JP5862302B2 - 放射線画像変換パネルとそれを用いた放射線画像検出器 - Google Patents

放射線画像変換パネルとそれを用いた放射線画像検出器 Download PDF

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Description

本発明は、発光輝度の高い放射線画像変換パネルとそれを用いた放射線画像検出器に関する。
従来、X線画像のような放射線画像は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−フィルム系による放射線画像は、長い歴史のなかで高感度化と高画質化が図られた結果、高い信頼性と優れたコストパフォーマンスを併せ持った撮像システムとして、今なお、世界中の医療現場で用いられている。しかしながら、これら画像情報は、いわゆるアナログ画像情報であって、近年発展を続けているデジタル画像情報のような、自由な画像処理や瞬時の電送ができない。
そして、近年では、コンピューテッドラジオグラフィ(computed radiography:CR)やフラットパネル型の放射線ディテクタ(flat panel detector:FPD)等に代表されるデジタル方式の放射線画像検出装置が登場している。これらは、デジタルの放射線画像が直接得られ、陰極管や液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能なので、必ずしも写真フィルム上への画像形成が必要なものではない。その結果、これらのデジタル方式のX線画像検出装置は、銀塩写真方式による画像形成の必要性を低減させ、病院や診療所での診断作業の利便性を大幅に向上させている。
X線画像のデジタル技術の一つとしてコンピューテッド・ラジオグラフィ(CR)が現在医療現場で受け入れられている。しかしながら、鮮鋭性が十分でなく空間分解能も不十分であり、スクリーン・フィルムシステムの画質レベルには到達していない。そして、更に新たなデジタルX線画像技術として、例えば雑誌Physics Today,1997年11月号24頁のジョン・ローランズ論文“Amorphous Semiconductor Usher in Digital X−ray Imaging”や、雑誌SPIEの1997年32巻2頁のエル・イー・アントヌクの論文“Development of aHigh Resolution,Active Matrix,Flat−Panel Imager with Enhanced Fill Factor”等に記載された薄膜トランジスタ(TFT)を用いた平板X線検出装置(FPD)が開発されている。
放射線を可視光に変換するために、放射線により発光する特性を有するX線蛍光体で作られたシンチレータが使用されるが、低線量の撮影においてのSN比を向上するためには、発光効率の高いシンチレータを使用することが必要になってくる。一般にシンチレータの発光効率は、蛍光体層の厚さ、蛍光体のX線吸収係数によって決まるが、蛍光体層の厚さは厚くすればするほど、蛍光体層内での発光光の散乱が発生し、鮮鋭性は低下する。そのため、画質に必要な鮮鋭性を決めると、層厚が決定する。
なかでもヨウ化セシウム(CsI)は、X線から可視光に対する変更率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層の厚さを厚くすることが可能である(特許文献1参照。)。
しかし、ヨウ化セシウム(CsI)のみでは発光効率が低いために、ヨウ化セシウム(CsI)とヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものを、蒸着を用いて支持体(基板)上にナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)として堆積、又近年では、ヨウ化セシウム(CsI)とヨウ化タリウム(TlI)を任意のモル比で混合したしたものを、蒸着を用いて支持体(基板)上にタリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)として堆積したものに、200〜500℃の温度で熱処理を行うことで可視変換効率を向上させ、X線蛍光体として使用している(例えば特許文献2参照。)。
しかし、本願発明者等の検討により、賦活剤は蛍光体母体化合物と結晶構造が違うため、濃度が高くなると柱状結晶構造が乱れて鮮鋭性が劣化するという問題があることが分かった(特許文献3参照。)。
特開昭63−215987号公報 特公昭54−35060号公報 特開2009−47577号公報
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、蛍光体柱状結晶の構造の乱れを防止して、蛍光体がX線照射により発光し光電変換素子方向に伝播した光成分の散乱屈折をなくすことにより、輝度を高めた放射線画像変換パネルを提供することである。また、それを用いた放射線画像検出器を提供することである。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基板上に蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、当該蛍光体層が蛍光体母体化合物と賦活剤とからなる蛍光体柱状結晶で構成され、かつ当該蛍光体柱状結晶の(200)面のX線回折スペクトルに基づく配向度が、当該蛍光体層における蛍光体柱状結晶の基板に近い根元から先端部までの層厚方向の位置に係わらず、95〜100%の範囲内であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
.前記蛍光体柱状結晶の蛍光体母体化合物が、立方晶系のアルカリハライド蛍光体化合物であることを特徴とする前記第1項に記載の放射線画像変換パネル。
.前記蛍光体柱状結晶の蛍光体母体化合物が、ヨウ化セシウムであることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の放射線画像変換パネル。
.前記蛍光体柱状結晶が、賦活剤として、タリウムを含むことを特徴とする前記第項に記載の放射線画像変換パネル。
.前記第1項から第項までのいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルに対向して光電変換素子が配設されていることを特徴とする放射線画像検出器。
本発明の上記手段により、蛍光体柱状結晶の構造の乱れを防止して、蛍光体がX線照射により発光し光電変換素子方向に伝播した光成分の散乱屈折をなくすことにより、輝度を高めた放射線画像変換パネルを提供することができる。また、それを用いた放射線画像検出器を提供することができる。
シンチレータパネル製造装置の模式図 放射線画像検出器の構成(例)を示す概念図 基板上に形成した柱状結晶形状の一例を示す概略図 X線回折スペクトルの例 X線回折スペクトルの例
本発明の放射線画像変換パネルは、基板上に蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、当該蛍光体層が蛍光体母体化合物と賦活剤とから気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶で構成され、かつ当該蛍光体柱状結晶の一定の面指数を有する面のX線回折スペクトルに基づく配向度が、当該蛍光体層における蛍光体柱状結晶の基板に近い根元から先端部までの層厚方向の位置に係わらず、80〜100%の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記一定の面指数が、(200)であることが好ましい。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
また、本発明においては、前記蛍光体柱状結晶の蛍光体母体化合物が、立方晶系のアルカリハライド蛍光体化合物であることが好ましい。具体的には、当該蛍光体柱状結晶の蛍光体母体化合物が、ヨウ化セシウムであることが好ましい。この場合、当該蛍光体柱状結晶が、賦活剤として、タリウムを含むことが好ましい。
本発明は、輝尽性蛍光体にも適用でき、具体的には、前記蛍光体柱状結晶の蛍光体母体化合物が、臭化セシウムであることも好ましい。この場合、当該蛍光体柱状結晶が、賦活剤として、ユウロピウムを含むことが好ましい。
本発明の放射線画像変換パネルは、これに対向して光電変換素子が配設されてなる放射線画像検出器に好適に用いることができる。
なお、本願において、「一定の面指数の面のX線回折スペクトルに基づく配向度」とは、例えば、X線回折スペクトルにおけるの(200)面の強度をI200とし、他の面指数の面を含めた全体の総強度をIとしたとき、「配向度=I200/I」と定義される。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
(放射線画像変換パネルの構成)
本発明の放射線画像変換パネルは、基板上に蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、蛍光体層は蛍光体母体化合物と賦活剤とから気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶で構成され、当該蛍光体層の外に、目的に応じて、後述するような各種機能層を設けた構成とすることが好ましい。
また、本発明の放射線画像変換パネルは、第1の基板上に反射層等の機能層を介して気相堆積法により蛍光体層を設けてなる放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」ともいう。)に、第2の基板上にフォトセンサとTFT(Thin Film Transistor)又はCCD(Charge Coupled Devices)からなる画素を2次元状に配置した光電変換素子部(「平面受光素子」ともいう。)を設けてなる光電変換パネルを接着あるいは密着させることで放射線画像変換パネルとしてもよいし、基板上に平面受光素子を形成した後、直接あるいは反射層、保護層等の機能層を介して気相堆積法により蛍光体層を設けることで放射線画像変換パネルとしても良い。
以下、典型的例として、主に放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)を形成する場合の各種構成層及び構成要素等について説明するが、基板上に平面受光素子を形成した後、直接的に蛍光体層を設けることで放射線画像変換パネルとする場合も、基本的には同様である。
なお、本願において「シンチレータ」とは、α線、γ線、X線等の電離放射線を照射されたときに原子が励起されることにより発光する蛍光体をいう。すなわち、放射線を紫外・可視光に変換して放出する蛍光体をいう。ただし、後述する輝尽性蛍光体は除くものとする。一方、「輝尽性蛍光体」とは、最初の電離放射線が照射された後に、光的刺激(波長が500nm〜1μmの輝尽励起光)により、最初の電離放射線の照射量に対応した輝尽発光を示す蛍光体をいう。
(蛍光体層)
本発明に係る蛍光体層(「蛍光体層」ともいう。)には、従来公知の種々の蛍光体母体化合物を用いることができるが、当該蛍光体層の蛍光体母体化合物が、立方晶系のアルカリハライド蛍光体化合物であることが好ましい。
例えば、ヨウ化セシウム(CsI)及び臭化セシウム(CsBr)のようなハロゲン化セシウムを主成分として蛍光体層を形成することができるが、ヨウ化セシウム(CsI)を母体化合物(主成分)とする蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層であることが好ましい。蛍光体層を形成する材料としては、種々の蛍光体材料が知られているが、ヨウ化セシウム(CsI)は、X線から可視光に対する変更率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層の厚さを厚くすることが可能であることから、本発明においては、当該ヨウ化セシウム(CsI)を主成分とすることを特徴とする。
但し、CsIのみでは発光効率が低いために、各種の賦活剤が添加される。例えば、特公昭54−35060号公報の如く、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものが挙げられる。また、例えば特開2001−59899号公報に開示されているようなCsIを蒸着で、タリウム(Tl)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)などの賦活物質を含有するCsIが好ましい。本発明においては、特にタリウム(Tl)が好ましい。また、CsBrのような輝尽性蛍光体の場合は、賦活剤としてはEu等を用いることができる。
なお、本発明においては、特に、一種類以上のタリウム化合物を含む添加剤とヨウ化セシウムとを原材料とすることが好ましい。すなわち、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)は400nmから750nmまでの広い発光波長をもつことから好ましい。
本発明に係る一種類以上のタリウム化合物を含有する添加剤のタリウム化合物としては、種々のタリウム化合物(+Iと+IIIの酸化数の化合物)を使用することができる。
本発明において、好ましいタリウム化合物は、沃化タリウム(TlI)である。
また、本発明に係るタリウム化合物の融点は、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。700℃以内を超えると、柱状結晶内での添加剤が不均一に存在してしまい、発光効率が低下する。なお、本発明での融点とは、常温常圧下における融点である。
本発明に係る蛍光体層において、賦活剤の蛍光体層における相対含有量は0.1〜5モル%が好ましい。下地層における相対含有量は0.01〜1モル%が好ましく、0.1〜0.7モル%が更に好ましい。なお、賦活剤の相対含有量は、蛍光体母体化合物1モルに対する賦活剤のモル%で示される。特に、下地層には0.01モル%以上含有することが発光輝度向上及び保存性の点で重要である。本発明においては、下地層における賦活剤の相対含有量が蛍光体層における相対含有量よりも低いことが必要であり、蛍光体層における賦活剤の相対含有量に対する下地層における賦活剤の相対含有量の比((下地層における賦活剤の相対含有量)/(蛍光体層における相対含有量))は、0.1〜0.7であることが好ましい。
なお、蛍光体層(蛍光体層)の厚さは、100〜800μmであることが好ましく、120〜700μmであることが、輝度と鮮鋭性の特性をバランスよく得られる点からより好ましい。
(蛍光体柱状結晶の形成方法)
本発明に係る蛍光体層は、蛍光体母体化合物と賦活剤とから気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶で構成され、かつ当該蛍光体柱状結晶の一定の面指数を有する面のX線回折スペクトルに基づく配向度が、当該蛍光体柱状結晶の基板に近い根元から当該蛍光体層の層厚方向の位置に係わらず、80〜100%の範囲内であることを特徴とする。
本発明においては、当該配向度が、95〜100%の範囲内であることが好ましい。また、前記一定の面指数は、(100)、(110)、(111)、(200)、(211)、(220)、(311)等のうちのいずれかであり得るが、(200)であることが好ましい(当該面指数については、X線解析入門(東京化学同人)42〜46頁参照。)。
本発明に係る蛍光体柱状結晶は、気相堆積法により形成することを要する。気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法その他を用いることができるが、本発明では特に蒸着法が好ましい。
本発明においては、当該蛍光体層が蛍光体母体化合物と賦活剤とからなる蛍光体から構成され、そして基板(支持体)と当該蛍光体層との間に、当該蛍光体母体化合物と賦活剤からなり、相対密度が当該蛍光体層の相対密度よりも低く、かつ賦活剤の相対含有量が該蛍光体層の相対含有量よりも低い値を示す下地層が設けられていることが好ましい。
また、本発明に係る蛍光体柱状結晶の形成方法としては、上記面指数についての要件を満たすために、基板の表面に、賦活剤の相対含有量が当該蛍光体層の相対含有量よりも低い値を示す下地層を形成する工程、及び当該下地層の表面に当該蛍光体を気相堆積法により堆積させることにより、下地層よりも相対密度が高い蛍光体層を形成する工程を含む態様の製造方法であることが好ましい。
また、下地層の存在によって蛍光体層の柱状結晶性が良好になり、発光量が増加して、変換パネルの輝度も向上し、かつ保存性も向上する。
本発明に係る特徴的な要件である下地層は、賦活剤の相対含有量が該蛍光体層の相対含有量よりも低い値を示す下地層である。
本発明においては、下地層の相対密度が蛍光体層の相対密度よりも低いことが必要であり、蛍光体層の相対密度に対する下地層の相対密度の比((下地層の相対密度)/(蛍光体層の相対密度))は、0.92〜0.98であることが好ましい。
なお、本願において、相対密度(%)とは、蛍光体固有の密度(g/cm)に対する各層(下地層又は蛍光体層)の実際の密度(g/cm)の相対値(百分率)を意味する。
下地層の層厚は、蛍光体層の層厚に対して下記関係式を満足することが望ましい。例えば、蛍光体層の層厚が層厚、500μmであるとき、下地層の層厚は5μmより大きく、250μmより小さいことが望ましい。
関係式:0.01<(下地層の層厚/蛍光体層の層厚)<0.5
本発明においては、下地層も、蛍光体層と同様に気相堆積法により形成することが好ましい。蒸着法等の気相堆積法により形成した場合に、下地層は一般に直径数μmの球状結晶の凝集体からなるか、あるいは柱状結晶構造を有している。
〈配向度の決定方法〉
配向度の決定には、X線回折(XRD)を用いた。X線回折は、特定波長の固有X線を結晶性物質に照射し、Braggの式を満足する回折が起こることを利用して、物質の同定、結晶相の構造などに関する知見を得ることのできる汎用性の高い分析手法である。照射系のターゲットはCu、Fe、Coなどが用いられ、装置能力によるが、一般的に照射時の出力は0〜50mA、0〜50kV程度である。
XRDで測定するサンプルの大きさは、XRD装置の能力によるが、一般的に少なくとも5mm×5mmの大きさがあることが好ましい。作製したサンプルはXRDで層厚方向の面指数を測定するため、サンプルを層厚方向に切削する必要がある。サンプルの切削を行うには、例えばサンプルを樹脂包埋する。先ず、樹脂包埋されたサンプル表面のXRD測定を行い、入射角2θが10〜100°までの蛍光体層各面指数の回折強度を得る。
次に、ダイヤモンドナイフ、ガラスナイフ等を用いて切削を行い、サンプルを所望の層厚とし、XRD測定を行う。これを繰り返す。例えば、各層厚で得られた各面指数全体の総強度Iの中の(200)面の強度I200の割合を算出し、「(200)配向度」とした。
(反射層)
本発明においては、支持体(基板)上には反射層(「金属反射層」ともいう。)を設けてもよい。当該反射層は、蛍光体(シンチレータ)から発した光を反射して、光の取り出し効率を高めるためのものである。当該反射層は、Al,Ag,Cr,Cu,Ni,Ti,Mg,Rh,Pt及びAuからなる元素群の中から選ばれるいずれかの元素を含む材料により形成されることが好ましい。
特に、上記の元素からなる金属薄膜、例えば、Ag膜、Al膜などを用いることが好ましい。また、このような金属薄膜を二層以上形成するようにしても良い。なお、反射層の厚さは、0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.2μmであることが、発光光取り出し効率の観点から好ましい。
本発明に係る反射層の形成方法は既知のいかなる方法でも構わないが、例えば、上記原材料を使用したスパッタ処理が挙げられる。
(金属保護層)
本発明に係る放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」ともいう。)においては、上記反射層の上に金属保護層をもうけてもよい。
金属保護層は、溶剤に溶解した樹脂を塗布、乾燥して形成することが好ましい。ガラス転移点が30〜100℃のポリマーであることが蒸着結晶と支持体(基板)との膜付の点で好ましく、具体的には、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられるが、特にポリエステル樹脂であることが好ましい。
金属保護層の膜厚としては接着性の点で0.1μm以上が好ましく、金属保護層表面の平滑性確保の点で3.0μm以下が好ましい。より好ましくは金属保護層の厚さが0.2〜2.5μmの範囲である。
金属保護層作製に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル、及びそれらの混合物を挙げることができる。
(下引き層)
本発明においては、支持体(基板)と下地層の間、又は反射層と下地層の間に膜付の観点から、下引き層を設けても良い。当該下引き層は、高分子結合材(バインダー)、分散剤等を含有することが好ましい。なお、下引き層の厚さは、0.5〜4μmが好ましい。以下、下引き層の構成要素について説明する。
〈高分子結合材〉
本発明に係る下引き層は、溶剤に溶解又は分散した高分子結合材(以下「バインダー」ともいう。)を塗布、乾燥して形成することが好ましい。高分子結合材としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロースを使用することが好ましい。
本発明に係る高分子結合材としては、特に蛍光体層との密着の点でポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロースなどが好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)が30〜100℃のポリマーであることが、蒸着結晶と支持体(基板)との膜付の点で好ましい。この観点からは、特にポリエステル樹脂であることが好ましい。
下引き層の調製に用いることができる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
なお、本発明に係る下引き層には、蛍光体(シンチレータ)が発光する光の散乱の防止し、鮮鋭性等を向上させるために顔料や染料を含有させても良い。
(保護層)
本発明に係る保護層は、蛍光体層の保護を主眼とするものである。すなわち、ヨウ化セシウム(CsI)は、吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを主眼とする。
当該保護層は、種々の材料を用いて形成することができる。例えば、CVD法によりポリパラキシリレン膜を形成する。即ち、蛍光体(シンチレータ)及び支持体(基板)の表面全体にポリパラキシリレン膜を形成し、保護層とすることができる。
また、別の態様の保護層として、蛍光体層上に高分子フィルムを設けることもできる。なお、高分子フィルムの材料としては、後述する支持体(基板)材料としての高分子フィルムと同様のフィルムを用いることができる。
上記高分子フィルムの厚さは、空隙部の形成性、蛍光体層の保護性、鮮鋭性、防湿性、作業性等を考慮し、12μm以上、120μm以下が好ましく、更には20μm以上、80μm以下が好ましい。また、ヘイズ率は、鮮鋭性、放射線画像ムラ、製造安定性及び作業性等を考慮し、3%以上、40%以下が好ましく、更には3%以上、10%以下が好ましい。ヘイズ率は、例えば、日本電色工業株式会社NDH5000Wにより測定できる。必要とするヘイズ率は、市販されている高分子フィルムから適宜選択し、容易に入手することが可能である。
保護フィルムの光透過率は、光電変換効率、蛍光体(シンチレータ)発光波長等を考慮し、550nmで70%以上あることが好ましいが、99%以上の光透過率のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に99%〜70%が好ましい。
保護フィルムの透湿度は、蛍光体層の保護性、潮解性等を考慮し50g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には10g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましいが、0.01g/m・day(40℃・90%RH)以下の透湿度のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に、0.01g/m・day(40℃・90%RH)以上、50g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には0.1g/m・day(40℃・90%RH)以上、10g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましい。
(支持体:基板)
本発明においては、支持体(「基板」ともいう。)としては、石英ガラスシート、アルミニウム、鉄、スズ、クロムなどからなる金属シート、炭素繊維強化シート、高分子フィルムなどが好ましい。
高分子フィルムとしては、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PEN)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミド(PI)フィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、炭素繊維強化樹脂シート等の高分子フィルム(プラスチックフィルム)を用いることができる。特に、ポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが、ヨウ化セシウムを原材料として気相法にて蛍光体柱状結晶を形成する場合に、好適である。
なお、本発明に係る支持体(基板)としての高分子フィルムは、厚さ50〜500μmであること、更に可とう性を有する高分子フィルムであることが好ましい。
ここで、「可とう性を有する支持体(基板)」とは、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mmである支持体(基板)をいい、かかる支持体(基板)としてポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが好ましい。
なお、「弾性率」とは、引張試験機を用い、JIS C 2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これがヤング率と呼ばれる値であり、本発明では、かかるヤング率を弾性率と定義する。
本発明に用いられる支持体(基板)は、上記のように120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mmであることが好ましい。より好ましくは1200〜5000N/mmである。
具体的には、ポリエチレンナフタレート(E120=4100N/mm)、ポリエチレンテレフタレート(E120=1500N/mm)、ポリブチレンナフタレート(E120=1600N/mm)、ポリカーボネート(E120=1700N/mm)、シンジオタクチックポリスチレン(E120=2200N/mm)、ポリエーテルイミド(E120=1900N/mm)、ポリイミド(E120=1200N/mm)、ポリアリレート(E120=1700N/mm)、ポリスルホン(E120=1800N/mm)、ポリエーテルスルホン(E120=1700N/mm)等からなる高分子フィルムが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく積層あるいは混合して用いてもよい。中でも、特に好ましい高分子フィルムとしては、上述のように、ポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが好ましい。
なお、放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」ともいう。)と平面受光素子面を貼り合せる際に、支持体(基板)の変形や蒸着時の反りなどの影響を受け、フラットパネルディテクタの受光面内で均一な画質特性が得られないという点に関して、当該支持体(基板)を、厚さ50〜500μmの高分子フィルムとすることで放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」ともいう。)が平面受光素子面形状に合った形状に変形し、フラットパネルディテクタの受光面全体で均一な鮮鋭性が得られる。
また、支持体は、その表面を平滑な面とするために樹脂層を有していてもよい。樹脂層は、ポリイミド、ポリエチレンフタレート、パラフィン、グラファイトなどの化合物を含有することが好ましく、その膜厚は、約5μm〜50μmであることが好ましい。この樹脂層は、支持体の表面に設けてもよく、裏面に設けてもよい。
また、支持体の表面に接着層を設ける手段としては、貼合法、塗設法などの手段がある。このうち貼合法は加熱、加圧ローラを用いて行い、加熱条件は約80〜150℃、加圧条件は4.90×10〜2.94×10N/cm、搬送速度は0.1〜2.0m/sが好ましい。
(放射線画像変換パネルの製造方法)
本発明に係る放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」ともいう。)の製造方法は、真空容器内に蒸発源及び支持体回転機構を有する蒸着装置を用いて、支持体を前記支持体回転機構に設置して、当該支持体を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成する態様の製造方法であることが好ましい。
以下、本発明の実施形態について、図1を参照しながら説明する。
〈放射線画像変換パネルの製造装置〉
図1は、本発明に係る放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)の製造装置1の概略構成図である。図1に示すように、放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)の製造装置1は真空容器2を備えており、真空容器2には真空容器2の内部の排気及び大気の導入を行う真空ポンプ3が備えられている。
真空容器2の内部の上面付近には、支持体4を保持する支持体ホルダ5が設けられている。
支持体4の表面には、蛍光体層が気相堆積法によって形成される。気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法その他を用いることができるが、本発明では特に蒸着法が好ましい。
支持体ホルダ5は、支持体4のうち前記蛍光体層を形成する面が真空容器2の底面に対向し、かつ、真空容器2の底面と平行となるように支持体4を保持する構成となっている。
また、支持体ホルダ5には、支持体4を加熱する加熱ヒータ(図示せず)を備えることが好ましい。この加熱ヒータで支持体4を加熱することによって、支持体4の支持体ホルダ5に対する密着性の強化や、前記蛍光体層の膜質調整を行う。また、支持体4の表面の吸着物を離脱・除去し、支持体4の表面と前記蛍光体との間に不純物層が発生することを防止する。
また、加熱手段として温媒又は熱媒を循環させるための機構(図示せず)を有していてもよい。この手段は蛍光体の蒸着時における支持体4の温度を50〜150℃といった比較的低温に保持して蒸着する場合に適している。
また、加熱手段としてハロゲンランプ(図示せず)を有していてもよい。この手段は蛍光体の蒸着時における支持体4の温度を150℃以上といった比較的高温に保持して蒸着する場合に適している。
さらに、支持体ホルダ5には、支持体4を水平方向に回転させる支持体回転機構6が設けられている。支持体回転機構6は、支持体ホルダ5を支持すると共に支持体4を回転させる支持体回転軸7及び真空容器2の外部に配置されて支持体回転軸7の駆動源となるモータ(図示せず)から構成されている。
また、真空容器2の内部の底面付近には、支持体4に垂直な中心線を中心とした円の円周上の互いに向かい合う位置に蒸発源8a,8bが配置されている。この場合において、支持体4と蒸発源8a,8bとの間隔は100〜1500mmとされるのが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。また、支持体4に垂直な中心線と蒸発源8a,8bとの間隔は100〜1500mmとされるのが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。
なお、本発明に係る放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)製造装置においては三個以上の多数の蒸発源を設けることも可能であり、各々の蒸発源は等間隔に配置してもよく、間隔を変えて配置してもよい。また、支持体4に垂直な中心線を中心とした円の半径は任意に定めることができる。
蒸発源8a,8bは、前記蛍光体を収容して抵抗加熱法で加熱するため、ヒータを巻いたアルミナ製のるつぼから構成しても良いし、ボートや、高融点金属からなるヒータから構成しても良い。また、前記蛍光体を加熱する方法は、抵抗加熱法以外に電子ビームによる加熱や、高周波誘導による加熱等の方法でも良いが、本発明では比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、非常に多くの物質に適用可能である点から直接電流を流し抵抗加熱する方法や、周りのヒーターでるつぼを間接的に抵抗加熱する方法が好ましい。また、蒸発源8a,8bは分子源エピタキシャル法による分子線源でも良い。
また、蒸発源8a,8bと支持体4との間には、蒸発源8a,8bから支持体4に至る空間を遮断するシャッタ9が水平方向に開閉自在に設けられており、このシャッタ9によって、蒸発源8a,8bにおいて前記蛍光体の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着の初期段階で蒸発し、支持体4に付着するのを防ぐことができるようになっている。
〈放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)の製造方法〉
次に、上述の放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)製造装置1を用いた本発明の放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)の製造方法について説明する。
まず、支持体ホルダ5に支持体4を取付ける。また、真空容器2の底面付近において、支持体4に垂直な中心線を中心とした円の円周上に蒸発源8a,8bを配置する。この場合において、支持体4と蒸発源8a,8bとの間隔は100〜1500mmとされるのが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。また、支持体4に垂直な中心線と蒸発源8a,8bとの間隔は100〜1500mmとされるのが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。
次いで、真空容器2の内部を真空排気し、1×10−2〜10Pa程度の中真空度にする。好ましくは1×10−2〜1Paの真空度にする。更に好ましくは、装置内を排気して1×10−5〜1×10−2Pa程度の高真空度とした後、Arガス、Neガス、Nガスなどの不活性ガスを導入して上記中真空度にする。
その後、支持体回転機構6により支持体ホルダ5を蒸発源8a,8bに対して回転させ、加熱した蒸発源8a,8bから前記蛍光体を蒸発させて、支持体4の表面に前記蛍光体を所望の厚さに成長させる。これにより、装置内の水分圧や酸素分圧等を下げることができる。排気装置としては、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、ディフュージョンポンプ、メカニカルブースタ等を適宜組み合わせて用いることができる。
なお、支持体4の表面に前記蛍光体を成長させる工程を複数回に分けて行って前記蛍光体層を形成することも可能である。
また、蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて、被蒸着体(支持体4、保護層又は中間層)を冷却あるいは加熱しても良い。
さらに、蒸着終了後、前記蛍光体層を加熱処理しても良い。また、蒸着法においては必要に応じてO、Hなどのガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行っても良い。
形成する前記蛍光体層の膜厚は、放射線画像変換パネルの使用目的により、また前記蛍光体の種類により異なるが、本発明の効果を得る観点から50〜2000μmであり、好ましくは50〜1000μmであり、さらに好ましくは100〜800μmである。
また、前記蛍光体層が形成される支持体4の温度は、室温(rt)〜300℃に設定することが好ましく、さらに好ましくは50〜250℃である。
蛍光体層を複数層で形成する場合は、第1の蛍光体層(下地層)が形成される支持体4の温度は80℃以下に設定されるのが好ましく、更に好ましくは室温(rt)〜80℃に設定されるのが好ましい。第2の蛍光体層(下地層上の蛍光体層)が形成される支持体4の温度は150〜250℃に設定されるのが好ましい。
以上のようにして、前記蛍光体層を形成した後、必要に応じて、前記蛍光体層の支持体4とは反対の側の面に、物理的にあるいは化学的に前記蛍光体層を保護するための保護層を設けてもよい。保護層は、保護層用の塗布液を前記蛍光体層の表面に直接塗布して形成してもよく、また、予め別途形成した保護層を前記蛍光体層に接着してもよい。これらの保護層の層厚は0.1μm〜2000μmが好ましい。
また、保護層は蒸着法、スパッタリング法などにより、SiC、SiO、SiN、Alなどの無機物質を積層して形成してもよい。
本発明においては、保護層の外に、上記の各種機能層を設けることが好ましい。
以上の放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)の製造装置1又は製造方法によれば、複数の蒸発源8a,8bを設けることによって蒸発源8a,8bの蒸気流が重なり合う部分が整流化され、支持体4の表面に蒸着する前記蛍光体の結晶性を均一にすることができる。このとき、多数の蒸発源を設けるほど多くの箇所で蒸気流が整流化されるため、より広範囲において前記蛍光体の結晶性を均一にすることができる。また、蒸発源8a,8bを支持体4に垂直な中心線を中心とした円の円周上に配置することによって、蒸気流の整流化によって結晶性が均一になるという作用を、支持体4の表面において等方的に得ることができる。
また、支持体回転機構6によって支持体4を回転しながら前記蛍光体の蒸着を行うことによって、支持体4の表面に均一に前記蛍光体を蒸着させることができる。
以上述べたように、本発明に係る放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)製造装置1又は製造方法によれば、支持体4の表面において、前記蛍光体の結晶性が均一となるように前記蛍光体層を成長させることによって、前記蛍光体層の感度ムラを低下させ、本発明に係る放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)を用いた放射線画像変換パネルから得られる放射線画像の鮮鋭性を向上させることができる。
また、支持体4に蒸着する前記蛍光体の入射角を所定の範囲に制限して輝尽性蛍光体の入射角のばらつきを防ぐことによって、蛍光体の結晶性をより均一にして、放射線画像変換パネルから得られる放射線画像の鮮鋭性を向上させることができる。
なお、以上は、支持体ホルダ5が支持体回転機構6を備える場合について説明したが、本発明は必ずしもこれに限らず、支持体ホルダ5が支持体4を保持して静止した状態で蒸着を行う場合や、支持体4を蒸発源8a,8bに対して水平方向に移動させることによって蒸発源8a,8bからの前記蛍光体を蒸着させる場合などにおいても適用可能である。
(放射線画像検出器)
本発明に係る放射線画像検出器は、第1の基板上に反射層等の機能層を介して気相堆積法により蛍光体層を設けてなる放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)に、第2の基板上にフォトセンサとTFT(Thin Film Transistor)又はCCD(Charge Coupled Devices)からなる画素を2次元状に配置した光電変換素子部(「平面受光素子」)を設けてなる光電変換パネルを接着あるいは密着させることで放射線画像検出器としてもよいし(図2参照)、基板上にフォトセンサとTFT又はCCDからなる画素を2次元状に配置した光電変換素子部を形成した後、直接あるいは反射層、保護層等の機能層を介して気相堆積法により蛍光体層を設けることで放射線画像検出器としても良い。
すなわち、本発明の放射線画像検出器は、基本的構成として、蛍光体層と2次元状に複数の受光画素が配置された受光素子(以下「平面受光素子」という。)を備えた態様の放射線画像検出器であることを要する。これにより、平面受光素子面が蛍光体層からの発光を電荷に変換することで画像をデジタルデータ化することが可能となる。
なお、本発明に係る平面受光素子の蛍光体層に対向する最表面の表面平均粗さ(Ra)は、0.001〜0.5μmであることが好ましい。このため、ガラス表面に受光素子を形成後、表面にポリエステルやアクリルと言った有機樹脂膜を形成し、フォトエッチング法により表面粗さを制御することにより当該要件を満たすように調整することが好ましい。平面受光素子の表面平均粗さ(Ra)は0.001〜0.1μmであることが好ましく、0.001〜0.05μmであることがより好ましい。
本発明の放射線画像検出器は、放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)が、平面受光素子に弾力部材(例えば、スポンジ、バネ等)により押しつけられ密着している態様であることが好ましい。また、放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)が、当該放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)と前記平面受光素子との間隙の気体の減圧により、当該平面受光素子に密着し、かつ周辺を密着シール部材でシールされている態様であることも好ましい。当該密着シール部材が、紫外線硬化型樹脂であることが好ましい。
更に、当該放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」)が蛍光体層を有し、かつ当該蛍光体層が平面受光素子に直接的に密着している態様であることも好ましい。
紫外線硬化型樹脂としては特に制限はなく、従来から使用されているものの中から、適宜選択して用いることができる。この紫外線硬化型樹脂は、光重合性プレポリマー、又は光重合性モノマー、光重合開始剤や光増感剤を含有するものである。
前記光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等が挙げられる。これらの光重合性プレポリマーは一種用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。また,光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明においては、プレポリマーとしてウレタンアクリレート系、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されるものではない。
<実施例>
(蛍光体層の形成)
基板の保護層側に蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)及び賦活剤(TlI)を図1に示した蒸着装置を使用して蒸着させ、次のように蛍光体層(蛍光体層)を形成した。
まず、蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)を二つの抵抗加熱るつぼに、賦活剤(TlI)を一つの抵抗加熱るつぼに充填し、また、回転する基板ホルダの金属製の枠に基板を設置し、基板と蒸発源との間隔を400mmに調節した。
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、6rpmの速度で基板を回転させた。この時、基板の温度を20℃とした。次いで、蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)の抵抗加熱るつぼ一つを加熱して蛍光体を蒸着し、第1層(第1の蛍光体層:下地層)を10μm形成した。この時、基板の温度は40℃であった。次に基板の加熱を開始し、基板温度が200℃に達した後は200℃を保持した。次にもう一つの蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)と賦活剤(TlI)の抵抗加熱るつぼの蒸発を開始した。この時、蛍光体母体化合物は第1層目の10倍の蒸着速度で蒸発を開始した。賦活剤の蒸発速度は、第2層(第2の蛍光体層)終了時の蒸発速度が開始時の1/2となるように調整した。蛍光体層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了させ、基板上に蛍光体層(CsI:0.003Tl;Tlが0.3モル%)が形成された放射線画像変換パネルを得た。
<比較例>
(蛍光体層の形成)
基板の保護層側に蛍光体化合物(CsI:賦活剤TlI)を図1に示した蒸着装置を使用して蒸着させ、次のように蛍光体層を形成した。
まず、蛍光体化合物(CsI:賦活剤TlI)を抵抗加熱るつぼに充填し、また、回転する基板ホルダの金属製の枠に基板を設置し、基板と蒸発源との間隔を400mmに調節した。
続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、6rpmの速度で基板を回転させた。この時、基板の温度を200℃とした。次いで、蛍光体化合物(CsI:TlI)の抵抗加熱るつぼを加熱して蛍光体を蒸着し、蛍光体層の層厚が400μmとなったところで蒸着を終了させ、基板上に蛍光体層(CsI:0.003Tl;Tlが0.3モル%)が形成された放射線画像変換パネルを得た。
(XRDの測定方法)
作製した放射線変換パネルを樹脂包埋し、次のように蛍光体層の層厚方向における配向をXRD測定によって測定した。XRD測定にはPANalytical製X’Pert PRO MPD(照射系:ターゲットCu、出力40mA、45kV)を用いた。
まず、蛍光体層の基板側のXRD測定を行った。次に、層厚を測定しながらダイヤモンドナイフで層厚方向に所定の層厚になるまで切削し、その層厚部における配向をXRDにて測定した。これを蛍光体層の基板から最も遠い側の結晶面(先端部)を測定するまで6点測定した(図3〜図5参照)。この結果より、各測定点における(200)配向度を算出した。
(発光輝度の測定)
放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」ともいう。)を、10cm×10cmの大きさのCMOSフラットパネル(ラドアイコン社製X線CMOSカメラシステムShad−o−Box 4KEV)にセットして放射線画像検出器として、管電圧80kVpのX線を各試料の裏面(蛍光体層が形成されていない面)から照射し、測定カウント値を発光輝度(感度)とした。ただし、比較例の放射線画像変換パネル(「シンチレータパネル」ともいう。)の発光輝度を1.0とする相対値で表す。
上記評価結果を表1に示す。
表1に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例においては、発光輝度を大幅に上昇することが分かる。
1 シンチレータパネルの製造装置
2 真空容器
3 真空ポンプ
4 支持体
5 支持体ホルダ
6 支持体回転機構
7 支持体回転軸
8 蒸発源
9 シャッタ
A 放射線画像検出器
1A 回路基板
2A 光電変換素子アレイ
3A 保護膜
4A 蛍光体層
5A 下引き層
6A 光反射層
7A 支持体
1B 基板
2B 蛍光体柱状結晶

Claims (5)

  1. 基板上に蛍光体層を有する放射線画像変換パネルであって、当該蛍光体層が蛍光体母体化合物と賦活剤とからなる蛍光体柱状結晶で構成され、かつ当該蛍光体柱状結晶の(200)面のX線回折スペクトルに基づく(200)配向度が、当該蛍光体層における蛍光体柱状結晶の基板に近い根元から先端部までの層厚方向の位置に係わらず、95〜100%の範囲内であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
  2. 前記蛍光体柱状結晶の蛍光体母体化合物が、立方晶系のアルカリハライド蛍光体化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
  3. 前記蛍光体柱状結晶の蛍光体母体化合物が、ヨウ化セシウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線画像変換パネル。
  4. 前記蛍光体柱状結晶が、賦活剤として、タリウムを含むことを特徴とする請求項3に記載の放射線画像変換パネル。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルに対向して光電変換素子が配設されていることを特徴とする放射線画像検出器。
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