JP6354484B2 - 放射線画像変換パネル - Google Patents

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Description

本発明は、放射線画像変換パネルに関する。
コンピューテッド・ラジオグラフィー(CR:computed radiography)やフラット・パネル・ディテクター(FPD:flat panel detector)等に代表されるデジタル方式の放射線画像検出器は、デジタルの放射線画像が直接得られ、陰極管や液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能であることから、病院及び診療所等での画像診断に広く用いられている。最近は薄膜トランジスタ(TFT:thin-film transistor)や電荷結合素子(CCD:charge-coupled device)を組み合わせて用いたFPDが普及しつつある。
上記FPDは、TFTやCCD等の受光素子が二次元に配置されているセンサーパネル(平面受光素子)と、放射線を受光素子で検出可能な光に変換するための蛍光体層を支持体に形成した放射線画像変換パネルによって構成されている。最近では蛍光体層を多層構成化することでさらなる高機能化が試みられている。
例えば、特許文献1には、センサーパネルと、該センサーパネル上に形成された蛍光体層とからなる放射線画像変換パネルであって、該蛍光体層が、蛍光体が柱状に成長してなる柱状結晶の群によって形成された柱状部と非柱状部とを有し、該非柱状部がセンサーパネルに密着し、その上に柱状部が結晶成長方向に向かって形成された構造を有する放射線画像変換パネルが記載されている。
特許文献2には、支持体と、該支持体上に形成された蛍光体層とからなる放射線画像変換パネルであって、該蛍光体層が蛍光体の結晶が柱状に積層した複数の柱状結晶によって構成され、該柱状結晶が、支持体に固定される根元側に柱状構造を有し、その上に螺旋構造を形成した構造を有する放射線画像変換パネルが記載されている。
特許文献3には、支持体と、該支持体上に蛍光体柱状結晶で構成された蛍光体層とからなる放射線画像変換パネルであって、該蛍光体柱状結晶の面指数(200)のX線回折法による配向度が80〜100%である放射線画像変換パネルが記載されている。
特許文献1及び2は蛍光体層の下層に拡散反射層の役割を付与した例であるが、一部が非晶質化するなどして輝度が低下したり、続いて成長する上層の柱状結晶の結晶性や結晶径分布に影響を及ぼすことがわかってきた。
一方、特許文献3ではX線回折による面指数を膜厚方向のどの位置でも(200)に配向させた例が記載されているが、輝度、MTFなどの特性や特に膜付きに大きく影響する結晶成長極初期の結晶状態に関しては言及されていない。試料の有効厚さが比較的大きく、厚さ方向10μm程度の位置におけるX線回折の平均による評価では、重要な結晶成長極初期の状態を十分に把握できていなかった。この結晶成長極初期の部分をコントロールする技術が重要であり、その必要性が高まっている。
特許第5286437号公報 特開2011−27569号公報 国際公開第2011/89946号公報
本発明は、良好な膜付き性を維持しながら、輝度、鮮鋭性等の特性を兼ね備えた放射線画像変換パネルを提供することを課題とする。
本発明は、以下の事項からなる。
本発明の放射線画像変換パネルは、支持体と、気相堆積法により設けられた、アルカリハライドを主成分とする蛍光体層とを有し、該蛍光体層が、複数の蛍光体柱状結晶から構成される複数のドメインを含み、該ドメインは、略同一の結晶方位を持つ単独の蛍光体柱状結晶又は蛍光体柱状結晶の集合であり、かつ0.2〜10μmの平均径を有し、該蛍光体柱状結晶が、結晶成長開始の根元部分から結晶質であることを特徴とする。
前記蛍光体層中、蛍光体柱状結晶の結晶成長開始の根元部分から50μmまでの膜厚範囲内における、前記ドメインの平均径は0.3〜3μmであり、変動係数は50%以下であることが好ましい。
前記蛍光体層中、蛍光体柱状結晶の結晶成長開始の根元部分から50μmまでの膜厚範囲内における、結晶成長方向に対し垂直な断面における蛍光体全投影面積の60%以上において、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)を用いた結晶方位解析による(200)結晶方位は10°以内であることが好ましい。
前記アルカリハライドは立方晶系アルカリハライドであることが好ましい。
前記立方晶系アルカリハライドは、ヨウ化セシウムであることが好ましい。
前記蛍光体柱状結晶は、さらに賦活剤であるタリウム化合物を含むことが好ましい。
前記支持体と蛍光体層との間に、さらに下引き層を有することが好ましい。
本発明の放射線画像変換パネルは、柱状結晶の根元部分から結晶質である蛍光体層を有し、蛍光体等と支持体との密着性、すなわち膜付き性を良好に維持することができる。
このため、本発明によれば、輝度及び鮮鋭性に優れた放射線画像変換パネルを提供することができる。
本発明に用いられる蒸着装置の一例の概略構成を示す断面図である。 本発明の放射線画像変換パネルの一態様を示す断面図である。 蒸着用基板上に形成した蛍光体柱状結晶の形状を表す模式図である。 蛍光体層の結晶成長方向に対して平行な断面のEBSP測定結果(Image Quality map)である。を示す図である。 蛍光体層の結晶成長方向に対して垂直な断面のEBSP測定結果(Image Quality map)である。 蛍光体層の結晶成長方向に対して垂直な断面のEBSP測定結果(Inverse Pole Figure map:ND)である。 蛍光体層の結晶成長方向に対して垂直な断面のEBSP測定結果に基づく結晶方位差分布を示すグラフである。 蛍光体層の結晶成長方向に対して垂直な断面のEBSP測定結果Inverse Pole Figure map:RD)である。
本発明の放射線画像変換パネルについて具体的に説明する。なお、本明細書において、放射線画像変換パネルは「シンチレータパネル」ともいう。
<支持体>
本発明において支持体とは、放射線画像変換パネルの構成要素において、蛍光体層を保持するために、支配的な役割を果たす部材を指す。
前記支持体には、X線等の放射線を透過させることが可能であり、蛍光体層を担持することが可能なものであれば、特に制限されることなく、種々の材料を使用することができる。
本発明の支持体を構成する前記材料としては、例えば、(1)炭素繊維強化プラスチック(CFRP:carbon fiber reinforced plastics)、(2)カーボン(アモルファスカーボン、木炭及び紙を炭化処理して固めたもの等)、(3)プラスチック、(4)ガラス、(5)金属、(6)複合材料、及び(7)該(1)〜(6)の材料を薄く形成し発泡樹脂でサンドイッチしたもの等を使用することができる。これらは単独で用いても積層して用いてもよい。
本発明ではこれらのうち、前記(3)のプラスチックである樹脂フィルムを用いることが好ましい。樹脂フィルムを用いることにより、(i)後述するその他の層、例えば、反射層、導電層及び易接着層等の機能層を、ロール・ツー・ロール(roll to roll)で加工することができる、(ii)蛍光体を蒸着する前、又は蛍光体を蒸着した後に、製品サイズに容易に断裁することができる、(iii)シンチレータパネルとセンサーパネル(平面受光素子)をカップリングする際、柔軟性があるためセンサーパネルとの密着性に優れる、等の利点を有するようになる。
前記樹脂フィルムには、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルロースアセテート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド、ビスマレイミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、アラミド、ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー及び炭素繊維強化樹脂等のシートが挙げられる。これらのポリマー又は樹脂は単独で用いてもよいし、複数種を積層して用いてもよいが、支持体上に蛍光体を蒸着する際、熱によって支持体が変形しないよう、支持体のガラス転移点は100℃以上であることが好ましいため、ポリイミドが特に好ましい。
支持体の膜厚は、通常20μm〜3mmであり、好ましくは20〜1000μm、より好ましくは50〜750μmである。支持体の膜厚が前記範囲内であると、センサーパネルとシンチレータパネルとを接合する際に、蛍光体層の膜厚分布に合わせて支持体を柔軟に湾曲することができ、センサーパネルと蛍光体層とを密着させることができる。特に、支持体の膜厚を20μm以上にすることで、蛍光体層を形成した後のハンドリング性が良好となる。また、支持体の膜厚を3mm以下にすることで、反射層、導電層及び易接着層等の機能層を、ロール・ツー・ロール(roll to roll)で加工することが容易となり、生産性向上の観点から、非常に有用である。
本発明で使用する支持体は通常可撓性を有している。「可撓性」とは、曲げたり、撓みを持たせることができる性質をいい、「可撓性を有する支持体」とは、弾性率が0.1〜20GPaの支持体をいう。
なお、本発明において「弾性率」とは、引張試験機を用い、JIS C 2318に準拠した試験片の標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これがヤング率と呼ばれる値であり、本発明では、特に限定しない限り、このヤング率を以て弾性率と定義する。
また、本明細書では、「可撓性を有する支持体」のうち、10GPa以上のものを剛性板という。剛性板には、例えば、金属、ガラス、カーボン及び複合材料等が挙げられる。
前記支持体は、特に制約なく使用することができる。
<蛍光体層>
本発明では、アルカリハライドを主成分とする蛍光体層が用いられる。「アルカリハライドを主成分とする」とは、アルカリハライドを蛍光体母体化合物とすることをいう。
アルカリハライドとしては、例えば、ヨウ化セシウム(CsI)及び臭化セシウム(CsBr)等のハロゲン化セシウムが挙げられる。これらのうち、X線から可視光線への変更率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体材料を柱状結晶構造に形成することができ、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層の膜厚を増大させることが可能であることから、ヨウ化セシウムが好ましい。
ただし、ヨウ化セシウムのみでは発光効率が低いために、蛍光体材料には、蛍光体母体化合物であるヨウ化セシウムの他に、各種の賦活剤が添加される。例えば、特公昭54−35060号公報には、ヨウ化セシウムとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものが記載されている。また、特開2001−59899号公報には、ヨウ化セシウムを、タリウム(Tl)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びナトリウム(Na)等の賦活剤とともに蒸着させたものが記載されている。なお、蛍光体母体化合物として、臭化セシウムのような輝尽性蛍光体を用いる場合は、賦活剤としてユウロピウム(Eu)等を用いることができる。本発明において賦活剤としては、特にタリウム(Tl)が好ましい。
賦活剤としてのタリウム化合物は、+I又は+IIIの酸化数を有する化合物であり、具体的には、ヨウ化タリウム(TlI)、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)、フッ化タリウム(TlF、TlF3)等が挙げられる。本発明において、好ましいタリウム化合物は、ヨウ化タリウム(TlI)である。
前記タリウム化合物の融点は、400〜700℃であることが好ましい。700℃を超えると、柱状結晶内で賦活剤が不均一に存在してしまい、発光効率が低下する。なお、本明細書において融点とは、常温常圧下における融点を指す。
前記タリウム化合物の含有量は、目的とする性能等に応じて、最適量に調整する必要があるが、例えば、ヨウ化セシウムの含有量に対して、通常0.001〜50mol%、好ましくは0.1〜10.0mol%である。ここで、ヨウ化セシウムに対するタリウム化合物の含有量が0.001mol%以上であると、ヨウ化セシウムを単独で使用した場合よりも発光輝度の向上がみられ、目的とする発光輝度が得られるため好ましい。また、50mol%以下であるとヨウ化セシウムの性質・機能を保持することができるため好ましい。
本発明に係る蛍光体層は、蛍光体母体化合物であるヨウ化セシウムと、賦活剤であるタリウム化合物とからなり、蛍光体層内のタリウム濃度の変動係数が通常40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。具体的には、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)が、400〜750nmの領域に広い発光波長をもつことから好ましい。
なお、本発明において、蛍光体層内のタリウム濃度の変動係数(CV)は、次のようにして行う。すなわち、蛍光体層のうち、任意の30箇所から試料を0.2gずつ採取してICP発光分光分析を行い、該30箇所の試料中のタリウム濃度についての標準偏差(SD)を求め、該標準偏差(SD)を30箇所のタリウム濃度の平均値で除して、下記式で示される変動係数(CV)を求める。
変動係数(CV)=タリウム濃度の標準偏差(SD)/タリウム濃度の平均値×100
すなわち、変動係数とは、標準偏差を平均値で除し100倍したものである。
本発明に係る蛍光体層は、その蛍光体層柱状結晶の根元部分をタリウム化合物を含まない層とすることが好ましい。このような層は、例えば、次のようにして形成することができる。
まず、支持体上にヨウ化セシウムを用いて、所望の厚さになるまで、気相堆積法、具体的には蒸着法により、蛍光体結晶(ヨウ化セシウムのみ)を形成した後、該蛍光体結晶の上に、ヨウ化セシウムとタリウム化合物とからなる蛍光体材料(例えば、CsI:0.003Tl)を所望の厚さになるまで蒸着させて蛍光体柱状結晶を形成する。得られた蛍光体柱状結晶が本発明における蛍光体層である。
ここで、「根元部分」とは、蒸着法により蛍光体柱状結晶を形成する過程において、初期に形成される部分であって、蛍光体柱状結晶の平均長さ(縦方向の長さ)の通常50%未満の結晶部分をいう。「タリウム化合物を含まない層」とは、前記のような方法によって形成された蛍光体柱状結晶のうち、タリウム化合物を実質的に含まない結晶部分をいい、ヨウ化セシウムのみから構成される層の他に、蛍光体柱状結晶の根元部分の質量に対して0.1質量%未満のタリウム化合物その他の不純物や添加物が含まれる層も含まれる。前記「タリウム化合物を含まない層」は、蛍光体層中の蛍光体柱状結晶の平均長さの30%以下の部分に形成するのが好ましく、10%以下の部分に形成するのがより好ましい。
また、蛍光体層を、後述する反射層に平行な面で10層に分割し、これら各層における賦活剤の濃度を支持体側から順にy1、y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9、y10(モル%)とし、y2〜y10のうち最大の値をy(max)、最小の値をy(min)とするとき、y(max)≦1.2y1及び0.1y1≦y(min)である分布をとってもよい。
このように、その蛍光体層柱状結晶の根元部分を蛍光体母体化合物のみとするか、又は賦活剤濃度を低減することで、根元部分から結晶質の蛍光体層を形成でき、放射線画像変換パネルの輝度及び鮮鋭性を向上させることができる。
蛍光体層の一定の面指数を有する面のX線回折法による配向度は、厚さ方向に関係なく、80〜100%の範囲内であることが好ましい。例えば、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)における面指数は、(100)、(110)、(111)、(200)、(211)、(220)、(311)等のうちのいずれかであり得るが、(200)であることが好ましい(面指数については、X線解析入門(東京化学同人)42〜46頁参照)。なお、本明細書における「一定の面指数を有する面のX線回折スペクトルに基づく配向度」とは、ある面指数の強度Ixが他の面指数の面を含めた全体の総強度Iに占める割合のことを指す。例えば、X線回折スペクトルにおける(200)面の強度I200の配向度は、「配向度=I200/I」である。
配向度決定のための面指数及びその測定方法としては、例えばX線回折(XRD)が挙げられる。X線回折は、特定波長の固有X線を結晶性物質に照射し、Braggの式を満足する回折が起こることを利用して、物質の同定、結晶相の構造などに関する知見を得ることのできる汎用性の高い分析手法である。照射系のターゲットにはCu、Fe、Coなどが用いられ、照射時の出力は、装置能力によるが、一般的に0〜50mA、0〜50kV程度である。
前記のとおり、蛍光体層は、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられる柱状結晶であることが好ましい。蛍光体柱状結晶を形成する方法には、気相堆積法が挙げられる。気相堆積法には、蒸着法、スパッタリング法、CVD法及びイオンプレーティング法その他の方法が挙げられるが、蒸着法が特に好ましい。
蛍光体層の膜厚は、輝度と鮮鋭性の特性をバランスよく得られる点から、通常100〜800μm、好ましくは120〜700μmである。
本発明において、蛍光体柱状結晶の先端角度は、通常40〜80°であり、50〜75°に制御することが好ましい。
このように、先端角度を前記範囲とすることで、光取り出し効率が上昇するため、得ら王れる放射線画像変換パネルは輝度及び鮮鋭性に優れたものとなる。
本発明では、支持体上に蛍光体層を形成させるに際して、下地層を設けてもよい。下地層は、蛍光体母体化合物と賦活剤からなり、蛍光体層よりも空隙率の低い層であり、第一の蛍光体層ともいえる。この場合、蛍光体層の形成方法は、上記面指数についての要件を満たす蛍光体層を形成できる方法であって、かつ、支持体の表面に、空隙率が蛍光体層よりも低い値を示す下地層を形成する工程、及び下地層の表面に蛍光体材料を気相堆積法により形成する工程を含むことが好ましい。
本明細書における空隙率は、蛍光体層を支持体と平行に切断した断面において、柱状結晶の断面積と空隙の面積の総和に対する、空隙の面積の比率をいう。空隙率は、シンチレータパネルの蛍光体層を支持体と平行に切除し、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を、画像処理ソフトを使用して蛍光体部分と空隙部で2値化することにより、求めることができる。
また、下地層は、その上に成長させる柱状結晶の結晶性向上や接着性の観点でその相対密度が蛍光体層の相対密度よりも低く、かつ、下地層に含まれる賦活剤の相対含有量が、該蛍光体層に含まれる賦活剤の相対含有量よりも低いことが好ましい。具体的には、蛍光体層の相対密度に対する下地層の相対密度の比((下地層の相対密度)/(蛍光体層の相対密度))は、0.92〜0.98であることが好ましい。この場合、蛍光体層の形成方法は、上記面指数についての要件を満たす蛍光体層を形成できる方法であって、かつ、支持体の表面に、賦活剤の相対含有量が蛍光体層の相対含有量よりも低い値を示す下地層を形成する工程、及び下地層の表面に蛍光体材料を蒸着法により堆積させることにより、下地層よりも相対密度が高い蛍光体層を形成する工程を含むことが好ましい。
なお、本明細書において、相対密度(%)とは、蛍光体固有の密度(g/cm3)に対する各層(下地層又は蛍光体層)の実際の密度(g/cm3)の相対値(百分率)を意味する。
下地層の膜厚は、高輝度・鮮鋭性維持の面から、通常0.1〜50μm、好ましくは5〜40μmである。ただし、前記膜厚は、蛍光体柱状結晶の結晶径や蛍光体層の膜厚によって適宜変更することができる。
本発明では、下地層の存在により、蛍光体層の柱状結晶性が良好になり、発光量が増加して、シンチレータパネルの輝度が向上し、かつ、保存性も向上する。
蛍光体層(下地層も含む)に含まれる柱状結晶は、後述する反射層側から10μmの位置での平均円相当径aと、最表面での平均円相当径bとが、通常1.5≦b/a≦30の関係を有する。
また、鮮鋭性の面から、下地層の膜厚cと、蛍光体層の膜厚dとは、通常3≦d/c≦1000、好ましくは10≦d/c≦1000の関係を有する。
ところで、蛍光体柱状結晶の結晶径(ドメイン径)の定義に関する記載はこれまでに数多くあるが、柱状結晶は隣接する結晶と結合しながら成長していくため、完全に結合する前の状態では、SEMで観察しただけでは、結晶間の境界を判断することはできない。特に成長途中での結晶径の測定方法に関して、従来技術では、柱状結晶成長方向に垂直な断面でSEM観察を行う方法が示されているが、通常の二次電子像で観察しても、結晶は周囲の結晶と一部又は大部分が接合した状態で存在し、結晶境界を可視化できないため実際には結晶径を求めることは難しい。
柱状結晶の柱状径は結晶方位により定義することが好ましい。一般的には結晶性試料を観察したとき、結晶方位の違いによってSEM像や走査イオン顕微鏡(SIM)像に生じるコントラストを用いる方法が知られている。電子やイオンのチャネリングにより、結晶方位の違いで試料への侵入深さが変わり、結果として反射電子や二次電子の放出量が変わるために生じるコントラストである。特開2012−251974号公報では針状結晶シンチレータの一部が凸部パターンの上面に接しており、その本数をイオンチャネリングコントラストにより規定している。イオンチャネリングコントラストは、結晶方位の違いにより生じるコントラストであり、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置で試料表面をガリウム(Ga)イオンビームで走査して放出される二次電子を検出することにより像が得られる。SEMを利用した場合には電子チャネリングコントラストが得られるが、通常の前処理観察条件では明瞭なチャネリングコントラストを得ることはできない。例えば、イオン研磨などにより平滑でダメージのない結晶断面を作製し、導電処理を施さずに反射電子成分を観察することで電子チャネリングコントラスト像を得ることができる。しかしながら、前述のイオンや電子によりチャネリングコントラストは結晶方位差とコントラスト差が対応しているわけでもなく、入射電子の角度を変えればコントラストも変化するため、これにより結晶径を定量的に定義することもまた難しい。
一方、金属材料等の分野では、結晶方位解析にEBSP(Electron Back Scattering Pattern(電子線後方散乱パターン))法が用いられている。明瞭なEBSPパターンを得るためには材料表面に導電処理を行わないほうがよいため、導電性材料に適した手法であるが、近年は低真空モードでチャージアップを防ぎながら観察できる機能を搭載した電子顕微鏡が普及していること、イオン液体を用いた手法が開発されたこと、イオン研磨直後の試料を用いることでチャージの影響を抑えられること、その他さまざまな工夫により、アルカリハライドのようなダメージを受けやすい材料にも応用できることが見出されている。
具体的な手順としては、以下のように行うことができる。支持体付きの蛍光体柱状結晶の空隙を樹脂で充填して固定し、ブロードアルゴンイオンビームを使用した研磨装置により所望の方向(結晶成長方向に対し垂直又は平行)に断面を作製する。蛍光体柱状結晶のドメインの平均径を求める場合は、結晶成長方向に対して垂直な方向で、結晶開始部分での結晶質を確認する場合は、結晶成長方向に対して平行な、すなわち、支持体(蒸着用基板)に対して垂直な断面を作製すればよい。研磨後直ちに、EBSP検出器を備えたSEMに導入し加速電圧20kVで20μm×20μmの領域を0.1μmステップで5視野以上をEBSP測定する。Grain Dilation法にてクリーンアップ処理を行い結晶方位を求める。装置及び解析手段としては、例えばSEM(ZEISS(株)製 SUPRA40VP)、EBSP検出器(EDAX(TSL)(株)製 Hikari High Speed EBSP Detector)、EBSP解析ソフト(株式会社TSLソリューションズ OIM Analysis)等を用いることができる。
ここで、「ドメイン」とは、略同一(すなわち、結晶方位差が5°以内)の蛍光体柱状結晶の集合をいう。ドメインの平均径は0.2〜10μmであり、好ましくは0.2〜7μmである。結晶成長開始から50μmまでの膜厚範囲内におけるドメインの平均径は0.3〜3μmであることが好ましく、0.3〜1μmであることがより好ましい。
変動係数は50%以下であることが好ましく、35%であることがより好ましい。
本発明において、蛍光体柱状結晶の「結晶成長開始の根元部分から結晶質である」とは、結晶成長方向に対して平行な断面を作製してEBSPパターンを取得したとき、結晶成長開始の根元部分からも明瞭なEBSPパターンが得られることをいう。非晶質の場合は明瞭なEBSPパターンが得られない。
蛍光体柱状結晶の根元部分から50μmまでの膜厚範囲内における結晶成長方向に対し垂直な断面における蛍光体全投影面積の60%以上において、EBSPパターンを用いた結晶方位解析による(200)結晶方位は10°以下であることが好ましく、5°以下であることがより好ましい。結晶方位解析による(200)結晶方位を前記範囲とすることで、支持体と蛍光体等との密着性、すなわち膜付き性を良好に維持することができ、かつ、輝度及び鮮鋭性に優れた放射線画像変換パネルを提供することができる。
<その他の層>
下引き層
支持体と蛍光体層の接着性向上のため、支持体と蛍光体層の間に下引き層を設けることが好ましい。下引き層は、蛍光体層がその根本部分から結晶質の柱状結晶を成長させ、かつ、支持体と良好な密着性(膜付き性)を有するのに重要な役割を果たす。すなわち、本発明における蛍光体層は、上記した支持体の表面に形成された薄い下引き層を介して、この下引き層の表面に形成されていることが好ましい。
このように下引き層を介して蛍光体層を形成する場合、蛍光体と下引き層との密着性、すなわち膜引き性は、下引き層の表面部分の物性(下引き物性)によって著しく変動する。この下引き層における表面物性の変動に起因する特性は弾性率であるが、この下引き層が非常に薄いこと、及び、同一の厚さであっても初期の形成状態によって著しく変動することから、下引き層の特性を測定するためにはJIS C 2318のような従来一般に採用されていた弾性率の測定方法を採用するのは適当でない。特に膜引き性は、下引き層の蒸着極初期の温度における下引き層の表面部分の弾性率が大きく影響する。すなわち、本発明の下引き層における局所的な弾性率の挙動は広く、厚い部材の弾性率とは一致しない。本発明の下引き層のように局所的な粘弾性挙動を測定するに際しては、従来の方法ではなく、局所的な力学物性の測定に適したナノインデンテーション(押し込み)法を採用した方がより精度高い特性を得ることができる。
ここで採用するナノインデンテーション法とは、素材に対する鋭角圧子の押し込み加重と深さを連続的に測定し、鋭角圧子の押し込み深さに対する押し込み加重の関係を描画した曲線から素材の硬さ(インデンテーションハードネス)、複合弾性率及び降伏応力等を求める方法である。ナノインデンテーション法では使用する圧子の種類により様々な力学特性を評価することができ、試料温度を制御できる環境制御ナノインデンターと、鋭角圧子(ベルコビッチ(Berkovich)圧子)を用いて適当な押し込み荷重にて測定することで、蒸着の初期温度での下引き物性を評価することができる。従って、本発明で採用するナノインデンテーション法においては光学顕微鏡などを用いた視覚的な観察は行わない。
本発明で採用するナノインデンテーション法について具体的な測定方法の一例を示す。
装置にはハイジトロン(Hysitron)社製のトライボスコープ(Triboscope)を用い、これを環境制御チャンバーに設置し試料を所望の温度にする。鋭角圧子には、ベルコビッチ圧子(鋭角圧子:三角錐形ダイヤモンド製)を使用する。試料をステージに固定し、押し込み測定を3回ずつ行う。条件としては最大圧入深さ300nmまで圧入速度を300nm/secで負荷し、同速度で除荷する。得られた荷重変位曲線を解析し、硬さ及び複合弾性率を算出する。なお測定値は溶融石英の標準試料によって補正する。
本発明において、ナノインデンテーション法により測定した初期基板温度における下引き層の弾性率は、通常1〜15GPa以下である素材であり、1〜10GPaである素材を使用することが好ましい。
このようなナノインデンテーション法のより測定した初期基板温度における下引き層の弾性率が上記範囲にある素材を用いて下引き層を形成することにより、上記したように、蛍光体柱状結晶の集合体であるドメインが0.2〜10μmの平均径、好ましくは0.2〜7μmの平均径を有するようになる。さらに、結晶開始の根元部分から50μmまでの膜厚保範囲内における各ドメインの平均径が0.3〜3μm、好ましくは0.3〜1μmであって、変動係数が50%以下、好ましくは35%の範囲内になる。しかも、結晶構造が非常に揃った形状になり、根元部分から50μmまでの膜厚範囲における結晶に対して垂直な断面の蛍光体全体投影面積の60%以上、好ましくは75%以上が、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法で測定した結晶方位回折における(200)結晶方位の傾きが通常は10%以下、好ましくは6%以下の範囲内になる。
本発明において、上記のような下引き層を形成する材料としては、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、バリロンTM、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、ポリパラキシリレン、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂及び尿素ホルムアミド樹脂等の高分子結合材(以下「バインダー」ともいう。)が挙げられる。なかでも、ポリウレタン、ポリエステル、バリロンTM、ポリパラキシリレン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂及びポリビニルブチラールが好ましい。また、これらのバインダーは二種以上を混合して使用することもできる。
バインダーのガラス転移温度(Tg)は100℃以下であることが、支持体と蛍光体層の接着性向上の観点から好ましい。
また、本発明の下引き層には発光光の反射を補助するために白色顔料を配合することができる。ここで使用する白色顔料としては酸化チタン(IV)(TiO2)を挙げることができる。例えば、ポリエステルに初期基板温度における弾性率が1〜15GPa、好ましくは1〜10GPaの範囲になるように硬化剤を加えると共に酸化チタン(IV)(TiO2)を樹脂100重量部に対して100〜5000重量部の範囲内の量で加えて、下地層の厚さが、好ましくは厚さ1〜50μmになるように硬化させる。このときの下引き層を形成する樹脂のガラス転移温度(Tg)が0〜50℃、好ましくは5〜40℃になるように硬化剤の配合量を調整する。
ここで使用する硬化剤としては、例えば、ポリエステルからなる下引き層を形成する場合、イソシアネート類及びメラミン化合物等が挙げられる。また、他の素材で下引き層を形成する場合、その素材に対応した硬化剤を適量使用した初期基板温度におけるナノインデンテーション法による弾性率を上記範囲になるように調整する。
本発明において下引き層は、溶剤に溶解又は分散させた高分子結合材を塗布及び乾燥して形成する方法のほか、気相法により成膜してもよい。すなわち、例えば下引き層の塗布方式については、例えば、グラビア、ダイ、コンマ、バー、ディップ、スプレー、スピンなどの一般的な方法の他に、CVD法等の方法を採用することもできる。
下引き層の形成に用いることができる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びn−ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド及びエチレンクロライド等の塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン;シクロヘキサン;トルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メトキシプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル並びにこれらの混合物が挙げられる。
下引き層の膜厚は、通常0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μmである。下引き層の膜厚を0.1μm以上とすることで蛍光体層との接着性が向上し、下引き層の膜厚を10μm以下とすることで下引き層内での光散乱が抑制され鮮鋭性が向上する。
また、本発明の下引き層には、蛍光体層が発光する光の散乱を防止し、鮮鋭性等を向上させるために酸化チタンのような顔料又は染料を含有させてもよい。
上記のように形成された初期における下引き層のナノインデンテーション法により測定した下引き層の硬さを上述のように通常1〜15GPa、好ましくは1〜10GPaの範囲内に調整することにより、この表面に形成される蛍光体層の膜付き性を良好に維持することができる。従って、本発明によれば、輝度及び鮮鋭性に優れた放射線画像変換パネルを提供することができる。
反射層
支持体と蛍光体層の間には、下引き層に加えて反射層を有することが好ましい。具体的には、支持体と下引き層の間に反射層を設けることが好ましい。反射層を設けることによって、蛍光体層での発光を非常に効率良く取り出すことができ、輝度が飛躍的に向上する。
反射層を構成する材料には、アルミニウム、銀、白金、パラジウム、金、銅、鉄、ニッケル、クロム、コバルト及びステンレス等の金属材料が挙げられる。これらのうち、反射率又は耐食性の観点から、アルミニウム又は銀を主成分とする金属材料が特に好ましい。また、このような金属材料からなる薄膜を二層以上形成するようにしてもよい。
前記金属材料を支持体上に被覆する方法としては、蒸着、スパッタ、又は、金属箔の貼り合わせ等、特に制約はないが、密着性の観点から、スパッタが最も好ましい。
反射層を構成する材料としては、前記金属材料の他、金属酸化物及び光散乱微粒子等が挙げられる。すなわち、金属酸化物及び光散乱微粒子等をバインダーに混合させたものを塗布することにより、反射層を形成させてもよい。
前記金属酸化物としては、反射率向上の観点から、シリカ(SiO2)及び酸化チタン(IV)(TiO2)等の金属酸化物が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。
前記光散乱微粒子としては、例えば、酸化チタン(IV)(TiO2)(アナターゼ型、ルチル型)、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸水酸化鉛(II)(PbCO3・Pb(OH)2)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化アルミニウム(Al23)、M(II)FX(但し、M(II)はバリウム、ストロンチウム及びカルシウムから選ばれる少なくとも一種の原子であり、Xは塩素原子又は臭素原子である。)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化亜鉛(ZnO)、三酸化アンチモン(Sb23)、シリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸塩、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウム等の白色顔料を使用することができる。このうち、酸化チタン(IV)の結晶構造としては、種々の樹脂の屈折率との比率が大きく、高輝度を達成できる点からルチル型が好ましい。酸化チタン(IV)としては、具体的には、塩酸法で製造されたCR−50、CR−50−2、CR−57、CR−80、CR−90、CR−93、CR−95、CR−97、CR−60−2、CR−63、CR−67、CR−58、CR−58−2、CR−85、硫酸法で製造されたR−820、R−830、R−930、R−550、R−630、R−680、R−670、R−580、R−780、R−780−2、R−850、R−855、A−100、A−220、W−10(以上商品名:石原産業(株)製)等が挙げられる。酸化チタン(IV)の一次粒径は、通常0.1〜0.5μmであり、好ましくは0.2〜0.3μmである。また、酸化チタン(IV)としては、ポリマーとの親和性や分散性を向上させるため、又は、ポリマーの劣化を抑えるため、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム及び亜鉛等の酸化物で表面処理されたものが特に好ましい。
酸化チタン(IV)は、反射層中に通常40〜95重量%含まれ、好ましくは60〜90重量%含まれる。酸化チタン(IV)の含有量が40重量%未満では輝度が低下し、95重量%を超えると、支持体又は蛍光体層との接着性が低下することがある。
これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより蛍光体層での発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させることができる。
その他の光散乱性粒子として、例えば、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、中空部が粒子内に存在する中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、及び、多孔質粒子等も使用することができる。
前記光散乱性粒子は単独で用いてもよいし、又は組み合わせて用いてもよい。
前記バインダーとしては、易接着性のポリマー、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂及び尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン樹脂、アクリル樹脂及びポリビニルブチラールを使用することが好ましい。また、これらのバインダーは二種以上を混合して使用することもできる。
塗布型の反射層は、少なくとも光散乱粒子、バインダー及び溶剤を含有する組成物を、塗布、乾燥して形成することができる。塗布方式については、特に制約はないが、例えば、グラビア、ダイ、コンマ、バー、ディップ、スプレー及びスピン等の一般的な方式を用いることができる。
反射層作製に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びn−ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド及びエチレンクロライド等の塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族化合物;シクロヘキサン;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メトキシプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル;及びそれらの混合物が挙げられる。
酸化チタンの分散性を向上させるために分散剤を使用してもよい。分散剤としては、例えば、多価アルコール、アミン類、シリコーン又は界面活性剤が用いられる。
反射層の膜厚は、通常0.005〜0.3μm、好ましくは0.01〜0.2μmであることが、発光光取り出し効率の観点から好ましい。
反射層の表面反射率は通常80%以上、好ましくは90%以上である。
支持体と反射層の密着性を向上させるために、支持体と反射層の間にさらに中間層を設けることが好ましい。中間層を構成する材料としては、一般的な易接着性のポリマーの他、反射層とは異なる異種金属層を設けてもよい。異種金属層としては、例えば、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、チタン、ジルコニウム、モリブデン及びタングステンの中から選ばれる少なくとも1種類の金属を用いることが好ましく、なかでもニッケル、クロムを単独又は混合して使用することがさらに好ましい。
その他機能層
支持体には、易接着層、反射層、光吸収層、導電層、反り防止層及び平滑層等、種々の機能層を設けることができる。例えば、放射線画像変換パネルの反りを防止するため、支持体上に反り防止層を形成する場合、支持体と熱膨張又は熱収縮特性の異なる材料を接着又はコートすることによってシンチレータパネルの反りを抑制することができる。
なお、本明細書では、支持体上に上記その他の層を設けたものであって、その上に蛍光体層を形成予定のものを蒸着用基板ともいう。
<放射線画像変換パネルの製造方法>
本発明の放射線画像変換パネルの製造方法は、図1に示すように、真空容器2内に蒸発源8a、8b及び支持体回転機構6を有する蒸着装置1を用いて、蒸着用基板4を該支持体回転機構に設置して、該蒸着用基板4を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成する方法であることが好ましい。
以下、本発明の実施形態について説明する。
真空容器2の内部の底面付近には、蒸着用基板4に垂直な中心線を中心とした円の円周上の互いに向かい合う位置に蒸発源8a、8bが配置されている。この場合において、蒸着用基板4と蒸発源8a、8bとの間隔は、通常100〜1500mmであり、好ましくは200〜1000mmである。また、蒸着用基板4に垂直な中心線と蒸発源8a,8bとの間隔は、通常100〜1500mmであり、好ましくは200〜1000mmである。
なお、本発明の放射線画像変換パネルの製造装置においては、3個以上(例えば、8個、16個、24個)の蒸発源を設けることが可能であり、各々の蒸発源は等間隔に配置してもよく、間隔を変えて配置してもよい。複数の蒸発源は同心円上に配置してもよいし、同心円を二重、三重又は四重に配置してもよい。また、蒸着用基板4に垂直な中心線を中心とした円の半径は任意に定めることができる。このように、複数の蒸発源を同心円状に二重、三重又は四重に配置することで、大面積の領域で均一な蒸着膜を成膜することができ、従来一回の蒸着で1枚しか作製できなかったシンチレータパネルを、例えば2枚、4枚、9枚同時に作製することが可能となる。
前記蛍光体材料はタングステンやタンタル等の高融点金属からなるボートにセットして抵抗加熱する構成としてもよいし、カーボン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素又は窒化ボロンといったセラミックス製の坩堝にセットしてクヌーセンセル(間接加熱蒸発源)で加熱する構成としてもよい。ボートや坩堝には、充填された蛍光体が加熱され突沸(スプラッシュ)を起こした時に発生する粒子が開口部を通して直線的に飛散し被蒸着材料(蒸着用基板)に到達するのを防ぐため、開口部に仕切板を用いることが好ましい。また、ボートや坩堝の開口部に、内部方向に凸部を有し穿孔を備えた蓋をセットすることで、被蒸着材料(蒸着用基板)のいかなるところからもボートや坩堝内部の蛍光体材料を直接見ることのできなくすることも突沸(スプラッシュ)を防ぐのに効果的である。
また、蛍光体材料を加熱する方法は、抵抗加熱法以外に電子ビームによる加熱や、高周波誘導による加熱等の方法でもよいが、本発明では比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、非常に多くの物質に適用可能である点から、直接電流を流し抵抗加熱する方法や、周りのヒータで坩堝を間接的に抵抗加熱する方法が好ましい。また、蒸発源8a、8bは分子源エピタキシャル法による分子線源でもよい。
蒸着装置1において、前記のように、複数の蒸発源8a、8bを設けることによって蒸発源8a、8bの蒸気流が重なり合う部分が整流化され、蒸着用基板4の表面に蒸着する蛍光体材料の結晶性を均一にすることができる。このとき、多数の蒸発源を設けるほど多くの箇所で蒸気流が整流化されるため、蒸着用基板4の表面の広範囲において蛍光体材料の結晶性を均一にすることができる。また、蒸発源8a、8bを蒸着用基板4に垂直な中心線を中心とした円の円周上に配置することによって、蒸気流の整流化によって、均一に結晶成長するという作用効果を、蒸着用基板4の表面において等方的に得ることができる。
支持体ホルダ5は、蒸着用基板4のうち前記蛍光体層を形成する面が真空容器2の底面に対向し、かつ、真空容器2の底面と平行となるように蒸着用基板4を保持する構成となっている。
また、支持体ホルダ5には、蒸着用基板4を加熱する加熱ヒータ(図示せず)を備えることが好ましい。この加熱ヒータで蒸着用基板4を加熱することによって、蒸着用基板4の支持体ホルダ5に対する密着性の強化や、前記蛍光体層の膜質調整を行う。また、蒸着用基板4の表面の吸着物を離脱・除去し、蒸着用基板4の表面と蛍光体層との間に不純物層が発生することを防止する。
また、加熱手段として温媒又は熱媒を循環させるための機構(図示せず)を有していてもよい。この手段は蛍光体材料の蒸着時における蒸着用基板4の温度を50〜150℃という比較的低温に保持して蒸着する場合に適している。また、加熱手段としてハロゲンランプ(図示せず)を用いてもよいが、蛍光体の蒸着時における蒸着用基板4の温度を150℃以上という比較的高温に保持して蒸着する場合に適している。
さらに、支持体ホルダ5には、蒸着用基板4を水平方向に回転させる支持体回転機構6が設けられている。支持体回転機構6は、支持体ホルダ5を支持すると共に蒸着用基板4を回転させる支持体回転軸7及び真空容器2の外部に配置されて支持体回転軸7の駆動源となるモータ(図示せず)から構成されている。
蒸着用基板4の加熱は、蒸着用基板4を支持体ホルダ5に密着させてセットしてもよいし、支持体ホルダ5より距離を取って配置して加熱してもよい。前記の温媒又は熱媒を用いて蒸着用基板4を加熱する場合は、蒸着用基板4を支持体ホルダ5に密着させてセットする方が好ましい。
蒸着装置1には、上記構成の他に、真空容器2に真空ポンプ3が配されている。真空ポンプは、真空容器の内部に存在する気体の排気を行うもので、高真空領域まで排気するために、作動圧力領域の異なる真空ポンプを二種類又はそれ以上配置してもよい。真空ポンプとしては、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、ディフュージョンポンプ及びメカニカルブースタ等を用いることができる。
チャンバー内の圧力を調整するために、真空容器内にガスを導入できる機構が設けられている。導入するガスには、例えば、ネオン、アルゴン及びクリプトン等の一般的な不活性ガスが用いられる。真空容器内の圧力は、真空容器内を真空ポンプで排気しながら導入するガス量で調整してもよいし、所望の圧力よりも高真空となるまで真空排気を行った後に真空排気を停止して、その後所望の圧力となるまでガスを導入することにより調整してもよい。また、真空容器と真空ポンプの間に圧力制御弁を設ける等によりポンプの排気量を調整して真空容器内の圧力を制御してもよい。
また、蒸発源8a、8bと蒸着用基板4との間には、蒸発源8a、8bから蒸着用基板4に至る空間を遮断するシャッタ9が水平方向に開閉自在に設けられており、このシャッタ9によって、蒸発源8a、8bにおいて蛍光体材料の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着の初期段階で蒸発し、蒸着用基板4に付着するのを防ぐことができるようになっている。シャッタは、例えば蒸発源の温度が200℃以下の状態で開としてもよいし、蒸発源から発生する蒸気量が安定するのを確認してから開としてもよい。また、蒸発源8a、8bの中の蛍光体材料がすべてなくなったことを確認してからシャッタを閉にしてもよいし、蒸発源の中に蛍光体材料が残っている状態でシャッタを閉としてもよい。
上記の製造装置を用いた本発明の放射線画像変換パネルの製造方法について説明する。
まず、支持体ホルダ5に蒸着用基板4を取り付ける。また、真空容器2の底面付近において、蒸着用基板4に垂直な中心線を中心とした円の円周上に蒸発源8a、8bを配置する。次に、坩堝やボート等に、2つ以上の蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)と、賦活剤(TlI)を充填し、蒸発源にセットする。
充填した蛍光体母材化合物及び賦活剤の中の不純物を蒸着前に除去するため、予備加熱を行ってもよい。予備加熱は使用する材料の融点以下であることが望ましい。例えばヨウ化セシウムの場合、予備加熱温度は50〜620℃が好ましく、100〜500℃がより好ましい。ヨウ化タリウムの場合、50〜440℃が好ましく、100〜400℃がより好ましい。
蒸着装置内を一旦排気し、アルゴンガスを導入して真空度を調整した後、蒸着用基板を回転させる。回転数は蒸着装置の大きさにもよるが、通常2〜15回転、好ましくは4〜10回転である。次いで、蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)の坩堝を加熱して蛍光体を蒸着し、下地層(第1の蛍光体層)を形成する。なお、発光輝度の向上及び保存性の点を考慮し、下地層に少量の賦活剤を添加してもよい。この時の基板温度は通常5〜100℃、好ましくは15〜50℃である。下地層の膜厚は、結晶径や蛍光体層の膜厚にもよるが、通常0.1〜50μmである。次に基板(蒸着用基板)の加熱を開始し、基板温度を150〜250℃に加熱し、残りの蛍光体母体化合物(CsI:賦活剤なし)と賦活剤(TlI)の坩堝の蒸着を開始する。このとき、蛍光体母体化合物は、生産性を考慮して、下地層よりも早い蒸着速度で蒸発をすることが好ましい。下地層及び蛍光体層の膜厚にもよるが、下地層の蒸着の5〜100倍の速度で蒸着することが好ましく、10〜50倍で蒸着することがより好ましい。賦活剤の蒸発方法は、賦活剤単体を蒸発させてもよいが、ヨウ化セシウムとヨウ化タリウムを混合した蒸発源を作製し、ヨウ化セシウムは蒸着せず、ヨウ化タリウムのみが蒸着する温度(例えば450〜600℃)に加熱して蒸着させてもよい。
また、蒸着法においては必要に応じて酸素や水素などのガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行ってもよい。
蒸着時に加熱を行っていた支持体は、高温のため、取り出す前に冷却を行う必要がある。蛍光体層を80℃まで冷却する工程での平均冷却速度を0.5〜10℃/分の範囲内とすることで、基板にダメージなく冷却することができる。例えば支持体に膜厚10〜500μmの高分子フィルム等の比較的薄い基板を用いた場合に特に有効である。この冷却工程は、真空度1×10-5Pa〜0.1Paの雰囲気下で行われることが特に好ましい。また、冷却工程時に、蒸着装置の真空容器内にアルゴンやヘリウム等の不活性ガスを導入する手段を講じてもよい。なお、ここでいう平均冷却速度とは、冷却開始(蒸着終了時)から80℃まで冷却する間の時間と温度を連続的に測定し、この間の1分間あたりの冷却速度を求めたものである。なお、蒸着終了後、冷却を行う前に、前記蛍光体層を加熱処理してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されなるものではない。
〔放射線画像変換パネルの作製〕
[実施例1]
支持体として、ポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、商品名:ユーピレックス;膜厚125μm)に、反射層として、銀をスパッタ法により形成し、さらに下引き層として、ポリエステル(東洋紡社製、商品名:バイロン300 ガラス転移温度(Tg)は7℃)100重量部に対して硬化剤(HMDI)を10重量部配合し、さらに酸化チタン(IV)を混合し、溶媒として固形分100重量部に対して50重量部のトルエン、50重量部のメチルエチルケトンを加えて混練した塗布液を、スピンコートによりポリイミド表面に塗布して乾燥させた。
このときの下引き層の平均塗布厚は50μmであり、下引き層についてナノインデンテーション法によって測定した初期基板温度における弾性率は1.1GPaであった。
上記の下引き層の表面にヨウ化セシウム及び賦活剤(ヨウ化タリウム)を、図1に示すような蒸着装置を使用して蒸着させ、以下のようにして蛍光体層を形成した。
まず、ヨウ化セシウム(CsI)を二つの抵抗加熱坩堝に、ヨウ化タリウム(TlI)を一つの抵抗加熱坩堝に充填した。また、回転する支持体ホルダの金属製の枠に蒸着用基板を設置し、蒸着用基板と蒸発源との間隔を400mmに調節した。
蒸着装置内を一旦排気し、アルゴンガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、6rpmの速度で蒸着用基板を回転させた。このとき、蒸着用基板の温度(初期基板温度)を20℃に設定した。次いで、ヨウ化セシウムを充填した抵抗加熱坩堝のうちの一つを加熱して蛍光体材料を蒸着した。こうして下地層(第一の蛍光体層)を形成した。
次に、蒸着用基板の加熱を開始し、蒸着用基板の温度が200℃に達した後はそのままの温度に保持した。次いで、もう一つのヨウ化セシウムを充填した抵抗加熱坩堝と、ヨウ化タリウムを充填した抵抗加熱坩堝を加熱して、それぞれ蒸着を開始した。このとき、ヨウ化セシウムの蒸着速度は、下地層を形成したときの10倍となるように調整した。賦活剤の蒸着速度は、蛍光体層(第二の蛍光体層)を形成するときの蒸着速度が、第一の蛍光体層を形成したとき蒸着速度の1/2となるように調整した。蛍光体層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了させ、蒸着用基板上に蛍光体(CsI:0.003Tl、すなわちTlが0.3モル%含有している)層が形成された放射線画像変換パネルを得た。
[実施例2]
実施例1において、下引き層として、ポリエステル(東洋紡社製、商品名:バイロン780 Tg:35℃)100重量部に対して硬化剤(HMDI)を10重量部配合し、さらに酸化チタン(IV)を混合し、溶媒として固形分100重量部に対して50重量部のトルエン、50重量部のメチルエチルケトンを加えて混練した塗布液を、スピンコートによりポリイミド表面に塗布して乾燥させた。
このときの下引き層の平均塗布厚は50μmであり、下引き層についてナノインデンテーション法によって測定した初期基板温度における弾性率は10GPaであった。
上記及び初期基板温度を20℃に設定したこと以外は、実施例1と同様にして、放射線画像変換パネルを製造した。
[実施例3]
実施例1において下引き層として、ポリエステル(東洋紡社製、商品名:バイロン630)100重量部に対して硬化剤(HMDI)を10重量部配合し、溶媒として固形分100重量部に対して50重量部のトルエン、50重量部のメチルエチルケトンを加えて混練した塗布液を、スピンコートによりポリイミドフィルム表面に塗布して乾燥させた。
このときの下引き層の平均塗布厚は1μmであり、下引き層についてナノインデンテーション法によって測定した初期基板温度における弾性率は6GPaであった。
上記及び初期基板温度を50℃に設定したこと以外は、実施例1と同様にして、放射線画像変換パネルを製造した。
[実施例4]
実施例1において下引き層として、ポリエステル(東洋紡社製、商品名:バイロン630)100重量部に対して硬化剤(HMDI)を5重量部配合し、溶媒として固形分100重量部に対して50重量部のトルエン、50重量部のメチルエチルケトンを加えて混練した塗布液を、スピンコートによりポリイミドフィルム表面に塗布して乾燥させた。
このときの下引き層の平均塗布厚は1μmであり、下引き層についてナノインデンテーション法によって測定した初期基板温度における弾性率は1.5GPaであった。
上記及び初期基板温度を100℃に設定したこと以外は、実施例1と同様にして、放射線画像変換パネルを製造した。
[比較例1]
ポリエステル(東洋紡社製、商品名:バイロン630)100重量部に対して硬化剤(HMDI)を25重量部配合し、溶媒として固形分100重量部に対して50重量部のトルエン、50重量部のメチルエチルケトンを加えて混練した塗布液を、スピンコートによりポリイミドフィルム表面に塗布して乾燥させた。
このときの下引き層の平均塗布厚は1μmであり、下引き層についてナノインデンテーション法によって測定した初期基板温度における弾性率は20GPaであった。
上記及び、初期基板温度を0℃に設定し、真空度を1.0Paに調整したこと以外は、実施例1と同様にして、放射線画像変換パネルを製造した。
[比較例2]
実施例1において、支持体としてアモルファスカーボンを用いたことと、下引き層としてポリパラキシリレンを用いたことと、初期基板温度における弾性率が1GPa以下の下引き層を形成したことと、基板温度を250℃にしてそのまま一定の温度に保持したこと以外は、実施例1と同様にして、放射線画像変換パネルを作製した。
[比較例3]
実施例1において、支持体として無アルカリガラスを用い、下引き層を有しない蒸着用基板を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体材料を蒸着し、蛍光体層を形成した。
蒸着装置内を一旦排気し、アルゴンガスを導入して0.75Paに真空度を調整した後、6rpmの速度で蒸着用基板を回転させた。このとき、蒸着用基板を表1に示すように200℃に設定した。次いで、ヨウ化セシウムの抵抗加熱坩堝の一つを加熱して蛍光体を蒸着した。
次に、真空度を1.0Paに調整して、もう一つのヨウ化セシウム(CsI)を充填した抵抗加熱坩堝と、賦活剤(ヨウ化タリウム(TlI))を充填した抵抗加熱坩堝をそれぞれ蒸発させ、実施例1〜4と同様にして放射線画像変換パネルを作製した。
〔ナノインデンテーションの測定〕
装置には、環境制御チャンバーに設置したハイジトロン社製のトライボスコープを用いた。試料をステージに固定し、試料温度を表1に記載の初期基板温度に設定した。ベルコビッチ圧子(三角錐形ダイヤモンド)を用いて、押し込み測定を各3回行った。条件としては、最大圧入深さ300nmまで圧入速度を300nm/secで負荷し、同速度で除荷した。得られた荷重変位曲線を解析し、硬さ及び複合弾性率を算出した。
蒸着用基板における下引き層、すなわち、蛍光体層形成前の下引き層のナノインデンテーション測定の結果を表1に示す。
〔EBSP法による結晶評価〕
実施例1〜4及び比較例1〜3について、蒸着用基板上に形成された蛍光体層の空隙を二液混合型熱硬化樹脂(gatan社製、商品名:G2)を充填して包埋し、日本電子(株)製クロスセクションポリッシャ(SM‐09010)を用いて結晶成長方向に対して平行な断面を作製した。研磨後直ちに、SEM(ZEISS(株)製 SUPRA40VP)に試料を導入し、EBSP検出器(EDAX(TSL)(株)製 Hikari High Speed EBSP Detector)を用いて加速電圧20kVで20μm×20μmの領域を0.1μmのステップで5視野をEBSP測定した。EBSP解析ソフト((株)TSLソリューションズ OIM Analysis)を用いてGrain Dilation法にてクリーンアップ処理を行い、イメージクオリティマップ(Image Quality Map)を得た。実施例1〜4において結晶開始の根元部分から明瞭なパターンが観察された(図4参照)。
同様に結晶成長方向に対し垂直な断面を作製し、5視野のEBSPパターンを取得した。解析ソフト:OIM Analysisを用いてGrain Dilation法にてクリーンアップ処理を行い、イメージクオリティマップを得た(図5参照)。結晶方位差解析を行い、方位差5°以内の結晶を一つのドメインとして、ドメインの平均径及び変動係数を算出した(例:図6及び7参照)。
前記結晶成長方向に対し垂直な断面の試料から得られたEBSPパターンを用いて(200)法線方向(ND方向)の結晶方位マップ(Inverse Pole Figure map)を作製した。根元部分から50μmまでの膜厚範囲においては蛍光体全投影面積の60%以上においてEBSPパターンを用いた結晶方位解析による(200)結晶方位は10°以下であった(図8参照)。
1 蒸着装置
2 真空容器
3 真空ポンプ
4 蒸着用基板
5 支持体ホルダ
6 支持体回転機構
7 支持体回転軸
8a、8b 蒸発源
9 シャッタ
1A 回路基板
2A センサーパネル
3A 保護膜
4A 蛍光体層
5A 下引き層
6A 光反射層
7A 支持体
1B 蒸着用基板
2B 蛍光体柱状結晶

Claims (7)

  1. 支持体と、
    前記支持体の上に設けられた、高分子材料を含む下引き層と、
    前記下引き層の上に気相堆積法により設けられた、アルカリハライドを主成分とする蛍光体層とを有する放射線画像変換パネルであって、
    該蛍光体層が、複数の蛍光体柱状結晶から構成される複数のドメインを含み、
    該ドメインは、略同一の結晶方位を持つ単独の蛍光体柱状結晶又は蛍光体柱状結晶の集合であり、かつ0.2〜10μmの平均径を有し、
    前記蛍光体層は、気相堆積法によって初期に形成される根元部分から柱状結晶である、放射線画像変換パネル。
  2. 前記蛍光体層中、気相堆積法によって初期に形成される根元部分から50μmまでの膜厚範囲内における、前記ドメインの平均径が0.3〜3μmであり、変動係数が50%以下である請求項1に記載の放射線画像変換パネル。
  3. 前記蛍光体層中、気相堆積法によって初期に形成される根元部分から50μmまでの膜厚範囲内における、結晶成長方向に対し垂直な断面における蛍光体全投影面積の60%以上において、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)を用いた結晶方位解析による(200)結晶方位が10°以内である、請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル。
  4. 前記アルカリハライドが立方晶系アルカリハライドである請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
  5. 前記立方晶系アルカリハライドが、ヨウ化セシウムである、請求項4に記載の放射線画像変換パネル。
  6. 前記蛍光体柱状結晶が、さらに賦活剤であるタリウム化合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
  7. 前記支持体と前記下引き層の間に、反射層を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネル。
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