本発明に係るレンズ鏡胴の一実施例としてのレンズ鏡胴13およびそれが用いられる撮像装置の一実施例としての撮像装置10の構成を、図1から図13を用いて説明する。なお、図3から図5では、理解容易のために、レンズ鏡胴13の構成を模式的な断面で示している。
まず、レンズ鏡胴13を用いる撮像装置(デジタルカメラ)の一例としての撮像装置10を、図1および図2を用いて説明する。撮像装置10は、図1に示すように、カメラ本体11の前面(図1を正面視して手前側の面)側に撮影光学系12を有するレンズ鏡胴13が設けられている。図示の例では、レンズ鏡胴13は、カメラ本体11に対して着脱自在なレンズ鏡胴ユニットとして構成されている。
カメラ本体11では、上面(図1を正面視して上側の面)に、操作部としての電源スイッチ14、シャッターボタン15、モード切替ダイアル16、ズームレバー17が設けられている。電源スイッチ14は、撮像装置10を起動するための操作(起動操作)と、撮像装置10を停止するための操作(停止操作)と、をするものである。シャッターボタン15は、被写体を撮影する際に押し下げる押下操作部材である。モード切替ダイアル16は、各種のシーンモード、静止画モード、動画モード等を設定するものである。ズームレバー17は、撮影光学系12のズーム位置を連続的に変更(撮影光学系12の各光学部材の光軸方向での位置を変更)させる、すなわち画像を連続的に拡大(望遠側)または縮小(広角側)させるために設けられている。このズームレバー17は、シャッターボタン15を取り囲むように設けられ、その回転軸を回転中心として回転(自転)させる操作(回転操作)をするものである。
また、明確な図示は略すが、カメラ本体11の背面には、その他の操作スイッチ18や表示部24(その表示面)が設けられている(図2参照)。その操作スイッチ18は、各メニュー等の設定のための方向指示用スイッチや各種スイッチである。また、表示部24は、撮像された画像データや記録媒体に記録された画像データに基づき画像を表示する。
撮像装置10では、シャッターボタン15の押下操作により、撮影光学系12を通して後述する撮像素子22の受光面22a(図3等参照)で受光した被写体像の画像データが記録処理される。その撮影光学系12は、後述するように、5群構成とされている(図3から図5参照)。レンズ鏡胴13は、撮影光学系12の光軸(撮影光軸OA)に沿って、所定の収納位置(図1および図3参照)と所定の撮影待機位置(図4および図5参照)との間で移動(進退)可能とされている。この図1および図3に示すレンズ鏡胴13(撮像装置10)は、電源オフ時(電源スイッチ14がOFF状態)であって、撮影光学系12(後述する直進筒41(可動レンズ鏡筒))が最も像面側に後退された収納位置とされている。また、図4に示すレンズ鏡胴13は、電源オン時(電源スイッチ14がON状態)であって、撮影光学系12(後述する直進筒41(可動レンズ鏡筒))が後述する撮影光軸OAと平行な方向(以下、撮影光軸方向とも言う)で被写体側に繰り出された撮影待機位置において、後述するように焦点距離可変のズームレンズとして構成された撮影光学系12における広角位置(wide)とされている。さらに、図5に示すレンズ鏡胴13は、電源オン時(電源スイッチ14がON状態)であって、撮影光学系12(後述する直進筒41(可動レンズ鏡筒))が撮影光軸方向で被写体側に最も繰り出された撮影待機位置において、後述するように焦点距離可変のズームレンズとして構成された撮影光学系12における望遠位置(tele)とされている。なお、上記した収納位置において、撮影待機状態とされる設定であってもよい。
この撮像装置10は、図2に示すように、制御部21と、撮像素子22と、レンズ鏡胴駆動ユニット23と、上述した表示部24と、を有する。制御部21は、操作部としての電源スイッチ14、シャッターボタン15、モード切替ダイアル16、ズームレバー17および操作スイッチ18に為された操作に基づく駆動処理や、撮像素子22からの信号に基づく画像データの生成処理や、レンズ鏡胴駆動ユニット23および表示部24の駆動等の制御を、記憶部21aに格納されたプログラムにより統括的に行う。制御部21は、撮影光学系12を経て撮像素子22で画像を取得し、その画像をカメラ本体11の後面側に設けられた表示部24に適宜表示させる。
撮像素子22は、CCD(電荷結合素子)イメージセンサやCMOSイメージセンサ等で構成されている。この撮像素子22は、撮影光学系12を通して受光面22a(図3等参照)上に結像された被写体像を電気信号(画像データ)に変換して出力する。その出力された電気信号(画像データ)は、制御部21へと伝送される。
レンズ鏡胴駆動ユニット23は、レンズ鏡胴13を収納位置(図1および図3参照)と撮影待機位置(図4および図5参照)とで移行すべく、後述するように、駆動源としてのズームギヤドモーターユニット55の駆動モータ55a(図6等参照)を駆動して、直進ライナー48に対して回転筒47を回転させることにより、撮影光学系12の各光学部材を各々支持するレンズ保持部材を移動させる。また、レンズ鏡胴駆動ユニット23は、後述するように、フォーカスモータ49を駆動することにより合焦を行う。
次に、撮像装置10に用いられた本発明に係るレンズ鏡胴の一実施例としてのレンズ鏡胴13の概略的な構成を、図3から図6を用いて説明する。なお、図6では、撮像素子22、光学素子37、保持部材52およびシール部材53を省略して示している。
レンズ鏡胴13は、図3から図6に示すように、第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33、第4レンズ群34、第5レンズ群35、シャッタ/絞りユニット36、上述した撮像素子22、光学素子37、直進筒41、第2レンズ保持枠42、第3レンズ保持枠43、第4レンズ保持枠44、第5レンズ保持枠45、移動枠46、回転筒47、直進ライナー48、フォーカスモータ49、ベース部材51、保持部材52、シール部材53、長ギヤ54、ズームギヤドモーターユニット55(図6等参照)、第1弾性部材56と、第2弾性部材57と、第3弾性部材58(図6等参照)と、を具備している。
このレンズ鏡胴13では、被写体(物体)側から第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33、第4レンズ群34および第5レンズ群35が順次配列されるとともに、第3レンズ群33と第4レンズ群34の間にシャッタ/絞りユニット36が配置されている。その第5レンズ群35の像面側に、光学素子37と撮像素子22とが配置されている。光学素子37は、ローパスフィルタ等で構成されており、撮像素子22の受光面22aを覆って設けられている。この光学素子37と撮像素子22とは、保持部材52に保持されている。その保持部材52では、光学素子37との間にシール部材53が設けられており、このシール部材53により光学素子37と撮像素子22との間が密閉されている。その撮像素子22は、図示は略すが、電子部品が実装されて電子回路部を構成する基板に実装されており、当該基板は保持部材52に固定されている。その保持部材52は、明確な図示は略すが、ベース部材51に支持されている。
そのベース部材51は、図6等に示すように、全体に平板状を呈し、撮影光軸方向で見て矩形状とされている。ベース部材51には、後述する撮影光軸OAを含む中央に、撮影光軸方向に貫通する設置開口51aが設けられている。その設置開口51aは、保持部材52を介して支持する光学素子37および撮像素子22を撮影光軸OA上に配置することを可能とする(図3から図5参照)。このため、ベース部材51の設置開口51aには、図3から図5に示すように、被写体側に光学素子37が設けられるとともに、その後側(像面負側)に撮像素子22が設けられている。
第1レンズ群31は、1枚以上のレンズからなる。この第1レンズ群31は、それらを一体的に保持する第1レンズ保持枠(明確には図示されていない)を介して直進筒41に固定されて保持されている。第1レンズ群31は、撮影光学系12における最も被写体(物体)側に配置される対物レンズを有する。
第2レンズ群32は、1枚以上のレンズからなる。この第2レンズ群32は、第2レンズ保持枠42に固定されて保持されている。このため、第2レンズ保持枠42は、第2レンズ群32を保持するレンズ保持部材として機能する。その第2レンズ保持枠42の外周面における後端部(撮影光軸方向の像面側の端部)には、カムフォロア42aが設けられている。このカムフォロア42aは、後述する撮影光軸OAからの放射方向へ向けて(以下、径方向ともいう)外周面から突出している。カムフォロア42aは、外周面からの突出箇所となる基部42bが円柱形状とされており、直進ライナー48の後述する直進キー溝48c(図6参照)と後述する撮影光軸OAを回転中心とする回転方向(以下では、単に回転方向ともいう)で当たることを可能としつつ当該直進キー溝48cに通すことが可能とされている。また、カムフォロア42aは、径方向外側の先端部となる突出端部42cが、基部42bよりも小さな直径寸法の截頭円錐体形状とされており、回転筒47の後述するカム溝47bと撮影光軸方向で当たることを可能としつつ当該カム溝47bに挿入することが可能とされている。この第2レンズ保持枠42には、フォーカスモータ49が固定されるとともに、そのリードスクリュー49aが回転可能に設けられている。
第3レンズ群33は、1枚以上のレンズからなる。この第3レンズ群33は、第3レンズ保持枠43に固定されて保持されている。このため、第3レンズ保持枠43は、第3レンズ群33を保持するレンズ保持部材として機能する。この第3レンズ保持枠43は、明確な図示は略すが、第2レンズ保持枠42に設けられたフォーカスモータ49のリードスクリュー49aに、ナット機構あるいはラック機構を介して支持されている。第3レンズ保持枠43は、明確な図示は略すが、第2レンズ保持枠42に対して回転することが防止されているとともに、リードスクリュー49aを上述したナット機構あるいはラック機構を介して回転可能に保持している。
そのフォーカスモータ49は、第3レンズ保持枠43(第3レンズ群33)の移動の制御のために駆動制御されて適宜回転運動するものであり、レンズ鏡胴駆動ユニット23(図2参照)としての駆動源を構成している。フォーカスモータ49では、モータ軸(出力軸(図示せず))にリードスクリュー49aが固着されている。リードスクリュー49aは、後述する撮影光軸OAと平行な方向へ伸びて回転自在に第2レンズ保持枠42に設けられており、明確な図示は略すがの外周面に螺旋状のネジ溝を有する。フォーカスモータ49は、制御部21(図2参照)の制御下で適宜駆動されることにより、リードスクリュー49aを回転させる。
このため、第3レンズ保持枠43すなわち第3レンズ群33は、第2レンズ保持枠42すなわちそこに保持された第2レンズ群32と一体的に撮影光軸方向に移動することが可能とされ、かつフォーカスモータ49の駆動により第2レンズ保持枠42(第2レンズ群32)に対して撮影光軸方向に移動することが可能とされている。この第3レンズ群33は、本実施例では、ピント合わせ、すなわち合焦を行うフォーカスレンズとして用いられており、焦点調節時にはフォーカスモータ49からの駆動力により撮影光軸方向での位置が調節される。
第4レンズ群34は、1枚以上のレンズからなる。この第4レンズ群34は、第4レンズ保持枠44に固定されて保持されている。このため、第4レンズ保持枠44は、第4レンズ群34を保持するレンズ保持部材として機能する。その第4レンズ保持枠44は、シャッタ/絞りユニット36を一体的に保持している(図6等参照)。第4レンズ保持枠44の外周面における後端部(撮影光軸方向の像面側の端部)には、カムフォロア44aが設けられている。そのカムフォロア44aは、外周面から径方向の外側へ向けて突出している。カムフォロア44aは、外周面からの突出箇所となる基部44bが円柱形状とされており、直進ライナー48の後述する直進キー溝48c(図6等参照)と回転方向で当たることを可能としつつ当該直進キー溝48cに通すことが可能とされている。また、カムフォロア42aは、径方向外側の先端部となる突出端部44cが、基部44bよりも小さな直径寸法の截頭円錐体形状とされており、回転筒47の後述するカム溝47cと撮影光軸方向で当たることを可能としつつ当該カム溝47bに挿入することが可能とされている。
第5レンズ群35は、1枚以上のレンズからなる。この第5レンズ群35は、第5レンズ保持枠45に固定されて保持されている。このため、第5レンズ保持枠45は、第5レンズ群35を保持するレンズ保持部材として機能する。その第5レンズ保持枠45の外周面における後端部(撮影光軸方向の像面側の端部)には、カムフォロア45aが設けられている。このカムフォロア45aは、径方向の外側へ向けて外周面から突出している。カムフォロア45aは、外周面からの突出箇所となる基部45bが円柱形状とされており、直進ライナー48の後述する直進キー溝48c(図5等参照)と回転方向で当たることを可能としつつ当該直進キー溝48cに通すことが可能とされている。また、カムフォロア45aは、径方向外側の先端部となる突出端部45cが、基部45bよりも小さな直径寸法の截頭円錐体形状とされており、回転筒47の後述するカム溝47dと撮影光軸方向で当たることを可能としつつ当該カム溝47bに挿入することが可能とされている。
第4レンズ保持枠44に一体的に保持されたシャッタ/絞りユニット36は、シャッタおよび開口絞りを含むものである。これら第1レンズ群31から第5レンズ群35(シャッタ/絞りユニット36を含む)は、焦点距離可変のズームレンズとしての撮影光学系12を構成する。この撮影光学系12の結像位置、すなわち第1レンズ群31から第5レンズ群35(シャッタ/絞りユニット36を含む)により被写体像が形成される像面に、上述した撮像素子22(電子回路部)の受光面22aが配置される。この明細書では、撮影光学系12における光学的な軸線、すなわち第1レンズ群31から第5レンズ群35の中心軸位置となる回転対称軸を、撮影光学系12のレンズ光軸すなわちレンズ鏡胴13の撮影光軸OAとする。このため、その撮影光軸OAは、第1レンズ群31の光軸と一致されており、その光軸方向は撮影光軸方向となる。
その撮影光学系12の第1レンズ群31を、第1レンズ保持枠(明確には図示していない)を介して保持する直進筒41は、全体に円筒形状を呈する(図6および図7参照)。この直進筒41は、図3から図7に示すように、上記した第1レンズ保持枠との協働により、第1レンズ群31を保持するレンズ保持部材として機能する。この直進筒41の内周面における後端部(撮影光軸方向の像面側の端部)には、カムフォロア41aが設けられている。このカムフォロア41aは、径方向の内側へ向けて直進筒41の内周面から突出している。カムフォロア41aは、截頭円錐体形状とされており、回転筒47の後述するカム凹所47fの上側面47gと撮影光軸方向の被写体側で当たることを可能としつつ当該カム凹所47fに挿入することが可能とされている。また、直進筒41の内周面には、撮影光軸方向に伸びる直進溝41b(図7参照)が設けられている。この直進溝41bは、直進ライナー48の後述するキー部48bと回転方向で当たることを可能としつつ当該キー部48bを受け入れることが可能とされている。この直進筒41の後端部(撮影光軸方向の像面側の端部)に移動枠46が設けられる。
この移動枠46は、直進筒41に対して所定の範囲内で撮影光軸方向に移動可能に設けられており、本実施例では、直進筒41に支持されている。このため、移動枠46は、基本的には、直進筒41とともに回転筒47および直進ライナー48に対して移動する。この移動枠46では、直進筒41との間に第3弾性部材58が設けられるとともに、回転荷重抑制機構70により直進筒41および回転筒47に対する動作が設定されている。この移動枠46の構成および作用については、第3弾性部材58および回転荷重抑制機構70の構成および作用とともに後に詳細に説明する。この直進筒41および移動枠46の内方に回転筒47が嵌め入れられ、その内方に直進ライナー48が嵌め入れられる。
その直進ライナー48は、全体に円筒形状を呈し(図6参照)、設置開口51aを取り巻くようにベース部材51に固定される。この直進ライナー48には、図6に示すように、先端部(撮影光軸方向の被写体側の端部)にフランジ部48aが設けられている。このフランジ部48aは、直進ライナー48の先端部が全周に渡り径方向の外側へと突出されて形成されている。フランジ部48aには、キー部48bが設けられている。このキー部48bは、フランジ部48aの外周面から径方向に突出されて形成されており、直進筒41の内周面に設けられた直進溝41b(図7参照)に挿入される。このため、直進ライナー48は、キー部48bを直進溝41bに当てることにより、直進筒41の撮影光軸OAを回転中心とする回転(以下では、撮影光軸OA回りの回転とも言う)を規制しつつ、直進筒41の撮影光軸方向への相対的な移動を可能としている。このことから、直進ライナー48は、レンズ保持部材としての直進筒41の撮影光軸方向への移動を案内する案内部材として機能する。
この直進ライナー48には、周壁部に直進キー溝48cが設けられている。この直進キー溝48cは、周壁部を径方向に貫通しつつ撮影光軸方向に伸びて形成されている。直進キー溝48cには、第2レンズ保持枠42のカムフォロア42aの基部42b、第4レンズ保持枠44のカムフォロア44aの基部44bおよび第5レンズ保持枠45のカムフォロア45aの基部45bが通される(図3から図5参照)。この直進キー溝48cは、通された基部42b(カムフォロア42a)、基部44b(カムフォロア44a)および基部45b(カムフォロア45a)の撮影光軸方向への移動を可能とするとともに、撮影光軸OA回りの回転を制限する。このことから、直進ライナー48は、レンズ保持部材としての第2レンズ保持枠42、そこに設けられた第3レンズ保持枠43、第4レンズ保持枠44および第5レンズ保持枠45の撮影光軸方向への移動を案内する案内部材として機能する。
直進ライナー48には、外周面におけるフランジ部48aの近傍位置にフォロワ48dが設けられている。このフォロワ48dは、撮影光軸OAに直交する面に沿って、径方向に突出して設けられている。フォロワ48dは、回転筒47の後述する案内溝47eと撮影光軸方向で当たることを可能としつつ当該案内溝47eに挿入される。
直進ライナー48には、基端部(撮影光軸方向の像面側の端部)に筒側設置凹所48e(図3から図5参照)が設けられている。その筒側設置凹所48eは、直進ライナー48の基端部において、外周面の一部を撮影光軸方向に伸びる円柱状に凹ませて形成されている。この筒側設置凹所48eは、後述する長ギヤ54を回転可能に受け入れることが可能な大きさ寸法とされており、直進ライナー48がベース部材51に組み付けられた状態(図3から図5参照)において、ベース部材51の後述する設置凹所51bと連続する位置関係とされている。
その回転筒47は、全体に円筒形状を呈する。この回転筒47は、直進ライナー48を取り巻いて設けられ(図3から図5等参照)、直進ライナー48に対して撮影光軸OAを中心に相対的に回転することが可能とされている。回転筒47の内周面における基端部(撮影光軸方向の像面側の端部)には、図3から図5に示すように、ギヤ部47aが形成されている。このギヤ部47aは、明確な図示は略すが、撮影光軸方向に伸びる複数の歯が、回転筒47の内周面で回転方向に並列されて形成されている。
また、回転筒47の内周面には、カム溝47b、カム溝47c、カム溝47dおよび案内溝47eが設けられている。カム溝47bは、撮影光軸OAを取り巻きつつその撮影光軸方向へと変位して(撮影光軸OAに直交する面に対して傾斜されて)形成されている(図6参照)。このカム溝47bは、第2レンズ保持枠42の移動のためのカム溝であり、第2レンズ保持枠42すなわち第2レンズ群32のための光学カム軌跡を規定する。カム溝47bは、第2レンズ保持枠42のカムフォロア42aの突出端部42cと撮影光軸方向で当たることを可能としつつ当該突出端部42cを受け入ることが可能とされている。
カム溝47cは、撮影光軸OAを取り巻きつつその撮影光軸方向へと変位して(撮影光軸OAに直交する面にして傾斜されて)形成されている(図6参照)。このカム溝47cは、第4レンズ保持枠44の移動のためのカム溝であり、第4レンズ保持枠44すなわち第4レンズ群34のための光学カム軌跡を規定する。カム溝47cは、第4レンズ保持枠44のカムフォロア44aの突出端部44cと撮影光軸方向で当たることを可能としつつ当該突出端部44cを受け入ることが可能とされている。
カム溝47dは、撮影光軸OAを取り巻きつつその撮影光軸方向へと変位して(撮影光軸OAに直交する面に対して傾斜されて)形成されている(図6参照)。このカム溝47dは、第5レンズ保持枠45の移動のためのカム溝であり、第5レンズ保持枠45すなわち第5レンズ群35のための光学カム軌跡を規定する。カム溝47dは、第5レンズ保持枠45のカムフォロア45aの突出端部45cと撮影光軸方向で当たることを可能としつつ当該突出端部45cを受け入ることが可能とされている。案内溝47eは、撮影光軸OAに直交する面に沿って円周状に設けられており、直進ライナー48のフォロワ48dと撮影光軸方向で当たることを可能としつつ当該フォロワ48dを受け入ることが可能とされている。
さらに、回転筒47の外周面には、カム凹所47fが設けられている。カム凹所47fは、撮影光軸OAを取り巻きつつその撮影光軸方向へと変位して(撮影光軸OAに直交する面に対して傾斜されて)形成されている(図6等参照)。このカム凹所47fは、後述するように回転荷重抑制機構70を構成するものであって、回転筒47に対する直進筒41および移動枠46の移動のためのカム溝であり、直進筒41のカムフォロア41aおよび移動枠46の後述するカムフォロア46bを受け入ることが可能とされている。このカム凹所47f(回転荷重抑制機構70)の構成については後に詳細に説明する。
このレンズ鏡胴13では、第2レンズ保持枠42と第4レンズ保持枠44との間に第1弾性部材56が設けられている。その第1弾性部材56は、無負荷状態において最も縮み、一端と他端とを離間させる動作に抗する弾性力を発揮する引張コイルバネで構成されており、第2レンズ保持枠42と第4レンズ保持枠44とを撮影光軸方向で掛け渡して3つ設けられている。各第1弾性部材56は、一端が第2レンズ保持枠42に取り付けられているとともに、他端が第4レンズ保持枠44に設けられたシャッタ/絞りユニット36に取り付けられている。この各第1弾性部材56は、回転筒47の内方において、第2レンズ保持枠42に撮影光軸方向の像面側へと押す力を付与するとともに、第4レンズ保持枠44(シャッタ/絞りユニット36)に撮影光軸方向の被写体側へと押す力を付与する。3つの第1弾性部材56のバネ力量は、本実施例では、第2レンズ保持枠42(第2レンズ群32および第3レンズ群33)と第4レンズ保持枠44(第4レンズ群34およびシャッタ/絞りユニット36)とのうちの大きな重量となる方に対して、第2レンズ保持枠42と第4レンズ保持枠44との間隔が最も小さくなる状態で撮影光軸方向へと押す力を適切に作用させることができるように、第2弾性部材57のバネ力量を勘案して設定する。
また、レンズ鏡胴13では、第4レンズ保持枠44と第5レンズ保持枠45との間に第2弾性部材57が設けられている。その第2弾性部材57は、無負荷状態において最も伸びて、一端と他端とを接近させる動作に抗する弾性力を発揮する圧縮コイルバネで構成されており、第2レンズ保持枠42と第4レンズ保持枠44とを撮影光軸方向で掛け渡して設けられている。第2弾性部材57は、一端が第4レンズ保持枠44に宛がわれるとともに、他端が第5レンズ保持枠45に宛がわれている。この第2弾性部材57は、回転筒47の内方において、第4レンズ保持枠44に撮影光軸方向の被写体側へと押す力を付与するとともに、第5レンズ保持枠45(シャッタ/絞りユニット36)に撮影光軸方向の像面側へと押す力を付与する。第2弾性部材57のバネ力量は、本実施例では、第4レンズ保持枠44(第4レンズ群34およびシャッタ/絞りユニット36)と第5レンズ保持枠45(第5レンズ群35)とのうちの大きな重量となる方に対して、第4レンズ保持枠44と第5レンズ保持枠45との間隔が最も大きくなる状態で撮影光軸方向へと押す力を適切に作用させることができるように、3つの第1弾性部材56のバネ力量を勘案して設定する。
このレンズ鏡胴13では、図3から図6に示すように、ベース部材51に固定された直進ライナー48の外方を取り巻いて回転筒47が設けられる。その回転筒47は、案内溝47eで直進ライナー48のフォロワ48dを受け入れるとともに、被写体側の端部を直進ライナー48のフランジ部48a(その後端面)に宛がって、直進ライナー48を受け入れる。このため、回転筒47は、直進ライナー48に対して、撮影光軸方向へと移動することが防止されるとともに、撮影光軸OA回りに相対的な回転(回転移動)が可能とされている。
その直進ライナー48の内方に、その被写体側から、順に第5レンズ保持枠45、シャッタ/絞りユニット36を一体的に保持する第4レンズ保持枠44、および第3レンズ保持枠43を支持する第2レンズ保持枠42を嵌め入れる。このとき、第5レンズ保持枠45と第4レンズ保持枠44との間に第2弾性部材57を配するとともに、第4レンズ保持枠44が一体的に保持するシャッタ/絞りユニット36と第2レンズ保持枠42との間に3つの第1弾性部材56を設ける。その直進ライナー48では、第5レンズ保持枠45のカムフォロア45aの基部45b、第4レンズ保持枠44のカムフォロア44aの基部44bおよび第2レンズ保持枠42のカムフォロア42aの基部42bを、直進キー溝48c(図6参照)で受け入れる。このため、直進ライナー48は、第2レンズ保持枠42、第4レンズ保持枠44および第5レンズ保持枠45(第3レンズ保持枠43およびシャッタ/絞りユニット36を含む)の撮影光軸OA回りの回転を規制しつつ撮影光軸方向への相対的な移動を可能としている。
その直進ライナー48を取り巻く回転筒47では、直進ライナー48の直進キー溝48cに基部42bが通された第2レンズ保持枠42のカムフォロア42aの突出端部42cをカム溝47bで受け入れる。また、回転筒47では、直進ライナー48の直進キー溝48cに基部44bが通された第4レンズ保持枠44のカムフォロア44aの突出端部44cをカム溝47cで受け入れる。さらに、回転筒47では、直進ライナー48の直進キー溝48cに基部45bが通された第5レンズ保持枠45のカムフォロア45aの突出端部45cをカム溝47dで受け入れる。
ここで、回転筒47が直進ライナー48に対して撮影光軸OAを中心軸線として回転すると、直進キー溝48cとカム溝47bとの交差位置、直進キー溝48cとカム溝47cとの交差位置、および直進キー溝48cとカム溝47dとの交差位置が撮影光軸方向に移動する。これにより、第2レンズ保持枠42は、直進ライナー48に対して回転筒47が回転駆動されると、そのカム溝47bからカムフォロア42a(その突出端部42c)を介して撮影光軸方向への移動力を受け、回転筒47の回転姿勢に応じてカム溝47bのカム軌跡に倣うように直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸OA(撮影光路)方向へと直進移動(撮影光軸OA回りの回転を伴わない撮影光軸方向への移動)する。同様に、第4レンズ保持枠44は、回転筒47のカム溝47cからカムフォロア44a(その突出端部44c)を介して撮影光軸方向への移動力を受け、回転筒47の回転姿勢に応じてカム溝47cのカム軌跡に倣うように、第5レンズ保持枠45は、回転筒47のカム溝47dからカムフォロア45a(その突出端部45c)を介して撮影光軸方向への移動力を受け、回転筒47の回転姿勢に応じてカム溝47dのカム軌跡に倣うように、直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸方向へと直進移動する。このため、第2レンズ保持枠42のカムフォロア42a、第4レンズ保持枠44のカムフォロア44aおよび第5レンズ保持枠45のカムフォロア45aが保持側カムフォロアとして機能し、回転筒47のカム溝47b、カム溝47cおよびカム溝47dが保持側カム溝として機能する。
その回転筒47の外方を取り巻くように直進ライナー48の前方(撮影光軸方向の被写体側)から直進筒41およびそこに支持される移動枠46が設けられる。その直進筒41は、内周面に設けられた直進溝41b(図7参照)で、回転筒47の内方に設けられた直進ライナー48のキー部48bを受け入れており、その直進ライナー48に対して、撮影光軸OA回りの回転が規制されるとともに、撮影光軸方向への相対的な移動が可能とされている。その直進筒41に支持される移動枠46も、基本的には直進ライナー48に対して、直進筒41と一体的な移動が可能とされている。その直進筒41では、カムフォロア41aが回転筒47のカム凹所47fに挿入され、移動枠46では、後述するように、カムフォロア46bも回転筒47のカム凹所47fに挿入される。そのカムフォロア41aは、後述するように、常に回転筒47のカム凹所47fにおける上側面47gに押し当てられる。このような構成により、直進筒41は、直進ライナー48に対して回転筒47が回転駆動されると、回転筒47の回転姿勢に応じてカム凹所47f(その上側面47g)のカム軌跡に倣うように、直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸方向へと直進移動する。
このように、レンズ鏡胴13では、直進ライナー48の径方向の外側に回転筒47が設けられ、その回転筒47の径方向の外側に直進筒41(移動枠46)が設けられており、その直進ライナー48、回転筒47および直進筒41(移動枠46)に加えて、直進ライナー48の内方に設けられた第2レンズ保持枠42、第3レンズ保持枠43、第4レンズ保持枠44および第5レンズ保持枠45により、筒状箇所が構成されている。
図6に示すように、その回転筒47を直進ライナー48に対して回転駆動するために、すなわち撮影光学系12(第1レンズ群31から第5レンズ群35)の移動のために、長ギヤ54およびズームギヤドモーターユニット55が設けられる。そのズームギヤドモーターユニット55は、駆動モータ55aとギヤボックス55bとを有する。
その駆動モータ55aは、撮影光学系12(第1レンズ群31から第5レンズ群35)の移動の制御のために駆動制御されて適宜回転運動するものであり、レンズ鏡胴駆動ユニット23(図2参照)としての駆動源を構成している。駆動モータ55aは、本実施例ではDCモータ(所謂直流モータ)で構成されており、明確な図示は略すが出力軸がギヤボックス55bに設けられた入力ギヤに噛み合わされている。そのギヤボックス55bは、図示は略すが、複数のギヤが噛み合わされて構成されており、入力ギヤにおける回転駆動を十分に減速して出力ギヤ(図示せず)に伝達するものとされている。
そのズームギヤドモーターユニット55(駆動モータ55aおよびギヤボックス55b)は、ベース部材51の設置凹所51bに設けられている。その設置凹所51bは、ズームギヤドモーターユニット55すなわち駆動モータ55aおよびギヤボックス55bを設置することが可能であるとともに、長ギヤ54を回転可能に設置することが可能とされている(図3から図5参照)。また、設置凹所51bは、ベース部材51に直進ライナー48、回転筒47および直進筒41(筒状箇所)が組み付けられた状態において、直進ライナー48の筒側設置凹所48eと連続する(図3から図5参照)。この筒側設置凹所48eに長ギヤ54が設けられる。
その長ギヤ54は、全体に長尺な円柱形状を呈し、長尺方向に伸びる複数の歯が、外周面の全周に渡り並列されて形成されている。長ギヤ54は、本実施例では、軸部54aとギヤ本体部54bとを有する。軸部54aは、長尺な棒状を呈する。ギヤ本体部54bは、軸部54aを受け入れることが可能な長尺な円筒形状を呈し、長尺方向に伸びる複数の歯が、外周面の全周に渡り並列されて形成されている。この長ギヤ54は、本実施例では、一端がベース部材51の設置凹所51bの軸受穴(図示せず)に挿入するとともに、他端が直進ライナー48の筒側設置凹所48eの軸受穴(図示せず)に挿入した軸部54aに対して、回転可能にギヤ本体部54bを取り付けて構成される。これにより、長ギヤ54は、撮影光軸方向で連続する直進ライナー48の筒側設置凹所48eとベース部材51の設置凹所51bとにより形成された円柱状の空間において、軸部54aの軸線を中心とする回転方向にギヤ本体部54bを回転可能として設けられる。換言すると、直進ライナー48は、筒側設置凹所48eにおいて、ベース部材51(その設置凹所51b)と協働して、回転可能に長ギヤ54を挟み込んで保持する。
このように直進ライナー48に保持された状態において、長ギヤ54では、撮影光軸方向の被写体側の端部において、ギヤ本体部54bに設けられたギヤ歯が回転筒47のギヤ部47aに噛み合わされ、撮影光軸方向の像面側の端部において、ギヤ本体部54bに設けられたギヤ歯が設置凹所51bに設けられたギヤボックス55bの出力ギヤ(図示せず)に噛み合わされる。このため、長ギヤ54は、ギヤボックス55b(その出力ギヤ)から出力(伝達)された駆動力を、回転筒47(その基端部)に伝達することができる。このことから、本実施例では、長ギヤ54は、駆動モータ55aから出力された駆動力を回転筒47に伝達する伝達部材として機能する。
次に、レンズ鏡胴13における長ギヤ54およびズームギヤドモーターユニット55の組み付けについて説明する。なお、この組み付けの方法および順序は、本実施例に限定されるものではない。
先ず、長ギヤ54を構成する軸部54aの一端を、ベース部材51の設置凹所51bの軸受穴(図示せず)に圧入により固定する。次に、その軸部54aにギヤ本体部54bを通すことにより、設置凹所51bに、撮影光軸OAに平行な回転軸線回りに回転可能に長ギヤ54(本実施例では、軸部54a回りにギヤ本体部54bが回転する)を設ける。次に、直進ライナー48のフォロワ48dを回転筒47の案内溝47eに挿入して組み付けた回転筒47と直進ライナー48とを、その直進ライナー48の筒側設置凹所48eで長ギヤ54を受け入れつつその軸部54aの他端を筒側設置凹所48eの軸受穴(図示せず)に挿入し、その長ギヤ54(ギヤ本体部54b)のギヤ歯を回転筒47のギヤ部47aのギヤ歯に噛み合わせつつベース部材51に組み付ける。このため、長ギヤ54は、直進ライナー48の筒側設置凹所48eとベース部材51の設置凹所51bとにより、回転可能に保持されている。このとき、直進ライナー48をベース部材51に固定する。この固定は、接着によるものであっても、溶着によるものであっても、固定部材を用いるものであってもよい。その後、駆動モータ55aとギヤボックス55bとを組み合せた状態で、ベース部材51の径方向の外側(側方)から、設置凹所51bに駆動モータ55aおよびギヤボックス55bを設置する(図10および図11等参照)。このとき、明確な図示は略すが、ギヤボックス55bの出力ギヤ(図示せず)を設置凹所51bに設けられた長ギヤ54(ギヤ本体部54b)のギヤ歯に噛み合わせる。これにより、レンズ鏡胴13において、長ギヤ54およびズームギヤドモーターユニット55が組み付けられる。
このレンズ鏡胴13では、制御部21(図2参照)の制御下において、レンズ鏡胴駆動ユニット23の駆動源としての駆動モータ55aが適宜駆動される。すると、その駆動モータ55aの駆動力が、ギヤボックス55bを経て長ギヤ54へと出力(伝達)される。このため、長ギヤ54は、ベース部材51の設置凹所51bおよび直進ライナー48の筒側設置凹所48eにより形成された空間において回転駆動され、ギヤ歯に噛み合わされたギヤ部47aを介して回転筒47(その基端部)へと駆動力(回転力)を伝達する。これにより、回転筒47は、駆動モータ55aの駆動力がギヤボックス55bおよび長ギヤ54を通してギヤ伝達されて、直進ライナー48に対して回転駆動される。すると、上述したように、直進筒41と第2レンズ保持枠42と第4レンズ保持枠44と第5レンズ保持枠45とは、回転筒47の回転姿勢に応じてそれぞれが対応されたカム溝(47b、47c、47d、47f(その上側面47g))のカム軌跡に倣うように、直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸方向へと直進移動する(図3から図5参照)。このとき、第1レンズ保持枠(明確には図示せず)を介して直進筒41に保持された第1レンズ群31、第2レンズ保持枠42に保持された第2レンズ群32、その第2レンズ保持枠42に設けられた第3レンズ保持枠43に保持された第3レンズ群33、第4レンズ保持枠44に保持された第4レンズ群34とシャッタ/絞りユニット36、および第5レンズ保持枠45に保持された第5レンズ群35が、すなわち撮影光学系12が、所定のごとく撮影光軸方向へと直進移動される。
本実施例では、レンズ鏡胴13は、電源スイッチ14がOFF状態からON状態とされると、制御部21(図2参照)の制御下で、直進筒41を繰り出して撮影待機位置(図4参照)とし、撮影光学系12を撮影光軸方向の被写体側へと移動させる。本実施例では、この図4に示す撮影待機位置は、その撮影待機位置において直進筒41の繰出量が最も小さな状態とされており、撮影光学系12における広角位置(wide)とされている。このため、直進筒41(撮影光学系12)は、ズームレバー17が回転操作されると、制御部21(図2参照)の制御下で、図4に示す撮影待機位置からさらに被写体側へ向けて繰り出されて望遠位置(tele)となることが可能とされている(図5参照)。その際、撮影光学系12(第1レンズ群31、第2レンズ群32および第3レンズ群33、第4レンズ群34およびシャッタ/絞りユニット36、第5レンズ群35)は、上述したように、撮影光軸方向へと直進移動されて所定のごとくズーミング動作する。また、そのズーミング動作により、撮影光学系12の焦点距離が設定された状態において、制御部21の制御下でレンズ鏡胴駆動ユニット23の駆動源としてのフォーカスモータ49が適宜駆動されることにより、第3レンズ保持枠43に保持された第3レンズ群33の撮影光軸方向での位置が調節されて、ピント合わせすなわち合焦が行われる。さらに、レンズ鏡胴13は、電源スイッチ14がON状態からOFF状態とされると、制御部21(図2参照)の制御下で、直進筒41を後退させて収納位置(図1および図3参照)とし、撮影光学系12を撮影光軸方向の像面側へと移動させる(図3参照)。
ここで、レンズ鏡胴13では、上述したようにバネ力量が設定された3つの第1弾性部材56が、第4レンズ保持枠44(シャッタ/絞りユニット36)と第2レンズ保持枠42との間に設けられているとともに、上述したようにバネ力量が設定された第2弾性部材57が第5レンズ保持枠45と第4レンズ保持枠44との間に配されている。
このため、第2レンズ保持枠42では、そのカムフォロア42a(その突出端部42c)が、挿入された回転筒47のカム溝47bに対して撮影光軸方向の像面側へと押し当てられて、カムフォロア42a(その突出端部42c)とカム溝47bとの遊びがないもの(バックラッシュを取る)とされている。また、第4レンズ保持枠44(シャッタ/絞りユニット36)では、カムフォロア44a(その突出端部44c)が、挿入された回転筒47のカム溝47cに対して撮影光軸方向の被写体側へと押し当てられて、カムフォロア44a(その突出端部44c)とカム溝47cとの遊びがないもの(バックラッシュを取る)とされている。さらに、第5レンズ保持枠45では、カムフォロア45a(その突出端部45c)が、挿入された回転筒47のカム溝47dに対して撮影光軸方向の像面側へと押し当てられて、カムフォロア45a(その突出端部45c)とカム溝47dとの遊びがないもの(バックラッシュを取る)とされている。
このことから、直進筒41および回転筒47は、第2レンズ保持枠42と第3レンズ保持枠43と第4レンズ保持枠44と第5レンズ保持枠45とともに、レンズ鏡胴13において直進ライナー48に対して動作することが可能とされ、撮影光学系12の各光学部材(第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33、第4レンズ群34、シャッタ/絞りユニット36および第5レンズ群35)を適宜撮影光軸方向に移動させる可動レンズ鏡筒として機能する。また、直進筒41と回転筒47と直進ライナー48とは、第2レンズ保持枠42と第3レンズ保持枠43と第4レンズ保持枠44と第5レンズ保持枠45とともに、撮影光学系12の各光学部材を収容する光学部材収容枠として機能する。さらに、レンズ鏡胴駆動ユニット23は、駆動モータ55aで回転筒47を適宜回転させることにより、光学部材収容枠を適宜駆動する収容枠駆動手段として機能する。
次に、本願発明のレンズ鏡胴13の特徴部分である回転荷重抑制機構70の構成について、図3から図6に加えて、図7から図13を用いて説明する。この回転荷重抑制機構70は、基本的には、回転筒47における回転荷重の増加を抑制するものである。これは、直進筒41と回転筒47との間のバックラッシュ取りのために弾性部材(本実施例では各第3弾性部材58)を設けることに起因して、回転筒47における回転荷重が増加し得ることによる。回転荷重抑制機構70は、直進筒41(第1レンズ群31)を適宜撮影光軸方向に移動させるための保持側カム溝(本実施例ではカム凹所47fの上側面47g)の後述する急傾斜領域Si(図9参照)に直進筒41のカムフォロア41aが当たる場面において、他の場面よりも回転筒47における回転荷重を減少させることにより、回転筒47が回転される際の回転荷重の変化、すなわち回転筒47の回転荷重の変動を抑制する。
レンズ鏡胴13では、直進筒41と、そこに対して所定の範囲内で撮影光軸方向に移動可能に当該直進筒41に支持される移動枠46と、それらの間に設けられる第3弾性部材58と、を有する(図6参照)。このような構成を可能とするために、直進筒41では、図7に示すように、内周面に直進ガイド凹所41cと抜留突起41dと保持穴41eとが設けられている。
その直進ガイド凹所41cは、直進筒41の基端部において、内周面の一部を湾曲しつつ撮影光軸方向に伸びる板状に凹ませて形成されている。直進ガイド凹所41cは、後述する移動枠46の直進ガイド突起46c(図8等参照)に対応して2箇所に設けられている。この直進ガイド凹所41cは、直進ガイド突起46cと回転方向で当たることを可能としつつ当該直進ガイド突起46cを撮影光軸方向に移動可能に受け入れることが可能な大きさ寸法とされている。
抜留突起41dは、各直進ガイド凹所41cにおける直進筒41の基端部側であって回転方向で見た中間位置に設けられている(図7では一方のみ図示)。この抜留突起41dは、直進ガイド凹所41cから径方向内側へ向けて突出されて形成されており、後述する移動枠46の直進ガイド突起46cの引掛孔46eの内方へ挿入することが可能であるとともに、その撮影光軸方向の被写体側の引掛端面46fと引っ掛かることが可能な大きさ寸法および形状とされている。
保持穴41eは、直進筒41の基端部において、内周面の一部を撮影光軸方向に伸びる柱状に凹ませて形成されている。保持穴41eは、後述するように4つ設けられる第3弾性部材58(図6等参照)に対応して4箇所に設けられている。この保持穴41eは、第3弾性部材58を個別に撮影光軸方向に受け入れることを可能としつつ、受け入れた第3弾性部材58が伸び縮みすることを可能とする大きさ寸法とされている。この直進筒41に移動枠46が取り付けられる。
その移動枠46は、図8に示すように、全体にリング状を呈する枠本体部46aに、複数のカムフォロア46bと、1対の直進ガイド突起46cと、4つの取付軸46d(図8では2つのみ図示)と、が設けられて構成されている。その枠本体部46aは、直進筒41と等しい内径寸法および外径寸法とされており、直進筒41と同様に回転筒47の外方を取り巻くことが可能とされている。枠本体部46a(移動枠46)は、回転筒47の外方を取り巻いた状態で、撮影光軸方向の被写体側の端面が、直進筒41の撮影光軸方向の像面側の端面と、撮影光軸方向で当たることが可能とされている(図10等参照)。このため、直進筒41の内周面に設けられたカムフォロア41aは、直進筒41および移動枠46(枠本体部46a)が回転筒47の外方を取り巻いて設けられた状態において、直進筒41と移動枠46(枠本体部46a)とが接近されても、当該直進筒41の撮影光軸方向の像面側の端面と移動枠46の枠本体部46aの撮影光軸方向の被写体側の端面とが互いに当たることにより、後述するように移動枠46の各カムフォロア46bが当てられる回転筒47のカム凹所47f(その下側面47h)へと到達することが防止されている。
各カムフォロア46bは、径方向の内側へ向けて枠本体部46aの内周面から突出している。カムフォロア46bは、截頭円錐体形状とされており、回転筒47のカム凹所47f(その下側面47h)と撮影光軸方向の像面側で当たることを可能としつつ当該カム凹所47fに挿入することが可能とされている。このカムフォロア46bは、後述するように移動枠46が直進筒41に支持された状態において、その直進筒41のカムフォロア41aに対して撮影光軸方向で並びつつその像面側に存在するように位置設定されている。
1対の直進ガイド突起46cは、枠本体部46aの撮影光軸方向の被写体側の端部から、湾曲しつつ撮影光軸方向の被写体側へと伸びる板状を呈している。この各直進ガイド突起46cは、直進筒41の2つの直進ガイド凹所41cに個別に対応して設けられており、その直進ガイド凹所41cと回転方向で当たることを可能としつつ当該直進ガイド凹所41c内へと撮影光軸方向に移動可能に挿入することが可能な大きさ寸法とされている。この各直進ガイド突起46cでは、引掛孔46eが設けられている。
その引掛孔46eは、板状を呈する直進ガイド突起46cの中央を径方向に貫通しつつ撮影光軸方向に伸びて形成されている。引掛孔46eは、各直進ガイド突起46cが直進筒41の直進ガイド凹所41cに挿入されると、その直進ガイド凹所41cに設けられた抜留突起41dを受け入れることが可能とされている。また、引掛孔46eは、受け入れた抜留突起41dと撮影光軸方向の被写体側の端部の引掛端面46fで引っ掛かることが可能な大きさ寸法および形状とされている(図5参照)。このため、引掛孔46e(引掛端面46f)は、各直進ガイド突起46cが直進筒41の直進ガイド凹所41cに挿入された際、その直進ガイド凹所41cから直進ガイド突起46cが抜け出すことを防止することができる。
4つの取付軸46dは、枠本体部46aの撮影光軸方向の被写体側の端部であって各直進ガイド突起46cとは異なる位置から、撮影光軸方向の被写体側に伸びる円柱形状を呈している。この各取付軸46dは、後述するように4つ設けられる第3弾性部材58(図6等参照)に対応して4箇所に設けられており(図8では2つのみ図示)、直進筒41の4つの保持穴41eに対応している。各取付軸46dは、第3弾性部材58の内方に挿入することが可能な大きさ寸法とされている。この各取付軸46dに第3弾性部材58が設けられる(図6等参照)。
第3弾性部材58は、直進筒41と回転筒47との間のバックラッシュ取りのために設ける弾性部材であり、図6に示すように、直進筒41と移動枠46との間に設けられて、それら直進筒41と移動枠46とに相対的に撮影光軸方向へと押す力Pp(図3から図5および図11参照)を付与する。この第3弾性部材58は、本実施例では、4つ設けられており、それぞれが無負荷状態において最も伸びて、一端と他端とを接近させる動作に抗する弾性力を発揮する(一端と他端とを離間させる方向に押す力を作用させる)圧縮コイルバネで構成されている。第3弾性部材58は、一端の内方に移動枠46の取付軸46d(図8参照)が挿入されるとともに、他端側が直進筒41の保持穴41e(図7参照)に挿入されることで、直進筒41と移動枠46との間に設けられる。このため、第3弾性部材58は、回転筒47の外方において、直進筒41に撮影光軸方向の被写体側へと押す力Ppを付与するとともに、移動枠46に撮影光軸方向の像面側へと押す力Ppを付与する。4つの第3弾性部材58のバネ力量は、直進筒41に対して、後述するように直進筒41と移動枠46との間隔が最も大きくなる状態(図5および図11参照)で、撮影光軸方向へと押す力を適切に作用させることができるように設定する。
この移動枠46の直進筒41および回転筒47に対する動作を設定するために、本実施例では、回転荷重抑制機構70を構成すべく、回転筒47のカム凹所47fの構成を他のカム溝(47b、47c、47d)と異なるものとしている。以下では、回転筒47(その外周面)におけるカム凹所47fを周方向(回転筒47の回転方向)に展開して示す説明図である図9を用いて、カム凹所47fの構成を説明する。なお、図9では、理解容易のために、カム凹所47fとして外周面が切り欠かれた箇所を白地で示すとともに、その他の箇所にドットを付して示している。また、図9では、正面視した左右方向が、回転筒47における周方向(回転方向)に相当し、正面視した上下方向が撮影光軸方向に相当し、上側が被写体側に相当する。さらに、図9では、撮影光軸方向に移動するカムフォロア41aおよびカムフォロア46bに対して、撮影光軸OAを回転中心とする回転筒47の回転によりカム凹所47fが回転移動する態様を、理解容易のためにカム凹所47fに対してカムフォロア41aおよびカムフォロア46bを移動させて示している。
カム凹所47fは、図6等に示すように、回転筒47の外周面が切り欠かれて形成されており、図9に示すように、撮影光軸OAを取り巻きつつその撮影光軸方向へと変位して(撮影光軸OAに直交する面に対して傾斜されて)形成されている。このカム凹所47fは、撮影光軸方向で並ぶ直進筒41のカムフォロア41aと移動枠46のカムフォロア46bとの双方を受け入れることを可能としつつそれぞれに対して異なるカム軌跡を規定する。このカム凹所47fでは、撮影光軸方向の被写体側(図9を正面視して上側)に存在するカムフォロア41aに対応して、撮影光軸方向の被写体側の上側面47gでカムフォロア41a(直進筒41)すなわち第1レンズ群31の移動のための光学カム軌跡Toを規定する。また、カム凹所47fでは、撮影光軸方向の像面側(図9を正面視して下側)に存在するカムフォロア46bに対応して、撮影光軸方向の像面側の下側面47hでカムフォロア46bすなわち移動枠46の移動のための移動カム軌跡Tmを規定する。
その上側面47g(光学カム軌跡To)は、周方向(図9を正面視して左右方向)で見て、周方向位置P1から周方向位置P2までが非撮影領域NAとして設定されており、周方向位置P2から周方向位置P3までが撮影領域PAとして設定されている。上側面47gは、周方向位置P1にカムフォロア41aが当たると、直進筒41を収納位置(図1および図3参照)とするものとされ、周方向位置P2にカムフォロア41aが当たると、直進筒41を撮影待機位置における広角位置(wide)(図4参照)とするものとされ、周方向位置P3にカムフォロア41aが当たると、直進筒41を撮影待機位置における望遠位置(tele)(図5参照)とするものとされている。
この上側面47gは、カムフォロア41aに対して相対的に滑りつつ接することが可能とされており、そのカムフォロア41aが当たる位置に応じて、直進筒41を収納位置(図1および図3参照)と撮影待機位置における広角位置(wide)(図4参照)と撮影待機位置における望遠位置(tele)(図5参照)との間で、カムフォロア41aが設けられた直進筒41すなわち第1レンズ群31を直進動作させることができる。このため、カム凹所47fの上側面47gは、直進筒41の移動のための保持側カム溝として機能し、カムフォロア41aは、保持側カムフォロアとして機能する。
ここで、上側面47gでは、撮影光軸OAに直交する面との間で為す角度(以下では、上側面47gの傾斜とも言う)が以下のように設定されている。上側面47gでは、周方向位置P1と周方向位置P2との間(非撮影領域NA)の傾斜が、カムフォロア41aが当てられること(案内作用)に起因するズームギヤドモーターユニット55(その駆動モータ55a)への負荷を考慮しつつ、第1レンズ群31(直進筒41)の収納位置(図1および図3参照)と撮影待機位置における広角位置(図4参照)との間での移動を速やかに行う観点から設定されている。このため、上側面47gにおける周方向位置P1と周方向位置P2との間の傾斜は、単調なものとされている。
また、上側面47gでは、周方向位置P2と周方向位置P3との間(撮影領域PA)の傾斜が、撮影光学系12における光学設計に応じて第1レンズ群31を広角位置(図4参照)と望遠位置(図5参照)との間で移動させる、すなわち撮影光学系12の第2レンズ群32から第5レンズ群35とに対して所定の位置関係となるように広角位置(図4参照)と望遠位置(図5参照)との間で移動させる観点から設定されている。このため、上側面47gにおける周方向位置P2と周方向位置P3との間の傾斜は、単調なものとはならず、周方向(回転方向)で見た位置により変化するものとされている。本実施例では、上側面47gは、周方向位置P2(広角位置)と周方向位置P4との間が緩やかな傾斜(撮影光軸OAに直交する面との間で為す角度が小さい)とされており、周方向位置P4と周方向位置P3(望遠位置)との間が急な傾斜(撮影光軸OAに直交する面との間で為す角度が大きい)となる急傾斜領域Siとされている。
その上側面47gと撮影光軸方向で対向される下側面47hは、上側面47gの傾斜の変化に起因する回転筒47の回転荷重の変動を抑制すべく、上側面47gとの撮影光軸方向での間隔および傾斜が設定されている。この下側面47hは、上側面47gで設定された非撮影領域NAおよび撮影領域PAに対応して形成されている。このため、下側面47hは、周方向位置P1にカムフォロア46bが当たると、移動枠46を収納位置(図1および図3参照)とするものとされ、周方向位置P2にカムフォロア46bが当たると、移動枠46を撮影待機位置における広角位置(wide)(図4参照)とするものとされ、周方向位置P3にカムフォロア46bが当たると、移動枠46を撮影待機位置における望遠位置(tele)(図5参照)とするものとされている。
この下側面47hは、カムフォロア46bに対して相対的に滑りつつ接することが可能とされており、そのカムフォロア46bが当たる位置に応じて、移動枠46を収納位置(図1および図3参照)と撮影待機位置における広角位置(wide)(図4参照)と撮影待機位置における望遠位置(tele)(図5参照)との間で回転動作させることができる。このため、カム凹所47fの下側面47hは、移動枠46の移動のための移動側カム溝として機能し、カムフォロア46bは、移動側カムフォロアとして機能する。
ここで、下側面47hでは、周方向位置P1と周方向位置P2との間(非撮影領域NA)の傾斜が、上側面47gと略等しく設定されている。また、下側面47hでは、上側面47gとの撮影光軸方向で見た間隔を、カムフォロア41aとカムフォロア46bとの双方を案内可能に受け入れることを可能とすることを前提として最も小さく設定している。このため、下側面47hにおける周方向位置P1と周方向位置P2との間では、傾斜が単調なものとされており、上側面47gとの間隔が略一定(周方向位置P1での間隔d1と周方向位置P2での間隔d2とが略等しい)とされている。
また、下側面47hでは、周方向位置P2と周方向位置P3との間(撮影領域PA)の傾斜が、上側面47gの傾斜の変化に起因する回転筒47の回転荷重の変動を抑制するために、カムフォロア46bとの圧力角θを低減する観点と、直進筒41と移動枠46との撮影光軸方向での間隔を変化させる観点と、から設定されている。これは以下のことによる。
まず、圧力角θとは、カム溝(上側面47g、下側面47h)により規定されるカム軌跡(光学カム軌跡To、移動カム軌跡Tm)の法線方向と、そのカム溝により案内されるカムフォロア(カムフォロア41a、カムフォロア46b)が駆動される方向と、が為す角度である。図9では、周方向位置P3における上側面47gのカムフォロア41aに対する圧力角を符号θ1で示すとともに、周方向位置P3における下側面47hのカムフォロア46bに対する圧力角を符号θ2で示している。ここで、カムフォロア41aおよびカムフォロア46bは、常に撮影光軸方向に駆動されることから、圧力角θは、上側面47gもしくは下側面47hと撮影光軸OAに直交する面との間で為す角度、すなわち上側面47gもしくは下側面47hの傾斜で決定することとなる。
ここで、カムフォロア41aがカム凹所47fの上側面47gに押し当てられること、もしくはカムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hに押し当てられることにより、生じる回転筒47の回転荷重をLとする。また、カムフォロア41a(カムフォロア46b)が上側面47g(下側面47h)に押し当てられた接触箇所の撮影光軸OAからの距離をrとする。この距離rは、本実施例では周方向(回転方向)での位置に拘らず一定とされている。さらに、その距離rの接触箇所での回転方向(周方向)の負荷(力)をfとし、当該接触箇所での撮影光軸方向の負荷(力)をFとする。加えて、カムフォロア41a(カムフォロア46b)と上側面47g(下側面47h)との圧力角をθとし、カムフォロア41a(カムフォロア46b)と上側面47g(下側面47h)との摩擦角をαとする。この摩擦角αは、上側面47g(下側面47h)と径方向との間で為す角度で定まるものであり、本実施例では上側面47g(下側面47h)の周方向(回転方向)での位置に拘らず一定とされている。すると、回転荷重Lは、モーメントの釣り合い式により次式(1)で表すことができる。
L=r×f=r×F×tan(θ+α)・・・・・(1)
上述したように距離rと摩擦角αとは一定であることから、回転荷重Lは、上記した式(1)から、撮影光軸方向の負荷Fと、圧力角θと、により決まることがわかる。すなわち、撮影光軸方向の負荷Fを一定とすると、圧力角θが大きくなると回転荷重Lが大きくなり、圧力角θが小さくなると回転荷重Lが小さくなる。このため、上側面47gでは、撮影領域PA(周方向位置P2と周方向位置P3との間)において、急傾斜領域Si(周方向位置P4と周方向位置P3との間)が、他の領域(周方向位置P2と周方向位置P4との間)に比較して圧力角θが大きいことから、回転荷重Lの増加を招いてしまう。このことは、下側面47hであっても同様であることから、傾斜(撮影光軸OAに直交する面との間で為す角度)を小さくすることにより、圧力角θを小さくすることができるので、回転荷重Lを抑制させることができる。
また、圧力角θを一定とすると、撮影光軸方向の負荷Fが大きくなると、回転荷重Lが大きくなることとなる。この撮影光軸方向の負荷Fは、直進筒41と回転筒47との間に設けた第3弾性部材58から直進筒41および移動枠46へと付与される押す力Pp(図3から図5および図11参照)を変化させることにより増減することができる。このため、第3弾性部材58から直進筒41および移動枠46へと付与される押す力Ppを小さくすることにより、回転荷重Lを小さくすることができる。
これらのことから、本願発明では、上側面47gが急傾斜領域Siとなる周方向位置P4と周方向位置P3との間において、下側面47hとカムフォロア46bとの圧力角θを低減する観点から、下側面47hの傾斜を、少なくとも上側面47gの傾斜よりも小さくする。ここで、上側面47gは、上述したように撮影光学系12として設定された光学カム軌跡Toを規定するものであることから、上側面47gの傾斜(位置)の変更は撮影光学系12の光学的な設計の変更を招いてしまう。このため、本願発明では、撮影光学系12の光学的な設計に影響のない下側面47h(移動カム軌跡Tm)の上側面47gに対する傾斜(位置)を設定する。
本実施例では、下側面47hは、撮影領域PAであっても、周方向位置P2と周方向位置P4との間、すなわち上側面47gが急傾斜領域Siとされていない箇所では、上側面47gと等しい傾斜としている。そして、下側面47hは、上側面47gが急傾斜領域Siとなる周方向位置P4と周方向位置P3との間では、周方向位置P4での傾斜を維持するものとしている。本実施例では、周方向位置P3での上側面47gとカムフォロア41aとの圧力角θ1を45度としているのに対して、周方向位置P3での下側面47hとカムフォロア46bとの圧力角θ2を30度としている。
このため、本実施例では、下側面47hは、撮影領域PAであっても、周方向位置P2と周方向位置P4との間では、撮影光軸方向での上側面47gとの間隔が一定とされており、上側面47gに対する位置が非撮影領域NA(周方向位置P1と周方向位置P2との間)での状態を維持するものとされている。そして、下側面47hは、上側面47gが急傾斜領域Siとなる周方向位置P4と周方向位置P3との間では、周方向位置P4から周方向位置P3へと向かうに連れて、上側面47gと下側面47hとの撮影光軸方向での間隔を漸次的に拡がるように、上側面47gから撮影光軸方向の像面側へと離れた位置に存在されている。このため、周方向位置P2での下側面47hと上側面47gとの間隔d2対して、周方向位置P3での下側面47hと上側面47gとの間隔d3がかなり大きなものとされている。
これにより、上側面47gが急傾斜領域Siとなる周方向位置P4と周方向位置P3との間では、他の領域に比較すると、上側面47gに対する下側面47hの傾斜が小さくなるとともに、各第3弾性部材58の圧縮量が小さくなって当該各第3弾性部材58からの押す力Ppが小さくなる。
次に、レンズ鏡胴13における、直進筒41、移動枠46および第3弾性部材58の組み付けについて説明する。なお、この組み付けの方法および順序は、本実施例に限定されるものではない。
図6に示すように、移動枠46の各取付軸46dを対応する第3弾性部材58の一端の内方に挿入し、かつ各第3弾性部材58の他端を直進筒41の対応する保持穴41eに挿入した状態で、移動枠46の両直進ガイド突起46cを直進筒41の対応する直進ガイド凹所41cに挿入する。そして、両直進ガイド突起46cを、直進ガイド凹所41cに設けられた抜留突起41dを乗り越えさせることで、移動枠46を直進筒41に取り付ける。このとき、移動枠46は、両直進ガイド突起46cと両直進ガイド凹所41cとの案内作用により、直進筒41に対して撮影光軸方向に移動可能に当該直進筒41に支持される(図10および図11等参照)。また、移動枠46は、各直進ガイド突起46cの引掛孔46eが、その内方に受け入れた直進ガイド凹所41cの抜留突起41dと引掛端面46fで引っ掛かることから、直進筒41に対する移動可能な範囲が所定のもの(引掛孔46eの大きさ寸法)とされており、直進筒41から脱落することが防止されている。さらに、直進筒41のカムフォロア41aと移動枠46のカムフォロア46bとが撮影光軸方向で並ぶものとされている。これにより、直進筒41が第3弾性部材58を介して移動枠46を支持するユニット状態とすることができる。そのユニット状態の直進筒41を、上述したように組み付けた回転筒47を取り巻くように直進ライナー48の撮影光軸方向の被写体側から組み込む。このとき、撮影光軸方向で並ぶ直進筒41のカムフォロア41aと移動枠46のカムフォロア46bとを、回転筒47のカム凹所47fに挿入する。これにより、直進筒41、移動枠46および第3弾性部材58をレンズ鏡胴13として組み付けることができる(図3から図5および図10等参照)。
すると、直進筒41は、図3から図5に示すように、第3弾性部材58から撮影光軸方向の被写体側へと押す力Ppが付与されるので、カムフォロア41aが挿入されたカム凹所47fに対して撮影光軸方向の被写体側の上側面47gへと押し当てられて、カムフォロア41aと上側面47gとの遊びがないもの(バックラッシュを取る)とされる。また、移動枠46は、第3弾性部材58から撮影光軸方向の像面側へと押す力Ppが付与されるので、カムフォロア46bが挿入されたカム凹所47fに対して撮影光軸方向の像面側の下側面47hへと押し当てられて、カムフォロア46bと下側面47hとの遊びがないもの(バックラッシュを取る)とされる。ここで、4つの第3弾性部材58のバネ力量が、直進筒41に対して、直進筒41と移動枠46との間隔が最も大きくなる状態(図5および図11参照)で撮影光軸方向へと押す力を適切に作用させることができるように設定されていることから、カムフォロア41aが常にカム凹所47fの上側面47gに押し当てられているとともに、カムフォロア46bが常にカム凹所47fの下側面47hに押し当てられている。
このレンズ鏡胴13では、電源スイッチ14がOFF状態とされて、直進筒41(可動レンズ鏡筒)が最も像面側に後退された収納位置(図1および図3参照)となると、図3および図10に示すように、回転筒47(直進ライナー48)の外方において、移動枠46が撮影光軸方向で最も像面側へと後退するとともに、直進筒41が撮影光軸方向で最も像面側へと後退する。このとき、移動枠46の撮影光軸方向の被写体側の端面と、直進筒41の撮影光軸方向の像面側の端面と、が当てられている。
そして、レンズ鏡胴13では、直進筒41とともに移動枠46が、回転筒47および直進ライナー48に対して撮影光軸OA回りの回転が規制されつつその撮影光軸方向への相対的な移動が可能とされている。このため、電源スイッチ14がOFF状態からON状態とされて、直進筒41が繰り出されて撮影待機位置(図4参照)となる際、直進筒41がそのカムフォロア41aが押し当てられたカム凹所47fの上側面47gの光学カム軌跡Toに倣って直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸OA方向へと直進移動するとともに、移動枠46がそのカムフォロア46bが押し当てられたカム凹所47fの下側面47hの移動カム軌跡Tmに倣って直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸OA方向へと直進移動する(図3から図5と、図10から図11参照)。そのカム凹所47fは、上側面47gと下側面47hとが上述したように設定されている。
このため、直進筒41と移動枠46とは、非撮影領域NAとしての周方向位置P1から周方向位置P2までの間すなわち収納位置から撮影待機位置(その広角位置)までの間では、上側面47gと下側面47hとの間隔が殆ど変化しないことから(図9参照)、撮影光軸方向での間隔が殆ど変化することなく、直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸方向の被写体側へと直進移動する(図3から図4参照)。また、直進筒41と移動枠46とは、撮影領域PAとしての周方向位置P2から周方向位置P4まですなわち撮影待機位置における広角位置(wide)側であって急傾斜領域Siではない領域では、上側面47gと下側面47hとの間隔が殆ど変化しないことから(図9参照)、撮影光軸方向での間隔が殆ど変化することなく、直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸方向の被写体側へと直進移動する。そして、直進筒41と移動枠46とは、撮影領域PAとしての周方向位置P4から周方向位置P3まですなわち撮影待機位置における急傾斜領域Si(望遠位置(tele)も含む)では、上側面47gと下側面47hとの間隔が拡がっていることから(図9参照)、周方向位置P3すなわち望遠位置(tele)へ向かうに連れて撮影光軸方向での間隔が拡がりながら、直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸方向の被写体側へと直進移動する(図4から図5、および図10から図11参照)。すなわち、回転筒47の回転姿勢の変化に対して、直進筒41が被写体側へと変位する割合に比べて、移動枠46が被写体側へと変位する割合の方が小さなものとされている。
これにより、レンズ鏡胴13では、撮影待機位置における望遠位置(tele)となると、回転筒47(直進ライナー48)の外方において、直進筒41と移動枠46とが最も大きな間隔を置きつつ撮影光軸方向で並ぶ(図5および図11参照)。このとき、レンズ鏡胴13では、図11に示すように、撮影光軸方向に伸びる4つの第3弾性部材58(図11では3つのみ図示)が、直進筒41と移動枠46との間を掛け渡しており、当該4つの第3弾性部材58からの押す力Ppによりその間隔が保たれている。また、撮影待機位置において、回転筒47がギヤ部47aを介してレンズ鏡胴駆動ユニット23の駆動源としての駆動モータ55aから繰り入れ方向(上記した場面とは逆回転)への回転駆動力が付与されると、上述した動作を逆転させることができ、直進筒41と移動枠46とが互いに当たりつつ撮影光軸方向で最も像面側へと後退し(図3および図10等参照)、撮影光学系12が沈胴位置(図3等参照)とされる。
本実施例のレンズ鏡胴13では、直進筒41および回転筒47に対して移動枠46と各第3弾性部材58とを上述したように設けたことにより、保持側カム溝としての上側面47g(光学カム軌跡To)の傾斜の変化に起因する回転筒47が回転される際の回転荷重の変化すなわち回転筒47の回転荷重の変動を抑制することができる。その回転荷重の変動の抑制の比較対象として、明確な図示は略すが比較用レンズ鏡胴C13を作成した。この比較用レンズ鏡胴C13は、図示は略すが、基本的にレンズ鏡胴13と同様の構成であって、直進筒41のカムフォロア41aと移動枠46のカムフォロア46bとが挿入されるカム凹所(カム凹所47fに相当する)の形状のみを異なるものとしている。なお、本明細書では、比較用レンズ鏡胴C13であっても、そのカム凹所の形状を除くと基本的な構成はレンズ鏡胴13と同様であることから、各部材を示す場合であって特に断りがない場合にはレンズ鏡胴13と同一の符号および名称を用いる。
その比較用レンズ鏡胴C13では、回転筒47の外周面に設けたカム凹所において、非撮影領域NAであるか撮影領域PAであるかに拘らず、換言すると周方向位置P1から周方向位置P3までの間、上側面と下側面との撮影光軸方向での間隔を一定としている。その一定の間隔は、レンズ鏡胴13における周方向位置P1から周方向位置P4までの間と同様に、カムフォロア41aとカムフォロア46bとの双方を案内可能に受け入れることを可能とすることを前提として最も小さく設定している。このため、比較用レンズ鏡胴C13では、直進筒41と移動枠46とが、撮影光軸方向での間隔が殆ど変化することなく、直進ライナー48および回転筒47に対して撮影光軸方向の被写体側へと直進移動する。なお、比較用レンズ鏡胴C13では、カム溝における上側面と下側面との撮影光軸方向での間隔を上述したように小さく一定に設定していることから、その小さな間隔において直進筒41と移動枠46とを撮影光軸方向へと押す力を適切に作用させることができるように各第3弾性部材58のバネ力量を設定している。すなわち、比較用レンズ鏡胴C13では、撮影領域PAの望遠位置(tele)となる際、直進筒41のカムフォロア41a(移動枠46のカムフォロア46bも同様である)に作用する撮影光軸方向の負荷Fを、レンズ鏡胴13が撮影領域PAの望遠位置(tele)となる際、直進筒41のカムフォロア41a(移動枠46のカムフォロア46b)に作用する撮影光軸方向の負荷Fと、等しいものとすることができるように、各第3弾性部材58のバネ力量を設定している。このため、等しい圧縮量とされている場合でみると、比較用レンズ鏡胴C13の各第3弾性部材58におけるバネ力量よりも、レンズ鏡胴13の各第3弾性部材58におけるバネ力量の方が大きく設定されている。
そして、レンズ鏡胴13および比較用レンズ鏡胴C13において、レンズ鏡胴駆動ユニット23により同一の条件下でレンズ鏡胴(その各筒状部)を駆動した場合における駆動モータ55aでのトルクをそれぞれ測定した。その測定結果を図12のグラフに示す。その図12は、そのレンズ鏡胴13(その駆動モータ55a)でのトルクと比較用レンズ鏡胴C13(その駆動モータ55a)でのトルクとの変化の態様を示すグラフであり、縦軸をレンズ鏡胴13(その駆動モータ55a)でのトルクおよび比較用レンズ鏡胴C13(その駆動モータ55a)でのトルクで示すとともに、横軸をカムフォロア41aがカム凹所47f(カム溝)に当たる箇所を基準とする回転筒47の回転角(回転位置)をレンズ鏡胴13もしくは比較用レンズ鏡胴C13における可動レンズ鏡筒(直進筒41)の撮影光軸方向での位置、すなわち撮影光学系12の状態で示している。なお、この図12において、広角位置(wide)から第1突出位置Paを少し越えるまでの間(非撮影領域NAも同様である)において、レンズ鏡胴13のトルクの方が比較用レンズ鏡胴C13のトルクよりも大きな数値となっているのは、上述したようにレンズ鏡胴13の方が各第3弾性部材58におけるバネ力量を大きく設定していることによる。
この図12に示すように、撮影領域PAすなわち広角位置(wide)と望遠位置(tele)との間において、レンズ鏡胴13(その駆動モータ55a)では、トルクの変動幅がT1であるのに対し、比較用レンズ鏡胴C13(その駆動モータ55a)では、トルクの変動幅がT2(>T1)となった。詳細には、広角位置(wide)から第1突出位置Paまでは、レンズ鏡胴13のトルクと比較用レンズ鏡胴C13のトルクとは略等しい態様で増加している。ところが、レンズ鏡胴13(その駆動モータ55a)のトルクは、第1突出位置Paを越えると減少しているのに対し、比較用レンズ鏡胴C13(その駆動モータ55a)のトルクは、第1突出位置Paを越えても増加して第2突出位置Pbとなると増加が終わるとともにその数値を維持している。これは、以下のことによる。なお、レンズ鏡胴13および比較用レンズ鏡胴C13における駆動モータ55aでのトルクは、各筒状部を相対的に移動させるべく回転筒47を回転させるために必要な力量を示すことから、当該トルクが大きくなることは回転筒47における回転荷重の増加を意味するとともに当該トルクが小さくなることは回転筒47における回転荷重の減少を意味する。
比較用レンズ鏡胴C13では、急傾斜領域Siであるか否かに拘らず、カム凹所における上側面と下側面との撮影光軸方向での間隔が一定であることから、上述した式(1)における撮影光軸方向の負荷Fが変化することはない。また、比較用レンズ鏡胴C13では、カム凹所の上側面の傾斜が大きくなる急傾斜領域Siとなると、その上側面と同様に、カム凹所の下側面の傾斜も大きくなることから、上側面のカムフォロア41aに対する圧力角(θ)が増大するとともに下側面のカムフォロア46bに対する圧力角(θ)が増大する。このため、上述した式(1)における圧力角θが増大することから、撮影光軸方向の負荷Fのうちの回転筒を回転させる力として作用する割り合いが多くなってしまい、直進筒41のカムフォロア41aがカム凹所の上側面に押し当てられることに起因する回転荷重(L)と、移動枠46のカムフォロア46bがカム凹所の下側面に押し当てられることに起因する回転荷重(L)と、の双方が増大してしまう。この結果、比較用レンズ鏡胴C13では、第1突出位置Paを越えても回転荷重が増加することとなり、撮影領域PA(広角位置(wide)と望遠位置(tele)との間)のトルクの変動幅がT2となる。
これに対し、レンズ鏡胴13では、カム凹所47fの上側面47gの傾斜が大きくなる急傾斜領域Siとなると、その上側面47gとは異なり、急傾斜領域Siとなってもカム凹所47fの下側面47hにおける傾斜は大きくならない(変化しない)ことから、その下側面47hのカムフォロア46bに対する圧力角(θ)が増大することを防止することができる。このため、上述した式(1)における圧力角θを一定の数値とすることができ、移動枠46のカムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hに押し当てられることに起因する回転荷重(L)の増加を防止することができる。ここで、本実施例では、望遠位置(tele)での上側面47gとカムフォロア41aとの圧力角θ1が45度であるのに対して、望遠位置(tele)での下側面47hとカムフォロア46bとの圧力角θ2が30度とされている。また、移動枠46では、直進筒41と等しい撮影光軸方向の負荷Fが作用するので、カムフォロア46bに作用する撮影光軸方向の負荷Fと、カムフォロア41aに作用する撮影光軸方向の負荷Fと、が等しいものとされている。さらに、レンズ鏡胴13と比較用レンズ鏡胴C13とでは、撮影領域PAの望遠位置(tele)となる際、直進筒41のカムフォロア41aと移動枠46のカムフォロア46bとに作用する撮影光軸方向の負荷Fが互いに等しいものとされている。このため、レンズ鏡胴13では、比較用レンズ鏡胴C13と比較すると、望遠位置(tele)において、移動枠46のカムフォロア46bが下側面47hに押し当てられることに起因する回転荷重(L)を、約60%にまで低減することができる。なお、レンズ鏡胴13と比較用レンズ鏡胴C13とでは、望遠位置(tele)において、直進筒41のカムフォロア41aがカム凹所47fの上側面47gに押し当てられることに起因する回転荷重(L)は、基本的には互いに等しいものとなる。
加えて、レンズ鏡胴13では、カム凹所47fの上側面47gの傾斜が大きくなる急傾斜領域Siとなると、上側面47g(そこにカムフォロア41aが押し当てられる直進筒41)と下側面47h(そこにカムフォロア46bが押し当てられる移動枠46)との間隔が徐々に拡がることから、各第3弾性部材58の圧縮量が徐々に小さくなって各第3弾性部材58から付与される直進筒41および移動枠46への押す力Ppが徐々に減少することとなる。このため、レンズ鏡胴13では、急傾斜領域Siとなると、撮影領域PAとしての周方向位置P2から周方向位置P4まですなわち撮影待機位置における広角位置(wide)側であって急傾斜領域Siではない領域と比較して、上述した式(1)における撮影光軸方向の負荷Fを小さくすることができるので、直進筒41のカムフォロア41aがカム凹所47fの上側面47gに押し当てられることに起因する回転荷重(L)と、移動枠46のカムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hに押し当てられることに起因する回転荷重(L)と、の双方を低減することができる。
この結果、レンズ鏡胴13では、撮影領域PAの望遠位置(tele)においても直進筒41のカムフォロア41aをカム凹所47fの上側面47gに適切に押し当てているにも拘らず、望遠位置(tele)における回転荷重を比較用レンズ鏡胴C13よりも小さくすることができる。加えて、レンズ鏡胴13では、カムフォロア46bが押し当てられる下側面47hの傾斜を上側面47gよりも小さなものとするとともに、上側面47gと下側面47hとの撮影光軸方向での間隔を大きくすることにより、第1突出位置Paを境に回転荷重を減少させることができる。このため、レンズ鏡胴13では、比較用レンズ鏡胴C13よりも小さな回転荷重としつつ、撮影領域PA(広角位置(wide)と望遠位置(tele)との間)のトルクの変動幅をT1(<T2)とすることができる。このことから、レンズ鏡胴13では、回転筒47のカム凹所47fの下側面47hが、そこに押し当てられる移動枠46のカムフォロア46b、カム凹所47fの上側面47g、およびそこに押し当てられる直進筒41のカムフォロア41aとの協働により、回転筒47の回転荷重の変動を抑制する回転荷重抑制機構70として機能する。
ここで、撮影領域PA(広角位置(wide)と望遠位置(tele)との間)でのトルクの変動幅を比較したのは、以下のことによる。非撮影領域NA(周方向位置P1と周方向位置P2との間)は、直進筒41を収納位置(図1および図3参照)と撮影待機位置における広角位置(wide)(図4参照)との間で移動させるものである。このため、その非撮影領域NAにおける上側面47g(下側面47hも同様である)の傾斜は、カムフォロア41aが当てられること(案内作用)に起因するズームギヤドモーターユニット55(その駆動モータ55a)への負荷を考慮しつつ、第1レンズ群31(直進筒41)の収納位置(図1および図3参照)と撮影待機位置における広角位置(図4参照)との間での移動を速やかに行う観点から設定している。このことから、非撮影領域NAにおける上側面47g(下側面47h)の傾斜は、撮影光学系12の光学的な設計に関係するものではなく適宜設定することができるので、この非撮影領域NAでの回転荷重が撮影領域PAも含めた全域における回転荷重の変動幅に影響を及ぼすようであれば、非撮影領域NAでの回転荷重を適宜減少することができる。このため、上記した例では、レンズ鏡胴13と比較用レンズ鏡胴C13とにおいて、撮影領域PA(広角位置(wide)と望遠位置(tele)との間)でのトルクの変動幅を比較している。
上記したことに加えて、レンズ鏡胴13では、例えば、撮像装置10の落下や他物に衝突される等の外的要因による衝撃が先端に加わった場合であっても、回転筒47の回転姿勢すなわち可動レンズ鏡筒(直進筒41)の撮影光軸方向での位置に拘らず、回転筒47の回転に応じて動作する可動レンズ鏡筒およびそれらの動作を伝達させる箇所(例えば、各カム溝および各カムフォロアや、長ギヤ54(ギヤ本体部54b)のギヤ歯および回転筒47のギヤ部47aのギヤ歯等)に大きな負荷がかかることを防止することができる。これは以下のことによる。
上記した衝撃が先端に加わった場合、直進筒41では、回転筒47に対して撮影光軸方向の像面側へと押し込む力が作用する。ここで、直進筒41は、各第3弾性部材58から付与される押す力Ppにより移動枠46を基点として撮影光軸方向の被写体側へと押されることで、カムフォロア41aがカム凹所47fの上側面47gへと押し当てられているとともに、そのカム凹所47fでは上側面47gの下方(撮影光軸方向の被写体側)に移動枠46のカムフォロア46bの下側面47hへの押し当てのための間隔が設けられている。このため、直進筒41は、上記した像面側への押し込む力が作用すると、押す力Ppに抗して各第3弾性部材58を縮めながら回転筒47および移動枠46に対して撮影光軸方向の像面側へと移動する。このため、上記した像面側への押し込む力を各第3弾性部材58で吸収することができる。
加えて、上記した像面側への押し込む力を各第3弾性部材58で吸収しきれなかった場合、図13に示すように、直進筒41が像面側へと変位して、直進筒41の撮影光軸方向の像面側の端面が、移動枠46の撮影光軸方向の被写体側の端面と、当たる。このため、上記した像面側への押し込む力は、直進筒41を介して移動枠46を、回転筒47に対して撮影光軸方向の像面側へと移動させるように作用する。すると、移動枠46では、カムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hへと撮影光軸方向の像面側へ向けて押し当てられていることから、この下側面47hとカムフォロア46bとで上記した像面側への押し込む力を受けることとなる。このため、上記した像面側への押し込む力は、下側面47hとカムフォロア46bとに対して、上述した式(1)における撮影光軸方向の負荷Fとして作用する。その下側面47hは、カム凹所47fの上側面47gの傾斜が大きくなる急傾斜領域Siとなっても、傾斜が大きくなることのない(変化しない)設定とされていることから、上述した式(1)における圧力角θが増大することが防止されている。これに対して、直進筒41のカムフォロアが当該直進筒41の直進移動させるためのカム溝に移動可能に嵌め込まれている従来技術では、急傾斜領域Siである場合、その大きな傾斜とされた傾斜面で上記した像面側への押し込む力を受けることとなり、上述した式(1)における圧力角θが増大してしまう。このことから、従来技術では、急傾斜領域Siにおいて上記した像面側への押し込む力が作用すると、当該押し込む力のうちの回転筒を回転させる力として作用する割り合いが多くなってしまい、当該回転筒に大きな回転力が作用してしまう。これに対し、レンズ鏡胴13では、急傾斜領域Siであっても、上記した像面側への押し込む力を緩やかな傾斜の下側面47hで受けることができるので、従来技術に比較して回転筒47を回転する力として作用する割り合いを低減することができる。本実施例では、周方向位置P3での上側面47gとカムフォロア41aとの圧力角θ1が45度であるのに対して、周方向位置P3での下側面47hとカムフォロア46bとの圧力角θ2が30度とされていることから、上記した像面側への押し込む力を下側面47hで受ける場合、上側面47gと等しい傾斜の面で受けることに比較して、回転筒47を回転させる力を約60%にまで低減することができる。
本発明に係るレンズ鏡胴13では、カム凹所47fの上側面47gの傾斜が大きくなる急傾斜領域Siとなると、回転荷重抑制機構70が、各第3弾性部材58から押す力Ppが付与されることに起因する回転筒47における回転荷重を他の場面よりも減少させることから、直進筒41のカムフォロア41aをカム凹所47fの上側面47gに適切に押し当てることを可能としつつ、可動レンズ鏡筒(直進筒41)の撮影光軸方向での位置を変化させるべく回転筒47を回転させる際に当該回転筒47の回転荷重が変化すること、すなわち回転筒47における回転荷重の変動を抑制することができる。
また、レンズ鏡胴13では、急傾斜領域Siとなると、回転荷重抑制機構70により、下側面47hのカムフォロア46bに対する圧力角(θ)が増大することを防止することができるので、移動枠46のカムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hに押し当てられることに起因する回転荷重(L)の増加を防止することができ、回転筒47における回転荷重の変動を抑制することができる。
さらに、レンズ鏡胴13では、カムフォロア46bが押し当てられる下側面47hの傾斜を、上側面47gよりも小さなものとすることにより、下側面47hのカムフォロア46bに対する圧力角(θ)が増大することを防止するので、簡易な構成で移動枠46のカムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hに押し当てられることに起因する回転荷重(L)の増加を防止することができ、回転筒47における回転荷重の変動を抑制することができる。
レンズ鏡胴13では、カムフォロア46bが押し当てられる下側面47hの傾斜を、急傾斜領域Siとなっても変化しないものとすることにより、下側面47hのカムフォロア46bに対する圧力角(θ)が増大することを防止するので、より簡易な構成で移動枠46のカムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hに押し当てられることに起因する回転荷重(L)の増加を防止することができ、回転筒47における回転荷重の変動を抑制することができる。
レンズ鏡胴13では、同一のカム凹所47fで、直進筒41のカムフォロア41aが押し当てられる上側面47gと、カムフォロア46bが押し当てられる下側面47hと、を構成していることから、カム凹所47fの幅寸法を調節するだけで下側面47hの傾斜を上側面47gよりも小さなものとすることができるので、より簡易な構成で移動枠46のカムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hに押し当てられることに起因する回転荷重(L)の増加を防止することができ、回転筒47における回転荷重の変動を抑制することができる。
レンズ鏡胴13では、急傾斜領域Siとなると、回転荷重抑制機構70として、各第3弾性部材58から互いに離れる方向へと押す力Ppを受ける直進筒41と移動枠46との撮影光軸方向での間隔が拡げられるので、撮影領域PAとしての周方向位置P2から周方向位置P4まですなわち撮影待機位置における広角位置(wide)側であって急傾斜領域Siではない領域と比較すると、各第3弾性部材58から付与される直進筒41および移動枠46への押す力Ppを減少させることができ、各第3弾性部材58からの押す力Pp、すなわち直進筒41のカムフォロア41aがカム凹所47fの上側面47gに押し当てられることに起因する回転荷重(L)と、移動枠46のカムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hに押し当てられることに起因する回転荷重(L)と、の双方を低減することができる。このため、直進筒41のカムフォロア41aをカム凹所47fの上側面47gに適切に押し当てることを可能としつつ、回転筒47における回転荷重の変動を抑制することができる。
レンズ鏡胴13では、急傾斜領域Siとなると、回転荷重抑制機構70により、下側面47hのカムフォロア46bに対する圧力角(θ)が増大することを防止するとともに、各第3弾性部材58から付与される直進筒41および移動枠46への押す力Ppを減少させるので、直進筒41のカムフォロア41aをカム凹所47fの上側面47gに適切に押し当てることを可能とし、移動枠46のカムフォロア46bがカム凹所47fの下側面47hに押し当てられることに起因する回転荷重(L)の増加を防止することができ、回転荷重の増加を招くことなくより効果的に回転筒47における回転荷重の変動を抑制することができる。
レンズ鏡胴13では、直進筒41のカムフォロア41aが押し当てられるカム凹所47fの上側面47gと、移動枠46のカムフォロア46bが押し当てられるカム凹所47fの下側面47hと、の撮影光軸方向での間隔を拡げることにより、直進筒41と移動枠46との撮影光軸方向での間隔を拡げるので、簡易な構成で撮影領域PAとしての周方向位置P2から周方向位置P4(急傾斜領域Siではない領域)と比較して各第3弾性部材58から付与される直進筒41および移動枠46への押す力Ppを減少させることができる。
レンズ鏡胴13では、同一のカム凹所47fで、直進筒41のカムフォロア41aが押し当てられる上側面47gと、カムフォロア46bが押し当てられる下側面47hと、を構成していることから、カムフォロア46bが押し当てられる下側面47hの傾斜を、上側面47gよりも小さなものとすることにより、直進筒41と移動枠46との撮影光軸方向での間隔を拡げることができるので、より簡易な構成で撮影領域PAとしての周方向位置P2から周方向位置P4(急傾斜領域Siではない領域)と比較して各第3弾性部材58から付与される直進筒41および移動枠46への押す力Ppを減少させることができる。
レンズ鏡胴13では、同一のカム凹所47fで直進筒41のカムフォロア41aが押し当てられる上側面47gとカムフォロア46bが押し当てられる下側面47hとを構成するとともに、そのカム凹所47fの内方においてカムフォロア41aとカムフォロア46bとが撮影光軸方向で並ぶものとしていることから、カム凹所47fをより小さなものとすることができ、回転筒47の外周面における各カム凹所47f等のレイアウトの自由度を高めることができる。
レンズ鏡胴13では、撮影領域PAとしての周方向位置P2から周方向位置P4(急傾斜領域Siではない領域)において、下側面47hの傾斜を上側面47gと等しいものとするものであることから、直進筒41および移動枠46へと撮影光軸方向に押す力Ppが付与されることに起因する回転荷重(L)の増加を抑制しつつ、上側面47gと下側面47hとの間隔を小さくすることができる。これは、撮影領域PAとしての周方向位置P2から周方向位置P4(急傾斜領域Siではない領域)では、上側面47g(下側面47h)の傾斜が小さいすなわちカムフォロア41a(カムフォロア46b)に対する圧力角(θ)が小さいので、撮影光軸方向に押す力Ppが式(1)における撮影光軸方向の負荷Fとして作用しても、当該押す力Ppのうちの回転筒41を回転させる力として作用する割り合いが小さいことから、押す力Ppの増加による回転荷重(L)の増加の影響が小さいことによる。
レンズ鏡胴13では、撮影領域PAとしての周方向位置P2から周方向位置P4(急傾斜領域Siではない領域)において、上側面47gと下側面47hとの間隔を小さくするものであることから、回転筒47の外周面における各カム凹所47fの占有面積の増加を防止することができ、回転筒47の外周面を効率よく利用して各カム凹所47fすなわち上側面47gと下側面47hとを形成することができる。換言すると、上側面47gと下側面47hとの間隔を大きくするためだけに、回転筒47の撮影光軸方向での寸法が増大することを防止することができるので、小型化に寄与することができる。
レンズ鏡胴13では、撮影領域PAとしての周方向位置P2から周方向位置P4(急傾斜領域Siではない領域)において、上側面47gと下側面47hとの間隔を小さくするものであることから、急傾斜領域Siにおける下側面47hの傾斜を上側面47gよりも小さくしつつ、同一のカム凹所47fで上側面47gと下側面47hを形成することができる。
レンズ鏡胴13では、第1レンズ保持枠(明確には図示せず)を介して第1レンズ群31を保持する直進筒41の移動のための光学カム軌跡Toとしてのカム凹所47fの上側面47gを基準として、移動枠46の移動のための移動カム軌跡Tmとしてのカム凹所47fの下側面47hの傾斜および位置を設定するものであることから、撮影光学系12の光学的な設計に影響を及ぼすことなく、可動レンズ鏡筒(直進筒41)の撮影光軸方向での位置を変化させる際に回転筒47の回転荷重が変化することを抑制することができる。
レンズ鏡胴13では、移動枠46の移動のための移動カム軌跡Tmとしてのカム凹所47fの下側面47hの傾斜および位置を設定するものであることから、弾性部材(本実施例では各第3弾性部材58)のバネ力量を、カム凹所47fの上側面47gにより規定される第1レンズ保持枠(明確には図示せず)を介して第1レンズ群31を保持する直進筒41の移動のための光学カム軌跡Toに合わせて最適化することができる。
レンズ鏡胴13では、例えば、撮像装置10の落下や他物に衝突される等の外的要因による衝撃が先端に加わった場合であっても、当該衝撃を直進筒41と移動枠46との間に設けられた各第3弾性部材58で吸収することができるので、回転筒47の回転に応じて動作する可動レンズ鏡筒およびそれらの動作を伝達させる箇所(例えば、各カムフォロアの各カム溝に挿入された箇所等)に大きな負荷がかかることを防止することができる。
レンズ鏡胴13では、例えば、撮像装置10の落下や他物に衝突される等の外的要因による衝撃が先端に加わった場合であって、各第3弾性部材58で吸収しきれなかった場合であっても、直進筒41の撮影光軸方向の像面側の端面と移動枠46の撮影光軸方向の被写体側の端面とが撮影光軸方向で当たることから、移動枠46のカムフォロア46bを介して下側面47hの傾斜で当該衝撃を受けることができる。
レンズ鏡胴13では、例えば、撮像装置10の落下や他物に衝突される等の外的要因による衝撃が先端に加わった場合であっても、直進筒41のカムフォロア41aが押し当てられる上側面47gの傾斜で当該衝撃を受けることはなく、直進筒41が当てられた移動枠46のカムフォロア46bを介して下側面47hの傾斜で当該衝撃を受けることができるので、回転筒47の回転姿勢すなわち可動レンズ鏡筒(直進筒41)の撮影光軸方向での位置に拘らず、回転筒47の回転に応じて動作する可動レンズ鏡筒およびそれらの動作を伝達させる箇所(例えば、各カムフォロアの各カム溝に挿入された箇所等)に大きな負荷がかかることを防止することができる。
レンズ鏡胴13では、回転筒47における回転荷重の変動を抑制する、すなわち当該回転荷重の変動幅を小さくすることができるので、その回転筒47を回転駆動するための駆動モータ55aにかかる負荷を低減することができるとともに回転筒47を安定して回転駆動することができ、撮影待機位置における広角位置(wide)と望遠位置(tele)との間での移行を円滑なものとすることができる。
レンズ鏡胴13では、第1レンズ保持枠(明確には図示せず)を介して第1レンズ群31を保持する直進筒41に対して、撮影光学系12のいずれの光学部材を保持していない移動枠46との間に設けた各第3弾性部材58で押す力Ppを付与するものであることから、他の光学部材(例えば、第2レンズ群32)を保持する保持部材に過度の押す力が作用すること防止しつつ、直進筒41のカムフォロア41aと回転筒47のカム凹所47fの上側面47gとの遊びがないもの(バックラッシュを取る)とすることができる。これは以下のことによる。レンズ鏡胴では、隣接する2つのレンズ群を保持する2つのレンズ保持部材の間に弾性部材を設けることにより、各レンズ保持部材のカムフォロアをそれが挿入されたカム溝のいずれかの側壁部に押し当てて、撮影光学系(12)の光学部材としてのレンズ群の位置精度を高めることが考えられる。ところが、本実施例の直進筒41のように、他のレンズ保持部材に比較して重量が大きいレンズ保持部材と他のレンズ保持部材との間に弾性部材を設ける場合、その弾性部材のバネ力量を、重量の大きいレンズ保持部材のカムフォロアをカム溝の一方の側壁部に適切に押し当てることを可能とする押す力を当該レンズ保持部材に付与することが可能な大きさとする必要がある。すると、重量の小さい他のレンズ保持部材には過度の押す力が付与されることとなってしまう。このような重量の差異は、本実施例の第1レンズ群31と他のレンズ群とのように、主に保持するレンズ群の重量(大きさ)の差異が大きく影響するものであり、光学設計によるが最も被写体側に存在する第1レンズ群(それを保持するレンズ保持部材)が最も大きな重量となることが多く、特に焦点距離可変のズームレンズの場合にその可能性が高くなる。これに対して、本実施例のレンズ鏡胴13では、各第3弾性部材58を撮影光学系12のいずれの光学部材を保持していない移動枠46と直進筒41との間に設けるものであることから、他のレンズ保持部材(例えば、第2レンズ群32を保持する第2レンズ保持枠42)に過度の押す力が付与されることを防止しつつ第1レンズ群31の位置精度を高めることができる。
レンズ鏡胴13では、第1レンズ保持枠(明確には図示せず)を介して第1レンズ群31を保持する直進筒41に対して、撮影光学系12のいずれの光学部材を保持していない移動枠46との間に設けた各第3弾性部材58で押す力Ppを付与するものであることから、撮影光学系12の光学的な設計による各レンズ群の移動態様に拘らず、回転筒47の回転荷重の変動を抑制することができる。
レンズ鏡胴13では、第4レンズ保持枠44(シャッタ/絞りユニット36)と第2レンズ保持枠42との間に3つの第1弾性部材56を設けるとともに、第5レンズ保持枠45と第4レンズ保持枠44との間に第2弾性部材57を設けていることから、第2レンズ保持枠42、第4レンズ保持枠44および第5レンズ保持枠45に過度の押す力が付与されることを防止しつつ、第2レンズ保持枠42が保持する第2レンズ群32(第3レンズ群33)、第4レンズ保持枠44が保持する第4レンズ群34(シャッタ/絞りユニット36)および第5レンズ保持枠45が保持する第5レンズ群35の位置精度を高めることができる。これは、第2レンズ保持枠42(第2レンズ群32(第3レンズ群33))、第4レンズ保持枠44(第4レンズ群34(シャッタ/絞りユニット36))および第5レンズ保持枠45(第5レンズ群35)は、直進筒41(第1レンズ群31(第1レンズ保持枠(明確には図示せず)))と比較して小さな重量であるとともに、当該直進筒41との重量の差異と比較して互いの差異が小さいことによる。
レンズ鏡胴13では、撮影光学系12のすべての光学部材(第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33、第4レンズ群34、シャッタ/絞りユニット36および第5レンズ群35)の位置精度を高めることができるので、より良好な画像を取得させることができる。
レンズ鏡胴13では、カム凹所47fの上側面47gの傾斜が大きくなる急傾斜領域Siとなると、回転荷重抑制機構70により各第3弾性部材58から押す力Ppが付与されることに起因する回転筒47における回転荷重が他の場面よりも減少することから、各第3弾性部材58を直進筒41と移動枠46との間に設けることに起因して回転筒47の回転荷重が過度に大きくなることを防止することができるので、全体としての回転筒47の回転荷重の増加を抑制することができ、その回転筒47を回転駆動するための駆動モータ55aに要求されるトルクの増加を抑制することができる。このため、駆動モータ55aの大型化を抑制することができ、レンズ鏡胴13延いては撮像装置10の小型化に寄与することができる。このことは、本実施例の構成の場合、他のレンズ保持部材に比較して直進筒41(第1レンズ群31(第1レンズ保持枠(明確には図示せず)))の重量が大きいことから、弾性部材(本実施例では各第3弾性部材58)に必要なバネ力量が大きくなるので、より効果的である。
レンズ鏡胴13では、回転筒47を取り巻く直進筒41に対応して、回転筒47を取り巻く位置に移動枠46と弾性部材としての各第3弾性部材58とを設けるものであることから、直進筒41の内方(例えば、直進筒41(第1レンズ保持枠(明確には図示せず))と第2レンズ保持枠42との間)に弾性部材を設けることと比較して、弾性部材(各第3弾性部材58)のバネ設計を容易なものとすることができる。
レンズ鏡胴13では、移動枠46を直進筒41に対して所定の範囲内で撮影光軸方向に移動可能に当該直進筒41に設けるとともに、その移動枠46と直進筒41との間に弾性部材としての各第3弾性部材58を設けるものであることから、直進筒41が第3弾性部材58を介して移動枠46を支持するユニット状態とすることができ、簡易な構成とすることができるとともに、それらの組み付けを容易なものとすることができる。
レンズ鏡胴13では、移動枠46の枠本体部46aを、回転筒47を取り巻く直進筒41と等しい内径寸法および外径寸法として、その直進筒41の撮影光軸方向の像面側で並べつつ回転筒47を枠本体部46aで取り巻いて移動枠46を設けるとともに、その枠本体部46aと直進筒41との間に弾性部材としての各第3弾性部材58を設けるものであることから、移動枠46および各第3弾性部材58を設けることにより径方向での寸法が増大することを防止することができる。このため、より小型化に寄与することができる。
このレンズ鏡胴13を用いる撮像装置10では、回転荷重抑制機構70により回転筒47における回転荷重の変動を抑制することができるので、撮影待機位置における広角位置(wide)と望遠位置(tele)との間での移行を円滑なものとすることができるとともに、装置全体を小型化することができる。
このレンズ鏡胴13を用いる撮像装置10では、撮影光学系12のすべての光学部材(第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33、第4レンズ群34、シャッタ/絞りユニット36および第5レンズ群35)の位置精度が高められているので、より良好な画像を取得することができる。
したがって、本発明に係るレンズ鏡胴13では、カム溝(カム凹所47fの上側面47g)の傾斜の変化に起因する回転筒47の回転荷重の変動を抑制しつつバックラッシュを取ることができる。
なお、上記した実施例では、本発明に係るレンズ鏡胴の一例について説明したが、撮影光学系の光学部材としての少なくとも1枚以上のレンズからなるレンズ群を保持し、該レンズ群の光軸方向への移動力を受ける保持側カムフォロアが設けられたレンズ保持部材と、該レンズ保持部材に対して所定の範囲内で光軸方向に移動可能とされ、光軸方向への移動力を受ける移動側カムフォロアが設けられた移動部材と、前記保持側カムフォロアが挿入される保持側カム溝と前記移動側カムフォロアが挿入される移動側カム溝とが周面に設けられ、回転することにより前記レンズ保持部材に光軸方向への移動力を付与するとともに前記移動部材に光軸方向への移動力を付与する回転筒と、前記レンズ保持部材と前記移動部材との間に設けられ、前記レンズ保持部材および前記移動部材に光軸方向へと相対的に押す力を付与する弾性部材と、該弾性部材から前記レンズ保持部材および前記移動部材へと前記押す力が付与されることで生じる光軸を回転中心とする前記レンズ保持部材に対する前記回転筒の回転方向での回転荷重を抑制する回転荷重抑制機構と、を備え、該回転荷重抑制機構は、前記回転方向で見て前記保持側カム溝における前記保持側カムフォロアが当たる箇所と光軸に直交する面とが為す角度が大きくなる急傾斜領域で、前記回転筒での回転荷重を減少させるレンズ鏡胴であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
また、上記した実施例では、レンズ保持部材としての直進筒41と移動枠46との間に設ける弾性部材として圧縮コイルバネである第3弾性部材58を4つ用いていたが、レンズ保持部材(直進筒41)および移動枠46に光軸方向(撮影光軸方向)へと相対的に押す力(Pp)を付与することができるものであれば、個数や構成は適宜設定することができ、例えば、無負荷状態において最も縮み一端と他端とを離間させる動作に抗する弾性力を発揮する(一端と他端とを接近させる方向に押す力を作用させる)引張コイルバネを用いてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
さらに、上記した実施例では、撮影領域PAにおける望遠位置(tele)側において、回転荷重抑制機構70として上側面47gよりも小さな傾斜として下側面47hを設けていたが、保持側カム溝(上側面47g)が急な傾斜(撮影光軸OAに直交する面との間で為す角度が大きい)となる急傾斜領域Siにおいて、移動側カム溝(下側面47h)の移動側カムフォロア(カムフォロア46b)に対する圧力角(θ)が増大することを防止すべく移動側カム溝の傾斜を小さくするものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、撮影領域PAにおける望遠位置(tele)側において、回転荷重抑制機構70として上側面47gとの撮影光軸方向での間隔を拡げる位置に下側面47hを設けていたが、保持側カム溝(上側面47g)が急な傾斜(撮影光軸OAに直交する面との間で為す角度が大きい)となる急傾斜領域Siにおいて、他の領域と比較して弾性部材(上記した実施例では各第3弾性部材58)からの押す力を低減すべく保持側カム溝との間隔を変化させる位置に移動側カム溝(下側面47h)を設けるものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、保持側カム溝としての上側面47gが、撮影領域PAにおける望遠位置(tele)側において傾斜が大きくなるものとされていたが、撮影光学系の光学設計によっては撮影領域PAにおける広角位置(wide)側の方の傾斜が大きくなる場合も考えられる。そのような場合、例えば、弾性部材として各第3弾性部材58と同様の位置に引張コイルバネを設けて、撮影光軸方向の像面側へと押す力を直進筒41に付与して、そのカムフォロア41aを回転筒47の外周面の保持側カム溝における撮影光軸方向の像面側の側面に押し当てるとともに、撮影光軸方向の被写体側へと押す力を移動枠46に付与して、そのカムフォロア46bを回転筒47の外周面の移動側カム溝における撮影光軸方向の被写体側の側面に押し当てる構成とすることができる。このような構成とする場合、広角位置(wide)側の急傾斜領域において、移動側カム溝(移動カム軌跡)の傾斜を小さくするとともに、保持側カム溝と移動側カム溝との撮影光軸方向での間隔を小さくすることで、上記した実施例と同様の効果を得ることができ、保持側カム溝(光学カム軌跡)の傾斜の変化に起因する回転筒47の回転荷重の変動を抑制することができる。しかしながら、このような構成とすると、外的要因による衝撃が先端に加わった場合に回転筒47の回転に応じて動作する可動レンズ鏡筒およびそれらの動作を伝達させる箇所(例えば、各カムフォロアの各カム溝に挿入された箇所等)に大きな負荷がかかることを防止する効果を得ることはできない。
上記した実施例では、回転筒47を取り巻く直進筒41を、回転荷重抑制機構70により急傾斜領域Siでの回転筒47の回転荷重を減少させる対象としてのレンズ保持部材としていたが、撮影光学系12のレンズ群(上記した実施例では31〜35)を保持するレンズ保持部材であれば、回転筒47の内方に設けられていてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。ここで、上記した対象とするレンズ保持部材(そこが保持するレンズ群)は、他のレンズ保持部材(そこが保持するレンズ群)と比較して重量の差異が大きいものが好適である。
上記した実施例では、レンズ保持部材としての直進筒41の内方に回転筒47が嵌め入れられていたが、回転筒47を回転することでレンズ保持部材(直進筒41)を撮影光軸方向に進退させるものであれば、径方向で見た配置の順序が逆であってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、移動枠46が撮影光学系12のいずれの光学部材を保持していないものとされていたが、保持側カム溝(上側面47g)が急な傾斜(撮影光軸OAに直交する面との間で為す角度が大きい)となる急傾斜領域Siにおいて、他の領域と比較して移動側カム溝の移動側カムフォロア(カムフォロア46b)に対する圧力角(θ)が増大することを防止すべく移動側カム溝の傾斜を小さくする、もしくは他の領域と比較して弾性部材(上記した実施例では各第3弾性部材58)からの押す力を低減すべく保持側カム溝との間隔を変化させる位置に移動側カム溝(下側面47h)を設けるものであれば、移動枠46が撮影光学系(12)の光学部材のいずれかを保持するものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した各実施例では、撮影光学系12と撮像素子22とが筐体に収容され当該筐体がカメラ本体11(撮像装置10)に着脱自在とされた撮像ユニットに設けられたレンズ鏡胴13を示していたが、撮影光学系のレンズ群を保持するレンズ保持部材の保持側カムフォロアが回転筒の保持側カム溝に挿入されて、回転筒の回転によりレンズ保持部材が光軸方向への移動力を受けるものであれば、撮像装置に設けられて構成されたレンズ鏡胴であってもよく、撮影光学系を保持する各筒状部が撮像装置(デジタルカメラ)の筐体(撮像装置本体)に着脱可能とされたレンズ鏡胴であってもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、撮像装置(デジタルカメラ)の一例としての撮像装置10にレンズ鏡胴13が搭載されていたが、カメラ機能を組み込んだPDA(personal data assistant)や携帯電話機等の携帯型情報端末装置に搭載されていてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。これは、このような携帯型情報端末装置も外観は若干異にするものの撮像装置10と実質的に全く同様の機能・構成を含んでいるものが多いことによる。同様に、本発明に係るレンズ鏡胴13を画像入力装置に採用してもよい。
以上、本発明のレンズ鏡胴を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。