JP2018010002A - シンチレータパネルおよび撮像パネル - Google Patents

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Abstract

【課題】鮮鋭性とその均一性に優れるX線画像などの放射線画像を提供でき、受光面内において均一な画質特性を有するフラットパネルディテクタなどを提供でき、断裁性に優れ、鮮鋭性及び鮮鋭性の面内均一性に優れるシンチレータパネルを提供する。【解決手段】遮光性を有する支持体と、該支持体上に設けられた反射層とを有するシンチレータパネルであって、前記反射層が、光散乱粒子及びバインダー樹脂を含み、かつ前記反射層の、前記支持体と接している面とは反対側の面の表面から、該支持体と接している面に向かって、0〜0.5μmの厚さの領域部分に存在する光散乱粒子の面積平均粒子径が0.5μm以下であることを特徴とする蒸着用基板を有するシンチレータパネル。【選択図】なし

Description

本発明は、被写体の放射線画像を形成する際に用いられるシンチレータパネルに関する。
従来、X線画像のような放射線画像は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−フィルム系による放射線画像は、長い歴史のなかで高感度化と高画質化が図られた結果、高い信頼性と優れたコストパフォーマンスを併せ持った撮像システムとして、今なお、世界中の医療現場で用いられている。しかしながら、これら画像情報は、いわゆるアナログ画像情報であって、現在発展を続けているデジタル画像情報のような、自由な画像処理や瞬時の電送が出来ない。
近年、コンピューテッドラジオグラフィ(computed radiography:CR)やフラットパネル型の放射線ディテクタ(flat panel detector:FPD)等に代表されるデジタル方式の放射線画像検出装置が登場している。これら放射線画像検出装置では、デジタルの放射線画像が直接得られ、陰極管を利用したパネルや液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能なので、写真フィルム上への画像形成が必要ない。その結果、これらのデジタル方式のX線画像検出装置は、銀塩写真方式による画像形成の必要性を低減させ、病院や診療所での診断作業の利便性を大幅に向上させている。
X線画像に関するデジタル技術の一つとしてコンピューテッドラジオグラフィ(CR)が現在医療現場で受け入れられている。しかしながら、CRで得られるX線画像は、銀塩写真方式などのスクリーン・フィルムシステムによる画像と比べて鮮鋭性が十分でなく空間分解能も不十分であり、その画質レベルはスクリーン・フィルムシステムの画質レベルには到達していない。そこで、更に新たなデジタルX線画像技術として、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)を用いた平板X線検出装置(flat panel detector、FPD)が開発されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
上記FPDでは、その原理上、X線を可視光に変換するために、照射されたX線を可視光に変換して発光する特性を有するX線蛍光体で作られたシンチレータ層を有するシンチレータパネルが使用されるが、低線量のX線源を用いたX線撮影において、シンチレータパネルから検出されるシグナルとノイズとの比(SN比)を向上するためには、発光効率(X線の可視光への変換率)の高いシンチレータパネルを使用することが必要になってくる。一般にシンチレータパネルの発光効率は、シンチレータ層(蛍光体層)の厚さ、蛍光体のX線吸収係数によって決まるが、蛍光体層の厚さは厚くすればするほど、X線照射により蛍光体層内で発生した発光光がシンチレータ層内で散乱しやすくなり、シンチレータパネルを介して得られるX線画像の鮮鋭性が低下する。そのため、X線画像の画質に必要な鮮鋭性を設定すると、シンチレータパネルにおける蛍光体層の膜厚の限度が自ずと定まる。
その一方で、蛍光体の種類によっては、シンチレータパネルにおける蛍光体層の膜厚の限度を向上させられる場合がある。蛍光体の中でも、ヨウ化セシウム(CsI)は、X線から可視光への変換率が比較的高く、また、蒸着によって容易に柱状結晶構造の蛍光体層を形成出来るため、光ガイド効果により、蛍光体結晶内での発光光の散乱(すなわちシンチレータ層内での散乱)を抑えられることができ、該散乱が抑えられる分だけ蛍光体層の膜厚を厚くすることが可能である。
しかしながらCsIのみでは発光効率が低いために、例えば、(1)CsI結晶および賦活剤であるナトリウム化合物、(2)CsI結晶および賦活剤であるタリウム化合物、
(3)CsI結晶および賦活剤であるインジウム化合物を、蒸着により基板上に堆積してシンチレータ層を形成し、後工程としてシンチレータ層のアニールを行うことで、シンチレータ層の可視変換効率を向上させる方法などが一般的に採用される。
また、シンチレータパネルの光出力を増大する方法としては、上記の方法の他にも、シンチレータ層を形成する基板として反射性の基板を用いる方法(例えば特許文献1参照)、基板上に金属蒸着膜からなる反射層を設ける方法(例えば特許文献2参照)、基板上に反射性金属薄膜を設け、該反射性金属薄膜を透明有機膜で覆い、該透明有機膜上にシンチレータ層を形成する方法(例えば特許文献3参照)などが提案されている。しかし、これらの方法により得られるシンチレータパネルでは、得られる光量は増加するが、反射層として機能する層とシンチレータ層との界面においてシンチレータ層で生じた発光光の光散乱が起こり、シンチレータパネルを介して得られるX線画像データ情報に乱れが生じるので、得られるX線画像の鮮鋭性が著しく低下するという欠点がある。
また、シンチレータパネルを平面受光素子面上に配置してX線画像検出器を製造する方法があるが(例えば、特許文献4、5参照)、各種平面受光素子ごとにサイズなどの異なるシンチレータパネルを別途製造する必要があることから該検出器の生産効率が悪く、しかも、上述のような、反射層とシンチレータ層との界面における光散乱に起因してX線画像の鮮鋭性が低下するという問題を解決するものではなかった。
また、従来の気相法によるシンチレータパネルの製造方法では、一般的に、アルミニウムやアモルファスカーボンなどの材料からなる剛直な基板上にシンチレータ層を形成し、シンチレータの表面全体を保護膜で被覆する(例えば特許文献6参照)。しかしながら、このように、変形し難い剛直な基板上にシンチレータ層を形成してシンチレータパネルを製造した場合、該シンチレータパネルと平面受光素子とを貼り合せる際に、シンチレータパネルと平面受光素子とを均一に接触させることは難しい。すなわち、上記シンチレータパネルには、基板自体の凹凸やシンチレータ層に形成されている柱状蛍光体結晶の各々の高さの違いに起因する凹凸などが存在するが、基板が変形し難いことからその凹凸の影響は大きく(基板が変形すれば基板の変形により凹凸が相殺されることがある)、シンチレータパネルと平面受光素子とを均一に密着させることが難しい。この問題を解決するために、生産効率が悪いが上記シンチレータパネルと平面受光素子との密着に関する問題の解決を優先させて、シンチレータパネルと平面受光素子との接触面にスペーサーを使用する方法などが提案されているが(例えば、特許文献4、5参照)、この方法ではシンチレータパネルと平面受光素子との間隙が増加し、この間隙内におけるシンチレータパネルのシンチレータ層で生じた発光光の光散乱を招くため、得られるX線画像の鮮鋭性の劣化は避けられない。この問題は、近年のフラットパネルディテクタの大型化に伴い、さらに深刻化してきている。
上記のようなシンチレータパネルと平面受光素子との密着性の問題やスペーサーの使用に伴う問題を回避するために、蒸着によりシンチレータ層を撮像素子上に直接形成する方法や、鮮鋭性は低いが可とう性を有する医用増感紙などをシンチレータパネルの代用として用いる方法が一般的に採用されている。また、シンチレータパネルにおいて、シンチレータ層などを保護する保護層としてポリパラキシレン等から形成される柔軟な保護層を使用する方法も採用されている(例えば特許文献7参照)。
しかしながら、基板にはアルミニウムやアモルファスカーボンなどの剛直な材料が使用されており、10μmの程度の厚さの保護層をシンチレータ層上や基板上に設けたとしても、保護層の表面には、基板自体の凹凸やシンチレータ層の各柱状蛍光体結晶の高さの違いに起因する凹凸などを反映した凹凸が形成される。従って、そのような厚みの保護層を採用したからといって、基板やシンチレータ層の凹凸の影響を取り除けるものではなく、シンチレータパネルの面と平面受光素子の面とを均一に密着させることはやはり達成し難い。その一方で、柔軟な保護層を厚くすると、シンチレータパネルと平面受光素子との間隙が大きくなることから、得られるX線画像の鮮鋭性の劣化に繋がる。
この様な状況から、シンチレータパネルの発光効率に優れ、シンチレータパネルと平面受光素子面との間隙の大きさなどに起因するX線画像の鮮鋭性の劣化が少ない放射線フラットパネルディテクタを開発することが望まれている。
特許文献8には、基板上に反射層および蒸着により形成されたシンチレータ層を有するシンチレータパネルであって、該反射層が白色顔料およびバインダー樹脂からなるシンチレータパネルが開示されている。また、特許文献8には、このようなシンチレータパネルは、反射層が白色顔料及びバインダー樹脂で形成されているので、発光取り出し効率が高く、得られるX線画像の鮮鋭性が高いことが開示されている。このシンチレータパネルは、平面受光素子と貼り合せて使用しても、シンチレータパネル面−平面受光素子面におけるシンチレータパネルで生じた発光光の光散乱などに起因する、X線画像の鮮鋭性の低下が少なく、上述の課題を解決できる。
しかしながら、特許文献8に開示されているシンチレータパネルにおいては、シンチレータパネル面内において、得られるX線画像の鮮鋭性にムラが生じる、断裁性に劣るという点で、十分改善の余地があった。
特公平7−21560号公報 特開平1−240887号公報 特開2000−356679号公報 特開平5−312961号公報 特開平6−331749号公報 特許第3566926号公報 特開2002−116258号公報 特開2008−209124号公報
Physics Today,1997年11月号24頁のジョン・ローラーンズ論文"Amorphous Semiconductor Usher in Digital X‐ray Imaging" SPIEの1997年32巻2頁のエル・イー・アントヌクの論文"Development of a High Resolutionactive Matrix, Flat‐Panel Imager with Enhanced Fill Factor"
従来提案されている蒸着用基板にシンチレータ層を形成したシンチレータパネルは、断裁性、放出される光量などに劣り、該シンチレータパネルから得られるX線画像は鮮鋭性に劣り、またX線画像全体において鮮鋭性にムラが生じる(X線画像の複数の任意の場所において鮮鋭性が異なる)などに問題があった。つまり、従来の蒸着用基板にシンチレータ層を形成したシンチレータパネルには、断裁するとひび割れが生じる、得られるX線画像の鮮鋭性に劣る上に、該鮮鋭性にムラが生じる、などという問題がある。
本発明の目的は、上記課題を解決することにあり、より詳しくは、断裁性に優れ、断裁処理に供してもひび割れなどを生じることがなく、鮮鋭性とその均一性に優れる(鮮鋭性にムラがない)X線画像などの放射線画像を提供でき、例えば受光面内において均一な画質特性を有するフラットパネルディテクタを提供できるシンチレータパネルを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、柱状蛍光体結晶のシンチレータ層が形成された蒸着用基板とシンチレータ層との接触面における柱状径が5.0μmを超えるシンチレータパネルは、断裁性に劣り(断裁時にひび割れなどが生じ)、該シンチレータパネルを介して得られる放射線画像の鮮鋭性や該鮮鋭性のシンチレータパネル面内の均一性にも劣ることを見出した。
これは、上記のようなシンチレータパネルにおいては、蒸着により蛍光体が柱状結晶(柱状蛍光体結晶)に成長する過程で、柱状蛍光体結晶の異常成長が引き起こされる(異常成長した柱状蛍光体結晶が、上記性質を損なうような量で柱状結晶と混在している)ためと推察される。
ここで、本明細書において、「異常成長」とは、蒸着による蛍光体の柱状結晶への成長に伴う柱状径の変化率や結晶成長方向(傾き)が、正常部分と異なった状態で結晶が成長することをいう。例えば、結晶欠陥の生成や反射層に対して垂直の方向のみならず斜めの方向などにも柱状結晶が成長することによる結晶構造の不均一化などが生じる。
異常成長した結晶部分を含むシンチレータ層(蛍光体層)を有するシンチレータパネルは、断裁の際に、結晶欠陥部分のようなもろい部分が崩れたり、斜めに成長した柱状蛍光体結晶が、柱状蛍光体結晶の長手方向に対して角度を持った方向から切断されて破片を生じたりして、正常かつ均一な結晶構造を保てない部分が生じるため、断裁性に劣るものと推察される(後述するように、シンチレータパネルの断裁性は、断裁後のシンチレータパネルを介して得られる放射線画像における画像欠陥箇所の有無で評価され、画像欠陥箇所があった場合ひび割れが生じたと評価される)。
また、上記のようなシンチレータパネルでは、X線などの放射線をシンチレータ層に照射したときに、正常な結晶構造部分(上記鮮鋭性に優れる部分)と異常成長した結晶部分(上記鮮鋭性に劣る部分)と発光光の状態が異なり、全体として発光光の状態が不均一となるため、上記のようなシンチレータパネルを介して得られる放射線画像の鮮鋭性の低下や該鮮鋭性の不均一化を生じるものと推察される。
加えて、上記のようなシンチレータパネルでは、異常成長した結晶は各々不均一に形成されているため、正常な結晶構造部分と異常な結晶構造部分との反射層からの高さや各異常な結晶構造部分の反射層からの高さが異なり、シンチレータ層の表面には凹凸が存在する。そのため、上記のようなシンチレータパネルは、該シンチレータ層の表面に特定の樹脂からなる保護層などの膜を設けたとしても、シンチレータ層の表面の凹凸部分が上記膜で解消されず、該膜の面と平面受光素子面とが均一に接触することができないことから、それらの接触面で光学的な不均一性を生じるものと推察される。そして、このことも、得られる放射線画像の鮮鋭性やその均一性に影響すると推察される。すなわち、そのようなシンチレータパネルでは、膜付きに劣る部分が断裁時にひび割れの起点となり、そのひび割れは画像欠陥(画欠とも言う)になる。またひび割れにならずとも膜付きが不均一であるため、シンチレータ層で生じた発光光が上記膜付きに劣る部分で不要の光散乱をしたりすることで、膜付きの良い部分と劣る部分とで発光光の状態が不均一となり、得られる放射線画像は鮮鋭性およびその均一性に劣るものと推察される。
そして、本発明者らは、蒸着による上記柱状径が5.0μmを超える柱状蛍光体結晶の形成には、蛍光体を蒸着する層の表面状態が関与していることを見出した(以下、シンチレータ層が形成される面を「シンチレータ形成予定面」ともいう)。本発明者らは検討を進めるなかで、光散乱粒子とバインダー樹脂を含む反射層に蒸着によりCsIなどの蛍光体を含むシンチレータ層を形成した場合、蛍光体の柱状結晶は種晶から特定の柱状径を有する柱状結晶への成長を開始するが、蛍光体を蒸着する際に、蛍光体を蒸着する層の表面に、特定の大きさの凹凸が存在すると、該凹凸が結晶成長の土台となるだけでなく、蒸着用基板とシンチレータ層との接触面における柱状径が5.0μmを超えるまで種晶を成長させてしまう要因になると推察される。
上記を鑑みて、本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、反射層のシンチレータ形成予定面から、蛍光体の結晶をその柱状径が5.0μmを超えるまで成長させることのできる土台となる凹凸を排して、上記シンチレータ形成予定面上に上記柱状径が5.0μmを超える柱状蛍光体結晶が形成されないようにすれば、上記問題を解決でき、鮮鋭性やその均一性に優れる放射線画像を提供でき、断裁性に優れるシンチレータパネルや該シンチレータパネルを提供できる蒸着用基材を提供できることを見出した。具体的には次の通りである。
まず、(1)支持体と該支持体上に設けられた反射層とを有する蒸着用基材において、反射層のシンチレータ層形成予定面に、蒸着時に曝される温度(基板の加熱温度、揮発した蛍光体や賦活剤の温度など)で軟化しない大きな凹凸(後述する「小さな凹凸」よりも大きな凹凸)があると、反射層との接触面における柱状径が5.0μmを超える柱状蛍光体結晶を含むシンチレータ層が形成され、蒸着により形成されるシンチレータ層における蛍光体の異常成長を引き起こすことを見出した。
そして、反射層のシンチレータ層形成予定面に大きな凹凸が存在していても、蒸着時に曝される熱により軟化して大きな凹凸が消失するように、反射層において光散乱粒子をバインダー樹脂に埋没させるなどして、反射層の、シンチレータ層形成予定面の表面から基材方向に向かって特定の領域を加熱により軟化する樹脂で形成し、該領域に光散乱粒子を配合しないことで、反射層の表面と接している面の柱状径が5.0μmを超える柱状蛍光体結晶が形成されず、柱状蛍光体結晶が実質的に異常成長するなどしないことを見出した(柱状蛍光体結晶が実質的に異常成長しないとは、異常成長した柱状蛍光体結晶が存在しない、または、異常成長した柱状蛍光体結晶が、本発明の目的を損なわない程度にしか存在しないことをいう)。
また、上述の反射層における光散乱粒子を含まない領域は、反射層にシンチレータ層を形成する際に存在すればよく、光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没している蒸着用基板はそのまま蒸着に供すればよく、上記反射層に蒸着時に曝される熱により軟化しない大きな凹凸が存在する蒸着用基板は、反射層上にバインダー樹脂を含み光散乱粒子を含まない樹脂層を積層するなどして上述の光散乱粒子を含まない領域を形成してから、蒸着に供すればよいことも見出した。
さらに、反射層の上記特定の領域にバインダー樹脂を含み光散乱粒子を含まない蒸着用基材においては、シンチレータ形成予定面の凹凸(大きさを問わない)の有無や後述の算術平均粗さを問わず、鮮鋭性とその均一性に優れる放射線画像を提供でき、断裁性に優れるシンチレータパネルを提供できることを見出した。
反射層が光散乱粒子およびバインダー樹脂を含み、光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没している態様では、反射層のシンチレータ層形成予定面にバインダー樹脂のみで形成された大きな凹凸が存在していても、該大きな凹凸は蒸着時に曝される熱により軟化されて消失するもしくは小さくなるため、蒸着により反射層状にシンチレータ層を形成しても、上記柱状径が5.0μmを超える柱状蛍光体結晶が形成されず、上記の性質に優れたシンチレータパネルや該シンチレータパネルを提供できる蒸着用基板が提供されると推察される。
さらに、(2)該反射層の表面に、蒸着時の蒸着用基板の加熱温度や揮発した蛍光体などの温度で軟化しない凹凸があっても、(2−1)該反射層表面に成長する柱状結晶の該反射層と接している面の凹凸が十分に小さい場合、例えば特定の平均粒子径以下の光散乱粒子が反射層から露出するにより形成された小さな凹凸であれば、上記柱状径が5.0μmを超える柱状蛍光体結晶は上記蒸着により形成されず、柱状蛍光体結晶が異常成長するなど実質的にしないこと、及び上記特定の平均粒子径以下の光散乱粒子とは、面積平均粒子径で0.5μm以下の光散乱粒子であることを見出した。
反射層のシンチレータ層形成予定面の凹凸が上記小さな凹凸である態様では、上記小さな凹凸の凸部の大きさが上記柱状径5.0μmよりも大きい柱状蛍光体結晶を成長させるためには不十分であるため、そのような柱状蛍光体結晶が成長しないと推察される。
また、該反射層の表面に、蒸着時に蒸着用基板の加熱温度や揮発した蛍光体などの温度で軟化しない凹凸があり、(2−2)反射層表面に面積平均粒子径が0.5μm以上の光散乱粒子の一部が露出しているなどして、温度で軟化しない上記大きな凹凸があっても、反射層のシンチレータ層形成予定面のJIS B 0601−2001に準じて測定した算術平均粗さ(Ra)が0.5μm以下であれば、上記柱状径が5.0μmを超える柱状蛍光体結晶は上記蒸着により形成されず、柱状蛍光体結晶が異常成長するなど実質的にしないことを見出した。反射層のシンチレータ形成予定面の上記算術平均粗さが上記範囲内である態様では、反射層のシンチレータ形成予定面に、上記柱状径5.0μmよりも大きい柱状結晶を成長させるためには十分な凹凸が存在しないため、該蛍光体の反射層の表面と接している面の柱状径が5.0μmを超える柱状結晶が成長しないものと推察される(シンチレータ層形成予定面の反射層表面の凹凸の状態が、実質的に上記第二の蒸着用基板の反射層表面の凹凸の状態と同等になっている為と推測される)。
そして、基材と該基材上に反射層が設けられ、該反射層が光散乱粒子とバインダー樹脂を含む蒸着用基板の反射層上にシンチレータ層を形成するにおいて、例えば、下記手順を踏めば、扱う蒸着用基板の条件などに併せて、効率よく、上記のようなシンチレータパネルを提供できることも見出した。
(i)反射層において光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没している蒸着用基板である場合、反射層の表面上にシンチレータ層を形成すればよい。
(ii)反射層において光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没しておらず、蒸着時に曝される熱で軟化しない凹凸が反射層表面に形成されている蒸着用基板である場合、
(ii−1)反射層上に、バインダー樹脂を含み光散乱粒子を含まない樹脂層を設けるなどして上記(i)の要件を満たす蒸着用基板としてから反射層の表面上にシンチレータ層を形成すればよく、
(ii−2)反射層上に上記樹脂層を設けるなどしない場合は、
(ii−2−1)反射層のシンチレータ層形成予定面側の該光散乱粒子の面積平均粒子径が0.5μm以下であれば、該反射層の表面上にシンチレータ層を形成すればよく、
(ii−2−2)反射層のシンチレータ層形成予定面側の該光散乱粒子の面積平均粒子径が0.5μmを超えるのであれば、該反射層の算術平均粗さが0.5μm以下である場合は、そのまま該反射層の表面上にシンチレータ層を形成すればよく、該反射層の算術平均粗さが0.5μmを超える場合は、該反射層の算術平均粗さが0.5μm以下となるような処理(カレンダー処理など)をしてから該反射層の表面上にシンチレータ層を形成すればよい。
そして、入手した蒸着用基板の反射層の表面状態が柱状結晶蛍光体の異常成長を誘導するようなものであっても、上記手順を踏むなどすることで、上記性能に優れるシンチレータパネルを提供できることも見出した。
なお、本明細書において、反射層との接触面における柱状蛍光体結晶の柱状径、あるいはシンチレータ層と反射層との層界面での柱状蛍光体結晶径とは、反射層側から蛍光体結晶に向かって、シンチレータ層と反射層の接触面(界面)から10μmの位置の高さにおける蛍光体の結晶の平均円相当径をいう。平均円相当径とは、柱状蛍光体結晶毎の上記高さにおける切断面の面積と同じ面積となる円の径の平均を意味する。
また、本明細書において、「膜付きの均一性」とは、シンチレータ層形成予定面とシンチレータ層の接触面内での接着力の均一性を意味し、膜付きが弱い部分が該接触面内に散在するシンチレータパネルは、断裁時に、その部分を起点として蛍光体層のひび割れや欠損が発生する(断裁性に劣る)。蒸着用基板やシンチレータパネルが膜付きの均一性に優れることは、該蒸着用基板やシンチレータパネルが断裁性に優れるための一要件である。
すなわち、上記課題を解決するための本発明に係るシンチレータパネルが有する第一の蒸着用基板は、支持体と、該支持体上に設けられた反射層とを有する蒸着用基板であって、前記反射層が、光散乱粒子とバインダー樹脂とを含み、かつ該光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没していることを特徴とする。
第一の蒸着用基板は、前記反射層の、前記支持体と接している面とは反対側の面の表面から、該支持体と接している面に向かって、光散乱粒子を含まない領域が存在し、該領域の厚さが0.05μm以上、20μm以下であることが好ましい。
また第一の蒸着用基板は、前記光散乱粒子を含まない層の厚さが0.05μm以上、20μm以下であることが好ましい。
前記反射層の、前記支持体と接している面とは反対側の面に、光散乱粒子を含まない層が別途形成されていてもよい。
上記課題を解決するための本発明に係るシンチレータパネルが有する第二の蒸着用基板は、支持体と、該支持体上に設けられた反射層とを有する蒸着用基板であって、前記反射層が、光散乱粒子及びバインダー樹脂を含み、かつ前記反射層の、前記支持体と接している面とは反対側の面の表面から、該支持体と接している面に向かって、0〜0.5μmの厚さの領域部分に存在する光散乱粒子の面積平均粒子径が、0.5μm以下であることを特徴とする。
上記課題を解決するための本発明に係るシンチレータパネルが有する第三の蒸着用基板は、支持体と、該支持体上に設けられた反射層とを有する蒸着用基板であって、前記反射層が、光散乱粒子及びバインダー樹脂を含み、かつ前記反射層の、前記支持体と接している面とは反対側の面の、JIS B 0601−2001に準じて測定した算術平均粗さ(Ra)が、0.5μm以下であることを特徴とする。
第三の蒸着用基板は、前記光散乱粒子が、アルミナ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ガラスおよび樹脂から選ばれる少なくとも一種からなることが好ましい。
第一〜第三の蒸着用基板(以下、総括して「蒸着用基板」ともいう)は、前記光散乱粒子が、少なくとも二酸化チタンを含むことがさらに好ましい。
本発明に係るシンチレータパネルは、上記蒸着用基板上に、ヨウ化セシウムと少なくともタリウム化合物、ナトリウム化合物、又はインジウム化合物から選ばれる少なくとも一種の賦活剤とを含み、蒸着により形成され、柱状結晶構造を有するシンチレータ層を有することを特徴とする。
本発明に係るシンチレータパネルは、前記シンチレータ層全面及び反射層の一部が、連続した保護膜により覆われていることが好ましい。
本発明に係るシンチレータパネルは、前記保護膜が気相法により形成されており、該保護膜が少なくともポリパラキシレン、ポリウレア、二酸化ケイ素(SiO2)から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
本発明に係る蒸着用基板によれば、断裁性に優れるとともに、X線画像などの放射線画像の鮮鋭性やその均一性に優れるシンチレータパネルが提供される。
本発明に係るシンチレータパネルは、断裁性に優れるとともに、X線画像などの放射線画像の鮮鋭性やその均一性に優れる。そして、本発明に係るシンチレータパネルによれば、上記のような特性に優れているので、受光面内で均一な画質を有し、シンチレータ層の発光取り出し効率が高く、平面受光素子とカップリングしてもシンチレータ層と平面受光素子の接触面での画像特性(得られる放射線画像の鮮鋭性など)の劣化が少ないフラットパネルディテクタを提供することができる。
また、本発明に係るシンチレータパネルは、感度やX線耐久性にも優れる。
図1は、シンチレータパネルの一例である放射線用シンチレータパネル10の構成の概略を示す断面図である。 図2は、放射線用シンチレータパネル10の拡大断面図である。 図3は、蒸着装置の一例である蒸着装置82の構成の概略を示す図である。 図4は、放射線画像検出器の一例である放射線画像検出器100の構成の概略を示す一部破断斜視図である。 図5は、撮像パネルの一例である撮像パネル51の拡大断面図である。 図6は、本発明に係る蒸着用基板の一例を示す断面図であり、各種材料や反射層のシンチレータ形成予定面(反射層の、支持体と接している面とは反対側の面)の表面の粗さの中心線(JIS B 0601−2001)を説明するものである。 図7は、本発明に係る蒸着用基板の製造方法の典型例を説明するための模式図である。 図8は、シンチレータパネルを断裁する断裁工程に用いられる方法の典型的例を説明するための模式図である。 図9は、シンチレータパネルをレーザーにより断裁するレーザー断裁の典型的例を説明するための模式図である。 図10は、シンチレータパネルのシンチレータ層の表面にポリパラキシレン膜からなる保護層を形成する方法の典型的例を説明するための模式図である。
以下に、本発明に係る蒸着用基板およびシンチレータパネルについて詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明に係る蒸着用基板は、支持体と、該支持体に設けられた特定の反射層とを含む。
本発明のシンチレータパネルは、遮光性を有する支持体と、該支持体上に設けられた反射層とを有するシンチレータパネルであって、
前記反射層が、光散乱粒子及びバインダー樹脂を含み、かつ
前記反射層の、前記支持体と接している面とは反対側の面の表面から、該支持体と接している面に向かって、0〜0.5μmの厚さの領域部分に存在する光散乱粒子の面積平均粒子径が0.5μm以下であることを特徴とする蒸着用基板を有する。
以下、各構成について順に説明する。
なお、本発明に係る「蛍光体(シンチレータ)」とは、入射された非可視光線であるX線やγ線等の放射線のエネルギー(通常、10nm以下)を吸収して、波長が300nm〜800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を発光する蛍光体をいう。
1.蒸着用基板
(1)本発明に係る第一の蒸着用基板は、支持体と、該支持体に設けられた反射層を有し、該反射層は、光散乱粒子とバインダー樹脂とを含み、かつ光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没している。
(2)本発明に係る第二の蒸着用基板は、支持体と、該支持体に設けられた反射層を有し、該反射層は、光散乱粒子とバインダー樹脂とを含み、かつ上記支持体と接している面とは反対側の面の表面から、該支持体と接している面に向かって、0〜0.5μmの厚さの領域部分に存在する光散乱粒子の面積平均粒子径が、0.5μm以下である。
(3)本発明に係る第三の蒸着用基板は、支持体と、該支持体に設けられた反射層を有し、該反射層は、光散乱粒子とバインダー樹脂とを含み、かつ前記反射層の、前記支持体と接している面とは反対側の面の、JIS B 0601−2001に準じて測定した算術平均粗さ(Ra)が、0.5μm以下である。
なお、本明細書において、面積平均粒子径とは、個々の粒子の投影面積と等価な円を以て該粒子の径と見なし、全粒子の径の数平均から算出されたものをいう。本発明の面積平均粒子径はフロー法によって算出される。フロー法とは、粒子を分散媒に均一に分散し、得られた分散体をフローセルに供し、該粒子がフローセルを通過する際に、光源からフローセルに光をあて、粒子がフローセル内を通過した時の投影像を、高感度CCDカメラで撮影し、解析用PCで該粒子の面積平均粒子径を算出する方法である。フロー法用測定器は、市販されている各種測定機を用いることができる。
また、本明細書において、算術平均粗さ(Ra)は、東京精密社製サーフコム1400Dにより測定した値を示す(カットオフ値:0.08mm、測定長:4.0mm)。
以下、各構成層及び構成要素等について順に説明する。
1−1.反射層
本発明に係る第一〜第三の蒸着用基板では、反射層は、支持体上に設けられ、光散乱粒子及びバインダー樹脂からなる。
本発明に係る第一〜第三の蒸着用基板において、支持体や反射層は、それぞれ、1層で形成されていても2層以上で形成されていてもよい。
反射層の膜厚は、必要とされる反射率によって適宜選択すればよいが、蒸着用基板や該蒸着用基板から提供されるシンチレータパネルの断裁性を優れたものとする観点、及び該シンチレータパネル面と受光素子面との密着性の観点から、通常5〜300μm、より好ましくは30〜150μmである。
蒸着用基板全体の厚さは、100 〜1000μmであることが好ましい。
本発明に係る第一の蒸着用基板では、光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没している。ここで、「光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没している」とは、反射層のシンチレータ形成予定面(前記支持体と接している面とは反対側の面)の表面の粗さの中心線(JIS B 0601−2001)よりも、光散乱粒子が下に(支持体側に)ある状態をいう(図6参照)。
本発明に係る第一の蒸着用基板においては、通常、該反射層の上記中心線より上部が光散乱粒子を含まず、蒸着時の基板加熱で容易に軟化するバインダー樹脂で形成されている面(反射層の支持体と接している面の反対面)を、シンチレータ層形成予定面とする。
通常、シンチレータ層形成予定面に存在する大きな凹凸などは、柱状蛍光体結晶の異常成長の要因になりえるが、本発明に係る第一の蒸着用基板においては、上記シンチレータ層形成予定面に大きな凹凸が存在していても、蛍光体を蒸着してシンチレータ層を形成する際に、曝される熱によって上記大きな凹凸が軟化して消失するか小さくなると推察される。
本発明に係る第一の蒸着用基板においては、蒸着により形成される柱状蛍光体結晶は、シンチレータ層形成予定面における大きな凹凸の有無や光散乱粒子の大きさに影響されることなく、正常かつ良好に成長し、鮮鋭性やその均一性に優れた放射線画像を提供でき、断裁性、受光面内における鮮鋭性の均一性に優れたシンチレータパネルなどを提供することができる。
本発明に係る第一の蒸着用基板では、上記反射層の、上記支持体と接している面とは反対側表面(シンチレータ形成予定面)の粗さの中心線(JIS B 0601−2001)から該支持体と接している面に向かって、0.05μm以上、20μm以下の厚さの領域に、光散乱粒子を含まないことが、蒸着工程で光散乱粒子が反射層の表面に露出するリスクを著しく低減できる、得られるシンチレータパネルの反射層の樹脂のみからなる領域における光拡散(ハレーション:得られる放射線画像の鮮鋭性の低下の原因となる)が発生するリスクを著しく低減できるなどの観点より好ましい。
上述の通り、本発明に係る第一の蒸着用基板では、反射層は1層で形成されていても、2層以上で形成されていてもよく、該反射層における上記光散乱粒子を含まない領域は、例えば、光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没した一層の反射層において形成されるような領域でもよいし、光散乱粒子がバインダー樹脂から露出している一層の反射層などに、別途バインダー樹脂を含み光散乱粒子を含まない樹脂層を積層して形成されるような領域のものでもよい(本発明においては、反射層を形成するための層は、光散乱粒子を含まなくても反射層の一部とする)。また、このように反射層に樹脂層を積層する場合は、積層した樹脂層は積層した状態のままでもよいし、得られた蒸着用基板を加熱処理して、反射層中の2つの層の界面の接着性を強固にするなどしてもよい。さらに、このような反射層に別途の反射層を積層してもよい。
上記反射層は、後述する蛍光増白剤、紫外線吸収剤、反射率調整の為の色材などを含んでいてもよい。
本発明に係る第二の蒸着用基板では、反射層の、支持体と接している面とは反対側の面の表面(シンチレータ形成予定面)の粗さの中心線(JIS B 0601−2001)から、該支持体と接している面に向かって、0〜0.5μmの厚さの領域部分に存在する光散乱粒子の面積平均粒子径が0.5μm以下である。上記のような大きさの光散乱粒子は、反射層のシンチレータ形成予定面に露出していても、反射層のシンチレータ形成予定面に蛍光体を蒸着する際に柱状蛍光体結晶が異常成長される要因となる大きな凹凸を形成する要因とはならないと推察され、光散乱粒子の一部が反射層の該支持体と接している面とは反対側の面の表面(シンチレータ形成予定面)上に存在し、該表面に(小さな)凹凸が形成されていても、該表面にシンチレータ層を蒸着により形成したときに、柱状蛍光体結晶の異常成長を引き起こす要因とならない。
従って、本発明に係る第二の蒸着用基板によれば、第一の蒸着用基板と同様に、鮮鋭性やその均一性に優れた放射線画像を提供でき、断裁性に優れたシンチレータパネルなどを提供することができる。
また、反射層の反射率をより効果的に高めることができるという観点より、上記の支持体と接している面とは反対面(シンチレータ形成予定面)の表面の粗さの中心線(JIS B 0601−2001)から、該支持体と接している面に向かって、0 〜0.5μmの厚さの領域部分以外、すなわち支持体側の領域部分は、面積平均粒子径に0.5μmより大きい光散乱粒子が含有されていることが好ましい。
本発明に係る第三の蒸着用基板では、反射層のJIS B 0601−2001に準じて測定した粗さ曲線要素の平均長さ(Ra)が0.5μm以下であるので、例えば、面積平均粒子径が0.5μmを超える光散乱粒子の一部が、反射層の表面上(表面の粗さの中心線より蒸着面側)(シンチレータ形成予定面)に存在していても、反射層のシンチレータ形成予定面全体としては、蒸着による柱状蛍光体結晶の異常成長の要因となる大きな凹凸が存在しないので、反射層のシンチレータ形成予定面にシンチレータ層を蒸着により形成したときに、シンチレータの結晶の異常成長は生じないと推察される。
従って、本発明に係る第三の蒸着用基板によれば、第一、第二の蒸着用基板と同様に、鮮鋭性やその均一性に優れた放射線画像を提供でき、断裁性に優れたシンチレータパネルなどを提供することができる。
本発明に係る第一〜第三の蒸着用基板の反射層は、X線などの放射線透過性の観点より、後述の反射層中に空隙を設ける方法などにより形成された空隙を有していてもよい。 この場合、反射層中の空隙容量(反射層の体積に対する空隙の体積の割合)が、5%〜30%であることが上記観点より好ましい。空隙容量は反射層の理論密度(空隙ない場合)と実密度の差から容易に算出できる。
また、本発明に係る第一〜第三の蒸着用基板の反射層の反射率は、得られる放射線画像の鮮鋭性などの観点より、10%〜95%であることが好ましい。
なお、本明細書において、反射率とは、分光式色差計SE−2000型(日本電色工業(株)製)を用い、JIS Z−8722に基づいて300〜700nmの範囲の分光反射率から算出される値である。特に反射波長の指定がない場合は波長550nmでの反射率を意味する。
以下の構成要素は、本発明に係る第一から第三の蒸着用基板に共通である。
1−1−1.光散乱粒子
本発明の蒸着用基板における反射層に含有される光散乱粒子は、シンチレータ層で生じた発光光の反射層内の光拡散を防止するとともに、反射層に到達した発光光をシンチレータ層の柱状結晶内に効果的に戻す機能を有する。
これらの光散乱粒子は、後述するように、市販のものを用いてもよいし、既知の方法に従って製造してもよい。
光散乱粒子は、反射層を構成するバインダー樹脂と異なる屈折率を有する粒子状材料であれば特に限定されるものではなく、その材料としては、アルミナ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ガラスおよび樹脂などを挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい(上記において、ガラス、樹脂のように別カテゴリーのものを2種以上用いてもよいし、例えば樹脂におけるアクリル樹脂やポリエステル樹脂のように、同じカテゴリー内で2種以上のものを用いてもよいし、ガラス、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のように別カテゴリーのものと同じカテゴリーのものがそれぞれ1種または2種以上混在していてもよい)。
これらの中では、例えば、ガラスビーズ、樹脂ビーズ等、特にガラスビーズは、金属酸化物と比べて、屈折率を任意に設定できるため、光拡散性を制御し易い特徴があり、このましい。
ガラスビーズはより高屈折率のものが好ましく、例えばBK7(n=約1.5、nは相対屈折率、以下同じ);LaSFN9(n=約1.9);SF11(n=約1.8);F2(n=約1.6);BaK1(n=約1.6);チタン酸バリウム(n=約1.9);高屈折率青ガラス(n=約1.6〜1.7);TiO2−BaO(n=約1.9〜2.2);ホウケイ酸塩(n=約1.6);またはカルコゲナイドガラス(n=約2またはそれよりも高い);などがあげられる。また樹脂ビーズとしてはアクリル粒子、ポリエステル樹脂粒子、ポリオレフィン粒子、シリコン粒子等が挙げられ、具体的にはケミスノー(登録商標)(綜研化学(株)製)、(信越化学工業(株)製)、テクポリマー(登録商標)(積水化成品工業(株)製)等を好適に用いることができる。
二酸化チタン(TiO2)などの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射し、屈折させることによりシンチレータの発光を容易に散乱し、本発明に係る蒸着基板にシンチレータ層が形成されたシンチレータパネルを含む放射線画像変換パネルなどの感度を顕著に向上させることができる。
光散乱粒子としては、入手の容易性及び高い屈折率を有する点から、二酸化チタン(TiO2)が特に好ましい。
光散乱粒子として二酸化チタンを使用する場合は、二酸化チタンは、分散性および作業性を改良するために、無機化合物や有機化合物で表面処理を施したものであってもよい。上記表面処理した二酸化チタンやその表面処理方法は、例えば、特開昭52−35625号、特開55−10865号、特開57−35855号、特開62−25753号、特開62−103635号および特開平9−050093号等に開示されているものを採用することができる。上記表面処理には、酸化アルミニウム水和物、含水酸化亜鉛、二酸化珪素などの無機化合物や、2〜4価のアルコール、トリメチロールアミン、チタネートカップリング剤やシランカップリング剤などの有機化合物を表面処理剤として好ましく用いることができる。これら表面処理剤の使用量は、上記特許文献などに示されているように、それぞれの目的に応じて選択できる。
二酸化チタンとしては、ルチル型、ブルッカイト型、および、アナターゼ型のいずれの結晶構造を有するものであってもよいが、樹脂の屈折率との比率が大きく、高輝度を達成できることや可視光の反射率などの観点からルチル型のものが特に好ましい。
酸化チタンとしては、具体的には、例えば塩酸法で製造されたCR−50、CR−50−2、CR−57、CR−80、CR−90、CR−93、CR−95、CR−97、CR−60−2、CR−63、CR−67、CR−58、CR−58−2、CR−85、 硫酸法で製造されたR−820、R−830、R−930、R−550、R−630、R−680、R−670、R−580、R−780、R−780−2、R−850、R−855、A−100、A−220、W−10(以上商品名:石原産業(株)社製)などが挙げられる。
酸化チタンの面積平均粒子径は、市場流通品として入手が容易である観点から、0.1〜5.0μmが好ましく、0.2〜0.3μmがさらに好ましい。また、酸化チタンとしては、ポリマーとの親和性、分散性を向上させるためやポリマーの劣化を抑えるためのAl、Si、Zr、Znなどの酸化物で表面処理されたものが特に好ましい。
但し、光散乱粒子として酸化チタンを使用する場合は、400nm以下の光の反射率が低くなる、また酸化チタンの光触媒作用によりバインダーが劣化する傾向があるなどの観点から、少なくとも400nm以下の波長でも高い反射率を有する硫酸バリウム、アルミナ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種類の光散乱粒子と併用すること好ましい。これらの中でも、特に400nm以下の波長域での反射率が高いという観点から、硫酸バリウムがより好ましい。硫化バリウムの質量と二酸化チタンの質量の割合は、好ましくは95:5〜5:95、より好ましくは20:80〜5:95であることが、同観点より好ましい。
また、光散乱粒子は、中実粒子および空隙粒子から選ばれる少なくとも一種からなることが好ましい。
空隙粒子としては、空隙を有している限り特に制限はなく、例えば、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、多孔質粒子、などが挙げられ、これらは目的に応じて適宜選択することができる。
これら空隙粒子の中では、バインダー樹脂で空隙部が埋まってしまうことがない単一中空粒子及び多中空粒子が好ましい。
ここで、空隙粒子とは、中空部や細孔などの空隙を有する粒子をいう。
「中空部」とは、粒子内部の空孔(空気層)のことをいう。
中空粒子は、空孔(空気層)と外殻部(樹脂層等)との屈折率差によって中実粒子にはない光の反射特性、拡散特性を反射層に付与することができる。
多中空粒子とは、粒子内部にこのような空孔を複数有する粒子である。また多孔質粒子とは粒子に細孔を有するものであり、細孔とは粒子の表面から粒子の内部へ向かって凹状に窪んだ部分のことである。細孔の形状としては、例えば、空洞形状であったり、針や曲線のように粒子内部や中心へ向かって窪んだ形状、またそれらが粒子を貫通した形状等が挙げられる。細孔の大きさや容積は大小様々でよく、特にこれらに限定されるものではない。
前記空隙粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前述の材料が挙げられ、中でもスチレン・アクリル共重合体等の熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。
前記空隙粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも日本ゼオン株式会社製)、SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
多中空粒子としては、富士シリシア社製のサイロスフエアー(登録商標)やサイロホービック(登録商標)などが好適に使用できる。
これらの空隙粒子のなかでも、空隙率の大きさの点から単一中空粒子が特に好ましい。
光散乱粒子として空隙粒子を使用する場合は、光散乱粒子が、これら形状の粒子うち、
1種の形状の粒子のみで構成されていてもよいし、2種以上の空隙粒子を含んでいてもよい。また中実粒子と空隙粒子を併用してもよい。
また、これら空隙粒子と白色顔料を併用することで、二酸化チタン、アルミナ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウムなどの白色顔料が、その表面に水分(H2O)や二酸化炭素(CO2)を吸着し、これらを、熱やX線などのエネルギーにより放出しシンチレータ特性を劣化させることを防止できる。すなわち、空隙粒子と白色顔料とを併用することで、白色顔料からの水分(H2O)や二酸化炭素(CO2)等の不純ガスの放出が抑制され、シンチレータ特性の劣化が防止される。
また、白色顔料表面からの水分(H2O)や二酸化炭素(CO2)の脱離に起因するシンチレータ劣化防止の別の方法として、白色顔料とバインダー樹脂とからなる反射層内に多数の気泡を形成しておく方法も有効である。この方法を採用すると、反射層内において屈折率差の大きい白色顔料と、気泡とが接触するため、反射層を構成する材料間の反射率の差がより大きくなり、反射層の反射率も向上する。その詳細については、蒸着用基板の製造方法の項目で述べるので、ここでは省略する。
光散乱粒子の面積平均粒子径は、反射層の反射率や表面のひび割れ、反射層を形成するために作製する塗布液(以下、「反射層形成用塗布液」ともいう。他の用途の塗布液も同様。)の安定性等を考慮すると、0.1μm〜10.0μmが好ましい。光散乱粒子の面積平均粒子径がこのような範囲にあると、反射層の光散乱が効率的に生じ、透明性が低くなり、反射率が向上し、また、反射層の塗布液の経時安定性が増加し、塗布後の乾燥により反射層にひび割れが発生しない。但し、第二の蒸着用基板においては、上述の通り、光散乱粒子の面積平均粒子径の上限は0.5μmである。
光散乱粒子の粒度分布は、反射層形成用塗布液の安定性の観点から、0.05〜20.0μmの範囲にあることが好ましい。
光散乱粒子は、反射層を構成する成分の合計体積100体積%中、10〜60体積%となる量で含まれていることが好ましい。
また、本発明に係る蒸着用基材における反射層には、空隙が5〜30体積%の量で含まれることが好ましい。
特に、光散乱粒子として酸化チタンなどの白色顔料を使用する場合は、酸化チタンは反射層を構成する成分の合計100重量%中、40〜95重量%含まれていることが好ましく、60〜90重量%含まれていることが特に好ましい。酸化チタンがこのような範囲で反射層に含まれていると、反射層の反射率が向上し、反射層と支持体や蛍光体との接着性が向上する。
1−1−2.バインダー樹脂
バインダー樹脂は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されず、適宜入手した市販のものであってもよいし、適宜製造したものであってもよい。
バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルアクリロニトリル共重合体、ブタジエンアクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレンブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。これらの中では、蒸着により形成される蛍光体の柱状結晶および支持体に対する膜付性に優れる点で、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の疎水性樹脂であることが好ましい。
バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、蒸着時に樹脂が軟化しやすいという観点からは、蒸着時に生じる蒸気クラスターの温度以下(通常400℃未満)であることが好ましく、蒸着時の基板温度以下であることがより好ましい。
ガラス転移温度が上記基板温度以下の樹脂をバインダー樹脂として用いることがより好ましいが、蒸着時のCsIなどの蛍光体の蒸気クラスターは通常400℃以上であり、該上記クラスターの熱によってもバインダー樹脂を軟化させることができるので、ガラス転移温度が基板温度よりも高く上記クラスターの温度以下である樹脂もバインダー樹脂として好ましく用いることができる。
バインダー樹脂は、蒸着により形成される蛍光体の柱状結晶および支持体に対する膜付性に優れる点で、ガラス転移温度(Tg)が、−30〜100℃のポリマーであることが好ましい。
上記バインダー樹脂の中でも、蒸着により形成される蛍光体の柱状結晶および支持体に
対する膜付性により優れる点から、上記ガラス転移温度を有するポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の疎水性樹脂が特に好ましい。
上記バインダー樹脂は、上記1種単独であってもよいし、2種以上からなっていてもよい。
1−1−3.その他成分
本発明に係る蒸着用基板では、光散乱粒子および樹脂バインダーを含む反射層中に、本発明の目的を損なわない範囲内で、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤などの添加剤が含有されていてもよい。その他添加剤としては、例えば、有機および/または無機の微粒子(本明細書において、光散乱粒子やある特定の添加剤として記載されているものを除く)、架橋剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、有機の滑剤、核剤、カップリング剤などを用いることができる。これら添加剤は、反射層のいかなる領域に含有されていてもよく、例えば第一の蒸着用基板の反射層において、支持体と接触している面とは反対側の面付近の光散乱粒子を含まない領域に含有されていてもよいし、その他領域に含有されていてもよい。
<蛍光増白剤、紫外線吸収剤>
反射層は、該反射層の反射率の向上や該反射層中のバインダーの黄化防止の観点より、蛍光増白剤および紫外線吸収剤のうち、少なくとも1つを含むことが好ましい。
蛍光増白剤とは、波長300〜400nmの紫外線を吸収し、400〜450nmの青色の可視光線に変えて放出する特性を有するものをいう。
蛍光増白剤の作用などについて、蛍光体がCsIである場合を例に挙げて、以下に説明する。
Tlを賦活剤として賦活されたCsI(Tl)の最大発光波長は560nm程度、Naを賦活剤として賦活されたCsI(Na)の最大発光波長は420nm程度であるが、賦活剤で賦活されていないCsI(pure)の最大発光波長は315nm程度であるため、賦活剤をドープした系であっても、母体であるCsI(pure)に起因する中心波長315nm付近の発光が存在する。その一方、放射線変換パネルの受光素子は、賦活剤をドープしたCsIの中心波長域の感度が高くなるように設計することがエネルギー変換効率の点で好ましく、そのように設計された受光素子においては、400nm以下の低波長域の発光光は、放射線画像形成に有効に利用されない。それに加えて、光散乱粒子が二酸化チタンである場合、蛍光増白剤は、二酸化チタンの400nm以下における光の反射率の低さを補ったり(蛍光増白剤により300〜400nmの紫外線が400〜450nmの可視光に変換されれば、二酸化チタンは該可視光を適度な反射率で反射する)、二酸化チタンが400nm以下の光による光触媒作用により反射層を構成するバインダー樹脂を劣化させることを防止したりする(蛍光増白剤により300〜400nmの紫外線が400〜450nmの可視光に変換して、酸化チタンが光触媒作用を生じるような波長の光が消失する)などの点でも有用である。
また、第一の蒸着用基板においては、蛍光増白剤は、反射層において、支持体と接している面とは反対側の面に設けられる光散乱粒子を含まない領域に分布していることが、反射効率、バインダー樹脂の変質の防止、反射層の白度などの観点より好ましい。
そのような蒸着用基板においては、シンチレータ層は、第一の蒸着用基板の反射層の上記光散乱粒子を含まない領域側の表面に形成されるため、上記光散乱粒子を含まない領域が二酸化チタンを含む領域よりもシンチレータ層に近く、蛍光増白剤がシンチレータ層で発光した波長300〜400nmの紫外光を光散乱粒子としての二酸化チタン粒子に到達する前に可視光線に変換できるため、次いで二酸化チタンを含む層で二酸化チタンにより該可視光を適度な反射率で反射でき、上記紫外光による酸化チタンの光触媒作用によるバインダー樹脂の変質も防止できる。
また、特定の蛍光増白剤を特定の光反射粒子や顔料と共に用い、それらを接触させると、蛍光増白剤と光反射粒子や顔料とが反応してしまい、かえって反射層の白色度を低下させてしまうことがあるが、上記のような蛍光増白剤が光反射粒子を含まない(この場合は顔料も含まない)領域に分布している蒸着用基板では、該領域とは別の領域に分布している光反射粒子や顔料と接触しないため、反射層の白度が低下することを防止できる。
本発明に使用される蛍光増白剤は、例えば、耐溶剤性の観点からは、特に、英国特許第786,234号に記載された置換スチルベン、置換クマリンや米国特許第3,135,762号に記載された置換チオフェン類などが有用であり、その他にも特公昭45−37376号、特開昭50−126732号各公報に開示されているような蛍光増白剤が挙げられるが、特にこれらに限定されない。より具体的には、例えば、商品名"ユビテック"(チバガイギー社製)、"OB−1"(イーストマン社製)、"TBO"(住友精化社製)、"ケイコール"(日本曹達社製)、"カヤライト"(日本化薬社製)、"リューコプア"EGM(クライアントジャパン社製)等が挙げられる。蛍光増白剤は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これら蛍光増白剤の中でも、特に耐熱性に優れ、樹脂バインダーとの相溶性がよく均一分散できるとともに、着色が少なく、樹脂に悪影響を及ぼさないものを用いることが望ましく、そのような蛍光増白剤の中でも特に"OB−1"(イーストマン社製)が、上記効果がより高い観点から好ましい。
蛍光増白剤の添加量は、濃度消光(反射層中の蛍光増白剤の濃度が高すぎると蛍光発光よりも蛍光増白剤間のエネルギー移動が主となり、蛍光強度が得られにくくなる)の観点から、バインダー樹脂100重量部に対して、000.5〜2重量部であることが好ましく、0.05〜1重量部であることが更に好ましい。
また、シンチレータ層で生じた上記紫外領域の電磁波を二酸化チタンに到達する前に消失させてバインダー樹脂の変質を防止するという観点からは、紫外線吸収剤を使用することもできる。紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機系としてはベンゾトリアゾル化合物(米国特許第3533794号明細書参照)、4−チアゾリドン化合物(米国特許第3352681号明細書参照)、ベンゾフェノン化合物(特開昭46−2784号公報参照)、紫外線吸収ポリマー(特開昭62−260152号公報参照)が挙げられ、無機系紫外線吸収剤としては、一般的に知られているもの、例えば酸化亜鉛、酸化セリウムなどが挙げられる。有機系および無機系のうちでは、無機系が耐久性の面で好ましい。これらのうち、酸化亜鉛、酸化セリウムは、反射層内からブリードアウトしづらくより好適である。中でも、酸化亜鉛が、経済性、紫外線吸収性の点で最も好ましい。かかる酸化亜鉛としては、FINE×−25LP、FINE×−50LP(堺化学工業社製)などが挙げられる。また、紫外線吸収剤は市販品でもよく、例えば、紫外線吸収剤を含む反射層が、酸化亜鉛とポリエステル樹脂系樹脂の分散塗料である紫外線吸収塗料"スミセファイン"(登録商標)ZR−133(住友大阪セメント(株)製)などを支持体に塗装することで形成されていてもよいし、有機系紫外線吸収剤としてハルスハイブリッド(登録商標)UV−G13((株)日本触媒製)などが反射層に含まれていてもよい。
紫外線吸収剤が無機系紫外線吸収剤である場合は、該紫外線吸収剤の粒子の分散性を向上させる観点から、表面を化学処理することが好ましい。かかる化学処理の方法については特に限定されないが、無機系紫外線吸収剤に、X線により劣化あるいは黄変色しない性質や良好な分散性を付与できる方法が好ましく、AlやSiの酸化物又は水酸化物で無機系紫外線吸収剤の表面を処理する方法が、上記効果がより高い観点から最も好ましい。
<色材>
反射層は、反射層の反射率の調整の観点から、色材によって着色されていてもよい。
色材としては、他の波長の光よりも光散乱しやすい赤色の長波光成分を吸収できるものがよく、青色の着色材が好ましい。例えば、ウルトラマリン青、プロシア青(フエローシアン化鉄)等が好ましい。また、色材としてフタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド、カルボニウム等の有機青色顔料も用いることができる。これらの中でも、放射線耐久性、紫外線耐久性などの観点から、フタロシアニンがより好ましい。またチタン系黒色顔料のチタンブラックなども好適に使用することができる。チタンブラックとは二酸化チタンから酸素の一部を取り除くことで黒色化したものであり、特に光散乱粒子として二酸化チタン使用する場合には、二酸化チタンと比重が同じであるため反射層形成用塗布液の安定性が高く、二酸化チタンとチタンブラックの混合比を調整することで、容易に蒸着用基板の反射率を調整することができるメリットがある。
1−2.支持体
支持体の材料としては、X線等の放射線を透過させることが可能な、各種のガラス、高分子材料、金属等が挙げられる。より具体的には、例えば、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス;サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体;又、セルロースアセテートフィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、炭素繊維強化樹脂シート等の高分子フィルム(プラスチックフィルム);アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート或いは該金属酸化物の被覆層を有する金属シート;バイオナノファイバーフィルムなどを用いることができる。
上記支持体の材料の中でも、特に、厚さ50〜500μmの可とう性を有する高分子フィルムが好ましい。 ここで、「可とう性を有する」とは、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000Nmm2であることをいう。
また、「弾性率」とは、JIS K 7161に準拠して、引張試験機を用い、JIS−C2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めた値である。これがヤング率と呼ばれる値であり、本明細書においては、かかるヤング率を弾性率と定義する。
支持体は、上記120℃での弾性率(E120)が、100Nmm2〜20000Nmm2であることが好ましく、1000Nmm2〜6000Nmm2であることがより好ましい。
可とう性を有する高分子フィルムとしては、ポリエチレンナフタレート(E120=4100Nmm2)、ポリエチレンテレフタレート(E120=1500Nmm2)、ポリブチレンナフタレート(E120=1600Nmm2)、ポリカーボネート(E120=1700Nmm2)、シンジオタクチックポリスチレン(E120=2200Nmm2)、ポリエーテルイミド(E120=1900Nmm2)、ポリアリレート(E120=1700Nmm2)、ポリスルホン(E120=1800Nmm2)、ポリエーテルスルホン(E120=1700Nmm2)、ポリイミド(E120=4900Nmm2)等からなる高分子フィルムが挙げられる。なお、E120の値は、同種の高分子フィルムでも変動しうるので、必ずしもE120が括弧内の値になるわけではないが、目安として一例を示したものである。
特に、ポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルム等が、ヨウ化セシウムを原材料として気相法にて蛍光体(シンチレータ)の柱状結晶を反射層上に形成する場合に好適である。
可とう性を有する高分子フィルムは1種単独であってもよいし、上記高分子の混合物のフィルムであってもよいし、同種または異種の2層以上の積層体であってもよい。
また支持体がバイオナノファイバーフィルムである場合は、バイオナノファイバーフィルムが、(i)軽い、(ii)鉄の5倍以上の強度がある(高強度)、(iii)熱で膨張しにくい(低熱膨張性)、(iv)フレキシブルである(可とう性に優れる)、(v)混ぜる、塗る、フィルム状にするなど様々な処理ができる、(vi)植物繊維が材料で燃やす事が出来るなど、既存のガラスやプラスチックでは得られない特性を有することから、支持体の特性や環境上のメリットが享受できる。
また、蒸着用基板の支持体が、厚さ50μm以上500μm以下の高分子フィルムであると、該蒸着用基板の支持体を含むシンチレータパネルと平面受光素子面とを貼り合せる際に、シンチレータパネルが平面受光素子面の形状に合った形状に変形することから、蒸着用基板の変形や蒸着時の反りなどがあっても、シンチレータパネルと平面受光素子面とが均一に密着するので、フラットパネルディテクタの受光面全体において、均一な放射線画像の鮮鋭性が得られる(シンチレータパネルと平面受光素子面とが不均一に密着して、フラットパネルディテクタの受光面全体で、得られる放射線画像の鮮鋭性が不均一とならない)。
支持体は、上記材料からなる層の他に、例えばその反射率を調整する目的で、遮光層および/または光吸収性の顔料層を含んでいてもよい。また、支持体は、例えばその反射率を調整する目的で、光吸収性や光反射性が付与されていてもよいし、着色されていてもよい。
遮光層や顔料層は、別途のフィルムに設けられたものであってもよい。これについては後述のその他の層の項目で説明する。
遮光性又は光吸反射性である支持体としては、各種金属板やアモルファスカーボン板などが挙げられ、金属板を支持体として使用する場合は、X線の透過性及び取扱性の観点から、厚みが0.2mm以上2.0mm以下のアルミニウム板が好ましい。
着色された支持体としては、顔料や染料などの色材(顔料がより好ましい)が混入された樹脂フィルムであることが、蒸着用基板の反射率を調製する観点より好ましい。
該樹脂としては、上記で例示したバインダー樹脂が挙げられ、該顔料としては、アゾ基を有する難溶性(20℃の水100gに溶ける質量が通常1g未満)アゾ顔料やフタロシアニンブルー、チタンブラック等、一般に使用される有機系又は無機系着色顔料を使用できる。
より具体的には、例えば、ファーストエロー、ジスアゾエロー、ピラゾロンオレンジ、レーキレッド4R、ナフトールレッドなどの不溶性アゾ顔料;クロモフタルエロー、クロモフタルレッドなどの縮合アゾ顔料;リソールレッド、レーキレッドC、ウオッチングレッド、ブリリアントカーミン6B、ボルドー10Bなどのアゾレーキ顔料;ナフトールグリーンBなどのニトロソ顔料;ナフトールエローSなどのニトロ顔料;フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン顔料;アントラピリミジンエロー、ペリノンオレンジ、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルーなどのスレン顔料;キナクリドンレッドキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料;ジオキサジンバイオレットなどのジオキサジン顔料;イソインドリノンエローなどのイソインドリノン顔料;ピーコックブルーレーキ、アルカリブルーレーキなどの酸性染料レーキ;ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、マラカイトグリーンレーキなどの塩基性染料レーキ;等が挙げられる。
該顔料は、バインダー樹脂100重量部に対して0.01 〜10重量部であることが好ましい。顔料の量が上記範囲にあると、十分な塗膜色が得られ、それ以上着色度が変化しないにもかかわらず過剰に顔料を添加してしまい支持体の樹脂の伸びや強度等の機械的物性が劣化することを防止できる。
1−3.その他の層
蒸着用基板は、必要に応じて、上記反射層および支持体の他に、別途の層を含んでいてもよい。
蒸着用基板にシンチレータ層を形成して得られるシンチレータパネルにおいては、シンチレータの発光効率と得られる放射線画像の鮮鋭性とは、一般に、放射線画像検出装置の用途に応じて、所望の値に調整することが好ましい。例えば口腔内撮影用では、細かで複雑な構造を有する歯神経も撮影対象となる為、鮮鋭性の高い放射線画像を提供できることが要求される。また小児撮影用では、放射線の影響を受けやすい小児の放射線被ばくを極力抑えるという観点から、シンチレータが高い発光効率を有することが要求される。
本発明に係る蒸着用基板においては、以下のようにして、必要に応じて、蒸着用基板の反射率を調整することで、該蒸着用基板にシンチレータ層を形成して得られるシンチレータパネルのシンチレータの発光効率と得られる放射線画像の鮮鋭性とを所望の値に調整できる。
蒸着用基板の反射層の反射率の調整は、例えば、反射層と支持体以外に遮光層や光吸収性の顔料層のうち少なくとも1層を設けて、蒸着用基板の反射率を調節したり、蒸着用基板の反射層や支持体層自体を着色して、反射率を適切に調整したりして達成される。
蒸着用基板に遮光層や光吸収性の顔料層が設けられている態様では、該遮光層や顔料層は、支持体の、反射層が形成されている面の側に設けられている。
上記遮光層や顔料層は、遮光層または顔料層が設けられたフィルムを積層することにより、形成されていてもよい。
支持体自体が遮光性又は光吸反射性である蒸着用基板、反射層自体が色材で着色されている蒸着用基板の詳細については、支持体や反射層を説明する項目で述べた通りである。
これらの中でも、特に、反射層自体を色材で着色して反射率を調整する方法が、白色顔料およびバインダー樹脂の分散液に色材を配合して支持体上に塗布するという簡易な方法を採用できる観点からより好ましい。
上記反射層の反射率を調整する手法は、1種単独で採用されてもよいが、少なくとも2種を組み合わせて採用することが、蒸着用基板の反射層の反射率を所望の値により精度よく調整しやすいことなどから好ましい。遮光層と顔料層を併用する場合は、支持体側から遮光層、顔料層の順に設けることが、同観点より好ましい。
以下、遮光層及び光吸収性の顔料層について説明する。
光吸収性の顔料層は、光吸収性で、着色されていれば特に制限されず、例えば、顔料およびバインダー樹脂を含む層である。顔料層の顔料としては、従来公知の顔料も使用可能である。顔料は、より光散乱しやすい赤色の長波光成分を吸収するものの方がよく、青色の着色材が好ましい。そのような青色の着色材としては、例えば、ウルトラマリン青、プロシア青(フエローシアン化鉄)等が好ましい。また、有機青色顔料としては、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド、カルボニウム等を用いることができる。これらの中でも、光吸収性の顔料層の放射線耐久性、紫外線耐久性などの観点から、フタロシアニンが好ましい。また、顔料層のバインダー樹脂は、上記反射層の項目で述べたものなどが挙げられる。顔料は、バインダー樹脂100重量部に対して0.01〜10の量であることが、放射線画像の鮮鋭性向上の観点から好ましい。
遮光層は、遮光性を有する材料を含む。
遮光層は、遮光性を有する材料として、アルミニウム、銀、白金、パラジウム、金、銅、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、ステンレス等のうち1種または2種以上の元素を含む金属材料により形成されたものであることが、支持体の反射率をより精度よく調整できる観点より好ましい。中でも、遮光層に優れた遮光性、耐食性を付与できる観点から、アルミニウムもしくは銀を主成分とする金属材料が特に好ましい。また、遮蔽層は、1層の上記金属薄膜からなっていてもよいし、2層以上の上記金属薄膜からなっていてもよい。
支持体と遮光層の密着性を向上させる観点より、支持体と反射層の間に中間層を設けることが好ましい。中間層を構成する材料としては、一般的なアンカーコート剤(例えばイソシアネート系化合物、ポリエチレンイミン、変性ポリブタジエン、有機チタネート系化合物等)の他、遮光層の金属とは異なる金属(異種金属)が挙げられる。異種金属としては、例えば、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、チタン、ジルコニウム、モリブデンおよびタングステンが挙げられる。中間層は、これら異種金属を1種単独で含んでいても2種以上を含んでいてもよく、中でもニッケル、クロムを単独、もしくは双方を含んでいることが、支持体と遮光層の密着性がより向上する観点より好ましい。遮光層の厚さは、発光光取り出し効率の観点から、好ましくは0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.2μmである。
このような金属材料による遮光層は、帯電防止層としても機能する為、帯電防止目的でも好適に使用することができ、帯電防止層を形成する方法として、前述の反射層内に帯電防止剤を添加する方法に替えてあるいは共に採用することもできる。この場合、反射層の、支持体と接している面とは反対側の表面で測定した表面抵抗値は、蒸着用基板の帯電防止の観点から、1.0×1012Ω/□以下が好ましく、1.0×1011Ω/□以下がさらに好ましく、1.0×1010Ω/□以下が最も好ましい(Ω/□の□は平方の意味で無次元、以下同じ。)。
以上説明したように、本発明に係る蒸着用基板によれば、シンチレータ層形成予定面(反射層の、支持体と接触している面とは反対側の面)が、柱状蛍光体結晶の異常成長などを生じずに蒸着により均一なシンチレータ層を形成できるように調整されているので、得られる放射線画像の鮮鋭性とその均一性に優れるシンチレータパネルなどを提供でき、また断裁性に優れる。その結果、本発明に係る蒸着用基板やそれを含むシンチレータパネルを断裁処理に供しても、局所的なひび割れなどを生じることがない。また、目的のサイズの蒸着用基板やそれを含むシンチレータパネルを製造する際に、該サイズの蒸着用基板を一つ一つ作成する必要がなく、目的のサイズよりも大きなサイズの蒸着用基板やそれを含むシンチレータパネルを製造し、次いで、該蒸着基板やそれを含むシンチレータパネルを目的のサイズに断裁するということも可能であるので、ロット内やロット間で品質の均一な蒸着用基板やそれを含むシンチレータパネルを提供することができる。
2.シンチレータパネル
本発明に係るシンチレータパネルは、上記蒸着用基板上にヨウ化セシウムなどから選ばれる少なくとも一種の賦活剤とを含み、蒸着により形成され、柱状結晶構造を有するシンチレータ層を有する。
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、反射層、及びシンチレータ層の他に後述する保護層を設けることが好ましい。また、本発明のシンチレータパネルにおいては、反射層のシンチレータ層が形成された面とは反対側の面に光吸収性の顔料層が形成されていてもよい。さらに、本発明のシンチレータパネルは、支持体よりも剛性の高いサポート板に保持されていてもよい。 以下、本発明に係るシンチレータパネルの各構成層及び構成要素等について順に説明する。
2−1.支持体、反射層
支持体、反射層自体については、蒸着用基板と同様であるので、ここでは説明を省略する。
本発明のシンチレータパネルにおける反射層は、支持体とシンチレータ層の間に存在し、光散乱粒子及びバインダー樹脂を含むので、シンチレータパネルの発光取り出し効率が向上する。
2−2.シンチレータ層
本発明に係るシンチレータパネルのシンチレータ層は、前記シンチレータ層と前記反射層の層界面から柱状結晶が成長して形成されていることが好ましい。
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、前記シンチレータ層と前記反射層の層界面から10μmの位置での柱状蛍光体結晶の断面積と同じ面積となる円の径として算出した平均円相当径が、5.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
シンチレータ層を形成する材料としては、従来公知の蛍光体、例えばNaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr、CsIなどが挙げられるが、その中でも、ヨウ化セシウム(CsI)が、X線から可視光に対する変更率が比較的高く、蒸着によって容易に柱状結晶を形成し、該結晶構造に起因する光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、その分蛍光体層の厚さを厚くすることが可能である観点から好ましい。
以下、CsIを例に挙げて、さらに説明する。
CsIのみでは発光効率が低いことから、シンチレータ層は、CsIと共に各種の賦活剤を含むことが好ましい。そのようなシンチレータ層としては、例えば、特公昭54−35060号公報に開示されているような、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)とが任意のモル比で存在するシンチレータ層が挙げられる。また、例えば特開2001−59899号公報に開示されているような、CsIとタリウム(Tl)、ユーロピウム(Eu)、インジウム(In)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)などの賦活物質とが任意のモル比で存在するシンチレータ層が好ましい。
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、特に、1種類以上のタリウム化合物を含む賦活剤とヨウ化セシウムとを原材料とするシンチレータ層が好ましく、中でもタリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)が、300nm〜750nmまでの広い発光波長をもつことから好ましい。
上記タリウム化合物としては種々のタリウム化合物(+Iと+IIIの酸化数の化合物)を使用することができる。例えば、沃化タリウム(TlI)、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)、フッ化タリウム(TlF、TlF3)等が挙げられ、中でもCsIの発光強度に優れる観点から、沃化タリウム(TlI)が好ましい。
また、タリウム化合物の融点は、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。タリウム化合物の融点が上記範囲内であると、蒸着により形成されたシンチレータ層において、賦活剤が柱状結晶内に均一に分布し、発光効率が向上する。なお、本明細書において、融点とは、常圧下(通常約0.101MPa)における融点である。
本発明に係るシンチレータパネルのシンチレータ層において、賦活剤のシンチレータ層における相対含有量は0.1〜5モル%が好ましい。
ここで、本明細書において、賦活剤の相対含有量とは、蛍光体母体化合物1モルを100モル%としたときの賦活剤のモル%で示される。
また、蛍光体母体化合物とは、賦活剤によって賦活されていないCsIなどの蛍光体そ
のものをいう。なお、蛍光体母体化合物や賦活剤などシンチレータ層を形成する原料とな
るものを総じて蛍光体原材料という。
シンチレータ層は、1層からなっていてもよいし、2層以上からなっていてもよい。
シンチレータ層の中でも、蛍光体母体化合物と賦活剤とからなるシンチレータ本層と、支持体と該シンチレータ本層との間に設けられ、蛍光体母体化合物と賦活剤からなり、空隙率が該シンチレータ本層よりも高く、柱状結晶状のシンチレータ下地層からなるシンチレータ層がより好ましい。この場合、シンチレータ下地層の平均円相当径は0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましい。
ここで、本明細書において、空隙率とは、シンチレータ下地層を含む柱状結晶の任意の位置で、シンチレータ層を支持体の平面に平行に切断した断面において、柱状蛍光体結晶の断面積および空隙の総和面積に対する、空隙の総和面積の比率をいう。一般に空隙率は柱状蛍光体結晶の切断断面の位置によって異なり、本発明では反射層から10μmの位置では10〜30%、柱状蛍光体結晶先端から支持体側に向かって10μmの位置では2〜20%であることが、断裁性や発光強度の観点で好ましい。
空隙率は、シンチレータパネルの蛍光体層を支持体平面に平行に切除し、断面の走査型電子顕微鏡写真を、画像処理ソフトを使用して蛍光体部分および空隙部を2値化することにより求めることができる。
シンチレータ下地層における賦活剤の相対含有量は0.01〜1モル%が好ましく、0.1〜0.7モル%が更に好ましい。
特に、下地層の賦活剤の相対含有量が0.01モル%以上であることが、シンチレータパネルの発光輝度向上及び保存性の点で非常に好ましい。
また本発明においては、シンチレータ下地層における賦活剤の相対含有量がシンチレータ本層における相対含有量よりも低いことが非常に好ましく、シンチレータ本層における賦活剤の相対含有量に対するシンチレータ下地層における賦活剤の相対含有量の比((シンチレータ下地層における賦活剤の相対含有量)/(シンチレータ本層における相対含有量))は、0.1〜0.7であることが好ましい。
シンチレータ層における蛍光体の一定の面指数を有する面のX線回折スペクトルに基づく配向度は、層厚み方向の位置に係わらず、80〜100%の範囲内であることが、シンチレータ層の発光効率などの観点から好ましい。例えば、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)の柱状結晶における面指数は、(100)、(110)、(111)、(200)、(211)、(220)、(311)等のうちのいずれかであり得るが、(200)であることが好ましい(面指数については、X線解析入門(東京化学同人)、42〜46頁参照)。
ここで、本明細書における「一定の面指数の面のX線回折スペクトルに基づく配向度」とは、ある面指数の強度Ixが他の面指数の面を含めた全体の総強度Iに占める割合のことを指す。例えば、X線回折スペクトルにおける(200)面の強度I200の配向度は、「配向度=I200/I」である。
配向度決定のための面指数の測定方法としては、例えばX線回折(XRD)が挙げられる(結晶X線回折でも粉末X線回折でもよい)。X線回折は、特定波長の固有X線を結晶性物質に照射し、Braggの式を満足する回折が起こることを利用して、物質の同定、結晶相の構造などに関する知見を得ることのできる汎用性の高い分析手法である。照射系のターゲットにはCu、Fe、Coなどが用いられ、装置能力によるが、一般的に照射時の出力は0〜50mA、0〜50Kv程度である。
柱状結晶を形成する方法としては、気相堆積法が挙げられる。気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法などを用いることができ、これら方法を併用することもできる。例えば、本発明では蛍光体母体(CsI)を蒸着法、賦活剤原材料をスパッタリング法でそれぞれ気化し堆積さることができる。賦活剤原材料をスパッタリング法で気化することで融点が高い賦活剤原材料(融点が1000℃以上で蒸着法では気化困難な化合物)も利用することができる。
なお、シンチレータ層の厚さは、シンチレータパネルの輝度と得られる放射線画像の鮮鋭性とのバランスがよい点から、100〜1000μmであることが好ましく、120〜700μmであることがより好ましい。
シンチレータ下地層の膜厚は、シンチレータパネルの輝度の高さ、得られる放射線画像の鮮鋭性の維持の点から、0.1μm〜50μmであることが好ましく、5μm〜40μmであることがより好ましい。
シンチレータ層に含まれる柱状蛍光体結晶において、シンチレータ層と反射層との層界面から10μmの位置での柱状蛍光体結晶の平均円相当径aと、最表面での平均円相当径bとが、1.5≦b/a≦30の関係を満たすことが、シンチレータパネルの断裁性の観点から好ましい。
また、シンチレータ下地層の膜厚cとシンチレータ本層の膜厚dとが、得られる放射線画像の鮮鋭性の点から、3≦d/c≦1000の関係を満たすことが好ましく、10≦d/c≦1000の関係を満たすことがさらに好ましい。
また、得られる放射線画像の鮮鋭性向上の観点から、シンチレータ層と上記反射層との層界面における柱状蛍光体結晶径(シンチレータ層と反射層との接触面から、反射層側からシンチレータ層側に向かって10μmの位置(高さ)における平均円相当径)は、0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましい。
2−2.保護層
本発明に係るシンチレータパネルには、必要に応じて、物理的にあるいは化学的に前記蛍光体層を保護するための保護層を設けてもよい。この場合、後述のシンチレータ層のシンチレータの潮解を防止するなどの観点より、蛍光体層の支持体とは反対の側の面の全面が連続した保護層により覆われていることが好ましく、シンチレータパネルのシンチレータ層全面及び反射層の一部が、連続した保護層により覆われていることがより好ましい。
ここで、「シンチレータの全面」とは、柱状蛍光体結晶から形成されるシンチレータ層において、基板と接触している面とは反対側の面及び側面(換言すれば、基板と接触していない面)の全領域をいう。また「反射層の一部」とは、反射層において、シンチレータ層や支持体と接触しておらず、大気中に露出した部分(換言すれば、反射層の前面の内、シンチレータ層が塗設されていない反射層表面及び反射層側面)の全領域をいう。「連続した保護層」、とは保護層形成領域に保護層のない部分が存在しないことをいう。
保護層は、単一材料から形成されていてもよいし、混合材料から形成されていてもよいし、材料の異なる複数の膜などが併用されて形成されていてもよい。
前述の通り、本発明に係る保護層は、主に、シンチレータ層の保護を目的とするものである。具体的には、例えば、蛍光体がヨウ化セシウム(CsI)である場合、CsIは、吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを目的として、シンチレータパネルに上記保護層が設けられる。
この保護層は、シンチレータパネルの蛍光体から放出される物質(例えばハロゲンイオン)などを遮断し、シンチレータ層と受光素子の接触により生じる受光素子側の腐食を防止する機能も有する。
また、上記保護層は、シンチレータパネルの柱状蛍光体結晶から形成されるシンチレータ層と受光素子とを例えば接着剤や光学オイルなどにて接合する態様においては、接着剤や光学オイルが柱状蛍光体結晶間に浸透することを防止する浸透防止層の役割も担う。
上記保護層は、後述のように、CVD法や塗布法によりシンチレータ層に直接形成された保護層であってもよいし、予め用意した高分子フィルム(保護フィルムともいう)をシンチレータ層上に設けることで形成された保護層であってもよい。
CVD法や塗布法によりシンチレータ層に直接保護層を形成する場合、保護層を形成する材料としては、ポリオレフィン系、ポリアセタール系、エポキシ系、ポリイミド系、シリコン系、ポリパラキシレン系樹脂が好ましい。ポリパラキシレン系はCVD法により形成し、その他の材料は塗布法により形成することができる。ここでいうポリパラキシレン系樹脂としては、ポリパラキシレンの他、ポリモノクロロパラキシリレン、ポリジクロロパラキシリレン、ポリテトラクロロパラキシリレン、ポリフルオロパラキシリレン、ポリテトラクロロパラキシリレン、ポリフルオロパラキシリレン、ポリジメチルパラキシリレン、ポリジエチルパラキシリレン等が挙げられる。
これらの保護層の層厚は、シンチレータ層を適度に保護する観点やシンチレータパネルの強度や可とう性の観点より、0.1μm〜2000μmが好ましい。
保護層がポリパラキシレン系樹脂を含む膜である場合、その膜厚は、上記放射線画像の鮮鋭性、保護層の防湿性の観点より、2μm以上15μm以下が好ましく、保護層を受光素子と接着する場合は、接着剤層の厚みは接着力確保の観点から5μm以上が好ましく、さらに保護層の膜厚と接着剤層の厚みがトータルで20μm以下であることが好ましい。ポリパラキシレン膜厚と接着剤層の厚みとがトータルで20μm以下であると、保護層を受光素子と接着する場合に、平面受光素子とシンチレータパネルとの間隙での発光光の広がりが抑制され、鮮鋭性の低下を好適に防止できる。
また、高分子フィルムをシンチレータ層上に設ける場合、高分子フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリプロプレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられ、これら高分子フィルムは市販されており容易に入手可能である。これら高分子フィルムは、透明性、強さの面で本発明に係るシンチレータパネルにおける保護層として、好適に使用することができる。
高分子フィルムをシンチレータ層上(反射層などに接しておらず大気に触れている面の一部または全面)に設ける方法は、シンチレータ表面に接着層を介して貼り合わせる方法や、シンチレータパネルの上下にシンチレータパネルより大きいサイズの高分子フィルムをそれぞれ配置し、真空下でシンチレータパネルの周縁部より外側の領域で上下の高分子フィルムを融着あるいは接着する方法などが好ましい。上記高分子フィルムの厚さは、シンチレータ層の保護性、防湿性、得られる放射線画像の鮮鋭性、シンチレータパネル製造における作業性等の観点から、12μm以上、120μm以下が好ましく、更には20μm以上、80μm以下が好ましい。
また、別の態様としては、蛍光体層上にホットメルト樹脂の層が形成され、該ホットメルト樹脂の層が保護層の機能を果たしている態様も挙げられる。この場合、ホットメルト樹脂は、シンチレータパネルのシンチレータ層面と受光素子面とを接着させる機能も保護層の機能と併せて果たすことができる。
本明細書において、ホットメルト樹脂とは、水や溶剤を含まず室温(通常約25℃)で固体であり、不揮発性の熱可塑性材料からなる接着性樹脂である。ホットメルト樹脂は、加熱されるなどして樹脂温度が上昇して溶融開始温度以上になると溶融し、樹脂温度が固化温度以下に低下すると固化する。また、ホットメルト樹脂は、加熱溶融状態では接着性を有し、樹脂温度が固化温度以下(例えば常温)に低下すると固体状態となり接着性を有さない(有さなくなる)性質を有する樹脂である。
ホットメルト樹脂としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系又はポリアミド系樹脂を主成分とするものが好適であるが、これらに限定されない。これらのうち、光透過性の点からは、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
またホットメルト樹脂の溶融開始温度は、TFT(薄膜トランジスタ)などの平面受光素子における連続使用特性、接着剥がれ防止性などの点から、60℃以上、150℃以下が好ましい。ホットメルト樹脂の溶融開始温度は、可塑剤添加により調整可能である。ホットメルト樹脂の層の厚みは、20μm以下が好ましい。
上記態様の中では、高い防湿性が得られる観点より、ポリパラキシレンによりシンチレータ層の上部、側面及び支持体のシンチレータ層外周部の全面を覆うことが好ましい。 また、保護層のヘイズ率は、得られる放射線画像の鮮鋭性、放射線画像ムラ、シンチレータパネル製造における製造安定性、作業性等を考慮し、3%以上40%以下が好ましく、更には3%以上、10%以下が好ましい(ヘイズ率は、日本電色工業株式会社NDH5000Wにより測定した値を示す)。ヘイズ率が上記範囲の材料は、例えば、市販されている高分子フィルムから適宜選択し、容易に入手することが可能であるし、それらの製法に準じて作成することもできる。
保護層の光透過率は、シンチレータパネルの光電変換効率、蛍光体(シンチレータ)発光波長等を考慮し、550nmの光に対して70%以上あることが好ましいが、光透過率が99%以上の材料(フィルムなど)は工業的に入手が困難であるため、実質的に99%〜70%が好ましい。
保護層のJIS Z0208に準じて40℃、90%RHの条件下で測定した透湿度は、シンチレータ層の保護性、潮解性等の観点から、50g/m2・day以下が好ましく、更には10g/m2・day以下が好ましいが、0.01g/m2・day以下の透湿度のフィルムは工業的に入手が困難であるため、実質的に、0.01g/m2・day以上、50g/m2・day以下が好ましく、更には0.1g/m2・day以上、10g/m2・day以下が好ましい。
2−3.サポート板
本発明に係るシンチレータパネルは、使用目的などによって、可とう性を有さないことが好ましい場合には、蒸着用基板よりも剛性の高いサポート板に保持されていてもよい。
ここで、剛性とは、曲げやねじりの力に対する、寸法変化(変形)のしづらさの度合いのことであり、力に対して変形が小さい時は剛性が高い(大きい)、変形が大きい時は剛性が低い(小さい)性質をいう。材料選択の面からいえば、弾性率が大きい材料を使うことによって剛性は高くなる。
シンチレータパネルが可とう性を有さないようにする観点から、シンチレータパネルを保持するサポート板の弾性率は、前述の支持体の弾性率と同じ測定方法で測定した時に、10000Nmm2以上であることが好ましい。サポート板の材料としては、金属、ガラス、カーボン、複合材料など、特に制約無く好適に使用することが出来る。
サポート板の厚さは、放射線、例えば、X線の透過性の観点から、管電圧80Kvの条件で発生したX線を照射したときに、X線透過率が80%以上となるように調整することが好ましく、具体的には、アモルファスカーボン板は0.3mm〜2.0mm、ガラス板は0.3mm〜1.0mm程度の厚さであることが好ましい。
以上説明したように、本発明に係るシンチレータパネルは、シンチレータ層を構成する蛍光体の柱状結晶状態が均一であり、該結晶の欠損などに起因して、断裁時に該結晶が不規則に崩壊するなどせず、得られる放射線画像において該結晶の欠損などによる画像欠損などを実質的に生じない。それゆえ、本発明に係るシンチレータパネルは、鮮鋭性やその均一性に優れる放射線画像を提供でき、断裁性に優れる。本発明に係るシンチレータパネルは、上述の通り得られる放射線画像において該結晶の欠損などによる画像欠損などを実質的に生じないので、本発明に係るシンチレータパネルを含むフラットパネルディテクタの受光面内において、均一な画質の放射線画像を提供できる。また、本発明に係るシンチレータパネルは、断裁性に優れるので、断裁処理に供しても、ひび割れなどを生じることがない。さらに、本発明に係るシンチレータパネルは、目的のサイズのシンチレータパネルを製造する際に、該サイズの蒸着用基板を一つ一つ作成する必要がなく、目的のサイズよりも大きなサイズのシンチレータパネルを製造し、次いで、該シンチレータパネルを目的のサイズに断裁するということも可能であるので、ロット内やロット間で品質の均一なシンチレータパネルを得ることができる。
3.蒸着用基板の製造方法
3−1. 蒸着用基板の製造方法の手順
次に、本発明に係る蒸着用基板の製造方法について説明する。
本発明に係る蒸着用基板を製造する方法は、目的に応じて、従来の各種方法を採用すればよいが、ここでは、典型例について、図7を参照しながら説明する。
図7は、本発明に係る蒸着用基板の製造方法の典型例を説明するための模式図である。
本発明の蒸着用基板の製造方法の典型例では、図7に模式的に示す蒸着用基板の製造装
置109が用いられる。この製造装置109を用いた蒸着用基板の製造方法は、好適には、被塗布物である支持体の供給工程29と、塗布工程39と、乾燥工程49及び89と、熱処理工程59と回収工程69とを含む。
供給工程29では、繰り出し装置(不図示)が用いられる。
供給工程29では、該繰り出し装置により、巻き芯に巻かれたロール状の支持体を繰り出して、次の塗布工程39に支持体を供給する。
塗布工程39では、バックアップロール301と、塗布ヘッド302と、塗布ヘッド302の上流側に設けられた減圧室303とを有する塗布装置304が用いられる。
塗布工程39では、供給工程29で用いられる繰り出し装置から連続搬送され、バックアップロール301によって保持された支持体201に、光散乱粒子、バインダー樹脂、添加剤および溶媒などを含む反射層形成用塗布液を塗布ヘッド302により塗布する。支持体201に反射層形成用塗布液を塗布する際には、塗布ヘッド302の上流側に設けられた減圧室303により、該塗布時に塗布ヘッド302から供給される塗布液と支持体2
01との間に形成されるビード(塗布液の溜まり)を安定化する。
減圧室303は減圧度を調整することが可能となっている。減圧室303は、減圧ブロワ(不図示)に接続されており、内部が減圧状態になる。減圧室303は、空気漏れがない状態になっており、かつ、バックアップロールとの間隙も狭く調整され、ビードの上流(塗布ヘッドに対して繰り出し装置側)が適度な減圧度まで減圧され、安定した塗布液のビードが形成される。
また、塗布ヘッド302から吐出する塗布液の流量は、必要に応じて、不図示のポンプにより調整される。
上記説明では、塗布方法として押し出しコートを例に挙げているが、その他既知の任意の方法を採用することもできる、例えば、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート及びディッピングなどの各種塗布方法を用いることができる。
乾燥工程49では、乾燥装置401を用いる。
乾燥工程49では、塗布工程39で支持体201の上に反射層形成用塗布液を塗布することで形成された反射層塗布膜を、乾燥装置401により乾燥する。乾燥工程49は、通常、反射層塗布膜の表面温度が、80〜200℃の温度になるように行われる。乾燥工程49では、反射層塗布膜を乾燥用気体により乾燥する。乾燥用気体は、乾燥用気体の導入口402から導入され、排出口403から排出される。乾燥用気体からなる乾燥風の温度及び風量は適宜決めることが可能な構成となっている。
乾燥工程89は、乾燥工程49と同じ構成となっており、詳細な説明は省略するが、乾燥工程49と合わせて使用することで、反射層塗布膜の乾燥速度を調整できるようになっている。
熱処理工程59では、熱処理用加熱装置501により反射層塗布膜を有する支持体201が熱処理され、反射層塗布膜内の揮発成分が除去される。熱処理は、通常、反射層塗布膜の表面温度が、150℃〜250℃の温度になるように行われる。熱処理工程では、反射層塗布膜を熱処理気体により熱処理する。熱処理用気体は、熱処理用気体の導入口502から導入され、排出口503から排出される。乾燥用気体からなる熱処理風の温度及び風量は適宜決めることが可能な構成となっている。
図7の模式図には図示していないが、熱処理工程59のあとに、反射層の形成された支持体(蒸着用基板)を冷却する冷却工程を設けてもよい。
回収工程69では、反射層塗布膜が形成された支持体201が巻き取り装置(不図示)に巻き取られる。図7中の601は、巻き芯に巻き取られ回収されたロール状の支持体を示す。
なお、上記工程を通じて、上記塗布膜を有する支持体201は搬送する搬送ロールa〜dにより搬送される。
本発明に係る第一の蒸着用基板(光散乱粒子がバインダー樹脂に埋没している)を製造する場合は、特に制限されないが、例えば、次の方法を採用して製造できる。例えば、反射層形成用塗布液の反射層形成用塗布液の溶媒種、乾燥温度、該塗布液が塗布された支持体の搬送速度(塗布速度)などの条件を変えることで塗布膜の乾燥時間を長めに調整し、塗膜内で光散乱粒子の沈降を発生させる方法が挙げられる。その他にも、反射層の形成された支持体を製造後、回収工程69にてロール状に巻き取られた支持体601を、再度、供給工程29の支持体201にセットし、再度、光散乱粒子を含まない樹脂層形成用塗布液(バインダー樹脂及び必要に応じて添加剤を含む)を反射層状に塗布、乾燥、加熱処理して、光散乱粒子を含まない樹脂層(樹脂バインダー及び必要に応じて添加剤を含む層)を形成する方法が挙げられる。必要に応じて、得られた蒸着用基板を加熱処理して、反射層中の2つの層の界面の接着性を強固にするなどしてもよい。
本発明に係る第二の蒸着用基板(反射層の特定の領域に存在する光散乱収支の面積平均粒子径が0.5μm以下)を製造する場合は、特に制限されないが、例えば、次の方法を採用して製造できる。例えば、反射層形成用塗布液の溶媒種、乾燥温度、該塗布液が塗布された支持体の搬送速度(塗布速度)などの条件を変えることで塗布膜の乾燥時間を長めに調整し、塗布膜内の平均粒子径が大きい粒子(重たい粒子)を選択的に支持体側に沈降させる方法が挙げられる。その他にも、使用する光散乱粒子の面積平均粒子径自体を0.5μm以下に調整しておく方法が挙げられる。さらには、反射層の形成された支持体を製造後(ここでの光散乱粒子の平均粒子径は問わない)、回収工程69にてロール状に巻き取られた支持体601を、再度、供給工程29の支持体201にセットし、再度、平均粒子径0.5μm以下の光散乱粒子とバインダー樹脂を含むバインダー樹脂層を形成する方法が挙げられる。
本発明に係る第三の蒸着用基板(反射層の支持体と接触している面とは反対側の面の算術平均粗さが特定の範囲にある)を製造する場合は、特に制限されないが、例えば、次の方法を採用して製造できる。例えば、反射層形成用塗布液の溶媒を混合溶媒とし、該混合溶媒を構成する溶媒種を調整することで、乾燥後の反射層の支持体と接触している面とは反対面の表面粗さ(算術平均粗さ)を調整する方法が挙げられる。その他にも、上記乾燥工程での気流の速度を調整する方法や、乾燥後の反射層表面をカレンダー処理などの外力により平坦化する方法などが挙げられる。
本発明に係る第三の蒸着用基板を製造する場合、上記の気流の速度を調整する方法を採用する場合には、特に、気流の速度は3m/秒以下が好ましい。また、外力により平坦化する方法を採用する場合には、カレンダー処理などで平滑化することが好ましい。カレンダー処理を施す場合にカレンダー温度は、使用する樹脂バインダーの少なくとも1種のガラス転移温度(Tg)より高く設定することが好ましい。
また、第一〜第三の蒸着用基板上に、上記以外の層を塗設する場合は、上記第一の蒸着用基板において、光散乱粒子を含まない樹脂層を形成する方法に準じて設ければよい。
本発明に係る蒸着用基板の製造方法では、反射層塗布膜の表面温度を乾燥工程4および8においては80〜200℃とし、熱処理工程においては150℃〜250℃とすることで、蒸着用基板(得られた反射層の形成された支持体)の揮発成分量を5%未満とすることができる。本発明に係る蒸着用基板の製造方法では、乾燥工程の後に揮発成分除去の為の熱処理工程を行うことが特徴の一つである。
支持体201上に形成された反射層塗布膜の表面の温度は、レーザー方式・赤外線方式
などの一般に公知な非接触温度計により測定できる。
乾燥工程49及び89、熱処理工程59における各種気体の温度及び風量は、特に限定されず、非接触温度系による測定結果をもとに、塗布膜面の温度が上記設定温度になるように調整すればよい。
乾燥工程49および89における支持体201の塗布膜面上5mmの位置における気流は、支持体面と平行な方向に、支持体201に対して1〜3m/秒の相対速度で移動することが好ましい。塗布膜面上5mmの位置における気流が、支持体201に対して上記範囲内の相対速度で移動すると、乾燥後の反射層表面が粗くなるなどせずに乾燥できる。
また熱処理工程59において、塗布膜の膜面を加熱する手段として、赤外線ヒータによる熱処理を熱処理用気体による熱処理と併用することにより、支持体上の反射層の熱処理の効果を高めることができる。
以上説明した本発明に係る蒸着用基板の製造方法により、残留溶媒や光散乱粒子へのガス吸着の少ない蒸着用基板が得られる。
3−2. 蒸着用基板の製造方法に用いられる材料
以下、本発明に係る蒸着用基板の製造方法に用いられる支持体と反射層形成用塗布液について説明する。
3−2−1.支持体
本発明の蒸着用基板に使用される支持体の材料は前述した通りであるが、中でも、高分子フィルムが、図7に示したような製造装置109が好適に使用でき、ロール・ツー・ロール(roll to roll)で容易に加工できる点、および平面受光素子をカップリングする際、柔軟性があるため平面受光素子との密着性に優れる点等のメリットなどの観点から好ましい。また、高分子フィルムのガラス転移温度は、高分子フィルム上に蛍光体を蒸着する際の熱による支持体の変形を防止できるという観点より、100℃以上であることが好ましい。上記のような高分子フィルムとして、具体的には、ポリイミドフィルムが好適である。
支持体には、必要に応じて適宜、前述の遮光層、光吸収性の顔料層などを設けることができる。また、支持体自体が、必要に応じて、遮光性であったり反射性であったりしてもよい。
遮光層を支持体上に被覆する方法としては、蒸着、スパッタ、あるいは、金属箔の貼り合わせ等、特に制約は無いが、遮光層の支持体への密着性の観点からスパッタが最も好ましい。
光吸収性の顔料層を支持体上に被覆する方法としては、顔料や溶媒などを含む、光吸収性の顔料層形成用塗布液を支持体上に塗布、乾燥などする方法などが挙げられる。
3−2−2.反射層形成用塗布液
反射層形成用塗布液は、光散乱粒子、バインダー樹脂、及び必要に応じて、顔料などの色材、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、分散剤などの添加剤を、混合してからもしくは個々に、溶媒に分散または溶解して調製する。各成分の混合順序などは、本発明の目的を損なわない限り、特に制限されない。
光散乱粒子、バインダー樹脂及び添加剤などは、公知の分散または溶解方法で分散または溶解すればよい。例えば、分散機としては、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が好適に使用される。
光散乱粒子、バインダー樹脂、顔料などの色材、紫外線吸収剤、蛍光増白剤の詳細は前述の通りである。
上記分散剤は、上記光散乱粒子をバインダー樹脂中に分散される目的で、配合される。分散剤としては、用いるバインダー樹脂と光散乱粒子とに合わせて種々のものを用いることができ、例えば、多価アルコール、アミン類、シリコン、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを用いることができる。分散剤は、反射層形成後、反射層に残存していても、反射層から除去されていてもよい。
分散剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部となる量で用いることが好ましく、1〜5重量部となる量で用いることがより好ましい。
上記光散乱粒子、バインダー樹脂及び添加剤などを分散または溶解する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、nブタノールなどの低級アルコール(炭素数1〜6のアルコールが好ましい)、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素系炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
また、溶媒が一種のみでは、光散乱粒子、バインダー樹脂及び添加剤などの溶媒への分散性が不十分であったり、乾燥工程での溶媒蒸発速度の調整が困難となり反射層表面が粗面化したりする傾向があり、これを防止する観点から、溶媒としては、気化熱の異なる相溶性のよい複数種の溶媒を混合した混合溶媒を使用することが好ましい。特にトルエン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノンなどの混合溶媒が好ましい。
本発明に係る蒸着用基板の反射層中に空隙を設ける場合、その方法は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(I)反射層に空隙粒子を添加する方法、(II)反射層を塗布により形成する際に泡を混入させた塗布液を支持体に塗布することで反射層を形成するか、塗布液に発泡剤を添加して多孔質構造を有する反射層を形成する方法などが挙げられる。これらの中でも、塗布膜形成の容易さの観点からは上記(I)の空隙粒子を添加する方法が好ましく、空隙容量の観点からは上記(II)の泡を利用した方法が好ましい。
上記(II)の泡を利用した方法において、発泡剤としては、公知の発泡剤の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、炭酸ガス発生化合物、窒素ガス発生化合物、酸素ガス発生化合物、マイクロカプセル型発泡剤などが好適に挙げられる。前記炭酸ガス発生化合物としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩などが挙げられる。 窒素ガス発生化合物としては、例えば、NaNO2とNH4Clの混合物;アゾビスイロブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物;p−ジアゾジメチルアニリンクロライドジンククロライド、モルフォリノベンゼンジアゾニウムクロライドジンククロライド、モルフォリノベンゼンジアゾニウムクロライド、フルオロボレート、p−ジアゾエチルアニリンクロライドジンククロライド、4−(p−メチルベンゾイルアミノ)−2,5−ジエトキシベンゼンジアゾニウムジンククロライド、1,2−ジアゾナフトール5−スルホン酸ソジウム塩等のジアゾニウム塩などが挙げられる。 酸素ガス発生化合物としては、例えば、過酸化物などが挙げられる。マイクロカプセル型発泡剤としては、低温で気化する低沸点物質(常温で液体状態であっても固体状態であってもよい)を内包するマイクロカプセル粒子の発泡剤が挙げられる。該マイクロカプセル型発泡剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、又はこれらの共重合体からなるマイクロカプセル壁材の内部にプロパン、ブタン、ネオペンタン、ネオヘキサン、イソペンタン、イソブチレン等の低沸点の気化性物質を封入して直径10〜20μmのマイクロカプセル化したもの、などが挙げられる。 これら発泡剤の樹脂バインダーへの含有量は、発泡剤の種類に応じて異なり一概には規定できないが、通常は、1〜50重量%が好ましい。
(I)の空隙粒子を添加する方法では、反射層全体を100体積%とした時に、5〜30体積%の量の空隙粒子が反射層に添加されるような量で、空隙粒子を例えば反射層形成用塗布液に配合することで、反射層中の空隙容量を調整できる。(II)の泡を利用した方法では、同じく樹脂バインダーを100重量%とした時に、1〜50重量%の量の発泡剤が添加されるような量で、反射層形成用塗布液に配合することで、反射層中の空隙容量を調整できる。このような方法により、反射層に空隙を形成することができる。
上記空隙は、一部または全部が中空粒子及び泡により形成されることが、蒸着基板のX線透過性 の観点から好ましい。
蒸着用基板の反射率は、例えば、下記の方法により調整することができる。
(1)アルミニウム、銀、白金、パラジウム、金、銅、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、ステンレスのうち1種または2種以上の元素を含む材料により形成された遮光層を支持体に設ける。
(2)光吸収性の顔料層を支持体に設ける。
(3)遮光層、顔料層またはそれらの少なくとも1つが設けられたフィルムを支持体に積層する。
(4)支持体に光吸収性を付与する。
(5)支持体に光反射性を付与する。
(6)反射層を着色する。
(7)反射層中の光散乱粒子の含有比率を調製する。
(8)上記(1)〜(7)の方法のうち、少なくとも2種の方法を組み合わせる。
上記(1)〜(7)の方法を組み合わせることで、本発明に係る蒸着用基板の(シンチレータ層で生じた)発光光の基板反射率、基板吸収率、基板透過率を任意に調整することができる。また、上記基板反射率を高めることで放射線検出装置の感度を高めることができる。上記基板吸収率を高めることで、本発明に係る蒸着用基板にシンチレータ層が形成されたシンチレータパネルを含む放射線検出装置から得られる放射線画像の鮮鋭性を高めることができる。また、上記遮光層として、例えば、金属遮光層を設けて蒸着用基板をシンチレータパネルの用途に供した場合、蒸着用基板の光透過率が低下することで蒸着用基板の反射層と接している面とは反対面からの外光や電磁波の侵入が防止されるとともに、シンチレータ層で生じた発光光のシンチレータパネル外部への漏えいを防止できる。特に、上記遮光層として、アルミニウム、銀などの反射性の高い金属を使用した場合は、光散乱粒子と樹脂バインダーからなる反射層の反射率をより高めることができる。
前述の金属材料を含む遮光層を支持体上などに形成する方法としては、蒸着、スパッタ、あるいは、金属箔の貼り合わせ等、特に制約は無いが、密着性の観点からスパッタが最も好ましい。
反射層自体を色材で着色する方法は、特に制限されないが、反射層形成用塗布液に前述の色材を添加して、反射層形成用塗布液を支持体に塗布することで、支持体上に着色した反射層を形成する方法が、簡便である点などからより好ましい。
また反射層形成用塗布液に添加する顔料としてはチタン系黒色顔料のチタンブラックなども好ましい。本発明に好適に使用されるチタンブラックとしては三菱マテリアル社製チタンブラックSタイプ、Mタイプ、M−Cタイプなどが挙げられる。支持体あるいは後に支持体に積層するフィルム上に光吸収性の顔料層を設ける場合も、前記と同様の色材を使用し、色材と樹脂バインダーなどを分散または溶解した塗布液を、上記支持体あるいはフィルム上に塗布し乾燥することで、容易に光吸収性の顔料層を設けることができる。
蒸着により、本発明の蒸着用基板にシンチレータ層の形成を開始する時点で、反射層に含有される揮発成分量は、柱状蛍光体結晶の異常成長を防止できる観点から、反射層の全質量に対して、5%未満であることが好ましく、1%未満であることがより好ましい。
本明細書において、揮発成分量とは下記式で定義される。
揮発成分量(質量%)=[(M−N)/N]×100
Mは加熱処理前の反射層の全質量であり、Nは200℃で3分間の条件で加熱処理後の反射層の全質量である。
揮発成分量が上記範囲にあると、蒸着における高温高真空条件下での柱状蛍光体結晶の成長過程において、反射層から揮発ガスの流出が発生して、揮発ガスが流出した部分で柱状蛍光体結晶の異常成長が発生し、得られる放射線画像の鮮鋭性やその鮮鋭性の均一性が悪化することを防止できる。
蒸着用基板の反射層の揮発成分量が上記範囲にない場合は、該蒸着用基板を揮発成分除去工程に供することで、反射層の揮発成分量が上記範囲の蒸着用基板を得ることができる。
揮発成分除去工程とは、真空下および/または高温化で蒸着用基板上の反射層の揮発成分を除去する工程であり、該工程では、該揮発成分の除去を達成できる方法であれば、既知のいかなる方法も採用できる。それら方法の中でも、作業の容易性から、蒸着装置内の基板ホルダに本発明に係る蒸着用基板をセットした後、前記基板ホルダを100℃以上に加熱すると同時に、蒸着装置内を100Pa以下の真空下とし、数分から数時間蒸着用基板の反射層を加熱処理する方法がより好ましい。
上記揮発成分は、主に、反射層形成用塗布液を塗布、乾燥して反射層を形成した時の残留溶媒や原料として用いた白色顔料に吸着していたガスである。特に、水分(H2O)や二酸化炭素(CO2)などのガスは、低湿度環境下でも白色顔料に容易に吸着する。従って、上記揮発成分除去工程は、蒸着によりシンチレータ層を形成する直前に実施することがより好ましい。
3−3.蒸着用基板の断裁方法
本発明に係る蒸着用基板は、必要に応じて、蒸着装置の基板ホルダのサイズに合わせて断裁された後、該基板ホルダに設置され、反射層上にシンチレータ層が蒸着される。蒸着用基板の断裁は特に限定されず、従来公知の裁断方法のいずれも適用できるが、作業性や断裁精度等の面から、化粧裁断機、打ち抜き機等を用いて裁断する方法が好ましい。
本発明に係る蒸着用基板を上記方法により断裁することで、該蒸着用基板に欠陥部が存在していたとしても、該欠陥部を避けて断裁できるため、上記蒸着用基板の断裁方法を利用した蒸着用基板の製造方法は、生産性に優れる。
4.シンチレータパネルの製造方法
本発明に係るシンチレータパネルの製造方法は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、真空容器内に蒸発源及び支持体回転機構を有する蒸着装置を用い、蒸着用基板の支持体面が支持体回転機構の設置面に接するように蒸着用基板を該支持体回転機構に設置して、当該支持体を有する蒸着用基板を回転しながら蛍光体材料を蒸着用基板のシンチレータ形成予定面に蒸着する工程を含む蒸着法により、シンチレータパネルを製造する方法であることが好ましい。
本発明に係るシンチレータパネルの製造方法の典型的例について、図1〜3を参照しながら説明する。なお、図1は、本発明に係るシンチレータパネルの一例であるシンチレータパネル10の概略構成を示す断面図である。図2は、図1のシンチレータパネル10の拡大断面図である。図3は、蒸着装置の一例である蒸着装置81の概略構成を示す図面である。
本発明に係るシンチレータパネルの製造方法においては、以下で詳述する蒸発装置1を好適に用いることができる。以下、蒸発装置81を用いて放射線用シンチレータパネル10を作製する方法について説明する。
4−1.蒸着装置
図3に示す通り、蒸着装置81は箱状の真空容器82を有しており、真空容器82の内部の底面付近には、蒸着用基板84に垂直な中心線を中心とした円の円周上の互いに向かい合う位置に真空蒸着用の蒸着源88a、88bが配されている。蒸着源8a、8bは蒸着源の被充填部材であり、当該蒸着源88a、88bには電極が接続されている。この場合において、支持体84と蒸発源88a、88bとの間隔は100〜1500mmが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。また、支持体84に垂直な中心線と蒸発源88a、88bとの間隔は100〜1500mmが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。当該電極を通じて蒸着源88a、88bに電流が流れると、蒸着源88a、88bがジュール熱で発熱するようになっている。放射線用シンチレータパネル84の製造時においては、ヨウ化セシウムと賦活剤化合物とを含む混合物が蒸着源88a、88bに充填され、その蒸着源88a、88bに電流が流れることで、上記混合物を加熱・蒸発させることができるようになっている。なお、蒸着源88は、3個以上(8個、16個、24個等)設けることも可能であり、各々の蒸発源は等間隔に配置してもよく、間隔を変えて配置してもよい。また、支持体84に垂直な中心線を中心とした円の半径は任意に定めることができる。
蒸着源88a、88bは、前記蛍光体を収容して抵抗加熱法で加熱するために、ヒータを巻いたアルミナ製のルツボから構成されていてもよいし、ボート、高融点金属などからなるヒータから構成されていてもよい。また、前記蛍光体を加熱する方法は、抵抗加熱法以外に電子ビームによる加熱や、高周波誘導による加熱等の方法でもよいが、比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、非常に多くの物質に適用可能である点から、直接電流を流して抵抗加熱する方法や、周りのヒータでルツボを間接的に抵抗加熱する方法が好ましい。
真空容器2の内部であって蒸着源88a、88bの上方には蒸着用基板84を保持するホルダ85が配されている。ホルダ85にはヒータ(図示略)が配されており、当該ヒータを作動させることでホルダ85に装着した蒸着用基板84を加熱することができるようになっている。蒸着用基板84を加熱した場合には、蒸着用基板84の表面の吸着物を離脱・除去したり、蒸着用基板84とその表面に形成されるシンチレータ層(蛍光体層)との間に不純物層が形成されるのを防止したり、蒸着用基板84とその表面に形成されるシンチレータ層との密着性を強化したり、蒸着用基板84の表面に形成されるシンチレータ層の膜質の調整を行ったりすることができるようになっている。
ホルダ85は、蒸着用基板84の前記シンチレータ層を形成する面が真空容器2の底面に対向し、かつ、真空容器2の底面と平行になるように支持体84を保持する構成となっている。ホルダ85には、当該ホルダ85と共に蒸着用基板84を水平方向に回転させる回転機構86が設けられている。回転機構86は、ホルダ85を支持すると共に蒸着用基板84を回転させる回転軸87及び真空容器82の外部に配置されて回転軸87の駆動源となるモ−タ(図示せず)から構成されている。当該モ−タを駆動させると、回転軸87が回転してホルダ85を蒸着源88a、88bに対向させた状態で回転させることができるようになっている。
ホルダ85は、蒸着用基板84を加熱する加熱ヒータ(図示せず)を備えることが好ましい。この加熱ヒータで蒸着用基板84を加熱することによって、蒸着用基板84の支持体ホルダ85に対する密着性の強化や、前記蛍光体層の膜質の調整を行うことができる。また、蒸着用基板84の表面の吸着物を離脱・除去し、蒸着用基板84の表面と前記蛍光体との間に不純物層が発生することを防止することもできる。また、ホルダ85は、蒸着用基板84の加熱手段として温媒又は熱媒を循環させるための機構(図示せず)を有していてもよい。この加熱手段は蛍光体の蒸着時における蒸着用基板84の温度を50〜150℃といった比較的低温に保持して蒸着する場合に適している。また、ホルダ85は、蒸着用基板84の加熱手段としてハロゲンランプ(図示せず)を有していてもよい。この手段は蛍光体の蒸着時における蒸着用基板84の温度を150℃以上といった比較的高温に保持して蒸着する場合に適している。
蒸着装置81には、上記構成の他に、真空容器82に真空ポンプ83が配されている。真空ポンプ83は、真空容器82の内部の排気と真空容器82の内部へのガスの導入とを行うもので、当該真空ポンプ83を作動させることにより、真空容器82の内部を一定圧力のガス雰囲気下に維持することができるようになっている。高真空領域まで排気するために、作動圧力領域の異なる真空ポンプを2種類もしくはそれ以上配置してもよい。真空ポンプとしては、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、ディフュージョンポンプ、メカニカルブースタ等が挙げられる。
蒸着装置81には、チャンバー内の圧力を調整するために、真空容器81内にガスを導入できる機構が設けられている。導入するガスは、一般的には、Ne、Ar、Kr等の不活性ガスが用いられる。真空容器81内の圧力は、真空容器81内を真空ポンプ83で排気しながら、所望の圧力となるようにガスを導入することにより調整してもよいし、所望の圧力よりも高真空となるまで真空排気を行った後に真空排気を停止して、その後所望の圧力となるまでガスを導入することにより調整してもよい。また、真空容器81と真空ポンプ83の間に圧力制御弁を設ける等することにより、ポンプの排気量を調整して真空容器81内の圧力を制御してもよい。
また、蒸発源88a、88bと蒸着用基板84との間には、蒸発源88a、88bから蒸着用基板84に至る空間を遮断するシャッタ89が水平方向に開閉自在に設けられている。このシャッタ89を蒸着の初期段階に閉じることによって、蒸発源88a、88bに収められた前記蛍光体の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着の初期段階に蒸発しても、それらが蒸着用基板84に付着するのを防ぐことができる。そして、上記目的を達した後にシャッタ89を開いて蛍光体原材料の蒸着を行えば、上記のような目的物を蒸着用基板に蒸着させることなくシンチレータ層を形成することができる。
4−2.シンチレータ層の形成
上記のように反射層3を設けた支持体を含む蒸着用基板1をホルダ85に取り付けるとともに、真空容器82の底面付近において、支持体84に垂直な中心線を中心とした円の円周上に蒸発源88a、88bを配置する。次に、ルツボやボート等に、ヨウ化セシウムなどの蛍光体母体化合物とヨウ化タリウムなどの賦活剤とを含む粉末状の混合物などの蛍光体原材料を充填したものを蒸発源の数だけ用意し(この場合は2つ)、蒸着源88a、88bに充填する(準備工程)。反射層上にシンチレータ下地層を形成してからシンチレータ本層を形成する場合は、ヨウ化セシウムなどの蛍光体母体化合物とヨウ化タリウムなどの賦活剤とを蒸発源にそれぞれ別々に充填してもよい。これらの場合、蒸着源88a、88bと蒸着用基板84の反射層表面との間隔を100〜1500mmに設定し、その設定値の範囲内のままで後述の蒸着工程をおこなうのが好ましい。
充填した蛍光体母材および賦活剤の中の不純物を蒸着前に除去するため、必要に応じて、予備加熱を行ってもよい。予備加熱は使用する材料の融点以下であることが望ましい。例えばCsIの場合、予備加熱温度は50〜550℃が好ましく、100〜500℃がより好ましい。TlIの場合、50〜500℃が好ましく、100〜500℃がより好ましい。
予備加熱は、シャッタ89を閉じて行うことが、上記不純物が蒸着用基板に蒸着しない観点より好ましい。
準備工程の処理を終えたら、真空ポンプ83を作動させて真空容器82の内部を排気し、真空容器82の内部を0.5Pa以下の真空雰囲気下にする(真空雰囲気形成工程)。ここでいう「真空雰囲気下」とは、100Pa以下の圧力雰囲気下のことを意味し、0.5Pa以下の圧力雰囲気下であるのが好適である。その後、アルゴン等の不活性ガスを真空容器82の内部に導入し、当該真空容器82の内部を0.5Pa以下の真空雰囲気下に維持する。次に、ホルダ85のヒータと回転機構のモ−タとを駆動させ、ホルダ85に取付け済みの蒸着用基板84を蒸着源88a、88bに対向させた状態で加熱しながら回転させる(回転速度(rpm)は、装置の大きさにもよるが2〜15rpmが好ましく、4〜10rpmがより好ましい)。
次いで、蛍光体の蒸着を行うが、CsIなどの蛍光体を賦活方法するとしては、蒸着装置内で、CsIなどの蛍光体およびナトリウム化合物、タリウム化合物、インジウム化合物、ユーロピウム化合物などの賦活剤を同時に気化させて基板上に堆積させる方法などが挙げられる。特に、このように蛍光体および賦活剤を同時に気化させて蒸着を行う方法を採用する場合は、柱状結晶構造による光ガイド効果が得られるなどの観点から蛍光体はCsIであることが好ましく、賦活剤として用いる化合物は、CsIの柱状結晶成長を阻害しないなどの観点から、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化タリウム(TlI)、ヨウ化インジウム(InI)などのヨウ化物であることが好ましい。
また、蛍光体を賦活する方法としては、その他にも、蒸着により、基板上にCsIの柱状結晶などの蛍光体からなる賦活剤を含まないシンチレータ層を形成した後に、ナトリウム化合物、タリウム化合物、インジウム化合物、ユーロピウム化合物などの賦活剤化合物と共に賦活剤を含まないシンチレータ層の形成された基板を蒸着装置などの密閉空間に配置し、賦活化合物をその昇華温度以上に加熱し、CsIなどの蛍光体の賦活を行い、シンチレータ層を賦活する方法などを採用することも可能である。このようにシンチレータ層が形成された基材および賦活剤を共に加熱処理する場合は、密閉空間に配置される基板上に形成されたCsIなどの蛍光体からなるシンチレータ層を100〜350℃の温度に加温しておくことが好ましい。蛍光体としては、柱状結晶構造による光ガイド効果が得られるなどの観点から蛍光体はCsIであることが好ましく、賦活剤として用いる化合物は、特に限定されないが、昇華温度が低いものが取扱上好ましい。また蒸着時に特定の化合物(例えばヨウ化タリウム(TlI)など)で賦活された賦活剤を含有したシンチレータ層と賦活化合物を密閉空間に配置し、同様な手順で追加賦活を実施することで、シンチレータ層の柱状結晶の内部と表面とで賦活剤の種類が異なるシンチレータ層を形成することができる。特に賦活剤としてユーロピウム化合物を用いた場合は、シンチレータ層における放射線による発光の減衰時間を短縮することができる。
反射層上にシンチレータ下地層を形成しない場合は、上記の蒸着用基板84を加熱しながら回転させている状態において、電極から蒸着源88a、88bに電流を流し、ヨウ化セシウムとヨウ化タリウムとを含む混合物などの蛍光体原料を700℃〜800℃程度で所定時間加熱してその混合物を蒸発させる。その結果、蒸着用基板84の表面に無数の柱状蛍光体結晶2aが順次成長して所望の厚さのシンチレータ層2が形成される(蒸着工程)。シンチレータ層の厚さは、用途によって異なるが、120 〜700μmであることが好ましい。
反射層上にシンチレータ下地層を形成する場合は、蛍光体母体化合物(CsIなど:賦活剤なし(pure))のルツボを加熱して蛍光体を蒸着し、シンチレータ下地層(第1の蛍光体層)を形成する。
この時の蒸着用基板84の温度は5〜100℃が好ましく、15〜50℃がより好ましい。シンチレータ下地層の厚さは、結晶径や蛍光体層の厚さにもよるが、0.1〜50μmであることが好ましい。次に蒸着用基板84の加熱を開始し、蒸着用基板84の基板温度を150〜250℃に加熱し、残りの蛍光体母体化合物(CsIなど:賦活剤なし(pure))と賦活剤(TlIなど)の蛍光体原材料の蒸発を開始し、シンチレータ本層(第2の蛍光体層)を形成する。この際、シンチレータ本層からシンチレータ下地層への賦活剤の熱移動が発生し、シンチレータ下地層の賦活剤の相対含有量が0.01〜1モル%に調整される。
この時、蛍光体母体化合物は、生産性を考慮して、下地層を形成する際の蒸着速度よりも早い蒸着速度で蒸発をすることが好ましい。シンチレータ下地層やシンチレータ蛍光体本層の厚さにもよるが、シンチレータ下地層蒸着時よりも5〜100倍の速度で蒸着することが好ましく、10〜50倍で蒸着することがより好ましい。賦活剤の蒸発方法は、賦活剤単体を蒸発させてもよいが、CsIとTlIを混合した蒸発源を作成し、CsIは蒸発せずTlIのみが蒸発する温度(例えば500℃)に加熱して蒸発させてもよい。
蒸着時に加熱した蒸着用基板84は、高温のため、取り出すために冷却を行う必要がある。シンチレータ層を80℃まで冷却する工程での平均冷却速度を0.5℃〜10℃/分の範囲内とすることで、蒸着用基板84に急冷による支持体の熱収縮による寸法変化に起因するシンチレータ層のダメージなく冷却することができる。この条件での蒸着用基板84の冷却は、例えば蒸着用基板84の支持体に厚さ50μm以上500μm以下の高分子フィルム等の比較的薄い基板を用いた場合に特に有効である。この冷却工程は、真空度1×10-5Pa〜0.1Paの雰囲気下で行われることが、シンチレータ層の着色回避の観点で特に好ましい。また、冷却工程時に、蒸着装置の真空容器内にArやHe等不活性ガスを導入する手段を講じてもよい。なお、ここでいう平均冷却速度とは、冷却開始(蒸着終了時)から80℃まで冷却する間の時間と温度を連続的に測定し、この間の1分間あたりの冷却速度を求めたものである。
上記蒸着法において、必要に応じてO2、H2などのガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
上記柱状蛍光体結晶の形成方法の中では、上記面指数についての要件を満たすために、基板の表面に、空隙率が蛍光体層よりも低い値を示すシンチレータ下地層を形成する工程、及びシンチレータ下地層の表面にシンチレータ本層を気相堆積法により形成してシンチレータ本層を形成する工程を含む態様の製造方法であることが好ましい。
以上の通り、本発明に係るシンチレータパネルを製造することができる。
上記のような蒸着条件で、反射層にシンチレータ層を形成すると、反射層界面に成長した柱状蛍光体結晶で形成されるシンチレータ層が得られることから好ましい。
また、上記製造装置81を用いたシンチレータパネルの製造方法によれば、複数の蒸発源88a、88bを設けることによって蒸発源88a、88bの蒸気流が重なり合う部分が整流化され、蒸着用基板84の表面に蒸着する前記蛍光体の結晶性を均一にすることができる。このとき、多数の蒸発源を設けるほど多くの箇所で蒸気流が整流化されるため、より広範囲において前記蛍光体の結晶性を均一にすることができる。また、蒸発源88a、88bを蒸着用基板84に垂直な中心線を中心とした円の円周上に配置することによって、蒸気流の整流化によって結晶性が均一になるという作用を、蒸着用基板84の表面において等方的に得ることができる。 得られたシンチレータパネルは、下記熱処理工程、加圧処理工程などに供することが後述の観点より好ましい。
4−3.シンチレータ層の加熱処理
蒸着用基板の反射層上に形成されたシンチレータ層を、ナトリウム化合物、タリウム化合物、ユーロピウム化合物、インジウム化合物のうちのいずれか1つ以上の賦活剤化合物と共に1.0Pa以下に減圧された密閉空間に配置し、賦活化合物を昇華温度以上に加熱気化し、追加賦活を行うことがシンチレータ層の発光特性を調整できる観点から好ましい。この場合、蒸着用基板上に形成されたCsIなどの蛍光体は250℃の温度に加温しておく。この追加賦活を1時間実施後、追加賦活されたシンチレータ層の形成された蒸着用基板を50℃以下まで冷却し(平均冷却速度0.5℃〜10℃/分が好ましい)、シンチレータパネルを蒸着装置内の密閉空間から取り出すことで、シンチレータ層が追加賦活されたシンチレータパネルが得られる。あるいは賦活剤化合物を用いない以外は同様の手順で1時間の熱処理のみ実施することで、蒸着時に添加された賦活剤が活性化され、発光強度の高いシンチレータパネルを得ることができる。
4−4.シンチレータ層の加圧処理
本発明に係る蒸着用基板の反射層上に蒸着によりシンチレータ層を形成すれば、通常は、反射層界面からの高さが揃った柱状蛍光体結晶の集合体が得られるが、一部で蛍光体の結晶の異常成長などが生じ、柱状蛍光体結晶の高さの均一性が損なわれたシンチレータ層が得られることもある(但し、本発明の目的を損なうほどのものではない)。柱状蛍光体結晶の異常成長の原因としては、蒸着装置内の浮遊ゴミ、蒸着時のスプラッシュ、傷や異物付着などの基板欠陥などが挙げられる。蒸着時のスプラッシュとは、「気化する前のCsI固形物が飛び出し蒸着用基板に付着すること」である(特開2006−335887号公報などを参照)。
このような異常成長した柱状蛍光体結晶は、シンチレータパネルを介して得られる放射線画像の鮮鋭性などを低下させる要因となるため(但し、本発明の目的を損なうほどのものではない)、上記のような異常成長した柱状蛍光体結晶をそのままにしておかず、以下の加圧処理をすることが望ましい。また柱状蛍光体結晶の異常成長がなくても、より反射層界面からの高さが均一な柱状結晶からなるシンチレータパネルを得る目的で以下の加圧処理をした方がより好ましいことはいうまでもない。
上記のようにして得られたシンチレータパネルのシンチレータ層の表面を加圧処理し、該シンチレータ層の柱状蛍光体結晶の高さを均一にする処理をすることで、より均一な柱状蛍光体結晶の集合体からなるシンチレータ層を有するシンチレータパネルを得ることができる。
上記加圧処理は、シンチレータ層を形成する各柱状結晶の高さの差の最大で20μm程度となるように行うことが、上記観点より好ましい。
上記加圧処理は、具体的には、シンチレータパネルのシンチレータ層の表面を、ローラーや平滑なガラス面などで加圧し、異常突起を潰すなどして柱状蛍光体結晶の高さを揃える方法や、大気圧を利用する方法などがあるが、均一な加圧であれば、特に方法は限定されない(圧力は、本加圧処理の目的が達成されるように、適宜調整すればよい)。
中でも、シンチレータ表面をローラーや平滑なガラス板などで圧迫し柱状蛍光体結晶の高さを揃える方法としては、一定の加圧力が与えられたローラーやガラス板などで圧迫する方法が、後述の観点より、他方法に比して好ましい。ローラーやガラス板は80℃〜200℃に加熱しておいてもよい。さらに、超音波振動子などで微細振動する平滑なガラス板を使用することでより少ない加圧力で柱状蛍光体結晶の先端部の高さを揃えることができる。
柱状蛍光体結晶の高さを揃える為のより具体的な方法の例としては、シンチレータパネルのシンチレータ層の表面に平滑なガラス面を密着させた状態で、真空下で、上下に配置された樹脂フィルムの周縁部を融着しで封止した後に、大気圧下に取り出し、そのままの状態でシンチレータパネルを50℃〜200℃の環境で1時間〜100時間程度の熱処理をする方法などが、加圧処理の容易性の観点から好ましい。
上記のようにシンチレータ層を加圧処理すると、異常成長した柱状蛍光体結晶が、潰れて、該柱状蛍光体結晶の高さの調整がなされ、柱状蛍光体結晶の高さが均一(高さの相違が最大で20μm程度)なシンチレータ層が得られる。
上記加圧処理により上記柱状蛍光体結晶の高さを均一にする方法は、異常成長した柱状蛍光体結晶を削って高さを調節する方法などに比べて、柱状蛍光体結晶の損壊に伴う粉などの発生やその除去の必要性などが生じず、生産性が高く、品質管理にも優位である。
本発明に係るシンチレータパネルの製造方法によれば、シンチレータ層の蛍光体の結晶状態が均一であり、膜付き均一性に優れるので、断裁性に優れ、断裁処理に供してもひび割れなどを生じることがないシンチレータパネルを提供でき、該シンチレータパネルは、受光面内での画質が均一で、鮮鋭性とその均一性に優れる放射線画像を提供できるフラットパネルディテクタなどを提供できる。さらには、本発明に係るシンチレータパネルの製造方法によれば、製造されたシンチレータパネルは断裁処理に供してもひび割れなどを生じることがないので、蒸着装置で作製可能な任意のサイズ(最大サイズが後述のメリットの点で好ましい)で蒸着を実施し、必要に応じて、所望されるサイズに断裁すればよく、生産効率などに優れる。
4−5.シンチレータパネルの断裁方法
本発明に係るシンチレータパネルは、必要に応じて、例えば、光電素子面の面積より大である面積を有するシンチレータパネルから、用いる受光素子面に応じた面積に対応したシンチレータパネルを製造する場合などに、断裁を行う。この場合、シンチレータ層を蒸着用基板の反射層上に形成した後に断裁するため、放射線検出装置の受光素子サイズに合わせて各種大きさの蒸着用基板を複数用意し、該蒸着用基板を別途各々蛍光体の蒸着を行うなどの操作は不要である。即ち、蒸着装置で作製可能な任意のサイズ(最大サイズが後述のメリットの点で好ましい)で蒸着を実施し、必要に応じて、所望されるサイズに断裁すればよく、生産効率、出荷納期、ロット間やロット内の品質の均一性などにおけるメリットがある。
本発明に関わるシンチレータパネルを断裁する断裁工程に用いられる方法の典型的例について示す。
図8(a)、図8(b)は、シンチレータパネル10をブレードダイシングにより断裁する例である。シンチレータパネル10は、ダイシング装置32のダイシング台322に、シンチレータ層2側が下側を向いた状態でダイシング台322に接触するように配置される。シンチレータパネル10は、支持体1側(シンチレータ層2側の反対側)より導入されたブレード321により断裁される。 ブレード321は回転軸321aを中心にして回転してシンチレータパネル10を切断する。ダイシング台322には、シンチレータパネル10を切断した後のブレード321が侵入する溝221が設けられている。またブレード321の両側には、ブレード321を固定する目的で支持部材324が設けられている。ブレード321によるシンチレータパネルの切断時に生じる摩擦熱の冷却の為、ブレード321の両側のノズル323から冷却風が断裁部に吹き付けられる。冷却風の温度は通常4℃以下であり、結露防止の為、室内の湿度は通常20%以下になっている。ブレードダイシングは、シンチレータパネルを構成する支持体が、カーボン、アルミニウム、ガラスを主成分とするものである場合に好ましく適用できる。
図9は、シンチレータパネル10をレーザーにより断裁するレーザー断裁の例である。レーザー断裁装置33は、箱型に形成されたパージ室333を備えている。パージ室333は、外部の空間中に浮遊する塵等が内部に侵入しないように、内部がほぼ密閉された空間となっている。なお、パージ室333内は、低湿環境であることが好ましい。また、パージ室333の上面には、レーザー光を透過させる透光窓335が設けられている。また塵等の浮遊物をパージ室333の外に導く排出管334が設けられている。
シンチレータパネル10は、レーザー断裁装置33の支持台332上に搭載する。この場合、シンチレータパネル12は、シンチレータ層10が上側となるように搭載しても、下側となるように搭載してもよい。シンチレータパネル10は、該支持台333上に吸着保持される。支持台332上に載置されたシンチレータパネル10は、支持台移動手段(図示しない)によってレーザー発生装置331のレーザー照射部直下の位置に誘導される。シンチレータパネル10は、レーザー発生装置331から出射したレーザー光が照射されることで断裁される。レーザー光の照射条件は、通常、YAG−UV(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶:波長266nm)パルスレーザー光で、発振周波数5000Hz、ビーム径20μm、出力300mWである。シンチレータパネル10のレーザー光が照射された部分が断裁されたら、支持台移動手段(図示しない)によって、シンチレータパネル10を移動して、レーザー照射位置をずらしてシンチレータパネル10の新たな部分を断裁し、この操作を繰り返すことで、シンチレータパネル全体を所望の形状に断裁する。
本発明に係るシンチレータパネルの断裁方法で使用されるレーザーは、上述のような波長266nm程度の紫外レーザー光が望ましい。波長266nm程度のレーザーでは、熱作用により加工対象物を加工すると同時に、有機材料でC−H結合やC−C結合等の分子結合を解離させることも可能である。すなわち、例えば、支持体がポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムであるシンチレータパネルを断裁する場合、シンチレータ層は熱作用により断裁され、ポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムである支持体は分子結合が解離することで断裁されることとなる。このため、支持体である樹脂フィルムが熱変形などしてシンチレータ層との接合面に応力が加わるなどしないため、切断部の結晶割れを防止することができる。レーザー断裁はシンチレータパネルの支持体が樹脂フィルムの場合に特に好ましく適用できる。
4−6.シンチレータパネルへの保護層の形成方法
シンチレータパネルに保護層を設ける場合、保護層は、前記保護層を形成する材料を含む保護層形成用の塗布液を前記シンチレータ層の表面に直接塗布して形成してもよく、また、予め別途形成した保護層を前記蛍光体層に積層、あるいは接着剤により接着してもよい。また、保護層を形成する材料をシンチレータパネルに蒸着して保護層を形成してもよい。
但し、歯科分野で口腔内に入れて撮影する小型ディテクタなどは、その用途から小型ディテクタ筐体ごと水洗いやアルコール消毒などをする必要性があり、筐体自体が高い防湿性を有している。このような場合、シンチレータパネルの保護層は必ずしも必要とはならない。
本発明に係るシンチレータパネルに保護層を設ける場合、該保護層は、シンチレータ層全面及び反射層の一部が、連続した保護層により覆われるように形成することが好ましい。特に、膜として形成が容易であったり加工が容易であったりする観点より、ポリパラキシレンをCVD法(気相化学成長法)に供して、シンチレータパネルにポリパラキシレン膜の保護層を形成することがより好ましい。
さらに、シンチレータパネル上に、表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))が0.5μm以上、5.0μm以下となるようにポリパラキシレン膜の保護層を形成することで、シンチレータパネルと受光素子とを接合する態様における、シンチレータ面と受光素子面の正反射及び全反射による発光光の光拡散を効果的に防止できる。
図10は、シンチレータパネル10の蛍光体層2の表面にポリパラキシレン膜からなる保護層を形成する例である。
CVD蒸着装置50は、ポリパラキシレンの原料であるジパラキシリレンを挿入し気化させる気化室551、気化したジパラキシリレンを加熱昇温してラジカル化する熱分解室552、ラジカル化された状態のジパラキシリレンをシンチレータが形成されたシンチレータパネル10に蒸着させる蒸着室553、防臭、冷却を行う冷却室554及び真空ポンプを有する排気系555を備える。ここで、蒸着室553は、図10に示すように熱分解室552においてラジカル化されたポリパラキシレンを導入する導入口553a及び余分なポリパラキシレンを排出する排出口553bを有すると共に、ポリパラキシレン膜の蒸着を行う試料を支持するターンテーブル(蒸着台)553cを有する。
蒸着室553のターンテーブル553c上にシンチレータパネル10のシンチレータ層2を上向きにして設置する。次に、気化室51において175℃に加熱して気化させ、熱分解室552において690℃に加熱昇温してラジカル化したジパラキシリレンを、導入口53aから蒸着室553に導入して、シンチレータ層2の保護層(ポリパラキシレン膜)を2〜15μmの厚さで蒸着する。ここで、蒸着室553内は真空度が、例えば1〜100Pa(好ましくは13Pa)に維持されている。又、ターンテーブル553cは、例えば0.5〜20rpm(好ましくは4rpm)の速度で回転させる。また、余分なポリパラキシレンは、排出口553bから排出され、防臭、冷却を行う冷却室554及び真空ポンプを有する排気系555に導かれる。
また、別の態様では、保護層の材料として、ホットメルト樹脂も使用できる。ホットメルト樹脂はシンチレータパネルと平面受光素子面との接着も兼ねることができる。
ホットメルト樹脂を材料とした保護層の作成方法としては、以下に示す方法が挙げられる。
例えば、剥離剤がコーティングされた剥離シートを準備し、ホットメルト樹脂をこの剥離シートに塗設し、このホットメルト樹脂面をシンチレータパネルの蛍光体層面に配置し、加熱したローラーで加圧しながら張り合わせ、冷却後に剥離シートを取り除く方法が挙げられる。その他にも、上記ホットメルト樹脂が塗設されたシートをシンチレータ層面に配置した後、ホットメルト樹脂が塗設されたシートおよびシンチレータ層の互いに接触していない面のそれぞれの上に、樹脂フィルムを設置し、減圧下で設置した樹脂フィルムの周縁部をシール(密封)した後、大気圧下で加熱する方法が挙げられる。
後者の方法の樹脂フィルムとしては、シーラントフィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)のドライラミネートフィルムなどが好適であり、ホットメルト樹脂とシンチレータ層との接触面全面において大気圧による均一な接着圧が得られる点で、より好ましい。
シンチレータパネルに保護層を設ける場合は、蒸着法、スパッタリング法などにより、SiCsIO2、SiNAl23などの無機物質を含む層を該保護層上に積層されるように形成してもよい。
なお、上述のシンチレータパネルの各種性能の評価は、該シンチレータパネルと後述の受光素子とをカップリングして、放射線画像像装置に組み込んでから行うため、放射線画像装置について述べた後、詳述することとする。
5.蒸着用基板およびシンチレータパネルの評価と用途
本発明に係る蒸着用基板は、シンチレータ層形成予定面の表面状態が、該表面に蛍光体を蒸着させたときに、均一な柱状蛍光体結晶が形成されるように調整されているため、鮮鋭性やその均一性に優れるX線画像などの放射線画像を提供でき、断裁性に優れるシンチレータパネルが提供できる。従って、(放射線用)シンチレータパネルなどにおける蒸着用基板の用途に好適である。
本発明に係るシンチレータパネルは、鮮鋭性やその均一性に優れるX線画像などの放射線画像を提供でき、断裁性に優れるので、例えば、受光素子とカップリングして、放射線画像検出器などの用途に好適に供することができる。
本発明に係る蒸着用基板をシンチレータパネルの用途に供することができる点については、既に述べたので、以下、本発明に係るシンチレータパネルを受光素子とカップリングして放射線画像検出器の用途に供することができる点について述べ、次に蒸着用基板の評価方法、該放射線画像検出器を用いたシンチレータパネルの各種性能の評価方法について述べる。
5−1.放射線画像検出器
5−1−1.シンチレータパネルと受光素子とのカップリング
本発明に係るシンチレータパネルは、2次元状に複数の受光画素が配置され、該シンチレータパネルで生じた光を光電変換する受光素子とカップリングして用いることができる。
受光素子上には、受光素子とシンチレータパネルとを隔てる膜が形成されていてもよい。以下、上記膜が形成されている受光素子も上記膜が形成されていない受光素子も、総括的に「受光素子」という。
本発明のシンチレータパネルと平面受光素子面を貼り合せるにあたっては、それらの接合面での光拡散によって得られる放射線画像の鮮鋭性が劣化することを抑制するような貼り合せ方法を選択することが好ましい。シンチレータパネルと平面受光素子の接合にあたっては一般に、シンチレータパネルのシンチレータ面と受光素子面とを何らかの加圧手段によって密着させる方法やシンチレータパネルのシンチレータの屈折率と平面受光素子の受光素子の屈折率の中間の値を持つ接合剤、例えば接着剤や光学オイルなどにて接合する方法などがある(シンチレータパネルのシンチレータ層に保護層が形成されている場合は、特に断りがない場合は「シンチレータ層面」を「保護層面」と読み替えればよい。以下同じ。)。
シンチレータパネルのシンチレータ層面と受光素子面を接合する接着剤としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、シリコン系などの常温硬化型(RTV型)の接着剤が挙げられる。特に、弾力性を有する接着樹脂としては、ゴム系の接着剤が挙げられる。ゴム系の接着剤の樹脂としては、スチレンイソプレンスチレン等のブロックコポリマー系や、ポリブタジエン、ポリブチレン等の合成ゴム系接着剤、及び天然ゴム等が挙げられる。市販されているゴム系接着剤の例としては、一液型RTVゴムKE420(信越化学工業社製)などが好適に挙げられる。シリコン接着剤としては、過酸化物架橋タイプや付加縮合タイプのシリコン接着剤が挙げられ、これらを単体でまたは混合して使用してもよい。さらに、上記接着剤としては、アクリル系やゴム系粘着剤と混合して使用することもできるし、アクリル系接着剤のポリマー主鎖や側鎖にシリコン成分をペンダントした接着剤を使用してもよい。
また、その他に、光学グリースも使用できる。またシンチレータパネルと受光素子に対して粘着性を有する光学オイル等も使用できる。光学オイルは透明性が高く粘着性があれば公知のいかなるものも使用できる。市販されている光学オイルの例としてはKF96H(100万CS:信越化学工業社製)、CArgille Immersion Oil Type 37(CArgille社製・屈折液)などが好適に使用される。光学グリースは、透明性が高く粘着性があれば公知のいかなるものでよい。市販されている光学グリースの例としては、シリコンオイルKF96H(100万CS:信越化学工業社製)などが好適に挙げられる。
シンチレータパネルと受光素子を接着剤で張り合わせる場合、通常、接着剤が固化するまで10〜500g/cm2の圧力で加圧する。加圧により接着剤層から気泡が除去される。保護層としてホットメルト樹脂を使用した場合は10〜500g/cm2の圧力で加圧しながら、ホットメルト樹脂の溶融開始温度より10℃以上高い温度まで加熱し1〜2時間静置後、徐々に冷却する。急冷するとホットメルト樹脂の収縮応力により受光素子の画素にダメージを与える傾向がある。好ましくは20℃/hour以下の速度で50℃以下まで冷却する。
しかしながら、上記方法のうち、加圧手段によって密着させる方法は、シンチレータパネルのシンチレータ層面と受光素子面との接合部の空隙(空気層)において生じる、シンチレータパネルから生じた発光光の光散乱の影響は避けられない。
また、シンチレータパネルのシンチレータ屈折率と受光素子の屈折率との中間の値を持つ接合剤によって密着させる方法であっても、シンチレータパネルのシンチレータ層の屈折率、接合剤の屈折率及び受光素子の屈折率を全て同一にすることは困難であり、シンチレータと接合剤との界面、及び接合剤と受光素子との界面で光散乱が生じる、シンチレータパネルから生じた発光光の光散乱により、得られる放射線画像の鮮鋭性が劣化する(但し、本発明の目的を損なわない程度のものである)。
これらの放射線画像の鮮鋭性の劣化に関する問題は、シンチレータパネルのシンチレータ層面上に光拡散防止層を設ける、シンチレータパネルのシンチレータ層面上か受光素子面上の少なくとも一方に反射防止層を設ける、互いに対向するシンチレータ層面および受光素子面のいずれかまたは双方の表面粗さ(Ra)を0.5μm以上、5.0μm以下にするなど、シンチレータパネルのシンチレータ層面および受光素子面に散乱防止加工を実施することで解決することができる。これら散乱防止加工と、上記既知の接合方法を組み合わせることで、上述の光散乱を効果的に防止でき、鮮鋭性やその均一性に優れた放射線画像を得ることができる。
ここで、光拡散防止層とは、波長550nmの光に対して、60%以上99%以下の光透過率を有し、シンチレータパネル上に設けられ、保護層としても機能する層であり、(光拡散防止層でもある)保護層中を伝搬する光の強度を減衰させる機能を有する。シンチレータから受光素子に向かう発光光は光拡散防止層での光路が短いため強度低下は殆どないが、光拡散防止層内を受光素子面と平行に近い角度で進行する光路が長い散乱光を効果的に除去する効果がある。
また、反射防止層とは、シンチレータパネルのシンチレータ層で生じた発光光が、シンチレータパネルのシンチレータ層面−受光素子面間において反射を繰り返し、シンチレータ層面−受光素子面間を伝播するといった現象を防止し、発光位置から離れた位置の受光素子部(画素)で誤検出されることを防止するものである。反射防止層は、シンチレータ層面上に設けられる場合は、屈折率がシンチレータ層の屈折率よりも小さい樹脂層であり、受光素子面上に設けられる場合は、屈折率が受光素子の屈折率より小さい樹脂層である。このような反射防止層をシンチレータパネルのシンチレータ層面上か受光素子面上の少なくとも一方に設けることで、発光光のシンチレータ層面−受光素子面間のおける繰り返し反射を防止することができる。反射防止層は、上記光拡散防止層を有する保護層の効果も得られるという観点から、波長550nmの光に対する光透過率が、60%以上99%以下となるように設計することが、より好ましい。
また、互いに対向するシンチレータ層面および受光素子面のいずれかまたは双方の表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))を0.5μm以上、5.0μm以下にすることで、光の入射面における凹凸による正反射及び全反射を抑制できるので、シンチレータ層で生じた発光光のシンチレータ層面−受光素子面間における光拡散を効果的に防止できる。
また、シンチレータ層面上や受光素子面上に設ける光拡散防止層や反射防止層についても、それぞれ、シンチレータパネル面や受光素子面と接触させる面(表面)の算術平均粗さを0.5μm以上、5.0μm以下とすることが、上記光拡散防止に関して複合効果が得られ、より好ましい。
上記光拡散防止層及び反射防止層としては、例えば、ポリパラキシレン、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルアクリロニトリル共重合体、ブタジエンアクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレンブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等を含むものが挙げられる。これらは1種単独でも2種以上が混合されていてもよい。上記光拡散防止層及び反射防止層は、シンチレータパネルのシンチレー層面あるいは受光素子面への形成が容易であり、該シンチレータ層の保護層としての機能も有するなどの観点から、特にCVD法(気相化学成長法)により形成されるポリパラキシレン膜であることが好ましい(この場合、ポリパラキシレン膜が保護層、光拡散層、反射防止層としての役割を果たすので、必ずしも別途保護層を設ける必要はない)。
光拡散防止層に色材を含有させて光透過率を調整する場合、色材としては、各波長の光の中でもより光散乱しやすい赤色の長波光を吸収するという観点から、赤色の長波光を吸収する青色の着色材が好ましく、例えば、ウルトラマリン青、プロシア青(フエローシアン化鉄)、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド、カルボニウム等が挙げられる。
5−1−2.受光素子とカップリングしたシンチレータパネルが組み込まれた撮像パネルを含む放射線画像検出器
以下に、本発明に係るシンチレータパネルの一適用例として、図4及び図5を参照しながら、放射線用シンチレータプレート10を具備した放射線画像検出器100の構成について説明する。
放射線画像検出器100において、受光素子とカップリングしたシンチレータパネルは、撮像パネル中に組み込まれる。
なお、図4は放射線画像検出器100の概略構成を示す一部破断斜視図である。また、図5は撮像パネル51の拡大断面図である。
図4に示す通り、放射線画像検出器100には、撮像パネル51、放射線画像検出器100の動作を制御する制御部52、書き換え可能な専用メモリ(例えばフラッシュメモリ)等を用いて撮像パネル51から出力された画像信号を記憶する記憶手段であるメモリ部53、撮像パネル51を駆動して画像信号を得るために必要とされる電力を供給する電力供給手段である電源部54等が筐体55の内部に設けられている。筐体55には必要に応じて放射線画像検出器100から外部に通信を行うための通信用のコネクタ56、放射線画像検出器100の動作を切り換えるための操作部57、放射線画像の撮影準備の完了やメモリ部53に所定量の画像信号が書き込まれたことを示す表示部58等が設けられている。
ここで、放射線画像検出器100に電源部54を設けるとともに放射線画像の画像信号を記憶するメモリ部53を設け、コネクタ56を介して放射線画像検出器100を画像転送先PCから着脱自在にすれば、放射線画像検出器100をPC設置場所に固定する必要がなくなり、持ち運びできる可搬構造とすることができる。
図5に示すように、撮像パネル51は、放射線用シンチレータパネル10と、放射線用シンチレータパネル10からの電磁波を吸収して画像信号を出力する出力基板20とから構成されている。
撮像パネル51において、放射線用シンチレータパネル10は、シンチレータ層が受光素子と接触するように配置されており、入射した放射線の強度に応じた電磁波を発光するように構成されている。
出力基板20は、放射線用シンチレータパネル10の放射線照射面と反対側の面に設けられており、放射線用シンチレータパネル10側から順に、隔膜20a、受光素子20b、画像信号出力層20c及び基板20dを備えている。
隔膜20aは、放射線用シンチレータパネル10と他の層(撮像パネル51では出力基板20)とを分離するためのものである。
受光素子20bは、透明電極21と、透明電極21を透過して入光した電磁波により励起されて電荷を発生する電荷発生層22と、透明電極21に対しての対極になる対電極23とから構成されており、それらは隔膜20a側から透明電極21、電荷発生層22、対電極23の順で配置される。
透明電極21とは、光電変換される電磁波を透過させる電極であり、例えばインジウムチンオキシド(ITO)、SNO2、ZnOなどの導電性透明材料からなる。
電荷発生層22は、透明電極21の隔膜20aと接触している面とは反対側の表面上に薄膜状に形成されている。電荷発生層22は、光電変換可能な化合物として光によって電荷分離する有機化合物を含有する。電荷を分離する有機化合物は、電荷を発生し得る電子供与体及び電子受容体としての導電性化合物である。電荷発生層22に放射線のような電磁波が入射されると、電子供与体が励起して電子を放出し、放出した電子が電子受容体に移動して、電荷発生層22内に電荷、すなわち、正孔と電子のキャリアが発生する。
ここで、電子供与体としての導電性化合物としては、p型導電性高分子化合物が挙げられ、p型導電性高分子化合物としては、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリ(p−フェニレン)又はポリアニリンの基本骨格を持つ化合物が好ましい。
また、電子受容体としての導電性化合物としては、n型導電性高分子化合物が挙げられ、n型導電性高分子化合物としては、ポリピリジンの基本骨格を持つ化合物が好ましく、特にポリ(p−ピリジルビニレン)の基本骨格を持つ化合物が好ましい。
電荷発生層22の膜厚は、光吸収量を確保する観点から、10nm以上(特に100nm以上)が好ましく、また電気抵抗が大きくなりすぎることを防止する観点から、1μm以下(特に300nm以下)が好ましい。
対電極23は、電荷発生層22の電磁波(放射線用シンチレータパネル10のシンチレータ層2から生じた発光光)が入光される側の面と反対側に配置されている。対電極23は、例えば、金、銀、アルミニウム、クロムなどの一般の金属電極や、透明電極21と同様の透明電極の中から選択できるが、良好な特性を得る観点より、仕事関数の小さい(4.5eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物から選択される材料から形成される電極が好ましい。
また、電荷発生層22と各電極(透明電極21及び対電極23)との間には、電荷発生層22とこれら電極が反応しないように、緩衝地帯として作用させるためのバッファー層を設けてもよい。バッファー層は、例えば、フッ化リチウム及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホナート)、2,9−ジメチル4,7−ジフェニル[1,10]フェナントロリンなどを用いて形成される。
画像信号出力層20cは、光電変換素子20bで得られた電荷の蓄積および蓄積された電荷に基づく信号の出力を行うものであり、光電変換素子20bで生成された電荷を画素毎に蓄積する電荷蓄積素子であるコンデンサ24と、蓄積された電荷を信号として出力する画像信号出力素子であるトランジスタ25から構成される。
トランジスタ25としては、例えばTFT(薄膜トランジスタ)が挙げられる。このTFTは、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系TFTでも、有機半導体系TFTでもよく、プラスチックフィルム上に形成されたTFTが好ましい。プラスチックフィルム上に形成されたTFTとしては、プラスチックフィルム上に形成されたアモルファスシリコン系半導体のTFTが挙げられる。その他にも、米国Alien Technology社が開発しているFSA(Fluidic Self Assembly)技術を応用して得られるTFT、即ち、エンボス加工したプラスチックフィルム上に単結晶シリコンで形成される微小CMOS(Nanoblocks)を配列させることで得られる、フレキシブルなプラスチックフィルム上に形成されたTFTなどが挙げられる。さらに、Science,283,822(1999)やAppl.Phys.Lett,771488(1998)、Nature,403,521(2000)等の文献に記載されているような有機半導体を用いたTFTであってもよい。
本発明に用いられるトランジスタ25としては、上記FSA技術を応用して作製したTFT及び有機半導体を用いたTFTが好ましく、特に好ましくは有機半導体を用いたTFTである。有機半導体を用いてTFTを構成すれば、シリコンを用いてTFTを構成する場合のように真空蒸着装置等の設備が不要となり、印刷技術やインクジェット技術を活用してTFTを形成できるので、製造コストが安価となる。さらに、有機半導体を用いたTFTを用いる場合は、その加工温度を低く設定できるので、熱に弱いプラスチック基板上にも形成できる。
トランジスタ25には、光電変換素子20bで発生した電荷を蓄積するコンデンサ24とともに、コンデンサ24の一方の電極となる収集電極(図示せず)が電気的に接続されている。コンデンサ24には光電変換素子20bで生成された電荷が蓄積されるとともに、この蓄積された電荷はトランジスタ25を駆動することで読み出される。すなわちトランジスタ25を駆動させることで放射線画像の画素毎の信号を出力させることができる。
基板20dは、撮像パネル51の支持体として機能するものであり、蒸着用基板1と同様の素材で構成することが可能である。
次に、放射線画像検出器100の放射線画像を検出する機構について説明する。
まず、放射線画像検出器100に、X線などの放射線が、撮像パネル51の放射線用シンチレータパネル10側から基板20d側に向けて入射される。
放射線画像検出器100に入射された放射線は、放射線画像検出器100内の放射線用シンチレータパネル10のシンチレータ層2に放射線エネルギーとして吸収され、シンチレータ層2内で放射線が可視光に変換されて、シンチレータ層2から放射線の強度に応じた可視光(電磁波)が発光される。発光された可視光(電磁波)のうちの一部が、出力基板20に入光され、出力基板20の隔膜20a、透明電極21を透過し、電荷発生層22に到達する。そして、電荷発生層22において、可視光(電磁波)は吸収され、吸収された可視光(電磁波)の強度に応じて、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
電荷発生層22において発生した正孔と電子は、電源部54によるバイアス電圧の印加により生じる内部電界の作用により、それぞれ異なる電極(透明電極21及び対電極23)へ運ばれ、光電流が流れる。
対電極23側に運ばれた正孔は、画像信号出力層20cのコンデンサ24に蓄積される。蓄積された正孔は、コンデンサ24に接続されているトランジスタ25を駆動させると、画像信号を出力すると共に、出力された画像信号はメモリ部53に記憶される。
上記放射線画像検出器100は、上記放射線用シンチレータパネル10を備えているので、光電変換効率が高く、放射線画像における低線量撮影時のSN比が向上しており、画像ムラや線状ノイズが発生しない(もしくは発生し難い)。
5−3.蒸着用基板の各種性能の評価方法
5−3−1.蒸着用基板の反射層の表面粗さ
蒸着用基板の反射層の表面粗さの評価方法は、後述の実施例に記載した評価方法に準ずる。
蒸着用基板の反射層の表面粗さは、JIS(JIS B 0601−2001)に準じて測定した算術平均粗さ(Ra)で評価する。尚、本発明に係る蒸着用基板の表面粗さ(Ra)は、東京精密社製サーフコム1400Dにより測定した値を示す(カットオフ値:0.08mm、測定長:4.0mm)。
5−3−2.揮発成分量の測定
蒸着用基板の揮発成分量の測定方法は、後述の実施例に記載した評価方法に準ずる。
蒸着用基板を200℃で3分間加熱処理し、熱処理前後の重量から蒸着用基板中の揮発成分量を測定する。
本明細書において、揮発成分量とは下記式で定義される。
揮発成分量(質量%)=[(M−N)/N]×100
Mは蒸着用基板の加熱処理前の質量で、Nは蒸着用基板を200℃で3分の加熱処理した後の質量である。
5−3−3.蒸着用基板の反射層の反射率の測定
蒸着用基板の反射層の反射率の測定方法は、後述の実施例に記載した評価方法に準ずる。
蒸着用基板の反射層の反射率は、分光式色差計SE−2000型(日本電色工業(株)製)を用い、JIS Z−8722に基づいて波長550nmでの反射率を測定する。
5−4.シンチレータパネルの各種性能の評価方法
5−4−1.シンチレータパネルの断裁性の評価方法
シンチレータパネルの断裁性の評価方法は、後述の実施例に記載した評価方法に準ずる。
概略としては、シンチレータパネルを該シンチレータパネル以上の有効画素面積を有する受光素子とカップリングして、X線を照射して得られたベタ画像を解析し、得られた画像の周縁部の連続した2画素において画像欠損が生じている箇所の個数をカウントする。
本発明では、連続した2画素において画像欠損が発生している箇所が検出された場合、その箇所で断裁時のひび割れが生じたと判断する。尚、ここで言う画像欠損が発生している箇所とは、対応する画素のシグナル値が隣接する周辺画素の平均シグナル値の50%以下になっている部分の事を言う。
5−4−2.シンチレータパネルの鮮鋭性の評価方法
シンチレータパネルの鮮鋭性の評価方法は、後述の実施例に記載した評価方法に準ずる。
具体的には、管電圧を80Kvpに設定したX線照射装置を用いて、鉛製スリット(スリット厚2mm、スリット間隙10μm)を通して、X線を、上記放射線画像検出器やハードディスクを具備したFPDに照射し、放射線画像検出器で検出された画像データを前記ハードディスクに記録する。その後、ハードディスク上の画像データの記録をコンピュータで分析して、当該ハードディスクに記録されたX線画像の変調伝達関数MTF(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を鮮鋭性の指標とする。MTFはModulation Transfer Functionの略号であり、MTF値が高いほど得られたX線画像の鮮鋭性が優れていることを示す。
5−4−3.シンチレータパネルを介して得られるX線画像の鮮鋭性の均一性の評価方法
シンチレータパネルを介して得られるX線画像の評価方法は、後述の実施例に記載した評価方法に準ずる。
上記シンチレータパネルを介して得られるX線画像の鮮鋭性の均一性は、上記鮮鋭性の評価方法に従い、MTF(1サイクル/mm)を、上記FPDのX線検出面に対して均等な間隔で少なくとも10か所以上測定し、得られたMTF(1サイクル/mm)の平均MTF値(MAVG)、最大MTF値(MMAX)、最小MTF値(MMIN)から、下記計算式から算出したMTF分布(%)の値から評価する。MTF分布(%)の値は、小さいほど得られたX線画像の鮮鋭性の均一性が高いことを示す。
MTF分布(%)=(MMAX−MMIN)/MAVG×100
5−4−4.シンチレータパネルの感度(輝度)の評価方法
シンチレータパネルの感度(輝度)の評価方法は、後述の実施例に記載した評価方法に準ずる。
管電圧を80Kvpに設定したX線照射装置を用いて、X線を放射線画像検出器に照射し、得られたX線画像データから、該X線画像全面の平均シグナル値を求めてシンチレータパネルの感度とする。このときシンチレータパネル1を搭載した放射線画像検出器の平均シグナル値を100とする。
5−4−5.シンチレータパネルのX線耐久性の評価方法
シンチレータパネルのX線耐久性の評価方法は、後述の実施例に記載した評価方法に準ずる。
管電圧を80Kvpに設定したX線照射装置を用いて、X線をシンチレータパネルの支
持体側からシンチレータ層側に向けて、放射線量が1000Rとなるまで照射する。次いで、上記処理前(初期状態)のシンチレータパネルの輝度を100とした時の、上記処理後のシンチレータパネルの輝度を指標として、シンチレータパネルの感度を評価する。
5−4−6.シンチレータパネル及び受光素子面の粗さの評価方法
シンチレータパネル及び受光素子面の粗さの評価方法は、後述の実施例に記載した評価方法に準ずる。
シンチレータパネル及び受光素子面の表面粗さは、JIS(JIS B 0601−2001)に準じて測定した算術平均粗さ(Ra)で評価する。尚、本発明の算術平均粗さ(Ra)は、東京精密社製サーフコム1400Dにより測定した値を示す。
5−4−7.シンチレータパネルの柱状蛍光体結晶の柱状径の測定
シンチレータパネルの柱状蛍光体結晶の柱状径は、シンチレータ層と反射層との接触面からの高さ(該接触面を原点としたシンチレータ層方向への位置)が10μmになるまで柱状蛍光体結晶を研磨後、研磨後の柱状蛍光体結晶の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により写真撮影して、該写真内において、任意の50箇所の柱状蛍光体結晶断面をサンプリングし、各断面において柱状径を測定し、平均値を算出して得る。尚、柱状径は上記高さにおける切断面の面積と同じ面積となる円の径として算出する。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下において、「平均粒子径」は「面積平均粒子径」である。
1.蒸着用基板の作製
1−1.第一の蒸着用基板
[実施例1:蒸着用基板1]
厚さ125μmのポリイミドフィルム(宇部興産社製UPILEX−125S)製支持体に、下記の手順にて蒸着用基板1を作製した。
光散乱粒子として平均粒子径0.6μmのルチル型二酸化チタンを10質量部、バインダー樹脂としてポリエステル樹脂を10質量部(東洋紡社製バイロン550、Tg:−15℃)、溶剤としてシクロヘキサノン40質量部およびメチルエチルケトン(MEK)40質量部とを混合し、サンドミルで分散処理して第1の樹脂層用塗料(反射層形成用塗料1)を作製した。この第1の樹脂層用塗料を、コンマコーターで500mm幅のポリイミドフィルム支持体上に塗工後、第1の樹脂層用塗料を180℃で3分間乾燥して、厚さ50μmの第1の樹脂層を支持体上に形成した。さらに、二酸化チタンを含まない以外は第1の樹脂層用塗料と同じ組成の第2の樹脂層用塗料(反射層形成用塗料2)を該第1の樹脂層上に塗布し、前記と同じ条件で第2の樹脂層用塗料を乾燥して、厚さ5μmの光散乱粒子を含まない第2の樹脂層を形成することで蒸着用基板1を作製した(表1も参照)。
得られた蒸着用基板1について、後述の各種試験を行った。
[実施例2〜7:蒸着用基板2〜7]
実施例1において、光散乱粒子を含まない第2の樹脂層の厚みを表1に示した厚みにした以外は、実施例1と同様にして蒸着用基板2〜7を作成した。
得られた蒸着用基板2〜7について、後述の各種試験を行った。
[実施例8:蒸着用基板8]
実施例1において、光散乱粒子として平均粒子径0.6μmのルチル型二酸化チタン7質量部と平均粒子径0.3μmの硫化バリウム3質量部との混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして蒸着用基板8を作成した。
得られた蒸着用基板8について、後述の各種試験を行った。
[実施例9:蒸着用基板9]
実施例1において、光散乱粒子として平均粒子径0.6μmのルチル型二酸化チタン9質量部と平均粒子径0.3μmの中空粒子(JSR社製SX866)1質量部との混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして蒸着用基板9を作成した。
得られた蒸着用基板9について、後述の各種試験を行った。
[実施例10:蒸着用基板10]
実施例1において、第2の樹脂層用塗料に、蛍光増白剤(イーストマン社製OB−01)0.05質量部を混合した以外は、実施例1と同様にして反射層試料10を作成した。
得られた蒸着用基板10について、後述の各種試験を行った。
[実施例11:蒸着用基板11]
実施例1において、反射率調整の為、第1の樹脂層用塗料及び第2の樹脂層用塗料に、β−銅フタロシアニンをポリエステル樹脂に対して0.1%重量部の量となるように加えた以外は、実施例1と同様にして蒸着用基板11を作成した。
得られた蒸着用基板11について、後述の各種試験を行った。
[実施例12:蒸着用基板12]
実施例1において、第1、第2樹脂層用塗料の乾燥温度を共に180℃から160℃に変更した以外は、実施例1と同様にして蒸着用基板12を作成した。
得られた蒸着用基板12について、後述の各種試験を行った。
[実施例13:蒸着用基板13]
実施例1において、第1、第2樹脂層用塗料の乾燥温度を共に180℃から150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして蒸着用基板13を作成した。
得られた蒸着用基板13について、後述の各種試験を行った。
[比較例1:蒸着用基板R1]
実施例1において、第2の樹脂層を支持体に形成された第一の樹脂層上に塗布しない以外は、実施例1と同様にして蒸着用基板R1を作成した。
得られた蒸着用基板R1について、後述の各種試験を行った。
1−2.第二の蒸着用基板
[実施例14:蒸着用基板14]
実施例1において、光散乱粒子として平均粒子径0.28μmのルチル型二酸化チタンを使用し、第2の樹脂層を形成しない以外は実施例1と同様にして蒸着用基板14を作成した。
得られた蒸着用基板14について、後述の各種試験を行った。
[実施例15:蒸着用基板15]
実施例14と同様にして厚さ50μmの第1の樹脂層を形成した。次いで、光散乱粒子として平均粒子径0.28μmのルチル型二酸化チタンを10質量部配合した以外は実施例1の第2の樹脂層用塗料の作製と同様の手順で第2の樹脂層用塗料を作製し、これを第1の樹脂層の表面上に塗布して、厚さ0.5μmの第2の樹脂層を第1の樹脂層上に形成することで蒸着用基板15を作成した。
得られた蒸着用基板15について、後述の各種試験を行った。
[実施例16:蒸着用基板16]
実施例15において、第2の樹脂用塗料に配合する光散乱粒子を平均粒子径0.50μmのルチル型二酸化チタンに替えた以外は、実施例15と同様にして、蒸着用基板16を作成した。
得られた蒸着用基板16について、後述の各種試験を行った。
[比較例R2:蒸着用基板R2]
実施例15において、第2の樹脂用塗料に配合する光散乱粒子を平均粒子径0.60μmのルチル型二酸化チタンに替えた以外は、実施例15と同様にして、蒸着用基板R2を作成した。
得られた蒸着用基板R2について、後述の各種試験を行った。
1−3.第三の蒸着用基板
[実施例17:蒸着用基板17]
実施例15において、第2の樹脂用塗料に配合する光散乱粒子を平均粒子径0.60μmのルチル型二酸化チタンに替えた以外は、実施例15と同様にして、蒸着用基板17'を作製した(ここで、第三の蒸着用基板の作製においては、下記圧縮処理前の蒸着用基板を「'」を付して表す)。次いで、該蒸着用基板17'を、カレンダー装置を用いて、総荷重2000kg、上側ロール温度40℃、下側ロール温度40℃、ロール速度0.1m/分の条件で圧縮処理して、蒸着用基板17を作製した。
得られた蒸着用基板17について、後述の各種試験を行った。
[実施例18:蒸着用基板18]
実施例17において、圧縮処理の条件を、総荷重200kg、上側ロール温度25℃、下側ロール温度25℃、速度1m/分に替えた以外は、実施例17と同様にして、蒸着用基板18を作製した。
得られた蒸着用基板18について、後述の各種試験を行った。
[比較例3:蒸着用基板R3]
実施例17において、圧縮処理の条件を、総荷重100kg、上側ロール温度25℃、下側ロール温度25℃、速度10m/分に替えた以外は、実施例17と同様にして、蒸着用基板R3を作製した。
得られた蒸着用基板R3について、後述の各種試験を行った。
2.蒸着用基板の評価
作製した蒸着用基板の各種評価を下記に従い行った。結果は表1に示した。
2−1.蒸着用基板の反射層の評価
(反射層の表面粗さ)
反射層の表面粗さは、JIS(JIS B 0601−2001)に準じて測定した算術平均粗さ(Ra)で評価した。尚、本発明に係る蒸着用基板の表面粗さ(Ra)は、東京精密社製サーフコム1400Dにより測定した値を示す。
(揮発成分量の測定)
蒸着用基板を200℃で3分間加熱処理し、熱処理前後の重量から蒸着用基板中の揮発成分量を測定した。
本明細書において、揮発成分量とは下記式で定義される。
揮発成分量(質量%)=[(M−N)/N]×100
Mは蒸着用基板の加熱処理前の質量で、Nは蒸着用基板を200℃で3分の加熱処理した後の質量である。
(蒸着用基板の反射層の反射率の測定)
蒸着用基板の反射層の反射率は、分光式色差計SE−2000型(日本電色工業(株)製)を用い、JIS Z−8722に基づいて波長550nmでの反射率を測定した。
2−2.蒸着用基板のシンチレータ層形成予定面の評価
蒸着用基板をカッター刃で断裁し、断面をSEM観察することでシンチレータ形成予定面の表面に露出した光散乱粒子の有無を観察した。
ここで、シンチレータ形成予定面は、蒸着用基板1〜13、15〜18、R2、R3においては、第2の樹脂層の第1の樹脂層と接している面の反対側の表面、蒸着用基板14R1においては第1の樹脂層の支持体と接している面の反対側の表面である。
3.シンチレータパネルおよびそれを具備する放射線画像検出器の作製
3−1.蒸着用基板1〜18及びR1〜R3を用いたシンチレータパネルの作製
[実施例19〜36(順に蒸着用基板1〜18を使用)及び比較例4〜6(順に蒸着用基板R1〜R3を使用)]
(シンチレータ層の形成)
上記、蒸着用基板1〜18及びR1〜R3を、打ち抜き断裁機を使用して50cm×50cmのサイズに断裁した。次いで、それぞれの蒸着用基板について、図3に示す蒸着装置の基板ホルダ5にセットし、下記の通り蛍光体を蒸着用基板のシンチレータ形成予定面に蒸着することで、蒸着用基板にシンチレータ(蛍光体)層が形成されたシンチレータパネル1'〜13'およびR1'〜3'を作製した(ここで、「'」を付したシンチレータパネルは、追加賦活前のシンチレータパネルを表す)。
まず、賦活剤を含まない蛍光体原料(pureCsI)と蛍光体原料(CsI)に対し賦活剤(TlI)を0.3(mol%)の比率で混合しものとを蒸着材料として抵抗加熱ルツボに充填し、それぞれ蒸着源88a,88bとした。また、回転可能なホルダ85に蒸着用基板を、ホルダ85に該蒸着用基板の支持体面が接触するように設置した。蒸着用基板と蒸発源88との間隔を400mmに調節した。
次いで、蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して蒸着装置内の真空度を0.5Paに調整した後、10rpmの速度でホルダ5と共に蒸着用基板を回転させながら、ホルダ85を加熱して、蒸着用基板の温度を150℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボ(蒸着源88a)を加熱して、賦活剤を含まない蛍光体原料(pureCsI)を30μmの厚みになるまで蒸着用基板のシンチレータ形成予定面に蒸着してシンチレータ下地層を形成した。次いで、蒸着用基板の温度を200℃まで昇温すると共に、蒸着装置内の真空度を0.1Paに調整し、蛍光体と賦活剤が混合された抵抗加熱ルツボ(蒸着源88b)からの蒸着も開始し、シンチレータ本層を蒸着用基板のシンチレータ形成予定面に形成した。シンチレータ層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了させ、蒸着用基板のシンチレータ形成予定面上に所定膜厚のシンチレータ層が形成されたシンチレータパネルを得た。
(シンチレータ層の加熱処理)
シンチレータパネル1'〜13'およびR1'〜3'の各々について、下記加熱処理を行って、シンチレータパネル1〜13およびR1〜3を得た。
図3の蒸着装置を用いて、上記で得られた反射層試料のシンチレータ形成予定面上にシンチレータ層が形成されたシンチレータパネルを、ヨウ化ユーロピウムを充填した坩堝と共に、0.5Paに減圧された密閉空間に配置し、250℃で1時間の加熱処理を実施した。このとき坩堝を600℃に加熱することで、ヨウ化ユーロピウムによる蛍光体(CsI)の追加賦活を実施した。該賦活処理後のシンチレータパネルのサンプルは、放射線照射による発光の減衰時間(放射線遮断後、発光強度が1%(放射線照射時の発光強度を100%とする)にまで減衰する時間)は、追加賦活をしていないシンチレータパネルのそれに比べて1/5に短縮された。
(所定サイズへの断裁)
蒸着用基板のシンチレータ形成予定面上にシンチレータ層が形成されたシンチレータパネル1〜18及びR1〜R3を、図9のレーザー断裁装置を使用して半切サイズへ断裁した。
(シンチレータパネルと受光素子のカップリング)
半切サイズに断裁したシンチレータパネル1〜17、及びR1〜R4を、コニカミノルタ製AeroDR1417の受光素子の表面に、ホットメルト樹脂(クラボウ製クランベタ、融点=67℃、厚さ=30μm)を用いて貼り合わせた。貼り合わせにあたっては、シンチレータパネルおよび受光素子の張り合わせ面をホットメルト樹脂と接触させて積層体とし、該積層体を100g/cm2の圧力で加圧しながら90℃まで加熱して1時間静置後、徐冷却することで(冷却速度:5℃/分)、放射線画像検出器1〜18及びR1〜R3を作製した。尚、受光素子の表面の表面粗さRaは0.2μmであった。
3−2.シンチレータ層の表面粗さの異なるシンチレータパネルの作製
[実施例37〜40(いずれも蒸着用基板14を使用)]
実施例32(蒸着用基板14を使用)において、蒸着用基板シンチレータ形成予定面上へシンチレータ層を形成し、蒸着後半(シンチレータ層の膜厚が350μm程度になった後)で、シンチレータ層の表面粗さRaが表1に示した値になるように、蒸着装置内に導入するArガスの量を周期的に変化させて真空度を変動させた以外は、実施例32と同様にして放射線画像検出器19〜22を作製した。
この蒸着後半の真空度の変動により、実施例37〜39で得られた放射線画像検出器におけるシンチレータパネルのシンチレータ層の表面粗さを算術平均粗さRaで評価したところ、0.5μm〜5.0μmの範囲であった(散乱防止加工)。
また実施例40で得られた放射線画像検出器におけるシンチレータパネルのシンチレータ層の表面粗さは5.0μmを超える値となった。
ここで、本明細書において、シンチレータパネルのシンチレータ層面および受光素子面のいずれかまたは双方の表面粗さ(Ra)を0.5μm以上、5.0μm以下にすることを散乱防止加工という。
なお、真空度の変動量は以下の通りである。
実施例19:0.1Pa〜0.05Paの真空度変動を5分周期で付与
実施例20:0.1Pa〜0.05Paの真空度変動を2分周期で付与
実施例21:0.2Pa〜0.05Paの真空度変動を5分周期で付与
実施例22:0.2Pa〜0.05Paの真空度変動を2分周期で付与
3−3.光拡散防止層を設けたシンチレータパネルの作製
[実施例41(蒸着用基板14を使用)]
実施例32(蒸着用基板14を使用)において、蒸着用基板上にシンチレータ層が形成されたシンチレータパネル14を、カレンダー装置を用いて、総荷重100kg、上側ロール温度25℃、下側ロール温度25℃、速度10m/分の条件で圧縮処理して、柱状結晶先端部を潰して柱状結晶間の間隙を埋め、次いで、図10のCVD蒸着装置に圧縮処理したシンチレータパネルをセットし、該シンチレータパネルのシンチレータ層全面及び反射層側面に、厚さ5μの連続したポリパラキシレンからなる光拡散防止層(屈折率1.59、光透過率98%、保護膜としても機能する)を形成し、次いで、該光拡散防止層が形成されたシンチレータパネルをレーザー断裁装置による断裁へ供した以外は、実施例32と同様にして放射線画像検出器23を作製した。
3−4.光拡散防止層の表面粗さの異なるシンチレータパネルの作製
[実施例42(蒸着用基板14を使用)]
実施例41(蒸着用基板14を使用)において、ポリパラキシレン光拡散防止層の表面粗さが変化するように、シンチレータ層の表面から1.0mm離れた位置にスクリーンマスク(線径13μ、メッシュピッチ43μ)を配置して、蒸着によりポリパラキシレンからなる光拡散防止層を形成した以外は実施例41と同様にして放射線画像検出器24を作製した。
これにより、得られた放射線画像検出器におけるシンチレータパネルの光拡散防止層の表面粗さはRaで0.5μm〜5.0μmの範囲となった(散乱防止加工)。
4.シンチレータパネルの評価
作製したシンチレーションパネルの各種評価を下記に従い行った。結果は表1に示した。
(シンチレータパネルの断裁性の評価)
シンチレータパネルの断裁性が不良であると、該シンチレータパネルを具備した放射線画像検出器にX線を照射して得られる画像において画像欠損が生じることから、以下のように、該画像欠損を指標としてシンチレータパネルの断裁性を評価した。
管電圧を80Kvpに設定したX線照射装置を用いてX線をシンチレータパネルを具備した放射線画像検出器に照射し、得られたベタ画像を解析し、得られた画像の周縁部の連続した2画素以上において画像欠損が生じている箇所の個数をカウントした。ここで、該画像欠損が少ないほど、シンチレータパネルの断裁性は良好である。
(シンチレータパネルを介して得られるX線画像の鮮鋭性の評価方法)
管電圧を80Kvpに設定したX線照射装置を用いて、X線を、鉛製スリット(スリット厚2mm、スリット間隙10μm)を通して上記放射線画像検出器を具備したFPDの受光面に照射し、放射線画像検出器で検出された画像データ(スリット像)をFPDに具備されたハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の画像データの記録をコンピュータで分析して、当該ハードディスクに記録されたX線画像の変調伝達関数MTF(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を鮮鋭性の指標とした。MTFはModulation Transfer Functionの略号であり、MTF値が高いほど得られたX線画像の鮮鋭性が優れていることを示す。
(シンチレータパネルを介して得られるX線画像の鮮鋭性の均一性の評価)
上記シンチレータパネルを介して得られるX線画像の鮮鋭性の均一性は、上記鮮鋭性の評価方法に従い、MTF(1サイクル/mm)を、上記FPDのX線検出面に対して均等な間隔で20か所測定し、得られたMTF(1サイクル/mm)の平均MTF値(MAVG)、最大MTF値(MMAX)、最小MTF値(MMIN)から、下記計算式から算出したMTF分布(%)の値から評価した。MTF分布(%)の値は、小さいほど得られたX線画像の鮮鋭性の均一性が高いことを示す。
MTF分布(%)=(MMAX−MMIN)/MAVG×100
(シンチレータパネルの感度の評価方法)
管電圧を80Kvpに設定したX線照射装置を用いて、X線を放射線画像検出器を具備したFPDの受光面に照射し、得られたX線画像データから、該X線画像全面の平均シグナル値を求めてシンチレータパネルの感度とした。このときシンチレータパネル1を搭載した放射線画像検出器の平均シグナル値を100とした。
(シンチレータパネルのX線耐久性)
管電圧を80Kvpに設定したX線照射装置を用いて、X線を、FPD内のシンチレータパネルの支持体側からシンチレータ層側に向かう方向で、シンチレータパネルを具備したFPDの受光面に放射線量が1000Rとなるまで照射した。次いで、上記処理前(初期状態)のシンチレータパネルの輝度を100とした時の、上記処理後のシンチレータパネルの輝度を指標として、シンチレータパネルのX線耐久性を評価した。
(シンチレータパネル及び受光素子面の粗さの評価方法)
シンチレータパネル及び受光素子面の粗さは、JIS(JIS B 0601−2001)に準じて測定した算術平均粗さ(Ra)で評価した。算術平均粗さ(Ra)は、東京精密社製サーフコム1400Dにより測定した(カットオフ値:0.08mm、測定長:4.0mm)。
(シンチレータパネルの柱状蛍光体結晶の柱状径の測定)
シンチレータパネルの柱状蛍光体結晶の柱状径は、シンチレータ層と反射層との接触面からの高さ(該接触面を原点としたシンチレータ層方向への位置)が10μmになるまで柱状蛍光体結晶を研磨後、研磨後の柱状蛍光体結晶の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により写真撮影して、該写真内において、任意の50箇所の柱状蛍光体結晶断面をサンプリングし、各断面において柱状径を測定し、平均値を算出して得た。尚、柱状径は上記高さにおける切断面の面積と同じ面積となる円の径として算出した。
Figure 2018010002
10:シンチレータパネル
1:支持体
2:シンチレータ層
2a:柱状蛍光体結晶
3:反射層
61:中心線
62:光散乱粒子
63:バインダー樹脂
81:蒸着装置
82:真空容器
83:真空ポンプ
84:蒸着用基板
85:ホルダ
86:回転機構
87:回転軸
88(88a、88b):蒸着源
89:シャッタ
29:供給工程
39:塗布工程
49:乾燥工程
59:熱処理工程
69:回収工程
89:乾燥工程
109:製造装置
201:支持体
202:巻き芯に巻かれたロール状の支持体
301:バックアップロール
302:塗布ヘッド
303:減圧室
304:塗布装置
401:乾燥装置
402:導入口
403:排出口
801:乾燥装置
802:導入口
803:排出口
501:熱処理用加熱装置
502:熱処理用気体の導入口
503:排出口
601:巻き芯に巻き取られ回収されたロール状の支持体
a:搬送ロール
b:搬送ロール
c:搬送ロール
d:搬送ロール
32:ダイシング装置
221:溝
321:ブレード
321a:回転軸
322:ダイシング台
323:ノズル
324:支持部材
33:レーザー断裁装置
331:レーザー発生装置
332:支持台
333:パージ室
334:排出管
335:透光窓
50:蒸着装置
551:気化室
552:熱分解室
553:蒸着室
553a:導入口
553b:排出口
553c:ターンテーブル(蒸着台)
554:冷却室
555:排気系
512:保護層(ポリパラキシレン膜)の蒸着
100:放射線画像検出器
51:撮像パネル
52:制御部
53:メモリ部
54:電源部
55:筐体
56:コネクタ
57:操作部
58:表示部
20:出力基板
20a:隔膜
20b:受光素子
20c:画像信号出力層
20d:基板
21:透明電極
22:電荷発生層
23:対電極
24:コンデンサ
25:トランジスタ

Claims (11)

  1. 遮光性を有する支持体と、該支持体上に設けられた反射層とを有するシンチレータパネルであって、
    前記反射層が、光散乱粒子及びバインダー樹脂を含み、かつ
    前記反射層の、前記支持体と接している面とは反対側の面の表面から、該支持体と接している面に向かって、0〜0.5μmの厚さの領域部分に存在する光散乱粒子の面積平均粒子径が0.5μm以下であることを特徴とするシンチレータパネル。
  2. 前記光散乱粒子が、アルミナ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ガラスおよび樹脂から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネル。
  3. 前記光散乱粒子が、粒子内に中空部が存在する中空粒子、および多孔質粒子から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
  4. 前記光散乱粒子が、少なくとも二酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
  5. 前記反射層を構成する成分の合計100重量%中、光散乱粒子が40〜95重量%含まれ、かつ
    前記反射層の膜厚が、5〜300μmである ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
  6. 前記反射層の、前記支持体と接している面とは反対側の面の、JIS B 0601−2001に準じて測定した算術平均粗さ(Ra)が、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
  7. 反射層上に、ヨウ化セシウムと少なくともタリウム化合物、ナトリウム化合物、又はインジウム化合物から選ばれる少なくとも一種の賦活剤とを含み、柱状結晶構造を有するシンチレータ層を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
  8. 前記シンチレータ層全面及び反射層の一部が、連続した保護膜により覆われていることを特徴とする請求項7に記載のシンチレータパネル。
  9. 前記保護膜が少なくともポリパラキシリレン、ポリウレア、二酸化ケイ素(SiO2)から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項8に記載のシンチレータパネル。
  10. 遮光性を有する支持体が、アルミニウム、銀、白金、パラジウム、金、銅、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、ステンレスのうち1種または2種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のシンチレータパネル。
  11. 受光素子とカップリングした、前記請求項1〜10のいずれか1項に記載のシンチレータパネルが組み込まれた撮像パネルであり、プラスチックフィルム上に設けられた薄膜トランジスタ(TFT)を含むことを特徴とする撮像パネル。
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