JP2014101422A - 接着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明では、製造プロセスが容易で取り扱い性の高い比較的低分子量の主剤化合物からなり、さらに有機溶剤放出による環境負荷が低いドライラミネート用接着剤でありながら、十分な実用特性を持つ接着剤を提供することにある。
【解決手段】 2個の水酸基を有するジオール化合物(A)と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを含有してなる接着剤において、
前記ジオール化合物(A)の数平均分子量(Mn)が400〜3000の範囲であり
前記ポリイソシアネート(B)が、3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、ジイソシアネート化合物(b2)との混合物である接着剤により、上記課題を解決する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ドライラミネート用の接着剤に関する。
食品や飲料等の包装材料は、様々な流通、冷蔵等の保存や加熱殺菌などの処理等から内容物を保護するため、強度や割れにくさ、耐レトルト性、耐熱性といった機能が要求されている。これらの機能に対応するために各種の延伸フィルムが使用されている。
その一方で、ヒートシールにより袋を密閉する場合には、熱加工性に優れる無延伸のポリオレフィン類フィルムが必須であるが、無延伸ポリオレフィンフィルムには包装材料として不足している機能も多い。
このようなことから包装材料は、異種のポリマー材料を組み合わせた複合フレキシブルフィルムが広く用いられている。一般に複合フレキシブルフィルムは、商品保護や意匠性、各種機能を有する外層となるフィルム層等と、シーラント層となる未延伸フィルム層等からなる。これらの貼り合わせには、外層用熱可塑性プラスチックと、接着剤と、シーラント層用熱可塑性プラスチックとを3層溶融押し出しし未延伸積層シートを成形後延伸する方法もあるが(例えば特許文献1参照)、ラミネートフィルム層に接着剤を塗布してシーラント層を接着させることで多層フィルムを製造するドライラミネート法(例えば特許文献2参照)が簡便であり、主流となっている。
ドライラミネート法に使える接着剤は基本的に合成樹脂からなるが、樹脂は重合時に低分子から高分子に伸長していくため、一般に分子量が低い材料の方が合成が短時間ですみプロセスコストが小さくできる。さらに、合成後の接着剤化のプロセスに際しても分子量が高すぎない場合には粘度が低いため、樹脂の取り出し、移送、接着剤化の各工程が容易で且つ、各工程での残留樹脂分によるロスを低減することもできる。
加えて近年では、接着剤使用時の有機溶剤の低減が求められる場合がある。有機溶剤をまったく使用しない接着剤として、無溶剤型ラミネート用接着剤が知られているが、この場合、無溶剤接着剤専用のラミネーターが必要となる。無溶剤専用のラミネーターは日本国内では多く普及していない。従って、一般に広く普及している溶剤型接着剤対応のドライラミネーターが使用でき、且つ溶剤の使用量がすくない高樹脂含有率(ハイソリッド)の接着剤に対するニーズは高い。例えば特許文献3には、有機溶剤の使用が少なくて済む、数平均分子量が10,000以下であり、一分子当り1.4〜1.8個の水酸基を有するポリオール成分並びにイソシアネート硬化剤成分とからなるハイソリッド型接着剤について記載があるが、当該接着剤についてはいずれの実施例とも1種類の硬化剤のみが用いられており、2官能の硬化剤と多官能の硬化剤とを併用するとの記載はない。
また、特許文献4には、数平均分子量が500〜10,000の範囲のアクリルポリオール、あるいはポリエステルポリオールを含有する主剤ポリオール組成物と脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートを原料とし、分子量700以下の成分の含有率が20〜60質量%、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.2〜5.0、25℃におけるポリイソシアネート組成物の粘度(単位mPa.s)とイソシアネート基の数平均官能基数との比が次式で表されるアロファネート基を有するポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤組成物、粘度(mPa.s)/数平均官能基数≦240とを含むハイソリッド塗料組成物が開示されている。しかしながら、本発明においても、2官能の硬化剤と多官能の硬化剤とを併用するとの記載はない。また、硬化剤の各合成例では残留の2官能モノマーを除去している上、硬化剤の官能基数が2.82と、2官能と3官能の硬化剤の混合物である合成例6は、ゲル分率が高いことにより比較例として扱われている。
加えて、近年では多層フィルムに対する更なる高機能化が求められており、食品の風味の維持、内容物の保持、酸化防止による消費期間の延長や、微生物類やカビ類の繁殖防止、色素の劣化等を目的とした場合、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガスを包装内に封入することが広く行われる。こうした包装類の場合、酸素の進入を防止するため、酸素ガスバリア機能が要求されている。バリア機能を多層フィルムに付与する際、内層(シーラント側)に用いる無延伸ポリオレフィンフィルム類はガスバリア性に乏しい上、コーティングや蒸着によりバリア機能を付与することが困難である。そのため、外層側に用いている各種フィルム(ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)等のポリエステル系樹脂や、ポリアミド樹脂、延伸ポリオレフィン樹脂)にバリア機能を付与することが多い。
これらの外層側フィルムにコーティングによりガスバリア機能を付与する場合、ガスバリアコーティング材料としては、酸素バリア性及び、水蒸気バリア性が高い(すなわち、物質移動を妨げやすい)塩化ビニリデンが多用されてきたが、廃棄の焼成時にダイオキシンが発生する等の問題がある上、光にさらされることにより黄変する問題がある。また、ポリビニルアルコール樹脂やエチレン-ポリビニルアルコール共重合体をガスバリアコーティング材料として用いた場合には低湿度下でのガスバリア性は高いが、高湿度下のガスバリア性に劣る問題点がある。一方、アルミニウム等の金属蒸着層をガスバリア層として設けたフィルムは不透明で内部が視認できない上、電子レンジ使用ができない問題がある。また、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層をガスバリア層として設けたフィルムは高価な上、柔軟性に乏しくクラック、ピンホールによりガスバリア性能がばらつく問題点がある。
一方、ラミネート時に使用する接着剤にガスバリア機能を付与する方法も知られている。この方法は、積層フィルムを作製するのに必須の工程及び構成により、特殊なガスバリア機能付与済みのフィルムを使用しなくともガスバリア用多層フィルムを製造できる利点を持つ。その一方で接着剤には必須な柔軟な分子構造では一般にガス透過性が高い。そのため、接着能とガスバリア機能とはトレードオフの関係にある事が多く、この解消が技術的な難易度を高めている。
このような、ガスバリア遮断性積層フィルムを用いた容器として、例えば特許文献3や特許文献4では外層となる熱可塑性プラスチックフィルム層等と、シーラント層となる熱可塑性プラスチックフィルム層との間を、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物で接着させたガスバリア性積層フィルムが記載されている。
しかしながら多層フィルム用ラミネート接着剤としてエポキシ系接着剤は殆ど用いられていない一方、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応系が最も広範囲に用いられている。したがって、汎用接着剤からの品番切り替えの場合には、溶媒の共通性や、材料が残存した場合の混合性等の観点から、エポキシ系ではない接着剤が強く求められてきた。また、特に食品が内容物とする袋状容器の場合は化合物の安全性の観点からエポキシ系以外の材料が求められてきた。
以上のように、製造プロセス改善、大気へのVOC放出規制等の環境負荷低減のニーズから比較的低分子量の成分から構成される接着剤への要望が強い。これらに加えて、更にガスバリア機能をもつ非エポキシ系の接着剤の提供に至っていないのが現状である。
特開2006−341423号公報 特開2003−13032号公報 特許4530704号公報 特開2003−128989号公報
本発明が解決しようとする課題は、製造プロセスが容易で取り扱い性の高い比較的低分子量の主剤化合物からなり、さらに有機溶剤放出による環境負荷が低いドライラミネート用接着剤でありながら、十分な実用特性を持つ接着剤を提供することにある。
本発明者らは、2個の水酸基を有するジオール化合物(A)と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを含有してなる接着剤において、
前記ジオール化合物(A)の数平均分子量(Mn)が400〜3000の範囲であり
前記ポリイソシアネート(B)が、3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、ジイソシアネート化合物(b2)との混合物である接着剤により上記課題を解決した。
本発明により、樹脂合成及び接着剤製造のプロセスが容易で、且つ溶剤の排出による環境負荷が低減されかつ汎用のドライラミネーターが使用できる接着剤を提供することができる。更に主剤樹脂に用いられるジオール化合物によっては、一定のガスバリア性をも有する接着剤を提供することが可能となる。
[2個以上の水酸基を有するジオール化合物(A)]
本発明で使用するジオール化合物(A)は、実質的に2個の水酸基を有し、数平均分子量(Mn)が400〜3000の範囲であるものである。これは一般に用いられているドライラミネート用接着剤での分子量範囲の5000〜10000に比べて低いため、合成に要する時間が短い上、合成後の接着剤化のプロセスも移送が容易なことにより簡素化できる利点がある。このジオール化合物(A)は2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)との固形分の合計が、接着剤用樹脂組成物の総質量中40質量%以上であれば、本発明の目的のひとつであるラミネート操作時の低VOCを達成できるため特に好ましい。
ジオール化合物(A)としては、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、アクリルジオール等が例示できるが、更に重要な付加機能であるガスバリア性を付与するためには、ポリエステルジオール(a0)であることが最も好ましい。このとき、ポリエステルジオール(a0)は、ポリオール成分(a1)と、ポリカルボン酸成分(a2)から合成される実質的に2個の水酸基を有するポリエステルジオールである。
(ジオール成分(a1))
本発明で使用するポリエステルジオール(a0)を合成するために用いられる、ジオール成分(a1)は、具体的には、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールの他に、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールの、エチレンオキサイド伸長物、水添化物を例示することができる。尚、これらのジオール成分と、ジカルボン酸との重縮合反応は、公知慣用の方法で行うことができる。
本発明の接着剤に付加機能としてガスバリア機能を接着層に保有させる場合には、ジオール成分(a1)の酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、ガスが透過しにくいと推定されることから、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールが好ましく、更にはエチレングリコールが最も好ましい。
(ジカルボン酸(a2))
本発明で用いられるポリエステルジオール(a0)は、ジカルボン酸成分として具体的には、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。また、これらの酸無水物も使用することができる。
中でも、一定のガスバリア性を得る為にはコハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、オルトフタル酸、オルトフタル酸の酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、イソフタル酸が好ましく、更にはオルトフタル酸及びその酸無水物がより好ましい。これはこの骨格が非対称構造のため、得られるポリエステルの分子鎖の回転抑制が生じると推定され、これによりガスバリア性に優れると推定している。また、この非対称構造に起因して非結晶性を示し、十分な基材密着性が付与され、接着力とガスバリア性に優れると推定される。さらにドライラミネート接着剤として用いる場合には必須である溶媒溶解性も高いことで、高固形分率化しやすい上、取扱い性にも優れる特徴を持つ。
(多価アルコール その他の成分)
本発明で用いられるポリエステルジオール(a0)は、前記のジオール成分(a1)、ジカルボン酸成分(a2)から重縮合によって得られるが、ごく一部の原料アルコールとして3個以上の水酸基を有する多価アルコール成分を少量用いることは許容される。これらの化合物としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等があげられるが、合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価アルコールとしては三価アルコールが好ましい。また含有率としてはアルコール成分全体の2モル%以下が好ましい。
(ポリエステルジオール(a0)の合成方法)
本発明で用いられるポリエステルジオール(a0)はジカルボン酸またはその無水物と、ジオール成分を一括して仕込んだ後、攪拌混合しながら昇温し、脱水縮合反応させる、公知慣用の方法により合成される。具体的な一例を示すと、原材料として用いるジオール成分と、ジカルボン酸またはその無水物と一括して仕込んだ後、攪拌混合しながら昇温し、脱水縮合反応させる。このとき、各々の原料を多段階に分けて反応させてもよい。また、反応温度にて揮発したジオール成分を追加しながら、水酸基価を±5%以内に入るように調整してもよい。本発明で用いるポリエステルジオールは分子量範囲が400〜3000と通常のドライラミネート用接着剤に比べて低いため合成に要する時間が短く、合成プロセスコストを低減することができる。
(ポリエステルジオール(a0)の酸価及び、水酸基価)
本発明では、前記ポリエステルジオール(a0)の水酸基価が35〜290mgKOH/g、酸価が0〜5mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価はJIS−K0070に記載の水酸基価測定方法にて、酸価はJIS−K0070に記載の酸価測定法にて、測定することができる。酸価が5mgKOH/gより高いときは、ポリエステルジオールの分子中に片末端の水酸基を含有する分子が多くなることにより、ウレタン伸長反応が生じにくくなり、十分な初期ズリ強度が得られなくなる恐れがある。水酸基価が35mgKOH/gより小さい場合、分子量が大きすぎる為に粘度が高くなり、高固形含有率(ハイソリッド)化した場合、良好な塗工適性が得られない。逆に水酸基価が300mgKOH/gを超える場合、分子量が小さくなりすぎる為、硬化塗膜の架橋密度が高くなりすぎ、良好な接着強度が得られない。
(反応触媒)
反応に用いられる触媒としては、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等錫系触媒、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等のチタン系触媒、テトラ−ブチル−ジルコネート等のジルコニア系触媒等の酸触媒が挙げられる。エステル反応に対する活性が高い、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等の上記チタン系触媒と上記ジルコニア触媒を組み合わせて用いることが好ましい。前記触媒量は、使用する反応原料全質量に対して1〜1000ppm用いられ、より好ましくは10〜100ppmである。1ppmを下回ると触媒としての効果が得られにくく、1000ppmを上回ると後のウレタン化の反応を阻害する傾向がある。また、反応は触媒がなくとも進行する場合には無触媒で合成を実施してもよい。
(ポリエステルジオール(a0)の分子量)
本発明で用いるポリエステルジオール(a0)の数平均分子量は400〜3000である必要がある。分子量がこの範囲にあることにより接着剤用樹脂組成物の総質量が高いハイソリッド型の接着剤であっても、接着能と各種ラミネート操作とのバランスに優れる。より好ましい数平均分子量が500〜2800であり、更に好ましくは600〜2500である。
更にポリエステルジオール(a0)をジイソシアネート化合物との反応によるウレタン伸長を予め行ってもよい。このときの数平均分子量はウレタン伸張後の数平均分子量が400〜3000である必要がある。
(硬化剤)
本発明で使用する硬化剤は3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、ジイソシアネート化合物(b2)の混合物である必要がある。これは、ポリエステルジオール(a0)の分子量の数平均分子量が400〜3000と汎用のドライラミネート用接着剤に比べて比較的小さな範囲であっても、良好な塗工ラミネート特性と、ラミネート強度とを両立させるためである。
(3価以上のポリイソシアネート化合物(b1))
多官能のイソシアネートは、主剤のポリエステルジオール(a0)を3次元的に架橋させることにより、接着剤を固化接着させる機能を持つ。従って、仮に硬化剤成分として3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)を含まなければ、ボイル、レトルト処理のような熱が加えられる条件下では接着層が剥離(デラミネーション)する問題が生じるおそれがある。多官能イソシアネートの官能基数には特に制限はないが、3官能以上であれは架橋材料として用いる多官能イソシアネートとしての機能は果たすことができるため、一般的に入手が容易である3価のポリイソシアネートを用いることが好ましい。
(ジイソシアネート化合物(b2))
本発明では、硬化剤として前記の3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と2官能のイソシアネートを併用することに特徴がある。2官能であるジイソシアネートは、主剤のポリエステルジオール(a0)をウレタン伸張させることで高分子量化し、接着剤のラミネート操作時の必要特性の一つである初期ズリ強度を高くすることで、貼り合わせ時のトンネリングのトラブルを低減させる効果がある。ジイソシアネートの分子量については特に制限はないが、併用している3官能イソシアネートよりも先行して反応し、直鎖的にウレタン伸張させることで初期ズリ強度を高められる観点より、分子運動がしやすい低分子量が好ましい。従って、ジイソシアネートモノマーを用いても差し支えない。
(3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、ジイソシアネート化合物(b2)の混合比)
3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、ジイソシアネート化合物(b2)の混合比は、用いるポリエステルジオール(a0)の分子量や、3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)や、ジイソシアネート化合物(b2)の分子量や、3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)の価数等に依存するため、一概には言えない。しかしながらこれらの各種イソシアネートが保有する効果を発揮する観点から、どちらか一方が少なすぎる場合には接着剤としての基本特性に問題が生じる場合がある。例えば、ジイソシアネート化合物(b2)が少なすぎる場合には、初期ズリ強度がでにくくなることにより、塗工ラミネート適性が悪くなり、トンネリング等のトラブルが生じる可能性がある。一方、3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)が少なすぎる場合には、耐ボイル、レトルト適性が架橋点密度が低くなりすぎることから、塗工ラミネート適性が悪くなる恐れがある。従って、3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、ジイソシアネート化合物(b2)の混合比はイソシアネート含有率換算で、1:5〜5:1の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、1:3〜3:1である。
(ジイソシアネート化合物(b2)の種類)
ポリイソシアネート化合物を構成する化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート化合物が例示され、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートが汎用のジイソシアネート化合物として例示される。これらは、モノマーとして用いた場合は、ジイソシアネート化合物(b2)として用いることができる。また、これらのイソシアネートモノマーの過剰量を、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン等の2価の活性水素化合物や、ポリエステルジオール、ポリオールジオールと反応させたものでも良い。さらには、以上のイソシアネート化合物をブロック化したブロック化イソシアネートを用いても良い。
(3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)の種類)
3価以上のポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート(b2)で例示した各種イソシアネートモノマーや化合物の3量体の多量体の他、イソシネートモノマーの過剰量を、多官能のアルコール体、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、などの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。
中でも、本発明でバリア接着層にガスバリア性を持たせたい場合には、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの含芳香族イソシアネートの他、これらを水素化したイソシアネートが好ましく、メタキシリレンジイソシアネート、メタ水素化キシリレンジイソシアネートが最も好ましい。また、これらのイソシアネート化合物を用い多官能化した誘導体を用いても良い。
前記、ジオール化合物(A)と前記ポリイソシアネート(B)硬化剤とは、ジオール化合物(A)と硬化剤との割合がジオール化合物(A)の水酸基と硬化剤の反応成分とが1/0.5〜1/10(当量比)となるように配合することが好ましく、より好ましくは1/1〜1/5である。該範囲を超えて硬化剤成分が過剰な場合、余剰な硬化剤成分が残留することで接着後に接着層からブリードアウトするおそれがあり、一方、硬化剤成分が不足の場合には接着強度不足のおそれがある。
(接着剤の生物由来成分)
本発明での接着剤の樹脂成分には非石油成分、特に植物由来成分がふくまれていると低VOC材料に加え、更に環境対応型材料となり好ましい。特にジオール化合物(A)の合成用モノマーとして、多価アルコール成分として、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール等が、多価カルボン酸としてコハク酸は現在植物由来成分が工業用レベルで市販されている。これらのモノマーが用いられると、ガスバリア機能も高くとくに好ましい。
(接着剤 その他の成分)
本発明の接着剤は、ラミネート適性を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤等が例示できる。
(板状無機化合物)
特に、高いガスバリア機能を付与したい場合には本発明の接着剤に板状無機化合物を含有させても良い。板状無機化合物を併用した場合には形状が板状であることによりラミネート強度とバリア性が向上する特徴がある。本発明で使用される板状無機化合物としては、例えば、板状無機化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト−蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト−タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい
本発明で使用される板状無機化合物のアスペクト比はガス成分分子の迷路効果によるバリア能の向上のためには高い方が好ましい。具体的には3以上が好ましく、更に好ましくは10以上、最も好ましくは40以上である。また板状無機化合物の含有率は任意であるが50質量%以下であることが好ましい。50質量%を超えるとラミネート操作がしにくくなったり、接着力が不十分になる可能性があるためである。
本発明で使用される無機化合物を接着剤に分散させる方法としては公知の分散方法が利用できる。例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントコンディショナー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、ナノミル、SCミル、ナノマイザー等を挙げることができ、更により好ましくは、高い剪断力を発生させることのできる機器として、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、二本ロール、三本ロール等が上げられる。これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
また、接着剤層の耐酸性を向上させる方法として公知の酸無水物を添加剤として併用することもできる。酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、スチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
また、必要に応じて、更に酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
また、塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、硬化した樹脂成分の総量100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が好ましい。
(ハイソリッド型接着剤)
本発明の接着剤は主剤のジオール化合物(A)の分子量が汎用のドライラミネート用接着剤に比して低いため、ジオール化合物(A)とポリイソシアネート(B)の固形分の合計が、接着剤の総質量中40質量%以上であるハイソリッド型接着剤にしやすい特徴を有する。以降、これを不揮発成分と称する場合もある。
接着剤の総量に含まれる接着剤固形分の質量%は、有機溶剤の使用が抑えられ、環境負荷の低減にとっては、高ければ高いほど好ましいが、一般に80質量%を超えると、塗工において粘度が向上しすぎて、好ましくない。
また、接着剤中40質量%以下であると、含まれる揮発成分の除去を行わねばならず、使用済みの有機溶剤が多量に発生し、環境負荷の低減の観点からは好ましくない。このため、好ましい範囲として、40〜80質量%を挙げることができる。
(ガスバリア機能)
本発明の接着剤は、2個の水酸基を有するジオール化合物(A)がポリオール成分と、ポリカルボン酸成分から合成される実質的に2個の水酸基を有するポリエステルジオール(a0)であって、前記ポリエステルジオール(a0)がエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むジオール成分(a1)と、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含むジカルボン酸成分(a2)を重縮合した成分を含む場合には、各種ガスに対するガスバリア機能を持つ。遮断できるガスの対象としては、酸素、水蒸気の他、不活性ガス、アルコール、香り成分、各種有機溶剤、等が挙げられる。
(接着剤の形態)
本発明の接着剤は、溶剤型である必要がある。接着剤用の溶剤はポリエステルポリオール及び硬化剤の製造時に反応媒体として使用してもよい。更に塗装時に希釈剤として使用される。使用できる溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。これらのうち通常は酢酸エチルやメチルエチルケトンを使用するのが好ましい。
以下具体的用途の1つとしてフィルムラミネート用接着剤について説明する。
本発明の接着剤は、フィルムラミネート用接着剤として使用できる。ラミネートされた積層フィルムは、ガスバリア性に優れるため、ガスバリア用積層フィルムとして使用できる。
本発明で使用する積層用のフィルムは、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、PETフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。これらは延伸処理を施してあってもよい。延伸処理方法としては、押出成膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸或いは逐次二軸延伸を行うことが一般的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的にはロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
本発明の接着剤は、同種または異種の複数の樹脂フィルムを接着してなる積層フィルム用の接着剤として好ましく使用できる。樹脂フィルムは、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば包装材として使用する際は、最外層をPET、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム、或いは、例えばPET、ポリアミド、OPPから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、OPP、PET、ポリアミドから選ばれた中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、CPP、LLDPEから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した3層からなる複合フィルム、さらに、例えばOPP、PET、ポリアミドから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、PET、ナイロンから選ばれた第1中間層を形成する熱可塑製フィルムとPET、ポリアミドから選ばれた第2中間層を形成する熱可塑製フィルム、LLDPE、CPPから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した4層からなる複合フィルムは、ガスバリア用フィルムとして、食品包装材として好ましく使用できる。
また、フィルム表面には、膜切れやはじきなどの欠陥のない接着層が形成されるように必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理を施してもよい。
また、本発明の接着剤は積層フィルム作製後エージングを行うことが好ましい。エージング条件は、硬化剤としてポリイソシアネートを使用する場合であれば、室温〜80℃で、12〜240時間の間であり、この間に接着強度が生じる。
本発明の接着剤でガスバリア性を有する構造を選択した場合は、さらに高いバリア機能を付与するために、必要に応じてアルミニウム等の金属、或いはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムや、ポリビニルアルコールや、エチレン・ビニールアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用して、よりガスバリア機能を増しても良い。
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明する。例中断りのない限り、「部」「%」は質量基準である。
(製造例1)無水フタル酸とエチレングリコールとからなるジオール化合物(A1):oPAEG(Mn500)の製造例
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸148.1部、エチレングリコール90.2部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.03部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を205℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量500のポリエステルポリオールであるジオール化合物(A1)を得た。このジオール化合物は水酸基価210mgKOH/g、酸価1.0mgKOH/gであった。
(製造例2)無水フタル酸とエチレングリコールとからなるジオール化合物(A2):oPAEG(Mn3000)の製造例
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸148.1部、エチレングリコール66.1部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.03部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を205℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量3000のポリエステルポリオールであるジオール化合物(A2)を得た。このジオール化合物は水酸基価45mgKOH/g、酸価1.0mgKOH/gであった。
(製造例3)無水フタル酸とネオペンチルグリコールとからなるジオール化合物(A3):oPANPG(Mn1200)の製造例
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸148.1部、ネオペンチルグリコール123.4部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.03部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を205℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1200のポリエステルポリオールであるジオール化合物(A3)を得た。このジオール化合物は水酸基価93mgKOH/g、酸価1.0mgKOH/gであった。
(製造例4)無水フタル酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールとからなるジオール化合物(A4):oPACHDM600 の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸148.1部、1,4−シクロヘキサンジメタノール231.0部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.03部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を205℃に保持した。酸価が4mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600のポリエステルポリオールであるジオール化合物(A4)を得た。このジオール化合物は水酸基価185mgKOH/g、酸価3.8mgKOH/gであった。
(製造例5)oPAEG(Mn500)の末端にmXDI(m-キシリレンジイソシアネート)を付加させた硬化剤の製造方法
製攪拌機、窒素ガス導入管、コンデンサーを備えた反応容器にm-キシリレンジイソシアネート376gを仕込んだ。反応容器内部温度を60℃に設定し、ここに、製造例1で合成した、ジオール化合物(A)500gを予め酢酸エチル125gに溶解させ、樹脂成分が80質量%であるジオール化合物の酢酸エチル溶液625gを、1時間かけて滴下した。該溶液を完全に滴下し終わった後、60℃で3時間攪拌保持したのち、滴定によりイソシアネート価を測定した上で、プレポリマー化の反応を終了しoPAEGの両末端にmXDIが付加された不揮発分87.5%のプレポリマー(硬化剤)を得た。
接着剤用硬化剤として以下b1a〜b2bの5種のイソシアネート化合物を用いた。
(ポリイソシアネート化合物b1a)
三井化学製「タケネートD−110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発分75質量%)をNCOの官能基数が3である接着剤用硬化剤(ポリイソシアネート化合物b1a)として用いた。この化合物のNCO%は11.5%である。
(ポリイソシアネート化合b1b)
DIC株式会社製「ディックドライKW75」(トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発分75質量%)をNCOの官能基数が3である接着剤用硬化剤(ポリイソシアネート化合b1b)として用いた。この化合物のNCO%は13.0%である。
(ポリイソシアネート化合物b1c)
BASF INOACポリウレタン株式会社製「ルブラネートM20S」(ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、不揮発分100質量%)をNCOの官能基数が3以上である接着剤用硬化剤(ポリイソシアネート化合b1c)として用いた。この化合物のNCO%は31.2%である。
(ジイソシアネート化合物b2a)
三井化学製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネート)をNCOの官能基数が2である接着剤用の硬化剤(ジイソシアネート化合物b2a)として用いた。この化合物のNCO%は44.7%、不揮発分は100%である。
(ジイソシアネート化合物b2b)
製造例5で製造した、oPAEG(Mn500)の両末端にm-キシリレンジイソシアネートを付加したプレポリマーをNCOの官能基数が2である接着剤用の硬化剤(ジイソシアネート化合物b2b)として用いた。この化合物のNCO%は9.6%、不揮発分は87.5%である。
(実施例1〜5)
表1中の実施例1〜5の配合比に従い、ジオール化合物と、ポリイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物、酢酸エチルを配合し溶剤型接着剤を得た。この時、これらの実施例での接着剤のNCO/OH比率は1.4に、ザーンカップ粘度計NO.3での粘度が17秒プラスマナイス1秒になるように配合設定している。本接着剤は後述の方法で塗工ラミネートを実施し本発明での接着剤を用いた積層フィルムを得た。
(比較例1〜6)
表2中の比較例1〜6の配合比に従い、ジオール化合物と、ポリイソシアネート化合物かジイソシアネート化合物のどちらか一方と、酢酸エチルを配合し、溶剤型接着剤を得た。この時、これらの比較例での接着剤のNCO/OH比率は実施例同様の1.4に、ザーンカップ粘度計NO.3での粘度が17秒プラスマナイス1秒になるように配合設定している。本接着剤も後述の方法で塗工ラミネートを実施し本発明での接着剤を用いた積層フィルムを得た。
(比較例7)
溶剤型ラミネート用接着剤主剤であるディックドライLX−703VL(DICグラフィックス社製:ポリエステルポリオール、不揮発分/約62%、Mn約7000、水酸基価11mgKOH/g)と、ポリイソシアネート化合物を表3の通りに混合して、溶剤型接着剤を得た。本接着剤はザーンカップ粘度計NO.3での粘度が17秒である。本接着剤も後述の方法で塗工ラミネートを実施し本発明での接着剤を用いた積層フィルムを得た。
(塗工方法、エージング方法)
前記の各種実施例、比較例溶剤型接着剤を、ドライラミネーター((株)武蔵野機械設計事務所、400m/mドライラミテストコーター)により塗工ラミネート試験を行った。試験条件はグラビア版100線/100μm、ラインスピード60m/分、塗工幅30cm、乾燥炉温度60℃で実施した。このときの塗布量は実施例及び、比較例1〜7では塗布量約5.0g/m(固形分)、比較例8では塗布量約3.0g/m(固形分)である。また、使用した基材フィルムは厚み15μmの延伸ナイロン(ONY)フィルム(ユニチカ(株)製「エンブレムON−BC」)、シーラントフィルムは厚み70μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東レ(株)製「ZK93KM」)である。次いで、この複合フィルムを40℃/3日間のエージングを行い、接着剤の硬化を行って各種積層フィルムを得た。
(評価方法)
(1)接着強度
エージングが終了した積層フィルムを、塗工方向と平行に15mm幅に切断し、ONYフィルムとCPPフィルムとの間を、(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、180度剥離方法で剥離した際の引っ張り強度を接着強度とした。接着強度の単位はN/15mmとした。接着強度が5N/15mm以上であれば実用上十分であるといえる。
(2)ヒートシール強度
エージングが終了した積層フィルムをシーラント(CPP)フィルムが内側になるように重ね、ヒートシーラー(テスター産業(株)、TP−201−B)を用い、10mm幅のシールバーで0.1MPa、1秒、210℃の条件でヒートシールした。これを15mm幅に切断し、(1)の接着強度測定と同条件、同試験装置を用いヒートシール部分を剥離した際の引っ張り強度をヒートシール強度とした。接着強度の単位はN/15mmとした。ヒートシール強度が25N/15mm以上であれば、実用上十分であると言える。
(3)フィルム貼合状態の観察
エージングが終了した積層フィルムを観察し、基材フィルムとシーラントフィルムとがずれたことにより生じるトンネリングの有無を観察した。トンネリングが生じた場合は×、トンネリングが生じない場合は○と判定した。
(4)ボイル耐性
エージングが終了した積層フィルムを沸騰水中に入れ、30分間の熱水処理を行った。処理後の積層フィルムで、基材フィルムとシーラントフィルムとが剥離が見られた場合は×、剥離が生じていない場合は○と判定した。
(5)酸素透過率
エージングが終了した積層フィルムを、モコン社製酸素透過率測定装置OX−TRAN1/50を用いてJIS−K7126(等圧法)に準じ、23℃90%RHの雰囲気下で測定した。なおRHとは、湿度を表す。なお、各実施例、比較例で用いたONYフィルムの本条件での測定値は78cc/m・day・atmであった。また、CPPフィルムでは本測定装置での測定レンジ400cc/m・day・atmをオーバーし実質的にバリア機能を持たなかった。
(6)塗工粘度測定
各種実施例、比較例で作製した塗工ラミネート直前の接着剤液の粘度を、主剤、硬化剤を混合したのち直ちに、RICOSHA製ザーンカップ粘度計#3で測定を行った。粘度計で接着剤が完全に通過するまでの秒数は今回の実施例、比較例では塗工ラミネート適性に好適である16〜18秒の範囲になるように調整している。
各実施例での接着剤の配合、及び評価結果を表1に、比較例1〜6の結果を表2に、比較例7での結果を表3に示した。
Figure 2014101422
Figure 2014101422
Figure 2014101422
以上、実施例1〜5では、Mn3000以下のジオール化合物を用いつつ、ポリイソシアネートと、ジイソシアネートを硬化剤として混合して使用することで、不揮発成分率が54質量%以上と高く、塗工ラミネート時に揮発する溶剤が少ない低VOC型の接着剤であることに加え、接着強度、ヒートシール強度のバランスが取れた接着剤を得ることができた。加えて、フィルム貼合状態も良好であり、ボイル耐性も持つ接着剤であった。さらには一定レベルの酸素バリア特性も示した。以上のように製造の容易な低分子量のジオール化合物を用いつつ、実用性の優れた接着剤とすることができた。
一方、比較例1〜6に示したとおり、Mn3000以下のジオール化合物を用いたときに、硬化剤としてポリイソシアネートまたは、ジイソシアネートのどちらか一方のみを用いた接着剤の場合には、接着強度、ヒートシール強度、ボイル耐性、且つ良好なフィルム貼合状態の全てを満たす接着剤とすることはできなかった。特にジイソシアネート化合物のみを用いた場合は全てで耐ボイル特性に問題が生じた。更に、低分子量のジイソシアネートモノマーを用いた比較例2及び5ではトンネリングが発生しトンネルからの気体のリークにより酸素透過率測定がオーバーレンジとなった。一方、ポリイソシアネート化合物のみを用いた場合には接着強度が不足する問題が生じた。
また、比較例7に示したMn6000のジオール化合物を用いた場合には、硬化剤にポリイソシアネートのみの使用で接着剤しての諸性能に問題が発生しなかったが、ドライラミネート適性に優れた塗工粘度とした場合には不揮発分が30質量%となり、ハイソリッド接着剤のように高くはできなかった。さらに酸素バリア特性も実質的に示さなかった。
本発明の接着剤は合成操作が容易な低分子量のジオール化合物を用いつつ、ラミネート時の低VOCを達成した環境対応型接着剤として産業上の利用可能性がある。
更に、一定のガスバリア性を有するため、環境対応性に優れた食品包装材等に使用が可能なフィルムラミネート用接着剤としての利用が可能である。

Claims (7)

  1. 2個の水酸基を有するジオール化合物(A)と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを含有してなる接着剤において、
    前記ジオール化合物(A)の数平均分子量(Mn)が400〜3000の範囲であり
    前記ポリイソシアネート(B)が、3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、ジイソシアネート化合物(b2)との混合物である接着剤。
  2. 前記ポリイソシアネート(B)で3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、ジイソシアネート化合物(b2)の混合比が、イソシアネート含有質量%換算で、1:5〜5:1の範囲である請求項1に記載の接着剤。
  3. ジオール化合物(A)とポリイソシアネート(B)の固形分の合計が、接着剤用樹脂組成物の総質量中40質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤。
  4. 2個の水酸基を有するジオール化合物(A)がポリオール成分と、ポリカルボン酸成分から合成される実質的に2個の水酸基を有するポリエステルジオール(a0)であって、前記ポリエステルジオール(a0)がエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むジオール成分(a1)と、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含むジカルボン酸成分(a2)を重縮合した成分を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の接着剤。
  5. オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物が、オルトフタル酸又はその無水物、ナフタレン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン1,2−ジカルボン酸又はその無水物、アントラキノン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、及び2,3−アントラセンジカルボン酸又はその無水物から成る群から選ばれる少なくとも1つのポリカルボン酸又はその無水物である請求項4に記載の接着剤。
  6. オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の、ポリカルボン酸全成分に対する使用率が70〜100質量%である請求項4に記載の接着剤。
  7. 前記3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)及び、ジイソシアネート化合物(b2)が、メタキシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、メチルフェニルエタンジイソシアネート、及びこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも一種のモノマー、オリゴマー、これらのイソシアネートと2個以上の水酸基を有するアルコールとの反応生成物からなる群から選ばれる請求項4に記載の接着剤。
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