1及び図2に示す薄型熱電対の製造工程を示す説明図である。 図3に続く製造工程を示す説明図である。
符号の説明
A 薄型熱電対
1 フィルム状基材
1a,1b,1c 窓
2 保護層
2a,2b,2c 窓
3 保護層
3a,3b,3c 窓
3a’切欠部
4 熱電対膜
4a 端部
5 熱電対膜
6 接続部分
10 積層体
11 フィルム状基材
11a,11b,11c 窓
12,13 金属層
14 熱電対膜
14a 端部
15 熱電対膜
16 接続部分
17 保護層
17a,17b,17c 窓
18 保護層
18a,18b,18c 窓
18a’切欠部

Claims (2)

  1. フィルム状基材の両面にそれぞれ熱電対膜がエッチングによりパターニングされるとともに、一方の熱電対膜の端部が露出する状態で窓が設けられ、その露出した端部が窓を通して折り返されてもう一方の熱電対膜の端部と重なり、その重なった部分で端部同士が溶接で接続されており、熱電対膜を覆うようにしてフィルム状基材の両面にそれぞれ保護層が積層されていることを特徴とする薄型熱電対。
  2. 請求項1に記載の薄型熱電対を製造する方法であって、フィルム状基材の両面に異なる金属層を積層してなる3層構造の積層体を準備し、その積層体における両面の金属層をエッチングによりそれぞれパターニングしてフィルム状基材の両面に熱電対膜を形成し、そのうちの一方の熱電対膜の端部が露出する状態でフィルム状基材に窓を形成し、次いで、その一方の熱電対膜の露出した端部を窓を通して折り返すことでもう一方の熱電対膜の端部に重ね合わせ、その重なった部分で端部同士を溶接で接続した後、熱電対膜を覆うようにしてフィルム状基材の両面にそれぞれ保護層を積層することを特徴とする薄型熱電対の製造方法。
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