JP2014089193A - 発光タンパクによる長期モニタリング方法および解析方法 - Google Patents

発光タンパクによる長期モニタリング方法および解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、肉眼で見えないような微弱光を発生する発光タンパクを導入した試料でも、試料に対するダメージが殆ど無く、所望のモニタリングや解析が可能な方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、生きた試料を発光タンパクに基づく発光により長期にモニタリングする方法において、生物学的活性を損なわない処理条件で、モニタリングすべき項目に応じた発光タンパクを導入した前記試料を、基質成分によって化学的に誘起し、所望のモニタリング期間中、前記発光の誘起及び撮像を継続的に実行し、前記処理条件に応じて設定された撮像条件の下で複数の異なる時間に対応する光学イメージを得、前記複数の光学イメージを前記撮像条件に応じた出力条件によりモニター表示する、ことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、細胞や組織等の試料中における生物学的活性をその活性を極力損なわないようにして長期間ないし連続的に検出するモニタリング方法および解析方法に関する。本発明は、その方法を実行する装置や、該装置による方法を機能させるソフトウェアも包含する。
生物学分野や医学分野の研究において、細胞等の生体試料の生物学的活性をレポータアッセイにより検出する技術が広く利用されてきた。レポータアッセイを用いると、視覚的に調べることが不可能な様様な生物学的活性を可視化することができる。従来の臨床的な検査は、生体試料から調べたい生体関連物質(核酸、血液、ホルモン、タンパク質等)のみを種々の分離方法により単離して、その単離した生体関連物質の量や活性を試薬と反応させていた。しかし、生命体においては、多様な生体関連物質同士の相互作用こそが真の生物学的活性を示すものである。近年、医療用薬剤を研究または開発する場合、生きた生体試料中での生物学的活性に対して最も効果的に作用する薬剤が決定的条件となっている。生きた生体試料を対象としたレポータアッセイには、生体試料と調べたい生体関連物質とを画像化して、生体試料内外における動的変化を経時的に観察する必要性が高まってきている。
具体的には、レポーター物質としての発光(生物発光、化学発光)や蛍光を用いる観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子の動的な機能発現を捉えるためにタイムラプス(time lapse)や動画撮像が求められている。現状では、蛍光試料を対象として撮像した画像による動的変化の観察(例えば、蛍光を利用したタンパク質1分子の動画観察)が行われている。蛍光試料の撮像の場合、励起光を照射し続けることで蛍光試料から発せられる光量が時間の経過とともに減少するという性質があるため、定量的な評価に利用できる安定した画像を経時的に撮ることが困難であったが、しかし、鮮明な、つまり、空間分解能の高い画像を短い露出時間で撮ることができた。一方、発光試料を対象とした画像による動的変化の経時的観察においては、発光試料からの発光が極めて小さいので、発光試料の観察には、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラを用いて行われていた。発光試料の撮像の場合、励起光を照射する必要がないため、定量的な評価に利用できる安定した画像を経時的に撮ることができた。
これまで、発光試料の観察においては、発光試料からの発光量の測定が行われていた。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子が導入された細胞の観察では、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さ(具体的には発現量)を調べるために、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量の測定が行われていた。そして、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量の測定は、まず細胞を溶解した細胞溶解液とルシフェリンやATPやマグネシウムなどを含む基質溶液とを反応させ、ついで基質溶液と反応させた細胞溶解液からの発光量を光電子増倍管を用いたルミノメーターで定量する、という手順で行われていた。つまり、発光量は細胞を溶解した後に測定されていた。これにより、ある時点でのルシフェラーゼ遺伝子の発現量を細胞全体の平均値として測定することができた。ここで、ルシフェラーゼ遺伝子などの発光遺伝子をレポーター遺伝子として細胞に導入する方法には例えばリン酸カルシウム法やリポフェクチン法やエレクトロポーション法などがあり、各方法は目的や細胞の種類の違いに応じて使い分けられている。また、ルシフェラーゼ遺伝子がレポーター遺伝子として導入された細胞においてルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さをルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量を指標として調べる際、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の上流や下流に目的のDNA断片を繋ぐことで当該DNA断片がルシフェラーゼ遺伝子の転写に及ぼす影響を調べることができ、また、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の転写に影響を及ぼすと思われる転写因子などの遺伝子を発現ベクターに繋いでルシフェラーゼ遺伝子と共発現させることで当該遺伝子の遺伝子産物がルシフェラーゼ遺伝子の発現に及ぼす影響を調べることができる。
また、時間経過に沿って発光遺伝子の発現量を捉えるには生きた細胞からの発光量を経時的に測定する必要がある。そして、生きた細胞からの発光量の経時的測定は、まず細胞を培養するインキュベーターにルミノメーターの機能を付け、ついで培養している全細胞集団からの発光量をルミノメーターで一定時間ごとに定量する、という手順で行われていた。これにより、一定の周期性をもった発現リズムなどを測定することができ、よって、細胞全体における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることができた。ルミノメーターによる測定感度を充分確保するために、ホタルルシフェリンのような汎用の基質溶液を1mM以上の濃度で細胞を処理するようにしていた。この濃度設定においては、細胞を取り出して処理するので、培養環境に戻せるような生きた状態では処理されない。
一方、発光遺伝子の発現が一過性である場合には、個々の細胞での発現量に大きなばらつきがある。例えば、HeLa細胞などのクローン化した培養細胞であっても、細胞膜表面のレセプターを介した薬剤の応答が個々の細胞でばらつくことがある。すなわち、細胞全体としての応答は検出されなくとも数個の細胞は応答している場合がある。このことから、発光遺伝子の発現が一過性である場合には、細胞全体からではなく個々の細胞から発光量を経時的に測定することが重要である。そして、顕微鏡を用いた生きた個々の細胞からの発光量の経時的測定は、各細胞の発光が極めて弱いので、液体窒素温度レベルの冷却CCDカメラで長時間露光したり、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラとフォトンカウンティング装置とを用いたりして行われていた。これにより、生きた個々の細胞における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることができた。どのような培養期間であっても、発光のための試薬条件は変更されない。
以上の説明において、例えば蛍光タンパク質をレポーター遺伝子として用いる遺伝子発現の解析方法および装置は特許文献1に開示されている。また、ルミノメーターを用いて生物発光による遺伝子発現の解析方法および装置は特許文献2に開示されている。
特表2004−500576号公報 特開2005−118050号公報
しかしながら、微弱な発光の発光試料を撮像する場合、発光試料からの発光量が極めて少ないため、どうしても肉眼では見ることが出来ず、CCDのような蓄積型の撮像手段を用いて光量を蓄積しなければ画像生成することができない、という制約が有る。しかも、単一の細胞ないし組織を構成する細胞群において、細胞1個当りから発生する微弱光は、あまりに弱過ぎるので、鮮明な画像を撮るのに必要な露出時間が長くなる、という問題点があった。即ち、撮像の時間間隔は単位時間あたりの光量に制約されるため、微弱な発光の発光試料を撮像する場合、鮮明な画像を長い時間間隔で、例えば60分間隔で、経時的に撮ることができても、10〜30分程度の短い露光時間、ひいては1〜5分の露光でリアルタイムに撮像することはできなかった、という問題点があった。特に生細胞を長時間(例えば、50分以上)露光すると、培養容器等の支持体上でさえ細胞自身が動いて鮮明な画像を形成できない場合がある。一般に、画像を用いた解析を行なうためには、正確な輪郭を認識できなければならない。従って、画像が不鮮明なときは解析結果が不正確である可能性が有る。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、肉眼で見えないような微弱光を発生する発光タンパクを導入した試料でも、試料に対するダメージが殆ど無く、所望のモニタリングや解析が可能な方法を提供することを目的とする。また、細胞を含む試料について単一細胞レベルのモニタリングや解析も可能でるような方法を提供することも目的とする。さらに、発光タンパクにより様々な光量で発光する試料を、鮮明な画像でありながら短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる発光試料撮像方法を組合わせた方法を提供することも目的とする。
発明者らは、細胞を含む生きた試料を高濃度の基質溶液で処理して画像を鮮明化しようとしたところ、長期のモニタリングまたは解析の過程において不正確な結果が生じ得ることを見出した。かかる結果は、試料の厚みを薄く調製した場合にも見出された。鮮明かつ高感度なモニタリングおよび/または解析を行うための処理条件は、長期かつ正確なモニタリングおよび/または解析を行うための処理条件と相反することが分かった。そこで、発明者らは、鋭意検討した結果、試料の処理条件と撮像条件とを関連付けることで意外にも上記の相反する問題を解決できることに気付いた。
すなわち、上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の方法は、生きた試料を発光タンパクに基づく発光により長期にモニタリングする方法において、生物学的活性を損なわない処理条件で、モニタリングすべき項目に応じた発光タンパクを導入した前記試料を、基質成分によって化学的に誘起し、所望のモニタリング期間中、前記発光の誘起及び撮像を継続的に実行し、前記処理条件に応じて設定された撮像条件の下で複数の異なる時間に対応する光学イメージを得、前記複数の光学イメージを前記撮像条件に応じた出力条件によりモニター表示する、ことを特徴とする発光タンパクによる長期モニタリング方法である。また、請求項2は、請求項1に記載の方法において、前記モニタリング期間が数日以上の場合には、前記基質を700μM以下の濃度とすることを特徴とするモニタリング方法である。また、請求項3は、請求項1に記載の方法において、前記モニタリング期間が数日未満の場合には、前記基質を800μm以上、1mM以下の濃度とすることを特徴とするモニタリング方法である。また、請求項4は、請求項1に記載の方法において、前記基質濃度を200μM以上としたことを特徴とするモニタリング方法である。
また、請求項5は、処理条件として試料のボリュームに注目して発明され、請求項1に記載の方法において、発光タンパクを導入した細胞を含む試料により単一細胞レベルのモニタリングを行なう際に適用され、細胞内で微弱な発光を発生させるための基質成分及び前記発光タンパクの発光に影響をもたらす可能性のある薬剤成分との反応性を損なわない充分な厚みであって、且つ発光に基づく光学イメージが個々の細胞を識別し得る程度に肉薄の厚みであるような撮像ボリュームに対応する光学イメージを取得することを特徴とするモニタリング方法である。請求項6は、請求項5において、前記試料が、2次元的にほぼ一定の状態に配置した細胞群からなることを特徴とするモニタリング方法である。請求項7は、請求項6において、前記細胞群を、細胞同士が撮像用の光路上でオーバーラップしない密度としたことを特徴とするモニタリング方法である。請求項8は、請求項6または7において、前記細胞群を、スライス切片ないしシート状細胞に調製したことを特徴とするモニタリング方法である。請求項9は、請求項5ないし8のいずれかに記載の方法において、前記試料を150μm以下、好ましくは100μm以下、特に85μm未満の厚みとしたことを特徴とするモニタリング方法である。請求項10は、請求項9において、40μm以上、好ましくは50μm以上の厚みとしたことを特徴とするモニタリング方法である。
また、請求項11に係る方法によれば、請求項5に記載の方法において、被検試料が肉厚の生体組織(例えば、視交差上核等の脳、胚、ゼブラフィッシュ等の微小な魚類、マウスやカエル(特にアフリカツメガエル)等の小動物ないし植物(例えばシロイヌナズナ)の一部の器官(例えば、手、足、毛根、葉、花茎、根毛)であることにより、生体組織を試料とする生物学的に有意義なモニタリング方法を提供する。また、請求項12によれば、請求項1から4のいずれかに記載の方法において、基質がホタルルシフェリンまたはセレンテラジンであることにより、遺伝学的に処理するのが容易であるので好ましい。
また、請求項13のモニタリング方法によれば、請求項1または5に記載の方法において、光学イメージングが、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上である対物レンズを含む光学条件を用いて実行されることにより、鮮明なイメージを早期に形成できる点で好ましい。ここで、前記値は、対物レンズの倍率に応じて調整するのがさらに好ましい。その他、請求項14のモニタリング方法によれば、請求項1または13に記載の方法において、1枚の発光画像を得るための露光単位時間の長さを調節する工程を含む。そして、請求項15のモニタリング方法によれば、請求項14に記載の方法において、前記単位時間で得られた画像を分割する工程をさらに含む。
また、本発明の解析方法は、請求項16に記載のように、生きた試料を発光タンパクに基づく発光により長期に解析する方法において、生物学的活性を損なわない処理条件で、解析すべき項目に応じた発光タンパクを導入した前記試料を、基質成分によって化学的に誘起し、所望のモニタリング期間中、前記発光の誘起及び撮像を継続的に実行し、前記処理条件に応じて設定された撮像条件の下で複数の異なる時間に対応する光学イメージを得、前記光学イメージに対し、前記撮像条件に応じた画像処理を行って解析に必要な情報を得る、ことを特徴とする発光タンパクによる長期解析方法である。ここで、請求項17は、請求項16に記載の方法において、前記処理条件としての基質成分の濃度が600μM以下であり、前記撮像条件が、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上であるような対物レンズを含む光学条件を用いて発光タンパクに基づく画像が得られる露光時間であることを特徴とする解析方法である。さらに、請求項18は、請求項16または17に記載の方法において、前記基質濃度を200μM以上で存在させるとともに、前記撮像条件を前記試料の生物学的活性がほぼ変化しない露光時間内としたことを特徴とする解析方法である。
また、請求項19は、請求項16において、さらに蛍光成分を含んでいる試料に適用することとされ、発光及び蛍光のそれぞれの光学イメージから前記解析に必要な情報を得ることを特徴とする解析方法である。蛍光成分は、上述した処理条件に沿うように設定され、過度な励起光を付与する必要が無いほどに微量な濃度であってよい。なお、請求項20のように、請求項19に記載の方法が、発光画像の取得に必要な時間に応じて励起光量を決定するのが好ましい。その他、請求項21は、請求項16または17に記載の方法において、1枚の発光画像を得るための露光単位時間の長さを調節する工程を含むことを特徴とする解析方法である。そして、請求項22は、請求項21に記載の方法において、前記単位時間で得られた画像を分割する工程をさらに含むことを特徴とする解析方法である。
以上のモニタリング方法および解析方法によれば、次のような特徴を有する装置または方法を包含することができる。すなわち、本発明の方法を実行する装置は、細胞又は該細胞を含む生物学的試料を検体として画像取得可能な状態に準備し、多数の前記検体からの生物学的活性に起因する微弱な光学的データを蓄積して画像解析可能な画像情報を取得する微弱光画像取得手段と連携し、前記微弱光画像を形態的に解析して個々の細胞を認識するとともに、認識した個々の細胞に対応する微弱光の光強度を網羅的に評価するための画像解析を行うことを特徴とする。ここで、前記微弱光画像取得手段がさらに異なる所望の経過時間ごとの微弱光画像を連続的ないし断続的に取得する構成を有する場合であって、1以上の同一の細胞に関する時間ごとの光強度を網羅的に解析することにより、例えば時間遺伝子の活性パターンや薬剤等による細胞内物質の応答パターンを網羅的に評価することができるようになる。また、前記認識した細胞のうち所定の光強度ないし光分布を示さない細胞については網羅的評価を行わないことにより、解析すべきでない細胞を除外して正確な評価を実施できるようになる。また、前記画像解析した全ての細胞の光強度を合計値または平均値を算出することにより、個々の細胞の評価の他に解析した細胞全体の評価も実施できるようになる。また、前記画像解析した2以上の細胞の光強度および/または光強度パターンに応じて同一または異なる細胞グループに分類することにより、解析したパターンごとに活性を評価できるようになる。場合によっては、パターンが異なる細胞ごとに活性度ないし活性変化の詳細を調べることができるようになる。特に本発明においては、後述するように、1枚の発光画像を得るための露光単位時間の長さを調節し、好ましくは単位時間で得られた画像を分割する工程をさらに含むことによって、本発明による作用効果を一層有利にする。
また、本発明の装置は、細胞又は該細胞を含む生物学的試料を検体とし、多数の前記検体を画像取得可能な状態に保持する保持手段と、前記生物学的試料から発する微弱な光学的データを蓄積して画像解析可能な画像情報を取得する微弱光画像取得手段と、前記微弱光画像を形態的に解析して個々の細胞を認識するとともに認識した個々の細胞に対応する微弱光の光強度を網羅的に評価するための画像解析手段とを備えたことを特徴とする。ここで、前記保持手段が、複数のウェルを一体化したプレートをアドレス化可能に保持する構成を有することにより、複数のウェル間の評価を同一視野内または所定の順番で行うようになるので、異なる試料または異なる薬剤等による活性評価の結果を比較したり相関させることができるようになる。この場合、前記保持手段が複数の独立した容器をアドレス化可能に保持する構成としてもよく、画像取得手段の視野に限定されず、多数の容器についての評価を行えるようになる。また、画像取得した時刻に応じた評価を行うように制御する制御手段を有することにより、経過時間ごとの同一細胞に関する解析、特定の活性を示した異なる時間同士の細胞(同一または異なる細胞)の比較解析といった多様な時間解析ができるようになる。また、前記画像解析した結果を画像情報と関連付けて表示する表示手段をさらに有することにより、解析結果の中から画像として見たい結果に対応する画像を表示できるようになる。また、前記表示手段が所望の画像情報を動画表示する構成を有することにより、1以上の所望の細胞に関する活性の変化をリアルタイムな映像でもって観察することができるようになる。動画表示としては、同一細胞に関する時間ごとの微弱光画像を画像処理により重ね合わせて臨場感を向上させるようにするとさらに好ましい。また、同一細胞に関する時系列の複数画像を駒送りで並列(ないし一部ずらしただけでもよい)表示するようにして、時間ごとの画像を全貌できるようにしてもよい。
また、本発明における解析方法は、細胞または組織内外の相互作用を解析する方法において、前記相互作用し得る物質の少なくとも一方に対して生物学的励起物質としての発光物質を標識した相互作用物質を複数の細胞内に存在せしめ、相互作用による結果としての発光を複数の細胞が含まれる撮像視野によって光学的に撮像し、撮像した同一視野中の複数の細胞画像を個別に解析する工程を含むことを特徴とする。ここで、前記個別の細胞画像における微弱光の有無および/または量が、相互作用と相関するのが好ましい。また、生物学的励起物質が、生物発光をもたらす成分を含んでいるのが好ましい。生物発光をもたらす成分が発光反応のための基質を均一に含んでいるのがさらに好ましい。
また、本発明の解析方法は、前記生物学的励起物質の活性に影響を与える化学的刺激物質との相互作用を評価する工程を含んでいるのが好ましい。また、前記生物学的励起物質の活性に影響を与える物理学的刺激との相互作用を評価する工程を含んでいるのが好ましい。また、前記生体試料が、生細胞を含んでいるのがさらに好ましい。また、前記解析工程が、同一視野中の複数の細胞を統計的に計測する計測工程を含んでいるのが好ましい。ここで、前記計測工程が少なくとも検出可能な発光を生じている細胞数を算出する工程を含んでいるのがさらに好ましい。また、前記計数工程が細胞ごとの発光量に応じたグループ別に分別する工程を含んでいるのがさらに好ましい。いずれにせよ、前記計測工程による結果情報を細胞画像上に対応付けて視認可能に表現する工程を含んでいるのが好ましい。前記表現する工程の代わりに、前記撮像工程が多数の異なるタイミングで実行されるとともに、計測工程による結果情報を、時間軸に沿ってリアルタイムに出力するか或いは発光反応の活性曲線に沿って同期させて出力する工程を含んでいる場合にも好ましい。
また、本発明の解析方法は、細胞または組織内外の相互作用を解析する方法において、前記相互作用し得る物質の少なくとも一方に対して生物学的励起物質としての発光物質を標識した相互作用物質を同一細胞または同一組織の異なる複数部位に対して同時に存在せしめ、相互作用による結果としての発光を前記細胞または組織が含まれる撮像視野によって光学的に撮像し、撮像した同一細胞ないし同一組織中の複数の部位に関する情報を撮像した画像情報に基づいて解析する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の解析方法は、細胞または組織内外の相互作用を解析する方法において、前記相互作用し得る物質の少なくとも一方に対して生物学的励起物質としての発光物質を標識した相互作用物質を同一細胞または同一組織の特定の場所ないし分布状態で存在せしめ、相互作用による結果としての発光を前記細胞または組織が含まれる撮像視野によって光学的に時系列で撮像し、撮像した同一細胞ないし同一組織中の複数の部位に関する情報を撮像した画像情報に基づいて前記発光物質の場所ないし分布状態の変化を解析する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の解析方法は、細胞または組織内外の相互作用を解析する方法において、相互作用し得る複数種類の相互作用物質を生物学的励起物質としての発光物質を標識した状態で前記細胞または組織内に存在せしめ、相互作用による結果としての発光を前記細胞または組織が含まれる撮像視野によって光学的に撮像し、撮像した画像情報に基づいて前記相互作用物質ごとに解析する工程を含むことを特徴とする。ここで、前記複数種類の相互作用物質が光学的に識別可能な異なる光特性を有する発光物質によって別々に標識されているのが好ましい。また、前記複数種類の相互作用物質のそれぞれに特異的な化学的ないし物理学的刺激を別々のタイミングで実行するのが好ましい。
以上の方法および装置は、必要とする装置構成を制御したり連携するためのソフトウェアまたは該ソフトウェアを特徴づけるコンピュータプログラムの形態で提供されてもよい。また、本発明の方法または装置を装置と同一ないし別個に配置されたデータベースと電気的に接続することにより、画像容量ないし解析情報量に制限されることなく、高速で且つ信頼性と質の高い解析結果を提供することが可能になる。
本発明によれば、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞の発光像を,以下の条件を満たす光学系で撮像することが実用面で重要な鍵を握っている。本出願人による光学的実験によれば、対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上の光学系で撮像することによって、単一の細胞から発生する発光だけで画像化できることが証明された(特願2005−267531号参照)。さらに、本出願人は、検討を進め、同一シャーレ内で培養された複数の細胞において、遺伝子発現の変動パターンが異なることも発見した。さらに、発明者が追究した光学的条件によれば、撮像装置の対物レンズを開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗で表される光学的条件が0.071以上である場合に、1〜5分以内で画像化でき、画像解析も可能な細胞画像を提供できること突き止めた。これらの発光画像を蓄積型の撮像装置により顕微鏡観察する発光解析システムを発光顕微鏡と呼ぶこととする。発光顕微鏡には、好ましくは遮光のための開閉蓋(ないし開閉窓)を具備する遮光手段を有し、この遮光手段の開閉によって必要な生体試料をセットまたは交換する。目的に応じて、生体試料を収容する容器に対して化学的ないし物理学的刺激を行なう操作を手動ないし自動で行なうようにしてもよい。最良の一形態では、発光顕微鏡は公知または独自の培養装置を搭載いる。培養装置は、長期間のシステム内での解析を可能にするように、温度、湿度、pH、外気成分、培地成分、培養液成分を最適に維持する機能を備えている。
従って、本発明の解析方法は、細胞内外の相互作用を画像情報に基づいて解析する方法において、前記相互作用し得る物質の少なくとも一方に対して生物学的励起物質としての発光物質を標識した相互作用物質を1以上の細胞内に存在せしめ、相互作用による結果としての発光を光学的に撮像し、撮像した光学的情報を単一の細胞について画像化する工程を含み、画像表現が相互作用に起因する微弱光の有無および/または量を示していることを特徴とする。
本発明においては、次の適用範囲を含むことができる。
(1)アッセイ項目
次の広範なアッセイ項目において、微弱な発光を用いた低浸襲性でかつ直接的な解析を詳細かつ正確に実行し得る。例えば、遺伝子発現異常(例えば遺伝子発現頻度の決定および/または変動のモニタリング)、体内リズム障害関連疾患(例えば睡眠障害、過労症候群、時差ボケ)、時間薬理学的応答(例えば薬物感受性または薬物代謝活性の日内変動)、日照応答リズム(例えば植物生育速度、走光性運動活性)、化学物質応答評価(創薬スクリーニング、抗癌剤効果モニタリング、移植または遺伝子治療後の細胞(ないし生体組織)の術後経過観察、水類(ないし血清)ストレス評価)、物理学的刺激応答評価(熱ショック、電気ショック、圧力ショック)、発生学的生物活性の評価が挙げられる。
(2)アッセイ原理
核内移行、レセプタ受容シグナル伝達、神経細胞成長、生体日概リズムが挙げられる。このうち、アッセイにおいて、光学的ないし熱的刺激を利用するものについては、従来の蛍光検出は複数回の励起光照射による余分な光刺激または熱上昇をもたらすが、発光においては冷光である故に、過剰な外来ビームや熱上昇による細胞への影響は殆ど無い。
(3)使用可能な機器
撮像装置(例えば光学顕微鏡、フォトマルチプライヤー型イメージャー(フォトマル)、イメージサイトメーター)、分光測定装置(例えばルミノメータ、積分球光度計、フォトンカウンター)が挙げられる。このうち、撮像装置は、フォトマルによる画像生成よりも、CCDカメラ(培養装置と一体化しているシステムにおいてインキュベーター温度による感度低下が問題になる場合には、冷却性能に優れるCCDである方が好ましい)による画像生成の方が鮮明な画質を短時間で得易い点で好ましい。但し、生物学的活性を計測する上では、上記の撮像装置、分光測定装置のいずれであってもデータが得られる。例えば、上記撮像装置において画像が生成されるより前に生物学的活性を示すに充分な発光量(ないし発光強度)が蓄積できる。従って、上記撮像手段にいずれかを用いて発光画像を取得した場合には、同じ発光画像を用いて高感度な発光データを得ることが可能である。連続的ないし経時的(ないし時系列)な解析を行う場合には、複数回の異なる時間のうち、最少1回(好ましくは初回)の発光シグナルの取得時において画像生成を行い、それ以外は画像生成することなく、好ましくは指定された部位または部分領域について、発光データのみを繰返し得るようにすれば、評価ないし解析時間のさらなる効率化が図れる。なお、本発明において、分光測定装置を使用する場合には、生物学的試料の特定部位ないし部分領域に限定した計測が可能な手段(例えば光学的絞り)と組み合わせることにより特定の単一細胞を含む若干大きめの小フレームまたは或る程度の広がりを持った細胞集団を含む大フレームによって、受光可能な最大面積よりも小さく且つ余分な領域がなるべく含まれないような受光データを連続的ないし経時的(好ましくは時系列的)に繰返し測光するようにすればよい。
(4)アッセイ対象(試料)
真核動物、シアノバクテリア由来の細胞または組織が挙げられる。医学用途において、哺乳類、特にヒトにおける検査すべき部位からバイオプシーにより切除した細胞を含む試料がとくに例示される。再生医療においては、少なくとも一部が人工的に改良ないし合成された生体試料であって、生物学的活性を良好に維持するかどうかを検査する目的に利用できる。他の一面において、本発明のアッセイ対象は、動物由来の細胞または生体組織に限らず、植物や昆虫由来の細胞または生体組織であってもよい。菌、ウイルスにおいては、従来のルミノメータでは実行されなかった容器内の部分ごとの解析が対象となり得る。ルミノメータではウェルまたはシャーレ等の容器内に無数の試料(例えば1ウェル当り100万個以上)を重積することで強大な発光量を得るようにしている。本発明では、個々の細胞が識別できる程度の密度で容器内に収容することで、個別の細胞ないし生体組織を解析できる。個別の解析には、発光している細胞だけの個数を計算する工程を含めることができるので、細胞1個当りの正確な相互作用に関する評価が行なえる。とくに、本発明によれば、励起光を必要とせず長期に微弱な発光を生じ得る発光タンパク質を用いて試料を処理することにより、生きた細胞を長期に安定且つダメージなくモニタリング及び/又は解析するのに適している。
(5)本発明が提供する有意義な用途
個々の細胞のそれぞれから発生する1種または複数種類の発光データである。一例として、細胞のそれぞれが異なる発光量または発光分布を示すことを統計的に解明する方法および装置を提供する。別の例として、同一の細胞から異なる種類の発光が同一または異なる時機に発生するかどうかを解明するマルチアッセイのための方法および装置を提供する。また、別な例として、同一の撮像領域において発光量で分類される複数の同一または異なる細胞集団を解明し、必要に応じて分類結果をヒストグラムや正規分布等のグラフィック表現を行なうような方法および装置を提供する。また、別な例として、同一の細胞(ないし組織)の特定部位ないし一定の拡がりの有る領域についての各種変化を安定的に高精度で解析する方法および装置を提供する。分布状態撮像領域において発光量で分類される複数の同一または異なる細胞集団を解明し、必要に応じて分類結果をヒストグラムや正規分布等のグラフィック表現を行なうような方法および装置を提供する。
なお、本発明においては、特筆すべきことに、培養期間に応じて基質濃度の設定を変更することにより、発光画像を長期間得ることと、細胞の生物学的活性を長期間維持することとを同時に達成できることも発明者らは見出した。従って、本発明は、培養環境下で起こり得る課題を解決し、目的を達成するために、以下のような発明も包含する。
即ち、本発明によれば、生きた細胞を発光用成分で処理するとともに、発光用成分に対し発光を誘起するための基質溶液を適宜の培養環境下で存在させることにより細胞を発光させて、細胞の発光画像に基づく解析を行うにあたり、解析すべき培養期間に応じて細胞の生物学的活性を損なわない基質濃度に設定したことを特徴とする画像解析のための生細胞の処理方法も提供する。また、前記培養期間が数日以上の場合には、前記基質を700μM以下の濃度とすることを特徴とする処理方法を提供する。また、前記培養期間が数日未満の場合には、前記基質を800μm以上、1mM以下の濃度とすることを特徴とする処理方法を提供する。本発明の処理方法は、上記のような基質濃度範囲で培養し続けることにより、生物学的活性が低下しない状態を維持しながら、培養期間中、常に画像化可能な発光量を保つものである。
他方、本発明によれば、生きた細胞を発光用成分で処理するとともに、発光用成分に対し発光を誘起するための基質溶液を適宜の培養環境下で存在させることにより細胞を発光させて、細胞の発光画像に基づく解析を行うにあたり、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上である光学的条件で細胞からの発光を収集するとともに、基質濃度を600μM以下に設定することを特徴とする生細胞の画像解析方法も提供する。また、前記光学条件としての(NA÷β)の2乗の値が0.039以上であることにより、より短時間での発光画像による解析方法を提供する。短時間で発光画像が得られれば画像解析を正確に行うに充分な画質を保証することが可能となる。また、同様の光学的条件によると、高価な極低温冷却型の撮像素子を使わずに小型且つ経済的な撮像が可能となる利点もある。従来よりも顕著に高速にイメージングを実行できる場合、動き易い細胞(神経細胞、シアノバクテリア等)の画像解析を確実に行える点で好ましい。さらに、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.071以上である場合に1分〜5分という短時間で対物レンズを用いることにより、あらゆる細胞解析において、リアルタイムなイメージングを実行できる点で好ましい。
また、本発明は発光イメージングを高い開口数(NA)の対物レンズを用いて、短かい時間間隔の画像解析を行なうことが可能になるので、あらゆる刺激応答性を見逃さない。これにより、創薬や診断において優れた方法を提供する。また、発光量の少ない発光試料[例えば、発光タンパク質{例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質}や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など]でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムな解析が可能となる。
本発明によれば、発光タンパクによるモニタリングおよび解析を、試料の生物学的活性を損なわずに長期間安定に行う方法を提供できる。
図1は、本発明の解析方法を実施するための装置の概要を示す図である。 図2は、ルシフェリン濃度が高濃度で、露光時間が極短時間の場合の発光画像の写真図面である。 図3は、ルシフェリン濃度が中間濃度で、露光時間が極短時間の場合の発光画像の写真図面である。 図4は、ルシフェリン濃度が低濃度で、露光時間が極短時間の場合の発光画像の写真図面である。 図5−1は、ルシフェリン濃度が低濃度で、露光時間を長めに設定した場合の発光画像の写真図面である。 図5−2は、各撮像条件における発光強度の比較の結果を表わしたグラフである。 図6−1は、pGL3遺伝子に対するsiRNAの阻害結果を示す画像の写真図面である。 図6−2は、2種類のディッシュにおけるpGL3遺伝子に対するsiRNAの阻害結果を示すグラフである。 図6−3は、態様1の方法および試薬キットによるRNA干渉の経時的解析の結果を示すグラフである。 図7−1は、態様2の方法に使用するルシフェラーゼ−YFPベクター(pRSETB)を示す図である。 図7−2は、それぞれの波長における発光強度の経時的変化を示したグラフである。 図7−3は、YFP(546nm)とGaussia(478nm)の強度変化を示したグラフである。 図7−4は、YFP(546nm)とGaussia(478nm)の強度変化の比を示したグラフである。 図8−1は、刺激開始前のフィルター無しの画像の写真図面である。 図8−2は、刺激開始から3時間後のフィルター無しと有りの画像を示す模式図である。 図9は、図8中の四角い領域におけるルシフェラーゼの発光とGFPの蛍光強度の経時変化を示した図である。 図10−1は、態様3の実施例2で同定を行なった際の明視野画像を示す図である。 図10−2は、態様3の実施例2で同定を行なった際の発光イメージを示す図である。 図10−3は、図10−1および図10−2の各画像を重ね合わせた画像を示す図である。 図11は、ATPによる刺激後の経過時間ごとにルシフェラーゼ活性を解析した結果を示す図である。 図12−1は、態様3の実施例3で同定を行なった際の明視野画像を示す図である。 図12−2は、実施例3で同定を行なった際の発光イメージを示す図である。 図12−3は、図12−1および図12−2の各画像を重ね合わせた画像を示す図である。 図13は、血清による刺激後の経過時間ごとにルシフェラーゼ活性を解析した結果を示す図である。 図14は、態様4において、細胞内で発現したNLuc−Id遺伝子中のId遺伝子部位とMyoD−CLuc遺伝子中のMyoD遺伝子部位との相互作用を示す図である。 図15は、NLuc−Id遺伝子(もしくはMyoD−CLuc遺伝子)が発現している細胞Bにおける刺激物質を用いた誘導を示す図である。 図16は、態様5において膜貫通ドメインを含む融合タンパク質を発現したHela細胞をGFP染色(図の左側)および免疫染色(図の右側)した図である。 図17−1は、sig pep−Luci−GPIによる反応後に得た明視野画像(図の左側)および発光画像(図の右側)を示す図である。 図17−2は、Luci−GPIによる反応後に得た明視野画像(図の左側)および発光画像(図の右側)を示す図である。 図18は、細胞を溶解した細胞溶解液をルミノメーターで測定した結果を示す図である。
以下に、本発明にかかる微弱光解析方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
本発明にかかる方法を実施するための装置の構成について図1を参照して説明する。図1は、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置は、撮像対象であるサンプル1を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するためのものであり、対物レンズ2と集光レンズ3とCCDカメラ4とモニタ5とで構成されている。なお、当該装置は図示の如くズームレンズ6をさらに備えてもよい。
サンプル1は、発光試料であり、例えば、発光タンパク質{例えば導入された遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子など)から発現された発光タンパク質}や、発光性の細胞や、発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の臓器や、発光性の個体(動物など)などである。また、サンプル1は、具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞でもよい。対物レンズ2は、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上のものである。集光レンズ3は、対物レンズ2を介して到達したサンプル1からの発光を集める。CCDカメラ4は、0℃程度の冷却CCDカメラであり、対物レンズ2や集光レンズ3を介してサンプル1を撮像する。モニタ5はCCDカメラ4で撮像した画像を出力する。
そして、対物レンズ2や対物レンズ2の包装容器(パッケージ)には、(NA/β)の値を表記する。従来の対物レンズにはレンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)および無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)が表記されていた。しかし、本発明の方法にかかる撮像手段の対物レンズ(対物レンズ2)には、レンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)、無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)の他に、さらに射出開口角(例えば、“(NA/β):0.05”)が表記されている。
以上、説明したように、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置において、対物レンズ2は、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の値が0.01以上である。これにより、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像対象として、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。また、対物レンズ2は、従来の対物レンズと比較して、開口数が大きく且つ倍率が小さいので、対物レンズ2を用いれば広範囲を分解能よく撮像することができる。これにより、例えば動きのある発光試料や移動する発光試料や広い範囲に分布する発光試料を撮像対象とすることができる。また、対物レンズ2は、当該対物レンズ2および/または当0該対物レンズ2を包装する包装容器(パッケージ)に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の値(例えば0.01以上)を表記した。これにより、例えば発光画像観察を行う者は、表記された(NA÷β)の値を確認すれば、発光試料を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するのに適した対物レンズを容易に選択することができる。
従来、ルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイにおいては、細胞を溶解した後に発光量を測定するため、ある時点での発現量しか捉えることができず、しかも細胞全体の平均値としての計測になってしまう。また、培養しながらの計測においては、細胞コロニーの経時的な発現量の変化を捉えることはできるが、個々の細胞での発現量の変化を捉えることはできない。そして、個々の細胞の発光を顕微鏡で観察するためには、生きた細胞からの発光量が極めて弱いため、液体窒素温度レベルの冷却CCDカメラで長時間露光したり、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラでフォトンカウンティングをしたりしなければならない。そのため、発光検出のカメラは高価で大掛かりなものになってしまう。しかし、レポーター遺伝子産物としてのルシフェラーゼ活性を示す個々の細胞の発光を顕微鏡によって観察する際、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度の冷却CCDカメラを用いて定量的な画像を取得することができる。すなわち、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、生きた状態で個々の細胞の発光を0℃程度の冷却CCDカメラによって観察することができるので、イメージ・インテンシファイアやフォトンカウンティングのための装置が不要である。つまり、低コストで発光試料の撮像を行うことができる。また、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、個々の生きた細胞の発光を、培養しながら経時的に観察することができ、さらにリアルタイムに観察することもできる。また、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、同じ細胞について、異なった条件での薬剤や刺激の応答をモニタすることができる。
ここで、本発明にかかる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズの理解を容易にするために、従来の対物レンズおよびそれを用いた発光画像観察について簡単に説明する。
一般に、顕微鏡観察における空間分解能εは、下記数式1で表される。
ε=0.61×λ÷NA ・・・(数式1)
(数式1において、λは光の波長であり、NAは開口数である。)
また、観察範囲の直径dは、下記数式2で表される。
d=D÷M ・・・(数式2)
(数式2において、Dは視野数であり、Mは倍率である。なお、視野数は一般に22から26である。)
従来、顕微鏡用対物レンズの焦点距離は国際規格で45mmとされていた。そして、最近では、焦点距離を60mmとする対物レンズが使われはじめている。この焦点距離を前提にしてNAが大きい、つまり空間分解能が高いレンズを設計すると作動距離(WD)は一般には0.5mm程度であり、また長WD設計のものでも8mm程度であった。このような対物レンズを用いた場合、観察範囲は0.5mm径程度である。
しかし、ディッシュやガラズボトムディッシュに分散した細胞群や組織、個体の観察を行う場合、観察範囲が1から数cmに及ぶことがある。このような範囲を分解能よく観察したいときには、低倍率でありながらNAを大きい値で維持しなければならない。換言すると、NAはレンズ半径と焦点距離との比であるので、NAが大きいまま広い範囲を観察できる対物レンズは、低倍である必要がある。そして、結果的に、このような対物レンズは大口径となる。なお、大口径の対物レンズの製作では、一般的に光学材料の物性の均一性やコーティングの均一性において、また、レンズ形状においても高い精度が求められる。
また、顕微鏡観察の場合、光学系の透過率や対物レンズの開口数やCCDカメラのチップ面での投影倍率やCCDカメラの性能などが像の明るさに大きく影響してくる。そして、像の明るさは、開口数(NA)を投影倍率(β)で割った値の2乗、すなわち(NA/β)で評価される。ここで、対物レンズには、一般に、入射開口角NAと射出開口角NA'との間に下記数式3の関係があり、NA'2が観察者の目やCCDカメラなどに届く明るさを示す値である。
NA’=NA÷β ・・・(数式3)
(数式3において、NAは入射開口角(開口数)であり、NA’は射出開口角であり、βは投影倍率である。)
一般の対物レンズにおいて、NA’は高々0.04であり、NA’2は0.0016である。また、現在市販されている一般的な顕微鏡の対物レンズにおける像の明るさ(NA/β)の値を調査したところ、0.0005から0.002の範囲であった。
ところが、上記のような現在市販されている対物レンズを装着した顕微鏡を用いて、例えば細胞内でルシフェラーゼ遺伝子を発現させ発光している細胞を観察しても、当該細胞からの発光を目視で観察することができないし、さらに0℃程度に冷却したCCDカメラを用いて撮像した発光画像を観察しても細胞からの発光を確認することができない。なお、発光試料を観察する場合には、蛍光観察に必要な励起光の投影は不要である。例えば、落射蛍光観察では、対物レンズは、励起光投影レンズと蛍光を集光して画像を形成するレンズとの両方の機能を満たしている。
そこで、光量の少ない発光を画像で観察するためには、大きなNAと小さいβの特性を有する対物レンズが必要である。そして、結果的に、当該対物レンズは大口径となる傾向がある。なお、このような対物レンズでは、励起光投影の機能を考慮することなく機能を単純化して設計、製造しやすくすることが求められる。
また、発光や蛍光観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子の動的な機能発現を捉えるためにタイムラプスや動画撮像が求められている。最近では、蛍光を利用したタンパク質1分子の動画観察が行われている。これらの撮像では単位時間の撮像フレーム数が多いほど画像1フレームあたりの露出時間は短くなる。このような観察においては、明るい光学系、特に、明るい対物レンズが必要となる。しかし、蛍光に比べて発光タンパク質の光量は少ないので、1フレームの撮像に、例えば20分の露出時間を要することが多い。このような露出時間でタイムラプス観察を行うには動的な変化が非常に遅い試料に限られる。例えば、約1時間に一度分裂する細胞では、その周期内の変化を観察することはできない。従って、シグナル・ノイズ比を高く維持しながら少ない光量を効率よく画像化するために、光学系の明るさを向上することは重要である。
以上の経緯を踏まえて製作された本発明の対物レンズは、上記の一般に市販されている対物レンズに比べて、大きなNAと小さいβの特性を有している。よって、本発明の対物レンズのNA’2は大きな値である。つまり、本発明の対物レンズは明るい対物レンズであると言うことができる。これにより、本発明の対物レンズのような明るい対物レンズを用いれば、光量の少ない発光試料からの発光を画像で観察することができる。また、より暗い像を観察するために、開口数の大きい本発明の対物レンズを実体顕微鏡に装着することで、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度に冷却したCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができる。また、液体窒素冷却を用いるCCDカメラで感度を上げる方法があるが、この場合CCDカメラが非常に高価に、大規模になる。しかし、本発明の対物レンズを用いれば、ペルチェ冷却によるCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができる。また、本発明の対物レンズは、数から10cm程度の大口径である。これにより、従来では撮像対象となり得なかった移動する発光試料や広い範囲に分布する発光試料などを撮像対象とすることができる。
本発明の方法を実施するための測定原理、光学系の構成その他については、図1により既に説明したが、本出願人による出願(特願2005−267531号および特願2005−44737号)を参照してもよい。前記出願にも記載されるように、本出願人は、光学的実験を通じ、対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上の光学系で撮像することによって、単一の細胞から発生する発光だけで画像化できる証明データを取得した。さらに、本出願人は、検討を進め、同一シャーレ内で培養された複数の細胞において、遺伝子発現の変動パターンが異なることも発見した。驚くべきことに、上記の撮像条件は、本発明において実施される応用例で取り扱われる微弱な発光画像に対しても適用でき、短い時間(例えば1分〜20分)で生物発光のような微弱な発光成分による細胞画像を撮像できる。さらに、撮像装置の対物レンズを開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗で表される光学的条件が0.071以上である場合に、1〜5分以内で画像化でき、画像解析も可能な細胞画像を提供できることも分かった。
上述した図1に示すように、本発明にかかる撮像方法を実施するための装置は、撮像対象であるサンプル1を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するためのものであり、従来採用されたことの無い高開口数(NA)の対物レンズ2とCCDカメラ4とモニタ5とで基本的に構成されている。これらの基本構成を備える装置を、本発明では発光顕微鏡と称することとする。発光顕微鏡は、暗視野での撮像を行うために、適宜、遮光用のフタまたはハウジングによって収容されているのが好ましい。また、適当な培養条件を維持できる培養装置を発光顕微鏡と一体に組合せることで、撮像を長期間に亘り、自動的に実行できる。なお、撮像を行う機構を有する構造であれば、顕微鏡の形態である必要はなく、マイクロプレートリーダーのような測定機器の形態であってもよい。
次に、本発明で使用する発光顕微鏡の構成、形態とその作用を説明する。 発光顕微鏡の基本的な特徴は、顕微鏡視野中の細胞に発現させた発光タンパク質から発する光を、対物レンズ(NA0.75)および光学フィルタを通してデジタルカメラで画像化することで、短時間でモニタリング出来ることである。遺伝子の発現パターンを発光画像としてリアルタイムに取得できるため、細胞を用いた遺伝子発現アッセイ系の幅広い研究対象に応用できると期待されている技術である。基本的な測定系の構成は、培養装置部に隣接した光学系を試料観察部とし、そこでの発光を対物レンズ(NA0.75、好ましくはNA0.75以上)および光学フィルタを通してデジタルカメラで捉えた後、デジタル画像取り込み用のパソコンでデータの記録と解析を行うようになっている。培養装置部はヒートプレートおよびチャンバーにより保温、保湿することができる。培養装置部内の温度は25−37℃に設定して試料を観察する。好ましくは37℃に設定して試料を観察する。湿度は0〜100%に設定して観察する。好ましくは60〜100%に設定する。さらに、発光の光学イメージングを行なったときと同視野において明視野による画像を取得し、画像解析ソフト等で発光画像と明視野画像を重ね合わせることによって、発光している細胞を同定することができる。
本発明の方法に関する用語の定義を以下に示す。
<刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域>
本発明における刺激により発現が誘導される遺伝子プロモーター領域としては、最初期遺伝子のプロモーターが挙げられる。本発明で用いられる最初期遺伝子のプロモーターとしては、例えば、c−fosプロモーター領域が挙げられる。また、本発明で用いられるプロモーターとしては、前記プロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。ここでプロモーター領域とは、プロモーター活性を有するために必要な最小の塩基配列を含む任意の領域を意味する。例えば、該遺伝子の転写部位に対して上流500から2000塩基の領域の一部3または全部を用いることができる。
<レポーター遺伝子>
本発明におけるレポーター遺伝子は、検出可能な蛍光を発するレポータータンパク質をコードする遺伝子を意味する。例えば、蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼを挙げることができる。さらには、例えば、βガラクトシダーゼをコードする遺伝子、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子を挙げることができる。かかるレポーター遺伝子を発光させるための基質としては、任意のものに適用できるが、とくにホタルルシフェリン、セレンテラジンに好適に適用できる。
<光学イメージング>
本発明における光学イメージングとは、細胞や組織等の生体試料から発せられる検出可能なシグナルの存在、不在または強度をモニタリング、記録および分析するイメージング方法を意味する。例えば、レポーター遺伝子を導入した細胞においてレポーター遺伝子により光学イメージングを達成するためには、レポーター遺伝子により発せられるシグナルの強度が、シグナルを細胞の外部から分析することができるように、十分に高い感度でなければならない。光学イメージングは自動化に容易に適用可能であることから、多数の遺伝子発現を同時にモニタリングするのに用いることができる。なお、イメージングした試料画像の任意の位置について、時系列に2次元または3次元に画像情報を処理する技術は、本出願人による特願2004−172156、特願2004−178254、特願2004−342940、特願2005−267531等を参照してもよい。蛍光観察と発光観察における時系列な画像取得の違いは、発光観察が励起光による光学的走査(レーザスキャン)を必要としない点で余計な光による影響が無い点にある。本発明で行うイメージング技術によれば、リアルタイムに発光画像を撮像できる。
B.遺伝子発現の光学イメージング方法
<遺伝子発現ベクターの作製>
動物細胞を用いる場合、発現ベクターは少なくともプロモーター、開始コドン、目的のタンパク質をコードするDNA、終止コドンを含んでいることが好ましい。また、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、該タンパク質をコードする遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリA付加シグナル、選択マーカー領域または複製可能単位などを含んでいてもよい。
<細胞への遺伝子導入方法>
遺伝子を細胞へ導入する方法としては、塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。本発明で使用される遺伝子導入した細胞には一過性発現細胞あるいは安定発現細胞のいずれもが含まれる。
<刺激による遺伝子発現の光学イメージング>
本発明は、任意の発光反応を誘起し得る物質を細胞に接触させる刺激により、発光量を時系列的に解析することが可能である。刺激および解析の対象となる細胞は、単一細胞でも細胞群でもよい。発光イメージングを行うことにより、任意の特定細胞をいつまでの追跡することが可能となり、細胞の違いによる発光強度ないし発光挙動を正確に評価できる。
遺伝子導入された細胞の定数(例えば、1〜1×10個、好ましくは1×10〜1×10個)は所望の細胞培養が可能な器具(例えば、シャーレ、多数のウェルを有するマルチプレートなど)を用いて所望の栄養培地(例えば、D−MEM培地など)中で培養する。この定数の細胞からなる試料を、あらかじめ細胞にとって最適な温度(例えば、25〜37℃、好ましくは35〜37℃)に保温し、試料の乾燥を防ぐため水を注入して保湿した発光顕微鏡の培養装置部に設置し、該発光顕微鏡の試料観察部にある対物レンズを通してデジタルカメラで発光イメージを記録する。前記の試料に、細胞に接触させて刺激を行なうための物質(例えば、化合物)を所望の濃度(例えば、1pM〜1M、好ましくは100nM〜1mM)で加えて、所望の時間間隔(例えば5分間〜5時間、好ましくは10分間〜1時間)で発光イメージを記録することにより画像解析が可能な画像を準備することができる。準備した画像の画像解析は、市販または独自の解析アルゴリズムに設計された解析用ソフトウェアによって自動的に解析することが可能である。ディスプレイ画面に時系列の並列表示または動画映像で表示することにより、肉眼での解析も可能となる。後述される実験結果にも示されるように、本発明の発光タンパクによる個々の細胞の発光イメージングにおいては、撮像条件として、露光時間の長さを調節する方法が提供される。とくに、露光時間を比較的短い単位時間(例えば30秒以上5分以内、好ましくは30秒以上1分以内)に分割した撮像データを、試料の処理条件に応じて加算することにより、鮮明かつ高感度なモニタリングおよび/または解析と、長期かつ正確なモニタリングおよび/または解析との両方を実現できることが分かった。従って、本発明の方法は、単位時間に分割された露光時間による撮像データを、上述した処理条件に応じた個数分加算するような出力条件により出力したり、画像処理することを特徴とするモニタリングおよび/または解析の方法を提供する。ここで、撮像データは加算処理後、平均化する等の演算処理しても構わない。一方で、単位時間を比較的長く(例えば10分以上60分以内、好ましくは10分以上30分以内)に設定して、試料の処理条件に応じて撮像データを分割してもよい。このように、1枚の発光画像を得るための露光単位時間の長さを調節し、好ましくは単位時間で得られた画像を分割する工程を組み込むことによって、本発明の方法は一層有利なものとなる。
次に、本発明の方法に適用可能な諸条件について論ずる。まず、本発明は、試料としての細胞群または生体組織における生きた細胞を、発光用成分(例えば発光タンパク質融合遺伝子)で処理するとともに、発光用成分に対し発光を誘起するための基質溶液を適宜の培養環境下で存在させることにより細胞を発光させて、細胞の発光画像に基づく解析を行うにあたり、解析すべき培養期間に応じて細胞の生物学的活性を損なわない基質濃度に設定したことを特徴とする方法である。生きた細胞を培養しながら経時的に画像解析するためには、種々の試薬条件の中でも、特に発光用成分を化学的に励起するための基質溶液の濃度を適切に設定することが好ましいことが分かった。ここで、培養期間が数日以上の場合には、基質溶液の濃度を700μM以下の濃度とすることで余分に高い濃度での発光反応を行なわずに、有効な発光画像を得ることが出来ることが判明した。他方、培養期間が数日未満の場合には、基質溶液を800μm以上、1mM以下の濃度とすることで、細胞の生物学的活性を数日ないし約1週間程度、一定の活性状態に維持しながら、解析可能な発光画像を安定に提供できる。一方、1mMより高濃度については、5mM以下のルシフェリン溶液で処理した細胞を数日以内の培養期間でモニタリングまたは解析を実行できる場合があるが、培養期間が長くなるにつれて生きた細胞に対する毒性が増強される。また、基質濃度を200μM以上とすることで、感受性が強い細胞であっても長期間(例えば数週間以上)安定に生物学的活性を維持しつつ、発光画像の観察を可能にするという利点がある。ここで、基質としては、典型的な例として、ホタルルシフェリン、セレンテラジンを例示できるが、他の種類の基質であるとか、各種基質の化学的転換体ないし遺伝子工学的改変体であってもよい。セレンテラジンはルシフェリンとは異なる濃度範囲とすることができ、例えば10μM以上200μM以下、とくに50μM以上100μM以下が好ましいと考えられる。100μmを超える濃度のセレンテラジン溶液はもはや生きた細胞への毒性が懸念される場合があり数日以内の培養期間の限定的な使用に適している。培養期間が数日以上の場合には、セレンテラジンの濃度を70μM以下の濃度とすることで余分に高い濃度での発光反応を行なわずに有効な発光画像を得ると考えられる。また、培養期間が数日未満の場合には、セレンテラジン濃度を80μm以上、100μM以下とすることで、細胞の生物学的活性を数日ないし約1週間程度、一定の活性状態に維持しながら、解析可能な発光画像を安定に提供できると考えられる。このように、本発明において基質濃度はルシフェリン濃度で代表的に説明するが、セレンテラジン濃度においてはその10分の1の濃度レベルで換言される。本発明の処理方法は、上記のような基質濃度範囲で生きた細胞を培養し続けることにより、生物学的活性が低下しない状態を維持しながら、培養期間中、常に画像化可能な発光量を保つものである。
他の一面では、本発明は、生きた細胞を発光用成分で処理するとともに、発光用成分に対し発光を誘起するための基質溶液を適宜の培養環境下で存在させることにより細胞を発光させて、細胞の発光画像に基づく解析を行うにあたり、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上である光学的条件で細胞からの発光を収集するとともに、基質濃度を600μM以下に設定することを特徴とする生細胞の画像解析方法である。上述したように、(NA÷β)の2乗の値が0.01以上という光学的条件は、生物発光を発する細胞を1個づつ識別できるような対物レンズの明るさと投影倍率の適切な組合わせを請求するものである。この光学条件としての(NA÷β)の2乗の値が、0.039以上である場合には、さらに低濃度(例えば300μM以下、好ましくは100〜200μM)の基質溶液であっても、画像解析が可能な程度に明瞭な発光画像を常時得ることが出来る。
本発明の変形例として、発光用成分以外に、さらに蛍光用成分(例えば、緑色蛍光蛋白(GFP),黄色蛍光蛋白(YFP)等)を含んでいる細胞に適用することが可能である。これら発光と蛍光の両方を同一の細胞に対して適用することにより、発光画像と蛍光画像による総合的な画像解析を行うことが可能となり、細胞内外の多様な物質に関する検出を容易にする。ここで、発光画像の取得に必要な時間(生物発光の場合、解析可能な画像が得られるまでの、CCDカメラ等の撮像素子に対する露光時間)に応じて励起光量も決定することとし、例えば、画像化に必要な露光時間が長いほど、蛍光用の励起光の強度を弱くなるように設定することできる。良好な検出条件の例として、基質濃度を200μM以上700μM以下で細胞と接触させるとともに、30分以内、好ましくは10分以内の撮像時間で発光画像を得るように光学条件を設定することにより、生きた細胞を極めて長期間(例えば数週間以上)ありのままの生物学的活性状態に保つことが出来るので、種々の細胞ベースのスクリーニングアッセイや映像による肉眼での活性変化を安定に実行できる。これに対し、蛍光、赤外線、X線等の高感度な画像化のみに依存する検出を行なうと、多少なりとも照射光による連続的な光毒性の影響を受けてしまうので、解析精度を低下させる要因となり得る。
本発明の他の一面として、被検試料が肉厚の生体組織(例えば、視交差上核等の脳、胚、ゼブラフィッシュ等の微小な魚類、マウスやカエル(特にアフリカツメガエル)等の小動物ないし植物(例えばシロイヌナズナ)の一部の器官(例えば、手、足、毛根、葉、花茎、根毛)である場合に、生物発光による発光イメージングに適した厚みを所定の容器等に2次元的に拡がって分布する2次元形状細胞群(例えば、組織スライス切片ないし細胞群フィルム上シート等)に調製することが好ましい。本発明における検討では、個々の細胞が識別できる程度の発光イメージングを行なう場合に、150μm以下、好ましくは100μm以下、特に85μm未満の有効範囲からなる厚みの生体組織を使用することで、極めて微弱な発光だけであっても生体組織中の細胞を個々にイメージングすることが可能となる。生体組織中に分布する細胞群は多様な反応パターン(例えば、遺伝子発現量ないしその発現量変化パターン)を示すことが多いので、混在する多数の細胞群の中から同一ないし類似の反応パターンを示す細胞同士をグループ化して正確な解析を行うことが出来るようになる。さもなければ、一見してランダムな反応結果が出力されるだけであり、グループごとの同定など到底不可能に思われる。このように、本来微弱光による反応または検出が困難な肉厚の生体組織においても、上記のような有効範囲の肉薄の厚みでもって2次元的にほぼ一定の状態に配置することにより、生体組織での微弱光を用いた解析が可能となる。従って、本発明では、生物発光のような極めて微弱な光により単一細胞レベルの解析を行なって生体組織全体の動態を正確に知るための検出を行なう場合に、微弱光による光シグナルを適宜の明るさの集光レンズ(図1では対物レンズ)で画像形成できる程度に薄い厚みとする処理方法も含まれる。各種生体組織を上記の数値範囲内でなるべく肉薄の厚みに設定することにより、細胞同士が検出用光路上でオーバーラップしない密度となるので画像解析を正確にする。さらに、上記の厚みに調製された任意の生体試料は、従来よりも充分に有意な肉薄寸法の厚みであることにより、上述した有効濃度の基質溶液による発光反応を充分に許容し得るような反応時間(単一細胞における発光反応時間とほぼ同等の時間)内で進行させることができ、さらには、他の薬剤(例えば、治療薬(抗がん剤、ホルモン剤等)、診断薬(生化学検査試薬、免疫学検査試薬、遺伝学検査試薬等)、毒性試験物質(遺伝的変異原物質、発ガン性物質、アレルゲン物質)、予防医薬(ワクチン等)、体質改善薬(漢方、ビタミン剤、サプリメント薬等))に対しても充分な反応性を保障できるという特筆すべき作用効果も有する。
反面、生体組織を30μm未満、とくに20μm以下の厚みに調製した場合には、スライス処理によって破損した細胞が多数存在するようになり、画像解析においては解析ソフトウェアにより個々の細胞認識にエラーが生じ易くなったり、短期間(例えば24時間未満)で細胞の生物学的活性を低下ないし失活してしまう場合が有る。従って、本発明の方法においては、発光画像を得るための被検試料が生体組織である場合に、厚み30μm以上で且つ150μm以下の厚みにスライスしたり、シート状の細胞層とするのが好ましい。好適には、40〜60μm以上(特に50μm以上)とすることにより、広範囲の種類の細胞、とくに哺乳類(例えば、ヒト、マウス等)を検出用光路上に準備することが可能となる。これに対し、病理切片等のスライド標本を蛍光色素、量子ドット、化学発光色素等の高輝度染料で染色する場合には、300μm以上の肉厚の切片を用いて組織内を透過した光シグナルを画像化する場合が多い為に、生物発光のような極めて微弱な発光を試料の外部から検出することは極めて困難である。100μmを超える厚みの生体試料では細6胞同士がオーバーラップする場合が有り、200μm以上、特に300μm以上の厚みでは発光画像による個々の細胞の識別は非常に困難となった。これらの厚みを動物、昆虫、魚類等の生物個体、発生初期の胚、再生医療用の生物材料に適用する場合には、撮像対象の表面から300μm未満、好ましくは200μm未満、とくに100μm以内の深さに存在する細胞等をモニタリングおよび/または解析すればよい。
以上のように、各種生体組織に由来する2次元形状細胞群を用いる例において、本発明は、微弱光により単一細胞レベルの解析を行なって生体組織の検査等を行なう際に適用され、細胞内で微弱光を発生させるための発光用試薬との反応性若しくは細胞内における発光用試薬による発光反応に変化をもたらす可能性のある薬剤との反応性を損なわずに、発光反応による微弱光シグナルを外部から検出し得る程度に2次元的にほぼ一定の厚みに形成した細胞群を用いることを特徴とする生細胞の解析方法を提供する。
実験例
ルシフェラーゼを用いた発光試料(細胞)の観察には,発光基質としてルシフェリンを培養液に投与する必要がある。ルシフェリンは高価であること,また細胞への影響を考慮すると,より低濃度で測定できることが望ましい。そこで、生細胞の発光観察に必要なルシフェリンの濃度を設定することにより、発光による光学イメージングを以下のように最適化した。
HeLa細胞に発光遺伝子用ベクター(プロメガpGL3−control vector)を導入した後の生物発光を次に示す各条件により光学イメージングした。
撮像条件:動作温度が5℃であるCCDカメラ DP−30(オリンパス株式会社製)、投影倍率が20倍で開口数がNA0.8であるような対物レンズ(油浸)、結像倍率5倍に設定された発光顕微鏡(図1参照)を用いて、室温で1分間露出させることにより、発光画像を得た。
ルシフェリン濃度:上記撮像条件において、上記の発光遺伝子導入細胞を収容した培地内に対して、1mM、0.5mM、0.1mMの最終濃度となるようにルシフェリン濃度を含有させることにより、各発光反応を実施した。
本実験例の結果として、1mMから0.5mMの範囲のルシフェリン濃度で十分であることが分かった。また、ルシフェリン1mMに対して0.5mMでは多少発光画像が暗くなるが,大きな差はみられない(図2、図3)ことも分かった。但し、0.1mMになると、1分露出ではだいぶ発光画像が暗くなり、この場合には、5分間の露出に変更することにより、0.5mMで5分間の露出に相当する高分解能の発光画像を得ることが出来た。なお,1分露出の場合はdark画面を引かないraw画面(図2〜4)であり、それぞれ図2が1mM、図3が0.5mM、図4が0.1mMの各ルシフェリン濃度での結果である。5分露出の場合(0.1mMルシフェリン、5分間露出)は、dark画面を差し引いた画面である(図5−1)。
次に、それぞれの条件で,同一細胞10個の発光強度の平均値を計算し,最も発光強度が弱かった0.1mMルシフェリン,1分露出での値で規格化して比較した。比較の結果を図5−2のグラフに示す。1分露出の場合,ルシフェリンの濃度が1mMと0.5mMでは,それほど発光量は変わらないが,0.1mMでは1/4〜1/3ほど低下する。しかし0.1mMでも露出を5分に延ばせば1mMルシフェリンで1分露出と同程度の発光量に達する。
なお、本発明は上述した実施形態や実験例等に述べた説明にも限定されず、種々の態様やその均等物を含むことができる。また、本発明で述べた種々の処理条件同士の組合わせも任意に行なってもよい。さらに、本発明の処理方法を行なって製造され、流通可能に安定化処理(例えば、乾燥処理、真空パッケージング、シート形状化処理、増粘性糖類溶液含浸処理等)された生産物の形態でもよい。また、生体組織を肉薄にした2次元形状細胞群である場合には、単一のチップ基板ないし単一のシャーレ等の容器底面を必要な表面積について被覆してもよいし、多数の異なる生体組織を小断片化した各2次元形状細胞群をそれぞれ異なるアドレス位置にマトリックス状に点着することでマイクロアレイ化してもよい。
上述した説明に係る装置に関する光学条件の詳細は、出願人による特願2005−267531、特願2005−44737、特願2006−61321を参照することにより、対物レンズや結像レンズを含む光学的条件を理解できる。また、本発明に関連する画像情報取得後の画像情報処理と適用例については、特開平11−271209、特開2000−279168、特開平10−293094、特開平3−255365に記載のイメージサイトメータに関する構成を本発明の参照とすることができる。但し、従来のイメージサイトメータは、蛍光等の肉眼で観察可能な光シグナルを発生するような試料を用いるので、フローサイトメータやレーザ走査型顕微鏡のように試料または測定用ビームを移動させながら順番に個々の細胞を解析する方法および装置であるのに対して、本発明の方法および装置は、肉眼では暗黒状態の見えない微弱光(例えば生物発光)を複数の細胞について同時に画像化するような蓄積型の光検出装置を具備する点で網羅的な解析、即ち、同時に視野内または所定容器内の全ての細胞を包括的に画像解析できる点で大きく異なる。上述したような従来の装置による撮像条件は、本発明による試料の処理条件に応じた撮像条件によって調節するような適切な制御手段により実行されることによって上述した作用効果を達成することが可能となる。
生物発光タンパク質による発光現象を測定する場合、試料セッティング時には発光強度がまだ極めて微弱で、ほとんど光信号として、受光器で検出することができない。従って、細胞の内部構造は通常、観察できない。すなわち、通常の顕微鏡観察のように、試料内の観察対象である細胞を確認しながら対物レンズのフォーカスを合わせることができない。そこで明視野像観察として、ハロゲンランプなどの光源からの光を照明光学系を通して、被験試料に投光し、被験試料による顕微鏡の明視野像を得て、これに基づいて対物レンズのフォーカス位置を決定する。すなわち、明視野観察において、高いコントラスト像が得られる、対物レンズの光軸上の2箇所の略中心位置を対物レンズのフォーカス位置とする。これにより、生物発光タンパク質による発光強度が大きくなってきたときに、CCDカメラに合焦された鮮明な発光像が得られる。対物レンズは、所望の倍率に応じて適宜、油浸式にすることができる。また、どの倍率を選択するかは、評価(ないし解析)すべき試料のサイズに応じて適宜選択すればよい。図示した装置(発光顕微鏡)による検討では、40倍〜100倍での発光画像の取得が可能となるように光学系を設計出来ている。
本発明においては、以下に示すような種々の態様に適用可能である。
態様1;RNA干渉を用いた解析方法および試薬キット
この態様は、種々の生体に関連する情報を画像化する方法および、細胞等の生体試料中の相互作用し得る物質について視覚的に相互作用を検出する解析方法および試薬キットに関する。詳しくは、本発明は、細胞内の相互作用を生物発光を用いて定量的に検出するレポータアッセイに適用する方法に関する。一例として、本発明は、RNA干渉を用いた解析方法および試薬キットを包含する。
生体を内外から調べる技術が目覚ましく発展している。地球上のあらゆる生体は、有望な生物学的用途としての診断、治療、予防医療等の医学的成果に直接的かつ一義的に適用できる生体関連情報を有している。生体関連情報の一例として、生体内または生体外で生きた状態の細胞(ないし細胞を含む生物学的材料)から得られる生物学的相互作用(以降、相互作用と略称する)を得る場合がある。生細胞における相互作用を調べる技術の多くは光信号を発生するレポータ物質を細胞の外部から検出する方法および試薬キットによって実現される。かかるレポータ物質として、例えばオワンクラゲに由来する緑色蛍光タンパク質(GFP)を生細胞に適用して、画像解析する方法が知られている。中でも、RNA干渉(RNAi)は、近年急速に頭角を現してきた有力なレポータアッセイを用いた遺伝子機能解析法であり、細胞や生体内の特異的な標的mRNAを分解することにより、コードされているタンパク質の発現をノックアウトあるいはノックダウンして遺伝子の機能を調べる方法である。RNA干渉は、siRNA導入後、siRNAが生物学的効果を及ぼすのに十分な時間(2時間〜72時間程度)で効果が見られるが、対象や実験条件により、RNA干渉効果の程度、RNA干渉効果が出るまでの時間が異なっている。従来は、或る時間ポイント毎の細胞を用意し、ノーザン解析、RT−PCR、免疫標識などの手法で確認を行っていた(特開2003−219893参照)。
しかしながら、一般に従来の方法では、siRNAの干渉効果の程度、RNA干渉効果が出るま8での時間を調べるためには、多数の生物試料を用意する必要があり、測定間隔も3時間から6時間程度といった粗い条件設定になることが多い。また、siRNAトランスフェクションの効率は、細胞の性質、細胞周期の時期、細胞の培養密度、トランスフェクトされる材料によっても異なるので、目的遺伝子が発現した細胞以外の細胞までも一群として蛍光総量として紛れ込んでしまい、平均した測定データは個々の結果を正確に反映できない場合がある。
従って、この態様1は、個々の細胞内外で行われるRNA干渉の結果を精度よく解析できる方法および試薬キットを提供することを目的とする。また、本発明は、長期間にわたる遺伝子発現量を経時的に解析することが容易な方法および試薬キットを提供することを目的とする。この態様1では、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞の発光像およびRNA干渉による発光像を,以下の条件を満たす光学系で撮像する。本出願人による光学的実験によれば、対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上の光学系で撮像することによって、単一の細胞から発生する発光だけで画像化できることが証明された(特願2005−267531号参照)。さらに、本出願人は、検討を進め、同一シャーレ内で培養された複数の細胞において、遺伝子発現の変動パターンが異なることも発見した(特願2005−44737号参照)。驚くべきことに、上記の撮像条件は、RNA干渉における微弱な発光画像にも適用でき、短い時間(例えば1分〜20分)で生物発光のような微弱な発光成分による細胞画像を撮像できる。さらに、発明者が追究した光学的条件によれば、撮像装置の対物レンズを開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗で表される光学的条件が0.071以上である場合に、1〜5分以内で画像化でき、画像解析も可能な細胞画像を提供できること突き止めた。
従って、この態様1の解析方法は、細胞内外の相互作用を画像情報に基づいて解析する方法において、前記相互作用し得る物質の少なくとも一方に対して生物学的励起物質としての発光物質を標識した相互作用物質を1以上の細胞内に存在せしめ、相互作用による結果としての発光を光学的に撮像し、撮像した光学的情報を単一の細胞について画像化する工程を含み、画像表現が相互作用に起因する微弱光の有無および/または量を示していることを特徴とする。ここで、この態様1は、前記生体試料として生細胞を含んでいるのが好ましい。また、この態様1は、生物学的励起物質として生物発光をもたらす成分を含んでいるのが好ましい。この態様1は、試薬キット化することが可能であり、相互作用を誘起し得る成分および上記発光物質の発光を誘起し得る基質成分を含んでいることを特徴とする。また、この態様1は、上記の方法のいずれかにおいて、生物学的励起物質の活性に影響を与える薬剤との相互作用を評価する工程を含んでいるのが好ましい。
なお、この態様1では、特別に説明する場合を除いて「発光」とは生物発光を意味し、「発光物質」とはBRETにおいて蛍光物質に対し励起エネルギーを与えることができる任意の発光を有する物質を意味する。
この態様1によれば、発光を用いたレポーターアッセイでRNA干渉を行うことで、トランスフェクションされた細胞のみに関して連続的なデータ取得を行う事で、より精度の高いデータが得られる。また、長期間にわたる遺伝子発現量を経時的にみることも可能となるので、創薬研究等の臨床用途に広く利用可能である。
<RNAi予備実験>
この態様1に関して、RNA干渉実験評価を行うため、先ず、RNAi予備実験として、HEK293細胞を使ってpGL3遺伝子に対するsiRNAによる阻害実験を試みた。今回はLipofectamine2000により導入した。発光イメージングシステムLV200(オリンパス株式会社)による観察画像を図6−1に示す(Ixon EM−CCDカメラ(アンドール社)、 EMgain1000、露出時間10min)。siRNAを加えたディッシュに関しては、GL3遺伝子を発現している細胞がわずかであり、GL3遺伝子の発現が抑えられているようだった(図6−1の右側観察画像)。また、ルミノメータークロノス(アトー社)による数値データを図6−2にグラフとして示す。クロノスによる測定は、10個/mlのHEK293細胞に対しpGL3 control vector、siRNAを導入処理した後、処理後細胞を10/mlから10個/ml24時間後にルシフェリン100μMを加えることによって行われた。HEK293を使った場合、プラスティックとガラスボトムで細胞の貼りつきが異なることがあったため、ディッシュ2種で比較を行ったが、双方siRNAによる発現抑制がみられていた。
<RNAi実験>
次に、RNA干渉実験評価を行うため、蛍光タンパク質GFPに対するsiRNAを用いて、RNA干渉の程度を確認した。HeLa細胞に、pEGFP−C1 Vector(BDクロンテック)を導入し、GFPを発現させた細胞に、RNA干渉を起こすためのsiRNAをトランスフェクションした。トランスフェクション後、蛍光顕微鏡IX81(オリンパス製)で観察を行ったところ、siRNA導入を行っていない細胞と比較し、GFPの細胞内での発現量が減少していた。ルシフェラーゼをレポーター遺伝子としてRNA干渉検出を行うため、psiCHECKTM −92 Vectors(プロメガ株式会社)のマルチクローニングサイトにGFP遺伝子を導入し、コンストラクトの作製を行った。psiCHECKTM −2 Vectorのようなベクターを使用した場合、目的遺伝子に対する合成siRNAによるRNA干渉機構が開始されると、標的遺伝子とつながるウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子も切断、分解され、これに伴ってウミシイタケルシフェラーゼ活性が減少する。本実施例では、かかる活性の減少を顕微鏡下で継続的に撮像することによって、簡便にRNA干渉効果をモニタリングすることを試みた。
HeLa細胞に作製したコンストラクトを導入後、siRNAの効果を確認した条件でGFPに対するsiRNAのトランスフェクションを行い、発光顕微鏡での観察を行った。35mm系のガラスボトムディッシュ内の細胞に、EnduRenTM Live Cell Substrate(プロメガ株式会社)を添加後、発光顕微鏡のインキュベータ内にCOガスを導入し、37℃にて培養を行いながら3日間の観察を行った。発光顕微鏡で経時的観察を行った結果を図6−3にグラフとして示す。siRNAを導入したHeLa細胞およびネガティブコントロールとしてsiRNA非導入のHeLa細胞の比較を行ったところ、siRNA導入したHeLa細胞株のみに発光量の減少が見られていた。GFPへのRNA干渉がウミシイタケルシフェラーゼからの発光の減少として検出可能であった。
以上、この態様1を生細胞内のRNA干渉を画像解析する例によって説明したが、上述した態様の説明に内在し、且つこの出願より前に他人(または他社)によって出願等されたあらゆる発明によっても自明でないような、あらゆるカテゴリーに属する技術思想を包含するものであり、その技術思想が及ぶ均等物ないし本発明で開示されないあらゆる下位概念の発明を包括する権利範囲を有する。
なお、この態様1は、次のような考察に基づき派生する種々の変形例も直接的かつ一義的に包含する。なぜなら、種々の変形例は、本発明と共通する考察を必ず経由して種々の応用に種々転用されるだけだからである。
態様1に関する考察
RNA干渉は生体内外のタンパク相互作用の有無を着実に反映する典型的手法である。相互作用を光強度だけで検出しようとすると、非特異的反応や挟雑物ないし自家蛍光等のノイズ信号により信頼性が低くなる。一般に蛍光は、外部から照射された励起光の照射エネルギーにより励起される。従来の生体に関する画像化方法は、なるべく視覚的に見えるように可視化するような過大な照射エネルギーを利用している。蛍光に比べ発光は光励起が要らないので、光毒性も無く、操作上も簡単で実施し易い。また、蛍光は強度変化が不安定だが、発光は安定である。励起光照射による過大なエネルギーによる蛍光検出から発想できない(非自明な)視点として、生物発光は変化量の評価(例えば、遺伝子発現の変動のモニタリング)や連続的かつ広視野の受光に適している。換言すると(上位化すると)、細胞内の活性変化に応じて光強度が変わるような検査項目は、過大な光エネルギーによる画像情報からは実行困難である。また、分光測定やフォトンカウントによる生物発光の検出からは発想できない(非自明な)視点として、同一視野ないし同一試料中の複数の検出対象を個別に比較したり、個々の変化量を評価することである。そもそも、生物発光は、暗すぎて、肉眼または顕微鏡による接眼レンズによって観察できない。従来の顕微鏡がそうであったように、暗すぎて画像を取得できなかった場合、細胞1個づつ取り出したり、別々の容器に遠ざけて検査するしかないので、非常に時間も工数も必要となる。ましてや、細胞内の検査を、1個づつ細胞を溶解したり、すり潰す手技を施すことは面倒である。別々の容器や個別の手技を用いることは、生きた細胞ないし組織を継続的ないし複数調べるには不適である。本発明の方法を適用すれば、1個づつの細胞等の試料について個別に遺伝子発現等の変化を継続的かつ複数調べることができる。さらに、何度でも同じ細胞からデータが取れるという魅力もある。これらの考察内容を総合すれば、本発明の新規性および進歩性は容易に理解されるであろう。
態様2;蛍光を指標とする生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)により転移したエネルギーでもって励起された、蛍光分子が発する蛍光を撮像する方法および装置
この態様2は、種々の生体に関連する情報を画像化する方法および、細胞等の生体試料中の相互作用し得る物質について視覚的に相互作用を検出する方法および装置に関する。詳しくは、この態様2は、細胞内の相互作用を生物発光を用いて定量的に検出するレポータアッセイに適用する方法に関する。一例として、この態様2は、細胞内の発光による光エネルギーが近接する蛍光分子に移動したときの蛍光を指標とする生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)により転移したエネルギーでもって励起された、蛍光分子が発する蛍光を撮像する方法および装置を提供するものである。
生体関連情報の他の例として、レポータ物質としてのGFPのような光信号を発生し得る物質を合成する機能を有するタンパク質を構成する遺伝子をクローニングし、さらに遺伝子工学的な改変が施すことによって、輝度,吸収・蛍光波長,pH感受性などの所望の光特性および生物学的特性を有するような変異体が作られている。これらの蛍光タンパク質の遺伝子に細胞内で局在を示すシグナルを付加し,細胞に導入・発現させることによって,細胞内の特異的な領域を可視化できる。また,機能的なタンパク質と融合させることにより,細胞内でのタンパク質の局在や挙動を観察することができる。さらに,相互作用するタンパク質を,それぞれ異なる色の蛍光タンパク質で標識すれば,相互作用によってタンパク質同士が接近した場合,一方の蛍光のエネルギーが他方の蛍光分子を励起し,長波長にシフトした蛍光が観察される(FRET)。この波長シフトを可視化することにより,細胞内での分子間相互作用を検出することができる(Otuji et. al.,Analytical Biochemistry.329(2004)230−237,Monitoring for dynamic biological processing by intramolecular bioluminescenceresonance energy transfer system using secreted luciferase参照)。
しかしながら、FRET測定を行うには,細胞に励起光を当てなければならない。数十時間また数日にわたるような長時間測定の場合,細胞は励起光の光毒性によりダメージを受けてしまう。一方,励起光を使わず,エネルギーのドナーとなる蛍光タンパク質をルシフェラーゼなどの発光タンパク質に置き換えた生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を利用した分子間相互作用の計測方法がある。発光による光エネルギーでアクセプターとなる蛍光タンパク質を励起し,発光波長と蛍光波長の光強度の比を測定することになる(Otsuji et al, 2004)。この場合,励起光を細胞に照射する必要はないので,光毒性の影響はない。しかし,生細胞内での発光強度は極めて弱いため,この発光から転移したエネルギーによって励起された蛍光もまた微弱であり、概ね発光の半分の光強度となると見込まれる。従って、従来のCCDカメラまたは光電子増倍管の走査法では、細胞の発光およびBRETに起因するアクセプターからの蛍光を撮像する能力が無かった。
従って、この態様2は、生体試料中の任意の相互作用を直接的かつ低侵襲に検出することを目的とする。また、この態様2は、特に、BRETのような微弱光信号の変化に起因する画像情報を細胞単位で撮像する方法および装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞の発光像およびBRETによる蛍光像を,以下の条件を満たす光学系で撮像する。発明者の光学的実験によれば、対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上の光学系で撮像することによって、単一の細胞から発生する発光だけで画像化できることが証明された(特願2005−267531号参照)。驚くべきことに、この撮像条件は、BRETにおける微弱な蛍光画像にも適用でき、短い時間(例えば1分〜20分)で生物発光のような微弱な発光成分による細胞画像を撮像できる。さらに、発明者が追究した光学的条件によれば、撮像装置の対物レンズを開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗で表される光学的条件が0.071以上である場合に、1〜5分以内で画像化でき、画像解析も可能な細胞画像を提供できることを突き止めた。
従って、この態様2の方法は、生体関連情報を画像情報として取得するための画像化方法において、画像化すべき画像化対象に対して生物学的エネルギーにより光学的に検知可能な変化をもたらす生物学的励起物質を作用せしめ、前記生物学的エネルギーが提供する出力に相当する画像関連情報を前記画像化対象から優先的に取得することを特徴とする。
また、この態様2の方法は、細胞内の相互作用に関する画像情報を撮像する方法において、前記相互作用し得る物質の双方に対して生物学的励起物質としての発光物質および蛍光物質をそれぞれ標識した相互作用物質を1以上の細胞内に存在せしめ、相互作用による結果としての発光物質による蛍光物質へのエネルギー転移を光学的に撮像し、撮像した光学的情報を単一の細胞について画像化する工程を含み、画像表現が相互作用に起因する微弱光の有無および/または量を示していることを特徴とする。
ここで、前記生体試料が、生細胞を含んでいるのが好ましい。
また、この態様2の装置は、生体関連情報の画像化装置において、画像化すべき画像化対象に照準する手段と、画像化対象に対して生物学的エネルギーにより光学的に検知可能な変化をもたらす生物学的励起物質を作用せしめた状態で、前記生物学的エネルギーが提供し得る出力を優先的に画像情報として取得する画像情報取得手段とを備えたことを特徴とする。
また、この態様2は、上記の方法を自動的に実行するためのプログラムを包含する。また、この態様2は、上記のプログラムを読み出し可能に書き込んでいるソフトウェアを包含する。また、この態様2は、上記の方法により取得された画像情報に基づいて生体関連情報の解析を行なう解析方法を包含する。上記の解析方法は、生物学的励起物質として生物発光をもたらす成分を含んでいることが好ましい。発光成分としては、発光用の基質や、発光用酵素ないし発光用酵素をコードする遺伝子を融合する発光タンパク質が挙げられる。上記の方法は、さらに、生物学的励起物質の活性に影響を与える薬剤との相互作用を評価する工程を含んでいる場合には、医学的調査に貢献し、創薬研究や、薬効、毒性評価等を生存する生命体における調査と同等の条件で実行できる。また、この態様2は、上記の装置における画像情報取得手段に適合する光特性を備えた試薬キットを包含する。
なお、この態様2では、特別に説明する場合を除いて「発光」とは生物発光を意味し、「発光物質」とはBRETにおいて蛍光物質に対し励起エネルギーを与えることができる任意の発光を有する物質を意味する。
この態様2によれば、細胞内における分子間相互作用の測定には,蛍光タンパク質を用いたFRETが利用される。この方法では,細胞に励起光を当てなければならないので,長時間の光照射は細胞にダメージを与えてしまう。FRETにおけるエネルギーのドナー側の蛍光タンパク質をルシフェラーゼなどの発光タンパク質に置き換えたBRETの系にすることで,細胞への光照射による影響を排除することができる。そのため,数日から数週間以上にわたる長期的な観察が可能となり,これを経時的に撮像することで,細胞内の分子間相互作用を画像として表示できる。
この態様2に関して、ルシフェラーゼと蛍光タンパク質を用いたBRETによるアポトーシスの検出を行う例を次に述べる。即ち、アポトーシス誘導によって活性化されるカスパーゼ3の活性を発光共鳴エネルギー移動(BRET)によって検出する。ドナーとなる発光タンパク質の遺伝子にはガウシア由来のルシフェラーゼ遺伝子(Gaussia Luc,Lux Biotechnology社),アクセプターとなるYFP遺伝子にはpYFP(クロンテック社)を用い,ルシフェラーゼとYFPの間にアポトーシス誘導時に活性化されるカスパーゼ3の認識配列(DEVD;アミノ酸一時表記,アスパラギン酸,グルタミン酸,バリン,)を導入したベクターを作る。また,ルシフェラーゼとDEVD配列およびDEVDとGFPの間にはグリシン(G)セレン(S)などのアミノ酸をリンカーとして入れている。
この状態では、ルシフェラーゼによる発光のエネルギーはFRETが起こり,隣接するYFPに移動しYFPから蛍光(529nm)が発せられる(BRET)。アポトーシスが誘導されカスパーゼが活性化されると,ルシフェラーゼ−YFP分子が消化されBRETが解消されるため,ルシフェラーゼによる発光(480nm)が観察されることになる。
大腸菌での発現ベクターの作製
大腸菌での発現ベクターであるpRSET_B(インビトロゲン社)を制限酵素BamHIおよびEcoRIで消化し精製する。また,PCR法によってガウシアルシフェラーゼ遺伝子およびYFPを増幅する。YFP遺伝子のForward側のPCRプライマーには、5’に制限酵素BamHIの認識配列を含み、Reverse側のプライマーには、3’側にカスパーゼ認識配列と制限酵素KpnIの認識配列を含んでいる。ルシフェラーゼ遺伝子Forward側のプライマーには、5’にKpnI認識配列、reverse側のプライマーには、3’にEcoRI認識配列を含んでいる。それぞれの遺伝子をPCRで増幅・精製後、制限酵素BamHIとKpnIおよびKpnIとEcoRIで消化・精製する。次に、制限酵素で消化したpRSETベクター、ルシフェラーゼ遺伝子、YFP遺伝子をDNAリガーゼで連結し図7−1のようなYFP−ルシフェラーゼ-ベクターを構築する。
精製タンパク質での測定
図7のベクターを大腸菌(JM109(DE3))に導入し一晩培養後,フレンチプレスを用いて大腸菌を破砕し,産生されたYFP−ルシフェラーゼタンパクをニッケル−アガロースゲルにてアフィニティー精製し(Ni−NTA Superflow, キアゲン社),以下の条件で系時的に発光スペクトルを計測した(ルミフル スペクトロキャプチャー,アトー社)。
図7−2には以下の条件でそれぞれの波長における発光強度の経時的変化を示した。50μg/ml YFP−4−DEVD−6−Gaussia, 60μM Coelenterazine, 2units Caspase3 in Tris−HCl buffer(pH 8.0) Caspase3による処理は37℃で行った。反応前はBRETが起こっているのでYFPの蛍光(546nm)が強いが,反応が進みDEVD部位が切断されるとBRETが解消されYFPの蛍光は減少し,Gaussiaの発光(478nm)が増えている。
図7−3には以下の条件で0分から180分までの発光スペクトルの経時的変化を示した。0.1Mトリス塩酸buffer(pH 8.0),50μg/ml精製タンパク質,60μMのセレンテラジン,2 Unit カスパーゼ3,37℃。YFPの蛍光(546nm)とGaussiaの発光(478nm)の経時的変化を観察すると、反応前はBRETが起こっているのでYFPの蛍光(546nm)が強いが,反応が進みDEVD部位が切断されるとBRETが解消されYFPの蛍光は減少し,Gaussiaの発光(478nm)が増えている。
また、図7−4は480nmの強度と529nmの強度の比を表したグラフである。このようにカスパーゼ3によって,YFP−ルシフェラーゼ融合タンパク質が消化されてBRETが解消されていく様子が測定できる。
哺乳細胞での発現ベクターの作製
図7−1で作製した融合タンパク遺伝子部位を哺乳細胞での発現ベクターであるpcDNA3.1に入れ換える。作成されたベクターpcDNA3.1は、ベクターの種類が異なる以外は図7−1に示したベクターpRSETBと同じである。
細胞への遺伝子導入と測定準備
D−MEMで培養しているHeLa細胞にリポフェクチン法によって作製したルシフェラーゼ−GFPベクターを導入する。翌日に培養液を捨て、細胞をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で洗い、HBSS1mlに置換する。これに発光基質であるセレンテラジン(プロメガ社)を最終濃度60μMで添加し、37℃で1時間インキュベートする。
測定
アポトーシスを誘導するため抗Fas抗体(医学生物学研究所)1μlとシクロヘキサイミド(最終濃度10μM)を添加し測定を開始した。最初にフィルター無しの状態で5分間撮影し、その後510 nmのロングパスフィルターを通して5分間撮影する。これを30分間隔で6時間撮影する。GFPの蛍光量は510 nmのフィルター後の値とし、ルシフェラーゼによる発光量は、フィルター無しの光量からフィルター後の光量を差し引いた値とした。図8−1は、刺激開始前のフィルター無しの画像である。図8−2は、刺激開始から3時間後のフィルター無しと有りの画像を模式化したものである。この中の四角い領域におけるルシフェラーゼの発光とYFPの蛍光強度の経時変化を示したのが図9である。最初はBRETによりYFPの蛍光量が強いが、カスパーゼによりルシフェラーゼ−YFP複合体が消化されBRETが解消されるとルシフェラーゼによる発光量が強くなってくるのが分かる。このようにルシフェラーゼの発光強度とYFPの蛍光強度の比をモニターすることによってカスパーゼの活性、すなわちアポトーシスの程度を検出できる。
以上、この態様2を生細胞のBRETを画像解析する例によって説明したが、この態様2は、上述した実施の形態および実施例に内在し、且つこの出願より前に他人(または他社)によって出願等されたあらゆる発明によっても自明でないような、あらゆるカテゴリーに属する技術思想を包含するものであり、その技術思想が及ぶ均等物ないしこの態様2で開示されないあらゆる下位概念の発明を包括する権利範囲を有する。
なお、この態様2は、次のような考察に基づき派生する種々の変形例も直接的かつ一義的に包含する。なぜなら、種々の変形例は、この態様2と共通する考察を必ず経由して種々の応用に種々転用されるだけだからである。
態様2に関する考察
BRET、FRETは生体内外のタンパク相互作用の有無を着実に反映する典型的手法である。相互作用を光強度だけで検出しようとすると、非特異的反応や挟雑物ないし自家蛍光等のノイズ信号により信頼性が低くなる。一般に蛍光は、外部から照射された励起光の照射エネルギーにより励起される。従来の生体に関する画像化方法は、なるべく視覚的に見えるように可視化するような過大な照射エネルギーを利用している。FRETに比べBRETは励起が要らないので、実験し易い。また、蛍光は強度変化が不安定だが、発光は安定である。励起光照射による過大なエネルギーによる蛍光検出から発想できない(非自明な)視点として、生物発光またはこれに伴う蛍光(例えばBRET)は変化量の評価(例えば、遺伝子発現の変動のモニタリング)や連続的かつ広視野の受光に適している。換言すると(上位化すると)、細胞内の活性変化に応じて光強度が変わるような検査項目は、過大な光エネルギーによる画像情報からは実行困難である。また、分光測定やフォトンカウントによる生物発光の検出からは発想できない(非自明な)視点として、同一視野ないし同一試料中の複数の検出対象を個別に比較したり、個々の変化量を評価することである。そもそも、生物発光、さらには生物発光の光エネルギーにより励起される生物発光由来蛍光(例えばBRET)は、暗すぎて、肉眼または顕微鏡による接眼レンズによって観察できない。従来の顕微鏡がそうであったように、暗すぎて画像を取得できなかった場合、細胞1個づつ取り出したり、別々の容器に遠ざけて検査するしかないので、非常に時間も工数も必要となる。ましてや、細胞内の検査を、1個づつ細胞を溶解したり、すり潰す手技を施すことは面倒である。別々の容器や個別の手技を用いることは、生きた細胞ないし組織を継続的ないし複数調べるには不適である。この態様2の方法を適用すれば、1個づつの細胞等の試料について個別に遺伝子発現等の変化を継続的かつ複数調べることができる。さらに、何度でも同じ細胞からデータが取れるという魅力もある。これらの考察内容を総合すれば、上記態様2の新規性および進歩性は容易に理解されるであろう。
態様3 単一細胞での遺伝子の発現量変化を解析する方法
技術分野
この態様3は、本発明において、リポーター遺伝子の発するシグナルを光学イメージングすることにより、単一細胞での遺伝子の発現量変化を解析する方法に関する。
背景となる技術
従来の光学イメージングによる遺伝子発現の解析方法としては、蛍光タンパク質をレポーター遺伝子として用いている(特表2004−500576)に示されているように、発現量を観察しようとする遺伝子のプロモーター領域の下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)、あるいは青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)の遺伝子を連結させた遺伝子発現ベクターを作製して細胞に導入し、それぞれの蛍光タンパク質に合った励起光を照射して得られる蛍光量を測定する。蛍光量は遺伝子の発現量に比例するため、目的の遺伝子の発現量を観察することが可能である。一方、生物発光を用いた遺伝子発現解析法として、特開2005−118050、特開2000−354500、特許第3643288号に示されているように、Gタンパク質を介する刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結させた遺伝子発現ベクターを作製して細胞に導入し、Gタンパク質を介する刺激を行なった後の細胞から発せられる光をルミノメーターにより検出する。発光量は遺伝子の発現量に比例するため、刺激により発現が誘導される遺伝子の発現量を観察することが可能である。
上記背景から生じる課題
蛍光タンパク質を用いた従来技術では、励起光照射による細胞への光毒性について考慮されておらず、細胞を生存し続けられる状態で維持するという点について対応することが出来ない。よって、この点に着目し、励起光を照射する必要が無いため細胞に傷害が少ない、生物発光を用いた単一細胞での遺伝子発現解析方法を提供することが課題となる。また、蛍光タンパク質を用いた従来技術では、励起光自身や細胞内物質の自家蛍光によるバックグラウンドについて考慮されておらず、レポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を高いS/N比で、定量的に決定するという点について対応することが出来ない。よって、励起光が必要なく比較的バックグランドが少ない発光タンパクを利用する、生物発光を用いた単一細胞での遺伝子発現解析方法を提供することも課題となる。さらに、発光タンパク質を用いた従来技術では、レポーター遺伝子が生ずるシグナルを単一細胞において観察することについて考慮されておらず、レポーター遺伝子が生ずる検出可能なシグナルを光学イメージングするという点について対応することが出来ない。よって、この点に着目し、レポーター遺伝子が生ずるシグナルを発している細胞が同定出来るように発光顕微鏡で撮像する、生物発光を用いた単一細胞での遺伝子発現解析方法を提供することも課題となる。
上記課題を解決する手段と作用効果について
上記課題を解決するという目的を達成するために、後述するように、蛍(ほたる)またはウミシイタケなどのルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として用いることでシグナルの発生に励起光を照射する必要が無く、細胞への傷害を低減させ、なお且つ細胞内物質の自家蛍光などによるバックグランドを低減させた状態で光学イメージング出来ることを見出した。また、ルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として用いて細胞での遺伝子発現量の解析を行なう方法において、発光顕微鏡を用いて観察を行なった場合に、リガンド添加によりレポーター遺伝子の発現が単一細胞で光学イメージング出来ることを見出した。また、レポーター遺伝子の発現を制御するプロモーターとしてヒトc−fos遺伝子のプロモーター領域を用いることにより、ATPや血清をリガンドとして添加するとレポーター遺伝子産物の発現増加を単一細胞で光学イメージング出来ることを見出した。 さらに、発光イメージと同視野において細胞の明視野像を撮像して画像同士を重ね合わせ、発光イメージが得られた細胞を同定することで、単一細胞での遺伝子発現量の経時的変化を得ることが可能であることを見出し、この態様3に係る発明を完成できた。
A.態様3における語句の定義
<刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域>
態様3におけるプロモーター領域としては、最初期遺伝子のプロモーターが挙げられる。態様3で用いられる最初期遺伝子のプロモーターとしては、例えば、c−fosプロモーター領域が挙げられる。また、態様3で用いられるプロモーターとしては、前記プロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。ここでプロモーター領域とは、プロモーター活性を有するために必要な最小の塩基配列を含む任意の領域を意味する。例えば、該遺伝子の転写部位に対して上流500から2000塩基の領域の一部または全部を用いることができる。
<レポーター遺伝子>
態様3におけるレポーター遺伝子は、検出可能な蛍光を発するレポータータンパク質をコードする遺伝子を意味する。例えば、蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼを挙げることができる。さらには、例えば、βガラクトシダーゼをコードする遺伝子、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子を挙げることができる。
<物質>
下記に説明する発明において使用される「物質」とは、自然界に存在する天然の物質あるいは人工的に調製される任意の物質を意味する。具体的には、例えば、化学的に合成された任意の化合物を挙げることができる。該化合物の種類および分子量などについては特に限定されない。該物質がタンパク質、またはペプチドである場合には、生体組織や細胞から単離されるもの、および遺伝子組換えや化学的合成により調製されるものも含まれる。さらにまた、それらの化学修飾体も含まれる。
<リガンド>
態様3に使用されるGタンパク質共役型受容体のリガンドとは、Gタンパク質共役型受容体と相互作用する任意のアゴニストまたは該受容体の任意のアンタゴニストを意味する。
<光学イメージング>
態様3における光学イメージングとは、レポーター遺伝子を導入した細胞において、レポーター遺伝子により発せられる検出可能なシグナルの存在、不在または強度をモニタリング、記録および分析するイメージング方法を意味する。光学イメージングを達成するためには、レポーター遺伝子により発せられるシグナルの強度が、シグナルを細胞の外部から分析することができるように、十分に高くなくてはならない。光学イメージングは自動化に容易に適用可能であることから、多数の遺伝子発現を同時にモニタリングするのに用いることができる。
B.遺伝子発現の光学イメージング方法
<遺伝子発現ベクターの作製>
動物細胞を用いる場合、発現ベクターは少なくともプロモーター、開始コドン、目的のタンパク質をコードするDNA、終止コドンを含んでいることが好ましい。また、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、該タンパク質をコードする遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリA付加シグナル、選択マーカー領域または複製可能単位などを含んでいてもよい。
<細胞への遺伝子導入方法>
遺伝子を細胞へ導入する方法としては、塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。態様3で使用される遺伝子導入した細胞には一過性発現細胞あるいは安定発現細胞のいずれもが含まれる。
<刺激による遺伝子発現の光学イメージング>
態様3は例えば、下記のように実施することが出来る。
細胞の定数(例えば、該物質を細胞に接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域(好ましくは、c−fos遺伝子のプロモーター領域)に発現可能に連結されたレポーター遺伝子(好ましくは蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼ)を前記の遺伝子導入方法を用いて細胞に導入する。得られた前記の遺伝子導入された細胞の定数(例えば、1〜1×10個、好ましくは1×10〜1×10個)を所望の細胞培養が可能な器具(例えば、シャーレ、多数のウェルを有するマルチプレートなど)を用いて所望の栄養培地(例えば、D−MEM培地など)中で培養する。この定数の細胞からなる試料を、あらかじめ細胞にとって最適な温度(例えば、25〜37℃、好ましくは35〜37℃)に保温し、試料の乾燥を防ぐため水を注入して保湿した発光顕微鏡の培養装置部に設置し、該発光顕微鏡の試料観察部にある対物レンズを通してデジタルカメラで発光イメージを記録する。前記の試料に、細胞に接触させて刺激を行なうための物質(例えば、化合物)を所望の濃度(例えば、1pM〜1M、好ましくは100nM〜1mM)で加えて、所望の時間間隔(例えば5分間〜5時間、好ましくは10分間〜1時間)で発光イメージを記録する。記録した画像を市販の画像解析ソフト(例えば、MetaMorph;ユニバーサルイメージング社製など)を用いて画像内の所望の領域における輝度値を取得する。さらに、発光イメージと同視野において明視野イメージを記録し、前記の画像解析ソフトを用いて発光イメージと明視野イメージを重ね合わせて、発光している細胞を同定する。
実施例1
<c−fosプロモーター−ルシフェラーゼレポーター遺伝子の構築>
c−fosプロモーター−ルシフェラーゼレポーター遺伝子を、特願2005−352683(整理番号05P03010)に記載の方法に沿い、以下のようにして構築した。ヒトゲノミックDNAを鋳型として、プライマーfos pro Fwおよびプライマーfos pro Rvを用いてPCRを行ない、c−fos遺伝子のプロモーター領域(転写開始部位に対して−363〜+1,067)を増幅した。増幅されたDNA断片を制限酵素XhoIおよびHindIIIにて消化した。発現ベクターpGL3−Basicベクター(Promega社)を制限酵素XhoIおよびHindIIIにて消化し、上記のDNA断片をpGL3−Basicベクターにクローン化した。(以下、レポーター遺伝子発現ベクター(pGL3−fos)と記載することもある。)
実施例2
<ATPをリガンドとして細胞を刺激したときのレポーター遺伝子の発現量変化>
ATPを細胞刺激のリガンドとして用いた時のレポーター遺伝子の発現量変化測定の例を以下に示す。
HeLa細胞をガラスボトムディッシュ(径35mm;IWAKI製)に1×10細胞/ディッシュとなるようにまいた。増殖培地には、10%の牛胎児血清を含むD−MEMを用いた。該細胞を37℃で1日培養後に、リポフェクトアミン2000試薬(インビトロゲン製)を用いて、メーカーの説明書に従いレポーター遺伝子発現ベクターを細胞へ導入した。約2時間後に遺伝子導入液を捨て、増殖培地を加えて37℃で16時間以上培養した。増殖培地を無血清培地(牛胎児血清を含まないD−MEM)に交換して37℃で16時間以上培養した。該細胞を培養している培養器を、あらかじめ35〜37℃に設定しておいた発光顕微鏡の培養装置部内に設置し、試料観察部を操作して該細胞にフォーカスを合わせた。ルシフェリンを終濃度1mMとなるように加えて1時間以上静置した後、ATPを終濃度100μMとなるように加えた。デジタルカメラ(DP30;オリンパス製)の操作用ソフト(DPコントローラ;オリンパス製)を用いて該細胞の明視野画像を取り込み、記録を行なった。発光イメージはデジタルカメラに1分間露光したものを5回加算することで得た。発光イメージは10分おきに取得したものをコンピューターで取り込み、記録を行なった。画像解析ソフト(Metamorph;ユニバーサルイメージング製)を用いて発光イメージの輝度値を求め、また発光イメージと明視野画像を重ね合わせて発光している細胞を同定した。
図10−3に、この実施例2で同定を行なった際の重ね合わせ画像を示す。ここにおいて、細胞の明視野画像を図10−1、同視野で取得した発光イメージを図10−2、明視野画像と発光イメージを画像解析ソフト上で重ね合わせた画像を図10−3に示した。この重ね合わせ画像により、発光している細胞の位置や形態が確認出来た。
図11に示すように、レポーター遺伝子産物であるルシフェラーゼの活性はATPを接触させる刺激に応じて一過性に上昇する様子が単一細胞で観察出来た。しかし、刺激を行なってからルシフェラーゼの活性がピークに達するまでに要する時間や、ピーク時の活性量は細胞間でばらついていることが明らかになった。
実施例3
<血清により細胞を刺激したときのレポーター遺伝子の発現量変化>
牛胎児血清を細胞刺激のリガンドとして用いた時のレポーター遺伝子の発現量変化測定の例を以下に示す。使用したリガンドが異なる以外、他の条件は実施例2と同様に行なった。牛胎児血清刺激は終濃度10%で行なった。
図12−3に、この態様3の実施例3で同定を行なった際の重ね合わせ画像を示す。ここにおいて、細胞の明視野画像を図12−1、同視野で取得した発光イメージを図12−2、明視野画像と発光イメージを画像解析ソフト上で重ね合わせた画像を図12−3に示した。発光している細胞の位置や形態が確認出来た。
図13に示すように、レポーター遺伝子産物であるルシフェラーゼの活性は牛胎児血清を接触させる刺激に応じて一過性に上昇する様子が単一細胞において観察できた。しかし、刺激を行なってからルシフェラーゼの活性がピークに達するまでに要する時間や、ピーク時の活性量は、実施例2のATPの刺激と同様、細胞間でばらついていることが明らかになった。
以上の実施例1〜3に記載された説明によれば、態様3は次に示すような各付記項に表現される発明であると理解できる。
付記項1
刺激に対する遺伝子の発現量変化を単一細胞において解析する方法であって、
ある物質を細胞へ接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたレポーター遺伝子を細胞へ導入する工程と、
細胞を生存し続けられる状態で維持する工程と、
細胞に前記の物質を接触させて刺激を行なう工程と、
刺激を行なった各細胞において発現した前記のレポーター遺伝子が生ずる検出可能なシグナルを光学イメージングする工程と、
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を高いS/N比で、定量的に決定する工程と、
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルが検出された細胞を同定する工程を含む、遺伝子発現量変化を単一細胞において解析する方法。
付記項2
前記のプロモーター領域が最初期遺伝子のプロモーター領域である付記項1に記載の方法。
付記項3
前記の最初期遺伝子がヒト由来のc−fos遺伝子である付記項2に記載の方法。
付記項4
前記のレポーター遺伝子が発光タンパク質である付記項1に記載の方法。
付記項5
前記の発光タンパク質が蛍由来のルシフェラーゼである付記項4に記載の方法。
付記項6
前記の発光タンパク質がウミシイタケ由来のルシフェラーゼである付記項4に記載の方法。
付記項7
前記のプロモーター領域に発現可能に連結された前記のレポーター遺伝子を細胞へ導入する付記項1に記載の方法。
付記項8
前記の細胞へ接触させる物質がGタンパク質共役型受容体のリガンドである付記項1に記載の方法。
付記項9
前記のGタンパク質共役型受容体のリガンドが核酸である付記項8に記載の方法。
付記項10
前記の核酸がアデノシン三リン酸である付記項9に記載の方法。
付記項11
前記の細胞へ接触させる物質が血清である付記項1に記載の方法。
付記項12
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルを光学イメージングすることを特徴とする付記項1に記載の方法。
付記項13
前記の光学イメージングにおいて発光顕微鏡で撮像することを特徴とする付記項12に記載の方法。
付記項14
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの強度を輝度値に変換することを特徴とする付記項1に記載の方法。
付記項15
前記の細胞において発光顕微鏡で明視野像を撮像することを特徴とする付記項1に記載の方法。
付記項16
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの光学イメージング像と細胞の明視野像を重ね合わせてシグナルを生じている細胞を同定することを特徴とする付記項1に記載の方法。
態様4 特定細胞において遺伝子発現を解析する方法
技術分野
この態様4は、本発明において、複数の細胞を含んでいる生体試料中の特定細胞において遺伝子発現を解析する方法に関する。
背景となる技術
従来のプロモーターアッセイ法では、個々の細胞によって外来の刺激に対する遺伝子発現量の変化が異なっていることを見ることが出来なかった。しかし、比較的均一な性質をもつ株化細胞を用いても刺激に対する個々の細胞の反応は異なっていることが知られているので、不均一な細胞集団では刺激に対する反応はより複雑であることが予想される。さらに、従来は均一な細胞が集まっている実験系を用いていたため、個々の細胞を同定する必要がなく、全細胞の平均値を観察していた。しかし、初代培養やスライス培養など不均一な細胞集団を用いた実験系では、従来のプロモーターアッセイ法を用いると対象とする細胞からのシグナルが周辺の細胞のシグナルと重なって正確に細胞を同定することができない。さらに、細胞外からの刺激により発現が誘導される最初期遺伝子(c−fosなど)は多くの細胞種において発現することが知られており、最初期遺伝子の発現量変化を観察することで薬物などに対する細胞の反応性をリアルタイムで観察することが可能である。しかし、複数種の細胞が混在する中では、発現の見られた細胞を同定することが困難である。そこで、特定の細胞においてのみ最初期遺伝子の発現量変化がリアルタイムで見られる実験系を構築する必要がある。
上記背景から生じる課題
従来の方法では、複数の細胞種からなる細胞群の中で特定の細胞においてのみ遺伝子発現を観察することについて考慮されておらず、ルシフェラーゼ遺伝子が生ずる検出可能なシグナルを特定の細胞からのみ光学イメージングするという点について対応することが出来なかった。本発明はこの点に着目し、特定の細胞においてのみルシフェラーゼ遺伝子が生ずるシグナルを発するようにしてそのシグナルを発光顕微鏡で光学イメージングを行なう、特定細胞において遺伝子発現を解析する方法を提供することが課題となる。
上記課題を解決する手段と作用効果について
MyoD遺伝子またはId遺伝子に融合したスプリットルシフェラーゼの片方は細胞特異的プロモーター領域を用いて特定細胞のみに発現させ、さらにもう片方は発現量解析を行ないたい遺伝子(最初期遺伝子など)のプロモーター領域を用いて細胞に発現させる。この細胞試料を発光顕微鏡で観察することにより、両方の融合遺伝子が発現してルシフェラーゼの酵素活性が観察される特定の細胞を光学イメージングすることが出来る。
本発明を行うに当り、特許(U.S. Pat. No.5,670,356)および非特許論文(PNAS (2002)vol.99 No.24 pp3105−3110)における、哺乳類ツーハイブリッドシステムを応用した細胞内でのタンパク間の相互作用の検出法およびプロモーターアッセイ方法を参照することができる。これは相互作用を引き起こすことが知られている遺伝子(MyoD遺伝子およびId遺伝子)と酵母のGAL4 DNA結合ドメインまたはヘルペスシンプレックスウイルスのVP16活性化ドメインとの融合タンパク発現ベクター、およびGAL4結合領域を5つ含んだルシフェラーゼ発現ベクターを細胞に導入する。目的遺伝子同士(MyoD遺伝子とId遺伝子)が相互作用を起こすとルシフェラーゼの発現量が増加するという原理を利用してタンパク間の相互作用の検出およびプロモーターアッセイを行なっている。
また、非特許論文(PNAS (2002) vol.99 No.24 pp15608−15613)における、スプリットルシフェラーゼを用いた細胞内でのタンパク間の相互作用の検出法およびプロモーターアッセイ方法も参照することができる。これはルシフェラーゼ遺伝子をN末側とC末側に分けて、それぞれ相互作用を引き起こすことが知られている遺伝子(MyoD遺伝子及びId遺伝子)との融合タンパクをつくり細胞に発現させる。ルシフェラーゼはN末側もしくはC末側のみの状態では酵素活性を持たないため発光は検出されないが、融合した遺伝子同士(MyoD遺伝子とId遺伝子)の結合があるとルシフェラーゼのN末側とC末側も結合して酵素活性をもつようになるという原理を利用してタンパク間の相互作用の検出およびプロモーターアッセイを行なっている。
A.態様4における語句の定義
<特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域>
態様4における特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域としては、例えば神経細胞特異的な遺伝子、あるいはグリア細胞特異的な遺伝子のプロモーターが挙げられる。
態様4で用いられる神経細胞特異的な遺伝子のプロモーターとしては、例えば、NSE(neuron−specific enolase)遺伝子のプロモーター領域が挙げられる。また、態様4で用いられるグリア細胞特異的な遺伝子のプロモーターとしては、例えば、GFAP(glial fibrillary acidic protein)遺伝子のプロモーター領域が挙げられるまた、態様4で用いられるプロモーターとしては、前記プロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。ここでプロモーター領域とは、プロモーター活性を有するために必要な最小の塩基配列を含む任意の領域を意味する。例えば、該遺伝子の転写部位に対して上流500から4000塩基の領域の一部または全部を用いることができる。
<刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域>
態様4における刺激により発現が誘導される遺伝子プロモーター領域としては、最初期遺伝子のプロモーターが挙げられる。態様4で用いられる最初期遺伝子のプロモーターとしては、例えば、c−fosプロモーター領域が挙げられる。また、態様4で用いられるプロモーターとしては、前記プロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。ここでプロモーター領域とは、プロモーター活性を有するために必要な最小の塩基配列を含む任意の領域を意味する。例えば、該遺伝子の転写部位に対して上流500から2000塩基の領域の一部または全部を用いることができる。
<レポーター遺伝子>
態様4におけるレポーター遺伝子は、検出可能な蛍光を発するレポータータンパク質をコードする遺伝子を意味する。例えば、蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼを挙げることができる。さらには、例えば、βガラクトシダーゼをコードする遺伝子、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子を挙げることができる。
<物質>
態様4に使用される物質とは、自然界に存在する天然の物質あるいは人工的に調製される任意の物質を意味する。具体的には、例えば、化学的に合成された任意の化合物を挙げることができる。該化合物の種類および分子量などについては特に限定されない。該物質がタンパク質、またはペプチドである場合には、生体組織や細胞から単離されるもの、および遺伝子組換えや化学的合成により調製されるものも含まれる。さらにまた、それらの化学修飾体も含まれる。
<光学イメージング>
態様4における光学イメージングとは、レポーター遺伝子を導入した細胞において、レポーター遺伝子により発せられる検出可能なシグナルの存在、不在または強度をモニタリング、記録および分析するイメージング方法を意味する。光学イメージングを達成するためには、レポーター遺伝子により発せられるシグナルの強度が、シグナルを細胞の外部から分析することができるように、十分に高くなくてはならない。光学イメージングは自動化に容易に適用可能であることから、多数の遺伝子発現を同時にモニタリングするのに用いることができる。なお、イメージングした試料画像の任意の位置について、時系列に2次元または3次元に画像情報を処理する技術は、本出願人による特願2004−172156、特願2004−178254等を参照してもよい。蛍光観察と発光観察における時系列な画像取得の違いは、発光観察が励起光による光学的走査(レーザスキャン)を必要としない点で余計な光による影響が無い点にある。態様4で行うイメージング技術によれば、リアルタイムに発光画像を撮像できる。
B.遺伝子発現の光学イメージング方法
<遺伝子発現ベクターの作製>
動物細胞を用いる場合、発現ベクターは少なくともプロモーター、開始コドン、目的のタンパク質をコードするDNA、終止コドンを含んでいることが好ましい。また、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、該タンパク質をコードする遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリA付加シグナル、選択マーカー領域または複製可能単位などを含んでいてもよい。
<細胞への遺伝子導入方法>
遺伝子を細胞へ導入する方法としては、塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。態様4で使用される遺伝子導入した細胞には一過性発現細胞あるいは安定発現細胞のいずれもが含まれる。
<刺激による遺伝子発現の光学イメージング>
態様4は例えば、下記のように実施することが出来る。
N末側ルシフェラーゼ(NLuc)遺伝子(アミノ酸番号1−416)とマウスのId遺伝子(アミノ酸番号29−148)との融合遺伝子(NLuc−Id遺伝子)、およびC末側ルシフェラーゼ(CLuc)遺伝子(アミノ酸番号398−550)とマウスのMyoD遺伝子(アミノ酸番号1−318)との融合遺伝子(MyoD−CLuc遺伝子)を作製する。図14に示すように、細胞内で発現したNLuc−Id遺伝子中のId遺伝子部位とMyoD−CLuc遺伝子中のMyoD遺伝子部位とが相互作用して結合すると、NLuc遺伝子とCLuc遺伝子とが結合し検出可能なシグナルを発する。
さらに、物質を細胞に接触させる刺激により発現が誘導される最初期遺伝子のプロモーター領域(例えば、c−fos遺伝子のプロモーター領域)に発現可能に連結されたNLuc−Id遺伝子とともに細胞特異的な発現をする遺伝子のプロモーター領域(例えば、神経細胞を観察したい場合には神経細胞特異的に発現するNSE(neuron−specific enolase)遺伝子のプロモーター領域を用い、グリア細胞を観察したい場合にはグリア細胞特異的に発現するGFAP(glial fibrillary acidic protein)遺伝子のプロモーター領域を用いる)に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子を従来の遺伝子導入方法を用いて混合培養した複数の細胞種からなる細胞群(例えば、神経細胞とグリア細胞との混合培養)に導入する。または、最初期遺伝子のプロモーター領域(例えば、c−fos遺伝子のプロモーター領域)に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子とともに細胞特異的な発現をする遺伝子のプロモーター領域(例えば、神経細胞を観察したい場合には神経細胞特異的に発現するNSE(neuron−specific enolase)遺伝子のプロモーター領域を用い、グリア細胞を観察したい場合にはグリア細胞特異的に発現するGFAP(glial fibrillary acidic protein)遺伝子のプロモーター領域を用いる)に発現可能に連結されたNLuc−Id遺伝子を従来の遺伝子導入方法を用いて混合培養した複数の細胞種からなる細胞群(例えば神経細胞とグリア細胞との混合培養)に導入する。
遺伝子導入された細胞の定数(例えば、1〜1×10個、好ましくは1×10〜1×10個)は所望の細胞培養が可能な器具(例えば、シャーレ、多数のウェルを有するマルチプレートなど)を用いて所望の栄養培地(例えば、D−MEM培地など)中で培養する。この定数の細胞からなる試料を、あらかじめ細胞にとって最適な温度(例えば、25〜37℃、好ましくは35〜37℃)に保温し、試料の乾燥を防ぐため水を注入して保湿した発光顕微鏡の培養装置部に設置し、該発光顕微鏡の試料観察部にある対物レンズを通してデジタルカメラで発光イメージを記録する。前記の試料に、細胞に接触させて刺激を行なうための物質(例えば、化合物)を所望の濃度(例えば、1pM〜1M、好ましくは100nM〜1mM)で加えて、所望の時間間隔(例えば5分間〜5時間、好ましくは10分間〜1時間)で発光イメージを記録する。図15に示すように、NLuc−Id遺伝子(もしくはMyoD−CLuc遺伝子)が発現している特定の細胞Bにおいて、物質を細胞に接触させる刺激によりMyoD−CLuc遺伝子(もしくはNLuc−Id遺伝子)の発現が誘導されたときにルシフェラーゼの酵素活性が増強し検出可能なシグナルを発するようになる。一方、該物質を細胞に接触させる刺激によりMyoD−CLuc遺伝子(もしくはNLuc−Id遺伝子)のみの発現が誘導された細胞Aでは検出可能なシグナルを発しない。記録した画像は市販の画像解析ソフト(例えば、MetaMorph;ユニバーサルイメージング社製など)を用いて画像内の所望の領域における輝度値を取得する。さらに、発光イメージと同視野において明視野イメージを記録し、前記の画像解析ソフトを用いて発光イメージと明視野イメージを重ね合わせて、発光している細胞を同定する。
この応用例に関する上記実施形態の説明によれば、態様4は次に示すような各付記項に表現される発明であると理解できる。
付記項17
特定細胞において遺伝子発現を解析する方法であって、
特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結された不完全なレポーター遺伝子を細胞へ導入する工程と、
ある物質を細胞へ接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結された不完全なレポーター遺伝子を細胞へ導入する工程と、
細胞を生存し続けられる状態で維持する工程と、
細胞に前記の物質を接触させて刺激を行なう工程と、
刺激を行なった各細胞において発現した前記の不完全なレポーター遺伝子同士が結合することによって生ずる検出可能なシグナルを光学イメージングする工程と、
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を高いS/N比で、定量的に決定する工程と、
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルが検出された細胞を同定する工程を含む、特定細胞において遺伝子発現を解析する方法。
付記項18
前記の特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域が神経細胞特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域である付記項17に記載の方法。
付記項19
前記の神経細胞特異的に発現する遺伝子がNSE(neuron−specific enolase)遺伝子である付記項18に記載の方法。
付記項20
前記の特定の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域がグリア細胞特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域である付記項17に記載の方法。
付記項21
前記のグリア細胞特異的に発現する遺伝子がGFAP(glial fibrillary acidic protein)遺伝子である付記項17に記載の方法。
付記項22
前記の刺激により発現が誘導されるプロモーター領域が最初期遺伝子のプロモーター領域である付記項17に記載の方法。
付記項23
前記の最初期遺伝子がヒト由来のc−fos遺伝子である付記項22に記載の方法。
付記項24
前記の不完全なレポーター遺伝子が発光タンパク質の遺伝子配列の一部を含む付記項17に記載の方法。
付記項25
前記の発光タンパク質が蛍由来のルシフェラーゼである付記項24に記載の方法。
付記項26
前記の発光タンパク質がウミシイタケ由来のルシフェラーゼである付記項24に記載の方法。
付記項27
前記のプロモーター領域に発現可能に連結された前記の不完全なレポーター遺伝子を細胞へ導入する付記項17に記載の方法
付記項28
前記の細胞へ接触させる物質がGタンパク質共役型受容体のリガンドである付記項17に記載の方法
付記項29
前記の細胞へ接触させる物質が血清である付記項17に記載の方法。
付記項30
前記の不完全なレポーター遺伝子同士が結合して生ずるシグナルを光学イメージングすることを特徴とする付記項17に記載の方法。
付記項31
前記の光学イメージングにおいて発光顕微鏡で撮像することを特徴とする付記項30に記載の方法。
付記項32
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの強度を輝度値に変換することを特徴とする付記項17に記載の方法。
付記項33
前記の細胞において発光顕微鏡で明視野像を撮像することを特徴とする付記項17に記載の方法。
付記項34
前記のレポーター遺伝子が生ずるシグナルの光学イメージング像と細胞の明視野像を重ね合わせてシグナルを生じている細胞を同定することを特徴とする付記項17に記載の方法。
態様5 細胞の表面に発現させルシフェラーゼ活性を検出する方法
態様5の技術分野
この態様5は、本発明において、タンパク質の細胞外への分泌または、細胞表面への発現を解析する方法に関する。より具体的には、発光顕微鏡などを用いた解析法で、疎水性アミノ酸に富む配列から予測したシグナルペプチドや膜貫通ドメインをルシフェラーゼを用いた融合タンパク質コードする遺伝子をレポーターとし、細胞の表面に発現させルシフェラーゼ活性を検出する方法に関する。
背景となる技術
ヒトを含め多細胞動物では、個体の構築・維持のための細胞間コミュニケーションや細胞外環境造成が必要である。そのために、細胞は莫大な種類のタンパク質を、小胞体−ゴルジ装置という細胞内小器官を介して細胞外に分泌する。例えばホルモンなどの分泌型水溶性タンパク質は細胞膜を通り抜けて細胞外に分泌されるし、膜タンパク質は細胞膜などの適切な膜に組み込まれる。分泌タンパク質は、N末端に「分泌シグナルペプチド」と呼ばれる配列を持っている。シグナルペプチドは、細胞質のリボソームで最初に翻訳されるや否や、これを認識する分子群によって、小胞体の膜のチャンネル(穴)に挿入され、続いて合成されるタンパク質本体部分を通過させつつ、自身は切断、破棄される。シグナルペプチドは、疎水性アミノ酸に富む配列であり、これを高確率で予測できるプログラムがある。
例えば、任意のアミノ酸配列に対してシグナルペプチドの有無とその領域を判別する技術がある。その判別アルゴリズムの概要は、各アミノ酸に固有の疎水性指標・負電荷指標を用いて、入力されたアミノ酸配列のなかのある閾値を越えて平均疎水性値が高く、かつ負電荷残基を含まない領域を探索し、それらのうち最もN末端に近い領域をシグナルペプチドの候補領域とする。次に、候補領域のうち平均疎水性値が最大の位置、ここからN末端側に直近の正電荷残基の位置(ない場合はN末端)を用いて、シグナルペプチドの判別領域を設定する。この判別領域は、候補領域とは一致しない場合が多い。判別領域を構成するアミノ酸に、新規に発明したシグナルペプチド判別のための2つの指標SS−index、SP−indexを割り振る。これらの値と候補領域の位置情報とを考慮に入れた判別式から、候補領域がシグナルペプチドであるか否かを判別する。また、SOSUIsignalという予測プログラムは、3つのドメイン構造のアミノ酸配列に見られる物理化学的特徴に着目したもので、その予測システムは、疎水性の高いセグメント検出、シグナルアンカーを含むシグナル配列の予測、シグナルアンカーとシグナルペプチドの判別という3つのモジュールからなる。これら、シグナルペプチドを検出することで、(1) プロテオーム情報解析、ゲノム計画の進展により明らかになった、新規な遺伝子・タンパク質の機能推定、(2) バイオインフォマティクス・コンピュータを用いた大量の生物情報の処理、(3) ゲノム創薬、シグナルペプチドを用いた、リゾチームやホルモン剤などのタンパク質製剤の生産技術向上といった用途の利用がある。
また、生体防御においてサイトカインは免疫応答・炎症・造血反応などの生体防御などに重要な役割を果たしており、新たなサイトカインあるいは、サイトカイン様の生理活性タンパク質遺伝子を探索し、構造と機能の解明をすることは、疾患の原因解明や治療への応用からも非常に重要である。さらに培養上清中に目的タンパク質を分泌することができれば、精製を容易にすることができ、宿主細胞での組換え型タンパク質生産量を大幅に増大させることが可能となり、サイトカインをはじめとする種々の組換え型タンパク質製剤のコストダウンが実現するようになる。
上記背景から生じる課題
これらのシグナルペプチドの予測や機能は、最終的に細胞を用いて検証する。従来の方法として、ジーントラップ法は、プロモーターを欠いたレポーター遺伝子を目的の細胞に導入し、染色体上で活性化されているプロモーターの下流に挿入された時のレポーター活性により内在性の遺伝子発現を同定するものである。例えば、レポーターは、β−balactosidase(β−gal)と(hygromycin (Hyg.) phosphotransferaseの融合遺伝子で、この遺伝子が翻訳されレポータータンパク質が合成され細胞内にとどまればβ−gal活性が発現してX−gal存在化に細胞質に青染される領域が出現するが、ER側に入るとその活性は失われる。レポータの上流に疎水性の膜貫通領域を組み込みβ−gal活性を指標にシグナル配列をコードする遺伝子を選択する。これらシグナル配列をターゲットとしたジーントラップ法により軟骨細胞に特異的な分泌型および膜表面タンパク質の同定が可能である(Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol.92, pp.6592−6596)。しかしながら、シグナルペプチドが存在するとβ−balactosidase活性がなくなるため、フォールスポジティブが多くなりまた検出感度も良く無いといった問題点がある。
また、蛍光タンパク質や、ルシフェラーゼなどの生物発光を用いた方法として、遺伝子をトランスフェクション後の培養上清を集め、その培養上清中の蛍光タンパク質の蛍光や、ルシフェラーゼ活性による発光を検出することで未知の分泌タンパク質の同定を行っている。しかしながら、培養上清を集めるため、感度が低くなりまたどの細胞から分泌されたかや、発現の強弱を細胞レベルで計測することが出来ないといった問題点があった。
ここで、蛍光タンパク質を用いた従来技術では、励起光照射による細胞への光毒性について考慮されておらず、細胞を生存し続けられる状態で維持するという点について対応することが出来ない。よって、この点に着目し、励起光を照射する必要が無いため細胞に傷害が少ない、生物発光を用いた単一細胞での遺伝子発現解析方法を提供することが課題となる。また、蛍光タンパク質を用いた従来技術では、励起光自身や細胞内物質の自家蛍光によるバックグラウンドについて考慮されておらず、レポーター遺伝子が生ずるシグナルの量を高いS/N比で、定量的に決定するという点について対応することが出来ない。よって、励起光が必要なく比較的バックグランドが少ない発光タンパクを利用する、生物発光を用いた単一細胞での遺伝子発現解析方法を提供することも課題となる。
また、免疫染色法による観察では、細胞を固定出来ず生細胞の状態で染色しなければならず、接着性の細胞では、プレートから細胞がはがれたり、洗浄操作が伴うため、時間と労力がかかるといった問題がある。さらに、細胞表面への発現を観察するうえで、従来GFPなどに膜貫通ドメインを融合したタンパク質で観察する方法が試みられてきたが、細胞外へ発現したかの判断が困難である。また、フォールスポジティブ(false positive)が多いという問題がある。具体的にGFPのC末端にCD40の187アミノ酸からC末端までの膜貫通ドメインを含む融合タンパク質をトランスフェクションした。この融合タンパク質を発現したHela細胞を4℃の環境で抗GFP抗体(sigma)と2次抗体として抗mouse−IgG−Cy3 (sigma)で免疫染色して観察した。すると、免疫染色でシグナルペプチドが無いにもかかわらず細胞表面に発現している細胞が観察された(図16)。
さらに、発光タンパク質を用いた従来技術では、レポーター遺伝子が生ずるシグナルを単一細胞において観察することについて考慮されておらず、レポーター遺伝子が生ずる検出可能なシグナルを光学イメージングするという点について対応することが出来ない。よって、この点に着目し、レポーター遺伝子が生ずるシグナルを発している細胞が同定出来るように発光顕微鏡で撮像する、生物発光を用いた単一細胞での遺伝子発現解析方法を提供することが態様5の課題となる。
上記課題を解決する手段と作用効果について
1.従来技術では上記のように、シグナルペプチド検出に関連した従来の分析方法は何れも、 β−balactosidase活性を用いる方法では細胞1つずつのシグナルペプチドの有無を観察することが出来るが、小胞体内にターゲティングされているのは解るが細胞外へ放出されるかどうかは直接解らないし β−balactosidase活性を指標にしているため感度が低いといった問題点がある。また、細胞からGFPやルシフェリンの分泌された培養上清を測定する方法では、直接細胞を観察出来ず測定する培養液全体の情報しか解らず感度を上げるためには、培養上清を濃縮しなければならないといった問題点がある。
態様5は、細胞外への分泌などの測定にレポーターを細胞外の膜に留めることで高感度に検出することが可能である。すなわち生物発光を観察する遺伝子例えばルシフェラーゼで基質が細胞内にほとんど入らない物を用い、解析したいシグナルペプチドのC末へつなげ、さらにそのC末に細胞表面にとどまる既知のタンパク質をつなげたレポーター遺伝子を構築し、発光顕微鏡で観察することでシグナルペプチドの作用を高感度に個々の情報を得ることが可能である。
GPIアンカーの生合成については、次のように要約される。第一段階はUDP−/N/−アセチルグルコサミンからホスファチジルイノシトールへの、/N/−アセチルグルコサミンの転移である。生成物である/N/−アセチルグルコサミン−ホスファチジルイノシトールは次に脱アセチル化され、グルコサミン−ホスファチジルイノシトールが生成する。この反応によって、GPIに非常に特異的なアセチル化されていないグルコサミンが生成される。哺乳動物細胞のGPIアンカー生合成変異株の研究により、グルコサミン−ホスファチジルイノシトールの生合成には、少なくとも三つの遺伝子が含まれることが示された。コア構造として保存される三つのマンノースの鎖を形成するマンノースの付加は、GDP−マンノースから活 性化されたマンノースのドリコールマンノースリン酸への転移による、疎水性のドナーの形成によって起こる。 次に、エタノールアミンリン酸が3番目(コアグリカンの還元末端から数えて)のマンノースに、疎水的ドナーであるホスファチジルエタノールアミンによって付加され 、このようにして保存的なコアグリカンの生合成が完結する。
小胞体の内腔側で起こるトランスアミダーゼ反応は、タンパク質が小胞体膜の適切な位置に挿入されるとすぐに開始される。前駆体タンパク鎖が小胞体膜を貫通することが、続いて起こるGPIアンカー化に必要で ある。この反応それ自身はタンパク質のC末端が切断され、エタノールアミンリン酸のアミノ基を介して、GPIアンカーによって置換されるアミノ基転移タイプの反応である。GPIアンカー化されるタンパク質は、小胞体の内腔側にあるGPI−トランスアミダーゼと相互作用する。この酵素は、C末端側に伸びている疎水的なアミノ酸 鎖を認識する。このアミノ酸鎖は一時的に膜貫通領域として働くと仮定され、このアミノ酸鎖のトランスアミダーゼによる切断で 生じた新たなC末端アミノ酸に、あらかじめ生成されていたGPIアンカーが付着する。
タンパク質が結合したGPIの最も明らかとなっている機能は、通常細胞外環境に向かう形で細胞膜の外側に、膜に対して安定した構造で特定のタンパク質を局在化させることである。このことは、なぜこのタンパク質が、膜貫通領域を介してつなぎ止められるタンパク質とは異なり、GPIアンカー化されているのかという一般的な理由であろう。GPIアンカー化されることによる主な 利点の一つは、細胞外部への機能を有する表面タンパク質の、細胞質からの物理的隔離であり、これによって細胞内部を保護することである。GPIは、膜貫通型タンパク質では考えられないような極端に高い密度で表面分子を集合することを可能とし、このことによって敵対する環境からの完全な隔離を可能にしている。このような細胞表面にとどまる既知のタンパク質をGPIアンカー型を用いることで特異性を上げることが可能となる。
また、既知のシグナルペプチドのC末へつなげ、さらにそのC末に解析したい細胞表面にとどまるタンパク質をつなげたレポーター遺伝子を構築し、発光顕微鏡で観察することで膜貫通ドメインやGPIアンカー型の作用を高感度に個々の情報を得ることが可能である。細胞個々の情報を高感度に観察することが可能なため、同一容器内で異なるシグナルペプチドや膜貫通ドメインかどうかを同時に解析出来、試料の必要量の低減、反応容器数の低減が可能で検査の簡便化出来る。
実施の態様
ウミシイタケのLuciferase遺伝子のN末にラットのneurotrophin−3 (NT−3)のシグナルペプチド部分− MSILFYVIFLAYLRGI− をつなげたもの(sig pep−Luci−GPI)とつなげないもの(Luci−GPI)にそれぞれC末端にヒトThy−1 のN末端から117(Ser)−161番(Leu)の部分をつなげた融合タンパク質を発現する遺伝子を構築した。
まず、トランスフェクション前日、35mmのカルチャーディシュに5×105 cells/mlの濃度で2ml(10% FBSを含むD−MEM培地)まき、5%CO環境下37℃で培養した。翌日pDNA3.1発現ベクターにsig pep−Luci−GPIまたはLuci−GPI遺伝子を挿入したプラスミドをHela細胞にLipofectamine2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクション後24−48時間10% FBSを含むD−MEM培地で5%CO環境下37℃で培養した。
計測は、細胞をHANKSで洗浄し、0.5mlのD−MEM培地にRenilla Luciferase Assay Substrate (100×) (Promega)を5μl加え、発光顕微鏡を用いて観察した(図17、図18参照)。測定条件は、明視野画像を撮像した後に、発光画像を露光時間5分、対物倍率20倍で撮像した。図17−1に示すように、明視野観察による画像(図の左側)に対応する発光観察した画像(図の右側)において、sig pep−Luci−GPIは有意な発光が認められた。これに対して、図17−2に示すように、明視野観察による画像(図の左側)に対応する発光観察した画像(図の右側)において、シグナルペプチドの無いLuci−GPIは、ほとんど発光が認められなかった。
遺伝子の発現は、Renilla Luciferase Assay System (Promega)のプロとコールに従い、細胞を溶解してLuminescencer−JNRII (ATTO)ルミノメーターで測定した(図18参照)。測定時間は10秒間でsig pep−Luci−GPI、Luci−GPIともに発光が測定され、ルシフェラーゼの発現に問題が無いことを確認した。
A.語句の定義
<レポーター遺伝子>
態様5におけるレポーター遺伝子は、検出可能な蛍光を発するレポータータンパク質をコードする遺伝子を意味する。例えば、蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼを挙げることができる。さらには、例えば、βガラクトシダーゼをコードする遺伝子、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子を挙げることができる。
<刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域>
態様5におけるプロモーター領域としては、最初期遺伝子のプロモーターが挙げられる。
態様5で用いられる最初期遺伝子のプロモーターとしては、例えば、c−fosプロモーター領域が挙げられる。また、態様5で用いられるプロモーターとしては、前記プロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。ここでプロモーター領域とは、プロモーター活性を有するために必要な最小の塩基配列を含む任意の領域を意味する。例えば、該遺伝子の転写部位に対して上流500から2000塩基の領域の一部または全部を用いることができる。
<物質>
下記に説明する発明において使用される「物質」とは、自然界に存在する天然の物質あるいは人工的に調製される任意の物質を意味する。具体的には、例えば、化学的に合成された任意の化合物を挙げることができる。該化合物の種類および分子量などについては特に限定されない。該物質がタンパク質、またはペプチドである場合には、生体組織や細胞から単離されるもの、および遺伝子組換えや化学的合成により調製されるものも含まれる。さらにまた、それらの化学修飾体も含まれる。
<遺伝子発現ベクターの作製>
動物細胞を用いる場合、発現ベクターは少なくともプロモーター、開始コドン、目的のタンパク質をコードするDNA、終止コドンを含んでいることが好ましい。また、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、該タンパク質をコードする遺伝子の5’側および3’側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリA付加シグナル、選択マーカー領域または複製可能単位などを含んでいてもよい。
<細胞への遺伝子導入方法>
遺伝子を細胞へ導入する方法としては、塩化カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。態様5で使用される遺伝子導入した細胞には一過性発現細胞あるいは安定発現細胞のいずれもが含まれる。
<刺激による遺伝子発現の光学イメージング>
態様5は例えば、下記のように実施することが出来る。
細胞の定数(例えば、該物質を細胞に接触させる刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域(好ましくは、c−fos遺伝子のプロモーター領域)に発現可能に連結されたレポーター遺伝子(好ましくは蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼ)を前記の遺伝子導入方法を用いて細胞に導入する。得られた前記の遺伝子導入された細胞の定数(例えば、1〜1×10個、好ましくは1×10〜1×10個)を所望の細胞培養が可能な器具(例えば、シャーレ、多数のウェルを有するマルチプレートなど)を用いて所望の栄養培地(例えば、D−MEM培地など)中で培養する。この定数の細胞からなる試料を、あらかじめ細胞にとって最適な温度(例えば、25〜37℃、好ましくは35〜37℃)に保温し、試料の乾燥を防ぐため水を注入して保湿した発光顕微鏡の培養装置部に設置し、該発光顕微鏡の試料観察部にある対物レンズを通してデジタルカメラで発光イメージを記録する。前記の試料に、細胞に接触させて刺激を行なうための物質(例えば、化合物)を所望の濃度(例えば、1pM〜1M、好ましくは100nM〜1mM)で加えて、所望の時間間隔(例えば5分間〜5時間、好ましくは10分間〜1時間)で発光イメージを記録する。記録した画像を市販の画像解析ソフト(例えば、MetaMorph;ユニバーサルイメージング社製など)を用いて画像内の所望の領域における輝度値を取得する。さらに、発光イメージと同視野において明視野イメージを記録し、前記の画像解析ソフトを用いて発光イメージと明視野イメージを重ね合わせて、発光している細胞を同定する。
<光学イメージング>
態様5における光学イメージングとは、レポーター遺伝子を導入した細胞において、レポーター遺伝子により発せられる検出可能なシグナルの存在、不在または強度をモニタリング、記録および分析するイメージング方法を意味する。光学イメージングを達成するためには、レポーター遺伝子により発せられるシグナルの強度が、シグナルを細胞の外部から分析することができるように、十分に高くなくてはならない。光学イメージングは自動化に容易に適用可能であることから、多数の遺伝子発現を同時にモニタリングするのに用いることができる。なお、イメージングした試料画像の任意の位置について、時系列に2次元または3次元に画像情報を処理する技術は、本出願人による特願2004−172156、特願2004−178254等を参照してもよい。蛍光観察と発光観察における時系列な画像取得の違いは、発光観察が励起光による光学的走査(レーザスキャン)を必要としない点で余計な光による影響が無い点にある。態様5で行うイメージング技術によれば、リアルタイムに発光画像を撮像できる。態様5の方法では特に、上述したような発光顕微鏡を使用することにより、発光画像による解析を実現することが可能となった。
付記項1
疎水性アミノ酸に富む配列から予測したシグナルペプチドを検出する方法であって、N末から開始コドン、解析対象のシグナルペプチド、発光関連遺伝子、既知の膜貫通ドメイン、終止コドンの順でタンパク質をコードしているDNA構築物であって、DNA構築物を検査用細胞に遺伝子導入し、コードする遺伝子が転写・翻訳されタンパク分子が細胞外の表面にとどまる行程と、
細胞表面に発現したタンパク分子の発光活性を発光顕微鏡で検出する行程と、測定結果を解析する行程と、上記の反応を生じせしめる反応溶液及び反応容器と、これらの細胞を観察し解析し細胞の情報からシグナルペプチドを決定することの出来る方法を具備した方法。
付記項2
疎水性アミノ酸に富む配列から予測した膜貫通ドメインを検出する方法であって、N末から開始コドン、既知のシグナルペプチド、発光関連遺伝子、解析対象の膜貫通ドメイン、終止コドンの順でタンパク質をコードしているDNA構築物であって、DNA構築物を検査用細胞に遺伝子導入し、コードする遺伝子が転写・翻訳されタンパク分子が細胞外の表面にとどまる行程と、
細胞表面に発現したタンパク分子の発光活性を発光顕微鏡で検出する行程と、測定結果を解析する行程と、上記の反応を生じせしめる反応溶液及び反応容器と、これらの細胞を観察し解析し細胞の情報から膜貫通ドメインを決定することの出来る方法を具備した方法。
付記項3
上記1の方法において、少なくとも一つのシグナルペプチドの塩基配列が異なるDNA構築物が含まれたDNA構築物を同時に導入した細胞を同一容器に培養し、同一容器内で他種類の発光活性を同時に解析する方法。
付記項4
上記1の方法において、細胞表面への発現にGPIアンカー型を用いることで膜貫通ドメインによる擬陽性を開眼することを可能にした検出法。
付記項5
上記1または2の方法において基質が細胞内へ入りづらい物を用いることで、細胞内と細胞外に発現したレポーター分子を識別することを可能とした検出法。
付記項6
上記方法におけるシグナルシーケンスまたは、膜貫通ドメインのスクリーニング法。
付記項7
上記方法における分泌量を検出する方法。
態様6 テトラサイクリンによる遺伝子発現誘導
単一細胞での経時的なレポーターアッセイの例を説明する。
このレポーターアッセイでは、まず、テトラサイクリン・リプレッサー(TetR)を恒常的に発現させるベクター「pcDNA6/TR(インビトロジェン社製)」と、テトラサイクリン・オペレータ(TetO2)をもつ発現ベクター「pcDNA4/TO(インビトロジェン社製)」にルシフェラーゼ遺伝子をつなげたプラスミドとをHeLa細胞に共発現させて標本を作製する。この状態では、TetRホモダイマーがTetO2領域に結合しているため、ルシフェラーゼ遺伝子の転写は抑制される。つぎに、培養液中にテトラサイクリンを添加してTetRホモダイマーに結合させ、TetRホモダイマーの立体構造を変化させることによって、TetO2からTetRホモダイマーを分離させ、ルシフェラーゼ遺伝子の転写を誘導する。なお、培養液は10mMのHEPESを含むD−MEM培地であり、1mMのルシフェリンを含む。対物レンズおよび結像レンズとして用いたレンズの例としては、それぞれ「Oil、20倍、NA0.8」および「5倍、NA0.13」の仕様である市販の顕微鏡用対物レンズであり、倍率Mgに対応する総合倍率は4倍である。カメラC1として用いたカメラは、5℃冷却の顕微鏡用デジタルカメラ「DP30BW(オリンパス社製)」であり、CCD3としてのCCD素子は、2/3インチ型、画素数1360×1024、画素サイズ6μm角である。
テトラサイクリンを添加してから所定時間後、例えば9時間後の標本の自己発光による像を適宜の間隔(例えば1分間)により露光して撮像し、添加後0時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間経過後の観察画像を示すことができる。観察画像上で指定した複数の部分領域(例えば4つの部分領域ROI−1,ROI−2、ROI−3、ROI−4ごとに、ルシフェラーゼ遺伝子の発光強度の経時変化を測定した結果により、発光するルシフェラーゼ遺伝子の位置を特定して経時的(ないし時系列)に追跡し、発光現象の経時変化を測定することができる。
態様7 HSP70B遺伝子プロモーターアッセイ
HSP70B(Heat shock Protein70B)は、熱、毒性物質、酸素不足などの環境因子によって発現が誘導されるストレスタンパク質であり、HSPは分子シャペロンとして細胞の機能調節に寄与するだけではなく、細胞内情報伝達物質としても注目されている。そこで、この実施例でレポーターアッセイに用いたのは、pGL3−Basic Vector(プロメガ社)にHSP70Bプロモーター配列を導入したベクターである。このベクターを導入した細胞に、熱ショックなどのストレスを与えると、熱ショック因子がHSP70Bプロモーター部分に結合し、転写が開始される。ガラスボトムディッシュにて培養したHeLa細胞に前記ベクターをリポフェクション法によりトランスフェクションを行った。一晩培養後、1mM Luciferinを加え、熱刺激(43℃60分)後にて、発光顕微鏡内にて30分ごと20時間タイムラプス計測を行った。培地は、D−MEM5%FCS−10mM HEPESを用いた。はじめに明視野観察にて、細胞の形状および位置情報を得た後、発光画像を取得した。対物レンズは20倍レンズを用いて、露出時間は5分であった。
発光画像と明視野画像とを重ね合わせた画像について、関心ある1個の細胞が入る領域(ROI)を5箇所設定して、データ数値化・平均値のプロットを行った。結果、Heat shock後、10−15時間の時点でプロモーター活性が最も高かったが、5細胞間においてプロモーター活性の上昇率や活性上昇まで要する時間にかなりの開きがあった。従来のルミノメーターでの観察においては、ある一定の細胞数をまとめて解析しているため、トランスフェクション効率および細胞間の違いなどは平均化されている。しかし、実際には、トランスフェクションされていない細胞も多く混在しており、また細胞によって発現の強弱などの違いも見られた。発光顕微鏡で、1細胞毎のデータを測定する事が可能となれば、トランスフェクション効率の違い、細胞周期による影響を考慮し解析を行うことができる。
態様8 細胞内局在の観察
細胞内でのオルガネラへの局在の観察を行った。HeLa細胞に、核、小胞体、細胞膜へ局在させるためのシグナル配列を導入したpGL3ベクターをトランスフェクションし、一晩培養後、1mM LuciferinをD−MEM5%FCS−10mM HEPES培地に加えて発光顕微鏡により観察を行った。明視野画像、発光画像、明視野と発光画像の重ね合わせを行った画像を示してある。核、小胞体、細胞膜、それぞれにおいて、目的の場所への局在が観察された。細胞内局在を検出可能であると、例えば、細胞に何らかの刺激を与えた際に細胞質から核への移行を観察することが可能となる。例えば、核内レセプターであるグルココルチコイドレセプターを発現させ、グルココルチコイドホルモンを処理した際の核移行などの検出などがあげられる。
態様9 異なる細胞間の相互作用の解析
従来行われてきた発光検出では、ルミノメーターにより平均化された発光量を計測していたが、発光顕微鏡によりイメージングを行うことで、異なる細胞間での相互作用の解析も可能となる。一例として、神経細胞とグリア細胞の解析が挙げられる。神経系は、主に神経細胞とグリア細胞の2種類の細胞で構成されており、神経細胞は電気的活動とシナプス結合を介して脳の情報処理に対して中心的な役割を果たしているが、グリア細胞にはそのような電気的活動性はなく、神経細胞の周囲を取り巻いて神経細胞の活動をサポートする役割をしていると考えられている。神経細胞の周囲にあるグリア細胞の果たす役割にはまだ解明されてない部分も多い。
態様10 組織における発光レポーターアッセイ
細胞での発光レポーターアッセイだけではなく、対象として組織サンプルが挙げられる。例えば脳スライス組織を利用する事で、生物時計の座であり生物に昼と夜の違いをもたらす場所である視交叉上核において、細胞毎に異なる周期・位相などを捕らえる事が可能となる。
本発明は上述した実施の形態に限定されず、次のような変更または改良が可能である。例えば、発光物質として遺伝子として機能する発光タンパク質を用いたが、遺伝子機能を持たない他の生物発光物質であってもよい。本発明では、好適には、生体試料(例えば細胞または組織)の生物学的活性にとって最小限の光マーカー物質を蓄積型の撮像装置により蓄積しながら画像化する工程を有する。この撮像工程により、蛍光解析のような、従来の走査型(スキャニング式)の高輝度解析では撮像不可能な微弱光による試料画像を取得するので、長期間、生体試料への光毒性ないし光ダメージを与えずに発光解析できる。ここにおいて、発光とは別な目的で、発光と同程度ないし半分未満の極低濃度の蛍光物質または化学発光物質を併用するようにしてもよい。また、単一の試料当りの総量を発光物質と蛍光物質とで所望の比率で分配するようにして、その発光総量が蓄積型の撮像にとって必要最小限であるように調整してもよい。また、細胞核と細胞質に対して発光波長がなるべく重ならないような2色以上の発光標識を別々に施すことにより、細胞認識を確実に行うようにしてもよい。細胞質を認識することにより同一細胞内の多様な画像化可能な成分(小核、多核、GPCR(G蛋白受容体)凝集体等)を他の細胞と確実に区別して正確に解析できる。また、細胞質以外にも細胞膜を特異的に標識するようにしてもよく、この場合には、上述した実施例3のような細胞質内の成分の解析に影響を与えることなく細胞を認識することが可能となる。なお、調べたい生物学的活性成分の分布領域ないし部位以外の部分であれば、蛍光標識(色素または融合蛋白)を標識に用いるようにすることにより、細胞の認識だけを確実に行うようにしてもよいが、この場合にも、適宜蛍光強度をなるべく最小限になるような蛍光標識ないし励起光に設定することにより間接的な悪影響を生じないようにするのが好ましい。
また、本発明で使用可能な生物発光(または化学発光)の例として、特定の関心ある遺伝子領域のプロモーターの下流に連結したレポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を含むDNAが導入された細胞または組織が挙げられる。ルシフェラーゼをレポーターとして発現させた細胞または組織を用いることにより、所望の発現部位におけるルシフェラーゼ活性を検出することによって、転写の経時的変化を実時間で検出することが可能である。
好ましい態様は、導入した発光遺伝子が末梢組織中でリズムを有するように発現される脊椎動物由来の細胞または組織である。末梢組織には、肝臓、肺、および骨格筋が含まれるが、これらに限定されることはない。これらの末梢組織は、7〜12時間の位相差でもって概日リズムを刻んでいることが報告されている。概日リズムの遅延パターンを示したことは、多器官から構成される複雑な哺乳動物の生物リズムの正常な協調性を反映したものと考えられる。
これによれば、本発明により解析した情報が、概日リズムと関係のある時差ぼけまたは睡眠障害の機序を解明するため、ならびに概日リズム障害の治療に有用な化合物のスクリーニングおよび試験を目的として用いる哺乳動物モデルを開発するために有用であるといえる。
また、レポーター遺伝子を発現する本発明のDNAを含む形質転換体またはトランスジェニック哺乳動物を用ると、種々の試験またはスクリーニングを行うことができる。さまざまな任意の条件下でこれらの組織または細胞におけるレポーター遺伝子の発現を検出することにより、レポーター遺伝子の発現を調節する刺激もしくは化合物の効果を評価すること、またはこれらをスクリーニングすることが可能である。刺激には温度、光、運動、および他のショックが含まれる。使用する化合物に制限はない。本発明は特に、本発明の形質転換体またはトランスジェニック哺乳動物に導入された時計遺伝子(例えばPeriod 1)のプロモーターによって誘導される発現を改変する化合物を、その形質転換体またはトランスジェニック哺乳動物を用いて試験またはスクリーニングする方法に適用可能である。
本発明の試験またはスクリーニングの方法としては、以下の方法が挙げられる。
方法(1):本発明の形質転換体における導入遺伝子の発現を改変する活性を有する化合物を試験またはスクリーニングする方法であって、(a)前記形質転換体を前記化合物で処理する段階;および(b)処理した形質転換体における前記導入遺伝子の発現を測定する段階、を含む方法。
方法(2):本発明の哺乳動物における導入遺伝子の発現を改変する活性を有する化合物を試験またはスクリーニングする方法であって、(a)前記哺乳動物を前記化合物で処理する段階;および(b)処理した哺乳動物における前記導入遺伝子の発現を測定する段階、を含む方法。
本発明の方法は、Period 1遺伝子の発現を調節する化合物をスクリーニングするために有用である。本方法はまた、概日リズム障害に対する医薬品をスクリーニングするためにも有用である。従って、上記の方法(1)、(2)に加えて、以下に挙げるスクリーニング法も本発明によって可能となる。
方法(3): 概日リズム睡眠障害の治療に有用な医薬品の試験またはスクリーニングの方法であって、(a)本発明の形質転換体またはトランスジェニック非ヒト哺乳動物をその医薬品で処置する段階;および (b)処置した形質転換体または哺乳動物におけるレポーター遺伝子の発現を測定する段階、を含む方法。
本発明の試験またはスクリーニングの方法に使用する化合物に特に制限はない。その例には、無機化合物、有機化合物、ペプチド、蛋白質、天然または合成性の低分子化合物、天然または合成性の高分子化合物、組織または細胞の抽出物、微生物の培養上清、植物または海洋生物に由来する天然成分などが含まれるが、これらに限定されることはない。遺伝子ライブラリーまたはcDNA発現ライブラリーなどの発現産物を使用してもよい。化合物による処置の方法に特に制限はない。インビトロでの処置は、例えば化合物を培養液に添加して細胞を化合物と接触させたり、微量注入またはトランスフェクション試薬を用いて化合物を細胞内に導入することなどにより実施しうる。インビボでの治療の方法には、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、または腹腔内注射;経口投与、経腸投与、筋肉内投与、または鼻腔内投与;眼への投与;注射もしくはカテーテルを介した脳内投与、脳室内投与、または末梢器官内投与などの、当業者に公知の方法が含まれる。化合物は適宜組成物として投与する。例えば、それを水、生理食塩水、緩衝液、塩、安定剤、保存剤、懸濁剤などと混合することができる。
レポーター遺伝子の発現は、哺乳動物または細胞が生きたまま測定することもでき、細胞を可溶化した後に測定することもできる。例えば、生組織におけるルシフェラーゼ遺伝子の発現を測定するために、実施例に示すように光電子増倍管により、または本明細書に参照として組み入れられるヤマザキ(Yamazaki, S.)ら(Science、2000、288、682〜685)に記載された他の類似の検出器により、生物発光を連続的に測定することが可能である。可溶化した組織または細胞におけるルシフェラーゼ活性は、例えば、ルシフェラーゼレポーター二重アッセイ系(Dual−Luciferase Reporter Assay System)(Promega)などを使用して測定することができる。レポーター遺伝子の発現は、時間的または空間的に測定することができる。発現リズムの位相、振幅、および/または周期を検出することによって発現を分析することもできる。本発明の方法により、化合物の即時的または長期的な効果(位相変化を含む)の評価が可能となる。化合物の投与によってこれらの発現が改変されれば、その化合物はPeriod 1遺伝子の発現を調節する薬剤候補となる。このような化合物は、睡眠障害を含むさまざまな概日リズム障害に対する医薬品として適用されることが期待される。例えば、レポーター遺伝子の発現の振動をリセットまたは開始する薬剤は、ペースメーカの位相を後退または前進させると期待される。したがって、これらの薬剤は脱同調した発現パターンを正常な同調に導くために使用することができる。本発明によってスクリーニングされる医薬品は、薬剤の治療効果を評価するために、概日リズム障害モデルとなるように誘導した本発明のトランスジェニック哺乳動物に投与される。
トランスジェニック哺乳動物における遺伝子の発現を検出する場合、測定する器官に特に制限はなく、これには視床下部のSCNを含む中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)、ならびに肝臓、肺、および骨格筋を非制限的に含む他の末梢組織が含まれる。本発明で開示する系は、SCNおよび末梢組織におけるPeriod 1発現の位相関係および同調機構を評価するために有用である。
本発明の系は、Period 1の発現を調節すると推定される多くの因子を同定するために使用され得る。概日リズムと関係のある新規なインビボ因子および遺伝子が本発明の系を用いて同定されれば、これらの因子および遺伝子の発現のインビボでの振動を評価することができる。それにより、SCNおよび末梢組織の振動位相を制御する因子を単離することが可能である。これらは概日リズムに関与する新規な遺伝子および蛋白質であると考えられ、これらを標的として用いることにより、新規薬剤のスクリーニングが可能になると考えられる。このようなスクリーニングはインビボおよびインビトロのどちらでも行える。
具体的には、本発明のトランスジェニック哺乳動物を用いるインビボでのスクリーニング方法は以下の段階を含む方法(4)により達成される。
方法(4):(a)概日リズムが既に決定されているトランスジェニック哺乳動物に化合物を投与する段階;(b)トランスジェニック哺乳動物におけるレポーター遺伝子の発現レベルを定期的に検出し、発現リズムを検証する段階;(c)化合物の投与後のレポーター遺伝子の発現リズムを投与前のものと比較する段階;および(d)発現リズムの位相、周期、または振幅を改変する化合物を選択する段階。
レポーター遺伝子の発現リズムは、生きた動物の体内でのレポーター遺伝子の発現リズムを検出する方法;切り出した組織を培養することによって発現の変動を連続的に観察する方法;または動物組織の抽出物を定期的に調製して、各時点での発現レベルを検出する方法によって検出可能である。例えば、適した方法(例えば、静脈内注射、腹腔内投与、脳室内投与など)により、適切なタイミングでトランスジェニック動物にルシフェリンを投与する。続いてこの動物を麻酔し、CCDカメラによってルシフェラーゼ発光を計測することにより、レポーター遺伝子の発現部位および発現レベルを決定する。個々の動物の発現リズムを確認するために、この測定を数時間毎に数回ずつ行う(Sweeney TJら、「生きた動物における腫瘍細胞クリアランスの可視化(Visualizing the kinetics of tumor−cell clearance in living animals)」、PNAS、1999、96、12044〜12049;およびContag PRら、「生きた哺乳動物における生物発光標識(Bioluminescent indicators in living mammals)」、Nature Medicine、1998、4、245〜247を参照のこと)。
前記の通り、インビトロでも本発明を用いて新規薬剤のスクリーニングを行うことができる。このようなインビトロスクリーニング法は以下の段階を含む方法(5)により達成できる。
方法(5):(a)本発明の形質転換体、または本発明のトランスジェニック哺乳動物に由来する組織もしくは細胞を培養する段階;(b)形質転換体または組織もしくは細胞を適切な期間にわたって化合物で処理し、さらに培養を続ける段階;(c)レポーター遺伝子の発現レベルを定期的に検出する段階;および(d)(b)の処理後にレポーター遺伝子の発現リズム(位相、周期、および振幅)を改変する化合物を選択する段階。
本明細書において、本発明の撮像すべき組織または細胞は、初代培養物または樹立細胞系の細胞であってもよい。本明細書で用いる組織、細胞などに制限はないが、脊椎動物におけるSCN、視床下辺縁細胞、末梢神経などが好ましい。化合物による処理は、例えば、化合物を添加しておいた溶媒中に組織、細胞などを一定期間、浸漬することによって行ってもよい。レポーター遺伝子の発現リズムの変化を測定する場合には、発現リズムがあらかじめ決定された同一の組織もしくは細胞、または化合物による処理を受けていない対照組織または細胞を用いた比較を行ってもよい。
上記のインビボおよびインビトロのスクリーニング方法において、光刺激などの刺激処理を、化合物の投与または処理とともに行ってもよい。
本発明の試験またはスクリーニングの方法により同定された化合物は、所望の概日リズム疾患または障害に対する医薬品として用いることができる。これらの薬剤は、適宜薬学的に許容される担体、溶質、および溶媒と組み合わせることによって医薬組成物として製剤化することができる。本薬剤は、時差症候群、交代制勤務による睡眠障害、睡眠相後退症候群、および不規則性睡眠覚醒障害などの疾患または障害に対して適用することができる。
すなわち、上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の方法は、生きた試料を発光タンパクに基づく発光により長期にモニタリングする方法において、生物学的活性を損なわない処理条件で、モニタリングすべき項目に応じた発光タンパクを導入した前記試料を、基質成分によって化学的に誘起し、所望のモニタリング期間中、前記発光の誘起及び撮像を継続的に実行し、露光時間を単位時間に分割し、その単位時間毎に光学イメージを得、前記複数の光学イメージを加算処理してモニター表示する、ことを特徴とする発光タンパクによる長期モニタリング方法である。また、請求項2は、請求項1に記載の方法において、前記モニタリング期間が数日以上の場合には、前記基質を700μM以下の濃度とすることを特徴とするモニタリング方法である。また、請求項3は、請求項1に記載の方法において、前記モニタリング期間が数日未満の場合には、前記基質を800μ以上、1mM以下の濃度とすることを特徴とするモニタリング方法である。また、請求項4は、請求項1に記載の方法において、前記基質濃度を200μM以上としたことを特徴とするモニタリング方法である。
た、請求項によれば、請求項1から4のいずれかに記載の方法において、基質がホタルルシフェリンまたはセレンテラジンであることにより、遺伝学的に処理するのが容易であるので好ましい。
また、請求項のモニタリング方法によれば、請求項1に記載の方法において、光学イメージングが、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上である対物レンズを含む光学条件を用いて実行されることにより、鮮明なイメージを早期に形成できる点で好ましい。ここで、前記値は、対物レンズの倍率に応じて調整するのがさらに好ましい。その他、請求項のモニタリング方法によれば、請求項1またはに記載の方法において、1枚の発光画像を得るための露光単位時間の長さを調節する工程を含む。また、請求項8は、請求項1から7の何れか1項に記載の方法において、前記加算処理の後、さらに平均化を行ってモニター表示することを特徴とするモニタリング方法である。
また、本発明の解析方法は、請求項に記載のように、生きた試料を発光タンパクに基づく発光により長期に解析する方法において、生物学的活性を損なわない処理条件で、解析すべき項目に応じた発光タンパクを導入した前記試料を、基質成分によって化学的に誘起し、所望のモニタリング期間中、前記発光の誘起及び撮像を継続的に実行し、露光時間を単位時間に分割し、その単位時間毎に光学イメージを得、前記光学イメージを加算処理して解析に必要な情報を得る、ことを特徴とする発光タンパクによる長期解析方法である。ここで、請求項10は、請求項に記載の方法において、前記処理条件としての基質成分の濃度が600μM以下であり、前記撮像条件が、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上であるような対物レンズを含む光学条件を用いて発光タンパクに基づく画像が得られる露光時間であることを特徴とする解析方法である。さらに、請求項11は、請求項または10に記載の方法において、前記基質濃度を200μM以上で存在させるとともに、前記撮像条件を前記試料の生物学的活性がほぼ変化しない露光時間内としたことを特徴とする解析方法である。
また、請求項12は、請求項において、さらに蛍光成分を含んでいる試料に適用することとされ、発光及び蛍光のそれぞれの光学イメージから前記解析に必要な情報を得ることを特徴とする解析方法である。蛍光成分は、上述した処理条件に沿うように設定され、過度な励起光を付与する必要が無いほどに微量な濃度であってよい。なお、請求項13のように、請求項12に記載の方法が、発光画像の取得に必要な時間に応じて励起光量を決定するのが好ましい。その他、請求項14は、請求項または10に記載の方法において、1枚の発光画像を得るための露光単位時間の長さを調節する工程を含むことを特徴とする解析方法である。また、請求項15は、請求項9から14の何れか1項に記載の方法において、前記加算処理の後、さらに平均化を行って解析に必要な情報を得ることを特徴とするモニタリング方法である。

Claims (22)

  1. 生きた試料を発光タンパクに基づく発光により長期にモニタリングする方法において、生物学的活性を損なわない処理条件で、モニタリングすべき項目に応じた発光タンパクを導入した前記試料を、基質成分によって化学的に誘起し、所望のモニタリング期間中、前記発光の誘起及び撮像を継続的に実行し、前記処理条件に応じて設定された撮像条件の下で複数の異なる時間に対応する光学イメージを得、前記複数の光学イメージを前記撮像条件に応じた出力条件によりモニター表示する、ことを特徴とする発光タンパクによる長期モニタリング方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、前記モニタリング期間が数日以上の場合には、前記基質を700μM以下の濃度とすることを特徴とするモニタリング方法。
  3. 請求項1に記載の方法において、前記モニタリング期間が数日未満の場合には、前記基質を800μm以上、1mM以下の濃度とすることを特徴とするモニタリング方法。
  4. 請求項1に記載の方法において、前記基質濃度を200μM以上としたことを特徴とするモニタリング方法。
  5. 請求項1に記載の方法において、発光タンパクを導入した細胞を含む試料により単一細胞レベルのモニタリングを行なう際に適用され、細胞内で微弱な発光を発生させるための基質成分及び前記発光タンパクの発光に影響をもたらす可能性のある薬剤成分との反応性を損なわない充分な厚みであって、且つ発光に基づく光学イメージが個々の細胞を識別し得る程度に肉薄の厚みであるような撮像ボリュームに対応する光学イメージを取得することを特徴とするモニタリング方法。
  6. 請求項5において、前記試料が、2次元的にほぼ一定の状態に配置した細胞群からなることを特徴とするモニタリング方法。
  7. 請求項6において、前記細胞群を、細胞同士が撮像用の光路上でオーバーラップしない密度としたことを特徴とするモニタリング方法。
  8. 請求項6または7において、前記細胞群を、スライス切片ないしシート状細胞に調製したことを特徴とするモニタリング方法。
  9. 請求項5ないし8のいずれか1項に記載の方法において、前記試料を150μm以下、好ましくは100μm以下、特に85μm未満の厚みとしたことを特徴とするモニタリング方法。
  10. 請求項9において、40μm以上、好ましくは50μm以上の厚みとしたことを特徴とするモニタリング方法。
  11. 請求項5に記載の方法において、被検試料が肉厚の生体組織(例えば、視交差上核等の脳、胚、ゼブラフィッシュ等の微小な魚類、マウスやカエル(特にアフリカツメガエル)等の小動物ないし植物(例えばシロイヌナズナ)の一部の器官(例えば、手、足、毛根、葉、花茎、根毛)であることを特徴とするモニタリング方法。
  12. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法において、基質がホタルルシフェリンまたはセレンテラジンであることを特徴とするモニタリング方法。
  13. 請求項1または5に記載の方法において、光学イメージングが、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上である対物レンズを含む光学条件を用いて実行されることを特徴とするモニタリング方法。
  14. 請求項1または13に記載の方法において、1枚の発光画像を得るための露光単位時間の長さを調節する工程を含むことを特徴とするモニタリング方法。
  15. 請求項14に記載の方法において、前記単位時間で得られた画像を分割する工程をさらに含むことを特徴とするモニタリング方法。
  16. 生きた試料を発光タンパクに基づく発光により長期に解析する方法において、生物学的活性を損なわない処理条件で、解析すべき項目に応じた発光タンパクを導入した前記試料を、基質成分によって化学的に誘起し、所望のモニタリング期間中、前記発光の誘起及び撮像を継続的に実行し、前記処理条件に応じて設定された撮像条件の下で複数の異なる時間に対応する光学イメージを得、前記光学イメージに対し、前記撮像条件に応じた画像処理を行って解析に必要な情報を得る、ことを特徴とする発光タンパクによる長期解析方法。
  17. 請求項16に記載の方法において、前記処理条件としての基質成分の濃度が600μM以下であり、前記撮像条件が、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上であるような対物レンズを含む光学条件を用いて発光タンパクに基づく画像が得られる露光時間であることを特徴とする解析方法。
  18. 請求項16または17に記載の方法において、前記基質濃度を200μM以上で存在させるとともに、前記撮像条件を前記試料の生物学的活性がほぼ変化しない露光時間内としたことを特徴とする解析方法。
  19. 請求項16に記載の方法が、さらに蛍光成分を含んでいる試料に適用することとされ、発光及び蛍光のそれぞれの光学イメージから前記解析に必要な情報を得ることを特徴とする解析方法。
  20. 請求項19に記載の方法が、発光画像の取得に必要な時間に応じて励起光量を決定することを特徴とする解析方法。
  21. 請求項16または17に記載の方法において、1枚の発光画像を得るための露光単位時間の長さを調節する工程を含むことを特徴とする解析方法。
  22. 請求項21に記載の方法において、前記単位時間で得られた画像を分割する工程をさらに含むことを特徴とする解析方法。
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