JP2014114906A - 車両用動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 車両用動力伝達装置の出力軸の外周の並置された複数のワンウェイクラッチの潤滑性能を確保する。
【解決手段】 入力軸11の回転をコネクティングロッド19およびワンウェイクラッチ21を介して出力軸12に伝達する複数の動力伝達ユニットUを軸方向に並置する。軸方向に隣接する二つのワンウェイクラッチ21の一方のアウター部材22の第1側面22dと他方のアウター部材22の第2側面22eとはクリアランスαを介して相互に対向し、第2側面22eから第1側面22dに向かってクリアランスα内に環状凸部42が突出してラビリンスβを構成するので、クリアランスαに保持されたオイルに遠心力が作用しても、そのオイルの流出をラビリンスβにより阻止してワンウェイクラッチ21の潤滑性能を確保することができる。
【選択図】 図9
【解決手段】 入力軸11の回転をコネクティングロッド19およびワンウェイクラッチ21を介して出力軸12に伝達する複数の動力伝達ユニットUを軸方向に並置する。軸方向に隣接する二つのワンウェイクラッチ21の一方のアウター部材22の第1側面22dと他方のアウター部材22の第2側面22eとはクリアランスαを介して相互に対向し、第2側面22eから第1側面22dに向かってクリアランスα内に環状凸部42が突出してラビリンスβを構成するので、クリアランスαに保持されたオイルに遠心力が作用しても、そのオイルの流出をラビリンスβにより阻止してワンウェイクラッチ21の潤滑性能を確保することができる。
【選択図】 図9
Description
本発明は、駆動源に接続された入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する複数の動力伝達ユニットを軸方向に並置し、前記動力伝達ユニットの各々は、前記入力軸の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸と共に回転する入力側支点と、前記出力軸に接続されたワンウェイクラッチと、前記ワンウェイクラッチの前記アウター部材に設けた出力側支点と、前記入力側支点および前記出力側支点を接続するコネクティングロッドとを備える車両用動力伝達装置に関する。
エンジンに接続された入力軸の回転をコネクティングロッドの往復運動に変換し、コネクティングロッドの往復運動をワンウェイクラッチによって出力軸の回転運動に変換する複数の動力伝達ユニットを軸方向に並置した無段変速機が、下記特許文献1により公知である。
ところで、かかる無段変速機の複数の動力伝達ユニットはミッションケース内に飛散したオイルにより潤滑される。出力軸の外周には複数の動力伝達ユニットのワンウェイクラッチが所定のクリアランスを介して軸方向に並置されており、このクリアランスに保持されたオイルによりワンウェイクラッチが潤滑される。しかしながらワンウェイクラッチのアウター部材およびインナー部材が回転すると、クリアランスに保持されたオイルが遠心力で流出してしまい、ワンウェイクラッチの潤滑が不充分になる可能性があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両用動力伝達装置の出力軸の外周に並置された複数のワンウェイクラッチの潤滑性能を確保することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動源に接続された入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する複数の動力伝達ユニットを軸方向に並置し、前記動力伝達ユニットの各々は、前記入力軸の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸と共に回転する入力側支点と、前記出力軸に接続されたワンウェイクラッチと、前記ワンウェイクラッチの前記アウター部材に設けた出力側支点と、前記入力側支点および前記出力側支点を接続するコネクティングロッドとを備える車両用動力伝達装置であって、軸方向に隣接する二つの前記ワンウェイクラッチの一方の前記アウター部材の第1側面と他方の前記アウター部材の第2側面とはクリアランスを介して相互に対向し、前記第2側面から前記第1側面に向かって前記クリアランス内に環状凸部が突出することを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第1側面には第1環状凹部が形成され、前記環状凸部の少なくとも一部は前記第1環状凹部内に嵌合することを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記アウター部材の前記第2側面には第2環状凹部が形成され、前記環状凸部は前記第2環状凹部に圧入されたカラーで構成され、軸方向端部に位置する前記動力伝達ユニットの前記アウター部材の前記第2側面は前記出力軸を支持するベアリングに対向し、前記ベアリングに対向する前記第2側面の前記第2環状凹部には前記カラーが圧入されないことを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
尚、実施の形態の偏心ディスク18は本発明の入力側支点に対応し、実施の形態のピン19cは本発明の出力側支点に対応し、実施の形態のボールベアリング41は本発明のベアリングに対応し、実施の形態のカラー42は本発明の環状凸部に対応し、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応する。
請求項1の構成によれば、車両用動力伝達装置の複数の動力伝達ユニットは、入力軸の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸と共に回転する入力側支点と、ワンウェイクラッチのアウター部材に設けた出力側支点とをコネクティングロッドで接続し、ワンウェイクラッチのインナー部材を出力軸に接続したので、入力軸が回転してコネクティングロッドが往復運動すると、ワンウェイクラッチが間欠的に係合して出力軸が回転することで駆動力が伝達される。
軸方向に隣接する二つのワンウェイクラッチの一方のアウター部材の第1側面と他方のアウター部材の第2側面とはクリアランスを介して相互に対向し、第2側面から第1側面に向かってクリアランス内に環状凸部が突出してラビリンスを構成するので、クリアランスに保持されたオイルに遠心力が作用しても、そのオイルの流出をラビリンスにより阻止してワンウェイクラッチの潤滑性能を確保することができる。
また請求項2の構成によれば、第1側面には第1環状凹部が形成され、環状凸部の少なくとも一部は第1環状凹部内に嵌合するので、環状凸部および第1環状凹部により複雑なラビリンスが形成されてオイルの保持効果が更に高められる。
また請求項3の構成によれば、軸方向端部に位置する動力伝達ユニットのアウター部材の第2側面は出力軸を支持するベアリングに対向するので、ベアリングとの干渉を避けるために前記第2側面には環状凸部を設けることができない。各々のアウター部材の第2側面には第2環状凹部が形成され、環状凸部は第2環状凹部に圧入されたカラーで構成されるが、ベアリングに対向する第2側面の第2環状凹部だけにはカラーが圧入されないので、ベアリングに対向するアウター部材とベアリングに対向しないアウター部材とを互換可能な同一部材で構成し、部品の種類を削減してコストダウンに寄与することができる。
以下、図1〜図13に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、エンジンEの駆動力を左右の車軸10,10を介して駆動輪W,Wに伝達する車両用動力伝達装置は、クランク式の無段変速機TおよびディファレンシャルギヤDを備える。
次に、図2〜図6に基づいて無段変速機Tの構造を説明する。
図2および図3に示すように、本実施の形態の無段変速機Tは同一構造を有する複数個(実施の形態では4個)の動力伝達ユニットU…を軸方向に重ね合わせたもので、それらの動力伝達ユニットU…は平行に配置された共通の入力軸11および共通の出力軸12を備えており、入力軸11の回転が減速または増速されて出力軸12に伝達される。
以下、代表として一つの動力伝達ユニットUの構造を説明する。エンジンEに接続されて回転する入力軸11は、電動モータのような変速アクチュエータ14の中空の回転軸14aの内部を相対回転自在に貫通する。変速アクチュエータ14のロータ14bは回転軸14aに固定されており、ステータ14cはケーシングに固定される。変速アクチュエータ14の回転軸14aは、入力軸11と同速度で回転可能であり、かつ入力軸11に対して異なる速度で相対回転可能である。
変速アクチュエータ14の回転軸14aを貫通した入力軸11には第1ピニオン15が固定されており、この第1ピニオン15を跨ぐように変速アクチュエータ14の回転軸14aにクランク状のキャリヤ16が接続される。第1ピニオン15と同径の2個の第2ピニオン17,17が、第1ピニオン15と協働して正三角形を構成する位置にそれぞれピニオンピン16a,16aを介して支持されており、これら第1ピニオン15および第2ピニオン17,17に、円板形の偏心ディスク18の内部に偏心して形成されたリングギヤ18aが噛合する。偏心ディスク18の外周面に、コネクティングロッド19のロッド部19aの一端に設けたリング部19bがボールベアリング20を介して相対回転自在に嵌合する。
出力軸12の外周に設けられたワンウェイクラッチ21は、コネクティングロッド19のロッド部19aにピン19cを介して枢支されたリング状のアウター部材22と、アウター部材22の内部に配置されて出力軸12に固定されたインナー部材23と、アウター部材22とインナー部材23との間に形成された楔状の空間に配置されてエンゲージスプリング24…で付勢されたローラ25…とを備える。尚、ワンウェイクラッチ21の具体的な構造は後から詳述する。
図2から明らかなように、4個の動力伝達ユニットU…はクランク状のキャリヤ16を共有しているが、キャリヤ16に第2ピニオン17,17を介して支持される偏心ディスク18の位相は各々の動力伝達ユニットUで90°ずつ異なっている。例えば、図2において、左端の動力伝達ユニットUの偏心ディスク18は入力軸11に対して図中上方に変位し、左から3番目の動力伝達ユニットUの偏心ディスク18は入力軸11に対して図中下方に変位し、左から2番目および4番目の動力伝達ユニットU,Uの偏心ディスク18,18は上下方向中間に位置している。
次に、図7〜図10に基づいて、ワンウェイクラッチ21の構造を説明する。尚、図3〜図6においてワンウェイクラッチ21は模式的に図示されており、その実際の構造は図7〜図10に示されている。
本実施の形態のワンウェイクラッチ21は、基本的に環状のアウター部材22の円形の内周面22aと、筒状のインナー部材23の波状に屈曲する外周面23aとの間に12個のローラ25…を配置したものであり、アウター部材22の外周に設けた突出部22b,22bにピン19cおよびクリップ40,40を介してコネクティングロッド19が接続され、インナー部材23の内周部には出力軸12が相対回転不能に結合される。
ワンウェイクラッチ21は、ローラ25…を付勢するエンゲージスプリング24…を支持するためのケージ31を備える。ケージ31は円環状の板材からなる一対の環状部材32,32と、周方向に等間隔で配置されて一対の環状部32,32を相互に接続する12本のスプリング支持ロッド33…とで構成され、一対の環状部材32,32が12個のローラ25…の軸方向両側に配置され、12本のスプリング支持ロッド33…が12個のローラ25…間に配置される。環状部材32の内周部は波状に形成されており、それがインナー部材23の波状の外周面23aに凹凸係合することで、ケージ31はインナー部材23に相対回転不能に結合される。
エンゲージスプリング24は1枚の弾性板材を断面S字状に屈曲させたもので、その一端側がケージ31のスプリング支持ロッド33に溶接等で固定され、他端側には4本の平行な切り込み24a…により分割された5個の付勢部24b…が形成される。
またアウター部材22およびインナー部材23の間には、ローラ25…の軸方向両側に位置する一対のボールベアリング34,34が配置されており、このボールベアリング34,34によってアウター部材22およびインナー部材23が同芯状態を維持しながら相対回転可能に接続される。ボールベアリング34は外輪35および内輪36間に複数のボール37…を配置したものであり、外輪35はアウター部材22の軸方向端部に一体に形成され、内輪36は別部材で構成されてインナー部材23の外周に固定される。尚、ボールベアリング34…には複列ものと単列のものとがあり、4個のワンウェイクラッチ21…の軸方向両端に位置する2個のボールベアリング34,34は単列であり、それ以外の3個ボールベアリング34…は隣接する2個のワンウェイクラッチ21,21に共有されるために複列となる。
一方のボールベアリング34と、ケージ31の一方の環状部材32との間にアキシャルスプリング38が配置されており、アキシャルスプリング38の内周から突出する複数の突起38a…が、前記環状部材32の内周の凹部32a…間を通過してローラ25…の端面に弾発的に当接する。またアウター部材22の内周面に形成した環状溝22cに環状のリングスプリング39が配置されており、このリングスプリング39はローラ25…の周面に当接してインナー部材23の外周面23aに向けて付勢する。
出力軸12の両端部は一対のボールベアリング41,41を介してミッションケースに回転自在に支持されておれり、それらのボールベアリング41,41のインナーレース41a,41a間に4個のワンウェイクラッチ21…が配置される(図9参照)。ワンウェイクラッチ21のアウター部材22は右側の第1側面22dに浅い第1環状凹部22fを備えるとともに、左側の第2側面22eに深い第2環状凹部22gを備える。4個のワンウェイクラッチ21…の4個のアウター部材22…のうち、最も左側のアウター部材22を除く3個のアウター部材22…の第2側面22e…の第2環状凹部22g…には、それぞれ本発明の環状凸部を構成する環状のカラー42…が圧入により固定される(図7および図9参照)。カラー42の先端は、そのカラー42が圧入されたアウター部材22の第2側面22eに対向する隣のアウター部材22の第1側面22dの第1環状凹部22fに隙間を有して嵌合する。その結果、カラー42および第1環状凹部22f間にはラビリンスβ(図9の円内参照)が構成される。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
先ず、無段変速機Tの一つの動力伝達ユニットUの作用を説明する。変速アクチュエータ14の回転軸14aを入力軸11に対して相対回転させると、入力軸11の軸線L1まわりにキャリヤ16が回転する。このとき、キャリヤ16の中心O、つまり第1ピニオン15および2個の第2ピニオン17,17が成す正三角形の中心は入力軸11の軸線L1まわりに回転する。
図3および図5は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり入力軸11)に対して出力軸12と反対側にある状態を示しており、このとき入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量が最大になって無段変速機TのレシオはTOP状態になる。図4および図6は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり入力軸11)に対して出力軸12と同じ側にある状態を示しており、このとき入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量が最小になって無段変速機TのレシオはLOW状態になる。
図5に示すTOP状態で、エンジンEで入力軸11を回転させるとともに、入力軸11と同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、入力軸11、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17,17および偏心ディスク18が一体になった状態で、入力軸11を中心に反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。図5(A)から図5(B)を経て図5(C)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをボールベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、そのロッド部19aの先端にピン19cで枢支されたアウター部材22を反時計方向(矢印B参照)に回転させる。図5(A)および図5(C)は、アウター部材22の前記矢印B方向の回転の両端を示している。
このようにしてアウター部材22が矢印B方向に回転すると、ワンウェイクラッチ21のアウター部材22およびインナー部材23間の楔状の空間にローラ25…が噛み込み、アウター部材22の回転がインナー部材23を介して出力軸12に伝達されるため、出力軸12は反時計方向(矢印C参照)に回転する。
入力軸11および第1ピニオン15が更に回転すると、第1ピニオン15および第2ピニオン17,17にリングギヤ18aを噛合させた偏心ディスク18が反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。図5(C)から図5(D)を経て図5(A)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをボールベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、そのロッド部19aの先端にピン19cで枢支されたアウター部材22を時計方向(矢印B′参照)に回転させる。図5(C)および図5(A)は、アウター部材22の前記矢印B′方向の回転の両端を示している。
このようにしてアウター部材22が矢印B′方向に回転すると、アウター部材22とインナー部材23との間の楔状の空間からローラ25…がスプリング24…を圧縮しながら押し出されることで、アウター部材22がインナー部材23に対してスリップして出力軸12は回転しない。
以上のように、アウター部材22が往復回転したとき、アウター部材22の回転方向が反時計方向(矢印B参照)のときだけ出力軸12が反時計方向(矢印C参照)に回転するため、出力軸12は間欠回転することになる。
図6は、LOW状態で無段変速機Tを運転するときの作用を示すものである。このとき、入力軸11の位置は偏心ディスク18の中心に一致しているので、入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量はゼロになる。この状態でエンジンEで入力軸11を回転させるとともに、入力軸11と同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、入力軸11、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17,17および偏心ディスク18が一体になった状態で、入力軸11を中心に反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。しかしながら、偏心ディスク18の偏心量がゼロであるため、コネクティングロッド19の往復運動のストロークもゼロになり、出力軸12は回転しない。
従って、変速アクチュエータ14を駆動してキャリヤ16の位置を図3のTOP状態と図4のLOW状態との間に設定すれば、ゼロレシオおよび所定レシオ間の任意のレシオでの運転が可能になる。
無段変速機Tは、並置された4個の動力伝達ユニットU…の偏心ディスク18…の位相が相互に90°ずつずれているため、4個の動力伝達ユニットU…が交互に駆動力を伝達することで、つまり4個のワンウェイクラッチ21…の何れかが必ず係合状態にあることで、出力軸12を連続回転させることができる。
次に、ワンウェイクラッチ21の作用を説明する。
図12はワンウェイクラッチ21のDP(Datum Point)状態、つまりワンウェイクラッチ21が係合する直前の状態を示すものである。DP状態ではエンゲージスプリング24の5個の付勢部24b…のうちの軸方向外側の2個の付勢部24b,24bがローラ25の外周面に当接し、ローラ25をアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間に噛み込む方向に付勢する。このとき、ワンウェイクラッチ21は未だ係合しておらず、ローラ25…はアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23aに噛み込まずに接触している。
この状態からインナー部材23に対してアウター部材22が矢印A方向に相対回転すると、ローラ25はエンゲージスプリング24から受ける付勢力と、アウター部材22およびインナー部材23から受ける摩擦力とにより、矢印A方向に移動してアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間の楔状の空間に噛み込むことで、図11に示すようにワンウェイクラッチ21が係合する。
図11に示すワンウェイクラッチ21の係合状態から、インナー部材23に対してアウター部材22が矢印B方向に相対回転すると、アウター部材22およびインナー部材23から受ける摩擦力により、ローラ25はエンゲージスプリング24から受ける付勢力に抗して矢印B方向に移動し、アウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間の楔状の空間から離脱することで、図13に示すようにワンウェイクラッチ21が係合解除する。この状態をダンピング状態と呼び、ローラ25はエンゲージスプリング24の全ての付勢部24b…を圧縮しながら矢印B方向に回転し、ローラ25はアウター部材22の内周面22aあるいはインナー部材23の外周面23aから離反する。その後、ローラ25はエンゲージスプリング24により付勢されて図12に示すDP状態に速やかに復帰する。
尚、係合状態からダンピング状態に移行する過程でローラ25がアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間の楔状の空間から押し出されるとき、アキシャルスプリング38で軸方向に付勢されたローラ25の端面がケージ31の環状部材32に押し付けられるため、その摩擦力でローラ25の挙動を安定させることができる。またローラ25がアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間の楔状の空間から押し出されるとき、ローラ25は遠心力で径方向外側に位置するアウター部材22の内周面に押し付けられるが、それをリングスプリング39の径方向内向きの弾発力で抑制することができる。
ところで、動力伝達ユニットU…はミッションケースの内部に収納されており、そのワンウェイクラッチ21…はミッションケースの内部で攪拌により撥ね上げられたオイルで潤滑される。特に、ワンウェイクラッチ21…のローラ25…の周辺やボールベアリング34…の周辺は、隣接するアウター部材22…の第1側面22d…および第2側面22e…間の隙間α(図9参照)に浸入したオイルで潤滑される。このとき、アウター部材22…はコネクティングロッド19…により往復回動するため、隙間αに浸入したオイルが遠心力で径方向外側に排出されてしまい、ローラ25…やボールベアリング34…の潤滑が不十分になる可能性がある。
しかしながら、本実施の形態によれば、隣接する2個のアウター部材22,22の第1側面22dおよび第2側面22eの対向部において、第1側面22dの第1環状凹部22fに圧入したカラー42が第2側面22eの第2環状凹部22g内に小さい隙間を介して嵌合するため、そこにラビリンスβが形成される。その結果、ローラ25…やボールベアリング34…の周囲に溜まったオイルはラビリンスβに保持されて遠心力で径方向外側に流出することが阻止され、ワンウェイクラッチ21を充分な量のオイルで潤滑することができる。
また図9における図中左端のワンウェイクラッチ21のアウター部材22の第2側面22eは、左側のボールベアリング41に右側面に僅かな隙間を存して対向するため、その第2側面22eの第2環状凹部22gにはカラー42が圧入されない。このとき、仮にカラー42がアウター部材22と一体に形成されていると、左端のワンウェイクラッチ21のアウター部材22だけをカラーが形成されていない別部材とすることが必要になり、部品の種類が増加してコストアップの要因となる問題がある。しかしながら.本実施の形態によれば、カラー42をアウター部材22と別部材で構成して圧入により一体化するので、カラーを有するアウター部材22およびカラーを有しないアウター部材22の2種類の部品を製造する必要がなくなってコストダウンに寄与することができる。
尚、出力軸12を支持する一対のボールベアリング41,41のうち、右側のボールベアリングには右端のワンウェイクラッチ21のアウター部材22の第1側面22dが対向するが、その第1側面22dの第1環状凹部22fには元々カラー42が圧入されないため、そのカラー42が右側のボールベアリング41と干渉することはない。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態の無段変速機Tは4個の動力伝達ユニットUを備えているが、動力伝達ユニットUの数は4個に限定されるものではない。
また本発明のベアリングは実施の形態のボールベアリング41に限定されず、ローラベアリングやニードルベアリング等の任意の種類のベアリングであっても良い。
また実施の形態ではワンウェイクラッチ21のインナー部材23が出力軸12と別部材で構成されているが、インナー部材23をそのまま出力軸12として用いても良い。
またワンウェイクラッチ21のローラ25の数やエンゲージスプリング24の数は実施の形態に限定されるものではない。
11 入力軸
12 出力軸
18 偏心ディスク(入力側支点)
19 コネクティングロッド
19c ピン(出力側支点)
21 ワンウェイクラッチ
22 アウター部材
22d 第1側面
22e 第2側面
22f 第1環状凹部
22g 第2環状凹部
41 ボールベアリング(ベアリング)
42 カラー(環状凸部)
E エンジン(駆動源)
U 動力伝達ユニット
α クリアランス
12 出力軸
18 偏心ディスク(入力側支点)
19 コネクティングロッド
19c ピン(出力側支点)
21 ワンウェイクラッチ
22 アウター部材
22d 第1側面
22e 第2側面
22f 第1環状凹部
22g 第2環状凹部
41 ボールベアリング(ベアリング)
42 カラー(環状凸部)
E エンジン(駆動源)
U 動力伝達ユニット
α クリアランス
Claims (3)
- 駆動源(E)に接続された入力軸(11)の回転を変速して出力軸(12)に伝達する複数の動力伝達ユニット(U)を軸方向に並置し、
前記動力伝達ユニット(U)の各々は、前記入力軸(11)の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸(11)と共に回転する入力側支点(18)と、前記出力軸(12)に接続されたワンウェイクラッチ(21)と、前記ワンウェイクラッチ(21)のアウター部材(22)に設けた出力側支点(19c)と、前記入力側支点(18)および前記出力側支点(19c)を接続するコネクティングロッド(19)とを備える車両用動力伝達装置であって、
軸方向に隣接する二つの前記ワンウェイクラッチ(21)の一方の前記アウター部材(22)の第1側面(22d)と他方の前記アウター部材(22)の第2側面(22e)とはクリアランス(α)を介して相互に対向し、前記第2側面(22e)から前記第1側面(22d)に向かって前記クリアランス(α)内に環状凸部(42)が突出することを特徴とする車両用動力伝達装置。 - 前記第1側面(22d)には第1環状凹部(22f)が形成され、前記環状凸部(42)の少なくとも一部は前記第1環状凹部(22f)内に嵌合することを特徴とする、請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
- 前記アウター部材(22)の前記第2側面(22e)には第2環状凹部(22g)が形成され、前記環状凸部は前記第2環状凹部(22g)に圧入されたカラー(42)で構成され、軸方向端部に位置する前記動力伝達ユニット(U)の前記アウター部材(22)の前記第2側面(22e)は前記出力軸(12)を支持するベアリング(41)に対向し、前記ベアリング(41)に対向する前記第2側面(22e)の前記第2環状凹部(22g)には前記カラー(42)が圧入されないことを特徴とする、請求項2に記載の車両用動力伝達装置。
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JP2012270310A JP2014114906A (ja) | 2012-12-11 | 2012-12-11 | 車両用動力伝達装置 |
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JP2012270310A JP2014114906A (ja) | 2012-12-11 | 2012-12-11 | 車両用動力伝達装置 |
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