以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明に従う構造を有するリチウムイオン二次電池の一実施形態が、その部分縦断面形態において示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、正極集電体層12と負極集電体層14との間に、薄膜状の正極層16と負極層18が、薄膜状の固体電解質層20を介して積層された積層構造体からなっている。換言すれば、リチウムイオン二次電池10は、正極集電体層12と正極層16と固体電解質層20と負極層18と負極集電体層14とが、その順番に位置するように積層されてなる、一つの電池素子22にて構成されている。
そのような本実施形態のリチウムイオン二次電池10では、正極集電体層12が、アルミニウム箔からなり、また、負極集電体層14が、銅箔からなっている。なお、それら正極集電体層12と負極集電体層14は、その形成材料が、特に限定されるものではなく、従来と同様な材料が用いられる。即ち、正極集電体層12と負極集電体層14は、アルミニウムや銅の他、チタン、ニッケル、鉄等の金属、又はそれらの金属の合金等を用いて形成される。また、正極集電体層12と負極集電体層14は、金属箔の他、公知の蒸着法によって形成された蒸着膜にて構成しても良い。
そして、かかるリチウムイオン二次電池10にあっては、正極層16が、正極活物質24を含有する第一の蒸着重合膜層としての正極層用蒸着重合膜層26にて構成されて、正極集電体層12の厚さ方向一方の面の全面に、一体的に積層形成されている。また、負極層18が、負極活物質28を含有する第三の蒸着重合膜層としての負極層用蒸着重合膜層30にて構成されて、負極集電体層14の厚さ方向一方の面の全面に、一体的に積層形成されている。
より具体的には、正極層用蒸着重合膜層26に含まれる正極活物質24は、ここでは、LiCoO2 からなっている。この正極活物質24の構成材料は、LiCoO2 に限定されるものではなく、従来からリチウムイオン二次電池10に用いられるものが、何れも使用可能である。即ち、例えば、LiCoO2 の他、Li(Ni−Mn−Co)O2 (NiをCo、Mnで一部置換したものでも良い)、LiNiO2 、LiMn2O4、LiFePO4 、LiMnXFe1-XPO4 、V2O5、V6O13 、TiS2 等が、それぞれ単独で、或いは複数のものが適宜に組み合わされて、正極活物質24として使用され得るのである。
また、負極層用蒸着重合膜層30に含まれる負極活物質28は、ここでは、天然グラファイト(天然黒鉛)からなっている。この負極活物質28の構成材料は、天然グラファイトに限定されるものではなく、従来からリチウムイオン二次電池10に用いられるものが、何れも使用可能である。即ち、例えば、天然グラファイトの他、ハードカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノウォール、メソフェーズカーボンマイクロビーズ、メソフェーズカーボンファイバー、リチウム金属、リチウム・アルミニウム合金、リチウムがグラファイト或いはカーボンの層間に吸蔵された層間化合物、Li4Ti5O12、Si、SiO、Siの合金、Sn、SnO、Snの合金、MnO2 等が、それぞれ単独で、或いは複数のものが適宜に組み合わされて、負極活物質28として使用され得るのである。
そして、それら正極活物質24と負極活物質28は、何れも粉体乃至は粒体の形態で、正極層16と負極層18にそれぞれ無数含まれている。なお、それら正極層16中や負極層18中に含まれる正極活物質24と負極活物質28は、それぞれの大きさが、特に限定されるものではないものの、走査電子顕微鏡によって測定される一次粒子または一次粒子が凝集した二次粒子の平均粒子径が、一般には10nm〜50μm程度とされる。何故なら、正極活物質24と負極活物質28の一次粒子または二次粒子の平均粒径が50μmよりも大きい場合には、薄膜化の妨げとなるばかりでなく、電流密度が大きいときに放電容量が低下し易いといった問題が惹起される可能性があるからである。また、正極活物質24と負極活物質28の一次粒子または二次粒子の平均粒径が10nmよりも小さい場合には、正極活物質24と負極活物質28の単位重量当たりの表面積が極めて大きくなり、そのため、必要となる導電補助材の量が増大し、その結果として、リチウムイオン二次電池10のエネルギー密度が低下する恐れがあるからである。
そして、そのような正極活物質24の無数が、正極層用蒸着重合膜層26内に、それを構成する樹脂材料にて相互に結着された状態で密に含有されて、薄膜状の正極層16が構成されている。また、負極活物質28の無数が、負極層用蒸着重合膜層30内に、それを構成する樹脂材料にて相互に結着された状態で密に含有されて、薄膜状の負極層18が構成されている。
このように、正極層16と負極層18は、真空ドライプロセスの一種たる蒸着重合法の実施によって形成される正極層用蒸着重合膜層26と負極層用蒸着重合膜層30にて構成されている。そのため、それら正極層16と負極層18は、何れも、数十ナノメートルオーダーでの膜厚制御が可能となっており、それによって、膜厚が、極めて薄く均一にコントロールされている。また、膜中の不純物が十分に少なくされている。
そして、ここでは、正極層用蒸着重合膜層26と負極層用蒸着重合膜層30とが、何れも、ポリアニリンからなっている。このポリアニリンは、例えば、真空中で、蒸着重合法を公知の手法により実施して生成されたポリユリアに対して紫外線を照射することによって形成されるものであって、十分な電子伝導性と適度な可撓性乃至は柔軟性とを有している。
よく知られているように、ポリユリアは、原料モノマーたるアミン(ジアミン、トリアミン、テトラアミン等を含む)とイソシアネート(ジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネート等を含む)の重合に際して、加熱処理が不要であり、しかも、水やアルコール等の脱離が全くない重付加重合反応において、形成される。このため、そのようなポリユリアに紫外線を照射して形成されるポリアニリンにて正極層形成用及び負極層用蒸着重合膜層26,30を構成することにより、正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30を形成する際の原料モノマーの重合時に加熱処理を実施するための設備や、重合反応によって脱離した水やアルコール等を、重合反応が進行する反応室内から除去するための設備等が不要となって、低コスト化が実現され得る。また、ポリユリアは、優れた耐湿性を有しているため、正極層16と負極層18とにおいて、高い耐電圧が、より安定的に確保され得るといった利点が得られる。
なお、そのような正極層用蒸着重合膜層26からなる正極層16と負極層用蒸着重合膜層30からなる負極層18の厚さは、何れも、一般に1〜200μm程度とされる。何故なら、正極層16と負極層18のそれぞれの厚さが1μmよりも薄いと、正極層16中の正極活物質24の含有量や負極層18中の負極活物質28の含有量が過少となってエネルギー密度が低下する可能性があるからであり、また、正極層16と負極層18のそれぞれの厚さが200μmよりも厚いと、リチウムイオン二次電池10の薄肉・小型化において不利となるばかりでなく、内部抵抗(イオンの移動抵抗)が大きくなって、必要な電流をとることが困難となる恐れがあるからである。
また、正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30を構成する樹脂の種類は、例示のポリアニリンに、何等限定されるものではない。蒸着重合法による成膜により、正極集電体層12や負極集電体層14に対して一体的に積層形成可能で、且つ無数の正極活物質24同士や無数の負極活物質28同士を、それぞれ互いに結着するバインダとしての機能を有する公知の樹脂が、正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30の構成樹脂(形成樹脂)として用いられ得る。例えば、ポリユリアを紫外線照射して得られるポリアニリンの他、ポリユリア、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアゾメチン、アクリル、ポリパラキシリレン、ペリレン等が、正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30の構成樹脂として、使用可能なのである。
そして、それらの樹脂の中でも、電子伝導性を有する樹脂が、正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30の構成樹脂として好適に用いられる。何故なら、正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30が、電子伝導性を有する樹脂材料にて構成されていることにより、正極層16の電子伝導性が十分に高められて、正極層16の膜抵抗が効果的に小さくされ、その結果、リチウムイオン二次電池10の出力密度の向上が有利に図られ得ることとなるからである。
なお、そのような電子伝導性を有する正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30としては、導電補助材を含有することなしに、高い電子伝導性を発揮する、所謂電子伝導性ポリマーのうちの蒸着重合可能なものが、導電補助材の添加工程を省略可能な分だけ、良好な生産性を得られること等から、好適に用いられる。このような電子伝導性ポリマーには、例えば、π−共役構造を有し、且つ側鎖にスルホン酸基又はカルボキシル基が結合しているポリユリアや、そのようなポリユリアを紫外線照射して得られる、π−共役構造を有し、且つ側鎖にスルホン酸基又はカルボキシル基が結合しているポリアニリン等がある。
また、そのような電子伝導性ポリマーの範疇には入らないものであっても、導電補助材の含有によって電子伝導性を発揮する、蒸着重合法による成膜が可能な樹脂材料も、電子伝導性を有する正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30の構成樹脂として使用可能である。そのような樹脂材料に含まれる導電補助材としては、例えば、カーボンブラック等の導電性炭素粉末や、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブ等の導電性炭素繊維等がある。
そして、本実施形態のリチウムイオン二次電池10においては、固体電解質層20が、それの厚さ方向における正極層16側の部分を構成する第一の固体電解質層部分32と、厚さ方向における負極層18側の部分を構成する第二の固体電解質層部分34とからなっている。
第一の固体電解質層部分32は、固体電解質層20の内層部(厚さ方向中央部)の一部を構成する第一の内側蒸着重合膜層36と、固体電解質層20の正極層16側の外層部(厚さ方向の正極層16側部分)を構成する第一の外側蒸着重合膜層37とからなる二層構造とされている。それら第一の内側蒸着重合膜層36と第一の外側蒸着重合膜層37は、何れも、リチウムイオン伝導性を有している。そして、第一の外側蒸着重合膜層37が、正極層16の正極集電体層12への積層側とは反対側の面の全面に対して一体的に積層形成されている。また、第一の内側蒸着重合膜層36が、第一の外側蒸着重合膜層37に対して一体的に積層形成されている。このことから明らかなように、ここでは、正極層側蒸着重合膜層及び第二の蒸着重合膜層が、第一の内側蒸着重合膜層36と第一の外側蒸着重合膜層37の二層構造をもって構成されている。
一方、第二の固体電解質層部分34は、固体電解質層20の内層部(厚さ方向中央部)の一部を構成する第二の内側蒸着重合膜層38と、固体電解質層20の負極層18側の外層部(厚さ方向の負極層18側部分)を構成する第二の外側蒸着重合膜層39とからなる二層構造とされている。それら第二の内側蒸着重合膜層38と第二の外側蒸着重合膜層39は、何れも、リチウムイオン伝導性を有している。そして、第二の外側蒸着重合膜層39が、負極層18の負極集電体層14への積層側とは反対側の面の全面に対して一体的に積層形成されている。また、第二の内側蒸着重合膜層38が、第二の外側蒸着重合膜層39に対して一体的に積層形成されている。このことから明らかなように、ここでは、負極層側蒸着重合膜層及び第四の蒸着重合膜層が、第二の内側蒸着重合膜層38と第二の外側蒸着重合膜層39の二層構造をもって構成されている。
そして、そのような第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34とが、それらに対して正極層16への積層側や負極層18への積層側とは反対側の面を与える、第一及び第二の内側蒸着重合膜層36,38の第一及び第二の外側蒸着重合膜層37,39とは反対側の面同士において互いに重ね合わされて、積層されている。これにより、固体電解質層20が、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34の積層体として構成されているのである。なお、本実施形態では、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34とが非接着で積層されているが、それらを熱溶着等によって接合しても良い。
このように、固体電解質層20も、正極層16や負極層18と同様に、真空ドライプロセスの一種たる蒸着重合法を実施することによって形成されている。それ故、固体電解質層20にあっても、数十ナノメートルオーダーでの膜厚制御が可能となっており、それによって、膜厚が、極めて薄く均一にコントロールされている。また、膜中の不純物が十分に少なくされているのである。
また、本実施形態では、第一の固体電解質層部分32を与える第一の内側及び第一の外側蒸着重合膜層36,37と、第二の固体電解質層部分34を与える第二の内側及び第二の外側蒸着重合膜層38,39が、何れも、ポリユリアにて構成されている。これによって、ポリアニリンからなる正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30にて構成された正極層16及び負極層18を形成する際と同様に、固体電解質層20の形成コストの削減が有利に図られており、更には、かかる固体電解質20において、高い耐電圧が安定的に確保されていると共に、適度な可撓性乃至は柔軟性が発揮されるようになっている。
そして、第一の内側及び第一の外側蒸着重合膜層36,37と第二の内側及び第二の外側蒸着重合膜層38,39をそれぞれ構成するポリユリアは、下記の構造式(1)で表されるポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造(以下、同一の意味において使用する)を有し、しかも、かかるポリエチレンオシキド中には、リチウム塩が含有されている。これによって、上記四つの蒸着重合膜層36,37,38,39が、何れもリチウムイオン伝導性を発揮するようになっているのである。
また、本実施形態では、正極層16に対して一体的に積層形成された第一の外側蒸着重合膜層37と、負極層18に対して一体的に積層形成された第二の外側蒸着重合膜層39とが、電気陰性度の高い元素を含む官能基を有する重合体、つまり、負電荷に偏った官能基を有する重合体にて形成されている。そして、ここでは、第一の外側蒸着重合膜層37と第二の外側蒸着重合層39が、例えば、シアノ基(−CN)を側鎖に有するポリユリアにて形成されているのである。
なお、固体電解質層20の第一及び第二の固体電解質層部分32,34をそれぞれ構成する、リチウムイオン伝導性を備えた第一の内側及び第一の外側蒸着重合膜層36,37と第二の内側及び第二の外側蒸着重合膜層38,39は、例示したポリユリアからなるものに、何等限定されるものではない。蒸着重合法による成膜により、正極層16や負極層18に対して一体的に積層形成可能で、且つリチウムイオン伝導性を有する公知の樹脂が、それら四つの蒸着重合膜層36,37,38,39のそれぞれの構成樹脂として、何れも用いられ得る。
具体的には、第一及び第二の固体電解質層部分32,34を構成する四つの蒸着重合膜層36,37,38,39の構成樹脂としては、例えば、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つかかるポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されたポリアミド、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つかかるポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されたポリイミド、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つかかるポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されたポリアミドイミド、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つかかるポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されたポリエステル、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つかかるポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されたポリウレタン、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つかかるポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されたポリアゾメチン、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合しているポリユリア、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合しているポリアミド、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合しているポリイミド、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合しているポリアミドイミド、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合しているポリエステル、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合しているポリウレタン、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合しているポリアゾメチン等が、使用可能である。
要するに、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つかかるポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されてなる、蒸着重合法によって成膜可能な樹脂(以下、樹脂:Aと言う)や、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合している、蒸着重合法によって成膜可能な樹脂(以下樹脂:Bと言う)等が、固体電解質層20の第一及び第二の固体電解質部分32,34を構成する、リチウムイオン伝導性を備えた第一の内側及び第一の外側蒸着重合膜層36,37と第二の内側及び第二の外側蒸着重合膜層38,39として使用可能なのである。また、樹脂:Aが有するポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造は、樹脂:Aの分子に結合していても良く、或いは分子に結合せずに、単に、樹脂:A中に混合された状態で存在しているだけでも良い。
なお、第一の内側及び第一の外側蒸着重合膜層36,37と第二の内側及び第二の外側蒸着重合膜層38,39は、必ずしも、全てが同一の樹脂材料にて構成されている必要はない。従って、例えば、上記に例示した幾つかの樹脂材料の中から、少なくとも1種類が他のものとは異なる種類の樹脂材料を選択し、それらの樹脂材料にて、四つの蒸着重合膜層36,37,38,39をそれぞれ構成することも可能である。
そして、本実施形態では、第一の外側蒸着重合膜層37と第二の外側蒸着重合膜層39を構成する樹脂材料の選択に際して、上記に例示した幾つかの樹脂材料のうちで、特に、電気陰性度の高い元素を含む官能基を側鎖に有する重合体からなる樹脂材料が選択される。具体的には、例えば、シアノ基(−CN)や、フルオロ基(−F)、クロロ基(−Cl)、ブロモ基(−Br)、ヨード基(−I)、カルボニル基(=O)、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)、ニトロ基(−NO2 )、スルホン酸基(−SO3H )等の官能基を側鎖に有する樹脂材料が選択されるのである。
また、固体電解質層20における第一の固体電解質部分32中と第二の固体電解質部分34中に含まれるリチウム塩とは、リチウムを含むイオン解離性化合物を言い、その種類は、何等限定されるものではなく、所定の樹脂材料にリチウムイオン伝導性を付与するのに従来から用いられるものが、何れも使用可能である。従って、固体電解質層20中に含まれるリチウム塩としては、例えば、LiN(SO2CF3)2 、LiN(SO2C2F5)2、LiBF4 、LiClO4 等が使用可能である。
このようなリチウム塩は、イオン伝導性を有する樹脂材料(ここでは、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有するポリユリア)からなる第一の固体電解質部分32(第一の内側及び第一の外側蒸着重合膜層36,37)中と第二の固体電解質部分34(第二の内側及び第二の外側蒸着重合膜層38,39)中で、一部が解離(電離)している。そのため、固体電解質層20中に含有されるリチウム塩は、その一部が、第一及び第二の固体電解質層部分32,34中に、リチウムイオンとアニオンの状態で存在している。
そして、本実施形態のリチウムイオン二次電池10では、前記したように、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34のうち、正極層16に対して一体的に積層形成された第一の外側蒸着重合膜層37と、負極層18に対して一体的に積層形成された第二の外側蒸着重合膜層39とをそれぞれ構成する重合体が、負電荷に偏った、電気陰性度の高い元素を含んだ官能基を有している。それ故、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34では、それらの内部に存在するリチウム塩由来のリチウムイオンが、第一の外側蒸着重合膜層37や第二の外側蒸着重合膜層39を構成する重合体の負電荷に偏った官能基に引き寄せられ、それによって、リチウムイオンが、第一の内側蒸着重合膜層36中よりも第一の外側蒸着重合膜層37中に多く存在し、また、第二の内側蒸着重合膜層38中よりも第二の外側蒸着重合膜層39中に多く存在している。
すなわち、第一の固体電解質層部分32においては、リチウムイオンが、厚さ方向の中間部分や負極層18側(第二の固体電解質層部分34との積層側)の部分よりも、厚さ方向の正極層16側の部分に多く存在し、また、第二の固体電解質層部分34においては、リチウムイオンが、厚さ方向の中間部分や正極層18側(第一の固体電解質層部分32との積層側)の部分よりも、厚さ方向の負極層18側の部分に多く存在している。つまり、第一の固体電解質層部分32では、リチウムイオンが、正極層16側の部分(第一の外側蒸着重合膜層37中)に偏在している一方、第二の固体電解質層部分34では、リチウムイオンが、負極層18側の部分(第二の外側蒸着重合膜層39中)に偏在しているのである。
かくして、本実施形態のリチウムイオン二次電池10では、第一の固体電解質層部分32の正極層16側でのリチウムイオンの含有量が十分に多くされているため、リチウムイオン二次電池10の充放電時に、正極層16中の正極活物質24と第一の固体電解質層部分32との間で、単位時間当たりに、より多くのリチウムイオンが、より速い速度で移動するようになる。また、第二の固体電解質層部分34の負極層18側でのリチウムイオンの含有量が十分に多くされているため、正極層16側と同様に、リチウムイオン二次電池10の充放電時に、負極層18中の負極活物質28と第二の固体電解質層部分34との間でも、単位時間当たりに、より多くのリチウムイオンが、より速い速度で移動するようになる。そして、それらの結果として、電池性能の大幅な向上が、効果的に図られ得るのである。
なお、前述したように、リチウムイオン二次電池10の出力密度を高めるには、一般に、正極層16を構成する正極層用蒸着重合膜層26と負極層18を構成する負極層用蒸着重合膜層30が、電子伝導性を有する樹脂材料を用いて形成されていることが望ましい。しかしながら、上記の如く、本実施形態のリチウムイオン二次電池10では、固体電解質層20の正極層16の近傍部分と負極層18の近傍部分でのリチウムイオンの含有量が十分に多くされていることによって、電池性能の向上が図られている。
それ故、本実施形態においては、正極層用蒸着重合膜層26と負極層用蒸着重合膜層30とを、電子伝導性ではなくイオン伝導性を有する樹脂材料を用いて形成しても、十分な出力密度の向上が期待できる。また、正極層形成用及び蒸着重合膜層26,30をイオン伝導性を有する樹脂材料を用いて形成することによって、正極層16中の正極活物質24と第一の固体電解質層部分32との間や、負極層18中の負極活物質28と第二の固体電解質層部分34との間でのリチウムイオンの移動が、よりスムーズに且つ迅速になるといったメリットが得られることとなる。
正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30をイオン伝導性を有する樹脂材料にて構成する場合には、例えば、第一の固体電解質部分32(第一の内側及び外側蒸着重合膜層36,37)や第二の固体電解質部分34(第二の内側及び外側蒸着重合膜層38,39)を形成するのに使用される、先に例示したイオン伝導性の樹脂材料等が、リチウム塩を含有しない状態で、或いはそれを含有した状態で、正極層用及び負極層用蒸着重合膜層26,30を形成する樹脂材料として、好適に使用される。
また、そのような第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34とからなる固体電解質層20の全体の厚さは、特に限定されるものではないものの、一般に50nm〜100μm程度とされる。何故なら、固体電解質層20の厚さが50nmよりも薄いと、正極層16と負極層18の絶縁が困難となって内部短絡する可能性があるからであり、また、固体電解質層20の厚さが100μmよりも厚いと、薄肉化の妨げとなるばかりでなく、内部抵抗が大きくなって出力密度が低下する恐れがあるからである。
そして、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34のそれぞれの厚さも、それらの合計厚さが、上記した固体電解質層20の全体の厚さの範囲内とされておれば良い。即ち、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分36のそれぞれの厚さが、必ずしも略同一厚さとされている必要はない。なお、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34厚さは、それぞれ、25nm〜50μmの範囲内とされていることが望ましい。
また、第一の固体電解質層部分32を構成する第一の内側蒸着重合膜層36と第一の外側蒸着重合膜層37のそれぞれの厚さや、第二の固体電解質層部分34を構成する第二の内側蒸着重合膜層38と第二の外側蒸着重合膜層39のそれぞれの厚さも、固体電解質層20の全体の厚さ、或いは第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34のそれぞれの厚さ等に応じて、適宜に設定されるところである。
以上の説明から明らかなように、本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、正極集電体層12の一方の面に対して、正極層16を構成する正極層用蒸着重合膜層26と、固体電解質層20の厚さ方向一方側の略半分の部分からなる第一の固体電解質層部分32を形成する第一の外側蒸着重合膜層37と第一の内側蒸着重合膜層36とが、その順番で一体的に積層形成された第一の積層体40と、負極集電体層14の一方の面に対して、負極層18を構成する負極層用蒸着重合膜層28と、固体電解質層20の厚さ方向他方側の残り略半分の部分からなる第二の固体電解質層部分34を形成する第二の外側蒸着重合膜層39と第二の内側蒸着重合膜層38とが、その順番で一体的に積層形成された第二の積層体42とを有している。そして、それら第一の積層体40と第二の積層体42とが、第一の内側蒸着重合膜層正極層36の第一の外側蒸着重合膜層37側とは反対側の面と、第二の内側蒸着重合膜層負極層38の第二の外側蒸着重合膜層39側とは反対側の面とにおいて互いに重ね合わされて、積層されている。
かくして、本実施形態のリチウムイオン二次電池10が、第一の積層体40と第二の積層体42とを非接着で積層してなる積層構造を有している。そして、リチウムイオン二次電池10における第一の積層体40と第二の積層体42の積層界面44が、固体電解質層20の厚さ方向中間部に形成されているのである。なお、かかるリチウムイオン二次電池10は、一般に、正極集電体層12と負極集電体層14とに対して、それぞれ正極側の端子と負極側の端子(共に図示せず)が接続され、更に、ラミネート構造を有する公知の保護フィルム等が外装されて、使用に供されるようになっている。
ところで、上記の如き構造を有するリチウムイオン二次電池10は、例えば、図2に示されるような、本発明に従う構造を備えた製造装置46を用いて製造されることとなる。
図2から明らかなように、本実施形態の製造装置46は、反応室としての真空槽48を有している。この真空槽48の一つの側壁部には、排気パイプ50が接続されており、また、かかる排気パイプ50上には、真空ポンプ52が設置されている。そして、この真空ポンプ52の作動により、真空槽48内の空気が、排気パイプ50を通じて外部に排出されて、真空槽48内が真空状態とされるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、排気パイプ50と真空ポンプ52とによって排気手段が構成されている。
また、真空槽48内には、第一の巻出しローラ54と、第二の巻出しローラ56と、第一の積層体作製ユニット58と、第二の積層体作製ユニット60と、電池素子作製ユニット62とが、設置されている。
より詳細には、第一の巻出しローラ54は、正極集電体層12を構成する長尺な帯状のアルミニウム箔64が巻回されてなるロールが装着可能とされている。そして、この第一の巻出しローラ54の回転に伴って、第一の巻出しローラ54に装着されたアルミニウム箔64のロールからアルミニウム箔64が連続的に巻き出されるようになっている。また、この巻き出されたアルミニウム箔64は、第一の積層体作製ユニット58に対して連続的に供給されるようになっている。
第二の巻出しローラ56は、負極集電体層14を構成する長尺な帯状の銅箔66が巻回されてなるロールが装着可能とされている。そして、この第二の巻出しローラ56の回転に伴って、第二の巻出しローラ56に装着された銅箔66のロールから銅箔66が連続的に巻き出されるようになっている。また、このロールから巻き出された銅箔66は、第二の積層体作製ユニット60に対して連続的に供給されるようになっている。これらのことから明らかなように、本実施形態では、第一の巻出しローラ54にて、正極集電体層供給手段が、第二の巻出しローラ56にて、負極集電体層供給手段が、それぞれ構成されている。
第一の積層体作製ユニット58は、第一の積層体40を、連続した工程によって作製するもので、真空槽48内に設置された第一の走行ローラ68と、真空槽48の外部にそれぞれ設置された正極層形成ユニット70と第一の内側蒸着重合膜層形成ユニット72と第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット74とを有している。
第一の積層体作製ユニット58における第一の走行ローラ68は、第一の巻出しローラ54に装着されたアルミニウム箔64のロールから、第一の巻出しローラ54の回転に伴って巻き出されて、第一の積層体作製ユニット58に供給されるアルミニウム箔64が巻き掛けられるようになっている。そして、この第一の走行ローラ68に巻き掛けられたアルミニウム箔64が、第一の走行ローラ68の回転に伴って、第一の走行ローラ68の外周面上を、その周方向の一方向(矢印:アにて示される方向)に走行させられるようになっている。なお、図2中、76は、何れもテンションローラである。
一方、正極層形成ユニット70は、第一の蒸着重合膜層形成手段としての正極層用蒸着重合膜層形成装置78と、正極活物質混入手段としての正極活物質混入装置80と、紫外線照射装置81とを含んで構成されている。正極層用蒸着重合膜層形成装置78は、真空蒸着重合法により、正極層用蒸着重合膜層26を形成するものであって、第一蒸発源82と第二蒸発源84とを有している。また、それら第一及び第二蒸発源82,84は、何れも、原料収容ポット86a,86bとヒータ88a,88bとを更に有している。
そして、かかる第一及び第二蒸発源82,84の各原料収容ポット86a,86b内には、正極層用蒸着重合膜層26を形成するための二種類の原料90a,90bが、それぞれ収容されている。ここでは、正極層用蒸着重合膜層26がポリアニリンからなるため、各原料収容ポット86a,86b内には、二種類の原料90a,90bとして、例えば、紫外線を照射される前のポリユリアの原料モノマーたる1,4−フェニレンジアミン−2−スルホン酸等の芳香族ジアミンと1,4−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートとが、液体状態で、それぞれ収容されている。そして、それら第一及び第二蒸発源82,84の各原料収容ポット86a,86b内に収容された二種類の原料90a,90bが、ヒータ88a,88bにて加熱されて、蒸発させられるようになっている。
また、第一及び第二蒸発源82,84の各原料収容ポット86a,86bと真空槽48との間には、それらを相互に接続する蒸気供給パイプ92が設置されている。そして、この蒸気供給パイプ92は、真空槽48内において、第一の走行ローラ68の外周面に向かって開口するように配置されている。また、そのような蒸気供給パイプ92の各原料収容ポット86a,86bとの接続部上には、開閉バルブ94a,94bが、それぞれ設けられている。
かくして、正極層用蒸着重合膜層形成装置78にあっては、第一及び第二蒸発源82,84の各原料収容ポット86a,86b内でヒータ88a,88bの加熱により、二種類の原料90a,90bの蒸気を発生させ、そして、開閉バルブ94a,94bの開作動により、二種類の原料90a,90bの蒸気を、蒸気供給パイプ92を通じて、真空槽48内に供給して、第一の走行ローラ68の外周面上を周方向に走行するアルミニウム箔64上に吹き付けるようになっている。
正極活物質混入装置80は、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス等からなるキャリアガス(第一のキャリアガス)が充填されたガスボンベ96と、正極活物質24(ここでは、LiCoO2 )を粉体の状態で収容する粉体収容器98とを有している。また、それらガスボンベ96と粉体収容器98との間には、ガス供給パイプ100が設置されており、更に、粉体収容器98と真空槽48との間には、粉体供給パイプ102が設置されている。この粉体供給パイプ102は、前記正極層用蒸着重合膜層形成装置78の蒸気供給パイプ92内に挿入されている。これにより、粉体供給パイプ102の先端開口部が、蒸気供給パイプ92内に位置して、かかる蒸気供給パイプ92の先端開口部を通じて、真空槽48内に設置された第一の走行ローラ68の外周面に向かって開口している。即ち、ここでは、蒸気供給パイプ92の先端開口側の端部が、粉体供給パイプ102の先端部を内挿した二重管構造とされている。
かくして、かかる正極活物質混入装置80にあっては、ガスボンベ96の開閉バルブ104の開作動により、ガス供給パイプ100を通じて、ガスボンベ96内のキャリアガスを粉体収容器98内に供給するようになっている。また、それにより、粉体収容器98内に収容された正極活物質24を、粉体収容器98内に供給されたキャリアガス中に分散させた状態で、キャリアガスと共に、蒸気供給パイプ92に挿入された粉体供給パイプ102を通じて真空槽48内に供給するようになっている。そして、ここでは、粉体供給パイプ102が蒸気供給パイプ92の先端部内に挿入配置されていることにより、正極活物質24が、蒸気供給パイプ92の先端部内で二種類の原料90a,90bと混合されて上記気第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64の一方の面のうちの二種類の原料90a,90bの蒸気が吹き付けられる箇所に対して、それら二種類の原料90a,90bやキャリアガスと共に、粉体供給パイプ102の先端開口部から吹き付けられるようになっている。そうして、かかる正極活物質混入装置80が、後述するように、アルミニウム箔64の一方の面への二種類の原料90a,90bの蒸気の吹付けによってアルミニウム箔64の一方の面に形成される正極層用蒸着重合膜層26中に、正極活物質24を混入するように構成されているのである。
なお、ここでは、ガス供給パイプ100上に、公知のマスフローコントローラ106が設置されており、また、粉体供給パイプ102上には、公知の構造を有する粉砕器108が設置されている。かくして、マスフローコントローラによるキャリアガスの流量コントロールに基づいて、正極活物質24の真空槽48内への供給量が調節されるようになっている。また、粉体供給パイプ102内をキャリアガスと共に流通する正極活物質24が、粉砕器108にて粉砕され、その粒径が更に細かくされた状態で、アルミニウム箔64の一方の面に吹き付けられるようになっている。
また、紫外線照射装置81は、真空槽48内での蒸気供給パイプ92の開口部の位置よりも、第一の走行ローラ68の外周面上でのアルミニウム箔64の走行方向の下流側に配置されている。そして、かかる紫外線照射装置81が、第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64の一方の面上に、後述するように、正極層形成ユニット60によって形成される、ポリユリアからなる正極層用蒸着重合膜層26に対して、紫外線を照射するように構成されている。
第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72は、第二の蒸着重合膜層形成手段としての第一の外側蒸着重合膜層形成装置110と、リチウムイオン伝導性付与物質混入手段としてのリチウムイオン伝導性付与物質混入装置112とを含んで構成されている。第一の外側蒸着重合膜層形成装置110は、真空蒸着法により第一の外側蒸着重合膜層37を形成するものであって、第一蒸発源114と第二蒸発源116と第三蒸発源118とを有している。それら第一蒸発源114と第二蒸発源116と第三蒸発源118は、原料収容ポット120a,120b,120cとヒータ122a,122b,122cとを、それぞれ更に有している。
そして、かかる第一乃至第三蒸発源114,116,118の各原料収容ポット120a,120b,120c内には、固体電解質層20のうちの第一の固体電解質層部分32の正極層16への積層側部分を構成する第一の外側蒸着重合膜層37の三種類の原料124a,124b,124cが、各々収容されている。ここでは、第一の外側蒸着重合膜層37がポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つ電気陰性度の高い元素を含む官能基(シアノ基)を有するポリユリアからなるため、第一及び第二蒸発源114,116の各原料収容ポット120a,120b内には、二種類の原料124a,124bとして、例えば、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル等のエチレングリコールジアミンと、1−シアノ−3、5−キシリレンジイソシアネート等のシアノ基を有する芳香族ジイソシアネートとが、液体状態で、それぞれ収容されている。また、第三蒸発源118の原料収容ポット120c内には、オリゴエチレンオキシド(低分子量ポリエチレンオキシド:分子量200〜2000)が、液体又は固体の状態で収容されている。そして、それら第一乃至第三蒸発源114,116,118の各原料収容ポット120a,120b,120c内に収容された三種類の原料124a,124b,124cが、ヒータ122a,122b,122cにて加熱されて、蒸発させられるようになっている。
なお、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つ電気陰性度の高い元素を含む官能基を有するポリユリアを形成する二種類の原料モノマーとしては、上記に例示したものの組合せの他、例えば、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルと1−フルオロ−3、5−キシリレンジイソシアネート、或いは5−ブロモビフェニル−2、4’−ジアミンと[オキソビス(トリメチレン)ジオキソビス(トリメチレン)]ジイソシアネート等の組合せが、使用可能である。
また、第一乃至第三蒸発源114,116,118の各原料収容ポット120a,120b,120cと真空槽48との間には、それらを相互に接続する蒸気供給パイプ126が設置されている。そして、この蒸気供給パイプ126は、真空槽48内において、第一の走行ローラ68の外周面に向かって開口するように配置されている。また、この蒸気供給パイプ126は、真空槽48内での開口部の位置が、正極層形成ユニット70の、互いに同軸的に配置された蒸気供給パイプ92と粉体供給パイプ102の各先端開口部の位置よりも、第一の走行ローラ68の外周面上でのアルミニウム箔64の走行方向の下流側の位置とされている。更に、そのような蒸気供給パイプ126の各原料収容ポット120a,120b,120cとの接続部上には、開閉バルブ128a,128b,128cが、それぞれ設けられている。
かくして、第一の外側蒸着重合膜層形成装置110にあっては、第一乃至第三蒸発源114,116,118の各原料収容ポット120a,120b,120c内でヒータ122a,122b,122cの加熱により、三種類の原料124a,124b,124cの蒸気をそれぞれ発生させ、そして、開閉バルブ128a,128b,128cの開作動により、それら三種類の原料124a,124b,124cの蒸気を、蒸気供給パイプ126を通じて、真空槽48内に供給して、第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64上に吹き付けるようになっている。
リチウムイオン伝導性付与物質混入装置112は、開閉バルブ130を有するガスボンベ132と粉体収容器134とガス供給パイプ136とマスフローコントローラ138と粉体供給パイプ140と粉砕器142とを備え、正極層形成ユニット70に設けられる正極活物質混入装置80と同様な基本構造を有している。そして、このリチウムイオン伝導性付与物質混入装置112のガスボンベ132内には、不活性ガス等からなるキャリアガス(第二のキャリアガス)が充填されている。また、粉体収容器134内には、リチウム塩[ここでは、LiN(SO2CF3)2 ]からなるリチウムイオン伝導性付与物質144が、粉体の状態で収容されている。なお、このリチウムイオン伝導性付与物質混入装置112の粉体供給パイプ140も、その先端側部分が、第一の外側蒸着重合膜層形成装置110の蒸気供給パイプ126の先端側部分内に挿入されている。これにより、粉体供給パイプ140の先端開口部が、蒸気供給パイプ126の先端開口部内に位置し、且つ蒸気供給パイプ126の先端開口部を通じて、第一の走行ローラ68の外周面に向かって開口するように配置されている。
かくして、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置112にあっては、ガスボンベ132の開閉バルブ130の開作動により、ガスボンベ132内に充填されたキャリアガスを粉体収容器134内に供給すると共に、粉体収容器134内に収容されたイオン伝導性付与物質144を、粉体収容器134内に供給されたキャリアガス中に分散させた状態で、キャリアガスと共に、蒸気供給パイプ126の先端側部分内に供給するようになっている。そして、リチウムイオン伝導性付与物質144を、蒸気供給パイプ126の先端部内で三種類の原料124a,124b,124cと混合した状態で、それら三種類の原料124a,124b,124cやキャリアガスと共に、蒸気供給パイプ126の先端開口部から、第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64の一方の面に吹き付けるようになっている。これにより、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置112が、後述するように、アルミニウム箔64の一方の面に形成される第一の外側蒸着重合膜37中に、リチウムイオン伝導性付与物質144を混入するように構成されているのである。
また、第一の内側蒸着重合膜層形成ユニット74は、第二の蒸着重合膜層形成手段としての第一の内側蒸着重合膜層形成装置146と、リチウムイオン伝導性付与物質混入手段としてのリチウムイオン伝導性付与物質混入装置148とを含んで構成されている。第一の内側蒸着重合膜層形成装置146は、真空蒸着法により第一の内側蒸着重合膜層36を形成するものである。また、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置148は、第一の内側蒸着重合膜層形成装置146にて形成される第一の内側蒸着重合膜層36中に、リチウムイオン伝導性付与物質144を混入するものである。そして、そのような第一の内側蒸着重合膜層形成装置146は、第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72における第一の外側蒸着重合膜層形成装置110と同様な構造を有している。また、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置148は、第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72のリチウムイオン伝導性付与物質混入装置112と同様な構造を有している。
従って、ここでは、第一の内側蒸着重合膜層形成ユニット74における第一の内側蒸着重合膜層形成装置146及びリチウムイオン伝導性付与物質混入装置148と、第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72における第一の外側蒸着重合膜層形成装置110とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置112との間で、互いに同一の構造とされた部材及び部位に、図2において同一の符号を付す。それにより、第一の内側蒸着重合膜層形成ユニット74に関する詳細な説明を省略することとする。
なお、そのような第一の内側蒸着重合膜層形成装置146の各原料収容ポット120a,120b,120c内には、固体電解質層20のうちの第一の固体電解質層部分32の正極層16側とは反対側の部分を構成する第一の内側蒸着重合膜層36の三種類の原料124a,124b,124cが、各々収容されている。ここでは、第一の内側蒸着重合膜層36がポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有するポリユリアからなるため、第一及び第二蒸発源114,116の各原料収容ポット120a,120b内には、二種類の原料124a,124bとして、ポリユリアの原料モノマーたる、例えば、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル等のエチレングリコールジアミンとm−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートとが、液体状態で、それぞれ収容されている。また、第三蒸発源118の原料収容ポット120c内には、オリゴエチレンオキシド(低分子量ポリエチレンオキシド:分子量200〜2000)が、液体又は固体の状態で収容されている。また、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置148の粉体収容器134内には、リチウム塩[ここでは、LiN(SO2CF3)2 ]からなるリチウムイオン伝導性付与物質144が、粉体の状態で収容されている。
一方、第二の積層体作製ユニット60は、第二の積層体42を、連続した工程によって作製するもので、真空槽48内に設置された第二の走行ローラ150と、真空槽48の外部にそれぞれ設置された負正極層形成ユニット152と第二の外側蒸着重合膜層形成ユニット154と第二の内側蒸着重合膜層形成ユニット156とを有している。
第二の積層体作製ユニット60における第二の走行ローラ150は、第二の巻出しローラ56に装着された銅箔66のロールから、第二の巻出しローラ56の回転に伴って巻き出されて、第二の積層体作製ユニット60に供給される銅箔66が巻き掛けられるようになっている。そして、この第二の走行ローラ150に巻き掛けられた銅箔66が、第二の走行ローラ150の回転に伴って、第二の走行ローラ150の周面上を、その周方向の一方向(矢印:イにて示される方向)に走行させられるようになっている。
負極層形成ユニット152は、第三の蒸着重合膜層形成手段としての負極層用蒸着重合膜層形成装置158と、負極活物質混入手段としての負極活物質混入装置160と、紫外線照射装置161とを含んで構成されている。負極層用蒸着重合膜層形成装置78は、真空蒸着重合法により、負極層用蒸着重合膜層30を形成するものである。また、負極活物質混入装置160は、負極層用蒸着重合膜層形成装置158にて形成される負極層用蒸着重合膜層30中に、負極活物質28を混入するものである。更に、紫外線照射装置161は、負極活物質28が混入された負極層用蒸着重合膜層30に対して紫外線を照射するものである。そして、そのような負極層用蒸着重合膜層形成装置158は、正極層形成ユニット70における正極層用蒸着重合膜層形成装置78と同様な構造を有している。また、負極活物質混入装置160は、正極層形成ユニット70における正極活物質混入装置80と同様な構造を有している。更に、紫外線照射装置161は、正極層形成ユニット70における紫外線照射装置81と同様な構造を有している。
従って、ここでは、負極層形成ユニット152における負極層用蒸着重合膜層形成装置158及び負極活物質混入装置160と、正極層形成ユニット70における正極層用蒸着重合膜層形成装置78及び正極活物質混入装置80との間で、互いに同一の構造とされた部材及び部位に、図2において同一の符号を付すことにより、負極層形成ユニット152に関する詳細な説明を省略する。
なお、本実施形態では、負極層用蒸着重合膜層30が、正極層用蒸着重合膜層26と同様に、ポリアニリンからなるため、負極層用蒸着重合膜層形成装置158の各原料収容ポット86a,86b内には、二種類の原料90a,90bとして、正極層用蒸着重合膜層形成装置78の各原料収容ポット86a,86b内に収容される二種類の原料90a,90bと同じ種類のものが収容されている。また、負極活物質混入装置160の粉体収容器98内には、負極活物質28(ここでは、天然グラファイト)が、粉体の状態で収容されている。
さらに、第二の外側蒸着重合膜層形成ユニット154は、第四の蒸着重合膜層形成手段としての第二の外側蒸着重合膜層形成装置162と、リチウムイオン伝導性付与物質混入手段としてのリチウムイオン伝導性付与物質混入装置164とを含んで構成されている。第二の外側蒸着重合膜層形成装置162は、真空蒸着法により第二の外側蒸着重合膜層39を形成するものである。また、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置164は、第二の外側蒸着重合膜層形成装置162にて形成される第二の外側蒸着重合膜層39中に、リチウムイオン伝導性付与物質144を混入するものである。そして、そのような第二の外側蒸着重合膜層形成装置162は、第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72における第一の外側蒸着重合膜層形成装置110と同様な構造を有している。また、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置164は、第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72のリチウムイオン伝導性付与物質混入装置112と同様な構造を有している。
そこで、ここでは、第二の外側蒸着重合膜層形成ユニット154における第二の外側蒸着重合膜層形成装置162及びリチウムイオン伝導性付与物質混入装置164と、第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72における第一の外側蒸着重合膜層形成装置110とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置112との間で、互いに同一の構造とされた部材及び部位に、図2において同一の符号を付すことにより、第二の外側蒸着重合膜層形成ユニット154に関する詳細な説明を省略することとする。
また、第二の内側蒸着重合膜層形成ユニット156は、第四の蒸着重合膜層形成手段としての第二の内側蒸着重合膜層形成装置166と、リチウムイオン伝導性付与物質混入手段としてのリチウムイオン伝導性付与物質混入装置168とを含んで構成されている。第二の内側蒸着重合膜層形成装置166は、真空蒸着法により第二の内側蒸着重合膜層38を形成するものである。また、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置168は、第二の内側蒸着重合膜層形成装置166にて形成される第二の内側蒸着重合膜層38中に、リチウムイオン伝導性付与物質144を混入するものである。そして、そのような第二の内側蒸着重合膜層形成装置166及びリチウムイオン伝導性付与物質混入装置168は、第一の内側蒸着重合膜層形成ユニット74における第一の内側蒸着重合膜層形成装置146及びリチウムイオン伝導性付与物質混入装置148と同様な構造を有している。
従って、ここでは、第二の内側蒸着重合膜層形成ユニット156における第二の内側蒸着重合膜層形成装置166及びリチウムイオン伝導性付与物質混入装置168と、第一の内側蒸着重合膜層形成ユニット74における第一の内側蒸着重合膜層形成装置146とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置148との間で、互いに同一の構造とされた部材及び部位に、図2において同一の符号を付すことにより、第二の内側蒸着重合膜層形成ユニット156に関する詳細な説明を省略することとする。
なお、第二の内側蒸着重合膜層形成装置166の各原料収容ポット120a,120b,120c内には、第一の内側蒸着重合膜層形成装置146の各原料収容ポット120a,120b,120c内に収容される三種類の原料124a,124b,124cと同じ種類のものが、それぞれ収容されている。また、第二の内側蒸着重合膜層形成装置166の各原料収容ポット120a,120b,120c内には、第一の内側蒸着重合膜層形成装置146の各原料収容ポット120a,120b,120c内に収容される三種類の原料124a,124b,124cと同じ種類のものが、それぞれ収容されている。さらに、第二の外側蒸着重合膜層形成ユニット154と第二の内側蒸着重合膜層形成ユニット156の各リチウムイオン伝導性付与物質混入装置164,168の各粉体収容器134内には、リチウムイオン伝導性付与物質144として、第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72と第一の内側蒸着重合膜層形成ユニット74の各リチウムイオン伝導性付与物質混入装置112,148の各粉体収容器134内に収容されるリチウムイオン伝導性付与物質144と同一種類のものが、粉体の状態で収容されている。
一方、電池素子作製ユニット62は、一対の積層用ローラ170,170と巻取りローラ172とを有している。一対の積層用ローラ170,170は、外周面同士が互いに接触した状態で、それぞれ反対側の方向に回転するようになっている。そして、第一の積層体作製ユニット58にて形成されて、第一の走行用ローラ68から送り出される第一の積層体40と、第二の積層体作製ユニット60にて形成されて、第二の走行用ローラ150から送り出される第二の積層体42とが、一対の積層用ローラ170,170の間に送り込まれて、互いに重なり合うように積層されるようになっている。そして、それら互いに積層された第一の積層体40と第二の積層体42とが、巻取りローラ172に一緒に巻き取られるようになっているのである。
ところで、かくの如き構造を有する製造装置46を用いて、目的とするリチウムイオン二次電池10を製造する際には、以下の手順に従って、その操作が進められる。
すなわち、先ず、アルミニウム箔64のロールを第一の巻出しローラ54に、銅箔66のロールを第二の巻出しローラ56に、それぞれ装着する。その後、アルミニウム箔64のロールと銅箔66のロールから、アルミニウム箔64と銅箔66の一部をそれぞれ巻き出す。そして、巻き出されたアルミニウム箔64を第一の走行ローラ68に巻き掛ける一方、巻き出された銅箔66を第二の走行ローラ150に巻き掛ける。その後、第一及び第二の走行ローラ68,150に巻き掛けられたアルミニウム箔64と銅箔66のそれぞれの先端部分を、電池素子作製ユニット62の一対の積層用ローラ170,170間に通過させて、互いに重なり合うように積層した後、その積層品を巻取りローラ172に対して巻取り可能に取り付ける。これは、リチウムイオン二次電池10の製造に際しての予備作業となる。
また、そのような予備作業の終了後に、真空ポンプ52を作動させて、真空槽48内を真空状態とする。このとき、真空槽48内は、例えば10-4〜100Pa程度の圧力にまで減圧される。
次に、第一の走行ローラ68と第二の走行ローラ150と巻取りローラ172とを回転駆動させることにより、アルミニウム箔64のロールから、アルミニウム箔64を次々と連続的に巻き出しながら、第一の走行ローラ68に送り出すと共に、第一の走行ローラ68の外周面上を走行させつつ、巻取りローラ172側に搬送する。また、それと同時に、銅箔66のロールから、銅箔66を次々と連続的に巻き出しながら、第二の走行ローラ150に送り出すと共に、第二の走行ローラ150の外周面上を走行させつつ、巻取りローラ172側に搬送する。
そして、そのような第一の走行ローラ68によるアルミニウム箔64の搬送と、第二の走行ローラ150による銅箔66の搬送とが開始されたら、第一の積層体作製ユニット58と第二の積層体作製ユニット60とにより、第一の積層体40と第二の積層体42とを、以下のようにして同時に作製する。なお、前記したように、第一の積層体40と第二の積層体42は、互いに同様な工程を経て作製される。そこで、以下には、第一の積層体40の作製工程に関する説明のみを記載して、第二の積層体42の作製工程に関する詳細な説明を省略する。
すなわち、第一の走行ローラ68によるアルミニウム箔64の搬送を開始したら、正極層形成ユニット70における正極層用蒸着重合膜層装置78の第一及び第二蒸発源82,84で発生させた二種類の原料90a,90bの蒸気と、正極活物質混入装置80からキャリアガスと共に蒸気供給パイプ92内に吹き込まれた正極活物質24とを、蒸気供給パイプ92の先端開口部から、第一の走行ローラ68の外周面上に位置するアルミニウム箔64上の同一箇所に対して、混合状態で同時に吹き付けて、付着させる。これにより、アルミニウム箔64からなる正極集電体層12上で、二種類の原料(原料モノマー)90a,90bを重合させて、ポリユリアからなる正極層用蒸着重合膜層26を形成しながら(形成すると同時に)、かかる正極層用蒸着重合膜層26内に正極活物質24を混入する。
次に、正極活物質24が混入する正極層用蒸着重合膜層26が形成されたアルミニウム箔64部分が、紫外線照射装置81と対応する位置に到達したら、紫外線照射装置81により、正極層用蒸着重合膜層26に対して紫外線を照射する。これによって、正極層用蒸着重合膜層26を構成するポリユリアからポリアニリンを形成する。そうして、アルミニウム箔64からなる正極集電体層12上に、正極活物質24を含有するポリアニリンにて構成された正極層用蒸着重合膜層26にて、正極層16を一体的に積層形成する。
その後、正極層16が形成されたアルミニウム箔64部分が、第一の走行ローラ68と巻取りローラ172の回転駆動によって、第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72における第一の外側蒸着重合膜層形成装置110の蒸気供給パイプ126の先端開口部と対応する位置に到達したら、第一乃至第三蒸発源114,116,118で発生させた三種類の原料124a,124b,124cの蒸気と、リチウムイオン伝導性付与物質入装置112からキャリアガスと共に蒸気供給パイプ126内に吹き込まれたリチウムイオン伝導性付与物質144とを、蒸気供給パイプ126の先端開口部から、第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64に形成された正極層16上に、混合状態で同時に吹き付けて、付着させる。
これにより、かかるアルミニウム箔64に形成された正極層16上で、三種類の原料(原料モノマー)124a,124b,124cを重合させて、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つ電気陰性度の高い元素を含有する官能基を有するポリユリアからなる第一の外側蒸着重合膜層37を形成しながら(形成すると同時に)、かかる第一の外側蒸着重合膜層37内にリチウムイオン伝導性付与物質144を混入する。そうして、リチウムイオン伝導性を有し、且つ電気陰性度の高い元素を含有する官能基を有するポリユリアからなる第一の外側蒸着重合膜層37を、アルミニウム箔64からなる正極集電体層12に積層された正極層16に対して、一体的に積層形成する。
次に、正極層16と第一の外側蒸着重合膜層37とが積層形成されたアルミニウム箔64部分が、第一の内側蒸着重合膜層形成ユニット74における第一の内側蒸着重合膜層形成装置146の蒸気供給パイプ126の先端開口部と対応する位置に到達したら、第一乃至第三蒸発源114,116,118で発生させた三種類の原料124a,124b,124cの蒸気と、リチウムイオン伝導性付与物質入装置148からキャリアガスと共に蒸気供給パイプ126内に吹き込まれたリチウムイオン伝導性付与物質144とを、蒸気供給パイプ126の先端開口部から、第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64に正極層16を介して形成された第一の外側蒸着重合膜層37上に、混合状態で同時に吹き付けて、付着させる。
これにより、かかる第一の外側蒸着重合膜層37上で、三種類の原料(原料モノマー)124a,124b,124cを重合させて、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有するポリユリアからなる第一の内側蒸着重合膜層36を形成しながら(形成すると同時)に、かかる第一の内側蒸着重合膜層36内にリチウムイオン伝導性付与物質144を混入する。以て、リチウムイオン伝導性を有するポリユリアからなる第一の内側蒸着重合膜層36を、アルミニウム箔64からなる正極集電体層12に正極層16を介して積層された第一の外側蒸着重合膜層37に対して、一体的に積層形成する。
かくして、アルミニウム箔64からなる正極集電体層12上に、正極層16と、第一の外側蒸着重合膜層37及び第一の内側蒸着重合膜層36からなる第一の固体電解質層部分32とが、その順番で一体的に積層形成されてなる第一の積層体40を、連続的に作製する。そして、作製された第一の積層体40を、第一の走行ローラ68から電池素子作製ユニット62側に連続的に送り出す。
一方、上記のようにして、第一の積層体作製ユニット58により、第一の積層体40を連続的に作製しながら、第二の積層体作製ユニット60により、第一の積層体40の形成工程と同様な工程を実施して、第二の積層体42を連続的に作製する。そして、作製された第二の積層体42を、第二の走行ローラ150から電池素子作製ユニット62側に連続的に送り出す。
その後、電池素子作製ユニット62側に送り出された第一の積層体40と第二の積層体42とを、一対の積層用ローラ170の間を通過させることにより、第一の内側蒸着重合膜層36と第二の内側蒸着重合膜層38とにおいて互いに重ね合わせた状態で積層する。
かくして、図1に示されるように、正極集電体層12と、正極層16と、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34の積層体からなる固体電解質層20と、負極層18と、負極集電体層14とが、その順番に積層された一つの電池素子22からなり、且つ固体電解質層20の厚さ方向中間部に、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34の重ね合わせ面からなる積層界面44が形成された、目的とするリチウムイオン二次電池10を、長尺な帯状形態において得る。そして、その後、かかる帯状のリチウムイオン二次電池10を、巻取りローラ172にて巻き取ってロールとするのである。
なお、このようにして製造されたリチウムイオン二次電池10は、例えば、ロールから必要量だけ巻き出され、カットされて、必要に応じて、正極集電体層12と負極集電体層14に対してそれぞれ端子が接続されると共に、リチウムイオン二次電池10全体が保護フィルムにて外装されて、使用に供されることとなる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、一つの真空槽48内で、第一の積層体40と第二の積層体42とをそれぞれ作製する工程と、それら第一の積層体40と第二の積層体42とを積層して、電池素子22を作製する工程とを、一連の流れ作業によって連続的に実施することにより、目的とするリチウムイオン二次電池10を、ロールトゥロール方式により、一挙に且つ連続的に製造することができる。従って、リチウムイオン二次電池10の生産性の向上が、極めて有効に図られ得るのである。
また、本実施形態によれば、正極層16と負極層18と固体電解質層20とが、可撓性乃至は柔軟性を有するポリアニリンやポリユリアからなる正極層用蒸着重合膜層26や、負極層用蒸着重合膜層30、第一の内側及び第一の外側蒸着重合膜層36,37、第二の内側及び第二の外側蒸着重合膜層38,39にて構成される。それ故、リチウムイオン二次電池10の全体において、適度な可撓性乃至は柔軟性が発揮されて、そのような可撓性乃至は柔軟性に基づく高い曲げ強度が発揮される。そして、その結果、リチウムイオン二次電池10の取扱性の向上が有利に図られ得る。
さらに、本実施形態では、正極層16と負極層18と固体電解質層20の形成手法として蒸着重合法が採用されているため、例えば、正極集電体層12や負極層集電体層14の表面等に凹部や凸部が形成されて、それら正極及び負極集電体層12,14の表面が平坦面とされていなくとも、そのような正極集電体層12や負極層集電体層14の各表面の全体に対して、正極層16及び第一の固体電解質層部分32や、負極層18及び第二の固体電解質層部分34とを、何れも、十分に薄い均一な厚さで満遍なく形成することができる。従って、正極集電体層12の表面(正極層16の積層面)や負極層集電体層14の表面(負極層18の積層面)の形状に拘わらず、安定した電池性能が有利に確保され得ると共に、小型で且つ出力密度と形状自由度の向上が効果的に図られてなるリチウムイオン二次電池10を、より確実且つ安定的に製造することができる。
また、正極層16と負極層18と固体電解質層20の形成手法として採用される蒸着重合法が真空プロセスであるため、正極層16と負極層18と固体電解質層20の成膜後の乾燥施設が不要となり、その分だけ、製造設備の簡略化と小型化が図られ得ると共に、ランニングコストの削減も有利に達成され得る。しかも、乾燥工程が省略されることに加えて、蒸着重合法が十分に速い成膜レートを発揮するものであるところから、リチウムイオン二次電池10のサイクルタイムの短縮も、極めて効果的に図られ得る。従って、本実施形態によれば、目的とするリチウムイオン二次電池10を十分に低いコストで効率的に製造することができるのである。
そして、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10においては、特に、正極集電体層12の表面に、正極層16と第一の固体電解質層部分32とが、蒸着重合法の実施により、一体的に積層形成されており、また、負極層集電体層14の表面に、負極層18と第二の固体電解質層部分34とが、蒸着重合法の実施により、一体的に積層形成されている。そして、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34だけが互いに重ね合わされるように積層されている。これによって、それら第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34との間だけに、積層界面44が形成されている。
このため、かかるリチウムイオン二次電池10では、正極集電体層12と正極層16との間や、正極層16と第一の固体電解質層部分32との間、負極集電体層14と負極層18との間、負極層18と第二の固体電解質層部分34との間から、リチウムイオン二次電池10の充放電時におけるリチウムイオンの移動を阻害するような隙間が、完全に消失され得る。これによって、固体電解質層20と正極層16及び負極層18との間の界面抵抗が、効果的に低く抑えられ、その結果、電池性能の向上が、極めて有利に図られ得るのである。
なお、リチウムイオン二次電池10の充放電時には、固体電解質層20の厚さ方向中間部におけるリチウムイオンの移動が殆どない。従って、本実施形態のリチウムイオン二次電池10においては、固体電解質層20の厚さ方向中間部に、リチウムイオンの移動を阻害する積層界面44が形成されているものの、それによって、電池性能が低下することはない。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池10では、第一の固体電解質層部分32の正極層16側部分を構成する第一の外側蒸着重合膜層37と、第二の固体電解質層部分34の負極側18側部分を構成する第二の外側蒸着重合膜層39とが、電気陰性度の高い元素を含む官能基を有するポリユリアにて形成されていることにより、リチウムイオンが、固体電解質層20中において、正極層16側部分と負極層18側部分とに偏在している。これによっても、電池性能の向上が効果的に図られ得る。
ところで、前記第一の実施形態では、第一の固体電解質層部分32が、第一の内側蒸着重合膜層36と第一の外側蒸着重合膜層37との二層構造とされている一方、第二の固体電解質層部分34が、第二の内側蒸着重合膜層38と第二の外側蒸着重合膜層39の二層構造とされていた。しかしながら、図3に示されるように、第一の固体電解質層部分32を、正極層16に対して、蒸着重合法により一体的に積層形成された正極層側蒸着重合膜層174だけからなる単層構造とする一方、第二の固体電解質層部分34を、負極層18に対して、蒸着重合法により一体的に積層形成された負極層側蒸着重合膜層176だけからなる単層構造としても良い。
そして、そのような第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34とにて、固体電解質層20を構成する場合には、正極層側蒸着重合膜層174が、正極層16側の部分に、リチウムイオンが偏在する一方、正極層16側とは反対側の部分にアニオンが偏在するように構成され、また、負極層側蒸着重合膜層176が、負極層16側の部分に、リチウムイオンが偏在する一方、負極層18側とは反対側の部分にアニオンが偏在するように構成されていることが、望ましい。
かくの如き構造の固体電解質層20を有するリチウムイオン二次電池177は、例えば、図4に示されるような構造を有する製造装置178を用いて、以下の如き手順に従って製造される。なお、本実施形態、また、後述する幾つかの実施形態に関しては、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図3乃至図8に、図1及び図2と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
図4から明らかなように、本実施形態の製造装置178においては、第一の積層体作製ユニット58が、第一の走行ローラ68と正極層形成ユニット70と正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180とを有している。また、第二の積層体作製ユニット60が、第二の走行ローラ150と負極層形成ユニット152と負極層側蒸着重合膜形成ユニット182とを有している。それら第一及び第二の積層体作製ユニット58,60の第一及び第二の走行ローラ68,150と正極層及び負極層形成ユニット70,152は、前記第一の実施形態の製造装置46に設けられるものと同様な構造とされている。
また、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180と負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182は、前記第一の実施形態の製造装置46に設けられる第一及び第二の積層体作製ユニット58,60の第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72と第二の外側蒸着重合膜層形成ユニット154と同様な構造とされている。つまり、本実施形態の製造装置178では、前記第一の実施形態の製造装置46に設けられる第一及び第二の積層体作製ユニット58,60の第一の内側蒸着重合膜層形成ユニット74と第二の内側蒸着重合膜層形成ユニット156とが省略されている。
より詳細には、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180は、正極層側蒸着重合膜層形成装置184とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置186とを有している。また、負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182は、負極層側蒸着重合膜層形成装置188とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置190とを有している。そして、そのような正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180の正極層側蒸着重合膜層形成装置184とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置186とが、第一の外側蒸着重合膜層形成ユニット72が有する第一の外側蒸着重合膜層形成装置110とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置112と同様な構造とされている。また、負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182の負極層側蒸着重合膜層形成装置188とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置190とが、第二の外側蒸着重合膜層形成ユニット154が有する第二の内側蒸着重合膜層形成装置162とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置164と同様な構造とされているのである。
そして、かかる製造装置178においては、第一の走行ローラ68と第二の走行ローラ150とに対して、負の電圧を印加する電源装置192,192が、給電線194,194を介して、それぞれ接続されている。
かくの如き構造を有する製造装置178を用いて、目的とするリチウムイオン二次電池177を製造する際には、以下の如き手順に従って、その作業が進められる。なお、前記第一の実施形態の製造装置46を用いてリチウムイオン二次電池10を製造する際と同様な工程に関しては、詳細な説明を省略する。
すなわち、先ず、第一の巻出しローラ54と第二の巻出しローラ56に装着されたアルミニウム箔64のロールと銅箔66のロールから、アルミニウム箔64と銅箔66とをそれぞれ巻き出して、第一及び第二の走行ローラ68,150に巻き掛けた後、巻取りローラ172に取り付ける予備作業を実施する。その後、真空槽48内を真空状態とする。
次に、第一の走行ローラ68と第二の走行ローラ150とに対して、電源装置192,192から負の電圧をそれぞれ印加する。また、その状態において、巻取りローラ172と第一及び第二の走行ローラ68,150とを回転駆動させることにより、アルミニウム箔64と銅箔66とを、それら第一及び第二の走行ローラ68,150の外周面上において走行させる。
そして、第一及び第二の走行ローラ68,150の外周面上を走行するアルミニウム箔64と銅箔66の表面上に、正極層形成ユニット70と負極層形成ユニット152とにて、正極層16と負極層18をそれぞれ一体的に積層形成する。
その後、前記第一の実施形態の製造装置46を用いて第一及び第二の外側蒸着重合膜層37,39を形成する際と同様にして、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180と負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182とにより、正極層16上と負極層18上とに対して、正極側蒸着重合膜層174と負極層側蒸着重合膜層176とを、それぞれ一体的に積層形成する。これにより、第一の積層体40と第二の積層体42とを、それぞれ連続的に作製する。
そして、ここでは、第一の積層体40と第二の積層体42とを作製している間、電源装置192,192から第一及び第二の走行ローラ68,150に負の電圧が印加されている。そのため、第一の走行ローラ68や第二の走行ローラ150に巻き掛けられたアルミニウム箔64や銅箔66における第一の走行ローラ68や第二の走行ローラ150との接触面側が、それぞれ正に、またその反対側が、それぞれ負に帯電させられる。更に、それに伴って、アルミニウム箔64や銅箔66に積層形成される正極層16や負極層18も、アルミニウム箔64や銅箔66との積層側が、それぞれ正に、また、その反対側が、それぞれ負に帯電させられる。即ち、正極層16の正極層側蒸着重合膜層174との積層面側と、負極層18の負極層側蒸着重合膜層との積層面側とが、それぞれ、負に帯電させられる。
そして、それにより、正極層16に積層形成された正極層側蒸着重合膜層174中に含まれるリチウムイオン伝導性付与物質144としてのリチウム塩由来のリチウムイオンが、正極層側蒸着重合膜層174中において、正極層16側に引き寄せられて、正極層側蒸着重合膜層174のうちの正極層16側の部分に偏在させられるようになる。また、正極層側蒸着重合膜層174中のリチウム塩由来のアニオンは、正極層16側とは反対側に引き寄せられて、正極層側蒸着重合膜層174のうちの正極層16側とは反対側の部分に偏在させられるようになる。即ち、正極層側蒸着重合膜層174のうちの正極層16側の部分でのアニオンの含有量が、十分に小さくされる。
一方、負極層18に積層形成された負極層側蒸着重合膜層176中に含まれるリチウムイオン伝導性付与物質144としてのリチウム塩由来のリチウムイオンは、負極層側蒸着重合膜層176中において、負極層18側に引き寄せられて、負極層側蒸着重合膜層176のうちの負極層18側の部分に偏在させられるようになる。また、負極層側蒸着重合膜層176中のリチウム塩由来のアニオンは、負極層18側とは反対側に引き寄せられて、負極層側蒸着重合膜層176のうちの負極層16側とは反対側の部分に偏在させられるようになる。即ち、負極層側蒸着重合膜層176のうちの負極層18側の部分でのアニオンの含有量が、十分に小さくされる。これらのことから明らかなように、本実施形態では、第一の走行ローラ68に負の電圧を印加する電源装置192と給電線194とにて、第一の偏在処理手段が構成され、また、第二の走行ローラ150に負の電圧を印加する電源装置192と給電線194とにて、第二の偏在処理手段が構成されている。
そして、上記のようにして作製した第一の積層体40と第二の積層体42とを、電池素子作製ユニット62の一対の積層用ローラ170,170にて互いに積層した後、巻取りローラ172により巻き取って、目的とするリチウムイオン二次電池177をロール状の形態において得るのである。
このような本実施形態においても、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
そして、本実施形態では、特に、第一の固体電解質層部分32のうちの正極層16側の部位において、リチウムイオンの含有量が多くされているだけでなく、アニオンの含有量が十分に小さくされている。また、第二の固体電解質層部分34のうちの負極層18側の部位においても、リチウムイオンの含有量が多くされていると共に、アニオンの含有量が十分に少なくされている。このため、正極層16中の正極活物質24と第一の固体電解質部分32との間でのリチウムイオンの移動や、負極層18中の負極活物質28と第二の固体電解質部分34との間でのリチウムイオンの移動が、アニオンによって阻害されることが効果的に防止され得る。そして、それによって、電池性能の向上が、より一層有利に図られ得るのである。
しかも、本実施形態では、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34とを、それぞれ、正極層側蒸着重合膜層174と負極層側蒸着重合膜層176の単層構造とした上で、第一の固体電解質部分32の正極層16側と第二の固体電解質部分34の負極層18側にリチウムイオンを偏在させることができる。これによって、それら第一及び第二の固体電解質部分32,34を単層構造とした簡略な構造において、電池性能の向上が有利に図られ得る。また、第一及び第二の固体電解質部分32,34を単層構造としたことによって、製造装置178の構造の簡素化も効果的に実現され得る。
ところで、前述したように、固体電解質層20の第一及び第二の固体電解質層部分32,34は、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つかかるポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されてなる、蒸着重合法によって成膜可能な樹脂:Aや、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合している、蒸着重合法によって成膜可能な樹脂:Bによって構成されるものである。従って、前記した製造装置178を用いる場合には、以下のようにして、第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層34とを形成することもできる。なお、それら第一の固体電解質層部分32と第二の固体電解質層部分34は、それぞれ、同様な構造を有する第一の積層体作製ユニット58と第二の積層体作製ユニット60とを用いた同様な工程にによって形成される。それ故、以下には、第一の固体電解質層部分32を形成する工程についてのみ記載する。
例えば、樹脂:Aの構造を有するポリユリアからなる第一の固体電解質層部分32を形成する際には、正極層側蒸着重合膜層ユニット180における正極層側蒸着重合膜層形成装置184が有する第一蒸発源114の原料収容ポット120a内と第二蒸発源116の原料収容ポット120b内に、例えば、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル等のエチレングリコールジアミンからなる原料124aと、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートからなる原料124bとして、それらのうちの少なくとも何れか一方が、側鎖にポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造が結合しているものを収容する。このとき、第三蒸発源118は使用しない。
そして、第一及び第二蒸発源114,116で発生した原料124aの蒸気と原料124bの蒸気とを、真空槽48内で第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64に形成された正極層16上で重合させて、正極層側蒸着重合膜層174を形成しながら、この正極層側蒸着重合膜層174に、リチウム塩からなる、粉体状のリチウムイオン伝導性付与物質144を、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置186によって混入させる。これによって、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つかかるポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有された正極層側蒸着重合膜層174を、アルミニウム箔64上に形成された正極層16上に形成する。以て、正極層16上に、第一の固体電解質層部分32を一体的に積層形成するのである。
また、例えば、樹脂:Bの構造を有するポリユリアからなる第一の固体電解質層部分32を形成する際には、正極層側蒸着重合膜層ユニット180における正極層側蒸着重合膜層形成装置184が有する第一及び第二蒸発源114,116の各原料収容ポット120a,120b内に、例えば、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル等のエチレングリコールジアミンからなる原料124aと、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートからなる原料124bとして、それらのうちの少なくとも何れか一方が、側鎖にスルホン酸基が結合しているものを収容する。このときも、第三蒸発源118は使用しない。
そして、第一及び第二蒸発源114,116で発生した原料124aの蒸気と原料124bの蒸気とを、真空槽48内で第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64に形成された正極層16上で重合させて、正極層側蒸着重合膜層174を形成しながら、この正極層側蒸着重合膜層174に、リチウム塩からなる、粉体状のリチウムイオン伝導性付与物質144を、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置186によって混入させる。これによって、リチウム塩を含有し、且つスルホン酸基が側鎖に結合している正極層側蒸着重合膜層174を正極層16上に形成し、以て、正極層16上に、第一の固体電解質部分32を一体的に積層形成するのである。
ところで、前記第一及び第二の実施形態では、リチウムイオン伝導性付与物質144として、粉状のリチウム塩が用いられ、この粉状のリチウム塩からなるリチウムイオン伝導性付与物質144が第一の固体電解質層部分32(第一の内側及び第一の外側蒸着重合膜層36,37や正極層側蒸着重合膜層174)と第二の固体電解質層部分34(第二の内側及び第二の外側蒸着重合膜層38,39や負極層側蒸着重合膜層176)に混入されるようになっていた。しかしながら、リチウムイオン伝導性付与物質144は、第一及び第二の固体電解質層部分32,34に含有されることで、それらかかる第一及び第二の固体電解質層部分32,34(固体電解質層20)に対して、文字通り、リチウムイオン伝導性を付与し得るものであれば、その材質や構造が、何等限定されるものでない。従って、リチウムイオン伝導性付与物質144として、例えば、リチウム塩が溶解したイオン伝導性ポリマーを用いることも可能である。このようなリチウム塩が溶解したイオン伝導性ポリマーからなるリチウムイオン伝導性付与物質144を用いて、目的とするリチウムイオン二次電池177を製造する場合には、例えば、図5に示される如き構造を有する製造装置195が、用いられる。
図5から明らかなように、本実施形態の製造装置195は、図4に示された前記第二の実施形態の製造装置178に対して、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180と負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182の構造のみが異なり、それ以外は同様な構造とされている。また、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180と負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182は、互いに同一の構造を有している。それ故、以下には、本実施形態の製造装置195に関して、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180の構造のみを説明する。
すなわち、製造装置195では、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180の正極層側蒸着重合膜層形成装置196が、第一蒸発源114と第二蒸発源116とを有するものの、第三蒸発源(118)が省略されている。そして、第一及び第二蒸発源114,116の原料収容ポット120a,120b内には、ここでは、原料124a,124bとして、ポリユリアからなる第一の内側蒸着重合膜層36の原料モノマーたる、例えば、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル等のエチレングリコールジアミンとm−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートとが、液体状態で、それぞれ収容されている。
かくして、正極層側蒸着重合膜層形成装置196にあっては、第一及び第二蒸発源114,116の各原料収容ポット120a,120b内でヒータ122a,122bの加熱により、二種類の原料124a,124bの蒸気をそれぞれ発生させ、そして、開閉バルブ128a,128bの開作動により、それら二種類の原料124a,124bの蒸気を、蒸気供給パイプ126を通じて、真空槽48内に供給して、第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64に正極集電体層12を介して形成された正極層16上に吹き付けるようになっている。
また、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置198は、開閉バルブ130を有するガスボンベ132とガス供給パイプ136とマスフローコントローラ138と液体収容器200と液体供給パイプ202とを備えて構成されている。そして、かかるリチウムイオン伝導性付与物質混入装置198の液体収容器200内には、リチウム塩が溶解した、常温で液体状態のイオン伝導性ポリマーからなるリチウムイオン伝導性付与物質144が収容されている。ここでは、かかるリチウムイオン伝導性付与物質144として、例えば、リチウム塩[例えば、LiN(SO2CF3)2 ]が溶解した、700以下程の低分子量のオリゴエチレンオキシド等が用いられている。
また、液体供給パイプ202の先端部が、ガス供給パイプ136の途中に突入配置されている。更に、ガス供給パイプ136の先端部が、第一の内側蒸着重合膜層形成装置152の蒸気供給パイプ126内に挿入されており、これにより、ガス供給パイプ136の先端開口部が、蒸気供給パイプ126内に位置して、かかる蒸気供給パイプ126の先端開口部を通じて、第一の走行ローラ68の外周面に向かって開口するように配置されている。
かくして、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置198にあっては、ガスボンベ132の開閉バルブ130の開作動により、ガスボンベ132内に充填されたキャリアガスをガス供給パイプ136内に流通させることで、液体収容器200内に収容された液体状のリチウムイオン伝導性付与物質144を、ガス供給パイプ136内に生じた陰圧を利用して、液体供給パイプ202を通じてガス供給パイプ136内に吸い上げるようになっている。また、かかるガス供給パイプ136内で、液体状のリチウムイオン伝導性付与物質144を、キャリアガス中に霧状に分散させて、かかるキャリアガスと共に、蒸気供給パイプ126の先端側部分内に供給するようになっている。そして、かかるリチウムイオン伝導性付与物質144の霧状微粒子を、蒸気供給パイプ126の先端部内で二種類の原料124a,124bの蒸気と混合した状態で、それら二種類の原料124a,124bの蒸気やキャリアガスと共に、蒸気供給パイプ126の先端開口部から、第一の走行ローラ68の外周面上を走行するアルミニウム箔64に吹き付けるようになっている。これにより、かかるリチウムイオン伝導性付与物質混入装置198が、後述するように正極層側蒸着重合膜層形成装置196にて形成される正極層側蒸着重合膜層174中に、リチウムイオン伝導性付与物質144を混入するように構成されているのである。
一方、負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182も、負極層側蒸着重合膜層形成装置204とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置206とを有している。そして、それら負極層側蒸着重合膜層形成装置204とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置206とが、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180の正極層側蒸着重合膜層形成装置196とリチウムイオン伝導性付与物質混入装置198と同様な構造とされているのである。
かくの如き構造を有する製造装置195を用いて、目的とするリチウムイオン二次電池177を製造する際には、以下の如き手順に従って、その操作が進められる。
すなわち、先ず、リチウムイオン二次電池10の製造に際しての予備作業の開始から、第一の走行ローラ68と第二の走行ローラ150のそれぞれの外周面上において、アルミニウム箔64上と銅箔66上に正極層16と負極層18とをそれぞれ形成するまでの工程を、前記第二の実施形態に係る製造装置178を用いてリチウムイオン二次電池177を製造する際と同様にして、実施する。
そして、第一の走行ローラ68と巻取りローラ172の回転駆動により、正極層16が形成されたアルミニウム箔64部分が、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180における正極層側蒸着重合膜層形成装置196の蒸気供給パイプ126の先端開口部の先端開口部に対応する位置に到達したら、第一及び第二蒸発源114,116で発生させた二種類の原料124a,124bの蒸気と、リチウムイオン伝導性付与物質混入装置198からキャリアガスと共に蒸気供給パイプ126内に吹き込まれたリチウムイオン伝導性付与物質144とを、蒸気供給パイプ126の先端開口部から正極層16上に、混合状態で同時に吹き付けて、付着させる。これにより、かかる正極層16上で、二種類の原料(原料モノマー)124a,124bを重合させて、ポリユリアからなる正極層側蒸着重合膜層174を形成すると同時に、かかる正極層側蒸着重合膜層174中にリチウムイオン伝導性付与物質144を混入する。そうして、第一の積層体40を作製する。
一方、第二の走行ローラ150と巻取りローラ172の回転駆動により、負極層18が形成された銅箔66部分が、負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182における負極層側蒸着重合膜層形成装置204の蒸気供給パイプ126の先端開口部の先端開口部に対応する位置に到達したら、負極層18上に、ポリユリアからなる負極層側蒸着重合膜層176を形成すると同時に、かかる負極層側蒸着重合膜層176中にリチウムイオン伝導性付与物質144を混入する。この負極層側蒸着重合膜層176の形成操作と、負極層側蒸着重合膜層176中へのリチウムイオン伝導性付与物質144の混入操作は、正極層側蒸着重合膜層174の形成操作と、正極層側蒸着重合膜層174中へのリチウムイオン伝導性付与物質144の混入操作と同様にして実施する。そうして、第二の積層体42を作製する。
その後、上記のようにして作製した第一の積層体40と第二の積層体42とを、電池素子作製ユニット62の一対の積層用ローラ170,170にて互いに積層した後、巻取りローラ172により巻き取って、目的とするリチウムイオン二次電池177をロール状の形態において得るのである。
このような本実施形態においても、前記第一の実施形態や前記第二の実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
ところで、前記第一乃至第三の実施形態では、何れも、正極集電体層12がアルミニウム箔64からなる一方、負極集電体層14が銅箔66にて構成されていた。しかしながら、正極集電体層12と負極集電体層14とを、金属蒸着膜層によって形成しても良い。この場合には、例えば図6に示される如き構造を有する製造装置208が用いられて、目的とするリチウムイオン二次電池177が、以下の如き手順に従って製造される。
すなわち、図6から明らかなように、本実施形態の製造装置208においては、真空槽48の外部に、正極集電体層形成ユニット210と負極集電体層形成ユニット212が設置されている。そして、それ以外の構造は、図4に示された、前記第二の実施形態の製造装置178と同様な構造とされている。
より具体的には、正極集電体層形成ユニット210と負極集電体層形成ユニット212は、何れも、真空蒸着法によって蒸着膜層を形成するものであって、所定の金属からなる蒸着材料214を加熱して、蒸発させるヒータ216と、かかるヒータ216の加熱により発生した金属の蒸気を外部に吹き出すノズル218とを備えた、公知で同一の基本構造を有している。なお、ここでは、正極集電体層形成ユニット210が有する蒸着材料214が、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、単にアルミニウムと言う)からなる一方、負極集電体層形成ユニット212が有する蒸着材料214が、銅又は銅合金(以下、単に銅と言う)からなっている。
また、かかる製造装置208においては、第一の巻出しローラ54に、正極層16が積層されるべき、基材としての正極層側保護フィルム220のロールが装着されており、第二の巻出しローラ56には、負極層12が積層されるべき、基材としての負極層側保護フィルム222のロールが装着されている。そして、第一の巻出しローラ54から巻き出された正極層側保護フィルム220が、第一の走行ローラ68に巻き掛けられて、第一の走行ローラ68から巻取りローラ172側に送り出されるようになっている。一方、第二の巻出しローラ56から巻き出された負極層側保護フィルム222は、第二の走行ローラ150に巻き掛けられて、第二の走行ローラ150から巻取りローラ172側に送り出されるようになっている。
なお、ここで用いられる正極層側保護フィルム220と負極層側保護フィルム222は、何れも、リチウムイオン二次電池177の保護フィルムとして、従来から一般に使用されるフィルムが用いられる。即ち、例えば、ポリエステル樹脂層とポリアミド樹脂層とアルミニウム層とポリプロピレン樹脂層とが、低分子量ポリエチレン等の接着剤層を介して積層されてなるラミネート構造を有するフィルム等が用いられる。
そして、正極集電体層形成ユニット210が、第一の巻出しローラ54から巻き出されて、第一の走行ローラ68に巻き掛けられる前の正極層側保護フィルム220の一方の面に向かって、ノズル218を開口させた状態で配置されている。また、負極集電体層形成ユニット212は、第二の巻出しローラ56から巻き出されて、第二の走行ローラ150に巻き掛けられる前の負極層側保護フィルム222の一方の面に向かって、ノズル218を開口させた状態で配置されている。
これにより、正極集電体層形成ユニット210が、第一の走行ローラ68に巻き掛けられる前の正極層側保護フィルム220の一方の面に対して、アルミニウムの蒸気を吹き付けるようになっている。また、負極集電体層形成ユニット212が、第二の走行ローラ150に巻き掛けられる前の負極層側保護フィルム222の一方の面に対して、銅の蒸気を吹き付けるようになっている。
そして、かくの如き構造を有する製造装置208を用いて、目的とするリチウムイオン二次電池177を製造する際には、以下の如き手順に従って、その操作が進められる。
すなわち、先ず、前記第二の実施形態の製造装置178を用いてリチウムイオン二次電池177を製造する際とは異なって、アルミニウム箔64や銅箔66の代わりに、第一の巻出しローラ54と第二の巻出しローラ56に装着された正極層側保護フィルム220のロールと負極層側保護フィルム222のロールから、正極層側保護フィルム220と負極層側保護フィルム222とを巻き出して、リチウムイオン二次電池10の製造に際しての予備作業を実施する。また、その一方で、真空槽48内の真空ポンプ52による減圧操作とを実施する。
次に、第一の走行ローラ68と巻取りローラ172とを回転駆動させることにより、正極層側保護フィルム220のロールから、正極層側保護フィルム220を次々と連続的に巻き出しながら、第一の走行ローラ68に送り出すと共に、第一の走行ローラ68の外周面上を周方向の一方向(図6に矢印:アで示される方向)走行させつつ、巻取りローラ172側に搬送する。
そして、そのような第一の走行ローラ68による正極層側保護フィルム220の搬送が開始されて、正極層側保護フィルム220の一部が、正極集電体層形成ユニット210のノズル218の先端開口部と対応する位置に到達したら、ノズル218から、アルミニウムの蒸気を真空槽48内に吹き出させて、ノズル218と対応位置する正極層側保護フィルム220部分の一方の面(正極層側保護フィルム220が第一の走行ローラ68に巻き掛けられたときに、第一の走行ローラ68の外周面と接触する側とは反対側の面)上に吹き付ける。これにより、第一の巻出しローラ54にて巻き出される正極層側保護フィルム220の一方の面上に、アルミニウムの蒸着膜層からなる正極集電体層12を連続的に積層形成する。
一方、そのような正極集電体層12の形成操作を行いながら、負極層側保護フィルム222のロールから巻き出された負極層側保護フィルム222の一方の面(負極層側保護フィルム222が第二の走行ローラ150に巻き掛けられたときに、第二の走行ローラ150の外周面と接触する側とは反対側の面)に対して、銅の蒸着膜層からなる負極集電体層14を連続的に積層形成する。この負極集電体層14の形成は、正極集電体層形成ユニット210による正極集電体層12の形成操作と同様にして、負極集電体層形成ユニット212により実施する。
その後、正極層側保護フィルム220上に積層された正極集電体層12上に、正極層16と第一の固体電解質部分32とを、その順番で一体的に積層形成する。また、その一方で、負極層側保護フィルム222上に積層された負極集電体層14上に、負極層18と第二の固体電解質部分34とを、その順番で一体的に積層形成する。かくして、第一の積層体40と第二の積層体42とを同時に作製する。なお、そのような正極集電体層12上への正極層16と第一の固体電解質部分32の形成操作や、負極集電体層14上への負極層18と第二の固体電解質部分34の形成操作は、前記第二の実施形態の製造装置178を用いてリチウムイオン二次電池177を製造する際と同様にして、正極層及び負極層形成ユニット70,152と、正極層側及び負極層側蒸着重合膜層形成ユニット180,182とによって実施する。
その後、上記のようにして作製した第一の積層体40と第二の積層体42とを、電池素子作製ユニット62の一対の積層用ローラ170,170にて互いに積層した後、巻取りローラ172により巻き取って、目的とするリチウムイオン二次電池177をロール状の形態において得るのである。そして、そのようにして製造されたリチウムイオン二次電池177は、例えば、ロールから必要量だけ巻き出され、カットされて、正極層側保護フィルム220と負極層側保護フィルム222とが互いに重ね合われた部分が溶着されると共に、必要に応じて、正極集電体層12と負極集電体層14とに端子が接続されて、使用に供されることとなる。
このような本実施形態においても、前記第一乃至第三の実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
そして、特に、本実施形態によれば、正極集電体層12と負極集電体層14とが、真空蒸着法により形成された蒸着膜にて構成される。それ故、正極集電体層12と負極集電体層14とが金属箔にて構成される場合とは異なって、単に、正極集電体層形成ユニット210と負極集電体層形成ユニット212でのアルミニウムや銅の蒸気圧を変更するだけで、正極集電体層12と負極集電体層14の厚さの変更を自由に且つ容易に実施できる。
また、本実施形態では、一つの真空槽48内で、正極集電体層12と正極層16と固体電解質層20と負極層18と負極層側集電体22とが、その順番で積層されてなる電池素子22からなるリチウムイオン二次電池177の製造工程と、そのようなリチウムイオン二次電池10に対して正極層側保護フィルム220と負極層側保護フィルム222とを一体的に積層する工程とが、ロールトゥロール方式を採用した一連の流れ作業により連続的に実施される。従って、正極層側保護フィルム220と負極層側保護フィルム222とにて外装されたリチウムイオン二次電池177を、より優れた生産性をもって、容易に製造することが可能となる。
次に、図7には、本発明に従う構造を有するリチウムイオン二次電池の別の実施形態が、その部分縦断面形態において示されている。かかる図7から明らかなように、本実施形態のリチウムイオン二次電池224においては、正極層側保護フィルム220上に、正極集電体層12が一体的に積層形成されている一方、負極層側保護フィルム222上に、負極集電体層14が一体的に積層形成されている。そして、正極集電体層12と正極層16との間に、第一の混合層226が形成されている一方、負極集電体層14と負極層18との間に、第二の混合層228が形成されている。ここでは、正極集電体層12と負極集電体層14とが、何れも、公知の真空蒸着法によって形成されており、正極集電体層12が、アルミニウムの蒸着膜にて構成されている一方、負極集電体層14が、銅の蒸着膜にて構成されている。また、正極層16が、正極活物質24を含有するポリウレタンからなる正極層用蒸着重合膜層26にて構成されている一方、負極層18が、負極活物質28を含有するポリウレタンからなる負極層用蒸着重合膜層30にて構成されている。
そして、第一の混合層226には、正極集電体層12を構成するアルミニウムと、正極層16を構成するポリウレタンとが混在し、また、必要に応じて、正極活物質24が混在している。第二の混合層228には、負極集電体層14を構成する銅と、負極層18を構成するポリウレタンとが混在し、必要に応じて、負極活物質28も混在している。なお、第一及び第二の混合層226,228は、何れも導電性を有している。
また、第一の混合層226では、アルミニウムの含有率が、正極集電体層12の側から正極層16側に向かって徐々に小さくなっている一方、ポリウレタンの含有率が、正極集電体層12の側から正極層16側に向かって徐々に大きくなっている。更に、第二の混合層228では、銅の含有率が、負極集電体層14の側から負極層18側に向かって徐々に小さくなっている一方、ポリウレタンの含有率が、負極集電体層14の側から負極層18側に向かって徐々に大きくなっている。つまり、第一の混合層226と第二の混合層228とにおいては、アルミニウムや銅の含有率とポリウレタンの含有率とが、正極集電体層12や負極集電体層14の側から正極層16側や負極層18側に向かって傾斜的に変化しているのである。
さらに、かかるリチウムイオン二次電池224では、正極層16と第一の固体電解質層部分32との間に、正極層側混合層としての第三の混合層230が形成されている一方、負極層18と第二の固体電解質層部分34との間に、負極層側混合層としての第四の混合層232が形成されている。また、ここでは、第一の固体電解質層32が、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されたポリユリアからなる正極層側蒸着重合膜層174にて構成されている一方、第二の固体電解質部分34が、ポリエチレンオキシドの繰返し単位の構造を有し、且つポリエチレンオシキド中にリチウム塩が含有されたポリユリアからなる負極層側蒸着重合膜層176にて構成されている。
そして、第三の混合層230には、正極層16を構成する第一の重合体としてのポリウレタンと、第一の固体電解質層32を構成する第二の重合体としてのポリユリアとが混在し、また、第四の混合層232には、負極層18を構成する第三の重合体としてのポリウレタンと、第二の固体電解質部分34を構成する第四の重合体としてのポリユリアが混在している。なお、それら第三の混合層230と第四の混合層232には、必要に応じて、リチウムイオン伝導性付与物質144も混在している。また、第三の混合層230と第四の混合層232は、何れも導電性を有している。
そして、第三の混合層230では、ポリウレタンの含有率が、正極層16側から第一の固体電解質層部分32側に向かって徐々に小さくなっている一方、ポリユリアの含有率が、正極層16側から第一の固体電解質層部分32側に向かって徐々に大きくなっている。また、第四の混合層232では、ポリウレタンの含有率が、負極層18側から第二の固体電解質層部分34側に向かって徐々に小さくなっている一方、ポリユリアの含有率が、負極層18側から第二の固体電解質層部分34側に向かって徐々に大きくなっている。つまり、第三の混合層230と第四の混合層232とにおいては、ポリウレタンの含有率とポリユリアの含有率とが、正極層16側や負極層18側から固体電解質層20側に向かって傾斜的に変化しているのである。
そして、そのような構造を有するリチウムイオン二次電池224を製造する際には、例えば、図8に示される如き構造を有する製造装置234が、好適に用いられる。
図8から明らかなように、本実施形態の製造装置234においては、正極集電体層形成ユニット210のノズル218と、負極集電体層形成ユニット212のノズル218に、開閉バルブ233が、それぞれ設けられている。そして、正極集電体層形成ユニット210のノズル218が、第一の走行ローラ68の外周面に向かって開口していると共に、負極集電体層形成ユニット212のノズル218が、第二の走行ローラ150の外周面に向かって開口している。
また、真空槽48内における第一の走行ローラ68と第二の走行ローラ150との間には、仕切壁236が設けられている。これによって、真空槽48内に、第一の走行ローラ68が配置された第一の真空室238と、第二の走行ローラ150が配置された第二の真空室240とが画成されている。そして、第一の真空室238内には、第一の走行ローラ68と共に、正極集電体層形成ユニット210のノズル218の先端部と、正極層形成ユニット70の蒸気供給パイプ92の先端部と、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180の蒸気供給パイプ126の先端部とが、第一の走行ローラ68の外周面に向かって開口するように配置されている。一方、第二の真空室240内には、第二の走行ローラ150と共に、負極集電体層形成ユニット212のノズル218の先端部と、負極層形成ユニット152の蒸気供給パイプ92の先端部と、負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182の蒸気供給パイプ126の先端部とが、第二の走行ローラ150の外周面に向かって開口するように配置されている。そして、それ以外の本実施形態の製造装置234の構造は、図6に示された前記第四の実施形態の製造装置208と同様な構造とされている。
そして、かくの如き構造を有する製造装置234を用いて、目的とするリチウムイオン二次電池224を製造する場合には、以下の如き手順に従って、その操作が進められる。
すなわち、先ず、第一の巻出しローラ54と第二の巻出しローラ56とに、正極層側保護フィルム220のロールと負極層側保護フィルム222のロールを装着した後、前記したような予備作業を実施する。その後、真空ポンプ52を作動させて、第一の真空室238内と第二の真空室240内を真空状態とする。このとき、第一及び第二の真空室238,240内は、前記したリチウムイオン二次電池10を形成する際の真空槽48内と同様な圧力とされる。
一方、正極及び負極集電体層形成ユニット210,212と正極層及び負極層形成ユニット70,152と正極層側及び負極層側蒸着重合膜層形成ユニット180,182とに設けられた各ヒータ216,88a,88b,122a,122b,122cの加熱により、それら各ユニット210,212,70,152,180,182内に収容された蒸着材料214や原料90a,90b,124a,124b,124cを蒸発させる。
なお、ここでは、正極層及び負極層形成ユニット70,152の各原料収容ポット86a内に、原料90aとして、例えば、1,3−ジヒドロキシルベンゼン等の芳香族ジオールが、液体状態で収容されている一方、各原料収容ポット86b内に、原料90bとして、例えば、1,4−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが、液体状態で収容される。また、正極層側及び負極層側蒸着重合膜層形成ユニット180,182の各原料収容ポット120a,120b,120c内には、例えば、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル等のエチレングリコールジアミンとm−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、オリゴエチレンオキシドが、液体又は固体の状態で収容される。
そして、第一の真空室238の内圧が所定の圧力となったら、先ず、正極集電体層形成ユニット210のノズル218に設けられた開閉バルブ233だけを開作動させて、正極集電体層形成ユニット210内から、蒸着材料214を構成するアルミニウムの蒸気を、ノズル218を通じて、第一の真空室238内に供給する。これによって、第一の走行ローラ68の外周面上を走行する正極層側保護フィルム220の表面上に、アルミニウムの蒸着膜からなる正極集電体層12を形成する。
その後、開閉バルブ233の開作動から、予め設定された時間が経過したら、かかる開閉バルブ233の開放量が漸減するように、開閉バルブ233を徐々に閉じてゆき、やがて、完全に閉鎖する。これにより、真空槽48内へのアルミニウムの蒸気の供給量を徐々に減少させ、やがて、それをゼロとする。
また、その一方、開閉バルブ233の閉作動の開始と同時に、或いはその直前又は直後に、正極層形成ユニット70における正極層用蒸着重合膜層形成装置78の蒸気供給パイプ92上に設けられた開閉バルブ94a,94bの開作動を開始する。この開作動は、蒸気供給パイプ92上の開閉バルブ94a,94bの開放量を徐々に大きくし、やがて、それが一定となるように実施される。これによって、正極層形成ユニット70から第一の真空室238内への原料90a,90bの供給量を徐々に増加させ、やがて、それを一定の量とする。なお、このとき、第一の真空室238内の内圧が可及的に一定に保たれるように、正極集電体層形成ユニット210のノズル218上の開閉バルブ233の閉作動量と、正極層用蒸着重合膜層形成装置78の蒸気供給パイプ92上の開閉バルブ94a,94bの開作動量とを、それぞれ調節することが、望ましい。
かくして、正極集電体層層形成ユニット56の開閉バルブ233の閉作動の開始から、所定の厚さを有する正極集電体層12上への更なるアルミニウム蒸気の付着量を漸減させる一方、正極層形成ユニット70の開閉バルブ94a,94bの開作動の開始から、かかる正極集電体層12上でのポリウレタンの生成量を漸増させる。これにより、正極集電体層形成ユニット56の開閉バルブ233の閉作動の開始から、それが完全に閉鎖されるまでの間、正極集電体層12を構成するアルミニウムの蒸着操作と、正極層用蒸着重合膜層形成装置78から供給される原料90a,90bの重合反応とを同時に実施して、正極集電体層12上に、前記の如き構造を有する第一の混合層226を一体的に積層形成するのである。
なお、開閉バルブ233の開作動の開始から閉作動が開始されるまでの時間は、形成されるべき正極集電体層12の厚さ等に応じて、適宜に設定される。また、正極層形成ユニット70における正極活物質混入装置80のガスボンベ96に設けられた開閉バルブ104の開作動は、蒸気供給パイプ92上の開閉バルブ94a,94bの開作動を開始した時点から開放量が一定とされるまでの間か、或いは開放量が一定となったと同時に実施される。
次に、正極層形成ユニット70における蒸気供給パイプ92上の開閉バルブ94a,94bの開放量が一定となってから所定の時間が経過した時点で、かかる開閉バルブ94a,94bを、その開放量が徐々に小さくなるように閉じてゆき、やがて、完全に閉鎖する。これにより、正極層形成ユニット70から第一の真空室238内への原料90a,90bの供給を、所定の時間だけ一定の量で継続した後、その供給量を徐々に減少させ、やがてそれゼロとする。なお、正極層形成ユニット70におけるガスボンベ96の開閉バルブ104は、開閉バルブ94a,94bの閉作動を開始した時点、若しくは開閉バルブ94a,94bを完全に閉鎖した時点、又は開閉バルブ94a,94bの閉作動の開始からそれが完全閉鎖されるまでの間に、閉作動される。
また、その一方で、開閉バルブ94a,94bの閉作動の開始と同時に、或いはその直前又は直後に、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180における正極層側蒸着重合膜層装置184の蒸気供給パイプ126上に設けられた開閉バルブ128a,128b,128cを、それぞれの開放量が徐々に大きくなるように開作動し、やがて、それらの開放量を一定とする。これによって、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180から第一の真空室238内への原料124a,124b,124cの供給量を徐々に増加させ、やがて、それを一定の量とする。
なお、このときも、第一の真空室238内の内圧が可及的に一定に保たれるように、開閉バルブ94a,94bの閉作動量と開閉バルブ128a,128b,128cの開作動量をそれぞれ調節することが、望ましい。また、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180におけるリチウムイオン伝導性付与物質混入装置186のガスボンベ132に設けられた開閉バルブ130は、蒸気供給パイプ126上の開閉バルブ128a,128b,128cの開作動を開始した時点から開放量が一定とされるまでの間か、或いは開放量が一定となったと同時に開作動される。
かくして、正極層形成ユニット70の開閉バルブ94a,94bのみを一定の開放量で開作動させている間に、第一の混合層226上にポリウレタンのみを生成させ、以て、第一の混合層226上に、正極層16を形成する。なお、開閉バルブ94a,94bを一定の開放量で開作動させている間の時間は、形成されるべき正極層16の厚さ等に応じて、適宜に決定される。
そして、正極層形成ユニット70の開閉バルブ94a,94bの閉作動の開始から、所定の厚さとされた正極層16上への更なるポリウレタンの生成量を漸減させる一方、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180の開閉バルブ128a,128b,128cの開作動の開始から、かかる正極層16上でのポリユリアの生成量を漸増させる。これにより、正極層形成ユニット70の開閉バルブ94a,94bの閉作動の開始から、それが完全閉鎖されて、正極層形成ユニット70から供給される原料90a,90bの第一の真空室238内での残存量がゼロとなるまでの間、かかる原料90a,90bの重合反応と正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180から供給される原料124a,124b,124cの重合反応とを同時に実施して、正極層16上に、前記の如き構造を有する第三の混合層230を形成するのである。
次に、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180の開閉バルブ128a,128b,128cの開放量が一定となってから所定の時間が経過した時点で、かかる開閉バルブ128a,128b,128cを閉鎖する。これにより、正極層側蒸着重合膜層形成ユニット180から第一の真空室238内への原料124a,124b,124cの供給を、所定の時間だけ一定の量で継続した後、その供給量をゼロとする。
かくして、正極層側保護フィルム22上に、正極集電体層12と第一の混合層226と正極層16と第三の混合層230と正極層側蒸着重合膜層174(第一の固体電解質部分32)とが、その順番で一体的に積層形成されてなる第一の積層体40を、連続的に作製する。
一方、第一の積層体40を作製している間に、第二の真空室240内でも、第二の巻出しローラ56の回転に伴って連続的に巻き出された負極層側保護フィルム212上に、負極集電体層14と第二の混合層228と負極層18と第四の混合層232と負極層側蒸着重合膜層176(第二の固体電解質部分34)とを、その順番で一体的に積層形成する操作を行って、第二の積層体42を連続的に作製する。なお、この第二の積層体42の作製工程は、負極集電体層形成ユニット212と負極層形成ユニット152と負極層側蒸着重合膜層形成ユニット182とを用いて、第一の積層体40の作製工程と同様にして実施される。
その後、上記のようにして作製した第一の積層体40と第二の積層体42とを、電池素子作製ユニット62の一対の積層用ローラ170,170にて互いに積層した後、巻取りローラ172により巻き取って、目的とするリチウムイオン二次電池224をロール状の形態において得るのである。
以上の説明から明らかなように、本実施形態にあっても、前記した幾つかの実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が有効に享受され得る。
そして、本実施形態によれば、一つの真空槽48内でのロールトゥロール方式による一連の作業により、正極及び負極集電体層12,14と正極層16及び負極層18との間に、第一及び第二の混合層226,228をそれぞれ形成できると共に、正極層16及び負極層18と固体電解質層20との間に、第三及び第四の混合層230,232をそれぞれ形成できる。従って、正極層16及び負極層18と固体電解質層20との間の明確な界面が無くされ、更には正極集電体層12と正極層16との間や負極集電体層14と負極層18との間の明確な界面も無くされて、電子伝導性とイオン伝導性が、共に、より有利に高められ、以て、出力密度の向上が更に一層効果的に図られてなるリチウムイオン二次電池224を、優れた生産性をもって、より確実に且つ効率的に製造することが可能となるのである。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、前記した実施形態に係るリチウムイオン二次電池10,177,224は、正極集電体層12と正極層16と第一の固体電解質部分32と第二の固体電解質部分34と負極層18と負極集電体層14とが、その順番で積層されてなる一つの電池素子22によって構成されていた。しかしながら、複数の電池素子22を、互いに隣り合うもの同士が正極集電体層12と負極集電体層14とにおいて互いに重なり合うように、直列に積層してリチウムイオン二次電池10,177,224を構成することも可能である。このようなリチウムイオン二次電池10,177,224にあっては、小型でコンパクトな構造によって、高電圧化が有利に且つ効率的に実現され得るのである。
また、正極活物質24や負極活物質28、リチウムイオン伝導性付与物質144を、各原料90a,90b,124a,124b,124cと一緒に基体(アルミニウム箔64や銅箔66,正極層側保護フィルム22,負極層側保護フィルム222)に吹き付け得るのであれば、粉体供給パイプ102,140やガス供給パイプ136を蒸気供給パイプ92,126と並列的に配置しても良い。そして、その場合には、粉体供給パイプ102,140やガス供給パイプ136の先端開口部を、蒸気供給パイプ92,126の先端開口部よりも、第一及び第二の走行ローラ68,150によるアルミニウム箔64や銅箔66、正極層側保護フィルム220、負極層側保護フィルム222の搬送方向上流側に位置させることが望ましい。それによって、正極活物質24、負極活物質28、リチウムイオン伝導性付与物質144を、各原料90a,90b,124a,124b,124cに対して、それらの重合完了前に確実に混合することが可能となる。
さらに、第一乃至第四の混合層226,228,230,232を形成する場合には、それらの少なくも何れか一つだけを設けるようにしても、何等差し支えない。
また、前記実施形態では、第一の固体電解質部分32の正極層16側と第二の固体電解質部分34の負極層18側とにリチウムイオンを偏在させる一方、第一の固体電解質部分32と第二の固体電解質部分34の積層界面44側にアニオンを偏在させるための偏在処理が、第一及び第二の走行ローラ68,150に負の電圧を印加して、第一の積層体40と第二の積層体42とに対して電場を印加することによって実現されていた。しかしながら、そのような偏在処理は、製造装置178,195,208,234によって作製された第一の積層体40と第二の積層体42とに対して、例えば、電磁石や永久磁石を用いて磁場を印加する処理を行うことによっても実現可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。