JP2014062893A - シンチレータプレートおよび放射線検出パネル - Google Patents

シンチレータプレートおよび放射線検出パネル Download PDF

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Abstract

【課題】画質に必要な鮮鋭性を維持した厚さに限定されながらも、発光輝度に優れるシンチレータプレートおよび放射線検出パネルを提供する。
【解決手段】下引層2と蛍光体層4とを有するシンチレータプレート10であって、該蛍光体層4が該下引層2側を根元とする蛍光体柱状結晶4bにより構成され、蛍光体層4をその積層方向の厚さが半分となるように分け、それぞれを蛍光体柱状結晶の先端側部分4aおよび根元側部分4bとし、先端側部分4aの光透過率〔A〕に対する、根元側部分4bの光透過率〔B〕の比(B/A)が、70%以上99%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、間接変換方式のフラットパネルディテクター〔FPD〕に用いることができるシンチレータプレート、該シンチレータプレートから構成される放射線検出パネル、および、それらの製造方法に関する。
従来、X線画像のような放射線画像は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−フィルム系による放射線画像は、長い歴史のなかで高感度化と高画質化が図られた結果、高い信頼性と優れたコストパフォーマンスを併せ持った撮像システムとして、今なお、世界中の医療現場で用いられている。しかしながら、これら画像情報はいわゆるアナログ画像情報であって、近年発展を続けているデジタル画像情報のような、自由な画像処理や瞬時の電送ができない。
そして、近年ではコンピューテッドラジオグラフィ〔CR〕やフラットパネル型の放射線ディテクター(フラットパネルディテクター)〔FPD〕等に代表されるデジタル処理された放射線画像検出装置が登場している。これらは、デジタル化された放射線画像が直接得られ、陰極管や液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能なので、必ずしも写真フィルム上への画像形成が必要なものではない。その結果、これらのX線画像検出装置は、銀塩写真方式による画像形成の必要性を低減させ、病院や診療所での診断作業の利便性を大幅に向上させている。
X線画像のデジタル技術の一つとしてコンピューテッドラジオグラフィ〔CR〕が現在医療現場で受け入れられている。しかしながら、鮮鋭性が十分でなく空間分解能も不十分であり、スクリーン・フィルムシステムの画質レベルには到達していない。そして、さらに新たなデジタルX線画像技術として、例えば、雑誌Physics Todayの1997年11月号24頁のジョン・ローランズ論文"Amorphous Semiconductor Usher in Digital X−ray Imaging"や、雑誌SPIEの1997年32巻2頁のエル・イー・アントヌク論文"Development of a High Resolution,Active Matrix,Flat−Panel Imager with Enhanced Fill Factor"等に記載された薄膜トランジスタ〔TFT〕を用いたフラットパネルディテクター〔FPD〕が開発されている。
放射線を可視光に変換するために、放射線により発光する特性を有するX線蛍光体で作られたシンチレータが使用されるが、低線量の撮影においてのS/N比を向上するためには、発光効率の高いシンチレータを使用することが必要である。一般にシンチレータの発光効率は、蛍光体層の厚さ、蛍光体のX線吸収係数によって決まるが、蛍光体層の厚さを厚くすればするほど、蛍光体層内での発光光の散乱が発生し、鮮鋭性は低下する。対して、画質に必要な鮮鋭性を決めると、層厚が限定され、発光輝度が低下してしまう。
例えば、特許文献1に開示されているシンチレータパネルは、アルミニウム基板の一方の表面に、アルミニウムからなる金属反射層とSiO2膜(第1の誘電体層)とTiO2膜(第2の誘電体層)とがこの順に積層され、そしてこれら全体を反射膜保護膜がアルミニウム基板ごと覆うことによって支持体が構成され、支持体のTiO2膜上の反射膜保護膜表面にシンチレータ(TiまたはNa等がドープされたCsIの柱状結晶など)が設けられている。SiO2膜よりTiO2膜の屈折率の方が高いため、シンチレータからの発光光の反射率が大きくなり、その結果、発光輝度が向上する。
また、特許文献2には、支持体上に、例えばタリウム賦活ヨウ化セシウムからなる柱状結晶を含んで構成されるシンチレータと光検出器とを有し、放射線が光検出器、シンチレータの順に入射するように配置された放射線画像検出器が開示されており、シンチレータの放射線入射側には柱状結晶領域が存在し、シンチレータの入射側と反対側には非柱状結晶領域が存在している。柱状結晶領域では、効率の良い発光が得られる柱状結晶が光検出器近傍に存在し、柱状結晶の間隙が光のガイドとなって光拡散を抑制することで画像のボケが抑制されるとともに、シンチレータ深部まで到達した光も、非柱状結晶領域において反射され、発光輝度が向上する。
特許文献3には、基板上に下引層と蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、蛍光体層が蛍光体母体化合物と賦活剤とから気相堆積法により形成された蛍光体の柱状結晶で構成され、かつ蛍光体の柱状結晶の例えば(200)の面指数を有する面のX線回折スペクトルに基く配向度が、蛍光体層の厚手方向の位置にかかわらず、80〜100%の範囲内にある放射線画像変換パネルが開示されている。これによって、蛍光体の柱状結晶の構造の乱れが防止され、蛍光体がX線照射により発光し光電変換素子方向に伝播した光成分の散乱屈折を抑制することにより、放射線画像変換パネルの発光輝度が高くなる。
特許文献1のように反射層の反射率を向上しても、柱状結晶根元の光透過率が低く(特許文献2)本来の能力を引き出せていないため、発光輝度の向上が十分とは言えず、また柱状結晶根元の改善技術(特許文献3)もあるが、改善する余地は残されている。
特開2009-103676号公報 特開2011-017683号公報 国際公開第2011/089946号
本発明は、画質に必要な鮮鋭性を維持しつつ、発光輝度に優れるシンチレータプレートおよび放射線検出パネルを提供することを目的とする。
本発明に係る上記課題は、以下に挙げる手段により解決される。
[1]下引層と蛍光体層とを有するシンチレータプレートであって、該蛍光体層が該下引層側を根元とする蛍光体柱状結晶により構成され、蛍光体層をその積層方向の厚さが半分となるように分け、それぞれを蛍光体柱状結晶の先端側部分および根元側部分とし、先端側部分の光透過率〔A〕に対する、根元側部分の光透過率〔B〕(B/A)が、70%以上であることを特徴とするシンチレータプレート。
[2]さらに基板を有し、該基板と上記下引層と上記蛍光体層とがこの順に積層されてなる、[1]に記載のシンチレータプレート。
[3][1]または[2]に記載のシンチレータプレートと、光検出器とを有することを特徴とする放射線検出パネル。
[4]上記光検出器上に、[1]または[2]に記載の下引層と蛍光体層とがこの順に積層されてなる、[3]に記載の放射線検出パネル。
本発明は、画質に必要な鮮鋭性を維持しつつ、蛍光体層を構成する蛍光体柱状結晶の根元の光透過率が高い、すなわち下引層(好ましくは金属反射層)までより多くの発光光が届き、発光光の損失が低減されるため、発光輝度に優れたシンチレータプレートおよび放射線検出パネルを提供することができる。
本発明であるシンチレータプレート(10)および放射線検出パネル(20)の実施形態の一つを模式的に示した縦断面図である。矢印は積層方向を表わす。 本発明であるシンチレータプレートおよび放射線検出パネルを製造する際、それらが備える蛍光体層を作製するのに好適な蒸着法で用いる蒸着装置(31)の模式図である。点線の直線は、支持体(3)の重心(中心)から垂直に伸びる直線を表わし、点線の円は、該直線のある一点を中心とする円を表わし、該円周上の互いに向かい合う位置に蒸発源(38)が配置されている。 本発明であるシンチレータプレートの蛍光体層側表面に蛍光体保護層を作製するのに好適なCVD蒸着装置(41)の模式図を示す。 断裁工程で用いられるブレードダイシングの例の模式断面図である。 断裁工程で用いられるレーザ断裁の例の概略斜視図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
<シンチレータプレート/放射線検出パネル>
図1に示すように、本発明のシンチレータプレート(10)は、下引層(2)と蛍光体層(4)とを有し、好ましくは基板(1)と下引層(2)と蛍光体層(4)とがこの順に積層されている。以下、本発明において、基板(1)と下引層(2)とを合わせて、支持体(3)ともいう。
本発明に係る蛍光体層(4)は、下引層(2)側を根元とする蛍光体柱状結晶(5)により構成されている。なお、図1に示す通り、蛍光体柱状結晶(5)一本一本は、根元側が細く、先端側にいくほど太くなる傾向にある。
蛍光体層(4)を、その積層方向の厚さ〔t〕が半分〔t/2〕となるように分け、それぞれを蛍光体柱状結晶(5)の先端側部分(4a)および根元側部分(4b)とし、先端側部分(4a)の光透過率〔A〕に対する、根元側部分(4b)の光透過率〔B〕(すなわち、B/A)が、70%以上99%以下であることを特徴とする。
本発明のシンチレータプレートは、下引層や蛍光体層の他に、各種の機能層を有していてもよく、機能層としては、例えば、金属反射層(以下、単に「反射層」ともいう。)、金属保護層、蛍光体保護層などが挙げられる。
また、図1に示すように、本発明の放射線検出パネル(20)は、本発明のシンチレータプレート(10)と光検出器(13)とを有することを特徴とする。
本発明の放射線検出パネルの好ましい態様として、
(I)基板と下引層と蛍光体層と光検出器とがこの順に積層されてなる態様、および
(II)光検出器と下引層と蛍光体層とがこの順に積層されてなる態様が挙げられる。
なお、本発明において「蛍光体」(「シンチレータ」ともいう。)とは、α線、γ線、X線などの電離放射線が照射されたときに、原子が励起されることにより発光する蛍光体、すなわち放射線を紫外・可視光に変換して放出する蛍光体をいう。
《基板》
本発明で用いることができる基板とは、シンチレータパネルの構成要素において、蛍光体層を保持するために、下引層の補助的な役割を果たす部材を指す。なお、本願明細書中では、シンチレータプレートをシンチレータパネルともいう。
このような基板を構成する材料としては、例えば、(1)カーボン(アモルファスカーボンや、木炭および紙を炭化処理して固めたもの等)、(2)樹脂(炭素繊維強化プラスチック〔CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics〕、ガラス繊維強化プラスチック〔Glass Fiber Reinforced plastics〕等も含む。)(3)ガラス、(4)金属、(5)上記(1)〜(4)の材料を薄く形成し発泡樹脂でサンドイッチしたもの等を使用することができる。これらは一種単独で用いても二種以上を積層して用いてもよい。
基板の厚さは20μm以上3mm以下であることが好ましい。
基板には、例えば、易接着層、反射層、光吸収層、導電層、反り防止層、平滑層等の機能層を設けてもよい。
本発明で用いることができる基板としては、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムを用いると、(i)反射層、導電層、易接着層等の機能層を、ロール・ツー・ロール(roll to roll)で加工することができる点、(ii)蛍光体を蒸着する前、または蛍光体を蒸着した後に、製品サイズに容易に断裁することができる点、(iii)シンチレータパネルと平面受光素子とをカップリングする際、柔軟性があるため平面受光素子との密着性に優れる点等のメリットがある。
このような樹脂フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルロースアセテート、ポリアミド樹脂(アラミド、ナイロン等)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド、ビスマレイミド樹脂、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーや炭素繊維強化樹脂などが挙げられる。これらは一種単独で用いても二種以上積層して用いてもよい。
支持体上に蛍光体を蒸着する際、熱によって支持体が変形しないよう、支持体のガラス転移移点は100℃以上であることが好ましい。具体的には、ポリイミドを含有する樹脂フィルムが好適である。
基板として樹脂フィルムを用いる場合、基板の厚さは、好ましくは20〜1,000μm、より好ましくは50〜750μmである。基板の厚さが50μm以上であると、蛍光体層を形成した後のハンドリング性が良好となる。また、基板の厚さが750μm以下であると、反射層、導電層、易接着層等の機能層を、ロール・ツー・ロール(roll to roll)で加工することが容易となり、生産性向上の観点より、極めて有用である。
また、基板は、その弾性率が0.1〜20GPaである「可とう性を有する基板」であることが好ましい。本発明において「弾性率」とは、引張試験機を用い、JIS C 2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これはヤング率とも呼ばれる値であり、本発明では、かかるヤング率を弾性率と定義する。
基板として、特に弾性率が10GPa以上である剛性板を用いてもよく、例えば、金属、ガラス、カーボン、これらの複合材料などからなる剛性板を特に制約なく用いることができる。
シンチレータパネルの反りを防止するために、基板には反り防止層を設けることができる。基板に、例えば熱膨張特性または熱収縮特性の異なる材料を接着またはコートすることによって、シンチレータパネルの反りを抑制することができる。
《反射層》
基板の、少なくとも蛍光体層が蒸着される側の表面に、反射層を形成することが好ましい。反射層を設けると、蛍光体層からの発光を極めて効率良く取り出すことができ、シンチレータプレートの発光輝度が飛躍的に向上する場合がある。
反射層の表面反射率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
反射層を構成する材料としては、金属や、光散乱粒子をバインダーに分散させたものが挙げられる。
反射層を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、銀、白金、パラジウム、金、銅、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、ステンレスなどの材料が好ましい。中でも反射率、耐食性の観点から、アルミニウムまたは銀を主成分とすることが特に好ましい。また、このような金属薄膜は二層以上積層してもよい。
金属材料を基板上に被覆する方法としては、例えば、蒸着、スパッタ、金属箔の貼り合わせなど、特に制約はないが、基板と反射層との密着性の観点から、スパッタが好ましい。
反射層の厚さが、好ましくは0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.2μmであると、発光光取り出し効率の観点から好適である。
また、本発明では、反射率向上のため、例えばSiO2、TiO2等の金属酸化物からなる増反射層をさらに設けてもよい。
光散乱粒子をバインダーに分散させた反射層としては以下のようになる。
光散乱粒子としては、例えば、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al23、M(II)FX(ただし、M(II)は、Ba、SrおよびCaから選ばれる少なくとも一種の原子であり、Xは、Cl原子またはBr原子である。)、CaCO3、ZnO、Sb23、SiO2、ZrO2、リトポン〔BaSO4・ZnS〕、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウムなどの白色顔料を使用することができる。これらの白色顔料は、隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射し、屈折させることによりシンチレータの発光を容易に散乱し、得られる放射線像変換パネルの感度を顕著に向上させることができる。
その他の光散乱性粒子として、例えば、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、中空部が粒子内に存在する中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、多孔質粒子なども使用することができる。
これらの物質は一種単独で用いてもよいし、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化チタン〔TiO2〕の結晶構造としては、ルチル型、アナターゼ型のいずれも使用できるが、樹脂の屈折率との比率が大きく、高輝度を達成できる点からルチル型が好ましい。
酸化チタンとしては、具体的には、例えば塩酸法で製造されたCR−50、CR−50−2、CR−57、CR−80、CR−90、CR−93、CR−95、CR−97、CR−60−2、CR−63、CR−67、CR−58、CR−58−2、CR−85;硫酸法で製造されたR−820、R−830、R−930、R−550、R−630、R−680、R−670、R−580、R−780、R−780−2、R−850、R−855、A−100、A−220、W−10(以上、石原産業(株)製の商品名である。)などが挙げられる。
酸化チタンの一次粒径は0.1〜0.5μmが好ましく、0.2〜0.3μmがより好ましい。
また、酸化チタンとしては、バインダーとしてのポリマーとの親和性、分散性を向上させるためや該ポリマーの劣化を抑えるため、例えばAl、Si、Zr、Znなどからなる酸化物で表面処理されたものが特に好ましい。
光散乱粒子と混合して反射層を構成する材料(すなわちバインダー)としては、易接着性のポリマー、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、尿素ホルムアミド樹脂などが挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラールが好ましい。また、これらのバインダーは一種単独でも二種以上を混合してもよい。
塗布型の反射層は、少なくとも光散乱粒子、バインダー、溶剤を含有する組成物を、塗布、乾燥して形成することができる。塗布方式については、特に制約はないが、例えば、グラビア、ダイ、コンマ、バー、ディップ、スプレー、スピンなどの一般的な方式を用いることができる。
反射層の形成に用いる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライド等の塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレン等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステル、メトキシプロパノールプロピレングリコールモノメチルエーテル 、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル;および、それらの混合物などが挙げられる。
酸化チタンの分散性を向上させるために分散剤を使用してもよい。分散剤としては、例えば、多価アルコール、アミン類、シリコーン、界面活性剤などを用いることができる。
反射層の厚さは、10〜500μmが好ましい。反射層の厚さが10μm以上で充分な輝度が得られ、また500μm以内で、反射層表面の平滑性が向上する。
酸化チタンは、反射層中に40〜95重量%含まれていることが好ましく、60〜90重量%含まれていることが特に好ましい。40重量%以上で輝度が向上し、95重量%以下で、基板または蛍光体層との接着性が向上する。
本発明においては、基板と反射層との密着性を向上させるために、基板と反射層との間に中間層を設けることが好ましい。中間層を構成する材料としては、一般的な易接着性のポリマーの他、反射層とは異なる材料からなる金属層を設けてもよい。このような異種金属層としては、例えば、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、チタン、ジルコニウム、モリブデンおよびタングステンからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を用いて形成することが好ましく、中でもニッケル、クロムを一種単独または二種を混合して使用することがより好ましい。
《下引層》
下引層は、本発明のシンチレータプレートにおいて、蛍光体柱状結晶の土台となるものであり、下引層が硬ければ、上述した基板を用いる必要はないが、下引層が柔らかい場合に限り、補助的に基板を用いることができる。後者の場合、下引層は、基板と蛍光体層との接着性も向上することができる。
蒸着法等の気相堆積法により蛍光体層を形成した場合、蛍光体層の下地部分(蛍光体柱状結晶の下引層と接地している部分)は、通常、直径数μmの球状結晶の凝集体からなる場合が多い。しかしながら、下引層を形成する高分子結合材が好ましくは300℃以下の融点〔Tm〕またはガラス転移点〔Tg〕を有するポリマーからなると、低温でも下引層が柔らかいため、球状の結晶核が移動しづらく球状結晶が凝集しにくい。林立して成長する蛍光体柱状結晶が、近接する蛍光体柱状結晶どうしで接触(部分的に結合、付着する態様も含む。)しにくいため、光ガイドの観点から好ましい。
下引き層を構成する具体的な材料としては、易接着性のポリマー、すなわち高分子結合材(バインダー)であり、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アラミドおよびナイロン、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、尿素ホルムアミド樹脂などが挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリパラキシリレン樹脂が好ましい。また、これらのバインダーは一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
バインダーのガラス転移点〔Tg〕は100℃以下であることが、基板と蛍光体層の接着性向上の観点から好ましい。また融点を有する材料であれば、常圧環境下での融点が300℃以下であることから基板と蛍光体層の接着性向上の観点から好ましい。
下引き層の形成方法としては、例えば、溶剤に溶解または分散した高分子結合材を塗布、乾燥して形成する方法のほか、CVD〔化学気相成長〕法によりポリパラキシリレン樹脂膜を形成する方法などが挙げられる。
下引き層の塗布方式については、特に制約はないが、例えば、グラビア、ダイ、コンマ、バー、ディップ、スプレー、スピンなどの一般的な方式を用いることができる。
下引き層の調製に用いることができる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライド等の塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレン等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステル、メトキシプロパノールプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル;および、それらの混合物などが挙げられる。
下引き層の厚さは、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。下引き層の厚さが0.5μm以上であると、蛍光体層との接着性が向上し、下引き層の厚さが5μm以下であると、下引き層内での光散乱が抑制され鮮鋭性が向上する。
下引き層には、蛍光体(シンチレータ)が発光する光の散乱を防止し、鮮鋭性等を向上させるために、顔料や染料などを含有させてもよい。
《蛍光体層》
本発明において、蛍光体層は気相堆積法により得られる柱状結晶であることが好ましく、複数層から形成されていても良い。蛍光体柱状結晶を形成する過程において、蛍光体柱状結晶成長の膜厚50um程度の成長までに形成された第一の蛍光体層とそれ以外の第二の蛍光体層とに分けられ、第一の蛍光体層を特に「下地層」ともいう。また、蛍光体層を形成する材料を「蛍光体材料」または単に「蛍光体」といい、蛍光体母体化合物のみ、または、蛍光体母体化合物と賦活剤との組成物をいう。
蛍光体層を形成する材料としては、種々の蛍光体材料が知られているが、ヨウ化セシウム〔CsI〕は、X線から可視光への変更率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層を厚くすることが可能であることから、好ましい。
CsIのみからなる蛍光体層の発光効率をさらに向上させることを目的として、各種の賦活剤を添加することができる。例えば、特公昭54-35060号公報には、CsIとヨウ化ナトリウム〔NaI〕とを任意のモル比で混合したものが記載されている。また、特開2001-59899号公報には、タリウム〔Tl〕、ユウロピウム〔Eu〕、インジウム〔In〕、リチウム〔Li〕、カリウム〔K〕、ルビジウム〔Rb〕、ナトリウム〔Na〕などの賦活物質を含有するCsIが好ましい旨記載されている。
なお、本発明においては、一種以上のタリウム化合物を含む添加剤とヨウ化セシウムとを蛍光体材料とすることが好ましく、特に、タリウム賦活ヨウ化セシウム〔CsI:Tl〕は400〜750nmまでの広い発光波長を有することから好ましい。
一種類以上のタリウム化合物を含有する添加剤のタリウム化合物として、種々のタリウム化合物(+Iと+IIIの酸化数の化合物)を使用することができる。例えば、ヨウ化タリウム〔TlI〕、臭化タリウム〔TlBr〕、塩化タリウム〔TlCl〕、フッ化タリウム〔TlF〕または〔TlF3〕などが挙げられる。
本発明において、好ましいタリウム化合物は、ヨウ化タリウム〔TlI〕であり、タリウム化合物の融点は、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。700℃以内であれば、柱状結晶内での添加剤が均一に存在し、発光効率が向上する。なお、本発明において、融点とは、常温常圧下における融点をいう。
賦活剤の蛍光体層における相対含有量は0.1〜5モル%が好ましい。このうち、下地層における相対含有量は、0.01〜1モル%が好ましく、0.1〜0.7モル%がより好ましい。なお、賦活剤の相対含有量は、蛍光体母体化合物1モルに対する賦活剤のモル%で示される。特に、下地層には0.01モル%以上含有することが発光輝度の向上および保存性の点で重要である。
本発明においては、下地層における賦活剤の相対含有量が蛍光体層における相対含有量よりも低いことが好ましく、蛍光体層における賦活剤の相対含有量に対する下地層における賦活剤の相対含有量の比(すなわち{下地層における賦活剤の相対含有量}/{蛍光体層における相対含有量})は、0.1〜0.7であることが好ましい。
蛍光体層の一定の面指数を有する面のX線回折スペクトルに基づく配向度は、層厚方向の位置に係わらず、80〜100%の範囲内であることが好ましい。例えば、タリウム賦活ヨウ化セシウム〔CsI:Tl〕における面指数は、例えば(100)、(110)、(111)、(200)、(211)、(220)、(311)等のうちのいずれかであり得るが、これらのうち(200)であることが好ましい。なお、面指数については、X線解析入門(東京化学同人)42〜46頁を参照する。
本発明において、「一定の面指数の面のX線回折スペクトルに基づく配向度」とは、ある面指数の強度Ixが他の面指数の面を含めた全体の総強度Iに占める割合のことを指す。例えば、X線回折スペクトルにおける(200)面の強度I200の配向度は、「配向度=I200/I」である。配向度決定のための面指数の測定方法としては、例えばX線回折〔XRD〕などが挙げられる。X線回折は、特定波長の固有X線を結晶性物質に照射し、Braggの式を満足する回折が起こることを利用して、物質の同定、結晶相の構造などに関する知見を得ることのできる汎用性の高い分析手法である。照射系のターゲットはCu、Fe、Coなどが用いられ、装置能力によるが、一般的に照射時の出力は0〜50mA、0〜50kV程度である。
蛍光体層は、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられる柱状結晶であることが好ましい。柱状結晶を形成する方法としては、気相堆積法が挙げられる。気相堆積法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などを用いることができるが、本発明では特に蒸着法が好ましい。
蛍光体層は、好ましくは蛍光体母体化合物と賦活剤とからなる蛍光体から構成され、より好ましくは下地層が、蛍光体母体化合物と賦活剤とからなり、空隙率が蛍光体層よりも高い値を示す。
蛍光体柱状結晶の形成方法は、上記面指数についての要件を満たすために、下引層の表面に、空隙率が蛍光体層よりも高い値を示す下地層を形成する工程、および、下地層の表面に蛍光体を気相堆積法により形成する工程を含むことが好ましい。
なお、本発明において「空隙率」とは、蛍光体層を支持体と平行に切断した断面において、柱状結晶の断面積と空隙の面積の総和に対する、空隙の面積の比率をいい、シンチレータプレートの蛍光体層を支持体と平行に切除し、断面の走査型電子顕微鏡写真を、画像処理ソフトを使用して蛍光体部分と空隙部の2値化することにより、求めることができる。
蛍光体層の厚さは、100〜800μmが好ましく、輝度と鮮鋭性の特性をバランスよく得られる点から、120〜700μmがより好ましい。
下地層の厚さは、高輝度・鮮鋭性維持の面から、0.1〜50μmが好ましく、5〜40μmがより好ましい。
蛍光体層に含まれる蛍光体柱状結晶は、結晶成長の起点側から10μmの位置での平均円相当径aと、最表面での平均円相当径bとが、1.5≦b/a≦30の関係を満たすことが好ましい。
下地層の厚さcと第二の蛍光体層の厚さdとが、3≦d/c≦1,000の関係を満たすことが、鮮鋭性の面から好ましく、さらに10≦d/c≦1,000であることが好ましい。
《蛍光体保護層》
本発明のシンチレータプレートが有していてもよい機能層の一種である蛍光体保護層(以下、単に「保護層」ともいう。)は、蛍光体層を物理的または化学的に保護することを主眼とするものである。すなわち、ヨウ化セシウム〔CsI〕は、吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを目的とする。
本発明のシンチレータプレートを製造後、シンチレータプレートを所定の大きさに断裁する工程の前に、蛍光体層上に保護層を形成する工程を有することが好ましい。保護層は、断裁工程における断裁時の蛍光体層の柱状結晶の結晶割れなどの損傷を防止する損傷防止性をより高めるための層でもある。また、保護層は、シンチレータと受光素子との接触による受光素子側の腐食を防止できるという側面も有する。蛍光体柱状結晶からなる蛍光体層と光電素子等の光検出器とを光学補償材料でカップリングする際、この保護層は、光学補償材料が柱状結晶間に浸透するのを防止する浸透防止層の役割も担っている。
保護層は、例えば、蒸着法、スパッタリング法などにより、SiC、SiO2、SiN、Al23などの無機物質を積層して形成することができる。また、保護層用の塗布液を蛍光体層の表面に直接塗布して形成してもよく、予め別途形成した保護層を蛍光体層に接着してもよい。保護層の厚さは0.1〜2,000μmが好ましい。
保護層は、例えば、ポリオレフィン系、ポリアセタール系、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系、ポリパラキシリレン系などのポリマー材料からも形成することができる。
保護層としてポリパラキシリレン系のポリマー材料から形成する場合、CVD法により1μm以上20μm以下の厚さで形成し、その他のポリマー材料から形成する場合は、塗布法により1μm以上100μm以下の厚さで形成することが好ましい。
ポリパラキシリレン系のポリマー材料は、水蒸気およびガスの透過性も少ないという特徴もあり、もともと潮解性であるCsI:Tlの保護膜には好適である。ここで、ポリパラキシリレンは、ポリパラキシリレンの他、ポリモノクロロパラキシリレン、ポリジクロロパラキシリレン、ポリテトラクロロパラキシリレン、ポリフルオロパラキシリレン、ポリテトラクロロパラキシリレン、ポリフルオロパラキシリレン、ポリジメチルパラキシリレン、ポリジエチルパラキシリレンなどを含むことができる。
本発明においては、平面受光素子と接着する場合の接着剤層がさらに保護層上に存在してもよく、その厚さは、接着力確保の観点から10μm以上が好ましく、かつ保護層の厚さと接着剤層の厚さとの合計が100μm以下、より好ましくは50μm以下であると、平面受光素子とシンチレータパネルとの間隙でシンチレータからの発光の拡散が大きくなりフラットパネルディクタとしての鮮鋭性が低下するのを防止できる点で好ましい。
また、別の態様の保護層として、ホットメルト樹脂を用いて形成することもできる。ホットメルト樹脂は、シンチレータプレートと平面受光素子面との接着も兼ねることができる。
本発明におけるホットメルト樹脂とは、水や溶剤を含まず、室温で固体であり、不揮発性の熱可塑性材料からなる接着性樹脂である。樹脂温度が上昇すると溶融し、樹脂温度が低下すると固化する。また、加熱溶融状態で接着性が有り、常温で固体状態となり接着性を持たないものである。
ホットメルト樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系やポリアミド系樹脂を主成分とするものが好適であるが、光透過性の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ホットメルト樹脂からなる保護層の厚さは、20μm以下が好ましい。
また、ホットメルト樹脂の溶融開始温度は、TFTなどの平面受光素子での連続使用特性、接着剥がれ防止性などの観点から、60℃以上150℃以下が好ましい。ホットメルト樹脂の溶融開始温度は、可塑剤添加により調整可能である。
ホットメルト樹脂による保護層の形成方法として、例えば、以下に示す方法などが挙げられる。
・剥離剤がコーティングされた剥離シートを準備し、ホットメルト樹脂をこの剥離シートに塗設し、このホットメルト樹脂面をシンチレータパネルの蛍光体層面に配置し、加熱したローラーで加圧しながら張り合わせ、冷却後に剥離シートを取り除く方法。
・あるいは、ホットメルト樹脂が塗設されたシートを蛍光体層面に配置した後、これらの上下に樹脂フィルムを設置し減圧下で上下の樹脂フィルムの周縁部をシールし密封した後、大気圧下で過熱する方法。
後者の方法における樹脂フィルムとしては、例えば、シーラントフィルムとポリエチレンテレフタレート〔PET〕とのドライラミネートフィルムなどが好適であり、蛍光体層全面に大気圧による均一な接着圧が得られるため、好ましい。
カーボン、アルミまたはガラスなどの剛直な基板を使用した場合、蛍光体層表面にポリパラキシリレンやホットメルト樹脂などの保護層を形成しておくことで、結晶の割れを伴わずにシンチレータプレートを所定サイズにブレードダイシングできることを、本発明者らは見出した。なお、本発明でいうブレードダイシングとは、シリコンウエハーなどのダイシングに一般に使用されるブレードを使用した断裁であるが、基板がガラスの場合には、レーザーダイシングも使用可能である。
ポリパラキシリレンにより、蛍光体層の上部、側面および下引層(好ましくは基板)の蛍光体層外周部を覆うことにより、高い防湿性が得られる。また、ホットメルト樹脂は防湿性だけでなく、シンチレータパネルと平面受光素子面との接着も兼ねることができる。
衝撃吸収という観点からは、ポリパラキシリレンまたはホットメルト樹脂のように、蛍光体柱状結晶間にある程度入り込む樹脂層を形成できるものも望ましく、一方、鮮鋭性という観点からは、蛍光体柱状結晶間にあまり入り込まない樹脂層を形成できるものも望ましい。
また、別の態様の保護層として、蛍光体層上に高分子フィルム(保護フィルムともいう。)を設けることもできる。なお、高分子フィルムの材料としては、上述した基板の材料としての高分子フィルムと同様のフィルムを用いることができる。
高分子フィルムの厚さは、空隙部の形成性、蛍光体層の保護性、鮮鋭性、防湿性、作業性等を考慮し、12〜120μmが好ましく、20〜80μmが好ましい。
また、ヘイズ率は、鮮鋭性、放射線画像ムラ、製造安定性、作業性等を考慮し、3〜40%が好ましく、3〜10%がより好ましい。ヘイズ率は、日本電色工業(株)製のNDH 5000Wにより測定した値を示す。必要とするヘイズ率は、市販されている高分子フィルムから適宜選択し、容易に入手することが可能である。
保護フィルムの光透過率は、光電変換効率、蛍光体(シンチレータ)発光波長等を考慮し、550nmで70%以上が好ましいが、99%以上の光透過率のフィルムは工業的に入手が困難であるため、実質的に99〜70%が好ましい。
保護フィルムの透湿度(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)は、蛍光体層の保護性、潮解性等を考慮し、50g/m2・day以下が好ましく、10g/m2・day以下がより好ましいが、0.01g/m2・day以下の透湿度のフィルムは工業的に入手が困難であるため、実質的には、0.01g/m2・day以上、50g/m2・day以下が好ましく、0.1g/m2・day以上、10g/m2・day以下がより好ましい。
《光検出器》
図1に示すように、光検出器(13)は、光電変換素子アレイ(11)と回路基板(12)とを有することが好ましい。
光電変換素子アレイとは、フォトセンサと薄層トランジスタ〔TFT〕または電荷結合素子〔CCD〕とからなる光電変換素子(または平面受光素子)を二次元に配置したものである。また、回路基板とは、光電変換素子により蛍光体層の発光光から変換された電荷を電気信号として出力するとともに、光電変換素子アレイの土台としての役割も果たすものであってもよい。
図1では、回路基板(12)と光電変換素子アレイ(11)とからなる光検出器(13)が、シンチレータプレート(10)の蛍光体層(4)側に対向するように積層され、本発明の放射線検出パネル(20)が形成されているが、好ましくは、光電変換素子アレイ(11)と蛍光体層(4)との間には蛍光体保護層が設けられており、光電変換素子アレイ(11)と蛍光体保護層とは接着(貼着)されているか、または密着して接触している。
また、図1では、蛍光体層(4)が下引層(2)側を根元とする蛍光体柱状結晶(5)により形成されているが、光電変換素子アレイ(11)側を根元とする蛍光体柱状結晶(5)により形成されていてもよい。すなわち、光検出器(13)を基板または支持体として、気相堆積法により蛍光体柱状結晶(5)を成長させて、蛍光体層(4)を形成してもよい。
なお、光電変換素子アレイの蛍光体層に対向する最表面の表面平均粗さ〔Ra〕は、好ましくは0.001〜0.5μmであり、より好ましくは0.001〜0.1μmであり、さらに好ましくは0.001〜0.05μmである。ガラス製の平面などに回路基板と光電変換素子アレイとをこの順に形成した後、光電変換素子アレイ表面に例えばポリエステルやアクリルなどからなる有機樹脂からなる平坦化層を形成し、フォトエッチング法により表面粗さを制御することによって、上記Raの範囲を満たすように調整することができる。
本発明の放射線検出パネルにおいて、シンチレータプレートは、光電変換素子アレイに弾力部材(例えば、スポンジ、バネ等)により押しつけられ密着している態様であることが好ましい。また、シンチレータプレートと光電変換素子アレイとの間隙が減圧することによって互いが密着し、かつその周辺を密着シール部材等でシールされている態様であることも好ましい。密着シール部材は、紫外線硬化型樹脂組成物からなることが好ましい。
紫外線硬化型樹脂としては、特に制限はなく、従来から使用されているものの中から、適宜選択して用いることができる。この紫外線硬化型樹脂組成物は、光重合性プレポリマーまたは光重合性モノマー、光重合開始剤や光増感剤を含有するものである。
光重合性プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。このうちウレタンアクリレート系が好ましい。また、これら光重合性プレポリマーは一種単独でも二種以上併用してもよい。
光重合性モノマーとしては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。このうちジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α-アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類などが挙げられる。
光増感剤としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィンなどを混合して用いることができる。
《光学補償層》
本発明において、光学補償層とは、蛍光体柱状結晶からなる蛍光体層と光電素子等の光検出器とを光学補償材料を用いてカップリングする際に、好ましくは光学補償材料から形成される層である。
本発明のような間接変換方式のシンチレータプレートおよび放射線検出パネルによれば、シンチレータである蛍光体柱状結晶と光学補償層との屈折率の差、および、光学補償層と平坦化層との屈折率の差が小さくなり、照射された放射線により蛍光体層内で発光した光が蛍光体柱状結晶と光学補償層との境界面や光学補償層と平坦化層との境界面で反射される度合が小さくなる。そのため、蛍光体層内で発光した光が面方向に反射される度合が低減されるため、蛍光体層の直下の光電変換素子以外の光電変換素子で受光されることが抑制される。また、反射光が蛍光体等で吸収されることも的確に防止される。よって、蛍光体層の直下の光電変換素子に光のほとんどの量が的確に入射される状態になり、高感度でかつ鮮鋭性が高い放射線画像を得ることが可能となる。
そこで、本発明では、光学補償層は、好ましくは熱硬化性の樹脂で形成されている。熱硬化性の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が好ましく用いられる。
熱硬化性の樹脂を硬化させて光学補償層を形成する方法については、後述するシンチレータプレート等の製造方法の中で説明する。
また、光学補償層を、硬化させた樹脂等の固体で形成する代わりに、透明な液体やゲル状物質で形成することも可能である。この場合も、液体やゲル状物質からなる光学補償層は、少なくともシンチレータプレートの蛍光体柱状結晶の各先端部分と平坦化層の表面とにそれぞれ密接する状態で形成することができる。
光学補償層を形成する材料としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系などの常温硬化型の接着剤が使用できる。
特に弾力性を有する、光学補償層を形成する材料としてはゴム系の接着剤が使用できる。ゴム系の接着剤の樹脂としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレン等のブロックコポリマー系や、ポリブタジエン、ポリブチレン等の合成ゴム系接着剤、および天然ゴム等を使用できる。市販されているゴム系の接着剤としては、例えば、一液型RTVゴムKE420(信越化学工業(株)製)などが好適である。
また、シンチレータプレートと平面受光素子の間には粘着性を有する光学グリース等も使用できる。透明性が高く粘着性があれば、公知のいかなるものも使用できる。市販されている光学グリースとしては、例えば、シリコンオイル KF96H(100万CS:信越化学工業(株)製)などが好適である。
一方、光学補償層は、その屈折率が、シンチレータプレートの蛍光体層の屈折率と平坦化層の屈折率のうち、小さい方の屈折率以上で大きい方の屈折率以下の屈折率となるように形成されていることが好ましい。
本発明では、上述したようにシンチレータプレートの蛍光体柱状結晶として、例えばCsI:Tlが用いられており、その屈折率は約1.8である。また、平坦化層を形成する材料としては例えばアクリル樹脂が用いられており、その屈折率は約1.5である。そこで、本発明では、光学補償層は、その屈折率nが1.5〜1.8の範囲になるように形成されている。
光学補償層は、放射線の照射によりシンチレータプレートの蛍光体層で発光した光が光学補償層や平坦化層を介して光電変換素子に到達するようにするために透明であり、光の透過率が90%以上の高透過率であることが好ましい。
なお、光学補償層を形成する樹脂が、例えば、硬化する際に収縮し易いものであったり、温度が高くなると膨張し易いものであるような場合、光学補償層が収縮したり膨張したりする際に、シンチレータプレートの蛍光体柱状結晶に対して面方向に力が加わる状態になる。そして、その力によって柱状結晶が破壊されてしまう可能性が生じる。そこで、光学補償層を形成する樹脂としては、硬化収縮率や線膨張係数が低いものを用いることが好ましい。
なお、接着剤の硬化をより確実にするために、上記の紫外線の照射後に、さらにシンチレータプレートを加熱して、接着剤を焼成させる等の処理を行うように構成することも可能である。その際、熱硬化性の樹脂を硬化させて形成した光学補償層が、接着剤の焼成の際にガラス転移しないようにするために、光学補償層を形成する熱硬化性の樹脂は、接着剤のガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する材料で形成されていることが好ましい。
そして、この状態で樹脂を硬化させて光学補償層を形成すると、上記のように光学補償層には境界面で反射される光の割合を低減させる効果があるため、柱状結晶の側壁で反射される光の割合が低減されてしまい、光が蛍光体柱状結晶の外に漏れ出し易くなってしまう。そして、光が柱状結晶から漏れ出すと、シンチレータパネルの蛍光体層内で発光した光が面方向に拡散してしまい、結局、得られる放射線画像の鮮鋭性が高くならなくなるという問題が生じる。
そこで、例えば、光学補償層となる樹脂を塗布する際またはその後に、樹脂を増粘させたり、毛細管現象によって蛍光体柱状結晶同士の隙間に入り込まない程度の粘度を有する樹脂を用いたりすることが可能である。
<製造方法>
本発明に係るシンチレータパネルおよび放射線検出パネルの製造方法は、気相堆積法により、真空容器内に蒸発源および支持体回転機構を有する蒸着装置を用いて、支持体を支持体回転機構に設置して、支持体を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含むことが好ましい。
本発明に係る製造方法は、このような「蒸着工程」以外に、上述した「基板に下引層を形成する工程」、「蒸着後の加熱工程」、「蛍光体保護層の形成工程」、「光学補償層の形成工程」などの工程も含むことができる。
《蒸着工程》
以下、本発明に係るシンチレータパネルの製造方法について、図2を参照しながら説明する。
真空容器(32)の内部の底面付近には、支持体(3)に垂直な中心線を中心とした円の円周上の互いに向かい合う位置に蒸発源(38)が配置されている。この場合において、支持体(3)と蒸発源(38)との間隔は100〜1,500mmとするのが好ましく、より好ましくは200〜1,000mmである。また、支持体(3)に垂直な中心線と蒸発源(38)との間隔は100〜1,500mmとするのが好ましく、より好ましくは200〜1,000mmである。
なお、本発明のシンチレータパネルの好適な蒸着装置(31)においては3個以上の多数(例えば8個、16個、24個等)の蒸発源を設けることも可能であり、各々の蒸発源は等間隔に配置してもよく、間隔を変えて配置してもよい。また、支持体(3)に垂直な中心線を中心とした円の半径は任意に定めることができる。
蒸発源(38)は、蛍光体を収容して抵抗加熱法で加熱するため、ヒータを巻いたアルミナ製のるつぼから構成してもよいし、ボートや、高融点金属からなるヒータから構成してもよい。また、蛍光体を加熱する方法は、抵抗加熱法以外に電子ビームによる加熱や、高周波誘導による加熱などの方法でもよいが、本発明では比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、極めて多くの物質に適用可能である点から直接電流を流し抵抗加熱する方法や、周りのヒータでるつぼを間接的に抵抗加熱する方法が好ましい。また、蒸発源(38)は分子源エピタキシャル法による分子線源でもよい。
以上の蒸着装置(31)または製造方法によれば、複数の蒸発源(38)を設けることによって蒸発源(38)の蒸気流が重なり合う部分が整流化され、支持体(3)の表面に蒸着する蛍光体の結晶性を均一にすることができる。このとき、多数の蒸発源を設けるほど多くの箇所で蒸気流が整流化されるため、より広範囲において蛍光体の結晶性を均一にすることができる。また、蒸発源(38)を支持体(3)に垂直な中心線を中心とした円の円周上に配置することによって、蒸気流の整流化によって結晶性が均一になるという作用を、支持体(3)の表面において等方的に得ることができる。
支持体ホルダー(35)は、支持体(3)のうち蛍光体層(4)を形成する面が真空容器(32)の底面に対向し、かつ、真空容器(32)の底面と平行となるように支持体(3)を保持する構成となっている。
また、支持体ホルダー(35)には、支持体(3)を加熱する加熱ヒータ(図示せず)を備えることが好ましい。この加熱ヒータで支持体(3)を加熱することによって、支持体(3)の支持体ホルダー(35)に対する密着性の強化や、蛍光体層(4)の膜質調整を行う。また、支持体(3)の表面の吸着物を離脱・除去し、支持体(3)の表面と蛍光体との間に不純物層が発生することを防止する。
また、加熱手段として温媒または熱媒を循環させるための機構(図示せず)を有していてもよい。この手段は蛍光体の蒸着時における支持体(3)の温度を50〜150℃といった比較的低温に保持して蒸着する場合に適している。
また、加熱手段としてハロゲンランプ(図示せず)を有していてもよい。この手段は蛍光体の蒸着時における支持体(3)の温度を150℃以上といった比較的高温に保持して蒸着する場合に適している。
さらに、支持体ホルダー(35)には、支持体(3)を水平方向に回転させる支持体回転機構(36)が設けられている。支持体回転機構(36)は、支持体ホルダー(35)を支持するとともに支持体(3)を回転させる支持体回転軸(37)および真空容器(32)の外部に配置されて支持体回転軸(37)の駆動源となるモータ(図示せず)から構成されている。
蒸着装置(31)には、上記構成の他に、真空容器(32)に真空ポンプ(33)が配設されている。真空ポンプ(33)は、真空容器(32)の内部に存在する気体の排気を行うもので、高真空領域まで排気するために、作動圧力領域の異なる真空ポンプを二種またはそれ以上配置してもよい。真空ポンプ(33)としては、例えば、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、ディフュージョンポンプ、メカニカルブースタ等を用いることができる。
チャンバー内の圧力を調整するために、真空容器(32)内にガスを導入できる機構が設けられている(図示せず)。導入するガスは、一般的には例えばNe、Ar、Kr等の不活性ガスが用いられる。真空容器(32)内の圧力は、真空容器(32)内を真空ポンプ(33)で排気しながら導入するガス量で調整してもよいし、所望の圧力よりも高真空となるまで真空排気行った後に真空排気を停止して、その後所望の圧力となるまでガスを導入することにより調整してもよい。また、真空容器(32)と真空ポンプ(33)の間に圧力制御弁を設ける等によりポンプの排気量を調整して真空容器(32)内の圧力を制御してもよい。
また、蒸発源(38)と支持体(3)との間には、蒸発源(38)から支持体(3)に至る空間を遮断するシャッター(39)が水平方向に開閉自在に設けられており、このシャッター(39)によって、蒸発源(38)において蛍光体の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着の初期段階で蒸発し、支持体(3)に付着するのを防ぐことができるようになっている。
以上詳述した蒸着装置(31)を用いた本発明のシンチレータパネルの製造方法について詳述する。
まず、支持体ホルダー(35)に支持体(3)を取付ける。また、真空容器(32)の底面付近において、支持体(3)に垂直な中心線を中心とした円の円周上に蒸発源(38)を配置する。次に、るつぼやボート等に、蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)と、賦活剤(TlI)を充填し、蒸発源(38)にセットする。この場合、るつぼやボートは複数であっても良い。
充填した蛍光体母材および賦活剤の中の不純物を蒸着前に除去するため、予備加熱を行ってもよい。予備加熱は使用する材料の融点以下であることが望ましい。例えばCsIの場合、予備加熱温度は50〜550℃が好ましく、100〜500℃がより好ましい。TlIの場合、50〜500℃が好ましく、100〜500℃がより好ましい。
蒸着装置(31)内を一旦排気し、Arガスを導入して、独立した柱状結晶形成の観点で0.001〜10Pa、好ましくは0.01〜1Paにした後、支持体(3)を回転させる。回転は装置の大きさにもよるが2〜15rpmが好ましく、4〜10rpmがより好ましい。次いで、蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)のるつぼを加熱して蛍光体を蒸着し、下地層(第一の蛍光体層)を形成する。このとき、支持体(3)温度は5〜60℃が好ましく、15〜50℃がより好ましい。下地層の厚さは、結晶径や蛍光体層(4)の厚さにもよるが、0.1〜50μmであることが好ましい。次に、支持体(3)の加熱を開始し、その温度を150〜250℃に加熱し、残りの蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)と賦活剤(TlI)とのるつぼの蒸発を開始する。このとき、蛍光体母体化合物は、生産性を考慮して、下地層よりも早い蒸着速度で蒸発をすることが好ましい。下地層や蛍光体層(4)の厚さにもよるが、下地層蒸着時よりも5〜100倍の速度で蒸着することが好ましく、10〜50倍で蒸着することがより好ましい。賦活剤の蒸発方法は、賦活剤単体を蒸発させてもよいが、CsIとTlIとを混合した蒸発源(38)を作製し、CsIは蒸発せずTlIのみが蒸発する温度(例えば500℃)に加熱して蒸発させてもよい。
蒸着時に加熱を行っていた支持体(3)は、高温のため、取り出すために冷却を行う必要がある。蛍光体層(4)を80℃まで冷却する工程での平均冷却速度を0.5℃〜10℃/分の範囲内とすることで、支持体(3)にダメージなく冷却することができる。例えば支持体(3)に厚さ50μm以上500μm以下の高分子フィルム等の比較的薄い基板を用いた場合に特に有効である。この冷却工程は、真空度1×10-5Pa〜0.1Paの雰囲気下で行われることが特に好ましい。また、冷却工程時に、蒸着装置(31)の真空容器(32)内にArやHe等不活性ガスを導入する手段を講じてもよい。なお、ここでいう平均冷却速度とは、冷却開始(蒸着終了時)から80℃まで冷却する間の時間と温度を連続的に測定し、この間の1分間あたりの冷却速度を求めたものである。
蒸着終了後、蛍光体層(4)を加熱処理してもよい。また、蒸着法においては必要に応じてO2、H2などのガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
《蒸着後の加熱工程》
蒸着工程で得られた蛍光体層に、常圧下または真空下で、加熱を施す工程である。
真空下で加熱する場合は、蒸着工程で蛍光体層を形成した後、真空容器内の真空度を常圧に戻さずに引き続いて実施してもよいし、別の真空加熱装置に蛍光体を移動させて実施してもよいが、蒸着工程後に同じ真空容器内で真空度を常圧に戻さずに加熱することが好ましい。
蒸着工程後に真空度を常圧に戻さずに加熱する方法における、図2の支持体ホルダー(35)の加熱機構としては、例えば、温媒または熱媒を循環させるための機構(図示せず)や、ハロゲンランプ(図示せず)などが挙げられる。
加熱温度としては、結晶の透明度向上の観点から、好ましくは80〜350℃、より好ましくは100〜300℃である。
《蛍光体の突起補修工程》
上述のようにして製作されたシンチレータパネルには、蛍光体層の形成時に、ゴミ等を起点として蛍光体の蒸着結晶の異常成長による突起が発生する場合がある。突起となった柱状結晶体は以下のようにして補修される。
シンチレータパネルは、支持体の裏面側と蛍光体層の表面側で、2枚の剛性板により挟み込まれ、次いで、剛性板を加圧しながら熱処理が行われる。
加圧の方法としては、錘による加圧、機械的な加圧等、特に制約は無いが、袋状の耐熱性のプラスチックフィルム容器を用いて密閉減圧する方法が好ましい。より詳しくは、支持体裏面側と蛍光体層の表面側で、2枚の剛性板により挟んだ後、袋状のプラスチックフィルム容器内に収容し、この容器を密閉して減圧することで、大気圧による加圧を行うことができる。この方法は、簡便に、かつ剛性板に均一に加圧することができ、また、この容器内の減圧量を調整することで簡単に加圧量を調整することができるので好ましい。
また、加圧量としては、0.001MPa〜10MPaが好ましく、0.01MPa〜1MPaであれば、より好ましい。加圧量を少なくとも0.001MPa以上にすることで突起部を樹脂層側に充分変位させることが出来る。一方、加圧量を少なくとも10MPa以下にすることで、蛍光体へのダメージを抑えることが出来、画質を損ねることが無い。
熱処理温度については、好ましくは50℃〜200℃、さらに好ましくは90℃〜160℃である。加熱温度を少なくとも50℃以上にすることで突起部が樹脂層側に変位させやすくすることが出来る。また、加熱温度を少なくとも200℃以下にすることで、輝度低下等の画質への影響を抑えることが出来る。
《蛍光体保護層の形成工程》
図3は、保護層の形成に好適なCVD蒸着装置の模式図であり、シンチレータプレート(10)の蛍光体層(4)表面に、ポリパラキシリレン膜からなる保護層を形成する一例を示す。
CVD蒸着装置(41)は、ポリパラキシリレンの原料であるジパラキシリレンを挿入し気化させる気化室(42)、気化したジパラキシリレンを加熱昇温してラジカル化する熱分解室(43)、ラジカル化された状態のジパラキシリレンをシンチレータが形成された支持体(3)の上の蛍光体層(4)に蒸着させる蒸着室(44)、防臭、冷却を行う冷却室(45)および真空ポンプを有する排気系(46)を備えて構成されている。
ここで、蒸着室(44)は、熱分解室(43)においてラジカル化されたポリパラキシリレンを導入する導入口(44a)および余分なポリパラキシリレンを排出する排出口(44b)を有するとともに、ポリパラキシリレン膜の蒸着を行う試料を支持するターンテーブル(蒸着台)(44c)を有する。
まず、蒸着室(44)のターンテーブル(44c)上に、シンチレータプレート(10)の蛍光体層(4)を上向きにして設置する。
次に、気化室(42)において150〜180℃に加熱して気化させ、熱分解室(43)において680〜700℃に加熱昇温してラジカル化したジパラキシリレンを、導入口(44a)から蒸着室(44)に導入して、蛍光体層(4)の保護層(ポリパラキシリレン膜)を1〜20μmの厚さとなるように蒸着する。この場合、蒸着室(44)内は真空度1〜10Paに維持されている。また、ターンテーブル(44c)は、1〜6rpmの速度で回転させている。また、余分なポリパラキシリレンは、排出口(44b)から排出され、防臭、冷却を行う冷却室(45)および真空ポンプを有する排気系(46)に導かれる。
あるいは、剥離剤がコーティングされた剥離シートに、ホットメルト樹脂を塗設後、ホットメルト樹脂面をシンチレータパネルの蛍光体層面に配置し、120℃に加熱したローラーで加圧しながら張り合わせることで保護層を形成することもできる。
平面受光素子面との接着に接着剤を使用する場合は保護層と接着剤層との厚さが合計20μm以下になるように保護層の厚さを調整することが好ましい。
また、基板として樹脂フィルムを使用した場合、保護層の形成は、シンチレータプレートの断裁後に実施することもできる。
《断裁工程》
本発明において、用いる光電素子面の面積より大である面積を有するシンチレータパネルから、用いる光電素子面に応じた面積に対応して断裁を行ってもよい。この場合、蛍光体層を支持体上に形成した後に断裁するため、光検出器個々に対しての、蒸着などの操作は不要である。即ち、蒸着装置で作製可能な最大サイズで蒸着を実施し、必要に応じて、所望されるサイズに断裁すればよく、生産効率、出荷納期でのメリットがある。本発明に関わるシンチレータパネルを断裁する断裁工程に用いられる方法の典型的例について、図を参照しながら説明する。
図4の(a)は、側断面図、(b)は正面断面図であり、保護層6が形成された後にシンチレータプレート10を断裁するブレードダイシングの例である。ダイシング装置51のダイシング台53にシンチレータプレート10は保護層6側を下にして配置される。ブレード52によりシンチレータプレート10は支持体3側より断裁される。支持体3は厚さ1mmのアモルファスカーボンである。 ブレード52は回転軸52aを中心にして回転することでシンチレータプレート10を切断する。ダイシング台53には溝53aが設けられている。またブレードの両側には支持部材55が設けられている。摩擦熱の冷却の為、冷却風がノズル54からブレード52の両側から断裁部に吹き付けられる。冷却風の温度は4℃以下であり、結露防止の為室内の湿度は20%以下になっている。ブレードダイシングは、支持体がカーボン、アルミニウム、ガラスを主成分とする場合に好ましく適用できる。
次にレーザ断裁の例を示す。
図5の、レーザ断裁に用いられる装置の概略斜視図であり、保護層が形成されていないシンチレータプレート10を断裁するレーザ断裁の例を示す。レーザ断裁装置61は、箱型に形成されたパージ室64を備えている。パージ室64は、外部の空間中に浮遊する塵等が内部に侵入しないように、内部がほぼ密閉された空間となっている。なお、パージ室64内は、低湿環境であることが好ましい。また、パージ室64の上面には、レーザ光を透過させる透光窓66が設けられている。また塵等の浮遊物をパージ室64の外に導く排出管65が設けられている。
レーザ断裁装置61の支持台63上にシンチレータプレート10を載置して、支持台63上にシンチレータプレート10を吸着保持する。支持台63上に載置されたシンチレータプレート10は、支持台移動手段(図示しない)によってレーザ発生装置62のレーザ照射部直下に位置付けられる。レーザ発生装置62から出射し、該レーザ光をシンチレータプレート10に対して照射する。
照射条件はYAG−UV(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶:波長266nm)、周波数5000Hzでビーム径20μmのパルスレーザ光、出力300mWである。支持台移動手段(図示しない)によって、シンチレータプレート10を、X方向およびY方向に移動することで断裁する。本発明で使用されるレーザは波長266nm程度の紫外レーザ光が望ましい。波長266nm程度のレーザでは、熱作用により加工対象物を加工すると同時に有機材料でC−H結合やC−C結合等の分子結合を解離させることが可能である。すなわち蛍光体層は熱作用により断裁され、支持体は分子結合が解離するため断裁されることとなる。このため、蛍光体層は熱作用で、支持体は分子結合の解離により切断されるため、切断部の結晶割れをより防止することができる。
支持体が樹脂フイルム、ガラスの場合レーザ断裁は適用でき、樹脂の場合には図5に示したレーザ断裁装置を好ましく適用できる。
《光学補償層の形成工程》
まず、シンチレータプレートの光出力面または光検出器の受光面のいずれかに透明接着剤を塗布する。
透明接着剤が硬化剤を添加する二液混合タイプの場合や、塗布厚さを制御するのにスペーサーを混合させた場合には、混合した際に生じた気泡を除去しなくてはならない。
塗布前に真空脱泡処理を行う必要があり、脱泡時の真空圧は、下記の真空貼りあわせの雰囲気より低い圧力で行う。もし高いと真空貼りあわせの際に接着剤から再び気泡が出てしまうからである。
接着剤の塗布方法としては、例えば、スピンコート、スクリーン印刷、ディスペンサーなどが挙げられる。
塗布に求められる条件とし、次の項目が挙げられる。
(a)10μm以上の厚膜塗布ができること。
(b)室温雰囲気で長時間経過すると硬化する接着剤も扱うため、硬化によって部品が使用できないケースもあるので、消耗部品が安価であること。
(c)場所によって塗布厚さを変える可能性があるため、簡単に塗布量が変更できること。装置自体が安価であること。
スピンコートでは、厚膜塗布をするためには何回もコーティングする必要がある。さらに、場所によって塗布厚さを変えることができない。よって、スピンコート法は、本発明に係るシンチレータプレート等の製造方法において使用される方法としては適さない。
スクリーン印刷は、消耗品となる印刷版が高価であることや、場所によって塗布厚さを変えるには印刷版を二種類用意しなくてはならないので手間を要する。スクリーン印刷法も適さない。
一方、ディスペンサーは、圧力とニードル径によって塗布厚みを大きくすることができ、かつ塗布位置はロボット制御できるので部分的に塗布量を変更するのは簡単である。また、消耗部品はニードルとシリンジになるが比較的安価に手に入れることができる。
ディスペンサーは、ドット状またはライン状にしか塗布できないので膜厚ムラがスピンコートやスクリーン印刷に比べて大きい。
シンチレータを貼り合せた際に大きな気泡ができることが懸念されるが、後記する真空下での貼り合せを行えば気泡は大気開放したときに小さくなるので問題はなくなる。
また、ディスペンサーは、正確な量、塗布形状を実現するにはニードルと塗布基板の間隔が小さいほうがよく、本装置の製造条件では0.3mm以下に設定している。
透明接着剤を塗布するのは、シンチレータプレートおよび光検出器のいずれでもよいが、被塗布材料の反りを考慮すると、本発明では、透明接着剤をディスペンサーでシンチレータパネル上に塗布することが好ましい。
あらかじめ所定の厚さになるように、透明接着剤の量を決めて塗布しているが、透明接着剤が流れやすいように上下からそれぞれシンチレータプレートと光検出器とプレス圧をかける。シンチレータにCsIを用いた場合は、CsIの強度は比較的弱く、耐圧が1kg/cm2程度しかないため、これよりも低い圧力でプレスしなくてはならない。具体的には、100Pa以下がよい。
低圧プレスで貼り合わせるため、透明接着剤は粘度が低いほうがよく、50Pa以下が好ましい。
接着にあたっては、接着剤が固化するまで10〜500g/cm2の圧力で加圧することが好ましい。加圧により接着剤層から気泡が除去される。保護層としてホットメルト樹脂を使用した場合は10〜500g/cm2の圧力で加圧しながら、この状態を維持したまま、外周雰囲気を大気圧1.2×105Paから100Paまで減圧する。
所定の真空圧に達したら、シンチレータプレートを光検出器に近づけて、上下基板を貼り合わせる。その際、ドット状の透明接着剤の間に気泡が発生する場合がある。
上下の基板を貼り合せた後、外周雰囲気を大気圧に戻す。先ほど発生した気泡は大気圧によって縮小していく。
残留した気泡を50μm高さの円柱状の気泡と仮定すると、半径37.8μmの気泡となる。
光電変換素子の画素サイズは100〜160μm程度なので、この大きさの気泡であれば1画素欠陥にもならない。
約15〜18時間かけて大気圧で放置し、完全に気泡が小さくなりきったら、温度をかけて接着剤を硬化させる。硬化温度は、CsIの耐熱温度が100℃であることから90℃近辺で1時間ほどキュアを行う。
ホットメルト樹脂の溶融開始温度より10℃程度高い温度まで加熱し1〜2時間静置後、徐々に冷却する。急冷するとホットメルト樹脂の収縮応力により平面受光素子の画素にダメージかある。好ましくは20℃/hour以下の速度で50℃以下まで冷却する。
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
[実施例1]
《基板に下引層を形成する工程−ドライプロセス−》
宇部興産(株)製のポリイミドフィルム「UPILEX-125S」(厚さ125μm)を基板として図3のCVD装置にセットし、その片面に融点290℃のパリレンC(日本パリレン合同会社製)からなる下引層を形成した。下引層の厚さは3μmであった。以下、基板と下引層とが一体化したものを支持体とする。
なお、パリレンCは、ベンゼン環が−CH2−を介して重合した基本構造を有し、このベンゼン環の水素一個が塩素で置換されたものである。
《蒸着工程》
図2を参照して説明する。
まず、蛍光体母体化合物としてヨウ化セシウム〔CsI〕および賦活剤(TlI)を二つの抵抗加熱るつぼにそれぞれ充填し、これを蒸発源(38)とし、支持体ホルダー(35)の金属製の枠(図示せず)に支持体(3)を設置し、支持体(3)と蒸発源(38)との間隔を400mmとなるよう調整した。
続いて、蒸着装置(1)内を一旦排気し、Arガスを導入して0.05Paに真空度を調整した後、6rpmの速度で、支持体ホルダー(35)とともに支持体(3)を回転させた。このとき、支持体ホルダー(35)の加熱ヒーター(図示せず)により、支持体(3)の温度を30℃とした。
次に、蒸発源(38)の抵抗加熱るつぼを加熱して蛍光体の蒸着を開始した。
支持体の温度を30℃として下地層を10μm形成した。その後に支持体の加熱を開始し、その温度を200℃に加熱したところで蛍光体層の形成を開始する。
蛍光体層の厚さが400μmとなったところ(蛍光体柱状結晶の高さが400μmとなったところ)で蒸着を終了し、基板、下引層および蛍光体層を有するシンチレータプレートが得られた。
《光透過率の測定》
得られたシンチレータプレートの蛍光体柱状結晶の先端側部分の光透過率〔A〕および根元側部分の光透過率〔B〕を、それぞれ以下のようにして測定した。
〈先端側部分の光透過率〔A〕〉
1) 蛍光体層を下引層から剥離する。
2) ダイアモンドナイフやガラスナイフ等を用いて、蛍光体層が半分の厚さになるまで、蛍光体層を根元側から切削する。
3) リング状に白色LEDが配置されたLED光源((株)松電舎製)を、フォトダイオード受光素子(浜松ホトニクス(株)製「S2281」)が該リングの中心にくるようにしてフォトダイオード受光素子から10cmの距離に配置し、厚さ半分となった蛍光体層を透過した光の強度と該蛍光体層を介在せずに測った光の強度との比を光透過率とした。
光透過率=(受光素子前面に該蛍光体層を配置した場合の光量)/(蛍光体層を配置しない場合の光量)
〈根元側部分の光透過率〔B〕〉
上記2)において、切削を先端側から実施すること以外は光透過率〔A〕と同様にして測定した。
《突起補修工程》
支持体面及び蛍光体面にコーニング製ガラス(EAGLE2000もしくはEAGLE
XG)を重ね合せ、0.1MPaの荷重をかけた状態で 100℃、2時間の条件で熱処理を行った。
《断裁工程》
断裁条件をYAG−UV(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶:波長266nm)、周波数5000Hzでビーム径20μmのパルスレーザ光、出力300mWに設定したレーザ断裁装置を用いて、得られたシンチレータを所定サイズに断裁した。
《保護層を形成する工程》
断裁したシンチレータプレートを、図3のCVD装置にセットして、蛍光体層の表面にポリパラキシリレンからなる保護層を形成した。保護層の厚さは3μmであった。
《光学補償層を形成する工程》
シンチレータプレートの蛍光体層の表面に形成された保護層の上にさらに光学補償層を形成した。
光学補償層は、熱硬化型のエポキシ樹脂透明接着をディスペンサー塗布方式で厚さ15μmとなるように保護層上に塗布し、その後加熱して硬化させて形成した。
なお、予め、ガラス製の平面に回路基板と光電変換素子アレイとをこの順に形成した後に、光電変換素子アレイの蛍光体層に対向する最表面の表面平均粗さ〔Ra〕を0.003μmとなるように、光電変換素子アレイ表面にアクリル樹脂を塗布して平坦化層を形成した。光学補償層を形成するエポキシ樹脂の屈折率nは約1.55であり、蛍光体柱状結晶であるCsI:Tlの屈折率nは約1.8であり、平坦化層を形成するアクリル樹脂の屈折率nが約1.5であるから、屈折率に関する上記の条件は満たされている。
《発光輝度の測定》
保護層と光学補償層とをさらに形成したシンチレータプレートの蛍光体層側の面に、10cm×10cmの大きさのCMOSフラットパネル(テレダイン ラドアイコン社製のX線CMOSカメラシステム「Shad−o−Box 4KEV」)をセットして放射線検出パネルとした。
管電圧80kVpのX線を各放射線パネルに内蔵されているシンチレータプレートの基板側の面から照射し、測定カウント値を発光輝度(感度)として、比較例1のシンチレータプレートから得られた放射線検出パネルの発光輝度を100とする相対値で表す。
実施例1の測定結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、真空度を0.05Paから0.1Paに変更した以外は実施例1と同様にしてシンチレータプレートを製造した。
[実施例3]
実施例1において、基板に下引層を形成する工程を以下のように変更した以外は実施例1と同様にしてシンチレータプレートを製造した。
《基板に下引層を形成する工程−ウェットプロセス−》
基板として厚さ125μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製の「UPILEX-125S」)上に、膜厚が1,000Å(=100nm)となるように銀をスパッタした。
ガラス転移点が67℃のバイロン(登録商標)「200(銘柄)」(東洋紡績(株)製)をメチルエチルケトン〔MEK〕に溶解し、乾燥膜厚が3μmとなるように塗布することによって下引層を形成した。
[実施例4]
実施例3において、真空度を0.05Paから0.1Paに変更した以外は実施例3と同様にしてシンチレータプレートを製造した。
[実施例5]
実施例3において、真空度を0.05Paから0.3Paに変更した以外は実施例3と同様にしてシンチレータプレートを製造した。
[実施例6]
実施例5において、蒸着後に蛍光体柱状結晶の根元部分を、蒸着装置内の真空度を維持したままハロゲンランプにより200℃で1時間加熱した以外は実施例3と同様にしてシンチレータプレートを製造した。
[比較例1]
実施例1において、下引層として融点290℃のパリレンCから、融点が420℃のパリレンN(日本パリレン合同会社製)に変更した点および蒸着工程の支持体温度を30℃から80℃に変更した点以外は実施例1と同様にしてシンチレータプレートを製造した。なお、パリレンNは、ベンゼン環が−CH2−を介して重合した構造を有する。
[比較例2]
実施例2において、下引層として融点290℃のパリレンCから、融点が420℃のパリレンN(日本パリレン合同会社製)に変更した点および蒸着工程の支持体温度を30℃から80℃に変更した点以外は実施例2と同様にしてシンチレータプレートを製造した。
[比較例3]
実施例2において、下引層として融点290℃のパリレンCから、融点が420℃のパリレンN(日本パリレン合同会社製)に変更した点、蒸着工程の支持体温度を30℃から80℃に変更した点および真空度を0.1Paから0.3Paに変更した点以外は実施例2と同様にしてシンチレータプレートを製造した。
[比較例4]
実施例1において、下引層を融点290℃のパリレンCから、ガラス転移点が330℃のポリイミド樹脂である「PETI-330」(宇部興産(株)製)に変更した以外は実施例1と同様にしてシンチレータプレートを製造した。
実施例2〜6および比較例1〜4で得られた各シンチレータプレートを、実施例1と同様にして光透過率比および発光輝度を測定した。それらの結果を表1に示す。
Figure 2014062893
1 ・・・基板
2 ・・・下引層
3 ・・・支持体
4 ・・・蛍光体層
4a・・・蛍光体層(4)を積層方向に半分にしたときの蛍光体柱状結晶(5)の先端側部分
4b・・・蛍光体層(4)を積層方向に半分にしたときの蛍光体柱状結晶(5)の根元側部分
5 ・・・蛍光体柱状結晶
t ・・・蛍光体層(4)の厚さ
6 ・・・保護層
10 ・・・シンチレータプレート
11 ・・・光電変換素子アレイ
12 ・・・回路基板
13 ・・・光検出器
20 ・・・放射線検出パネル
31 ・・・蒸着装置
32 ・・・真空容器
33 ・・・真空ポンプ
35 ・・・支持体ホルダー
36 ・・・支持体回転機構
37 ・・・支持体回転軸
38 ・・・蒸発源
39 ・・・シャッター
41 ・・・CVD蒸着装置
42 ・・・気化室
43 ・・・熱分解室
44 ・・・蒸着室
44a・・・導入口
44b・・・排出口
44c・・・ターンテーブル
45 ・・・冷却室
46 ・・・排気系
51 ・・・ダイシング装置
52 ・・・ブレード
52a・・・回転軸
53 ・・・ダイシング台
53a・・・溝
54 ・・・ノズル
55 ・・・支持部材
61 ・・・レーザ断裁装置
62 ・・・レーザ発光装置
63 ・・・支持台
64 ・・・パージ室
65 ・・・排出管
66 ・・・透光窓

Claims (4)

  1. 下引層と蛍光体層とを有するシンチレータプレートであって、
    該蛍光体層が該下引層側を根元とする蛍光体柱状結晶により構成され、
    蛍光体層をその積層方向の厚さが半分となるように分け、それぞれを蛍光体柱状結晶の先端側部分および根元側部分とし、先端側部分の光透過率〔A〕に対する、根元側部分の光透過率〔B〕の比(B/A)が、70%以上99%以下であることを特徴とするシンチレータプレート。
  2. さらに基板を有し、該基板と前記下引層と前記蛍光体層とがこの順に積層されてなる、請求項1に記載のシンチレータプレート。
  3. 請求項1または2に記載のシンチレータプレートと、光検出器とを有することを特徴とする放射線検出パネル。
  4. 上記光検出器上に、前記下引層と前記蛍光体層とがこの順に積層されてなる、請求項3に記載の放射線検出パネル。
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