JP2014049309A - 活物質材料、全固体電池、および活物質材料の製造方法 - Google Patents

活物質材料、全固体電池、および活物質材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、硫化物固体電解質材料との接触による高抵抗層の形成を抑制することができ、生産性が高い活物質材料等を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、Liと、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つと、Oとを含有し、さらにZrを含有する岩塩層状構造の活物質、ならびに、上記活物質の表面上にLiZrOを析出させて形成されたコート層を有することを特徴とする活物質材料を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、硫化物固体電解質材料との接触による高抵抗層の形成を抑制することが可能であり、簡便な方法で製造可能な活物質材料に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として優れた電池(例えばリチウム電池)の開発が重要視されている。また、情報関連機器や通信関連機器以外の分野では、例えば自動車産業界において、電気自動車やハイブリッド自動車に用いられるリチウム電池等の開発が進められている。
ここで、従来市販されているリチウム電池には、可燃性の有機溶媒を用いた有機電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対して、液体電解質を固体電解質に変更した全固体電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。また、全固体電池においては、出力特性を高めるために、イオン伝導性の高い固体電解質材料として、従来から硫化物固体電解質材料が用いられている。
ところで、全固体電池の分野において、従来から、活物質および固体電解質材料の界面に着目し、全固体電池の性能向上を図る試みがある。
例えば、特許文献1〜4においては、硫化物を主体とするリチウムイオン伝導性固体電解質を用いた全固体リチウム電池であって、LiNiO等の活物質の表面上に、ZrO等の金属酸化物やリチウムイオン伝導性酸化物から構成されるコート層を形成した正極活物質材料を用いた全固体リチウム電池が開示されている。この技術は、固体電解質材料と正極活物質との接触界面にて生じる高抵抗層の形成を抑制するものである。また、この技術は、固体電解質材料として硫化物固体電解質材料を用いた場合に特に好適に用いられるものである。
特開2008−103204号公報 特開2012−028231号公報 特開2010−146936号公報 特開2011−165467号公報
ところで、上述した特許文献1〜4に開示されている技術は、いずれも活物質の表面上に上述した金属酸化物等を機械的に接触させてコート層を形成する処理を必要とする。そのため、活物質材料の製造プロセスにおける工程数が増えることから、生産性高く活物質材料を得ることが困難であるという問題がある。
また、活物質材料においては、上述の高抵抗層の形成の抑制効果をさらに良好なものとすることが求められている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、硫化物固体電解質材料との接触による高抵抗層の形成を抑制することができ、生産性が高い活物質材料、これを用いた全固体電池、および上記活物質を製造する活物質材料の製造方法を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究を行った結果、活物質材料の製造時における温度処理条件、温度処理時間を所定の条件に調整し、活物質の原料中に所定量のZr源を用いることにより、活物質にさらにZrを含有させることができること、および、その活物質の表面にLiZrOを析出させてコート層を形成することができることを見出した。本発明は、これらの点を見出したことに大きな特徴を有する。
すなわち、本発明においては、Liと、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つと、Oとを含有し、さらにZrを含有する岩塩層状構造の活物質、ならびに、上記活物質の表面上にLiZrOを析出させて形成されたコート層を有することを特徴とする活物質材料を提供する。
本発明によれば、LiZrOを析出させて形成されたコート層を有することにより、硫化物固体電解質材料との接触による高抵抗層の形成を抑制することができ、生産性が高い活物質材料とすることができる。
上記発明においては、上記活物質および上記コート層に含まれるZrの含有量の合計が、上記活物質材料に含有される遷移元素に対して5mol%以上であることが好ましい。活物質の表面上にコート層がより良好に形成された活物質材料とすることができ、上述した高抵抗層の形成をより好適に抑制することができるからである。
本発明においては、正極活物質材料を含有する正極活物質層と、負極活物質材料を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有し、上記正極活物質材料が、上述の活物質材料であり、上記活物質材料が、硫化物固体電解質材料と接していることを特徴とする全固体電池を提供する。
本発明によれば、上記正極活物質材料が上述した活物質材料であることにより、活物質および硫化物固体電解質材料の接触部分における高抵抗層の形成を抑制することが可能となり、界面抵抗が低い良好な性能を有する全固体電池とすることができる。
本発明においては、上述の活物質材料の製造方法であって、Ni源、Co源、およびMn源の少なくとも1つを酸に溶解させて酸性水溶液を作製する溶解工程と、上記酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加することにより、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つを含有する水酸化物を沈殿させる添加工程と、上記水酸化物をLi源とともに焼成することにより、岩塩層状構造の活物質を形成する焼成工程と、を有し、上記溶解工程および上記焼成工程の少なくとも一方で、Zr源を用い、上記焼成工程で上記活物質の表面上にLiZrOを析出させてコート層を形成することを特徴とする活物質材料の製造方法を提供する。
本発明によれば、硫化物固体電解質材料との接触による高抵抗層の形成を抑制することができる活物質材料を生産性高く製造することができる。
本発明の活物質材料は、硫化物固体電解質材料との接触による高抵抗層の形成を抑制することができ、生産性が高いといった作用効果を奏する。
本発明の活物質材料の一例を示す概略断面図である。 本発明の全固体電池の一例を示す概略断面図である。 本発明の活物質材料の製造方法の一例を示すフローチャートである。 実施例1〜2および比較例の活物質材料のZrの含有量(mol%)と、界面抵抗(Ω・cm)との関係を示すグラフである。 図5(a)は、実施例1〜2および比較例の活物質材料のXRD測定結果を示す図であり、図5(b)は図5(a)のA部分の拡大図である。
以下、本発明の活物質材料、全固体電池、および活物質材料の製造方法について説明する。
A.活物質材料
本発明の活物質材料は、Liと、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つと、Oとを含有し、さらにZrを含有する岩塩層状構造の活物質、ならびに、上記活物質の表面上にLiZrOを析出させて形成されたコート層を有することを特徴とするものである。
なお、「LiZrOを析出させて形成された」の定義については、後述する。
図1は、本発明の活物質材料の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の活物質材料1は、Liと、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つと、Oとを含有し、さらにZrを含有する岩塩層状構造の活物質1a、ならびに、活物質1a表面上にLiZrOを析出させて形成されたコート層1bを有することを特徴とする。
本発明によれば、LiZrOを析出させて形成されたコート層を有することにより、硫化物固体電解質材料との接触による高抵抗層の形成を抑制することができ、生産性が高い活物質材料とすることができる。
よって、本発明の活物質材料を全固体電池に適用した場合に、活物質と硫化物固体電解質材料との接触による高抵抗層の形成を抑制することができるので、界面抵抗が低下した全固体電池を得ることができる。
ここで、従来の活物質材料の製造時においては、活物質の表面上に上述した金属酸化物等を機械的に接触させてコート層を形成する処理を必要とする。そのため、活物質材料の製造プロセスにおける工程数が増えることから、生産性高く活物質材料を得ることが困難であるという問題がある。また、製造コストについても高くなるという問題がある。
また、機械的にコート層を形成する場合は、コート層の厚みを制御することが難しく、活物質の表面上に均一なコート層を形成することが困難であるという問題もある。
またこの場合、機械的にコート層を形成する処理において活物質の結晶性が低下する等のダメージが生じ、活物質自体の性能が低下する場合があるという問題がある。
これに対して、本発明によれば、コート層が活物質の形成とともにLiZrOを析出させて形成されたものであることから、別途にコート層を機械的に形成する工程を必要としない。よって、簡便な方法で活物質材料を形成することができ、また製造コストを削減することが可能となるため、生産性の高い活物質材料とすることができる。
また、本発明によれば、コート層が活物質の形成とともにLiZrOを析出させて形成されたものであることから、別途にコート層を形成する工程を行わないため、活物質へのダメージを抑制することができる。
また、活物質の表面上にLiZrOを析出させることにより、より均一なコート層を形成することが可能となる。
また、活物質がZrを含有することにより、活物質中でZrが安定であるため活物質の結晶構造を崩れにくくすることができ、活物質の耐久性を良好なものとすることができる。よって、活物質の結晶性の低下による活物質の性能の低下を抑制することが可能となる。
また、本発明によれば、活物質がZrを含有していることにより、活物質材料における活物質が硫化物固体電解質材料と接触した場合も、高抵抗層の形成を抑制することが可能となる。この理由については明らかでないが次のように考えられる。
すなわち、一般に、上記高抵抗層は、酸化物活物質と硫化物固体電解質材料とが接触した場合、酸化物活物質の触媒作用により、硫化物固体電解質材料表面において酸化反応が生じることにより形成されるといわれている。
本発明においては、活物質がZrを含有していることにより、活物質表面に、上述した硫化物固体電解質材料の酸化反応に寄与しないZrを存在させることが可能となることが推量され、その結果、活物質および硫化物固体電解質材料の接触部分における酸化反応を抑制することが可能となり、高抵抗層の形成が抑制されると推量される。
また、活物質がZrを含有していることにより、活物質表面にはZrが均一に存在していると推量され、高抵抗層の形成を抑制する効果をムラなく発揮することができると推量される。
本発明の活物質材料は、活物質およびコート層の両方が高抵抗層の形成を抑制する効果
を発揮するため、その相乗効果により良好に高抵抗層の形成を抑制することが可能となる。
以下、本発明の活物質材料の詳細について説明する。
1.活物質
まず、本発明における活物質について説明する。
本発明における活物質は、Liと、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つと、Oとを含有し、さらにZrを含有する岩塩層状構造の活物質であることを特徴とする。
ここで、「活物質がさらにZrを含有する」とは、活物質の岩塩層状構造の内部にZrを含有することをいう。また、活物質粒子の表面をZr単体、またはZr化合物の粒子が覆うといった構成を指すものではない。
岩塩層状構造の活物質としては、Liと、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つと、Oと、Zrとを含有するものであれば特に限定されないが、Zrが結晶構造に組み込まれていることが好ましい。
具体的に、上記岩塩層状構造の活物質としては、下記の一般式で示される結晶相を有するものが挙げられる。
LiNiw−aCox−bMny−cZr(一般式)
(上記一般式においてw、x、yはそれぞれ独立に0以上であり、w+x+y=1を満たし、a、b、cはそれぞれ独立に0以上であり、a+b+c=d、d>0を満たす。)
上記岩塩層状構造の活物質としては、より具体的には、LiCo1−dZr(d>0)、LiNi1−dZr(d>0)、LiMn1−dZr(d>0)、LiNi4/5−aCo1/5−bZr(a≧0、b≧0、a+b=d、d>0)、LiNi1/2−aMn1/2−cZr(a≧0、c≧0、a+c=d、d>0)LiNi1/3−aCo1/3−bMn1/3−cZr(a≧0、b≧0、c≧0、a+b+c=d、d>0)等が挙げられる。なかでも、LiNi1/3−aCo1/3−bMn1/3−cZrが好ましい。
本発明における活物質が、Zrが結晶構造中に組み込まれているものである場合、Zrの置換量(上記一般式におけるdに該当するもの)は、特に限定されない。このようなZrの置換量は、活物質材料の製造時における温度処理条件、温度処理時間、およびZr源の添加量等に応じて適宜決定される。
Zrの置換量は、例えば0.5mol%〜1.5mol%の範囲内である。
本発明における活物質の形状としては、特に限定されず、例えば粒子状(粉末状)であってもよく、薄膜状であってもよいが、粒子状であることが好ましい。薄膜のように剥離やクラック等が生じす、耐久性に優れているからである。
活物質中のZr濃度の分布としては、特に限定されず、例えば粒子状の活物質である場合、活物質全体で均一であってもよく、また例えば、活物質表面においてZr濃度が高く活物質の中心部においてZr濃度が低くなるように偏っていてもよい。
ここで、本発明における活物質においてZrは、活物質および硫化物固体電解質材料との酸化反応に寄与しないものである。また、Zrは、電池反応にも寄与しないものである。
本発明における活物質が粒子状である場合、その活物質表面のZr濃度(Zrの元素割合(atomic%)/(遷移元素の元素割合(atomic%)の総和)×100(%)としては、特に限定されないが、0.5%以上、なかでも0.7%以上、特に1%以上、さらに4%以上であることが好ましい。また、上記活物質表面のZr濃度としては、50%以下、なかでも30%以下、特に10%以下であることが好ましい。
なお、本発明における活物質表面とは、粒子状の活物質の最表面から10nmまでの距離をいう。
上記Zr濃度が上記範囲に満たない場合は、活物質がZrを含有する場合も、全固体電池とした場合に、高抵抗層の形成を抑制することが困難となる場合があるからであり、上記Zr濃度が上記範囲を超える場合は、活物質自体を形成することが困難となる可能性があるからである。
なお、本発明における遷移元素については後述するZrの含有量の項目で説明する。
また、本発明における活物質の中心部のZr濃度としては、特に限定されないが、20%以下、なかでも10%以下、特に5%以下であることが好ましい。
なお、本発明における活物質の中心部とは、測定対象の活物質の一端から他端への長さが最長となる部分において、上記最長長さの半分の長さとなる部分をいう。
上記Zr濃度が上記範囲を超える場合は、活物質の性能が低下する可能性があるからである。
これらのZr濃度は、例えば、活物質断面をTEM−EDX分析を用いて測定することにより求めることができる。また、TEM−EDX分析に用いられる装置としては、特に限定されず、一般的なTEM−EDX装置(例えば、日本電子社製の商品名「JEM−2010FES」等)を用いることができる。
粒子状の活物質の平均粒径は、例えば、100nm以上、なかでも、1μm以上、特に2μm以上であることが好ましい。一方、上記平均粒径は、例えば100μm以下、なかでも20μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布計により算出することができる。
また、上記活物質の比表面積は、例えば0.1m/g以上、なかでも、0.5m/g以上であることが好ましい。一方、上記比表面積は、例えば300m/g以下、なかでも100m/g以下であることが好ましい。なお、比表面積は、BET法(気体吸着法)により算出することができる。
2.コート層
次に、本発明におけるコート層について説明する。
本発明におけるコート層は、活物質の表面上にLiZrOを析出させて形成されたものである。ここで、「析出させて形成された」とは、活物質材料の製造時における温度処理条件、温度処理時間を所定の条件に調整し、活物質の原料中に所定量のZr源を用いることにより、岩塩層状構造の活物質が形成される過程において、上記活物質の内部から表面にLiZrOを析出させて形成されたことをいう。また、上記コート層は、LiZrOから構成されているものである。
上記コート層が活物質の表面上にLiZrOを析出させて形成されたものであることは、以下の方法により確認することができる。
まず、活物質の表面上に形成されたコート層がLiZrOから構成されていることは、例えばXRD測定を行うことにより確認することができる。さらに、電子顕微鏡を用いてコート層を確認しても良い。
また、上記コート層がLiZrOを析出させて形成されたものか、または別途にLiZrOを活物質の表面に機械的に接触させて形成されたものかについては以下の方法により判別することができる。
例えば、活物質材料における活物質のXRDピークの半値幅を見ることにより、判別することができる。
ここで、活物質の製造時において上記コート層が活物質の表面上にLiZrOを析出させて形成されたものである場合は、活物質に対して機械的なダメージが生じないことから、活物質の結晶構造は良好に保持されるのに対し、コート層が別途にLiZrOを用いて形成されたものである場合には、活物質にダメージが生じることから、活物質の結晶構造が壊れるため、この点を比較して判別できる。
ここで、本発明における活物質材料の製造時において、活物質材料の製造時における温度処理条件、温度処理時間を所定の条件に調整し、活物質の原料中に所定量のZr源を用いることにより、活物質の表面上にLiZrOを析出させてコート層を形成することができる理由については明らかではないが次のように推量される。すなわち、Zrのイオン半径は、Ni、Mn、およびCoのイオン半径に比べて大きいものである。そのため、活物質の製造時における上述の諸条件を調整することにより、これらの元素を含む活物質が結晶化する場合においては、イオン半径の大きいZrが活物質中に溶け込みきれなくなり、活物質の表面上に押し出されて析出すると推量される。
このようなコート層としては、LiZrOから構成されていればよく、1種類の結晶相を有するLiZrOから構成されていてもよく、少なくとも2種類の異なる結晶相のLiZrOから構成されていてもよい。なかでも、本発明においては、コート層が少なくとも2種類の異なる結晶相のLiZrOから構成されていることが好ましい。
このようなコート層の平均厚みとしては、特に限定されないが、4nm以上、なかでも7nm以上、特に10nm以上であることが好ましく、10μm以下、なかでも5μm以下、特に1μm以下であることが好ましい。
コート層の平均厚みが薄すぎる場合は、上述した高抵抗層の形成を抑制する効果を十分に発揮することが困難となる可能性があるからである。また、コート層の平均厚みが厚すぎる場合は、本発明の活物質材料を用いた電極活物質層に含まれる活物質の量が少なくなり、イオン伝導性が低下する可能性があるからである。なお、コート層の平均厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察等により測定して求めることができる。
コート層の形態としては、活物質の表面上に形成されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、活物質の表面を被覆するものであることが好ましい。活物質の表面におけるコート層の被覆率としては、界面抵抗の増加を抑制する目的から高いことが好ましく、具体的には、65%以上、なかでも75%以上、特に85%以上であることがより好ましい。
また、コート層は、活物質の表面を全て被覆していても良い。なお、コート層の被覆率は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、X線光電子分光法(XPS)等を用いて測定することができる。
3.活物質材料
本発明の活物質材料において、活物質およびコート層に含有されるZrの含有量の合計としては、特に限定されないが、活物質材料に含有される遷移元素に対して、0.3mol%以上、なかでも0.5mol%以上、特に1mol%以上、さらに5mol%以上であることが好ましく、15mol%以下、なかでも10mol%以下、特に7mol%以下であることが好ましい。
上記Zrの含有量の合計が上記範囲に満たない場合は、活物質の表面上にコート層を良好に形成することが困難となる可能性があるからである。
また、上記Zrの含有量の合計が上記範囲を超える場合は、コート層の厚みが厚くなりすぎ、活物質材料表面のイオン伝導性が低下する可能性があるからである。
なお、遷移元素とは、例えば、活物質材料がNiおよびZrを含有する場合はNiおよびZrをいい、また例えば、活物質材料がCoおよびZrを含有する場合はCoおよびZrをいい、また例えば、活物質材料がMnおよびZrを含有する場合はMnおよびZrをいい、また例えば、活物質材料がNi、CoおよびZrを含有する場合はNi、CoおよびZrをいい、また例えば、活物質材料がNi、MnおよびZrを含有する場合はNi、MnおよびZrをいい、また例えば、活物質材料がNi、Co、MnおよびZrを含有する場合はNi、Co、MnおよびZrをいう。
このような活物質材料の製造方法としては、特に限定されず、例えば後述する「C.活物質材料の製造方法」の項で説明する製造方法を好適に用いることができる。
本発明の活物質材料は、硫化物固体電解質材料を用いた全固体電池における正極活物質材料として好適に用いることができる。
B.全固体電池
次に、本発明の全固体電池について説明する。本発明の全固体電池は、正極活物質材料を含有する正極活物質層と、負極活物質材料を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有し、上記正極活物質材料が、上述の活物質材料であり、上記活物質材料が、硫化物固体電解質材料と接していることを特徴とするものである。
図2は、本発明の全固体電池の一例を示す概略断面図である。図2に示すように、本発明の全固体電池10は、正極活物質材料を含有する正極活物質層11と、負極活物質材料を含有する負極活物質層12と、正極活物質層11および負極活物質層12の間に形成された固体電解質層13とを有し、正極活物質材料が、上述の活物質材料1であり、活物質材料1が、硫化物固体電解質材料2と接していることを特徴とする。
本発明によれば、上記正極活物質材料が上述した活物質材料であることにより、活物質および硫化物固体電解質材料の接触部分における高抵抗層の形成を抑制することが可能となり、界面抵抗が低い良好な性能を有する全固体電池とすることができる。
以下、本発明の全固体電池の詳細について説明する。
1.正極活物質層
本発明に用いられる正極活物質層は、少なくとも正極活物質材料を含有し、正極活物質材料が上述した「A.活物質材料」の項に記載の活物質材料であることを特徴とする。
上記正極活物質層に含有される活物質材料については、上述した「A.活物質材料」の項に記載したため、ここでの記載は省略する。上記正極活物質層における活物質材料の含有量としては、例えば、10重量%〜99重量%の範囲内であることが好ましく、20重量%〜90重量%であることがより好ましい。
また、本発明においては、上記正極活物質層が固体電解質材料を含有していることが好ましい。正極活物質層のイオン伝導性を向上させることができるからである。本発明においては、固体電解質材料のなかでも、硫化物固体電解質材料であることが好ましい。硫化物固体電解質材料は、反応性が高いため、LiNiO等の酸化物活物質と反応しやすく、酸化物活物質との間に高抵抗層を形成しやすい。これに対して、本発明における活物質材料は、上述した活物質およびコート層を有することから、高抵抗層の形成を防止できるため、活物質材料および硫化物固体電解質材料の界面抵抗の増加を効果的に抑制することができる。
硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P、LiS−P−LiI、LiS−P−LiO、LiS−P−LiO−LiI、LiS−SiS、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiBr、LiS−SiS−LiCl、LiS−SiS−B−LiI、LiS−SiS−P−LiI、LiS−B、LiS−P−Z(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn、Gaのいずれか。)、LiS−GeS、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiMO(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれか。)等を挙げることができる。なお、上記「LiS−P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質材料を意味し、他の記載についても同様である。
また、硫化物固体電解質材料が、LiSおよびPを含有する原料組成物を用いてなるものである場合、LiSおよびPの合計に対するLiSの割合は、例えば70mol%〜80mol%の範囲内であることが好ましく、72mol%〜78mol%の範囲内であることがより好ましく、74mol%〜76mol%の範囲内であることがさらに好ましい。オルト組成またはその近傍の組成を有する硫化物固体電解質材料とすることができ、化学的安定性の高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。ここで、オルトとは、一般的に、同じ酸化物を水和して得られるオキソ酸の中で、最も水和度の高いものをいう。本発明においては、硫化物で最もLiSが付加している結晶組成をオルト組成という。LiS−P系ではLiPSがオルト組成に該当する。LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびPの割合は、モル基準で、LiS:P=75:25である。なお、上記原料組成物におけるPの代わりに、AlまたはBを用いる場合も、好ましい範囲は同様である。LiS−Al系ではLiAlSがオルト組成に該当し、LiS−B系ではLiBSがオルト組成に該当する。
また、硫化物固体電解質材料が、LiSおよびSiSを含有する原料組成物を用いてなるものである場合、LiSおよびSiSの合計に対するLiSの割合は、例えば60mol%〜72mol%の範囲内であることが好ましく、62mol%〜70mol%の範囲内であることがより好ましく、64mol%〜68mol%の範囲内であることがさらに好ましい。オルト組成またはその近傍の組成を有する硫化物固体電解質材料とすることができ、化学的安定性の高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。LiS−SiS系ではLiSiSがオルト組成に該当する。LiS−SiS系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびSiSの割合は、モル基準で、LiS:SiS=66.7:33.3である。なお、上記原料組成物におけるSiSの代わりに、GeSを用いる場合も、好ましい範囲は同様である。LiS−GeS系ではLiGeSがオルト組成に該当する。
また、硫化物固体電解質材料が、LiX(X=Cl、Br、I)を含有する原料組成物を用いてなるものである場合、LiXの割合は、例えば1mol%〜60mol%の範囲内であることが好ましく、5mol%〜50mol%の範囲内であることがより好ましく、10mol%〜40mol%の範囲内であることがさらに好ましい。また、硫化物固体電解質材料が、LiOを含有する原料組成物を用いてなるものである場合、LiOの割合は、例えば、1mol%〜25mol%の範囲内であることが好ましく、3mol%〜15mol%の範囲内であることがより好ましい。
また、硫化物固体電解質材料は、硫化物ガラスであっても良く、結晶化硫化物ガラスであっても良く、固相法により得られる結晶質材料であっても良い。なお、硫化物ガラスは、例えば原料組成物に対してメカニカルミリング(ボールミル等)を行うことにより得ることができる。また、結晶化硫化物ガラスは、例えば硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理を行うことにより得ることができる。また、硫化物固体電解質材料の常温におけるLiイオン伝導度は、例えば、1×10−5S/cm以上であることが好ましく、1×10−4S/cm以上であることがより好ましい。
本発明における硫化物固体電解質材料の形状としては、例えば真球状、楕円球状等の粒子形状、薄膜形状等を挙げることができる。硫化物固体電解質材料が上記粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、特に限定されるものではないが、40μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。正極活物質層内の充填率向上を図りやすくなるからである。一方、上記平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。なお、上記平均粒径は、例えば、粒度分布計により決定できる。
本発明に用いられる正極活物質層における硫化物固体電解質材料の含有量は、例えば、1重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましく、10重量%〜80重量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明における正極活物質層は、上述した活物質材料および硫化物固体電解質材料の他に、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。導電化材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。結着材としては、例えば、PTFE、PVDF等のフッ素含有結着材を挙げることができる。上記正極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によって異なるものであるが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
2.負極活物質層
本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質材料を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。負極活物質材料としては、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。なお、負極活物質層に用いられる導電化材および結着材については、上述した正極活物質層における場合と同様である。また、負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
3.固体電解質層
次に、本発明における固体電解質層について説明する。本発明における固体電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層であり、少なくとも固体電解質材料を含有する層である。上述したように、正極活物質層が硫化物固体電解質材料を含有する場合、固体電解質層に含まれる固体電解質材料は、イオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硫化物固体電解質材料であっても良く、それ以外の固体電解質材料であっても良い。一方、正極活物質層が、硫化物固体電解質材料を含有しない場合、固体電解質層は硫化物固体電解質材料を含有する。特に、本発明においては、正極活物質層および固体電解質層の両方が、硫化物固体電解質材料を含有することが好ましい。本発明の効果を十分に発揮することができるからである。また、固体電解質層に用いられる固体電解質材料は、硫化物固体電解質材料のみであることが好ましい。
なお、硫化物固体電解質材料については、上記「1.正極活物質層」の項に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。また、硫化物固体電解質材料以外の固体電解質材料については、一般的な全固体電池に用いられる固体電解質材料と同様の材料を用いることができる。
固体電解質層における固体電解質材料の含有量は、例えば、10重量%〜100重量%の範囲内であることが好ましく、50重量%〜100重量%の範囲内であることがより好ましい。また、固体電解質層は、PTFE、PVDF等のフッ素含有結着剤等を含有していても良い。固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
4.その他の構成
本発明の全固体電池は、上述した正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、およびカーボン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケル、およびカーボン等を挙げることができる。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な全固体電池に使用される電池ケースを用いることができ、例えば、SUS製電池ケース等を挙げることができる。また、本発明の全固体電池は、発電要素を絶縁リングの内部に形成したものであっても良い。
5.全固体電池
本発明においては、上述した活物質材料を用いることにより、活物質材料と硫化物固体電解質材料との界面抵抗の増加を抑制することができる。本発明の全固体電池としては、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば、車載用電池等として有用だからである。本発明の全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、および角型等を挙げることができる。
本発明の全固体電池の製造方法は、上述した全固体電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な全固体電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。全固体電池の製造方法の一例としては、上述した正極活物質層を構成する材料、固体電解質層を形成する材料、および負極活物質層を形成する材料を順次プレスすることにより、発電要素を作製し、この発電要素を電池ケースの内部に収納し、電池ケースをかしめる方法等を挙げることができる。
C.活物質材料の製造方法
次に、本発明の活物質材料の製造方法について説明する。本発明の活物質材料の製造方法は、上述した「A.活物質材料」の項に記載の活物質材料の製造方法であって、Ni源、Co源、およびMn源の少なくとも1つを酸に溶解させて酸性水溶液を作製する溶解工程と、上記酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加することにより、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つを含有する水酸化物を沈殿させる添加工程と、上記水酸化物をLi源とともに焼成することにより、岩塩層状構造の活物質を形成する焼成工程と、を有し、上記溶解工程および上記焼成工程の少なくとも一方で、Zr源を用い、上記焼成工程で上記活物質の表面上にLiZrOを析出させてコート層を形成することを特徴とする製造方法である。
本発明によれば、硫化物固体電解質材料との接触による高抵抗層の形成を抑制することができる活物質材料を生産性高く製造することができる。
より具体的には、本発明によれば、焼成工程において活物質を形成するとともに活物質の表面上にLiZrOを析出させてコート層を形成することができることから、別途に活物質の表面上にコート層を形成する場合に比べて工程数が少なく簡便な方法でコート層を形成することができ、また製造コストについても削減することができる。
また、本発明によれば、活物質の表面上にLiZrOを析出させてコート層を形成することができることから、別途に活物質の表面上にコート層を形成する場合に比べて、活物質へのダメージを抑制してコート層を形成することができるため、活物質の結晶性が良好な活物質材料を製造することができる。
図3は、本発明の活物質材料の製造方法の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、本発明の活物質材料の製造方法は、上述した図1に例示する活物質材料1の製造方法である。本発明においては、まず、Ni源、Co源、Mn源およびZr源を硫酸等に溶かして硫酸塩水溶液を作製する(溶解工程)。次に、反応場としてpHを調整した浴を準備し、上記硫酸塩水溶液およびアルカリ水溶液を滴下してNi、Co、MnおよびZrを含有する水酸化物を沈殿させる(添加工程)。続いて、浴からNi、Co、MnおよびZrを含有する水酸化物を取り出し、上記水酸化物をLiCO等のLi源とともに所定の温度で所定の時間焼成することにより、上述の活物質1aを形成し、さらに活物質1a表面にLiZrOを析出させてコート層1bを形成する(焼成工程)。以上の工程を行うことにより、上述の「A.活物質材料」の項で記載した活物質材料を製造することができる。
上記記載においては、溶解工程においてZr源を用いる例について示したが、これに限定されず、本発明においては焼成工程においてZr源を用いてもよく、また、溶解工程および焼成工程の両方の工程においてZr源を用いてもよい。
以下、本発明の活物質の製造方法について、工程ごとに説明する。
1.溶解工程
まず、本発明における溶解工程について説明する。本発明における溶解工程は、Ni源、Co源、およびMn源の少なくとも1つを酸に溶解させて酸性水溶液を作製する工程である。本工程においては、Zr源を用いてもよい。この場合、Zr源についても上述した酸に溶解させる。
本工程に用いられるNi源としては、特に限定されず、Ni単体であってもよく、Ni化合物であってもよい。また、Ni化合物としては、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等が挙げられる。
また、Co源としては、特に限定されず、Co単体であってもよく、Co化合物であってもよい。また、Co化合物としては、硝酸コバルト、水酸化コバルト、炭酸コバルト等が挙げられる。
また、Mn源としては、特に限定されず、Mn単体であってもよく、Mn化合物であってもよい。Mn化合物としては、硝酸マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン等が挙げられる。
本工程において、Ni源、Co源、Mn源の選択、また、これらの割合については、本発明により製造される活物質材料における活物質の結晶相により適宜選択される。活物質の結晶相については、上述した「A.活物質材料」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
本工程において、Zr源を用いる場合、Zr源としては、特に限定されず、Zr単体であってもよく、Zr化合物であってもよい。Zr化合物としては、硝酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム等が挙げられる。
また、本工程において添加されるZr源の添加量については、上述した「A.活物質材料」の項で説明した活物質およびコート層に含有されるZrの含有量の合計と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本工程に用いられる酸としては、特に限定されず、例えば硫酸、硝酸、それらの混合物等が挙げられる。
本工程に用いられる酸の濃度としては、添加される上述のNi源、Co源、Mn源を溶解させることが可能な程度であれば特に限定されない。
本工程により得られる酸性水溶液の濃度(mol%)としては、特に限定されない。
2.添加工程
次に、本発明における添加工程について説明する。本発明における添加工程は、上記酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加することにより、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つを含有する水酸化物を沈殿させる工程である。
本工程における酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加する方法としては、特に限定されないが、反応場としてpHを調整した浴を準備し、上記酸性水溶液およびアルカリ水溶液を上記浴中へ滴下することにより添加する方法が好ましい。水酸化物を良好に沈殿させることが可能となる。上記浴については、公知のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。
本工程に用いられるアルカリ水溶液としては、酸性水溶液と反応して水酸化物を生じさせることが可能なものであれば特に限定されず、例えば水酸化リチウム水溶液、炭酸リチウム水溶液等が挙げられる。
また、上記アルカリ水溶液の濃度(mol%)としては、特に限定されない。例えば、上述した酸性水溶液の濃度(mol%)と同様とすることができる。
3.焼成工程
次に、本発明における焼成工程について説明する。本発明における焼成工程は、上記水酸化物をLi源とともに焼成することにより、岩塩層状構造の活物質を形成する工程である。また、本発明は、本工程で上記活物質の表面上にLiZrOを析出させてコート層を形成することを特徴とする。
上述した溶解工程においてZr源を用いた場合は、本工程においては、Zr源を用いてもよく、用いなくてもよい。一方、上述した溶解工程においてZr源を用いていない場合は、本工程においてZr源が用いられる。この場合、Zr源はLi源、および水酸化物とともに焼成される。
Zr源、およびその添加量については、上述した溶解工程で説明したため、ここでの説明は省略する。また、上記溶解工程および焼成工程においてZr源が用いられる場合は、各工程におけるZr源の添加量が、上述した「A.活物質材料」の項で説明した活物質およびコート層に含有されるZrの含有量の合計と同様となるように調整される。
Li源としては、特に限定されず、Li単体であってもよく、Li化合物であってもよい。Li化合物としては、例えばLiCO、LiOH等が挙げられる。
本工程おける上記水酸化物、およびLi源の割合としては、本発明により製造される活物質の結晶相により適宜決定される。
また、本工程における焼成温度としては、特に限定されないが、800℃以上、なかでも900℃以上、特に1000℃以上であることが好ましい。また、上記焼成温度は、1200℃以下、なかでも1100℃以下であることが好ましい。
上記値に満たない場合は、上記Li源、および水酸化物を焼成することにより、本発明の活物質材料を得ることが困難となる可能性があるからである。
また、上記焼成温度の上限としては、例えば、1200℃程度である。
本工程における焼成時間としては、特に限定されないが、2時間以上、なかでも3時間以上、特に4時間以上であることが好ましい。焼成時間が上記範囲に満たない場合は、上述したLi源、および水酸化物が十分に反応しない可能性があるからである。
4.その他の工程
本発明の活物質材料の製造方法は、上述した溶解工程、添加工程、および焼成工程を有していれば特に限定されず、必要な工程を適宜選択して行うことができる。
5.活物質材料
本発明の活物質材料の製造方法により得られる活物質材料については、上述した「A.活物質材料」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(活物質の作製)
以下の手順により、LiNi1/3Co1/3Mn1/3の遷移元素の一部をZrで置換した岩塩層状構造を有する活物質、および活物質の表面上にLiZrOを析出させて形成されたコート層を有する活物質材料を合成した。この際、活物質およびコート層に含有されるZrの含有量の合計を、活物質材料に含有される遷移元素(Ni、Co、Mn、Zr)に対して、1mol%とした。
まず、Ni源、Co源、Mn源およびZr源を硫酸等に溶かして硫酸塩水溶液を作製した。次に、反応場としてpHを調整した浴を準備し、上記硫酸塩水溶液およびアルカリ水溶液を滴下してNi、Co、MnおよびZrを含有する水酸化物を沈殿させた。次に浴からNi、Co、MnおよびZrを含有する水酸化物を取り出し、上記水酸化物をLiCO等のLi源とともに所定の温度で所定の時間焼成することにより、上述の活物質を形成し、さらに活物質の表面上にコート層を形成することにより上述の活物質材料を得ることができた。
(正極合材の作製)
上述の活物質材料を567mgと、VGCF(昭和電工)17mgと、LiIを含むLiS−P系ガラスセラミック(固体電解質)190mgと、脱水ヘプタン(関東化学)1gを秤量し、十分に混合した。
上述した混合材料を100℃で加熱してヘプタンを揮発させ、正極合材を得た。
(負極合材の作製)
グラファイト(三菱化学)1.2gと、固体電解質876mgを秤量し混合したものを負極合材とした。
(電池特性測定用セルの作製)
1cmの金型に固体電解質を65mg秤量し、100MPaでプレスして固体電解質層を作製し、その片側に正極合材20mgを入れ、100MPaでプレスして正極を作製した。
その逆側に負極合材24mgを入れ、400MPaでプレスすることで、負極を作製した。
以上の手順により電池特性測定用セルを得た。
[実施例2]
実施例1と同様の手順で、LiNi1/3Co1/3Mn1/3の遷移元素の一部をZrで置換した岩塩層状構造を有する活物質、および活物質の表面上にLiZrOを析出させて形成されたコート層を有する活物質材料を合成した。この際、活物質およびコート層に含有されるZrの含有量の合計を、活物質材料に含有される遷移元素(Ni、Co、Mn、Zr)に対して、5mol%とした。
上記以外は実施例1と同様にして、電池特性測定用セルを作製した。
[比較例]
活物質としてZrが添加されていないLiNi1/3Co1/3Mn1/3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電池特性測定用セルを作製した。
[評価]
(コンディショニング)
25℃で以下の電池特性測定セルのコンディショニングを行った。
実施例1〜2および比較例の電池特性測定用セルを0.27mAで定電流充電(上限4.55V)後、15分間休止したのち、0.27mAで定電流放電(下限3.0V)し、その後15分間休止することにより、電池特性測定セルのコンディショニングを行った。
(界面抵抗測定)
実施例1〜2および比較例の電池特性測定用セルについて0.27Cで定電流−定電圧充電を行った。充電条件としては、電圧の上限を4.1V、カット電流0.027mAとした。充電後、10分間休止したのち、交流インピーダンス測定を行った。周波数は1MHz〜10Hzとした。得られたナイキストプロットの、円弧の大きさを界面抵抗と定義した。結果を表1および図4に示す。なお、図4は、実施例1〜2および比較例の活物質材料のZrの含有量(mol%)と、界面抵抗(Ω・cm)との関係を示すグラフである。
Figure 2014049309
(XRD測定)
実施例1〜2および比較例の活物質材料のXRD測定を行った。結果を図5に示す。なお、図5(a)は、実施例1〜2および比較例の活物質材料のXRD測定結果を示す図であり、図5(b)は図5(a)のA部分の拡大図である。
実施例2の活物質材料は、XRDで検出できるサイズでLiZrOが存在することが確認できた。
また、実施例1の活物質材料は、XRDでLiZrOは検出できなかったが、上述の界面抵抗測定において界面抵抗が低下していることから、LiZrOが存在すると考えられる。
(TEM−EDX分析)
実施例2の活物質材料における活物質断面のTEM−EDX分析を行い、活物質に含有されるZr濃度の分布を調べた。用いた活物質の平均粒子径(D50)は6.2μmであった。結果を表2に示す。
Figure 2014049309
1 … 活物質材料
1a … 活物質
1b … コート層
2 … 硫化物固体電解質材料
10 … 全固体電池
11 … 正極活物質層
12 … 負極活物質層
13 … 固体電解質層

Claims (4)

  1. Liと、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つと、Oとを含有し、さらにZrを含有する岩塩層状構造の活物質、ならびに、
    前記活物質の表面上にLiZrOを析出させて形成されたコート層
    を有することを特徴とする活物質材料。
  2. 前記活物質および前記コート層に含まれるZrの含有量の合計が、前記活物質材料に含有される遷移元素に対して5mol%以上であることを特徴とする請求項1に記載の活物質材料。
  3. 正極活物質材料を含有する正極活物質層と、負極活物質材料を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された固体電解質層とを有し、
    前記正極活物質材料が、請求項1または請求項2に記載の活物質材料であり、
    前記活物質材料が、硫化物固体電解質材料と接していることを特徴とする全固体電池。
  4. 請求項1または請求項2に記載の活物質材料の製造方法であって、
    Ni源、Co源、およびMn源の少なくとも1つを酸に溶解させて酸性水溶液を作製する溶解工程と、
    前記酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加することにより、Ni、Co、およびMnの少なくとも1つを含有する水酸化物を沈殿させる添加工程と、
    前記水酸化物をLi源とともに焼成することにより、岩塩層状構造の活物質を形成する焼成工程と、
    を有し、
    前記溶解工程および前記焼成工程の少なくとも一方で、Zr源を用い、
    前記焼成工程で前記活物質の表面上にLiZrOを析出させてコート層を形成することを特徴とする活物質材料の製造方法。
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