以下、本発明とその構成要素等について詳細な説明をする。
<上記手段1について>
本発明は、放射線透過性の基板と、該基板上に設けられた反射層と、該反射層上に設けられた保護層と、該保護層上に設けられたシンチレータ層と、該シンチレータ層を覆う耐湿保護層と、を備えたシンチレータパネルにおいて、該保護層が、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することを特徴とする。
本発明においては、特に保護層がガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することにより、保存性に優れたシンチレータプレートが提供できる。
(保護層)
本発明のシンチレータパネルは、基板上に設けられた反射層と、反射層上に設けられた保護層を有し、当該保護層にガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することが必要である。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂が含まれることでヤング率が高くかつ柔軟性もある塗膜が形成され、厳しい条件でパネルを取り扱ったり、高湿下で長期間の保存を行ってもクラック等の発生がなく安定したパネル性能を得ることができる。
十分な保存特性が得られ、かつ光の散乱が抑えられる点から、前記保護層の厚みは0.2〜5.0μmであるのが好ましく、0.5〜4.0μmがより好ましく、0.7〜3.5μmであるのが特に好ましい。
前記有機樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。
なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース、ポリイミド、ポリパラキシリレンを使用することが好ましい。
本発明に係るガラス転移点の温度は、JIS C 6481の(2)DSC方により求めた値であり、示差走査熱量計を用い(DSC法)、20℃/分で昇温させる条件にて測定して得られたガラス転移温度をいう。
即ち、試験片を室温から20℃/分の割合で昇温させ、示差走査熱量計にて発熱量を測定し、吸熱曲線(または発熱曲線)を作成し、吸熱曲線(または発熱曲線)に2本の延長線を引き、延長線間の1/2直線と吸熱曲線の交点からガラス転移温度(Tg)を求める。
保護層に少なくとも1組含有される、2種の有機樹脂はガラス転移温度が5℃以上異なることが必要であるが、ガラス転移温度の差は好ましくは5℃〜80℃、より好ましくは20℃〜80℃、特に好ましくは30℃〜70℃である。
特にガラス転移温度が50〜100℃(より好ましくは60〜90℃)である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂(より好ましくは−10℃〜35℃である樹脂)を含有することが好ましい。
これらの樹脂を用いる場合、ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂の保護層に対する含有量としては、30質量%〜95質量%が好ましく、特に50質量%〜85質量%が好ましい。
また、ガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の保護層に対する含有量としては、5質量%〜70質量%が好ましく、特に15質量%〜50質量%が好ましい。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂の保護層に対する含有量としては(2種の合計で)、80質量%〜100質量%が好ましく、特に90質量%〜100質量%が好ましい。
ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の使用比率(質量%)は30:70〜90:10であるのが好ましく、50:50〜80:20であるのがより好ましい。
また、保護層は、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を1組含有することが好ましく、この場合には、下記の保護層に含まれる添加剤を除いた全てがこの1組の有機樹脂である。
通常、蒸着によるシンチレータを形成するにあたっては、基板温度は150℃〜250℃で実施されるが、保護層にガラス転移温度が−20℃〜45℃である有機樹脂を含有しておくことで、保護層が接着層としても有効に機能するようになる。
保護層作製に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
本発明に係る保護層は、光吸収層であることが好ましく、極大吸収波長は560〜650nmであることが好ましい。当該保護層は、極大吸収波長が560〜650nmの範囲にあるようにするために顔料及び染料の少なくとも一方を含有することが好ましい。
また、当該保護層は上記有機樹脂の他に、分散剤等を含有することが好ましい。560〜650nmの間に極大吸収波長を有する着色剤としては、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。
着色剤としては、560〜650nmの波長範囲に吸収をもつものが好ましく、着色剤としては、紫〜青の有機系もしくは無機系の着色剤が好ましく用いられる。
紫〜青の有機系着色剤の例としては、紫色:ジオキサジン、青色:フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーなどであり具体的には、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト社製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学(株)製)、スミアクリルブルーF−GSL(住友化学(株)製)、D&CブルーNo.1(ナショナル・アニリン社製)、スピリットブルー(保土谷化学(株)製)、オイルブルーNo.603(オリエント(株)製)、キトンブルーA(チバ・ガイギー社製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土谷化学(株)製)、レイクブルーA、F、H(協和産業(株)製)、ローダリンブルー6GX(協和産業(株)製)、ブリモシアニン6GX(稲畑産業(株)製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学(株)製)、シアニンブルーBNRS(東洋インキ(株)製)、ライオノルブルーSL(東洋インキ(株)製)が挙げられる。
紫〜青〜青緑の無機系着色剤の例としては、群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−CoO−NiO系顔料が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
着色剤として、好ましいものは金属フタロシアニン系顔料である。
金属フタロシアニン系顔料としては、具体的には、銅フタロシアニンが挙げられる。しかし、極大吸収波長が570〜650nmの範囲内にある限り、他の金属含有フタロシアニン顔料、例えば亜鉛、コバルト、鉄、ニッケル、及び他のそのような金属に基づくものも使用できる。
適当なフタロシアニン系顔料は未置換でも、(例えば1つまたはそれ以上のアルキル、アルコキシ、ハロゲン例えば塩素、または他のフタロシアニン顔料に典型的な置換基で)置換されていてもよい。粗フタロシアニンは、技術的に公知のいくつかの方法のいずれかで製造できるが、好ましくは無水フタル酸、フタロニトリルまたはそれらの誘導体の、金属ドナー、窒素ドナー(例えば尿素またはフタロニトリル自体)と、好ましくは有機溶媒中随時触媒の存在下に反応させることによって製造できる。
例えばW.ハーブスト(Herbst)及びK.ハンガー(Hunger)、「工業有機顔料」[VCH出版、ニューヨーク、1993年]、418〜427ページ、H.ゾリンガー(Zollinger)、「色剤化学」(VCH出版、1973年)101〜104ページ、及びN.M.ピゲロー(Pigelow)及びM.A.パーキンス(Perkins)、H.A.ラブス(Lubs)編「合成染料及び顔料の化学」[ロバート(Robert)E.クリーガー(Krieger)出版、1955年]、584〜587ページにおける「フタロシアニン顔料」、更に米国特許第4158572号、第4257951号、及び第5175282号、並びに英国特許第1502884号を参照。
顔料は、上記有機樹脂中に分散されて用いられることが好ましい。分散剤は、用いる有機樹脂と顔料とに合わせて種々のものを用いることができる。
分散剤としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。
顔料を有機樹脂中へ分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載がある。
本発明に係る保護層は、溶剤に溶解した樹脂を塗布、乾燥して形成することが好ましい。
(基板)
本発明に係る基板は、放射線透過性であり、シンチレータ層を担持可能な板状体であり、各種のガラス、高分子材料、金属等を用いることができる。
例えば、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、又、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、炭素繊維強化樹脂シート等の高分子フィルム(プラスチックフィルム)、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート或いは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートなどを用いることができる。
特に、ポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルム等が、ヨウ化セシウムを原材料として気相法にて柱状シンチレータを形成する場合に、好適である。
特に基板が厚さ50〜500μmの可とう性を有する高分子フィルムであることが好ましい。ここで、「可とう性を有する基板」とは、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mm2である基板をいい、かかる基板としてポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが好ましい。
なお、「弾性率」とは、引張試験機を用い、JIS−C2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これがヤング率と呼ばれる値であり、本発明では、かかるヤング率を弾性率と定義する。
本発明に用いられる基板は、上記のように120℃での弾性率(E120)が1000N/mm2〜6000N/mm2であることが好ましい。より好ましくは1200N/mm2〜5000N/mm2である。
具体的には、ポリエチレンナフタレート(E120=4100N/mm2)、ポリエチレンテレフタレート(E120=1500N/mm2)、ポリブチレンナフタレート(E120=1600N/mm2)、ポリカーボネート(E120=1700N/mm2)、シンジオタクチックポリスチレン(E120=2200N/mm2)、ポリエーテルイミド(E120=1900N/mm2)、ポリアリレート(E120=1700N/mm2)、ポリスルホン(E120=1800N/mm2)、ポリエーテルスルホン(E120=1700N/mm2)等からなる高分子フィルムが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく積層あるいは混合して用いてもよい。中でも、特に好ましい高分子フィルムとしては、上述のように、ポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが好ましい。
(反射層)
本発明に係る反射層は、シンチレータ層のシンチレータから発した光を反射して、光の取り出し効率を高めるためのものである。当該反射層は、Al、Ag、Cr、Cu、Ni、Ti、Mg、Rh、Pt及びAuからなる元素群の中から選ばれるいずれかの元素を含む材料により形成されることが好ましい。特に、上記の元素からなる金属薄膜、例えば、Ag膜、Al膜などを用いることが好ましい。また、このような金属薄膜を2層以上形成するようにしても良い。金属薄膜を2層以上とする場合は、下層をCrを含む層とすることが基板との接着性を向上させる点から好ましい。また、金属薄膜上にSiO2、TiO2等の金属酸化物からなる層をこの順に設けてさらに反射率を向上させても良い。
反射層は、上記のようにシンチレータ層からの光を反射すると同時に放射線透過性である。本発明に係る反射層は、放射線透過性であり、上記のように所定の光(シンチレータから発した光)を反射する金属薄膜であることが好ましい態様である。
なお、反射層の厚さは、0.01〜0.3μmであることが、発光光取り出し効率の観点から好ましい。
本発明においては、基板と保護層の間に中間層を有してもよい。中間層としては、樹脂を含有する層であることが好まし。樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース、ポリイミド、ポリパラキシリレンを使用することが好ましい。
中間層の厚みは1.0μm〜30μmであるのが好ましく、2.0μm〜25μmであるのがより好ましく、5.0μm〜20μmであるのが特に好ましい。
(シンチレータ層)
シンチレータ層(「蛍光体層」ともいう。)は、放射線の照射により、蛍光を発するシンチレータから成る層である。
即ち、シンチレータとは、X線等の入射された放射線のエネルギーを吸収して、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を発光する蛍光体をいう。
シンチレータ層を形成する材料としては、種々の公知の蛍光体材料を使用することができるが、X線から可視光に対する変更率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成出来るため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、シンチレータ層(蛍光体層)の厚さを厚くすることが可能であることから、ヨウ化セシウム(CsI)が好ましい。
但し、CsIのみでは発光効率が低いために、各種の賦活剤が添加される。例えば、特公昭54−35060号の如く、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものが挙げられる。また、例えば特開2001−59899号公報に開示されているようなCsIを蒸着で、インジウム(In)、タリウム(Tl)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)などの賦活物質を含有するCsIが好ましい。
また、タリウムを含有するCsIのシンチレータ層を形成するための、原材料としては、1種類以上のタリウム化合物を含む添加剤とヨウ化セシウムとが、好ましく用いられる。タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)は400nmから750nmまでの広い発光波長をもつことから好ましい。
1種類以上のタリウム化合物を含有する添加剤のタリウム化合物としては、種々のタリウム化合物(+Iと+IIIの酸化数の化合物)を使用することができる。
好ましいタリウム化合物は、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)、又はフッ化タリウム(TlF,TlF3)等である。
また、タリウム化合物の融点は、発光効率の面から、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。なお、融点とは、常温常圧下における融点である。
また、タリウム化合物の分子量は206〜300の範囲内にあることが好ましい。
シンチレータ層において、当該添加剤の含有量は目的性能等に応じて、最適量にすることが望ましいが、ヨウ化セシウムの含有量に対して、0.001mol%〜50mol%、更に0.1〜10.0mol%であることが好ましい。
なお、シンチレータ層の厚さは、100〜800μmであることが好ましく、120〜700μmであることが、輝度と鮮鋭性の特性をバランスよく得られる点からより好ましい。
(耐湿性保護層)
本発明に係る耐湿性保護層は、シンチレータ層の保護を主眼とするものである。すなわち、ヨウ化セシウム(CsI)などの蛍光体は、吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを主眼とする。
本発明において、耐湿保護層はシンチレータ層を覆うが、シンチレータ層を覆うとは、シンチレータ層の、保護層と接する部分を除いた部分を覆うことである。即ち、シンチレータ層は、保護層と接する部分を除いて、耐湿保護層で覆われている。
耐湿性保護層の厚さは、シンチレータ(蛍光体)層の保護性、鮮鋭性、防湿性、作業性等を考慮し、12μm以上、60μm以下が好ましく、更には20μm以上、40μm以下が好ましい。
耐湿性保護層としては、有機樹脂を主成分として含むことが好ましい。有機樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(酢酸セルロース、ニトロセルロース等)、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリパラキシリレン、セルロース誘導体、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリイミドを使用することが好ましい。
耐湿性保護層は上記樹脂などを含む塗布液を塗布し、乾燥して設層されることが好ましく、塗布に用いる溶剤としては、前記した保護層で使用したのと同様な溶剤を使用することができる。
本発明に係る耐湿性保護層は、光吸収層であることが好ましく、極大吸収波長は560〜650nmであることが好ましい。当該保護層は、極大吸収波長が560〜650nmの範囲にあるようにするために顔料及び染料の少なくとも一方を含有することが好ましい。
また、耐湿性保護層は上記有機樹脂の他に、分散剤等を含有することが好ましい。
本発明において好ましく使用できる560〜650nmの間に極大吸収波長を有する着色剤としては、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。着色剤としては、560〜650nmの波長範囲に吸収をもつものが好ましく、着色剤としては、紫〜青の有機系もしくは無機系の着色剤が好ましく用いられる。
紫〜青の有機系着色剤の例としては、前記した保護層に使用するものと同様な着色剤を使用することができる。
着色剤として最も好ましいものは金属フタロシアニン系顔料である。
金属フタロシアニン系顔料としては、具体的には、銅フタロシアニンが挙げられ、前記した保護層中で使用する着色剤と同様な着色剤を使用することができる。
顔料は、上記有機樹脂中に分散されて用いられることが好ましい。分散剤は、用いる有機樹脂と顔料とに合わせて種々のものを用いることができる。
分散剤としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。
顔料を有機樹脂中へ分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載がある。
本発明に係る耐湿性保護層は、上記のように塗布、乾燥して、形成することが好ましいが、CVD法等の気相堆積法を用いて形成することもできる。
また、ヘイズ率が、鮮鋭性、放射線画像ムラ、製造安定性、作業性等を考慮し、3%以上40%以下が好ましく、更には3%以上、10%以下が好ましい。ヘイズ率は、日本電色工業株式会社NDH 5000Wにより測定した値を示す。必要とするヘイズ率は、市販されている高分子フィルムから適宜選択し、容易に入手することが可能である。
耐湿性保護層の光透過率は、光電変換効率、シンチレータ発光波長等を考慮し、550nmで70%以上あることが好ましいが、99%以上の光透過率のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に99%〜70%が好ましい。
耐湿性保護層の透湿度は、シンチレータ層の保護性、潮解性等を考慮し50g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には10g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましいが、0.01g/m2・day(40℃・90%RH)以下の透湿度のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に、0.01g/m2・day(40℃・90%RH)以上、50g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には0.1g/m2・day(40℃・90%RH)以上、10g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましい。
<上記手段2について>
本発明は、放射線透過性の基板と、該基板上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた反射層と、該反射層上に設けられた保護層と、該保護層上に設けられたシンチレータ層と、該シンチレータ層を覆う耐湿保護層と、を備えたシンチレータパネルにおいて、該中間層が、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することを特徴とする。
本発明においては、特に中間層がガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することにより、保存性に優れたシンチレータプレートが提供できる。
<中間層>
本発明に係る中間層は、基板と反射層の間に設けられた層であり、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することが必要である。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種以上の有機樹脂が含まれることでヤング率が高くかつ柔軟性もある塗膜が形成され、厳しい条件でパネルを取り扱ったり、高湿下で長期間の保存を行ってもクラック等の発生がなく安定したパネル性能を得ることができる。
十分な保存特性が得られ、かつ光の散乱が抑えられる点から、前記中間層の厚みは1.0μm〜30μmであるのが好ましく、2.0μm〜25μmであるのがより好ましく、5.0μm〜20μmであるのが特に好ましい。
前記有機樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース、ポリイミド、ポリパラキシリレンを使用することが好ましい。
中間層に少なくとも1組含有される、2種の有機樹脂は、各々ガラス転移温度が5℃以上異なることが必要であるが、ガラス転移温度の差は好ましくは5℃〜80℃、より好ましくは20℃〜80℃、特に好ましくは30℃〜70℃である。
特にガラス転移温度が50〜100℃(より好ましくは60〜90℃)である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂(より好ましくは−10℃〜35℃である樹脂)を含有することが好ましい。
ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂の中間層に対する含有量としては、30質量%〜95質量%が好ましく、特に50質量%〜85質量%が好ましい。
また、ガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の中間層に対する含有量としては、5質量%〜70質量%が好ましく、特に15質量%〜50質量%が好ましい。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂の中間層に対する含有量としては(2種の合計で)、80質量%〜100質量%が好ましく、特に90質量%〜100質量%が好ましい。
ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の使用比率(質量%)は30:70〜90:10であるのが好ましく、50:50〜80:20であるのがより好ましい。
また、中間層は、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を1組含有することが好ましく、この場合には、下記の中間層に含まれる添加剤を除いた全てがこの1組であり。
通常、蒸着によるシンチレータを形成するにあたっては、基板温度は150℃〜250℃で実施されるが、中間層にガラス転移温度が−20℃〜45℃である有機樹脂を含有しておくことで、保護層が接着層としても有効に機能するようになる。
中間層作製に用いる溶剤としては、保護層作製に用いる溶剤と同様な溶剤を用いることができる。
本発明に係る中間層は、溶剤に溶解した樹脂を塗布、乾燥して形成することが好ましい態様である。
本発明に係る基板、反射層、シンチレータ、耐湿保護層としては、上記の手段1に用いられるものと同様のものを用いることができる。
<上記手段3について>
本発明は、放射線透過性の基板と、該基板上に設けられた反射層と、該反射層上に設けられた保護層と、該保護層上に設けられたシンチレータ層と、該シンチレータ層を覆う耐湿保護層と、を備えたシンチレータパネルにおいて、該耐湿保護層は、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有し、膜厚が12〜60μmであることを特徴とする。
本発明では、特に耐湿保護層がガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有し、耐湿保護層の膜厚を12〜60μmとすることにより、保存性に優れたシンチレータプレートが提供できる。
(耐湿性保護層)
本発明に係る耐湿性保護層は、シンチレータ層の保護を主眼とするものである。すなわち、ヨウ化セシウム(CsI)などの蛍光体は、吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを主眼とする。
本発明において、耐湿保護層はシンチレータ層を覆うが、シンチレータ層を覆うとは、シンチレータ層の、保護層と接する部分を除いた部分を覆うことである。即ち、シンチレータ層は、保護層と接する部分を除いて、耐湿保護層で覆われている。
本発明に係る耐湿保護層は、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有し、耐湿保護層の膜厚が12〜60μmであることが必要である。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種以上の有機樹脂が含まれることでヤング率が高くかつ柔軟性もある塗膜が形成され、厳しい条件でパネルの取り扱ったり、高湿下で長期間の保存を行ってもクラック等の発生がなく安定したパネル性能を得ることができる。
前記有機樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(酢酸セルロース、ニトロセルロース等)、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリパラキシリレン、セルロース誘導体、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリイミドを使用することが好ましい。
耐湿保護層に少なくとも1組含有される、2種の有機樹脂はガラス転移温度が5℃以上異なることが必要であるが、ガラス転移温度の差は好ましくは5℃〜80℃、より好ましくは20℃〜80℃、特に好ましくは30℃〜70℃である。
特にガラス転移温度が140〜350℃(より好ましくは150〜300℃)である樹脂とガラス転移温度が60℃〜135℃である樹脂(より好ましくは80℃〜120℃である樹脂)を含有することが好ましい。
これらの樹脂を用いる場合、ガラス転移温度が140〜350℃である樹脂の耐湿保護層に対する含有量としては、30質量%〜95質量%が好ましく、特に50質量%〜85質量%が好ましい。
また、ガラス転移温度が60℃〜135℃である樹脂の耐湿保護層に対する含有量としては、5質量%〜70質量%が好ましく、特に15質量%〜50質量%が好ましい。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂の保護層に対する含有量としては(2種の合計で)、80質量%〜100質量%が好ましく、特に90質量%〜100質量%が好ましい。
ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の使用比率(質量%)は30:70〜90:10であるのが好ましく、50:50〜80:20であるのがより好ましい。
また、耐湿保護層は、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を1組含有することが好ましく、この場合には、下記の耐湿保護層に含まれる添加剤を除いた全てがこの1組であり。
耐湿性保護層は、耐湿性保護層用の塗布液を塗布し、乾燥して形成することが好ましく、用いる溶剤としては、前記した保護層で使用したのと同様な溶剤を使用することができる。
本発明に係る耐湿性保護層は、光吸収層であることが好ましく、極大吸収波長は560〜650nmであることが好ましい。当該保護層は、極大吸収波長が560〜650nmの範囲にあるようにするために顔料及び染料の少なくとも一方を含有することが好ましい。
また、当該保護層は上記有機樹脂の他に、分散剤等を含有することが好ましい。
本発明において好ましく使用できる560〜650nmの間に極大吸収波長を有する着色剤としては、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。着色剤としては、560〜650nmの波長範囲に吸収をもつものが好ましく、着色剤としては、紫〜青の有機系もしくは無機系の着色剤が好ましく用いられる。
紫〜青の有機系着色剤の例としては、前記した保護層に使用するものと同様な着色剤を使用することができる。
着色剤として最も好ましいものは金属フタロシアニン系顔料である。
金属フタロシアニン系顔料としては、具体的には、銅フタロシアニンが挙げられ、前記した保護層中で使用する着色剤と同様な着色剤を使用することができる。
顔料は、上記有機樹脂中に分散されて用いられることが好ましい。分散剤は、用いる有機樹脂と顔料とに合わせて種々のものを用いることができる。
分散剤としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。
顔料を有機樹脂中へ分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載がある。
本発明に係る耐湿性保護層は、上記のように塗布、乾燥して形成することが好ましいが、CVD法等の気相堆積法を用いて形成することもできる。
また、ヘイズ率が、鮮鋭性、放射線画像ムラ、製造安定性、作業性等を考慮し、3%以上40%以下が好ましく、更には3%以上、10%以下が好ましい。ヘイズ率は、日本電色工業株式会社NDH 5000Wにより測定した値を示す。必要とするヘイズ率は、市販されている高分子フィルムから適宜選択し、容易に入手することが可能である。
耐湿性保護層の光透過率は、光電変換効率、シンチレータ発光波長等を考慮し、550nmで70%以上あることが好ましいが、99%以上の光透過率のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に99%〜70%が好ましい。
耐湿性保護層の透湿度は、シンチレータ層の保護性、潮解性等を考慮し50g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には10g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましいが、0.01g/m2・day(40℃・90%RH)以下の透湿度のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に、0.01g/m2・day(40℃・90%RH)以上、50g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には0.1g/m2・day(40℃・90%RH)以上、10g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましい。
本発明に係る、耐湿保護層の膜厚は、保存性の面から、12〜60μmであることが必要であるが、特に20〜60μmであることが好ましい。
本発明においては、基板と保護層の間に中間層を有してもよい。中間層に用いられる樹脂としては、上記の手段1に記載のものと同様のものを用いることができる。
本発明に係る、基板、反射層、シンチレータ層は、上記の手段1に用いられるものと同様のものを、保護層は、上記の手段2に記載のものと同様のものを用いることができる。
<上記手段4について>
本発明は、出力基板上に形成された光電変換素子と、該光電変換素子上に設けられた有機樹脂層と、該有機樹脂層上に設けられたシンチレータ層と、を備えた放射線画像検出器(「放射線検出装置」ともいう。)において、該有機樹脂層が、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することを特徴とする。
本発明においては、特に有機樹脂層がガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することにより、保存性に優れた放射線画像検出器が提供できる。
<有機樹脂層>
本発明に係る有機樹脂層は、出力基板とシンチレータ層の間に設けられた層であり、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することが必要である。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種以上の有機樹脂が含まれることでヤング率が高くかつ柔軟性もある塗膜が形成され、厳しい条件で放射線画像検出器を取り扱ったり、高湿下で長期間の保存を行ってもクラック等の発生がなく安定した性能を得ることができる。
十分な保存特性が得られ、かつ光の散乱が抑えられる点から、前記有機樹脂層の厚みは1.0μm〜50μmであるのが好ましく、2.0μm〜40μmであるのがより好ましく、5.0μm〜30μmであるのが特に好ましい。
前記有機樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース、ポリイミド、ポリパラキシリレンを使用することが好ましい。
有機樹脂層に少なくとも1組含有される、2種の有機樹脂は、各々ガラス転移温度が5℃以上異なることが必要であるが、ガラス転移温度の差は好ましくは5℃〜80℃、より好ましくは20℃〜80℃、特に好ましくは30℃〜70℃である。
特にガラス転移温度が50〜100℃(より好ましくは60〜90℃)である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂(より好ましくは−10℃〜35℃である樹脂)を含有することが好ましい。
ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂の有機樹脂層に対する含有量としては、30質量%〜95質量%が好ましく、特に50質量%〜85質量%が好ましい。
また、ガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の有機樹脂層に対する含有量としては、5質量%〜70質量%が好ましく、特に15質量%〜50質量%が好ましい。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂の有機樹脂層に対する含有量としては(2種の合計で)、80質量%〜100質量%が好ましく、特に90質量%〜100質量%が好ましい。
ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の使用比率(質量%)は30:70〜90:10であるのが好ましく、50:50〜80:20であるのがより好ましい。
また、有機樹脂層は、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を1組含有することが好ましく、この場合には、下記の有機樹脂層に含まれる添加剤を除いた全てがこの1組である。
通常、蒸着によるシンチレータを形成するにあたっては、出力基板温度は150℃〜250℃で実施されるが、有機樹脂層にガラス転移温度が−20℃〜45℃である有機樹脂を含有しておくことで、保護層が接着層としても有効に機能するようになる。
有機樹脂層作製に用いる溶剤としては、保護層作製に用いる溶剤と同様な溶剤を用いることができる。
本発明に係る有機樹脂層は、溶剤に溶解した樹脂を塗布、乾燥して形成することが好ましい態様である。
本発明に係る出力基板、シンチレータ層としては、上記の手段1に用いられる基板、シンチレータ層ものと同様のものを用いることができる。
<上記手段5について>
本発明は、出力基板上に形成された光電変換素子と、該光電変換素子上に設けられたシンチレータ層と、該シンチレータ層上に設けられた反射層と、を備えた放射線画像検出器において、該反射層が、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することを特徴とする本発明においては、特に反射層がガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することにより、保存性に優れた放射線画像検出器が提供できる。
<反射層>
本発明に係る反射層は、シンチレータ層上に設けられた層であり、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有することが必要である。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種以上の有機樹脂が含まれることでヤング率が高くかつ柔軟性もある塗膜が形成され、厳しい条件で放射線画像検出器を取り扱ったり、高湿下で長期間の保存を行ってもクラック等の発生がなく安定した性能を得ることができる。
十分な保存特性が得られ、かつ光の散乱が抑えられる点から、前記反射層の厚みは50〜800μmであるのが好ましく、50〜500μmであるのがより好ましく、70〜300μmであるのが特に好ましい。
前記有機樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース、ポリイミド、ポリパラキシリレンを使用することが好ましい。
反射層に少なくとも1組含有される、2種の有機樹脂は、各々ガラス転移温度が5℃以上異なることが必要であるが、ガラス転移温度の差は好ましくは5℃〜80℃、より好ましくは20℃〜80℃、特に好ましくは30℃〜70℃である。
特にガラス転移温度が50〜100℃(より好ましくは60〜90℃)である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂(より好ましくは−10℃〜35℃である樹脂)を含有することが好ましい。
ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂の反射層に対する含有量としては、30質量%〜95質量%が好ましく、特に50質量%〜85質量%が好ましい。
また、ガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の反射層に対する含有量としては、5質量%〜70質量%が好ましく、特に15質量%〜50質量%が好ましい。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂の反射層に対する含有量としては(2種の合計で)、80質量%〜100質量%が好ましく、特に90質量%〜100質量%が好ましい。
ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の使用比率(質量%)は30:70〜90:10であるのが好ましく、50:50〜80:20であるのがより好ましい。
また、反射層は、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を1組含有することが好ましく、この場合には、下記の反射層に含まれる添加剤を除いた全てがこの1組である。
反射層に用いるフィラーとしては白色顔料が好ましい。白色顔料としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられ、中でも酸化チタン、炭酸カルシウムが好ましい。
反射層作製に用いる溶剤としては、保護層作製に用いる溶剤と同様な溶剤を用いることができる。
本発明に係る反射層は、溶剤に溶解した樹脂を塗布、乾燥して形成することが好ましい態様である。
本発明に係る出力基板、シンチレータ層としては、上記の手段1に用いられるものと同様のものを用いることができる。
<上記手段6について>
本発明は、出力基板上に形成された光電変換素子と、該光電変換素子上に設けられたシンチレータ層と、該シンチレータ層上に設けられた耐湿保護層と、を備えた放射線画像検出器において、該耐湿保護層が、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有し、膜厚が12〜60μmであることを特徴とする。
本発明では、特に耐湿保護層がガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有し、耐湿保護層の膜厚を12〜60μmとすることにより、保存性に優れたシンチレータプレートが提供できる。
(耐湿性保護層)
本発明に係る耐湿性保護層は、シンチレータ層の保護を主眼とするものである。すなわち、ヨウ化セシウム(CsI)などの蛍光体は、吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを主眼とする。
本発明において、耐湿保護層はシンチレータ層を覆うが、シンチレータ層を覆うとは、シンチレータ層の、有機樹脂層と接する部分を除いた部分を覆うことである。即ち、シンチレータ層は、有機樹脂層と接する部分を除いて、耐湿保護層で覆われている。但しシンチレータ層の断面は耐湿保護層で覆われていても、覆われていなくても良い。
本発明に係る耐湿保護層は、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を少なくとも1組含有し、耐湿保護層の膜厚が12〜60μmであることが必要である。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種以上の有機樹脂が含まれることでヤング率が高くかつ柔軟性もある塗膜が形成され、厳しい条件で放射線画像検出器を取り扱ったり、高湿下で長期間の保存を行ってもクラック等の発生がなく安定した性能を得ることができる。
前記有機樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(酢酸セルロース、ニトロセルロース等)、ポリイミド、ポリアミド、ポリパラキシリレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリパラキシリレン、セルロース誘導体、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリイミドを使用することが好ましい。
耐湿保護層に少なくとも1組含有される、2種の有機樹脂はガラス転移温度が5℃以上異なることが必要であるが、ガラス転移温度の差は好ましくは5℃〜80℃、より好ましくは20℃〜80℃、特に好ましくは30℃〜70℃である。
特にガラス転移温度が140〜350℃(より好ましくは150〜300℃)である樹脂とガラス転移温度が60℃〜135℃である樹脂(より好ましくは80℃〜120℃である樹脂)を含有することが好ましい。
これらの樹脂を用いる場合、ガラス転移温度が140〜350℃である樹脂の耐湿保護層に対する含有量としては、30質量%〜95質量%が好ましく、特に50質量%〜85質量%が好ましい。
また、ガラス転移温度が60℃〜135℃である樹脂の耐湿保護層に対する含有量としては、5質量%〜70質量%が好ましく、特に15質量%〜50質量%が好ましい。
ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂の保護層に対する含有量としては(2種の合計で)、80質量%〜100質量%が好ましく、特に90質量%〜100質量%が好ましい。
ガラス転移温度が50〜100℃である樹脂とガラス転移温度が−20℃〜45℃である樹脂の使用比率(質量%)は30:70〜90:10であるのが好ましく、50:50〜80:20であるのがより好ましい。
また、耐湿保護層は、ガラス転移温度が5℃以上異なる2種の有機樹脂を1組含有することが好ましく、この場合には、下記の耐湿保護層に含まれる添加剤を除いた全てがこの1組である。
耐湿性保護層は、耐湿性保護層用の塗布液を塗布し、乾燥して形成することが好ましく、用いる溶剤としては、前記した保護層で使用したのと同様な溶剤を使用することができる。
本発明に係る耐湿性保護層は、光吸収層であることが好ましく、極大吸収波長は560〜650nmであることが好ましい。当該保護層は、極大吸収波長が560〜650nmの範囲にあるようにするために顔料及び染料の少なくとも一方を含有することが好ましい。
また、当該保護層は上記有機樹脂の他に、分散剤等を含有することが好ましい。
本発明において好ましく使用できる560〜650nmの間に極大吸収波長を有する着色剤としては、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。着色剤としては、560〜650nmの波長範囲に吸収をもつものが好ましく、着色剤としては、紫〜青の有機系もしくは無機系の着色剤が好ましく用いられる。
紫〜青の有機系着色剤の例としては、前記した保護層に使用するものと同様な着色剤を使用することができる。
着色剤として最も好ましいものは金属フタロシアニン系顔料である。
金属フタロシアニン系顔料としては、具体的には、銅フタロシアニンが挙げられ、前記した保護層中で使用する着色剤と同様な着色剤を使用することができる。
顔料は、上記有機樹脂中に分散されて用いられることが好ましい。分散剤は、用いる有機樹脂と顔料とに合わせて種々のものを用いることができる。
分散剤としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。
顔料を有機樹脂中へ分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載がある。
本発明に係る耐湿性保護層は、上記のように塗布、乾燥して形成することが好ましいが、CVD法等の気相堆積法を用いて形成することもできる。
また、ヘイズ率が、鮮鋭性、放射線画像ムラ、製造安定性、作業性等を考慮し、3%以上40%以下が好ましく、更には3%以上、10%以下が好ましい。ヘイズ率は、日本電色工業株式会社NDH 5000Wにより測定した値を示す。必要とするヘイズ率は、市販されている高分子フィルムから適宜選択し、容易に入手することが可能である。
耐湿性保護層の光透過率は、光電変換効率、シンチレータ発光波長等を考慮し、550nmで70%以上あることが好ましいが、99%以上の光透過率のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に99%〜70%が好ましい。
耐湿性保護層の透湿度は、シンチレータ層の保護性、潮解性等を考慮し50g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には10g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましいが、0.01g/m2・day(40℃・90%RH)以下の透湿度のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に、0.01g/m2・day(40℃・90%RH)以上、50g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には0.1g/m2・day(40℃・90%RH)以上、10g/m2・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましい。
本発明に係る、耐湿保護層の膜厚は、保存性の面から、12〜60μmであることが必要であるが、特に20〜60μmであることが好ましい。
本発明においては、出力基板とシンチレータ層の間に有機樹脂層を有してもよい。有機樹脂層に用いられる樹脂としては、上記の手段4に記載のものと同様のものを用いることができる。
本発明に係る、出力基板、シンチレータ層は、上記の手段1に用いられる基板、シンチレータ層のものと同様のものを用いることができる。
(シンチレータパネル及び放射線画像検出器の作製方法)
本発明のシンチレータパネル及び放射線画像検出器を作製する、作製方法の典型的例について、図を参照しながら説明する。なお、図1は、放射線用シンチレータパネル10の概略構成を示す断面図である。図2は、放射線用シンチレータパネル10の拡大断面図である。図3は、蒸着装置61の概略構成を示す図面である。
〈蒸着装置〉
図3に示す通り、蒸着装置61は箱状の真空容器62を有しており、真空容器62の内部には真空蒸着用のボート63が配されている。ボート63は蒸着源の被充填部材であり、当該ボート63には電極が接続されている。当該電極を通じてボート63に電流が流れると、ボート63がジュール熱で発熱するようになっている。シンチレータパネル10の製造時においては、ヨウ化セシウムと賦活剤化合物とを含む混合物がボート63に充填され、そのボート63に電流が流れることで、上記混合物を加熱・蒸発させることができるようになっている。
なお、被充填部材として、ヒータを巻回したアルミナ製のるつぼを適用してもよいし、高融点金属製のヒータを適用してもよい。
真空容器62の内部であってボート63の直上には、予め中間層、反射層、保護層が設けられた(図示せず)基板1を保持するホルダ64が配されている。ホルダ64にはヒータ(図示略)が配されており、当該ヒータを作動させることでホルダ64に装着した基板1を加熱することができるようになっている。
ホルダ64には当該ホルダ64を回転させる回転機構65が配されている。回転機構65は、ホルダ64に接続された回転軸65aとその駆動源となるモータ(図示略)から構成されたもので、当該モータを駆動させると、回転軸65aが回転してホルダ64をボート63に対向させた状態で回転させることができるようになっている。
蒸着装置61では、上記構成の他に、真空容器62に真空ポンプ66が配されている。真空ポンプ66は、真空容器62の内部の排気と真空容器62の内部へのガスの導入とを行うもので、当該真空ポンプ66を作動させることにより、真空容器62の内部を一定圧力のガス雰囲気下に維持することができるようになっている。
〈シンチレータパネル〉
次に、本発明の請求の範囲1〜3に係るシンチレータパネル10の作製方法について説明する。
シンチレータパネル10を作製する作製方法においては、上記で説明した蒸発装置61を好適に用いることができる。蒸発装置61を用いてシンチレータパネル10を作製する方法について説明する。
《中間層の形成》
基板1の一方の表面に中間層2を押し出し塗布により形成することができる。なお中間層の表面性やヤング率を制御するために必要に応じてマット剤やフィラーを添加しても良い。
《反射層の形成》
基板1の中間層2が設けられた面に、反射層3としての金属薄膜(Al膜、Ag膜等)をスパッタ法により形成する。また高分子フィルム上にAl膜をスパッタ蒸着したフィルムは、各種の品種が市場で流通しており、これらを使用することも可能である。
《保護層の形成》
保護層4は、上記の有機溶剤に着色剤及び有機樹脂を分散・溶解した組成物を塗布、乾燥して形成する。
《シンチレータ層の形成》
上記のように、中間層2、反射層3、保護層4を設けた基板1をホルダ64に取り付けるとともに、ボート63にヨウ化セシウムとヨウ化タリウムとを含む粉末状の混合物を充填する(準備工程)。この場合、ボート63と基板1との間隔を100〜1500mmに設定し、その設定値の範囲内のままで後述の蒸着工程の処理をおこなうのが好ましい。
準備工程の処理を終えたら、真空ポンプ66を作動させて真空容器62の内部を排気し、真空容器62の内部を0.1Pa以下の真空雰囲気下にする(真空雰囲気形成工程)。ここでいう「真空雰囲気下」とは、100Pa以下の圧力雰囲気下のことを意味し、0.1Pa以下の圧力雰囲気下であるのが好適である。
その後、アルゴン等の不活性ガスを真空容器62の内部に導入し、当該真空容器62の内部を0.1Pa〜5Paの真空雰囲気下に維持する。その後、ホルダ64のヒータと回転機構65のモータとを駆動させ、ホルダ64に取付け済みの基板1をボート63に対向させた状態で加熱しながら回転させる。
この状態において、電極からボート63に電流を流し、ヨウ化セシウムとヨウ化タリウムとを含む混合物を700〜800℃程度で所定時間加熱してその混合物を蒸発させる。
その結果、基板1の表面に無数の柱状結晶体5aが順次成長して所望の厚さのシンチレータ層5が形成される(蒸着工程)。これにより、本発明に係るシンチレータパネル10を製造することができる。
蒸着源を加熱する温度としては、500℃〜800℃が好ましく、特に630℃〜750℃が好ましい。基板温度は100℃〜250℃が好ましく、特に150℃〜250℃とするのが好ましい。基板温度をこの範囲とすることで、柱状結晶の形状が良好となり、輝度特性が向上する。
《耐湿保護層の形成》
耐湿保護層6は、シンチレータ層上に上記の有機溶剤に有機樹脂を分散・溶解した組成物を塗布、乾燥して形成することが好ましい。前記組成物には必要に応じて着色剤やマット剤を添加しても良い。また支持体(PET、PEN、アラミド等)上に有機樹脂を分散・溶解した組成物を塗布、乾燥して形成した封止フィルムでシンチレータ層を封止しても良い。
(放射線画像検出装置)
以下に、上記シンチレータパネル10の一適用例として、図4及び図5を参照しながら、当該シンチレータプレート10を具備した放射線画像検出装置100の構成について説明する。なお、図4は放射線画像検出装置100の概略構成を示す一部破断斜視図である。また、図5は撮像パネル51の拡大断面図である。
図4に示す通り、放射線画像検出装置100には、撮像パネル51、放射線画像検出装置100の動作を制御する制御部52、書き換え可能な専用メモリ(例えばフラッシュメモリ)等を用いて撮像パネル51から出力された画像信号を記憶する記憶手段であるメモリ部53、撮像パネル51を駆動して画像信号を得るために必要とされる電力を供給する電力供給手段である電源部54、等が筐体55の内部に設けられている。筐体55には必要に応じて放射線画像検出装置100から外部に通信を行うための通信用のコネクタ56、放射線画像検出装置100の動作を切り換えるための操作部57、放射線画像の撮影準備の完了やメモリ部53に所定量の画像信号が書き込まれたことを示す表示部58、等が設けられている。
ここで、放射線画像検出装置100に電源部54を設けるとともに放射線画像の画像信号を記憶するメモリ部53を設け、コネクタ56を介して放射線画像検出装置100を着脱自在にすれば、放射線画像検出装置100を持ち運びできる可搬構造とすることができる。
図5に示すように、撮像パネル51は、シンチレータパネル10と、シンチレータパネル10からの電磁波を吸収して画像信号を出力する出力基板20と、から構成されている。
シンチレータパネル10は、放射線照射面側に配置されており、入射した放射線の強度に応じた電磁波を発光するように構成されている。
出力基板20は、シンチレータパネル10の放射線照射面と反対側の面に設けられており、用シンチレータパネル10側から順に、隔膜20a、光電変換素子20b、画像信号出力層20c及び基板20dを備えている。
隔膜20aは、シンチレータパネル10と他の層を分離するためのものである。
光電変換素子20bは、透明電極21と、透明電極21を透過して入光した電磁波により励起されて電荷を発生する電荷発生層22と、透明電極21に対しての対極になる対電極23とから構成されており、隔膜20a側から順に透明電極21、電荷発生層22、対電極23が配置される。
透明電極21とは、光電変換される電磁波を透過させる電極であり、例えばインジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料を用いて形成される。
電荷発生層22は、透明電極21の一面側に薄膜状に形成されており、光電変換可能な化合物として光によって電荷分離する有機化合物を含有するものであり、電荷を発生し得る電子供与体及び電子受容体としての導電性化合物をそれぞれ含有している。電荷発生層22では、電磁波が入射されると、電子供与体は励起されて電子を放出し、放出された電子は電子受容体に移動して、電荷発生層22内に電荷、すなわち、正孔と電子のキャリアが発生するようになっている。
ここで、電子供与体としての導電性化合物としては、p型導電性高分子化合物が挙げられ、p型導電性高分子化合物としては、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリ(p−フェニレン)又はポリアニリンの基本骨格を持つものが好ましい。
また、電子受容体としての導電性化合物としては、n型導電性高分子化合物が挙げられ、n型導電性高分子化合物としては、ポリピリジンの基本骨格を持つものが好ましく、特にポリ(p−ピリジルビニレン)の基本骨格を持つものが好ましい。
電荷発生層22の膜厚は、光吸収量を確保するといった観点から、10nm以上(特に100nm以上)が好ましく、また電気抵抗が大きくなりすぎないといった観点から、1μm以下(特に300nm以下)が好ましい。
対電極23は、電荷発生層22の電磁波が入光される側の面と反対側に配置されている。対電極23は、例えば、金、銀、アルミニウム、クロムなどの一般の金属電極や、透明電極21の中から選択して用いることが可能であるが、良好な特性を得るためには仕事関数の小さい(4.5eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするのが好ましい。
また、電荷発生層22を挟む各電極(透明電極21及び対電極23)との間には、電荷発生層22とこれら電極が反応しないように緩衝地帯として作用させるためのバッファー層を設けてもよい。バッファー層は、例えば、フッ化リチウム及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホナート)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル[1,10]フェナントロリンなどを用いて形成される。
画像信号出力層20cは、光電変換素子20bで得られた電荷の蓄積および蓄積された電荷に基づく信号の出力を行うものであり、光電変換素子20bで生成された電荷を画素毎に蓄積する電荷蓄積素子であるコンデンサ24と、蓄積された電荷を信号として出力する画像信号出力素子であるトランジスタ25とを用いて構成されている。
トランジスタ25は、例えばTFT(薄膜トランジスタ)を用いるものとする。このTFTは、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のものでも、有機半導体を用いたものでもよく、好ましくはプラスチックフィルム上に形成されたTFTである。プラスチックフィルム上に形成されたTFTとしては、アモルファスシリコン系のものが知られているが、その他、米国Alien Technology社が開発しているFSA(Fluidic Self Assembly)技術、即ち、単結晶シリコンで作製した微小CMOS(Nanoblocks)をエンボス加工したプラスチックフィルム上に配列させることで、フレキシブルなプラスチックフィルム上にTFTを形成するものとしても良い。さらに、Science,283,822(1999)やAppl.Phys.Lett,771488(1998)、Nature,403,521(2000)等の文献に記載されているような有機半導体を用いたTFTであってもよい。
このように、トランジスタ25としては、上記FSA技術で作製したTFT及び有機半導体を用いたTFTが好ましく、特に好ましいものは有機半導体を用いたTFTである。この有機半導体を用いてTFTを構成すれば、シリコンを用いてTFTを構成する場合のように真空蒸着装置等の設備が不要となり、印刷技術やインクジェット技術を活用してTFTを形成できるので、製造コストが安価となる。さらに、加工温度を低くできることから熱に弱いプラスチック基板上にも形成できる。
トランジスタ25には、光電変換素子20bで発生した電荷を蓄積するとともに、コンデンサ24の一方の電極となる収集電極(図示せず)が電気的に接続されている。コンデンサ24には光電変換素子20bで生成された電荷が蓄積されるとともに、この蓄積された電荷はトランジスタ25を駆動することで読み出される。すなわちトランジスタ25を駆動させることで放射線画像の画素毎の信号を出力させることができる。
基板20dは、撮像パネル51の支持体として機能するものであり、基板1と同様の素材で構成することが可能である。
次に、放射線画像検出装置100の作用について説明する。
まず、放射線画像検出装置100に対し入射された放射線は、撮像パネル51の放射線用シンチレータパネル10側から基板20d側に向けて放射線を入射する。
すると、シンチレータパネル10に入射された放射線は、放射線用シンチレータパネル10中のシンチレータ層5が放射線のエネルギーを吸収し、その強度に応じた電磁波を発光する。発光された電磁波のうち、出力基板20に入光される電磁波は、出力基板20の隔膜20a、透明電極21を貫通し、電荷発生層22に到達する。そして、電荷発生層22において電磁波は吸収され、その強度に応じて正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
その後、発生した電荷は、電源部54によるバイアス電圧の印加により生じる内部電界により正孔と電子はそれぞれ異なる電極(透明電極膜及び導電層)へ運ばれ、光電流が流れる。
その後、対電極23側に運ばれた正孔は画像信号出力層20cのコンデンサ24に蓄積される。蓄積された正孔はコンデンサ24に接続されているトランジスタ25を駆動させると、画像信号を出力すると共に、出力された画像信号はメモリ部53に記憶される。
次に本発明の請求の範囲4〜6に係わる放射線画像検出器について、図6を参照して説明する。
なお、図6は放射線画像検出器の撮像パネル部の拡大断面図である。
出力基板201上に、画像信号出力層202を有し、画像信号出力層上に、対電極203cと電荷発生層203bと透明電極203aからなる光電変換素子203を有する。
撮像パネルは、光電変換素子上にシンチレータ層を有するが、透明電極203a上に、直接あるいは有機樹脂層204を介してシンチレータ層205を具備した放射線画像検出器200の構成について説明する。
シンチレータ層205については、上述のシンチレータパネル10の作製方法の中の《シンチレータ層の形成》で説明した方法と同様に行うことができ、出力基板201の透明電極203b上に直接あるいは有機樹脂層204を介してシンチレータ層を設けることができる。
シンチレータ層205上に反射層206、耐湿保護層207を設けた場合を図示しているが、例えばシンチレータ層205上に反射層206と耐湿保護層207の間にさらに接着層(図示せず)を設けてもよいし、耐湿保護層207を2層にわけて(耐湿保護層−1、耐湿保護層−2)、シンチレータ層上に、耐湿保護層−1、反射層、耐湿保護層−2の順に各層を設けても良い。
また各層の順序は適宜変更可能であり、シンチレータ層上に反射層が最外層となるように耐湿保護層、反射層を設けても良い。
また反射層と耐湿保護層を別々の層にせず、反射層と耐湿保護層を兼ねる層を設ける構成でも良い。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
(反射層の作製)
厚さ125μmのポリイミドフィルム(宇部興産製UPILEX−125S)にアルミニウムをスパッタして反射層(0.02μm)を形成した。
(保護層の作製)
表1に記載の種類の有機樹脂 添加量は表1に記載
ヘキサメチレンジイソシアナート 3質量部
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記基板のアルミニウム反射層面に乾燥膜厚が2.5μmになるように押し出しコーターで塗布した。
(シンチレータ層の形成)
基板の光吸収層側にシンチレータ蛍光体(CsI:0.003モルTl)を、図3に示す蒸着装置を使用して蒸着させシンチレータ(蛍光体)層を形成した。
すなわち、まず、上記蛍光体原料を蒸着材料として抵抗加熱ルツボに充填し、また回転する支持体ホルダに支持体を設置し、支持体と蒸発源との間隔を400mmに調節した。
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体を回転しながら基板の温度を150℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着しシンチレータ層の膜厚が500μmとなったところで蒸着を終了させシンチレータパネル(放射線像変換パネル)を得た。
(耐湿性保護層の形成)
セルロースアセテートブチレート(ガラス転移温度:161℃) 100質量部
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記シンチレータ層上に乾燥膜厚が20μmになるように押し出しコーターで塗布しシンチレータパネルの試料101〜112を得た。
実施例2
(中間層の作製)
表2に記載の種類の有機樹脂 添加量は表2に記載
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、中間層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を基板(アモルファスカーボン製、厚さ1mm)上に乾燥膜厚が10μmとなるように押し出しコーターを用いて塗布した。
(反射層の作製)
前記中間層を設けた基板上にアルミニウムをスパッタして反射層(0.02μm)を形成した。
(保護層の作製)
バイロン200(東洋紡社製:ポリエステル樹脂 Tg:67℃) 100質量部
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記アルミニウム反射層上に乾燥膜厚が2.5μmとなるように押し出しコーターで塗布した。
(シンチレータ層の形成)
基板の光吸収層側にシンチレータ蛍光体(CsI:0.003モルTl)を、図3に示す蒸着装置を使用して蒸着させシンチレータ(蛍光体)層を形成した。
すなわち、まず、上記蛍光体原料を蒸着材料として抵抗加熱ルツボに充填し、また回転する支持体ホルダに支持体を設置し、支持体と蒸発源との間隔を400mmに調節した。
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体を回転しながら基板の温度を150℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着しシンチレータ層の膜厚が500μmとなったところで蒸着を終了させシンチレータパネル(放射線像変換パネル)を得た。
(耐湿保護層の形成)
セルロースアセテートブチレート(ガラス転移温度:161℃) 100質量部
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記シンチレータ層上に乾燥膜厚が20μmになるように押し出しコーターで塗布しシンチレータパネルの試料201〜212を得た。
実施例3
(反射層の作製)
厚さ125μmのポリイミドフィルム(宇部興産製UPILEX−125S)にアルミニウムをスパッタして反射層(0.02μm)を形成した。
(保護層の作製)
バイロン200(東洋紡社製:ポリエステル樹脂 Tg:67℃) 100質量部
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記基板のアルミニウム反射層上に乾燥膜厚が2.5μmになるように押し出しコーターで塗布した。
(シンチレータ層の形成)
基板の光吸収層側にシンチレータ蛍光体(CsI:0.003モルTl)を、図3に示す蒸着装置を使用して蒸着させシンチレータ(蛍光体)層を形成した。
すなわち、まず、上記蛍光体原料を蒸着材料として抵抗加熱ルツボに充填し、また回転する支持体ホルダに支持体を設置し、支持体と蒸発源との間隔を400mmに調節した。
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体を回転しながら基板の温度を150℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着しシンチレータ層の膜厚が500μmとなったところで蒸着を終了させシンチレータパネル(放射線像変換パネル)を得た。
(耐湿性保護層の形成)
表3に記載の種類の有機樹脂 表3に記載の添加量
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記シンチレータ層上に乾燥膜厚が表3の値になるように押し出しコーターで塗布しシンチレータパネルの試料301〜319を得た。
ただし、試料319の耐湿保護層としては、特開2007−279051号の「0022」に記載のCVD法により形成されたポリパラキシリレンからなる耐湿保護膜を使用した。
使用した樹脂の種類を下記に記載する。
B−1 ポリビニルブチラール Tg:65℃
B−2 ポリエステル(バイロン300) Tg:6℃
B−3 ポリエステル(バイロン200) Tg:67℃
B−4 セルロースアセテートブチレート Tg:161℃
B−5 ポリメチルメタクリレート Tg:105℃
B−6 フェノキシ樹脂(PKHH) Tg:105℃
B−7 ポリエステルポリウレタン(カプロラクトン基含有) Tg:20℃
B−8 ポリエステルポリウレタン(シクロヘキシル基含有) Tg:70℃
B−9 ポリエステルポリウレタン(脂肪族ポリエステル含有) Tg:−20℃
B−10 ポリエステルポリウレタン(芳香族ポリエステル含有) Tg:50℃
B−11 セルロースアセテートプロピオネート Tg:150℃
なお樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定についてはDSC法(示差走査熱量計を使用して吸熱曲線を求めることで測定)を用いた。
〈評価〉
(耐湿性の評価)
上記で得られた各シンチレータパネルの試料を封止した後、30℃70%の環境下に30日間放置し、放置前と放置後の鮮鋭性と輝度を比較した。評価は各々後述する方法で実施し、シンチレータの面内の20箇所の平均値を求めこれを各試料の値とした。
シンチレータパネルを、PaxScan2520(Varian社製FPD)にセットし鮮鋭性及び輝度を、以下に示す方法で評価した。
「鮮鋭性の評価」
鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線をFPDの放射線入射面側に照射し、画像データを検出しハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して当該ハードディスクに記録されたX線像の変調伝達関数MTF(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を鮮鋭性の指標とした。MTFはModulation Transfer Functionの略号を示す。
「輝度の評価」
電圧80kVpのX線を試料の裏面(シンチレータ層が形成されていない面)から照射し、画像データをシンチレータを配置したFPDで検出し、画像の平均シグナル値を発光輝度とした。
表1〜表3に輝度、鮮鋭性について、放置後の値の、放置前の値に対する比を示した。30℃70%RHの環境下での特性の劣化が少ないものほど値は1.0に近くなる。
表1〜表3から、本発明のシンチレータプレートは、輝度、鮮鋭性の劣化が少なく保存性に優れることが分かる。
実施例4
ガラス基板上に複数のフォトダイオードと複数のTFT素子を形成し、全体を下記組成の有機樹脂層で被覆した。
(有機樹脂層の作製)
表4に記載の種類の有機樹脂 添加量は表4に記載
ヘキサメチレンジイソシアナート 3質量部
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記基板の光電変換素子が設けられた側に乾燥膜厚が20μmになるように押し出しコーターで塗布した。
(シンチレータ層の形成)
基板の有機樹脂層が設けられた側にシンチレータ蛍光体(CsI:0.003モルTl)を、図3に示す蒸着装置を使用して蒸着させシンチレータ(蛍光体)層を形成した。
すなわち、まず、上記蛍光体原料を蒸着材料として抵抗加熱ルツボに充填し、また回転する支持体ホルダに支持体を設置し、支持体と蒸発源との間隔を400mmに調節した。
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体を回転しながら基板の温度を150℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着しシンチレータ層の膜厚が500μmとなったところで蒸着を終了させた。
(反射層の作製)
酸化チタン(平均粒径0.20μm) 15質量部
ポリビニルブチラール 2質量部
ヘキサメチレンジイソシアナート 0.2質量部
シクロヘキサノン 100質量部
メチルエチルケトン(MEK) 60質量部
トルエン 40質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記基板の光電変換素子が設けられた側に乾燥膜厚が100μmになるように押し出しコーターで塗布した。
(耐湿性保護層の形成)
セルロースアセテートブチレート(ガラス転移温度:161℃) 100質量部
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記反射層上に乾燥膜厚が20μmになるように押し出しコーターで塗布した。その後、ガラス基板からなる筐体で覆い、減圧封止を行い、放射線画像検出器401〜412を得た。
実施例5
ガラス基板上に複数のフォトダイオードと複数のTFT素子を形成し、全体を下記組成の有機樹脂層で被覆した。
(有機樹脂層の作製)
バイロン200(東洋紡社製:ポリエステル樹脂 Tg:67℃) 100質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、有機樹脂層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記基板の光電変換素子が設けられた側に乾燥膜厚が20μmになるように押し出しコーターで塗布した。
(シンチレータ層の形成)
基板の有機樹脂層が設けられた側にシンチレータ蛍光体(CsI:0.003モルTl)を、図3に示す蒸着装置を使用して蒸着させシンチレータ(蛍光体)層を形成した。
すなわち、まず、上記蛍光体原料を蒸着材料として抵抗加熱ルツボに充填し、また回転する支持体ホルダに支持体を設置し、支持体と蒸発源との間隔を400mmに調節した。
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体を回転しながら基板の温度を150℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着しシンチレータ層の膜厚が500μmとなったところで蒸着を終了させた。
(反射層の作製)
酸化チタン(平均粒径0.20μm) 15質量部
表5に記載の種類の有機樹脂 添加量は表5に記載
ヘキサメチレンジイソシアナート 0.2質量部
シクロヘキサノン 100質量部
メチルエチルケトン(MEK) 60質量部
トルエン 40質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記基板の光電変換素子が設けられた側に乾燥膜厚が100μmになるように押し出しコーターで塗布した。
(耐湿性保護層の形成)
セルロースアセテートブチレート(ガラス転移温度:161℃) 100質量部
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記反射層上に乾燥膜厚が20μmになるように押し出しコーターで塗布した。その後、ガラス基板からなる筐体で覆い、減圧封止を行い、放射線画像検出器501〜512を得た。
ただし、試料512の反射層としては、特開2008−215951号の「0070」に記載の反射層を使用した。
実施例6
ガラス基板上に複数のフォトダイオードと複数のTFT素子を形成し、全体を下記組成の有機樹脂層で被覆した。
(有機樹脂層の作製)
バイロン200(東洋紡社製:ポリエステル樹脂 Tg:67℃) 100質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、有機樹脂層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記基板の光電変換素子が設けられた側に乾燥膜厚が20μmになるように押し出しコーターで塗布した。
(シンチレータ層の形成)
基板の有機樹脂層が設けられた側にシンチレータ蛍光体(CsI:0.003モルTl)を、図3に示す蒸着装置を使用して蒸着させシンチレータ(蛍光体)層を形成した。
すなわち、まず、上記蛍光体原料を蒸着材料として抵抗加熱ルツボに充填し、また回転する支持体ホルダに支持体を設置し、支持体と蒸発源との間隔を400mmに調節した。
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体を回転しながら基板の温度を150℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着しシンチレータ層の膜厚が500μmとなったところで蒸着を終了させた。
(反射層の作製)
酸化チタン(平均粒径0.20μm) 15質量部
ポリビニルブチラール 2質量部
ヘキサメチレンジイソシアナート 0.2質量部
シクロヘキサノン 100質量部
メチルエチルケトン(MEK) 60質量部
トルエン 40質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記基板の光電変換素子が設けられた側に乾燥膜厚が100μmになるように押し出しコーターで塗布した。
(耐湿性保護層の形成)
表6に記載の種類の有機樹脂 表6に記載の添加量
フタロシアニンブルー 0.1質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
トルエン 100質量部
上記処方を混合し、ビーズミルにて15時間分散し、保護層塗設用の塗布液を得た。
この塗布液を上記シンチレータ層上に乾燥膜厚が表6の値になるように押し出しコーターで塗布した。その後、ガラス基板からなる筐体で覆い、減圧封止を行い、放射線画像検出器601〜619を得た。
ただし耐湿性保護層としては、特開2008−215951号の「0071」に記載の防湿層(凸版印刷社製商品名:GXフィルム(PET))を使用した。
得られた放射線画像検出器について評価を行った。
〈評価〉
(耐湿性の評価)
上記で得られた各放射線画像検出器を、30℃70%の環境下に30日間放置し、放置前と放置後の鮮鋭性と輝度を比較した。評価は各々後述する方法で実施し、シンチレータの面内の20箇所の平均値を求めこれを各試料の値とした。
「鮮鋭性の評価」
鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線をFPDの放射線入射面側に照射し、画像データを検出しハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して当該ハードディスクに記録されたX線像の変調伝達関数MTF(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を鮮鋭性の指標とした。MTFはModulation Transfer Functionの略号を示す。
「輝度の評価」
電圧80kVpのX線を試料の裏面(シンチレータ層が形成されていない面)から照射し、画像データをシンチレータを配置したFPDで検出し、画像の平均シグナル値を発光輝度とした。
結果を、表4〜表6に示す。
表4〜表6から、本発明の放射線画像検出器は、輝度、鮮鋭性の劣化が少なく保存性に優れることが分かる。