JP6026350B2 - 無段変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、クランク式無段変速機の潤滑構造に関する。
例えば、特許文献1には、クランク式無段変速機の揺動リンク18の揺動範囲の最も入力軸に近づく位置を内死点、最も入力軸から離れる位置を外死点として、内死点と外死点とを結ぶ揺動軌跡の中心位置で、揺動リンク18の揺動端部18a又はこれに連結されたコネクティングロッド15の端部に上方から潤滑油を供給する吐出孔21aを設けた構成が記載されている。
特開2012−251611号公報
上記特許文献1では、潤滑油を供給するための油路パイプ21を設ける必要があり、部品点数増やコスト増を招く。
また、図11に示すクランク式無段変速機において、コネクティングロッド19におけるワンウェイクラッチ21と連結される小径環状のロッド部19aは、常に揺動運動し、大きな負荷も印加されるため適切に給油し、潤滑することが重要である。よって、コネクティングロッド19のロッド部19aをワンウェイクラッチ21の下部に配置し、入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量はゼロになるギヤードニュートラル(GN)状態において油面Q3を、ワンウェイクラッチ21のアウター部材22の内周面22aよりも下方かつ連結ピン19cよりも上方となるように設定することで、コネクティングロッド19のロッド部19aの摺動面への潤滑を確保しつつ、アウター部材22の内周面22aの油膜形成によるローラ25の係合不良を防止することができる。
しかしながら、実際には油面を設定できる範囲はかなり狭いため、うまく設定できたとしても、ロッド部19aによる潤滑油の掻き上げにより油面が大きく変動する。また、登坂走行や降坂走行のように車体の傾斜による油面変動が大きい場合にも同様のことが言える。
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、ワンウェイクラッチが連結されるコネクティングロッドの連結部部への潤滑を確保しつつ、ワンウェイクラッチのアウター部材の内周面の油膜形成によるワンウェイクラッチの係合不良を防止することができる潤滑構造を実現することである。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る第1の形態は、駆動源(1)に接続された入力軸(11)の回転を変速して出力軸(12)に伝達する無段変速機(3)であって、前記入力軸(11)の軸線(L1)からの偏心量が可変であって、当該入力軸(11)と共に回転する偏心部材(18)と、前記偏心部材(18)の偏心量を変化させるアクチュエータ(14)と、アウター部材(22)と、前記アウター部材(22)の内周に同軸に配置されたインナー部材(23)と、前記アウター部材(22)の内周面(22a)および前記インナー部材(23)の外周面(23a)の間に配置された複数のローラ(25)とを備え、前記アウター部材(22)と前記インナー部材(23)の所定方向への相対回転により、前記ローラ(25)を前記アウター部材(22)の内周面(22a)と前記インナー部材(23)の外周面(23a)の間に係合させて駆動力を伝達するワンウェイクラッチ(21)と、前記ワンウェイクラッチ(21)に連結される環状の連結部(19a)を有し、前記偏心部材(18)の回転を前記ワンウェイクラッチに伝達するコネクティングロッド(19)と、前記コネクティングロッド(19)の連結部(19a)と前記ワンウェイクラッチ(21)の連結部(22b)に挿通されて、前記コネクティングロッド(19)と前記ワンウェイクラッチ(21)とを連結する連結ピン(19c)と、を備え、前記アウター部材(22)には、前記アウター部材(22)の内周面(22a)から外周側に貫通する第1の貫通孔(22d)が形成され、前記コネクティングロッドの連結部(19c)には、当該連結部(19c)の内周面から外周側に貫通する第2の貫通孔(19d)が形成され、前記入力軸(11)の軸線(L1)からの偏心量がゼロのときに前記第1の貫通孔(22d)の外周側の開口部(22d1)と前記第2の貫通孔の外周側の開口部(19d1)とが少なくとも一部でオーバーラップする。
また、本発明に係る第2の形態は、上記第1の形態において、前記入力軸(11)の軸線(L1)からの偏心量がゼロのときに前記第1の貫通孔(22d)の外周側の開口部(22d1)と前記第2の貫通孔の外周側の開口部(19d1)とが全体にわたってオーバーラップする。
また、本発明に係る第3の形態は、上記第1または第2のの形態において、前記第1の貫通孔(22d)の内周側の開口部(22d2)は、前記アウター部材(22)の内周面(22a)に形成された溝部(22e)内に設けられ、前記溝部(22e)は、前記ローラ(25)が前記第1の貫通孔(22d)の内周側の開口部(22d2)を覆う位置にあるときに、前記ローラ(25)が前記アウター部材(22)の内周面(22a)に当接する領域から少なくとも一部が外れるように形成されている。
また、本発明に係る第4の形態は、上記第1ないし第3の形態のいずれかにおいて、前記出力軸(12)の中空内部において軸方向に延びる油路(51)と、前記油路の端部(12a)に潤滑油を供給する供給手段(53)と、をさらに備える。
また、本発明に係る第5の形態は、上記第1ないし第4の形態のいずれかにおいて、前記コネクティングロッド(19)の連結部(19c)は、前記アウター部材(22)の下部に位置するように前記アウター部材(22)の連結部(22b)に連結され、前記無段変速機(3)のケーシングの底部に貯留した潤滑油の油面(Q1)は、前記コネクティングロッド(19)の連結部(19c)が最下部に位置したときの高さ(Q2)よりも下方に位置するように設定される。
本発明によれば、ワンウェイクラッチが連結されるコネクティングロッドの環状の連結部への潤滑を確保しつつ、ワンウェイクラッチのアウター部材の内周面の油膜形成によるワンウェイクラッチの係合不良を防止することができる。
詳しくは、本発明に係る第1の形態によれば、ギヤードニュートラル(GN)状態におけるワンウェイクラッチ(21)とコネクティングロッド(19)との相対的な位置関係は、いかなるレシオであっても入力軸(11)が1回転するごとに2回のGN状態を経由して揺動運動するため、確実にアウター部材(22)からコネクティングロッド(19)の連結部(19c)への給油経路が確保できる。
また、本発明に係る第2の形態によれば、アウター部材(22)からコネクティングロッド(19)の連結部(19a)への給油経路を最も大きくして、潤滑油を供給できる。
また、本発明に係る第3の形態によれば、アウター部材(22)の内周面(22a)におけるローラ(25)の位置に関わらず給油経路を確保できる。
また、本発明に係る第4の形態によれば、変速機のケーシング内での油面変動に関わらず、コネクティングロッド(19)の連結部(19a)へ潤滑油を供給できる。
また、本発明に係る第5の形態によれば、コネクティングロッド(19)の連結部(19a)への潤滑油を出力軸(12)の油路(51)からのみ供給し、コネクティングロッド(19)やワンウェイクラッチ(21)が油面に接触することによるフリクション抵抗を低減することができる。
本実施形態の無段変速機が搭載される自動車のパワートレインの構成図。 本実施形態の無段変速機の構造を示す図。 本実施形態の無段変速機のTOP状態の動作を示す図。 本実施形態の無段変速機のLOW状態の動作を示す図。 本実施形態の無段変速機に搭載されるワンウェイクラッチの分解斜視図。 本実施形態のワンウェイクラッチの状態変化を示す図。 図2のI部の詳細断面図。 本実施形態のワンウェイクラッチのアウター部材からコネクティングロッド部へ潤滑油を供給する構造を示す図。 本実施形態のワンウェイクラッチのアウター部材からコネクティングロッド部へ潤滑油を供給する構造を示す図。 本実施形態のワンウェイクラッチのアウター部材からコネクティングロッド部へ潤滑油を供給する構造を示す図。 従来のワンウェイクラッチのアウター部材からコネクティングロッド部へ潤滑油を供給する構造を示す図。
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。また、以下では、本発明のワンウェイクラッチやクランク式無段変速機を、自動車のパワートレインに適用した例について説明するが、自動車以外の他の用途にも適用できることは言うまでもない。
<パワートレイン構成>まず、図1を参照して、本実施形態の無段変速機が搭載される自動車のパワートレインの構成について説明する。
図1に示すように、エンジン1の駆動力が出力軸2からクランク式無段変速機(以下、無段変速機と略称する)3へ入力され、無段変速機3からデファレンシャルギヤ4を介して左右の車軸5に伝達され、駆動輪6を駆動する。
<無段変速機の構造>次に、図2ないし図6を参照して、本実施形態の無段変速機の構造について説明する。
図2に示すように、本実施形態の無段変速機3は同一構造を有する複数個(実施の形態では4個)の動力伝達機構Uをエンジン1の出力軸2と同軸の入力軸11に対して軸方向に配列して構成されている。各動力伝達機構Uは平行に配置された共通の入力軸11および共通の出力軸12を備えており、入力軸11の回転が減速または増速されて出力軸12に伝達される。
以下では、図3および図4を参照して、複数個の動力伝達機構Uのうち1つの構造について説明する。
エンジン1に接続されて回転する入力軸11は、電動モータのような変速アクチュエータ14の中空の回転軸14aの内部を相対回転自在に貫通する。変速アクチュエータ14のロータ14bは回転軸14aに固定されており、ステータ14cはケーシングに固定される。変速アクチュエータ14の回転軸14aは、入力軸11と同速度で回転可能であり、かつ入力軸11に対して異なる速度で相対回転可能である。
変速アクチュエータ14の回転軸14aを貫通した入力軸11には第1ピニオン15が固定されており、この第1ピニオン15を跨ぐように変速アクチュエータ14の回転軸14aにクランク状のキャリヤ16が接続される。第1ピニオン15と同径の2個の第2ピニオン17が、第1ピニオン15と協働して正三角形を構成する位置にそれぞれピニオンピン16aを介して支持されており、これら第1ピニオン15および第2ピニオン17に、円板形の偏心ディスク18の内部に偏心して形成されたリングギヤ18aが噛合する。偏心ディスク18の外周面に、コネクティングロッド19のロッド部19aの一端に設けたリング部19bがボールベアリング20を介して相対回転自在に嵌合する。
出力軸12の外周に設けられたワンウェイクラッチ21は、コネクティングロッド19のロッド部19aに連結ピン19cを介して枢支されたリング状のアウター部材22と、アウター部材22の内部に配置されて出力軸12に固定されたインナー部材23と、アウター部材22とインナー部材23との間に形成された楔状の空間に配置されてエンゲージスプリング24で付勢されたローラ25とを備える。なお、ワンウェイクラッチ21の具体的な構造については後述する。
動力伝達機構Uはクランク状のキャリヤ16を共有しているが、キャリヤ16に第2ピニオン17を介して支持される偏心ディスク18の位相は各々の動力伝達機構Uで90°ずつ異なっている。例えば、図2において、左端の動力伝達機構Uの偏心ディスク18は入力軸11に対して図中上方に変位し、左から3番目の動力伝達機構Uの偏心ディスク18は入力軸11に対して図中下方に変位し、左から2番目および4番目の動力伝達機構Uの偏心ディスク18は上下方向中間に位置している。
<ワンウェイクラッチの構造>次に、図5を参照して、ワンウェイクラッチの構造について説明する。
ワンウェイクラッチ21は、環状のアウター部材22の円形の内周面22aと、筒状のインナー部材23の波状に屈曲する外周面23aとの間に12個のローラ25を配置したものであり、アウター部材22の外周に設けられた突出する連結部22bに連結ピン19cおよびクリップ40を介してコネクティングロッド19が接続され、インナー部材23の内周部には出力軸12が相対回転不能に結合される。
ワンウェイクラッチ21は、ローラ25を付勢するエンゲージスプリング24を支持するためのケージ31を備える。ケージ31は円環状の板材からなる一対の環状部材32と、周方向に等間隔で配置されて一対の環状部材32を相互に接続する12本のスプリング支持ロッドとで構成され、一対の環状部材32が12個のローラ25の軸方向両側に配置され、12本のスプリング支持ロッド33が12個のローラ25間に配置される。環状部材32の内周部は波状に形成されており、それがインナー部材23の波状の外周面23aに凹凸係合することで、ケージ31はインナー部材23に相対回転不能に結合される。 エンゲージスプリング24は1枚の弾性板材を断面S字状に屈曲させたもので、その一端側がケージ31のスプリング支持ロッド33に溶接等で固定される。
アウター部材22およびインナー部材23の間には、ローラ25の軸方向両側に位置する一対のボールベアリング34が配置されており、このボールベアリング34によってアウター部材22およびインナー部材23が同芯状態を維持しながら相対回転可能に接続される。ボールベアリング34は外輪35および内輪36間に複数のボール37を配置したものであり、外輪35はアウター部材22の軸方向端部に一体に形成され、内輪36は別部材で構成されてインナー部材23の外周に固定される。なお、ボールベアリング34には複列ものと単列のものとがあり、4個のワンウェイクラッチ21の軸方向両端に位置する2個のボールベアリング34は単列であり、それ以外の3個ボールベアリング34は隣接する2個のワンウェイクラッチ21に共有されるために複列となる。
一方のボールベアリング34と、ケージ31の一方の環状部材32との間にアキシャルスプリング38が配置されており、アキシャルスプリング38の内周から突出する複数の押圧部38aが、環状部材32の内周の凹部32a間を通過してローラ25の端面に当接し、その弾性により押圧する。また、アウター部材22の内周面に形成した環状溝22cに環状のリングスプリング39が配置されており、このリングスプリング39はローラ25の周面に当接してインナー部材23の外周面23aに向けて付勢する。
<動作説明>次に、図2ないし図4を参照して、本実施形態の無段変速機の動力伝達作用について説明する。
先ず、無段変速機3の1つの動力伝達機構Uの作用を説明する。変速アクチュエータ14の回転軸14aを入力軸11に対して相対回転させると、入力軸11の軸線L1まわりにキャリヤ16が回転する。このとき、キャリヤ16の中心O、つまり第1ピニオン15および2個の第2ピニオン17がなす正三角形の中心は入力軸11の軸線L1まわりに回転する。
図3は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり入力軸11)に対して出力軸12と反対側にある状態を示しており、このとき入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量が最大になって無段変速機3のレシオはTOP状態になる。図4は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり入力軸11)に対して出力軸12と同じ側にある状態を示しており、このとき入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量が最小になって無段変速機3のレシオはLOW状態になる。
図3に示すTOP状態で、エンジン1で入力軸11を回転させるとともに、入力軸11と同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、入力軸11、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17および偏心ディスク18が一体になった状態で、入力軸11を中心に反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。図3(A)から図3(B)を経て図3(C)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをボールベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、その小径環状のロッド部19aに連結ピン19cで枢支されたアウター部材22を反時計方向(矢印B1参照)に回転させる。図3(A)および図3(C)は、アウター部材22の矢印B1方向の回転の両端を示している。
このようにしてアウター部材22が矢印B1方向に回転すると、ワンウェイクラッチ21のアウター部材22およびインナー部材23間の楔状の空間にローラ25が噛み込み、アウター部材22の回転がインナー部材23を介して出力軸12に伝達されるため、出力軸12は反時計方向(矢印C参照)に回転する。
入力軸11および第1ピニオン15が更に回転すると、第1ピニオン15および第2ピニオン17にリングギヤ18aを噛合させた偏心ディスク18が反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。図3(C)から図3(D)を経て図3(A)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをボールベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、そのロッド部19aに連結ピン19cで枢支されたアウター部材22を時計方向(矢印B2参照)に回転させる。図3(C)および図3(A)は、アウター部材22の矢印B2方向の回転の両端を示している。
このようにしてアウター部材22が矢印B2方向に回転すると、アウター部材22とインナー部材23との間の楔状の空間からローラ25がエンゲージスプリング24を圧縮しながら押し出されることで、アウター部材22がインナー部材23に対してスリップして出力軸12は回転しない。
以上のように、アウター部材22が往復回転したとき、アウター部材22の回転方向が反時計方向(矢印B1参照)のときだけ出力軸12が反時計方向(矢印C参照)に回転するため、出力軸12は間欠回転することになる。
図4は、LOW状態で無段変速機3を運転するときの作用を示すものである。このとき、入力軸11の位置は偏心ディスク18の中心に一致しているので、入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量はゼロになる(この偏心量がゼロになる状態をギヤードニュートラル(GN)状態という)。このGN状態でエンジン1で入力軸11を回転させるとともに、入力軸11と同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、入力軸11、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17および偏心ディスク18が一体になった状態で、入力軸11を中心に反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。しかしながら、偏心ディスク18の偏心量がゼロであるため、コネクティングロッド19の往復運動のストロークもゼロになり、出力軸12は回転しない。
従って、変速アクチュエータ14を駆動してキャリヤ16の位置を図3のTOP状態と図4のLOW状態との間に設定すれば、ゼロレシオおよび所定レシオ間の任意のレシオでの運転が可能になる。
無段変速機3は、並置された4個の動力伝達機構Uの偏心ディスク18の位相が相互に90°ずつずれているため、4個の動力伝達機構Uが交互に駆動力を伝達することで、つまり4個のワンウェイクラッチ21のいずれかが必ず係合状態にあることで、出力軸12を連続回転させることができる。
<ワンウェイクラッチの作用>次に、図6を参照して、ワンウェイクラッチ21の状態変化について説明する。
図6(A)はワンウェイクラッチ21のDP(Datum Point)状態、つまりワンウェイクラッチ21が係合する直前の状態を示すものである。DP状態ではエンゲージスプリング24の付勢部24aがローラ25の外周面に当接し、ローラ25をアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間に噛み込む方向に付勢する。このとき、ワンウェイクラッチ21は未だ係合しておらず、ローラ25はアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23aに噛み込まずに接触している。
このDP状態からインナー部材23に対してアウター部材22が矢印A方向に相対回転すると、ローラ25はエンゲージスプリング24から受ける付勢力と、アウター部材22およびインナー部材23から受ける摩擦力とにより、矢印A方向に移動してアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間の楔状の空間に噛み込むことで、図6(B)に示すようにワンウェイクラッチ21が係合する。
図6(B)に示すワンウェイクラッチ21の係合状態から、インナー部材23に対してアウター部材22が矢印B方向に相対回転すると、アウター部材22およびインナー部材23から受ける摩擦力により、ローラ25はエンゲージスプリング24から受ける付勢力に抗して矢印B方向に移動し、アウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間の楔状の空間から離脱することで、図6(C)に示すようにワンウェイクラッチ21が係合解除する。この状態をダンピング状態と呼び、ローラ25はエンゲージスプリング24の付勢部24aを圧縮しながら矢印B方向に回転し、ローラ25はアウター部材22の内周面22aあるいはインナー部材23の外周面23aから離反する。その後、ローラ25はエンゲージスプリング24により付勢されて図6(A)に示すDP状態に速やかに復帰する。
なお、係合状態からダンピング状態に移行する過程でローラ25がアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間の楔状の空間から押し出されるとき、アキシャルスプリング38で軸方向に付勢されたローラ25の端面がケージ31の環状部材32に押し付けられるため、その摩擦力でローラ25の挙動を安定させることができる。またローラ25がアウター部材22の内周面22aおよびインナー部材23の外周面23a間の楔状の空間から押し出されるとき、ローラ25は遠心力で径方向外側に位置するアウター部材22の内周面に押し付けられるが、それをリングスプリング39の径方向内向きの弾性力で抑制することができる。
<潤滑油の給油構造>次に、図7ないし図10を参照して、本実施形態の無段変速機の潤滑油の給油構造について説明する。
図7において、出力軸12の内部は軸方向に延びる中空の潤滑油路51が形成されており、また、出力軸12および各ワンウェイクラッチ21のインナー部材23にはその内周面から外周面23aを貫通する貫通孔52が形成されている。
潤滑油は、不図示の可変容量オイルポンプから、矢印Yのように、出力軸3の端部12aに形成された貫通孔53を通じて潤滑油路51に導入される。潤滑油路51に導入された潤滑油は、出力軸12の回転による遠心力で潤滑油路51から貫通孔52を通じてローラ25に供給され、さらに、ローラ25からアウター部材22その他のワンウェイクラッチ21の構成部品に供給される(図9(A)〜(C)の矢印D1参照)。
次に、図8ないし図10を参照して、本実施形態に特有のワンウェイクラッチのアウター部材からコネクティングロッド部へ潤滑油を供給する構造について説明する。
図8および図9に示すように、アウター部材22の連結部22bには、アウター部材22の内周面22aからロッド部19aに向けて貫通する第1の貫通孔22dが形成されている。また、コネクティングロッド19のロッド部19aには、その内周面から外周側に向けて貫通する第2の貫通孔19dが形成されている。
そして、図9(B)に示すGN状態のときに、第1の貫通孔22dと第2の貫通孔19dとが一直線となって貫通するように構成されている(図9(B)の矢印D2参照)。このように構成したことにより、変速機のケーシング内で油面Q1が変化してもコネクティングロッド19のロッド部19aへの潤滑を確保できる。また、GN状態におけるワンウェイクラッチ21とコネクティングロッド19との相対的な位置関係は、いかなるレシオであっても入力軸11が1回転するごとに2回のGN状態を経由して揺動運動するため、確実にアウター部材22からコネクティングロッド19のロッド部19aへの給油経路が確保できる。
なお、GN状態において、第1の貫通孔22dの外周側の開口部22d1と第2の貫通孔19dの外周側の開口部19d1とが完全にオーバーラップしていなくとも、少なくとも一部でオーバーラップしていれば、上述した効果が得られる。
さらに、図10に示すように、アウター部材22の内周面22aに、円周方向に所定の長さおよび深さの溝部22eを形成し、この溝部22eの底部に第1の貫通孔22dの内周側の開口部22d2が開口するように設けても良い。なお、溝部22eの長さは、アウター部材22の内周面22aがローラ25の外周面と接触する範囲よりも長く、ローラ25が第1の貫通孔22dの内周側の開口部22d2を覆うような位置にあるときにローラ25がアウター部材22の内周面22aに当接する領域から少なくとも一部が外れるように形成される。このように構成したことにより、アウター部材22の内周面22aにおけるローラ25の位置に関わらず給油経路を確保できる。
なお、溝部22eを、アウター部材22の内周面22aの全周に形成しても良い。
また、コネクティングロッド19のロッド部19aへの潤滑油を出力軸12の潤滑油路51から供給できるので、変速機のケーシング内での油面変動に関わらず、コネクティングロッド19のロッド部19aへ潤滑油を供給できる。
また、コネクティングロッド19のロッド部19aがアウター部材22の下部に位置するようにワンウェイクラッチ21と連結され、無段変速機のケーシングの底部に貯留した潤滑油の油面Q1を、コネクティングロッド19のロッド部19aが最下部に位置したときの高さQ2よりも下方に位置するように設定する(図9(C))。このようにコネクティングロッド19のロッド部19aやワンウェイクラッチ21のアウター部材22の連結部22bが油面Q1に接触しないように構成することで、コネクティングロッド19のロッド部19aへの潤滑油を出力軸12の潤滑油路51からのみ供給し、コネクティングロッド19やワンウェイクラッチ21が油面に接触することによるフリクション抵抗を低減することができる。
11 入力軸
12 出力軸
14 変速アクチュエータ
18 偏心ディスク(偏心部材)
19 コネクティングロッド
19a ロッド部
19d 第2の貫通孔
19c 連結ピン
21 ワンウェイクラッチ
22 アウター部材
22a 内周面
22b 連結部
22d 第1の貫通孔
23 インナー部材
23a 外周面
51 潤滑油路
52 貫通孔
53 貫通孔

Claims (5)

  1. 駆動源(1)に接続された入力軸(11)の回転を変速して出力軸(12)に伝達する無段変速機(3)であって、
    前記入力軸(11)の軸線(L1)からの偏心量が可変であって、当該入力軸(11)と共に回転する偏心部材(18)と、
    前記偏心部材(18)の偏心量を変化させるアクチュエータ(14)と、
    アウター部材(22)と、前記アウター部材(22)の内周に同軸に配置されたインナー部材(23)と、前記アウター部材(22)の内周面(22a)および前記インナー部材(23)の外周面(23a)の間に配置された複数のローラ(25)とを備え、前記アウター部材(22)と前記インナー部材(23)の所定方向への相対回転により、前記ローラ(25)を前記アウター部材(22)の内周面(22a)と前記インナー部材(23)の外周面(23a)の間に係合させて駆動力を伝達するワンウェイクラッチ(21)と、
    前記ワンウェイクラッチ(21)に連結される環状の連結部(19a)を有し、前記偏心部材(18)の回転を前記ワンウェイクラッチに伝達するコネクティングロッド(19)と、
    前記コネクティングロッド(19)の連結部(19a)と前記ワンウェイクラッチ(21)の連結部(22b)に挿通されて、前記コネクティングロッド(19)と前記ワンウェイクラッチ(21)とを連結する連結ピン(19c)と、を備え、
    前記アウター部材(22)には、前記アウター部材(22)の内周面(22a)から外周側に貫通する第1の貫通孔(22d)が形成され、
    前記コネクティングロッドの連結部(19c)には、当該連結部(19c)の内周面から外周側に貫通する第2の貫通孔(19d)が形成され、
    前記入力軸(11)の軸線(L1)からの偏心量がゼロのときに前記第1の貫通孔(22d)の外周側の開口部(22d1)と前記第2の貫通孔の外周側の開口部(19d1)とが少なくとも一部でオーバーラップすることを特徴とする無段変速機。
  2. 前記入力軸(11)の軸線(L1)からの偏心量がゼロのときに前記第1の貫通孔(22d)の外周側の開口部(22d1)と前記第2の貫通孔の外周側の開口部(19d1)とが全体にわたってオーバーラップすることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
  3. 前記第1の貫通孔(22d)の内周側の開口部(22d2)は、前記アウター部材(22)の内周面(22a)に形成された溝部(22e)内に設けられ、
    前記溝部(22e)は、前記ローラ(25)が前記第1の貫通孔(22d)の内周側の開口部(22d2)を覆う位置にあるときに、前記ローラ(25)が前記アウター部材(22)の内周面(22a)に当接する領域から少なくとも一部が外れるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の無段変速機。
  4. 前記出力軸(12)の中空内部において軸方向に延びる油路(51)と、
    前記油路の端部(12a)に潤滑油を供給する供給手段(53)と、をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の無段変速機。
  5. 前記コネクティングロッド(19)の連結部(19c)は、前記アウター部材(22)の下部に位置するように前記アウター部材(22)の連結部(22b)に連結され、
    前記無段変速機(3)のケーシングの底部に貯留した潤滑油の油面(Q1)は、前記コネクティングロッド(19)の連結部(19c)が最下部に位置したときの高さ(Q2)よりも下方に位置するように設定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の無段変速機。
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