JP2006098242A - 放射線像変換パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】 長期間の使用または保管においても接着層が充分な接着力を保持し、再生放射線画像の高い画質を維持できる放射線像変換パネルを提供する。
【解決手段】 支持体上に、気相堆積法により形成された蛍光体層と接着層を介して蛍光体層に接着された透明保護膜とが積層されてなる放射線像変換パネルにおいて、該接着層が、40〜100重量%のガラス転移温度が35℃より高い樹脂材料と、60〜0重量%のガラス転移温度が35℃以下の樹脂材料とからなることを特徴とする放射線像変換パネル。
【選択図】 図1
【解決手段】 支持体上に、気相堆積法により形成された蛍光体層と接着層を介して蛍光体層に接着された透明保護膜とが積層されてなる放射線像変換パネルにおいて、該接着層が、40〜100重量%のガラス転移温度が35℃より高い樹脂材料と、60〜0重量%のガラス転移温度が35℃以下の樹脂材料とからなることを特徴とする放射線像変換パネル。
【選択図】 図1
Description
本発明は、蓄積性蛍光体を利用する放射線画像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネルに関するものである。
X線などの放射線が照射されると、放射線エネルギの一部を吸収蓄積し、そののち可視光線や赤外線などの励起光の照射を受けると、蓄積した放射線エネルギーに応じて発光を示す性質を有する蓄積性蛍光体(輝尽発光を示す輝尽性蛍光体等)を利用して、この蓄積性蛍光体を含有するシート状の放射線像変換パネルに、被検体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線を照射して被検体の放射線画像情報を一旦蓄積記録した後、パネルにレーザ光などの励起光を走査して順次発光光として放出させ、そしてこの発光光を光電的に読み取って画像信号を得ることからなる、放射線画像記録再生方法が広く実用に供されている。読み取りを終えたパネルは、残存する放射線エネルギの消去が行われた後、次の撮影のために備えられて繰り返し使用される。
放射線画像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シートともいう)は、基本構造として、支持体とその上に設けられた蛍光体層とからなるものである。蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護層が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
放射線像変換パネルの蛍光体層は従来、蓄積性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるものが一般的であった。
放射線画像記録再生方法(および放射線画像形成方法)は上述したように数々の優れた利点を有する方法であるが、この方法に用いられる放射線像変換パネルにあっても、できる限り高感度であってかつ画質(鮮鋭度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれている。
感度および画質を高めることを目的として、放射線像変換パネルの蛍光体層を気相堆積法により形成する方法が提案されている。気相堆積法には蒸着法やスパッタ法などがあり、例えば蒸着法は、蛍光体またはその原料からなる蒸発源を抵抗加熱器や電子線照射により加熱して蒸発源を蒸発、金属シートなどの基板表面にその蒸発物を堆積させることにより、蛍光体の柱状結晶からなる蛍光体層を形成するものである。気相堆積法により形成された蛍光体層は蛍光体のみからなり、蛍光体の柱状結晶と柱状結晶の間には空隙が存在する。このため、励起光の進入効率や発光光の取出し効率を上げることができるので高感度であり、また励起光の平面方向への散乱を防ぐことができるので高鮮鋭度の画像を得ることができるとされている。
特許文献1には、気相堆積法により形成された蛍光体層(厚さ方向に多数のクラックが形成されている蛍光体層)上に保護層を設ける方法として、膜形成材料の溶液を蛍光体層の表面に塗布し、乾燥させる方法が記載されている。そして、特許文献1には、該膜形成材料をクラック内に多量侵入させないことが有利であることが記載されている。
特許文献2には、蛍光体粉末と結合剤とからなる蛍光体層を対象にして、その表面に接着層を介して保護膜を配設することの記載がある。この接着層に用いる接着剤としては、ポリエステル系接着剤が例示されているが、その具体的な種類や物性については詳しい説明がない。
特開2001−324600号公報
特公昭63−25320号公報
本出願人は、輝尽性蛍光体層上に接着層を介して、防湿層と厚みが1〜10μmの透明薄膜フィルムとからなる透明防湿フィルムを設けた放射線像変換パネルについて、既に特許出願している(特願2003−414265号)。この特許出願の実施例では、接着層の材料として、従来より一般的に使用されているポリエステル系樹脂(バイロン300、東洋紡(株)製)を用いている。しかしながら、本発明者が更に研究を重ねた結果、気相堆積法により形成された柱状結晶構造を有する蛍光体層上に接着層を介して保護フィルム等の保護膜を設ける際に、接着層材料として上記のバイロン300(ガラス転移温度:6℃)のようなガラス転移温度の低い樹脂材料を使用すると、パネルの長期間にわたる使用及び/又は保管の間にこれら樹脂材料が環境温度などの影響を受けて軟化し、毛細管現象を起こして徐々に蛍光体層の柱状結晶間の空隙に浸透し、遂には接着層が殆ど消失して接着力が低下することが判明した。従って、保護層の部分的な剥離(いわゆる「浮き」)が生じて、放射線画像上に画像ムラが現れるなど実用上不具合が発生する。
従って、本発明は、長期間の使用及び/又は保管において接着層が充分な接着力を保持して、放射線画像の高い画質を維持できる放射線像変換パネルを提供することにある。
本発明者は、上記の問題点について検討した結果、接着層材料として、ガラス転移温度が35℃(放射線像変換パネルの通常の上限保管温度である)より高い接着材料を、従来の接着材料に一定の割合で混合して、あるいは単独で使用することによって、長期間にわたる使用及び/又は保管であっても接着膜がその機能を充分に維持できること、そして保護膜の浮きや画像ムラが生じないことを見い出し、本発明に到達したものである。
本発明は、支持体上に、気相堆積法により形成された蛍光体層と接着層を介して該蛍光体層に接着された透明保護膜とが積層されてなる放射線像変換パネルにおいて、該接着層が、40乃至100重量%のガラス転移温度が35℃より高い樹脂材料と、60乃至0重量%のガラス転移温度が35℃以下の樹脂材料とからなることを特徴とする放射線像変換パネルにある。
本発明の放射線像変換パネルの接着層は、使用及び/又は保管が長期間に及んでも軟化して毛細管現象を生じることが殆どなく、充分な接着力を保持することができる。よって、保護膜の浮きが発生することがなく、またそれによる画像ムラが生じることもない。従って、医療用放射線画像診断などに長期間にわたって有利に使用することができる。
本発明の放射線像変換パネルにおいて、接着層は、40乃至100重量%のガラス転移温度が45℃より高い樹脂材料と、60乃至0重量%のガラス転移温度が25℃以下の樹脂材料とからなることが好ましい。
接着層の層厚は0.1乃至10μmの範囲にあることが好ましい。また、透明保護膜の膜厚は1乃至10μmの範囲にあることが好ましい。
保護膜の少なくとも片面に、無機材料からなり、透湿度が1g/m2・日以下である防湿層が設けられていることが好ましい。
保護膜または防湿層の片面に励起光反射防止層を有することが好ましい。特に、防湿層が励起光反射防止層を兼ねることが好ましい。
放射線像変換パネルは、順に支持体、蛍光体層、接着層、防湿層および透明保護膜から構成されることが好ましい。
以下に、本発明の放射線像変換パネルについて、添付図面を参照しながら詳細に述べる。
図1は、本発明の放射線像変換パネルの構成の一例を概略的に示す断面図である。図1において、放射線像変換パネルは順に、支持体1、蓄積性蛍光体層2、接着層3、防湿層4、および透明保護膜5から構成される。
本発明において蓄積性蛍光体層2は、蒸着法等の気相堆積法により形成され、柱状結晶構造の蓄積性蛍光体からなる。
本発明において接着層3は、40乃至100重量%のガラス転移温度が35℃より高い樹脂材料と、60乃至0重量%のガラス転移温度が35℃以下の樹脂材料とからなる。すなわち、接着層は、35℃より高いガラス転移温度の樹脂材料と35℃以下のガラス転移温度の樹脂材料との混合物で構成されていてもよいし、あるいは35℃より高いガラス転移温度の樹脂材料単独から構成されていてもよい。ここで、35℃は、放射線像変換パネルの通常の保管温度の上限を意味している。好ましくは接着層は、40乃至100重量%のガラス転移温度が45℃より高い樹脂材料と、60乃至0重量%のガラス転移温度が25℃以下の樹脂材料とからなる。ここで、45℃は、放射線像変換パネルが装填または内蔵される放射線画像読取装置の通常の設置環境温度での装置内温度の上限を意味する。また、好ましくは接着層は、35℃(好ましくは45℃)より高いガラス転移温度の樹脂材料を60乃至100重量%含有する。
接着層3の樹脂材料としては例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリアクリル系樹脂、軟質アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、およびゴム系樹脂を挙げることができるが、上記のガラス転移温度条件を満たす限り、その他公知の各種の接着剤を使用することができる。これらの樹脂材料は単独でも混合物でも用いることができる。
接着層3の層厚は、接着力および画像の鮮鋭度の点から、一般には0.1乃至10μmの範囲にあり、好ましくは0.1乃至3μmの範囲にあり、そして特に好ましくは0.3乃至2μmの範囲にある。
透明保護膜5は、好ましくは透明な有機高分子フィルムからなる。保護膜の膜厚は、鮮鋭度の点から、好ましくは1乃至10μmの範囲にあり、特に好ましくは2乃至7μmの範囲にある。
透明保護膜5の片面(接着層3と透明保護膜5の間)に設けられる防湿層4は、蓄積性蛍光体層2の吸湿による劣化を防ぐためにあり、一般には無機材料からなる。防湿層の透湿度は、一般に1g/m2・日以下であり、好ましくは0.2g/m2・日以下である。また、防湿層の300乃至1000nmの波長範囲における光吸収率は、5%以下であることが好ましい。さらに、防湿層は、後述するように励起光反射防止層を兼ねていることが好ましい。
本発明においては接着層3を上記のような構成とすることにより、放射線像変換パネルを長期間にわたって使用及び/又は保管しても、接着層3の樹脂材料が蓄積性蛍光体層2の柱状結晶構造の空隙(クラック)内に浸透することがなく、充分な接着力を維持することができる。よって、防湿層4および透明保護膜5の浮きが生じず、画像ムラが発生することがなく、長期間にわたって優れた耐久性と高い画質を維持することができる。
なお、本発明の放射線像変換パネルは、図1に示した構成に限定されるものではなく、パネルには後述するように各種の補助層を設けたり、各種の処理を施すことができる。
次に、本発明の放射線像変換パネルを製造する方法について、蛍光体が蓄積性蛍光体であり、抵抗加熱方式による蒸着法を用いる場合を例にとって詳細に述べる。
蒸着膜形成のための基板は、通常は放射線像変換パネルの支持体を兼ねるものであり、従来の放射線像変換パネルの支持体として公知の材料から任意に選ぶことができるが、特に好ましい基板は、石英ガラスシート、サファイアガラスシート;アルミニウム、鉄、スズ、クロムなどからなる金属シート;アラミドなどからなる樹脂シートである。公知の放射線像変換パネルにおいて、パネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収性物質からなる光吸収層などを設けることが知られている。本発明で用いられる基板についても、これらの各種の層を設けることができ、それらの構成は、任意に選択することができる。さらに、蒸着膜の柱状結晶性を高める目的で、基板の蒸着膜が形成される側の表面(基板の表面に下塗層(接着性付与層)、光反射層あるいは光吸収層などの補助層が設けられている場合には、それらの補助層の表面であってもよい)には微小な凹凸が形成されていてもよい。
蓄積性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲の励起光の照射により、300〜500nmの波長範囲に輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましい。
そのうちでも、基本組成式(I):
MIX・aMIIX’2・bMIIIX”3:zA ‥‥(I)
で代表されるアルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は特に好ましい。ただし、MIはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表し、MIIはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属又は二価金属を表し、MIIIはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表し、そしてAはY、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Mg、Cu及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は金属を表す。X、X’およびX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。a、bおよびzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z<1.0の範囲内の数値を表す。
MIX・aMIIX’2・bMIIIX”3:zA ‥‥(I)
で代表されるアルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は特に好ましい。ただし、MIはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表し、MIIはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属又は二価金属を表し、MIIIはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表し、そしてAはY、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Mg、Cu及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は金属を表す。X、X’およびX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。a、bおよびzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z<1.0の範囲内の数値を表す。
上記基本組成式(I)において、zは1×10-4≦z≦0.1の範囲内にあることが好ましい。MIとしては少なくともCsを含んでいることが好ましい。Xとしては少なくともBrを含んでいることが好ましい。AとしてはEu又はBiであることが好ましく、そして特に好ましくはEuである。また、基本組成式(I)には、必要に応じて、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物を添加物として、MIX1モルに対して、0.5モル以下の量で加えてもよい。
また、基本組成式(II):
MIIFX:zLn ‥‥(II)
で代表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体も好ましい。ただし、MIIはBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表す。Xは、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。zは、0<z≦0.2の範囲内の数値を表す。
MIIFX:zLn ‥‥(II)
で代表される希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体も好ましい。ただし、MIIはBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素を表す。Xは、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。zは、0<z≦0.2の範囲内の数値を表す。
上記基本組成式(II)中のMIIとしては、Baが半分以上を占めることが好ましい。Lnとしては、特にEu又はCeであることが好ましい。また、基本組成式(II)では表記上F:X=1:1のように見えるが、これはBaFX型の結晶構造を持つことを示すものであり、最終的な組成物の化学量論的組成を示すものではない。一般に、BaFX結晶においてX-イオンの空格子点であるF+(X-)中心が多く生成された状態が、600〜700nmの光に対する輝尽効率を高める上で好ましい。このとき、FはXよりもやや過剰にあることが多い。
基本組成式(III):
MIIS:A,Sm ‥‥(III)
で代表される希土類付活アルカリ土類金属硫化物系輝尽性蛍光体も好ましい。ただし、MIIはMg、Ca及びSrからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属を表す。Aは、Eu及び/又はCeを表す。
MIIS:A,Sm ‥‥(III)
で代表される希土類付活アルカリ土類金属硫化物系輝尽性蛍光体も好ましい。ただし、MIIはMg、Ca及びSrからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属を表す。Aは、Eu及び/又はCeを表す。
基本組成式(IV):
MIIIOX:Ce ‥‥(IV)
で代表されるセリウム付活三価金属酸化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体も好ましい。ただし、MIIIはPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表す。Xは、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。
MIIIOX:Ce ‥‥(IV)
で代表されるセリウム付活三価金属酸化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体も好ましい。ただし、MIIIはPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表す。Xは、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表す。
ただし、本発明において蛍光体は蓄積性蛍光体に限定されるものではなく、X線などの放射線を吸収して紫外乃至可視領域に(瞬時)発光を示す蛍光体であってもよい。そのような蛍光体の例としては、LnTaO4:(Nb,Gd)系、Ln2SiO5:Ce系、LnOX:Tm系(Lnは希土類元素である)、CsX系(Xはハロゲンである)、Gd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr,Ce、ZnWO4、LuAlO3:Ce、Gd3Ga5O12:Cr,Ce、HfO2等を挙げることができる。
多元蒸着(共蒸着)により蒸着膜を形成する場合には、蒸発源として、上記蓄積性蛍光体の母体成分を含むものと付活剤成分を含むものからなる少なくとも二個の蒸発源を用意する。蛍光体の母体成分は、母体を構成する化合物それ自体であってもよいし、あるいは反応して母体化合物となりうる二以上の原料の混合物であってもよい。また、付活剤成分は、一般には付活剤元素を含む化合物であり、例えば付活剤元素のハロゲン化物や酸化物が用いられる。
付活剤がEuである場合に、付活剤成分のEu化合物におけるEu2+化合物のモル比はできるだけ高いことが好ましい。所望とする輝尽発光(あるいは瞬時発光であっても)はEu2+を付活剤とする蛍光体から発せられるからである。一般に、市販されているEu化合物には酸素混入のためにEu2+とEu3+が混合して含まれていることが多いが、このような場合には、予めEu化合物をBrガス雰囲気中で溶融処理して含有酸素を除去し、そして得られたEuBr2を用いることが望ましい。
上記複数の蒸発源および基板を蒸着装置内に配置し、装置内を排気して0.1〜10Pa程度の中真空度とする。好ましくは0.1〜4Paの真空度にする。更に好ましくは、装置内を排気して1×10-5〜1×10-2Pa程度の高真空度とした後、Arガス、Neガス、N2ガスなどの不活性ガスを導入して上記中真空度にする。これにより、装置内の水分圧や酸素分圧等を下げることができる。排気装置としては、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、ディフュージョンポンプ、メカニカルブースタ等を適宜組み合わせて用いることができる。
次に、抵抗加熱方式により蒸着を行う。抵抗加熱方式は、中程度の真空度で蒸着を行うことができ、柱状結晶性の良好な蒸着膜を容易に得られる利点がある。各抵抗加熱器に電流を流して蒸発源を加熱する。蒸発源である蓄積性蛍光体の母体成分や付活剤成分等は加熱されて蒸発、飛散し、そして反応を生じて蛍光体を形成するとともに基板表面に堆積する。このとき、基板のサイズ等によっても異なるが、一般に各蒸発源と基板との距離は10乃至1000mmの範囲にあり、各蒸発源間の距離は10乃至1000mmの範囲にある。また、基板を加熱してもよいし、あるいは冷却してもよい。基板温度は、一般には20乃至350℃の範囲にあり、好ましくは100乃至300℃の範囲にある。各蒸発源の蒸着速度は、加熱器の抵抗電流などを調整することにより制御することができる。蛍光体の堆積する速度、すなわち蒸着速度は、一般には0.1乃至1000μm/分の範囲にあり、好ましくは1乃至100μm/分の範囲にある。
なお、抵抗加熱装置による加熱を複数回に分けて行って二層以上の蛍光体層を形成することもできる。蒸着終了後に蒸着膜を熱処理(アニール処理)してもよい。熱処理は、一般には100℃乃至300℃の温度で0.5乃至3時間かけて行い、好ましくは150℃乃至250℃の温度で0.5乃至2時間かけて行う。熱処理雰囲気としては、不活性ガス雰囲気、もしくは少量の酸素ガス又は水素ガスを含む不活性ガス雰囲気が用いられる。
上記蛍光体からなる蒸着膜を形成するに先立って、蛍光体母体化合物のみからなる蒸着膜を形成してもよい。この母体化合物の蒸着膜は、一般に柱状結晶構造または球状結晶の凝集体からなり、この上に形成される蛍光体蒸着膜の柱状結晶性をより一層良好にすることができる。なお、蒸着時の基板加熱および/または蒸着後の熱処理によっては、蛍光体蒸着膜中の付活剤など添加物が母体化合物蒸着膜中に拡散するために両者の境界は必ずしも明確ではない。
一元蒸着の場合には、蒸発源として蛍光体自体または蛍光体原料混合物を用いてこれを単一の抵抗加熱装置で加熱する。蒸発源は予め、所望の濃度の付活剤を含有するように調製する。もしくは、蛍光体母体成分と付活剤成分との蒸気圧差を考慮して、蒸発源に蛍光体母体成分を補給しながら蒸着を行うことも可能である。
このようにして、蛍光体の柱状結晶がほぼ厚み方向に成長した蛍光体層が得られる。蛍光体層は、結合剤を含有せず、蛍光体のみからなり、蛍光体の柱状結晶と柱状結晶の間には空隙が存在する。蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蒸着法の実施手段や条件などによっても異なるが、通常は50μm〜1mmの範囲にあり、好ましくは200μm〜700μmの範囲にある。
本発明に用いられる気相堆積法は、上記の抵抗加熱方式による蒸着法に限定されるものではなく、電子線照射方式による蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着(CVD)法など公知の各種の方法を利用することができる。
蛍光体層の表面には、放射線像変換パネルの搬送および取扱い上の便宜や特性変化の回避のために、透明保護膜(透明保護フィルム)が接着剤を介して積層される。保護膜は、励起光の入射や発光光の出射に殆ど影響を与えないように、透明であることが望ましく、また外部から与えられる物理的衝撃や化学的影響から放射線像変換パネルを充分に保護することができるように、化学的に安定で防湿性が高く、かつ高い物理的強度を持つことが望ましい。
透明保護膜としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、アラミド樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、環状オレフィン系及びノルボルネン系プラスチック、およびフルオレン骨格を有するアモルファスのポリエステル系プラスチック等からなる有機高分子フィルム、並びに透明なガラス板を用いることができる。好ましくは、保護膜上への他の層の形成や保護膜の蛍光体層への付設の容易さの点から、ポリエチレンテレフタレート等の有機高分子フィルムである。高分子フィルム中には酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナ等の光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。透明保護膜の膜厚は一般に、高分子物質からなる場合には約1乃至10μmの範囲にあり、好ましくは約2乃至7μmの範囲にあり、またガラスからなる場合には100乃至1000μmの範囲にある。
透明保護膜の片面又は両面には、蛍光体層が吸湿により劣化するのを防ぐために、防湿層が設けられることが好ましい。特に、透明保護膜の接着層側の片面に防湿層が設けられることが好ましい(図1参照)。それにより、防湿層は透明保護膜と接着層の間に位置するので損傷を受けにくく、長期にわたって高い防湿性を維持することができる。防湿層は、透湿度が一般に1g/m2・日以下であり、好ましくは0.2g/m2・日以下である。そして防湿層は、300乃至1000nmの波長範囲における光吸収率が5%以下であって、ガスバリア性を有する無機材料からなる透明な層であることが望ましい。そのような無機材料としては、金属酸化物、金属窒化物および金属酸化窒化物が挙げられ、具体的には、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化窒化ケイ素、および酸化窒化アルミニウム等を挙げることができる。これらのうちでは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素および酸化窒化ケイ素が特に好ましく、高い光透過率と高いガスバリア性を有していて、クラックやマクロポアが少ない緻密な薄膜を形成することができる。防湿層は単層または複数層で構成することができ、複数層の場合に各層は互いに同じ材料であっても異なる材料であってもよい。
防湿層は、真空で薄膜を形成することが可能な真空堆積法、例えば蒸着法、スパッタ法、PVD(物理的蒸着)法、CVD法などのドライプロセスによって、あるいはゾルゲル法などの塗布法によって透明保護膜上に設けることができる。特に複層構成の防湿層を設ける場合に、真空堆積法と塗布法を交互に組み合わせて形成することによって、塗布層の形成では下層の真空堆積層の微細なクラックを埋めることができ、真空堆積層の形成では下層の塗布層表面に微小な凹凸が無いのでより緻密に形成することができるから、全体として防湿性能をより一層向上させることができる。塗布法の場合には、結合剤としてポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂等を用いる。あるいは、塗布層は単に樹脂のみからなる層であってもよく、公知の各種の樹脂を用いることができる。防湿層の各層の層厚は、形成方法などによっても異なるが、一般に20nm乃至2000nmの範囲にある。
また、透明保護膜(または防湿層)の片面には、励起光の干渉によって画像ムラが発生するのを防ぐために、励起光反射防止層が設けられることが好ましい。励起光反射防止層の付設によって、放射線像変換パネルの励起光の波長、入射角0〜60度における表面反射率が一般には5%以下、好ましくは3%以下となるようにする。励起光反射防止層の層厚は、一般に50乃至400nmの範囲にあり、好ましくは50乃至200nmの範囲にある。
励起光反射防止層は、無機酸化物、酸化窒化物、窒化物、フッ化物などの無機材料を用いて蒸着法、スパッタ法等により形成することができる。励起光反射防止層は、単層であっても複数層であってもよく、単層の場合には低屈折率層を設けることが好ましく、複層の場合には低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層することが好ましい。低屈折率層の材料の例としては、フッ化マグネシウムおよび酸化ケイ素が挙げられ、高屈折率層の材料の例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アルミニウムを挙げることができる。なお、上記防湿層が励起光反射防止層を兼ねることも可能である。
あるいは、励起光反射防止層は、有機微粒子および/または無機微粒子と微小な空隙とを分散含有する樹脂から構成されていてもよい。有機微粒子は、平均粒径が一般に1μm以下であり、その例としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)微粒子、メラミン樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、テフロン(登録商標)樹脂微粒子を挙げることができる。無機微粒子は、平均粒径が一般に0.5乃至200nmの範囲にあり、その例としては、金属の酸化物、窒化物、硫化物およびハロゲン化物を挙げることができる。
上記の透明保護膜(および防湿層および/または励起光反射防止層)は、例えば次のようにして接着層を介して蛍光体層に付設される。まず、再剥離フィルム用基材上に粘着層が設けられてなる剥離可能な再剥離フィルムを用意する。再剥離フィルム用基材は、厚みが一般に10乃至500μmの範囲にあり、オレフィン系プラスチック、ビニル系プラスチック、ポリエステル系プラスチックなどの樹脂材料からなり、また粘着層はアクリル系やシリコン系粘着剤からなる。
再剥離フィルムの粘着層表面に、透明保護膜(透明保護シート)を貼り合わせる。防湿層および/または励起光反射防止層を設ける場合には、この透明保護膜の表面にこれらの層を形成する。透明保護膜の両面または反対側の面に設ける場合には、透明保護膜上にこれらの層を形成した後その上に別の再剥離フィルムを貼り合わせ、次いで最初の再剥離フィルムを剥ぎ取って反転させる。次に、この透明保護膜(または防湿層、または励起光反射防止層)の表面に、接着層形成用の樹脂材料を含む塗布液を塗布し、乾燥して接着層を形成する。
接着層形成用の樹脂材料としては、前述した材料が用いられる。ただし、樹脂材料中に、ガラス転移温度が35℃(好ましくは45℃)より高い樹脂材料が40乃至100重量%、好ましくは60乃至100重量%含まれるようにする。塗布液調製のための溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;そして、それらの混合物を挙げることができる。塗布操作は、通常の塗布手段、例えばドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータなどを用いる方法により行うことができる。
透明保護膜等および接着層が積層された再剥離フィルムを基板上の蛍光体層に、接着層が蛍光体層に接するように重ね合わせ、熱圧縮処理により接着する。次いで、再剥離フィルムを剥ぎ取ることにより、蛍光体層上に接着層を介して透明保護膜等を設ける。あるいは、蛍光体層上にこれらの層を接着する前に再剥離フィルムを剥ぎ取ってもよい。再剥離フィルムを使用することにより、防湿層等を透明保護膜上に設けるときに、その透明保護膜にシワがよることがなく、また防湿層等を均一に設けることができる。
なお、透明保護膜がガラス板からなる場合には、再剥離フィルムを使用しないで、直接にガラス板の上に接着層等を形成して蛍光体層に付設することも可能である。
上述のようにして本発明の放射線像変換パネルが得られるが、本発明の放射線像変換パネルの構成は、更に公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。例えば、画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を励起光および/または発光光を吸収するような着色剤によって着色してもよい。着色を行う場合に、他の特性を損なわずに比較的容易に着色できることから、接着層を着色することが好ましい。
[実施例1]
(1)蒸発源
蒸発源として、純度4N以上の臭化セシウム(CsBr)粉末、および純度3N以上の臭化ユーロピウム(EuBr2)粉末を用意した。各粉末中の微量元素をICP−MS法(誘導結合高周波プラズマ分光分析−質量分析法)により分析した結果、CsBr中のCs以外のアルカリ金属(Li、Na、K、Rb)は各々10ppm以下であり、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)など他の元素は2ppm以下であった。また、EuBr2中のEu以外の希土類元素は各々20ppm以下であり、他の元素は10ppm以下であった。これらの粉末は、吸湿性が高いので露点−20℃以下の乾燥雰囲気を保ったデシケータ内で保管し、使用直前に取り出すようにした。
(1)蒸発源
蒸発源として、純度4N以上の臭化セシウム(CsBr)粉末、および純度3N以上の臭化ユーロピウム(EuBr2)粉末を用意した。各粉末中の微量元素をICP−MS法(誘導結合高周波プラズマ分光分析−質量分析法)により分析した結果、CsBr中のCs以外のアルカリ金属(Li、Na、K、Rb)は各々10ppm以下であり、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)など他の元素は2ppm以下であった。また、EuBr2中のEu以外の希土類元素は各々20ppm以下であり、他の元素は10ppm以下であった。これらの粉末は、吸湿性が高いので露点−20℃以下の乾燥雰囲気を保ったデシケータ内で保管し、使用直前に取り出すようにした。
(2)蛍光体層の形成
支持体として、順にアルカリ洗浄、純水洗浄、およびイソプロピルアルコール洗浄を施したガラス基板(厚み:8mm)を用意し、蒸着装置内の基板ホルダーに設置した。上記CsBr蒸発源およびEuBr2蒸発源を装置内の抵抗加熱用坩堝容器に充填した。基板と各蒸発源との距離は15cmとした。次に、装置内を排気して1×10-3Paの真空度とした。このとき、真空排気装置としてロータリポンプ、メカニカルブースタおよびターボ分子ポンプの組合せを用いた。装置内にArガス(純度5N)を導入して1.0Paの真空度(Arガス圧)とした。基板の蒸着とは反対側に位置したシーズヒータで、基板を100℃に加熱した。蒸発源を抵抗加熱器で加熱溶融して、基板の表面にCsBr:Eu輝尽性蛍光体を堆積させた。堆積は10μm/分の速度で行った。蒸着終了後、装置内を大気圧に戻し、装置から基板を取り出した。基板上には、蛍光体の柱状結晶がほぼ垂直方向に密に林立した構造の蓄積性蛍光体層(層厚:600μm)が形成されていた。
支持体として、順にアルカリ洗浄、純水洗浄、およびイソプロピルアルコール洗浄を施したガラス基板(厚み:8mm)を用意し、蒸着装置内の基板ホルダーに設置した。上記CsBr蒸発源およびEuBr2蒸発源を装置内の抵抗加熱用坩堝容器に充填した。基板と各蒸発源との距離は15cmとした。次に、装置内を排気して1×10-3Paの真空度とした。このとき、真空排気装置としてロータリポンプ、メカニカルブースタおよびターボ分子ポンプの組合せを用いた。装置内にArガス(純度5N)を導入して1.0Paの真空度(Arガス圧)とした。基板の蒸着とは反対側に位置したシーズヒータで、基板を100℃に加熱した。蒸発源を抵抗加熱器で加熱溶融して、基板の表面にCsBr:Eu輝尽性蛍光体を堆積させた。堆積は10μm/分の速度で行った。蒸着終了後、装置内を大気圧に戻し、装置から基板を取り出した。基板上には、蛍光体の柱状結晶がほぼ垂直方向に密に林立した構造の蓄積性蛍光体層(層厚:600μm)が形成されていた。
(3)透明保護膜および防湿層
耐熱性の再剥離フィルム(厚み:約51μm、CT50、パナック(株)製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(透明保護膜、厚み:6μm、ルミラー、東レ(株)製)を貼り合わせた。次いで、この貼合せフィルムの保護層表面に順に、スパッタ法によりSiO2層(層厚:100nm)、ゾルゲル法によりSiO2/ポリビニルアルコール(PVA)ハイブリッド層(SiO2:PVA=1:1(重量比)、層厚:600nm)、そしてスパッタ法によりSiO2層(層厚:100nm)を形成して、三層構成の防湿層を設けた。
耐熱性の再剥離フィルム(厚み:約51μm、CT50、パナック(株)製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(透明保護膜、厚み:6μm、ルミラー、東レ(株)製)を貼り合わせた。次いで、この貼合せフィルムの保護層表面に順に、スパッタ法によりSiO2層(層厚:100nm)、ゾルゲル法によりSiO2/ポリビニルアルコール(PVA)ハイブリッド層(SiO2:PVA=1:1(重量比)、層厚:600nm)、そしてスパッタ法によりSiO2層(層厚:100nm)を形成して、三層構成の防湿層を設けた。
(4)接着層による付設
ガラス転移温度が67℃のポリエステル系樹脂(バイロン200、東洋紡(株)製)をメチルエチルケトンに溶解して、粘度1〜100mPa・sの接着層用塗布液を調製した。この塗布液を上記貼合せフィルムの防湿層表面に塗布乾燥して、接着層(層厚:1.5μm)を形成した。次に、この貼合せフィルムを、接着層が蛍光体層に接するように基板上の蛍光体層に重ね合わせた後、これを熱圧着した。それにより、貼合せフィルムは接着層を介して蛍光体層に完全に融着した。次いで、再剥離フィルムのみを剥ぎ取った。
ガラス転移温度が67℃のポリエステル系樹脂(バイロン200、東洋紡(株)製)をメチルエチルケトンに溶解して、粘度1〜100mPa・sの接着層用塗布液を調製した。この塗布液を上記貼合せフィルムの防湿層表面に塗布乾燥して、接着層(層厚:1.5μm)を形成した。次に、この貼合せフィルムを、接着層が蛍光体層に接するように基板上の蛍光体層に重ね合わせた後、これを熱圧着した。それにより、貼合せフィルムは接着層を介して蛍光体層に完全に融着した。次いで、再剥離フィルムのみを剥ぎ取った。
このようにして、支持体、蛍光体層、接着層、防湿層および透明保護膜からなる放射線像変換パネルを製造した(図1参照)。なお、防湿層は、透湿度が0.06g/m2・日であり、保護膜の防湿層設置面の反射率の励起光波長(650nm)における表面反射率は3%であって、防湿層が励起光反射防止層を兼ねていた。
[実施例2〜5]
実施例1の(4)接着層による付設において、ガラス転移温度67℃のポリエステル系樹脂に加えて、ガラス転移温度6℃のポリエステル系樹脂(バイロン300、東洋紡(株)製)を、下記表1に示すような割合で使用したこと以外は実施例1と同様にして、各種の放射線像変換パネルを製造した。
実施例1の(4)接着層による付設において、ガラス転移温度67℃のポリエステル系樹脂に加えて、ガラス転移温度6℃のポリエステル系樹脂(バイロン300、東洋紡(株)製)を、下記表1に示すような割合で使用したこと以外は実施例1と同様にして、各種の放射線像変換パネルを製造した。
[比較例1]
実施例1の(4)接着層による付設において、ガラス転移温度67℃のポリエステル系樹脂の代わりに、ガラス転移温度6℃のポリエステル系樹脂(バイロン300)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
実施例1の(4)接着層による付設において、ガラス転移温度67℃のポリエステル系樹脂の代わりに、ガラス転移温度6℃のポリエステル系樹脂(バイロン300)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
[比較例2]
実施例1の(4)接着層による付設において、ガラス転移温度67℃のポリエステル系樹脂に加えて、ガラス転移温度6℃のポリエステル系樹脂(バイロン300)を下記表1に示すような割合で使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
実施例1の(4)接着層による付設において、ガラス転移温度67℃のポリエステル系樹脂に加えて、ガラス転移温度6℃のポリエステル系樹脂(バイロン300)を下記表1に示すような割合で使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
[放射線像変換パネルの性能評価]
得られた各放射線像変換パネルについて、次のようにして接着力試験を行って接着層を評価した。製造後まもなく、放射線像変換パネルの保護層および防湿層に1cm幅で切り目を入れ、この部分の接着力を引張試験機を用いて180度ピール、引張速度1cm/分にて測定し、接着層の接着力とした。また、変換パネルを50℃で90日間放置した後、同様にして接着層の接着力を求め、良/不良の判定を行った。得られた結果をまとめて表1に示す。
得られた各放射線像変換パネルについて、次のようにして接着力試験を行って接着層を評価した。製造後まもなく、放射線像変換パネルの保護層および防湿層に1cm幅で切り目を入れ、この部分の接着力を引張試験機を用いて180度ピール、引張速度1cm/分にて測定し、接着層の接着力とした。また、変換パネルを50℃で90日間放置した後、同様にして接着層の接着力を求め、良/不良の判定を行った。得られた結果をまとめて表1に示す。
表 1
─────────────────────────────────────
実施例 バイロン200/300 接着力(N/cm) 判定
混合比(重量%) 製造時 50℃×90日経時後
─────────────────────────────────────
実施例1 100/0 0.3 0.3 良
実施例2 80/20 0.5 0.5 良
実施例3 70/30 0.6 0.6 良
実施例4 60/40 0.7 0.4 良
実施例5 40/60 0.9 0.2 良
─────────────────────────────────────
比較例1 0/100 1.5 <0.1 不良
比較例2 20/80 1.2 <0.1 不良
─────────────────────────────────────
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実施例 バイロン200/300 接着力(N/cm) 判定
混合比(重量%) 製造時 50℃×90日経時後
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実施例1 100/0 0.3 0.3 良
実施例2 80/20 0.5 0.5 良
実施例3 70/30 0.6 0.6 良
実施例4 60/40 0.7 0.4 良
実施例5 40/60 0.9 0.2 良
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比較例1 0/100 1.5 <0.1 不良
比較例2 20/80 1.2 <0.1 不良
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表1に示した結果から明らかなように、接着層にガラス転移温度67℃のポリエステル系樹脂(バイロン200)を40〜100重量%含む本発明の放射線像変換パネル(実施例1〜5)は、従来のガラス転移温度6℃のポリエステル系樹脂(バイロン300)だけしか含まない比較のための放射線像変換パネル(比較例1)に比べて、50℃で90日経過した後であっても接着力が非常に高く、充分に高い接着力を維持し続けた。また、バイロン100を20重量%しか含まない放射線像変換パネル(比較例2)では、50℃で90日経時後に接着力が著しく低下した。
1 支持体
2 蓄積性蛍光体層
3 接着層
4 防湿層
5 透明保護膜
2 蓄積性蛍光体層
3 接着層
4 防湿層
5 透明保護膜
Claims (6)
- 支持体上に、気相堆積法により形成された蛍光体層と接着層を介して該蛍光体層に接着された透明保護膜とが積層されてなる放射線像変換パネルにおいて、該接着層が、40乃至100重量%のガラス転移温度が35℃より高い樹脂材料と、60乃至0重量%のガラス転移温度が35℃以下の樹脂材料とからなることを特徴とする放射線像変換パネル。
- 接着層が、40乃至100重量%のガラス転移温度が45℃より高い樹脂材料と、60乃至0重量%のガラス転移温度が25℃以下の樹脂材料とからなる請求項1に記載の放射線像変換パネル。
- 接着層の層厚が0.1乃至10μmの範囲にある請求項1または2に記載の放射線像変換パネル。
- 透明保護膜の一方の表面に励起光反射防止層を有する請求項1に記載の放射線像変換パネル。
- 透明保護膜の少なくとも一方の表面に、透湿度が1g/m2・日以下である無機材料からなる防湿層が設けられている請求項1に記載の放射線像変換パネル。
- 防湿層の少なくとも一方の表面に励起光反射防止層が備えられてなる請求項5に記載の放射線像変換パネル。
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