JP6314984B2 - シンチレータパネル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被写体の放射線画像を形成する際に用いられるシンチレータパネルに関する。
従来、X線画像のような放射線画像は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−フィルム系による放射線画像は、長い歴史のなかで高感度化と高画質化が図られた結果、高い信頼性と優れたコストパフォーマンスを併せ持った撮像システムとして、今なお、世界中の医療現場で用いられている。しかしながら、これら画像情報は、いわゆるアナログ画像情報であって、現在発展を続けているデジタル画像情報のような、自由な画像処理や瞬時の電送ができない。
近年、コンピューテッドラジオグラフィ(computed radiography:CR)やフラットパネル型の放射線ディテクタ(flat panel detector:FPD)等に代表されるデジタル方式の放射線画像検出装置が登場している。これら放射線画像検出装置では、デジタルの放射線画像が直接得られ、陰極管を利用したパネルや液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能なので、写真フィルム上への画像形成が必要ない。その結果、これらのデジタル方式のX線画像検出装置は、銀塩写真方式による画像形成の必要性を低減させ、病院や診療所での診断作業の利便性を大幅に向上させている。
X線画像に関するデジタル技術の一つとしてコンピューテッドラジオグラフィ(CR)が現在医療現場で受け入れられている。しかしながら、CRで得られるX線画像は、銀塩写真方式などのスクリーン・フィルムシステムによる画像と比べて鮮鋭性が充分でなく空間分解能も不充分であり、その画質レベルはスクリーン・フィルムシステムの画質レベルには到達していない。そこで、さらに新たなデジタルX線画像技術として、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)を用いた平板X線検出装置(Flat panel detector、FPD)が開発されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
上記FPDでは、その原理上、X線を可視光に変換するために、照射されたX線を可視光に変換して発光する特性を有するX線蛍光体で作られた蛍光体(シンチレータ)層を有するシンチレータパネルが使用されるが、低線量のX線源を用いたX線撮影において、シンチレータパネルから検出されるシグナルとノイズとの比(SN比)を向上するためには、発光効率(X線の可視光への変換率)の高いシンチレータパネルを使用することが必要になってくる。
ところで、従来の気相法によるシンチレータパネルの製造方法では、一般的に、アルミニウムやアモルファスカーボンなどの材料からなる剛直な基板上に蛍光体層を形成し、シンチレータの表面全体を保護膜で被覆する(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このように、変形し難い剛直な基板上に蛍光体層を形成してシンチレータパネルを製造した場合、該シンチレータパネルと平面受光素子とを貼り合わせる際に、シンチレータパネルと平面受光素子とを均一に接触させることは難しい。すなわち、上記シンチレータパネルには、基板自体の凹凸や蛍光体層に形成されている柱状蛍光体結晶の各々の高さの違いに起因する凹凸などが存在するが、基板が変形し難いことからその凹凸の影響は大きく(基板が変形すれば基板の変形により凹凸が相殺されることがある)、シンチレータパネルと平面受光素子とを均一に密着させることが難しい。この問題を解決するために、生産効率が悪いが上記シンチレータパネルと平面受光素子との密着に関する問題の解決を優先させて、シンチレータパネルと平面受光素子との接触面にスペーサーを使用する方法などが提案されているが(例えば、特許文献2、3参照)、この方法ではシンチレータパネルと平面受光素子との間隙が増加し、この間隙内におけるシンチレータパネルの蛍光体層で生じた発光光の光散乱を招くため、得られるX線画像の鮮鋭性の劣化は避けられない。この問題は、近年のフラットパネルディテクタの大型化に伴い、さらに深刻化してきている。
上記のようなシンチレータパネルと平面受光素子との密着性の問題やスペーサーの使用に伴う問題を回避するために、蒸着により蛍光体層を撮像素子上に直接形成する方法や、鮮鋭性は低いが可撓性を有する医用増感紙などをシンチレータパネルの代用として用いる方法が一般的に採用されている。また、シンチレータパネルにおいて、蛍光体層などを保護する保護層としてポリパラキシレン等から形成される柔軟な保護層を使用する方法も採用されている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、基板にはアルミニウムやアモルファスカーボンなどの剛直な材料が使用されており、10μmの程度の厚さの保護層を蛍光体層上や基板上に設けたとしても、保護層の表面には、基板自体の凹凸や蛍光体層の各柱状蛍光体結晶の高さの違いに起因する凹凸などを反映した凹凸が形成される。従って、そのような厚みの保護層を採用したからといって、基板や蛍光体層の凹凸の影響を取り除けるものではなく、シンチレータパネルの面と平面受光素子の面とを均一に密着させることはやはり達成し難い。その一方で、柔軟な保護層を厚くすると、シンチレータパネルと平面受光素子との間隙が大きくなることから、得られるX線画像の鮮鋭性の劣化に繋がる。
このような状況から、シンチレータパネルの発光効率に優れ、シンチレータパネルと平面受光素子面と間隙の大きさなどに起因するX線画像の鮮鋭性の劣化が少ない放射線フラットパネルディテクタを開発することが望まれている。
特許3566926号公報 特開平5−312961号公報 特開平6−331749号公報 特開2002−116258号公報
Physics Today, 1997年11月号24頁のジョン・ローラーンズ論文"Amorphous Semiconductor Usher in Digital X-ray Imaging" SPIEの1997年32巻2頁のエル・イ−・アントヌクの論文"Development of a High Resolution Active Matrix, Flat−Panel Imager with Enhanced Fill Factor"
従来の気相法によるシンチレータパネルの製造方法では、支持体の上に蒸着により蛍光体層を形成させると、どうしても蛍光体の膜厚分布が生じてしまい、蛍光体層と平面受光素子を均一に接触させることは困難である。蛍光体層と平面受光素子との間に隙間が生じた場合には、振動等により帯電が発生し、マイクロフォニックノイズと呼ばれる画像ムラを発生しやすいという問題がある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、支持体と蛍光体との間にクッション層を設けることで、蛍光体層を支持体側から賦勢して平面受光素子(センサパネル)にシンチレータパネルを圧着させるに際して、蛍光体層の凹凸がクッション層に吸収され、平面受光素子と蛍光体層が均一に接触することで接触面に隙間が生じないために、画像ムラの発生やMTF(Modulation Transfer Function)の面内分布の問題が改善されたシンチレータパネルを提供することにある。
本発明は以下の構成からなる。
本発明のシンチレータパネルは、支持体と、該支持体の表面に形成されたクッション層と、該クッション層の表面に蒸着により形成された蛍光体層とをこの順に有し、該クッション層の膜厚が、該蛍光体層の膜厚の最大値と最小値の差よりも大きく、該蛍光体層を該支持体側から賦勢して平面受光素子に圧着させた際、該蛍光体層が該平面受光素子の表面に均一に接触するように、該クッション層上に該蛍光体層が形成されていることを特徴とする。
前記クッション層は、光反射粒子又は光吸収粒子を含有することが好ましい。
前記光反射粒子は、少なくとも二酸化チタンを含有することが好ましい。
前記シンチレータパネルは導電性を有することが好ましい。
前記支持体は、樹脂を主体として形成されていることが好ましい。
本発明のシンチレータパネルの製造方法は、支持体の一方の表面にクッション層を形成し、該クッション層の表面上に蒸着法により蛍光体層を形成する方法であって、該支持体上に、該クッション層を、該蛍光体層の膜厚の最大値と最小値の差よりも大きい膜厚を有するように形成し、該蛍光体層を該支持体側から賦勢して平面受光素子に圧着させた際、該蛍光体層が該平面受光素子の表面に均一に接触するように、該クッション層上に該蛍光体層を形成することを特徴とする。
前記クッション層は、光反射粒子又は光吸収粒子を含有することが好ましい。
前記光反射粒子は、少なくとも二酸化チタンを含有することが好ましい。
前記シンチレータパネルは導電性を有することが好ましい。
前記支持体は、樹脂を主体として形成されていることが好ましい。
本発明によれば、支持体と蛍光体との間にクッション層を設けることで、蛍光体層を支持体側から賦勢して平面受光素子(センサパネル)にシンチレータパネルを圧着させるに際して、蛍光体層の凹凸面がクッション層に吸収され、平面受光素子と蛍光体層との接触面に隙間が生じないこととなり、画像ムラの発生やMTFの面内分布の問題が改善される。
図1は、シンチレータパネルの一例であるシンチレータパネル10の構成の概略を示す断面図である。 図2は、シンチレータパネル10の拡大断面図である。 図3は、蒸着装置の一例である蒸着装置81の構成の概略を示す図である。 図4は、放射線画像検出器の一例である放射線画像検出器100の構成の概略を示す一部破断斜視図である。 図5は、撮像パネルの一例である撮像パネル51の拡大断面図である。 図6は、本発明に係る蒸着用基板の一例を示す断面図であり、各種材料やクッション層のシンチレータ形成予定面(クッション層の、支持体と接している面とは反対側の面)の表面の粗さの中心線(JIS B 0601−2001)を説明するものである。 図7は、本発明に係る蒸着用基板の製造方法の典型例を説明するための模式図である。 図8は、シンチレータパネルの蛍光体層の表面にポリパラキシレン膜からなる保護層を形成する方法の典型例を説明するための模式図である。 図9は、支持体側から賦勢されて蛍光体層が変形し、クッション層が蛍光体層の膜厚分布を吸収して平面受光素子と接触する様子を示す、本発明のシンチレータパネルの模式図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、本発明に係る「蛍光体」又は「シンチレータ」とは、入射されたX線等の放射線のエネルギーを吸収して、波長が300〜800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波を発光する蛍光体をいう。
〔シンチレータパネル〕
[支持体]
図1に示すように、シンチレータパネル10を構成する支持体1の材料としては、X線等の放射線を透過させることが可能な各種のガラス、高分子材料及び金属等が挙げられる。具体的には、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス及び化学強化ガラス等のガラス板;サファイア、窒化ケイ素及び炭化ケイ素等のセラミックス;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐及びガリウム窒素等の半導体;セルロースエステル(酢酸セルロース等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、アセテート繊維、ポリカーボネート及びバイオナノファイバー等の高分子材料;アモルファスカーボン及び炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の炭素材料;アルミニウム、鉄及び銅等の金属並びにこれら金属の酸化物の被覆層を有する金属材料などを用いることができる。
これらは単独で用いても積層させて用いてもよい。
上記支持体1の材料の中でも、特に弾性率が0.1〜20GPaの高分子材料が好ましい。支持体1の弾性率を上記範囲にすることで、蛍光体層2を保持することができ、かつ、補助的にクッション層としての役割も果たすことができる。ここで、「弾性率」とは、引張試験機を用い、JIS−C2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めた値である。これはヤング率と呼ばれる値であり、本明細書においては、このヤング率を弾性率と定義する。
具体的には、ポリエチレンナフタレート(6〜8GPa、例えば7GPa)、ポリエチレンテレフタレート(3〜5GPa、例えば4GPa)、ポリカーボネート(1〜3GPa、例えば2GPa)、ポリイミド(6〜8GPa、例えば7GPa)、ポリエーテルイミド(2〜4GPa、例えば3GPa)、アラミド(11〜13GPa、例えば12GPa)、ポリスルホン(1〜3GPa、例えば2GPa)、ポリエーテルスルホン(1〜3GPa、例えば2GPa)等が挙げられる(カッコ内は弾性率を示す)。なお、弾性率の値は、同種の高分子フィルムでも変動しうるので、必ずしも弾性率が括弧内の値になるわけではないが、目安として一例を示したものである。上記高分子材料は、いずれも高い耐熱性を有し、蛍光体の蒸着に耐えうる点でも好ましい。なかでも、ポリイミドは特に耐熱性に優れ、ヨウ化セシウム(CsI)を原材料として気相法にて蛍光体(シンチレータ)の柱状結晶をクッション層3上に形成する場合に好適である。
また支持体1がバイオナノファイバーからなるフィルムである場合は、バイオナノファイバーが、(i)軽量である、(ii)鉄の5倍以上の強度がある(高強度)、(iii)熱で膨張しにくい(低熱膨張性)、(iv)フレキシブルである(可撓性に優れる)、(v)混ぜる、塗る、フィルム状にするなど様々な処理ができる、(vi)植物繊維が材料であるため燃やすことができるなど、既存のガラスやプラスチックでは得られない特性を有することから、支持体1の特性又は環境上のメリットを享受できる。
支持体1は、例えば、その反射率を調整する目的で、光吸収性、光反射性、又は遮光性が付与されていてもよいし、着色されていてもよい。
光吸収性を有する支持体1としては、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド及びアラミド等の有色高分子材料、後述する顔料などの色材が添加された高分子材料、又はアモルファスカーボン等の有色セラミックス等が挙げられ、光反射性を有する支持体1としては、例えばアルミニウム等の金属材料、又は白色PET等の反射性粒子を分散した高分子材料等が挙げられ、遮光性を有する支持体1としては、例えば、各種金属材料が挙げられる。
光吸収性を付与するために添加する顔料としては、例えば、ファーストエロー、ジスアゾエロー、ピラゾロンオレンジ、レーキレッド4R及びナフトールレッド等の不溶性アゾ顔料;クロモフタルエロー及びクロモフタルレッド等の縮合アゾ顔料;リソールレッド、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ブリリアントカーミン6B及びボルドー10B等のアゾレーキ顔料;ナフトールグリーンB等のニトロソ顔料;ナフトールエローS等のニトロ顔料;フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー及びフタロシアニングリーン等のフタロシアニン顔料;アントラピリミジンエロー、ペリノンオレンジ、ペリレンレッド、チオインジゴレッド及びインダントロンブルー等のスレン顔料;キナクリドンレッドキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料;ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン顔料;イソインドリノンエロー等のイソインドリノン顔料;ピーコックブルーレーキ及びアルカリブルーレーキ等の酸性染料レーキ;ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ及びマラカイトグリーンレーキ等の塩基性染料レーキ等が挙げられる。
上記顔料は、上記支持体1の材料100重量部に対して0.01 〜10重量部であることが好ましい。顔料の量が上記範囲にあると、充分な塗膜色が得られ、それ以上着色度が変化しないにもかかわらず過剰に顔料を添加してしまい、支持体1の材料の伸び又は強度等の機械的物性が劣化することを防止することができる。
[クッション層]
シンチレータパネル10を構成するクッション層3は、支持体1の上に設けられる弾性を有する樹脂を主成分とする層である。支持体1と蛍光体層2との間にクッション層3を設けることで、蛍光体層2を支持体1側から賦勢して平面受光素子(センサパネル)にシンチレータパネル10を圧着させるに際し、蛍光体層2表面に形成された凸部がクッション層3に押し込まれて、蛍光体層2と平面受光素子が均一に接触することで振動により帯電するのを抑制することができる。
クッション層3を構成する材料としては、蛍光体層2上の凹凸を吸収することができる柔らかい樹脂が好ましい。具体的には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体及び塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体等の塩化ビニル共重合体;シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂(ポリビニルブチラール等)、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、ポリパラキシリレン、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体及びスチレン・ブタジエン共重合体等の合成ゴムその他の樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂(フェノキシ樹脂等)、尿素樹脂、メラミン樹脂及び尿素ホルムアミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中では、潮解性のあるCsI(ヨウ化セシウム)を形成させる観点より、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂等の疎水性樹脂であることが好ましい。また上記した樹脂を2種類以上用いても良い。特にガラス転移温度(Tg)が5℃以上異なる2種類以上の樹脂を用いることで、塗膜物性を容易に制御することができ、好ましい。この場合用いる樹脂はガラス転移温度が異なれば同種類であっても、異なる種類であっても良い。
クッション層3の弾性率は、0.001〜10GPaであることが好ましく、より好ましくは0.01〜5GPa、さらに好ましくは0.01〜1GPaである。クッション層3の弾性率が0.001GPa以上であると、クッション層3の表面のべたつきが小さくなり、製造中に異物が付着しにくくなって画像欠陥が減少する傾向にある。一方、クッション層3の弾性率が10GPa以下であると、蛍光体層2の表面に形成された凸部がクッション層3で吸収でき、蛍光体層2と平面受光素子を均一に接触させることが可能となり、振動により帯電するのを抑制することが容易になる。
クッション層3の膜厚は、蛍光体層2の膜厚の最大値と最小値の差よりも大きい必要がある。クッション層3の膜厚は、蛍光体層2の膜厚の最大値と最小値の差に対して1.5〜30倍が好ましく、より好ましくは2〜10倍、さらに好ましくは2〜5倍である。具体的には、クッション層3の厚さは、通常10〜300μm、好ましくは30〜100μmの範囲内にある。クッション層3の膜厚が蛍光体膜厚の1.5倍以上であると、蛍光体層2の表面に形成された凸部がクッション層3で吸収されやすく、蛍光体層2と平面受光素子を均一に接触させることで振動により帯電するのを抑制することが容易になる。一方、クッション層3の膜厚が蛍光体膜厚の30倍以下であると、成膜後の残留応力により支持体1の反りが大きくなるのを防止する傾向にある。このような支持体1に蛍光体層2を蒸着すると、蛍光体層2にひび割れが発生しにくく、画質(特に鮮鋭性)が良好となる傾向にある。
クッション層3は、一層又は二層以上からなっていてもよい。
本発明において、蛍光体層2は支持体1側から賦勢され、平面受光素子にシンチレータパネル10が圧着される。蛍光体層2の賦勢の方法としては特に制約は無いが、例えば、クッション材のような弾性体の押圧、真空封止による大気圧による押圧、ネジ止め等による機械的な押圧等が挙げられる。
クッション層3は、フィラーを含有していてもよい。フィラーには、例えば、クッション層3が光を反射する光反射粒子、又は光を吸収する光吸収粒子等が挙げられる。
クッション層3に含有される光反射粒子は、蛍光体層2で生じた発光光のクッション層3内の光拡散を防止することで鮮鋭性を向上させる機能を有する。またクッション層3に到達した発光光を蛍光体層2の柱状結晶内に効果的に戻すことで感度を向上させる機能を有する。
これらの光反射粒子は、後述するように、市販のものを用いてもよいし、既知の方法に従って製造してもよい。
光反射粒子は、クッション層3を構成する上記材料と異なる屈折率を有する粒子状材料であれば特に限定されるものではなく、その材料としては、アルミナ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ガラス及び樹脂などを挙げることができる。これらは一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい(上記において、ガラス、樹脂のように別カテゴリーのものを二種以上用いてもよいし、例えば樹脂におけるアクリル樹脂やポリエステル樹脂のように、同じカテゴリー内で二種以上のものを用いてもよいし、ガラス、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のように別カテゴリーのものと同じカテゴリーのものがそれぞれ一種又は二種以上混在していてもよい)。
これらの中では、例えば、ガラスビーズ、樹脂ビーズ等、特にガラスビーズは、金属酸化物と比べて、屈折率を任意に設定でき、光拡散性を制御し易いという特徴があるため、好ましい。
ガラスビーズはより高屈折率のものが好ましく、例えば、BK7(n=約1.5、nは相対屈折率、以下同じ);LaSFN9(n=約1.9);SF11(n=約1.8);F2(n=約1.6);BaK1(n=約1.6);チタン酸バリウム(n=約1.9);高屈折率青ガラス(n=約1.6〜1.7);TiO2−BaO(n=約1.9〜2.2);ホウケイ酸塩(n=約1.6);又はカルコゲナイドガラス(n=約2又はそれよりも高い)などが挙げられる。樹脂ビーズとしては、アクリル粒子、ポリエステル樹脂粒子、ポリオレフィン粒子、シリコン粒子等が挙げられ、具体的にはケミスノー(登録商標)(綜研化学社製)、シリコンレジンKRシリーズ他(信越化学工業社製)、テクポリマー(登録商標)(積水化成品工業社製)等を好適に用いることができる。
二酸化チタンなどの白色顔料は隠蔽性が高く、屈折率が大きいため、光を反射し、屈折させることによりシンチレータの発光を容易に散乱し、シンチレータパネル10を含む放射線画像変換パネルなどの感度を顕著に向上させることができる。
光反射粒子としては、入手の容易性及び高い屈折率を有する点から、二酸化チタンが特に好ましい。
光反射粒子として二酸化チタンを使用する場合は、二酸化チタンは、分散性及び作業性を改良するために、無機化合物や有機化合物で表面処理を施したものであってもよい。上記表面処理した二酸化チタンやその表面処理方法は、例えば、特開昭52−35625号公報、特開昭55−10865号公報、特開昭57−35855号公報、特開昭62−25753号公報、特開昭62−103635号公報及び特開昭平9−050093号公報等に開示されているものを採用することができる。上記表面処理には、酸化アルミニウム水和物、含水酸化亜鉛、二酸化珪素などの無機化合物や、2〜4価のアルコール、トリメチロールアミン、チタネートカップリング剤やシランカップリング剤などの有機化合物を表面処理剤として好ましく用いることができる。これら表面処理剤の使用量は、上記特許文献などに示されているように、それぞれの目的に応じて選択できる。
二酸化チタンとしては、ルチル型、ブルッカイト型及びアナターゼ型のいずれの結晶構造を有するものであってもよいが、樹脂の屈折率との比率が大きく、高輝度を達成できること、及び可視光の反射率などの観点から、ルチル型のものが特に好ましい。
二酸化チタンとしては、例えば、塩酸法で製造されたCR−50、CR−50−2、CR−57、CR−80、CR−90、CR−93、CR−95、CR−97、CR−60−2、CR−63、CR−67、CR−58、CR−58−2、CR−85、硫酸法で製造されたR−820、R−830、R−930、R−550、R−630、R−680、R−670、R−580、R−780、R−780−2、R−850、R−855、A−100、A−220、W−10(以上商品名:石原産業社製)などが挙げられる。
二酸化チタンの面積平均粒子径は、反射率の観点から、0.1〜5.0μmが好ましく、0.2〜0.3μmがさらに好ましい。また、二酸化チタンとしては、ポリマーとの親和性、分散性を向上させるためやポリマーの劣化を抑えるため、Al、Si、Zr、Znなどの酸化物で表面処理されたものが特に好ましい。
但し、光反射粒子として二酸化チタンを使用する場合は、400nm以下の光の反射率が低くなる、また二酸化チタンの光触媒作用によりバインダーが劣化する傾向があるなどの観点から、400nm以下の波長でも高い反射率を有する硫酸バリウム、アルミナ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも一種の光反射粒子と併用することが好ましい。特に400nm以下の波長域での反射率が高いという観点から、硫酸バリウムがより好ましい。硫酸バリウムと二酸化チタンとの割合は、質量比率で95:5〜5:95が好ましく、さらに好ましくは20:80〜5:95である。
また、光反射粒子は、中実粒子及び空隙粒子から選ばれる少なくとも一種からなることが好ましい。
空隙粒子としては、空隙を有している限り特に制限はなく、例えば、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、多孔質粒子、などが挙げられ、これらは目的に応じて適宜選択することができる。
これら空隙粒子の中では、多中空粒子及び多孔質粒子が好ましい。
ここで、空隙粒子とは、中空部や細孔などの空隙を有する粒子をいう。
「中空部」とは、粒子内部の空孔(空気層)のことをいう。
中空粒子は、空孔(空気層)と外殻部(樹脂層等)との屈折率差によって中実粒子にはない光の反射特性、拡散特性をクッション層3に付与することができる。
多中空粒子とは、粒子内部にこのような空孔を複数有する粒子である。また多孔質粒子とは粒子に細孔を有するものであり、細孔とは粒子の表面から粒子の内部へ向かって凹状に窪んだ部分のことである。細孔の形状としては、例えば、空洞形状であったり、針や曲線のように粒子内部や中心へ向かって窪んだ形状、またそれらが粒子を貫通した形状等が挙げられる。細孔の大きさや容積は大小様々でよく、特にこれらに限定されるものではない。
前記空隙粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前述の材料が挙げられ、なかでもスチレン・アクリル共重合体等の熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。
前記空隙粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも日本ゼオン株式会社製)、SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
これら多中空粒子としては、富士シリシア社製のサイロスフエアー(登録商標)やサイロホービック(登録商標)などが好適に使用できる。
これらの空隙粒子のなかでも、空隙率の大きさの点から多中空粒子が特に好ましい。
光反射粒子として空隙粒子を使用する場合は、光反射粒子が、これら形状の粒子のうち、一種の形状の粒子のみで構成されていてもよいし、二種以上の空隙粒子を含んでいてもよい。また中実粒子と空隙粒子を併用してもよい。
また、これら空隙粒子と白色顔料を併用することで、二酸化チタン、アルミナ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウムなどの白色顔料が、その表面に水分(H2O)や二酸化炭素(CO2)を吸着し、これらを、熱やX線などのエネルギーにより放出しシンチレータ特性を劣化させることを防止できる。すなわち、空隙粒子と白色顔料とを併用することで、白色顔料からの水分(H2O)や二酸化炭素(CO2)等の不純ガスの放出が抑制され、シンチレータ特性の劣化が防止される。
また、白色顔料表面からの水分(H2O)や二酸化炭素(CO2)の脱離に起因するシンチレータ劣化防止の別の方法として、白色顔料と後述するバインダー樹脂からなるクッション層3内に多数の気泡を形成しておく方法も有効である。この方法を採用すると、クッション層3内において屈折率差の大きい白色顔料と、気泡とが接触するため、クッション層3を構成するこれら材料間の反射率の差がより大きくなり、クッション層3の反射率も向上する。
光反射粒子の面積平均粒子径は、クッション層3の反射率や表面のひび割れを防止した、クッション層3を形成するために作製する塗布液(以下、「クッション層形成用塗布液」ともいう。他の用途の塗布液も同様。)の安定性等を考慮すると、0.1μm〜5.0μmが好ましい。光反射粒子の面積平均粒子径がこのような範囲にあると、クッション層3の光散乱が効率的に生じ、透明性が低くなり、反射率が向上し、また、クッション層形成用塗布液の経時安定性が増加し、塗布後の乾燥によりクッション層3にひび割れが発生しない。
光反射粒子の粒度分布は、光散乱粒子の反射層への分散性の観点から、0.05〜10.0μmの範囲にあることが好ましい。
光反射粒子は、クッション層3を構成する成分の合計体積100体積%中、通常3〜70体積%となる量で含まれ、10〜50体積%となる量で含まれていることが好ましい。光反射粒子が上記範囲で含まれていると、クッション層3の機能を損なうことなく反射率が向上し、シンチレータパネル10の感度が向上する。さらに蛍光体層2とクッション層3、又は支持体1とクッション層3の接着性が向上する傾向がある。
また、上記光反射粒子を含有するクッション層3には、空隙が5〜30体積%の量で含まれることが好ましい。
クッション層3に含有される光吸収粒子は、支持体1の反射率を所望の値により精度よく調整しやすくする等のために用いられる。光吸収粒子には、光吸収性の顔料等が挙げられる。
光吸収性の顔料としては、従来公知の種々の顔料が使用可能である。顔料は、より光散乱しやすい赤色の長波長成分を吸収するものの方がよく、青色の着色材が好ましい。そのような青色の着色材としては、例えば、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄)等が好ましい。また、有機青色顔料としては、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド、カルボニウム等を用いることができる。これらの中でも、光吸収性の顔料層の放射線耐久性、紫外線耐久性などの観点から、フタロシアニンが好ましい。またチタン系黒色顔料のチタンブラックなども好適に使用することができる。チタンブラックとは二酸化チタンから酸素の一部を取り除くことで黒色化したものであり、特に光散乱粒子として二酸化チタン使用する場合には、二酸化チタンと比重が同じであるためクッション層形成用塗布液の安定性が高く、二酸化チタンとチタンブラックの混合比を調整することで、容易に蒸着用基板の反射率を調整することができるメリットがある。顔料は、クッション層3を構成する成分の合計体積100体積%中、3〜70体積%となる量で含まれていることが吸収性の観点から好ましい。
なお、本明細書において、「蒸着用基板」とは、クッション層の形成された支持体をいう。
[蛍光体層]
図2に示すように、蛍光体層2は、クッション層3上の層界面から柱状結晶が成長して形成されている。
蛍光体層2を形成する材料としては、従来公知の蛍光体、例えば、フッ化ナトリウム(NaF)、塩化ナトリウム(NaCl)、臭化ナトリウム(NaBr)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、フッ化カリウム(KF)、塩化カリウム(KCl)、臭化カリウム(KBr)、ヨウ化カリウム(KI)、フッ化ルビジウム(RbF)、塩化ルビジウム(RbCl)、臭化ルビジウム(RbBr)、ヨウ化ルビジウム(RbI)、フッ化ルビジウム(CsF)、塩化セシウム(CsCl)、臭化セシウム(CsBr)、ヨウ化セシウム(CsI)などが挙げられるが、その中でも、CsIが、X線から可視光に対する変更率が比較的高く、蒸着によって容易に柱状結晶を形成し、該結晶構造に起因する光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、その分、蛍光体層2の厚さを厚くすることが可能である観点から好ましい。
ただし、CsIのみでは発光効率が低いことから、蛍光体層2は、CsIと共に各種の賦活剤を含むことが好ましい。そのような蛍光体層2としては、例えば、特公昭54−35060号公報に開示されているような、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)とが任意のモル比で存在する蛍光体層2が挙げられる。また、例えば、特開2001−59899号公報に開示されているような、CsIと、タリウム(Tl)、ユーロピウム(Eu)、インジウム(In)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)などの賦活物質とが任意のモル比で存在する蛍光体層2が挙げられる。
本発明のシンチレータパネル10を形成する蛍光体層2としては、特に一種以上のタリウム化合物を含む賦活剤とヨウ化セシウムとを原材料とする蛍光体層2が好ましく、なかでもタリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)が、300〜750nmまでの広い発光波長をもつことから好ましい。
上記タリウム化合物としては、種々のタリウム化合物(+Iと+IIIの酸化数の化合物)を使用することができる。例えば、ヨウ化タリウム(TlI)、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)、フッ化タリウム(TlF、TlF3)等が挙げられ、なかでもCsIの賦活度に優れる観点から、ヨウ化タリウム(TlI)が好ましい。
また、タリウム化合物の融点は、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。タリウム化合物の融点が上記範囲内であると、蒸着により形成された蛍光体層2において、賦活剤が柱状結晶内に均一に分布し、発光効率が向上する。なお、本明細書において、融点とは、常圧下(通常約0.101MPa)における融点である。
本発明に係る蛍光体層2における賦活剤の相対含有量は0.1〜5モル%が好ましい。
ここで、本明細書において、賦活剤の相対含有量とは、蛍光体母体化合物100モル%としたときの賦活剤のモル%で示される。ここで、蛍光体母体化合物とは、賦活剤によって賦活されていないCsIなどの蛍光体そのものをいう。なお、蛍光体母体化合物や賦活剤など蛍光体層2を形成する原料となるものを総じて蛍光体原材料という。
蛍光体層2は、一層からなっていてもよいし、二層以上からなっていてもよい。
蛍光体層2の中でも、蛍光体母体化合物と賦活剤とからなる蛍光体本層と、支持体1と該蛍光体本層との間に設けられ、蛍光体母体化合物のみか、又は蛍光体母体化合物と賦活剤からなり、空隙率が該蛍光体本層よりも低い値を示す蛍光体下地層からなる蛍光体層2が好ましい。
賦活剤を含む場合、蛍光体下地層における賦活剤の相対含有量は0.01〜1モル%が好ましく、0.1〜0.7モル%がさらに好ましい。
特に、蛍光体下地層の賦活剤の相対含有量が0.01モル%以上であることが、シンチレータパネル10の発光輝度向上及び保存性の点で非常に好ましい。
本発明においては、蛍光体下地層における賦活剤の相対含有量が蛍光体本層における相対含有量よりも低いことが非常に好ましく、蛍光体本層における賦活剤の相対含有量に対する蛍光体下地層における賦活剤の相対含有量の比((蛍光体下地層における賦活剤の相対含有量)/(蛍光体本層における賦活剤の相対含有量))は、0.1〜0.7であることが好ましい。
蛍光体層2における蛍光体の一定の面指数を有する面のX線回折スペクトルに基づく配向度は、層厚み方向の位置に関わらず、80〜100%の範囲内であることが、蛍光体層2の発光効率などの観点から好ましい。例えば、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)の柱状結晶における面指数は、(100)、(110)、(111)、(200)、(211)、(220)、(311)等のうちのいずれかであり得るが、(200)であることが好ましい(面指数については、X線解析入門(東京化学同人)、42〜46頁参照)。
ここで、本明細書における「一定の面指数の面のX線回折スペクトルに基づく配向度」とは、ある面指数の強度Ixが他の面指数の面を含めた全体の総強度Iに占める割合のことを指す。例えば、X線回折スペクトルにおける(200)面の強度I200の配向度は、「配向度=I200/I」である。
配向度決定のための面指数の測定方法としては、例えばX線回折(XRD)が挙げられる(結晶X線回折でも粉末X線回折でもよい)。X線回折は、特定波長の固有X線を結晶性物質に照射し、Braggの式を満足する回折が起こることを利用して、物質の同定、結晶相の構造などに関する知見を得ることのできる汎用性の高い分析手法である。照射系のターゲットにはCu、Fe、Coなどが用いられ、装置能力によるが、一般的に照射時の出力は0〜50mA、0〜50kV程度である。
なお、蛍光体層2の厚さは、シンチレータパネル10の輝度と得られる放射線画像の鮮鋭性とのバランスがよい点から、100〜800μmであることが好ましく、120〜700μmであることがより好ましい。
[その他の層]
本発明のシンチレータパネル10において、例えば、支持体1とクッション層3の間には、反射層、接着層又は導電層などを有していてもよい。また、導電層は、支持体1の裏面(蛍光体層2とは反対側)に有してもよい。
反射層を設けることによって、蛍光体の発光を非常に効率よく取り出すことができるため、感度が向上する。反射層は、クッション層3に含まれていてもよいフィラーとしてすでに述べた光反射粒子と、特定のバインダー樹脂とから形成されてもよいし、金属層を設けてもよい。
反射層を構成する金属材料としては、アルミニウム、銀、白金、パラジウム、金、銅、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、ステンレス、ネオジム等が好ましい。なかでも反射率の観点から、アルミニウム又は銀を主成分とする金属材料であることが最も好ましい。反射層に銀を用いる場合は、耐食性向上を目的として異種金属を添加してもよい。添加する金属としては、特に制約はないが、例えば、金、パラジウム、銅、ネオジム等が好ましい。
金属をポリマーシート状に被覆する方法としては、蒸着、スパッタ、又は金属箔の貼り合わせ等、特に制約はないが、ポリマーシートへの密着性の観点から、スパッタが最も好ましい。
上記反射層は一層で形成されていても、二層以上で形成されていてもよい。
接着層は、クッション層3に含まれていてもよい樹脂としてすでに述べた材料を使用することができる。上記接着層の膜厚は、平面受光素子との密着性の観点から、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。
導電層は、金属、導電性ポリマー、導電性酸化物又はカーボン等からなる層であり、具体的には、アルミニウム、銅又は鉄等の金属、ポリチオフェン、ポリピロール又はポリアニリン等の導電性ポリマー、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫又は酸化亜鉛等の酸化物を含む層が挙げられる。導電層を設けることで、画像ムラの発生に繋がる帯電をさらに抑制することができる。
上記導電層の導電率は、通常1.0×1012Ω/□以下、好ましくは1.0×1010Ω/□以下である。
また、支持体1が導電層を兼ねても良く、例えば、アモルファスカーボン及び炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の炭素材料、並びにアルミニウム、鉄及び銅等の金属材料を導電層兼支持体として用いることができる。
[保護層]
本発明のシンチレータパネル10には、必要に応じて、物理的又は化学的に前記蛍光体層2を保護するための保護層を設けてもよい。この場合、蛍光体層2の蛍光体の潮解を防止するなどの観点より、蛍光体層2の支持体1とは反対の側の面の全面が連続した保護層により覆われていることが好ましく、シンチレータパネル10の蛍光体層2の全面及びクッション層3の一部が、連続した保護層により覆われていることがより好ましい。
ここで、「蛍光体層の全面」とは、柱状結晶が形成する蛍光体層において、蒸着用基板と接触している面とは反対側の面及び側面(換言すれば、蒸着用基板と接触していない面)の全領域をいう。また「クッション層の一部」とは、クッション層3において、蛍光体層2や支持体1と接触しておらず、大気中に露出した部分(換言すれば、クッション層側面)の全領域をいう。「連続した保護層」とは、保護層形成領域に保護層のない部分が存在しないことをいう。
保護層は、単一材料から形成されていてもよいし、混合材料から形成されていてもよいし、材料の異なる複数の膜などが併用されて形成されていてもよい。
前述の通り、本発明に係る保護層は、主に、蛍光体層2の保護を目的とするものである。具体的には、例えば、蛍光体がヨウ化セシウム(CsI)である場合、CsIは、吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを目的として、シンチレータパネル10に上記保護層が設けられる。
この保護層は、シンチレータパネル10の蛍光体から放出される物質(例えば、ハロゲンイオン)などを遮断し、蛍光体層と平面受光素子の接触により生じる平面受光素子側の腐食を防止する機能も有する。
また、上記保護層は、シンチレータパネル10の柱状蛍光体結晶から形成される蛍光体層2と平面受光素子とを例えば接着剤や光学オイルなどにて接合する態様においては、接着剤や光学オイルが柱状蛍光体結晶間に浸透することを防止する浸透防止層の役割も担う。
保護層を形成する材料としては、ポリオレフィン系、ポリアセタール系、エポキシ系、ポリイミド系、シリコン系又はポリパラキシレン系樹脂が好ましい。ポリパラキシレン系はCVD法により形成し、その他の材料は塗布法により形成することができる。ここでいうポリパラキシレン系樹脂としては、ポリパラキシレンの他、ポリモノクロロパラキシリレン、ポリジクロロパラキシリレン、ポリテトラクロロパラキシリレン、ポリフルオロパラキシリレン、ポリテトラクロロパラキシリレン、ポリジメチルパラキシリレン、ポリジエチルパラキシリレン等が挙げられる。
これらの保護層の層厚は、蛍光体層2を適度に保護する観点やシンチレータパネル10の強度や可撓性の観点より、0.1〜2000μmが好ましい。
保護層がポリパラキシレン系樹脂を含む膜である場合、その膜厚は、上記放射線画像の鮮鋭性、保護層の防湿性の観点より、2〜15μmが好ましく、保護層を平面受光素子と接着する場合は、接着剤層の厚みは接着力確保の観点から10μm以上が好ましく、さらに保護層の膜厚と接着剤層の厚みがトータルで20μm以下であることが好ましい。ポリパラキシレン膜厚と接着剤層の厚みとがトータルで20μm以下であると、保護層を平面受光素子と接着する場合に、平面受光素子とシンチレータパネル10との間隙での発光光の広がりが抑制され、鮮鋭性の低下を好適に防止できる。
また、保護層がポリパラキシレン系樹脂を含む膜以外の高分子材料である場合、該高分子材料からなる高分子フィルム(すなわち、保護フィルム)を蛍光体層2上(反射層などに接しておらず大気に触れている面の一部又は全面)に設けることもできる。
また、別の態様としては、蛍光体層2上にホットメルト樹脂の層が形成され、該ホットメルト樹脂の層が保護層の機能を果たしている態様も挙げられる。この場合、ホットメルト樹脂は、シンチレータパネル10の蛍光体層面と平面受光素子面とを接着させる機能も保護層の機能と併せて果たすことができる。
本明細書において、ホットメルト樹脂とは、水や溶剤を含まず室温(通常約25℃)で固体であり、不揮発性の熱可塑性材料からなる接着性樹脂である。ホットメルト樹脂は、加熱するなどして樹脂が溶融開始温度以上になると溶融し、樹脂温度が固化温度以下に低下すると固化する。また、ホットメルト樹脂は、加熱溶融状態では接着性を有し、樹脂温度が固化温度以下(例えば常温)に低下すると固体状態となり接着性を有さなくなる性質を有する。
ホットメルト樹脂としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系又はポリアミド系樹脂を主成分とするものが好適であるが、これらに限定されない。これらのうち、光透過性の点からは、ポリオレフィン系の樹脂がより好ましい。
またホットメルト樹脂の溶融開始温度は、TFT(薄膜トランジスタ)などの平面受光素子における連続使用特性、接着剥がれ防止性などの点から、60〜150℃が好ましい。なお、ホットメルト樹脂の溶融開始温度は、可塑剤添加により調整可能である。
ホットメルト樹脂の厚みは、30μm以下が好ましい。
上記態様の中では、高い防湿性が得られる観点より、ポリパラキシレンにより蛍光体層2の上部及び側面並びに蒸着用基板の蛍光体層外周部の全面を覆うことが好ましい。
また、保護層のヘイズ率は、得られる放射線画像の鮮鋭性、放射線画像ムラ、シンチレータパネル製造における製造安定性、作業性等を考慮し、3〜40%が好ましく、さらには3〜10%が好ましい。ヘイズ率が上記範囲の材料は、例えば、市販されている高分子フィルムから適宜選択し、容易に入手することが可能であるし、それらの製法に準じて作製することもできる。なお、ヘイズ率は、日本電色工業株式会社NDH5000Wにより測定した値である
保護層の光透過率は、シンチレータパネル10の光電変換効率、蛍光体発光波長等を考慮し、550nmの光に対して70%以上あることが好ましいが、光透過率が99%以上の材料(フィルムなど)は工業的に入手が困難であるため、実質的に99%〜70%であることが好ましい。
保護層のJIS Z0208に準じて40℃、90%RHの条件下で測定した透湿度は、蛍光体層2の保護性、潮解性等の観点から、50g/m2・day以下が好ましく、10g/m2・day以下がより好ましいが、0.01g/m2・day以下の透湿度のフィルムは工業的に入手が困難であるため、実質的に、0.01〜50g/m2・dayが好ましく、0.1〜10g/m2・dayがより好ましい。
〔シンチレータパネルの製造方法〕
本発明のシンチレータパネル10の製造方法は、図9に示すように、一方の表面にクッション層3が形成された支持体1の該クッション層3の表面に、蒸着法により蛍光体層2を形成するシンチレータパネル10の製造方法であって、該蛍光体層2を平面受光素子に対面するように配置して、支持体1側から該クッション層3を介して賦勢することにより、蛍光体層2の表面と平面受光素子とが密着可能なように蛍光体層2をクッション層3側に変形させて固定することを特徴とする。
シンチレータパネル10の製造方法の典型例について、図面を参照しながら説明する。
[クッション層の形成方法]
<クッション層の形成方法の手順>
本発明に係るクッション層の形成方法(蒸着用基板の製造方法)は、目的に応じて、従来の各種方法を採用すればよいが、ここでは、典型例について、図7を参照しながら説明する。
図7は、本発明に係るクッション層の形成方法の典型例を説明するための模式図である。
本発明のクッション層の形成方法の典型例では、図7に模式的に示す蒸着用基板の製造装置109が用いられる。この製造装置109を用いた蒸着用基板の製造方法は、好適には、被塗布物である支持体の供給工程29と、塗布工程39と、乾燥工程49及び89と、熱処理工程59と回収工程69とを含む。
供給工程29では、繰り出し装置(不図示)が用いられる。
供給工程29では、該繰り出し装置により、巻き芯に巻かれたロール状の支持体601を繰り出して、次の塗布工程39に支持体を供給する。
塗布工程39では、バックアップロール301と、塗布ヘッド302と、塗布ヘッド302の上流側に設けられた減圧室303とを有する塗布装置304が用いられる。
塗布工程39では、供給工程29で用いられる繰り出し装置から連続搬送され、バックアップロール301によって保持された支持体1’に、光散乱粒子、バインダー樹脂、添加剤及び溶媒などを含むクッション層形成用塗布液を塗布ヘッド302により塗布する。支持体1’にクッション層形成用塗布液を塗布する際には、塗布ヘッド302の上流側に設けられた減圧室303により、該塗布時に塗布ヘッド302から供給されるクッション層形成用塗布液と支持体1’との間に形成されるビード(塗布液の溜まり)を安定化する。
減圧室303は減圧度を調整することが可能となっている。減圧室303は、減圧ブロワ(不図示)に接続されており、内部が減圧状態になる。減圧室303は、空気漏れがない状態になっており、かつ、バックアップロールとの間隙も狭く調整され、ビードの上流(塗布ヘッドに対して繰り出し装置側)が適度な減圧度まで減圧され、安定した塗布液のビードが形成される。
また、塗布ヘッド302から吐出する塗布液の流量は、必要に応じて、不図示のポンプにより調整される。
上記説明では、塗布方法として押し出しコートを例に挙げているが、その他既知の任意の方法を採用することもできる、例えば、塗布液をグラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート及びディッピングなどの各種塗布方法を用いることができる。
乾燥工程49では、乾燥装置401を用いる。
乾燥工程49では、塗布工程39で支持体1’の上にクッション層形成用塗布液を塗布することで形成されたクッション層塗布膜を、乾燥装置401により乾燥する。乾燥工程49は、通常、クッション層塗布膜の表面温度が、80〜200℃の温度になるように行われる。乾燥工程49では、クッション層塗布膜を乾燥用気体により乾燥する。乾燥用気体は、乾燥用気体の導入口402から導入され、排出口403から排出される。乾燥用気体からなる乾燥風の温度及び風量は適宜決めることが可能な構成となっている。
乾燥工程89は、乾燥工程49と同じ構成となっており、詳細な説明は省略するが、乾燥工程49と合わせて使用することで、クッション層塗布膜の乾燥速度を調整できるようになっている。
熱処理工程59では、熱処理用加熱装置501によりクッション層塗布膜を有する支持体1’が熱処理され、クッション層塗布膜内の揮発成分が除去される。熱処理は、通常、クッション層塗布膜の表面温度が、150〜250℃の温度になるように行われる。熱処理工程では、クッション層塗布膜を熱処理気体により熱処理する。熱処理用気体は、熱処理用気体の導入口502から導入され、排出口503から排出される。乾燥用気体からなる熱処理風の温度及び風量は適宜決めることが可能な構成となっている。
図7の模式図には図示していないが、熱処理工程59の後に、クッション層の形成された支持体1’(蒸着用基板)を冷却する冷却工程を設けてもよい。
回収工程69では、クッション層塗布膜が形成された支持体1が巻き取り装置(不図示)に巻き取られる。なお、図7中の601は、巻き芯に巻き取られ回収されたロール状の支持体を示す。
なお、上記工程を通じて、上記塗布膜を有する支持体1’は搬送する搬送ロールa〜dにより搬送される。
クッション層を多層構造にする場合や上記以外の層を塗装により形成する場合などには、クッション層の形成された支持体を製造後、回収工程69にてロール状に巻き取られた支持体601を、再度、供給工程29の支持体1’にセットし、再度、クッション層形成用塗布液をクッション層上に塗布、乾燥、加熱処理して、二層以上のクッション層を形成する方法が挙げられる。必要に応じて、得られた蒸着用基板を加熱処理して、クッション層中の2つ以上の層を熱融着させるなどして一体化してもよい。
本発明に係るクッション層3の形成方法では、クッション層塗布膜の表面温度を乾燥工程49及び89においては80〜200℃とし、熱処理工程59においては150〜250℃とすることで、蒸着用基板の揮発物の量(以下、「揮発成分量」ともいう)を5%未満とすることができる。本発明に係る蒸着用基板の製造方法では、乾燥工程の後に揮発成分除去のための熱処理工程を行うことが特徴の一つである。
支持体1’上に形成されたクッション層塗布膜の表面の温度は、レーザー方式・赤外線方式などの一般に公知な非接触温度計により測定できる。
乾燥工程49及び89、熱処理工程59における各種気体の温度及び風量は、特に限定されず、非接触温度系による測定結果をもとに、塗布膜面の温度が上記設定温度になるように調整すればよい。
乾燥工程49及び89における支持体1’の塗布膜面上5mmの位置における気流は、支持体面と平行な方向に、支持体1’に対して1〜3m/秒の相対速度で移動することが好ましい。塗布膜面上5mmの位置における気流が、支持体1に対して上記範囲内の相対速度で移動すると、乾燥後のクッション層表面が粗くなるなどせずに乾燥できる。
また熱処理工程59において、塗布膜の膜面を加熱する手段として、赤外線ヒータによる熱処理を熱処理用気体による熱処理と併用することにより、支持体上のクッション層の熱処理の効果を高めることができる。
以上説明した本発明に係るクッション層の形成方法により、残留溶媒や光散乱粒子へのガス吸着の少ない蒸着用基板が得られる。
<クッション層の形成方法に用いられる材料>
以下、本発明に係るクッション層の形成方法に用いられる支持体とクッション層形成用塗布液について説明する。
<支持体1’>
支持体1’の材料は前述した通りであるが、なかでも、高分子フィルムが、図7に示したような製造装置109が好適に使用でき、ロール・ツー・ロール(roll to roll)で容易に加工できる点、及び平面受光素子をカップリングする際、柔軟性があるため平面受光素子との密着性に優れる点等の観点から好ましい。また、高分子フィルムのガラス転移温度は、高分子フィルム上に蛍光体を蒸着する際の熱による支持体の変形を防止できるという観点より、100℃以上であることが好ましい。上記のような高分子フィルムとして、具体的には、ポリイミドフィルムが好適である。
支持体には、必要に応じて適宜、前述の遮光層、光吸収性の顔料層などを設けることができる。また、支持体自体が、遮光性であったり反射性であったりしてもよい。
遮光層を支持体上に被覆する方法としては、蒸着、スパッタ、又は、金属箔の貼り合わせ等、特に制約は無いが、遮光層の支持体への密着性の観点から、スパッタが最も好ましい。
光吸収性の顔料層を支持体上に被覆する方法としては、光吸収性の顔料等を含む塗布液を支持体上に塗布、乾燥などする方法などが挙げられる。
<クッション層形成用塗布液>
クッション層形成用塗布液は、クッション層を形成するバインダー樹脂に光反射粒子又は光吸収粒子などの光散乱粒子、バインダー樹脂、及び必要に応じて、顔料などの色材、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤及び分散剤などの添加剤を、混合してから又は個々に、溶媒に分散又は溶解して調製する。各成分の混合順序などは、本発明の目的を損なわない限り、特に制限されない。
光散乱粒子、バインダー樹脂及び添加剤などは、公知の分散又は溶解方法で分散又は溶解すればよい。例えば、分散機としては、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル及び加圧ニーダー等が好適に使用される。
光散乱粒子、バインダー樹脂、顔料などの色材、紫外線吸収剤、蛍光増白剤の詳細は前述の通りである。
上記分散剤は、上記光散乱粒子をバインダー樹脂中に分散される目的で、配合される。分散剤としては、用いるバインダー樹脂と光散乱粒子とに合わせて種々のものを用いることができ、例えば、多価アルコール、アミン類、シリコーン、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを用いることができる。分散剤は、クッション層形成後、クッション層に残存していても、クッション層から除去されていてもよい。
分散剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、通常0.05〜10重量部となる量で用いられ、1〜5重量部となる量で用いることが好ましい。
上記光散乱粒子、バインダー樹脂及び添加剤などを分散又は溶解する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びn−ブタノール等の低級アルコール(炭素数1〜6のアルコールが好ましい);メチレンクロライド及びエチレンクロライド等の塩素化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;トルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエーテル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル及びエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル;シクロヘキサン;及びこれらの混合物を挙げることができる。
また、溶媒が一種のみでは、光散乱粒子、バインダー樹脂及び添加剤などの溶媒への分散性が不充分であったり、乾燥工程での溶媒蒸発速度の調整が困難となりクッション層表面が粗面化したりする傾向があり、これを防止する観点から、溶媒としては、気化熱の異なる相溶性のよい複数種の溶媒を混合した混合溶媒を使用することが好ましい。特にトルエン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノンなどを含む混合溶媒が好ましい。
本発明に係る蒸着用基板中のクッション層に空隙を設ける場合、その方法は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(I)クッション層に空隙粒子を添加する方法、(II)クッション層を塗布により形成する際に泡を混入させた塗布液を支持体に塗布することでクッション層を形成するか、塗布液に発泡剤を添加して多孔質構造を有するクッション層を形成する方法などが挙げられる。これらの中でも、塗布膜形成の容易さの観点からは上記(I)の空隙粒子を添加する方法が好ましく、空隙容量の観点からは上記(II)の泡を利用した方法が好ましい。
上記(II)の泡を利用した方法において、発泡剤としては、公知の発泡剤の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、炭酸ガス発生化合物、窒素ガス発生化合物、酸素ガス発生化合物、マイクロカプセル型発泡剤などが好適に挙げられる。前記炭酸ガス発生化合物としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩などが挙げられる。 窒素ガス発生化合物としては、例えば、NaNO2とNH4Clの混合物;アゾビスイソブチロニトリル及びジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物;p−ジアゾジメチルアニリンクロライドジンククロライド、モルフォリノベンゼンジアゾニウムクロライドジンククロライド、モルフォリノベンゼンジアゾニウムクロライド、フルオロボレート、p−ジアゾエチルアニリンクロライドジンククロライド、4−(p−メチルベンゾイルアミノ)−2,5−ジエトキシベンゼンジアゾニウムジンククロライド及び1,2−ジアゾナフトール5−スルホン酸ナトリウム塩等のジアゾニウム塩等が挙げられる。 酸素ガス発生化合物としては、例えば、過酸化物等が挙げられる。マイクロカプセル型発泡剤としては、低温で気化する低沸点物質(常温で液体状態であっても固体状態であってもよい)を内包するマイクロカプセル粒子の発泡剤が挙げられる。該マイクロカプセル型発泡剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、又はこれらの単量体の共重合体からなるマイクロカプセル壁材の内部にプロパン、ブタン、ネオペンタン、ネオヘキサン、イソペンタン及びイソブチレン等の低沸点の気化性物質を封入して直径10〜20μmのマイクロカプセル化したもの、などが挙げられる。 これら発泡剤の樹脂バインダーへの含有量は、発泡剤の種類に応じて異なり一概には規定できないが、通常は、1〜50重量%が好ましい。
(I)の空隙粒子を添加する方法では、クッション層全体を100体積%としたときに、5〜30体積%の量の空隙粒子がクッション層に添加されるような量で、空隙粒子を例えばクッション層形成用塗布液に配合することで、クッション層中の空隙容量を調整できる。
(II)の泡を利用した方法では、同じくクッション層全体を100体積%とした時に、1〜50体積%の量の発泡剤がクッション層に添加されるような量で、空隙粒子を例えばクッション層形成用塗布液に配合することで、クッション層中の空隙容量を調整できる。このような方法により、前述のクッション層の体積に対する空隙の体積の割合で、クッション層に空隙を形成することができる。
上記空隙は、一部又は全部が中空粒子により形成することが、蒸着用基板のX線透過性の観点から好ましい。
蒸着用基板の反射率は、例えば、下記の方法により調整することができる。
(1)アルミニウム、銀、白金、パラジウム、金、銅、鉄、ニッケル、クロム、コバルト及びステンレスのうち一種又は二種以上の元素を含む材料により形成された遮光層を支持体に設ける。
(2)光吸収性の顔料層を支持体に設ける。
(3)反射層、顔料層又はこれらのうち少なくとも一層が設けられたフィルムを支持体に積層する。
(4)支持体に光吸収性を付与する。
(5)支持体に光反射性を付与する。
(6)クッション層を着色する。
(7)クッション層中の光散乱粒子の含有比率を調整する。
(8)上記(1)〜(7)の方法のうち、少なくとも二種の方法を組み合わせる。
上記(1)〜(7)の方法を組み合わせることで、本発明に係る蒸着用基板の(蛍光体層で生じた)発光光の基板反射率、基板吸収率、基板透過率を任意に調整することができる。また、上記基板反射率を高めることで放射線検出装置の感度を高めることができる。上記基板吸収率を高めることで、本発明に係る蒸着用基板に蛍光体層2が形成されたシンチレータパネル10を含む放射線検出装置から得られる放射線画像の鮮鋭性を高めることができる。また、上記遮光層として、例えば、金属遮光層を設けて蒸着用基板をシンチレータパネル10の用途に供した場合、蒸着用基板の光透過率が低下することで蒸着用基板のクッション層と接している面とは反対面からの外光や電磁波の侵入が防止されるとともに、蛍光体層2で生じた発光光のシンチレータパネル外部への漏えいを防止できる。特に、上記遮光層として、アルミニウム、銀などの反射性の高い金属を使用した場合は、光散乱粒子と樹脂バインダーからなるクッション層の反射率をより高めることができる。
前述の金属材料を含む遮光層を支持体上などに形成する方法としては、蒸着、スパッタ、あるいは、金属箔の貼り合わせ等、特に制約は無いが、密着性の観点からスパッタが最も好ましい。
クッション層自体を色材で着色する方法は、特に制限されないが、クッション層形成用塗布液に前述の色材を添加して、クッション層形成用塗布液を支持体に塗布することで、支持体上に着色したクッション層を形成する方法が、簡便である点などからより好ましい。
支持体又は支持体に積層するフィルム上に光吸収性の顔料層を設ける場合も、前記と同様の色材を使用し、色材と樹脂バインダーなどを分散又は溶解した塗布液を、上記支持体あるいはフィルム上に塗布し乾燥することで、容易に光吸収性の顔料層を設けることができる。
蒸着により、本発明に係る蒸着用基板に蛍光体層の形成を開始する時点で、クッション層に含有される揮発成分量は、柱状蛍光体結晶の異常成長を防止できる観点から、クッション層の全質量に対して、0.5mg/m2以下であることが好ましい。
本明細書において、揮発成分量とは下記式で定義される。
揮発成分量(質量%)=[(M−N)/N]×100
Mは加熱処理前のクッション層の全質量で、Nは200℃で3分間の条件で加熱処理後のクッション層の全質量である。
揮発成分量が上記範囲にあると、蒸着における高温高真空条件下での柱状蛍光体結晶の成長過程において、クッション層から揮発ガスの流出が発生して、揮発ガスが流出した部分で柱状蛍光体結晶の異常成長が発生し、得られる放射線画像の鮮鋭性やその鮮鋭性の均一性が悪化することを防止できる。
蒸着用基板のクッション層の揮発成分量が上記範囲にない場合は、該蒸着用基板を揮発成分除去工程に供することで、クッション層の揮発成分量が上記範囲の蒸着用基板を得ることができる。
揮発成分除去工程とは、真空下及び/又は高温化で蒸着用基板上のクッション層の揮発成分を除去する工程であり、該工程では、該揮発成分の除去を達成できる方法であれば、既知のいかなる方法も採用できる。それら方法の中でも、作業の容易性から、蒸着装置81内のホルダ85に本発明に係る蒸着用基板をセットした後、前記ホルダ85を100℃以上に加熱すると同時に、蒸着装置内を100Pa以下の真空下とし、数分から数時間蒸着用基板のクッション層3を加熱処理する方法がより好ましい。
上記揮発成分は、主に、クッション層形成用塗布液を塗布、乾燥してクッション層を形成した時の残留溶媒や原料として用いた白色顔料に吸着していたガスである。特に、水分(H2O)や二酸化炭素(CO2)などのガスは、低湿度環境下でも白色顔料に容易に吸着する。従って、上記揮発成分除去工程は、蒸着により蛍光体層2を形成する直前に実施することがより好ましい。
<シンチレータパネルの製造方法>
本発明のシンチレータパネルの製造方法は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、真空容器82内に蒸発源及び回転機構86を有する蒸着装置81を用い、蒸着用基板84の支持体面が回転機構86の設置面に接するように蒸着用基板84を該回転機構86に設置して、当該支持体を有する蒸着用基板84を回転しながら蛍光体材料を蒸着用基板84のシンチレータ形成予定面に蒸着する工程を含む蒸着法(気相堆積法)により、シンチレータパネルを製造する方法であることが好ましい。
本発明のシンチレータパネルの製造方法の典型例について、図1〜3を参照しながら説明する。なお、図1は、本発明のシンチレータパネルの一例であるシンチレータパネル10の概略構成を示す断面図である。図2は、図1のシンチレータパネル10の拡大断面図である。図3は、蒸着装置の一例である蒸着装置81の概略構成を示す図面である。
本発明のシンチレータパネルの製造方法においては、以下で詳述する蒸発装置81を好適に用いることができる。以下、蒸発装置81を用いてシンチレータパネル10を作製する方法について説明する。
<蒸着装置>
図3に示す通り、蒸着装置81は箱状の真空容器82を有しており、真空容器82の内部の底面付近には、蒸着用基板84に垂直な中心線を中心とした円の円周上の互いに向かい合う位置に真空蒸着用の蒸着源88a、88bが配されている。蒸着源88a、88bは蒸着源の被充填部材であり、当該蒸着源88a、88bには電極が接続されている。この場合において、蒸着用基板84と蒸発源88a、88bとの間隔は100〜1500mmが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。また、蒸着用基板84に垂直な中心線と蒸発源88a、88bとの間隔は100〜1500mmが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。当該電極を通じて蒸着源88a、88bに電流が流れると、蒸着源88a、88bがジュール熱で発熱するようになっている。シンチレータパネル10の製造時においては、ヨウ化セシウムと賦活剤化合物とを含む蛍光体原材料が蒸着源88a、88bに充填され、その蒸着源88a、88bに電流が流れることで、上記混合物を加熱・蒸発させることができるようになっている。なお、蒸着源88は、3個以上(8個、16個、24個等)設けることも可能であり、各々の蒸発源は等間隔に配置してもよく、間隔を変えて配置してもよい。また、蒸着用基板84に垂直な中心線を中心とした円の半径は任意に定めることができる。
蒸着源88a、88bは、前記蛍光体を収容して抵抗加熱法で加熱するために、ヒータを巻いたアルミナ製のルツボから構成されていてもよいし、ボート、高融点金属などからなるヒータから構成されていてもよい。また、前記蛍光体を加熱する方法は、抵抗加熱法以外に電子ビームによる加熱や、高周波誘導による加熱等の方法でもよいが、比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、非常に多くの物質に適用可能である点から、直接電流を流して抵抗加熱する方法や、周りのヒータでルツボを間接的に抵抗加熱する方法が好ましい。また、蒸着源88a、88bは分子源エピタキシャル法による分子線源を利用して構成されていてもよい。
真空容器82の内部であって蒸着源88a、88bの上方には蒸着用基板84を保持するホルダ85が配されている。ホルダ85にはヒータ(図示略)が配されており、当該ヒータを作動させることでホルダ85に装着した蒸着用基板84を加熱することができるようになっている。蒸着用基板84を加熱した場合には、蒸着用基板84の表面の吸着物を離脱・除去したり、蒸着用基板84とその表面に形成される蛍光体層との間に不純物層が形成されるのを防止したり、蒸着用基板84とその表面に形成される蛍光体層との密着性を強化したり、蒸着用基板84の表面に形成される蛍光体層の膜質の調整を行ったりすることができるようになっている。
ホルダ85は、蒸着用基板84の前記蛍光体層を形成する面が真空容器82の底面に対向し、かつ、真空容器82の底面と平行になるように蒸着用基板84を保持する構成となっている。ホルダ85には、当該ホルダ85と共に蒸着用基板84を水平方向に回転させる回転機構86が設けられている。回転機構86は、ホルダ85を支持すると共に蒸着用基板84を回転させる回転軸87及び真空容器82の外部に配置されて回転軸87の駆動源となるモ−タ(図示せず)から構成されている。当該モ−タを駆動させると、回転軸87が回転してホルダ85を蒸着源88a、88bに対向させた状態で回転させることができるようになっている。
ホルダ85は、蒸着用基板84を加熱する加熱ヒータ(図示せず)を備えることが好ましい。この加熱ヒータで蒸着用基板84を加熱することによって、蒸着用基板84のホルダ85に対する密着性の強化や、前記蛍光体層の膜質の調整を行うことができる。また、蒸着用基板84の表面の吸着物を離脱・除去し、蒸着用基板84の表面と前記蛍光体との間に不純物層が発生することを防止することもできる。また、ホルダ85は、蒸着用基板84の加熱手段として温媒又は熱媒を循環させるための機構(図示せず)を有していてもよい。この加熱手段は蛍光体の蒸着時における蒸着用基板84の温度を50〜150℃といった比較的低温に保持して蒸着する場合に適している。また、ホルダ85には、蒸着用基板84の加熱手段としてハロゲンランプ(図示せず)を有していてもよい。この手段は蛍光体の蒸着時における蒸着用基板84の温度を150℃以上といった比較的高温に保持して蒸着する場合に適している。
蒸着装置81には、上記構成の他に、真空容器82に真空ポンプ83が配されている。真空ポンプ83は、真空容器82の内部の排気と真空容器82の内部へのガスの導入とを行うもので、当該真空ポンプ83を作動させることにより、真空容器82の内部を一定圧力のガス雰囲気下に維持することができるようになっている。高真空領域まで排気するために、作動圧力領域の異なる真空ポンプを二種類もしくはそれ以上配置してもよい。真空ポンプとしては、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、ディフュージョンポンプ及びメカニカルブースタ等が挙げられる。
蒸着装置81には、チャンバー内の圧力を調整するために、真空容器82内にガスを導入できる機構が設けられている。導入するガスは、一般的には、Ne、Ar、Kr等の不活性ガスが用いられる。真空容器82内の圧力は、真空容器82内を真空ポンプ83で排気しながら、所望の圧力となるようにガスを導入することにより調整してもよいし、所望の圧力よりも高真空となるまで真空排気を行った後に真空排気を停止して、その後所望の圧力となるまでガスを導入することにより調整してもよい。また、真空容器82と真空ポンプ83の間に圧力制御弁を設ける等することにより、ポンプの排気量を調整して真空容器82内の圧力を制御してもよい。
また、蒸発源88a、88bと蒸着用基板84との間には、蒸発源88a、88bから蒸着用基板84に至る空間を遮断するシャッタ89が水平方向に開閉自在に設けられている。このシャッタ89を蒸着の初期段階に閉じることによって、蒸発源88a、88bに収められた前記蛍光体の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着の初期段階に蒸発しても、それらが蒸着用基板84に付着するのを防ぐことができる。そして、上記目的を達した後にシャッタ89を開いて蛍光体原材料の蒸着を行えば、上記のような目的物を蒸着用基板に蒸着させることなく蛍光体層を形成することができる。
<蛍光体層の形成>
上記のようにクッション層を設けた支持体を含む蒸着用基板84をホルダ85に取り付けるとともに、真空容器82の底面付近において、蒸着用基板84に垂直な中心線を中心とした円の円周上に蒸発源88a、88bを配置する。次に、ルツボやボート等に、ヨウ化セシウムなどの蛍光体母体化合物とヨウ化タリウムなどの賦活剤とを含む粉末状の混合物などの蛍光体原材料を充填したものを蒸発源の数だけ用意し(この場合は2つ)、蒸着源88a、88bに充填する(準備工程)。クッション層上に蛍光体下地層を形成してから蛍光体下地層を形成する場合は、ヨウ化セシウムなどの蛍光体母体化合物とヨウ化タリウムなどの賦活剤とを蒸発源にそれぞれ別々に充填してもよい。これらの場合、蒸着源88a、88bと蒸着用基板84のクッション層表面との間隔を100〜1500mmに設定し、その設定値の範囲内のままで後述の蒸着工程を行うのが好ましい。
充填した蛍光体母材及び賦活剤の中の不純物を蒸着前に除去するため、必要に応じて、予備加熱を行ってもよい。予備加熱は使用する材料の融点以下であることが望ましい。例えばCsIの場合、予備加熱温度は50〜550℃が好ましく、100〜500℃がより好ましい。TlIの場合、50〜500℃が好ましく、100〜500℃がより好ましい。
予備加熱は、シャッタ89を閉じて行うことが、上記不純物が蒸着用基板84に蒸着しない観点より好ましい。
準備工程の処理を終えたら、真空ポンプ83を作動させて真空容器82の内部を排気し、真空容器82の内部を0.1Pa以下の真空雰囲気下にする(真空雰囲気形成工程)。ここでいう「真空雰囲気下」とは、100Pa以下の圧力雰囲気下のことを意味し、0.1Pa以下の圧力雰囲気下であるのが好適である。その後、アルゴン等の不活性ガスを真空容器82の内部に導入し、当該真空容器82の内部を0.1Pa以下の真空雰囲気下に維持する。次に、ホルダ85のヒータと回転機構のモ−タとを駆動させ、ホルダ85に取付け済みの蒸着用基板84を蒸着源88a、88bに対向させた状態で加熱しながら回転させる(回転速度は、装置の大きさにもよるが2〜15rpmが好ましく、4〜10rpmがより好ましい)。
次いで、蛍光体の蒸着を行うが、CsIなどの蛍光体を賦活方法するとしては、蒸着装置内で、CsIなどの蛍光体及びナトリウム化合物、タリウム化合物、インジウム化合物、ユーロピウム化合物などの賦活剤を同時に気化させて基板上に堆積させる方法などが挙げられる。特に、このように蛍光体及び賦活剤を同時に気化させて蒸着を行う方法を採用する場合は、柱状結晶構造による光ガイド効果が得られるなどの観点から、CsIであることが好ましく、賦活剤として用いる化合物は、CsIの柱状結晶成長を阻害しないなどの観点から、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化タリウム(TlI)、ヨウ化インジウム(InI)などのヨウ化物であることが好ましい。
また、蛍光体を賦活する方法としては、その他にも、蒸着により、蒸着用基板84上にCsIの柱状結晶などの蛍光体からなる蛍光体下地層を形成した後に、ナトリウム化合物、タリウム化合物、インジウム化合物などの賦活化合物と共に蛍光体下地層の形成された蒸着用基板を蒸着装置などの密閉空間に配置し、賦活化合物をその昇華温度以上に加熱し、CsIなどの蛍光体の賦活を行い、蛍光体本層を形成する方法などを採用することも可能である。このように蛍光体層が形成された基材及び賦活剤を共に加熱処理する場合は、密閉空間に配置される蒸着用基板上に形成されたCsIなどの蛍光体からなる蛍光体層を100〜350℃の温度に加温しておくことが好ましい。蛍光体としては、柱状結晶構造による光ガイド効果が得られるなどの観点から蛍光体はCsIであることが好ましく、賦活剤として用いる化合物は、特に限定されないが、昇華温度が低いものが取扱上好ましい。また蒸着時に特定の化合物(例えばヨウ化タリウム(TlI)など)で賦活をしたCsIを用いると、CsIの柱状結晶の内部と表面とで賦活剤の種類が異なる蛍光体層を形成することができ、特に賦活剤としてユーロピウム化合物を用いた場合は、蛍光体層における放射線による発光の減衰時間を短縮することができる。
クッション層上に蛍光体下地層を形成しない場合は、上記の蒸着用基板84を加熱しながら回転させている状態において、電極から蒸着源88a、88bに電流を流し、ヨウ化セシウムとヨウ化タリウムとを含む混合物などの蛍光体原料を700℃〜800℃程度で所定時間加熱してその混合物を蒸発させる。その結果、蒸着用基板84の表面に無数の柱状蛍光体結晶2aが順次成長して所望の厚さの蛍光体層2が形成される(蒸着工程)。蛍光体層の厚さは、用途によって異なるが、120 〜700μmであることが好ましい。
クッション層上に蛍光体下地層を形成する場合は、蛍光体母体化合物(CsIなど:賦活剤なし(pure))ルツボを加熱して蛍光体を蒸着し、蛍光体下地層(第1の蛍光体層)を形成する。
このときの蒸着用基板84の温度は、通常5〜100℃、好ましくは15〜50℃である。蛍光体下地層の厚さは、結晶径や蛍光体層の厚さにもよるが、0.1〜50μmであることが好ましい。次に蒸着用基板84の加熱を開始し、蒸着用基板84の基板温度を150〜250℃に加熱し、残りの蛍光体母体化合物(CsIなど:賦活剤なし(pure))と賦活剤(TlIなど)の蛍光体原材料の蒸発を開始する。この時、蛍光体母体化合物は、生産性を考慮して、下地層を形成する際の蒸着速度よりも早い蒸着速度で蒸発をすることが好ましい。蛍光体下地層や蛍光体本層の厚さにもよるが、蛍光体下地層蒸着時よりも5〜100倍の速度で蒸着することが好ましく、10〜50倍で蒸着することがより好ましい。賦活剤の蒸発方法は、賦活剤単体を蒸発させてもよいが、CsIとTlIを混合した蒸発源を作製し、CsIは蒸発せずTlIのみが蒸発する温度(例えば500℃)に加熱して蒸発させてもよい。
蒸着時に加熱した蒸着用基板84は、高温のため、取り出すために冷却を行う必要がある。蛍光体層を80℃まで冷却する工程での平均冷却速度を0.5〜10℃/分の範囲内とすることで、蒸着用基板84に急冷による支持体の熱収縮によるダメージを与えることなく冷却することができる。この条件での蒸着用基板84の冷却は、例えば蒸着用基板84の支持体として厚さ50〜500μmの高分子フィルム等を用いた場合に特に有効である。この冷却工程は、真空度1×10-5〜0.1Paの雰囲気下で行われることが、蛍光体層の着色回避の観点より特に好ましい。また、冷却工程時に、蒸着装置の真空容器内にArやHe等不活性ガスを導入する手段を講じてもよい。なお、ここでいう平均冷却速度とは、冷却開始(蒸着終了時)から80℃まで冷却する間の時間と温度を連続的に測定し、この間の1分間あたりの冷却速度を求めたものである。
上記蒸着法において、必要に応じてO2、H2などのガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
上記柱状蛍光体結晶の形成方法の中では、上記面指数についての要件を満たすために、基板の表面に、空隙率が蛍光体層よりも低い値を示す蛍光体下地層を形成する工程、及び蛍光体下地層の表面に蛍光体を蒸着法により形成して蛍光体下地層を形成する工程を含む態様の製造方法であることが好ましい。
以上の通り、本発明のシンチレータパネル10を製造することができる。
上記のような蒸着条件で、クッション層に蛍光体層を形成すると、クッション層界面に成長した柱状蛍光体結晶で形成される蛍光体層が得られることから好ましい。
また、上記蒸着装置81を用いたシンチレータパネルの製造方法によれば、複数の蒸発源88a、88bを設けることによって蒸発源88a、88bの蒸気流が重なり合う部分が整流化され、蒸着用基板84の表面に蒸着する前記蛍光体の結晶性を均一にすることができる。このとき、多数の蒸発源を設けるほど多くの箇所で蒸気流が整流化されるため、より広範囲において前記蛍光体の結晶性を均一にすることができる。また、蒸発源88a、88bを蒸着用基板84に垂直な中心線を中心とした円の円周上に配置することによって、蒸気流の整流化によって結晶性が均一になるという作用を、蒸着用基板84の表面において等方的に得ることができる。
得られたシンチレータパネルは、下記熱処理工程、加圧処理工程などに供することが後述の観点より好ましい。
<蛍光体層の加熱処理>
蒸着用基板のクッション層上に形成された蛍光体層を、ヨウ化ユーロピウム、ヨウ化インジウムのうちのいずれか1つの賦活化合物と共に1.0Pa以下に減圧された密閉空間に配置し、賦活化合物を昇華温度以上に加熱気化し、追加賦活を行うことが、シンチレータ層の発光特性を調整できることから好ましい。この場合、蒸着用基板上に形成されたCsIなどの蛍光体は250℃の温度に加温しておく。この追加賦活を1時間実施後、追加賦活された蛍光体層の形成された蒸着用基板を50℃以下まで冷却し、シンチレータパネルを蒸着装置内の密閉空間から取り出すことで、蛍光体層が追加賦活されたシンチレータパネルが得られる。あるいは賦活剤化合物を用いない以外は同様の手順で1時間の熱処理のみ実施することで、蒸着時に添加された賦活剤が活性化され、発光強度の高いシンチレータパネルを得ることができる。
<蛍光体層の加圧処理>
本発明に係る蒸着用基板のクッション層上に蒸着により蛍光体層を形成すれば、通常は、クッション層界面からの高さが揃った柱状蛍光体結晶の集合体が得られるが、一部で蛍光体の結晶の異常成長などが生じ、柱状蛍光体結晶の高さの均一性が損なわれた蛍光体層が得られる。柱状蛍光体結晶の異常成長の原因としては、ゴミ、蒸着時のスプラッシュ、傷や異物付着などの基板欠陥などが挙げられる。なお、蒸着時のスプラッシュとは、「気化する前のCsI固形物が飛び出し蒸着用基板に付着すること」である(特開2006−335887号公報などを参照)。
このように異常成長した柱状蛍光体結晶は、シンチレータパネルを介して得られる放射線画像の鮮鋭性などを低下させる要因となるため、このような柱状蛍光体結晶をそのままにしておかず、以下の加圧処理をする。
シンチレータパネルと平面受光素子とを支持体側から賦勢して密着(あるいは接着)させることにより、柔軟性のあるクッション層が蛍光体層表面の凹凸を吸収し、受光面全面に蛍光体層表面が密接するので解像度の均一性が向上する。図9に、支持体側から賦勢されて蛍光体層が変形し平面受光素子と接触している模式図を示す。
本発明のシンチレータパネルの製造方法によれば、支持体と蛍光体層との間にクッション層を設けることで、蛍光体層を支持体側から賦勢して平面受光素子にシンチレータパネルを圧着させるに際して、蛍光体層の凹凸面がクッション層に吸収され、平面受光素子と蛍光体層との接触面に隙間が生じないこととなり、画像の濃度ムラの発生やMTFの面内分布の問題が改善されたフラットパネルディテクタなどを提供することができる。
<シンチレータパネルへの保護層の形成方法>
シンチレータパネルに保護層を設ける場合、保護層は、前記保護層を形成する材料を含む保護層形成用の塗布液を前記蛍光体層の表面に直接塗布して形成してもよく、また、予め別途形成した保護層を前記蛍光体層に積層、あるいは接着剤により接着してもよい。また、保護層を形成する材料をシンチレータパネルに蒸着して保護層を形成してもよい。
本発明のシンチレータパネルに保護層を設ける場合、該保護層は、蛍光体層全面及びクッション層の一部が、連続した保護層により覆われるように形成することが好ましい。特に、膜として形成が容易であったり加工が容易であったりする観点より、ポリパラキシレンをCVD法(気相化学成長法)に供して、シンチレータパネルにポリパラキシレン膜の保護層を形成することがより好ましい。
さらに、シンチレータパネル上に、表面粗さ(Ra)が0.5〜5.0μmとなるようにポリパラキシレン膜の保護層を形成することで、シンチレータパネルと平面受光素子とを接合する態様における、シンチレータパネルと平面受光素子面の正反射及び全反射による発光光の光拡散を効果的に防止できる。
図8は、シンチレータパネルの蛍光体層の表面にポリパラキシレン膜からなる保護層を形成する例である。
CVD蒸着装置50は、ポリパラキシレンの原料であるジパラキシリレンを挿入し気化させる気化室551、気化したジパラキシリレンを加熱昇温してラジカル化する熱分解室552、ラジカル化された状態のジパラキシリレンをシンチレータが形成されたシンチレータパネルに蒸着させる蒸着室553、防臭、冷却を行う冷却室554及び真空ポンプを有する排気系555を備える。ここで、蒸着室553は、図5に示すように熱分解室552においてラジカル化されたポリパラキシレンを導入する導入口553a及び余分なポリパラキシレンを排出する排出口553bを有すると共に、ポリパラキシレン膜の蒸着を行う試料を支持するターンテーブル(蒸着台)553cを有する。
蒸着室553のターンテーブル553c上にシンチレータパネルの蛍光体層を上向きにして設置する。次に、気化室551において175℃に加熱して気化させ、熱分解室552において690℃に加熱昇温してラジカル化したジパラキシリレンを、導入口553aから蒸着室553に導入して、蛍光体層2の保護層(ポリパラキシレン膜)122を2〜15μmの厚さで蒸着する。ここで、蒸着室553内は真空度が、例えば、1〜100Pa、好ましくは13Paに維持されている。又、ターンテーブル553cは、例えば、0.5〜20rpm、好ましくは4rpmの速度で回転させる。また、余分なポリパラキシレンは、排出口553bから排出され、防臭、冷却を行う冷却室554及び真空ポンプを有する排気系555に導かれる。
また、別の態様では、保護層の材料として、ホットメルト樹脂も使用できる。ホットメルト樹脂はシンチレータパネルと平面受光素子面との接着も兼ねることができる。
ホットメルト樹脂を材料とした保護層の作製方法としては、以下に示す方法が挙げられる。
例えば、剥離剤がコーティングされた剥離シートを準備し、ホットメルト樹脂をこの剥離シートに塗設し、このホットメルト樹脂面をシンチレータパネルの蛍光体層面に配置し、加熱したローラーで加圧しながら張り合わせ、冷却後に剥離シートを取り除く方法が挙げられる。その他にも、上記ホットメルト樹脂が塗設されたシートを蛍光体層面に配置した後、ホットメルト樹脂が塗設されたシート及び蛍光体層の互いに接触していない面のそれぞれの上に、樹脂フィルムを設置し、減圧下で設置した樹脂フィルムの周縁部をシール(密封)した後、大気圧下で加熱する方法が挙げられる。
後者の方法の樹脂フィルムとしては、シーラントフィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)のドライラミネートフィルムなどが好適であり、ホットメルト樹脂と蛍光体層との接触面全面において大気圧による均一な接着圧が得られる点でより好ましい。
シンチレータパネルに保護層を設ける場合は、蒸着法、スパッタリング法などにより、炭化ケイ素(SiC)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si34)、アルミナ(Al23 )などの無機物質を含む層を該保護層上に積層させるように形成してもよい。
なお、上述のシンチレータパネルの各種性能の評価は、該シンチレータパネルと後述の平面受光素子とをカップリングして、放射線画像装置に組み込んでから行うため、放射線画像装置について述べた後、詳述することとする。
〔シンチレータパネルの評価と用途〕
[放射線画像検出器]
<シンチレータパネルと平面受光素子とのカップリング>
本発明のシンチレータパネルと平面受光素子面を貼り合せるにあたっては、それらの接合面での光拡散によって得られる放射線画像の鮮鋭性が劣化することを抑制するような貼り合せ方法を選択する必要がある。すなわち、本発明では、シンチレータパネルと平面受光素子の接合にあたり、シンチレータパネルの蛍光体層側(シンチレータ面)と平面受光素子面とを何らかの加圧手段によって密着させる。
シンチレータパネルと平面受光素子とのカップリングは、例えば、シンチレータパネルを筐体にセットして、放射線入射窓のカーボン板とシンチレータパネルの放射線入射側(蛍光体層がない側)にスポンジシートを配置し、シンチレータパネル面と平面受光素子面とを軽く押し付けることにより行う。すなわち、蛍光体層と平面受光素子とを加圧した状態で接着させる。このときの圧力は、クッション層の弾性率の0.001%以上であることが好ましく、シンチレータパネル面と平面受光素子面とを軽く押し付けるままに、蛍光体層の柱状結晶の凹凸がクッション層にめりこむ程度、すなわち、大気圧であることがより好ましい。
なお、上記放射線画像の鮮鋭性の劣化に関する問題は、シンチレータパネルのシンチレータ面上に光拡散防止層を設ける、シンチレータパネルのシンチレータ面上か平面受光素子面上の少なくとも一方に反射防止層を設ける、互いに対向するシンチレータ面及び平面受光素子面のいずれか又は双方の表面粗さ(Ra)を0.5〜5.0μmにするなど、シンチレータパネルのシンチレータ面及び平面受光素子面に散乱防止加工を実施することで解決することができる。これら散乱防止加工と、上記既知の接合方法を組み合わせることで、上述の光散乱を効果的に防止でき、鮮鋭性やその均一性に優れた放射線画像を得ることができる。
ここで、光拡散防止層とは、波長550nmの光に対して、60〜99%の光透過率を有し、シンチレータパネル上に設けられ、保護層としても機能する層でもあり、保護層中を伝搬する光の強度を減衰させる機能を有する。
また、反射防止層とは、シンチレータパネルのシンチレータ(蛍光体層)で生じた発光光が、シンチレータパネルのシンチレータ面−平面受光素子面間において反射を繰り返し、シンチレータ面−平面受光素子面間を伝播するといった現象を防止し、平面受光素子で検出されない光が生じることを防止するものである。反射防止層は、シンチレータ面上に設けられる場合は、屈折率がシンチレータの屈折率よりも小さい樹脂層であり、平面受光素子面上に設けられる場合は、屈折率が平面受光素子の屈折率より小さい樹脂層である。このような反射防止層をシンチレータパネルのシンチレータ面上か平面受光素子面上の少なくとも一方に設けることで、発光光がシンチレータ側からの入射角よりも小さな角度で反射防止層を伝播し、該角度よりも大きな角度で平面受光素子へ伝播するようになり、シンチレータ面−平面受光素子面間のおける繰り返し反射を防止することができる。反射防止層は、上記光拡散防止層を有する保護層の効果も得られるという観点から、波長550nmの光に対する光透過率が、60〜99%となるように設計することが、より好ましい。
また、互いに対向するシンチレータ面及び平面受光素子面のいずれか又は双方の表面粗さ(Ra)を0.5〜5.0μmにすることで、光の入射面における凹凸による正反射及び全反射を抑制できるので、シンチレータで生じた発光光のシンチレータ面−平面受光素子面間における光拡散を効果的に防止できる。
また、シンチレータ面上や平面受光素子面上に設ける光拡散防止層や反射防止層についても、それぞれ、シンチレータパネル面や平面受光素子面と接触させる面(表面)の算術表面粗さを0.5〜5.0μmとすることが、上記光拡散防止に関して複合効果が得られより好ましい。
上記光拡散防止層及び反射防止層としては、例えば、ポリパラキシレン、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン・ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素・ホルムアミド樹脂等を含むものが挙げられる。これらは一種単独でも二種以上が混合されていてもよい。上記光拡散防止層及び反射防止層は、シンチレータパネルのシンチレータ面あるいは平面受光素子面への形成が容易であり、該シンチレータの保護層としての機能も有するなどの観点から、特にCVD法(気相化学成長法)により形成されるポリパラキシレン膜であることが好ましい。なお、この場合、ポリパラキシレン膜が保護層、光拡散層、反射防止層としての役割を果たすので、必ずしも別途保護層を設ける必要はない。
光拡散防止層に色材を含有させて光透過率を調整する場合、色材としては、各波長の光の中でもより光散乱しやすい赤色の長波光を吸収するという観点から、赤色の長波光を吸収する青色の着色材が好ましく、例えば、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄)、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド、カルボニウム等が挙げられる。
<平面受光素子とカップリングしたシンチレータパネルが組み込まれた撮像パネルを含む放射線画像検出器>
以下に、本発明のシンチレータパネルの一適用例として、図4及び図5を参照しながら、シンチレータパネル10を具備した放射線画像検出器100の構成について説明する。
放射線画像検出器100において、平面受光素子とカップリングしたシンチレータパネルは、撮像パネル中に組み込まれる。
なお、図4は放射線画像検出器100の概略構成を示す一部破断斜視図である。また、図5は撮像パネル51の拡大断面図である。
図4に示す通り、放射線画像検出器100には、撮像パネル51、放射線画像検出器100の動作を制御する制御部52、書き換え可能な専用メモリ(例えばフラッシュメモリ)等を用いて撮像パネル51から出力された画像信号を記憶する記憶手段であるメモリ部53、撮像パネル51を駆動して画像信号を得るために必要とされる電力を供給する電力供給手段である電源部54等が筐体55の内部に設けられている。筐体55には必要に応じて放射線画像検出器100から外部に通信を行うための通信用のコネクタ56、放射線画像検出器100の動作を切り換えるための操作部57、放射線画像の撮影準備の完了やメモリ部53に所定量の画像信号が書き込まれたことを示す表示部58等が設けられている。
ここで、放射線画像検出器100に電源部54を設けるとともに放射線画像の画像信号を記憶するメモリ部53を設け、コネクタ56を介して放射線画像検出器100を画像転送先PCから着脱自在にすれば、放射線画像検出器100をPC設置場所に固定する必要がなくなり、持ち運びできる可搬構造とすることができる。
図5に示すように、撮像パネル51は、シンチレータパネル10と、シンチレータパネル10からの電磁波を吸収して画像信号を出力する出力基板20とから構成されている。
撮像パネル51において、シンチレータパネル10は、放射線照射面側に、蛍光体層が受光素子と接触するように配置されており、入射した放射線の強度に応じた電磁波を発光するように構成されている。
出力基板20は、シンチレータパネル10の放射線照射面と反対側の面に設けられており、シンチレータパネル10側から順に、隔膜20a、平面受光素子20b、画像信号出力層20c及び基板20dを備えている。
隔膜20aは、シンチレータパネル10と他の層(撮像パネル51では出力基板20)とを分離するためのものである。
平面受光素子20bは、透明電極21と、透明電極21を透過して入光した電磁波により励起されて電荷を発生する電荷発生層22と、透明電極21に対しての対極になる対電極23とから構成されており、それらは隔膜20a側から透明電極21、電荷発生層22、対電極23の順で配置される。
透明電極21とは、光電変換される電磁波を透過させる電極であり、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(IV)(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性透明材料からなる。
電荷発生層22は、透明電極21の隔膜20aと接触している面とは反対側の表面上に薄膜状に形成されている。電荷発生層22は、光電変換可能な化合物として光によって電荷分離する有機化合物を含有する。電荷を分離する有機化合物は、電荷を発生し得る電子供与体及び電子受容体としての導電性化合物である。電荷発生層22に放射線のような電磁波が入射されると、電子供与体が励起して電子を放出し、放出した電子が電子受容体に移動して、電荷発生層22内に電荷、すなわち、正孔と電子のキャリアが発生する。
ここで、電子供与体としての導電性化合物としては、p型導電性高分子化合物が挙げられ、p型導電性高分子化合物としては、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリ(p−フェニレン)又はポリアニリンの基本骨格を持つ化合物が好ましい。
また、電子受容体としての導電性化合物としては、n型導電性高分子化合物が挙げられ、n型導電性高分子化合物としては、ポリピリジンの基本骨格を持つ化合物が好ましく、特にポリ(p−ピリジルビニレン)の基本骨格を持つ化合物が好ましい。
電荷発生層22の膜厚は、光吸収量を確保する観点から、10nm以上、特に100nm以上が好ましく、また電気抵抗が大きくなりすぎることを防止する観点から、1μm以下、特に300nm以下が好ましい。
対電極23は、電荷発生層22の電磁波(シンチレータパネル10の蛍光体層2から生じた発光光)が入光される側の面と反対側に配置されている。対電極23は、例えば、金、銀、アルミニウム、クロムなどの一般の金属電極や、透明電極21と同様の透明電極の中から選択できるが、良好な特性を得る観点より、仕事関数の小さい(4.5eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物から選択される材料から形成される電極が好ましい。
また、電荷発生層22と各電極(透明電極21及び対電極23)との間には、電荷発生層22とこれら電極が反応しないように、緩衝地帯として作用させるためのバッファー層を設けてもよい。バッファー層は、例えば、フッ化リチウムと、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホナート)又は2,9−ジメチル4,7−ジフェニル[1,10]フェナントロリンとを用いて形成される。
画像信号出力層20cは、平面受光素子20bで得られた電荷の蓄積及び蓄積された電荷に基づく信号の出力を行うものであり、平面受光素子20bで生成された電荷を画素毎に蓄積する電荷蓄積素子であるコンデンサ24と、蓄積された電荷を信号として出力する画像信号出力素子であるトランジスタ25から構成される。
トランジスタ25としては、例えばTFT(薄膜トランジスタ)が挙げられる。このTFTは、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系TFTでも、有機半導体系TFTでもよく、プラスチックフィルム上に形成されたTFTが好ましい。プラスチックフィルム上に形成されたTFTとしては、プラスチックフィルム上に形成されたアモルファスシリコン系半導体のTFTが挙げられる。その他にも、米国Alien Technology社が開発しているFSA(Fluidic Self Assembly)技術を応用して得られるTFT、即ち、エンボス加工したプラスチックフィルム上に単結晶シリコンで形成される微小CMOS(Nanoblocks)を配列させることで得られる、フレキシブルなプラスチックフィルム上に形成されたTFTなどが挙げられる。さらに、「サイエンス(Science)」1999年、第283巻、p.822や「アプライドフィジックスレターズ(Appl. Phys. Lett.)」1998年、771488、及び「ネイチャー(Nature)」2000年、第403巻、p.521等の文献に記載されているような有機半導体を用いたTFTであってもよい。
本発明に用いられるトランジスタ25としては、上記FSA技術を応用して作製したTFT及び有機半導体を用いたTFTが好ましく、特に好ましくは有機半導体を用いたTFTである。有機半導体を用いてTFTを構成すれば、シリコンを用いてTFTを構成する場合のように真空蒸着装置等の設備が不要となり、印刷技術やインクジェット技術を活用してTFTを形成できるので、製造コストが安価となる。さらに、有機半導体を用いたTFTを用いる場合は、その加工温度を低く設定できるので、熱に弱いプラスチック基板上にも形成できる。
トランジスタ25には、平面受光素子20bで発生した電荷を蓄積するコンデンサ24とともに、コンデンサ24の一方の電極となる収集電極(図示せず)が電気的に接続されている。コンデンサ24には平面受光素子20bで生成された電荷が蓄積されるとともに、この蓄積された電荷はトランジスタ25を駆動することで読み出される。すなわちトランジスタ25を駆動させることで放射線画像の画素毎の信号を出力させることができる。
基板20dは、撮像パネル51の支持体として機能するものであり、蒸着用基板1と同様の素材で構成することが可能である。
次に、放射線画像検出器100の放射線画像を検出する機構について説明する。
まず、放射線画像検出器100に、X線などの放射線が、撮像パネル51のシンチレータパネル10側から基板20d側に向けて入射される。
放射線画像検出器100に入射された放射線は、放射線画像検出器100内のシンチレータパネル10の蛍光体層2に放射線エネルギーとして吸収され、蛍光体層2内で放射線が可視光に変換されて、蛍光体層2から放射線の強度に応じた可視光(電磁波)が発光される。発光された可視光(電磁波)のうちの一部が、出力基板20に入光され、出力基板20の隔膜20a、透明電極21を透過し、電荷発生層22に到達する。そして、電荷発生層22において、可視光(電磁波)は吸収され、吸収された可視光(電磁波)の強度に応じて、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
電荷発生層22において発生した正孔と電子は、電源部54によるバイアス電圧の印加により生じる内部電界の作用により、それぞれ異なる電極(透明電極21及び対電極23)へ運ばれ、光電流が流れる。
対電極23側に運ばれた正孔は、画像信号出力層20cのコンデンサ24に蓄積される。蓄積された正孔は、コンデンサ24に接続されているトランジスタ25を駆動させると、画像信号を出力すると共に、出力された画像信号はメモリ部53に記憶される。
上記放射線画像検出器100は、上記シンチレータパネル10を備えているので、光電変換効率が高く、放射線画像における低線量撮影時のSN比が向上しており、画像ムラや線状ノイズが発生し難い。
[シンチレータパネルの各種性能の評価方法]
<シンチレータパネルの鮮鋭性の評価方法>
管電圧を80kVpに設定したX線照射装置を用いて、X線を、鉛製のMTFチャートを通して上記シンチレータパネルの裏面(蛍光体層が形成されていない面)から照射し、CMOSフラットパネルで検出された画像データをハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の画像データの記録をコンピュータで分析して、当該ハードディスクに記録されたX線画像の変調伝達関数MTF(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を鮮鋭性の指標とした。MTFはModulation Transfer Functionの略号であり、MTF値が高いほど得られたX線画像の鮮鋭性が優れていることを示す。
以下、実施例等を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[比較例1]
(蒸着用基板Iの作製)
厚さ125μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 UPILEX−125S)支持体を用いて下記の手順にて蒸着用基板Iを形成した。
ポリエステル樹脂(東洋紡社製 バイロンGK140)を10質量部、溶剤としてシクロヘキサノン40質量部及びメチルエチルケトン(MEK)40質量部を混合し、サンドミルで分散処理してクッション層形成用塗布液を調製した。このクッション層形成用塗布液を、コンマコーターで500mm幅のポリイミドフィルム支持体上に塗工後、クッション層形成用塗布液を180℃で3分間乾燥して、樹脂層を支持体上に形成して、支持体及びクッション層からなる蒸着用基板Iを作製した。
(シンチレータパネルの作製)
上記蒸着用基板Iのクッション層側に、図3に示す蒸着装置を使用して蛍光体(CsI:TlI(0.3mol%))を蒸着させ、蛍光体層を形成した。
すなわち、まず、蒸着材料として上記蛍光体を抵抗加熱ルツボに充填し、また回転するホルダ85に蒸着用基板Iの支持体側を設置し、蒸着用基板Iと蒸着源との間隔を400mmに調節した。
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調節した後、10rpmの速度で蒸着用基板Iを回転させながら蒸着用基板Iの温度を150℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着し、蛍光体層の膜厚が50μmになったところで蒸着を終了させ、表1に示したシンチレータパネルを得た。
[実施例1〜3]
比較例1において、クッション層の膜厚を表1のように変えた以外は比較例1と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[比較例2]
実施例2において、蛍光体層の膜厚の最大値と最小値の差を表1のように変えた以外は実施例2と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[比較例3]
(蒸着用基板IIの作製)
厚さ125μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 UPILEX−125S)支持体を用いて下記の手順にて蒸着用基板IIを形成した。
バインダー樹脂としてポリエステル樹脂(東洋紡社製 バイロンGK140)、光散乱粒子としてルチル型二酸化チタン(石原産業製 CR93、平均粒子径0.28μm)を体積比で80:20の量で用いて合計40質量部、溶剤としてシクロヘキサノン30質量部及びメチルエチルケトン(MEK)30質量部を混合し、サンドミルで分散処理してクッション層形成用塗布液を調製した。このクッション層形成用塗布液を、コンマコーターで500mm幅のポリイミドフィルム支持体上に塗工後、クッション層形成用塗布液を180℃で3分間乾燥して、樹脂層を支持体上に形成して、支持体及びクッション層からなる蒸着用基板IIを作製した。
(シンチレータパネルの作製)
比較例1において、クッション層の処方を上記のように変えた以外は比較例1と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[実施例4〜6]
比較例3において、クッション層の膜厚を表1のように変えた以外は比較例3と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[実施例7及び8]
実施例5において、クッション層の樹脂/光散乱粒子の比率を表1のように変えた以外は実施例5と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[実施例9]
実施例5において、クッション層の樹脂及びクッション層の樹脂/光散乱粒子の比率を表1のように変えた以外は実施例5と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[比較例4]
(蒸着用基板IIIの作製)
厚さ500μmのアモルファスカーボン(日清紡社製)支持体をCVD装置の蒸着室に入れ、ポリパラキシリレン(パリレンC)の原料が昇華して発生した蒸気中に露出させておくことにより、蛍光体層表面が10μmの厚さのポリパラキシリレン樹脂膜で被服された蒸着用基板IIIを得た。
(シンチレータパネルの作製)
比較例1において、支持体及びクッション層の処方、膜厚を上記のように変えた以外は比較例1と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[実施例10]
比較例4において、蛍光体層の膜厚の最大値と最小値の差を表1のように変えた以外は比較例4と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[実施例11]
実施例10において、支持体を厚さ500μmのアルミニウムに変えた以外は実施例10と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[実施例12]
実施例5において、支持体表面(支持体とクッション層の間)に導電層としてアルミニウムを0.1nmの厚さで蒸着した以外は実施例5と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[実施例13]
実施例5において、導電層として支持体の裏面(蛍光体層とは反対側)にアルミニウムを0.1nmの厚さで蒸着した以外は実施例5と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
[実施例14]
実施例5において、支持体の裏面(蛍光体層とは反対側)にポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)分散液(化研産業社製)を1μmの乾燥厚となるように塗設した以外は実施例5と同様にして、表1に示したシンチレータパネルを作製した。
シンチレータパネルの評価
得られた各試験片をCMOSフラットパネル(ラドアイコン社製 X線CMOSカメラシステムShad−o−Box4KEV)にセットし、得られた12bitの出力データより、シンチレータフラットパネルを介して得られたX線画像の鮮鋭性を以下に示す方法で測定し、該鮮鋭性を以下に示す方法により評価した。
なお、CMOSフラットパネルの放射線入射窓のカーボン板とシンチレータパネルの放射線入射側(シンチレータ層が形成されていない側)にスポンジシートを配置し、シンチレータパネル面とCMOSフラットパネル内に設置されている平面受光素子面とを押し付けることでシンチレータパネルを平面受光素子に固定した。
(シンチレータパネルの画像ムラの評価方法)
上記フラットパネルにX線を照射しない状態で、カーボン板上に重さ100gの鉄球を高さ50mmから落下させることで、上記フラットパネルに振動を与えた。その時に得られた暗画像の面内のシグナルの最大値、最小値の差が、荷重を与えなかった時に得られたシグナルの面内平均値に対して10%以内であれば性能上問題無いと判断した。
(シンチレータパネルの鮮鋭性の評価方法)
管電圧を80kVpに設定したX線照射装置を用いて、X線を、鉛製のMTFチャートを通して上記シンチレータパネルの裏面(蛍光体層が形成されていない面)から照射し、CMOSフラットパネルで検出された画像データをハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の画像データの記録をコンピュータで分析して、当該ハードディスクに記録されたX線画像の変調伝達関数MTF(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を鮮鋭性の指標とした。MTFはModulation Transfer Functionの略号であり、MTF値が高いほど得られたX線画像の鮮鋭性が優れていることを示す。
Figure 0006314984
10:シンチレータパネル
1:支持体
1’:支持体
2:蛍光体層
2a:柱状蛍光体結晶
3:クッション層
4:下引層
61:中心線
62:光散乱粒子
63:バインダー樹脂
81:蒸着装置
82:真空容器
83:真空ポンプ
84:蒸着用基板
85:ホルダ
86:回転機構
87:回転軸
88(88a、88b):蒸着源
89:シャッタ
29:供給工程
39:塗布工程
49:乾燥工程
59:熱処理工程
69:回収工程
89:乾燥工程
109:製造装置
202:巻き芯に巻かれたロール状の支持体
301:バックアップロール
302:塗布ヘッド
303:減圧室
304:塗布装置
401:乾燥装置
402:導入口
403:排出口
801:乾燥装置
802:導入口
803:排出口
501:熱処理用加熱装置
502:熱処理用気体の導入口
503:排出口
601:巻き芯に巻き取られ回収されたロール状の支持体
a:搬送ロール
b:搬送ロール
c:搬送ロール
d:搬送ロール
50:蒸着装置
551:気化室
552:熱分解室
553:蒸着室
553a:導入口
553b:排出口
553c:ターンテーブル(蒸着台)
554:冷却室
555:排気系
512:保護層(ポリパラキシレン膜)の蒸着
100:放射線画像検出器
51:撮像パネル
52:制御部
53:メモリ部
54:電源部
55:筐体
56:コネクタ
57:操作部
58:表示部
20:出力基板
20a:隔膜
20b:平面受光素子
20c:画像信号出力層
20d:基板
21:透明電極
22:電荷発生層
23:対電極
24:コンデンサ
25:トランジスタ

Claims (10)

  1. 支持体と、該支持体の表面に形成されたクッション層と、該クッション層の表面に蒸着により形成された蛍光体層とをこの順に有するシンチレータパネルであって、
    該クッション層の膜厚が、該蛍光体層の膜厚の最大値と最小値の差よりも大きく、
    該蛍光体層を該支持体側から賦勢して平面受光素子に圧着させた際、該蛍光体層が該平面受光素子の表面に均一に接触するように、該クッション層上に該蛍光体層が形成されていることを特徴とするシンチレータパネル。
  2. 前記クッション層が、光反射粒子又は光吸収粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネル。
  3. 前記光反射粒子が、少なくとも二酸化チタンを含有することを特徴とする請求項2に記載のシンチレータパネル。
  4. 前記シンチレータパネルが導電性を有することを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネル。
  5. 前記支持体が、樹脂を主体として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネル。
  6. 支持体の一方の表面にクッション層を形成し、該クッション層の表面上に蒸着法により蛍光体層を形成するシンチレータパネルの製造方法であって、
    該支持体上に、該クッション層を、該蛍光体層の膜厚の最大値と最小値の差よりも大きい膜厚を有するように形成し、
    該蛍光体層を該支持体側から賦勢して平面受光素子に圧着させた際、該蛍光体層が該平面受光素子の表面に均一に接触するように、該クッション層上に該蛍光体層を形成することを特徴とするシンチレータパネルの製造方法。
  7. 前記クッション層が、光反射粒子又は光吸収粒子を含有することを特徴とする請求項6に記載のシンチレータパネルの製造方法。
  8. 前記光反射粒子が、少なくとも二酸化チタンを含有することを特徴とする請求項7に記載のシンチレータパネルの製造方法。
  9. 前記シンチレータパネルが導電性を有することを特徴とする請求項6記載のシンチレータパネルの製造方法。
  10. 前記支持体が、樹脂を主体として形成されていることを特徴とする請求項6に記載のシンチレータパネルの製造方法。
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