JP2014193118A - 脳活動の解析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定種類の細胞のみの脳活動を解析する方法を提供する。
【解決手段】ステップS1において、特定種類の細胞で発現する遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結された不完全な第1のレポーターの遺伝子を、細胞群に導入する。また、細胞の活性化により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結された、不完全な第1のレポーターとの結合によって完全なレポーターが形成される不完全な第2のレポーターの遺伝子を細胞群に導入する。ステップS2で、遺伝子導入後の細胞を生存状態で維持し、ステップS3で、細胞の活性化を誘導する。ステップS4で、第1のレポーターと第2のレポーターとが結合することによって生ずるシグナルを、光学イメージングし、ステップS5で、取得された画像に基づいて、生じたシグナルの強度を定量的に決定する。これにより特定種類の細胞における発現の解析を行える。
【選択図】図1

Description

本発明は、脳活動を解析する方法に関する。
細胞外からの刺激により直ちに発現が誘導される最初期遺伝子は、多くの細胞種において発現することが知られている。このような最初期遺伝子には、c−fos、zif268、arc等がある。最初期遺伝子の発現量変化を観察すると、薬物などに対する細胞の感受性や反応性を評価することができる。また、これらの最初期遺伝子のプロモーターの下流に蛍光タンパク質や発光タンパク質といったレポーターの遺伝子を組み込んだ遺伝子発現カセットを細胞に導入するプロモーターアッセイ法が知られている。プロモーターアッセイ法によれば、細胞を生かした状態のまま、細胞の薬物に対する応答や細胞の活性化を観察することができる。
株化細胞のような均一な細胞を対象とする実験系におけるプロモーターアッセイ法による実験では、個々の細胞の種類等を同定する必要がなく、全細胞の平均値が評価対象とされる。しかしながら、初代培養やスライス培養など不均一な細胞集団を用いた実験系におけるプロモーターアッセイ法による実験では、注目する細胞から生じるシグナルとその他の細胞から生じるシグナルとが重なってしまうため、組織中に共存する性質が異なる細胞種のうち、注目する細胞のみの遺伝子発現量を評価することは困難である。さらに、比較的均一な性質をもつ株化細胞においても刺激に対する細胞の反応は個々に異なることが知られているので、生体組織などの不均一な細胞集団においては刺激に対する反応はより複雑であることが予想される。
脳組織には、神経細胞やグリア細胞など、複数種の細胞が混在している。神経細胞は、脳内における局在や、関わっている脳の高次機能、包含する伝達物質等によって、いくつかの種類に分類されることが知られている。例えば、隣接する神経細胞に信号を伝達する興奮性神経細胞の活動と、神経信号の伝達を抑制する抑制性神経細胞の活動とが巧妙に絡み合ってバランスをとって、複雑な脳機能が担われていることが知られている。多くの脳神経系の障害では、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞との神経活動のバランスが崩れていることが示唆されており、脳神経疾患の病態の解明には、興奮性神経と抑制性神経との活動を検出できる技術が必要とされている。このため、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞との活動をプロモーター活性のイメージングによってリアルタイムに評価できる技術の構築が求められている。
特許文献1には、スプリットルシフェラーゼ法を用いた特定細胞におけるプロモーター活性のイメージング法が開示されている。スプリットルシフェラーゼ法では、ルシフェラーゼ遺伝子をN末側とC末側とに分割し、これらに相互作用を引き起こすことが知られているMyoD及びIdをそれぞれ融合した融合タンパクを細胞に発現させる。ルシフェラーゼは、分割したN末側又はC末側のみでは酵素活性を持たないために発光現象を生じさせない。しかしながら、融合させたMyoD及びIdが結合すると、ルシフェラーゼのN末側とC末側とは会合し、酵素活性を有するようになる。特許文献1には、このようなスプリットルシフェラーゼ法を利用して特定細胞のみの評価を行えるプロモーターアッセイについて開示されている。
特開2007−155558号公報
例えば特許文献1に開示されているような従来の方法では、例えば興奮性神経細胞と抑制性神経細胞とを区別して観察することについて考慮されていない。このため、例えば興奮性神経細胞又は抑制性神経細胞のみの遺伝子発現についてイメージングを行い評価を行うことはできていない。
そこで本発明は、特定種類の細胞のみの脳活動を解析する方法を提供することを目的とする。
前記目的を果たすため、本発明の一態様によれば、脳活動の解析方法は、特定種類の細胞で発現する遺伝子の第1のプロモーター領域に発現可能に連結された不完全な第1のレポーターの遺伝子を、前記細胞を含む細胞群に導入することと、前記細胞の活性化により発現が誘導される遺伝子の第2のプロモーター領域に発現可能に連結された、前記第1のレポーターとの結合によって完全なレポーターが形成される不完全な第2のレポーターの遺伝子を、前記細胞群に導入することと、前記細胞群を生存状態で維持することと、前記細胞の活性化を誘導することと、前記第1のレポーターと前記活性化によって発現した前記第2のレポーターとが結合することによって生ずる検出可能なシグナルを、前記細胞群を光学イメージングすることで画像として取得することと、前記画像に基づいて、前記シグナルの強度を定量的に決定することと、を具備する。
本発明によれば、特定種類の細胞のみの脳活動を解析する方法を提供できる。
一実施形態に係る脳活動の解析方法の概略を示すフローチャート。 スプリットルシフェラーゼ法について説明するための図。 一実施形態で用いられる光学イメージングシステムの構成例の概略を示す図。 遺伝子導入されて刺激を加えられた興奮性神経細胞と抑制性神経細胞とにおける反応を説明するための概略図。 遺伝子導入されて刺激を加えられた興奮性神経細胞と抑制性神経細胞とにおける反応を説明するための概略図。 pCaMKIIα/MyoD−CLucと、pfos/NLuc−Idとを導入した培養海馬切片における発光画像。 興奮性神経細胞におけるDHPG刺激に伴う細胞毎のc−fosプロモーター活性の変化を表す図。 pGAD67/MyoD−CLucと、pfos/NLuc−Idとを導入した培養海馬切片における発光画像。 抑制性神経細胞におけるDHPG刺激に伴う細胞毎のc−fosプロモーター活性の変化を表す図。
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る脳活動の解析方法の概略を図1に示す。
ステップS1において、特定細胞で発現する遺伝子のプロモーター(第1のプロモーター)に連結された不完全なレポーター遺伝子(第1のレポーターの遺伝子)と、細胞の活性化により発現が誘導される遺伝子のプロモーター(第2のプロモーター)に連結された不完全なレポーター遺伝子(第2のレポーターの遺伝子)とを細胞に導入する。
本実施形態では、特定の細胞の一例として、脳内に存在する興奮性神経細胞又は抑制性神経細胞が挙げられる。したがって、第1のプロモーター領域として、興奮性神経細胞又は抑制性神経細胞で特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域が利用される。ここでプロモーター領域とは、プロモーター活性を有するために必要な最小の塩基配列を含む任意の領域を意味する。例えば、プロモーター領域として、注目する遺伝子の転写部位に対して上流500から4000塩基の領域の一部又は全部が用いられ得る。
興奮性神経細胞特異的な遺伝子のプロモーターとして、カルモデュリン依存性キナーゼIIα(CaMKIIα)遺伝子のプロモーター領域が用いられ得る。また、抑制性神経細胞特異的な遺伝子のプロモーターとして、グルタミン酸脱炭酸酵素67(GAD67)遺伝子のプロモーター領域が用いられ得る。また、本実施形態で用いられるプロモーターには、上述のプロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。
本実施形態では、第2のプロモーターとして、細胞活性化により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域が利用される。本実施形態で利用される細胞活性化により発現が誘導される遺伝子プロモーター領域としては、最初期遺伝子のプロモーターが挙げられる。本実施形態で用いられる最初期遺伝子のプロモーターの一例として、c−fosプロモーター領域が挙げられる。また、本実施形態で用いられるプロモーターとしては、前記プロモーターの任意の動物種の対応物も含まれる。
本実施形態において、レポーター遺伝子は、検出可能な発光等に係るレポータータンパク質をコードする遺伝子を意味する。レポーターには、例えば、ホタル又はウミシイタケ等に由来するルシフェラーゼが含まれる。ルシフェラーゼには、発光波長が異なる複数のルシフェラーゼが含まれ得る。異なる構成において、異なる波長の発光が起こるルシフェラーゼが用いられることによって、レポーター遺伝子の発現を発光色で分離することができる。
また、レポーター遺伝子には、例えば、βガラクトシダーゼをコードする遺伝子、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子等が含まれる。また、レポーター遺伝子には、蛍光タンパク質をコードする遺伝子が含まれる。ここで蛍光タンパク質には、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)や、その改変体が含まれる。なお、蛍光タンパク質が用いられれば、解像度よく蛍光画像が取得されるので、レポータータンパク質の細胞内における分布まで特定され得る。
不完全なレポーター遺伝子とは、上述のレポーター遺伝子の一部である。不完全なレポーター遺伝子がコードする不完全なレポーターと、別な不完全なレポーター遺伝子がコードする別な不完全なレポーターとが結合すると、完全なレポーターが形成され得る。このような不完全なレポーターの組み合わせの一例として、ホタルルシフェラーゼに由来するN末側ルシフェラーゼ(アミノ酸番号1−416)とC末側ルシフェラー(アミノ酸番号398−550)とが挙げられる。
本実施形態では、第1のレポーターの遺伝子又は第2のレポーターの遺伝子のうち一方として、例えば、N末側ルシフェラーゼ(NLuc)遺伝子(アミノ酸番号1−416)とマウスのId遺伝子(アミノ酸番号29−148)との融合遺伝子(NLuc−Id遺伝子)が用いられる。また、第1のレポーターの遺伝子又は第2のレポーターの遺伝子のうち他方として、例えば、C末側ルシフェラーゼ(CLuc)遺伝子(アミノ酸番号398−550)とマウスのMyoD遺伝子(アミノ酸番号1−318)との融合遺伝子(MyoD−CLuc遺伝子)が用いられる。
したがって、本実施形態では、ホタルルシフェラーゼ由来のN末側ルシフェラーゼ(NLuc)遺伝子(アミノ酸番号1−416)とマウスのId遺伝子(アミノ酸番号29−148)との融合遺伝子(NLuc−Id遺伝子)が調整される。また、ホタルルシフェラーゼ由来のC末側ルシフェラーゼ(CLuc)遺伝子(アミノ酸番号398−550)とマウスのMyoD遺伝子(アミノ酸番号1−318)との融合遺伝子(MyoD−CLuc遺伝子)が調製される。
NLuc−Id遺伝子に基づくId部位とMyoD−CLuc遺伝子に基づくMyoD部位とは、相互作用して結合する。したがって、NLuc−Id遺伝子とMyoD−CLuc遺伝子とが導入された細胞において、NLuc−Id遺伝子とMyoD−CLuc遺伝子とが発現すると、図2に示されるように、細胞内で発現したNLuc−Id遺伝子に基づくId部位とMyoD−CLuc遺伝子に基づくMyoD部位とが相互作用して結合する。その結果、N末端側ルシフェラーゼと、C末端側ルシフェラーゼとが結合する。結合したルシフェラーゼでは、完全なレポーターとして発光酵素活性が回復し、例えばルシフェリンといった発光基質の添加によって検出可能な発光シグナルを出すための機能を備える。
本実施形態では、調製されたNLuc−Id遺伝子に基づいて、物質を細胞に接触させる刺激によって発現が誘導される最初期遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたNLuc−Id遺伝子が用意される。ここで、最初期遺伝子のプロモーター領域としては、例えば、c−fos遺伝子のプロモーター領域が用いられ得る。
また、本実施形態では、調整されたMyoD−CLuc遺伝子に基づいて、細胞特異的な発現をする遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子が用意される。ここで、細胞特異的な発現をする遺伝子のプロモーター領域は、例えば、興奮性神経細胞を観察したい場合には興奮性神経細胞特異的に発現するカルモデュリン依存性キナーゼIIアルファ(CaMKIIα)遺伝子のプロモーター領域であり、抑制性神経細胞を観察したい場合には抑制性神経細胞特異的に発現するグルタミン酸脱炭酸酵素67(GAD67)遺伝子のプロモーター領域である。
本実施形態では、動物細胞が用いられる場合、遺伝子発現ベクターは、少なくともプロモーター、開始コドン、目的のタンパク質をコードするDNA、終止コドンを含んでいることが好ましい。また、発現ベクターは、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、タンパク質をコードする遺伝子の5´側若しくは3´側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリA付加シグナル、選択マーカー領域、又は複製可能単位等を含んでいてもよい。
これら、最初期遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたNLuc−Id遺伝子と、細胞特異的な発現をする遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子とは、培養した複数の細胞種からなる細胞群に、公知の遺伝子導入方法を用いて導入される。ここで、細胞群には、複数の細胞種として、例えば興奮性神経細胞と抑制性神経細胞とが含まれている。
あるいは、物質を細胞に接触させる刺激により発現が誘導される最初期遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子が用意される。さらに、細胞特異的な発現をする遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたNLuc−Id遺伝子が用意される。これら、最初期遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子と、細胞特異的な発現をする遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたNLuc−Id遺伝子とは、混合培養した複数の細胞種からなる細胞群に、公知の遺伝子導入方法を用いて導入される。
遺伝子を細胞へ導入する方法として、塩化カルシウム法若しくは塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リポフェクション法、又はエレクトロポレーション法等が用いられ得る。本実施形態で使用される遺伝子導入した細胞は、一過性発現細胞と安定発現細胞との何れでもよい。
ステップS2において、遺伝子導入された細胞が生存し続けられる状態で維持される。所定数の遺伝子導入された細胞は、例えば所望の細胞培養が可能な器具を用いて所望の栄養培地中で培養される。遺伝子導入された細胞の数は、例えば、1乃至1×10個、好ましくは1×10乃至1×10個である。細胞培養が可能な器具としては、例えばシャーレ、多数のウェルを有するマルチプレートが用いられ得る。栄養培地には、例えばD−MEM培地が用いられる。ここで細胞群は、特定の研究又は止むを得ない緊急の検査において、生体中に維持された状態で生存し続ける場合であってもよい。いわゆる小動物(マウス、ラット、ウサギ)を含む非ヒト動物においては、生体から各種神経細胞を含む組織を摘出することなく各種レポーター遺伝子による撮像を行うことができる。
図3は、本実施形態で用いられる光学イメージングシステム10の概略を示す。光学イメージングシステム10は、細胞1を収容するための容器11と、容器11を収容する培養装置部12と、撮像装置13と、解析装置14とを備える。容器11は、例えば上述のシャーレやマルチプレート等である。容器11として、スライドガラス、マイクロプレート、ゲル支持体、微粒子担体等も用いられ得る。培養装置部12には、温度調整機構や、湿度調整機構が設けられている。培養装置部12内では、容器11に内の細胞1は、生存した状態で維持され得る。撮像装置13は、例えば発光顕微鏡に設けられたデジタルカメラである。解析装置14は、例えばパーソナルコンピュータである。図3においては、撮像装置13は、細胞の下に配置されているが、細胞の上に配置されてもよいことは勿論である。
遺伝子導入された所定数の細胞を含む試料は、予め細胞にとって最適な温度に保温され、試料の乾燥を防ぐため水を注入して保湿された光学イメージングシステム10の培養装置部12に設置される。最適な温度は、25〜37℃、好ましくは35〜37℃である。発光顕微鏡に設けられた例えばデジタルカメラである撮像装置13は、対物レンズを介して、培養装置部12に設置された細胞1の発光イメージを撮像し記録することができる。光学イメージングに発光顕微鏡が用いられることにより、微弱な光が画像化され得る。したがって、レポーターの微弱な光の位置情報が取得され得る。
本実施形態に係る光学イメージングでは、レポーター遺伝子を導入した細胞において、レポーター遺伝子により発せられる検出可能なシグナルの存在、不在又は強度をモニタリングし、記録し、分析する。光学イメージングを行うためには、レポーター遺伝子により発せられるシグナルを細胞の外部から分析できるように、そのシグナルの強度は十分に高い必要がある。光学イメージングは、自動化することが容易である。このため、多数の遺伝子の発現を同時にモニタリングすることに用いられ得る。
ステップS3において、細胞の活性化の誘導を行う。すなわち、細胞には、刺激を与えるための物質が所望の濃度となるように加えられる。物質の濃度は、例えば、1pM〜1M、好ましくは100nM〜1mMである。使用される物質には、自然界に存在する天然の物質や、人工的に調製される任意の物質が含まれる。具体的には、例えば、化学的に合成された任意の化合物が挙げられる。この化合物の種類及び分子量等は、特に限定されない。この物質がタンパク質又はペプチドである場合には、生体組織や細胞から単離されるもの、及び遺伝子組換えや化学的合成により調製されるものが含まれる。さらに、それらの化学修飾体も含まれる。
本実施形態では、例えばGタンパク質共役型受容体を介する刺激として、代謝型グルタミン酸受容体アゴニストであるDHPGを添加する刺激が用いられ得る。DHPGの終濃度は、例えば100μMとする。細胞の活性化がGタンパク質共役型受容体を介して行われることにより、薬剤により細胞を活性化させることができる。したがって、薬剤の刺激によってレポーター遺伝子を発現させることができる。刺激には、Gタンパク質共役型受容体を介する刺激として、DHPG以外の物質が用いられてもよいし、Gタンパク質共役型受容体を介さない他の刺激が用いられてもよい。
また、刺激を与えるための物質の他に、例えば発光イメージングを行うために必要な物質が投与されてもよい。発光イメージングに必要な物質は、例えばルシフェラーゼが用いられる場合のルシフェリンである。このような刺激を与えるため以外の物質は、刺激を与えるための物質の添加の前に添加しても、後に添加しても、同時に添加してもよい。この時期は、実験に応じて適宜決定され得る。
ステップS4において、光学イメージングシステム10を用いて、光学イメージングを行う。光学イメージングシステム10は、ルシフェラーゼに基づく発光を撮像することができる。光学イメージングは、ルシフェラーゼ以外が用いられた発光を撮像するものでもよいし、発光に限らず、例えば蛍光タンパク質に由来する蛍光を撮像するものでもよい。光学イメージングシステム10は、所望の時間間隔で細胞1を撮像して記録できる。撮像の時間間隔は、例えば5分間〜5時間であり、好ましくは10分間〜1時間である。レポーターによるシグナルを光学イメージングによって画像化することがで、レポーターのシグナルの位置情報が取得され得る。
遺伝子導入されて刺激を加えられた興奮性神経細胞と抑制性神経細胞とにおいて生ずる現象を、図4及び図5に示す模式図を参照して説明する。例えば、CaMKIIα遺伝子のプロモーター領域発現可能に連結されたNLuc−Id遺伝子と、c−fos遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子とが、興奮性神経細胞20と抑制性神経細胞30とに導入された場合の模式図を図4に示す。
図4に示されるように、興奮性神経細胞20においては、NLuc−Id21が発現する。また、興奮性神経細胞では、物質添加による細胞刺激によってMyoD−CLuc22の発現が誘導される。その結果、この誘導によりルシフェラーゼの酵素活性が増強し検出可能なシグナルが発せられる。これに対して、抑制性神経細胞30においては、NLuc−Idが発現しない。したがって、抑制性神経細胞では、物質添加による細胞刺激によってMyoD−CLuc32の発現が誘導されても、ルシフェラーゼの酵素活性は増強せず、検出可能なシグナルは発せられない。
CaMKIIα遺伝子のプロモーター領域発現可能に連結されるのがMyoD−CLuc遺伝子であり、c−fos遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されるのがNLuc−Id遺伝子であっても同様である。すなわち、興奮性神経細胞では、物質添加による細胞刺激によってシグナルが検出され、抑制性神経細胞では、物質添加による細胞刺激によってもシグナルが検出されない。
一方、例としてGAD67遺伝子のプロモーター領域発現可能に連結されたNLuc−Id遺伝子と、c−fos遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子とが、興奮性神経細胞20と抑制性神経細胞30とに導入された場合の模式図を図5に示す。
図5に示されるように、興奮性神経細胞20においては、NLuc−Idが発現しない。したがって、興奮性神経細胞20では、物質添加による細胞刺激によってMyoD−CLuc27の発現が誘導されても、ルシフェラーゼの酵素活性は増強せず、検出可能なシグナルは発せられない。一方、抑制性神経細胞30においては、NLuc−Id36が発現する。したがって、抑制性神経細胞30では、物質添加による細胞刺激によってMyoD−CLuc37の発現が誘導されると、この誘導によりルシフェラーゼの酵素活性が増強し検出可能なシグナルが発せられる。
GAD67遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されるのがMyoD−CLuc遺伝子であり、c−fos遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されるのがNLuc−Id遺伝子であっても同様である。すなわち、興奮性神経細胞では、物質添加による細胞刺激によってもシグナルが検出されず、抑制性神経細胞では、物質添加による細胞刺激によってシグナルが検出される。
ここでは、興奮性神経細胞や抑制性神経細胞におけるシグナル検出を例に挙げたが、細胞種はこれに限らず、例えばグリア細胞といった脳内に混在し得る他の細胞種にも本実施形態は適用され得る。また、比較したい細胞種については、それぞれの細胞に特異的に発現する遺伝子を有する場合であれば、あらゆる細胞同士の解析が可能である。
ステップS5において、ステップS4で記録された画像に基づいて、シグナル強度の定量化を行う。記録された画像の解析には、一般的に用いられている画像解析ソフト(例えば、MetaMorph;ユニバーサルイメージング社製など)が用いられ得る。例えば、画像内の所望の領域における輝度値が取得される。レポーターが生ずるシグナルの強度を輝度値として数値で取得することにより、定量的な評価が行われ得る。
さらに、発光イメージと同視野において明視野イメージを記録し、前記の画像解析ソフトを用いて発光イメージと明視野イメージを重ね合わせて、発光している細胞が同定され得る。このイメージの重ね合わせにより、シグナルの位置情報と細胞の位置情報とが比較され得る。すなわち、レポーター遺伝子に基づくシグナルを発している細胞が同定され得る。
本実施形態によれば、興奮性神経細胞特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域が用いられることにより、興奮性神経細胞においてのみ下流の遺伝子の発現が誘導される。これにより、興奮性神経細胞においてのみレポーター遺伝子を発現させられる。その結果、興奮性神経細胞における発現を特異的に検出できる。例えば、カルモデュリン依存性キナーゼIIアルファ(CaMKIIα)遺伝子のプロモーター領域が用いられることにより、興奮性神経細胞におけるレポーター遺伝子の発現を特異的に検出できる。
また、抑制性神経細胞特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域が用いられることにより、抑制性神経細胞においてのみ下流の遺伝子の発現が誘導される。これにより、抑制性神経細胞においてのみレポーター遺伝子を発現させられる。その結果、抑制性神経細胞における発現を特異的に検出できる。例えば、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD67)遺伝子のプロモーター領域が用いられることにより、抑制性神経細胞におけるレポーター遺伝子の発現を特異的に検出できる。
本実施形態によれば、最初期遺伝子のプロモーター領域が用いられることにより、細胞の活性化により下流の遺伝子の発現が誘導される。例えば、最初期遺伝子のプロモーター領域として、ヒト由来のc−fos遺伝子のプロモーター領域が用いられることにより、細胞の活性化により下流の遺伝子の発現が誘導される。これにより、細胞の活性化に伴って検出可能なレポーター遺伝子の発現量が変化する。
レポーターの遺伝子として発光タンパク質の遺伝子配列の全部又は一部を含むことにより、レポーター遺伝子の発現によって発光反応が起こる。したがって、レポーター遺伝子の発現が、発光の観察によって検出され得る。この発光タンパク質がホタル由来のルシフェラーゼであることにより、ルシフェリンを発光基質として添加することで、レポーター遺伝子の発現によって発光反応がおこる。また、発光タンパク質に発光波長が異なる複数のルシフェラーゼが用いられることにより、レポーター遺伝子の発現によって異なる波長を持つ発光反応が起こる。したがって、レポーター遺伝子の発現を、発光波長に応じて異なる波長を透過する光学フィルターを用いて撮像することにより、発光色で分離できる。
実施例として、薬剤刺激に対応した興奮性神経細胞及び抑制性神経細胞のc−fosプロモーター活性測定について説明する。
[発現ベクター]
まず、N末側発光酵素(NLuc)遺伝子とC末側発光酵素(CLuc)遺伝子を作製するために、PCRに用いる合成オリゴDNAを調整した。合成オリゴDNAの配列を以下に示す。
(NLuc遺伝子作製用合成オリゴDNA配列)
NLuc_Fw(配列番号1):5´−GCCACCATGGAAGATGCCAAAAACATT−3´
NLuc_Rv(配列番号2):5´−CAGGGATCCGTCCTTGTCGATGAGAGCGTT−3´
(CLuc遺伝子作製用合成オリゴDNA配列)
CLuc_Fw(配列番号3):5´−ATCGGATCCGGCTACGTTAACAACCCCGAG−3´
CLuc_Rv(配列番号4):5´−GACTCTAGAATTATTACACGGCGATCT−3´
また、MyoD遺伝子及びId遺伝子のクローニングのために、PCRに用いる合成オリゴDNAを調整した。合成オリゴDNAの配列を以下に示す。
(MyoD遺伝子作製用合成オリゴDNA配列)
MyoD_Fw(配列番号5):5´−GGGCCATGGAGCTTCTATCGCCGCCACTC−3´
MyoD_Rv(配列番号6):5´−GATGGATCCAAGCACCTGATAAATCGCATT−3´
(Id遺伝子作製用合成オリゴDNA配列)
Id_Fw(配列番号7):5´−GAGGGATCCCTTGGTCTGTCGGAGCAAAGC−3´
Id_Rv(配列番号8):5´−GTGTCTAGACTCAGCGACACAAGATGCGAT−3´
そして、pGL4.10(プロメガ(株)製)を鋳型とし、NLuc_Fw及びNLuc_Rvをプライマーとして用いて、N末側ルシフェラーゼ遺伝子(NLuc:GL4.10遺伝子の1番目から416番目のアミノ酸を含む。)をPCRにより増幅した。また、pGL4.10(プロメガ(株)製)を鋳型とし、CLuc_Fw及びCLuc_Rvをプライマーとして用いて、C末側ルシフェラーゼ遺伝子(CLuc:GL4.10遺伝子の399番目から550番目のアミノ酸を含む。)をPCRにより増幅した。
また、マウス骨格筋cDNAライブラリ(タカラバイオ(株)製)を鋳型とし、MyoD_Fw及びMyoD_Rvをプライマーとして用いて、MyoD遺伝子(マウスのMyoD遺伝子の1番目から318番目のアミノ酸配列に対応する領域を含む。)をPCRにより増幅した。また、マウス骨格筋cDNAライブラリ(タカラバイオ(株)製)を鋳型とし、Id_Fw及びId_Rvをプライマーとして用いて、Id遺伝子(マウスのId遺伝子の29番目から148番目のアミノ酸配列に対応する領域を含む。)をPCRにより増幅した。
そして、PCRで増幅させたNLuc遺伝子及びMyoD遺伝子を、それぞれpBluescriptIIベクターにサブクローニングした。その後、NLuc遺伝子の下流に存在するBamHI部位とXbaI部位の間にId遺伝子を挿入した。また、MyoD遺伝子の下流に存在するBamHI部位とXbaI部位の間にCLuc遺伝子を挿入した。このようにして、融合遺伝子(NLuc−Id、及び、MyoD−CLuc)を作製した。
そして、pGL4.10ベクター(プロメガ(株)製)のルシフェラーゼ遺伝子をそれぞれNLuc−Id及びMyoD−CLucに入れ換えた発現ベクターを作製した。
また、c−fosプロモーター領域及びCaMKIIαプロモーター領域、GAD67プロモーター領域のクローニングのために、PCRに用いる合成オリゴDNAを調整した。合成オリゴDNAの配列を以下に示す。
(c−fosプロモーター領域作製用合成オリゴDNA配列)
c−fos_pro_Fw(配列番号9):5´−AGCTCGAGAGCAGTTCCCGTCAATCCCT−3´
c−fos_pro_Rv(配列番号10):5´−CAAAGCTTTGCAGAAGTCCTAGAACAA−3´
(CaMKIIαプロモーター領域作成用合成オリゴDNA配列)
CaMKIIα_pro_Fw(配列番号11):5´−AGATCTTGTGGCTGTAGGTATGGCTGATGC−3´
CaMKIIα_pro_Rv(配列番号12):5´−AAGCTTCTGGGCAGGCAGGTGAGGCTTGGG−3´
(GAD67プロモーター領域作成用合成オリゴDNA配列)
GAD67_pro_Fw(配列番号13):5´−CTCGAGGAAGCTGGACGGACTCAGCTTCAG−3´
GAD67_pro_Rv(配列番号14):5´−AAGCTTCACCTCCAGCTGCTTCCTCGTTCT−3´
そして、HeLa細胞のゲノムDNAを鋳型とし、c−fos_pro_Fw及びc−fos_pro_Rvをプライマーとして用いて、ヒトのc−fosプロモーター領域をPCRにより増幅した。また、HeLa細胞のゲノムDNAを鋳型とし、CaMKIIα_pro_Fw及びCaMKIIα_pro_Rvをプライマーとして用いて、CaMKIIαプロモーター領域をPCRにより増幅した。また、HeLa細胞のゲノムDNAを鋳型とし、GAD67_pro_Fw及びGAD67_pro_Rvをプライマーとして用いて、GAD67プロモーター領域をPCRにより増幅した。
そして、PCRで増幅させたヒトのc−fosプロモーター領域、CaMKIIαプロモーター領域、及びGAD67プロモーター領域を、それぞれpBluescriptIIベクターにサブクローニングした。
興奮性神経細胞特異的プロモーターとしてのCaMKIIαプロモーターによってMyoD−CLucが発現誘導されるように構成された、CaMKIIαプロモーター領域に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子を含む第1の発現ベクター(pCaMKIIα/MyoD−CLuc)を次のように構築した。すなわち、pBluescriptIIベクターにサブクローニングされたCaMKIIαプロモーター領域を制限酵素BglII及びHindIIIで消化し、MyoD−CLuc遺伝子の上流に存在するBglII部位とHindIII部位の間に挿入して、CaMKIIαプロモーター誘導型MyoD−CLuc遺伝子発現ベクター(pCaMKIIα/MyoD−CLuc)を作製した。
また、抑制性神経細胞特異的プロモーターとしてのGAD67プロモーターによってMyoD−CLucが発現誘導されるように構成された、GAD67プロモーター領域に発現可能に連結されたMyoD−CLuc遺伝子を含む第2の発現ベクター(pGAD67/MyoD−CLuc)を次のように構築した。すなわち、pBluescriptIIベクターにサブクローニングされたGAD67プロモーター領域を制限酵素XhoI及びHindIIIで消化し、MyoD−CLuc遺伝子の上流に存在するXhoI部位とHindIII部位の間に挿入して、GAD67プロモーター誘導型MyoD−CLuc遺伝子発現ベクター(pGAD67/MyoD−CLuc)を作製した。
また、c−fosプロモーターによってNLuc−Idが発現誘導されるように構成された、c−fosプロモーター領域に発現可能に連結されたNLuc−Id遺伝子を含む第3の発現ベクター(pfos/NLuc−Id)を次のように構築した。すなわち、pBluescriptIIベクターにサブクローニングされたc−fosプロモーター領域を制限酵素XhoI及びHindIIIで消化し、NLuc−Id遺伝子の上流に存在するXhoI部位とHindIII部位の間に挿入して、c−fosプロモーター誘導型NLuc−Id遺伝子発現ベクター(pfos/NLuc−Id)を作製した。
[細胞調整]
複数種類の神経細胞が混在している試料として、ラットの海馬のスライス試料を用いた。すなわち、本測定では、in vitroに近い状態で、興奮性神経細胞及び抑制性神経細胞のc−fosプロモーター活性測定を行った。
まず、7−9日齢のSDラットから全脳を採取し、海馬を含む部位をリニアスライサーPro7(堂坂イーエム(株)製)を用いて400μmの厚さにスライスした。海馬スライスはミリセルカルチャーインサート(ミリポア(株)製)上に置いて、25%の馬血清及び25%のHank’s液を含むEarle’s MEM培地中にて5% COインキュベーター内で培養した。培養開始から5−7日後にサンプルを2つのグループに分けた。一方のグループのラット海馬切片の神経細胞には、エレクトロポレーション法により、第1の発現ベクター(pCaMKIIα/MyoD−CLuc)及び第3の発現ベクター(pfos/NLuc−Id)を遺伝子導入した。他方のグループのラット海馬切片の神経細胞には、エレクトロポレーション法により、第2の発現ベクター(pGAD67/MyoD−CLuc)及び第3の発現ベクター(pfos/NLuc−Id)を遺伝子導入した。遺伝子導入した切片サンプルを、25%の馬血清及び25%のHank’s液を含むEarle’s MEM培地中にて5% COインキュベーター内で一晩培養した。
[刺激及び撮像]
一晩の培養後、培地を無血清のCO−independent培養液(インビトロジェン(株)製)に交換し、4時間インキュベートした。その後、ルシフェリンを終濃度1mMとなるように加えて、さらに1時間インキュベートした。
切片を含む培養ディッシュを発光顕微鏡(LV−200;オリンパス(株)製)にセットした。撮像装置13として、EM−CCDカメラ(iXon;Andor(株)製)を用いて発光画像の取得を行った。取得した画像を、解析装置14としてのパーソナルコンピュータに取り込んだ。Gタンパク質共役型受容体を介する刺激として、代謝型グルタミン酸受容体アゴニストであるDHPG(終濃度100μM)で刺激を行った。刺激直後から、LV−200によって発光画像を10分おきに連続的に取得した。発光画像の解析は、MetaMorphソフトウェア(ユニバーサルイメージング社製)を用いて行った。
[結果]
興奮性神経細胞特異的プロモーター(CaMKIIαプロモーター)によって発現誘導されるC末側スプリットルシフェラーゼ遺伝子を含む第1の発現ベクター(pCaMKIIα/MyoD−CLuc)と、第3の発現ベクター(pfos/NLuc−Id)とを導入した培養海馬切片において得られた発光画像を図7に示す。図6(A)はDHPG刺激から4時間後の発光画像を示し、図6(B)はDHPG刺激から13時間後の発光画像を示し、図6(C)はDHPG刺激から20時間後の発光画像を示す。図6(A)において四角形の枠は、輝度の評価を行った関心領域(ROI)を示す。
また、取得した発光画像に基づいて、興奮性神経細胞におけるDHPG刺激に伴う細胞毎のc−fosプロモーター活性を表す発光強度の変化を解析した。この発光強度変化を図7に示す。図7において横軸は時間であり、縦軸は、相対的な発光強度を表す。図7における各曲線は、各細胞の発光強度変化を示す。
図7に示されるように、興奮性神経細胞では、DHPG刺激後直ちにc−fosプロモーター活性が上昇していく細胞と、DHPG刺激後8時間程たってからc−fosプロモーター活性が上昇していく細胞とが存在した。このように、興奮性神経細胞では、DHPG刺激後のc−fosプロモーター活性の経時変化について細胞間での差が大きかった。
抑制性神経細胞特異的プロモーター(GAD67プロモーター)によって発現誘導されるC末側スプリットルシフェラーゼ遺伝子を含む第2の発現ベクター(pGAD67/MyoD−CLuc)と、第3の発現ベクター(pfos/NLuc−Id)とを導入した培養海馬切片において得られた発光画像を図8に示す。図8(A)はDHPG刺激から2時間後の発光画像を示し、図8(B)はDHPG刺激から9時間後の発光画像を示し、図8(C)はDHPG刺激から20時間後の発光画像を示す。図8(A)において四角形の枠は、輝度の評価を行った関心領域(ROI)を示す。
また、取得した発光画像に基づいて、抑制性神経細胞におけるDHPG刺激に伴う細胞毎のc−fosプロモーター活性を表す発光強度の変化を解析した。この発光強度変化を図9に示す。図9において横軸は時間であり、縦軸は、相対的な発光強度を表す。図9における各曲線は、各細胞の発光強度変化を示す。
図9に示されるように、抑制性神経細胞では、多くの細胞でDHPG刺激後2時間経過後頃からc−fosプロモーター活性が上昇し、この経時変化の細胞間での差は小さかった。
本実施例では、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞とが混在するサンプルを用いながら、興奮性神経細胞の活動と抑制性神経細胞の活動とを分離して解析することができた。図7と図9との比較から明らかなように、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞とでは、代謝型グルタミン酸受容体刺激(DHPG刺激)に対する最初期遺伝子の発現パターンが異なることが明らかになった。
本発明に係る脳活動の解析方法は、バイオ、製薬、医療など様々な分野で用いられ得る。
1…細胞、10…光学イメージングシステム、11…容器、12…培養装置部、13…撮像装置、14…解析装置、20…興奮性神経細胞、21…NLuc−Id、22…MyoD-CLuc、27…MyoD-CLuc、30…抑制性神経細胞、32…MyoD-CLuc、36…NLuc−Id、37…MyoD-CLuc。

Claims (17)

  1. 特定種類の細胞で発現する遺伝子の第1のプロモーター領域に発現可能に連結された不完全な第1のレポーターの遺伝子を、前記細胞を含む細胞群に導入することと、
    前記細胞の活性化により発現が誘導される遺伝子の第2のプロモーター領域に発現可能に連結された、前記第1のレポーターとの結合によって完全なレポーターが形成される不完全な第2のレポーターの遺伝子を、前記細胞群に導入することと、
    前記細胞群を生存状態で維持することと、
    前記細胞の活性化を誘導することと、
    前記第1のレポーターと前記活性化によって発現した前記第2のレポーターとが結合することによって生ずる検出可能なシグナルを、前記細胞群を光学イメージングすることで画像として取得することと、
    前記画像に基づいて、前記シグナルの強度を定量的に決定することと、
    を具備する脳活動の解析方法。
  2. 前記細胞は神経細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1のプロモーター領域は、興奮性神経細胞又は抑制性神経細胞に特異的に発現する遺伝子のプロモーター領域である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1のプロモーター領域は、前記興奮性神経細胞に特異的に発現するカルモデュリン依存性キナーゼIIアルファ(CaMKIIα)遺伝子のプロモーター領域である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記第1のプロモーター領域は、前記抑制性神経細胞に特異的に発現するグルタミン酸脱炭酸酵素67(GAD67)遺伝子のプロモーター領域である、請求項3に記載の方法。
  6. 前記第2のプロモーター領域は、最初期遺伝子のプロモーター領域である、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の方法。
  7. 前記最初期遺伝子は、ヒト由来c−fos遺伝子である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記第1のレポーターの遺伝子及び前記第2のレポーターの遺伝子は、発光タンパク質の遺伝子配列の一部からなる、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の方法。
  9. 前記発光タンパク質は、ホタル由来のルシフェラーゼである、請求項8に記載の方法。
  10. 前記ルシフェラーゼは、光学的に分離される複数の異なる発光波長を有するルシフェラーゼのうちから選択される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記光学イメージングは、発光顕微鏡を用いた撮像を含み、
    前記撮像には、前記発光波長に応じて異なる波長を透過する光学フィルターが用いられる、
    請求項10に記載の方法。
  12. 前記活性化は、Gタンパク質共役型受容体を介して行われる、請求項1乃至11のうち何れか1項に記載の方法。
  13. 前記第1のレポーターと前記第2のレポーターとが結合するように、前記第1のレポーターの遺伝子には第1の相互作用タンパク質の遺伝子が結合されており、前記第2のレポーターの遺伝子には前記第1の相互作用タンパク質と相互作用する第2の相互作用タンパク質の遺伝子が結合されている、請求項1乃至12のうち何れか1項に記載の方法。
  14. 前記第1の相互作用タンパク質は、MyoD又はIdのうち一方であり、前記第2の相互作用タンパク質は、MyoD又はIdのうち他方である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記光学イメージングは発光顕微鏡を用いた撮像を含む、請求項1乃至13のうち何れか1項に記載の方法。
  16. 前記シグナルの強度を定量的に決定することは、前記画像に含まれる輝度値を取得することを含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記細胞群の明視野像を取得することと、
    前記光学イメージングにより取得した前記画像と、前記明視野像とを比較して、前記シグナルを生じている前記細胞を同定することと、
    をさらに具備する請求項1乃至16のうち何れか1項に記載の方法。
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