JP2014092019A - 防舷材及びその受衝部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】受衝部材が前方から荷重を受けたときにマウント部から後面板に加えられる応力をより効率よく連結片によって分散させることができる受衝部材と、この受衝部材が防舷材本体の前面部に設置された防舷材とを提供する。
【解決手段】防舷材本体の前面部に設置される受衝部材であって、防舷材本体側に位置する後面板と、該後面板に対峙する前面板と、該前面板と後面板とを連結した連結片と、該後面板の後面に結合した後面板結合部を有するマウント部とを備えた受衝部材において、該連結片の後端断面と、該後面板結合部の前端断面とを、防舷材本体の軸心線と略直交する共通の投影面に投影した場合に、該投影面内において、該連結片の後端断面のうち該後面板結合部の前端断面と重なった部分の面積は、該後面板結合部の前端断面の全体の面積の25%以上であることを特徴とする受衝部材。
【選択図】図1

Description

本発明は、岸壁等に取り付けられる防舷材本体の前面部に設置される受衝部材に関する。また、本発明は、この受衝部材を備えた防舷材に関する。
なお、本発明において、受衝部材の後方とは防舷材本体側をいい、前方とは防舷材本体と反対側をいう。
防舷材は、一般にゴム等の緩衝性材料よりなる防舷材本体と、該防舷材本体の前面部に設置された受衝部材とを備えている(例えば特許文献1)。特許文献1の受衝部材は、防舷材本体側に位置する後面板と、該後面板に対峙する前面板と、該前面板と後面板とを連結した連結片と、該後面板の後面に設けられたマウント部とを備えている。受衝部材は、このマウント部を介して防舷材本体に連結される。特許文献1の受衝部材においては、連結片は、後面板及び前面板に沿って一方向に延在した複数個の第1方向延在部と、該第1方向延在部と直交方向に延在した複数個の第2方向延在部とを有し、これらが格子状に交わって互いに連結されたものとなっている。
特許文献1の第1〜3図の実施形態では、マウント部は、後面板の後面に沿って延在した板状であり、受衝部材の前方側からマウント部を貫通して防舷材本体にボルトが締め込まれることにより、受衝部材が該マウント部を介して防舷材本体に連結されている。
特許文献1の第6図の実施形態では、マウント部は、後面板から後方へ延出した台座部と、該台座部の後端側に連なり、防舷材本体の前端面に沿って配置される取付座部とを有している。台座部は筒状のものであり、その軸心線方向を前後方向として配置され、その前端部が後面板の後面に結合され、後端部が取付座部の前面に結合されている。台座部の軸心線方向と直交方向における取付座部の外径は、該台座部の外径よりも大きなものとなっている。取付座部の台座部との結合部よりも外周側の部分には、該取付座部を前後方向に貫通したボルト挿通孔が設けられている。このボルト挿通孔を介して取付座部の前方から防舷材本体にボルトが締め込まれることにより、受衝部材が該マウント部を介して防舷材本体に連結される。
特開平11−43921号公報
特許文献1では、受衝部材の内部の連結片は、該受衝部材の後面板に結合されたマウント部の形状とは無関係に格子状に配設されているが、受衝部材が前方から荷重を受けたときにマウント部から後面板に加えられる応力をより効率よく連結片によって分散させることができる受衝部材が望まれている。
本発明は、受衝部材が前方から荷重を受けたときにマウント部から後面板に加えられる応力をより効率よく連結片によって分散させることができる受衝部材と、この受衝部材が防舷材本体の前面部に設置された防舷材とを提供することを目的とする。
本発明(請求項1)の受衝部材は、防舷材本体の前面部に設置される受衝部材であって、防舷材本体側に位置する後面板と、該後面板に対峙する前面板と、該前面板と後面板とを連結した連結片と、該後面板の後面に結合した後面板結合部を有するマウント部とを備えた受衝部材において、該連結片の後端断面と、該後面板結合部の前端断面とを、防舷材本体の軸心線と略直交する共通の投影面に投影した場合に、該投影面内において、該連結片の後端断面のうち該後面板結合部の前端断面と重なった部分の面積は、該後面板結合部の前端断面の全体の面積の25%以上であることを特徴とするものである。
請求項2の受衝部材は、請求項1において、前記投影面内において、前記後面板結合部の前端断面の略全体に前記連結片の後端断面が重なっていることを特徴とするものである。
請求項3の受衝部材は、請求項1又は2において、前記後面板結合部の少なくとも一部と、その前方位置に存在した前記連結片の少なくとも一部とは、前記後面板に沿って該後面板の所定位置からの放射方向に延在していることを特徴とするものである。
請求項4の受衝部材は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記マウント部は、前記後面板結合部の後端が連なる取付座部を有していることを特徴とするものである。
請求項5の受衝部材は、請求項4において、前記マウント部は、前記後面板から後方に延出し、後端が前記取付座部に連なる軸状部を有しており、前記後面板結合部の少なくとも一部は、該軸状部から該後面板の後面に沿って放射方向に延在していることを特徴とするものである。
請求項6の受衝部材は、請求項5において、前記軸状部は、前記後面板を貫いて前記前面板と前記取付座部とを連結していることを特徴とするものである。
請求項7の受衝部材は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記連結片の後端に、前記後面板の前面に重なるフランジ部が設けられていることを特徴とするものである。
請求項8の防舷材は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の受衝部材が防舷材本体の前面部に設置されたものである。
本発明(請求項1)の受衝部材にあっては、連結片の後端断面と、マウント部の後面板結合部の前端断面とを、防舷材本体の軸心線と略直交する共通の投影面に投影した場合に、該投影面内において、該連結片の後端断面のうち該後面板結合部の前端断面と重なった部分の面積は、該後面板結合部の前端断面の全体の面積の25%以上となっている。そのため、受衝部材が前方から荷重を受けたときに、後面板結合部から後面板に加えられる応力を連結片によって効率よく分散させることができる。これにより、受衝部材の各部の要求強度を比較的低く設定することが可能となる。その結果、受衝部材の軽量化や、受衝部材の材料コストの削減を実現することが可能となる。なお、この25%以上との数値範囲は、本発明者らが受衝部材の構成を種々変更してコンピュータシミュレーションや実機試験等を繰り返し、顕著な応力分散効果が得られる範囲を特定したものである。本発明において、防舷材本体の軸心線とは、防舷材本体の前端面及び後端面の図心位置を通る前後方向の軸線をいう。例えば防舷材本体が略円筒形状のものである場合には、この防舷材本体の軸心線とは、実質的に、この円筒の軸心線に合致する。防舷材本体の軸心線と略直交するとは、投影面の直交方向(法線方向)が防舷材本体の軸心線に対し若干(好ましくは5°以下)傾いていてもよいことを示している。
請求項2の通り、前記投影面内において、後面板結合部の前端断面の略全体に連結片の後端断面が重なっていることが好ましい。なお、本発明において、後面板結合部の前端断面の略全体とは、該前端断面の50%以上好ましくは75%以上をいう。このように構成することより、受衝部材が前方から荷重を受けたときに、該後面板結合部から後面板に加えられた応力を連結片によって一層効率よく分散させることができる。
請求項3の通り、後面板結合部と、その前方位置に存在した連結片とを後面板に沿って該後面板の所定位置(例えば防舷材本体の軸心位置と対応する位置)から放射方向に延在させることにより、受衝部材が前方から荷重を受けたときに後面板結合部から後面板に加えられる応力がこれらの後面板結合部及び連結片に沿って放射状に広範囲に分散されるため、後面板に加えられる応力を一層効率よく分散させることができる。
請求項4の通り、マウント部に、後面板結合部の後端が連なる取付座部を設けることにより、後面板結合部の後端側をこの取付座部を介して防舷材本体にしっかりと連結することができる。また、後面板結合部の後端側がこの取付座部によって支持されるため、後面板結合部による受衝部材の支持剛性が高いものとなる。
請求項5の通り、後面板から後方に延出し、後端が取付座部に連なる軸状部を設けることにより、受衝部材がこの軸状部によっても支持されるため、受衝部材が前方から荷重を受けたときに後面板結合部から後面板に加えられる応力が緩和される。そして、後面板結合部をこの軸状部から放射方向に延在させることにより、この軸状部によって緩和された後面板の応力がさらに後面板結合部に沿って軸状部から放射状に広範囲に分散される。その結果、受衝部材の各部の要求強度をより低く設定することが可能となる。
請求項6の通り、この軸状部を、後面板を貫いて前面板と取付座部とを連結したものとすることにより、受衝部材が前方から荷重を受けたときに後面板結合部から後面板に加えられる応力を一層緩和することができる。
請求項7の通り、連結片の後端に、後面板の前面に重なるフランジ部を設けることにより、連結片の後端側と後面板の前面との接触面積が大きくなるため、連結片の後面板への結合強度が向上する。また、このフランジ部により後面板の剛性が高まるため、これを考慮して後面板自体の強度を比較的低く設定することができる。なお、連結片の後端にフランジ部が設けられている場合、前記投影面に投影される連結片の後端断面とは、このフランジ部を含んでいてもよく、このフランジ部を含んでいなくてもよい。
本発明(請求項8)の防舷材は、かかる本発明の受衝部材が防舷材本体の前面部に設置されたものであるため、受衝部材が前方から荷重を受けたときに、後面板結合部から後面板に加えられる応力を連結片によって効率よく分散させることができる防舷材の構成とすることができる。また、防舷材を全体として比較的軽量で且つ低コストに構成することが可能である。また、防舷材が軽量となることにより、防舷材を岸壁等の防舷材設置面に固定するための固定構造の要求強度も比較的低く設定することが可能となる。
(a)図は実施形態に係る受衝部材を備えた防舷材の断面斜視図であり、(d)図のIA−IA線に沿う断面を示している。(b)図は(a)図において受衝部材の前面板を透視した状態を示す透視断面斜視図である。(c)図は(a)図の受衝部材のマウント部の斜視図である。(d)図は(b)図のID部分(受衝部材の後面板のマウント部結合領域付近)の正面図である。(e)図は(d)図のIE−IE線に沿う断面図である。(f)図は(d)図のIF−IF線に沿う断面図である。 (a)図は比較例に係る受衝部材を備えた防舷材の部分透視断面斜視図であり、防舷材本体の軸心線方向に沿う断面を示し、且つ、受衝部材の前面板を透視した状態を示している。(b)図は(a)図のIIB部分(受衝部材の後面板のマウント部結合領域付近)の正面図である。(c)図は(b)図のIIC−IIC線に沿う断面図である。 実施例及び比較例における後面板の応力分布を示す図である。
以下に、実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、略円筒形状の防舷材本体を備えたタイプの防舷材への本発明の適用例を示しているが、本発明は、これ以外のタイプの防舷材(例えばアーチ形状の防舷材)にも適用可能である。
[実施形態]
防舷材1は、岸壁等の防舷材設置面(図示略)に取り付けられる防舷材本体2と、該防舷材本体2の前面部に設けられた受衝部材10とを備えている。防舷材本体2は、ゴム等の緩衝性材料よりなる。この実施形態では、防舷材本体2は、略円筒形状のものであり、その軸心線方向の一端側の端面(後端面)が防舷材設置面と対面するように配置され、ボルト等の固定手段(図示略)により該防舷材設置面に固定される。防舷材本体2の軸心線方向の他端側の端面(前端面)に、受衝部材10の後面に設けられたマウント部20が連結されている。第1図(a),(b)の通り、防舷材本体2は、前端側ほど内径及び外径が小さくなるテーパ形状となっている。防舷材本体2の内部には、その前端面に沿って鉄等の剛性材料からなる埋込部材3が埋設されている。埋込部材3には、防舷材本体2の前端面の周方向に所定の間隔をあけて複数個の雌ねじ孔4(第1図(e))が設けられている。
第1図(a),(b),(d)〜(f)の通り、受衝部材10は、防舷材本体2側に位置する後面板11と、該後面板11に対峙する前面板12と、該後面板11と前面板12とを連結した連結片14と、該後面板11の後面に結合されたマウント部20等を備えている。前面板12は、後面板11から前方に間隔をあけて配置されている。後面板11が受衝部材10の後面を構成し、前面板12が受衝部材10の前面を構成している。後面板11及び前面板12の周縁部同士は、側面板13によって連結されている。この側面板13により、受衝部材10がより剛性の高いものとなり、また受衝部材10内への海水等の浸入が防止される。連結片14は、これらの後面板11、前面板12及び側面板13によって取り囲まれた受衝部材10の内部に配置されている。この実施形態では、後面板11の略中央部が、マウント部20が結合されたマウント部結合領域11aとなっている。前面板12の前面には、重量平均分子量が50万以上の超高分子量ポリエチレン板等の緩衝性材料よりなるパッド(図示略)が取り付けられる。連結片14の詳細については後述する。
この実施形態では、マウント部20は、後面板11から後方に延出した台座部21と、該台座部21の後端側に連なり、防舷材本体2の前端面に沿って配置された取付座部22とを備えている。この実施形態では、台座部21は、後面板11から後方に延出し、後端が取付座部22に連なる軸状部21aと、該軸状部21aの周囲に配置され、後面板11の後面に結合された複数個の後面板結合部21bとを有している。各後面板結合部21bの後端も取付座部22に連なっている。この実施形態では、各後面板結合部21bの前端断面とは、各後面板結合部21bの、後面板11の後面に沿う断面である。即ち、この実施形態では、第1図(c)における各後面板結合部21bの前端面(取付座部22と反対側の端面)がそれぞれ請求項1における後面板結合部の前端断面に相当する。
この実施形態では、軸状部21aは、略円筒状のものであり、その軸心線方向を略前後方向として防舷材本体2と略同軸状に配置されている。この実施形態では、第1図(e)の通り、軸状部21aは、前端側が受衝部材10の内部に配置され、前面板12の後面に溶接等の結合手段により結合されている。軸状部21aの後端側は、後面板11のマウント部結合領域11aの略中央部に設けられた開口11bを介して受衝部材10の外部且つ後方に延出している。即ち、この実施形態では、軸状部21aは、後面板11を貫いて前面板12と取付座部22とを連結したものとなっている。開口11bの内周縁は、軸状部21aの軸心線方向の途中部の外周面に溶接等の結合手段により結合されている。
取付座部22は、この実施形態では略円板状のものであり、軸状部21aと略同心状に配置され、前面が該軸状部21aの後端に結合されている。取付座部22の外径は軸状部21aの外径よりも大きなものとなっている。取付座部22の軸状部21aとの結合部よりも外周側の部分には、その周方向に所定の間隔をあけて複数個のボルト挿通孔22aが設けられている。これらのボルト挿通孔22aは、埋込部材3の各雌ねじ孔4にそれぞれ重なるように設けられている。マウント部20は、取付座部22が防舷材本体2の前端面に沿って配置され、取付座部22の前方側から各ボルト挿通孔22aを介して各雌ねじ孔4にボルト5が締め込まれることにより、防舷材本体2の前端面に連結されている。なお、マウント部20の防舷材本体2への連結方法はこれに限定されない。
この実施形態では、後面板結合部21bは、後面板11の後面に沿って軸状部21aから放射方向に延在している。この実施形態では、軸状部21aの周方向に間隔をあけて複数個の後面板結合部21bが設けられている。後面板結合部21bの個数は、3〜24個特に6〜12個が好ましく、6〜8個がさらに好ましく、軸状部21aの周方向に隣り合う後面板結合部21b,21b同士の間の開き角θ(第1図(c))は15〜120°特に30〜60°であることが好ましく、さらに45〜60°であることが好ましい。この実施形態では、各後面板結合部21bは、さらに、各ボルト5の締め込み作業性の観点から、各ボルト挿通孔22aから該周方向に所定距離離隔した位置に配置されている。この実施形態では、第1図(c)の通り、該周方向に隣り合うボルト挿通孔22a,22a同士の略中間にそれぞれ後面板結合部21bが配置されている。なお、各後面板結合部21bの配置はこれに限定されない。例えば、該周方向に隣り合うボルト挿通孔22a,22a同士の間に2個以上の後面板結合部21bが配置されてもよい。
この実施形態では、後面板11の後面に沿う軸状部21aからの放射方向における各後面板結合部21bの長さ(以下、単に各後面板結合部21bの長さということがある。)は、同方向における取付座部22の軸状部21aとの結合部よりも外周側の部分の幅と略同等となっている。なお、各後面板結合部21bの長さはこれに限定されない。
この実施形態では、各後面板結合部21bは、略方形板状のものであり、その板面の延在方向を後面板11の後面と略直交方向且つ軸状部21aからの略放射方向として該軸状部21aの周囲の後面板11と取付座部22との間のスペースに配置されている。各後面板結合部21bの該放射方向中心側の端部は軸状部21aの外周面に結合され、各後面板結合部21bの後端部は、取付座部22の軸状部21aとの連結部よりも外周側の部分の前面に結合されている。なお、マウント部20は、軸状部21a、各後面板結合部21b及び取付座部22が初めから一体に成形されたものであってもよく、これらのうちの少なくとも一部が他の部分と別々に成形された後、溶接等の結合手段により結合一体化されたものであってもよい。各後面板結合部21bの前端部は溶接等の結合手段により後面板11の後面に結合されている。
この実施形態では、連結片14は略帯板状のものであり、その板面を後面板11の前面及び前面板12の後面と略直交方向として配置され、後端側が該後面板11の前面に溶接等により結合されると共に、前端側が該前面板12の後面に溶接等により結合されている。この実施形態では、連結片14の後端側に、後面板11の前面に沿って該連結片14から側方へ張り出すフランジ部15が形成されている。このフランジ部15が後面板11の前面に重なることにより、連結片14の後端側と後面板11の前面との接触面積が大きくなるため、連結片14の後面板11への結合強度が向上する。また、このフランジ部15により後面板11の剛性が高まるため、これを考慮して後面板11自体の強度を比較的低く設定することができる。なお、連結片14の前端側にも、前面板12の後面に沿って該連結片14から側方へ張り出すフランジ部が設けられてもよい。この実施形態では、連結片14の後端断面とは、該連結片14の、後面板11の前面に沿う断面である。本発明において、この連結片14の後端断面とは、フランジ部15を含んでいてもよく、フランジ部15を含んでいなくてもよい。
この実施形態では、連結片14のうち、後面板11のマウント部結合領域11aに配置された部分は、開口11bの周縁部から放射方向に延在した放射方向延在部14aとなっている。この放射方向延在部14aは、マウント部20の後面板結合部21bと同数個設けられており、それぞれ、後面板14を挟んで各後面板結合部21bの前方に存在する位置に配置されている。各放射方向延在部14aの該放射方向中心側の端部は、受衝部材10内に配置された軸状部21aの前端側の外周面に溶接等の結合手段により結合されている。
本発明においては、各放射方向延在部14aの後端断面と各後面板結合部21bの前端断面とを、防舷材本体2の軸心線と略直交する共通の投影面に投影した場合に、該投影面内において、各放射方向延在部14aの後端断面のうち各後面板結合部21bの前端断面と重なった部分の面積は、各々が重なった後面板結合部21bの前端断面の全体の面積の25%以上となっている。特に、各放射方向延在部14aは、各後面板結合部21bの前端断面の略全体に重なっていることが好ましい。なお、本発明において、後面板結合部21bの前端断面の略全体とは、該前端断面の50%以上好ましくは75%以上をいう。本発明においては、各放射方向延在部14aの開口11bからの放射方向の長さ(以下、単に放射方向延在部14aの長さということがある。)は、各後面板結合部21bの長さよりも大きくてもよい。各放射方向延在部14aの厚さは、各後面板結合部21bの厚さと同等であってもよく、異なっていてもよい。
この実施形態では、第1図(d)〜(f)の通り、各放射方向延在部14aの長さは、各々が対向する後面板結合部21bの長さよりも大きなものとなっており、各放射方向延在部14aの放射方向の先端側は、各後面板結合部21bよりも後面板11の外周側まで延在している。このように構成することにより、各後面板結合部21bから後面板11に加えられる応力が各放射方向延在部14aを介してより広範囲に分散されるようになる。この場合、各放射方向延在部14aの長さは、各々が対向する後面板結合部21bの長さの0.5〜5.0倍特に1.0〜3.0倍であることが好ましく、さらに2.0〜3.0倍であることが好ましい。各放射方向延在部14aは、マウント部結合領域11aよりも後面板11の外周側まで(最長で側面板13まで)延在していてもよい。この実施形態では、第1図(f)の通り、各放射方向延在部14aの厚さは各後面板結合部21bの厚さと同等となっているので、前記投影面内において、各後面板結合部21bの前端断面の全体に各放射方向延在部14aの後端断面が重なる。従って、この実施形態では、各放射方向延在部14aの後端断面と各後面板結合部21bの前端断面とを前記投影面に投影してなる投影図は、実質的に、第1図(d)から各放射方向延在部14aの輪郭線以外の線を消去した如きものとなる。
第1図(b),(d)の通り、この実施形態では、マウント部結合領域11aよりも後面板11の外周側(マウント部非結合領域)には、連結片14として、後面板11及び前面板12に沿って一方向(以下、便宜上、縦方向という。)に延在した複数個の縦方向延在部14bと、後面板11及び前面板12に沿って該縦方向延在部14bと直交方向(以下、便宜上、横方向という。)に延在した複数個の横方向延在部14cとが設けられている。これらの縦方向延在部14bと横方向延在部14cとは、互いに格子状に交わるように配置され、溶接等の結合手段により結合されている。なお、該縦方向延在部14bと横方向延在部14cとの交差角度は直角に限定されない。また、該縦方向延在部14b及び横方向延在部14cとさらに斜交する連結片が存在していてもよい。
マウント部結合領域11aは、1対の縦方向延在部14b及び1対の横方向延在部14cによって取り囲まれている。各放射方向延在部14aの放射方向の先端側は、これらの縦方向延在部14b及び横方向延在部14cのいずれかに対し溶接等の結合手段により結合されている。
マウント部結合領域11a内には、マウント部20の後面板結合部21bの前方に位置しない連結片14が存在してもよい。例えばこの実施形態では、マウント部結合領域11aの補強のために、一部の放射方向延在部14a,14a同士の間にも縦方向延在部14bが配材されている。また、互いに隣り合っているが、各々の放射方向の先端側が共通の縦方向延在部14b又は横方向延在部14cに結合されていない放射方向延在部14a,14a同士の間には、これらの先端部同士を連結するように先端連結用連結片14dが配材されている。ただし、連結片14の配置はこれに限定されない。
受衝部材10及びマウント部20は、それぞれ、全体が鉄等の剛性材料により構成されている。受衝部材10及びマウント部20の具体的な材質や、各部の肉厚等の寸法は、該受衝部材10に加えられる荷重の最大許容値等に応じて適宜設定される。
このように構成された受衝部材10が防舷材本体2の前面部に設置された防舷材1において、該受衝部材10に対し船舶等の接岸物が接触した場合、該接岸物からの荷重により、防舷材本体2は、その軸心線方向の途中部を拡径させつつ該軸心線方向に潰れるように変形して衝撃を吸収する。その際、受衝部材10の後退に伴ってマウント部20が防舷材本体2の内方へ潜り込むことにより、防舷材本体に直に受衝部材が取り付けられた防舷材に比べて、防舷材本体2の変形量が大きなものとなる。これにより、防舷材1は、より高い衝撃吸収性能を発揮することができる。
この受衝部材10にあっては、前記投影面内において、各放射方向延在部14aの後端断面のうち各後面板結合部21bの前端断面と重なった部分の面積は、各々が重なった後面板結合部21bの前端断面の全体の面積の25%以上となっている(特に好ましくは各後面板結合部21bの前端断面の略全体に各放射方向延在部14aの後端断面が重なっている)ので、受衝部材10が前方から荷重を受けたときに各後面板結合部21bから後面板11に加えられる応力をより効率よく各放射方向延在部14aによって分散させることができる。これにより、受衝部材10の各部の要求強度を比較的低く設定することが可能となる。その結果、受衝部材10の軽量化や、受衝部材10の材料コストの削減を実現することが可能となる。
この実施形態では、マウント部20の各後面板結合部21bと、連結片14の各放射方向延在部14aとは、それぞれ後面板11に沿って軸状部21aから放射状に延在したものとなっている。これにより、受衝部材10が前方から荷重を受けたときに各後面板結合部21bから後面板11に加えられる応力がこれらの後面板結合部21b及び放射方向延在部14aに沿って放射状に広範囲に分散されるため、後面板11に加えられる応力を一層効率よく分散させることができる。
上記の実施形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の構成をもとりうる。例えば、マウント部20の台座部21は、軸状部21aが省略され、各後面板結合部21bが防舷材本体2の軸心位置から後面板11の後面に沿って放射状に延在した構成であってもよい。
上記の実施形態では、各後面板結合部21bは、全体が後面板11の後面に沿って軸状部21aから放射方向に延在したものとなっているが、該放射方向以外の方向に延在していてもよい。また、上記の実施形態では、各後面板結合部21bは、全体が後面板11の後面に沿って一直線状に延在しているが、L字状やT字状、Y字状、X字状、ジグザグ状、円弧状など、一直線状以外の形状に延在していてもよい。例えば、各後面板結合部21bは、少なくとも一部が軸状部21aの周方向に円弧状に延在していてもよい。
上記の実施形態では、軸状部21aの前端側が受衝部材10の内部に配置されているが、軸状部21aの前端側を受衝部材10の内部に配置する代わりに、該軸状部21aと略同一径の略円筒状の連結片を該軸状部21aと同軸状に受衝部材10の内部に配材してもよい。
上記の実施形態では、軸状部21aは、断面円形状となっているが、軸状部21aの断面形状はこれに限定されない。軸状部21aは、例えば断面楕円形や断面多角形状などであってもよい。また、上記の実施形態では、軸状部21aは、内部に空洞を有した筒状となっているが、内部に空洞を有しない中実な棒状であってもよい。
後面板11の後面に2個以上のマウント部20が設けられてもよい。
[比較例]
第2図(a)〜(c)の比較例に係る防舷材1Aにおいては、受衝部材10A内に配置された連結片14Aは、特許文献1と同様に、全体が、互いに格子状に交わった複数個の縦方向延在部14b及び横方向延在部14cのみから構成されている。
この受衝部材10Aを防舷材本体2に連結したマウント部20Aは、台座部21Aの軸状部21a’の前端面が各後面板結合部21bの前端面と面一状となっている。この軸状部21a’の前端側は、受衝部材10Aの内部に配置されることなく、後面板11の後面に突き当てられて溶接等の結合手段により該後面板11に結合されている。
この防舷材1Aのその他の構成は、実施形態に係る防舷材1と同様であり、第2図(a)〜(c)において第1図(a)〜(f)と同一符号は同一部分を示している。
この防舷材1Aにあっては、第2図(b)の通り、後面板11のマウント部結合領域11aにも、直交2方向にそれぞれ延在した縦方向延在部14b及び横方向延在部14cが配設されている。各縦方向延在部14b及び横方向延在部14cは、マウント部20Aの各後面板結合部21bの全体には対向せず、各後面板結合部21bの前方を横切っている部分が局所的に対向したものとなっている。かかる防舷材1Aにあっては、連結片14(縦方向延在部14b及び横方向延在部14c)の後端断面と各後面板結合部21bの前端断面とを、防舷材本体2の軸心線と略直交する共通の投影面に投影した場合に、該投影面内において、該連結片14の後端断面のうち各後面板結合部21bの前端断面と重なった部分の面積は、各後面板結合部21bの前端断面の全体の面積の25%に満たない。
[荷重負荷実験]
実施形態に係る防舷材1の受衝部材10と、比較例に係る防舷材1Aの受衝部材10Aとにそれぞれ前方から同一の条件で荷重を加え、後面板11に対しマウント部20,20Aの各後面板結合部21bから加えられた応力の分布をFEM解析した(使用プログラム:汎用構造解析プログラムMSC.MarcMentat、要素数:受衝部材(前面板+後面板+連結片+マウント部)16000個、防舷材本体4000個、要素タイプ:8節点ソリッド要素)。
第3図(a),(b)にそれぞれの測定結果を示す。
[考察]
第3図(a)の通り、実施形態に係る防舷材1にあっては、後面板11に加えられた応力のピーク領域は、放射方向延在部14aに沿って広い範囲にわたっている。これにより、応力が放射方向延在部14aにより効果的に分散されていることが分かる。
これに対し、第3図(b)の通り、比較例に係る防舷材1Aにあっては、後面板11に加えられた応力のピーク領域は、各後面板結合部21bと縦方向延在部14b又は横方向延在部14cとの交点に集中していることがわかる。そのため、比較例に係る防舷材1Aにあっては、このように応力が集中しても十分に耐えうるように後面板11を高強度とする必要があり、重量及び材料コストが嵩む。
1,1A 防舷材、2 防舷材本体、10 受衝部材、11 後面板、12 前面板、14 連結片、20,20A マウント部、21,21A 台座部、21a,21a’ 軸状部、21b 後面板結合部、22 取付座部

Claims (8)

  1. 防舷材本体の前面部に設置される受衝部材であって、
    防舷材本体側に位置する後面板と、
    該後面板に対峙する前面板と、
    該前面板と後面板とを連結した連結片と、
    該後面板の後面に結合した後面板結合部を有するマウント部と
    を備えた受衝部材において、
    該連結片の後端断面と、該後面板結合部の前端断面とを、防舷材本体の軸心線と略直交する共通の投影面に投影した場合に、該投影面内において、該連結片の後端断面のうち該後面板結合部の前端断面と重なった部分の面積は、該後面板結合部の前端断面の全体の面積の25%以上であることを特徴とする受衝部材。
  2. 請求項1において、
    前記投影面内において、前記後面板結合部の前端断面の略全体に前記連結片の後端断面が重なっていることを特徴とする受衝部材。
  3. 請求項1又は2において、前記後面板結合部の少なくとも一部と、その前方位置に存在した前記連結片の少なくとも一部とは、前記後面板に沿って該後面板の所定位置からの放射方向に延在していることを特徴とする受衝部材。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記マウント部は、前記後面板結合部の後端が連なる取付座部を有していることを特徴とする受衝部材。
  5. 請求項4において、前記マウント部は、前記後面板から後方に延出し、後端が前記取付座部に連なる軸状部を有しており、
    前記後面板結合部の少なくとも一部は、該軸状部から該後面板の後面に沿って放射方向に延在していることを特徴とする受衝部材。
  6. 請求項5において、前記軸状部は、前記後面板を貫いて前記前面板と前記取付座部とを連結していることを特徴とする受衝部材。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項において、前記連結片の後端に、前記後面板の前面に重なるフランジ部が設けられていることを特徴とする受衝部材。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の受衝部材が防舷材本体の前面部に設置された防舷材。
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