以下、本発明による回転電機の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る回転電機を示す片側断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る回転電機の要部を示す斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る回転電機に適用される電機子を示す斜視図、図4はこの発明の実施の形態1に係る回転電機に適用される電機子鉄心を構成する鉄心ブロックを示す斜視図、図5はこの発明の実施の形態1に係る回転電機に適用される電機子鉄心を構成する鉄心ブロックを示す上面図、図6はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における鉄心ブロックを構成する鉄心片の製造方法を説明する図、図7はこの発明の実施の形態1に係る回転電機に適用される電機子の電機子巻線を構成する巻線アッセンブリを示す斜視図、図8はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における巻線アッセンブリを構成する巻線体を示す斜視図、図9はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における巻線アッセンブリを構成する巻線体を示す正面図、図10はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における巻線アッセンブリを構成する巻線体を示す側面図、図11はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における巻線アッセンブリを構成する巻線体を正面斜め上方から見た斜視図である。
図1および図2において、回転電機100は、有底円筒状のフレーム2およびフレーム2の開口を塞口する端板3を有するハウジング1と、フレーム2の円筒部に内嵌状態に固着された電機子10と、フレーム2の底部および端板3にベアリング4を介して回転可能に支持された回転軸6に固着されて、電機子10の内周側に回転可能に配設された回転子5と、を備えている。
回転子5は、軸心位置に挿通された回転軸6に固着された回転子鉄心7と、回転子鉄心7の外周面側に埋設されて周方向に所定のピッチで配列され、磁極を構成する永久磁石8と、を備えた永久磁石型回転子である。なお、回転子5は、永久磁石式回転子に限定されず、絶縁しない回転子導体を、回転子鉄心のスロットに収納して、両側を短絡環で短絡したかご形回転子や、絶縁した導体線を回転子鉄心のスロットに装着した巻線形回転子を用いてもよい。
つぎに、電機子10の構成について具体的に図3乃至図9を参照しつつ説明する。
電機子10は、図3に示されるように、電機子鉄心11と、電機子鉄心11に装着された電機子巻線20と、を備えている。ここで、説明の便宜上、回転子5の極数pを8、電機子鉄心11のスロット数Sを48個、電機子巻線20を三相巻線とする。すなわち、スロット13は、毎極毎相当たり2個の割合で電機子鉄心11に形成されている。なお、毎極毎相当たりのスロット数qは2となる。
鉄心ブロック12は、円環状の電機子鉄心11を周方向に48等分割したもので、図4に示されるように、所定枚数の鉄心片14を積層一体化して作製され、断面円弧形のコアバック部12aと、コアバック部12aの内周壁面から径方向内方に延設されたティース12bと、を備えている。さらに、嵌合凸部15がコアバック部12aの周方向一側の側面に突設されて軸方向に延設され、嵌合凹部16がコアバック部12aの周方向他側の側面に凹設されて軸方向に延設されている。そして、図5に示されるように、鉄心ブロック12のティース12bの幅方向中央と電機子鉄心11の軸心Oとを通る中心線Aとコアバック部12aの幅方向一端部との間の最長距離L1と、中心線Aとコアバック部12aの幅方向他端部との間の最長距離L2とが等しくなるように、嵌合凸部15および嵌合凹部16の形状を決定している。
電機子鉄心11は、ティース12bを径方向内方に向けて、コアバック部12aの周方向の側面同士を突き合わせて、48個の鉄心ブロック12を周方向に配列、一体化して、円環状に構成されている。このとき、周方向に隣り合う鉄心ブロック12は、嵌合凸部15と嵌合凹部16とを嵌合させ、互いに径方向位置を規制するようになっている。また、周方向に隣り合う鉄心ブロック12により構成されるスロット13が、内周側に開口するように、周方向に等角ピッチで配列されている。ティース12bは周方向幅が径方向内方に向って漸次狭くなる先細り形状に形成されており、スロット13の断面は長方形となっている。
鉄心片14は、図6に示されるように、例えば、順送プレス加工により電磁鋼板の帯状材から2列となって所定ピッチで打ち抜かれて作製される。
電機子巻線20は、図3に示されるように、電機子鉄心11に装着された巻線アッセンブリ21に所定の結線処理が施されて構成される。巻線アッセンブリ21は、図7に示されるように、連続する6本のティース12bの両側に位置するスロット13の対に収納される巻線体22を1スロットピッチで周方向に配列して構成される。後述する巻線端22gが、それぞれ軸方向に延出して、巻線アッセンブリ21の内径側に1スロットピッチで周方向に配列されている。また、後述する巻線端22hが、それぞれ、軸方向に巻線端22gと同じ方向に延出して、巻線アッセンブリ21の外径側に1スロットピッチで周方向に配列されている。
巻線体22は、図8乃至図11に示されるように、例えば、エナメル樹脂で絶縁被覆された、かつ接続部のない連続した銅線やアルミニウム線などからなる長方形断面の導体線を、長方形断面の長辺で構成される平面が相対し、かつ相対する当該平面間に長方形断面の短辺長さに略等しい隙間dを確保して、略六角形で螺旋状に4回巻かれて構成された亀甲形コイルである。巻線体22は、例えば、導体線をエッジワイズ巻きに螺旋状に4回巻き回して筒状のコイル体を作製し、その後コイル体をコイル成形機により略六角形に成形されて作製される。また、巻線体22は、折り曲げ加工により、導体線を略六角形に曲げつつ、螺旋状に巻いて作製してもよい。
巻線体22は、6スロット角度間隔離れて2列となった、各列に隙間dをあけて、長方形断面の短辺方向に4本ずつ配列された第1および第2直線部22a,22bと、第1および第2直線部22a,22bの列間で、長さ方向の一端同士と他端同士とを交互に連結する第1および第2コイルエンド22c,22dと、を備えている。なお、6スロット角度間隔とは、連続する6つのティース12bの両側のスロット13のスロット中心間の間隔であり、1磁極ピッチに相当する。
第1コイルエンド22cは、一方の列の第1直線部22aの一端から所定の傾斜で他方の列の第2直線部22b側に、かつ第1および第2直線部22a,22bの長さ方向外方に延出し、第1および第2直線部22a,22bの列間の中央部(第1頂部22e)で略直角に曲げられて第1および第2直線部22a,22bの配列方向に隙間dだけ変位し、その後略直角に曲げられて所定の傾斜で他方の列の第2直線部22b側に、かつ第1および第2直線部22a,22bの長さ方向内方に延出し、他方の列の第2直線部22bの一端に接続されている。
同様に、第2コイルエンド22dは、他方の列の第2直線部22bの他端から所定の傾斜で一方の列の第1直線部22a側に、かつ第1および第2直線部22a,22bの長さ方向外方に延出し、第1および第2直線部22a,222bの列間の中央部(第2頂部22f)で略直角に曲げられて第1および第2直線部22a,22bの配列方向に隙間dだけ変位し、その後略直角に曲げられて所定の傾斜で一方の列の第1直線部22a側に、かつ第1および第2直線部22a,22bの長さ方向内方に延出し、一方の列の第1直線部22aの他端に接続されている。
このように構成された巻線体22においては、第1および第2直線部22a,22b、および第1および第2コイルエンド22c,22dは、それぞれ、導体線の長方形断面の長辺で構成される平面を相対させ、導体線の長方形断面の短辺方向に、短辺長さの略2倍(2d)のピッチで配列されている。また、第1頂部22eおよび第2頂部22fを介して接続された第1直線部22aと第2直線部22bは、配列方向に隙間dだけずれている。また、巻線体22は、一方の列の配列方向の一端に位置する第1直線部22aの他端から長さ方向に延出する巻線端22gと、他方の列の配列方向の他端に位置する第2直線部22bの他端から長さ方向に延出する巻線端22hと、を備える。つまり、巻線端22g,22hは、巻線体22の他端側の対角位置から、第1および第2直線部22a,22bの長さ方向に、かつ同じ方向に延出している。
つぎに、巻線アッセンブリ21の組み立て方法について図12乃至図21を参照しつつ説明する。図12乃至図18はそれぞれこの発明の実施の形態1に係る回転電機における巻線アッセンブリの組み立て方法を説明する斜視図、図19乃至図21はそれぞれこの発明の実施の形態1に係る回転電機における巻線アッセンブリの組み立て方法における48番目の巻線体を組み込む手順を説明する模式図である。
まず、導体線を螺旋状に4ターン巻回して巻線体22を作製する。ここで、説明の便宜上、巻線体22を組み付け順に巻線体221、巻線体222、巻線体223・・・巻線体2247、巻線体2248とする。
そして、図12に示されるように、1番目および2番目の巻線体221,222を軸方向高さ位置を揃えて周方向に隣接させる。ついで、図13に示されるように、2番目の巻線体222の第1直線部22aを、1番目の巻線体221の隙間dを有する第2直線部22b間に差し込む。ついで、2番目の巻線体222の第1直線部22aが、1番目の巻線体221の第1直線部22aから1スロットピッチ(1スロット間の角度)離間した位置となるまで、2番目の巻線体222を周方向に移動させる。これにより、2つの巻線体221,222が、図14に示されるように、組み立てられる。2つの巻線体221,222の組立体は、巻線体222の導体線が巻線体221の導体線間の隙間に入り込み、径方向に重なり合い、剛性が高まる。
ついで、図15に示されるように、3番目の巻線体223を巻線体221,222の組立体に軸方向高さ位置を揃えて周方向に隣接させる。ついで、図16に示されるように、3番目の巻線体223の第1直線部22aを、巻線体221,222の第2直線部22b間に差し込む。ついで、3番目の巻線体223の第1直線部22aが、2番目の巻線体222の第1直線部22aから1スロットピッチ離間した位置となるまで、3番目の巻線体223を周方向に移動させる。これにより、3つの巻線体221,222,223が、図17に示されるように、組み立てられる。同様にして、8つの巻線体221,222,223・・・228が、図18に示されるように、組み立てられる。
さらに、巻線体22を順次、軸方向高さ位置を揃え、周方向に移動させて、47番目の巻線体2247まで組み上げる。47個の巻線体221〜2247が組み上げられた組立体23は、拡径されて、図19に示されるように、1番目の巻線体221と47番目の巻線体2247との間を48番目の巻線体2248の周方向幅より広げたC字状に成形される。
ついで、図20に示されるように、48番目の巻線体2248を47番目の巻線体2247側に組み付ける。さらに、図21に示されるように、C字状の組立体23の開口を閉じ、1番目の巻線体221と48番目の巻線体2248とを組み付け、図7に示される円環状の巻線アッセンブリ21が組み立てられる。
このように組み立てられた巻線アッセンブリ21では、径方向に1列に並んだ8本の第1および第2直線部22a,22bが、1スロットピッチで周方向に48列配列される。各列の8本の第1および第2直線部22a,22bは、1つの巻線体22の第1直線部22aと、もう1つの巻線体22の第2直線部22bとにより構成される。
つぎに、巻線アッセンブリ21の電機子鉄心11への装着方法について図22乃至図27を参照しつつ説明する。図22乃至図24はそれぞれこの発明の実施の形態1に係る回転電機における巻線アッセンブリを電機子鉄心に装着する方法を説明する図であり、図22は巻線アッセンブリの装着前の状態を示し、図23は巻線アッセンブリの装着途中の状態を示し、図24は巻線アッセンブリの装着後の状態を示している。図25はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における2つの巻線体が1つのスロットを共有して電機子鉄心に装着された状態を軸方向一端側から見た要部端面図、図26はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における3つの巻線体が電機子鉄心の同一スロット群に周方向に連続して装着された状態を軸方向一端側から見た展開図、図27はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における3つの巻線体が電機子鉄心の同一スロット群に周方向に連続して装着された状態を径方向外方から見た展開図である。なお、図22乃至図24は、便宜上、巻線アッセンブリ21は第1および第2直線部22a,22bのみで表されている。また、図26では、便宜上、コイルエンドを直線的に示している。
まず、巻線アッセンブリ21の巻線体22のそれぞれを径方向外方に少し動かして、巻線アッセンブリ21の外径を最終外径(電機子鉄心11に組み込まれた巻線アッセンブリ21の外径)より大きくする。これにより、第1および第2直線部22a,22bの列間の間隔が広がる。
ついで、48個の鉄心ブロック12が、図22に示されるように、ティース12bのそれぞれを、巻線アッセンブリ21の隣り合う第1および第2直線部22a,22bの列間の径方向外方に位置させるように、周方向に略等角ピッチで配列される。ついで、周方向に配列された鉄心ブロック12を、同時に径方向内方に移動させる。これにより、鉄心ブロック12のティース12bのそれぞれが、図23に示されるように、隣り合う第1および第2直線部22a,22bの列間に挿入される。
そして、周方向に配列された鉄心ブロック12をさらに内径側に移動させると、各列の第1および第2直線部22a,22bが先細り状のティース12bにより1列に並ぶように移動する。これにより、巻線アッセンブリ21が縮径し、巻線アッセンブリ21の最外径に位置する第2直線部22bが隣り合う鉄心ブロック12のコアバック部12aに当接する。さらに、周方向に配列された鉄心ブロック12をさらに内径側に移動させると、隣り合う鉄心ブロック12の周方向の側面同士が突き合わされて、鉄心ブロック12の径方向内方への移動が阻止される。そして、48個の鉄心ブロック12が、コアバック部12aの周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列し、電機子鉄心11を構成する。
これにより、巻線アッセンブリ21が、図24に示されるように、円環状の電機子鉄心11に装着される。つまり、48個の巻線体22が、それぞれ、4本の第1直線部22aと4本の第2直線部22bを、周方向に連続する6本のティース12bの両側に位置するスロット13の対に収納されて、1スロットピッチで周方向に配列されている。各スロット13内には、8本の第1および第2直線部22a,22bが、長方形断面の長辺を周方向に向けて、径方向に1列に整列されて並んで収納される。隣り合う鉄心ブロック12の嵌合凸部15と嵌合凹部16とが嵌合し、互いに径方向位置を規制している。
ここで、電機子鉄心11に装着された巻線アッセンブリ21においては、2つの巻線体22が、図25乃至図27に示されるように、1つのスロット13を共有して、それぞれ、周方向に連続する6本のティース12bの両側に位置するスロット13の対に巻装されている。
1つの巻線体22に着目すれば、一方のスロット13のスロット開口側から第1層の第1直線部22aから軸方向一端側に延出した第1コイルエンド22cは、傾斜角度θで周方向に他方のスロット13側に延び、第1頂部22eで径方向外方に隙間dだけシフトされ、その後逆向きの傾斜角度θで周方向に他方のスロット13側に延び、他方のスロット13のスロット開口側から第2層の第2直線部22bに連結されている。ついで、他方のスロット13のスロット開口側から第2層の第2直線部22bから軸方向他端側に延出した第2コイルエンド22dは、傾斜角度θで周方向に一方のスロット13側に延び、第2頂部22fで径方向外方に隙間dだけシフトされ、その後逆向きの傾斜角度θで周方向に一方のスロット13側に延び、一方のスロット13のスロット開口側から第3層の第1直線部22aに連結されている。ここで、径方向とはスロット深さ方向に相当する。
このように、一方のスロット13の第1層、第3層、第5層および第7層の第1直線部22aと他方のスロット13の第2層、第4層、第6層および第8層の第2直線部22bとが、それぞれ、第1および第2コイルエンド22c、22dにより螺旋状に連結されている。第1および第2直線部22a,22bの端部から第1および第2頂部22e,22fに至る傾斜部は、軸方向から見て、略円弧状に形成されている。そして、2つの巻線体22が共有するスロット13には、2つの巻線体22の第1および第2直線部22a,22bが、導体線の長方形断面の長辺を周方向に向けて、径方向に1列に交互に並んで、収納されている。
この実施の形態1では、巻線体22が、第1および第2コイルエンド22c、22dを第1および第2頂部22e,22fで径方向に第1および第2直線部22a,22bの径方向寸法に略等しい隙間dだけシフトするように構成されている。そこで、1つの巻線体22を、他の1つの巻線体22に、軸方向の高さ位置を合わせて、他の1つの巻線体22側に周方向に移動させることで、干渉無く組み付けることができ、巻線アッセンブリ21の組立性を向上することができる。
また、48個の巻線体22を周方向に1スロットピッチで配列させて巻線アッセンブリ21を組み立て、鉄心ブロック12のティース12bを巻線アッセンブリ21の外径側から第1および第2直線部22a,22bの列間に差し込んで、電機子10を組み立てているので、亀甲形の巻線体22を円環状の電機子鉄心に1スロットピッチで周方向に配列した状態に簡易に装着できる。
鉄心ブロック12のティース12bを巻線アッセンブリ21の外径側から第1および第2直線部22a,22bの列間に差し込む工程に先立って、巻線アッセンブリ21の外径を拡径している。そこで、鉄心ブロック12の巻線アッセンブリ21への装着が簡易となり、電機子10の組立作業性が高められる。
また、先細り状のティース12bを第1および第2直線部22a,22bの列間のそれぞれに外径側から挿入して径方向内方に移動させる。そこで、径方向に不揃いに並んでいる第1および第2直線部22a,22bが、隣り合う鉄心ブロック12のティース12bの間隔が狭まる動きにより1列に整列される。
さらに、巻線アッセンブリ21の最外径に位置する第2直線部22bが隣り合う鉄心ブロック12のコアバック部12aに当接してから、隣り合う鉄心ブロック12のコアバック部12aの側面同士が突き合わされるまでの鉄心ブロック12の移動力が、最外径に位置する第2直線部22bを径方向内方に押し込むように作用する。これにより、巻線アッセンブリ21が縮径され、径方向に整列された第1および第2直線部22a,22bの相互間の隙間が、鉄心ブロック12のコアバック部12aの内径側への移動により、縮小され、あるいはなくなる。そこで、第1および第2直線部22a,22bが、スロット13内に高密度に収納され、導体線の占積率が高められる。
また、スロット13内の導体線と鉄心ブロック12とが接しており、通電時に発熱体となる巻線アッセンブリ21から電機子鉄心11への伝熱性能を向上させることができる。そこで、巻線アッセンブリ21の温度上昇が抑制され、電気抵抗の増加が抑制される。
また、鉄心ブロック12は隣り合うティース12b間の間隔が徐々に狭まるように挿入されるので、電機子巻線20と鉄心ブロック12との接触面での摺動が抑えられ、導体線の絶縁被膜の損傷を防止することができる。
つぎに、巻線アッセンブリ21の結線方法について図28および図29を参照しつつ説明する。図28はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子を軸方向他端側から見た端面図、図29はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子巻線の結線図である。
なお、図28中、1,7,13・・・、43はスロット13に周方向に順にふったスロット番号である。U1−1A,U1−2A・・・U1−8AおよびU1−1B,U1−2B・・・U1−8Bは、スロット番号(1+6n)(但し、nは0を含む自然数)のスロット13の群に装着されたU1相を構成する巻線体22の巻線端であり、U2−1A,U2−2A・・・U2−8A,U2−2AおよびU2−1B,U2−2B・・・U2−8Bはスロット番号(2+6n)のスロット13の群に装着されたU2相を構成する巻線体22の巻線端である。
また、巻線体22がスロット番号(3+6n)のスロット群に装着され、V1相を構成し、巻線体22がスロット番号(4+6n)のスロット群に装着され、V2相を構成する。巻線体22がスロット番号(5+6n)のスロット群に装着され、W1相を構成し、巻線体22がスロット番号(6+6n)のスロット群に装着され、W2相を構成する。ここでは、説明の便宜上、V1−1A,V1−2A,V1−1B,V1−2B(V1相を構成する巻線体22の巻線端)、V2−1A,V2−2A,V2−1B,V2−2B(V2相を構成する巻線体22の巻線端)、W1−1A,W1−2A,W1−1B,W1−2B(W1相を構成する巻線体22の巻線端)、W2−1A,W2−2A,W2−1B,W2−2B(W2相を構成する巻線体22の巻線端)のみを示している。
まず、電気角で360°離れた巻線体22のU1−1BとU1−3A、U1−3BとU1−5A、およびU1−5BとU1−7Aを溶接などにより接合し、U1相の中の4本の巻線体22を直列に接続する。そして、電気角で360°離れた巻線体22のU1−2BとU1−4A、U1−4BとU1−6A、U1−6BとU1−8Aを溶接などにより接合し、U1相の残りの4本の巻線体22を直列に接続する。同様に、電気角で360°離れた巻線体22のU2−1BとU2−3A、U2−3BとU2−5A、U2−5BとU2−7Aを溶接などにより接合し、U2相の中の4本の巻線体22を直列に接続する。そして、電気角で360°離れた巻線体22のU2−2BとU2−4A、U2−4BとU2−6A、U2−6BとU2−8Aを溶接などにより接合し、U2相の残りの4本の巻線体22を直列に接続する。
ついで、U2−1AとU2−2Aを溶接などにより接合し、U1−8BとU2−8B、およびU2−7BとU1−8Bを溶接などにより接合する。これにより、U1相とU2相を構成する16本の巻線体22を直列に接続したU相巻線が得られる。
ついで、電気角で360°離れた巻線体22のV1−1BとV1−3A、V1−3BとV1−5A、およびV1−5BとV1−7Aを溶接などにより接合し、V1相の中の4本の巻線体22を直列に接続する。そして、電気角で360°離れた巻線体22のV1−2BとV1−4A、V1−4BとV1−6A、V1−6BとV1−8Aを溶接などにより接合し、V1相の残りの4本の巻線体22を直列に接続する。同様に、電気角で360°離れた巻線体22のV2−1BとV2−3A、V2−3BとV2−5A、V2−5BとV2−7Aを溶接などにより接合し、V2相の中の4本の巻線体22を直列に接続する。そして、電気角で360°離れた巻線体22のV2−2BとV2−4A、V2−4BとV2−6A、V2−6BとV2−8Aを溶接などにより接合し、V2相の残りの4本の巻線体22を直列に接続する。
ついで、V2−1AとV2−2Aを溶接などにより接合し、V1−8BとV2−8B、およびV2−7BとV1−8Bを溶接などにより接合する。これにより、V1相とV2相を構成する16本の巻線体22を直列に接続したV相巻線が得られる。
ついで、電気角で360°離れた巻線体22のW1−1BとW1−3A、W1−3BとW1−5A、およびW1−5BとW1−7Aを溶接などにより接合し、W1相の中の4本の巻線体22を直列に接続する。そして、電気角で360°離れた巻線体22のW1−2BとW1−4A、W1−4BとW1−6A、W1−6BとW1−8Aを溶接などにより接合し、W1相の残りの4本の巻線体22を直列に接続する。同様に、電気角で360°離れた巻線体22のW2−1BとW2−3A、W2−3BとW2−5A、W2−5BとW2−7Aを溶接などにより接合し、W2相の中の4本の巻線体22を直列に接続する。そして、電気角で360°離れた巻線体22のW2−2BとW2−4A、W2−4BとW2−6A、W2−6BとW2−8Aを溶接などにより接合し、W2相の残りの4本の巻線体22を直列に接続する。
ついで、W2−1AとW2−2Aを溶接などにより接合し、W1−8BとW2−8B、およびW2−7BとW1−8Bを溶接などにより接合する。これにより、W1相とW2相を構成する16本の巻線体22を直列に接続したW相巻線が得られる。
さらに、U1−2AとV1−2AとW1−2Aとを溶接などにより接合する。これにより、16本の巻線体22を直列に接続したU相巻線と、16本の巻線体22を直列に接続したV相巻線と、16本の巻線体22を直列に接続したW相巻線とをY結線して構成される電機子巻線20が得られる。この電機子巻線20は、全節巻きの分布巻きの3相交流巻線となる。
なお、巻線体22の第1および第2巻線端22g、22hの溶接部間の絶縁については、何ら記載していないが、例えば、溶接部に電気絶縁性樹脂を塗布すればよい。
このように結線された電機子巻線20を用いた回転電機100は、電機子巻線20に所定の交流電力を給電することで、8極、48スロットのインナーロータ型の3相モータとして動作する。
この実施の形態1によれば、電機子鉄心11が、円弧状のコアバック部12a、ティース12b、コアバック部12aの周方向一側の側面に形成された嵌合凸部15、およびコアバック部12aの周方向他側の側面に形成された嵌合凹部16を有する鉄心ブロック12を、コアバック部12aの周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列して構成されている。そして、隣り合う鉄心ブロック12は、嵌合凸部15と嵌合凹部16を嵌合させて、互いに径方向位置を規制されている。そこで、コアバック部12aの周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列された鉄心ブロック12のティース12bの先端面で構成される電機子鉄心11の内径の真円度が高められ、トルク脈動の発生を抑制できる。
なお、上記実施の形態1では、嵌合凸部15がコアバック部12aの一方の側面に形成され、嵌合凹部16がコアバック部12aの他方の側面に形成された鉄心ブロック12を周方向に配列して電機子鉄心11を構成するものとしているが、嵌合凸部15がコアバック部の両側面に形成された鉄心ブロックと、嵌合凹部16がコアバック部の両側面に形成された鉄心ブロックとを交互に周方向に配列して電機子鉄心を構成してもよい。
また、上記実施の形態1では、1つの嵌合凸部15がコアバック部12aの一方の側面に形成され、1つの嵌合凹部16がコアバック部12aの他方の側面に形成されているものとしているが、コアバック部12aの各側面に形成される嵌合凸部15および嵌合凹部16の個数は1つに限定されず、例えば2つでもよい。
また、上記実施の形態1では、嵌合凸部15がコアバック部12aの一方の側面に形成され、嵌合凹部16がコアバック部12aの他方の側面に形成されているものとしているが、嵌合凸部15と嵌合凹部16の両方をコアバック部12aの各側面に形成してもよい。
実施の形態2.
図30はこの発明の実施の形態2に係る回転電機に適用される電機子鉄心を構成する鉄心ブロックを示す斜視図、図31はこの発明の実施の形態2に係る回転電機における鉄心ブロックを構成する鉄心片の製造方法を説明する図である。
図30において、鉄心ブロック12Aは、積層される鉄心片14の一部の鉄心片14の表裏を逆さにして積層して作製されている。そして、嵌合凸部15がコアバック部12aの周方向他側の側面に凹設されて軸方向に延設されている嵌合凹部16の一部に突設されている。また、図示されていないが、嵌合凹部16がコアバック部12aの周方向一側の側面に突設されて軸方向に延設されている嵌合凸部15の一部に凹設されている。
なお、この実施の形態2は、鉄心ブロック12に替えて鉄心ブロック12Aを用いている点を除いて、上記実施の形態1と同様に構成されている。
この実施の形態2によれば、隣り合う鉄心ブロック12Aが、嵌合凸部15と嵌合凹部16の嵌合により、互いに径方向位置および軸方向位置を規制される。そこで、コアバック部12aの側面同士を突き合わせて鉄心ブロック12Aを円環状に配列するだけで、鉄心ブロック12Aの径方向および軸方向の位置決めがなされるので、電機子の組立性が向上される。
ここで、鉄心ブロック12Aを順送プレス加工により作製する場合、図31に示されるように、電磁鋼板の帯状材17から嵌合凸部15が右向きの鉄心片14と嵌合凸部15が左向きの鉄心片14とを打ち分ける必要がある。このとき、順送ピッチxは、(2L1+a)又は(2L2+a)となる。なお、aは打ち抜きのために必要な離間距離である。そして、L1とL2とが異なる場合には、順送ピッチxは(2L1+a)および(2L2+a)のうちの大きい値に設定されることになり、歩留まりが悪化する。この実施の形態2によれば、L1とL2を等しくしているので、順送ピッチxが最小となり、歩留まりを高めることができる。
実施の形態3.
図32および図33はそれぞれこの発明の実施の形態3に係る回転電機における巻線アッセンブリを電機子鉄心に装着する方法を説明する図であり、図32は巻線アッセンブリの装着前の状態を示し、図33は巻線アッセンブリの装着途中の状態を示している。なお、図32および図33では、便宜上、巻線アッセンブリ21は第1および第2直線部22a,22bのみで表されている。
ここで、実施の形態3による巻線アッセンブリ21を電機子鉄心11に装着する方法について説明する。
まず、例えばポリイミドフィルムをメタ系アラミド繊維で挟み込んで作製された長方形のシートを曲げ成形してコ字状に形成された絶縁紙25を用意する。この絶縁紙25は、鉄心ブロック12の軸方向長さ(電機子鉄心の軸方向長さ)より僅かに長い幅を有している。絶縁紙25のコ字状の底部の長さは、巻線体22の断面矩形の導体線の長辺長さに等しい。絶縁紙25のコ字状の両側部の長さは、スロット深さに等しい。
ついで、絶縁紙25のコ字状の底部を、接着剤などにより、巻線アッセンブリ21の周方向に配列された各列の最外径に位置する第2直線部22bの径方向外方の面に固着し、絶縁紙25を巻線アッセンブリ21に装着する。これにより、図32に示されるように、絶縁紙25が、両側部で、径方向に1列に配列されている8本の第1および第2直線部22a,22bを挟み込むように、巻線アッセンブリ21に装着される。
ついで、48個の鉄心ブロック12が、図32に示されるように、ティース12bのそれぞれを、巻線アッセンブリ21の隣り合う第1および第2直線部22a,22bの列間の径方向外方に位置させるように、周方向に略等角ピッチで配列される。ついで、周方向に配列された鉄心ブロック12を、同時に径方向内方に移動させる。これにより、鉄心ブロック12のティース12bのそれぞれが、図33に示されるように、隣り合う第1および第2直線部22a,22bの列間に挿入される。
そして、周方向に配列された鉄心ブロック12をさらに内径側に移動させると、絶縁紙25の両側部が先細り状のティース12bにより1列に並ぶ第1および第2直線部22a,22bに接するように曲げられる。これにより、各列の不揃いの第1および第2直線部22a,22bが1列に整列される。この鉄心ブロック12の内径側の移動により、巻線アッセンブリ21が縮径し、絶縁紙25の底部が隣り合う鉄心ブロック12のコアバック部12aに当接する。さらに、周方向に配列された鉄心ブロック12をさらに内径側に移動させると、隣り合う鉄心ブロック12の周方向の側面同士が突き合わされて、鉄心ブロック12の径方向内方への移動が阻止される。そして、48個の鉄心ブロック12が、コアバック部12aの周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列し、電機子鉄心11を構成する。
これにより、巻線アッセンブリ21が、円環状の電機子鉄心11に装着される。そして、各スロット13内には、8本の第1および第2直線部22a,22bが、長方形断面の長辺を周方向に向けて、径方向に1列に整列されて収納される。さらに、コ字状の絶縁紙25が、スロット13の内周面と、径方向に1列に整列された8本の第1および第2直線部22a,22bとの間に介装される。また、隣り合う鉄心ブロック12の嵌合凸部15と嵌合凹部16とが嵌合し、互いに径方向位置を規制している。
この実施の形態3においても、鉄心ブロック12を用いているので、コアバック部12aの周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列された鉄心ブロック12のティース12bの先端面で構成される電機子鉄心11の内径の真円度が高められ、トルク脈動の発生を抑制できる。
この実施の形態3によれば、鉄心ブロック12を巻線アッセンブリ21に外径側から装着する工程に先立って、コ字状に形成された絶縁紙25が、底部を各列の最外径に位置する第2直線部22bに固着して、両側部で径方向に1列に並ぶ第1および第2直線部22a,22bを挟むように、巻線アッセンブリ21に装着されている。
そこで、鉄心ブロック12を外径側から巻線アッセンブリ21に挿入する際に、絶縁紙25がガイドとなり、鉄心ブロック12を巻線アッセンブリ21にスムーズに挿入できる。つまり、鉄心ブロック12の挿入過程での、ティース12bの先端と径方向に不揃いに並んでいる第1および第2直線部22a,22bとの間の引っ掛かりが絶縁紙25により回避される。また、鉄心ブロック12と巻線アッセンブリ21との直接的な接触が絶縁紙25により回避される。そこで、巻線アッセンブリ21の導体線の絶縁被膜の損傷の発生が抑制され、絶縁性能が高められる。さらに、絶縁紙25を別部材で保持する必要がなく、電機子の組立工程を簡略化できる。
また、絶縁紙25が、径方向に1列に整列された8本の第1および第2直線部22a,22bとスロット13の内周面との間に介装されているので、電機子鉄心と電機子巻線との間の絶縁が確実に確保される。
スロット13内における巻線体22間の電位差は、巻線体22と電機子鉄心との間の電位差より小さい。そして、電位差の大きな巻線体22と電機子鉄心との間の絶縁は、絶縁紙25により確保される。そこで、巻線体22を構成する導体線の絶縁被膜は、巻線体22間の電位差に耐える厚さを有すればよく、絶縁被膜の厚さを薄くできる。したがって、絶縁被膜が薄くなる分、スロット13内の導体寸法を大きくでき、電機子巻線の低抵抗化が図られる。
実施の形態4.
図34および図35はそれぞれこの発明の実施の形態4に係る回転電機における巻線アッセンブリを電機子鉄心に装着する方法を説明する図であり、図34は巻線アッセンブリの装着前の状態を示し、図35は巻線アッセンブリの装着途中の状態を示している。図36はこの発明の実施の形態4に係る回転電機における電機子の要部を内径側から見た模式図である。なお、図34および図35では、便宜上、巻線アッセンブリ21は第1および第2直線部22a,22bのみで表されている。
ここで、実施の形態4による巻線アッセンブリ21を電機子鉄心11に装着する方法について説明する。
まず、48個の鉄心ブロック12を周方向の間隔を広げて円環状に配列する。そして、絶縁紙25のコ字状の開口側を広げ、底部を隣り合う2つの鉄心ブロック12の相対するコアバック部12aに向けて、両側部の延出端を、接着剤などにより、隣り合う2つの鉄心ブロック12のティース12bの相対する先端部に固着する。同様にして、絶縁紙25を、隣り合う2つの鉄心ブロック12の全てに装着する。ここで、2つの鉄心ブロック12の間隔を狭めると、絶縁紙25が2つの鉄心ブロック12により画成される空間内に収納される。
ついで、絶縁紙25が装着された48個の鉄心ブロック12の周方向の間隔を狭め、図34に示されるように、ティース12bのそれぞれを、巻線アッセンブリ21の隣り合う第1および第2直線部22a,22bの列間の径方向外方に位置させるように、鉄心ブロック12を周方向に略等角ピッチで配列される。ついで、周方向に配列された鉄心ブロック12を、同時に径方向内方に移動させる。これにより、鉄心ブロック12のティース12bのそれぞれが、図35に示されるように、隣り合う第1および第2直線部22a,22bの列間、すなわちコ字状の絶縁紙25内に挿入される。
そして、周方向に配列された鉄心ブロック12をさらに内径側に移動させると、絶縁紙25の両側部が1列に並ぶ第1および第2直線部22a,22bに接するように狭められる。これにより、各列の不揃いの第1および第2直線部22a,22bが1列に整列される。この鉄心ブロック12の内径側の移動により、巻線アッセンブリ21が縮径し、最外径に位置する第2直線部22bが絶縁紙25の底部を介して隣り合う鉄心ブロック12のコアバック部12aに当接する。さらに、周方向に配列された鉄心ブロック12をさらに内径側に移動させると、隣り合う鉄心ブロック12の周方向の側面同士が突き合わされて、鉄心ブロック12の径方向内方への移動が阻止される。そして、48個の鉄心ブロック12が、コアバック部12aの周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列し、電機子鉄心11を構成する。
これにより、巻線アッセンブリ21が、円環状の電機子鉄心11に装着される。そして、各スロット13内には、8本の第1および第2直線部22a,22bが、長方形断面の長辺を周方向に向けて、径方向に1列に整列されて収納される。さらに、コ字状の絶縁紙25が、スロット13の内周面と、径方向に1列に整列された8本の第1および第2直線部22a,22bとの間に介装される。また、隣り合う鉄心ブロック12の嵌合凸部15と嵌合凹部16とが嵌合し、互いに径方向位置を規制している。
この実施の形態4においても、鉄心ブロック12を用いているので、コアバック部12aの周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列された鉄心ブロック12のティース12bの先端面で構成される電機子鉄心11の内径の真円度が高められ、トルク脈動の発生を抑制できる。
この実施の形態4では、鉄心ブロック12を巻線アッセンブリ21に外径側から装着する工程に先立って、コ字状に形成された絶縁紙25が、底部を隣り合う2つの鉄心ブロック12のコアバック部12aに向けて、両側部の先端を隣り合う2つの鉄心ブロック12のティース12bの相対する先端部に固着して、周方向に環状に配列される48個の鉄心ブロック12に装着されている。
そこで、鉄心ブロック12を外径側から巻線アッセンブリ21に挿入する際に、鉄心ブロック12と巻線アッセンブリ21との直接的な接触が絶縁紙25により回避される。そこで、巻線アッセンブリ21の導体線の絶縁被膜の損傷の発生が抑制され、絶縁性能が高められる。さらに、絶縁紙25を別部材で保持する必要がなく、電機子の組立工程を簡略化できる。
また、絶縁紙25が、径方向に1列に整列された8本の第1および第2直線部22a,22bとスロット13の内周面との間に介装されているので、電機子鉄心と電機子巻線との間の絶縁が確実に確保される。そこで、上記実施の形態3と同様に、巻線体22を構成する導体線の絶縁被膜の厚さを薄くできるので、絶縁被膜が薄くなる分、スロット13内の導体寸法を大きくでき、電機子巻線の低抵抗化が図られる。
この実施の形態4においては、鉄心ブロック12を巻線アッセンブリ21に装着する工程に先立って、絶縁紙25を鉄心ブロック12に固着している。そこで、絶縁紙25の鉄心ブロック12への固着工程において、絶縁紙25の鉄心ブロック12からの軸方向の延出量を高精度に管理することができる。これにより、図36に示されるように、電機子鉄心11の軸方向両端における沿面距離lを確実に確保することができ、絶縁性能を高めることができる。
実施の形態5.
図37乃至図40はそれぞれこの発明の実施の形態5に係る回転電機における巻線アッセンブリを電機子鉄心に装着する方法を説明する図であり、図37は巻線アッセンブリの装着前の状態を示し、図38は巻線アッセンブリの装着途中の状態を示し、図39は巻線アッセンブリの装着後の状態を示し、図40は図39の一部を拡大した状態を示している。なお、図37乃至図40では、便宜上、巻線アッセンブリ21は第1および第2直線部22a,22bのみで表されている。
この実施の形態5では、鉄心ブロック12に替えて、鉄心ブロック31を用いている。
鉄心ブロック31は、図40に示されるように、断面円弧形のコアバック部31aと、コアバック部31aの内周壁面から周方向に所定距離離れてそれぞれ径方向内方に延設された2つのティース31bと、を備えている。嵌合凸部32がコアバック部31aの周方向一側の側面に突設されて軸方向に延設され、嵌合凹部33がコアバック部31aの周方向他側の側面に凹設されて軸方向に延設されている。
ティース31bは、周方向幅が径方向内方に向って漸次狭くなる先細り形状に形成されている。そこで、鉄心ブロック31の2つのティース31bにより画成される第1スロット34aの断面、およびコアバック部31aの側面同士を突き合わせて配列された2つの鉄心ブロック31の相対するティース31bにより画成される第2スロット34bの断面は、長方形となっている。そして、第1スロット34aの周方向幅d1は、第2スロット34bの周方向幅d2より広くなっている。
ここで、鉄心ブロック31の巻線アッセンブリ21への装着工程では、鉄心ブロック31の内径側への移動により、隣り合う鉄心ブロック31の相対するティース31b間の隙間が漸次縮小し、相対するティース31b間に絶縁紙25および巻線体22の第1および第2直線部22a,22bを挟み込む。そこで、第2スロット34bの周方向幅d2は、巻線体22の第1および第2直線部22a,22bの周方向寸法と、第2スロット34bと第1および第2直線部22a,22bとの間に介装される絶縁紙25の厚みと、から決められる。なお、絶縁紙25が介装されない場合には、周方向幅d2は、第1および第2直線部22a,22bの周方向寸法によって決められる。
一方、第1スロット34aの周方向幅d1は、固定値であるので、周方向幅d1が狭すぎると、鉄心ブロック31の巻線アッセンブリ21への挿入過程で、絶縁紙25および第1および第2直線部22a,22bが第1スロット34a内に挿入できなくなる。そこで、絶縁紙25および第1および第2直線部22a,22bを第1スロット34a内に容易に挿入できるようにするためには、第1スロット34aの周方向幅d1を第2スロット34bの周方向幅d2より20μm以上大きくすることが望ましい。また、第1スロット34aの周方向幅d1を大きくし過ぎると、導体の占積率が低下するとともに、巻線体22から電機子鉄心30への熱伝導性が悪化してしまう。そこで、導体の占積率の低下および巻線体22から電機子鉄心30への熱伝導性の悪化を抑制する観点から、第1スロット34aの周方向幅d1と第2スロット34bの周方向幅d2との差を100μm以下とすることが望ましい。このように、第1スロット34aの周方向幅d1を、20μm≦d1−d2≦100μmを満足するように設定することが望ましい。
つぎに、実施の形態5による巻線アッセンブリ21を電機子鉄心30に装着する方法について説明する。
まず、巻線アッセンブリ21の周方向に配列された第1および第2直線部22a,22bの1つ置きの列を挟むように平行なガイド板36の対をセットする。このようにセットされたガイド板36の24対は、放射状に配置され、径方向に移動可能となっている。
ついで、24個の鉄心ブロック31が、図37に示されるように、第1スロット34aをガイド板36の対に挟まれた第1および第2直線部22a,22bの列の径方向外方に位置させるように、周方向に略等角ピッチで配列される。ついで、周方向に配列された鉄心ブロック31を、同時に径方向内方に移動させる。これにより、図38に示されるように、ティース31bがガイド板36を押圧して内径側に移動させつつ、隣り合う第1および第2直線部22a,22bの列間に挿入される。同時に、ガイド板36の対に挟まれている第1および第2直線部22a,22bの列が第1スロット34a内に挿入される。
そして、周方向に配列された鉄心ブロック31をさらに内径側に移動させると、第1および第2直線部22a,22bが隣り合う鉄心ブロック31の相対するティース31bにより1列に並ぶように移動する。これにより、巻線アッセンブリ21が縮径し、巻線アッセンブリ21の最外径に位置する第2直線部22bが鉄心ブロック31のコアバック部31aに当接する。さらに、鉄心ブロック31をさらに内径側に移動させると、隣り合う鉄心ブロック31のコアバック部31aの周方向の側面同士が突き合わされて、鉄心ブロック31の径方向内方への移動が阻止される。そして、24個の鉄心ブロック31が、コアバック部31aの周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列し、電機子鉄心30を構成する。
これにより、巻線アッセンブリ21が、円環状の電機子鉄心30に装着される。そして、第1および第2スロット34a,34b内には、8本の第1および第2直線部22a,22bが、長方形断面の長辺を周方向に向けて、径方向に1列に整列されて収納される。また、隣り合う鉄心ブロック31の嵌合凸部32と嵌合凹部33とが嵌合し、互いに径方向位置を規制している。
この実施の形態5においても、隣り合う鉄心ブロック31の嵌合凸部32と嵌合凹部33とが嵌合し、互いに径方向位置を規制しているので、コアバック部31aの周方向の側面同士を突き合わせて円環状に配列された鉄心ブロック31のティース31bの先端面で構成される電機子鉄心11の内径の真円度が高められ、トルク脈動の発生を抑制できる。
この実施の形態5では、鉄心ブロック31が、コアバック部31aの内周壁面から径方向内方に延設された2つのティース31bを備えているので、鉄心ブロック31の個数が24個となり、電機子の組立作業性が高められる。さらに、鉄心ブロック31の2つのティース31bにより画成される第1スロット34aの周方向幅d1を、隣り合う鉄心ブロック31の相対するティース31bにより画成される第2スロット34bの周方向幅d2より広くしているので、1つの鉄心ブロック31に2つのティース31bを設けることによる巻線アッセンブリ21の装着性の悪化を抑制している。
なお、上記各実施の形態では、巻線体22が接続部のない連続した導体線を螺旋状に巻回して構成されているのとしているが、巻線体は、例えば短尺の導体を連結して作製された導体線を螺旋状に巻回して構成されてもよい。
また、上記各実施の形態では、本願を電動機に適用した場合について説明しているが、本願を発電機に適用しても、同様の効果を奏する。
また、上記各実施の形態では、8極48スロットの回転電機について説明しているが、極数およびスロット数は、8極48スロットに限定されないことは言うまでもないことである。また、スロット数が毎極毎相当たり2の割合で形成されているものとしているが、毎極毎相当たりのスロット数は2に限定されず、1でもよく、3以上でもよい。
また、上記各実施の形態では、巻線体が導体線を螺旋状に4ターン巻回して構成されているものとしているが、導体線のターン数は4回に限定されず、2回以上であればよい。